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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】排気用塔状構造物
(51)【国際特許分類】
   E04H 12/28 20060101AFI20240604BHJP
【FI】
E04H12/28 D
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020070043
(22)【出願日】2020-04-08
(65)【公開番号】P2021167496
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(73)【特許権者】
【識別番号】397068322
【氏名又は名称】長岡鉄筋コンクリート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 伸一
(72)【発明者】
【氏名】藤田 進
(72)【発明者】
【氏名】南 恵介
(72)【発明者】
【氏名】大場 紀代人
(72)【発明者】
【氏名】杉原 正秋
(72)【発明者】
【氏名】長岡 秀恭
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-058546(JP,U)
【文献】特開昭48-016232(JP,A)
【文献】特開昭57-071966(JP,A)
【文献】特開昭58-133516(JP,A)
【文献】特開2017-040116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 5/00-5/12
E04H 7/00-7/32
E04H 12/00-14/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下側筒身と、
前記下側筒身の上方に配置されるとともに、前記下側筒身よりも細い上側筒身と、
前記下側筒身と前記上側筒身とを接続するとともに、前記下側筒身側から前記上側筒身側へ従って細くなる樹脂製のテーパ状部と、
前記テーパ状部の外周面に設けられ、前記下側筒身側から前記上側筒身側へ延びる金属製の補強リブと、
を備える排気用塔状構造物。
【請求項2】
前記補強リブの上から前記テーパ状部の外周面を被覆し、前記補強リブを前記テーパ状部の外周面に固定する被覆層を備える、
請求項1に記載の排気用塔状構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気用塔状構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
上方に向かうに従って縮径する縮径部又はテーパ部を備える煙突が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭58-133516号公報
【文献】特開2017-040116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2に開示された煙突では、縮径部又はテーパ部によって排ガスの流速が速くなる。したがって、煙突の排気効率が高められる。
【0005】
しかしながら、特許文献1,2に開示された縮径部又はテーパ部は、ステンレス製又は鋼製であるため、腐食する可能性がある。
【0006】
本発明は、上記の事実を考慮し、排気効率を高めつつ、テーパ状部の腐食を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1態様に係る排気用塔状構造物は、下側筒身と、前記下側筒身の上方に配置されるとともに、前記下側筒身よりも細い上側筒身と、前記下側筒身と前記上側筒身とを接続するとともに、前記下側筒身側から前記上側筒身側へ従って細くなる樹脂製のテーパ状部と、を備える。
【0008】
第1態様に係る排気用塔状構造物によれば、下側筒身の上には、下側筒身よりも細い上側筒身が配置される。この下側筒身と上側筒身とは、テーパ状部によって接続される。
【0009】
テーパ状部は、下側筒身側から上側筒身側へ向かうに従って細くなる。これにより、下側筒身からテーパ状部を介して上側筒身へ流れる排気の流速が速くなる。したがって、排気用塔状構造物の排気効率が高められる。
【0010】
また、テーパ状部は、樹脂製である。そのため、テーパ状部の腐食が抑制される。
【0011】
このように本発明では、排気効率を高めつつ、テーパ状部の腐食を抑制することができる。
【0012】
第2態様に係る排気用塔状構造物は、第1態様に係る排気用塔状構造物において、前記テーパ状部の外周面には、前記下側筒身側から前記上側筒身側へ延びる補強リブが設けられる。
【0013】
第2態様に係る排気用塔状構造物によれば、テーパ状部の外周面には、下側筒身側から上側筒身側へ延びる補強リブが設けられる。これにより、テーパ状部の破損等が抑制される。
【0014】
第3態様に係る排気用塔状構造物は、第2態様に係る排気用塔状構造物において、金属製の前記補強リブの上から前記テーパ状部の外周面を被覆し、前記補強リブを前記テーパ状部の外周面に固定する被覆層を備える。
【0015】
第3態様に係る排気用塔状構造物によれば、被覆層を備える。被覆層は、金属製の補強リブの上からテーパ状部の外周面を被覆し、補強リブをテーパ状部の外周面に固定する。これにより、補強リブの腐食を抑制しつつ、樹脂製のテーパ状部に金属製の補強リブを容易に固定することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明に係る排気用塔状構造物によれば、排気効率を高めつつ、テーパ状部の腐食を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態に係る排気用塔状構造物を示す斜視図である。
図2図1に示される排気用塔状構造物を示す側面図である。
図3図2に示される台座部を示す平面図である。
図4図2に示される連結ステージを示す平面図である。
図5図2に示される下側筒身、テーパ状部、及び上側筒身を示す拡大側面図である。
図6図5の6-6線断面図である。
図7図5の7-7線断面図である。
図8図5の8-8線断面図である。
図9図2に示される排気用塔状構造物の施工過程を示す側面図である。
図10図2に示される排気用塔状構造物の施工過程を示す側面図である。
図11図2に示される排気用塔状構造物の施工過程を示す側面図である。
図12図2に示される排気用塔状構造物の施工過程を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係る排気用塔状構造物について説明する。
【0019】
(排気用塔状構造物)
図1及び図2には、本実施形態に係る排気用塔状構造物10が示されている。排気用塔状構造物10は、塔状体20と、筒身50とを備えている。
【0020】
(塔状体)
塔状体20は、例えば、後述する筒身50を支持し、筒身50の倒れを抑制する鉄塔とされる。また、塔状体20は、上方へ向かうに従って細くなる角柱状に形成されており、基礎等の設置面12に設置されている。この塔状体20は、外周部に配置され、設置面12上に立てられる複数の柱22と、複数の柱22に架設される複数の外周梁24及びブレース26とを有している。なお、塔状体20は、角柱状に限定されず、例えば、多角柱状や円筒状であっても良い。
【0021】
図2に示されるように、塔状体20は、台座部30と、複数の脚部36と、塔状部40とを有している。台座部30は、塔状体20の下部に設けられている。また、台座部30は、後述する筒身50を載置可能な台座状(床状)に形成されている。
【0022】
図3に示されるように、台座部30は、平面視にて枠状に接合される複数の外周梁24と、対向する外周梁24に架設されるとともに平面視にて格子状に接合される複数の梁32と、格子枠を補強する水平ブレース34と、筒身50を支持する支持梁35とを有している。
【0023】
図2に示されるように、台座部30は、設置面12の上方に配置されており、設置面12との間に利用スペース14を形成している。利用スペース14は、例えば、人が出入り可能な空間とされている。この利用スペース14は、例えば、排気用塔状構造物10の施工時に、資材の搬入通路、資材の仮置き場、又は駐車場として利用され、若しくは排気用塔状構造物10の施工後に、メンテナンスペース又は駐車場として利用される。
【0024】
複数の脚部36は、台座部30の外周部から下方へ延出し、設置面12に対して台座部30を下から支持している。また、複数の脚部36は、利用スペース14の外周部に配置されている。なお、利用スペース14は、空間の一例である。
【0025】
塔状部40は、台座部30から上方へ延出している。この塔状部40には、複数の連結ステージ42が設けられている。複数の連結ステージ42は、塔状部40の高さ方向に間隔を空けて配置されている。
【0026】
図4に示されるように、連結ステージ42は、後述する筒身50の周囲に形成される格子状の床とされる。この連結ステージ42は、平面視にて枠状に接合される複数の外周梁24と、対向する外周梁24に架設されるとともに平面視にて格子状に接合された複数の梁44と、格子枠を補強する水平ブレース46と、筒身50の水平力を受ける受梁47とを有している。
【0027】
連結ステージ42の中央部には、平面視にて、矩形状の開口48が形成されている。この開口48には、筒身50が配置されている。この筒身50の外周面には、連結リング51が設けられている。この連結リング51と連結ステージ42の受梁47とは、ブラケット49を介して連結されている。これにより、筒身50が複数の連結ステージ42を介して塔状体20に支持されている。なお、隣接する連結ステージ42には、図示しない階段や梯子等が架設されている。
【0028】
(筒身)
図1に示されるように、筒身50は、複数の排気ダクト16が接合される集合排気筒又は集合煙突とされる。また、筒身50は、全体として円筒状に形成されている。
【0029】
図2に示されるように、筒身50は、塔状体20の台座部30上に立てられている。この筒身50の下方には、前述した利用スペース14が形成されている。また、筒身50は、塔状体20の塔状部40内に配置されており、前述した複数の連結ステージ42に連結されている。
【0030】
図1に示されるように、筒身50の下部には、複数の排気ダクト16が接続されている。これらの排気ダクト16から筒身50内に供給された排ガスは、筒身50に沿って上昇し、筒身50の上端部に形成された排気口50Aから排気される。なお、筒身50の下端部は、底部50Bによって閉塞されている。なお、図2では、排気ダクト16の図示が省略されている。
【0031】
ここで、筒身50は、例えば、GFRP(ガラス繊維強化プラスチック)、又はCFRP(炭素繊維強化プラスチック)等のFRP(繊維強化プラスチック)によって形成されている。FRPは、金属と比較して軽く、また、排ガスに対する耐食性、及び耐酸性に優れている。これにより、筒身50の軽量化が図られるとともに、筒身50の耐久性が高められている。
【0032】
筒身50は、下側筒身52、上側筒身54、及びテーパ状部60を有している。図5に示されるように、下側筒身52は、直径D1が一定の円筒状に形成されており、筒身50の下部(大径部)を構成している。また、下側筒身52には、前述した複数の排気ダクト16(図1参照)が接続されている。なお、下側筒身52は、筒身50の下部の一例である。
【0033】
上側筒身54は、直径D2が一定の円筒状に形成されており、筒身50の上部(小径部)を構成している。この上側筒身54の直径D2は、下側筒身52の直径D1よりも小さくなっている(D2<D1)。つまり、上側筒身54は、下側筒身52よりも細くなっている。なお、上側筒身54は、筒身50の上部の一例である。
【0034】
テーパ状部60は、直径が異なる下側筒身52と上側筒身54とを接続するレジューサ(レジューサ部)とされている。このテーパ状部60は、下側筒身52側から上側筒身54側へ向かうに従って直径が小さくなる円錐台状に形成されている。また、テーパ状部60は、中空状(筒状)に形成されており、軸方向の両端が開口されている。
【0035】
テーパ状部60の下端部には、下側筒身52の上端部が接続されている。一方、テーパ状部60の上端部には、上側筒身54の下端部が接続されている。このテーパ状部60の上端部の直径は、テーパ状部60の下端部の直径よりも小さくされている。このテーパ状部60によって、下側筒身52から上側筒身54に流れる排気の流速が早くなる。
【0036】
図5図6、及び図7に示されるように、テーパ状部60の下端部は、下側補強リング62によって補強されている。下側補強リング62は、テーパ状部60の下端部の外周面(側周面)60Sに沿ったリング状に形成されている。また、下側補強リング62は、金属製で、断面矩形の筒状に形成されており、テーパ状部60の外周面60Sに取り付けられている。
【0037】
テーパ状部60の上端部は、上側補強リング64によって補強されている。上側補強リング64は、テーパ状部60の上端部の外周面60Sに沿ったリング状に形成されている。また、上側補強リング64は、金属製で、断面矩形の筒状に形成されており、テーパ状部60の外周面60Sに取り付けられている。
【0038】
テーパ状部60の外周面60Sは、複数の補強リブ66によって補強されている。複数の補強リブ66は、下側補強リング62と上側補強リング64とに亘っている。また、複数の補強リブ66は、テーパ状部60の周方向に間隔を空けて配置されている。
【0039】
図8に示されるように、補強リブ66は、鋼板等の金属製で、断面矩形の筒状に形成されている。また、補強リブ66は、被覆層68によってテーパ状部60の外周面60Sに固定されている。
【0040】
被覆層68は、例えば、FRPによって形成された樹脂層とされている。また、被覆層68は、補強リブ66の上からテーパ状部60の外周面60Sを被覆するとともに、補強リブ66の両側においてテーパ状部60の外周面60Sに溶着等によって固定されている。この被覆層68によって、FRP製のテーパ状部60に金属製の補強リブ66が固定されている。
【0041】
なお、補強リブ66、下側補強リング62、及び上側補強リング64は、金属製に限らず、樹脂製であっても良い。また、補強リブ66、下側補強リング62、及び上側補強リング64の大きさや形状も適宜変更可能である。
【0042】
また、補強リブ66は、被覆層68に限らず、接着剤等の他の固定方法によってテーパ状部60の外周面60Sに固定しても良い。
【0043】
図2に示されるように、筒身50は、高さ方向に分割された複数の筒身片50Pを有している。各筒身片50Pは、筒状に形成されている。これらの筒身片50Pを高さ方向に接続することにより筒身50が形成されている。本実施形態では、筒身50の下側筒身52及び上側筒身54が複数の筒身片50Pによってそれぞれ構成され、筒身50のテーパ状部60が1つの筒身片50Pによって構成されている。
【0044】
なお、本実施形態における複数の筒身片50Pは、筒身50を高さ方向に分割した複数の分割ピースを意味する。複数の分割ピースの形状及び大きさは、同一に限らず、異なっていても良い。また、本実施形態では、説明の便宜上、大きさ等が異なる複数の筒身片50Pに同じ符号を付している。
【0045】
(排気用塔状構造物の施工方法)
次に、本実施形態に係る排気用塔状構造物10の施工方法の一例について説明する。
【0046】
図9に示されるように、先ず、設置面12上に塔状体20を立てる。次に、塔状体20の隣に、台座部30と略同じ高さ(約同じ高さ)の仮設架台70を仮設する。また、台座部30及び仮設架台70に、搬送装置72を設置する。なお、仮設架台70は、架台の一例である。
【0047】
搬送装置72は、仮設架台70と台座部30とに亘る図示しないレールと、レールに移動可能に連結された搬送テーブル74と、レールに沿って搬送テーブル74を移動させるモータ等の図示しない駆動源とを有している。搬送テーブル74は、仮設架台70上から台座部30上へ移動(スライド)するとともに、台座部30上から仮設架台70上へ移動(スライド)可能とされている。
【0048】
なお、搬送装置72の移動機構は、適宜変更可能である。また、搬送装置72の駆動源は、必要に応じて設ければ良く、適宜省略可能である。さらに、仮設架台70は、本設の架台であっても良い。
【0049】
次に、図9に二点鎖線で示されるように、筒身50(図2参照)を構成する複数の筒身片50Pのうち最上段の筒身片50Pを、仮設架台70上の搬送テーブル74の上に載置する。この状態で、搬送テーブル74を台座部30上へスライドさせる。これにより、図9に実線で示されるように、台座部30上に最上段の筒身片50Pが配置される。
【0050】
次に、図10に示されるように、塔状体20の上部の連結ステージ42に取り付けられた電動チェーンブロック等の吊上げ装置80の吊り材82に、連結ブラケット84を介して最上段の筒身片50Pを取り付け、当該筒身片50Pを所定の高さまで吊り上げる。この状態で、搬送テーブル74を台座部30上から仮設架台70上へ移動させる。
【0051】
なお、図9図12では、複数の連結ステージ42のうち、吊上げ装置80が取り付けられる連結ステージ42のみを図示し、他の連結ステージ42の図示を省略している。
【0052】
次に、筒身50(図2参照)の上から2段目の筒身片50Pを搬送テーブル74の上に載置する。この状態で、搬送テーブル74を台座部30上へスライドさせる。これにより、図10に二点鎖線で示されるように、台座部30上に2段目の筒身片50Pが配置される。この状態で、最上段の筒身片50Pの下端部と2段目の筒身片50Pの上端部とを接合する。この際、吊上げ装置80によって最上段の筒身片50Pを降下させ、最上段の筒身片50Pと2段目の筒身片50Pとの接合部を適宜位置決めする。
【0053】
次に、接合された最上段及び2段目の筒身片50Pを吊上げ装置80によって所定高さまで吊り上げる。次に、上記の手順を繰り返すことにより、図11及び図12に示されるように、筒身50(図2参照)の最上段から最下段までの筒身片50Pを接合する。
【0054】
ここで、図11に示されるように、接合された複数の筒身片50Pを吊上げ装置80によって吊り上げる場合に、必要に応じて、筒身片50Pに取り付けられた連結ブラケット84を下方に配置された他の筒身片50Pに付け替える。この際、吊り上げる複数の筒身片50Pの重心G1よりも上側の筒身片50Pに連結ブラケット84を取り付ける。
【0055】
これと同様に、図12に示される例では、吊り上げる複数の筒身片50Pの重心G2よりも上側の筒身片50Pに連結ブラケット84を取り付ける。これにより、接合された複数の筒身片50Pをより安定した状態で吊り上げることができる。
【0056】
次に、形成された筒身50を吊上げ装置80によって吊り上げた状態で、搬送テーブル74を台座部30上から仮設架台70上へ移動させる。次に、吊上げ装置80によって筒身50を降下させ、台座部30の上に載置する。この状態で、図2に示されるように、塔状体20の複数の連結ステージ42に筒身50を連結する。また、必要に応じて、筒身50の下端部を台座部30に固定する。これにより、排気用塔状構造物10が形成される。
【0057】
次に、筒身50の下側筒身52(筒身50の下部)に複数の排気ダクト16(図1参照)を接続する。その後、仮設架台70を撤去する。
【0058】
このように本実施形態では、塔状体20に設けられた台座部30上で、複数の筒身片50Pを組み立てることにより筒身50を形成する。また、本実施形態では、台座部30の上方に吊り上げられた筒身片50Pと、当該筒身片50Pの下方に配置された他の筒身片50Pとを接合することにより、筒身50を組み立てる。
【0059】
ここで、複数の筒身片50Pを順に積み上げて筒身50を形成する場合、積み上げられた筒身片50Pの高さが所定値以上に達すると、その上にさらに筒身片50Pを積み上げることが困難になる。
【0060】
これに対して本実施形態では、前述したように、台座部30上で吊り上げられた筒身片50Pの下方に他の筒身片50Pを配置することにより、高い筒身50を容易に施工することができる。
【0061】
さらに、本実施形態では、台座部30の上方に吊り上げられた筒身片50Pの下方に、搬送装置72によって仮設架台70から他の筒身片50Pを搬送する。このように搬送装置72を用いることにより筒身片50Pの施工性が向上する。
【0062】
なお、排気用塔状構造物10の施工方法は、上記した方法に限らず、状況に応じて、工程を入れ替えても良いし、他の工程を追加しても良い。
【0063】
(効果)
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0064】
本実施形態に係る排気用塔状構造物10によれば、塔状体20内には、筒身50が配置されている。筒身50は、塔状体20に支持されている。この筒身50の下方には、利用スペース14が形成されている。より具体的には、利用スペース14は、筒身50の支持する台座部30の下方に形成されている。
【0065】
利用スペース14は、例えば、排気用塔状構造物10の施工時に、資材の搬入通路、資材の仮置き場、又は駐車場として利用され、若しくは排気用塔状構造物10の施工後に、メンテナンスペース、又は駐車場として利用される。
【0066】
このように本実施形態では、筒身50の下方に利用スペース14を形成することにより、筒身50から排気しつつ、敷地の有効活用を図ることができる。
【0067】
また、下側筒身52には、複数の排気ダクト16が接続されている。これにより、複数の排気ダクト16から下側筒身52に排ガスが排気される。この排ガスは、上側筒身54に沿って上昇し、排気口50Aから筒身50の外部に排気される。
【0068】
ここで、上側筒身54は、下側筒身52よりも細い。換言すると、下側筒身52は、上側筒身54よりも太い。このように排気ダクト16が接続される下側筒身52を太くすることにより、筒身50に接続可能な排気ダクト16の本数を確保することができる。
【0069】
また、前述したように、上側筒身54は、下側筒身52よりも細い。これにより、下側筒身52から上側筒身54へ流れる排ガスの流速が早くなるため、筒身50の排気効率が高められる。特に、本実施形態では、上側筒身54と下側筒身52との間に、テーパ状部60が設けられている。テーパ状部60は、下側筒身52側から上側筒身54側へ向かうに従って細くなっている。このテーパ状部60によって、複数の排気ダクト16から下側筒身52に排気された排ガスが上側筒身54に流れ易くなる。したがって、筒身50の排気効率がさらに高められる。
【0070】
このように実施形態では、筒身50に接続可能な排気ダクト16の本数を確保しつつ、筒身50の排気効率を高めることができる。
【0071】
また、筒身50は、FRP製とされている。これにより、例えば、筒身50の腐食が抑制されるため、筒身50の耐久性を高めることができる。また、本実施形態では、金属製の筒身50と比較して、筒身50の軽量化を図ることができる。
【0072】
ここで、テーパ状部60は、下側筒身52及び上側筒身54と比較して、地震時等の応力(曲げ応力)が大きくなり易い。このテーパ状部60をFRP製にすると、テーパ状部60に座屈等が発生する可能性がある。
【0073】
この対策として本実施形態では、テーパ状部60の外周面60Sに、下側筒身52側から上側筒身54側へ延びる金属製の複数の補強リブ66が設けられている。これにより、FRP製のテーパ状部60によって筒身50の軽量化等を図りつつ、金属製の補強リブ66によってテーパ状部60の座屈等の破損を効率的に抑制することができる。
【0074】
さらに、補強リブ66は、当該補強リブ66の上からテーパ状部60の外周面60Sを被覆する被覆層68によってテーパ状部60の外周面60Sに固定される。これにより、補強リブ66の腐食を抑制しつつ、FRP製のテーパ状部60に金属製の補強リブ66を容易に固定することができる。
【0075】
(変形例)
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0076】
上記実施形態では、筒身50の下方に、人が出入り可能な利用スペース14が形成されている。しかし、筒身50の下方には、空間の一例として、例えば人の出入りは難しいが、配管等を敷設可能な設備空間を形成しても良い。
【0077】
また、上記実施形態では、筒身50がFRP製とされている。しかし、筒身50は、FRP以外の樹脂製とされても良い。また、筒身50は、樹脂製に限らず、金属製であっても良い。
【0078】
また、上記実施形態では、筒身50に複数の排気ダクト16が接続されている。しかしながら、筒身50には、少なくとも1つの排気ダクト16を接続することができる。
【0079】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0080】
10 排気用塔状構造物
16 排気ダクト
52 下側筒身
54 上側筒身
60 テーパ状部
66 補強リブ
68 被覆層
図1
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