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  • 特許-熱融着性積層フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】熱融着性積層フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20240604BHJP
   B32B 9/02 20060101ALI20240604BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240604BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240604BHJP
   C08L 23/04 20060101ALI20240604BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20240604BHJP
   C09J 123/04 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B32B27/32
B32B9/02
B32B27/00 M
B65D65/40 D
C08L23/04
C09J7/35
C09J123/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020165420
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022057260
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000220099
【氏名又は名称】アールエム東セロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 和臣
(72)【発明者】
【氏名】澤田 峻一
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0065315(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0274892(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02886333(EP,A1)
【文献】特開2019-059511(JP,A)
【文献】特開2019-025897(JP,A)
【文献】特開2020-055645(JP,A)
【文献】国際公開第2018/163836(WO,A1)
【文献】特開2020-163631(JP,A)
【文献】特開2017-114037(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 65/40
C08L 23/04
C08L 23/10
C09J 7/35
C09J 123/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)熱融着層、(B)中間層、(C)ラミネート層、及び(D)基材層をこの順で有する積層フィルムであって、
(A)熱融着層が、2質量%以上の(a)バイオマス由来の低密度ポリエチレン、及び40質量%以上の(a)プロピレン重合体を含有し、
(B)中間層が、50質量%以上の(a)プロピレン重合体を含有し、
(C)ラミネート層が、50質量%以上の(a)プロピレン重合体を含有する、上記積層フィルム。
【請求項2】
(A)熱融着層、(B)中間層、及び(C)ラミネート層からなる積層フィルム部分の、DSC測定より得られる融解曲線より算出した100℃~170℃の融解熱量ΔHが50~87.5J/gである、請求項1に記載の積層フィルム
【請求項3】
(a)バイオマス由来の低密度ポリエチレンの分子量分布Mw/Mnが、4.3以上である、請求項1又は2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
(A)熱融着層が、(a)バイオマス由来の低密度ポリエチレン以外のエチレン系重合体を更に含有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の積層フィルムを含む蓋材と、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのうち少なくとも1種を含む本体部からなる収納容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン系の積層フィルムに関し、より具体的には蓋材として好適に用いられ、特にプラスチック容器等の被着体との組み合わせにおいて易開封性に優れるとともに、植物由来の樹脂を使用することにより環境負荷も低減された、積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
無菌米飯等の各種食品用の包装として、ボトル、カップ、ないしトレー状のプラスチック容器をプラスチック積層フィルムからなる蓋材でシールした包装が広く採用されている。このような包装には、流通経路に耐える機械的な強度、衛生性の保持ができるシール強度、使用時における開封性の良さなどが求められている。
蓋材にも使用されるプラスチック積層フィルムとして、石油由来の低密度ポリエチレン等を含有する熱融着層を有する積層フィルムが提案されているが(例えば特許文献1参照)、この様な積層フィルムは剥離強度等に優れる一方で、剥離強度が高くなり過ぎ場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-136151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記技術背景に鑑み、本発明の目的は、石油由来の低密度ポリエチレン等を含有する熱融着層を有する積層フィルムであって、熱融着性等の優れた特性を維持しながら、プラスチック容器等の被着体との組み合わせにおいて易開封性に優れる、積層フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討の結果、熱融着層、中間層、ラミネート層、及び基材層を有し、プラスチック容器等の被着体との組み合わせにおいて使用される積層フィルムにおいて、熱融着層に所定量のバイオマス由来の低密度ポリエチレンを添加することで、被着体との間の剥離強度が適切なものとなり、易開封性に優れた容器を実現しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、
[1]
(A)熱融着層、(B)中間層、(C)ラミネート層、及び(D)基材層をこの順で有する積層フィルムであって、(A)熱融着層が、2質量%以上の(a)バイオマス由来の低密度ポリエチレンを含有する、上記積層フィルム、
に関する。
【0006】
以下、[2]から[5]は、いずれも本発明の好ましい一態様又は一実施形態である。
[2]
(A)熱融着層、(B)中間層、及び(C)ラミネート層からなる積層フィルム部分の、DSC測定より得られる融解曲線より算出した100℃~170℃の融解熱量ΔHが50~87.5J/gである、[1]に記載の積層フィルム。
[3]
(a)バイオマス由来の低密度ポリエチレンの分子量分布Mw/Mnが、4.3以上である、[1]又は[2]に記載の積層フィルム。
[4]
(A)熱融着層が、(a)バイオマス由来の低密度ポリエチレン以外のエチレン系重合体を更に含有する、[1]から[3]のいずれか一項に記載の積層フィルム。
[5]
[1]から[4]のいずれか一項に記載の積層フィルムを含む蓋材と、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのうち少なくとも1種を含む本体部からなる収納容器。
【発明の効果】
【0007】
本発明の積層フィルムは、従来のポリオレフィン系積層フィルムの優れた特性を維持しながら、特にプラスチック容器との組み合わせにおける易開封性が大幅に向上するとともに、その製造等における環境負荷も低減されるなど、実用上高い価値を有する性質を、従来技術の限界を超えた高いレベルで兼ね備えたものであり、プラスチック容器の蓋材をはじめとする各種用途において、好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の1実施例におけるヒートシール強度の評価結果である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、(A)熱融着層、(B)中間層、(C)ラミネート層、及び(D)基材層、をこの順で有する積層フィルムであって、(A)熱融着層が、2質量%以上の(a)バイオマス由来の低密度ポリエチレンを含有する、上記積層フィルム、である。
すなわち、本発明の積層フィルムは、その(A)熱融着層に、所定量の(a)バイオマス由来の低密度ポリエチレンを含有する。
また、本発明の積層フィルムは、その(A)熱融着層に、更にエチレン系重合体を含有することが好ましい。
【0010】
(a)バイオマス由来の低密度ポリエチレン
本発明において用いられる、(a)バイオマス由来の低密度ポリエチレンは、バイオマス由来の原料を用いて製造したエチレンを重合して得られる低密度ポリエチレンである。(a)バイオマス由来の低密度ポリエチレンは、狭義の低密度ポリエチレンのみならず、線状低密度ポリエチレンも含めて指称するものである。前記低密度ポリエチレンおよび線状低密度ポリエチレンはいずれか一方を使用してもよいし、混合して使用することもできる。
ここで、「低密度ポリエチレン」とは、密度910~930kg/mのエチレン(共)重合体をいう。
低密度ポリエチレンとしては、高圧法低密度ポリエチレン等の、分岐度の高い分子構造を有するものであることが好ましい。
【0011】
(a)バイオマス由来の低密度ポリエチレンの密度は、910~930kg/m、より好ましくは、915~925kg/mである。
(b)バイオマス由来の低密度ポリエチレンのMFRには特に制限はないが、成形性等の観点から、好ましくは0.5~20g/10分、より好ましくは、1.0~15.0g/10分であり、さらに好ましくは1.5~10.0g/10分であり、特に好ましくは2.0~9.0.0g/10分である。
【0012】
(b)バイオマス由来の低密度ポリエチレンの分子量分布にも特に制限はないが、柔軟性、成形性等の観点から、分子量分布(重量平均分子量:Mw、と数平均分子量:Mn、との比:Mw/Mnで表示)が3.5以上であることが好ましく、3.7~10.0であることがより好ましく、さらに好ましくは3.8~9.0の範囲にある。このMw/Mnはゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定でき、より具体的には例えば本願実施例に記載の方法により測定することができる。
【0013】
(b)バイオマス由来の低密度ポリエチレンは、示差走査熱量計(DSC)の昇温速度10℃/分で測定した吸熱曲線から求めた鋭いピークが1個ないし複数個あり、該ピークの最高温度、すなわち融点が90~140℃であることが好ましく、さらに好ましくは100~130℃の範囲にある。
【0014】
(a)バイオマス由来の低密度ポリエチレンは、市販品でもよく、例えば、Braskem社から製造販売されているものを用いることができる。具体的な銘柄としては、SPB681等を好適に使用することができる。
本発明において用いられる、(a)バイオマス由来の低密度ポリエチレンは、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるものである。バイオマス由来のエチレンには、下記の製造方法により得られたものを用いることが好ましいが、それには限定されない。原料であるモノマーとしてバイオマス由来のエチレンを用いているため、重合されてなる低密度ポリエチレンはバイオマス由来となる。なお、ポリエチレンの原料モノマーは、バイオマス由来のエチレンを100質量%含むものでなくてもよく、バイオマス由来ではないエチレンや、エチレン以外の原料モノマーを含んでいてもよい。
【0015】
(a)バイオマス由来の低密度ポリエチレンの原料となるバイオマスエチレンの製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法により得ることができる。以下、バイオマスエチレンの製造方法の一例を説明する。
【0016】
バイオマスエチレンは、バイオマス由来のエタノールを原料として製造することができる。特に、植物原料から得られるバイオマス由来の発酵エタノールを用いることが好ましい。植物原料は、特に限定されず、従来公知の植物を用いることができる。例えば、トウモロコシ、サトウキビ、ビート、およびマニオクを挙げることができる。
【0017】
本発明において、バイオマス由来の発酵エタノールとは、植物原料より得られる炭素源を含む培養液にエタノールを生産する微生物またはその破砕物由来産物を接触させ、生産した後、精製されたエタノールを指す。培養液からのエタノールの精製は、蒸留、膜分離、および抽出等の従来公知の方法が適用可能である。例えば、ベンゼン、シクロヘキサン等を添加し、共沸させるか、または膜分離等により水分を除去する等の方法が挙げられる。
バイオマスエチレンを得るために、この段階で、エタノール中の不純物総量が1ppm以下にする等の高度な精製をさらに行ってもよい。
【0018】
エタノールの脱水反応によりエチレンを得る際には通常触媒が用いられるが、この触媒は、特に限定されず、従来公知の触媒を用いることができる。プロセス上有利なのは、触媒と生成物の分離が容易な固定床流通反応であり、例えば、γ-アルミナ等が好ましい。
この脱水反応は吸熱反応であるため、通常加熱条件で行う。商業的に有用な反応速度で
反応が進行すれば、加熱温度は限定されないが、好ましくは100℃以上、より好ましくは250℃以上、さらに好ましくは300℃以上の温度が適当である。上限も特に限定されないが、エネルギー収支および設備の観点から、好ましくは500℃以下、より好ましくは400℃以下である。
反応圧力も特に限定されないが、後続の気液分離を容易にするため常圧以上の圧力が好ましい。工業的には触媒の分離の容易な固定床流通反応が好適であるが、液相懸濁床、流動床等でもよい。
【0019】
エタノールの脱水反応においては、原料として供給するエタノール中に含まれる水分量によって反応の収率が左右される。一般的に、脱水反応を行う場合には、水の除去効率を考えると水が無いほうが好ましい。しかしながら、固体触媒を用いたエタノールの脱水反応の場合、水が存在しないと他のオレフィン、特にブテンの生成量が増加する傾向にあることが判明した。恐らく、少量の水が存在しないと脱水後のエチレン二量化を押さえることができないためと推察している。許容される水の含有量の下限は、0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上必要である。上限は特に限定されないが、物質収支上および熱収支の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0020】
このようにしてエタノールの脱水反応を行うことによりエチレン、水および少量の未反応エタノールの混合部が得られるが、常温において約5MPa以下ではエチレンは気体であるため、これら混合部から気液分離により水やエタノールを除きエチレンを得ることができる。この方法は公知の方法で行えばよい。
気液分離により得られたエチレンはさらに蒸留され、このときの操作圧力が常圧以上であること以外は、蒸留方法、操作温度、および滞留時間等は特に制約されない。
【0021】
原料がバイオマス由来の発酵エタノールの場合、得られたエチレンには、エタノール発酵工程で混入した不純物であるケトン、アルデヒド、およびエステル等のカルボニル化合物ならびにその分解物である炭酸ガスや、酵素の分解物・夾雑物であるアミンおよびアミノ酸等の含窒素化合物ならびにその分解物であるアンモニア等が極微量含まれる。ポリエチレンの製造や使用においては、これら極微量の不純物が問題となるおそれがあるので、精製により除去しても良い。精製方法は、特に限定されず、従来公知の方法により行うことができる。好適な精製操作としては、例えば、吸着精製法をあげることができる。用いる吸着剤は特に限定されず、従来公知の吸着剤を用いることができる。例えば、高表面積の材料が好ましく、吸着剤の種類としては、バイオマス由来の発酵エタノールの脱水反応により得られるエチレン中の不純物の種類・量に応じて選択される。
【0022】
なお、エチレン中の不純物の精製方法として苛性水処理を併用してもよい。苛性水処理をする場合は、吸着精製前に行うことが望ましい。その場合、苛性処理後、吸着精製前に水分除去処理を施す必要がある。
【0023】
バイオマス由来のポリエチレンの原料であるモノマーは、化石燃料由来のエチレンおよび/またはα-オレフィンをさらに含んでもよいし、バイオマス由来のα-オレフィンをさらに含んでもよい。
【0024】
上記のバイオマス由来のα-オレフィンは、炭素数は特に限定されないが、通常、炭素数3~20のものを用いることができ、ブチレン、ヘキセン、またはオクテンであることが好ましい。ブチレン、ヘキセン、またはオクテンであれば、バイオマス由来の原料であるエチレンの重合により製造することが可能となるからである。また、このようなバイオマス由来のα-オレフィンを含むことで、重合されてなるポリオレフィンはアルキル基を分岐構造として有するため、単純な直鎖状のものよりも柔軟性に富むものとすることができる。
【0025】
(a)バイオマス由来の低密度ポリエチレンが、エチレン単独重合体であることが好ましい。バイオマス由来の原料であるエチレンを用いることで、理論上100%バイオマス由来の成分により製造することが可能となるからである。
【0026】
(a)バイオマス由来の低密度ポリエチレン中のバイオマス由来のエチレン濃度(以下、「バイオマス度」ということがある)は、放射性炭素(14C)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量を測定した値である。大気中の二酸化炭素には、14Cが一定割合(105.5pMC)で含まれているため、大気中の二酸化炭素を取り入れて成長する植物、例えばトウモロコシ中の14C含有量も105.5pMC程度であることが知られている。また、化石燃料中には14Cが殆ど含まれていないことも知られている。したがって、ポリエチレン中の全炭素原子中に含まれる14Cの割合を測定することにより、バイオマス由来の炭素の割合を算出することができる。本発明においては、ポリエチレン中の14Cの含有量をP14Cとした場合の、バイオマス由来の炭素の含有量Pbioは、以下のようにして求めることができる。
bio(%)=P14C/105.5×100
【0027】
本発明で用いることのできる(a)バイオマス由来の低密度ポリエチレンにおいては、理論上、ポリエチレンの原料として、全てバイオマス由来のエチレンを用いれば、バイオマス由来のエチレン濃度は100%であり、バイオマス由来のポリエチレンのバイオマス度は100%となる。なお、化石燃料由来の原料のみで製造された化石燃料由来のポリエチレン中のバイオマス由来のエチレン濃度は0%であり、化石燃料由来のポリエチレンのバイオマス度は0%となる。
【0028】
本発明において、(a)バイオマス由来の低密度ポリエチレンは、バイオマス度が100%である必要はない。(a)バイオマス由来の低密度ポリエチレンの一部にでもバイオマス由来の原料が用いられていれば、従来に比べて化石燃料の使用量を削減できるからである。
【0029】
本発明で用いることができる(a)バイオマス由来の低密度ポリエチレンにおいて、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合方法は、特に限定されず、従来公知の方法により行うことができる。重合温度や重合圧力は、重合方法や重合装置に応じて、適宜調節するのがよい。重合装置についても特に限定されず、従来公知の装置を用いることができるが、高分岐度の分子構造が得られることから、高圧法の重合装置を用いることが好ましい。
重合触媒として、チーグラー触媒、フィリップス触媒等のマルチサイト触媒や、メタロセン系触媒等のシングルサイト触媒を用いて、気相重合、スラリー重合、溶液重合、および高圧イオン重合のいずれかの方法により、1段または2段以上の多段で行うことが好ましい。
【0030】
分子量分布が広く柔軟性や成形性に優れたバイオマスポリエチレンを得る観点からは、チーグラー触媒、フィリップス触媒等のマルチサイト触媒を用いることが好ましい。
好ましいチーグラー触媒としては、エチレン、α-オレフィンの配位重合に用いるチーグラー触媒として一般的に知られているものでよく、例えばチタン化合物および有機アルミニウム化合物を含む触媒であり、ハロゲン化チタン化合物と有機アルミニウム化合物からなる触媒、チタニウム、マグネシム、塩素等からなる固体触媒成分と有機アルミニウム化合物からなる触媒等を例示することができる。このような触媒としては、より具体的には、無水マグネシウムジハロゲン化物のアルコール予備処理物と有機金属化合物との反応生成物にチタン化合物を反応させて得られる触媒成分(a)と有機金属化合物(b)からなる触媒、マグネシウム金属と水酸化有機化合物またはマグネシウムなどの酸素含有有機化合物、遷移金属の酸素含有有機化合物、およびアルミニウムハロゲン化物を反応させて得られる触媒成分(A)と有機金属化合物の触媒成分(B)とからなる触媒、(i)金属マグネシウムと水酸化有機化合物、マグネシウムの酸素含有有機化合物、およびハロゲン含有化合物から選んだ少なくとも一員、(ii)遷移金属の酸素含有有機化合物およびハロゲン含有化合物から選ばれた少なくとも一員、(iii)ケイ素化合物を反応させて得られる反応物と、(iv)ハロゲン化アルミニウム化合物を反応させて得られる固体触媒成分(A)と有機金属化合物の触媒成分(B)とからなる触媒等を例示することができる。
【0031】
また、フィリップス触媒としては、エチレン、α-オレフィンの配位重合に用いるフィリップス触媒として一般的に知られているものでよく、たとえば酸化クロム等のクロム化合物を含む触媒系であり、具体的には、シリカ、アルミナ、シリカ-アルミナ、シリカ-チタニア等の固体酸化物に、三酸化クロム、クロム酸エステル等のクロム化合物を担持した触媒を例示することができる。
【0032】
(a)バイオマス由来の低密度ポリエチレンが線状低密度ポリエチレンである場合、当該線状低密度ポリエチレンは、通常、エチレンとαーオレフィンとの共重合体であるが、重合とともにエチレンの多量化を進行させることで、エチレンのみを原料として製造することもできる。
【0033】
α-オレフィンとしては、炭素数が3~20の化合物を用いることができ、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン等が挙げられ、これらの混合物を用いてもよい。α-オレフィンは、好ましくは、炭素数4、6又は8の化合物若しくはこれらの混合物であり、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン若しくはこれらの混合物である。
【0034】
バイオマス由来の線状低密度ポリエチレンは、市販品でもよく、例えば、Braskem社から製造販売されているものを用いることができる。具体的な銘柄としては、SLH218等を好適に使用することができる。
もよい。
【0035】
線状低密度ポリエチレンは、チーグラー触媒等のマルチサイト触媒や、メタロセン触媒等のシングルサイト触媒をはじめとする従来公知の触媒を用いた従来公知の製造法により製造することができる。
線状低密度ポリエチレンは、シングルサイト触媒を用いて好ましく製造することもできるが、分子量分布(Mw/Mn)が広い、例えば3.5以上である線状低密度ポリエチレンを得る観点からは、マルチサイト触媒を用いることが好ましい。
【0036】
(a)バイオマス由来の低密度ポリエチレンは、1種類を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。また、他のエチレン系重合体をはじめとする、他のポリマーと共に用いてもよい。
【0037】
(a)バイオマス由来の低密度ポリエチレンには、本発明の目的を損なわない範囲で、通常オレフィン重合体に添加される種々公知の添加剤、例えば、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤(滑剤)等を必要に応じて配合することができる。
【0038】
プロピレン重合体
本発明の積層フィルムは、その一部の層又は全部の層が、プロピレン重合体を含有することが好ましい。プロピレン重合体は、軽量、高耐熱性で、比較的低コストなので、本発明の積層フィルムを、軽量、高耐熱性で、比較的低コストなものとすることができる。
本態様において使用されるプロピレン重合体は、一般にポリプロピレンの名称で製造・販売されている樹脂で、通常、密度が890~930kg/m程度のプロピレンの単独重合体若しくは、プロピレン共重合体、すなわち、プロピレンと共に、他の少量のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のコモノマーから導かれる共重合体である。共重合体である場合には、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよいが、ブロック共重合体が特に好ましい。プロピレンの共重合体である場合における他のα-オレフィンとしては、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、4-メチル-1-ペンテンなどの、エチレンと炭素原子数が4~20程度のα-オレフィンを例示することができる。このような他のα-オレフィンは、1種単独で又は2種以上のα-オレフィンを組み合わせて共重合させてもよい。
【0039】
これらのプロピレン重合体の中でも、得られる積層フィルムの耐熱性や他の樹脂との相溶性等のバランスを考慮し、示差走査熱量計(DSC)に基づく融点が110~170℃、とくに115~165℃の範囲にあるプロピレン重合体が好ましく用いられる。
【0040】
本態様において用いられるプロピレン重合体は単独で、又はエチレン系重合体、エチレン・α―オレフィンランダム共重合体、粘着付与樹脂等の他の樹脂とのブレンドで、フィルム形成能を有する限り、メルトフローレート(MFR)(ASTM D1238、230℃、2160g荷重)は特に限定はされないが、押出加工性等の点から、通常、0.01~100g/10分、好ましくは0.1~70g/10分の範囲にある。
【0041】
本態様において用いられるプロピレン重合体としては、2種以上のプロピレン重合体を組合せて使用することもできる。
【0042】
本態様において用いられるプロピレン重合体は、種々公知の製造方法、具体的には、例えば、チーグラー・ナッタ系触媒やシングルサイト触媒のようなオレフィン重合用触媒を用いて製造することができる。特にはシングルサイト触媒を用いて製造することができる。シングルサイト触媒は、活性点が均一(シングルサイト)である触媒であり、例えばメタロセン触媒(いわゆるカミンスキー触媒)やブルックハート触媒などがあげられる。メタロセン触媒は、メタロセン系遷移金属化合物と、有機アルミニウム化合物及び上記メタロセン系遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物とからなる触媒であり、無機物に担持されていてもよい。
【0043】
プロピレン重合体には、本発明の目的に反しない限りにおいて、シリカ、タルクなどの無機充填剤、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、顔料等の各種添加剤を配合することができる。
【0044】
本発明の積層フィルムは、以下に説明する(A)熱融着層、(B)中間層、(C)ラミネート層、及び(D)基材層を有する。
【0045】
(A)熱融着層
本発明の積層フィルムを構成する(A)熱融着層は、本発明の積層フィルムを用いて包装フィルム、包装袋等を形成する際に、最内層とされ、他のフィルムと融着されるケースが多い。このため、高いシール強度が得られるように、低融点の樹脂を用いることが好ましい。低融点の樹脂の好ましい例としては、高密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体等のエチレン系重合体;脂肪族系炭化水素樹脂、脂環族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、ポリテルペン系樹脂、ロジン類、スチレン系樹脂、クマロン・インデン樹脂等の粘着性付与樹脂、等を挙げることができる。上記エチレン系重合体は、コストや、入手容易性の観点から、(a)バイオマス由来の低密度ポリエチレン以外のエチレン系重合体、例えば石油由来のエチレン系重合体であることが好ましい。
(A)熱融着層中の低融点の樹脂の含有量は、10~50質量%であることが好ましく、15~35質量%であることがより好ましく、20~30質量%であることがさらに好ましい。
(A)熱融着層中の石油由来のエチレン系重合体の含有量は、5~25質量%であることが好ましく、8~20質量%であることがより好ましく、10~15質量%であることがさらに好ましい。
【0046】
一方、耐熱性や軽量性の観点から(B)中間層がプロピレン重合体を含有する場合には、(B)中間層との積層強度等の観点から(A)熱融着層もプロピレン重合体を含有することが好ましい。この場合のプロピレン重合体には特に制限はないが、(B)中間層に使用するプロピレン重合体と同じ又は類似する種類や物性のプロピレン重合体を使用することが好ましい。
(A)熱融着層中のプロピレン重合体の含有量は、40質量%以上であることが好ましく、45~59質量%であることがより好ましい。
【0047】
(A)熱融着層は、(a)バイオマス由来の低密度ポリエチレンを2質量%以上含有する。
(A)熱融着層が2質量%以上の(a)バイオマス由来の低密度ポリエチレンを含有することで、プラスチック容器等の被着体との間のヒートシール強度が適切なものとなり、易開封性に優れた容器を実現できるという顕著な技術的効果が実現される。また、石油由来の原料の使用量を低減することで、環境負荷を軽減することができる。
(A)熱融着層における(a)バイオマス由来の低密度ポリエチレンの含有量は、2.0~20質量%であることが好ましく、2.1~15質量%であることが特に好ましい。
【0048】
(a)バイオマス由来の低密度ポリエチレンの含有量は、例えば、(A)熱融着層を製造する際の樹脂組成物の配合を調整することによって適宜増減させることができる。
製造後の(A)熱融着層の(a)バイオマス由来の低密度ポリエチレンの含有量は、例えば、放射性炭素(14C)測定によってフィルム中のバイオマス由来の炭素の含有量を測定し、この測定結果と(a)バイオマス由来の低密度ポリエチレン中のバイオマス由来の炭素の含有量とから計算することができる。
【0049】
(A)熱融着層の厚みには特に制限はないが、易開封性等の観点から、0.2μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましく、0.8μm以上であることが特に好ましい。
一方、糸引き等の観点からは、20.0μm以下であることが好ましく、15.0μm以下であることがより好ましく、10.0μm以下であることが特に好ましい。
【0050】
(B)中間層
本発明の積層フィルムを構成する(B)中間層の成分には特に制限はないが、積層フィルムの強度、耐熱性、軽量性等の観点から、プロピレン重合体を含有することが好ましい。また、耐衝撃性を一層向上させ、(A)熱融着層との積層強度を向上させる観点から、(a)バイオマス由来の低密度ポリエチレンを含有することが好ましい。
【0051】
プロピレン重合体は、耐熱性が高く、軽量で、低コストなので、これを含有することで(B)中間層を、耐熱性が高く、軽量で、低コストなものとすることができる。
更に、層間の親和性の点から、(B)中間層にプロピレン重合体を用いると、他の(A)熱融着層、(C)ラミネート層、(D)基材層にもプロピレン重合体を使用し易くなり、積層フィルム全体を耐熱性が高く、軽量で、低コストなものとすることができる。
(B)中間層における(a)プロピレン重合体の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが特に好ましい。
【0052】
本発明の積層フィルムを構成する各層のうち、(A)熱融着層は適切なシール強度が得られるよう設計することが好ましく、(C)ラミネート層は(D)基材層等との間のラミネート強度等を考慮して設計することが好ましいのに対して、(B)中間層はその様な制約が比較的少ないので、機械的性質等、本発明の積層フィルム全体に所望の物性、性能を付与することを優先して設計することができる。この場合、(B)中間層の厚みを、(A)熱融着層の厚み及び(C)ラミネート層の厚みよりも大きなものとすることが好ましく、(A)熱融着層の厚み及び(C)ラミネート層の厚みの和よりも大きなものとすることが特に好ましい。
なお、(B)中間層の厚みは、10~85μmであることが好ましく、より好ましくは15~80μmの範囲にある。
【0053】
環境負荷低減等の観点から、(B)中間層は、(a)バイオマス由来の低密度ポリエチレンを含有していてもよい。(B)中間層は、(a)バイオマス由来の低密度ポリエチレンを1質量%以上含有することが好ましく、3~25質量%含有することがより好ましく、5~20質量%含有することが特に好ましい。
【0054】
(C)ラミネート層
本発明の積層フィルムを構成する(C)ラミネート層は、後述の(D)基材層と積層することができる。従って、(C)ラミネート層は、(D)基材層との間のラミネート強度等を考慮して設計することが好ましい。
例えば、(D)基材層と同種の材料を使用することが好ましく、したがって(D)基材層に好ましく用いられる、ポリプロピレン系の材料やポリエステル系の材料を使用することが好ましい。
また、他の層との間のラミネート強度を更に向上するため、(C)ラミネート層の表面((B)中間層と積層する面とは反対側の面)に、コロナ処理、粗面化処理等の処理を行ってもよい。
【0055】
(B)中間層がプロピレン重合体を含有する場合には、(B)中間層との積層強度の観点から(C)ラミネート層もプロピレン重合体を含有することが好ましい。
より具体的には、((C)ラミネート層における(a)プロピレン重合体の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが特に好ましい。
【0056】
環境負荷低減等の観点から、(C)ラミネート層は、(a)バイオマス由来の低密度ポリエチレンを含有していてもよい。(C)ラミネート層における(a)バイオマス由来の低密度ポリエチレンの含有量は、0.5質量%以上であることが好ましく、1~20質量%であることがより好ましく、2~10質量%であることが特に好ましい。
【0057】
(C)ラミネート層の厚みには特に制限はないが、1~20μmであることが好ましく、より好ましくは3~15μmの範囲にある。
【0058】
(A)熱融着層、(B)中間層、及び(C)ラミネート層のいずれも、本発明の目的に反しない限りにおいて、(a)バイオマス由来の低密度ポリエチレン、(b)バイオマス由来の線状低密度ポリエチレン、石油由来のエチレン系重合体、及びプロピレン重合体以外の、各種添加材、充填材、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤、核剤、難燃剤、顔料、染料、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、マイカ、タルク、クレー、抗菌剤、防曇剤等を添加することができる。さらにまた、その他の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴム類、炭化水素樹脂、石油樹脂等を本発明の目的に反しない範囲で配合してもよい。
【0059】
(A)熱融着層、(B)中間層、及び(C)ラミネート層からなる積層フィルム部分
本発明の積層フィルムを構成する、(A)熱融着層、(B)中間層、及び(C)ラミネート層からなる積層フィルム部分においては、好ましくは(B)中間層を介して、(C)ラミネート層と(A)熱融着層とが積層されるが、それ以外の層が存在していてもよい。
【0060】
上記の積層フィルム部分は、種々公知のフィルム成形方法、例えば、予め、(C)ラミネート層、(B)中間層、及び(A)熱融着層となるフィルムをそれぞれ成形した後、当該フィルムを貼り合せて積層フィルムとする方法、多層ダイを用いて(B)中間層及び(A)熱融着層からなる複層フィルムを得た後、当該(B)中間層面に、(C)ラミネート層を押出して積層フィルムとする方法、多層ダイを用いて(C)ラミネート層及び(B)中間層からなる複層フィルムを得た後、当該(B)中間層面に、(A)熱融着層を押出して積層フィルムとする方法、あるいは、多層ダイを用いて(C)ラミネート層、(B)中間層及び(A)熱融着層からなる積層フィルムを得る方法などを採用することができる。
【0061】
また、フィルム成形方法は、種々公知のフィルム成形方法、具体的には、T-ダイキャストフィルム成形方法、インフレーションフィルム成形方法を採用し得る。
上記の積層フィルム部分及びそれを構成する各層は、延伸されていないフィルム(無延伸フィルム)であっても、延伸フィルムであってもよい。
【0062】
上記の積層フィルム部分の厚さには特に限定はされないが、実用的な強度を確保する等の観点から、5μm以上であり、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上である。一方、例えば(D)基材層と積層された後においても実用的な可撓性を有する等の観点からは、通常100μm以下であり、好ましくは90μm以下、より好ましくは80μm以下である。
【0063】
上記の積層フィルム部分は、(A)熱融着層、並びに好ましくは(B)中間層、及び/又は(C)ラミネート層、に(a)バイオマス由来の低密度ポリエチレンを含有することで、製造における化石燃料の使用量を低減し、環境負荷を低減することができる。
積層フィルム部分のバイオマス度は、各層のバイオマス度を各層の重量で加重平均して計算することができる。
積層フィルム部分のバイオマス度は、各層のバイオマス度を調整することで適宜増減することができ、各層のバイオマス度は、各層に使用する樹脂のバイオマス度及びその使用量を調整することで適宜増減することができる。
上記の積層フィルム部分のバイオマス度は、、0.01~0.58質量%であることが好ましく、0.03~0.50質量%であることがより好ましく、0.05~0.45質量%であることがさらに好ましく、0.07~0.40質量%であることがさらに好ましい
【0064】
上記の積層フィルム部分の、DSC測定より得られる融解曲線より算出した100℃~170℃の融解熱量ΔHは、50J/g以上、87.5J/g未満であることが好ましい。
100℃~170℃の融解熱量ΔHが上記範囲にあることで、被着体との間の剥離強度が一層適切なものとなり、易開封性を一層効果的に向上させることができる。
DSCによる融解曲線の測定、及び当該融解曲線からの100℃~170℃の融解熱量ΔHの算出は、従来公知の方法により行うことができ、より具体的には、例えば本願実施例記載の方法により行うことができる。
100℃~170℃の融解熱量ΔHは、60~87.5J/gであることがより好ましく、70~87.5J/gであることがより好ましく、80~87.5J/gであることがさらに好ましく、83~87.5J/gであることが特に好ましい。。
100℃~170℃の融解熱量ΔHは、(a)バイオマス由来の低密度ポリエチレン、石油由来ポリエチレン等を添加する等してフィルムの結晶性を低下させることで減少させることができる。
【0065】
上記の積層フィルム部分は延伸フィルムであっても無延伸フィルムであってもよいが、
機械的物性の向上の観点からは、延伸フィルムであることが好ましく、二軸延伸フィルムであることが特に好ましい。
二軸延伸は、逐次二軸延伸、同時二軸延伸、多段延伸等の方法が適宜採用される。
二軸延伸の条件としては、公知の二軸延伸フィルムの製造条件、例えば、逐次二軸延伸法では、縦延伸温度を100℃~145℃、延伸倍率を4~7倍の範囲、横延伸温度を150~190℃、延伸倍率を8~11倍の範囲とすることが挙げられる。
【0066】
(D)基材層
上記の積層フィルム部分を、その(C)ラミネート層において、(D)基材層と積層することで、本発明の積層体を得ることができる。
【0067】
(D)基材層には特に制限はなく、例えば通常プラスチック包装に使用されるフィルムを、好適に使用することができる。
好ましい(D)基材層の材質としては、例えば、結晶性ポリプロピレン、結晶性プロピレン-エチレン共重合体、結晶性ポリブテン-1、結晶性ポリ4-メチルペンテン-1、低-、中-、或いは高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)等のポリオレフィン類;ポリスチレン、スチレン-ブタジエン共重合体等の芳香族ビニル共重合体;ポリ塩化ビニル、塩化ビニリデン樹脂等のハロゲン化ビニル重合体;アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合体の如きニトリル重合体;ナイロン6、ナイロン66、パラまたはメタキシリレンアジパミドの如きポリアミド類;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリテトラメチレンテレフタレート等のポリエステル類;各種ポリカーボネート;ポリオキシメチレン等のポリアセタール類等の熱可塑性樹脂から構成されたプラスチックフィルムを挙げることができる。また、包装する内容物が酸素に敏感なものの場合には、上記フィルムに金属酸化物等を蒸着したフィルム、或いは有機化合物を被覆したフィルムや、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂からなる層を設けてもよい。
これらの材料からなるプラスチックフィルムは、未延伸、一軸延伸、或いは二軸延伸して用いられる。
【0068】
(D)基材層として、これらのプラスチックフィルムを単層で、或いは、二種以上を積層したものとして使用することができ、また、これらのプラスチックフィルムの一種、或いは、二種以上と、アルミニウム等の金属箔、紙、セロファン等を貼合わせて構成することもできる。
好ましい(D)基材層として、例えば、延伸ナイロンフィルム、延伸ポリエステルフィルムからなる単層フィルム、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンフィルムとPETを積層した二層構成のフィルム、PET/ナイロン/ポリエチレンを積層した三層構成のフィルム等が挙げられる。これらの積層フィルムの製造に際しては、各層間に必要に応じて接着剤、アンカー剤を介在させることもできる。また、デザインを表現するインキ層を設けてもよい。
【0069】
(D)基材層を(C)ラミネート層に積層する方法には特に制限はないが、例えば押出しラミネート等により(C)ラミネート層に(D)基材層を直接積層することができる。また、ドライラミネート等により接着剤を介して(C)ラミネート層に(D)基材層を積層してもよい。接着剤としては、ウレタン系接着剤、酸変性ポリオレフィン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリエーテル系接着剤、ポリアミド系接着剤等、通常のものを使用することができる。
(D)基材層の厚さは任意に設定することができるが、通常は、5~1000μm、好ましくは9~100μmの範囲から選択される。
【0070】
上記(A)から(D)層が積層されてなる本発明の積層フィルムは、各種用途において好ましく使用され、特に包材として使用するのに適している。
【0071】
その様な包材の好ましい例として、蓋材を挙げることができる。すなわち、本発明の積層フィルムは、(A)熱融着層を容器側の最内層として用いる容器用の蓋材として用いることができる。
容器蓋材として用いる場合は、本発明の積層フィルムをそのまま蓋材として用いても良いし、(D)基材層等に印刷して用いても良い。また、用途によっては予め容器形状に合わせてカットして蓋材にしてもよい。
【0072】
本発明の積層フィルムは、(A)熱融着層において各種被着体に熱融着させることにより熱シール層を形成させることができる。このような被着体としてプロピレン重合体、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等を例示することができる。これら被着体は、フィルム、シート、トレー、カップ、ボトル等、種々の形状のものであることができる。この中では特にプロピレン重合体を被着体とすると、熱シール層の密封性、易開封性、耐熱性、耐油性などに優れており好ましい。
かかるプロピレン重合体は、本発明の積層体において好ましく用いられる上記のプロピレン重合体と同一の範疇のものであるが、個々の物性は同一であっても異なっていてもよい。例えばプロピレン重合体からなる被着体においては、被包装材料に合わせてプロピレン重合体を公知の方法でフィルム、シート、トレー、カップ、ボトル等の種々の形状に成形したものを使用することができる。フィルム若しくはシートの場合は、本発明の積層フィルムと同様な方法で製造し得る。トレー若しくはカップの場合は、一旦上記方法でシートを製造した後、真空成形、圧空成形等の熱成形によりトレー、カップ等の容器とすることにより製造し得る。また、カップあるいはボトルの場合は射出成形、射出中空成形(インジェクションブロー)、中空成形等により容器として成形し得る。
【0073】
本発明の積層フィルムを包装材料として使用する場合、積層フィルムそのものを、例えば、折りたたんで三方シールしたり、2枚の積層フィルムを四方シールして包装体としてもよい。
その様な包装体の好適な一例として、上記蓋材とポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのうち少なくとも1種を含む容器本体部からなる包装容器を挙げることができる。
包装容器への収納物には特に制限はないが、食品、医薬品、医療器具、日用品、雑貨等の包装に好ましく用いることができる。本発明の積層フィルムによりもたらされる適切なレベルの易開封性を活かし、易開封性が強く求められる無菌米飯用の包装容器として、特に好適に用いられる。
例えば、本発明のフィルムをポリプロピレンシートに対してヒートシール温度180℃で積層した場合の、ヒートシール強度は、22N/15mm以下であることが好ましい。
【実施例
【0074】
以下、実施例/比較例を参照しながら、本発明を具体的に説明する。なお、本発明はいかなる意味においても、以下の実施例によって限定されるものではない。
【0075】
実施例/比較例における物性、特性の評価は、以下の方法により行った。
(1)分子量分布(Mw/Mn)
下記の条件で、ポリマー試料を前処理後、GPCで分子量を測定し、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)を分子量分布とした。
i)前処理
試料(30mg)にGPC測定用移動相(o-ジクロロベンゼン)20mLを加えて145℃で振とう溶解し、得られた溶液を孔径が1.0μmの焼結フィルタで熱ろ過したものをGPC測定に供した。
ii)GPC
装置:東ソー株式会社製、ゲル浸透クロマトグラフHLC-8321
カラム:東ソー株式会社製、内径7.5mm×30cm、4本(TSKgel GMH6-HT:2本、及びTSKgel GMH6-HTL:2本)
カラム温度:140℃
検出器:示差屈折計
流量:1mL/min
サンプリング間隔:0.5秒
(2)融解熱量
示差走査熱量計(DSC)としてティー・エイ・インスツルメント社製Q100を用い、試料約5mgを精秤し、JISK7121に準拠し、窒素ガス流入量:50ml/分の条件下で、-50℃から加熱速度:10℃/分で250℃まで昇温して熱融解曲線を測定し、得られた熱融解曲線の100~170℃における試料の結晶融解熱量ΔHを求めた。
【0076】
(3)ヒートシール強度
厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタ-トフィルム(PET)である基材層(D)に実施例/比較例の積層フィルムの(C)ラミネート層を張り合わせたフィルムを作製し、次いで当該フィルムの(A)熱融着層を厚さ300μmのポリプロピレンシ-トに、ヒートシール温度を130℃から200℃の範囲で変化させ、幅5mmのシ-ルバ-を用い、0.2MPaの圧力で1秒間シ-ルした後放冷し、測定用サンプルを作成した。サンプルより15mm幅の試験片を切り取り、クロスへッド速度500mm/分でヒ-トシ-ル部を剥離し、その強度をそのヒートシール温度でのヒ-トシ-ル強度(N/15mm)とした。
【0077】
実施例/比較例で用いた樹脂等の各構成成分の詳細は、以下のとおりである。
・プロピレン-エチレンブロック共重合体(b-PP)
MFR(2.16kg、230℃):7.0g/10分
密度: 900kg/m
融点:163℃
・プロピレン・エチレン・1-ブテンランダム共重合体(r-PP)
エチレン含有量:3.6モル%(2.4重量%)
1-ブテン含有量:1.9モル%(2.5重量%)
密度:910kg/m
メルトフローレート(MFR)(2.16kg、230℃):7.2g/10分
融点:143℃。
・プロピレン単独重合体(h-PP)
MFR(2.16kg、230℃):7g/10分
密度:910kg/m
融点:161℃
・高密度ポリエチレン(HDPE)
密度:954kg/m
MFR(2.16kg、190℃):1.1g/10分
融点:132℃
・エチレン・1-ブテンランダム共重合体(EBR)
エチレン含有量:89.1モル%
結晶化度:10%
密度:886kg/m
MFR(2.16kg、190℃):4.0g/10分
・エチレン・プロピレン共重合体(EPR)
エチレン含有量:82.6モル%
密度:870kg/m
MFR(2.16kg、190℃):2.9g/10分
・粘着付与樹脂
水素添加芳香族炭化水素樹脂
環球法軟化点:115℃
・バイオマス由来の線状低密度ポリエチレン(B-LLDPE)
MFR(2.16kg、190℃):2.3g/10min
密度:916kg/m
分子量分布(Mw/Mn):4.12
・バイオマス由来の低密度ポリエチレン(B-LDPE)
MFR(2.16kg、190℃):3.8g/10min
密度:922kg/m
分子量分布(Mw/Mn):5.88
【0078】
(比較例1)
各層を構成する成分を表1に示す配合で、それぞれ別々の押出機に供給し、Tダイ法によって(A)熱融着層/(B)中間層/(C)ラミネ-ト層となる構成の三層共押出フィルムからなる、厚み50μmの積層フィルムを成形し、ラミネ-ト層にコロナ処理を施して易開封性積層フィルムを得た。各層の厚み比率は(A)熱融着層:(B)中間層:(C)ラミネ-ト層=7:75:18であった。
得られた積層フィルム単体について、上記(2)の方法にしたがい融解熱量を測定した。
次いで、上記(3)の方法にしたがい包装体を作製し、ヒートシール強度を測定した。
結果を表1及び図1に示す。
【0079】
(実施例1から3)
(A)熱融着層に、表1に示す配合で積層フィルム、次いで包装体を作製して、比較例1と同様の方法で評価した。
結果を表1及び図1に示す。
【0080】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の積層フィルムは、従来のポリオレフィン系樹脂に起因する優れた特性を維持しながら、特にプラスチック容器との組み合わせにおける易開封性が大幅に向上するとともに、その製造等における環境負荷も低減されるなど、実用上高い価値を有する性質を高いレベルで兼ね備えたものであり、プラスチック容器の蓋材等の包装分野、特に無菌米飯等の食品の包装等に好適であり、農業、食品加工業、流通、外食などの産業の各分野において高い利用可能性を有する。
図1