(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】細胞送達用キャリア
(51)【国際特許分類】
A61K 47/22 20060101AFI20240604BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20240604BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20240604BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20240604BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20240604BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20240604BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240604BHJP
A61K 8/14 20060101ALI20240604BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20240604BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240604BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20240604BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20240604BHJP
【FI】
A61K47/22
A61K9/127
A61K9/51
A61K47/06
A61K47/24
A61K47/28
A61K47/32
A61K8/14
A61Q17/04
A61Q19/00
A61Q19/10
A23L33/10
(21)【出願番号】P 2019231014
(22)【出願日】2019-12-23
【審査請求日】2022-09-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502294769
【氏名又は名称】株式会社アイ・ティー・オー
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【氏名又は名称】服部 映美
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】伊東 忍
(72)【発明者】
【氏名】金澤 秀子
【審査官】高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/073190(WO,A1)
【文献】特表2012-504620(JP,A)
【文献】国際公開第2016/199895(WO,A1)
【文献】弓場英司ほか,DDS応用を指向した刺激応答性リポソームの設計,ファルマシア,2018年,Vol.54, No.1,pp.11-15
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オートファジー関連遺伝子とカテプシン合成遺伝子の同時活性化物質と,刺激応答性ポリマー含有分子と,脂質の3グループから,それぞれ1種以上の物質が選択される混合物からなり、
前記オートファジー関連遺伝子とカテプシン合成遺伝子の同時活性化物質が
、カプリリル2-グリセリルアスコルビン酸である、細胞送達用キャリア。
【請求項2】
脂質の一部叉は全部が,ラメラ形成界面活性物質である,請求項1の細胞送達用キャリア。
【請求項3】
オートファジー関連遺伝子とカテプシン合成遺伝子が,以下の表2から選択されるヒト遺伝子解析機構のヒトゲノム命名法委員会において登録されている遺伝子である,請求項1の細胞送達用キャリア。
【表2】
【請求項4】
刺激応答性ポリマー含有分子が,温度,pH,光の3つのうちいずれか一つ以上の刺激応答性分子を含む,請求項1の細胞送達用キャリア。
【請求項5】
刺激応答性ポリマー含有分子が,表5の温度刺激応答性物質,pH刺激応答性物質,光刺激応答性物質からから選択される1種以上のモノマーの直鎖状,又は分岐状のポリマー構造を含む構造を持つ,請求項1の細胞送達用キャリア。
【表5】
【請求項6】
細胞送達用キャリアの
形態が,医薬品,医薬部外品,化粧品,サプリメント,動物医薬
品から選択される1種である請求項1の細胞送達用キャリア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,刺激応答性ポリマーと細胞取込み機構および細胞内分解機構を促進する物質を含む,安定で,安全な薬物送達システム(DDS)用の細胞送達用キャリアに関する。
【背景技術】
【0002】
薬物送達システム(DDS)は,以下の目的ために使用される。1)薬物作用の分離: 特定の作用だけを取り出す,または抑え込む。2)効果の増強と発現: 効果がより的確なものとなり,再現性も向上する。投資量の削減や適用拡大(新しい効能の発現など)が期待できる。3)副作用の軽減: 安全域の拡大を図ることにより,QOLを改善し,患者の負担を軽減する。また,副作用から製薬化が頓挫した化合物を薬として復活させることもできる。4)使用性の改善:患者および医療従事者の負担を軽くし,薬物の服用指示違反問題の解消につながる。5)経済性:製品のライフサイクルの延長,差別化が図れる。また,医療費や関連費用の削減ができる。研究・開発の効率化が期待できる。
【0003】
DDSに使用される組成物は,細胞送達用キャリアが一般的で,本発明では,新規の細胞送達用キャリアが開示される。通常の医薬品や化粧品で使用される細胞送達用キャリアの粒子の大きさはサブミクロンからミクロンの単位であるが,細胞送達用キャリアに使用される場合は,はるかに小さな粒子径となる。例えば,直径300nm以下では,皮膚の毛包間隙から皮膚組織に浸透させることができ,特に毛包は表皮,真皮を通過し脂肪層まで到達しており,さらに,毛包では皮膚角層が薄く,脂溶性成分では皮脂腺からほとんど皮膚バリアを介さずに,真皮に成分を拡散することが可能である。150nm以下の小さな粒子を皮下投与すると,毛細血管壁を通過できないが毛細リンパ管には侵入できるため,特に皮膚組織などの組織で有効成分を滞留させることができる。さらに直径50nm以下の粒子では,通常の健康な血管壁をも通過し薬物が体内に拡散する。このため,ターゲット臓器に薬物を滞留させるためには,直径50nmから300nmの粒子径が適する。
【0004】
従来の細胞送達用キャリアにおいては,製剤中及び標的細胞までの間に酸化分解が促進し,有効成分が充分にターゲット組織へ到達しない問題がある。さらに,ターゲット組織において,細胞送達用キャリアの細胞吸収性が低く充分に有効成分が細胞に吸収されない。加えて,細胞送達用キャリアが吸収されても細胞吸収内で分解されないために,有効成分が十分に放出されないという問題があった。したがって,本発明が,解決すべき問題は, 細胞送達用キャリアにおいて,1)製剤中及び標的細胞までの間の酸化分解をより高く抑制し,ターゲット組織への到達率をより高めること。2)ターゲット組織の細胞吸収性をより高めること。3)細胞吸収内でより効率的に分解されることの,3つの問題を「同時に」解決する事である。これを単純に言い換えると,細胞送達用キャリアにおいて,1)抗酸化活性 2)細胞内吸収性 3)細胞内崩壊性の増強の3つの要素を同時に増強する事が必要となる。さらに4)安定性と安全性を確保する事は製品の流通には必須である。これを本発明では以下,細胞送達用キャリアの必要4要素という。
【0005】
刺激応答性ポリマーとは,周囲の外部刺激である,温度,pH,イオン強度,磁場,電場,光,音波,圧力,溶媒,加速度,化学種によってその分子のミクロ構造が,可逆的叉は非化学的に変化する刺激応答分子を内在するポリマーのことであり,薬物送達の効率的送達のために利用されている。
【0006】
特許文献1では,温度感受性ポリマー,pH応答性ポリマー,液晶ポリマー,およびポリマーゲルを含むナノ粒子のシステムが開示されている。特許文献2では,代謝型グルタミン酸5受容体アンタゴニストと速度制御ポリマーと,pH応答性ポリマーとを含むカプセル製剤が開示されている。特許文献3では,ジオレオイルホスファチジルエタノールアミンメルカプトプロピオニル (イソプロピルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマーが温度応答性を有し核酸の高い細胞への輸送能力を発揮しうることが示され,特許文献4では,刺激応答性ポリマーを固定化した,金属有機構造体-刺激応答性ポリマー複合体が示された。特許文献5では,有機ペルオキシ酸,多糖,粘土,コポリマーからなる複合体が示された。特許文献6ではpH応答性ポリマーを含むリポソームからなる複合粒子が示されたが,これらの刺激応答性ポリマーだけの単独又は組合せだけでは,細胞内でリポソームを破壊するには有効であるが,細胞吸収性を高める目的では不充分であった。また,細胞外で刺激応答性ポリマーに刺激を与えて破壊した場合は,包接物が細胞外へ拡散してしまい,目的の細胞内へ効率的に輸送する事が困難でありリポソームカプセルを作る意味が薄れた。即ち,これらの刺激応答性ポリマーの使用は,細胞送達用キャリアの3)細胞内崩壊性を増強する事はできるが,1)抗酸化性,2)細胞内吸収性を高める事はできない。
【0007】
ビタミンは,ヒトにおいて必須の栄養素であり,それぞれの臓器や組織の細胞はその必要に応じて,血中のビタミンをキャッチし積極的に細胞内に取り込むシステムを持っており,血中の輸送タンパク質や細胞膜上のレセプターやトランスポーターなどの輸送チャンネルなどが知られている。
【0008】
皮膚細胞のアスコルビン酸の保持率は,アスコルビン酸濃度が高い大脳につぐ濃度であり肝臓よりも高い。皮膚組織では,血漿濃度の20倍以上の濃度で濃縮されていることから,アスコルビン酸トランスポーターが存在することが示唆され,実際に皮膚細胞などでは,SVCT 1及び2の(Na依存性ビタミンCトランスポーター)の発現が確認されている。非特許文献1,非特許文献2
SVCT1は主に角化細胞に存在し,SVCT2は角化細胞,線維芽細胞,および内皮細胞に存在することが知られている。
【0009】
しかし,以前よりアスコルビン酸グリセリドやAPPS(アスコルビン酸-2-リン酸-6-パルミチン酸)などの脂質を持たない水溶性の誘導体が,通常のアスコルビン酸より高濃度で皮膚細胞に吸収される事が報告されていた。これは,従来のビタミンC輸送チャンネルを介した細胞内輸送システムでは説明できなかった。近年APPSが,通常のアスコルビン酸に比較し,10倍以上の細胞吸収性を有し,その吸収経路がアスコルビン酸輸送チャンネルを介さないことが報告された。この報告では,APPSが両親媒性であるため細胞膜であるリン脂質膜を直接通過する可能性を示したが,この説では水溶性のアスコルビン酸グリセリドやアスコルビン酸リン酸の細胞内高濃度化は説明できない(非特許文献3)。
【0010】
α-トコフェロールは肝臓に高濃度で存在する。トコフェロール結合タンパクについては,主にその輸送タンパクなどが知られており,α-トコフェロール転移タンパク質結合体は内皮障壁を通過させてビタミンE送達を促進し,α-トコフェロール輸送タンパク質は,FIGO病期および5年生存率と相関するなど様々な生理作用と相関関係にある(非特許文献4)。さらに,α-トコフェロール転移タンパク質遺伝子はスクリーニングされその詳細が報告されている(非特許文献5)。
【0011】
レチノールにおいては,レチノール結合タンパク質が知られており,これは,血液中に存在するレチノールを特異的に結合して輸送するタンパク質と,各組織内にあってレチノールの細胞での動態を制御するタンパク質がある。輸送タンパク質は,肝臓で合成される分子量21kDaのタンパク質で,肝臓に蓄積されているビタミンA(Retinol)を結合・分泌して標的臓器(細胞)に輸送する働きがある。
【0012】
ビタミンD結合タンパク質(ビタミンD: (エルゴカルシフェロール)とD3(コレカルシフェロール)の総称)は,分子量約58kDaの糖タンパク質です。血清タンパク質であるアルブミンファミリーに属しており,アルブミンやα-フェトプロテインに類似した構造を有している。ビタミンD結合タンパク質は,ビタミンD輸送タンパク質として高濃度で血清中を循環しており,主に肝細胞で産生され,メガリンレセプターを介するエンドサイトーシスによりビタミンDを細胞内へ取り込む。
【0013】
葉酸は,肝臓内に高濃度で存在し,体内の葉酸の約半分が蓄積されている。複数のグルタミン酸に結合した状態で存在するが,腸管でγ-グルタミルハイドラーゼにより,モノグルタメートへと変換される。小腸の近位部においてモノグルタメートの形で能動輸送され,門脈循環に取り込まれる。そこで肝臓でポリグルタメートになり,血中及び胆汁中に放出される。血漿中の葉酸の2/3がタンパク結合して輸送される。
【0014】
リボフラビンは,肝臓,心臓に高濃度で存在し,脳内では低濃度で存在する。リボフラビンの輸送は,アルブミンやとイムノグロブリン類のタンパク質と結合し血中輸送されている。肝臓のような組織への取り込みは,生理的濃度では特別のタンパク質細胞送達用キャリアを介するが,それ以外はエンドサイトーシスにより取り込まれる。
【0015】
コバラミン(ビタミンB12)は,主に肝臓に高濃度で存在する。コバラミンは,トランスコバラミンと呼ばれるタンパク質と結合し輸送される。食餌中のビタミンB12は,胃から分泌された内因子と結合して回腸から吸収され,吸収されたビタミンB12は,トランスコバラミンと結合して血液中を運搬される。
【0016】
上記で示した特定のビタミン類は,輸送タンパク質と結合して血中を循環しており,ターゲット組織の細胞膜上の特異的レセプターに結合して,特異的吸収チャンネルタンパクかエンドサイトーシスによりターゲット細胞内へ高濃度で取り込まれる事が知られている。したがって,上記で示した特定のビタミン類の人工的な合成誘導体が,充分な血中安定性が維持できれば,誘導体の形で,細胞膜上の特異的レセプターと結合する確立が極めて高いと考えられる。ただし,特異的吸収チャンネルは,各ビタミンの分子構造を性格に識別できる為にこれらの人工合成されたビタミン誘導体を吸収することはできないが,エンドサイトーシスにおいては,周囲の大量の水分も含め取り込む為に,これらのレセプターに結合した細胞表面のビタミン誘導体も一緒に取り込まれるのではないかと考えた。
【0017】
レチノール結合タンパク質(Retinol-binding protein:RBP)は肝臓で合成される分子量21kDaのタンパク質で,肝臓に蓄積されているビタミンA(Retinol)を結合・分泌して標的臓器(細胞)に輸送する働きにある1)。RBPの血漿半減期は短く(Rapid turnover protein),必須アミノ酸であるトリプトファン(食事から摂取し難い)を4分子含むので,タンパク栄養の指標として測定されている。
【0018】
したがって,何らかの方法で,各ビタミン誘導体の存在下でエンドサイトーシス活性を測定できれば,どのようなビタミン誘導体がエンドサイトーシス活性を高めやすいかを見極める事ができ,そのエンドサイトーシス活性を高めるビタミン誘導体を,細胞送達用キャリア表面に修飾できれば,細胞送達用キャリアのエンドサイトーシスによる細胞内輸送を活性化できるのではないかと考えた。即ち,本発明の目的のひとつは,ビタミン誘導体のうちもっともエンドサイトーシスを活性化できる物質を探索する事にある。
【0019】
また,近年アスコルビン酸グリセリル誘導体が色素細胞内に高濃度で取り込まれオートファジー活性を上昇させることが報告された。本発明者等の研究では,オーファジー活性のアスコルビン酸グリセリル誘導体での増強は色素細胞だけでなく一般の正常皮膚細胞でも認められるた。オートファージは,細胞内に取り込まれた物質の再利用システムであるので,オートファージの増強は,色素細胞における輸送疎外で蓄積したメラニン色素の分解促進は説明できるがメラニンを持たない通常細胞でのオートファジー活性の増強は説明がつかなかった。
【0020】
ビタミンが細胞のリン脂質透過性を向上させるだけでは,細胞送達用キャリアの細胞内の高濃度化は,説明が出来ないことは明白であった。なぜなら,細胞送達用キャリアの大きさは,修飾されたアスコルビン酸誘導体分子より極めて大きく,何か特別なシステムが働かないかぎりは,巨大な細胞送達用キャリアが細胞内輸送されるとは考えにくいからである。
【0021】
上記1)の問題は,抗酸化作用を持つ両親媒精ビタミン誘導体を細胞送達用キャリアの表面の膜に取込むにことにより解決することができた。本発明者らは,以前の発明で,両親媒性アスコルビン酸誘導体を界面活性剤として使用することにより,細胞送達用キャリアの膜の一部又は総てを両親媒性アスコルビン酸誘導体で構成することに成功した。
【0022】
さらに,本発明者らは,DDSの効果高めるために,様ざまな物質の細胞内取込み機構を検討した結果,エンドサイトーシスを利用することを思い付き,逆にエンドサイトーシスを誘導する物質を修飾することが,細胞送達用キャリアの取り込みに寄与するのではないかと考えた。
【0023】
さらに,エンドサイトーシスを利用すれば,最後の問題である細胞吸収内で効率的に分解される問題が解決されることがわかった。すなわち,エンドサイトーシスを利用すれば,その飲作用により,細胞外液とともに細胞膜周囲の物質的を取り込むことができ,これにより細胞外液を満たした小胞(エンドソーム)を形成する。これは,全ての細胞で行われている一般的取り込み機構であり,取りこまれたエンドソームはライソソームによる分解を受ける。すなわち,細胞吸収内で効率的に分解されるのである。
【0024】
我々が既に明らかにした,両親媒性ビタミン誘導体においてエンドサイトーシス機能を持つものをスクリーニングして,細胞送達用キャリアに応用出来れば,DD粒子の細胞吸収内での効率的な分解の問題も同時に解決できる。
【0025】
そもそも,細胞はエンドサイトーシスにより細胞外からの物質などを絶え間なく取り込んでいるが,そのエンドサイトーシス活性が標準的な線維芽細胞などでさえも一分間に全体の1%程度の細胞膜がエンドサイトーシスにより細胞内へと取り込まれている。標準的なほ乳類の細胞一つあたりエンドソームが200個程度存在し,その合計の容積は細胞全体の1%程度をしめる。表面積で換算すると細胞膜の3%程度の限界膜がエンドソームを取り囲むこととなる。すなわち1時間で60%相当量の細胞膜がその3%程度しか表面積をもたないエンドソームへと次々流れ込んでいることになる。
【0026】
この後,エンドソームは,リソソームと融合する。リソソーム(lysosome;ライソソーム)は,真核生物が持つ生体膜につつまれた構造体で内部に加水分解酵素を持ち,膜内に取り込まれた生体高分子はこれらの酵素により加水分解される。分解するべき物体を含んだエンドソームに融合した後のものは二次リソソーム(secondary lysosome)又はファゴリソソーム(phagolysosome)と称される。二次リソソームの一つは,このエンドサイトーシスに由来する。細菌等巨大な異物を取り込んだファゴソームや,ピノソームと呼ばれる細胞膜近辺のより微視的な分子を含んだ一重の生体膜からなる構造と,一次リソソームとが融合しファゴリソソーム(phagolysosome)となり,取り込んだ物を分解する。リソソームが含有する加水分解酵素群は酸性条件下で効率良く働く性質を持っており,リソソーム内部の水素イオン指数はプロトンポンプの働きによってpH5程度と酸性に保たれている。
【0027】
エンドソームに取り込まれた,細胞送達用キャリア分子はリソソームで分解され一部は細胞内に蓄積すると考えるが,この時細胞内には,蓄積された未消化の多量の細胞送達用キャリアの構成物質も含まれる。この為に,オートファジーが活性化されると考えられる。つまりエンドサイトーシスによりエンドソームが活性化すると,エンドソーム系だけでなくオートファジーも活性化され,オートファゴソーム系の関連タンンパクも生合成も活性化すると考えられる。つまり本発明の目的の一つは,エンドソームとオートファゴソームの活性を担うマーカーを検出し,このマーカーを使用して,エンドソームとオートファゴソームを活性化する物質を探索し,最終的にそれを乳化物に応用するという事である。
【0028】
本発明の解決すべき課題である細胞送達用キャリアの必要4要素である,1)抗酸化活性 2)細胞内吸収性 3)細胞内崩壊性,4)安定性と安全性のうち,エンドソームと関連する,エンドサイトーシスは,2)細胞内吸収性に関係し,オートファゴソームが担うオートファジーは,3)細胞内崩壊性に関連するという意味もある。
【0029】
リソソームは,内部に消化酵素を含み細胞におけるタンパク質などの分解を行う。オートファジーは,エンドサイトーシスとならぶ,細胞質におけるタンパク質などの分解機構である。脂質膜が伸長し分解物質を含む細胞質の一部を囲む。次に脂質膜が内膜,外膜とに分離することで脂質二重膜からなるオートファゴソームが形成する。消化酵素を含むリソソームがオートファゴソーム外膜と融合し,外膜と内膜とのあいだにリソソームの消化酵素が流入,次に内膜のみが分解され,分解物質と消化酵素が混ざり分解工程が開始する。
【0030】
オートファゴソームの形成に必要な因子は多数存在するが,大きく下記の5つの機能的なたんぱく質のグループに分類できる。1)ユビキチン様因子Atg8の結合反応系(Atg8系):Atg8, Atg4, Atg7, Atg3。2)ユビキチン様因子Atg12の結合反応系(Atg12系):Atg12, Atg7, Atg10,
Atg5, Atg16。3)Atg1タンパク質キナーゼ複合体:Atg1, Atg13, Atg17, Atg29。4)Vps34 PI3キナーゼ複合体:Vps34, Vps15, Atg14, Atg6。5)Atg9とAtg2-Atg18複合体:Atg2, Atg18, Atg9。
【0031】
このような,エンドソーム,オートファゴソームの活性化マーカーとして,本発明者らは,Atg5に注目した。なぜなら,Atg5は,オートファゴソーム形成ばかりでなく,エンドソーム,リソソームの生合成ににも必要である事が明らかにされたからである(非特許文献6)。
【0032】
即ち本発明では,オートファゴソーム,エンドソーム,リソソームの生合成に必要な淡白のうちいずれか1つ以上のタンパク合成の促進作用を有する物質をビタミン誘導体の中からスクリーニングすることにある。
【0033】
本発明者らは,Atgタンパクのうち特に,Atg5は,エンドソーム,リソソーム,オートファゴソームの産生に関連している為,このATG5タンパクの合成を担うm-RNAをマイクロアレイにより検出し,無添加コントロールと比較する事により乳化組組成物に修飾したビタミン誘導体の種類と細胞への取り込みとの関係を調べた。
【0034】
その結果,乳化組組成物に特定のビタミン誘導体を混ぜると,細胞送達用キャリアの細胞取り込みが増加し,それと同時にATG5の値がコントロールに比較して優位に増加した。 さらに,このATG5以外にも,同時にATG2,3,4,7,10,101,12,13,14,15のm-RNAレベルも上昇する事が判明した。
【0035】
そこで,本発明者らは,エンドサイトーシスとオートファジー活動の指標として,エンドソームにも関連するが,主にオートファゴソーム形成に関連すると報告されている,ATG2,3,4,5,7,10,101,12,13,14,15をマーカーに設定し,細胞送達用キャリアに様ざまなビタミン誘導体を修飾して,このタンパクの合成の活性化をm-RNAをマイクロアレイにより定量し,本発明の細胞送達用キャリアを完成させた。さらに,これら物質を細胞送達用キャリアに修飾することによりより,細胞吸収性の良好な細胞送達用キャリアを提供できることを見出した。
【0036】
細胞リン脂質膜の透過性だけでは説明ができなかったアスコルビン酸グリセリルオクチルなどの水溶性の誘導体は,高いATG活性を示した事から,エンドサイトーシスが活性化し,結果的に高い細胞内輸送能力を持つ事を説明する事ができた。さらに,エンドサイトーシスされた物質は,オートファジー活性を増強させる事も知られているので,非メラニン産生細胞において,アスコルビン酸グリセリルオクチルでオートファジー活性を増強させる事も説明できる。
【0037】
たとえば,オートファゴソーム前駆体メンブレンファゴフォアの拡大にはATG2が必要である(非特許文献7)。Atg2タンパク質は,オートファゴソーム形成ならびにリソームなどの脂質小滴の形態および分散の調節において機能する(非特許文献8)。
【0038】
オートファジーは,二重膜オートファゴソームを形成することによって始まり,オートファゴソームがリソソームと融合することによって終わる。オートファゴソーム上のオリゴマーATG14は特殊な複合体に結合し,オートファゴソームとエンドリソソーム融合を促進する(非特許文献9)
【0039】
その結果,以下の本発明の細胞送達用キャリアが,必須4要素の全ての問題を解決できる事を見いだし本発明を完成させた。
【0040】
本発明の細胞送達用キャリアにおける,エンドサイトーシス促進物質が両親媒性抗酸化ビタミン誘導体であると,細胞送達用キャリア内の酸化に対して不安定な物質を安定化させ,高い細胞吸収性を実現する事ができ,さらに,細胞のビタミン結合タンパクとのアフィニティーが強化されるので,細胞に取り込まれやすく,より好ましい。
【0041】
さらに,エンドサイトーシス促進物質が両親媒性を持つ抗酸化ビタミン誘導体であると,その界面活性力により乳化膜表面にアンカーし易いのでより好ましい。
【0042】
この両親媒性抗酸化ビタミン誘導の存在部位は,乳化膜そのものか,叉は,乳化膜間に存在する事により,初めて抗酸化バリアを形成し,これにより効率的に外部の活性酸素の侵入を有効成分が存在する中心核まで投達することを阻止する。従って,通常のDDSカプセルのように有効成分が存在する中心核やDDS粒子が浮遊する溶媒に抗酸化剤が存在する場合と明確に異なる。
【0043】
両親媒性抗酸化ビタミン誘導体により,その単独若しくは複合物の使用により有用なラメラ構造をもつ細胞送達用キャリアを形成しうること,およびこれらの抗酸化膜で抱接された物質が活性酸素から守られ,酸化し易い有効成分であっても,その安定性を維持しうることは,本発明者等が既に2007年に発見し論文にしている。
【0044】
両親媒性抗酸化剤とは,アスコルビン酸やトコフェロール等の活性中心に,反対の極性を持つ修飾基で保護する事により,水溶性のアスコルビン酸を脂溶性に,脂溶性のトコフェロールを水溶性に近づけ,両親媒性を持たせた誘導体である。活性中心を修飾する為に抗酸化活性も低下している。活性酸素との反応速度をあえて低下させているのである。両親媒性の抗酸化ビタミン誘導体の活性酸素との反応速度の低下は,プロオキシダントの発生も低下させることが知られている。
【0045】
両親媒性抗酸化ビタミンを従来通りの方法で只添加するだけでは,酸化され易い有効成分の効率的な活性酸素の防御効果は発揮できず,乳化膜自体,若しくは乳化膜間に局所的に両親媒性抗酸化ビタミンが存在する事により初めて本発明の効果が効率的に発揮できるのである。これは,有効成分が存在する中心核に抗酸化ビタミン誘導体が存在するよりも,中心核の周囲に膜状に抗酸化ビタミン誘導体のバリアが存在する方が,外部からの活性酸素に対してより効果的に消去できる為であり,さらにその膜がラメラ構造を取る事により多層化すれば,幾重にも抗酸化バリアが張り巡らされる事により,有効成分が存在する中心核を守る構造がより強化されるためである。従って,乳化膜は,モノラメラである脂質2重膜及びそれ以上の多層ラメラ構造がより効果的となり,本名発明では,3重膜以上のラメラ構造が最も本発明の有効性を発揮するために適する。
【0046】
さらに本発明の両親媒性抗酸化ビタミン誘導体は,本発明のラメラ構造の乳化膜と乳化膜の間に10%以上存在することが望ましい。この定量方法は,ゲル濾過時における,リポソーム分画と非リポソーム分画の水分と非水分における両親媒性抗酸化ビタミンの濃度をHPLCで分析する事により容易に測定する事ができる。
【0047】
細胞送達用キャリアに抱接された有効成分の酸化を防止し,活性酸素から守る為に,従来のブチルヒドロキシアニソール (BHA)などの強力な抗酸化剤やアスコルビ酸やトコフェロール等の抗酸化ビタミン等を,有効成分や細胞送達用キャリアとともに添加する方法は,従来より行なわれていたが,これらの両親媒性でない抗酸化剤を添加するだけでは,十分な抗酸化力を発揮できず,抱接された有効成分を長期に渡り失活させないで維持する事は極めて困難であった。これは,アスコルビン酸やトコフェロール等の両親媒性を持たない抗酸化剤の活性酸素との反応性が高く,速やかに酸化されてBHAラジカル,トコフェロールラジカルやアスコルビン酸ラジカルなどのプロオキシダントとなり抗酸化力が長期にわたり持続しない為である。又,これらの有効成分は,効果を期待して,有効成分と共存させるため細胞送達用キャリアの中心核内に留まらせていたため,中心核を取り巻く抱接膜自体をこれらの抗酸化剤で活性酸素から保護することはできなかったばかりか,その発想すらなかった。
【0048】
人工的に合成された強力な抗酸化剤であるBHAは,発がん性が確認され安全性の点で食品や化粧品等に添加する場合は商品価値が低下する問題がある。(1998/07/07 食品衛生調査毒性部会・添加物部会合同部会議事録 )。BHAの発ガンメカニズムは,体内で酸化的に代謝されセミキノンラジカルなどを発生させ発癌の原因になるとされる。BHAに限らず多くの抗酸化物質は,そのプロオキシダント効果により発がん性などの毒性をしめすことが,文献で明らかにされている(非特許文献10)。
【0049】
さらに,カロテノイド,トコフェロールまたはアスコルビン酸なども,個々の分子の酸化還元電位および細胞の無機化学的性質に応じて酸化促進剤としての特性を示し,これらの抗酸化ビタミンは,プロオキシダントとなり,これらの活性酸素代謝物がDNAや細胞膜を損傷する可能性があることが指摘されている(非特許文献11)。
【0050】
さらに,細胞浸透性を高める為に細胞送達用キャリアのサイズを小さくする事が行なわれているが,細胞送達用キャリアが小さくなれば,それに比例して,細胞送達用キャリアの細胞膜と単位有効成分当たりの活性酸素との会合確立が上昇する為に,よりプロオキシダントの発生確立が上昇し分解を受け易くなる。
【0051】
また,通常の細胞送達用キャリアの平均直径が30μm以下であるのに対して,皮膚浸透性を高める為に,近年要求される300nm以下に小さくした場合,その表面積は,30倍に増加するので,活性酸素の攻撃を30倍受け易くなる。つまり,小さな細胞送達用キャリアを作るほど有効成分が,分解し易くなり,効果が失われるばかりか,抗酸化剤のプロオキシダント毒性が上昇するという大きな問題が発生する。
【0052】
即ち我々の本発明における目的は,安定で安全な抗酸化被膜を持つ微小ナノカプセルを提供する事にあり,乳化膜と中心核の有効成分の酸化安定性を同時に向上させる事にあり,これを実現するには,従来の抗酸化剤の添加ではそのプロオキシダント効果により全く逆効果であることが判明した。従来の抗酸化剤に比べ逆に抗酸化活性の低い両親媒性の抗酸化剤を使用する事により初めて微小ナノカプセルにおいて,乳化被膜と中心核の有効成分の両者を同時に活性酸素から長期に安定に保護する事ができることを見いだした。
さらに,乳化被膜をラメラ構造にする,即ち多層カプセルにする事により,両親媒性抗酸化剤の配合比率を高め,より効率的に,活性酸素の通過を阻止する事が可能となった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0053】
【文献】特表2011-522616
【文献】特開2015-107986
【文献】表2016/199895
【文献】再表2015/170506
【文献】特表2017-506681
【文献】特表2017-502997
【文献】再表2016/199895
【非特許文献】
【0054】
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【文献】Takeuchi H, et al.,Pharm Res. 1996 Jun;13(6):896-901.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0055】
即ち,発明が解決しようとする課題を要約するならば,細胞送達キャリアにおいて,必要4要素である,1)抗酸化活性 2)細胞内吸収性 3)細胞内崩壊性 4)安定性と安全性の増強の4つの要素を同時に増強された細胞送達用キャリア粒子を提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0056】
上記の課題を解決するための手段を,要約するならば,細胞送達用キャリアに求められる1)抗酸化性は,優れた抗酸化ビタミン誘導体を細胞送達用キャリア表面に配置する事によって解決でき,2)細胞内吸収性は,エンドサイトーシスを誘導するビタミン誘導体を乳化組成に配合することにより高める事ができ,さらに刺激応答性ポリマーを細胞送達用キャリア表面に配置することにより,ターゲット細胞内またはターゲット細胞近傍部で細胞送達用キャリアを崩壊させる事ができ,さらに,配合したビタミン誘導体を細胞内のオートファジー活性とリソソーム活性を高めるものに限定することにより3)細胞内崩壊性を誘導し,細胞送達用キャリア内部で安定な両親媒精ビタミン誘導体成分を分解して細胞が利用可能なビタミンに変換するという,細胞送達用キャリアを提供することにある。
【0057】
本発明の請求項は以下からなる。
(1)
オートファジー関連遺伝子とカテプシン合成遺伝子の同時活性化物質と,刺激応答性ポリマー含有分子と,脂質の3グループから,それぞれ1種以上の物質が選択される混合物からなる細胞送達用キャリア。
(2)
オートファジー関連遺伝子とカテプシン合成遺伝子の同時活性化物質と刺激応答性ポリマー含有分子と乳化安定剤と,脂質の4グループから,それぞれ1種以上の物質が選択される混合物からなる,請求項1の細胞送達用キャリア。
(3)
オートファジー関連遺伝子とカテプシン合成遺伝子の同時活性化物質と刺激応答性ポリマー含有分子と乳化安定剤と有効成分と,脂質の5グループから,それぞれ1種以上の物質が選択される混合物からなり,細胞送達用キャリア内に有効成分が包接された,請求項1の細胞送達用キャリア。
(4)
脂質の一部叉は全部が,連続する炭化水素鎖8以上の脂質である,請求項1の細胞送達用キャリア
(5)
脂質の一部叉は全部が,界面活性物質である,請求項1の細胞送達用キャリア
(6)
脂質の一部叉は全部が,ラメラ形成界面活性物質である,請求項1の細胞送達用キャリア。
(7)
細胞送達用キャリアがモノラメラ構造とポリラメラ構造のいずれかの構造を有する,請求項1の細胞送達用キャリア。
(8)
脂質の一部叉は全部が,カチオン性脂質又はアニオン性脂質叉はアニオン性脂質のどちらか一方から選択される,請求項1の細胞送達用キャリア。
(9)
水系溶媒に分散させた微粒子で存在する請求項1の細胞送達用キャリア。
(10)
水系溶媒に分散させた粒子の平均粒子径が1nmから300nmの範囲のナノ粒子である,請求項1の細胞送達用キャリア。
(11)
細胞送達用キャリアが薬物送達システム用の細胞送達用キャリアである,請求項1の細胞送達用キャリア
(12)
オートファジー関連遺伝子とカテプシン合成遺伝子が,以下の表1から選択されるヒト遺伝子解析機構のヒトゲノム命名法委員会において登録されている遺伝子である,請求項1の細胞送達用キャリア
【表1】
(13)
オートファジー関連遺伝子とカテプシン合成遺伝子の同時活性化物質と,刺激応答性ポリマー含有分子(ア)のどちらか1つ以上の物質が,脂質で主に構成された膜分子の一部を構成する,請求項1の細胞送達用キャリア。
(14)
刺激応答性ポリマー含有分子(ア)が,脂質(イ)に,イオン結合している,請求項1の細胞送達用キャリア。
(15)
刺激応答性ポリマー含有分子が,温度,pH,光の3つのうちいずれか一つ以上の刺激応答性分子を含む,請求項1の細胞送達用キャリア。
(16)
オートファジー関連遺伝子とカテプシン合成遺伝子の同時活性化物質がビタミン誘導体から選択される,請求項1の細胞送達用キャリア。
(17)
オートファジー関連遺伝子とカテプシン合成遺伝子の同時活性化物質が以下の表2のビタミン誘導体群から選択される1種以上の物質からなる,請求項1の細胞送達用キャリア。
【表2】
(18)
脂質が以下の表3の物質群から選択される1種以上の物質である,請求項1の細胞送達用キャリア。
【表3】
(19)
脂質が界面活性を持つ脂質である,請求項1の細胞送達用キャリア。
(20)
界面活性を持つ脂質が水溶液中でラメラ形成する表4から選択される1種以上の物質である,請求項1の細胞送達用キャリア。
【表4】
(21)
刺激応答性ポリマー含有分子が,表5の温度刺激応答性物質,pH刺激応答性物質, 光刺激応答性物質からから選択される1種以上のモノマーの直鎖状,又は分岐状のポリマー構造を含む構造を持つ,請求項1の細胞送達用キャリア。
【表5】
(22)
乳化安定剤が,表6の多価アルコール,合成酸化防止剤,紫外線吸収剤,防腐剤から選択される1以上の成分である,請求項1の細胞送達用キャリア
【表6】
(23)
表7の物質群から選択される1種以上の化学物質が共有結合で化学修飾された刺激応答性ポリマーを含む,請求項1の細胞送達用キャリア。
【表7】
(24)
有効成分が表8から選択される1種以上の物質を含有する,請求項1の細胞送達用キャリア。
【表8】
(25)
細胞送達用キャリアの用途が,医薬品,医薬部外品,化粧品,サプリメント,動物医薬品,雑貨から選択される1種である請求項1の細胞送達用キャリア
(26)
細胞送達用キャリアの製剤の剤形が,外用剤,口腔用剤,座薬,経口剤,ドリンク剤,パップ剤,パック剤,スプレー剤,注射剤,ドレッシング剤,液剤,軟膏剤,エアゾ ール剤,粉末状,打型剤,クリーム剤,外用散布剤,散剤,顆粒剤,錠剤,軟カプセル剤,丸剤,板状の剤型,トローチ剤,ペースト剤,固型剤,潤製剤,チック様製剤から選択される一種以上である,請求項1の細胞送達用キャリア。
(27)
細胞送達用キャリアの効能または効果が表9から選択される一以上である,請求項1の細胞送達用キャリア。
【表9】
(28)
細胞送達用キャリアの効果発揮温度が45℃から70℃である温度刺激応答性ポリマーである請求項15の細胞送達用キャリア。
【0058】
本発明は,刺激応答性ポリマーを含有する分子と,オートファジー関連遺伝子とカテプシン合成遺伝子の同時活性化物質と,前記2物質を除く,炭素が8個以上連続結合した炭化水素鎖を含む脂質の3グループから,それぞれ1種以上の物質が選択される混合物からなる細胞送達用キャリアであり,かかる構成により,細胞送達用キャリアの抗酸化活性,細胞内吸収性 及び細胞内崩壊性を高め細胞送達用キャリア内物質の細胞内送達効率に優れ安定性と安全性を確保した。
【0059】
本発明の細胞送達用キャリアが,上記の性能を持つ理由は,以下のとおりである。即ち,本発明の実施例において明らかなように,ATG,CTS活性を有する物質,特にビタミン誘導体の安定性,界面活性力は,必ずしも細胞送達率と相関しないこと,及び,細胞吸収率とATG,CTS活性は,きれいに相関することが判明した。
【0060】
ビタミン類はヒト細胞にとり重要な栄養素であり,且つ細胞内濃度が血液濃度より高い事から,第1段階として,何らかの細胞表面のビタミン特異的レセプターに接着し,それが,第2段階で特異的チャンネルタンパク等により能動輸送される。安定なビタミン誘導体では,ビタミンレセプターには接着するが,第2段階の特異的チャンネルタンパク等による能動輸送ができない。即ち,細胞表面のビタミンレセプターは,ビタミン分子の一部を認識して,その部分だけで接着するが,第2段階の特異的チャンネルタンパクでは,ビタミン分子全体を認識してタンパク内に取り込みゲートを通過させて能動輸送するために殆どのビタミン誘導体が,能動輸送されない状態で細胞表面に接着して留まる。この状態が暫く維持されると,頻繁に行なわれる細胞外液を取り込むエンドサイトーシスである飲作用(ピノサイトーシス)により,レセプターに結合したまま細胞内に取り込まれ,細胞外液を満たした小胞(エンドソーム)を形成する。細胞にとりビタミン誘導体に結合したビタミンレセプターは,回収して,分解し,新たなビタミンレセプターを再生しようと働く。このため,エンドソームは,CTSを活性化させリソソームを形成し,これと融合し小胞内のビタミン誘導体を消化しようとするが,一部誘導体のまま分解されて細胞内に放出される。この異物がなんらかのシステムによりオートファジーシステムに認識され,ATG遺伝子が活性化しオートファゴソームを形成し,CTSを活性化させリソソームを形成し,これと融合し小胞内のビタミン誘導体を分解する。こうして,細胞内に取り込まれたビタミン誘導体は最終的には細胞に利用可能なビタミンとなる。従って本発明の,の細胞送達用キャリアには,このATG,CTS活性のあるビタミン誘導体を,付加させる事により細胞送達用キャリアの細胞へ接着力を高め細胞内取り込みを促進させる事ができる。
【発明の効果】
【0061】
即ち,本発明の細胞送達用キャリアは,細胞送達用キャリアの細胞へ接着力を高め有用成分の細胞内取り込みを促進させ,高い効率で目的組織に内包物を送達することができる。さらに,表面に刺激応答性ポリマー含有分子が修飾されることで,具体的には,温度刺激応答性ポリマーや光刺激応答性ポリマー修飾においては,温度上昇や光照射によりポリマーが疎水性となることにより,形成された水和層が減少することにより細胞送達用キャリア膜が破壊され細胞内に細胞送達用キャリア抱接物質が放出されさらに高い送達率を達成することができる。これらにより,極めて高い生体組織へのドラックデリバリ効率を達成でき,医薬品,化粧品,栄養補給製品などの送達効率を高めるために,大幅なコストダウンを実現でき,産業上極めて有用な技術となる。
【発明を実施するための形態】
【0062】
本発明の細胞送達用キャリアの効果のメカニズムを
図1に示した。
【0063】
図1は,本発明の細胞送達用キャリアの効果のメカニズムを示す図である。A)の右上のアは,刺激応答性ポリマー含有分子である。中に有効成分(イの黒い▲)が抱接されている。アで長い尾のようなものが,刺激応答性ポリマーであり,それに結合した界面活性を有する脂質により細胞送達用キャリアの膜内に融合(接続)している。ウは,ビタミン誘導体などのオートファジー関連遺伝子とカテプシン合成遺伝子の同時活性化物質であり,両親媒性のために,こちらも膜内に融合(接続)している。A)において,細胞膜表面のビタミンレセプターに結合する。B) ビタミン誘導体は,細胞表面でビタミンレセプターに認識され結合するが,分子形状が本来のビタミンと異なる為に,ビタミン輸送チャンネルで輸送されないため,細部膜表面に残りエンドサイトーシスされる。オは,細胞膜である。C)エンドソーム内に閉じ込まれた細胞送達用キャリアは,取り込み時間を見計らった外部刺激エにより,細胞表面の刺激応答性ポリマーの収縮により疎水性になる事から,膜の平行が崩れ容易に細胞送達用キャリアの膜が破壊され内容物がエンドソーム内に放出される。カは,消化酵素をもつリソソームである。D)リソソームはエンドソームと融合し,消化酵素をエンドソームに移動させ,E)においてエンドソーム内の分子を消化する。F)消化後エンドソームが破壊され,中の抱接成分(黒い▲)や一部未消化のビタミン誘導体(キ)が細胞内に放出されるようになる。未消化のビタミン誘導体は,オートファジー系を活性化させ,オートファゴソームで消化される。上記により,オートファジー関連遺伝子とリソソームの合成に関与するカテプシン合成遺伝子を同時に活性化すると考えられる。前述したようにオートファジー関連遺伝子とカテプシン合成遺伝子の一部はリソソーム形成にも関与する事が指摘され,本発明者等の上記の説明をより補足するものとなっている。
【0064】
pH刺激応答性ポリマーにおいては,細胞内に取り込まれた後のエンドソームやリソソーム等の小胞においては,プロトンスポンジ効果が関与することにより効果が発揮されると考える。プロトンスポンジ効果とは,弱酸性環境下でプロトン化する化合物が小胞内部に取り込まれた際,そのプロトン化によって小胞内のpHの低下が阻害され,多量のプロトンや塩化物イオンが小胞内に流入することで小胞内部の浸透圧が上昇し,小胞の膨潤や破裂が引き起こされる現象である。即ち,pHの低下に合わせて大量のプロトンを吸収する効果のことであり,例えば,ポリグルコサミン構造のキトサンなどの大量のアミノ基を有するカチオン性高分子がこの効果を示す。特に核酸送達医薬品のデリバリーシステムにおいてエンドソーム脱出を助ける手法としてこの仮説がBehrらにより提唱された。エンドサイトーシスにより作られたエンドソーム膜には,V-ATPaseと呼ばれるプロトンポンプが存在しており,エンドソーム内pHが5~6程度になるまでプロトンをエンドソーム内に輸送する。このプロトンスポンジ効果を有したカチオン性高分子は,pH5~7に緩衝域があり,エンドソーム内pHの低下に合わせてプロトンを大量に吸収する。これにより,エンドソーム内pHの低下は抑制され,pH低下のためにはより多くのプロトンの流入が必要となる。また,エンドソーム内外の電荷的平衡を保つためにアニオンも流入し,塩濃度・浸透圧が上昇する。この高い浸透圧を解消するため,さらに大量の水がエンドソーム内に流入し,その容量に耐えきれなくなり膜が崩壊することで,細胞送達用キャリア抱接物のエンドソーム脱出が促進される。
細胞表面でビタミンレセプターに認識され結合する本発明に使用できるビタミン誘導体としては,前述した段落番号0057の表2に示されるビタミン誘導体群から選択される1種以上の物質から選択されればよく、これらの誘導体は、我々のスクリーニングにより、従来のビタミン及びその誘導体と異なり,ビタミン輸送チャンネルで輸送されず、かつビタミン輸送チャンネルと結合し,細部膜表面に残りエンドサイトーシスされることが確認されている。
【0065】
構造にアスコルビン酸-2-リン酸エステルを持つ3つの異なるビタミン誘導体について,即ちリン酸アスコルビル3Na(APS),パルミチン酸アスコルビルリン酸3Na(APPS),(アスコルビル/トコフェリル)リン酸K (EPC)の混合物を使用しヒト表皮線維芽細胞で培養後DNAチップを使用した網羅解析を実施したところ無添加コントロールのRNA量との比較で,この混合物は多くのオートファジー関連遺伝子(ATG)とリソソーム局在プロテアーゼであるカテプシン(CTS)の遺伝子が活性化することを見出した。そこで84のビタミン誘導体に実施し,上記と同じ評価を実施したところ誘導体の中でも活性が高いものと低いものがあることが判明し、本発明者らは活性の高いものを本発明の細胞送達用キャリアに応用することを考え付いた。本発明者らはATG,CTS活性の異なるビタミン誘導体の細胞送達用キャリアの細胞取り込みに対する効果や臨床試験を行いATG,CTS活性が,細胞送達率と相関関係にある事を突き止めた。さらに、キャリアの構成要素である刺激応答性物質や脂質及び界面活性剤や安定剤の組み合わせを検討し、さらに安定性試験、キャリの安定化に不可欠の界面活性力試験などを行い、本発明の高い細胞輸送効率を実現する細胞送達用キャリアに応用可能な物質を絞りこんだ。
【0066】
ポリエチレンイミン(PEI)やポリアミドアミンデンドリマーがプロトンスポンジ効果を有することが知られており,遺伝子導入効率化のためにも広く用いられている。プロトンスポンジ効果を示すためには高い緩衝能力が必要とされるが,近年キトサンの緩衝能はエンドソーム内のpH範囲(4.5~7)において,PEIよりも優れているということが報告されている。本発明の細胞送達用キャリアは,少なくとも,オートファジー関連遺伝子とカ テプシン合成遺伝子の同時活性化物質と,刺激応答性ポリマー含有分子と,炭素が8個以上連続結合した炭化水素鎖を含む脂質の3グループから,それぞれ1種以上の物質が選択される混合物から構成されなくてはならない。このままでも使用できるが,さらに,上記に加えて細胞送達用キャリアの安定性を向上させるために既存の乳化安定剤が選択される事が望ましい。
【0067】
本発明に使用できる乳化安定剤としては,前記表6の多価アルコール,合成酸化防止剤,紫外線吸収剤,防腐剤から選択される1以上の成分が選択されればよく,好ましくは,多価アルコール,合成酸化防止剤,紫外線吸収剤,防腐剤からそれぞれ1種以上の物質が選択されることが望ましい。これらの安定剤は,本発明の細胞送達用キャリア全体に対して,0.01から10%重量の範囲で添加する事ができる。これ以上の比率で添加すると毒性が高まり,これ以下であると安定性の効果を発揮しにくくなる。
【0068】
本発明のオートファジー関連遺伝子とカテプシン合成遺伝子の同時活性化物質の,オートファジー関連遺伝子とカテプシン合成遺伝子とは,国際ヒト遺伝子解析機構のヒトゲノム命名法委員会(HGNC)において登録されている遺伝子であり,その詳細を表10と表11に示した。以下,本発明では,HGNCの承認記号のみを用いるが,以前の記号や同義語が複数存在することから,それらを以下の表に整理した。以前の記号や同義語において名前や記号が異なる遺伝子もHGNCの承認記号の遺伝子と同一のものであることが確認されている。
【0069】
本発明の細胞送達用キャリアには,以下の表10のオートファジー関連遺伝子と表11のカテプシン合成遺伝子を同時に活性化する物質が使用されなければならず,その最も好適例が限定されたビタミン誘導体である。
【0070】
【0071】
【0072】
本発明の同時活性化物質では,上記の表10と表11記載のオートファジー関連遺伝子とカテプシン合成遺伝子の全ての遺伝子のうち,表10と表11のそれぞれの表から1以上の遺伝子を同時に活性化できる物質のみが使用できるが,特に前記表1記載のオートファジー関連遺伝子とカテプシン合成遺伝子のそれぞれの1遺伝子を同時に活性化する物質が適している。本発明の遺伝子の活性化の評価方法は、通常用いられるDNA及びそれに対応するRNA遺伝子発現解析法のすべてを使用することができ、リアルタイムPCR,デジタルPCR、次世代シーケンシング、マイクロアレイ解析、サンガーシーケンシング、クオンティジーンRNAアッセイ、レーザーキャプチャーマイクロダイセクションなどを使用できるがこれに限定されない。段落番号0057の表1は、上記の表10と表11記載のオートファジー関連遺伝子のHGNCの承認記号のみを記載してるが、ヒト遺伝子解析機構のヒトゲノム命名法委員会(HGNC)のID 、HGNCの承認名、以前の記号、 同義語であっても使用することができる。。
【0073】
本発明で使用できる,炭素が8個以上連続結合した炭化水素鎖を含む脂質としては,脂質が最も望ましく,さらに界面活性作用を持つ界面活性物質であってもどちらでも良い。炭素が8個以上連続結合した炭化水素鎖を含む脂質が細胞送達用キャリアの安定性をより高める。7以下の炭素では細胞送達用キャリアの安定性が低下し,炭素が30以上でも同様に細胞送達用キャリアの安定性が低下する。さらに,好ましくは,脂質と界面活性作用を持つ物質の両者が同時に存在することが細胞送達用キャリアの安定性をより高めるために適している。すなわち,本発明の細胞送達用キャリアの主要部分は,脂質と界面活性作用を持つ物質によって構成され,さらに,この乳化膜に,脂質と界面活性作用を持つ物質と刺激応答性ポリマー含有分子が以下の図2又は図3のように膜の構成単位又は表面にイオン結合したものとして配置されることが最も望ましい。
請求項13に示めされる,本発明の細胞輸送用キャリアは,オートファジー関連遺伝子とカテプシン合成遺伝子の同時活性化物質と,刺激応答性ポリマー含有分子(ア)のどちらか1つ以上の物質が,脂質で主に構成された膜分子の一部を構成する,請求項1の細胞送達用キャリアであればよく,代表的な構造としては以下の図2の構造をもつものが使用できるがこれに限定されない。
【0074】
本発明の細胞送達用キャリアの代表的な構造例の1を図2に示した。
図の説明:刺激応答性ポリマー含有分子(ア)と,オートファジー関連遺伝子とカテプシン合成遺伝子の同時活性化物質(イ),のどちらか1つ以上の物質が,脂質(ウ)で主に構成された膜分子の一部を構成する。
【0075】
本発明の細胞送達用キャリアの代表的な構造例の2を図3に示した。
図3の説明:刺激応答性ポリマー含有分子(ア)が,脂質(イ)に,イオン結合している,本発明の細胞送達用キャリアである。(ウ)は,オートファジー関連遺伝子とカテプシン合成遺伝子の同時活性化物質。
さらに,請求項14に示される本発明には,刺激応答性ポリマー含有分子(ア)が,脂質(イ)に,イオン結合している,請求項1の細胞送達用キャリアを使用することもでき,その代表例を図3に示す。
【0076】
本発明における細胞送達用キャリアを構成する脂質は,炭素が8個以上連続結合した炭化水素鎖を含む脂質であればよいが,好ましくは,脂質か界面活性を有する脂質である事が望ましい。さらに,それらは,膜融合性能を有し,膜構成成分としてカチオン性叉はアニオン性又は両性などのイオン性脂質を有するものであればさらに望ましい。
【0077】
本発明のキャリアに使用可能な脂質は、35℃において液体であり、かつ前述の表2のビタミン誘導体と併用したときに、40℃、湿度80%、6か月間の加速試験においてビタミン誘導体の減衰率を20%以下に抑制しビタミン誘導体を安定に保つものであれば使用できるが,これらの条件を満たす脂質の中で特にビタミン誘導体の減衰率を10%以下に特別に抑制できるものを段落番号0057の表3に示した。
さらに,本発明のキャリアに使用可能な脂質のうち界面活性を持つ脂質については、35℃において液体であり、かつ前述の表2のビタミン誘導体と併用したときに、40℃、湿度80%、6か月間の加速試験においてビタミン誘導体の減衰率を20%以下に抑制し安定に保つものであれば使用できるが,これらの条件を満たす脂質の中で特に本発明に適した界面活性を持つ脂質は、光学顕微鏡下で包接物を含有し、ラメラ構造が存在することを確認できたもので、さらに、ビタミン誘導体の減衰率を10%以下に抑制しビタミン誘導体を安定に保つことができるものであればよく、ラメラ構造の確認はすでに公知の方法である染色電子顕微鏡法による多層膜の直接観察か偏光顕微鏡下でのマルターゼクロス偏光の観察によりその存在を知ることができる。中でも段落番号0057の表4に示した界面活性作用を持つ脂質は、安定性が高く層構造が多数確認できる良好なラメラ形成作用が本発明者らにより認められたものであり本発明に非常に適している。
【0078】
例えば,本発明に使用できる脂質は,細胞送達用キャリア膜融合性能を有する脂質もしくは高分子等とから形成されたものであってもよく,カチオン性脂質又はアニオン性脂質自体が,膜融合性能を有する脂質であってもよい。本発明における細胞送達用キャリアにおいて,膜構成成分として含まれる脂質や界面活性を有する脂質は,1種類であってもよく,2種以上の組み合わせであってもよい。なお,本発明における「膜融合性能」とは,エンドソーム,オートファゴソーム,リソソーム膜又は細胞膜に対する融合性能のことを指す。
【0079】
カチオン性脂質の例としては,例えば,1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP),N-[1-(2,3-ジオレオイルプロピル)]-N,N-ジメチルアミン(DODAP),N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロライド(DODAC),N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB), N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA),N,N-ジメチル-2,3-ジオレイルオキシプロピルアミン(DODMA),2,3-ジオレイルオキシ-N-[2-(スペルミンカルボキシアミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパナミニウムトリフルオロ酢酸(DOSPA),N-[1-(2,3-ジテトラデシルオキシプロピル)]-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチル臭化アンモニウム(DMRIE),N-[1-(2,3-ジオレイルオキシプロピル)]-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチル臭化アンモニウム(DORIE)等のリン脂質でない脂質が挙げられる。あるいは,リン脂質等が挙げられる。これらは,単独で用いてもよく,2種以上を併用してもよい。
【0080】
本発明に使用できるリン脂質等としては,例えば,ホスファチジルエタノールアミン,ホスファチジルコリン,リゾホスファチジルコリン,ホスファチジルグリセロール,ホスファチジン酸,ホスファチジルセリン,ホスファチジルイノシトール,カルジオリピン,スフィンゴミエリン,大豆レシチン,卵黄レシチン,リゾレシチン等の天然リン脂質等のリン脂質や膜融合能を持つ高分子サクシニル化ポリグリシドール(SucPG),ホスファチジルエタノールアミンとしては,1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE),1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DLoPE),1,2-ジエルコイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DEPE),1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DMPE),1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DPPE),1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DSPE)などが挙げられる。また,細胞の死滅をより抑えることができることから,本発明における脂質は,膜構成成分として,リン脂質を含むことが好ましい。
【0081】
本発明に使用できるアニオン性脂質の例としては,フォスファチジルセリン,フォスファチジルグリセロール,フォスファチジン酸,フォスファチジルイノシトール又はフォスファチジルイノシトールリン酸,又はこれらのリゾ脂質,過酸化脂質,酸化物,プラスマローゲン又はジエーテル脂質などがある。
【0082】
イオン性の刺激応答性ポリマー含有分子をイオン結合させる場合は,本発明の脂質は,刺激応答性ポリマーと逆のイオン性を持つ脂質を用いるのが好ましく,例えば,ポリグルコサミン,キトサンなどのカチオン性のアミン類を多く持つポリマーを本発明の細胞送達キャリア表面にイオン結合させる場合の脂質はアニオン性又は非カチオン性又は両性の脂質を,全脂質の多くの比率又は全部に使用することが適している。中でもアニオン性脂質を用いる事がより好ましい。
【0083】
本発明における細胞送達用キャリアは,より細胞送達後の細胞の死滅の抑制効果に優れ,かつ,細胞内への送達効率に優れるという観点から,リン脂質でない脂質と膜融合性脂質とを,細胞内への送達効率に優れるモル比で,3:0.5~3:20のモル比で膜構成成分として含むことが好ましく,3:2~3:15のモル比で膜構成成分として含むことがより好ましく,3:5~3:10のモル比で膜構成成分として含むことが更に好ましい。
また,脂質として1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)を,膜融合性脂質として1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)を,前記のモル比で細胞送達用キャリアの膜構成成分として含むことが好ましい。
【0084】
本発明における刺激応答性ポリマー含有分子とは,刺激応答性ポリマーそのものか,又は刺激応答性ポリマーに目的別に他の物質が化学修飾されたものであれば良いが,ここでいう目的別に化学修飾されうる他の物質とは,刺激応答性ポリマーが細胞送達用キャリアの膜の主要な構成成分である脂質,叉はこれに近い構造の分子と,化学結合した物質である場合は,刺激応答性ポリマーが膜に対して安定に接着できるために,これの脂質と結合させることが特に好ましい。これを実施例では,刺激応答性ポリマー結合脂質というが,これが刺激応答性ポリマー含有分子の好適例である。
【0085】
さらに好ましくは,細胞送達用キャリア膜が主に界面活性をもつ脂質で構成され,刺激応答性ポリマーが細胞送達用キャリアの膜の主要な構成成分である界面活性を持つ脂質,叉はこれに近い構造の分子と化学結合した物質であることが好ましい。本発明のキャリアに使用可能な刺激応答性物質については、温度刺激応答性物質,pH刺激応答性物質, 光刺激応答性物質からから選択される1種以上のモノマーの直鎖状,又は分岐状のポリマー構造を含む構造を持てば良いが、さらに本発明においてより有効な刺激応答性物質の性質は、前述の表2のビタミン誘導体と併用したときに、40℃、湿度80%、6か月間の加速試験においてビタミン誘導体の減衰率を20%以下に抑制し安定に保つものであればなおよく、本発明者らは、段落番号0057の表5の物質群から選択される1種以上の刺激応答性物質であれば、これらの条件の安定性をクリアできる細胞送達用キャリアを作ることができることを見出した。
さらに、これらの刺激応答性ポリマーを含む本発明の細胞送達用キャリアが、40℃、湿度80%の環境で6か月間保存した後、通常の光学顕微鏡と偏光顕微鏡でキャリアの状態を観察するとき、キャリアが破壊されず試験開始時と同様にキャリア内に顕微鏡下で蛍光色素を内包することが観察でき、且つび偏光顕微鏡下においてマルターゼクロス偏光が存在することを確認できたもので、且つ、ビタミン誘導体の減衰率を10%以下に抑制しビタミン誘導体を安定に保つことができたものについては、本発明に特に有用に使用できる刺激応答性物質である。これらの刺激応答性物質の例としては、前記表7の物質群から選択される1種以上の化学物質が共有結合で化学修飾された刺激応答性ポリマーが本発明者らにより確認された。
【0086】
刺激応答性ポリマー結合した脂質部分が細胞送達用キャリアの膜成分の界面活性を示す脂質の炭化水素叉は脂質の炭化水素部分と融合し,刺激応答性ポリマー部分は,細胞送達用キャリア外側の水溶媒部分に分散するため,あたかも刺激応答性ポリマーが細胞送達用キャリア膜から外側の溶媒側へ飛び出したような構造を取る。この状態を,刺激応答性ポリマー結合脂質により細胞送達用キャリア膜を刺激応答性ポリマーで修飾するという表現もできる。この場合,該脂質で修飾された刺激応答性ポリマー含有分子は,より細胞内での崩壊後の細胞の死滅の抑制効果に優れ,かつ,細胞内への送達効率に優れるという観点から,膜構成成分としての全脂質のうち,刺激応答性ポリマー含有分子は,0.05~40モル%であることが好ましく,1.0~20モル%であることがより好ましく,2.0~8.0モル%であることが更に好ましい。また,本発明における温度,pH,及び光の刺激応答性ポリマー含有分子は,膜融合性脂質と結合されることが好ましく,1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)と結合することもできる。
【0087】
温度刺激応答性ポリマーは,水に対する下限臨界溶解温度(Lower Critical Solution Temperature:LCST)以下の温度では,細胞送達用キャリア表面に水和層を形成させ,細胞送達用キャリアと細胞膜との親和性を低下させるが,下限臨界溶解温度以上では,凝集して疎水化し,細胞送達用キャリアとの細胞膜との親和性を向上させる。さらに,疎水化が進むと膜平衡が崩れ膜が破壊される。このように,本発明における温度応答性ポリマーは,水に対する下限臨界溶解温度が低いと,細胞送達用キャリアと細胞膜との親和性を低下して組織内を自由に移動できる。目的細胞への到達時間を見計らい温度を上げる事により,細胞膜接着性を高め,且つエンドサイトーシスされ細胞内に取り込まれた細胞送達用キャリアは崩壊し細胞送達用キャリア内物質を細胞内に拡散させる手助けをする。同様な現象は,pH,及び光の刺激応答性ポリマーの場合,温度上昇刺激でなく膜内外のpH変化やデバイスによる光刺激により発生させる事ができる。
【0088】
本発明における温度刺激応答性ポリマー含有分子の水に対する下限臨界溶解温度は,体温に近い温度から製品流通時の夏場の車両輸送上の最高温度である70℃までの温度(例えば,35.0~70.0℃)の温度であることが好ましい。他方,本発明のおける温度応答性ポリマーは,下限臨界溶解温度が体温付近の温度であっても,できるだけ高い方が,細胞内への送達後の細胞死滅を抑制しやすい。このように,細胞内への送達にも優れ,かつ,核酸の細胞内への送達後の細胞死滅を抑制しやすいことから,温度応答性ポリマーは,水に対する下限臨界溶解温度は,37.0~42.0℃であることが好ましく,37.5~41.0℃であることがより好ましく,38.0~40.5℃であることが更に好ましい。なお,本発明において,温度応答性ポリマーの水に対する下限臨界溶解温度は,示差走査熱量測定(Differential scanning calorimetry:DSC)により測定する。
【0089】
本発明における細胞送達用キャリアに含まれる温度,pH,及び光の刺激応答性ポリマー含有分子の構成単位であるモノマーの具体例としては,本発明の請求項で示した通りである。
【0090】
例えば,これらのモノマーの単独重合により構成されたポリマーや,これらのうちの2種類以上のモノマーの共重合体であってもよい。また,これらのモノマー以外のモノマーとの共重合,ポリマー同士のグラフト重合又は共重合を行ったものを用いてもよく,あるいはこれらモノマーの単独重合体と共重合体の混合物を用いてもよい。また,温度応答性ポリマーは,ポリマー本来の性質を損なわない範囲で架橋してもよい。
【0091】
温度応答性ポリマーの水に対する下限臨界溶解温度は,以上で述べたような温度応答性ポリマーを構成するモノマーを,それぞれの性質に応じて適宜選択することで,調節することができる。
【0092】
温度,pH,及び光の刺激応答性ポリマー含有分子としては,細胞内への送達にも優れ,かつ,細胞内への送達後の細胞死滅を抑制しやすいことから,特に,各種刺激応答性モノマーと,ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA)などの他のモノマーとの共重合体を用いることもできる。重合体の中の,各種刺激応答性モノマーと他のモノマーのモル数であるが,各種刺激応答性モノマーが90~99であることがより好ましく,他のモノマーは,1~10であることがより好ましい。
【0093】
例えば,温度応答性ポリマーとしては,細胞内への送達にも優れ,かつ,細胞内への送達後の細胞死滅を抑制しやすいことから,特に,N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド(NIPAA)と,ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA)との共重合体を用いることもできる。重合体の中のNIPAAとDMAPAAのモル数であるが,NIPAAが90~99であることがより好ましく,DMAPAAは,1~10であることがより好ましい。
【0094】
本発明における温度,pH,及び光の刺激応答性ポリマー含有分子の分子量は,特に限定されず,例えば,重量平均分子量が1000~100000であってもよいが,細胞内への送達にも優れ,かつ,細胞内への送達後の細胞死滅を抑制しやすいことから,重量平均分子量が2000~70000であることが好ましい。なお,重量平均分子量は,ゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0095】
温度応答性ポリマーで細胞送達用キャリアの表面を修飾するには,例えば,カチオン性脂質又はアニオン性脂質と膜融合性脂質とから細胞送達用キャリアを作製する際に,あらかじめ,膜融合性脂質,あるいはカチオン性脂質又はアニオン性脂質のいずれかによって温度応答性ポリマーを化学的に修飾しておき,この脂質で修飾された温度応答性ポリマーを,細胞送達用キャリア作製時に混合することで,細胞送達用キャリアの作製後,表面が温度応答性ポリマーにより修飾された構造となる。
【0096】
本発明の細胞送達用キャリアの作製方法は,従来の公知の方法を用いることができる。例えば,本発明の細胞送達用キャリアをカチオン性脂質又はアニオン性脂質と膜融合性脂質とから作製する場合,カチオン性脂質又はアニオン性脂質と膜融合性脂質を,溶媒(例えば,クロロホルム等)中に溶解し,溶媒を取り除いてから,形成された脂質の薄膜をリン酸緩衝生理食塩水等を用いて水和させ,次いで超音波処理とエクストルーダー処理を行って,細胞送達用キャリアの粒径を調整することで,作製することができる。
【0097】
細胞送達用キャリアの粒径は,特に限定されず,例えば,平均粒径0.05~1μmのものを用いることができる。また,細胞送達用キャリアの平均粒径は,動的散乱法(DLS)により測定する。
【0098】
本発明の細胞送達用キャリアは,ビタミン誘導体と刺激応答性ポリマー含有分子のどちらか1以上が,細胞送達用キャリアの乳化膜を構成する構造であってもよい。又,本発明の細胞送達用キャリアは,ビタミン誘導体と刺激応答性ポリマー含有分子の1以上が,細胞送達用キャリアの表面に,イオン結合している構造であってもよい。
【0099】
本発明の細胞送達用キャリアが送達される細胞は,特に限定されず,例えば,角化細胞,有棘細胞,顆粒細胞,角質細胞,線維芽細胞,色素細胞,樹状細胞,ランゲルハンス細胞,メルケル細胞,血管内皮細胞,皮脂腺細胞,エクリン腺細胞,アポクリン腺細胞,脂肪細胞,メルケル盤細胞,マルスネス小体細胞,ルフィニ終末細胞,パチニ小体細胞,毛包細胞,毛乳頭細胞,毛母細胞,毛母体,毛髪線維細胞,内毛根鞘細胞,外毛根鞘細胞,立方上皮細胞,鞘小皮細胞,立毛筋細胞,皮膚幹細胞,毛包幹細胞 ,色素幹細胞 ,汗腺細胞,皮脂腺細胞,毛包漏斗部細胞,肺細胞,結腸細胞,直腸細胞,肛門細胞,胆管細胞,小腸細胞,胃細胞,食道細胞,胆嚢細胞,肝細胞,膵臓細胞,虫垂細胞,乳細胞,卵巣細胞,子宮頸細胞,前立腺細胞,腎細胞,神経膠芽腫細胞,皮膚細胞,リンパ細胞,絨毛腫瘍細胞,頭頸部細胞,骨原性肉腫細胞,血液細胞等の細胞,又はこれらの癌細胞(子宮頸癌細胞,肺癌細胞,結腸癌細胞,直腸癌細胞,肛門癌細胞,胆管癌細胞,小腸癌細胞,胃癌細胞,食道癌細胞,胆嚢癌細胞,肝癌細胞,膵臓癌細胞,虫垂癌細胞,乳癌細胞,卵巣癌細胞,前立腺癌細胞,腎癌細胞,中枢神経系の癌細胞,神経膠芽腫細胞,皮膚癌細胞,色素癌細胞,リンパ腫細胞,絨毛癌腫瘍細胞,頭頸部癌細胞,骨原性肉腫細胞,血液癌細胞等)等が挙げられる。本発明の細胞送達用キャリアが送達される細胞は,特に,細胞内への送達効率,抗酸化効果,組織内移動性,皮膚バリア透過性及び送達後の細胞の死滅を抑制しやすいことから,皮膚に存在する細胞への送達に好適である。
【0100】
本発明の細胞送達用キャリアには,ビタミン誘導体の他にも,有効成分として段落番号0057の表8から選択される1種以上の物質を有効成分として含有することもできる。さらに,本発明の細胞送達用キャリアの包接できる有効成分として既知の有効成分を配合する事もでき,これらは,既知の公定書や文献記載の有効成分であればよく,例えば,その代表的公定書や文献には以下が挙げられるがこれに限定されない。例えば,第十七改正日本薬局方ISBN 978- 4840748315,The United States Pharmacopeia and National Formulary 2018, USP41-NF36, ISBN 978-3-7692-7022-8,International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook (2016) 16TH EDITION (Personal Care Products Council, Washington, D.C. USA) ISBN 1-882621-55-7,医薬部外品添加物リスト改訂版,薬事日報社,2017,ISBN:978-4-8408-1492-8 C3047 ,厚生労働省医薬食品局審査管理課長 発令の薬食審査発第1225001 号 1225001 号記載のいわゆる薬用化粧品中の有効成分リスト ,医薬部外品原料規格 : 統合版. 2006, 薬事日報社,2013 ISBN:978-4-8408-1227-6 C3047,医薬部外品原料規格 : 統合版 2006 追補 2, 薬事日報社, 2018 ISBN:978-4-8408-1464-5 C3047が挙げられる。これらの有効成分を本細胞送達用キャリアにより包接する場合の有効成分濃度は,特に限定されず,有効成分の効果発現濃度や目的に応じて適宜変更することができ,例えば,1ppmから50%重量の範囲内から選択することができる。
【0101】
本発明の細胞送達用キャリアにビタミン誘導体が使用されている場合は,このビタミン誘導体の効果を発現できるため,他の包摂有効成分が必ずしも存在しなくとも良い。又,その有効成分濃度は,特に限定されず,有効成分の効果発現濃度や目的に応じて適宜変更することができ,例えば,1ppmから50%重量の範囲内から選択することができる。
【0102】
本発明の細胞送達用キャリアの投与量は,特に限定されず,有効成分の効果発現濃度や目的に応じて適宜変更することができるが,外用剤に添加して皮膚に塗布する場合は,製剤に対して本発明の細胞送達用キャリアを0.001%から50%重量添加した製剤を,皮膚表面積に対して,1μgから10g/1cm2/日を1日あたり1回から10回に分けて塗布する事もできる。
【0103】
本発明の細胞送達用キャリアの投与方法は,特に限定されず,標的とする細胞の種類に応じて適宜選択することができる。例えば,外用投与,経口投与,注射(静脈内注射,皮下注射,筋肉内注射等)による投与方法を用いることができる。
【0104】
さらに,投与時にイオントフォレシス,エレクトロポレーション,音波,超音波,低周波,高周波,温熱器,各種レーザー,各種光エネルギーデバイスなどの各種デバイスやガーゼ,不織布,紙,フィルム,タオル,マスクシート,炭酸発生装置,蒸気発生装置,酸素発生装置などの用具を用いる事もできる。さらにマイクロニードル やメソセラピー器具なども用いることができる。
【0105】
本発明の細胞送達用キャリアの用途は,効果が発揮可能な全ての用途に使用できるが,医薬品,医薬部外品,化粧品,サプリメント,動物医薬品,雑貨から選択される用途に使うのが好ましい。
【0106】
更にこれらの用途に使用する場合の本発明の細胞送達用キャリアの製剤の剤形は,特に限定されないが,好ましくは,外用剤,口腔用剤,座薬,経口ドリンク剤,パップ剤,パック剤,スプレー剤,注射剤,ドレッシング剤,液剤,軟膏剤,エアゾ ール剤,粉末状,打型剤,クリーム剤,外用散布剤,散剤,顆粒剤,錠剤,軟カプセル剤,丸剤,板状の剤型,トローチ剤,ペースト剤,固型剤,潤製剤,チック様製剤から選択することができる。又,これらの細胞送達用キャリアのうち,その用途が,化粧品や医薬部外品の場合は,その効能または効果が前記表9から選択することもできるがこれに限定されない。
【0107】
本発明の細胞送達用キャリアの対象動物は,特に限定されず,ヒトを含め,あらゆる生物に適用できる。例えば,マウス,ラット,イヌ,ネコ,サル,ブタ,ウシ,ヒツジ,ウサギ,魚類,食用水性動物,有用植物,有用菌類などが挙げられる。
【0108】
本発明の細胞送達用キャリアの包接成分としては,既知の有効成分の他に核酸,菌体,ウィルス,細胞なども包接することができる。
【0109】
本発明の細胞送達用キャリアの対象のビタミン誘導体は,オートファジー関連遺伝子とカテプシン合成遺伝子のうち両方の遺伝子の活性を促進するものでなければならない。
【0110】
本発明の細胞送達用キャリアに使用できるオートファジー関連遺伝子とカテプシン合成遺伝子の同時活性化物質であるビタミン誘導体を表2に示した。これらは,実施例で示される通りオートファジー関連遺伝子とカテプシン合成遺伝子のうち両方の遺伝子の活性を促進した。本発明では,細胞送達用キャリアにおいてこれらのビタミン誘導体を少なくとも1種以上含むことが必要である。より好ましくは,表2から種類の異なるビタミン誘導体を選択して2種以上のビタミン誘導体を配合すると細胞接着性が高まり,キャリア内物質の送達率を高める事ができる。
【0111】
本発明で使用可能な,刺激応答性ポリマー含有分子は,外部刺激で変化する特性から,薬物送達(DDS),バイオ共役(bio-conjugation),組織工学,バイオセンサ,バイオセパレーションなどの化学的,生物学的応用されているポリマーで「スマート」ポリマーもしくは「環境応答性」ポリマーともいわれるものである。
【0112】
本発明に使用可能な刺激応答性ポリマー含有分子とは,周囲の外部刺激である,温度,pH,イオン強度,磁場,電場,光,音波,圧力,溶媒,加速度,化学種によってその分子のミクロ構造が,可逆的叉は非化学的に変化する刺激応答分子を内在するポリマーのことであり,本発明にはその全てが使用できる。
【0113】
刺激応答性ポリマー含有分子は,その物理的形状によって,(a) 溶液中でフリーな直鎖状ポリマー,(b) 共有結合的に架橋された可逆性ゲル,(C) イオン結合や水素結合などで可逆的に結合した表面吸着ポリマーもしくは表面グラフト化ポリマーなどに分類されるが,本発明ではそのいずれもが使用できるが,好ましくは,刺激応答性ポリマー含有分子が,両親媒性抗酸化ビタミン誘導体叉は,脂質のいずれかに結合していることが望ましく,さらにその結合が,共有結合,イオン結合,水素結合のいずれかであることが望ましい。その理由は,外部刺激に応答して分子変化を起こした影響を,結合した細胞送達用キャリアにより迅速に,直接的に与える事ができるためである
【0114】
本発明で使用される,刺激応答性ポリマー含有分子としては,温度,pH,光の3つの外部刺激で変化する分子を内在するポリマーのうち,いずれか一つ以上の刺激に応答する分子を内在するポリマーが適している。
【0115】
本発明では,刺激応答性ポリマー含有分子が,乳化物組成物内に存在していればよいが,好ましくは,細胞送達用キャリアの最も外側の膜に,結合若しくは内没若しくは貫通し,刺激応答性ポリマー含有分子の一部叉は全てが,細胞送達用キャリアの最も外側に存在する事が望ましい。これは,応答性状態の変化が光応答性,pH応答性の場合,その刺激が外側から内側へ伝達する場合が多いため,センサー部分の応答性を持つ分子が,細胞送達用キャリアの外側に接している事が重要である為である。更に,刺激応答後に分子形状が変化する事による性質変化を外部環境に最も伝え易い為にもこの点は重要である。
【0116】
本発明の刺激応答性ポリマー含有分子が,両親媒性抗酸化ビタミン誘導体叉は,前記両親媒性抗酸化ビタミン誘導体以外の炭素が8個以上連続で結合した脂質の,いずれかに結合している形態とは,刺激応答性ポリマー含有分子が両親媒性抗酸化ビタミン誘導体に結合している形態と,刺激応答性ポリマー含有分子が脂質に結合している形態との形態のどちらの形態でもよく,さらにその結合形態が,イオン結合,共有結合,水素結合のいずれかでもよい。
【0117】
本発明の刺激応答性ポリマー含有分子が脂質に結合している形態の例としては,刺激応答性ポリマー含有分子が,脂質,脂肪酸,ラメラ形成界面活性剤にそれぞれ結合している場合があり,そのいずれも本発明には使用可能であるが,刺激応答性ポリマー含有分子が,脂肪酸に共有結合している場合と刺激応答性ポリマー含有分子が,ラメラ形成界面活性剤に共有結合している形態の場合は,安定性が極めて高く,かつ合成が簡便で,低コストで,高い収率で合成可能な為に,最も適している。
【0118】
刺激応答性ポリマー含有分子が,脂肪酸に共有結合している場合の具体例としては,アルキル-ポリイソプロピルアクリルアミドなどが公知であり(非特許文献12),刺激応答性ポリマー含有分子が,リポソームに共有結合している形態の場合は,ジオレオイルホスホエタノールアミン,メルカプトプロピオニル(イソプロピルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー(特許文献7)などで公知であり本発明には,これらのいずれのポリマーをも使用する事ができる。
【0119】
上記記載の公知例は,いずれもポリマーを単独使用した場合は活性酸素等の攻撃に対して有効成分を守る事については効果がなく,特に酸化されやすい有効成分については,製剤中で酸化されて失活してしまう問題があった。
【0120】
本発明の温度刺激応答性ポリマー含有分子は,水に対する下限臨界溶解温度以下の温度では,水和層を形成し水に溶解するが,下限臨界溶解温度以上では,疎水化し,リポソームの細胞膜透過性が高まる。
【0121】
このため,従来の温度刺激応答性ポリマー含有分子の下限臨界溶解温度は,体温に近い温度である37~42℃の温度であることが好ましいとされてきた。しかし,本発明を含む製品が応用される医薬品,食品,化粧品を含む殆どの商品の流通温度の上限は,夏場には45℃になることがあるため,下限臨界溶解温度を体温の36~42℃に設定すると,細胞送達用キャリアが他の疎水性成分と結合し分離したり,容器がプラスチックの場合には付着して,有効成分が容器に残留する等の問題が発生した。このため本発明の下限臨界溶解温度は35℃以上が適している。さらに下限臨界溶解温度が45℃以上に設定すると人体適応箇所の温度を45℃以上に設定する必要があるが,蒸しタオルの局所使用,局所摩擦による摩擦熱,加熱気体の利用,発熱デバイスなどの使用により,局所的に,短時間加熱する事により70℃においても熱傷を最小限に抑制して副作用を残す事なく加熱する事ができることが判明した。70℃以上だと不可逆的な熱傷を発生させることが多発したため,本発明の下限臨界溶解温度は,35℃から70℃以下にする事が望ましい。さらに好ましくは45℃から60℃にすることが望ましい。なお,本発明において,温度応答性ポリマーの水に対する下限臨界溶解温度は,示差走査熱量測定(Differential scanning calorimetry:DSC)により測定する。
【0122】
本発明に使用できる,pH刺激応答ポリマーの好適例としては,グルコサミンをモノマーとするポリグルコサミンが挙げられるが,グルコサミンを構成単位とするキトサンも使用することができる。さらに,キトサンを原料にこれをポリマー化した重合体も使用することができるし,キトサンを酵素などで切断した低分子量キトサンやアルカリ処理した中性キトサンなども使用することができる。
【0123】
既知文献の非特許文献13,非特許文献14,非特許文献15には,キトサンをリポソームに処理したキトサンコーティングリポソームの例などがあるが,これらの文献に記載されたキトサンを本発明に使用する事もできる。
【0124】
本発明のpH刺激応答性ポリマー含有分子を含有した細胞送達用キャリアがキトサン含有細胞送達用キャリアの場合,その製造工程として,
キトサン水溶液に,本発明のキトサンを含まない細胞送達用キャリアを反応させ,キトサンを細胞送達用キャリア表面にイオン結合させる製造工程を取る事ができる。
キトサン溶液の製造には,通常酸への溶解が必須で,そのためpH5以下にしなければならない。このためこれを人体に適応すると酸性のために皮膚に炎症を生じさせる。さらに,この酸性条件下では細胞送達用キャリアを破壊し分離,沈殿などの問題を発生させる問題がある。アルカリで中和すると,溶液が白濁や分離を誘発し,NaClなどの中和塩生成では,皮膚刺激の問題があった。そこで,本発明で使用するキトサンのそれ自体がpHは6-8の中性キトサンを使用することが好ましい。中性キトサンを乳酸,クエン酸,アスコルビン酸などの酸に溶解後,陰イオン交換樹脂と接触させたり,天然物由来のキトサンと混合する事で酸を吸着除去しpHを6-8に調整する事が望ましい。
【0125】
本発明のキャリアに使用可能な刺激応答性ポリマーについては、15℃から70℃の範囲において液体であり、かつ前述の段落番号0057の表2のビタミン誘導体と併用したときに、40℃、湿度80%、6か月間の加速試験においてビタミン誘導体の減衰率を20%以下に抑制し安定に保つものであれば使用できるが,これらの条件を満たす刺激応答性ポリマーには特定の物質群から選択される1種以上の化学物質が共有結合で化学修飾された刺激応答性ポリマーが適していることが判明しその物質のグループを特定することができた。即ち本発明者らは、段落番号0057の表7の物質群から選択される1種以上の化学物質が共有結合で化学修飾された刺激応答性ポリマーであれば、これらの条件の安定性をクリアできる細胞送達用キャリアを作ることができることを見出した。
さらに、本発明者は、様々な有効成分を本発明の細胞送達用キャリアに包接させてキャリアの安定性を調べた。なぜなら本発明の細胞送達用キャリアは、前述のキャリアの構成成分だけでなく、キャリアに内包される包接成分の種類によっても安定性が変化する現象が見出されたからである。特に、前記条件の加速試験後でもラメラ構造を安定に保つことができるものが、本発明のキャリアに包接される物質として最適であり試験の結果、段落番号0057の表8から選択されるものであれば、前記条件の加速試験後でも安定に包接できることが判明した。
これら表8から選択される有効成分を包接した本発明の細胞送達用キャリアをヒトに適用することにより本発明者らは段落番号0057の表9の効果が発現されることを確認することができた。
また、これらの効果は、細胞送達用キャリアの効果発揮温度が45℃から70℃である温度刺激応答性ポリマーを細胞送達用キャリアに包接させる、同時にその投与部位の組織温度を人工的に上昇させることによりその細胞送達率を高めより高い効果を発現させることができることが判明した。
【0126】
さらに、本発明には、キャリアを作る際に必要な、通常の乳化製剤の安定剤として使用される多価アルコール,合成酸化防止剤,紫外線吸収剤,防腐剤を使用することができる。これらの物質のうち、特に、15℃から70℃の範囲において液体であり、かつ前述の表2のビタミン誘導体、表3脂質、表4の界面活性作用を持つ脂質及び表5の刺激応答性ポリマーと同時に併用した際に、40℃、湿度80%、6か月間の加速試験においてビタミン誘導体の減衰率を20%以下に抑制し、ラメラ構造を安定に保つことができるものが本発明にもっとも適し、それらの物質をスクリーニングしたところ表6に示される乳化安定剤から選択される1以上の成分がこれに該当することが確認された。
【0127】
本発明を実施するための最良の形態は,前記図1で示されるように,オートファジー関連遺伝子とカテプシン合成遺伝子の同時活性化物質と,刺激応答性ポリマー含有分子のどちらか1つ以上の物質が,脂質で主に構成された膜分子の一部を構成する,細胞送達用キャリアである。更に,もう一つの本発明を実施するための最良の形態としては,前記図3で示される刺激応答性ポリマー含有分子が,脂質に,イオン結合している,細胞送達用キャリアが挙げられる。
本発明に包接できる有効成分としては、公知の成文リスト記載の有効成分を包接することができ、その具体例としては、ISBNISBN:978-4840748315,ISBN:978-3-7692-7022-8,ISBN:1-882621-55-7,ISBN:978-4-8408-1492-8,ISBN:978-4-8408-1227-6,ISBN:978-4-8408-1464-5のいずれかの成分リストの掲載成分であればよい。
本発明の細胞送達用キャリアの具体的な用途としては,医薬品,医薬部外品,化粧品,サプリメント,動物医薬品,雑貨があげられる。
本発明に使用できる細胞送達用キャリアの製剤としては特に限定されないが、その剤形が,外用剤,口腔用剤,座薬,経口剤,ドリンク剤,パップ剤,パック剤,スプレー剤,注射剤,ドレッシング剤,液剤,軟膏剤,エアゾール剤,粉末状,打型剤,クリーム剤,外用散布剤,散剤,顆粒剤,錠剤,軟カプセル剤,丸剤,板状の剤型,トローチ剤,ペースト剤,固型剤,潤製剤,チック様製剤から選択される細胞送達用キャリアであれば流通剤型としてより適している。
【0128】
(ビタミン誘導体のATG,CTS活性)
構造にアスコルビン酸-2-リン酸エステルを持つ3つの異なるビタミン誘導体について,即ちリン酸アスコルビル3Na(APS),パルミチン酸アスコルビルリン酸3Na(APPS),(アスコルビル/トコフェリル)リン酸K(EPC)の混合物を使用し,以下の実験をおこなった。5%FBS含有DMEM(low glucose)を用いて,正常ヒト表皮線維芽細胞を5×105cells/wellの密度で37℃,24時間培養後,混合試験検体含有培地 (最終濃度がAPS:100μM, APPS: :100μM, EPC :100μM 合計300μMnになるように添加)に交換し,37℃で24時間培養した。次に各細胞を回収し,RNA protect cell Reagent(QIAGEN)でRNAを保護し解析まで-80℃で保存した。total RNAの品質チェック後,3D-Gene全遺伝子型DNAチップを使用した網羅解析を実施した。結果は,オートファジー関連遺伝子(ATG)とリソソーム局在プロテアーゼであるカテプシン(CTS)の遺伝子から各因子ごとに,無添加コントロールのRNA量との比較で,試験検体添加区の平均値でATGで1.2倍以上RNA生合成が増加したものは◎,CTSで1.2倍以上増加したものに◇をつけ,それ以外はXとしその結果を,以下表12に示す。
【0129】
ビタミン誘導体のATG,CTS活性の結果
【表12】
【0130】
(試験2)
上記と同じ実験を,以下記載の84のビタミン誘導体に実施し,上記と同じ評価を行い,◎と◇がそれぞれ1以上存在し,且つその合計が10個以上あるものには○を,◎と◇がそれぞれ1以上存在し,且つその合計が5個以上あるものには△を,それ以外のものにはXをつけた。尚,Xにはサンプル量が本試験を行なう規定量に達しなかったものも含まれる。その結果,段落番号0131に示すように本発明に使用可能な○と△に該当するビタミン誘導体は53検体,であり,不明を含め,Xは32検体であった。尚,本発明の比較実験に使用する構造にアスコルビン酸-2-リン酸エステルを持つ3つの誘導体を比較すると,アスコルビン酸(AA),及びリン酸アスコルビル3Na(APS)がXであり,パルミチン酸アスコルビルリン酸3Na(APPS)が△であり,(アスコルビル/トコフェリル)リン酸K(EPC)が○であったことから。ATG,CTS活性については,活性の高い方から,EPC > APPS > APS, AAとなった。
【0131】
(84のビタミン誘導体のATG,CTS活性の結果)
(アスコルビル/トコフェリル)リン酸K :○, (アスコルビン酸/PCA)Mg :X, (リノール酸/オレイン酸)トコフェロール :X, 2,4-ジカルボエトキシパントテン酸エチル :○, 3-O-エチルアスコルビン酸 :○, 3-O-セチルアスコルビン酸 :○, 3-アスコルビルカルボニルジペプチド-17 :△, アスコルビルエチル :○, アスコルビルメチルシラノールペクチン :○, アスコルビン酸(オレンジ/レモン/ライム)ポリペプチド :X, アスコルビン酸アラントイン :X, アスコルビン酸グリセリルジエステルトコフェロール :○, アスコルビン酸ジエステルトコフェロール :○, アスコルビン酸テトラヘキシルデシル :○, アスコルビン酸ポリペプチド :△, アスコルビン酸メチルシラノール :△, アセチルパントテニルエチル :X, アラントインパントテニルアルコール :X, イソステアリルアスコルビルリン酸2Na :○, イソステアリン酸アスコルビル :○, パルミチン酸アスコルビルリン酸3Na :△, カプリリル2-グリセリルアスコルビン酸 :○, カプリリル3-グリセリルアスコルビン酸 :○, グリチルレチン酸ピリドキシン :X, コハク酸トコフェロール :○, サクシノイルトリペプチド-34アスコルビルリン酸銅 :X, サクシノイルペンタペプチド-12アスコルビルリン酸 :X, ジエチルアスコルビン酸 :○, ジオレイルトコフェリルメチルシラノール :○, ジカプリル酸ピリドキシン :○, ジカルボエトキシパントテン酸エチル :○, ジパルミチン酸ピリドキシン :○, ステアリン酸アスコルビル :△, チオクト酸ジアセチルレスベラトリル :X, チオクト酸ステアレート :○, チオクト酸パルミテート :○, チオクト酸マルガレート :○, チオクト酸メトキシPEG-45 :X, テトラヘキシルデカン酸アスコルビル :○, テトラ酪酸リボフラビン :○, トコフェリルエチルコハク酸エチルジモニウムエトサルフェート :X, トコフェリルオキシプロピルトリシロキサン :○, トコフェリルグルコシド :○, トコフェリルジメチルグリシン :○, トコフェリルジメチルグリシンHCl :○, トコフェリルリン酸Na :○, トコフェルソラン :○, トラネキサム酸トコフェリルHCl :X, トリスヘキシルデカン酸ピリドキシン :○, トリパルミチン酸ピリドキシン :X, ニコチン酸トコフェロール :○, パルミチン酸アスコルビル :X, ヒアルロン酸アスコルビル :X, ヒアルロン酸アスコルビルプロピル :○, ビス(ヒドロキシエチルトコフェリルサクシノイルアミド)ヒドロキシプロパン :X, ビスラウリル硫酸チアミン :X, ヒドロキシデシルユビキノン :△, ヒドロキシプロピルトリモニウムアスコルビン酸 :X, プロピオン酸レチノール :○, マレイン酸アスコルビルトコフェリル :○, マレイン酸チオクトアミドエチルジメチルアミン :X, ユビキノール :X, ユビキノン :X, ユビキノン2Na :X, ラウリミノジプロピオン酸トコフェリルリン酸2Na :△, リノール酸トコフェロール :○, リノール酸レチノール :○, リン酸アスコルビル3Na :X, リン酸アスコルビルMg :X, リン酸アスコルビルアミノプロピル :X, リン酸トコフェリルアミノプロピル :X, リン酸トコフェロール2Na :○, レチノイン酸トコフェリル :○, レチノイン酸ヒドロキシピナコロン :X, レチノイン酸レチニル :○, レチノール :X, レチノキシトリメチルシラン :X, 安息香酸パントテニルエチル :X, 酢酸トコフェロール :○, 酢酸レチノール :○, パルミチン酸レチノール :△, (アスコルビル/コレステリル)リン酸Na :○, (リノール酸/オレイン酸)トコフェロール :○, アスコルビン酸 :X, アスコルビン酸グルコシド :△, 無添加コントロール :X。
【0132】
(安定性試験)
APS,APPS,EPCの各アスコルビン酸誘導体の濃度がそれぞれ0.02mol/Lになるように精製水に溶解させ,これらを,50℃で1ヶ月間保存してそれぞれの力価を高速液体クロマトグラフィ―で測定し,それぞれの物質のスタート時の力価を100%として1ヶ月後の力価を%重量で測定し,その結95%以上が残存していたものには○,95%未満80%以上が残存していたものには△,80%未満のものにはXで以下表13に示した。比較例として使用した既存のビタミン誘導体群の物質名とその略号は以下の通りとする。アスコルビン酸-2-リン酸Na:APS,アスコルビン酸-2-リン酸-6-パルミチン酸3Na:APPS,アスコルビン酸-2-リン酸トコフェリルカリウム:EPC,アスコルビン酸:AA。
【0133】
【0134】
上記の結果より物理的安定性は,安定性の高い方から, EPC > APS > APPS > AA となった。
ATG,CTS活性については,活性の高い方から,EPC > APPS > APS, AAであったことから,ATG,CTS活性は,物理的安定性と相関しないことが判明した。
【0135】
(界面活性力試験)
APS,APPS,EPC,AAの各アスコルビン酸誘導体の濃度がそれぞれ0.5%(重量)になるように精製水に溶解させ,これらを,同条件でスポンジで気泡させて,消泡するまでの時間(消泡時間)を測定しこれを各検体の界面活性力を比較するパラメーターとした。結果は,最も消泡時間の長かったAPPSの消泡時間を100%としてそれぞれの消泡時間を%で求め表14に示され90%以上を○(最良),80%以上から90%未満を△(良好)、80%以下をX(不良)とした。略号の説明:アスコルビン酸-2-リン酸Na:APS,アスコルビン酸-2-リン酸-6-パルミチン酸3Na:APPS,アスコルビン酸-2-リン酸トコフェリルカリウム:EPC,アスコルビン酸:AA。
【0136】
【0137】
上記の結果より水溶液中の消泡時間から求めた界面活性力は,高い方から,APPS > EPC >> APS > AAとなった。ATG,CTS活性については,活性の高い方から,EPC > APPS > APS, AAであったことから,ATG,CTS活性は,界面活性と相関しないことが判明した。
【0138】
以下の,実験によりATG,CTS活性が,細胞送達率と相関関係にある事をしめす。
(本発明との比較実験)
脂質総量が20mgとなり,モル比率が,(脂質である1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン):(ラメラ形成界面活性剤であるジオレオイルホスファチジルエタノールアミンとDOPEMP(NIPAA/DMAPAA 5%)Cop.の合計重量)=3:7の割合となるように,それぞれをクロロホルムに溶解した。さらに,蛍光色素であるローダミンB1mgを加えて溶解した。なお,本実験で使用したDOPEMP(NIPAA/DMAPAA 5%)Cop.の,水に対する下限臨界溶解温度は40℃であった。合計重量で添加した,ラメラ形成界面活性剤であるジオレオイルホスファチジルエタノールアミンとDOPEMP(NIPAA/DMAPAA)Cop.のモル比は,6.5:0.5とした。
【0139】
その溶液を,ナスフラスコに移動させ,エバポレーターで溶媒を飛ばし,リピッドフィルムを作製した。このリピッドフィルムに対して,ATG,CTS活性がことなる3種のビタミン誘導体であるEPC,APPS,APS, AAをそれぞれ5mgをPBSを1mlに溶かしたものを加え,リピッドフィルムを水和させた後,ボルテックスで分散させた。その後,超音波槽で30分ソニケーションを行い,リポソームのサイズを小さくしてから,エクストルーダーを用いて,200nmのフィルターを通して,リポソームのサイズを整えた。実施例と比較例の平均粒子径は111nm±10nmであった。その後,ゲル濾過によりリポソームを分離させて精製し,ATG,CTS活性化物質と温度応答性ポリマーと炭化水素を含有した本発明の細胞送達用キャリアを作製した。この細胞送達用キャリアを染色法により透過型電子顕微鏡で観察すると多層ベシクル構造(ラメラ液晶構造)が確認でき,これらの細胞送達用キャリアがラメラ液晶構造を有することが確認された。
【0140】
次に,6ウェルプレートに,5%FBS含有DMEM(low glucose)を用いて,正常ヒト表皮線維芽細胞を5×105cells/wellの密度で37℃,24時間培養後,前記で作成した実施例と比較例を含む4種の細胞送達用キャリアを含有した培地 (ローダミン最終濃度が1μMになるように添加)にそれぞれ交換し,35℃で1時間培養した。その後,40℃で20分処理し,さらに35℃で1時間培養した。その後,PBSで5回洗浄し,4 % paraformaldehyde phosphate buffer solutionで20分固定化した後,再度PBSで2回洗浄し,蛍光マイクロプレートリーダーで蛍光強度を測定し細胞内に取り込まれた蛍光物質の相対濃度を求めた。無添加コントロールとして同じ方法でビタミン誘導体無添加の細胞送達用キャリアの細胞も培養し蛍光強度を測定した。
【0141】
その結果,EPC添加区の蛍光強度を100%としたとき,APPSでは78%,APSでは,49%,AAでは52%となった。従って細胞吸収率は高い方から,EPC > APPS > APS, AAとなり,ATG,CTS活性については,活性の高い方から,EPC > APPS > APS, AAであったことから,細胞吸収率とATG,CTS活性は,相関することが判明した。
【0142】
本発明者等は,ビタミン誘導体がATG,CTS活性を高める理由は,ビタミン誘導体の安定性や界面活性力とは全く無関係である事が判明したため,その理由を以下のように推測した。即ち,第一段階としてビタミン類はヒト細胞に取り重要な栄養素であり,且つ細胞内濃度が血液濃度より高い事から,第1段階で何らかの細胞表面のビタミンレセプターに接着しそれが,第2段階で特異的チャンネルタンパク等により能動輸送されることが考えられる。安定なビタミン誘導体では,ビタミンレセプターには接着するが,第2段階の特異的チャンネルタンパク等による能動輸送ができないと考えた。
【0143】
即ち,細胞表面のビタミンレセプターは,ビタミン分子の一部を認識して,その部分だけで接着するが,第2段階の特異的チャンネルタンパクでは,ビタミン分子全体を認識してタンパク内に取り込みゲートを通過させて能動輸送するために殆どのビタミン誘導体が,能動輸送されない状態で細胞表面に接着して留まると考えた。この状態が暫く維持されると,頻繁に行なわれる細胞外液を取り込むエンドサイトーシスである飲作用(ピノサイトーシス)により,レセプターに結合したまま細胞内に取り込まれ,細胞外液を満たした小胞(エンドソーム)を形成する。
【0144】
細胞にとりビタミン誘導体に結合したビタミンレセプターは,回収して,分解し,新たなビタミンレセプターを再生する必要があると考えられる。エンドソームは,CTSを活性化させリソソームを形成し,これと融合し小胞内のビタミン誘導体を消化しようとするが,一部誘導体のまま分解されて細胞内に放出される。この異物がなんらかのシステムによりオートファジーシステムに認識され,ATG遺伝子が活性化しオートファゴソームを形成し,CTSを活性化させリソソームを形成し,これと融合し小胞内のビタミン誘導体を分解する。こうして,細胞内に取り込まれたビタミン誘導体は最終的には細胞に利用可能なビタミンになる。従って本発明の,細胞送達用の細胞送達用キャリアには,このATG,CTS活性のあるビタミン誘導体を,付加させる事により細胞送達用キャリアの細胞へ接着力を高め細胞内取り込みを促進させる事ができると考えた。
【0145】
次に示す実験により,ATG,CTS活性の異なるビタミン誘導体を,細胞送達用キャリアに添加することにより,細胞内への取り込みに変化があるかを調べた。即ち,前記の実験からATG,CTS活性が,パルミチン酸アスコルビル(PA)がXであり,イソパルミチン酸アスコルビルリン酸3Na(APPS)が△であり,(アスコルビル/トコフェリル)リン酸K(EPC)が○であったことから,この3種のアスコルビン酸誘導体を使用して,細胞内への取り込み率に変化があるかを調べた。
【0146】
(比較実験の細胞送達用キャリアの作成)
ATG,CTS活性の異なるビタミン誘導体の細胞送達用キャリアの細胞取り込みに対する効果を調べるため刺激応答性ポリマーを除いた細胞送達用キャリアを試作して以下の実験を行なった。グリセリン6gとココイルグルタミン酸Naを1gと,ATG,CTS活性の異なるPA,APPS,EPCの3つのビタミン誘導体をそれぞれ1gを電動式ハンドミキサーで混ぜながら,蛍光色素であるローダミンB 0.1gをホホバ油20gに混合したものを添加し20分撹拌する。これにPBSを加えて100gとし泡が立たないように電動式ハンドミキサーで10分間撹拌して完全に分散させて本発明の細胞送達用キャリアを3種類得た。無添加コントロールとして同じ方法でビタミン誘導体無添加の細胞送達用キャリアも作成した。
【0147】
6ウェルプレートに,5%FBS含有DMEM(low glucose)を用いて,正常ヒト表皮線維芽細胞を5×105cells/wellの密度で37℃,24時間培養後,前記で作成した3種の本発明の細胞送達用キャリアを含有した培地 (最終濃度がPA,APPS,EPCがそれぞれ200μM になるように添加)にそれぞれ交換し,37℃で1時間培養した。その後,PBSで5回洗浄し,4 % paraformaldehyde phosphate buffer solutionで20分固定化した後,再度PBSで2回洗浄し,蛍光マイクロプレートリーダーで励起波長555(nm),蛍光波長580(nm)で蛍光強度を測定し細胞内に取り込まれた蛍光物質の相対濃度を求めた。無添加コントロールとして同じ方法でビタミン誘導体無添加の細胞送達用キャリアの細胞も培養し蛍光強度を測定した。
【0148】
その結果,EPCの蛍光強度を100%としたとき,APPSでは76%,PAでは58%,ビタミン誘導体無添加の細胞送達用キャリアでは,45%の蛍光強度であった。3種のビタミン誘導体のATG,CTS活性は,大きい方からEPC > APPS > PA であったが,細胞送達用キャリアで抱接された蛍光物質の細胞への取り込み率も大きい方からEPC > APPS > PAとなり,ビタミン誘導体の本発明の細胞送達用キャリアの細胞への取り込み率は,ATG,CTS活性の大きさと比例した。
【0149】
(刺激応答性ポリマーの合成 第1工程-01)
(温度)刺激応答性の第1モノマーであるN-イソプロピルアクリルアミドと(温度)刺激応答性の第2モノマーであるメチルアミノプロピルアクリルアミドとのモル比率が95%:5%の割合になるようにジチルホルムアミドに溶解させた。モノマー総量は10gとした。溶解後,3-メルカプトプロピオン酸をN-イソプロピルアクリルアミドの0.03mol倍加え,アゾビスイソブチロニトリルを60mg加えた。その後,溶媒に対して窒素置換と超音波による脱気を行った後,70℃で6時間ラジカル重合を行った。反応後の液体の温度を室温に戻してから,あらかじめ冷やしておいたジエチルエーテルに滴下し,再沈精製を行った。その後,沈殿物を濾過で回収した。この再沈精製を更に2回行い,ポリマーを回収した。このポリマーについて水による透析後,凍結乾燥し,(温度)刺激応答性ポリマーであるメルカプトプロピオン酸(イソプロピルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド 5%)コポリマーを得た。なお,この温度刺激応答性ポリマーの分子量は5500であり,水に対する下限臨界溶解温度は40℃であった。
【0150】
(刺激応答性ポリマー結合脂質の合成)
モル比が,上記で作成した刺激応答性ポリマーであるメルカプトプロピオン酸(イソプロピルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド 5%)コポリマー:N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド:N-ヒドロキシスクシンイミド=1:2.5:2.5の割合となるように塩化メチルに溶解させてから,室温で24時間反応させた。反応後,吸引濾過により副生成物のジシクロヘキシル尿素を取り除き,ジエチルエーテルによる再沈精製を行い,沈殿物として,N-スクシンイミジルメルカプトプロピオン酸(イソプロピルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド 5%)コポリマー(MPA刺激応答性ポリマー)を回収した。
【0151】
このN-スクシンイミジルメルカプトプロピオン酸(イソプロピルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド5%)コポリマーと,ラメラ形成界面活性剤であり,エタノールアミン基を持つ脂質である1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンがモル比1:1でとなるようにジオキサンに溶解させ,室温で24時間反応させた。反応後の溶液をエバポレーターでバキュームし,溶媒を飛ばすことによって,以下化学式1で示される温度刺激応答性ポリマー結合脂質であるジオレオイルホスファチジルエタノールアミンメルカプトプロピオニル(イソプロピルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド5%)コポリマーを調製した。本発明者らはこの温度刺激応答性ポリマー結合脂質を略してDOPEMP(NIPAA/DMAPAA5%)Cop.と略す。叉は,以下DOPEMP(NIPAA/DMAPAA)Cop.と書かれた場合は,DOPEMP(NIPAA/DMAPAA5%)Cop.を意味するものとする。ジオレオイルホスファチジルエタノールアミンメルカプトプロピオニル(イソプロピルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマーの略称は,DOPEMP(NIPAA/DMAPAA)Cop.で示す。
【0152】
【化1】
化1は、本発明で使用できるジオレオイルホスファチジルエタノールアミンメルカプトプロピオニル(イソプロピルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマーの化学式である。略称は,DOPEMP(NIPAA/DMAPAA)Cop.として以下表示する。
【0153】
上記実施例の第1モノマーであるN-イソプロピルアクリルアミドを,以下記載の別の第1モノマーに置き換えることにより,上記と同じ方法で脂質結合型の温度刺激応答性ポリマーを製造することができた。ところで,上記製法では第2モノマーの使用が記載されているが,第2モノマーは,使用された第1モノマーとは異なる物質を,同じ第1モノマーのグループの中から選択することができた。さらに,この第2モノマーは,添加しなくてもよく,その場合の配合率は,第2モノマーを減らした分,第1モノマーを増量すれば良い。前記の製造工程及び40℃、湿度80%、6ヶ月間におよぶ安定性試験の結果により分解率が10%以下であった温度刺激応答性第1モノマーとしては以下の段落番号0154に示されるものが本発明で使用出来ることが判明した。
【0154】
(別の第一モノマー)
(ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル)アクリレート,(ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル)メタクリレート,(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)アクリレート,(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)メタクリレート,(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)アクリレート,(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)メタクリレート,1,2,4,5-テトラキス(N,N-ジチオカルバミルメチル)ベンゼン,1,3,5-トリ(ブロモメチル)ベンゼン,2-n-プロピル-2-オキサゾリン,2-N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート,2-N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレートDMAEMA,2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール,2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール(トリス),2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール,2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート,2-ヒドロキシブチルアクリレート,2-ヒドロキシブチルメタクリレート,2-ヒドロキシプロピルアクリレート,2-ヒドロキシプロピルメタクリレート,3,5-トリ(N,N-ジチオカルバミルメチル)ベンゼン,3-N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド,N-アクリロイルアスパラギンアミド,N-アクリロイルグリシンアミド,N-アクリロイルグルタミンアミド,N-アセチルアクリルアミド,N-メチルアクリロイルアスパラギンアミド,N, N-ジメチルメタクリルアミド,N,N-ジメチルアクリルアミド,N,N-メチレンビスアクリルアミド,N,N-エチルメチルアクリルアミド,N,N-エチルメチルアミド,N,N-エチルメチルメタクリルアミド,N,N-ジアルキル-ジチオカルバミルメチル,N,N-ジアルキルアクリルアミド,N,N-ジエチルアクリルアミド,N,N-ジエチルアミド,N,N-ジエチルメタクリルアミド,N,N-ジチオカルバミル酸,N,N-ジチオカルバメート,N,N-ジメチルアクリルアミド,N,N-ジメチルメタクリルアミド,N,N-プロピルアクリルアミド,N,N-プロピルメタクリルアミド,N-アクリロイルピペリジン,N-アクリロイルモルホリン,N-アルキルアクリルアミド,N-アルキルメタアクリルアミド,N-アルキル置換アクリルアミド,N-アルキル置換メタクリルアミド,N-アレニルフタルイミド,N-イソプロピルアクリルアミド,N-イソプロピルアミド,N-イソプロピルブタ-2,3-ジエナミド,N-イソプロピルメタクリルアミド,N-エチルアクリルアミド,N-エチルメタクリルアミド,N-エトキシエチルアクリルアミド,N-エトキシエチルアミド,N-エトキシエチルメタクリルアミド,N-シクロプロピルアクリルアミド,N-シクロプロピルアミド,N-シクロプロピルメタクリルアミド,N-テトラヒドロフルフリルアクリルアミド,N-テトラヒドロフルフリルメタクリルアミド,N-ビオチニル-N’-メタクロイルトリメチレンアミド,N-ビニルアクリルアミド,N-ビニルアルキルアクリルアミド,N-ビニルメタアクリルアミド,N-プロピルアクリルアミド,N-メタクリロイルピペリジン,N-又はN,N-ジアルキル置換メタアクリルアミド,s-ブチルアクリルアミド,t-ブチルアクリルアミド,アクロイルグリシンアミド,アクロイルザルコシンアミド,アクロイルニペコタミド,アクロイルメチルウラシル,アセチルアクリルアミド,イソプロピルアクリルアミド,エチルイソプロピルアクリルアミド,エチレングリコール,エチレングリコールアレニルメチルエーテル,オキシエチレンアクリル酸エステル,オキシエチレンソルビタンラウレート,オキシエチレンメタアクリル酸エステル,オキシエチレンラウリルアミン,オリゴエチレングリコールアクリル酸エステル,ジイソプロピルアクリルアミド,ジエチルアクリルアミド,ジエチルアミノアクリレート,ジエチルアミノメタアクリレート,ジエチレングリコールアレニルメチルエーテル,ジブチルアクリルアミド,ジプロピルアクリルアミド,ジメチルアクリルアミド,ジメチルアミノアクリルアミド,ジメチルアミノアクリレート,ジメチルアミノプロピルアクリルアミド,ジメチルアミノプロピルメタアクリルアミド,ジメチルアミノメタクリルアミド,ジメチルアミノメタクリレート,ナトリウムN,N-ジチオカルバメート,プロピレングリコール,ヘキサキス(N,N-ジチオカルバミルメチル)ベンゼン,ヘキサキス(ブロモメチル)ベンゼン,メチルアクリルアミド。
【0155】
メルカプトプロピオン酸を以下「MPA」と略す。上記実施例で製造し前記の製造工程及び40℃、湿度80%、6ヶ月間におよぶ安定性試験の結果により分解率が10%以下であった本発明に使用できる完成した(温度)刺激応答性MPAポリマーを以下段落番号0155に示す。
(完成した(温度)刺激応答性MPAポリマー)
MPA((ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル)アクリレート/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA((ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル)メタクリレート/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA((ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)アクリレート/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA((ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)メタクリレート/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA((ポリオキシエチレンラウリルエーテル)アクリレート/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA((ポリオキシエチレンラウリルエーテル)メタクリレート/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(1,2,4,5-テトラキス(N,N-ジチオカルバミルメチル)ベンゼン/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(1,3,5-トリ(ブロモメチル)ベンゼン/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(2-n-プロピル-2-オキサゾリン/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(2-N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(2-N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレートDMAEMA/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール(トリス)/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(2-ヒドロキシブチルアクリレート/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(2-ヒドロキシブチルメタクリレート/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(2-ヒドロキシプロピルアクリレート/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(2-ヒドロキシプロピルメタクリレート/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(3,5-トリ(N,N-ジチオカルバミルメチル)ベンゼン/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(3-N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N-アクリロイルアスパラギンアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N-アクリロイルグリシンアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N-アクリロイルグルタミンアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N-アセチルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N-メチルアクリロイルアスパラギンアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N,N-ジメチルメタクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N,N-ジメチルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N,N-メチレンビスアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N,N-エチルメチルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N,N-エチルメチルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N,N-エチルメチルメタクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N,N-ジアルキル-ジチオカルバミルメチル/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N,N-ジアルキルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N,N-ジエチルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N,N-ジエチルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N,N-ジエチルメタクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N,N-ジチオカルバミル酸/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N,N-ジチオカルバメート/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N,N-ジメチルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N,N-ジメチルメタクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N,N-プロピルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N,N-プロピルメタクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N-アクリロイルピペリジン/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N-アクリロイルモルホリン/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N-アルキルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N-アルキルメタアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N-アルキル置換アクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N-アルキル置換メタクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N-アレニルフタルイミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N-イソプロピルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N-イソプロピルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N-イソプロピルブタ-2,3-ジエナミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N-イソプロピルメタクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N-エチルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N-エチルメタクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N-エトキシエチルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N-エトキシエチルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N-エトキシエチルメタクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N-シクロプロピルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N-シクロプロピルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N-シクロプロピルメタクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N-テトラヒドロフルフリルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N-テトラヒドロフルフリルメタクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N-ビオチニル-N’-メタクロイルトリメチレンアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N-ビニルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N-ビニルアルキルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N-ビニルメタアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N-プロピルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N-メタクリロイルピペリジン/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(N-ジアルキルメタアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(s-ブチルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(t-ブチルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(アクロイルグリシンアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(アクロイルザルコシンアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(アクロイルニペコタミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(アクロイルメチルウラシル/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(アセチルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(イソプロピルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(エチルイソプロピルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(エチレングリコール/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(エチレングリコールアレニルメチルエーテル/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(オキシエチレンアクリル酸エステル/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(オキシエチレンソルビタンラウレート/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(オキシエチレンメタアクリル酸エステル/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(オキシエチレンラウリルアミン/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(オリゴエチレングリコールアクリル酸エステル/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(ジイソプロピルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(ジエチルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(ジエチルアミノアクリレート/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(ジエチルアミノメタアクリレート/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(ジエチレングリコールアレニルメチルエーテル/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(ジブチルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(ジプロピルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(ジメチルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(ジメチルアミノアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(ジメチルアミノアクリレート/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(ジメチルアミノプロピルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(ジメチルアミノプロピルメタアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(ジメチルアミノメタクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(ジメチルアミノメタクリレート/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(ナトリウムN,N-ジチオカルバメート/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(プロピレングリコール/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(ヘキサキス(N,N-ジチオカルバミルメチル)ベンゼン/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(ヘキサキス(ブロモメチル)ベンゼン/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,MPA(メチルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー。
【0156】
さらに前記の製造工程及び40℃、湿度80%、6ヶ月間におよぶ安定性試験の結果により分解率が10%以下であった本発明に使用できる完成した本発明の刺激応答性ポリマー結合脂質を以下段落番号0156に示す。ジオレオイルホスファチジルエタノールアミンメルカプトプロピオニルを以下「DOPEAMP」と略す。さらに,DMAPAAを「DMAPAA」と略す。
(完成した本発明の刺激応答性ポリマー結合脂質)
DOPEAMP((ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル)アクリレート/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP((ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル)メタクリレート/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP((ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)アクリレート/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP((ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)メタクリレート/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP((ポリオキシエチレンラウリルエーテル)アクリレート/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP((ポリオキシエチレンラウリルエーテル)メタクリレート/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(1,2,4,5-テトラキス(N,N-ジチオカルバミルメチル)ベンゼン/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(1,3,5-トリ(ブロモメチル)ベンゼン/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(2-n-プロピル-2-オキサゾリン/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(2-N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(2-N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレートDMAEMA/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール(トリス)/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(2-ヒドロキシブチルアクリレート/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(2-ヒドロキシブチルメタクリレート/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(2-ヒドロキシプロピルアクリレート/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(2-ヒドロキシプロピルメタクリレート/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(3,5-トリ(N,N-ジチオカルバミルメチル)ベンゼン/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(3-N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N-アクリロイルアスパラギンアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N-アクリロイルグリシンアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N-アクリロイルグルタミンアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N-アセチルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N-メチルアクリロイルアスパラギンアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N,N-ジメチルメタクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N,N-ジメチルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N,N-メチレンビスアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N,N-エチルメチルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N,N-エチルメチルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N,N-エチルメチルメタクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N,N-ジアルキル-ジチオカルバミルメチル/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N,N-ジアルキルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N,N-ジエチルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N,N-ジエチルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N,N-ジエチルメタクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N,N-ジチオカルバミル酸/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N,N-ジチオカルバメート/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N,N-ジメチルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N,N-ジメチルメタクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N,N-プロピルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N,N-プロピルメタクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N-アクリロイルピペリジン/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N-アクリロイルモルホリン/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N-アルキルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N-アルキルメタアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N-アルキル置換アクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N-アルキル置換メタクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N-アレニルフタルイミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N-イソプロピルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N-イソプロピルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N-イソプロピルブタ-2,3-ジエナミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N-イソプロピルメタクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N-エチルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N-エチルメタクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N-エトキシエチルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N-エトキシエチルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N-エトキシエチルメタクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N-シクロプロピルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N-シクロプロピルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N-シクロプロピルメタクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N-テトラヒドロフルフリルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N-テトラヒドロフルフリルメタクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N-ビオチニル-N’-メタクロイルトリメチレンアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N-ビニルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N-ビニルアルキルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N-ビニルメタアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N-プロピルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N-メタクリロイルピペリジン/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(N-ジアルキルメタアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(s-ブチルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(t-ブチルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(アクロイルグリシンアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(アクロイルザルコシンアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(アクロイルニペコタミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(アクロイルメチルウラシル/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(アセチルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(イソプロピルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(エチルイソプロピルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(エチレングリコール/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(エチレングリコールアレニルメチルエーテル/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(オキシエチレンアクリル酸エステル/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(オキシエチレンソルビタンラウレート/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(オキシエチレンメタアクリル酸エステル/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(オキシエチレンラウリルアミン/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(オリゴエチレングリコールアクリル酸エステル/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(ジイソプロピルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(ジエチルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(ジエチルアミノアクリレート/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(ジエチルアミノメタアクリレート/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(ジエチレングリコールアレニルメチルエーテル/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(ジブチルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(ジプロピルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(ジメチルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(ジメチルアミノアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(ジメチルアミノアクリレート/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(ジメチルアミノプロピルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(ジメチルアミノプロピルメタアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(ジメチルアミノメタクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(ジメチルアミノメタクリレート/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(ナトリウムN,N-ジチオカルバメート/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(プロピレングリコール/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(ヘキサキス(N,N-ジチオカルバミルメチル)ベンゼン/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(ヘキサキス(ブロモメチル)ベンゼン/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー,DOPEAMP(メチルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)コポリマー。
【0157】
上記で示したジオレオイルホスファチジルエタノールアミンの代わりに以下に示めされるエタノールアミン基を持つ脂質を使って,40℃、湿度80%、6ヶ月間におよぶ安定性試験の結果により分解率が10%以下であった本発明の刺激応答性ポリマー結合脂質に使用できるエタノールアミン基を持つ脂質を段落番号0157に示す。
(エタノールアミン基を持つ脂質)
2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインエタノールアミン,N-アシルアスパラギン酸エタノールアミン,N-アシルグルタミン酸エタノールアミン,N-アシルサルコシンエタノールアミン,N-アシルメチルアラニンエタノールアミン,N-アシルメチルタウリンエタノールアミン,N-ステアロイルジヒドロスフィンゴエタノールアミン,N-ステアロイルフィトスフィンゴエタノールアミン,アシル(C12,14)アスパラギン酸エタノールアミン,アシルN-メチルアミノ酸エタノールアミン,アシルアミノ酸エタノールアミン,アシル乳酸エタノールアミン,アセチルエチルカルボキシルメチルチアゾリジンカルボニルエタノールアミン,アミノ酢酸ベタインエタノールアミン,アルキル(アルケニル)オリゴグリコールエタノールアミン,アルキルフェノールポリグリコールエタノールアミン,アルコキシル化トリグリセリルエタノールアミン,イソテアリン酸フィトステリルエタノールアミン,カプロイルプロリンエタノールアミン,グリセロリン酸エタノールアミン,グルクロン酸エタノールアミン,ココイルアラニンエタノールアミン,ココイルグルタミン酸エタノールアミン,ココイルメチルタウリンエタノールアミン,コハク酸エタノールアミン,サーファクチンエタノールアミン,ジステアロイルグルタミン酸リシンエタノールアミン,ジホスファチジルグリセロールエタノールアミン,ジミリストイルグルタミン酸リシンエタノールアミン,ジラウロイルグルタミン酸リシンエタノールアミン,ジリノレオイルグルタミン酸リシンエタノールアミン,ステアロイルグルタミン酸ジオクチルドデシルエタノールアミン,ステアロイルグルタミン酸エタノールアミン,スピクリスポール酸エタノールアミン,スフィンゴエタノールアミン,セラミドホスホエタノールアミン,セラミドアミノエチルホスホエタノールアミン,セレブロシドエタノールアミン,パーム核油脂肪酸アミドプロピルベタインエタノールアミン,パーム脂肪酸グルタミン酸エタノールアミン,パルミトイルアスパラギン酸エタノールアミン,ビス(Nε-ラウロイル-L-リジン)セバコイルエタノールアミン, ヒドロキシステアリルフィトスフィンゴシンエタノールアミン,ピログルタミン酸イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリルエタノールアミン,ピログルタミン酸オレイン酸グリセリルエタノールアミン,ホスファチジルエタノールアミン,ポリオキシエチレンステアリルエタノールアミン,ポリオキシエチレンソルビタンステアリルエタノールアミン,ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンメチルグルコースステアリルエタノールアミン,ポリオキシエチレンステアリルエタノールアミン,ポリオキシエチレンラウリルエタノールアミン,ミリストイルグルタミン酸エタノールアミン,ミリストイルメチルアミノプロピオン酸ヘキシルデシルエタノールアミン,ミリストイルメチルタウリンエタノールアミン,モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンエタノールアミン,ヤシ油アルキルベタインエタノールアミン,ヤシ油脂肪酸N-メチルエタノールアミン,ヤシ油脂肪酸アシルグリシンエタノールアミン,ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸エタノールアミン,ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインエタノールアミン,ヤシ油脂肪酸グリセリルエタノールアミン,ヤシ油脂肪酸グルタミン酸エタノールアミン,ヤシ油脂肪酸サルコシンエタノールアミン,ヤシ油脂肪酸メチルアラニンエタノールアミン,ヤシ油脂肪酸メチルタウリンエタノールアミン,ラウラミドプロピルベタインエタノールアミンラウリルアミノジ酢酸エタノールアミン,ラウリルジアミノエチルグリシンエタノールアミン,ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインエタノールアミン,ラウリン酸アミドプロピルベタイン,ラウレス酢酸エタノールアミン,ラウレス硫酸エタノールアミン,ラウロイルアスパラギン酸エタノールアミン,ラウロイルグルタミン酸ジヘキシルデシルエタノールアミン,ラウロイルグルタミン酸トリエタノールアミン,ラウロイルグルタミン酸メチルアラニンエタノールアミン,ラウロイルグルタミン酸エタノールアミン,ラウロイルグルタミン酸トリエタノールアミン,ラウロイルサルコシントリエタノールアミン,ラウロイルメチルアラニンエタノールアミン,ラウロイルメチルグリシンエタノールアミン,ラウロイルメチルタウリンエタノールアミン,ラウロイルモノエタノールアミドコハク酸エタノールアミン,リゾホスファチジルエタノールアミン。
【0158】
(pH,光刺激感応性ポリマーの製造)
pHと光刺激応答性ポリマーの場合,N原子を含むポリマーは,イオン結合でポリマーと細胞送達用キャリア粒子を結合することができるので,3-メルカプトプロピオン酸を添加せず,第1モノマーのみで重合を行う事もできその場合は,以下段落番号0158記載のポリマーを製造することができた。これらのポリマーは、40℃、湿度80%、6ヶ月間におよぶ安定性試験の結果により分解率が10%以下であった。
ポリグルコサミン,(アルキルアクリルアミド/ポリアクリル酸)コポリマー,ポリビニルアルキルアクリルアミド,ポリアルキルアクリルアミド,ポリ(フェニルアゾフェニル)アクリルアミド,ポリ[(4-ピリジルアゾ)フェノキシ]ヘキサメタクリレート,N-ビニルアルキルアクリルアミド,ポリ[(ビニロキシ)エトキシ]アゾベンゼン
【0159】
(pH,光刺激感応性MPAポリマーの製造)
最初の製造例と同様にpHと光刺激応答性モノマーを使用して,以下のpHと光刺激応答性ポリマーを作ることができた。pHと光刺激応答性ポリマーの場合は,繊細な温度設定が必要ないため第2モノマーとの重合反応を行わず,第1モノマーのみで重合させ以下の以下段落番号0159記載の刺激応答性ポリマーを作ることができる。この場合の配合率は,第2モノマーを減らした分,第1モノマーを増量することにより変えることができ,以下のポリマーを製造することができた。メルカプトプロピオン酸を以下「MPA」と略す。これらのポリマーは、40℃、湿度80%、6ヶ月間におよぶ安定性試験の結果により分解率が10%以下であった。
pH刺激応答性ポリマー:MPA(ポリグルコサミン),MPA(ポリ(エトキシエチルビニルエーテル)),MPA(アルキルアクリルアミド/ポリアクリル酸)コポリマー,MPA(ポリ(ビニルアルキルアクリルアミド)),MPA(ポリ((ビニルオキシエトキシ)安息香酸),MPA(ポリ((ビニルオキシエトキシ)ヘキサン酸)),MPA(ポリ((ビニロキシ)ヘキサン酸)),MPA(ポリ(イソブチルビニルエーテル)),光刺激応答性ポリマー:MPA(ポリ(アルキルアクリルアミド)),MPA(ポリ((4-フェニルアゾフェニル)アクリルアミド)),MPA(ポリ([(ピリジルアゾ)フェノキシ]ヘキサメタクリレート)),MPA(ポリ(ビニルアルキルアクリルアミド)),MPA(ポリ(((ビニロキシ)エトキシ)アゾベンゼン)),MPA(ポリ((エトキシ)エトキシエチルビニルエーテル))
【0160】
(pH,光刺激感応性ポリマー結合脂質の製造)
上記のMPA誘導体を使用して,ラメラ構造形成脂質であるジオレオイルホスファチジルエタノールアミンを修飾し,以下段落番号0160記載の刺激感応性ポリマー結合脂質を同様に製造した。ジオレオイルホスファチジルエタノールアミンメルカプトプロピオニルを以下「DOPEAMP」と略す。これらのポリマーは、40℃、湿度80%、6ヶ月間におよぶ安定性試験の結果により分解率が10%以下であった。
pH刺激応答性ポリマー:DOPEAMP(ポリグルコサミン),DOPEAMP(ポリ(エトキシエチルビニルエーテル)),DOPEAMP(アルキルアクリルアミド/ポリアクリル酸)コポリマー,DOPEAMP(ポリ(ビニルアルキルアクリルアミド)),DOPEAMP(ポリ((ビニルオキシエトキシ)安息香酸),DOPEAMP(ポリ((ビニルオキシエトキシ)ヘキサン酸)),DOPEAMP(ポリ((ビニロキシ)ヘキサン酸)),DOPEAMP(ポリ(イソブチルビニルエーテル)),光刺激応答性ポリマー:DOPEAMP(ポリ(アルキルアクリルアミド)),DOPEAMP(ポリ((4-フェニルアゾフェニル)アクリルアミド)),DOPEAMP(ポリ([(ピリジルアゾ)フェノキシ]ヘキサメタクリレート)),DOPEAMP(ポリ(ビニルアルキルアクリルアミド)),DOPEAMP(ポリ(((ビニロキシ)エトキシ)アゾベンゼン)),DOPEAMP(ポリ((エトキシ)エトキシエチルビニルエーテル))
【0161】
(刺激応答性ポリマー結合脂質と,ATG,CTS活性を有するビタミン誘導体と,炭化水素からなるラメラ形成界面活性剤と,からなる3種混合細胞送達用キャリアの作成)
脂質総量が20mgとなり,モル比率が,ATG,CTS活性が高いビタミン誘導体であるVCIP(テトラヘキシルデカン酸アスコルビル):ラメラ形成界面活性剤であるジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE):DOPEMP(NIPAA/DMAPAA) Cop.)=3:7の割合となるように,それぞれをクロロホルムに溶解した。なお,クロロホルムに溶解したDOPEのうち,ラメラ形成界面活性剤のジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)と温度刺激応答性ポリマー結合脂質であるDOPEMP(NIPAA/DMAPAA)Cop.とのモル比は,6.5:0.5とした。その溶液を,ナスフラスコに移動させ,エバポレーターで溶媒を飛ばし,リピッドフィルムを作製した。このリピッドフィルムに精製水を1ml加え,リピッドフィルムを水和させた後,ボルテックスで分散させた。その後,超音波槽で30分ソニケーションを行い,リポソームのサイズを小さくしてから,エクストルーダーを用いて,200nmのフィルターを通して,リポソームのサイズを整えた。平均粒子径は152nmであった。その後,ゲル濾過によりリポソームを分離させて精製し,ATG,CTS活性化物質と温度応答性ポリマーと炭化水素を含有した本発明の細胞送達用キャリアを作製した。この細胞送達用キャリアを染色法により透過型電子顕微鏡で観察すると多層ベシクル構造(ラメラ液晶構造)が確認でき,これらの細胞送達用キャリアがラメラ液晶構造を有することが確認された。
【0162】
(刺激応答性ポリマー結合脂質と,ATG,CTS活性を有するビタミン誘導体と,炭化水素からなるラメラ形成界面活性剤と脂質からなる細胞送達用キャリアの作成)
レシチン2%,グリセリン50%,ベヘニルアルコール8%,ステアリルアルコール7%,PEG-20フィトステロール4%,セタノール3%,フィトステロールズ1%,ステアリン酸グリセリル1%,トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル2%,コレステロール0.3%,ATG,CTS活性が高いビタミン誘導体であるGOVC(グリセリルオクチルアスコルビル)1%及びDOPEMP(NIPAA/DMAPAA) Copを0.2%とスクワラン10%を添加して自転公転撹拌機で練り上げた。これに精製水を加えて100%としてボルテックスで分散させた。その後,超音波槽で30分ソニケーションを行い,乳化粒子のサイズを小さくしてから,エクストルーダーを用いて,200nmのフィルターを通して,リポソームのサイズを整えた。平均粒子径は122nmであった。その後,ゲル濾過によりリポソームを分離させて精製し,ATG,CTS活性化物質と温度応答性ポリマーと炭化水素を含有した本発明の細胞送達用キャリアを作製した。この細胞送達用キャリアを染色法により透過型電子顕微鏡で観察すると多層ベシクル構造(ラメラ液晶構造)が確認でき,これらの細胞送達用キャリアがラメラ液晶構造を有することが確認された。
【0163】
(本発明との比較実験)
脂質総量が20mgとなり,モル比率が,(ATG,CTS活性が高いビタミン誘導体であるテトラヘキシルデカン酸アスコルビル,VCIP):(脂質である1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン):(ラメラ形成界面活性剤であるジオレオイルホスファチジルエタノールアミンとDOPEMP(NIPAA/DMAPAA5%)Cop.の合計重量)=1:2:7の割合となるように,それぞれをクロロホルムに溶解した。さらに,これに蛍光色素であるローダミン(Carboxyrhodamine 110-PEG4-alkyne)1mgを加えて溶解した。なお,本実験で使用したDOPEMP(NIPAA/DMAPAA5%)Cop.の,水に対する下限臨界溶解温度は40℃であった。合計重量で添加した,ラメラ形成界面活性剤であるジオレオイルホスファチジルエタノールアミンとDOPEMP(NIPAA/DMAPAA)Cop.のモル比は,6.5:0.5とした。その溶液を,ナスフラスコに移動させ,エバポレーターで溶媒を飛ばし,リピッドフィルムを作製した。このリピッドフィルムにPBSを1ml加え,リピッドフィルムを水和させた後,ボルテックスで分散させた。その後,超音波槽で30分ソニケーションを行い,リポソームのサイズを小さくしてから,エクストルーダーを用いて,200nmのフィルターを通して,リポソームのサイズを整えた。実施例と比較例の平均粒子径は114nm±13nmであった。別に,本発明の実施例だけは異なる大きなサイズのフィルターを用いて,平均粒子径が252nm,312nm,578nm,812nmのものも作成した。その後,ゲル濾過によりリポソームを分離させて精製し,ATG,CTS活性化物質と温度応答性ポリマーと炭化水素を含有した本発明の細胞送達用キャリアを作製した。この細胞送達用キャリアを染色法により透過型電子顕微鏡で観察すると多層ベシクル構造(ラメラ液晶構造)が確認でき,これらの細胞送達用キャリアがラメラ液晶構造を有することが確認された。
【0164】
(比較例1)
インビトロジェン社製のリポフェクタミン(Lipofectamine(登録商標)RNAiMAX)を比較例1のリポソームとした。これに実施例と最終濃度が同じになるようにローダミンを包接した。
【0165】
(比較例2)
リポソームを作製する際に,DOPEMP(NIPAA/DMAPAA) Copを添加しない点以外は,実施例1と同様にリポソームを作製した。比較例2は,温度刺激応答性ポリマーが存在しない点以外は,実施例1と同様である。
【0166】
(比較例3)
DOPEMP(NIPAA/DMAPAA) Copの代わりに,PEG(ポリエチレングリコール,分子量:2000)を用いた点以外は,実施例1と同様にリポソームを作製した。
【0167】
6ウェルプレートに,5%FBS含有DMEM(low glucose)を用いて,正常ヒト表皮線維芽細胞を5×105cells/wellの密度で37℃,24時間培養後,前記で作成した実施例と比較例を含む4種の細胞送達用キャリアを含有した培地 (ローダミン最終濃度が1μMになるように添加)にそれぞれ交換し,35℃で1時間培養した。その後,本発明の実施例のみのグループにおいて培養温度を変更せずに20分保持したグル―プと40℃で20分処理したグループに区別し,さらに両者を35℃で1時間培養した。その後,PBSで5回洗浄し,4 % paraformaldehyde phosphate buffer solutionで20分固定化した後,再度PBSで2回洗浄し,蛍光マイクロプレートリーダーで励起波長555(nm),蛍光波長580(nm)で蛍光強度を測し細胞内に取り込まれた蛍光物質の相対濃度を求めた。無添加コントロールとして同じ方法でビタミン誘導体無添加の細胞送達用キャリアの細胞も培養し蛍光強度を測定した。
【0168】
その結果,実施例の40℃で20分処理したグループで粒子径が114nmのものの蛍光強度を100%としたとき,比較例1では82%,比較例2では35%,比較例3では,22%の蛍光強度であった。この結果から本発明の,細胞送達用キャリアは,極めて高い細胞取り込み性能を持つことが判明した。
【0169】
実施例の40℃で20分処理したグループで粒子径が114nmのものの蛍光強度を100%としたとき,実施例の35℃で20分キープしたグループでの粒子径が114nmのものの蛍光強度は,80%であり,明らかに40℃で20分処理したグループで細胞への吸収率が上昇した。さらに異なるサイズの本発明の実施例の平均粒子径の蛍光強度は,252nmが94%,382nmでは81%,578nmでは72%,812nmでは51%であり,300nmの平均粒子径が高い細胞吸収性を示す事が確認された。
【0170】
(ラメラと非ラメラの比較実験) A-10:ラメラ液晶構造を持つ細胞送達用キャリア グリセリンを15gとジグリセリン3.6gとココイルグルタミン酸Na2gにGOVC(2-グリセリル-3-カプリル酸アスコルビン酸,グリセリン:カプリル酸:アスコルビン酸からなる基質を0.223 : 0.35 : 0.427の重量比で結合した両親媒性ビタミン誘導体)1gと DOPEMP(NIPAA/DMAPAA) Cop.1gとコレステロール0.05g,PEG-25フィトスタノール(INCI名 PEG-25 Phytostanol)0.1gを70℃で添加して電動式ハンドミキサーで自然冷却しながら10分間よく練り,5%重量のレチノールを含有するスクワラン5gを添加して電動式ハンドミキサーで10分間よく練る。この脂質添加の練り操作を全部で4回くり返して5%重量のレチノールを含有するスクワランを合計で20g添加する。これにフェノキシエタノール8%を添加した精製水を加えて100gとし,泡が立たないように電動式ハンドミキサーで10分間撹拌して完全に分散させて本発明のレチノールを含有したラメラ液晶乳化物である組成物を得た。この細胞送達用キャリアをマイクロフルイタイザー処理し,さらに孔径400 nm フィルターを用いてナノオーダーのカプセルにサイジングした。平均粒子直径が253nmの細胞送達用キャリアを得た。これら細胞送達用キャリアを染色法により透過型電子顕微鏡で観察すると多層ベシクル構造(ラメラ液晶構造)が確認でき,これらの細胞送達用キャリアがラメラ液晶構造を有することが確認された。
【0171】
B-10:コントロール 上記A-10からGOVCのみを基剤成分に変更したものをコントロールとした。尚,この基剤成分の内,グリセリンは,はじめから添加しているグリセリン0.22gを増量し,カプリル酸0.35gは,スクワランにあらかじめ添加しておき,アスコルビン酸は,安定なアスコルビン酸リン酸3Na塩0.6g(アスコルビン酸の同モル質量)をA-10と同モルになるように最後に添加する精製水に添加した。
【0172】
試料C-10:両親媒性の抗酸化ビタミン配合の非ラメラ細胞送達用キャリア(コントロール2) グリセリン15g,ジグリセリン3.6g,ココイルグルタミン酸Na2g,GOVC1gと DOPEMP(NIPAA/DMAPAA) Cop. 1g,コレステロール0.05g,PEG-25フィトスタノール0.1g, 5%重量のレチノール含有スクワラン25g,8%重量フェノキシエタノール精製水52.25gを混合した。これらをラメラ構造の形成工程を経ないで,高速ミキサーで破砕撹拌し,その後超音波処理し,この細胞送達用キャリアをマイクロフルイタイザー処理し平均粒子直径が300nmの細胞送達用キャリアを得た。さらに孔径400 nm フィルターを用いてナノオーダーのカプセルにサイジングした。
【0173】
試料D-10:両親媒性の抗酸化ビタミン非配合の非ラメラ細胞送達用キャリアのコントロール グリセリン15.22g,ジグリセリン3.6g,ココイルグルタミン酸Na2g,GOVC1gと DOPEMP(NIPAA/DMAPAA) Cop. 1g,コレステロール0.05g,PEG-25フィトスタノール0.1g,カプリル酸0.35g,5%重量のレチノール含有スクワラン25g,アスコルビン酸リン酸3Na塩0.6g,8%重量フェノキシエタノールが添加された精製水52.25gを混合した。これらをラメラ構造の形成工程を経ないで,高速ミキサーで破砕撹拌し,その後超音波処理し,この細胞送達用キャリアをマイクロフルイタイザー処理し平均粒子直径が300nmの細胞送達用キャリアを得た。さらに孔径400 nm フィルターを用いてナノオーダーのカプセルにサイジングした。
【0174】
A-10,B-10,C-10,D-10を遮光条件,40℃で3ヶ月保存し,実験開始時と終了時のレチノール含量をHPLCで測定した。分析条件は次のとおりである。カラム: Shim-pack FC-ODS(75 mm L. × 4.6 mm ),溶媒: Methanol,流速: 1.2 mL/min,カラム温度: 35 °C,検出波長: 350 nm。
【0175】
その結果,実験スタート時のレチノールの含量を100%としたとき実験終了時の本発明のA-10は,95.67%であり,コントロールのB-10は73.2%,C-10は32.5%,D-10は,22.7%となり本発明のA-10におけるレチノールの安定性が際立って高かった。さらに,カプセルに添加される,レチノールなどの有効成分が酸化され易い成分であるとき,有効成分の酸化を予防する為に,抗酸化剤が使用されて来たが,抗酸化剤の有効期間が短い為に有効成分が酸化される問題が合ったが,GOVC等の両親媒性物質の添加により,この有効成分の酸化が抑制された。
【0176】
実施例A-10の本発明の細胞送達用キャリアとB-10,C-10,D-10,E-10の細胞送達用キャリア及びいずれの細胞送達用キャリアを含まないプラセボクリームをネガティブコントロールとして使用し,次の処方によりクリームを作成し,ヒトに対する抗シワ作用,抗ニキビ作用,保湿作用,バリア機能増強作用,紫外線由来炎症抑制作用,抗褥瘡作用,ラジカル抑制作用を評価した。
【0177】
試験クリームの処方は,上記,A-10,B-10,C-10,D-10をそれぞれ10%重量を株)アイ・ティー・オー(西東京市,東京都)社製クリーム基材に添加し自転公転式ミキサーで5分処理したものを用いた。
【0178】
健常人及びシワ,ニキビ,色素沈着,乾燥肌に悩む合計100人を,それぞれの試験区の症状が均一になるように20人ずつ5区(A-10,B-10,C-10,D-10添加区とプラセボ区)に配置しそれぞれの効果を評価した。健常人の場合は頬部及びその他の患者については患部に対して上記外用製剤を一日2回朝晩0.01ml塗布し,塗布後5分間は,熱した蒸しタオルで塗布部をカバーした。塗布試験開始前と塗布開始から10日経過後の病変部の色を同一照明条件にてデジタルカメラで撮影し画像処理装置VISIAによりシワ,ニキビ,色素沈着をVISIAの内蔵ソフトにより数値化した。叉,健常人については皮膚過酸化脂質量をろ紙に皮脂を浸み込ませることにより,過酸化脂質測定キットろ紙により皮脂中の過酸化脂質量を測定した。乾燥とバリア機能は,角層水分量と表皮水分蒸散量を測定することにより比較した。褥瘡は肉眼で改善度を褥瘡基準マニュアルに従って比較し数値化した。結果は,試験スタートから60日後にそれぞれの試験区ごとに20人の合計点数を求め,プラセボクリームの合計点数を100%として試験区と対象区の%を算出した。
【0179】
試験60日後の結果は,プラセボ区を100%とすると実施例のA-1の効果は,シワは44%,ニキビは27%,色素沈着35%となり際立った改善が認められた。さらに角層水分量141%,表皮水分蒸散量132%改善に増加し乾燥肌が改善した。抗シワ作用,抗ニキビ作用,美白作用,保湿作用,バリア機能増強作用のすべてで効果が確認された。その他の試験区の結果は,以下の通りである。B-1の効果は,シワは69%,ニキビは64%,色素沈着72%,角層水分量119%,表皮水分蒸散量116%であり,C-1の効果は,シワは85%,ニキビは81%,色素沈着91%,角層水分量105%,表皮水分蒸散量104%であり,D-1の効果は,シワは91%,ニキビは89%,色素沈着95%,角層水分量106%,表皮水分蒸散量109%であった。
【0180】
さらに,A-1区の患者の頬皮膚から採取した皮脂の脂質過酸化物濃度がネガティブコントロールに比較し36%減少し皮膚のラジカル抑制作用が確認された。この結果より,本製品は医薬品,医薬部外品,未承認医薬品,化粧品として,極めて有効であることが確認された。
【0181】
(温度応答性細胞送達用キャリアの安定性と取込み実験)試料A-1)両親媒性抗酸化ビタミン配合温度応答性ラメラ細胞送達用キャリア(本発明)卵黄由来ホスファチジルコリン1gとジオレオイルフォスファチジルエタノールアミン0.8gとDOPEMP(NIPAA/DMAPAA)Cop.3gとコレステロール0.05g,PEG-25フィトスタノール(INCI名 PEG-25 Phytostanol)0.1gとGOVC(2-グリセリル-3-カプリル酸アスコルビン酸,グリセリン:カプリル酸:アスコルビン酸からなる基質を0.223:0.35:0.427の重量比で結合した両親媒性ビタミン誘導体)0.1gを200mLクロロホルムに溶解後,エバポレーターで溶媒を除去しラメラ構造フィルムを形成させた。
【0182】
これに0.2mg/mL の濃度でPBSに溶かされたペプチド結合蛍光物質溶液(オボアルブミン:フルオレセインイソチオシアネート=1:1(等モル)の混合水溶液)1 mLと核酸としてルシフェラーゼ活性を抑制するタンパクを細胞内で生合成するmir-125a siRNA duplexを200nMの濃度でPBSでの希釈した溶液(以下単にsiRNA溶液と記す)1mL混合した。次にミキサーでフィルムを破砕処理し,その後超音波処理し,さらに孔径400 nm フィルターを用いてナノオーダーのカプセルにサイジングした。PD-10 columnを用いてゲルろ過し細胞送達用キャリアを精製した。
【0183】
試料B-1)両親媒性の抗酸化ビタミンを構成する基質配合の温度応答性ラメラ細胞送達用キャリア(コントロール1)卵黄由来ホスファチジルコリン1gとジオレオイルフォスファチジルエタノールアミン0.8gとDOPEMP(NIPAA/DMAPAA)Cop.3gとコレステロール0.05g,PEG-25フィトスタノール0.1gとカプリル酸0.035をクロロホルムに溶解し,エバポレーターで溶媒を除去してラメラ構造フィルムを形成させた。これにペプチド結合蛍光物質溶液(試料A-1と同じもの)1mLとアスコルビン酸0.043gとグリセリン0.022gとsiRNA溶液1mLを混合した。次に高速ミキサーでフィルムを破砕処理し,その後超音波処理し,さらに孔径400nmフィルターを用いてナノオーダーのカプセルにサイジングした。PD-10columnを用いてゲルろ過し細胞送達用キャリアを精製した。
【0184】
試料C-1)両親媒性の抗酸化ビタミン配合の非ラメラ細胞送達用キャリア(コントロール2)卵黄由来ホスファチジルコリン1gとジオレオイルフォスファチジルエタノールアミン0.8gとDOPEMP(NIPAA/DMAPAA)Cop.3gとコレステロール0.05g,PEG-25フィトスタノール0.1gとGOVC0.1gにペプチド結合蛍光物質溶液(試料A-1と同じもの)を1mLとsiRNA溶液を1mL混合した。これらをラメラ構造フィルムの形成工程を経ないで,高速ミキサーで破砕撹拌し,その後超音波処理し,さらに孔径400nmのフィルターを通過させた。
【0185】
試料D-1)両親媒性の抗酸化ビタミン非配合の非ラメラ細胞送達用キャリアのコントロール卵黄由来ホスファチジルコリン1gとジオレオイルフォスファチジルエタノールアミン0.8gとDOPEMP(NIPAA/DMAPAA)Cop.3gとコレステロール0.05g,PEG-25フィトスタノール0.1gに,ペプチド結合蛍光物質溶液(試料A-1と同じもの)を1mLとsiRNA溶液を1mL混合した。これらをラメラ構造フィルムの形成工程を経ないで,高速ミキサーで破砕撹拌し,その後超音波処理し,さらに孔径400nmのフィルターを通過させた。
【0186】
(細胞送達用キャリアの粒子径の測定) 各試料A-1,B-1,C-1,D-1について作製した細胞送達用キャリアの粒子径を,室温で一週間保存し,粒子径測定装置(ZETASIZER Nano-ZS)を用いて測定したところ,A-1の平均粒子径は,314nm(範囲120-450nm)のシャープな単一ピークが得られ,以下コントロールのB-1の平均粒子径は,252nm(範囲155-342nm)のシャープな単一ピークが得られたが,C-1,D-1については,経時的に分離し,安定な細胞送達用キャリアは得られなかった。
【0187】
(細胞取り込み実験) 6wellプレートを用いて,上記で作成した,本発明のA-1,以下コントロールのB-1,C-1,D-1組成物液を125μl取りFBS培地で1mlにメスアップした。5.0×104cells/mlの濃度で培養したHeLa細胞(子宮頸癌細胞)の培地を上記のメスアップ後の分散液に変えて,37℃で48時間インキュベートした。インキュベート後,それぞれから培地を取り除き,PBSで5倍希釈ピッカジーン細胞溶解剤Lcβ(東洋インキ)を250μl/wellで加え30分インキュベート後得られた溶液を-80℃で凍結後し,37℃の浴槽で溶液を融解させ,12000rpm,5分間遠心分離操作を行い,得られた上澄み10μlに50μlピッカジーン溶液を加えて発光測定を行い,細胞内ルシフェラーゼ活性を測定することにより核酸(siRNA)の抱接率を以下の計算式でもとめた。本実験で使用したsiRNA のmir-125aは,細胞に取り込まれるとルシフェラーゼ活性を抑制するため,ルシフェラーゼ発光量が少ないほどsiRNAが細胞に取り込まれタンパク合成を促進しルシフェラーゼ活性を抑制した事を意味する。
【0188】
核酸(siRNA)抱接率=ルシフェラーゼ発光量:C(Count per Second)/タンパク量:P(Protein Abundant)。
【0189】
なお,siRNAを細胞内に送達していない子宮頸癌細胞の培地10μlをBCA(ビシンコニン酸)アッセイキットを使用して,BCA標準品を使用して検量線を作成してからタンパク定量を行い,上記C/Pの値を100%(control)とし,上記の実施例に係るRNAの抱接率をルシフェラーゼ活性を介して百分率で示した。結果は, 本発明のA-1は19%,以下コントロールのB-1は62%,C-1は85%,D-1は,81%となり,本発明のA-1では,最も高いルシフェラーゼ活性(抱接率)の低下が見られた。
【0190】
(水溶性の蛍光色素の抱接率の測定) 上記で作成した本発明のA-1,と以下コントロールのB-1,C-1,D-1組成物液を40℃の温度ストレス下で1週間インキュベーションし,各組成物の蛍光特性の安定性を調べた。即ち,PBSで20倍希釈し,蛍光光度測定器にてその蛍光強度を測定し,ペプチド結合蛍光物質の抱接時蛍光強度とした。また,Triton10Xを1%加え,細胞送達用キャリアを完全崩壊させた後,ゲル濾過により,ペプチド結合蛍光物質のみの分画を分離してその分画の蛍光強度をヒートストレス後の蛍光強度とした。そしてTritonを加えたときの蛍光強度の値から抱接時蛍光強度の値を引くことで,その差を算出した。尚,相対比較の為にA-1の算出値を100%として,コントロールの抱接率を求めた。結果,本発明のA-1は100%,以下コントロールのB-1は25%,C-1は2%,D-1は3%であり,本発明の両親媒性抗酸化ビタミン配合ラメラ細胞送達用キャリアであるA-1のヒートストレス後の抱接率の優位性が確認できた。
【0191】
(Franz cellを用いた皮膚透過性の比較)表皮皮膚モデルとしてLabCyte EPI-MODELを使用し,Franz Cellに人工皮膚をはさみ,37℃でインキュベートし作製したペプチド結合蛍光物質を含む上記で作成した本名発明のA-1,以下コントロールのB-1,C-1,D-1組成物液を1mLをドナーチャンバーへ投与し,投与後,48時間後,サンプリングポートのサンプリング試料及びペプチド結合蛍光物質抱接乳化組150μLに10%TritonX 10μLを加え試料溶液とした。試料溶液100μLを蛍光光度計infiniteM1000を用いて蛍光強度を測定し,以下の式から皮膚透過率を算出した。結果,本発明のA-1は42%,以下コントロールのB-1は19%,C-1は5%,D-1は4%であり,本発明の両親媒性抗酸化ビタミン配合ラメラ細胞送達用キャリアであるA-1の皮膚透過性の優位性が確認できた。
Permeation Rate(%)=(Fr/Fd)x100
(Fr:Fluourcence of sample from receptor,Fd:Fuluorescence of donor)
【0192】
このラメラ液晶を利用した製剤は,製剤中のGOVCの有効濃度が,0.01%以上であればよく低濃度で効果を発揮する。これは,皮膚吸収率が高まったためであると考えられる。
【0193】
また,製剤中のGOVC又はOGVCの濃度を1%に上昇させたものを作成したが皮膚刺激を発揮しなかった。これは,GOVC又はOGVCの皮膚刺激性がラメラ液晶により弱められたためであると考えられた。この結果より,本発明のラメラ液晶乳化物は医薬品,医薬部外品,未承認医薬品,化粧品として,アスコルビン酸(ASA)源として,ASAラジカル発生が抑制された外用組成物として極めて有効であることが確認された。
【0194】
(OECD TG-439収載in vitro皮膚刺激性試験) OECDガイドラインによる培養細胞をin vitro皮膚刺激性試験を実施した。OECD GUIDELINES FOR THE TESTING OF CHEMICALS, 439. (2015)
【0195】
正常皮膚表皮モデルとしてLabCyte EPI-MODELを使用し皮膚刺激性試験を行い点数化を行なった結果(点数が低いほど毒性が高く安全性が低い),その点数は,5% SLS(陽性対照)3点, Water(陰性対照)100点であり,本発明のA-1は125点,B-1は101点,C-1は89点,D-1は83点であり,いずれの製剤も生細胞率は50%以上であり,皮膚刺激性は否定された。中でも本発明のA-1は,数値が最も高く安全性が高いことが示唆された。試験の結果,正常皮膚モデルにおいて被験物質の皮膚刺激性は認められなかった。
【0196】
(pH応答性細胞送達用キャリアの作製)試料A-2)両親媒性抗酸化ビタミン配合pH応答性ラメラ細胞送達用キャリア本発明)卵黄由来ホスファチジルコリン3g,ジオレオイルフォスファチジルエタノールアミン0.8gとコレステロール0.15g,PEG-25フィトスタノール(INCI名 PEG-25 Phytostanol)0.3g,GOVC(2-グリセリル-3-カプリル酸アスコルビン酸,グリセリン:カプリル酸:アスコルビン酸からなる基質を0.223:0.35:0.427の重量比で結合した両親媒性ビタミン誘導体)0.1gをクロロホルム150mLに溶解後,減圧下でクロロホルムを除去しフィルムを作製した。そこに0.5mMカルセインと9.0%(w/v)スクロースの混合溶液を100mL加え,リピッドフィルムを剥がし超音波槽を用いて超音波で破砕後,孔径100nmフィルターでサイジングを行った。細胞送達用キャリア粒子の平均直径は87nmであった。電子顕微鏡観察によりラメラ構造が確認された。次にPD-10 columnでゲルろ過し,これをキトサン処理前液とした。次にこれを,キトサン溶液0.1(w/v)を1%(v/v)酢酸溶液に溶解させた液に滴下し40℃で5時間反応後冷却した。これを,本発明のpH応答性細胞送達用キャリアとして,以下pH-GOVC-Chitoと略す。
【0197】
試料B-2)両親媒性の抗酸化ビタミンを構成する基質配合のpH応答性ラメラ細胞送達用キャリア(コントロール1)卵黄由来ホスファチジルコリン3g,ジオレオイルフォスファチジルエタノールアミン0.8gとコレステロール0.15g,PEG-25フィトスタノール0.3gとカプリル酸0.035をクロロホルム150mLに溶解エバポレーターによりクロロホルムを除去しフィルムを作製した。そこにアスコルビン酸0.043gとグリセリン0.022g,及び0.5mMカルセインと9.0%(w/v) スクロースの混合溶液を100mL加え,リピッドフィルムを剥がし超音波槽を用いて超音波で破砕後,孔径100nmフィルターでサイジングを行った。次にPD-10 columnでゲルろ過し,これをキトサン溶液0.1(w/v)を1%(v/v)酢酸溶液に溶解させた液に滴下し40℃で5時間反応後冷却した。
【0198】
試料C-2)両親媒性抗酸化ビタミン配合非ラメラ細胞送達用キャリア(コントロール2)卵黄由来ホスファチジルコリン3g,ジオレオイルフォスファチジルエタノールアミン0.8gとコレステロール0.15g,PEG-25フィトスタノール0.3gとGOCV0.1g,及び0.5 mMカルセインと9.0%(w/v)スクロースの混合溶液を100mL加え,高速ミキサーで破砕後,超音波処理し,孔径100nmフィルターを通過させた。これをキトサン溶液0.1(w/v)を1%(v/v)酢酸溶液に溶解させた液に滴下し40℃で5時間反応後冷却した。
【0199】
試料D-2 両親媒性の抗酸化ビタミン非配合の非ラメラ細胞送達用キャリア(コントロール3)卵黄由来ホスファチジルコリン3g,ジオレオイルフォスファチジルエタノールアミン0.8gとコレステロール0.15g,PEG-25フィトスタノール0.3g,及び0.5mMカルセインと9.0%(w/v)スクロースの混合溶液を100mL加え,高速ミキサーで破砕後,超音波処理し,孔径100nmフィルターを通過させた。これをキトサン溶液0.1(w/v)を1%(v/v)酢酸溶液に溶解させた液に滴下し40℃で5時間反応後冷却した。
【0200】
キトサンはプラスに帯電しているため,イオン結合でリン脂質のリン酸に結合した酸素原子に容易に結合し,キトサンで緻密に覆われたキトサン結合細胞送達用キャリアを得る事ができた。ここで得た細胞送達用キャリアをそれぞれ0.1%キトサン結合細胞送達用キャリア
, 0.5%キトサン結合細胞送達用キャリアとした。
【0201】
(粒子径の測定) 100倍以上9.0%(w/v) Sucrose溶液で希釈した細胞送達用キャリア溶液をマイクロキュベットに入れ,25 ℃における粒度分布をDLS (動的光散乱法)を用いて観察した。作製した細胞送達用キャリアの粒子径は,A-2 pH-GOVC-Chitoのキトサン処理前液では,182nmであり,A-2 pH-GOVC-Chitoのキトサン結合細胞送達用キャリアは,198nmでありキトサン処理により粒子径が大きくなることが確認された。
【0202】
(表面電位の測定) 作製した細胞送達用キャリア溶液を20倍希釈し,ELS-Z2 ゼータサイザーを用いて電気泳動光散乱法(ELS法)により,37 ℃における表面電位を測定した。作製した細胞送達用キャリアの表面電位のZ potential測定結果は,A-2のキトサン処理前液では,-15mV,A-2のキトサン結合細胞送達用キャリアは,15mVとなりキトサン結合に伴い表面電位も増大することが確認された。キトサンはプラスに帯電しているため,イオン結合でリン脂質のリン酸に結合したマイナスにチャージした酸素原子に容易に結合し,キトサンで緻密に覆われたキトサン結合細胞送達用キャリアを得る事ができることが証明された。
【0203】
(pH反応性細胞送達用キャリアの皮膚透過率)表皮皮膚モデル(LabCyte EPI-MODEL 12)とレセプター内をPBSで満たしたFranz cellを使用し上部ドナーに本発明のA-2と以下コントロールのB-2,C-2,D-2の細胞送達用キャリア溶液を1mL添加して37℃,24時間培養後にPBSで満たされた下部レセプター部と上部ドナー部から試料を150μLずつ採取し10倍希釈したTriton X-100を20μL加え,その蛍光強度をInfiniteM1000を用いて測定した(Ex 495 nm, Em 515nm)。その値から以下式を用いて皮膚透過率を求めた。
Cumulative % dose applied / cm
2
=(Fuluorcence of sample from receptor / Fuluorcence of donor) ×100% / 0.64 cm
2
【0204】
24時間後の結果は,本発明のA-2 のキトサン結合細胞送達用キャリアが最も高く0.6であったのに対して,コントロールのB-2は0.3,C-2及びD-2は0.1であった。本結果より,本発明のA-2の両親媒性抗酸化ビタミン配合pH応答性ラメラ細胞送達用キャリアは,比較に用いたB-2の抗酸化ビタミンの基質配合のpH応答性ラメラ細胞送達用キャリア(コントロール1),C-2の両親媒性抗酸化ビタミン配合の非ラメラ細胞送達用キャリア(コントロール2),及びD-2の両親媒性抗酸化ビタミン非配合の非ラメラ細胞送達用キャリア(コントロール3)に比較し遥かに高い皮膚透過性を示した。
【0205】
(メラニン産生抑制試験) 前処理 前記A-2, B-2, C-2, D-2のpH応答性細胞送達用キャリア(A-3, B-3, C-3, D-3)を使用し,以下のメラニン産生抑制試験を行なった。24 well dishにHMV-II細胞を1×105 cells/mLの濃度で播種し,24時間インキュベート後,メラニン産生刺激物質であるIBMX 200 μMとA-3, B-3, C-3, D-3の各pH応答性細胞送達用キャリアをAPS量が100 μMとなるように添加した。2時間後PBSで洗浄し,再度IBMX 200 μMを添加し,70時間インキュベートした。そして1 mol/LのNaOH 200 μLで細胞を可溶化し,メラニンを抽出し,405 nmでの吸光度を測定することにより,抽出したメラニンを定量した。その結果,IBMX添加(pH応答性細胞送達用キャリアは無添加の区)によりメラニン産生量は約3倍に増加した。この時のメラニン産生量を100%とした時,本発明のA-3添加区は48%となり,B-3は78%,C-3は85%, D-3は90%であった。
【0206】
本結果より,本発明のA-2の両親媒性抗酸化ビタミン配合pH応答性ラメラ細胞送達用キャリアは,比較に用いたB-2の抗酸化ビタミンの基質配合のpH応答性ラメラ細胞送達用キャリア(コントロール1),C-2の両親媒性抗酸化ビタミン配合の非ラメラ細胞送達用キャリア(コントロール2),及びD-2の両親媒性抗酸化ビタミン非配合の非ラメラ細胞送達用キャリア(コントロール3)に比較し遥かに高いメラニン産生抑制作用をした。
【0207】
(細胞傷害性評価) 6 well plateでHMV-II細胞を1×105 cells/mLの濃度で500 μL/wellずつ播種し,24時間インキュベート後,メラニン産生刺激物質であるIBMX 200 μMとA-3, B-3, C-3, D-3の各pH応答性細胞送達用キャリアをAPS量が100 μMとなるように添加した。2時間後PBSで洗浄し,再度IBMX 200 μMを添加し,70時間インキュベートした。これにCell Counting Kit-8を10 μL添加した。1時間インキュベート後に450 nmでの吸光度を測定することで,サンプル添加による細胞傷害性を比較した。その結果,IBMXを添加(pH応答性細胞送達用キャリアは無添加)することで細胞傷害が確認されたが,A-3, B-3, C-3, D-3の各pH応答性細胞送達用キャリアの添加においては,細胞傷害は確認されなかった。
【0208】
(細胞内分布試験)HMV-II細胞をglass bottom dishに5×10
4
cells/mLの濃度で2mLずつ播種し,24時間インキュベートした(37℃)。本発明のA-2とD-4を添加して2h培養後,PBSで2回洗浄し,70hインキュベートを行った。4% paraformaldehyde phosphate buffer solutionで20分固定化した後,再度PBSで2回洗浄し,共焦点レーザー顕微鏡で観察を行った。その結果,A-4に含有されていた蛍光色素のカルセインは,殆ど細胞内に取り込まれないことが判明した。これに対し本名発明のA-2では,カルセインは,細胞質と核に取り込まれ,特にカルセインは細胞核に顆粒状に集中していることが確認された。核のカルセイン蛍光強度は細胞質よりも低かった。
【0209】
上記の試験結果は,以下のことを示唆した。水溶性蛍光物質であるCalceinは単体では,コントロールでは細胞内に取り込まれないが,リポソームに封入することで細胞内に取り込まれることが観察された。そしてnon coated liposomeでは内封された蛍光物質が顆粒状に観察されたことから,リポソームはエンドサイトーシスにより細胞内に取り込まれ,エンドソーム内に留まっていると考えられる。さらにCS liposomeに封入したものでは,RhodamineとCalceinの細胞内局在が異なることが確認され,水溶性蛍光物質であるCalceinは細胞中心部に集積している様子が伺えた。カチオン性を示すCS AsNa liposomeは細胞表面との親和性増大のためエンドソームによる細胞内取り込みが促進され,その後エンドソームから放出されて細胞中心部に集積すると考えられる。
【0210】
そこでエンドソームからの放出にはキトサンのプロトンスポンジ効果が関与していると考える。プロトンスポンジ効果とは,弱酸性環境下でプロトン化する化合物がエンドソーム内部に取り込まれた際,そのプロトン化によってエンドソーム内のpHの低下が阻害され,多量のプロトンや塩化物イオンがエンドソーム内に流入することでエンドソーム内部の浸透圧が上昇し,エンドソームの膨潤や破裂が引き起こされる現象である。プロトンスポンジ効果とは,pHの低下に合わせて大量のプロトンを吸収する効果のことであり,大量のアミノ基を有するカチオン性高分子がこの効果を示す。特に核酸医薬のデリバリーにおいてエンドソーム脱出を助ける手法としてこの仮説がBehrらにより提唱された。エンドソーム膜には,V-ATPaseと呼ばれるプロトンポンプが存在しており,エンドソーム内pHが5~6程度になるまでプロトンをエンドソーム内に輸送する。このプロトンスポンジ効果を有したカチオン性高分子は,pH5~7に緩衝域があり,エンドソーム内pHの低下に合わせてプロトンを大量に吸収する。これにより,エンドソーム内pHの低下は抑制され,pH低下のためにはより多くのプロトンの流入が必要となる。また,エンドソーム内外の電荷的平衡を保つためにアニオンも流入し,塩濃度・浸透圧が上昇する。この高い浸透圧を解消するため,さらに大量の水がエンドソーム内に流入し,その容量に耐えきれなくなり膜が崩壊することで,エンドソーム脱出が促進されると提唱された。kobunshi, Vol. 58, P.137 (2009)
【0211】
ポリエチレンイミン(PEI)やポリアミドアミンデンドリマーがプロトンスポンジ効果を有することが知られており,遺伝子導入効率化のためにも広く用いられている。
【0212】
プロトンスポンジ効果を示すためには高い緩衝能力が必要とされるが,近年キトサンの緩衝能はエンドソーム内のpH範囲(4.5~7)において,PEIよりも優れているということが報告されている。
【0213】
またアスコルビン酸Naにはメラニン合成酵素であるチロシナーゼを抑制する効果があり,メラニン合成の初期段階を阻害することが知られている。さらに,メラニンは合成段階が進むにつれて樹状突起へ輸送されると報告されており,メラニン合成初期段階は細胞の中心部で行われると考えられる。以上より,エンドソームから放出されたアスコルビン酸Na封入キトサン修飾リポソームは,細胞中心部に集積することでメラニン合成初期段階を阻害し,メラニン産生抑制効果が顕著に確認されたのでないかと考えている。
【0214】
(皮膚刺激性試験) OECDガイドラインによる培養細胞を使用したin vitro皮膚刺激性試験を実施した。ガイドラインは,OECD GUIDELINES FOR THE TESTING OF CHEMICALS, 439. (2015)を使用した。正常皮膚表皮モデルとしてLabCyte EPI-MODELを使用し皮膚刺激性試験を行い点数化を行なった結果(点数が低いほど毒性が高く安全性が低い),その点数は,5% SLS(陽性対照)3点, Water(陰性対照)100点であり,本発明のA-2は134点,B-2は109点,C-2は95点,D-2は91点であり,いずれの製剤も生細胞率は50%以上であり,皮膚刺激性は否定された。中でも本発明のA-1は,数値が最も高く安全性が高いことが示唆された。試験の結果,正常皮膚モデルにおいて被験物質の皮膚刺激性は認められなかった。
【0215】
(光応刺激応答性ポリマーの作製) 光応答性フルオロポリマーの合成を行なった。2,2,3,3,4,4,4-heptafluorobutyl methacrylate (FMA),1'-[2-(methacryloyloxyl)ethyl]-3',3' -dimethyl-6-nitrospiro [2H-1-benzopyran-2,2' -indoline] (SpMA) とのモル比率が85:15の割合になるようにDMF(ジチルホルムアミド)に溶解させた。なお,FMAとSpMAとの総量は10gとした。溶解後の溶媒に,MPA(3-メルカプトプロピオン酸)をFMAの0.028mol倍となるように加え,更にAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を58mg加えた。その後,溶媒に対して窒素置換と超音波による脱気を行った後,70℃で5時間ラジカル重合を行った。反応後の液体の温度を室温に戻してから,あらかじめ冷やしておいたジエチルエーテルに滴下し,再沈精製を行った。その後,沈殿物を濾過で回収した。この再沈精製を更に2回行い,化2で表されるポリマーを回収した。このポリマーについて水により透析を行い,その後,凍結乾燥によってポリマーを更に精製した。
【化2】
【0216】
(光応刺激応答性ポリマー結合脂質の作製) 式(1)で表されるポリマーを活性エステル化させるために,モル比が,式(1)で表される温度応答性ポリマー:DCC(N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド):NHS(N-ヒドロキシスクシンイミド)=1:2.5:2.5の割合となるように塩化メチルに溶解させてから,室温で24時間反応させた。反応後,吸引濾過により副生成物のジシクロヘキシル尿素を取り除き,ジエチルエーテルによる再沈精製を行い,沈殿物として,スクシニルポリマーを回収した。このスクシニルポリマーと膜融合性脂質であるDOPE(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン)がモル比1:1でとなるようにジオキサンに溶解させ,室温で24時間反応させた。反応後の溶液をエバポレーターでバキュームし,溶媒を飛ばすことによって,式(2)で表される光応刺激応答性ポリマー結合脂質を調製した。これを以下 DOPEMP( FMA/SpMA )Copo.と略す。
【0217】
試料A-1)ビタミン誘導体配合光応答性ラメラ細胞送達用キャリア(本発明)卵黄由来ホスファチジルコリン1gとジオレオイルフォスファチジルエタノールアミン0.8gとDOPEMP(FMA/SpMA)Copo.1gとコレステロール0.05g,PEG-25フィトスタノール(INCI名 PEG-25 Phytostanol)0.1gとGOVC(2-グリセリル-3-カプリル酸アスコルビン酸,グリセリン:カプリル酸:アスコルビン酸からなる基質を0.223:0.35:0.427の重量比で結合した両親媒性ビタミン誘導体)0.1gを200mLクロロホルムに溶解後,エバポレーターで溶媒を除去しラメラ構造フィルムを形成させた。これに紫外線(352nm)を3分間照射し遮光した。以下作業は,暗室用赤色光源下で作業した。
【0218】
これに0.2mg/mL の濃度でPBSに溶かされたペプチド結合蛍光物質溶液(オボアルブミン:フルオレセインイソチオシアネート=1:1(等モル)の混合水溶液)1 mLと核酸としてルシフェラーゼ活性を抑制するタンパクを細胞内で生合成するmir-125a siRNA duplexを200nMの濃度でPBSでの希釈した溶液(以下単にsiRNA溶液と記す)1mL混合した。次にミキサーでフィルムを破砕処理し,その後超音波処理し,さらに孔径400 nm フィルターを用いてナノオーダーのカプセルにサイジングした。PD-10 columnを用いてゲルろ過し細胞送達用キャリアを精製し遮光瓶に保存した。
【0219】
試料B-1)ビタミン誘導体でないビタミン配合の温度応答性ラメラ細胞送達用キャリア(コントロール1)卵黄由来ホスファチジルコリン1gとジオレオイルフォスファチジルエタノールアミン0.8gとDOPEMP(FMA/SpMA)Copo.1gとコレステロール0.05g,PEG-25フィトスタノール0.1gとカプリル酸0.035をクロロホルムに溶解し,エバポレーターで溶媒を除去してラメラ構造フィルムを形成させた。これに紫外線(352nm)を3分間照射し遮光した。以下作業は,暗室用赤色光源下で作業した。これにペプチド結合蛍光物質溶液(試料A-1と同じもの)1mLとアスコルビン酸0.043gとグリセリン0.022gとsiRNA溶液1mLを混合した。次に高速ミキサーでフィルムを破砕処理し,その後超音波処理し,さらに孔径400nm フィルターを用いてナノオーダーのカプセルにサイジングした。PD-10 columnを用いてゲルろ過し細胞送達用キャリアを精製し遮光瓶に保存した。
【0220】
試料C-1)ビタミン誘導体配合の非ラメラ細胞送達用キャリア(コントロール2)卵黄由来ホスファチジルコリン1gとジオレオイルフォスファチジルエタノールアミン0.8gとDOPEMP(FMA/SpMA)Copo.1gとコレステロール0.05g,PEG-25フィトスタノール0.1gとGOVC 0.1gにペプチド結合蛍光物質溶液(試料A-1と同じもの)を1mLとsiRNA溶液を1mL混合した。これに紫外線(352nm)を3分間照射し遮光した。以下作業は,暗室用赤色光源下で作業した。これらをラメラ構造フィルムの形成工程を経ないで,高速ミキサーで破砕撹拌し,その後超音波処理し,さらに孔径400nmのフィルターを通過させ遮光瓶に保存した。
【0221】
試料D-1)ビタミン誘導体非配合の非ラメラ細胞送達用キャリアのコントロール卵黄由来ホスファチジルコリン1gとジオレオイルフォスファチジルエタノールアミン0.8gとDOPEMP(FMA/SpMA)Copo.1gとコレステロール0.05g,PEG-25フィトスタノール0.1gに,ペプチド結合蛍光物質溶液(試料A-1と同じもの)を1mLとsiRNA溶液を1mL混合した。これに紫外線(352 nm)を3分間照射し遮光した。以下作業は,暗室用赤色光源下で作業した。これらをラメラ構造フィルムの形成工程を経ないで,高速ミキサーで破砕撹拌し,その後超音波処理し,さらに孔径400nmのフィルターを通過させ遮光瓶に保存した。
【0222】
(細胞送達用キャリアの粒子径の測定) 各試料A-3,B-3,C-3,D-3について作製した細胞送達用キャリアの粒子径を,一週間保存し,粒子径測定装置(ZETASIZER Nano-ZS)を用いて測定したところ,A-1の平均粒子径は,314nm(範囲120-450nm)のシャープな単一ピークが得られ,以下コントロールのB-1の平均粒子径は,198nm(範囲110-298nm)のシャープな単一ピークが得られたが,C-3,D-3については,経時的に分離し,安定な細胞送達用キャリアは得られなかった。紫外線(352 nm)または可視光(530 nm)を3分間照射した。
【0223】
(細胞取り込み実験) 6wellプレートを用いて,上記で作成した,本発明のA-3,以下コントロールのB-3,C-3,D-3組成物液を125μl取りFBS培地で1mlにメスアップした。5.0×104cells/mlの濃度で培養したHeLa細胞(子宮頸癌細胞)の培地を上記のメスアップ後の分散液に変えて,遮光して37℃で6時間インキュベートし,可視光(530 nm)を30分間照射し,引き続き42時間インキュベートした。インキュベート後,それぞれから培地を取り除き,PBSで5倍希釈ピッカジーン細胞溶解剤Lcβ(東洋インキ)を250μl/wellで加え30分インキュベート後得られた溶液を-80℃で凍結後し,37℃の浴槽で溶液を融解させ,12000rpm,5分間遠心分離操作を行い,得られた上澄み10μlに50μlピッカジーン溶液を加えて発光測定を行い,細胞内ルシフェラーゼ活性を測定することにより核酸(siRNA)の抱接率を以下の計算式でもとめた。本実験で使用したsiRNA のmir-125aは,細胞に取り込まれるとルシフェラーゼ活性を抑制するため,ルシフェラーゼ発光量が少ないほどsiRNAが細胞に取り込まれタンパク合成を促進しルシフェラーゼ活性を抑制した事を意味する。
【0224】
核酸(siRNA)抱接率=ルシフェラーゼ発光量:C(Count per Second)/タンパク量:P(Protein Abundant)。なお,siRNAを細胞内に送達していない子宮頸癌細胞の培地10μlをBCA(ビシンコニン酸)アッセイキットを使用して,BCA標準品を使用して検量線を作成してからタンパク定量を行い,上記C/Pの値を100%(control)とし,上記の実施例に係るRNAの抱接率をルシフェラーゼ活性を介して百分率で示した。結果は, 本発明のA-1は36%,以下コントロールのB-1は72%,C-1は88%,D-1は,85%となり,本発明のA-1では,最も高いルシフェラーゼ活性(抱接率)の低下が見られた。
【0225】
(蛍光色素の抱接率の測定) 上記で作成した本発明のA-1,と以下コントロールのB-1,C-1,D-1組成物液を遮光環境で40℃の温度ストレス下で2週間保存し,各組成物の蛍光特性の安定性を調べた。即ち,PBSで20倍希釈し,蛍光光度測定器にてその蛍光強度を測定し,ペプチド結合蛍光物質の抱接時蛍光強度とした。また,Triton10Xを1%加え,細胞送達用キャリアを完全崩壊させた後,ゲル濾過により,ペプチド結合蛍光物質のみの分画を分離してその分画の蛍光強度をヒートストレス後の蛍光強度とした。そしてTritonを加えたときの蛍光強度の値から抱接時蛍光強度の値を引くことで,その差を算出した。尚,相対比較の為にA-1の算出値を100%として,コントロールの抱接率を求めた。結果,本発明のA-1は100%,以下コントロールのB-1は63%,C-1は11%,D-1は15%であり,本発明の両親媒性抗酸化ビタミン配合ラメラ細胞送達用キャリアであるA-1のヒートストレス後の抱接率の優位性が確認できた。
【0226】
(皮膚組織透過性の比較)表皮皮膚モデルとしてLabCyte EPI-MODELを使用し,FranzCellに人工皮膚をはさみ,37℃でインキュベートし作製したペプチド結合蛍光物質を含む上記で作成した本名発明のA-1,以下コントロールのB-1,C-1,D-1組成物液1mLをドナーチャンバーへ投与し,遮光して37℃で6時間インキュベートし,可視光(530nm)を30分間照射し,引き続き42時間インキュベートした。その後,サンプリングポートのサンプリング試料及びペプチド結合蛍光物質抱接乳化組150μLに10%TritonX10μLを加え試料溶液とした。試料溶液100μLを蛍光光度計infiniteM1000を用いて蛍光強度を測定し,以下の式から皮膚透過率を算出した。結果,本発明のA-1は25%,以下コントロールのB-1は15%,C-1は3%,D-1は2%であり,本発明の両親媒性抗酸化ビタミン配合ラメラ細胞送達用キャリアであるA-1の皮膚透過性の優位性が確認できた。
Permeation Rate(%)=(Fr/Fd)x100
(Fr:Fluourcence of sample from receptor,Fd:Fuluorescence of donor)
【0227】
(皮膚刺激性試験) OECDガイドラインによる培養細胞をin vitro皮膚刺激性試験を実施した。ガイドラインは,OECD GUIDELINES FOR THE TESTING OF CHEMICALS, 439. (2015)を用いた。正常皮膚表皮モデルとしてLabCyte EPI-MODELを使用し皮膚刺激性試験を行い点数化を行なった結果(点数が低いほど毒性が高く安全性が低い),その点数は,5% SLS(陽性対照)3点, Water(陰性対照)100点であり,本発明のA-1は111点,B-1は98点,C-1は87点,D-1は79点であり,いずれの製剤も生細胞率は50%以上であり,皮膚刺激性は否定された。中でも本発明のA-1は,数値が最も高く安全性が高いことが示唆された。試験の結果,正常皮膚モデルにおいて被験物質の皮膚刺激性は認められなかった。
【0228】
本組成物は,化成品,工業品,土木緑化用品,肥料,塗料,洗浄料,農林業用品,園芸用資材用品,顆粒品,粉末品,雑貨品,衣料品,経口用組成物,食品,培養組成物,動物薬,感光材,水処理剤,空気浄化剤,医薬品,医薬部外品,未承認医薬品,化粧品の外用組成物の実施である。さらに,本組成物は化成品,工業品,土木緑化用品,肥料,塗料,洗浄料,農林業用品,園芸用資材用品,顆粒品,粉末品,雑貨品,衣料品,経口用組成物,食品,培養組成物,動物薬,感光材,水処理剤,空気浄化剤の抗酸化剤としても,従来のASA,ASAリン酸Mg,従来のA2ATやA3ATと比較しても有効であった。
【0229】
本組成物は,化成品,工業品,土木緑化用品,肥料,塗料,洗浄料,農林業用品,園芸用資材用品,顆粒品,粉末品,雑貨品,衣料品,経口用組成物,食品,培養組成物,動物薬,感光材,水処理剤,空気浄化剤の実施例である。さらに医薬品,医薬部外品,未承認医薬品の外用組成物の実施例でもある。
【0230】
(製剤処方) 次に示す処方で本発明の製剤を調製した。この水溶性剤は,液状化粧品,液状医薬部外品,液状医薬品,液状食品,液状サプリメント,液状飼料添加物として使える。更に具体的には,以下の形態の外用剤の基剤として使用することができる。即ち本処方が使用できる外用剤の形態は,シャンプー,リンス,トリートメント,ヘアパック,ヘアスプレー,ヘアミスト,ローション,トナー,エッセンス,育毛剤,洗顔料,クレンジングローション,化粧水,エモリエントローション,モイスチャーローション,ミルキィーローション,ナリシングローション,スキンモイスチャーローション,モイスャーエマルション,マッサージローション,クレンジングローション,サンプロテクト,サンプロテクター,サンスクリーン,メーキャップローション,角質スムーザー,エルボーローション,ハンドローション,ボディローション,液状石鹸,パック,マスク,保湿エッセンス,美白エッセンス,紫外線防止エッセンス,スキンケア基礎化粧剤,メーキャップ剤,スキン用香水,パフューム,パルファム,オードパルファム,オードトワレ,オーデコロン,練香水,デオドラントローション,デオドラントパウダー,デオドラントスプレー,防臭化粧料,浴用剤,ボディスキン用剤である。
【0231】
(本発明の細胞送達用キャリアの調整) レシチン2%,グリセリン50%,ベヘニルアルコール8%,ステアリルアルコール7%,PEG-20フィトステロール4%,セタノール3%,フィトステロールズ1%,ステアリン酸グリセリル1%,トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル2%,GOVC(2-グリセリル-3-オクチルアスコルビル)1%,コレステロール0.3%,及びDOPEMP(NIPAA/DMAPAA) Copを0.2%とスクワラン10%を添加して自転公転撹拌機で練り上げた。これに精製水を加えて100%としてボルテックスで分散させた。その後,超音波槽で30分ソニケーションを行い,乳化粒子のサイズを小さくしてから,100nmのフィルターを通して,リポソームのサイズを整えた。粒子径平均値は75nmであり,電子顕微鏡観察によりラメラ構造が観察された。その後,ゲル濾過によりリポソームを分離させて精製し,本発明の細胞送達用キャリアを作製した。本発明の温度刺激応答性を持つ細胞送達用キャリアを作製した。以下これを,S-GOVC-DDSと略す。
【0232】
脂質総量が20mgとなり,モル比率が,ビタミン誘導体であるVCIP(アスコルビン酸-2,3,5,6-テトライソパルミテート)とDOTAP(1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン):ラメラ形成界面活性剤であるDOPE:DOPEMP(NIPAA/DMAPAA) Cop.)=1:2:7の割合となるように,それぞれをクロロホルムに溶解した。なお,クロロホルムに溶解したDOPEのうち,ラメラ形成界面活性剤のDOPEと式(5)で表される温度感応性ポリマーが結合したラメラ形成界面活性剤である DOPEMP(NIPAA/DMAPAA) Cop.とのモル比は,6.5:0.5とした。その溶液を,ナスフラスコに移動させ,エバポレーターで溶媒を飛ばし,リピッドフィルムを作製した。このリピッドフィルムに精製水を1ml加え,リピッドフィルムを水和させた後,ボルテックスで分散させた。その後,超音波槽で30分ソニケーションを行い,リポソームのサイズを小さくしてから,エクストルーダーを用いて,100nmのフィルターを通して,リポソームのサイズを整えた。粒子径平均値は75nmであり,電子顕微鏡観察によりラメラ構造が観察された。その後,ゲル濾過によりリポソームを分離させて精製し,本発明の細胞送達用キャリアを作製した。本発明の温度刺激応答性を持つ細胞送達用キャリアを作製した。以下これを,S-VCIP -DDSと略す。
【0233】
上記で作成した,本名発明の温度刺激応答製ポリマー含有細胞送達用キャリアであるSGOVC-DDSとS-VCIP-DDS,及び,前記実施例で示したpH刺激応答性ポリマーを含有した本発明のpH-GOVC-Chito及び,前記実施例で示した光刺激応答性ポリマーを含有した本発明のDOPEMP(FMA/SpMA)Copoを使用して以下の処方を作成した。以下の製剤処方の単位は全て%重量で示す。以下の製剤処方において,S-GOVC-DDSとS-VCIP-DDSを同質量50%:50%で混合したものをS-GOVC-DDS/S-VCIP-DDSと記した。更に,S-GOVC-DDSとS-VCIP-DDSとpH-GOVC-ChitoとDOPEMP(FMA/SpMA)Copoを同質量25%:25%:25%:25%で混合したものをS-GOVC-DDS/S-VCIP-DDS/pH-GOVC-Chito/DOPEMP(FMA/SpMA)Copoと記した。
【0234】
(液剤処方)
(1) S-GOVC-DDS/ S-VCIP-DDS:0.5,(2)グリセリン 6.5,(3)1,3ブチレングリコール 1.0,(4)フェノキシエタノール 0.5,(5)香料コンプレックス 0.1,(6)エッセンシャルオイルコンプレックス 0.1,(6)精製水:残量(7)クエン酸1.0 (8)NaOHでpHを7に調整した。
【0235】
(乳液処方)
(1)ポリオキシエチレン(10E.O.)ソルビタン 1.0 モノステアレート:0.5,(2)ポリオキシエチレン(60E.O.)ソルビット 0.5 テトラオレエート:0.5,(3)グリセリルモノステアレート:1.0,(4)F3:0.1,(5)ベヘニルアルコール:0.5,(6)スクワラン:8.0,(7)ブナの芽抽出物1:2.0,(8)ブドウ抽出物2:2.0,(9)コンフリー抽出物3:2.0,(10)グリチルリチン酸ジカリウム4:0.02,(11)S-GOVC-DDS/ S-VCIP-DDS:1.0,(12)カルボキシビニルポリマー:0.1,(13)水酸化ナトリウム:0.05,(14)エチルアルコール:5.0,(15)精製水:残量,(16)防腐剤 適量,(17)香料 適量(クエン酸1%とNaOHでpHは7±1に調整した。上記乳液の総遷移金属含量は100ppm以下であった)。
【0236】
(軟膏処方)
(1)ステアリン酸 18.0,(2)セタノール 4.0,(3)トリエタノールアミン 2.0,(4)F5:1.0,(5)イラクサ抽出物1:0.05,(6)サンザシ抽出物2:0.05,(7)ボダイジュ抽出物3:0.05,(8)N,N′-ジアセチルシスチンジメチル4:0.01,(9)トラネキサム酸5:0.2,(10)精製水:残量(クエン酸1%とNaOHでpHは7±1に調整した。上記軟膏の総遷移金属含有量は100ppm以下であった。)1 丸善製薬社製 2 丸善製薬社製 3 丸善製薬社製 4 シグマ社製 5 シグマ社製
【0237】
(ゲル処方)
(1)カルボキシビニルポリマー1:1.0,(2)トリエタノールアミン:1.0,(3)1,3-ブチレングリコール:10.0,(4)F6:0.5,(5)アロエ抽出物2:0.5,(6)アラントイン3:1.0,(7)S-GOVC-DDS/ S-VCIP-DDS:2.0,(8)2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-硫酸ナトリウム5:3.0,(9)精製水:残量(クエン酸1%とNaOHでpHは7±1に調整した。上記ゲル軟膏の総遷移金属含有量は100ppm以下であった。)
【0238】
(クリーム処方)
(1)ポリオキシエチレン(40E.O.)モノステアレート:2.0,(2)グリセリンモノステアレート(自己乳化型)1:5.0,(3)ステアリン酸:5.0,(4)ベヘニルアルコール:0.5,(5)スクワラン:15.0,(6)イソオクタン酸セチル:5.0,(7)1,3-ブチレングリコール:5.0,(8)F7:1.0,(9)シラカバ抽出物2:0.1,(10)ユキノシタ抽出物3:0.2,(11)S-GOVC-DDS/ S-VCIP-DDS:1.0,(12)パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル5:5.0,(13)リボフラビン6:0.05,(14)システイン7:0.1,(15)精製水:残量,(16)防腐剤 適量,(17)香料 適量(クエン酸1%とNaOHでpHは7±1に調整した。上記クリームの総遷移金属含有量は100ppm以下であった。)
【0239】
(粉体処方)
(1)ラノリン:7.0,(2)流動パラフィン:5.0,(3)ステアリン酸:2.0,(4)セタノール:1.0,(5)ヒマワリ油1:1.0,(6)グリセリン:5.0,(7)トリエタノールアミン:1.0,(8)カルボキシメチルセルロース:0.7,(9)精製水:残量,(10)マイカ:15.0,(11)タルク:6.0,(12)酸化チタン:3.0,(13)着色顔料:6.0,(14)F5:0.5,(15)トルメンチラ抽出物3:0.5,(16)S-GOVC-DDS/ S-VCIP-DDS:0.2,(17)グリチルレチン酸ステアリル5:0.1,(18)防腐剤 0.5,(19)香料 適量(クエン酸1%とNaOHでpHは7±1に調整した。総遷移金属含量は100ppm以下であった。)
【0240】
(紫外線ケア剤処方)
(1)ステアリン酸:2.0,(2)セタノール:1.0,(3)モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.):0.5,(4)セスキオレイン酸ソルビタン:0.5,(5)2-エチルヘキサン酸セチル:12.0,(6)シア脂1:2.0,(7)ゴマ油2:1.0,(8)オウゴン抽出物3:0.1,(9)F3:0.5,(10)エルゴカルシフェロール5:0.1,(11)S-GOVC-DDS/ S-VCIP-DDS:3.0,(12)パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル7:8.0,(13)2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン8:2.0,(14)1,3-ブチレングリコール:10.0,(15)カルボキシビニルポリマー:0.2,(16)精製水:残量,(17)防腐剤 適量,(18)酸化チタン:3.0,(19)トリエタノールアミン:0.5.(20)香料 適量(クエン酸1%とNaOHでpHは7±1に調整した。上記日焼け止め用乳液の総遷移金属含有量は100ppm以下であった。)
【0241】
(パック処方)
(1)ポリビニルアルコール:20.0,(2)エチルアルコール:20.0,(3)グリセリン:5.0,(4)カオリン:6.0,(5)S-GOVC-DDS/ S-VCIP-DDS:0.5,(6)F2:0.5,(7)ユリ抽出物3:0.05,(8)レゾルシン4:0.02,(9)リボフラビン5:0.1,(10)トラネキサム酸6:0.5,(11)防腐剤:0.2,(12)香料:0.1,(13)精製水:残量(クエン酸1%とNaOHでpHは7±1に調整した。上記パックの総遷移金属含量は100ppm以下であった。)
【0242】
(洗浄剤処方)
(1)ステアリン酸:10.0,(2)パルミチン酸:8.0,(3)ミリスチン酸:12.0,(4)ラウリン酸:4.0,(5)オレイルアルコール:1.5,(6)精製ラノリン:1.0,(7)アスタキサンチン1:0.005,(8)香料:0.1,(9)防腐剤:0.2,(10)グリセリン:18.0,(11)水酸化カリウム:6.0,(12)S-GOVC-DDS/ S-VCIP-DDS:0.5,(13)サボンソウ抽出物3:0.5,(14)グリチルリチン酸ジカリウム4:0.2,(15)パルミチン酸L-L-アスコルビン酸5:0.05,(16)精製水:残量(クエン酸1%とNaOHでpHは7±1に調整した。上記洗浄料の総遷移金属含量は100ppm以下であった。)
【0243】
(経口用組成物)
鶏油50質量%と豚油50質量%からなる融点28±3℃の動物性油脂92.7質量%,酵素0.9質量%,S-GOVC-DDS/ S-VCIP-DDSを1%添加したビタミンプレミックス1.0質量%,紛状生菌剤0.9%,香料4.5質量%,を明治機械社製200L攪拌混合機で2時間撹拌分散し粒度分布における平均粒径の大きさが0.51mmの粉粒からなる本発明のビタミンC源が強化された本発明の経口組成物を得た。本発明の経口用組成物は,飼料,飼料添加物,動物用薬品,食品,食品添加物,機能性食品,機能性食品,経口用動物薬の実施例である。
【0244】
(錠剤)
常法に従って下記成分を下記組成比で均一に混合・打錠し,1粒400mgの錠剤とした。還元麦芽水飴:17%,寒天:12%,二酸化ケイ素:1%,ショ糖脂肪酸エステル :3%,S-GOVC-DDS/ S-VCIP-DDSの凍結乾燥粉末:1%,粉末セルロース :残分
【0245】
(カプセル剤)
常法によりソフトカプセル剤皮100mg(ゼラチン70%,グリセリン25%)にS-GOVC-DDS/ S-VCIP-DDSの凍結乾燥粉末:5%,中鎖脂肪酸トリグリセリド:95%の成分からなる300mgを混練してから充填し,1粒440mgのソフトカプセルを得た。
【0246】
(ドリンク剤)
下記成分を配合し,常法に従って,水を加えて10Lとし,ドリンク剤を調製した。S-GOVC-DDS/ S-VCIP-DDS:80g,ローヤルゼリー :1g,液糖:1000g,
DL-酒石酸ナトリウム:1g,クエン酸:10g,シクロデキストリン:25g,塩化カリウム:2g,硫酸マグネシウム :1g。
【0247】
(液剤処方)
(1) S-GOVC-DDS/ S-VCIP-DDS/ PH-GOVC-CHITO/ DOPEMP(FMA/SPMA)COPO:0.5,(2)グリセリン 6.5,(3)1,3ブチレングリコール 1.0,(4)フェノキシエタノール 0.5,(5)香料コンプレックス 0.1,(6)エッセンシャルオイルコンプレックス 0.1,(6)精製水:残量(7)クエン酸1.0 (8)NaOHでpHを7に調整した。
【0248】
(乳液処方)
(1)ポリオキシエチレン(10E.O.)ソルビタン 1.0 モノステアレート:0.5,(2)ポリオキシエチレン(60E.O.)ソルビット 0.5 テトラオレエート:0.5,(3)グリセリルモノステアレート:1.0,(4)F3:0.1,(5)ベヘニルアルコール:0.5,(6)スクワラン:8.0,(7)ブナの芽抽出物1:2.0,(8)ブドウ抽出物2:2.0,(9)コンフリー抽出物3:2.0,(10)グリチルリチン酸ジカリウム4:0.02,(11)S-GOVC-DDS/ S-VCIP-DDS/ PH-GOVC-CHITO/ DOPEMP(FMA/SPMA)COPO:1.0,(12)カルボキシビニルポリマー:0.1,(13)水酸化ナトリウム:0.05,(14)エチルアルコール:5.0,(15)精製水:残量,(16)防腐剤 適量,(17)香料 適量(クエン酸1%とNaOHでpHは7±1に調整した。上記乳液の総遷移金属含量は100ppm以下であった)。
【0249】
(軟膏処方)
(1)ステアリン酸 18.0,(2)セタノール 4.0,(3)トリエタノールアミン 2.0,(4)F5:1.0,(5)イラクサ抽出物1:0.05,(6)サンザシ抽出物2:0.05,(7)ボダイジュ抽出物3:0.05,(8)N,N′-ジアセチルシスチンジメチル4:0.01,(9)トラネキサム酸5:0.2,(10)精製水:残量(クエン酸1%とNaOHでpHは7±1に調整した。上記軟膏の総遷移金属含有量は100ppm以下であった。)1 丸善製薬社製 2 丸善製薬社製 3 丸善製薬社製 4 シグマ社製 5 シグマ社製
【0250】
(ゲル処方)
(1)カルボキシビニルポリマー1:1.0,(2)トリエタノールアミン:1.0,(3)1,3-ブチレングリコール:10.0,(4)F6:0.5,(5)アロエ抽出物2:0.5,(6)アラントイン3:1.0,(7)S-GOVC-DDS/ S-VCIP-DDS/ PH-GOVC-CHITO/ DOPEMP(FMA/SPMA)COPO:2.0,(8)2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-硫酸ナトリウム5:3.0,(9)精製水:残量(クエン酸1%とNaOHでpHは7±1に調整した。上記ゲル軟膏の総遷移金属含有量は100ppm以下であった。)
【0251】
(クリーム処方)
(1)ポリオキシエチレン(40E.O.)モノステアレート:2.0,(2)グリセリンモノステアレート(自己乳化型)1:5.0,(3)ステアリン酸:5.0,(4)ベヘニルアルコール:0.5,(5)スクワラン:15.0,(6)イソオクタン酸セチル:5.0,(7)1,3-ブチレングリコール:5.0,(8)F7:1.0,(9)シラカバ抽出物2:0.1,(10)ユキノシタ抽出物3:0.2,(11)S-GOVC-DDS/ S-VCIP-DDS/ PH-GOVC-CHITO/ DOPEMP(FMA/SPMA)COPO:1.0,(12)パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル5:5.0,(13)リボフラビン6:0.05,(14)システイン7:0.1,(15)精製水:残量,(16)防腐剤 適量,(17)香料 適量(クエン酸1%とNaOHでpHは7±1に調整した。上記クリームの総遷移金属含有量は100ppm以下であった。)
【0252】
(湿潤粉体処方)
(1)ラノリン:7.0,(2)流動パラフィン:5.0,(3)ステアリン酸:2.0,(4)セタノール:1.0,(5)ヒマワリ油1:1.0,(6)グリセリン:5.0,(7)トリエタノールアミン:1.0,(8)カルボキシメチルセルロース:0.7,(9)精製水:残量,(10)マイカ:15.0,(11)タルク:6.0,(12)酸化チタン:3.0,(13)着色顔料:6.0,(14)F5:0.5,(15)トルメンチラ抽出物3:0.5,(16)S-GOVC-DDS/ S-VCIP-DDS/ PH-GOVC-CHITO/ DOPEMP(FMA/SPMA)COPO:0.2,(17)グリチルレチン酸ステアリル5:0.1,(18)防腐剤 0.5,(19)香料 適量(クエン酸1%とNaOHでpHは7±1に調整した。総遷移金属含量は100ppm以下であった。)
【0253】
(日焼け止め処方)
(1)ステアリン酸:2.0,(2)セタノール:1.0,(3)モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.):0.5,(4)セスキオレイン酸ソルビタン:0.5,(5)2-エチルヘキサン酸セチル:12.0,(6)シア脂1:2.0,(7)ゴマ油2:1.0,(8)オウゴン抽出物3:0.1,(9)F3:0.5,(10)エルゴカルシフェロール5:0.1,(11)S-GOVC-DDS/ S-VCIP-DDS/ PH-GOVC-CHITO/ DOPEMP(FMA/SPMA)COPO:3.0,(12)パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル7:8.0,(13)2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン8:2.0,(14)1,3-ブチレングリコール:10.0,(15)カルボキシビニルポリマー:0.2,(16)精製水:残量,(17)防腐剤 適量,(18)酸化チタン:3.0,(19)トリエタノールアミン:0.5.(20)香料 適量(クエン酸1%とNaOHでpHは7±1に調整した。上記日焼け止め用乳液の総遷移金属含有量は100ppm以下であった。)
【0254】
(パック処方)
(1)ポリビニルアルコール:20.0,(2)エチルアルコール:20.0,(3)グリセリン:5.0,(4)カオリン:6.0,(5)S-GOVC-DDS/ S-VCIP-DDS/ PH-GOVC-CHITO/ DOPEMP(FMA/SPMA)COPO:0.5,(6)F2:0.5,(7)ユリ抽出物3:0.05,(8)レゾルシン4:0.02,(9)リボフラビン5:0.1,(10)トラネキサム酸6:0.5,(11)防腐剤:0.2,(12)香料:0.1,(13)精製水:残量(クエン酸1%とNaOHでpHは7±1に調整した。上記パックの総遷移金属含量は100ppm以下であった。)
【0255】
(洗浄剤処方)
(1)ステアリン酸:10.0,(2)パルミチン酸:8.0,(3)ミリスチン酸:12.0,(4)ラウリン酸:4.0,(5)オレイルアルコール:1.5,(6)精製ラノリン:1.0,(7)アスタキサンチン1:0.005,(8)香料:0.1,(9)防腐剤:0.2,(10)グリセリン:18.0,(11)水酸化カリウム:6.0,(12)S-GOVC-DDS/ S-VCIP-DDS/ PH-GOVC-CHITO/ DOPEMP(FMA/SPMA)COPO:0.5,(13)サボンソウ抽出物3:0.5,(14)グリチルリチン酸ジカリウム4:0.2,(15)パルミチン酸L-L-アスコルビン酸5:0.05,(16)精製水:残量(クエン酸1%とNaOHでpHは7±1に調整した。上記洗浄料の総遷移金属含量は100ppm以下であった。)
【0256】
(経口用組成物)
鶏油50質量%と豚油50質量%からなる融点28±3℃の動物性油脂92.7質量%,酵素0.9質量%,S-GOVC-DDS/ S-VCIP-DDS/ PH-GOVC-CHITO/ DOPEMP(FMA/SPMA)COPOを1%添加したビタミンプレミックス1.0質量%,紛状生菌剤0.9%,香料4.5質量%,を明治機械社製200L攪拌混合機で2時間撹拌分散し粒度分布における平均粒径の大きさが0.51mmの粉粒からなる本発明のビタミンC源が強化された本発明の経口組成物を得た。本発明の経口用組成物は,飼料,飼料添加物,動物用薬品,食品,食品添加物,機能性食品,機能性食品,経口用動物薬の実施例である。
【0257】
(錠剤)
常法に従って下記成分を下記組成比で均一に混合・打錠し,1粒400mgの錠剤とした。還元麦芽水飴:17%,寒天:12%,二酸化ケイ素:1%,ショ糖脂肪酸エステル :3%,S-GOVC-DDS/ S-VCIP-DDS/ PH-GOVC-CHITO/ DOPEMP(FMA/SPMA)COPOの凍結乾燥粉末:1%,粉末セルロース :残分
【0258】
(カプセル剤)
常法によりソフトカプセル剤皮100mg(ゼラチン70%,グリセリン25%)にS-GOVC-DDS/ S-VCIP-DDS/ PH-GOVC-CHITO/ DOPEMP(FMA/SPMA)COPOの凍結乾燥粉末:5%,中鎖脂肪酸トリグリセリド:95%の成分からなる300mgを混練してから充填し,1粒440mgのソフトカプセルを得た。
【0259】
(ドリンク剤)
下記成分を配合し,常法に従って,水を加えて10Lとし,ドリンク剤を調製した。S-GOVC-DDS/ S-VCIP-DDS/ PH-GOVC-CHITO/ DOPEMP(FMA/SPMA)COPO:80g,ローヤルゼリー :1g,液糖:1000g,
DL-酒石酸ナトリウム:1g,クエン酸:10g,シクロデキストリン:25g,塩化カリウム:2g,硫酸マグネシウム :1g。
【0260】
(安定性試験)
本発明の上記処方全てについて40℃,6ヶ月間の安定性試験を行った。安定性試験の評価は製剤の色の変化と沈殿の発生,及び臭気の発生を以下のスコアで評価してその平均点を求めて比較した。評価は20歳から50歳までの男女それぞれ10人が個別に評価してその平均点を求めた。(スコア)色の変化:全く変化しない0点,変化が認められる2点,激しい変化が認められる3点。沈殿の発生:全く発生しない0点,沈殿が認められる2点,激しい沈殿が認められる3点。臭気の変化:全く変化しない0点,変化が認められる2点,激しい変化が認められる3点。その結果本発明の上記処方においては,色の変化と沈殿の発生,及び臭気の変化の全てにおいて経時変化は認められず0点であり,この結果から本発明の処方の優れた安定性が証明された。
【0261】
(本発明の細胞送達用キャリアの調整)
前記表4記載のラメラ形成脂質をそれぞれ0.005g添加して最後にレシチンで2gになるよう調整して添加し,表6の多価アルコール,合成酸化防止剤,紫外線吸収剤,防腐剤と表8の本発明の有効成分をそれぞれ0.005g添加して最後にグリセリンで50gになるように添加し,さらにベヘニルアルコール8g,ステアリルアルコール7g,PEG-20フィトステロール4g,セタノール3g,フィトステロールズ1g,ステアリン酸グリセリル1g,トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル2g,GOVC(2-グリセリル-3-オクチルアスコルビル)1g,コレステロール0.3g,及びDOPEMP(NIPAA/DMAPAA) Copを0.2gと前記表3記載の脂質をそれぞれ0.005g添加して最後にスクワランで30gになるよう調整して添加し,自転公転撹拌機で練り上げた。これに精製水を加えて100gとしてボルテックスで分散させた。その後,超音波槽で30分ソニケーションを行い,乳化粒子のサイズを小さくしてから,100nmのフィルターを通して,リポソームのサイズを整えた。粒子径平均値は79nmであり,電子顕微鏡観察によりラメラ構造が観察された。その後,ゲル濾過によりリポソームを分離させて精製し,本発明の細胞送達用キャリアを作製した。本発明の温度刺激応答性を持つ細胞送達用キャリアを作製した。次にこの細胞送達用キャリアを使って液剤を作成した。その処方を次に示す。即ち,(1) 上記の細胞送達用キャリア:0.5,(2)グリセリン 6.5,(3)1,3ブチレングリコール 1.0,(4)フェノキシエタノール 0.5,(5)香料コンプレックス 0.1,(6)エッセンシャルオイルコンプレックス 0.1,(6)精製水:残量(7)クエン酸1.0 (8)NaOHでpHを7に調整した。
【0262】
上記の複数の処方例は,用途として,医薬品,医薬部外品,化粧品,サプリメント,動物医薬品,雑貨に使用でき,さらに,剤形として,外用剤,口腔用剤,座薬,経口剤,ドリンク剤,パップ剤,パック剤,スプレー剤,注射剤,ドレッシング剤,液剤,軟膏剤,エアゾ ール剤,粉末状,打型剤,クリーム剤,外用散布剤,散剤,顆粒剤,錠剤,軟カプセル剤,丸剤,板状の剤型,トローチ剤,ペースト剤,固型剤,潤製剤,チック様製剤として使用する事ができた。さらに,これらの製剤には,化粧品,医薬部外品の効果として,前記表9の効果を確認できた。
【0263】
(異なる温度応答性細胞送達用キャリア)
下限臨界溶解温度が,37~42℃であるDOPEMP(NIPAA/DMAPAA) Cop.の体温変化型温度応答性細胞送達用キャリア(以下単に体温変化型という)と下限臨界溶解温度が,45~60℃であるDOPEMP(NIPAA/DMAPAA)Cop.の高温変化型温度応答性細胞送達用キャリア(以下単に高温変化型という)を使用して両親媒性抗酸化ビタミン配合温度応答性ラメラ細胞送達用キャリアの2つのキャリアの効果を比較した。
【0264】
キャリアの作成方法は、同じであり、即ち、卵黄由来ホスファチジルコリン1gとジオレオイルフォスファチジルエタノールアミン0.8gとDOPEMP(NIPAA/DMAPAA) Cop.3gとコレステロール0.05g,PEG-25フィトスタノール(INCI名 PEG-25 Phytostanol)0.1gとGOVC(2-グリセリル-3-カプリル酸アスコルビン酸,グリセリン:カプリル酸:アスコルビン酸からなる基質を0.223:0.35:0.427の重量比で結合した両親媒性ビタミン誘導体)0.1gを200mLクロロホルムに溶解後,エバポレーターで溶媒を除去しラメラ構造フィルムを形成させた。これに0.2mg/mLの濃度でPBSに溶かされたペプチド結合蛍光物質溶液(オボアルブミン:フルオレセインイソチオシアネート=1:1(等モル)の混合水溶液)1mLと核酸としてルシフェラーゼ活性を抑制するタンパクを細胞内で生合成するmir-125a siRNA duplexを200nMの濃度でPBSでの希釈した溶液(以下単にsiRNA溶液と記す)1mL混合した。次にミキサーでフィルムを破砕処理し,その後超音波処理し,さらに孔径400nmフィルターを用いてナノオーダーのカプセルにサイジングした。PD-10columnを用いてゲルろ過し細胞送達用キャリアを精製した。(皮膚組織透過性の比較)表皮皮膚モデルとしてLabCyte EPI-MODELを使用し,FranzCellに人工皮膚をはさみ,37℃でインキュベートし作製した蛍光物質を含む上記で作成した本発明の体温変化型と高温変化型のそれぞれのキャリアを1%重量含む組成物液1mLをドナーチャンバーへ投与し,遮光して体温モデルの37℃と蒸しタオルモデルの45℃でそれぞれ0.5時間インキュベートし,可視光(530nm)を30分間照射し,引き続き42時間インキュベートした。その後,サンプリングポートのサンプリング試料及びペプチド結合蛍光物質抱接乳化組150μLに10%TritonX 10μLを加え基準の試料溶液とした。試料溶液100 μLを蛍光光度計infiniteM1000を用いて蛍光強度を測定し,以下の式から皮膚透過率を算出した。その結果,37℃インキュベーションにおける体温変化型は8%,高温変化型は4%であり、37℃の体温モデル温度では、体温変化型が高温変化型の2倍高い蛍光強度を示した。一方45℃インキュベーションにおける体温変化型は3%,高温変化型は9%であり、45℃の蒸しタオルモデル温度では、高温変化型が体温変化型の3倍高い蛍光強度を示した。この結果は、蒸しタオルや赤外線、高周波、低周波などの光線療法デバイスなどを用いた高温環境では、45℃以上の高温変化型キャリが人体変化型キャリアよりも高い薬剤輸送能力を発揮することが確認された。
【0265】
(異なるビタミン誘導体の安定性試験)
本発明の細胞送達用キャリア の異なるビタミン誘導体における安定性試験を行った。キャリアの作成方法は、卵黄由来ホスファチジルコリン1gとジオレオイルフォスファチジルエタノールアミン0.8gとDOPEMP(NIPAA/DMAPAA)Cop.3gとコレステロール0.05g,PEG-25フィトスタノール(INCI名 PEG-25 Phytostanol)0.1gと異なるビタミンン誘導体0.1gを200 mLクロロホルムに溶解後,エバポレーターで溶媒を除去しラメラ構造フィルムを形成させた。これに0.2mg/mL の濃度でPBSに溶かされたペプチド結合蛍光物質溶液(オボアルブミン:フルオレセインイソチオシアネート=1:1(等モル)の混合水溶液)1mLをPBSで希釈した溶液1mLに混合した(以下単に蛍光溶液という)。次にミキサーでフィルムを破砕処理し,その後超音波処理し,さらに孔径100nmフィルターを用いてナノオーダーのカプセルにサイジングし、通常の光学顕微鏡と偏光顕微鏡でカプセルの状態を観察し、キャリアが顕微鏡下で蛍光色素を内包していること、および偏光顕微鏡下においてマルターゼクロス偏光が存在することを確認した。これを40℃、湿度80%の環境で6か月間保存した後、通常の光学顕微鏡と偏光顕微鏡でキャリアの状態を観察し、このとき、キャリアが破壊されず試験開始時と同様にキャリアが顕微鏡下で蛍光色素を内包し、且つ、偏光顕微鏡下においてマルターゼクロス偏光が存在することを確認できたビタミン誘導体のみ本発明に有効に使用できるビタミン誘導体として○グループとし、どちらか一方が確認できなかったものをXグループとして以下の表にまとめた。
(○グループのビタミン誘導体)
【表15】
(Xグループのビタミン誘導体)
アスコルビン酸-2-硫酸Na,アスコルビン酸-2-硫酸K,アスコルビン酸-2-リン酸Na,アスコルビン酸-2-リン酸Mg,アスコルビン酸-2-リン酸-6-パルミチン酸Na,ステアリン酸アスコルビル、イソステアリルアスコルビルリン酸2Na、イソステアリン酸アスコルビル、パルミチン酸アスコルビル、ジパルミチン酸アスコルビル、イソパルミチン酸アスコルビルリン酸3Na、トコフェリルジメチルグリシン、トコフェリルジメチルグリシンHCl
【0266】
(脂質の安定性試験)
本発明の細胞送達用キャリアの異なる脂質における安定性試験を行った。キャリアの作成方法は、卵黄由来ホスファチジルコリン1gとジオレオイルフォスファチジルエタノールアミン0.8gとDOPEMP(NIPAA/DMAPAA)Cop.3gとコレステロール0.05g,PEG-25フィトスタノール(INCI名 PEG-25 Phytostanol)0.1gと脂質0.5gとGOVC(ビタミン誘導体である2-グリセリル-3-カプリル酸アスコルビン酸)0.1gを200mLクロロホルムに溶解後,エバポレーターで溶媒を除去しラメラ構造フィルムを形成させた。これに0.2mg/mL の濃度でPBSに溶かされたペプチド結合蛍光物質溶液(オボアルブミン:フルオレセインイソチオシアネート=1:1(等モル)の混合水溶液)1mLをPBSで希釈した溶液1mLに混合した(以下単に蛍光溶液という)。次にミキサーでフィルムを破砕処理し,その後超音波処理し,さらに孔径100nmフィルターを用いてナノオーダーのカプセルにサイジングし、通常の光学顕微鏡と偏光顕微鏡でカプセルの状態を観察し、キャリアが顕微鏡下で蛍光色素を内包していること、および偏光顕微鏡下においてマルターゼクロス偏光が存在することを確認した。これを40℃、湿度80%の環境で6か月間保存した後、通常の光学顕微鏡と偏光顕微鏡でキャリアの状態を観察し、このとき、キャリアが破壊されず試験開始時と同様にキャリアが顕微鏡下で蛍光色素を内包し、且つび偏光顕微鏡下においてマルターゼクロス偏光が存在することを確認できたもので、且つ、ビタミン誘導体の減衰率を10%以下に抑制しビタミン誘導体を安定に保つことができた脂質を本発明に特に有用に使用できる脂質として以下に記載し、どちらか一方でも確認できなかったものを安定性に問題有として除外した。
(本発明に特に有用に使用できる脂質)
【表16】
【0267】
(界面活性作用を有する脂質の安定性試験)
本発明の細胞送達用キャリアの異なる界面活性作用を持つ脂質における安定性試験を行った。キャリアの作成方法は、卵黄由来ホスファチジルコリン1gとジオレオイルフォスファチジルエタノールアミン0.8gとDOPEMP(NIPAA/DMAPAA)Cop.3gとコレステロール0.05g,界面活性作用を持つ脂質0.5gとGOVC(ビタミン誘導体である2-グリセリル-3-カプリル酸アスコルビン酸)0.1gを200mLクロロホルムに溶解後,エバポレーターで溶媒を除去しラメラ構造フィルムを形成させた。これに0.2mg/mLの濃度でPBSに溶かされたペプチド結合蛍光物質溶液(オボアルブミン:フルオレセインイソチオシアネート=1:1(等モル)の混合水溶液)1mLをPBSで希釈した溶液1mLに混合した(以下単に蛍光溶液という)。次にミキサーでフィルムを破砕処理し,その後超音波処理し,さらに孔径100nmフィルターを用いてナノオーダーのカプセルにサイジングし、通常の光学顕微鏡と偏光顕微鏡でカプセルの状態を観察し、キャリアが顕微鏡下で蛍光色素を内包していること、および偏光顕微鏡下においてマルターゼクロス偏光が存在することを確認した。これを40℃、湿度80%の環境で6か月間保存した後、通常の光学顕微鏡と偏光顕微鏡でキャリアの状態を観察し、このとき、キャリアが破壊されず試験開始時と同様にキャリアが顕微鏡下で蛍光色素を内包し、且つび偏光顕微鏡下においてマルターゼクロス偏光が存在することを確認できたもので、且つ、ビタミン誘導体の減衰率を10%以下に抑制しビタミン誘導体を安定に保つことができたものを本発明に特に有用に使用できる界面活性を有する脂質として以下に記載し、どちらか一方でも確認できなかったものを安定性に問題有として除外した。
(本発明に特に有用に使用できる界面活性を有する脂質)
【表17】
【0268】
(刺激応答性物質の安定性試験)
本発明の細胞送達用キャリアの異なる刺激応答性物質における安定性試験を行った。キャリアの作成方法は、卵黄由来ホスファチジルコリン1gとジオレオイルフォスファチジルエタノールアミン0.8gと異なる刺激応答性物質3gとコレステロール0.05gとGOVC(ビタミン誘導体である2-グリセリル-3-カプリル酸アスコルビン酸)0.1gを200mLクロロホルムに溶解後,エバポレーターで溶媒を除去しラメラ構造フィルムを形成させた。これに0.2mg/mLの濃度でPBSに溶かされたペプチド結合蛍光物質溶液(オボアルブミン:フルオレセインイソチオシアネート=1:1(等モル)の混合水溶液)1mLをPBSで希釈した溶液1mLに混合した(以下単に蛍光溶液という)。次にミキサーでフィルムを破砕処理し,その後超音波処理し,さらに孔径100nmフィルターを用いてナノオーダーのカプセルにサイジングし、通常の光学顕微鏡と偏光顕微鏡でカプセルの状態を観察し、キャリアが顕微鏡下で蛍光色素を内包していること、および偏光顕微鏡下においてマルターゼクロス偏光が存在することを確認した。これを40℃、湿度80%の環境で6か月間保存した後、通常の光学顕微鏡と偏光顕微鏡でキャリアの状態を観察し、このとき、キャリアが破壊されず試験開始時と同様にキャリアが顕微鏡下で蛍光色素を内包し、且つび偏光顕微鏡下においてマルターゼクロス偏光が存在することを確認できたもので、且つ、ビタミン誘導体の減衰率を20%以下に抑制しビタミン誘導体を安定に保つことができたものを本発明に特に有用に使用できる刺激応答性物質として以下に記載し、どちらか一方でも確認できなかったものを安定性に問題有として除外した。
(本発明に特に有用に使用できる刺激応答性物質)
【表18】
【0269】
(乳化安定剤の安定性試験)
本発明の細胞送達用キャリアの多価アルコール,合成酸化防止剤,紫外線吸収剤,防腐剤から選択される乳化安定剤における安定性試験を行った。キャリアの作成方法は、卵黄由来ホスファチジルコリン1gとジオレオイルフォスファチジルエタノールアミン0.8gとDOPEMP(NIPAA/DMAPAA)Cop.3gとコレステロール0.05gとGOVC(ビタミン誘導体である2-グリセリル-3-カプリル酸アスコルビン酸)0.1gを200mLクロロホルムに溶解後,エバポレーターで溶媒を除去しラメラ構造フィルムを形成させた。これに多価アルコール,合成酸化防止剤,紫外線吸収剤,防腐剤から選択される乳化安定剤0.5gと0.2mg/mLの濃度でPBSに溶かされたペプチド結合蛍光物質溶液(オボアルブミン:フルオレセインイソチオシアネート=1:1(等モル)の混合水溶液)1mLをPBSで希釈した溶液1mLに混合した(以下単に蛍光溶液という)。次にミキサーでフィルムを破砕処理し,その後超音波処理し,さらに孔径100nmフィルターを用いてナノオーダーのカプセルにサイジングし、通常の光学顕微鏡と偏光顕微鏡でカプセルの状態を観察し、キャリアが顕微鏡下で蛍光色素を内包していること、および偏光顕微鏡下においてマルターゼクロス偏光が存在することを確認した。これを40℃、湿度80%の環境で6か月間保存した後、通常の光学顕微鏡と偏光顕微鏡でキャリアの状態を観察し、このとき、キャリアが破壊されず試験開始時と同様にキャリアが顕微鏡下で蛍光色素を内包し、且つび偏光顕微鏡下においてマルターゼクロス偏光が存在することを確認できたもので、且つ、ビタミン誘導体の減衰率を10%以下に抑制しビタミン誘導体を安定に保つことができたものを本発明に特に有用に使用できる乳化安定剤として以下に記載し、どちらか一方でも確認できなかったものを安定性に問題有として除外した。
(本発明に特に有用に使用できる乳化安定剤)
【表19】
【0270】
(刺激応答性ポリマー内の異なる修飾鎖物質の安定性試験)
本発明の細胞送達用キャリアの刺激応答性ポリマー内の異なる修飾鎖物質における安定性試験を行った。キャリアの作成方法は、卵黄由来ホスファチジルコリン1gとジオレオイルフォスファチジルエタノールアミン0.8gとDOPEMP(NIPAA/DMAPAA/修飾鎖物質)Cop.3gとコレステロール0.05gとGOVC(ビタミン誘導体である2-グリセリル-3-カプリル酸アスコルビン酸)0.1gを200 mLクロロホルムに溶解後,エバポレーターで溶媒を除去しラメラ構造フィルムを形成させた。これに0.2mg/mLの濃度でPBSに溶かされたペプチド結合蛍光物質溶液(オボアルブミン:フルオレセインイソチオシアネート=1:1(等モル)の混合水溶液)1mLをPBSで希釈した溶液1mLに混合した(以下単に蛍光溶液という)。次にミキサーでフィルムを破砕処理し,その後超音波処理し,さらに孔径100nmフィルターを用いてナノオーダーのカプセルにサイジングし、通常の光学顕微鏡と偏光顕微鏡でカプセルの状態を観察し、キャリアが顕微鏡下で蛍光色素を内包していること、および偏光顕微鏡下においてマルターゼクロス偏光が存在することを確認した。これを40℃、湿度80%の環境で6か月間保存した後、通常の光学顕微鏡と偏光顕微鏡でキャリアの状態を観察し、このとき、キャリアが破壊されず試験開始時と同様にキャリアが顕微鏡下で蛍光色素を内包し、且つび偏光顕微鏡下においてマルターゼクロス偏光が存在することを確認できたもので、且つ、ビタミン誘導体の減衰率を10%以下に抑制しビタミン誘導体を安定に保つことができたものを本発明に特に有用に使用できる修飾鎖物質として以下に記載し、どちらか一方でも確認できなかったものを安定性に問題有として除外した。
(本発明に特に有用に使用できる修飾鎖物質)
【表20】
【0271】
(包接有効成分の安定性試験)
本発明の細胞送達用キャリアの異なる包接有効成分における安定性試験を行った。キャリアの作成方法は、卵黄由来ホスファチジルコリン1gとジオレオイルフォスファチジルエタノールアミン0.8gとDOPEMP(NIPAA/DMAPAA)Cop.3gとコレステロール0.05gとGOVC(ビタミン誘導体である2-グリセリル-3-カプリル酸アスコルビン酸)0.1gを200mLクロロホルムに溶解後,エバポレーターで溶媒を除去しラメラ構造フィルムを形成させた。これに異なる有効成分0.5gと0.2mg/mL の濃度でPBSに溶かされたペプチド結合蛍光物質溶液(オボアルブミン:フルオレセインイソチオシアネート=1:1(等モル)の混合水溶液)1mLをPBSで希釈した溶液1mLに混合した(以下単に蛍光溶液という)。次にミキサーでフィルムを破砕処理し,その後超音波処理し,さらに孔径100nmフィルターを用いてナノオーダーのカプセルにサイジングし、通常の光学顕微鏡と偏光顕微鏡でカプセルの状態を観察し、キャリアが顕微鏡下で蛍光色素を内包していること、および偏光顕微鏡下においてマルターゼクロス偏光が存在することを確認した。これを40℃、湿度80%の環境で6か月間保存した後、通常の光学顕微鏡と偏光顕微鏡でキャリアの状態を観察し、このとき、キャリアが破壊されず試験開始時と同様にキャリアが顕微鏡下で蛍光色素を内包し、且つび偏光顕微鏡下においてマルターゼクロス偏光が存在することを確認できたもので、且つ、ビタミン誘導体の減衰率を10%以下に抑制しビタミン誘導体を安定に保つことができたものを本発明に特に有用に使用できる包接有効成分として以下に記載し、どちらか一方でも確認できなかったものを安定性に問題有として除外した。
(本発明に特に有用に使用できる包接有効成分)
【表21】
【0272】
(包接有効成分の安定性試験)
上記で作成した異なる有効成分を含む本発明の細胞送達用キャリアについて、皮膚科医師及び形成外科医師に依頼して有効性試験を実施したところ、複数の有効性が確認されたのでその具体的効果を次に示した。
(本発明の細胞送達用キャリアについての有効性)
【表22】
【産業上の利用可能性】
【0273】
本発明の細胞送達用キャリアの用途は,動物細胞,植物細胞,酵母,細菌,真菌,粘菌,マイコプラズマ,アメーバ等の全ての生物細胞に適用可能であり,医薬品,医薬部外品,化粧品,サプリメント,動物医薬品,肥料,農薬,培養液,雑貨等から選択され,細胞送達効率を高めることが有用な全ての製品に使用することができる。具体的な製剤としては,外用剤,口腔用剤,座薬,経口剤,ドリンク剤,パップ剤,パック剤,スプレー剤,注射剤,ドレッシング剤,液剤,軟膏剤,エアゾ ール剤,粉末状,打型剤,クリーム剤,外用散布剤,散剤,顆粒剤,錠剤,軟カプセル剤,丸剤,板状の剤型,トローチ剤,ペースト剤に応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0274】
【
図1】
本発明の細胞送達用キャリアの効果を示す図である。A)の右上のアは,刺
激応答性ポリマー含有分子である。中に有効成分(イの黒い▲)が抱接されている。アで長い尾のようなものが,刺激応答性ポリマーであり,それに結合した界面活性を有する脂質により細胞送達用キャリアの膜内に融合(接続)している。ウは,ビタミン誘導体などのオートファジー関連遺伝子とカテプシン合成遺伝子の同時活性化物質であり,両親媒性のために,こちらも膜内に融合(接続)している。A)において,細胞膜表面のビタミンレセプターに結合する。B) ビタミン誘導体は,細胞表面でビタミンレセプターに認識され結合するが,分子形状が本来のビタミンと異なる為に,ビタミン輸送チャンネルで輸送されないため,細部膜表面に残りエンドサイトーシスされる。オは,細胞膜である。C)エンドソーム内に閉じ込まれた細胞送達用キャリアは,取り込み時間を見計らった外部刺激エにより,細胞表面の刺激応答性ポリマーの収縮により疎水性になる事から,膜の平行が崩れ容易に細胞送達用キャリアの膜が破壊され内容物がエンドソーム内に放出されるようになる。カは,消化酵素をもつリソソームである。D)リソソームはエンドソームと融合し,消化酵素をエンドソームに移動させ,E)においてエンドソーム内の分子を消化する。F)消化後エンドソームが破壊され,中の抱接成分(黒い▲)や一部未消化のビタミン誘導体(キ)が細胞内に放出される。未消化のビタミン誘導体は,オートファジー系を活性化させ,オートファゴソームで消化される。
【0275】
【
図2】
本発明の細胞送達用キャリアの代表的な構造例1である。刺激応答性ポリマ
ー含有分子(ア)と,オートファジー関連遺伝子とカテプシン合成遺伝子の同時活性化物質(イ),のどちらか1つ以上の物質が,脂質(ウ)で主に構成された膜分子の一部を構成する。
【0276】
【
図3】
本発明の細胞送達用キャリアの代表例的な構造例2である。刺激応答性ポリ
マー含有分子(ア)が,脂質(イ)に,イオン結合している,本発明の細胞送達用キャリアである。(ウ)は,オートファジー関連遺伝子とカテプシン合成遺伝子の同時活性化物質。