(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】漏洩補修装置
(51)【国際特許分類】
F16L 55/172 20060101AFI20240604BHJP
F16L 21/06 20060101ALN20240604BHJP
【FI】
F16L55/172
F16L21/06
(21)【出願番号】P 2019200675
(22)【出願日】2019-11-05
【審査請求日】2022-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】396020361
【氏名又は名称】株式会社水道技術開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永森 保行
(72)【発明者】
【氏名】戸継 昭人
(72)【発明者】
【氏名】酒井 大介
(72)【発明者】
【氏名】桑垣 大介
【審査官】広瀬 雅治
(56)【参考文献】
【文献】実公昭46-027163(JP,Y1)
【文献】実開昭64-036793(JP,U)
【文献】特開2007-100752(JP,A)
【文献】特開平05-118491(JP,A)
【文献】特開2014-114818(JP,A)
【文献】特開平11-082853(JP,A)
【文献】実開昭62-138989(JP,U)
【文献】米国特許第04652023(US,A)
【文献】中国実用新案第206268710(CN,U)
【文献】米国特許第01942489(US,A)
【文献】特開2019-219001(JP,A)
【文献】特開2021-011883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 55/172
F16L 21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設の流体管に外嵌装着可能な分割構造を有し、軸方向に連接される複数のケース体と、
前記ケース体の分割部の隙間を密封する軸方向延在部を有し、複数の前記ケース体の各々に装着されるパッキンと、
軸方向に連接される複数の前記ケース体を互いに連結する連結具と、
軸方向に連接される複数の前記ケース体の継ぎ目に配置される周方向シール材と、を備え、
前記周方向シール材が、前記ケース体の内方に配置され、
前記パッキンが、前記流体管の外周面に沿って延びる一対の円弧部と、一対の前記円弧部の端部同士を連結してループを形成する一対の前記軸方向延在部と、を有し、
前記ケース体の軸方向端部において前記周方向シール材に前記パッキンが接続されていて、
前記周方向シール材が前記パッキンと一体的に形成されている、漏洩補修装置。
【請求項2】
前記軸方向延在部が、前記円弧部の端部と前記周方向シール材の端部とを連結する連結部分を有して、前記周方向シール材に前記軸方向延在部が接続されている、請求項1に記載の漏洩補修装置。
【請求項3】
既設の流体管に外嵌装着可能な分割構造を有し、軸方向に連接される複数のケース体と、
前記ケース体の分割部の隙間を密封する軸方向延在部を有し、複数の前記ケース体の各々に装着されるパッキンと、
軸方向に連接される複数の前記ケース体を互いに連結する連結具と、
軸方向に連接される複数の前記ケース体の継ぎ目に配置される周方向シール材と、を備え、
前記周方向シール材がシート状に形成され、前記ケース体の端面に沿って配置されており、
前記パッキンが、前記流体管の外周面に沿って延びる一対の円弧部と、一対の前記円弧部の端部同士を連結してループを形成する一対の前記軸方向延在部と、を有し、
前記ケース体の軸方向端部において前記周方向シール材に前記パッキンが接続されていて、
前記周方向シール材が前記パッキンと一体的に形成されている、漏洩補修装置。
【請求項4】
既設の流体管に外嵌装着可能な分割構造を有し、軸方向に連接される複数のケース体と、
前記ケース体の分割部の隙間を密封する軸方向延在部を有し、複数の前記ケース体の各々に装着されるパッキンと、
軸方向に連接される複数の前記ケース体を互いに連結する連結具と、
軸方向に連接される複数の前記ケース体の継ぎ目に配置される周方向シール材と、を備え、
前記周方向シール材が、前記ケース体の内方に配置され、
前記パッキンが、前記流体管の外周面に沿って延びる一対の円弧部と、一対の前記円弧部の端部同士を連結してループを形成する一対の前記軸方向延在部と、を有し、
前記ケース体の軸方向端部において前記周方向シール材に前記パッキンが接続されていて、
前記周方向シール材が前記パッキンと別体的に形成されていて、
前記軸方向延在部が、前記円弧部の端部のみから軸方向に突出した突出部分を有して、前記周方向シール材に前記軸方向延在部が接続されている、漏洩補修装置。
【請求項5】
前記周方向シール材が、前記ケース体の内面に形成された突起を挟んで前記円弧部に隣接する、請求項1~4いずれか1項に記載の漏洩補修装置。
【請求項6】
既設の流体管に外嵌装着可能な分割構造を有し、軸方向に連接される複数のケース体と、
前記ケース体の分割部の隙間を密封する軸方向延在部を有し、複数の前記ケース体の各々に装着されるパッキンと、
軸方向に連接される複数の前記ケース体を互いに連結する連結具と、
軸方向に連接される複数の前記ケース体の継ぎ目に配置される周方向シール材と、を備え、
前記周方向シール材が、前記ケース体の内方に配置され、
前記パッキンが、前記流体管の外周面に沿って延びる一対の円弧部と、一対の前記円弧部の端部同士を連結してループを形成する一対の前記軸方向延在部と、を有し、
前記ケース体の軸方向端部において前記周方向シール材に前記パッキンが接続されていて、
前記周方向シール材が前記パッキンと別体的に形成されていて、
前記周方向シール材が、前記ケース体の内面に形成された突起を挟んで前記円弧部と離れて隣接する、漏洩補修装置。
【請求項7】
既設の流体管に外嵌装着可能な分割構造を有し、軸方向に連接される複数のケース体と、
前記ケース体の分割部の隙間を密封する軸方向延在部を有し、複数の前記ケース体の各々に装着されるパッキンと、
軸方向に連接される複数の前記ケース体を互いに連結する連結具と、
軸方向に連接される複数の前記ケース体の継ぎ目に配置される周方向シール材と、を備え、
前記周方向シール材は、前記ケース体の外方に配置され、前記パッキンと別体的に形成されており、
前記パッキンは、前記ケース体の一方の端面から他方の端面まで軸方向に延在していて、前記ケース体の端面と管軸方向に隣接することなく終端している、漏洩補修装置。
【請求項8】
前記周方向シール材が、前記ケース体の継ぎ目に外嵌装着される保持部材で保持されている、
請求項7に記載の漏洩補修装置。
【請求項9】
既設の流体管に外嵌装着可能な分割構造を有し、軸方向に連接される複数のケース体と、
前記ケース体の分割部の隙間を密封する軸方向延在部を有し、複数の前記ケース体の各々に装着されるパッキンと、
軸方向に連接される複数の前記ケース体を互いに連結する連結具と、
軸方向に連接される複数の前記ケース体の継ぎ目に配置される周方向シール材と、を備え、
前記周方向シール材は、前記ケース体の外方に配置され、前記パッキンと別体的に形成されており、
前記パッキンは、前記ケース体の一方の端面から他方の端面まで軸方向に延在していて、
前記周方向シール材が、前記ケース体の継ぎ目に外嵌装着される保持部材で保持されていて、
前記保持部材の内周面は、前記周方向シール材を位置決めできるように断面V字状に形成されている、漏洩補修装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流体管の漏洩箇所を補修するための漏洩補修装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2に記載のように、水道管などの既設の流体管の漏洩箇所を補修するための漏洩補修装置が知られている。漏洩補修装置は、筒状のケース体で漏洩箇所の周囲を密封し、それによって流体の漏出を防止する。
【0003】
従来の漏洩補修装置は、ケース体で密封できる領域を超えて漏洩箇所が広範囲に及ぶ場合や、漏洩補修装置を装着した後で経年劣化などにより漏洩箇所が拡張した場合に、所要の範囲を補修できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-124853号公報
【文献】特開平10-073190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的は、漏洩箇所が広範囲に及ぶ場合や漏洩箇所が拡張した場合でも所要の範囲を補修できる漏洩補修装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る漏洩補修装置は、既設の流体管に外嵌装着可能な分割構造を有し、軸方向に連接される複数のケース体と、前記ケース体の分割部の隙間を密封する軸方向延在部を有し、複数の前記ケース体の各々に装着されるパッキンと、軸方向に連接される複数の前記ケース体を互いに連結する連結具と、軸方向に連接される複数の前記ケース体の継ぎ目に配置される周方向シール材と、を備える。これにより、漏洩箇所が広範囲に及ぶ場合や漏洩箇所が拡張した場合でも所要の範囲を補修できる。
【0007】
前記ケース体の軸方向端部において前記周方向シール材に前記軸方向延在部が接続されていることが好ましい。これにより、ケース体の継ぎ目と分割部との交差部位を適切に密封して、より確実に流体の漏出を防止できる。
【0008】
一つの実施形態として、前記周方向シール材が、前記ケース体の内方に配置され、前記パッキンと一体的に形成されたものが挙げられる。かかる構成によれば、ケース体のスライド移動や流体圧力による周方向シール材の位置ずれを生じにくいため、密封が安定する。
【0009】
また、別の実施形態として、前記周方向シール材が、前記ケース体の内方に配置され、前記パッキンと別体的に形成されたものが挙げられる。これにより、ケース体とは別個に周方向シール材を装着できるため、装着時にケース体をスライド移動させる際、流体管の外周面と周方向シール材との摩擦による抵抗を生じず、作業性が向上する。
【0010】
前記パッキンが、前記流体管の外周面に沿って延びる一対の円弧部と、一対の前記円弧部の端部同士を連結してループを形成する一対の前記軸方向延在部と、を有し、前記周方向シール材が、前記ケース体の内面に形成された突起を挟んで前記円弧部に隣接するものが好ましい。かかる構成によれば、ケース体の継ぎ目に対する周方向シール材の位置が安定するので、密封性能を確保しやすい。
【0011】
更なる別の実施形態として、前記周方向シール材が、前記ケース体の外方に配置され、前記パッキンと別体的に形成されたものが挙げられる。これにより、ケース体とは別個に周方向シール材を装着できるため、軸方向にケース体をスライド移動させる際、装着時にケース体をスライド移動させる際、流体管の外周面と周方向シール材との摩擦による抵抗を生じず、作業性が向上する。かかる周方向シール材は、例えば、前記ケース体の継ぎ目に外嵌装着される保持部材で保持される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図4】単体のケース体の端面と分割部との交差部位を示す(A)平面図と(B)側面図
【
図5】ケース体の継ぎ目と分割部との交差部位を示す(A)平面図と(B)側面図
【
図7】第2実施形態における単体のケース体を示す二面図
【
図9】第3実施形態におけるケース体の継ぎ目と分割部との交差部位を示す(A)平面図と(B)側面図
【
図10】第4実施形態における単体のケース体を示す平面図
【
図11】
図10のケース体の両端に端部密封具を取り付けた状態を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の漏洩補修装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
[第1実施形態]
まず、
図1~6を参照しながら第1実施形態について説明する。
図1では、流体管の一例である水道管WPの漏洩箇所を補修するために漏洩補修装置10が装着されている。水道管WPはダクタイル鋳鉄管であるが、これに限られず、例えば鋼管でもよい。
図1(A)では、水道管WPの図示を省略している。漏洩補修装置10は、水道管WPの軸方向ADに連接される複数のケース体1を備える。この例では、二つのケース体1が連接されているが、三つ以上のケース体1を連接することも可能である。漏洩補修装置10は、複数のケース体1で漏洩箇所の周囲を密封し、それによって外部への漏水を防止する。
【0015】
図2は、ケース体1を単体で示している。
図2(A)では、水道管WPの図示を省略している。
図2(B)では、ケース体1と水道管WPの一部を破断させて描いている(
図10も同じ)。ケース体1は、ダクタイル鋳鉄などの金属材で形成されている。ケース体1は、単体でも水道管WPを密封状に取り囲むことができる。それ故、漏洩箇所(例えば、亀裂)の範囲が小さい場合は、このように単体のケース体1で補修してもよい。漏洩箇所が広範囲に及ぶ場合や、経年劣化などにより漏洩箇所が拡張した場合は、これと同様のケース体を追加し、
図1のように連接することにより所要の範囲を補修できる。
【0016】
ケース体1は、既設の水道管WPに外嵌装着可能な分割構造を有し、全体として円筒状に形成されている。本実施形態では、ケース体1が二つ割れ(半割れ)に構成されており、周方向の二箇所に分割部11が設定されている。分割部11の各々には、ボルト及びナットを含む締結具12が装着されている。締結具12を操作して分割部11を締め付けることにより、ケース体1を構成する複数の分割片1a,1bが互いに締結される。本実施形態では、ケース体1が二つの分割片1a,1bで構成されている例を示すが、これに限られない。
【0017】
ケース体1には、ケース体1の内方と外方とを連通させる貫通孔を密栓するプラグ13が装着されている。ケース体1は、漏洩箇所から軸方向ADにずらした位置で締結具12を緩く締め付けて仮組みした後、軸方向ADにスライド移動させて漏洩箇所を塞ぎ、締結具12を固く締め付けることにより水道管WPに装着される。その際、プラグ13の代わりにホースを繋ぎ、ケース体1の内方の水を排水溝などへ排出することにより、水圧を開放しながら施工することができる。本実施形態では、水道管WPに上方から被さる分割片1aに貫通孔が形成されているが、これに限られない。
【0018】
ケース体1のフランジ14には、軸方向ADに連接される複数のケース体1を互いに連結する連結具15が装着される(
図1参照)。連結具15は、軸方向ADに沿って延びるボルト15bと、それに螺合されるナット15nとで構成されているが、これに限定されない。連結具15を操作してケース体1を互いに寄せることで、複数のケース体1の端面同士(延いてはパッキン2同士)を密着させることができる。本実施形態では、フランジ14が、軸方向ADに間隔を設けて一対で形成されており、それぞれケース体1の端面から離して配置されている。
【0019】
ケース体1には、パッキン2が装着されている。図面上での区別を容易にするため、
図1~3ではパッキン2に細かい斜線を施している(
図7,8,10なども同じ)。パッキン2は、ケース体1に対応した分割構造を有し、分割片1a,1bの各々に装着される。パッキン2は、水道管WPの外周面に沿って延びる一対の円弧部21と、軸方向ADに延在して、一対の円弧部21の端部同士を連結してループを形成する一対の軸方向延在部22とを有する。該ループは、平面視矩形状に形成されている。軸方向延在部22は、分割片1a,1bの周方向端部の各々に配置され、ケース体1の分割部11の隙間を密封する。
【0020】
図1の如く複数のケース体1を連接してなる漏洩補修装置10では、軸方向ADに連接されたケース体1の継ぎ目JOからの漏水、特には、継ぎ目JOと分割部11との交差部位からの漏水を防ぐことが重要となる。本実施形態では、そのような継ぎ目JOからの漏水を適切に防止できるよう、環状に延在する周方向シール材3が継ぎ目JOに沿って配置されている。また、継ぎ目JOと分割部11との交差部位を適切に密封できるように、ケース体1の軸方向端部において周方向シール材3に軸方向延在部22が接続されている。周方向シール材3は、パッキン2と同様に、ゴムなどの弾性材料により形成される。
【0021】
このように、本実施形態の漏洩補修装置10は、軸方向ADに連接される複数のケース体1と、複数のケース体1の各々に装着されるパッキン2と、軸方向ADに連接される複数のケース体1を互いに連結する連結具15と、ケース体1の継ぎ目JOに配置される周方向シール材3とを備える。また、複数のケース体1は、それぞれ既設の水道管WPに外嵌装着可能な分割構造を有し、パッキン2は、ケース体1の分割部11の隙間を密封する軸方向延在部22を有する。
【0022】
図4は、単体のケース体1の端面と分割部11との交差部位を示す(A)平面図と(B)側面図である。ケース体1を連接したときには、互いに突き合わされた端面によって継ぎ目JOが形成される。
図4(A)は、
図2(B)のX部の拡大図に相当する。
図4(B)は、
図2(C)のY部の縦断面図に相当する。
図5は、連接したケース体1の継ぎ目JOと分割部11との交差部位を示す(A)平面図と(B)側面図である。
図5(A)及び(B)で示す部位は、それぞれ
図4(A)及び(B)に対応している。
図4及び
図5では、いずれも水道管WPの記載を省略している。
【0023】
図5では、複数のケース体1の各々で締結具12が固く締め付けられ、軸方向延在部22によって分割部11の隙間が密封されている。また、連結具15が固く締め付けられ、複数のケース体1の各々に装着されたパッキン2(の円弧部23)が互いに密着している。継ぎ目JOには、周方向シール材3としての円弧部23が配置されている。このようにして複数のケース体1を軸方向ADに連接することで、所要の範囲を補修できる。ケース体1の軸方向端部(端面の近辺)では、周方向シール材3に軸方向延在部22が接続されている。これにより、継ぎ目JOと分割部11との交差部位を適切に密封して、より確実に漏水を防止できる。
【0024】
本実施形態では、周方向シール材3が、ケース体1の内方に配置され、パッキン2と一体的に形成されている。パッキン2は、一対の円弧部21に加えて、水道管WPの外周面に沿って延びる円弧部23を有する。分割部11の締め付けによって上下の円弧部23が環状に連なり、それらが周方向シール材3として機能する。パッキン2と一体的に形成された周方向シール材3は、ケース体1のスライド移動や水圧による位置ずれを生じにくいため、止水が安定する。また、周方向シール材3を別部材として用意する必要がなく、連結具15を操作してケース体1を連接すれば継ぎ目JOが密封される。
【0025】
図3のように、パッキン2には、円弧部21と円弧部23とからなる二重の円弧部が形成されている。円弧部21と円弧部23とは軸方向ADに離れており、それらの間に隙間24が形成されている。軸方向延在部22は、円弧部21の端部と円弧部23の端部とを連結する連結部分22aを有する。継ぎ目JOを適切に密封する観点から、周方向シール材3となる円弧部23は、軸方向ADに圧縮力が作用していない状態において、ケース体1の端面に配置されていることが好ましく、
図4のようにケース体1の端面から突出して(はみ出して)いることがより好ましい。
【0026】
図4,5のように、周方向シール材3である円弧部23は、ケース体1の内面に形成された突起16を挟んで円弧部21に隣接する。突起16は、円弧部21と円弧部23との隙間24に嵌入される。かかる構成によれば、水圧によって軸方向ADの力が作用する円弧部21を突起16で受け止めることができる。また、継ぎ目JO(即ち、ケース体1の端面)に対する周方向シール材3の軸方向位置が安定し、密封性能を確保するうえで都合が良い。突起16は、水道管WPに向かって径方向内側に突出し、周方向に沿って延在している。
【0027】
本実施形態では、周方向シール材3となる円弧部23がケース体1の軸方向両側に配置されているため、
図2に示すケース体1の両端部の何れに対してもケース体を連接できる。但し、連接に供される端部が片方に定められていてもよく、連接に供されない端部には周方向シール材3が配置されていなくても構わない。したがって、パッキン2は、必ずしも円弧部23を一対で有している必要はない。連接に供されない端部には、水道管WPの離脱を防止するための離脱防止機構を一体的に設けたり、または離脱防止装置を外付けで装着したりすることができる。
【0028】
図6(A)は、漏洩補修装置10に離脱防止機構4を一体的に設けた例を示す。離脱防止機構4は、ケース体1と一体的に形成された分割構造を有する環状のハウジング41と、水道管WPの外周面に食い込み可能な爪部材42と、爪部材42を径方向内側に向けて押圧する押圧部材としての押ボルト43とを有する。ハウジング41の内周には、爪部材42を収容する凹部44が形成されている。爪部材42の外周には、押ボルト43の先端が当接する傾斜面が設けられている。地震などにより漏洩箇所が破断し、水道管WPを離脱させる軸方向ADの力が作用したときには、楔効果によって爪部材42が水道管WPの外周面に強く押圧され、離脱防止効果が発揮される。
【0029】
図6(B)は、漏洩補修装置10に外付けの離脱防止装置5を装着した例を示す。離脱防止装置5は、ケース体1とは別体的に形成された分割構造を有する環状のハウジング51と、水道管WPの外周面に食い込み可能な爪部材52と、ハウジング51の分割部を締め付け可能な締付具53と、連結具15を装着するためのフランジ54とを有する。ハウジング51の内周には、爪部材52を収容する凹部55が形成されている。爪部材52の外周には、凹部55の天井面が当接する傾斜面が設けられている。
図6(A)の構造と同様に、水道管WPを離脱させる軸方向ADの力が作用したときには、離脱防止効果が発揮される。
【0030】
[第2実施形態]
次に、
図7を参照しながら第2実施形態について説明する。第2実施形態は、以下に説明する構成を除いて第1実施形態と同様に構成できるため、共通点の説明を省略し、主に相違点について説明する。第1実施形態において既に説明した構成には、同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0031】
図7に示すように、この例では、周方向シール材3がシート状に形成され、ケース体1の端面に沿って配置されている。周方向シール材3は、パッキン2と一体的に形成されている。つまり、このパッキン2では、周方向シール材3となる円弧部23がシート状に形成されていて、それがケース体1の端面と対向するように配置される。ケース体1の軸方向端部では、周方向シール材3に軸方向延在部22が接続されている。軸方向ADにケース体1を連接すると、周方向シール材3が継ぎ目JOに配置され、ケース体1の端面同士で挟み込まれる。尚、
図7(A)では、水道管WPの図示を省略している。
【0032】
[第3実施形態]
次に、
図8及び9を参照しながら第3実施形態について説明する。第3実施形態は、以下に説明する構成を除いて第1実施形態と同様に構成できるため、共通点の説明を省略し、主に相違点について説明する。第1実施形態において既に説明した構成には、同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0033】
図8及び9に示すように、この例では、周方向シール材3が、ケース体1の内方に配置され、パッキン2と別体的に形成されている。周方向シール材3は、有端の紐状(または帯状)部材を水道管WPの外周に巻き付け、その両端を互いに接着することにより、周方向に沿って環状に形成される。このようにして、ケース体1とは別個に周方向シール材3を装着できるため、軸方向ADにケース体1をスライド移動させる際、水道管WPの外周面と周方向シール材3との摩擦による抵抗を生じず、作業性が向上する。
【0034】
第3実施形態では、
図9のように、ケース体1の軸方向端部において周方向シール材3に軸方向延在部22が接続されている。軸方向延在部22は、円弧部21の端部から軸方向ADに突出した突出部分22bを有する。連結具15(
図1参照)を操作してケース体1を互いに寄せることにより、この突出部分22bが周方向シール材3に押し当てられて密着する。周方向シール材3は、断面円形状に形成されているが、これに限られない。例えば、シート状に形成された周方向シール材をケース体1の端面で挟むように構成してもよい。
【0035】
[第4実施形態]
次に、
図10~13を参照しながら第4実施形態について説明する。第4実施形態は、以下に説明する構成を除いて第1実施形態と同様に構成できるため、共通点の説明を省略し、主に相違点について説明する。第1実施形態において既に説明した構成には、同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0036】
図10に示すように、この例では、前述したパッキン2の代わりにパッキン6が用いられる。パッキン6は、ケース体1の一方の端面から他方の端面まで軸方向ADに延在している。パッキン6は、分割部11の隙間を密封する軸方向延在部62を有するものの、前述した円弧部21に相当する部分を有していない。したがって、このパッキン6で密封されるのは分割部11の隙間のみであり、漏洩箇所を補修する際には、
図11に示すような端部密封具7を取り付ける必要がある。
図11は、単体のケース体1で補修する様子を示しており、その単体のケース体1の両端部に一対の端部密封具7が装着されている。
【0037】
端部密封具7は、分割構造を有する環状のハウジング71と、ハウジング71の分割部を締め付け可能な締付具72と、ハウジング71で保持された環状のシール材73とを有する。ハウジング71には、ケース体1に設けられたフランジ17に係合するフック74が形成されている。締付具72を操作してハウジング71を縮径し、シール材73を圧縮することにより、ケース体1とハウジング71との隙間、並びにハウジング71と水道管WPとの隙間を密封し、ケース体1の軸方向端部からの漏水を防止できる。
【0038】
複数のケース体1を軸方向ADに連接する場合は、
図12のように継ぎ目密封具8を装着し、継ぎ目JOに周方向シール材3を配置する。周方向シール材3は、ケース体1の外方に配置され、パッキン6と別体的に形成されている。軸方向延在部62は、周方向シール材3に接続されておらず、継ぎ目JOにて対向する別の軸方向延在部62と軸方向ADに突き合わされている。継ぎ目密封具8は、分割構造を有する環状のハウジング81と、ハウジング81の分割部を締め付け可能な締付具(図示せず)と、ハウジング81で保持された周方向シール材3とを有する。締付具を操作してハウジング81を縮径することにより、周方向シール材3が継ぎ目JOに密着する。
【0039】
周方向シール材3は、継ぎ目JOに外嵌装着されるハウジング81(保持部材に相当)で保持されている。周方向シール材3に接触するハウジング81の内周面は、周方向シール材3を位置決めできるように断面V字状に形成されている。周方向シール材3は、接着などによりハウジング81と一体化されていてもよい。ハウジング81は、互いに突き合わせた一対のフランジ17を挟み込み可能な断面U字状に形成されている。かかるハウジング81は、軸方向ADに連接される複数のケース体1を互いに連結する連結具としても機能する。このように、継ぎ目JOに外嵌装着される部材を用いて、複数のケース体1を軸方向ADに連結してもよい。
【0040】
図13は、継ぎ目密封具の変形例を示す。この変形例では、周方向に沿って延びる凹部90が継ぎ目JOの外周に形成されており、その凹部90に周方向シール材3が配置されている。継ぎ目JOの外周(
図13の上方)には、連結具としても機能する継ぎ目密封具9が装着されている。継ぎ目密封具9は、継ぎ目JOに向けて周方向シール材3を押圧する押さえ板91と、その押さえ板91をケース体1に固定する固定具92とを有する。押さえ板91は、周方向に沿って連続的または断続的に設けられている。固定具92は、ケース体1に形成された雌ねじに螺合するボルトにより構成されている。
【0041】
第4実施形態のように、ケース体1を軸方向ADに連接する連結具は、ボルト及びナットを含む構造(例えば、
図1の連結具15)でなくても構わない。第1~第3実施形態において、
図12,13で示したような連結具(即ち、継ぎ目密封具8,9)を使用することも可能である。周方向シール材3がケース体1の内方に配置される場合は、継ぎ目JOに外嵌装着される連結具は、周方向シール材を保持する必要がなく、周方向に不連続な形状でもよい。したがって、この場合の連結具は、周方向の複数箇所(例えば、四箇所)に取り付けられる構造でもよい。
【0042】
図14は、第1~第4実施形態に適用可能な連結具の変形例を概略的に示している。
図14(A)では、連結具として機能するバンド82が継ぎ目JOの外周に装着されている。バンド82は、
図12で示した継ぎ目密封具8のハウジング81に類似した構造を有する。バンド82には、フランジ17の背面に形成された傾斜面に接触し、且つ、その傾斜面と同じ方向に傾斜した傾斜面82aが形成されている。互いに対向する一対のフランジ17を挟み込むようにバンド82を装着すると、ケース体1が楔効果によって互いに寄せられ、それらが軸方向ADに連結される。
【0043】
図14(B)では、連結具として機能するフック17fがケース体1に設けられている。フック17fは、それが設けられたケース体1に連接される別のケース体1のフランジ17と係合可能に構成されている。
図14(C)では、分割部11に装着された締結具12が連結具として機能する。分割部11には、軸方向ADに連接されるケース体1の間で互い違いとなるフランジ11fが設けられている。一部の締結具12は、一方のケース体1のフランジ11fと他方のケース体1のフランジ11fとに跨って装着されており、これによってケース体1が互いに連結される。
【0044】
以上、本開示の実施形態について説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく、特許請求の範囲によって示され、更には特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【0045】
前述の実施形態では、流体管が水道管である例を示したが、これに限られず、水以外の液体、気体または気液混合体などに用いられる流体管であってもよい。
【0046】
本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。上述した第1~第4実施形態で採用されている各構成は、任意に組み合わせて採用できる。
【符号の説明】
【0047】
1 ケース体
2 パッキン
3 周方向シール材
6 パッキン
10 漏洩補修装置
11 分割部
12 締結具
15 連結具
16 突起
21 円弧部
22 軸方向延在部
23 円弧部
62 軸方向延在部
81 ハウジング(保持部材に相当)
WP 水道管(流体管の一例)