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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂溶液
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/42 20060101AFI20240604BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20240604BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20240604BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20240604BHJP
   B32B 27/26 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
C08G59/42
C08J5/24 CFC
B32B5/28 A
B32B27/38
B32B27/26
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020007226
(22)【出願日】2020-01-21
(65)【公開番号】P2020204014
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-09-02
(31)【優先権主張番号】P 2019016291
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019108755
(32)【優先日】2019-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(72)【発明者】
【氏名】谷中 あゆみ
(72)【発明者】
【氏名】福林 夢人
(72)【発明者】
【氏名】村上 隆俊
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-003571(JP,A)
【文献】特開2020-007397(JP,A)
【文献】国際公開第2019/188436(WO,A1)
【文献】特開昭62-029584(JP,A)
【文献】国際公開第2018/139559(WO,A1)
【文献】特開2013-237844(JP,A)
【文献】特開2012-111930(JP,A)
【文献】特開2012-006992(JP,A)
【文献】特開2012-025894(JP,A)
【文献】特開2006-307091(JP,A)
【文献】特開2011-208126(JP,A)
【文献】特開平11-130859(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
C08J
B32B
CAplus/REGISTRY (STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも硬化剤およびエポキシ樹脂を有機溶媒に混合してなり、
前記硬化剤がイミド基含有硬化剤を含み、
前記イミド基含有硬化剤が下記一般式(1)の構造を有するジイミドジカルボン酸系化合物である、エポキシ樹脂溶液であって、
前記エポキシ樹脂溶液中において前記エポキシ樹脂が有するグリシジル基の反応率が10%以下である、エポキシ樹脂溶液。
【化1】
[一般式(1)中、XおよびXは、それぞれ独立して、芳香族無水トリカルボン酸成分、脂環族無水トリカルボン酸成分、または脂肪族無水トリカルボン酸成分に由来する構造を表す;Rは1~2個の芳香族環を含有する芳香族ジアミン成分または脂環族ジアミン成分に由来する構造のみを表す;
前記芳香族無水トリカルボン酸成分は、無水トリメリット酸、および1,2,4-ナフタレントリカルボン酸無水物から選択される;
前記脂環族無水トリカルボン酸成分は、1,2,3-シクロヘキサントリカルボン酸無水物、および1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸無水物から選択される;
前記脂肪族無水トリカルボン酸成分は、3-カルボキシメチルグルタル酸無水物、1,2,4-ブタントリカルボン酸-1,2-無水物、およびcis-プロペン-1,2,3-トリカルボン酸-1,2-無水物から選択される;
前記芳香族ジアミン成分は、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノベンズアニリド、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス(4-アミノフェニル)スルホン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、メタキシレンジアミン、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、およびビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホンから選択される;
前記脂環族ジアミン成分は、trans-1,4-シクロヘキサンジアミン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、および1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから選択される;
前記芳香族無水トリカルボン酸成分、前記脂環族無水トリカルボン酸成分、前記脂肪族無水トリカルボン酸成分、前記芳香族ジアミン成分、および前記脂環族ジアミン成分の、水素原子の1つ以上はハロゲン原子に置換されていてもよい]
【請求項2】
前記エポキシ樹脂が1分子中、2個以上のエポキシ基を有する、請求項1に記載のエポキシ樹脂溶液。
【請求項3】
前記有機溶媒が非ハロゲン化溶媒である、請求項1または2に記載のエポキシ樹脂溶液。
【請求項4】
前記イミド基含有硬化剤の配合量は、イミド基含有硬化剤の官能基当量がエポキシ樹脂のエポキシ当量に対して0.5~1.5当量比となるような量である、請求項1~3のいずれかに記載のエポキシ樹脂溶液。
【請求項5】
前記イミド基含有硬化剤および前記エポキシ樹脂の合計配合量は、前記エポキシ樹脂溶液全量に対して、30~90質量%である、請求項1~4のいずれかに記載のエポキシ樹脂溶液。
【請求項6】
前記エポキシ樹脂溶液は、30℃での粘度が10~70Pa・sである、請求項1~5のいずれかに記載のエポキシ樹脂溶液。
【請求項7】
前記硬化剤が前記イミド基含有硬化剤のみを含む、請求項1~6のいずれかに記載のエポキシ樹脂溶液。
【請求項8】
前記イミド基含有硬化剤および前記エポキシ樹脂が前記有機溶媒に溶解されている、請求項1~7のいずれかに記載のエポキシ樹脂溶液。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載のエポキシ樹脂溶液に含まれる前記イミド基含有硬化剤および前記エポキシ樹脂の硬化物である、エポキシ樹脂硬化物であって、
前記エポキシ樹脂硬化物が電気および電子部品に含まれている、エポキシ樹脂硬化物(ただし、ポリカルボン酸樹脂(A)、架橋剤(B)、エポキシ樹脂成分(C)を必須成分としてなる組成物である光硬化型樹脂組成物の硬化物であって、
前記ポリカルボン酸樹脂(A)が、分子中に2個のカルボキシ基を有するイミド化合物(a)と分子中に2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(b)との反応生成物と二塩基酸無水物(c)との付加生成物であり、
前記分子中に2個のカルボキシ基を有するイミド化合物(a)が、トリメリット酸無水物と分子中に2個の1級アミノ基を有する化合物(d)から得られたものであり、
前記分子中に2個の1級アミノ基を有する化合物(d)が、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、ビス(4-アミノフェニル)スルホンから選択される化合物であり、
前記二塩基酸無水物(c)が、無水コハク酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸または、下記式(2)の中から選択してなる1種または2種以上の二塩基酸無水物である、硬化物を除く)
【化2】
【請求項10】
請求項1~8のいずれかに記載のエポキシ樹脂溶液が強化繊維クロスに含浸または塗布されている、プリプレグ。
【請求項11】
請求項10に記載のプリプレグが積層されている、積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエポキシ樹脂溶液、特にイミド基含有硬化剤を含むエポキシ樹脂溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂及びその硬化剤から成るエポキシ樹脂硬化物は、熱的、力学的および電気的特性に優れており、プリント配線板用絶縁材料や半導体封止材等の電気・電子材料を中心に工業的に広く利用されている。
【0003】
特に近年、車載用パワーモジュールに代表されるパワー半導体の分野では、更なる大電流化、小型化、高効率化が求められており、炭化ケイ素(SiC)半導体への移行が進みつつある。SiC半導体は、従来のシリコン(Si)半導体よりも高温条件下での動作が可能であることから、SiC半導体に使用される半導体封止材料にもこれまで以上に高い耐熱性が要求されている。
【0004】
一方で、プリント配線板用絶縁材料の技術分野では、電子機器における信号の高速化・高周波化に向け、信号の伝送損失の少ない低誘電率および低誘電正接を有する樹脂材料が求められている。
【0005】
このように、電気・電子材料分野におけるエポキシ樹脂硬化物には高耐熱化、低誘電率化および低誘電正接化が求められている。一般的にエポキシ樹脂硬化物における耐熱性の向上には、架橋密度を高めることが効果的である。一方で、低誘電率化および低誘電正接化には硬化時に架橋点で発生するヒドロキシ基の低減が求められる。しかしながら、耐熱性を上げるために架橋密度を上げると、ヒドロキシ基が多く発生するため誘電特性が悪くなることが一般的に知られており、耐熱性と誘電特性の両立は困難であった。
【0006】
耐熱性と誘電特性を両立する方法としては、活性エステルを利用する方法やシクロペンタジエン、ナフタレンやイミド基など、エポキシ硬化物中に剛直骨格を導入する方法が公知である。
【0007】
中でもエポキシ硬化物中にイミド基を導入する方法としては、イミド基を含有するポリアミドイミド、ポリイミド(溶媒可溶性)またはポリアミック酸(ポリイミドの前駆体)をエポキシ樹脂と混合して硬化させる方法があるが、硬化前の溶液が高粘性となるため、作業性に劣るという問題があった。
【0008】
そこで、イミド基含有ジカルボン酸とエポキシ化合物とを反応させて得られるイミドエポキシ樹脂と、硬化剤とを配合してなる耐熱粉体を粉体塗装し、硬化させる技術が開示されている(特許文献1)。また、芳香族環を3個以上有するジアミンと無水トリメリット酸とを反応させて得られる芳香族ジイミドジカルボン酸と、ジエポキシ化合物とを反応させて得られる芳香族ポリエステルイミドのワニスを塗布した後、乾燥および硬化させる技術が開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開昭60-77652号
【文献】特開平9-268223号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1の技術では、詳しくは、イミド基含有ジカルボン酸とエポキシ化合物との反応は無溶媒下で行われ、得られたイミドエポキシ樹脂と硬化剤とを配合させて粉体塗装を行う。このため、イミド基含有ジカルボン酸とエポキシ化合物との反応が不十分であり、剛直骨格の導入による耐熱性向上の効果が少なかった。
【0011】
特許文献2の技術では、詳しくは、芳香族ジイミドジカルボン酸とジエポキシ化合物との反応物としての芳香族ポリエステルイミド(ワニス)を塗布した後、乾燥および硬化させる。このため、硬化前のワニスが高粘性となり、作業性に劣るという問題があった。
【0012】
本発明は、耐熱性および誘電特性に十分に優れたエポキシ樹脂硬化物を十分に良好な作業性で得ることができるエポキシ樹脂溶液を提供することを目的とする。
【0013】
本明細書中、誘電特性とは、特に誘電率および誘電正接の両者を十分に低減され得る性能のことである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の要旨は以下の通りである。
<1> 少なくとも硬化剤およびエポキシ樹脂を有機溶媒に混合してなり、
前記硬化剤が、分子中に1~4個のイミド基および2~4個のグリシジル基反応性官能基を有するイミド基含有硬化剤を含む、エポキシ樹脂溶液。
<2> 前記グリシジル基反応性官能基がヒドロキシル基および/またはカルボキシル基である、<1>に記載のエポキシ樹脂溶液。
<3> 前記イミド基含有硬化剤が、ジイミドジカルボン酸系化合物、ジイミドトリカルボン酸系化合物、ジイミドテトラカルボン酸系化合物、モノイミドジカルボン酸系化合物、モノイミドトリカルボン酸系化合物、トリイミドトリカルボン酸系化合物、テトライミドテトラカルボン酸系化合物、アミド基含有ジイミドジカルボン酸系化合物、アミド基含有モノイミドジカルボン酸系化合物、アミド基含有モノイミドテトラカルボン酸系化合物、ジイミドジカルボキシモノヒドロキシ系化合物、ジイミドジカルボキシジヒドロキシ系化合物、およびトリイミドトリカルボキシモノヒドロキシ系化合物からなる群から選択される、<1>または<2>に記載のエポキシ樹脂溶液。
<4> 前記ジイミドジカルボン酸系化合物が、1分子のジアミン成分に対して2分子の無水トリカルボン酸成分が反応し、2つのイミド基が形成されてなる化合物であるか、または1分子のテトラカルボン酸二無水物成分に対して2分子のモノアミノモノカルボン酸成分が反応し、2つのイミド基が形成されてなる化合物であり、
前記ジイミドトリカルボン酸系化合物が、1分子のジアミノモノカルボン酸成分に対して2分子の無水トリカルボン酸成分が反応し、2つのイミド基が形成されてなる化合物であり、
前記ジイミドテトラカルボン酸系化合物が、1分子のテトラカルボン酸二無水物成分に対して2分子のモノアミノジカルボン酸成分が反応し、2つのイミド基が形成されてなる化合物であり、
前記モノイミドジカルボン酸系化合物が、1分子の無水トリカルボン酸成分に対して1分子のモノアミノモノカルボン酸成分が反応し、1つのイミド基が形成されてなる化合物であり、
前記モノイミドトリカルボン酸系化合物が、1分子の無水トリカルボン酸成分に対して1分子のモノアミノジカルボン酸成分が反応し、1つのイミド基が形成されてなる化合物であり、
前記トリイミドトリカルボン酸系化合物が、1分子のトリアミン成分に対して3分子の無水トリカルボン酸成分が反応し、3つのイミド基が形成されてなる化合物であり、
前記テトライミドテトラカルボン酸系化合物が、1分子のテトラアミン成分に対して4分子の無水トリカルボン酸成分が反応し、4つのイミド基が形成されてなる化合物であり、
前記アミド基含有ジイミドジカルボン酸系化合物が、1分子のアミド基含有ジアミン成分に対して2分子の無水トリカルボン酸成分が反応し、2つのイミド基が形成されてなる化合物であり、
前記アミド基含有モノイミドジカルボン酸系化合物が、1分子の無水トリカルボン酸ハロゲン化物に対して2分子のモノアミノモノカルボン酸成分が反応し、1つのイミド基と1つのアミド基が形成されてなる化合物であり、
前記アミド基含有モノイミドテトラカルボン酸系化合物が、1分子の無水トリカルボン酸ハロゲン化物に対して2分子のモノアミノジカルボン酸成分が反応し、1つのイミド基と1つのアミド基が形成されてなる化合物であり、
前記ジイミドジカルボキシモノヒドロキシ系化合物が、1分子のモノヒドロキシジアミン成分に対して2分子の無水トリカルボン酸成分が反応し、2つのイミド基が形成されてなる化合物であり、
前記ジイミドジカルボキシジヒドロキシ系化合物が、1分子のジヒドロキシジアミン成分に対して2分子の無水トリカルボン酸成分が反応し、2つのイミド基が形成されてなる化合物であり、
前記トリイミドトリカルボキシモノヒドロキシ系化合物が、1分子のモノヒドロキシトリアミン成分に対して3分子の無水トリカルボン酸成分が反応し、3つのイミド基が形成されてなる化合物である、<3>に記載のエポキシ樹脂溶液。
<5> 前記イミド基含有硬化剤が下記一般式(1)または(2)の構造を有するジイミドジカルボン酸系化合物である、<1>~<4>のいずれかに記載のエポキシ樹脂溶液。
【化1】
[一般式(1)中、XおよびXは、それぞれ独立して、芳香族無水トリカルボン酸成分、脂環族無水トリカルボン酸成分、または脂肪族無水トリカルボン酸成分に由来する構造を表す;Rは1~2個の芳香族環を含有する芳香族ジアミン成分、脂環族ジアミン成分、または脂肪族ジアミン成分に由来する構造を表す]
【化2】
[一般式(2)中、Yは芳香族テトラカルボン酸二無水物成分、脂環族テトラカルボン酸二無水物成分、または脂肪族テトラカルボン酸二無水物成分に由来する構造を表す;2個のRは、それぞれ独立して、芳香族モノアミノモノカルボン酸成分、脂環族モノアミノモノカルボン酸成分、または脂肪族モノアミノモノカルボン酸成分に由来する構造を表す]
<6> 前記エポキシ樹脂が1分子中、2個以上のエポキシ基を有する、<1>~<5>のいずれかに記載のエポキシ樹脂溶液。
<7> 前記有機溶媒が非ハロゲン化溶媒である、<1>~<6>のいずれかに記載のエポキシ樹脂溶液。
<8> 前記イミド基含有硬化剤の配合量は、イミド基含有硬化剤の官能基当量がエポキシ樹脂のエポキシ当量に対して0.5~1.5当量比となるような量である、<1>~<7>のいずれかに記載のエポキシ樹脂溶液。
<9> 前記イミド基含有硬化剤および前記エポキシ樹脂の合計配合量は、前記エポキシ樹脂溶液全量に対して、30~90質量%である、<1>~<8>のいずれかに記載のエポキシ樹脂溶液)
<10> 前記エポキシ樹脂溶液中において前記エポキシ樹脂が有するグリシジル基の反応率が10%以下である、<1>~<9>のいずれかに記載のエポキシ樹脂溶液。
<11> 前記硬化剤が前記イミド基含有硬化剤のみを含む、<1>~<10>のいずれかに記載のエポキシ樹脂溶液。
<12> 前記イミド基含有硬化剤および前記エポキシ樹脂が前記有機溶媒に溶解されている、<1>~<11>のいずれかに記載のエポキシ樹脂溶液。
<13> <1>~<11>のいずれかに記載のエポキシ樹脂溶液に含まれる前記イミド基含有硬化剤および前記エポキシ樹脂の硬化物である、エポキシ樹脂硬化物。
<14> 前記エポキシ樹脂硬化物が電気および電子部品に含まれている、<13>に記載のエポキシ樹脂硬化物。
<15> <1>~<11>のいずれかに記載のエポキシ樹脂溶液が強化繊維クロスに含浸または塗布されている、プリプレグ。
<16> <15>に記載のプリプレグが積層されている、積層体。
【発明の効果】
【0015】
本発明のエポキシ樹脂溶液によれば、耐熱性および誘電特性に十分に優れたエポキシ樹脂硬化物を十分に良好な作業性で得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<エポキシ樹脂溶液>
本発明のエポキシ樹脂溶液は、少なくともイミド基含有硬化剤およびエポキシ樹脂を有機溶媒に混合してなる。詳しくは、本発明のエポキシ樹脂溶液においては、イミド基含有硬化剤およびエポキシ樹脂は有機溶媒中に溶解されており、少なくともイミド基含有硬化剤、エポキシ樹脂および有機溶媒は分子レベルで均一に混合されている。溶解とは、溶質が溶媒中、分子レベルで均一に混合されることをいう。溶液とは、溶質が溶媒中、分子レベルで均一に混合されている状態のことであり、例えば、常温(25℃)および常圧(101.325kPa)下において、溶質が溶媒に、肉眼にて透明に見える程度に溶解されている混合液体のことである。
【0017】
[硬化剤]
本発明のエポキシ樹脂溶液に含まれる硬化剤はイミド基含有硬化剤を含む。
イミド基含有硬化剤は、分子中に1~4個のイミド基および2~4個のグリシジル基反応性官能基を有する。グリシジル基反応性官能基とは、グリシジル基との反応性を有する官能基のことであり、例えば、カルボキシル基、ヒドロキシル基が挙げられる。2~4個のグリシジル基反応性官能基は、それぞれ独立して選択されてよく、例えば、その全てのグリシジル基反応性官能基が同じ官能基であってもよいし、またはその一部のグリシジル基反応性官能性基と残部のグリシジル基反応性官能基とは相互に異なる官能基であってもよい。
【0018】
イミド基含有硬化剤としては、例えば、ジイミドジカルボン酸系化合物、ジイミドトリカルボン酸系化合物、ジイミドテトラカルボン酸系化合物、モノイミドジカルボン酸系化合物、モノイミドトリカルボン酸系化合物、トリイミドトリカルボン酸系化合物、テトライミドテトラカルボン酸系化合物、アミド基含有ジイミドジカルボン酸系化合物、アミド基含有モノイミドジカルボン酸系化合物、アミド基含有モノイミドテトラカルボン酸系化合物、ジイミドジヒドロキシ系化合物、ジイミドジカルボキシモノヒドロキシ系化合物、ジイミドジカルボキシジヒドロキシ系化合物、トリイミドトリカルボキシモノヒドロキシ系化合物等が挙げられる。イミド基含有硬化剤はこれらの群から選択される1種以上のイミド基含有硬化剤であってもよい。
【0019】
耐熱性および誘電特性のさらなる向上の観点から、好ましいイミド基含有硬化剤は、ジイミドジカルボン酸系化合物、ジイミドトリカルボン酸系化合物、ジイミドテトラカルボン酸系化合物、モノイミドジカルボン酸系化合物、モノイミドトリカルボン酸系化合物、トリイミドトリカルボン酸系化合物、テトライミドテトラカルボン酸系化合物、アミド基含有ジイミドジカルボン酸系化合物、アミド基含有モノイミドジカルボン酸系化合物、アミド基含有モノイミドテトラカルボン酸系化合物、ジイミドジカルボキシモノヒドロキシ系化合物、ジイミドジカルボキシジヒドロキシ系化合物、トリイミドトリカルボキシモノヒドロキシ系化合物からなる群から選択される1種以上のイミド基含有硬化剤である。
【0020】
耐熱性および誘電特性のさらなる向上の観点から、より好ましいイミド基含有硬化剤は、後述するように、無水トリカルボン酸成分として芳香族無水トリカルボン酸成分(特に芳香族無水トリカルボン酸成分のみ)を含み、かつジアミン成分として芳香族ジアミン成分(特に芳香族ジアミン成分のみ)を含むジイミドジカルボン酸系化合物、およびテトラカルボン酸二無水物成分として芳香族テトラカルボン酸二無水物成分(特に芳香族テトラカルボン酸二無水物成分のみ)を含み、かつモノアミノモノカルボン酸成分として芳香族モノアミノモノカルボン酸成分(特に芳香族モノアミノモノカルボン酸成分のみ)を含むジイミドジカルボン酸系化合物である。
【0021】
イミド基含有硬化剤の分子量は特に限定されず、耐熱性および誘電特性のさらなる向上の観点から、好ましくは200~1100であり、より好ましくは300~1000であり、さらに好ましくは400~900、特に好ましくは300~900である。
イミド基含有硬化剤の官能基当量は特に限定されず、耐熱性および誘電特性のさらなる向上の観点から、好ましくは50~500であり、より好ましくは80~400であり、さらに好ましくは100~400、特に好ましくは200~400である。
【0022】
硬化剤に含まれるイミド基含有硬化剤の配合量は特に限定されず、耐熱性および誘電特性のさらなる向上の観点から、硬化剤全量に対して、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、最も好ましくは100質量%である。イミド基含有硬化剤の配合量が硬化剤全量に対して100質量%であるとは、硬化剤がイミド基含有硬化剤のみからなることを意味する。2種以上のイミド基含有硬化剤を配合する場合、それらの合計配合量が上記範囲内であればよい。
【0023】
(ジイミドジカルボン酸系化合物)
原料化合物として、無水トリカルボン酸成分とジアミン成分とを用いるか、またはテトラカルボン酸二無水物成分とモノアミノモノカルボン酸成分とを用い、官能基同士の反応を行うことにより、アミド酸系化合物を製造し、イミド化反応を進めることによりジイミドジカルボン酸系化合物を製造することができる。ここで官能基同士の反応は、溶液中でも良いし、固相状態で反応を行っても良く、製造方法は特に限定されない。ジイミドジカルボン酸系化合物は、1分子中、2つのイミド基および2つのカルボキシル基を有する化合物である。ジイミドジカルボン酸系化合物はアミド基を有さない。
【0024】
無水トリカルボン酸成分とジアミン成分とを用いたジイミドジカルボン酸系化合物は、1分子のジアミン成分に対して、2分子の無水トリカルボン酸成分が反応し、2つのイミド基が形成されてなる化合物であり、詳しくは一般式(1)の構造を有するジイミドジカルボン酸系化合物である。
【0025】
【化3】
【0026】
一般式(1)中、XおよびXは、それぞれ独立して、後述する無水トリカルボン酸成分(例えば、芳香族無水トリカルボン酸成分、脂環族無水トリカルボン酸成分、または脂肪族無水トリカルボン酸成分)に由来する構造を表す。
は、後述するジアミン成分(例えば、芳香族ジアミン成分(特に1分子中、1~2個の芳香族環を含有する芳香族ジアミン成分)、脂環族ジアミン成分、または脂肪族ジアミン成分)に由来する構造を表す。
【0027】
無水トリカルボン酸成分とジアミン成分とを用いたジイミドジカルボン酸系化合物の製造に際し、ジアミン成分は、無水トリカルボン酸成分に対して通常は約0.5倍モル量、例えば0.1~0.7倍モル量、好ましくは0.3~0.7倍モル量、より好ましくは0.4~0.6倍モル量、さらに好ましくは0.45~0.55倍モル量で使用される。
【0028】
ジイミドジカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分は、芳香族環を含有する芳香族無水トリカルボン酸成分、脂肪族環を含有するが芳香族環は含有しない脂環族無水トリカルボン酸成分、および芳香族環も脂環族環も含有しない脂肪族無水トリカルボン酸成分を包含する。無水トリカルボン酸成分は、エーテル基および/またはチオエーテル基を含有してもよいし、かつ/または水素原子の1つ以上がハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)に置換されていてもよい。なお、無水トリカルボン酸成分の酸ハロゲン化物成分とは、無水トリカルボン酸成分において、カルボキシル基のOH基がハロゲン原子で置換された化合物のことである。
【0029】
芳香族無水トリカルボン酸成分としては、例えば、無水トリメリット酸、無水ヘミメリット酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸無水物、1,4,5-ナフタレントリカルボン酸無水物、2,3,6-ナフタレントリカルボン酸無水物、1,2,8-ナフタレントリカルボン酸無水物、3,4,4’-ベンゾフェノントリカルボン酸無水物、3,4,4’-ビフェニルエーテルトリカルボン酸無水物、3,4,4’-ビフェニルトリカルボン酸無水物、2,3,2’-ビフェニルトリカルボン酸無水物、3,4,4’-ビフェニルメタントリカルボン酸無水物、3,4,4’-ビフェニルスルホントリカルボン酸無水物等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0030】
脂環族無水トリカルボン酸成分としては、例えば、1,2,4-シクロペンタントリカルボン酸無水物、1,2,3-シクロヘキサントリカルボン酸無水物、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸無水物、1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸無水物等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0031】
脂肪族無水トリカルボン酸成分としては、例えば、3-カルボキシメチルグルタル酸無水物、1,2,4-ブタントリカルボン酸-1,2-無水物、cis-プロペン-1,2,3-トリカルボン酸-1,2-無水物等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0032】
ジイミドジカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、ジイミドジカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性および誘電特性の観点から、芳香族無水トリカルボン酸成分および/または脂環族無水トリカルボン酸成分を含むことが好ましく、より好ましくは芳香族無水トリカルボン酸成分を含む。
ジイミドジカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、ジイミドジカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性および誘電特性のさらなる向上の観点から、芳香族無水トリカルボン酸成分および/または脂環族無水トリカルボン酸成分のみを含むことが好ましく、より好ましくは芳香族無水トリカルボン酸成分のみを含む。
【0033】
ジイミドジカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、ジイミドジカルボン酸系化合物の溶解性の観点から、上記の無水トリカルボン酸成分のうち、脂環族無水トリカルボン酸成分および/または脂肪族無水トリカルボン酸成分を用いることが好ましい。
ジイミドジカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、ジイミドジカルボン酸系化合物の溶解性のさらなる向上の観点から、上記の無水トリカルボン酸成分のうち、脂環族無水トリカルボン酸成分および/または脂肪族無水トリカルボン酸成分のみを用いることが好ましい。
【0034】
ジイミドジカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、ジイミドジカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の非着色性の観点から、上記の無水トリカルボン酸成分のうち、脂環族無水トリカルボン酸成分および/または脂肪族無水トリカルボン酸成分を含むことが好ましく、より好ましくは脂環族無水トリカルボン酸成分を含む。
ジイミドジカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、ジイミドジカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の非着色性のさらなる向上の観点から、上記の無水トリカルボン酸成分のうち、脂環族無水トリカルボン酸成分および/または脂肪族無水トリカルボン酸成分のみを含むことが好ましく、より好ましくは脂環族無水トリカルボン酸成分のみを含む。
【0035】
ジイミドジカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、汎用性の観点から、上記の無水トリカルボン酸成分のうち、無水トリメリット酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸無水物から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
ジイミドジカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、汎用性のさらなる向上の観点から、上記の無水トリカルボン酸成分のうち、無水トリメリット酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸無水物から選択される1種以上の化合物のみを含むことが好ましい。
【0036】
ジイミドジカルボン酸系化合物を構成し得るジアミン成分は、芳香族環を含有する芳香族ジアミン成分、脂肪族環を含有するが芳香族環は含有しない脂環族ジアミン成分、および芳香族環も脂環族環も含有しない脂肪族ジアミン成分を包含する。ジアミン成分は、エーテル基および/またはチオエーテル基を含有してもよいし、かつ/または水素原子の1つ以上がハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)に置換されていてもよい。ジアミン成分は側鎖を有していてもよい。
【0037】
芳香族ジアミン成分としては、例えば、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、ベンジジン、m-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、2,4-トルエンジアミン、2,6-トルエンジアミン、m-アミノベンジルアミン、p-アミノベンジルアミン、ビス(3-アミノフェニル)スルフィド、(3-アミノフェニル)(4-アミノフェニル)スルフィド、ビス(4-アミノフェニル)スルフィド、ビス(3-アミノフェニル)スルホキシド、(3-アミノフェニル)(4-アミノフェニル)スルホキシド、ビス(3-アミノフェニル)スルホン、(3-アミノフェニル)(4-アミノフェニル)スルホン、ビス(4-アミノフェニル)スルホン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノベンズアニリド、3,3’-ジメチル-3,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-3,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(4-アミノフェニキシ)フェニル]メタン、1,1-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2-ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス(4-アミノフェニル)スルホン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、メタキシレンジアミン、1,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4-(アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’-ビス[3-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’-ビス[3-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4-{4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス(3-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-(2-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-(2-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(2-(2-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(2-(3-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(2-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-(3-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-(2-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-(2-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(2-(2-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(2-(3-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(2-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,2-ビス(3-(3-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,2-ビス(3-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,2-ビス(3-(2-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,2-ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,2-ビス(4-(2-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,2-ビス(2-(2-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,2-ビス(2-(3-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,2-ビス(2-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-(3-アミノフェノキシ)フェノキシ)-2-メチルベンゼン、1,3-ビス(3-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ)-4-メチルベンゼン、1,3-ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェノキシ)-2-エチルベンゼン、1,3-ビス(3-(2-アミノフェノキシ)フェノキシ)-5-sec-ブチルベンゼン、1,3-ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェノキシ)-2,5-ジメチルベンゼン、1,3-ビス(4-(2-アミノ-6-メチルフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(2-(2-アミノ-6-エチルフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(2-(3-アミノフェノキシ)-4-メチルフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(2-(4-アミノフェノキシ)-4-tert-ブチルフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-(3-アミノフェノキシ)フェノキシ)-2,5-ジ-tert-ブチルベンゼン、1,4-ビス(3-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ)-2,3-ジメチルベンゼン、1,4-ビス(3-(2-アミノ-3-プロピルフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,2-ビス(3-(3-アミノフェノキシ)フェノキシ)-4-メチルベンゼン、1,2-ビス(3-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ)-3-n-ブチルベンゼン、1,2-ビス(3-(2-アミノ-3-プロピルフェノキシ)フェノキシ)ベンゼンビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、ビス(3-アミノフェノキシメチル)テトラメチルジシロキサン、ビス(3-アミノフェノキシメチル)テトラメチルジシロキサン、α,ω-ビス(3-アミノプロピル)ポリメチルフェニルシロキサン、α,ω-ビス(3-アミノプロピル)ポリ(ジメチルシロキサン-ジフェニルシロキサン)コポリマー、および上記ジアミンの類似物が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0038】
脂環族ジアミン成分としては、例えば、trans-1,4-シクロヘキサンジアミン、cis-1,4-シクロヘキサンジアミン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミンが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0039】
脂肪族ジアミン成分としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、1,10-ジアミノデカン、1,12-ジアミノドデカン、1,10-ジアミノ-1,10-ジメチルデカン、ビス(10-アミノデカメチレン)テトラメチルジシロキサン、α,ω-ビスアミノポリジメチルシロキサン、α,ω-ビス(3-アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3-ビス(3-アミノプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、ビス(10-アミノデカメチレン)テトラメチルジシロキサンが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0040】
ジイミドジカルボン酸系化合物のジアミン成分は、ジイミドジカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性および誘電特性の観点から、芳香族ジアミン成分および/または脂環族ジアミン成分を含むことが好ましく、より好ましくは芳香族ジアミン成分を含む。
ジイミドジカルボン酸系化合物のジアミン成分は、ジイミドジカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性および誘電特性のさらなる向上の観点から、芳香族ジアミン成分および/または脂環族ジアミン成分のみを含むことが好ましく、より好ましくは芳香族ジアミン成分のみを含む。
【0041】
ジイミドジカルボン酸系化合物のジアミン成分は、ジイミドジカルボン酸系化合物の溶解性の観点から、上記のジアミン成分のうち、エーテル基、チオエーテル基、スルホニル基、スルホン酸基、メチル基、メチレン基、イソプロピリデン基、フェニル基、フルオレン構造、ハロゲン原子(またはハロゲン原子含有置換基)、またはシロキサン結合を有するジアミン成分を用いることが好ましい。
ジイミドジカルボン酸系化合物のジアミン成分は、ジイミドジカルボン酸系化合物の溶解性のさらなる向上の観点から、上記のジアミン成分のうち、エーテル基、チオエーテル基、スルホニル基、スルホン酸基、メチル基、メチレン基、イソプロピリデン基、フェニル基、フルオレン構造、ハロゲン原子(またはハロゲン原子含有置換基)、またはシロキサン結合を有するジアミン成分のみを用いることが好ましい。
【0042】
ジイミドジカルボン酸系化合物のジアミン成分は、ジイミドジカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の非着色性の観点から、上記のジアミン成分のうち、脂環族ジアミン成分および/または脂肪族ジアミン成分を含むことが好ましい。
ジイミドジカルボン酸系化合物のジアミン成分は、ジイミドジカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の非着色性のさらなる向上の観点から、上記のジアミン成分のうち、脂環族ジアミン成分および/または脂肪族ジアミン成分のみを含むことが好ましい。
【0043】
ジイミドジカルボン酸系化合物のジアミン成分は、汎用性の観点から、上記のジアミン成分のうち、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス(4-アミノフェニル)スルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、trans-1,4-シクロヘキサンジアミン、cis-1,4-シクロヘキサンジアミン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,10-ジアミノデカン、1,12-ジアミノドデカン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンからなる群G1から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
ジイミドジカルボン酸系化合物のジアミン成分は、汎用性のさらなる向上の観点から、上記のジアミン成分のうち、上記群G1から選択される1種以上の化合物のみを含むことが好ましい。
【0044】
テトラカルボン酸二無水物成分とモノアミノモノカルボン酸成分とを用いたジイミドジカルボン酸系化合物は、1分子のテトラカルボン酸二無水物成分に対して、2分子のモノアミノモノカルボン酸成分が反応し、2つのイミド基が形成されてなる化合物であり、詳しくは一般式(2)の構造を有するジイミドジカルボン酸系化合物である。
【0045】
【化4】
【0046】
一般式(2)中、Yは、後述するテトラカルボン酸二無水物成分(例えば、芳香族テトラカルボン酸二無水物成分、脂環族テトラカルボン酸二無水物成分、または脂肪族テトラカルボン酸二無水物成分)に由来する構造を表す。
2つのRは、それぞれ独立して、後述するモノアミノモノカルボン酸成分(例えば、芳香族モノアミノモノカルボン酸成分(特に1分子中、1個の芳香族環を含有する芳香族モノアミノモノカルボン酸成分)、脂環族モノアミノモノカルボン酸成分、または脂肪族モノアミノモノカルボン酸成分)に由来する構造を表す。
【0047】
テトラカルボン酸二無水物成分とモノアミノモノカルボン酸成分とを用いたジイミドジカルボン酸系化合物の製造に際し、モノアミノモノカルボン酸成分は、テトラカルボン酸二無水物成分に対して通常は、約2倍モル量、例えば1.5~10.0倍モル量、好ましくは1.8~2.2倍モル量、より好ましくは1.9~2.1倍モル量、さらに好ましくは1.95~2.05倍モル量で使用される。
【0048】
ジイミドジカルボン酸系化合物を構成し得るテトラカルボン酸二無水物成分は、芳香族環を含有する芳香族テトラカルボン酸二無水物成分、脂肪族環を含有するが芳香族環は含有しない脂環族テトラカルボン酸二無水物成分、および芳香族環も脂環族環も含有しない脂肪族テトラカルボン酸二無水物成分を包含する。テトラカルボン酸二無水物成分は、エーテル基および/またはチオエーテル基を含有してもよいし、かつ/または水素原子の1つ以上がハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)に置換されていてもよい。本明細書中、エーテル基とは、炭素原子間に存在する「-O-」基のことである。チオエーテル基とは、炭素原子間に存在する「-S-」基のことである。
【0049】
芳香族テトラカルボン酸二無水物成分としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、3-フルオロピロメリット酸二無水物、3,6-ジフルオロピロメリット酸二無水物、3,6-ビス(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-エチレングリコールジベンゾエートテトラカルボン酸二無水物、3,3’’,4,4’’-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-クァテルフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-キンクフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、メチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,1-エチニリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、2,2-プロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,2-エチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,3-トリメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,4-テトラメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,5-ペンタメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-へキサフルオロプロパン二無水物、ジフルオロメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,1,2,2-テトラフルオロ-1,2-エチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロ-1,3-トリメチレン-4、4’-ジフタル酸二無水物、1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロ-1,4-テトラメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5-デカフルオロ-1,5-ペンタメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、オキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物、チオ-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,3,3-テトラメチルシロキサン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,3-ビス〔2-(3,4-ジカルボキシフェニル)-2-プロピル〕ベンゼン二無水物、1,4-ビス〔2-(3,4-ジカルボキシフェニル)-2-プロピル〕ベンゼン二無水物、ビス〔3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕メタン二無水物、ビス〔4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕メタン二無水物、2,2-ビス〔3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、2,2-ビス〔4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、2,2-ビス〔3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2-ビス〔4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジメチルシラン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’-ジフルオロ-3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、5,5’-ジフルオロ-3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、6,6’-ジフルオロ-3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,5,5’,6,6’-ヘキサフルオロ-3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、5,5’-ビス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、6,6’-ビス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,5,5’-テトラキス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,6,6’-テトラキス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、5,5’,6,6’-テトラキス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,5,5’,6,6’-ヘキサキス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’-ジフルオロオキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物、5,5’-ジフルオロオキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物、6,6’-ジフルオロオキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’,6,6’-ヘキサフルオロオキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’-ビス(トリフルオロメチル)オキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物、5,5’-ビス(トリフルオロメチル)オキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物、6,6’-ビス(トリフルオロメチル)オキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’-テトラキス(トリフルオロメチル)オキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,6,6’-テトラキス(トリフルオロメチル)オキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物、5,5’,6,6’-テトラキス(トリフルオロメチル)オキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’,6,6’-ヘキサキス(トリフルオロメチル)オキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’-ジフルオロスルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、5,5’-ジフルオロスルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、6,6’-ジフルオロスルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’,6,6’-ヘキサフルオロスルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’-ビス(トリフルオロメチル)スルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、5,5’-ビス(トリフルオロメチル)スルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、6,6’-ビス(トリフルオロメチル)スルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’-テトラキス(トリフルオロメチル)スルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,6,6’-テトラキス(トリフルオロメチル)スルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、5,5’,6,6’-テトラキス(トリフルオロメチル)スルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’,6,6’-ヘキサキス(トリフルオロメチル)スルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’-ジフルオロ-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、5,5’-ジフルオロ-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、6,6’-ジフルオロ-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’,6,6’-ヘキサフルオロ-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’-ビス(トリフルオロメチル)-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、5,5’-ビス(トリフルオロメチル)-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、6,6’-ジフルオロ-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’-テトラキス(トリフルオロメチル)-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,6,6’-テトラキス(トリフルオロメチル)-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、5,5’,6,6’-テトラキス(トリフルオロメチル)-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’,6,6’-ヘキサキス(トリフルオロメチル)-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、9-フェニル-9-(トリフルオロメチル)キサンテン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、9,9-ビス(トリフルオロメチル)キサンテン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ〔2,2,2〕オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-(4、4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物、9,9-ビス〔4-(3,4-ジカルボキシ)フェニル〕フルオレン二無水物、9,9-ビス〔4-(2,3-ジカルボキシ)フェニル〕フルオレン二無水物が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0050】
脂環族テトラカルボン酸二無水物成分としては、例えば、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、カルボニル-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、メチレン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、1,2-エチレン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、1,1-エチニリデン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、2,2-プロピリデン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-プロピリデン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、オキシ-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、チオ-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、スルホニル-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0051】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物成分としては、例えば、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,1,2,2-エタンテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0052】
ジイミドジカルボン酸系化合物のテトラカルボン酸二無水物成分は、ジイミドジカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性および誘電特性の観点から、芳香族テトラカルボン酸二無水物成分および/または脂環族テトラカルボン酸二無水物成分を含むことが好ましく、より好ましくは芳香族テトラカルボン酸二無水物成分を含む。
ジイミドジカルボン酸系化合物のテトラカルボン酸二無水物成分は、ジイミドジカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性および誘電特性のさらなる向上の観点から、芳香族テトラカルボン酸二無水物成分および/または脂環族テトラカルボン酸二無水物成分のみを含むことが好ましく、より好ましくは芳香族テトラカルボン酸二無水物成分のみを含む。
【0053】
ジイミドジカルボン酸系化合物のテトラカルボン酸二無水物成分は、ジイミドジカルボン酸系化合物の溶解性の観点から、上記のテトラカルボン酸二無水物成分のうち、エーテル基、チオエーテル基、スルホニル基、ケトン基、メチル基、メチレン基、イソプロピリデン基、フェニル基、フルオレン構造、またはハロゲン原子(またはハロゲン原子含有置換基)を有するテトラカルボン酸二無水物成分を用いることが好ましい。
ジイミドジカルボン酸系化合物のテトラカルボン酸二無水物成分は、ジイミドジカルボン酸系化合物の溶解性のさらなる向上の観点から、上記のテトラカルボン酸二無水物成分のうち、エーテル基、チオエーテル基、スルホニル基、ケトン基、メチル基、メチレン基、イソプロピリデン基、フェニル基、フルオレン構造、またはハロゲン原子(またはハロゲン原子含有置換基)を有するテトラカルボン酸二無水物成分のみを用いることが好ましい。
【0054】
ジイミドジカルボン酸系化合物のテトラカルボン酸二無水物成分は、ジイミドジカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性、誘電特性および非着色性の観点から、上記のテトラカルボン酸二無水物成分のうち、フッ素原子を含有する、芳香族テトラカルボン酸二無水物成分および/または脂環族テトラカルボン酸二無水物成分(特に芳香族テトラカルボン酸二無水物成分)を含むことが好ましい。
ジイミドジカルボン酸系化合物のテトラカルボン酸二無水物成分は、ジイミドジカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性、誘電特性および非着色性のさらなる向上の観点から、上記のテトラカルボン酸二無水物成分のうち、フッ素原子を含有する、芳香族テトラカルボン酸二無水物成分および/または脂環族テトラカルボン酸二無水物成分(特に芳香族テトラカルボン酸二無水物成分)のみを含むことが好ましい。
【0055】
ジイミドジカルボン酸系化合物のテトラカルボン酸二無水物成分は、汎用性の観点から、上記のテトラカルボン酸二無水物成分のうち、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、4,4’-(4、4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物からなる群G2から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
ジイミドジカルボン酸系化合物のテトラカルボン酸二無水物成分は、汎用性のさらなる向上の観点から、上記のテトラカルボン酸二無水物成分のうち、上記群G2から選択される1種以上の化合物のみを含むことが好ましい。
【0056】
ジイミドジカルボン酸系化合物を構成し得るモノアミノモノカルボン酸成分は、芳香族環を含有する芳香族モノアミノモノカルボン酸成分、脂肪族環を含有するが芳香族環は含有しない脂環族モノアミノモノカルボン酸成分、および芳香族環も脂環族環も含有しない脂肪族モノアミノモノカルボン酸成分を包含する。モノアミノモノカルボン酸成分は、エーテル基および/またはチオエーテル基を含有してもよいし、かつ/または水素原子の1つ以上がハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)に置換されていてもよい。
【0057】
芳香族モノアミノモノカルボン酸成分としては、例えば、フェニルアラニン、トリプトファン、チロキシン、チロシン、ジヨードチロシン、2-アミノ安息香酸、3-アミノ安息香酸、4-アミノ安息香酸、2-アミノ-3-メチル安息香酸、2-アミノ-4-メチル安息香酸、2-アミノ-5-メチル安息香酸、2-アミノ-6-メチル安息香酸、3-アミノ-2-メチル安息香酸、3-アミノ-4-メチル安息香酸、4-アミノ-2-メチル安息香酸、4-アミノ-3-メチル安息香酸、5-アミノ-2-メチル安息香酸、2-アミノ-3,4-ジメチル安息香酸、2-アミノ-4,5-ジメチル安息香酸、2-アミノ-4-メトキシ安息香酸、3-アミノ-4-メトキシ安息香酸、4-アミノ-2-メトキシ安息香酸、6-アミノ-2-ナフタレンカルボン酸、3-アミノ-2-ナフタレンカルボン酸等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0058】
脂環族モノアミノモノカルボン酸成分としては、例えば、4-アミノシクロヘキサンカルボン酸、3-アミノシクロヘキサンカルボン酸、1-アミノシクロヘキサンカルボン酸、2-シクロヘキシルグリシン、3-シクロヘキシルアラニン、2-アミノシクロヘキサンカルボン酸、4-(アミノメチル)シクロヘキサンカルボン酸、ガバペチン、1-アミノシクロペンタンカルボン酸、1-アミノシクロブタンカルボン酸等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0059】
脂肪族モノアミノモノカルボン酸成分としては、例えば、グリシン、アラニン、バリン、ノルバリン、α-アミノ酪酸、γ-アミノ酪酸、β-アラニン、セリン、ロイシン、ノルロイシン、イソロイシン、トレオニン、プロリン、ヒドロキシプロリン、メチオニン、シスチン、システイン、5-アミノペンタン酸、6-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、9-ノナノン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノラウリン酸、17-アミノヘプタデカノン酸等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0060】
ジイミドジカルボン酸系化合物のモノアミノモノカルボン酸成分は、ジイミドジカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性および誘電特性の観点から、芳香族モノアミノモノカルボン酸成分および/または脂環族モノアミノモノカルボン酸成分を含むことが好ましく、より好ましくは芳香族モノアミノモノカルボン酸成分を含む。
ジイミドジカルボン酸系化合物のモノアミノモノカルボン酸成分は、ジイミドジカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性および誘電特性の観点から、芳香族モノアミノモノカルボン酸成分および/または脂環族モノアミノモノカルボン酸成分のみを含むことが好ましく、より好ましくは芳香族モノアミノモノカルボン酸成分のみを含む。
【0061】
ジイミドジカルボン酸系化合物のモノアミノモノカルボン酸成分は、汎用性の観点から、上記のモノアミノモノカルボン酸成分のうち、グリシン、アラニン、バリン、ノルバリン、α-アミノ酪酸、γ-アミノ酪酸、β-アラニン、セリン、ロイシン、イソロイシン、トレオニン、プロリン、ヒドロキシプロリン、メチオニン、システイン、5-アミノペンタン酸、6-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、9-ノナノン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノラウリン酸、17-アミノヘプタデカノン酸、フェニルアラニン、トリプトファン、2-アミノ安息香酸、3-アミノ安息香酸、4-アミノ安息香酸、2-アミノ-3-メチル安息香酸、2-アミノ-4-メチル安息香酸、2-アミノ-5-メチル安息香酸、2-アミノ-6-メチル安息香酸、3-アミノ-2-メチル安息香酸、3-アミノ-4-メチル安息香酸、4-アミノ-2-メチル安息香酸、4-アミノ-3-メチル安息香酸、5-アミノ-2-メチル安息香酸、2-アミノ-3,4-ジメチル安息香酸、2-アミノ-4,5-ジメチル安息香酸、2-アミノ-4-メトキシ安息香酸、3-アミノ-4-メトキシ安息香酸、4-アミノ-2-メトキシ安息香酸、6-アミノ-2-ナフタレンカルボン酸、3-アミノ-2-ナフタレンカルボン酸からなる群G3から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
ジイミドジカルボン酸系化合物のモノアミノモノカルボン酸成分は、汎用性のさらなる向上の観点から、上記のモノアミノモノカルボン酸成分のうち、上記群G3から選択される1種以上の化合物のみを含むことが好ましい。
【0062】
(ジイミドトリカルボン酸系化合物)
原料化合物として、無水トリカルボン酸成分とジアミノモノカルボン酸成分とを用い、官能基同士の反応を行うことにより、アミド酸系化合物を製造し、イミド化反応を進めることによりジイミドトリカルボン酸系化合物を製造することができる。ここで官能基同士の反応は、溶液中でも良いし、固相状態で反応を行っても良く、製造方法は特に限定されない。ジイミドトリカルボン酸系化合物は、1分子中、2つのイミド基および3つのカルボキシル基を有する化合物である。
【0063】
無水トリカルボン酸成分とジアミノモノカルボン酸成分とを用いたジイミドトリカルボン酸系化合物は、1分子のジアミノモノカルボン酸成分に対して、2分子の無水トリカルボン酸成分が反応し、2つのイミド基が形成されてなる化合物である。
【0064】
無水トリカルボン酸成分とジアミノモノカルボン酸とを用いたジイミドトリカルボン酸系化合物の製造に際し、ジアミノモノカルボン酸成分は、無水トリカルボン酸成分に対して通常は、約0.5倍モル量、例えば0.1~0.7倍モル量、好ましくは0.3~0.7倍モル量、より好ましくは0.4~0.6倍モル量、さらに好ましくは0.45~0.55倍モル量で使用される。
【0065】
ジイミドトリカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分は、ジイミドジカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分と同様の無水トリカルボン酸成分であり、詳しくはジイミドジカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分と同様の、芳香族無水トリカルボン酸成分、脂環族無水トリカルボン酸成分、および脂肪族無水トリカルボン酸成分を包含する。
【0066】
ジイミドトリカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、ジイミドトリカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性の観点から、芳香族無水トリカルボン酸成分および/または脂環族無水トリカルボン酸成分を含むことが好ましく、より好ましくは芳香族無水トリカルボン酸成分を含む。
ジイミドトリカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、ジイミドトリカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性のさらなる向上の観点から、芳香族無水トリカルボン酸成分および/または脂環族無水トリカルボン酸成分のみを含むことが好ましく、より好ましくは芳香族無水トリカルボン酸成分のみを含む。
【0067】
ジイミドトリカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、汎用性の観点から、上記の無水トリカルボン酸成分のうち、無水トリメリット酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸無水物からなる群G4から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
ジイミドトリカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、汎用性のさらなる向上の観点から、上記の無水トリカルボン酸成分のうち、上記群G4から選択される1種以上の化合物のみを含むことが好ましい。
【0068】
ジイミドトリカルボン酸系化合物を構成し得るジアミノモノカルボン酸成分は、芳香族環を含有する芳香族ジアミノモノカルボン酸成分、脂肪族環を含有するが芳香族環は含有しない脂環族ジアミノモノカルボン酸成分、および芳香族環も脂環族環も含有しない脂肪族ジアミノモノカルボン酸成分を包含する。ジアミノモノカルボン酸成分は、エーテル基および/またはチオエーテル基を含有してもよいし、かつ/または水素原子の1つ以上がハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)に置換されていてもよい。
【0069】
芳香族ジアミノモノカルボン酸成分としては、例えば、3,4-ジアミノ安息香酸、3,5-ジアミノ安息香酸、2,5-ジアミノ安息香酸、3,5-ビス(4-アミノフェノキシ)安息香酸等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0070】
脂環族ジアミノモノカルボン酸成分としては、例えば、2,5-ジアミノシクロヘキサンカルボン酸、3,5-ジアミノシクロヘキサンカルボン酸等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0071】
脂肪族ジアミノモノカルボン酸成分としては、例えば、リジン、ヒドロキシリジン、アルギニン、ヒスチジン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0072】
ジイミドトリカルボン酸系化合物のジアミノモノカルボン酸成分は、ジイミドトリカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性の観点から、芳香族ジアミノモノカルボン酸成分および/または脂環族ジアミノモノカルボン酸成分を含むことが好ましく、より好ましくは芳香族ジアミノモノカルボン酸成分を含む。
ジイミドトリカルボン酸系化合物のジアミノモノカルボン酸成分は、ジイミドトリカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性のさらなる向上の観点から、芳香族ジアミノモノカルボン酸成分および/または脂環族ジアミノモノカルボン酸成分のみを含むことが好ましく、より好ましくは芳香族ジアミノモノカルボン酸成分のみを含む。
【0073】
ジイミドトリカルボン酸系化合物のジアミノモノカルボン酸成分は、ジイミドトリカルボン酸系化合物の溶解性の観点から、上記のジアミノモノカルボン酸成分のうち、脂肪族ジアミノモノカルボン酸成分を用いることが好ましい。
ジイミトリジカルボン酸系化合物のジアミノモノカルボン酸成分は、ジイミドトリカルボン酸系化合物の溶解性のさらなる向上の観点から、上記のジアミノモノカルボン酸成分のうち、脂肪族ジアミノモノカルボン酸成分のみを用いることが好ましい。
【0074】
ジイミドトリカルボン酸系化合物のジアミノモノカルボン酸成分は、汎用性の観点から、上記のジアミノモノカルボン酸成分のうち、3,4-ジアミノ安息香酸、3,5-ジアミノ安息香酸、2,5-ジアミノ安息香酸、3,5-ビス(4-アミノフェノキシ)安息香酸、リジン、ヒドロキシリジン、アルギニン、ヒスチジンからなる群G5から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
ジイミドトリカルボン酸系化合物のジアミノモノカルボン酸成分は、汎用性のさらなる向上の観点から、上記のジアミノモノカルボン酸成分のうち、上記群G5から選択される1種以上の化合物のみを含むことが好ましい。
【0075】
(ジイミドテトラカルボン酸系化合物)
原料化合物として、テトラカルボン酸二無水物成分とモノアミノジカルボン酸成分とを用い、官能基同士の反応を行うことにより、アミド酸系化合物を製造し、イミド化反応を進めることによりジイミドテトラカルボン酸系化合物を製造することができる。ここで官能基同士の反応は、溶液中でも良いし、固相状態で反応を行っても良く、製造方法は特に限定されない。ジイミドテトラカルボン酸系化合物は、1分子中、2つのイミド基および4つのカルボキシル基を有する化合物である。
【0076】
テトラカルボン酸二無水物成分とモノアミノジカルボン酸成分とを用いたジイミドテトラカルボン酸系化合物は、1分子のテトラカルボン酸二無水物成分に対して、2分子のモノアミノジカルボン酸成分が反応し、2つのイミド基が形成されてなる化合物である。
【0077】
テトラカルボン酸二無水物成分とモノアミノジカルボン酸成分とを用いたジイミドテトラカルボン酸系化合物の製造に際し、モノアミノジカルボン酸成分は、テトラカルボン酸二無水物成分に対して通常は、約2倍モル量、例えば1.5~10.0倍モル量、好ましくは1.8~2.2倍モル量、より好ましくは1.9~2.1倍モル量、さらに好ましくは1.95~2.05倍モル量で使用される。
【0078】
ジイミドテトラカルボン酸系化合物を構成し得るテトラカルボン酸二無水物成分は、ジイミドジカルボン酸系化合物を構成し得るテトラカルボン酸二無水物成分と同様のテトラカルボン酸二無水物成分であり、詳しくはジイミドジカルボン酸系化合物を構成し得るテトラカルボン酸二無水物成分と同様の、芳香族テトラカルボン酸二無水物成分、脂環族テトラカルボン酸二無水物成分、および脂肪族テトラカルボン酸二無水物成分を包含する。
【0079】
ジイミドテトラカルボン酸系化合物のテトラカルボン酸二無水物成分は、ジイミドテトラカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性の観点から、芳香族テトラカルボン酸二無水物成分を含むことが好ましい。
ジイミドテトラカルボン酸系化合物のテトラカルボン酸二無水物成分は、ジイミドテトラカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性のさらなる向上の観点から、芳香族テトラカルボン酸二無水物成分のみを含むことが好ましい。
【0080】
ジイミドテトラカルボン酸系化合物のテトラカルボン酸二無水物成分は、ジイミドテトラカルボン酸系化合物の溶解性の観点から、上記のテトラカルボン酸二無水物成分のうち、エーテル基、チオエーテル基、スルホニル基、ケトン基、メチル基、メチレン基、イソプロピリデン基、フェニル基、フルオレン構造、またはハロゲン原子(またはハロゲン原子含有置換基)を有するテトラカルボン酸二無水物成分を用いることが好ましい。
ジイミドテトラカルボン酸系化合物のテトラカルボン酸二無水物成分は、ジイミドテトラカルボン酸系化合物の溶解性のさらなる向上の観点から、上記のテトラカルボン酸二無水物成分のうち、エーテル基、チオエーテル基、スルホニル基、ケトン基、メチル基、メチレン基、フェニル基、イソプロピリデン基、フルオレン構造、またはハロゲン原子(またはハロゲン原子含有置換基)を有するテトラカルボン酸二無水物成分のみを用いることが好ましい。
【0081】
ジイミドテトラカルボン酸系化合物のテトラカルボン酸二無水物成分は、ジイミドテトラカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性、誘電特性および非着色性の観点から、上記のテトラカルボン酸二無水物成分のうち、フッ素原子を含有する、芳香族テトラカルボン酸二無水物成分および/または脂環族テトラカルボン酸二無水物成分(特に芳香族テトラカルボン酸二無水物成分)を含むことが好ましい。
ジイミドテトラカルボン酸系化合物のテトラカルボン酸二無水物成分は、ジイミドテトラカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性、誘電特性および非着色性の観点から、上記のテトラカルボン酸二無水物成分のうち、フッ素原子を含有する、芳香族テトラカルボン酸二無水物成分および/または脂環族テトラカルボン酸二無水物成分(特に芳香族テトラカルボン酸二無水物成分)のみを含むことが好ましい。
【0082】
ジイミドテトラカルボン酸系化合物のテトラカルボン酸二無水物成分は、汎用性の観点から、上記のテトラカルボン酸二無水物成分のうち、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、4,4’-(4、4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物からなる群G6から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
ジイミドテトラカルボン酸系化合物のテトラカルボン酸二無水物成分は、汎用性のさらなる向上の観点から、上記のテトラカルボン酸二無水物成分のうち、上記群G6から選択される1種以上の化合物のみを含むことが好ましい。
【0083】
ジイミドテトラカルボン酸系化合物を構成し得るモノアミノジカルボン酸成分は、芳香族環を含有する芳香族モノアミノジカルボン酸成分、脂肪族環を含有するが芳香族環は含有しない脂環族モノアミノジカルボン酸成分、および芳香族環も脂環族環も含有しない脂肪族モノアミノジカルボン酸成分を包含する。モノアミノジカルボン酸成分は、エーテル基および/またはチオエーテル基を含有してもよいし、かつ/または水素原子の1つ以上がハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)に置換されていてもよい。
【0084】
芳香族モノアミノジカルボン酸成分としては、例えば、2-アミノテレフタル酸、2-アミノイソフタル酸、4-アミノイソフタル酸、5-アミノイソフタル酸、3-アミノフタル酸、4-アミノフタル酸、3-アミノ-1,2-ジカルボキシナフタレン、4-アミノ-1,2-ジカルボキシナフタレン、5-アミノ-1,2-ジカルボキシナフタレン、6-アミノ-1,2-ジカルボキシナフタレン、7-アミノ-1,2-ジカルボキシナフタレン、8-アミノ-1,2-ジカルボキシナフタレン、1-アミノ-2,3-ジカルボキシナフタレン、4-アミノ-2,3-ジカルボキシナフタレン、5-アミノ-2,3-ジカルボキシナフタレン、6-アミノ-2,3-ジカルボキシナフタレン、7-アミノ-2,3-ジカルボキシナフタレン、8-アミノ-2,3-ジカルボキシナフタレン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0085】
脂環族モノアミノジカルボン酸成分としては、例えば、5-アミノ-1,3-シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0086】
脂肪族モノアミノジカルボン酸成分としては、例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸、2-アミノピメリン酸、α-アミノ-γ-オキシピメリン酸、2-アミノスベリン酸、2-アミノアジピン酸、α-アミノ-γ-オキシアジピン酸、α-アミノセバシン酸、カルボシステイン、アミノマロン酸、α-アミノ-α-メチルコハク酸、β-オキシグルタミン酸、γ-オキシグルタミン酸、γ-メチルグルタミン酸、γ-メチレングルタミン酸、γ-メチル-γ-オキシグルタミン酸等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0087】
ジイミドテトラカルボン酸系化合物のモノアミノジカルボン酸成分は、ジイミドテトラカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性の観点から、芳香族モノアミノジカルボン酸成分および/または脂環族モノアミノジカルボン酸成分を含むことが好ましく、より好ましくは芳香族モノアミノジカルボン酸成分を含む。
ジイミドテトラカルボン酸系化合物のモノアミノジカルボン酸成分は、ジイミドテトラカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性のさらなる向上の観点から、芳香族モノアミノジカルボン酸成分および/または脂環族モノアミノジカルボン酸成分のみを含むことが好ましく、より好ましくは芳香族モノアミノジカルボン酸成分のみを含む。
【0088】
ジイミドテトラカルボン酸系化合物のモノアミノジカルボン酸成分は、汎用性の観点から、上記のモノアミノジカルボン酸成分のうち、2-アミノテレフタル酸、2-アミノイソフタル酸、4-アミノイソフタル酸、5-アミノイソフタル酸、3-アミノフタル酸、4-アミノフタル酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、2-アミノピメリン酸、2-アミノスベリン酸、2-アミノアジピン酸、α-アミノセバシン酸、アミノマロン酸からなる群G7から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
ジイミドテトラカルボン酸系化合物のモノアミノジカルボン酸成分は、汎用性のさらなる向上の観点から、上記のモノアミノジカルボン酸成分のうち、上記群G7から選択される1種以上の化合物のみを含むことが好ましい。
【0089】
(モノイミドジカルボン酸系化合物)
原料化合物として、無水トリカルボン酸成分とモノアミノモノカルボン酸成分とを用い、官能基同士の反応を行うことにより、アミド酸系化合物を製造し、イミド化反応を進めることによりモノイミドジカルボン酸系化合物を製造することができる。ここで官能基同士の反応は、溶液中でも良いし、固相状態で反応を行っても良く、製造方法は特に限定されない。モノイミドジカルボン酸系化合物は、1分子中、1つのイミド基および2つのカルボキシル基を有する化合物である。モノイミドジカルボン酸系化合物はアミド基を有さない。
【0090】
無水トリカルボン酸成分とモノアミノモノカルボン酸成分とを用いたモノイミドジカルボン酸系化合物は、1分子の無水トリカルボン酸成分に対して、1分子のモノアミノモノカルボン酸成分が反応し、1つのイミド基が形成されてなる化合物である。
【0091】
無水トリカルボン酸成分とモノアミノモノカルボン酸成分とを用いたモノイミドジカルボン酸系化合物の製造に際し、モノアミノモノカルボン酸成分は、無水トリカルボン酸成分に対して通常は、約1倍モル量、例えば0.5~5.0倍モル量、好ましくは0.8~1.2倍モル量、より好ましくは0.9~1.1倍モル量、さらに好ましくは0.95~1.05倍モル量で使用される。
【0092】
モノイミドジカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分は、ジイミドジカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分と同様の無水トリカルボン酸成分であり、詳しくはジイミドジカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分と同様の、芳香族無水トリカルボン酸成分、脂環族無水トリカルボン酸成分、および脂肪族無水トリカルボン酸成分を包含する。
【0093】
モノイミドジカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、モノイミドジカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性の観点から、芳香族無水トリカルボン酸成分および/または脂環族無水トリカルボン酸成分を含むことが好ましく、より好ましくは芳香族無水トリカルボン酸成分を含む。
モノイミドジカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、モノイミドジカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性のさらなる向上の観点から、芳香族無水トリカルボン酸成分および/または脂環族無水トリカルボン酸成分のみを含むことが好ましく、より好ましくは芳香族無水トリカルボン酸成分のみを含む。
【0094】
モノイミドジカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、モノイミドジカルボン酸系化合物の溶解性および非着色性の観点から、上記の無水トリカルボン酸成分のうち、脂環族無水トリカルボン酸成分および/または脂肪族無水トリカルボン酸成分を用いることが好ましい。
モノイミドジカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、モノイミドジカルボン酸系化合物の溶解性および非着色性のさらなる向上の観点から、上記の無水トリカルボン酸成分のうち、脂環族無水トリカルボン酸成分および/または脂肪族無水トリカルボン酸成分のみを用いることが好ましい。
【0095】
モノイミドジカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、汎用性の観点から、上記の無水トリカルボン酸成分のうち、無水トリメリット酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸無水物からなる群G8から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
モノイミドジカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、汎用性のさらなる向上の観点から、上記の無水トリカルボン酸成分のうち、上記群G8から選択される1種以上の化合物のみを含むことが好ましい。
【0096】
モノイミドジカルボン酸系化合物を構成し得るモノアミノモノカルボン酸成分は、ジイミドジカルボン酸系化合物を構成し得るモノアミノモノカルボン酸成分と同様のモノアミノモノカルボン酸成分であり、詳しくはジイミドジカルボン酸系化合物を構成し得るモノアミノモノカルボン酸成分と同様の、芳香族モノアミノモノカルボン酸成分、脂環族モノアミノモノカルボン酸成分、および脂肪族モノアミノモノカルボン酸成分を包含する。
【0097】
モノイミドジカルボン酸系化合物のモノアミノモノカルボン酸成分は、モノイミドジカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性の観点から、芳香族モノアミノモノカルボン酸成分および/または脂環族モノアミノモノカルボン酸成分を含むことが好ましく、より好ましくは芳香族モノアミノモノカルボン酸成分を含む。
モノイミドジカルボン酸系化合物のモノアミノモノカルボン酸成分は、モノイミドジカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性のさらなる向上の観点から、芳香族モノアミノモノカルボン酸成分および/または脂環族モノアミノモノカルボン酸成分のみを含むことが好ましく、より好ましくは芳香族モノアミノモノカルボン酸成分のみを含む。
【0098】
モノイミドジカルボン酸系化合物のモノアミノモノカルボン酸成分は、モノイミドジカルボン酸系化合物の溶解性および非着色性の観点から、上記のモノアミノモノカルボン酸成分のうち、脂環族モノアミノモノカルボン酸成分および/または脂肪族モノアミノモノカルボン酸成分を用いることが好ましい。
モノイミドジカルボン酸系化合物のモノアミノモノカルボン酸成分は、モノイミドジカルボン酸系化合物の溶解性および非着色性のさらなる向上の観点から、上記のモノアミノモノカルボン酸成分のうち、脂環族モノアミノモノカルボン酸成分および/または脂肪族モノアミノモノカルボン酸成分のみを用いることが好ましい。
【0099】
モノイミドジカルボン酸系化合物のモノアミノモノカルボン酸成分は、汎用性の観点から、上記のモノアミノモノカルボン酸成分のうち、グリシン、アラニン、バリン、ノルバリン、α-アミノ酪酸、γ-アミノ酪酸、β-アラニン、セリン、ロイシン、イソロイシン、トレオニン、プロリン、ヒドロキシプロリン、メチオニン、システイン、5-アミノペンタン酸、6-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、9-ノナノン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノラウリン酸、17-アミノヘプタデカノン酸、フェニルアラニン、トリプトファン、2-アミノ安息香酸、3-アミノ安息香酸、4-アミノ安息香酸、2-アミノ-3-メチル安息香酸、2-アミノ-4-メチル安息香酸、2-アミノ-5-メチル安息香酸、2-アミノ-6-メチル安息香酸、3-アミノ-2-メチル安息香酸、3-アミノ-4-メチル安息香酸、4-アミノ-2-メチル安息香酸、4-アミノ-3-メチル安息香酸、5-アミノ-2-メチル安息香酸、2-アミノ-3,4-ジメチル安息香酸、2-アミノ-4,5-ジメチル安息香酸、2-アミノ-4-メトキシ安息香酸、3-アミノ-4-メトキシ安息香酸、4-アミノ-2-メトキシ安息香酸、6-アミノ-2-ナフタレンカルボン酸、3-アミノ-2-ナフタレンカルボン酸からなる群G9から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
モノイミドジカルボン酸系化合物のモノアミノモノカルボン酸成分は、汎用性のさらなる向上の観点から、上記のモノアミノモノカルボン酸成分のうち、上記群G9から選択される1種以上の化合物のみを含むことが好ましい。
【0100】
(モノイミドトリカルボン酸系化合物)
原料化合物として、無水トリカルボン酸成分とモノアミノジカルボン酸成分とを用い、官能基同士の反応を行うことにより、アミド酸系化合物を製造し、イミド化反応を進めることによりモノイミドトリカルボン酸系化合物を製造することができる。ここで官能基同士の反応は、溶液中でも良いし、固相状態で反応を行っても良く、製造方法は特に限定されない。モノイミドトリカルボン酸系化合物は、1分子中、1つのイミド基および3つのカルボキシル基を有する化合物である。
【0101】
無水トリカルボン酸成分とモノアミノジカルボン酸成分とを用いたモノイミドトリカルボン酸系化合物は、1分子の無水トリカルボン酸成分に対して、1分子のモノアミノジカルボン酸成分が反応し、1つのイミド基が形成されてなる化合物である。
【0102】
無水トリカルボン酸成分とモノアミノジカルボン酸成分とを用いたモノイミドトリカルボン酸系化合物の製造に際し、モノアミノジカルボン酸成分は、無水トリカルボン酸成分に対して通常は、約1倍モル量、例えば0.5~5.0倍モル量、好ましくは0.8~1.2倍モル量、より好ましくは0.9~1.1倍モル量、さらに好ましくは0.95~1.05倍モル量で使用される。
【0103】
モノイミドトリカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分は、ジイミドジカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分と同様の無水トリカルボン酸成分であり、詳しくはジイミドジカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分と同様の、芳香族無水トリカルボン酸成分、脂環族無水トリカルボン酸成分、および脂肪族無水トリカルボン酸成分を包含する。
【0104】
モノイミドトリカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、モノイミドトリカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性の観点から、芳香族無水トリカルボン酸成分および/または脂環族無水トリカルボン酸成分を含むことが好ましく、より好ましくは芳香族無水トリカルボン酸成分を含む。
モノイミドトリカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、モノイミドトリカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性のさらなる向上の観点から、芳香族無水トリカルボン酸成分および/または脂環族無水トリカルボン酸成分のみを含むことが好ましく、より好ましくは芳香族無水トリカルボン酸成分のみを含む。
【0105】
モノイミドトリカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、モノイミドトリカルボン酸系化合物の溶解性および非着色性の観点から、上記の無水トリカルボン酸成分のうち、脂環族無水トリカルボン酸成分および/または脂肪族無水トリカルボン酸成分を用いることが好ましい。
モノイミドトリカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、モノイミドトリカルボン酸系化合物の溶解性および非着色性のさらなる向上の観点から、上記の無水トリカルボン酸成分のうち、脂環族無水トリカルボン酸成分および/または脂肪族無水トリカルボン酸成分のみを用いることが好ましい。
【0106】
モノイミドトリカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、汎用性の観点から、上記の無水トリカルボン酸成分のうち、無水トリメリット酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸無水物からなる群G10から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
モノイミドトリカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、汎用性のさらなる向上の観点から、上記の無水トリカルボン酸成分のうち、上記群G10から選択される1種以上の化合物のみを含むことが好ましい。
【0107】
モノイミドトリカルボン酸系化合物を構成し得るモノアミノジカルボン酸成分は、ジイミドテトラカルボン酸系化合物を構成し得るモノアミノジカルボン酸成分と同様のモノアミノジカルボン酸成分であり、詳しくはジイミドテトラカルボン酸系化合物を構成し得るモノアミノジカルボン酸成分と同様の、芳香族モノアミノジカルボン酸成分、脂環族モノアミノジカルボン酸成分、および脂肪族モノアミノジカルボン酸成分を包含する。
【0108】
モノイミドトリカルボン酸系化合物のモノアミノジカルボン酸成分は、モノイミドトリカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性の観点から、芳香族モノアミノジカルボン酸成分および/または脂環族モノアミノジカルボン酸成分を含むことが好ましく、より好ましくは芳香族モノアミノジカルボン酸成分を含む。
モノイミドトリカルボン酸系化合物のモノアミノジカルボン酸成分は、モノイミドトリカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性のさらなる向上の観点から、芳香族モノアミノジカルボン酸成分および/または脂環族モノアミノジカルボン酸成分のみを含むことが好ましく、より好ましくは芳香族モノアミノジカルボン酸成分のみを含む。
【0109】
モノイミドトリカルボン酸系化合物のモノアミノジカルボン酸成分は、汎用性の観点から、上記のモノアミノジカルボン酸成分のうち、2-アミノテレフタル酸、2-アミノイソフタル酸、4-アミノイソフタル酸、5-アミノイソフタル酸、3-アミノフタル酸、4-アミノフタル酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、2-アミノピメリン酸、2-アミノスベリン酸、2-アミノアジピン酸、α-アミノセバシン酸、アミノマロン酸からなる群G11から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
モノイミドトリカルボン酸系化合物のモノアミノジカルボン酸成分は、汎用性のさらなる向上の観点から、上記のモノアミノジカルボン酸成分のうち、上記群G11から選択される1種以上の化合物のみを含むことが好ましい。
【0110】
(トリイミドトリカルボン酸系化合物)
原料化合物として、無水トリカルボン酸成分とトリアミン成分とを用い、官能基同士の反応を行うことにより、アミド酸系化合物を製造し、イミド化反応を進めることによりトリイミドトリカルボン酸系化合物を製造することができる。ここで官能基同士の反応は、溶液中でも良いし、固相状態で反応を行っても良く、製造方法は特に限定されない。トリイミドトリカルボン酸系化合物は、1分子中、3つのイミド基および3つのカルボキシ基を有する化合物である。
【0111】
無水トリカルボン酸成分とトリアミン成分とを用いたトリイミドトリカルボン酸系化合物は、1分子のトリアミン成分に対して、3分子の無水トリカルボン酸成分が反応し、3つのイミド基が形成されてなる化合物である。
【0112】
無水トリカルボン酸成分とトリアミン成分とを用いたトリイミドトリカルボン酸系化合物の製造に際し、トリアミン成分は、無水トリカルボン酸成分に対して通常は約0.33倍モル量、例えば0.1~0.7倍モル量、好ましくは0.2~0.6倍モル量、より好ましくは0.25~0.5倍モル量、さらに好ましくは0.3~0.4倍モル量で使用される。
【0113】
トリイミドトリカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分は、ジイミドジカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分と同様の無水トリカルボン酸成分であり、詳しくはジイミドジカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分と同様の、芳香族無水トリカルボン酸成分、脂環族無水トリカルボン酸成分、および脂肪族無水トリカルボン酸成分を包含する。
【0114】
トリイミドトリカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、トリイミドトリカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性の観点から、芳香族無水トリカルボン酸成分および/または脂環族無水トリカルボン酸成分を含むことが好ましく、より好ましくは芳香族無水トリカルボン酸成分を含む。
トリイミドトリカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、トリイミドトリカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性のさらなる向上の観点から、芳香族無水トリカルボン酸成分および/または脂環族無水トリカルボン酸成分のみを含むことが好ましく、より好ましくは芳香族無水トリカルボン酸成分のみを含む。
【0115】
トリイミドトリカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、汎用性の観点から、上記の無水トリカルボン酸成分のうち、無水トリメリット酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸無水物から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
トリイミドトリカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、汎用性のさらなる向上の観点から、上記の無水トリカルボン酸成分のうち、無水トリメリット酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸無水物から選択される1種以上の化合物のみを含むことが好ましい。
【0116】
トリイミドトリカルボン酸系化合物を構成し得るトリアミン成分は、芳香族環を含有する芳香族トリアミン成分、脂肪族環を含有するが芳香族環は含有しない脂環族トリアミン成分、および芳香族環も脂環族環も含有しない脂肪族トリアミン成分を包含する。トリアミン成分は、エーテル基および/またはチオエーテル基を含有してもよいし、かつ/または水素原子の1つ以上がハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)に置換されていてもよい。
【0117】
芳香族トリアミン成分としては、例えば、1,3,5-トリアミノベンゼン、1,2,4-トリアミノベンゼン、1,2,3-トリアミノベンゼン、2-メチル-1,3,5-ベンゼントリアミン、5-メチル-1,2,4-ベンゼントリアミン、6-メチル-1,2,4-ベンゼントリアミン、4-メチル-1,2,3-ベンゼントリアミン、5-メチル-1,2,3-ベンゼントリアミン、1,3,5-トリス(4-アミノフェニル)ベンゼン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0118】
脂環族トリアミン成分としては、例えば、1,3,5-シクロヘキサントリアミン、1,3,5-シクロヘキサントリイルトリメタンアミン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0119】
脂肪族トリアミン成分としては、例えば、2-(アミノメチル)-1,3-プロパンジアミン、3-(2-アミノエチル)-1,5-ペンタンジアミン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0120】
トリイミドトリカルボン酸系化合物のトリアミン成分は、トリイミドトリカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性の観点から、芳香族トリアミン成分および/または脂環族トリアミン成分を含むことが好ましく、より好ましくは芳香族トリアミン成分を含む。
トリイミドトリカルボン酸系化合物のトリアミン成分は、トリイミドトリカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性のさらなる向上の観点から、芳香族トリアミン成分および/または脂環族トリアミン成分のみを含むことが好ましく、より好ましくは芳香族トリアミン成分のみを含む。
【0121】
トリイミドトリカルボン酸系化合物のトリアミン成分は、トリイミドトリカルボン酸系化合物の溶解性および非着色性の観点から、上記のトリアミン成分のうち、脂環族トリアミン成分および/または脂肪族トリアミン成分を用いることが好ましい。
トリイミドトリカルボン酸系化合物のトリアミン成分は、トリイミドトリカルボン酸系化合物の溶解性および非着色性のさらなる向上の観点から、上記のトリアミン成分のうち、脂環族トリアミン成分および/または脂肪族トリアミン成分のみを用いることが好ましい。
【0122】
トリイミドトリカルボン酸系化合物のトリアミン成分は、汎用性の観点から、上記のトリアミン成分のうち、1,3,5-トリアミノベンゼン、1,2,4-トリアミノベンゼン、1,2,3-トリアミノベンゼン、2-メチル-1,3,5-ベンゼントリアミン、5-メチル-1,2,4-ベンゼントリアミン、6-メチル-1,2,4-ベンゼントリアミン、4-メチル-1,2,3-ベンゼントリアミン、5-メチル-1,2,3-ベンゼントリアミン、1,3,5-トリス(4-アミノフェニル)ベンゼンからなる群G12から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
トリイミドトリカルボン酸系化合物のトリアミン成分は、汎用性のさらなる向上の観点から、上記のトリアミン成分のうち、上記群G12から選択される1種以上の化合物のみを含むことが好ましい。
【0123】
(テトライミドテトラカルボン酸系化合物)
原料化合物として、無水トリカルボン酸成分とテトラアミン成分とを用い、官能基同士の反応を行うことにより、アミド酸系化合物を製造し、イミド化反応を進めることによりテトライミドテトラカルボン酸系化合物を製造することができる。ここで官能基同士の反応は、溶液中でも良いし、固相状態で反応を行っても良く、製造方法は特に限定されない。テトライミドテトラカルボン酸系化合物は、1分子中、4つのイミド基および4つのカルボキシ基を有する化合物である。
【0124】
無水トリカルボン酸成分とテトラアミン成分とを用いたテトライミドテトラカルボン酸系化合物は、1分子のテトラアミン成分に対して、4分子の無水トリカルボン酸成分が反応し、4つのイミド基が形成されてなる化合物である。
【0125】
無水トリカルボン酸成分とテトラアミン成分とを用いたテトライミドテトラカルボン酸系化合物の製造に際し、テトラアミン成分は、無水トリカルボン酸成分に対して通常は約0.25倍モル量、例えば0.05~0.6倍モル量、好ましくは0.1~0.5倍モル量、より好ましくは0.15~0.4倍モル量、さらに好ましくは0.20~0.3倍モル量で使用される。
【0126】
テトライミドテトラカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分は、ジイミドジカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分と同様の無水トリカルボン酸成分であり、詳しくはジイミドジカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分と同様の、芳香族無水トリカルボン酸成分、脂環族無水トリカルボン酸成分、および脂肪族無水トリカルボン酸成分を包含する。
【0127】
テトライミドテトラカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、テトライミドテトラカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性の観点から、芳香族無水トリカルボン酸成分および/または脂環族無水トリカルボン酸成分を含むことが好ましく、より好ましくは芳香族無水トリカルボン酸成分を含む。
テトライミドテトラカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、テトライミドテトラカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性のさらなる向上の観点から、芳香族無水トリカルボン酸成分および/または脂環族無水トリカルボン酸成分のみを含むことが好ましく、より好ましくは芳香族無水トリカルボン酸成分のみを含む。
【0128】
テトライミドテトラカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、汎用性の観点から、上記の無水トリカルボン酸成分のうち、無水トリメリット酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸無水物から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
テトライミドテトラカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、汎用性のさらなる向上の観点から、上記の無水トリカルボン酸成分のうち、無水トリメリット酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸無水物から選択される1種以上の化合物のみを含むことが好ましい。
【0129】
テトライミドテトラカルボン酸系化合物を構成し得るテトラアミン成分は、芳香族環を含有する芳香族テトラアミン成分、脂肪族環を含有するが芳香族環は含有しない脂環族テトラアミン成分、および芳香族環も脂環族環も含有しない脂肪族テトラアミン成分を包含する。テトラアミン成分は、エーテル基および/またはチオエーテル基を含有してもよいし、かつ/または水素原子の1つ以上がハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)に置換されていてもよい。
【0130】
芳香族テトラアミン成分としては、例えば、3,3’-ジアミノベンジジン、3,3’,4,4’-テトラアミノジフェニルスルフォン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0131】
脂環族テトラアミン成分としては、例えば、1,2,3,4-シクロペンタンテトラミン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0132】
脂肪族テトラアミン成分としては、例えば、ブタン-1,1,4,4-テトラアミン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0133】
テトライミドテトラカルボン酸系化合物のテトラアミン成分は、テトライミドテトラカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性の観点から、芳香族テトラアミン成分および/または脂環族テトラアミン成分を含むことが好ましく、より好ましくは芳香族テトラアミン成分を含む。
テトライミドテトラカルボン酸系化合物のテトラアミン成分は、テトライミドテトラカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性のさらなる向上の観点から、芳香族テトラアミン成分および/または脂環族テトラアミン成分のみを含むことが好ましく、より好ましくは芳香族テトラアミン成分のみを含む。
【0134】
テトライミドテトラカルボン酸系化合物のテトラアミン成分は、テトライミドテトラカルボン酸系化合物の溶解性および非着色性の観点から、上記のテトラアミン成分のうち、脂環族テトラアミン成分および/または脂肪族テトラアミン成分を用いることが好ましい。
テトライミドテトラカルボン酸系化合物のテトラアミン成分は、テトライミドテトラカルボン酸系化合物の溶解性および非着色性のさらなる向上の観点から、上記のテトラアミン成分のうち、脂環族テトラアミン成分および/または脂肪族テトラアミン成分のみを用いることが好ましい。
【0135】
テトライミドテトラカルボン酸系化合物のテトラアミン成分は、汎用性の観点から、上記のテトラアミン成分のうち、3,3’-ジアミノベンジジン、3,3’,4,4’-テトラアミノジフェニルスルフォンからなる群G13から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
テトライミドテトラカルボン酸系化合物のテトラアミン成分は、汎用性のさらなる向上の観点から、上記のテトラアミン成分のうち、上記群G13から選択される1種以上の化合物のみを含むことが好ましい。
【0136】
(アミド基含有ジイミドジカルボン酸系化合物)
前記したジイミドジカルボン酸系化合物の製造方法において、原料化合物として、無水トリカルボン酸成分とジアミン成分とを用いて、官能基同士の反応を行うことにより、ジイミドジカルボン酸系化合物を製造するに際し、ジアミン成分としてアミド基を含有するジアミン成分を用い、アミド酸系化合物を製造し、イミド化反応を進めることによりアミド基含有ジイミドジカルボン酸系化合物を製造することができる。ジイミドジカルボン酸系化合物がアミド基を含有することにより、例えば、これを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の溶解性や溶融時の流動性、耐熱性、機械的特性を向上させることができる。ここで官能基同士の反応は、溶液中でも良いし、固相状態で反応を行っても良く、製造方法は特に限定されない。アミド基含有ジイミドジカルボン酸系化合物は、1分子中、1つ以上のアミド基、2つのイミド基および2つのカルボキシル基を有する化合物である。
【0137】
無水トリカルボン酸成分とアミド基含有ジアミン成分とを用いたアミド基含有ジイミドジカルボン酸系化合物は、1分子のアミド基含有ジアミン成分に対して、2分子の無水トリカルボン酸成分が反応し、2つのイミド基が形成されてなる化合物である。
【0138】
無水トリカルボン酸成分とアミド基含有ジアミン成分とを用いたアミド基含有ジイミドジカルボン酸系化合物の製造に際し、アミド基含有ジアミン成分は、無水トリカルボン酸成分に対して通常は約0.5倍モル量、例えば0.1~0.7倍モル量、好ましくは0.3~0.7倍モル量、より好ましくは0.4~0.6倍モル量、さらに好ましくは0.45~0.55倍モル量で使用される。
【0139】
アミド基含有ジイミドジカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分は、ジイミドジカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分と同様の無水トリカルボン酸成分であり、詳しくはジイミドジカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分と同様の、芳香族無水トリカルボン酸成分、脂環族無水トリカルボン酸成分、および脂肪族無水トリカルボン酸成分を包含する。
【0140】
アミド基含有ジイミドジカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、アミド基含有ジイミドジカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性の観点から、芳香族無水トリカルボン酸成分および/または脂環族無水トリカルボン酸成分を含むことが好ましく、より好ましくは芳香族無水トリカルボン酸成分を含む。
アミド基含有ジイミドジカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、アミド基含有ジイミドジカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性のさらなる向上の観点から、芳香族無水トリカルボン酸成分および/または脂環族無水トリカルボン酸成分のみを含むことが好ましく、より好ましくは芳香族無水トリカルボン酸成分のみを含む。
【0141】
アミド基含有ジイミドジカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、アミド基含有ジイミドジカルボン酸系化合物の溶解性および非着色性の観点から、上記の無水トリカルボン酸成分のうち、脂環族無水トリカルボン酸成分および/または脂肪族無水トリカルボン酸成分を用いることが好ましい。
アミド基含有ジイミドジカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、アミド基含有ジイミドジカルボン酸系化合物)の溶解性および非着色性のさらなる向上の観点から、上記の無水トリカルボン酸成分のうち、脂環族無水トリカルボン酸成分および/または脂肪族無水トリカルボン酸成分のみを用いることが好ましい。
【0142】
アミド基含有ジイミドジカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、汎用性の観点から、上記の無水トリカルボン酸成分のうち、無水トリメリット酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸無水物からなる群G14から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
アミド基含有ジイミドジカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸成分は、汎用性のさらなる向上の観点から、上記の無水トリカルボン酸成分のうち、上記群G14から選択される1種以上の化合物のみを含むことが好ましい。
【0143】
アミド基含有ジイミドジカルボン酸系化合物を構成し得るアミド基含有ジアミン成分は、アミド基および芳香族環を含有するアミド基含有芳香族ジアミン成分、アミド基および脂肪族環を含有するが芳香族環は含有しないアミド基含有脂環族ジアミン成分、およびアミド基を含有するが、芳香族環も脂環族環も含有しないアミド基含有脂肪族ジアミン成分を包含する。アミド基含有ジアミン成分は、エーテル基および/またはチオエーテル基を含有してもよいし、かつ/または水素原子の1つ以上がハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)に置換されていてもよい。
【0144】
アミド基含有芳香族ジアミン成分としては、例えば、4,4’-ジアミノベンズアニリド等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0145】
アミド基含有脂環族ジアミン成分としては、例えば、4-アミノ-N-(4-アミノシクロヘキシル)シクロヘキサンカルボキサミド等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0146】
アミド基含有脂肪族ジアミン成分としては、例えば、4-アミノ-N-(2-アミノエチル)ブタンアミド、7-アミノ-N-(2-アミノエチル)ヘプタンアミド等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0147】
アミド基含有ジイミドジカルボン酸系化合物のアミド基含有ジアミン成分は、アミド基含有ジイミドジカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性の観点から、アミド基含有芳香族ジアミン成分および/またはアミド基含有脂環族ジアミン成分を含むことが好ましく、より好ましくはアミド基含有芳香族ジアミン成分を含む。
アミド基含有ジイミドジカルボン酸系化合物のアミド基含有ジアミン成分は、アミド基含有ジイミドジカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性のさらなる向上の観点から、アミド基含有芳香族ジアミン成分および/またはアミド基含有脂環族ジアミン成分のみを含むことが好ましく、より好ましくはアミド基含有芳香族ジアミン成分のみを含む。
【0148】
アミド基含有ジイミドジカルボン酸系化合物のアミド基含有ジアミン成分は、汎用性の観点から、上記のアミド基含有ジアミン成分のうち、4,4’-ジアミノベンズアニリドからなる群G15から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
アミド基含有ジイミドジカルボン酸系化合物のアミド基含有ジアミン成分は、汎用性のさらなる向上の観点から、上記のアミド基含有ジアミン成分のうち、上記群G15から選択される1種以上の化合物のみを含むことが好ましい。
【0149】
(アミド基含有モノイミドジカルボン酸系化合物)
原料化合物として、無水トリカルボン酸ハロゲン化物成分とモノアミノモノカルボン酸成分とを用い、官能基同士の反応を行うことにより、アミド酸系化合物を製造し、イミド化反応を進めることによりアミド基含有モノイミドジカルボン酸系化合物を製造することができる。モノイミドジカルボン酸系化合物がアミド基を含有することにより、例えば、これを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の溶解性や溶融時の流動性、耐熱性、機械的特性を向上させることができる。ここで官能基同士の反応は、溶液中でも良いし、固相状態で反応を行っても良く、製造方法は特に限定されない。アミド基含有モノイミドジカルボン酸系化合物は、1分子中、1つ以上のアミド基、1つのイミド基および2つのカルボキシル基を有する化合物である。
【0150】
無水トリカルボン酸ハロゲン化物成分とモノアミノモノカルボン酸成分とを用いたアミド基含有モノイミドジカルボン酸系化合物は、1分子の無水トリカルボン酸ハロゲン化物に対して、2分子のモノアミノモノカルボン酸成分が反応し、1つのイミド基と1つのアミド基が形成されてなる化合物である。
【0151】
無水トリカルボン酸ハロゲン化物成分とモノアミノモノカルボン酸成分とを用いたアミド基含有モノイミドジカルボン酸系化合物の製造に際し、モノアミノモノカルボン酸成分は、無水トリカルボン酸ハロゲン化物成分に対して通常は、約2倍モル量、例えば1.5~10.0倍モル量、好ましくは1.8~2.2倍モル量、より好ましくは1.9~2.1倍モル量、さらに好ましくは1.95~2.05倍モル量で使用される。
【0152】
アミド基含有モノイミドジカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸ハロゲン化物成分は、ジイミドジカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分と同様の無水トリカルボン成分の酸ハロゲン化物であり、詳しくはジイミドジカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分と同様の、芳香族無水トリカルボン酸成分、脂環族無水トリカルボン酸成分、および脂肪族無水トリカルボン酸成分の酸ハロゲン化物を包含する。
【0153】
アミド基含有モノイミドジカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸ハロゲン化物成分は、アミド基含有モノイミドジカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性の観点から、芳香族無水トリカルボン酸成分の酸ハロゲン化物および/または脂環族無水トリカルボン酸成分の酸ハロゲン化物を含むことが好ましく、より好ましくは芳香族無水トリカルボン酸成分の酸ハロゲン化物を含む。
アミド基含有モノイミドジカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸ハロゲン化物成分は、アミド基含有モノイミドジカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性のさらなる向上の観点から、芳香族無水トリカルボン酸成分の酸ハロゲン化物および/または脂環族無水トリカルボン酸成分の酸ハロゲン化物のみを含むことが好ましく、より好ましくは芳香族無水トリカルボン酸成分の酸ハロゲン化物のみを含む。
【0154】
アミド基含有モノイミドジカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸ハロゲン化物成分は、汎用性の観点から、上記の無水トリカルボン酸ハロゲン化物成分のうち、無水トリメリット酸クロライドからなる群G16から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
アミド基含有モノイミドジカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸ハロゲン化物成分は、汎用性のさらなる向上の観点から、上記の無水トリカルボン酸ハロゲン化物成分のうち、上記群G16から選択される1種以上の化合物のみを含むことが好ましい。
【0155】
アミド基含有モノイミドジカルボン酸系化合物を構成し得るモノアミノモノカルボン酸成分は、ジイミドジカルボン酸系化合物を構成し得るモノアミノモノカルボン酸成分と同様のモノアミノモノカルボン酸成分であり、詳しくはジイミドジカルボン酸系化合物のモノアミノモノカルボン酸成分と同様の、芳香族モノアミノモノカルボン酸成分、脂環族モノアミノモノカルボン酸成分、および脂肪族モノアミノモノカルボン酸成分を包含する。
【0156】
アミド基含有モノイミドジカルボン酸系化合物のモノアミノモノカルボン酸成分は、アミド基含有モノイミドジカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性の観点から、芳香族モノアミノモノカルボン酸成分および/または脂環族モノアミノモノカルボン酸成分を含むことが好ましく、より好ましくは芳香族モノアミノモノカルボン酸成分を含む。
アミド基含有モノイミドジカルボン酸系化合物のモノアミノモノカルボン酸成分は、アミド基含有モノイミドジカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性のさらなる向上の観点から、芳香族モノアミノモノカルボン酸成分および/または脂環族モノアミノモノカルボン酸成分のみを含むことが好ましく、より好ましくは芳香族モノアミノモノカルボン酸成分のみを含む。
【0157】
アミド基含有モノイミドジカルボン酸系化合物のモノアミノモノカルボン酸成分は、汎用性の観点から、上記のモノアミノモノカルボン酸成分のうち、グリシン、アラニン、バリン、ノルバリン、α-アミノ酪酸、γ-アミノ酪酸、β-アラニン、セリン、ロイシン、イソロイシン、トレオニン、プロリン、ヒドロキシプロリン、メチオニン、システイン、5-アミノペンタン酸、6-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、9-ノナノン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノラウリン酸、17-アミノヘプタデカノン酸、フェニルアラニン、トリプトファン、2-アミノ安息香酸、3-アミノ安息香酸、4-アミノ安息香酸、2-アミノ-3-メチル安息香酸、2-アミノ-4-メチル安息香酸、2-アミノ-5-メチル安息香酸、2-アミノ-6-メチル安息香酸、3-アミノ-2-メチル安息香酸、3-アミノ-4-メチル安息香酸、4-アミノ-2-メチル安息香酸、4-アミノ-3-メチル安息香酸、5-アミノ-2-メチル安息香酸、2-アミノ-3,4-ジメチル安息香酸、2-アミノ-4,5-ジメチル安息香酸、2-アミノ-4-メトキシ安息香酸、3-アミノ-4-メトキシ安息香酸、4-アミノ-2-メトキシ安息香酸、6-アミノ-2-ナフタレンカルボン酸、3-アミノ-2-ナフタレンカルボン酸からなる群G17から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
アミド基含有モノイミドジカルボン酸系化合物のモノアミノモノカルボン酸成分は、汎用性のさらなる向上の観点から、上記のモノアミノモノカルボン酸成分のうち、上記群G17から選択される1種以上の化合物のみを含むことが好ましい。
【0158】
(アミド基含有モノイミドテトラカルボン酸系化合物)
原料化合物として、無水トリカルボン酸ハロゲン化物成分とモノアミノジカルボン酸成分とを用い、官能基同士の反応を行うことにより、アミド酸系化合物を製造し、イミド化反応を進めることによりアミド基含有モノイミドテトラカルボン酸系化合物を製造することができる。モノイミドテトラカルボン酸系化合物がアミド基を含有することにより、例えば、これを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性、機械的特性を向上させることができる。ここで官能基同士の反応は、溶液中でも良いし、固相状態で反応を行っても良く、製造方法は特に限定されない。アミド基含有モノイミドテトラカルボン酸系化合物は、1分子中、1つ以上のアミド基、1つのイミド基および4つのカルボキシル基を有する化合物である。
【0159】
無水トリカルボン酸ハロゲン化物成分とモノアミノジカルボン酸成分とを用いたアミド基含有モノイミドテトラカルボン酸系化合物は、1分子の無水トリカルボン酸ハロゲン化物に対して、2分子のモノアミノジカルボン酸成分が反応し、1つのイミド基と1つのアミド基が形成されてなる化合物である。
【0160】
無水トリカルボン酸ハロゲン化物成分とモノアミノジカルボン酸成分とを用いたアミド基含有モノイミドテトラカルボン酸系化合物の製造に際し、モノアミノジカルボン酸成分は、無水トリカルボン酸ハロゲン化物成分に対して通常は、約2倍モル量、例えば1.5~10.0倍モル量、好ましくは1.8~2.2倍モル量、より好ましくは1.9~2.1倍モル量、さらに好ましくは1.95~2.05倍モル量で使用される。
【0161】
アミド基含有モノイミドテトラカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸ハロゲン化物成分は、ジイミドジカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分と同様の無水トリカルボン成分の酸ハロゲン化物であり、詳しくはジイミドジカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分と同様の、芳香族無水トリカルボン酸成分、脂環族無水トリカルボン酸成分、および脂肪族無水トリカルボン酸成分の酸ハロゲン化物を包含する。
【0162】
アミド基含有モノイミドテトラカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸ハロゲン化物成分は、アミド基含有モノイミドテトラカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性の観点から、芳香族無水トリカルボン酸成分の酸ハロゲン化物および/または脂環族無水トリカルボン酸成分の酸ハロゲン化物を含むことが好ましく、より好ましくは芳香族無水トリカルボン酸成分の酸ハロゲン化物を含む。
アミド基含有モノイミドテトラカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸ハロゲン化物成分は、アミド基含有モノイミドテトラカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性のさらなる向上の観点から、芳香族無水トリカルボン酸成分の酸ハロゲン化物および/または脂環族無水トリカルボン酸成分の酸ハロゲン化物のみを含むことが好ましく、より好ましくは芳香族無水トリカルボン酸成分の酸ハロゲン化物のみを含む。
【0163】
アミド基含有モノイミドテトラカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸ハロゲン化物成分は、汎用性の観点から、上記の無水トリカルボン酸ハロゲン化物成分のうち、無水トリメリット酸クロライドからなる群G18から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
アミド基含有モノイミドテトラカルボン酸系化合物の無水トリカルボン酸ハロゲン化物成分は、汎用性のさらなる向上の観点から、上記の無水トリカルボン酸ハロゲン化物成分のうち、上記群G18から選択される1種以上の化合物のみを含むことが好ましい。
【0164】
アミド基含有モノイミドテトラカルボン酸系化合物を構成し得るモノアミノジカルボン酸成分は、ジイミドテトラカルボン酸系化合物を構成し得るモノアミノジカルボン酸成分と同様のモノアミノジカルボン酸成分であり、詳しくはジイミドテトラカルボン酸系化合物を構成し得るモノアミノジカルボン酸成分と同様の、芳香族モノアミノジカルボン酸成分、脂環族モノアミノジカルボン酸成分、および脂肪族モノアミノジカルボン酸成分を包含する。
【0165】
アミド基含有モノイミドテトラカルボン酸系化合物のモノアミノジカルボン酸成分は、アミド基含有モノイミドテトラカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性の観点から、芳香族モノアミノジカルボン酸成分および/または脂環族モノアミノジカルボン酸成分を含むことが好ましく、より好ましくは芳香族モノアミノジカルボン酸成分を含む。
アミド基含有モノイミドテトラカルボン酸系化合物のモノアミノジカルボン酸成分は、アミド基含有モノイミドテトラカルボン酸系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性のさらなる向上の観点から、芳香族モノアミノジカルボン酸成分および/または脂環族モノアミノジカルボン酸成分のみを含むことが好ましく、より好ましくは芳香族モノアミノジカルボン酸成分のみを含む。
【0166】
アミド基含有モノイミドテトラカルボン酸系化合物のモノアミノジカルボン酸成分は、汎用性の観点から、上記のモノアミノジカルボン酸成分のうち、2-アミノテレフタル酸、2-アミノイソフタル酸、4-アミノイソフタル酸、5-アミノイソフタル酸、3-アミノフタル酸、4-アミノフタル酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、2-アミノピメリン酸、2-アミノスベリン酸、2-アミノアジピン酸、α-アミノセバシン酸、アミノマロン酸からなる群G19から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
アミド基含有モノイミドテトラカルボン酸系化合物のモノアミノジカルボン酸成分は、汎用性のさらなる向上の観点から、上記のモノアミノジカルボン酸成分のうち、上記群G19から選択される1種以上の化合物のみを含むことが好ましい。
【0167】
(ジイミドジヒドロキシ系化合物)
原料化合物として、テトラカルボン酸二無水物成分とモノヒドロキシモノアミン成分とを用い、官能基同士の反応を行うことにより、アミド酸系化合物を製造し、イミド化反応を進めることによりジイミドジヒドロキシ系化合物(例えば、ジイミドジフェノール系化合物およびジイミドジオール系化合物)を製造することができる。ここで官能基同士の反応は、溶液中でも良いし、固相状態で反応を行っても良く、製造方法は特に限定されない。ジイミドジヒドロキシ系化合物は、1分子中、2つのイミド基および2つのヒドロキシル基を有する化合物であり、好ましくは1分子中、2つのイミド基および2つのフェノール性のヒドロキシル基を有するジイミドジフェノール系化合物を包含する。
【0168】
テトラカルボン酸二無水物成分とモノヒドロキシモノアミン成分とを用いたジイミドジヒドロキシ系化合物は、1分子のテトラカルボン酸二無水物成分に対して、2分子のモノヒドロキシモノアミン成分が反応し、2つのイミド基が形成されてなる化合物である。
【0169】
テトラカルボン酸二無水物成分とモノヒドロキシモノアミン成分とを用いたジイミドジヒドロキシ系化合物(例えば、ジイミドジフェノール系化合物)の製造に際し、モノヒドロキシモノアミン成分は、テトラカルボン酸二無水物成分に対して通常は、約2倍モル量、例えば1.5~10.0倍モル量、好ましくは1.8~2.2倍モル量、好ましくは1.9~2.1倍モル量、より好ましくは1.95~2.05倍モル量で使用される。
【0170】
ジイミドジヒドロキシ系化合物を構成し得るテトラカルボン酸二無水物成分は、ジイミドジカルボン酸系化合物を構成し得るテトラカルボン酸二無水物成分と同様のテトラカルボン酸二無水物成分であり、詳しくはジイミドジカルボン酸系化合物を構成し得るテトラカルボン酸二無水物成分と同様の、芳香族テトラカルボン酸二無水物成分、脂環族テトラカルボン酸二無水物成分、および脂肪族テトラカルボン酸二無水物成分を包含する。
【0171】
ジイミドジヒドロキシ系化合物のテトラカルボン酸二無水物成分は、ジイミドジヒドロキシ系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性の観点から、芳香族テトラカルボン酸二無水物成分を含むことが好ましい。
ジイミドジヒドロキシ系化合物のテトラカルボン酸二無水物成分は、ジイミドジヒドロキシ系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性のさらなる向上の観点から、芳香族テトラカルボン酸二無水物成分のみを含むことが好ましい。
【0172】
ジイミドジヒドロキシ系化合物のテトラカルボン酸二無水物成分は、ジイミドジヒドロキシ系化合物の溶解性の観点から、上記のテトラカルボン酸二無水物成分のうち、エーテル基、チオエーテル基、スルホニル基、ケトン基、メチル基、メチレン基、イソプロピリデン基、フェニル基、フルオレン構造、またはハロゲン原子(またはハロゲン原子含有置換基)を有するテトラカルボン酸二無水物成分を用いることが好ましい。
ジイミドジヒドロキシ系化合物のテトラカルボン酸二無水物成分は、ジイミドジヒドロキシ系化合物の溶解性のさらなる向上の観点から、上記のテトラカルボン酸二無水物成分のうち、エーテル基、チオエーテル基、スルホニル基、ケトン基、メチル基、メチレン基、イソプロピリデン基、フェニル基、フルオレン構造、またはハロゲン原子(またはハロゲン原子含有置換基)を有するテトラカルボン酸二無水物成分のみを用いることが好ましい。
【0173】
ジイミドジヒドロキシ系化合物のテトラカルボン酸二無水物成分は、ジイミドジヒドロキシ系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性、誘電特性および非着色性の観点から、上記のテトラカルボン酸二無水物成分のうち、フッ素原子を含有する、芳香族テトラカルボン酸二無水物成分および/または脂環族テトラカルボン酸二無水物成分(特に芳香族テトラカルボン酸二無水物成分)を含むことが好ましい。
ジイミドジヒドロキシ系化合物のテトラカルボン酸二無水物成分は、ジイミドジヒドロキシ系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性、誘電特性および非着色性のさらなる向上の観点から、上記のテトラカルボン酸二無水物成分のうち、フッ素原子を含有する、芳香族テトラカルボン酸二無水物成分および/または脂環族テトラカルボン酸二無水物成分(特に芳香族テトラカルボン酸二無水物成分)のみを含むことが好ましい。
【0174】
ジイミドジヒドロキシ系化合物のテトラカルボン酸二無水物成分は、汎用性の観点から、上記のテトラカルボン酸二無水物成分のうち、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、4,4’-(4、4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物からなる群G20から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
ジイミドジヒドロキシ系化合物のテトラカルボン酸二無水物成分は、汎用性のさらなる向上の観点から、上記のテトラカルボン酸二無水物成分のうち、上記群G20から選択される1種以上の化合物のみを含むことが好ましい。
【0175】
ジイミドジヒドロキシ系化合物を構成し得るモノヒドロキシモノアミン成分は、芳香族環を含有する芳香族モノヒドロキシモノアミン成分、脂肪族環を含有するが芳香族環は含有しない脂環族モノヒドロキシモノアミン成分、および芳香族環も脂環族環も含有しない脂肪族モノヒドロキシモノアミン成分を包含する。モノヒドロキシモノアミン成分は、エーテル基および/またはチオエーテル基を含有してもよいし、かつ/または水素原子の1つ以上がハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)に置換されていてもよい。
【0176】
芳香族モノヒドロキシモノアミン成分としては、例えば、2-アミノフェノール、3-アミノフェノール、4-アミノフェノール、2-アミノ-4-メチルフェノール、2-アミノ-5-メチルフェノール、3-アミノ-2-メチルフェノール、3-アミノ-4-メチルフェノール、4-アミノ-2-メチルフェノール、5-アミノ-2-メチルフェノール、4-アミノ-2-メトキシフェノール、3-ヒドロキシ-4-メトキシアニリン、4-アミノ-3,5-キシレノール、2-アミノベンジルアルコール、3-アミノベンジルアルコール、4-アミノベンジルアルコール、2-(4-アミノフェニル)エタノール、2-アミノ-4-フェニルフェノール、4-アミノ-2,6-ジフェニルフェノール等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0177】
脂環族モノヒドロキシモノアミン成分としては、例えば、2-アミノシクロヘキサノール、4-アミノシクロヘキサノール等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0178】
脂肪族モノヒドロキシモノアミン成分としては、例えば、エタノールアミン、2-アミノ-1-プロパノール、3-アミノ-1-プロパノール、3-アミノ-2,2-ジメチル-1-プロパノール、2-アミノ-1-ブタノール、3-アミノ-1-ブタノール、4-アミノ-1-ブタノール、4-アミノ-2-メチル-1-ブタノール、5-アミノ-1-ペンタノール、6-アミノ-1-ヘキサノール、8-アミノ-1-オクタノール、10-アミノ-1-デカノール、12-アミノ-1-ドデカノール等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0179】
ジイミドジヒドロキシ系化合物のモノヒドロキシモノアミン成分は、ジイミドジヒドロキシ系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性の観点から、芳香族モノヒドロキシモノアミン成分および/または脂環族モノヒドロキシモノアミン成分を含むことが好ましく、より好ましくは芳香族モノヒドロキシモノアミン成分を含む。
ジイミドジヒドロキシ系化合物のモノヒドロキシモノアミン成分は、ジイミドジヒドロキシ系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性のさらなる向上の観点から、芳香族モノヒドロキシモノアミン成分および/または脂環族モノヒドロキシモノアミン成分のみを含むことが好ましく、より好ましくは芳香族モノヒドロキシモノアミン成分のみを含む。
【0180】
ジイミドジヒドロキシ系化合物のモノヒドロキシモノアミン成分は、ジイミドジヒドロキシ系化合物の溶解性および非着色性の観点から、上記のモノヒドロキシモノアミン成分のうち、脂環族モノヒドロキシモノアミン成分および/または脂肪族モノヒドロキシモノアミン成分を用いることが好ましい。
ジイミドジヒドロキシ系化合物のモノヒドロキシモノアミン成分は、ジイミドジヒドロキシ系化合物の溶解性および非着色性のさらなる向上の観点から、上記のモノヒドロキシモノアミン成分のうち、脂環族モノヒドロキシモノアミン成分および/または脂肪族モノヒドロキシモノアミン成分のみを用いることが好ましい。
【0181】
ジイミドジヒドロキシ系化合物のモノヒドロキシモノアミン成分は、汎用性の観点から、上記のモノヒドロキシモノアミン成分のうち、エタノールアミン、2-アミノ-1-プロパノール、3-アミノ-1-プロパノール、3-アミノ-2,2-ジメチル-1-プロパノール、2-アミノ-1-ブタノール、3-アミノ-1-ブタノール、4-アミノ-1-ブタノール、4-アミノ-2-メチル-1-ブタノール、5-アミノ-1-ペンタノール、6-アミノ-1-ヘキサノール、8-アミノ-1-オクタノール、10-アミノ-1-デカノール、12-アミノ-1-ドデカノール、2-アミノシクロヘキサノール、4-アミノシクロヘキサノール、2-アミノフェノール、3-アミノフェノール、4-アミノフェノール、2-アミノ-4-メチルフェノール、2-アミノ-5-メチルフェノール、3-アミノ-2-メチルフェノール、3-アミノ-4-メチルフェノール、4-アミノ-2-メチルフェノール、5-アミノ-2-メチルフェノール、4-アミノ-2-メトキシフェノール、3-ヒドロキシ-4-メトキシアニリン、4-アミノ-3,5-キシレノール、2-アミノベンジルアルコール、3-アミノベンジルアルコール、4-アミノベンジルアルコール、2-(4-アミノフェニル)エタノール、2-アミノ-4-フェニルフェノール、4-アミノ-2,6-ジフェニルフェノールからなる群G21から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
ジイミドジヒドロキシ系化合物のモノヒドロキシモノアミン成分は、汎用性のさらなる向上の観点から、上記のモノヒドロキシモノアミン成分のうち、上記群G21から選択される1種以上の化合物のみを含むことが好ましい。
【0182】
(ジイミドジカルボキシモノヒドロキシ系化合物)
原料化合物として、無水トリカルボン酸成分とモノヒドロキシジアミン成分とを用い、官能基同士の反応を行うことにより、アミド酸系化合物を製造し、イミド化反応を進めることによりジイミドジカルボキシモノヒドロキシ系化合物を製造することができる。ここで官能基同士の反応は、溶液中でも良いし、固相状態で反応を行っても良く、製造方法は特に限定されない。ジイミドジカルボキシモノヒドロキシ系化合物は、1分子中、2つのイミド基、2つのカルボキシ基および1つのヒドロキシル基を有する化合物である。
【0183】
無水トリカルボン酸成分とモノヒドロキシジアミン成分とを用いたジイミドジカルボキシモノヒドロキシ系化合物は、1分子のモノヒドロキシジアミン成分に対して、2分子の無水トリカルボン酸成分が反応し、2つのイミド基が形成されてなる化合物である。
【0184】
無水トリカルボン酸成分とモノヒドロキシジアミン成分とを用いたジイミドジカルボキシモノヒドロキシ系化合物の製造に際し、モノヒドロキシジアミン成分は、無水トリカルボン酸成分に対して通常は約0.5倍モル量、例えば0.1~0.7倍モル量、好ましくは0.3~0.7倍モル量、より好ましくは0.4~0.6倍モル量、さらに好ましくは0.45~0.55倍モル量で使用される。
【0185】
ジイミドジカルボキシモノヒドロキシ系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分は、ジイミドジカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分と同様の無水トリカルボン酸成分であり、詳しくはジイミドジカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分と同様の、芳香族無水トリカルボン酸成分、脂環族無水トリカルボン酸成分、および脂肪族無水トリカルボン酸成分を包含する。
【0186】
ジイミドジカルボキシモノヒドロキシ系化合物の無水トリカルボン酸成分は、ジイミドジカルボキシモノヒドロキシ系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性の観点から、芳香族無水トリカルボン酸成分および/または脂環族無水トリカルボン酸成分を含むことが好ましく、より好ましくは芳香族無水トリカルボン酸成分を含む。
ジイミドジカルボキシモノヒドロキシ系化合物の無水トリカルボン酸成分は、ジイミドジカルボキシモノヒドロキシ系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性のさらなる向上の観点から、芳香族無水トリカルボン酸成分および/または脂環族無水トリカルボン酸成分のみを含むことが好ましく、より好ましくは芳香族無水トリカルボン酸成分のみを含む。
【0187】
ジイミドジカルボキシモノヒドロキシ系化合物の無水トリカルボン酸成分は、汎用性の観点から、上記の無水トリカルボン酸成分のうち、無水トリメリット酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸無水物から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
ジイミドジカルボキシモノヒドロキシ系化合物の無水トリカルボン酸成分は、汎用性のさらなる向上の観点から、上記の無水トリカルボン酸成分のうち、無水トリメリット酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸無水物から選択される1種以上の化合物のみを含むことが好ましい。
【0188】
ジイミドジカルボキシモノヒドロキシ系化合物を構成し得るモノヒドロキシジアミン成分は、芳香族環を含有する芳香族モノヒドロキシジアミン成分、脂肪族環を含有するが芳香族環は含有しない脂環族モノヒドロキシジアミン成分、および芳香族環も脂環族環も含有しない脂肪族モノヒドロキシジアミン成分を包含する。モノヒドロキシジアミン成分は、エーテル基および/またはチオエーテル基を含有してもよいし、かつ/または水素原子の1つ以上がハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)に置換されていてもよい。
【0189】
芳香族モノヒドロキシジアミン成分としては、例えば、3,4-ジアミノフェノール、3,5-ジアミノフェノール、2,5-ジアミノフェノール等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0190】
脂環族モノヒドロキシジアミン成分としては、例えば、3,5-ジアミノシクロヘキサノール、3,4-ジアミノシクロヘキサノール、2,3-ジアミノシクロヘキサノール等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0191】
脂肪族モノヒドロキシジアミン成分としては、例えば、1,3-ジアミノ-1-プロパノール、1,3-ジアミノ-2-プロパノール等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0192】
ジイミドジカルボキシモノヒドロキシ系化合物のモノヒドロキシジアミン成分は、ジイミドジカルボキシモノヒドロキシ系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性の観点から、芳香族モノヒドロキシジアミン成分および/または脂環族モノヒドロキシジアミン成分を含むことが好ましく、より好ましくは芳香族モノヒドロキシジアミン成分を含む。
ジイミドジカルボキシモノヒドロキシ系化合物のモノヒドロキシジアミン成分は、ジイミドジカルボキシモノヒドロキシ系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性のさらなる向上の観点から、芳香族モノヒドロキシジアミン成分および/または脂環族モノヒドロキシジアミン成分のみを含むことが好ましく、より好ましくは芳香族モノヒドロキシジアミン成分のみを含む。
【0193】
ジイミドジカルボキシモノヒドロキシ系化合物のモノヒドロキシジアミン成分は、ジイミドジカルボキシモノヒドロキシ系化合物の溶解性および非着色性の観点から、上記のモノヒドロキシジアミン成分のうち、脂環族モノヒドロキシジアミン成分および/または脂肪族モノヒドロキシジアミン成分を用いることが好ましい。
ジイミドジカルボキシモノヒドロキシ系化合物のモノヒドロキシジアミン成分は、ジイミドジカルボキシモノヒドロキシ系化合物の溶解性および非着色性のさらなる向上の観点から、上記のモノヒドロキシジアミン成分のうち、脂環族モノヒドロキシジアミン成分および/または脂肪族モノヒドロキシジアミン成分のみを用いることが好ましい。
【0194】
ジイミドジカルボキシモノヒドロキシ系化合物のモノヒドロキシジアミン成分は、汎用性の観点から、上記のモノヒドロキシジアミン成分のうち、3,4-ジアミノフェノール、3,5-ジアミノフェノール、2,5-ジアミノフェノールからなる群G22から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
ジイミドジカルボキシモノヒドロキシ系化合物のモノヒドロキシジアミン成分は、汎用性のさらなる向上の観点から、上記のモノヒドロキシジアミン成分のうち、上記群G22から選択される1種以上の化合物のみを含むことが好ましい。
【0195】
(ジイミドジカルボキシジヒドロキシ系化合物)
原料化合物として、無水トリカルボン酸成分とジヒドロキシジアミン成分とを用い、官能基同士の反応を行うことにより、アミド酸系化合物を製造し、イミド化反応を進めることによりジイミドジカルボキシジヒドロキシ系化合物を製造することができる。ここで官能基同士の反応は、溶液中でも良いし、固相状態で反応を行っても良く、製造方法は特に限定されない。ジイミドジカルボキシジヒドロキシ系化合物は、1分子中、2つのイミド基および2つのカルボキシ基および2つのヒドロキシル基を有する化合物である。
【0196】
無水トリカルボン酸成分とジヒドロキシジアミン成分とを用いたジイミドジカルボキシジヒドロキシ系化合物は、1分子のジヒドロキシジアミン成分に対して、2分子の無水トリカルボン酸成分が反応し、2つのイミド基が形成されてなる化合物である。
【0197】
無水トリカルボン酸成分とジヒドロキシジアミン成分とを用いたジイミドジカルボキシジヒドロキシ系化合物の製造に際し、ジヒドロキシジアミン成分は、無水トリカルボン酸成分に対して通常は約0.5倍モル量、例えば0.1~0.7倍モル量、好ましくは0.3~0.7倍モル量、より好ましくは0.4~0.6倍モル量、さらに好ましくは0.45~0.55倍モル量で使用される。
【0198】
ジイミドジカルボキシジヒドロキシ系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分は、ジイミドジカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分と同様の無水トリカルボン酸成分であり、詳しくはジイミドジカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分と同様の、芳香族無水トリカルボン酸成分、脂環族無水トリカルボン酸成分、および脂肪族無水トリカルボン酸成分を包含する。
【0199】
ジイミドジカルボキシジヒドロキシ系化合物の無水トリカルボン酸成分は、ジイミドジカルボキシジヒドロキシ系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性の観点から、芳香族無水トリカルボン酸成分および/または脂環族無水トリカルボン酸成分を含むことが好ましく、より好ましくは芳香族無水トリカルボン酸成分を含む。
ジイミドジカルボキシジヒドロキシ系化合物の無水トリカルボン酸成分は、ジイミドジカルボキシジヒドロキシ系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性のさらなる向上の観点から、芳香族無水トリカルボン酸成分および/または脂環族無水トリカルボン酸成分のみを含むことが好ましく、より好ましくは芳香族無水トリカルボン酸成分のみを含む。
【0200】
ジイミドジカルボキシジヒドロキシ系化合物の無水トリカルボン酸成分は、汎用性の観点から、上記の無水トリカルボン酸成分のうち、無水トリメリット酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸無水物から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
ジイミドジカルボキシジヒドロキシ系化合物の無水トリカルボン酸成分は、汎用性のさらなる向上の観点から、上記の無水トリカルボン酸成分のうち、無水トリメリット酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸無水物から選択される1種以上の化合物のみを含むことが好ましい。
【0201】
ジイミドジカルボキシジヒドロキシ系化合物を構成し得るジヒドロキシジアミン成分は、芳香族環を含有する芳香族ジヒドロキシジアミン成分、脂肪族環を含有するが芳香族環は含有しない脂環族ジヒドロキシジアミン成分、および芳香族環も脂環族環も含有しない脂肪族ジヒドロキシジアミン成分を包含する。ジヒドロキシジアミン成分は、エーテル基および/またはチオエーテル基を含有してもよいし、かつ/または水素原子の1つ以上がハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)に置換されていてもよい。
【0202】
芳香族ジヒドロキシジアミン成分としては、例えば、4,6-ジアミノレゾルシン、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0203】
脂環族ジヒドロキシジアミン成分としては、例えば、4,5-ジアミノ-1,2-シクロヘキサンジオール等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0204】
ジイミドジカルボキシジヒドロキシ系化合物のジヒドロキシジアミン成分は、ジイミドジカルボキシジヒドロキシ系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性の観点から、芳香族ジヒドロキシジアミン成分および/または脂環族ジヒドロキシジアミン成分を含むことが好ましく、より好ましくは芳香族ジヒドロキシジアミン成分を含む。
ジイミドジカルボキシジヒドロキシ系化合物のジヒドロキシジアミン成分は、ジイミドジカルボキシジヒドロキシ系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性のさらなる向上の観点から、芳香族ジヒドロキシジアミン成分および/または脂環族ジヒドロキシジアミン成分のみを含むことが好ましく、より好ましくは芳香族ジヒドロキシジアミン成分のみを含む。
【0205】
ジイミドジカルボキシジヒドロキシ系化合物のジヒドロキシジアミン成分は、ジイミドジカルボキシジヒドロキシ系化合物の溶解性および非着色性の観点から、上記のジヒドロキシジアミン成分のうち、脂環族ジヒドロキシジアミン成分および/または脂肪族ジヒドロキシジアミン成分を用いることが好ましい。
ジイミドジカルボキシジヒドロキシ系化合物のジヒドロキシジアミン成分は、ジイミドジカルボキシジヒドロキシ系化合物の溶解性および非着色性のさらなる向上の観点から、上記のジヒドロキシジアミン成分のうち、脂環族ジヒドロキシジアミン成分および/または脂肪族ジヒドロキシジアミン成分のみを用いることが好ましい。
【0206】
ジイミドジカルボキシジヒドロキシ系化合物のジヒドロキシジアミン成分は、汎用性の観点から、上記のジヒドロキシジアミン成分のうち、4,6-ジアミノレゾルシン、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-ヘキサフルオロプロパンからなる群G23から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
ジイミドジカルボキシジヒドロキシ系化合物のジヒドロキシジアミン成分は、汎用性のさらなる向上の観点から、上記のジヒドロキシジアミン成分のうち、上記群G23から選択される1種以上の化合物のみを含むことが好ましい。
【0207】
(トリイミドトリカルボキシモノヒドロキシ系化合物)
原料化合物として、無水トリカルボン酸成分とモノヒドロキシトリアミン成分とを用い、官能基同士の反応を行うことにより、アミド酸系化合物を製造し、イミド化反応を進めることによりトリイミドトリカルボキシモノヒドロキシ系化合物を製造することができる。ここで官能基同士の反応は、溶液中でも良いし、固相状態で反応を行っても良く、製造方法は特に限定されない。トリイミドトリカルボキシモノヒドロキシ系化合物は、1分子中、3つのイミド基および3つのカルボキシ基および1つのヒドロキシル基を有する化合物である。
【0208】
無水トリカルボン酸成分とモノヒドロキシトリアミン成分とを用いたトリイミドトリカルボキシモノヒドロキシ系化合物は、1分子のモノヒドロキシトリアミン成分に対して、3分子の無水トリカルボン酸成分が反応し、3つのイミド基が形成されてなる化合物である。
【0209】
無水トリカルボン酸成分とモノヒドロキシトリアミン成分とを用いたトリイミドトリカルボキシモノヒドロキシ系化合物の製造に際し、モノヒドロキシトリアミン成分は、無水トリカルボン酸成分に対して通常は約0.33倍モル量、例えば0.1~0.7倍モル量、好ましくは0.2~0.6倍モル量、より好ましくは0.25~0.5倍モル量、さらに好ましくは0.3~0.4倍モル量で使用される。
【0210】
トリイミドトリカルボキシモノヒドロキシ系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分は、ジイミドジカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分と同様の無水トリカルボン酸成分であり、詳しくはジイミドジカルボン酸系化合物を構成し得る無水トリカルボン酸成分と同様の、芳香族無水トリカルボン酸成分、脂環族無水トリカルボン酸成分、および脂肪族無水トリカルボン酸成分を包含する。
【0211】
トリイミドトリカルボキシモノヒドロキシ系化合物の無水トリカルボン酸成分は、トリイミドトリカルボキシモノヒドロキシ系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性の観点から、芳香族無水トリカルボン酸成分および/または脂環族無水トリカルボン酸成分を含むことが好ましく、より好ましくは芳香族無水トリカルボン酸成分を含む。
トリイミドトリカルボキシモノヒドロキシ系化合物の無水トリカルボン酸成分は、トリイミドトリカルボキシモノヒドロキシ系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性のさらなる向上の観点から、芳香族無水トリカルボン酸成分および/または脂環族無水トリカルボン酸成分のみを含むことが好ましく、より好ましくは芳香族無水トリカルボン酸成分のみを含む。
【0212】
トリイミドトリカルボキシモノヒドロキシ系化合物の無水トリカルボン酸成分は、汎用性の観点から、上記の無水トリカルボン酸成分のうち、無水トリメリット酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸無水物から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
トリイミドトリカルボキシモノヒドロキシ系化合物の無水トリカルボン酸成分は、汎用性のさらなる向上の観点から、上記の無水トリカルボン酸成分のうち、無水トリメリット酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸無水物から選択される1種以上の化合物のみを含むことが好ましい。
【0213】
トリイミドトリカルボキシモノヒドロキシ系化合物を構成し得るモノヒドロキシトリアミン成分は、芳香族環を含有する芳香族モノヒドロキシトリアミン成分、脂肪族環を含有するが芳香族環は含有しない脂環族モノヒドロキシトリアミン成分、および芳香族環も脂環族環も含有しない脂肪族モノヒドロキシトリアミン成分を包含する。モノヒドロキシトリアミン成分は、エーテル基および/またはチオエーテル基を含有してもよいし、かつ/または水素原子の1つ以上がハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)に置換されていてもよい。
【0214】
芳香族モノヒドロキシトリアミン成分としては、例えば、2,4,6-トリアミノフェノール等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いることもできる。
【0215】
トリイミドトリカルボキシモノヒドロキシ系化合物のモノヒドロキシトリアミン成分は、トリイミドトリカルボキシモノヒドロキシ系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性の観点から、芳香族モノヒドロキシトリアミン成分および/または脂環族モノヒドロキシトリアミン成分を含むことが好ましく、より好ましくは芳香族モノヒドロキシトリアミン成分を含む。
トリイミドトリカルボキシモノヒドロキシ系化合物のモノヒドロキシトリアミン成分は、トリイミドトリカルボキシモノヒドロキシ系化合物およびこれを用いて得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性のさらなる向上の観点から、芳香族モノヒドロキシトリアミン成分および/または脂環族モノヒドロキシトリアミン成分のみを含むことが好ましく、より好ましくは芳香族モノヒドロキシトリアミン成分のみを含む。
【0216】
トリイミドトリカルボキシモノヒドロキシ系化合物のモノヒドロキシトリアミン成分は、トリイミドトリカルボキシモノヒドロキシ系化合物の溶解性および非着色性の観点から、上記のモノヒドロキシトリアミン成分のうち、脂環族モノヒドロキシトリアミン成分および/または脂肪族モノヒドロキシトリアミン成分を用いることが好ましい。
トリイミドトリカルボキシモノヒドロキシ系化合物のモノヒドロキシトリアミン成分は、トリイミドトリカルボキシモノヒドロキシ系化合物の溶解性および非着色性のさらなる向上の観点から、上記のモノヒドロキシトリアミン成分のうち、脂環族モノヒドロキシトリアミン成分および/または脂肪族モノヒドロキシトリアミン成分のみを用いることが好ましい。
【0217】
トリイミドトリカルボキシモノヒドロキシ系化合物のモノヒドロキシトリアミン成分は、汎用性の観点から、上記のモノヒドロキシトリアミン成分のうち、2,4,6-トリアミノフェノールからなる群G24から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
トリイミドトリカルボキシモノヒドロキシ系化合物のモノヒドロキシトリアミン成分は、汎用性のさらなる向上の観点から、上記のモノヒドロキシトリアミン成分のうち、上記群G24から選択される1種以上の化合物のみを含むことが好ましい。
【0218】
本発明のエポキシ樹脂溶液には、硬化剤として、イミド基含有硬化剤とは別の硬化剤を併用してもよい。別の硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトンラミンやテトラエチレンペンタミン、ジシアンジアミン、アジピン酸ジヒドラジドおよびポリアミドポリアミン等の脂肪族ポリアミン化合物;メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタンおよびビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン等の脂環族ポリアミン化合物;メタキシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンおよびメタフェニレンジアミン等の芳香族ポリアミン化合物;無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ドデシル無水コハク酸、無水クロレンディック酸等の1官能性酸無水物;無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメート)、メチルシクロヘキサンテトラカルボン酸無水物等の2官能性酸無水物;無水トリメリット酸、ポリアゼライン酸無水物等の遊離酸無水カルボン酸が挙げられる。別の硬化剤は単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0219】
(イミド基含有硬化剤の製造方法)
イミド基含有硬化剤は、溶媒中または無溶媒下で製造することができるが、製造方法は特に限定されない。
【0220】
溶媒中で製造する方法としては、例えば、N-メチル2-ピロリドンなどの非プロトン性溶媒に、所定の原料(例えば、酸無水物と、ジアミン、ジアミノモノカルボン酸、モノアミノジカルボン酸、モノアミノモノカルボン酸、トリアミン、テトラアミン、モノヒドロキシモノアミン、モノヒドロキシジアミン、ジヒドロキシジアミンまたはモノヒドロキシトリアミン)を入れて80℃で攪拌した後、イミド化して得る方法がある。
【0221】
イミド化の方法としては、特に限定されず、例えば窒素雰囲気下で250℃~300℃に加熱することによって行われる加熱イミド化法、カルボン酸無水物と3級アミンの混合物などの脱水環化試薬で処理することにより行われる化学的イミド化法であってもよい。
【0222】
無溶媒下で製造する方法としては、例えば、メカノケミカル効果を利用した方法が挙げられる。メカノケミカル効果を利用した方法とは、反応に用いる原料化合物を粉砕する際に生じる機械的エネルギーを利用することによりメカノケミカル効果を発現させることで有機化合物を得る方法である。
【0223】
メカノケミカル効果とは、反応環境下において固体状態にある原料化合物に機械的エネルギー(圧縮力、せん断力、衝撃力、摩砕力等)を付与することにより、当該原料化合物を粉砕し、形成される粉砕界面を活性化させる効果(または現象)のことである。これにより、官能基同士の反応が起こる。官能基同士の反応は通常、2つ以上の原料化合物分子間で起こる。例えば、官能基同士の反応は化学構造の異なる2つの原料化合物分子間で起こってもよいし、または化学構造の同じ2つの原料化合物分子間で起こってもよい。官能基同士の反応は限定的な1組の2つの原料化合物分子間のみで起こるわけではなく、通常は他の組の2つの原料化合物分子間でも起こる。官能基同士の反応により生成した化合物分子と、原料化合物分子との間で、新たに官能基同士の反応が起こってもよい。官能基同士の反応は通常、化学反応であり、これにより、2つの原料化合物分子間で、各原料化合物分子が有する官能基により、結合基(特に共有結合)が形成されて、別の1つの化合物分子が生成する。
【0224】
反応環境とは反応のために原料化合物が置かれる環境、すなわち機械的エネルギーが付与される環境という意味であり、例えば、装置内の環境であってもよい。反応環境下において固体状態にあるとは、機械的エネルギーが付与される環境下(例えば、装置内の温度および圧力下)において固体状態にあるという意味である。反応環境下において固体状態にある原料化合物は通常、常温(25℃)および常圧(101.325kPa)下で固体状態であればよい。反応環境下において固体状態にある原料化合物は、機械的エネルギーの付与の開始時において、固体状態にあればよい。本発明は、反応環境下において固体状態にある原料化合物が、機械的エネルギーの付与の継続に伴う温度および/または圧力等の上昇により、反応中(または処理中)に液体状態(例えば、溶融状態)に変化することを妨げるものではないが、反応率の向上の観点から、反応中(または処理中)、継続的に固体状態にあることが好ましい。
【0225】
メカノケミカル効果の詳細は明らかではないが、以下の原理に従うものと考えられる。1種以上の固体状態の原料化合物に機械的エネルギーを付与して粉砕が起こると、当該機械的エネルギーの吸収により粉砕界面が活性化される。このような粉砕界面の表面活性エネルギーにより、2つの原料化合物分子間で化学反応が起こるものと考えられる。粉砕とは、原料化合物粒子への機械的エネルギーの付与により、当該粒子が当該機械的エネルギーを吸収して、当該粒子に亀裂が生じ、表面が更新されることをいう。表面が更新されるとは、新たな表面として粉砕界面が形成されることである。メカノケミカル効果において、表面の更新により形成される新たな表面の状態は、粉砕による粉砕界面の活性化が起こる限り、特に限定されず、乾燥状態にあってもよいし、または湿潤状態にあってもよい。表面の更新による新たな表面の湿潤状態は、固体状態の原料化合物とは別の液体状態にある原料化合物に起因する。
【0226】
機械的エネルギーは、反応環境下において固体状態にある1種以上の原料化合物を含む原料混合物に対して付与される。原料混合物の状態は、機械的エネルギーの付与により、固体状態の原料化合物の粉砕が起こる限り、特に限定されない。例えば、原料混合物に含まれる全ての原料化合物が固体状態にあることに起因して、原料混合物は乾燥状態にあってもよい。また例えば、原料混合物に含まれる少なくとも1種の原料化合物が固体状態であり、かつ残りの原料化合物が液体状態であることに起因して、原料混合物は湿潤状態であってもよい。具体的には、例えば、原料混合物が1種のみの原料化合物を含む場合、当該1種の原料化合物は固体状態である。また例えば、原料混合物が2種の原料化合物を含む場合、当該2種の原料化合物はともに固体状態であってもよいし、または一方の原料化合物が固体状態にあり、かつ他方の原料化合物が液体状態にあってもよい。
【0227】
メカノケミカル効果を利用した方法において、官能基は、分子構造の中で反応性の原因となり得る1価の基(原子団)のことであり、炭素間二重結合、炭素間三重結合等の不飽和結合基(例えばラジカル重合性基)を除く概念で用いるものとする。官能基は、炭素原子およびヘテロ原子を含有する基である。ヘテロ原子は、酸素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群、特に酸素原子および窒素原子からなる群から選択される1つ以上の原子である。官能基は水素原子をさらに含有してもよい。反応に供される官能基は通常、2つの官能基であり、一方の官能基を有する原料化合物分子と、他方の官能基を有する原料化合物分子とは、構造が相互に異なっていてもよいし、または同一であってもよい。反応により、2つの原料化合物分子の結合(特に共有結合)が形成され、それらの1分子化が達成される。官能基同士の反応により、水、二酸化炭素、および/またはアルコール等の小分子が副生してもよいし、または副生しなくてもよい。
【0228】
官能基同士の反応は、化学反応し得るあらゆる官能基(特に1価の官能基)同士の反応であってもよく、例えば、カルボキシル基およびそのハロゲン化物(基)、酸無水物基、アミノ基、イソシアネート基、ならびにヒドロキシル基等からなる群から選択される2つの官能基の反応である。当該2つの官能基は、化学反応が起こる限り、特に限定されず、例えば、化学構造の異なる2つの官能基であってもよいし、または化学構造の同じ2つの官能基であってもよい。
【0229】
官能基同士の反応として、例えば、縮合反応、付加反応またはこれらの複合反応等が挙げられる。
【0230】
縮合反応とは、原料化合物分子間で、水、二酸化炭素、アルコール等の小分子の脱離を伴いながら、原料化合物分子間の結合または連結が達成される反応のことである。縮合反応として、例えば、アミド基が生成する反応(アミド化反応)、イミド基が生成する反応(イミド化反応)、またはエステル基が生成する反応(エステル化反応)等が挙げられる。
【0231】
付加反応は、官能基間での付加反応であり、原料化合物分子間で、小分子の脱離を伴うことなく、原料化合物分子間の結合または連結が達成される反応のことである。付加反応として、例えば、ウレア基が生成する反応、ウレタン基が生成する反応、および環状構造が開環する反応(すなわち、開環反応)等が挙げられる。開環反応は、環状構造を有する原料化合物(例えば、酸無水物基含有化合物、環状アミド化合物、環状エステル化合物、エポキシ化合物)において、環状構造の一部が開裂し、その開裂した部位と他の原料化合物の官能基との結合または連結が達成される反応のことである。開環反応により、例えば、アミド基、カルボキシル基、エステル基、エーテル基が生成する。特に、原料化合物としての酸無水物基含有化合物における酸無水物基の開環反応においては、当該酸無水物基が開環されて、別の原料化合物分子(アミノ基またはヒドロキシル基)との結合または連結が達成される。その結果として、例えば、アミド基またはエステル基と、カルボキシル基とが同時に生成する。
【0232】
官能基同士の反応は、より詳しくは、例えば、以下の反応からなる群から選択される1種以上の反応であってもよい:
(A)酸無水物基と、アミノ基との反応により、(a1)アミド基およびカルボキシル基、(a2)イミド基、(a3)イソイミド基または(a4)これらの混合基が生成する反応;
(B)酸無水物基と、イソシアネート基との反応によりイミド基が生成する反応;
(C)カルボキシル基またはそのハロゲン化物(基)と、アミノ基またはイソシアネート基との反応により、アミド基が生成する反応;
(D)カルボキシル基またはそのハロゲン化物(基)と、ヒドロキシル基との反応により、エステル基が生成する反応;
(E)イソシアネート基と、アミノ基との反応により、ウレア基が生成する反応;
(F)イソシアネート基と、ヒドロキシル基との反応により、ウレタン基が生成する反応;および
(G)酸無水物基と、ヒドロキシル基との反応により、エステル基およびカルボキシル基が生成する反応。
【0233】
無溶媒下で製造する方法においては、メカノケミカル効果を利用した方法を実施した後、溶媒中で製造する方法におけるイミド化の方法と同様の方法により、イミド化を行ってもよい。
【0234】
[エポキシ樹脂]
本発明で用いられるエポキシ樹脂は1分子中、2個以上のエポキシ基を有する有機化合物である限り特に限定されない。エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、アクリル酸変性エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、リン変性エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂は単独でもよいし、2種類以上を併用してもよい。エポキシ基はグリシジル基であってもよい。
【0235】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は通常、100~3000であり、好ましくは150~300である。
【0236】
[有機溶媒]
本発明のエポキシ樹脂溶液に用いる有機溶媒は、硬化剤およびエポキシ樹脂が均一に溶解できれば特に限定されず、環境への影響の観点から非ハロゲン化溶媒が好ましい。このような非ハロゲン化溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド化合物が挙げられる。これらの非ハロゲン化溶媒はいずれも汎用溶媒として有用である。前記有機溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0237】
[添加剤]
本発明のエポキシ樹脂溶液は、硬化促進剤を含んでもよい。硬化促進剤は特に限定されないが、例えば、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール当のイミダゾール類;4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミン類;トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等の有機ホスフィン類が挙げられる。硬化促進剤は単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0238】
硬化促進剤の配合量は特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂溶液全量に対して、0.01~2質量%であり、エポキシ樹脂硬化物の耐熱性および誘電特性のさらなる向上の観点から、好ましくは0.01~1質量%であり、より好ましくは0.05~0.5質量%である。
【0239】
本発明のエポキシ樹脂溶液は、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、マレイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂をさらに含有してもよい。
【0240】
本発明のエポキシ樹脂溶液は無機充填材をさらに含有してもよい。無機充填材としては、シリカ、ガラス、アルミナ、タルク、マイカ、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、窒化珪素、窒化ホウ素等が挙げられる。無機充填材は単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。また、無機充填材はエポキシシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤等の表面処理剤で表面処理されたものが好ましい。
【0241】
本発明のエポキシ樹脂溶液は、その特性を損なわない範囲で、酸化防止剤を含有してもよい。酸化防止剤として、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤が挙げられる。
【0242】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤として、1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,1,3-トリ(4-ヒドロキシ-2-メチル-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,1-ビス(3-t-ブチル-6-メチル-4-ヒドロキシフェニル)ブタン、3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-ベンゼンプロパノイック酸、ペンタエリトリチルテトラキス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-5-メチル-ベンゼンプロパノイック酸、3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-[(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニロキシ]エチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)ベンゼン等が挙げられる。
【0243】
リン系酸化防止剤として、3,9-ビス(p-ノニルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジフォスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(オクタデシロキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジフォスファスピロ[5.5]ウンデカン、トリ(モノノニルフェニル)フォスファイト、トリフェノキシフォスフィン、イソデシルフォスファイト、イソデシルフェニルフォスファイト、ジフェニル2-エチルヘキシルフォスファイト、ジノニルフェニルビス(ノニルフェニル)エステルフォスフォラス酸、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ジトリデシルフォスファイト-5-t-ブチルフェニル)ブタン、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト、ペンタエリスリトールビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニルフォスファイト)、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)2-エチルヘキシルフォスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト等が挙げられる。
【0244】
チオエーテル系酸化防止剤として4,4’-チオビス[2-t-ブチル-5-メチルフェノール]ビス[3-(ドデシルチオ)プロピオネート]、チオビス[2-(1,1-ジメチルエチル)-5-メチル-4,1-フェニレン]ビス[3-(テトラデシルチオ)-プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス(3-n-ドデシルチオプロピオネート)、ビス(トリデシル)チオジプロピオネートが挙げられる。
酸化防止剤は単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0245】
本発明のエポキシ樹脂組成物には難燃剤を含有してもよい。環境への影響の観点から非ハロゲン系難燃剤が好ましい。難燃剤としてはリン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤等が挙げられる。難燃剤は単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0246】
<エポキシ樹脂溶液の製造方法>
本発明のエポキシ樹脂溶液の製造方法は、特に限定されず、例えば、個別溶解法、一括溶解法等であってもよい。短時間で均一な樹脂溶液を得る観点から個別溶解法が好ましい。個別溶解法は、予めイミド基含有硬化剤とエポキシ樹脂をそれぞれ有機溶媒に混合および溶解した後、それらを混合する方法である。一括溶解法とは、イミド基含有硬化剤およびエポキシ樹脂を同時に有機溶媒に混合し、溶解する方法である。個別溶解法および一括溶解法において、混合温度は特に限定されず、例えば80~180℃、特に100~160℃であってよい。上記混合温度を達成するための加熱は、例えば、有機溶媒の還流加熱であってもよい。
【0247】
本発明のエポキシ樹脂溶液において、イミド基含有硬化剤の配合量は、得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性および誘電特性のさらなる向上の観点から、イミド基含有硬化剤の官能基当量がエポキシ樹脂のエポキシ当量に対して、好ましくは0.5~1.5当量比、より好ましくは0.7~1.3当量比となるような量であることが好ましい。イミド基含有硬化剤の官能基当量は、ヒドロキシ基およびまたはカルボキシル基の含有量から算出される当量に相当する。
【0248】
本発明のエポキシ樹脂溶液において、イミド基含有硬化剤およびエポキシ樹脂の合計配合量は特に限定されず、得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性および誘電特性のさらなる向上の観点から、エポキシ樹脂溶液全量に対して、好ましくは30~90質量%であり、より好ましくは40~80質量%であり、さらに好ましくは50~70質量%である。
【0249】
本発明のエポキシ樹脂溶液は通常、10~70Pa・s、特に40~60Pa・sの粘度を有しており、いわゆるゲル形態を有するものではない。ゲルは粘度を有するものではなく、一般的に流動性を有さない固形物の状態のことである。本発明のエポキシ樹脂溶液は、詳しくは、さらなる溶媒と混合されると、相互に容易に相溶し、全体として分子レベルで均一に混合される。しかし、ゲルは、さらなる溶媒と混合されても、相互に相溶せずに塊状で残留し、全体として分子レベルで均一には混合されない。相溶の判定の際の混合は通常、溶液またはゲルを100gと、さらなる溶媒100gとの、常温(25℃)、常圧(101.325kPa)および100rpmの撹拌条件下での混合であってもよい。このとき「さらなる溶媒」は、溶液またはゲルに含まれる溶媒と相溶する溶媒であり、例えば、溶液またはゲルに含まれる溶媒と同じ構造式で表される溶媒である。エポキシ樹脂溶液の粘度は、ブルックフィールドデジタル粘度計により測定された30℃での粘度である。
【0250】
本発明のエポキシ樹脂溶液においては、エポキシ樹脂が無意に反応し難いために、上記のように比較的低い粘度を有し得る。このため、本発明のエポキシ樹脂溶液を用いて、十分な作業性で硬化物を製造することができる。詳しくは、本発明のエポキシ樹脂溶液は通常、10%以下の反応率を有している。反応率は、エポキシ樹脂が有するグリシジル基の全数に対する、エポキシ樹脂溶液中で反応したグリシジル基の数の割合である。
【0251】
<エポキシ樹脂溶液の使用>
本発明のエポキシ樹脂溶液を基材に塗布し乾燥した後、被膜を形成し、基材から剥離することにより、フィルムを得ることができる。
【0252】
基材としては、例えば、PETフィルム、ポリイミドフィルム、ガラス板、ステンレス板、アルミ板が挙げられる。塗布方法としては、例えば、ワイヤーバーコーター塗り法、フィルムアプリケーター塗り法、はけ塗り法、スプレー塗り法、グラビアロールコーティング法、スクリーン印刷法、リバースロールコーティング法、リップコーティング法、エアナイフコーティング法、カーテンフローコーティング法、浸漬コーティング法が挙げられる。
【0253】
本発明のエポキシ樹脂溶液は、強化繊維クロスに含浸または塗布させた後、乾燥することにより、プリプレグを得ることができる。
【0254】
強化繊維クロスを構成する強化繊維としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、有機系繊維、セラミック系繊維が挙げられる。これらの強化繊維は、織布、不織布等いかなる形態のものも用いることができる。また、フィブリドを用いてこれらの繊維を短繊維の状態で混合抄紙した合成紙を用いてもよい。中でも、加工性に優れることから、ガラス繊維、炭素繊維が好ましい。強化繊維クロスの厚みは、5~50μmとすることが好ましく、10~45μmとすることがより好ましく、15~40μmとすることがさらに好ましい。
【0255】
強化繊維クロスにエポキシ樹脂溶液を含浸する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。含浸方法としては、例えば市販または自作の連続含浸装置を用いる方法、エポキシ樹脂溶液に強化繊維を浸漬する方法、離型紙、ガラス板、ステンレス板等の板上に強化繊維をひろげ、エポキシ樹脂溶液を塗工する方法が挙げられる。プリプレグは、前記塗工後、塗工したエポキシ樹脂溶液から有機溶媒を蒸発乾燥させることで得られる。
【0256】
強化繊維クロスにエポキシ樹脂溶液を塗工する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。前記塗工方法としては、例えば市販の塗工機を用いて塗工が可能である。両面塗工を行う場合は、片面塗工を行った後、一旦乾燥し再び反対面に塗工する方法、片面塗工を行った後、乾燥を経ないで反対面に塗工する方法、同時に両面に塗工する方法が挙げられる。それら塗工方法は、作業性、得られるプリプレグの性能を加味して適宜選択することができる。プリプレグは、前記塗工後、塗工したエポキシ樹脂溶液から有機溶媒を蒸発乾燥させることで得られる。
【0257】
プリプレグの厚みは、用いる強化繊維クロスの厚みによって異なるが、10~150μmであることが好ましく、20~140μmであることがより好ましく、30~130μmであることがさらに好ましい。なお、プリプレグは強化繊維クロスにエポキシ樹脂溶液を含浸または塗工後、乾燥することで得られるが、用いる強化繊維クロスの厚みの概ね3倍の厚みとなるように、プリプレグを得ることで耐熱性、誘電特性、機械特性、接着性さらに外観に優れたプリプレグとすることができる。
【0258】
本発明のプリプレグは硬化のための加熱処理等することなくそのままで用いることができる。また、プリプレグに含有されるイミド基含有硬化剤はそのガラス転移温度以上に加熱すると溶融し流動性を示すので、プリプレグをそのまま、あるいは何枚か積層し、加熱プレスすることにより、緻密化して、積層体とすることができる。前記積層体は、プリプレグ同士の接着性に優れるため、機械的強度が十分に向上し、耐熱性および誘電特性にも優れている。また、前記積層体は高強度の板状成形体として用いることができる。さらに、この板状成形体は所望の形状に成形することもできる。成形性に関しては、用いる強化繊維クロスの材質、プリプレグ含有の固形分量によっても異なるが、所定金型に応じた賦型加工が可能である。機械特性を大きく損なわない範囲において、打ち抜き等を行ってもよい。なお、賦型加工、打ち抜きは冷間加工も可能であるが、必要に応じて加温下加工を行うこともできる。
【0259】
本発明のエポキシ樹脂溶液を用いて得られた被膜、フィルムならびにプリプレグおよびその積層体を加熱することにより、イミド基含有硬化剤とエポキシ樹脂とを反応させ、硬化を完全に達成することができる。加熱温度(硬化温度)は通常、80~350℃であり、好ましくは130~300℃である。加熱時間(硬化時間)は通常、1分~20時間であり、好ましくは5分~10時間である。
【0260】
本発明のエポキシ樹脂溶液により、より十分に優れた耐熱性および誘電特性を有する硬化物を得ることができる。得られた硬化物は、プリント配線板(特にプリント配線板用絶縁材料)、ブッシング変圧器用のモールド材、固体絶縁スイッチギア用のモールド材、原子力発電所用電気ペネトレーション、半導体封止材、ビルドアップ積層板等の電気・電子部品、炭素繊維強化プラスチック、ガラス繊維強化プラスチックなどの軽量高強度材料として好適に用いることができる。
【実施例
【0261】
以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、評価および測定は以下の方法により行った。
【0262】
A.評価および測定
[イミド基含有硬化剤の作製方法と評価方法]
(1)イミド基含有硬化剤の作製方法
酸成分とアミン成分を表に記載の比率で混合した試料150gを、ワンダークラッシャー(大阪ケミカル株式会社)WC-3Cにより、およそ9000rpmの回転速度で1分間混合粉砕することを3回繰り返すことで、メカノケミカル処理を行った。
処理した試料をガラス容器に移し、イナートオーブン(ヤマト科学株式会社)DN411Iにて、窒素雰囲気下で焼成温度300℃、焼成時間2時間のイミド化反応を行った。
なお、イミド基含有硬化剤の同定は、後述のように、分子量が目的とする構造の分子量と同じであること、および赤外分光法においてイミド基に由来する吸収があることにより行った。
【0263】
(2)イミド基含有硬化剤の分子量
高速液体クロマトグラフ質量分析計(LC/MS)により、以下の条件で測定し、分子量を求めた。
試料:イミド基含有硬化剤/DMSO溶液(200μg/mL)
装置:ブルカー・ダルトニクス製microTOF2-kp
カラム:Cadenza CD-C18 3μm 2mm×150mm
移動相:(移動相A)0.1% ギ酸水溶液、(移動相B)メタノール
グラジエント(B Conc.):0min(50%)-5,7min(60%)-14.2min(60%)-17min(100%)-21.6min(100%)-27.2min(50%)-34min(50%)
イオン化法:ESI
検出条件:Negativeモード
【0264】
(3)反応の確認
赤外分光法(IR)により、以下の条件で測定し、同定を行った。
【0265】
赤外分光法(IR)
装置:Perkin Elmer製 System 2000 赤外分光装置
方法:KBr法
積算回数:64スキャン(分解能4cm-1
1778cm-1付近および1714cm-1付近の吸収の有無を確認した。
○:(反応が進行した)ある場合
×:(反応が進行していない)ない場合
【0266】
[エポキシ樹脂硬化物の評価方法]
(1)反応性
各実施例により得られたエポキシ樹脂硬化物について下記の条件により透過赤外吸収スペクトル(IR)測定を行い、グリシジル基の吸光度比を求めた。
グリシジル基に由来する吸収は、通常、900~950cm-1の波数領域に検出される。これらの波数に検出される吸収ピークの両サイドの基底部を直線的に結んだ線をベースラインとし、ピークの頂点からベースラインに対し垂直に線を引いた時の交点からピークの頂点までの長さを吸光度とし、算出した。
【0267】
赤外分光法(IR)
装置:Perkin Elmer製 System 2000 赤外分光装置
方法:KBr法
積算回数:64スキャン(分解能4cm-1
【0268】
次に、グリシジル基の反応率の算出法の詳細について述べる
まず、各実施例により得られたエポキシ樹脂溶液をKBr粉末と混合することによりIR測定用試料を作製し測定を行った。得られたスペクトル中で最も高い吸光度を示すピークの強度が吸光度0.8~1.0の範囲に入ることを確認し、グリシジル基の吸光度αを求めた。次に、この試料をオーブンにて窒素気流下300℃の温度で2時間熱処理して、硬化反応を完全に進行させた。この、硬化させた試料について同じ方法によりIR測定を行い、グリシジル基に起因する波数の吸光度α´を求めた。このとき試料の反応率を硬化反応前のグリシジル基の反応率を0%として、次式より求めた。
反応率(%)={1-(α´/α)}×100
◎:90%以上100%以下(最良);
〇:80%以上90%未満(良);
△:70%以上80%未満(実用上問題なし);
×:70%未満(実用上問題あり)。
【0269】
(2)ガラス転移温度(Tg)
示差走査熱量測定装置(DSC)により、以下の条件で測定し、同定を行った。
【0270】
装置:Perkin Elmer製 DSC 7
昇温速度:20℃/min
25℃から300℃まで昇温し、降温後、再度25℃から300℃まで昇温し、得られた昇温曲線中の転移温度に由来する不連続変化の開始温度をガラス転移温度(Tg)とした。
【0271】
・エポキシ樹脂として「jER828:三菱化学社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂」を用いた場合
◎:160℃≦Tg(最良);
〇:150℃≦Tg<160℃(良);
△:140℃≦Tg<150℃(実用上問題なし);
×:Tg<140℃(実用上問題あり)。
【0272】
・エポキシ樹脂として「EOCN-1020-55:日本化薬社製、o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂」を用いた場合
◎:170℃≦Tg(最良);
〇:160℃≦Tg<170℃(良);
△:150℃≦Tg<160℃(実用上問題なし);
×:Tg<150℃(実用上問題あり)。
【0273】
(3)誘電特性(誘電率、誘電正接)
インピーダンス・アナライザにより、以下の条件で測定し、評価を行った。
【0274】
インピーダンス・アナライザ
装置:アジレント・テクノロジー株式会社製E4991A RFインピーダンス/マテリアル・アナライザ
試料寸法:長さ20mm×幅20mm×厚み150μm
周波数:1GHz
測定温度:23℃
試験環境:23℃±1℃、50%RH±5%RH
【0275】
・エポキシ樹脂として「jER828:三菱化学社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂」を用いた場合
◎:誘電率≦2.8(最良);
〇:2.8<誘電率≦3.2(良);
△:3.2<誘電率≦3.3(実用上問題なし);
×:3.3<誘電率(実用上問題あり)。
◎:誘電正接≦0.0175(最良);
〇:0.0175<誘電正接≦0.020(良);
△:0.020<誘電正接≦0.030(実用上問題なし);
×:0.035<誘電正接(実用上問題あり)。
【0276】
・エポキシ樹脂として「EOCN-1020-55:日本化薬社製、o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂」を用いた場合
◎:誘電率≦3.0(最良);
〇:3.0<誘電率≦3.3(良);
△:3.3<誘電率≦3.4(実用上問題なし);
×:3.4<誘電率(実用上問題あり)。
◎:誘電正接≦0.0195(最良);
〇:0.0195<誘電正接≦0.030(良);
△:0.030<誘電正接≦0.042(実用上問題なし);
×:0.042<誘電正接(実用上問題あり)。
【0277】
[エポキシ樹脂溶液の評価方法]
(1)エポキシ樹脂溶液の粘度
各実施例により得られたエポキシ樹脂溶液について、ブルックフィールドデジタル粘度計(東機産業TVB-15M)を用いて30℃での粘度(Pa・s)を測定した。
【0278】
(2)エポキシ樹脂溶液に含まれるイミド基含有硬化剤の溶解性
各実施例により得られたエポキシ樹脂溶液中の溶け残り成分(残存物)の有無を目視により観察した。
〇(溶解性有り):溶け残り無し;10分間以内に完全に溶解した。
△(溶解性有り):溶け残り無し;10分間超で完全に溶解した(溶解までに時間を要する)。
×(溶解性無し):溶け残り有り。
【0279】
B.原料
(1)イミド基含有硬化剤
[ジイミドジカルボン酸の作製]
合成例A-1
前記した「イミド基含有硬化剤の作製方法」に基づいてジイミドジカルボン酸を作製した。詳しくは、以下の通りである。
粉砕槽に、粒状の無水トリメリット酸669質量部とp-フェニレンジアミン331質量部を添加し、混合粉砕を行った。
その後、前記混合物をガラス容器に移し、イナートオーブンにより、窒素雰囲気下で300℃、2時間のイミド化反応を行い、イミド基含有硬化剤を作製した。
【0280】
合成例A-2~A-16
ジアミン組成を変更する以外は、合成例A-1と同様の操作をおこなって、イミド基含有硬化剤を得た。
【0281】
合成例B-1
前記した「イミド基含有硬化剤の作製方法」に基づいてジイミドジカルボン酸を作製した。詳しくは、以下の通りである。
粉砕槽に、粒状のピロメリット酸無水物444質量部と4-アミノ安息香酸556質量部を添加し、混合粉砕を行った。
その後、前記混合物をガラス容器に移し、イナートオーブンにより、窒素雰囲気下で300℃、2時間のイミド化反応を行い、イミド基含有硬化剤を作製した。
【0282】
合成例B-2~B-6
酸二無水物組成を変更する以外は、合成例B-1と同様の操作をおこなって、イミド基含有硬化剤を得た。
【0283】
[ジイミドトリカルボン酸の作製]
合成例C-1
前記した「イミド基含有硬化剤の作製方法」に基づいてジイミドトリカルボン酸を作製した。詳しくは、以下の通りである。
粉砕槽に、粒状の無水トリメリット酸716質量部と3,4-ジアミノ安息香酸284質量部を添加し、混合粉砕を行った。
その後、前記混合物をガラス容器に移し、イナートオーブンにより、窒素雰囲気下で300℃、2時間のイミド化反応を行い、イミド基含有硬化剤を作製した。
【0284】
合成例C-2~C-4
ジアミン組成を変更する以外は、合成例C-1と同様の操作をおこなって、イミド基含有硬化剤を得た。
【0285】
[ジイミドテトラカルボン酸の作製]
合成例D-1
前記した「イミド基含有硬化剤の作製方法」に基づいてジイミドテトラカルボン酸を作製した。詳しくは、以下の通りである。
粉砕槽に、粒状のピロメリット酸無水物377質量部と2-アミノテレフタル酸623質量部を添加し、混合粉砕を行った。
その後、前記混合物をガラス容器に移し、イナートオーブンにより、窒素雰囲気下で300℃、2時間のイミド化反応を行い、イミド基含有硬化剤を作製した。
【0286】
合成例D-2~D-28
酸二無水物組成およびモノアミン組成を変更する以外は、合成例D-1と同様の操作をおこなって、イミド基含有硬化剤を得た。
【0287】
[モノイミドジカルボン酸の作製]
合成例E-1
前記した「イミド基含有硬化剤の作製方法」に基づいてモノイミドジカルボン酸を作製した。詳しくは、以下の通りである。
粉砕槽に、粒状の無水トリメリット酸584質量部と2-アミノ安息香酸416質量部を添加し、混合粉砕を行った。
その後、前記混合物をガラス容器に移し、イナートオーブンにより、窒素雰囲気下で300℃、2時間のイミド化反応を行い、イミド基含有硬化剤を作製した。
【0288】
合成例E-2~E-17
モノアミン組成を変更する以外は、合成例E-1と同様の操作をおこなって、イミド基含有硬化剤を得た。
【0289】
[モノイミドトリカルボン酸の作製]
合成例F-1
前記した「イミド基含有硬化剤の作製方法」に基づいてモノイミドトリカルボン酸を作製した。詳しくは、以下の通りである。
粉砕槽に、粒状の無水トリメリット酸515質量部と2-アミノテレフタル酸485質量部を添加し、混合粉砕を行った。
その後、前記混合物をガラス容器に移し、イナートオーブンにより、窒素雰囲気下で300℃、2時間のイミド化反応を行い、イミド基含有硬化剤を作製した。
【0290】
合成例F-2~F-4
モノアミン組成を変更する以外は、合成例F-1と同様の操作をおこなって、イミド基含有硬化剤を得た。
【0291】
[トリイミドトリカルボン酸の作製]
合成例G-1
前記した「イミド基含有硬化剤の作製方法」に基づいてトリイミドトリカルボン酸を作製した。詳しくは、以下の通りである。
粉砕槽に、粒状の無水トリメリット酸824質量部と1,3,5-トリアミノベンゼン176質量部を添加し、混合粉砕を行った。
その後、前記混合物をガラス容器に移し、イナートオーブンにより、窒素雰囲気下で300℃、2時間のイミド化反応を行い、イミド基含有硬化剤を作製した。
【0292】
合成例G-2~G-9
トリアミン組成を変更する以外は、合成例G-1と同様の操作をおこなって、イミド基含有硬化剤を得た。
【0293】
[テトライミドテトラカルボン酸の作製]
合成例H-1
前記した「イミド基含有硬化剤の作製方法」に基づいてテトライミドテトラカルボン酸を作製した。詳しくは、以下の通りである。
粉砕槽に、粒状の無水トリメリット酸782質量部と3,3’-ジアミノベンジジン218質量部を添加し、混合粉砕を行った。
その後、前記混合物をガラス容器に移し、イナートオーブンにより、窒素雰囲気下で300℃、2時間のイミド化反応を行い、イミド基含有硬化剤を作製した。
【0294】
合成例H-2
テトラアミン組成を変更する以外は、合成例H-1と同様の操作をおこなって、イミド基含有硬化剤を得た。
【0295】
[アミド基含有ジイミドジカルボン酸の作製]
合成例I-1
前記した「イミド基含有硬化剤の作製方法」に基づいてアミド基含有ジイミドジカルボン酸を作製した。詳しくは、以下の通りである。
粉砕槽に、粒状の無水トリメリット酸628質量部と4,4’-ジアミノベンズアニリド372質量部を添加し、混合粉砕を行った。
その後、前記混合物をガラス容器に移し、イナートオーブンにより、窒素雰囲気下で300℃、2時間のイミド化反応を行い、イミド基含有硬化剤を作製した。
【0296】
[アミド基含有モノイミドジカルボン酸の作製]
合成例J-1
前記した「イミド基含有硬化剤の作製方法」に基づいてアミド基含有モノイミドジカルボン酸を作製した。詳しくは、以下の通りである。
粉砕槽に、粒状の無水トリメリット酸クロライド435質量部と2-アミノ安息香酸565質量部を添加し、混合粉砕を行った。
その後、前記混合物をガラス容器に移し、イナートオーブンにより、窒素雰囲気下で300℃、2時間のイミド化反応を行い、イミド基含有硬化剤を作製した。
【0297】
合成例J-2~J-3
アミノカルボン酸組成を変更する以外は、合成例J-1と同様の操作をおこなって、イミド基含有硬化剤を得た。
【0298】
[アミド基含有モノイミドテトラカルボン酸の作製]
合成例K-1
前記した「イミド基含有硬化剤の作製方法」に基づいてアミド基含有モノイミドテトラカルボン酸を作製した。詳しくは、以下の通りである。
粉砕槽に、粒状の無水トリメリット酸クロライド368質量部と2-アミノテレフタル酸632質量部を添加し、混合粉砕を行った。
その後、前記混合物をガラス容器に移し、イナートオーブンにより、窒素雰囲気下で300℃、2時間のイミド化反応を行い、イミド基含有硬化剤を作製した。
【0299】
合成例K-2
アミノカルボン酸組成を変更する以外は、合成例K-1と同様の操作をおこなって、イミド基含有硬化剤を得た。
【0300】
[ジイミドジカルボキシモノヒドロキシ系化合物の製造]
合成例L-1
前記した「イミド基含有硬化剤の作製方法」に基づいてジイミドジカルボキシモノヒドロキシ系化合物を作製した。詳しくは、以下の通りである。
粉砕槽に、粒状の無水トリメリット酸755質量部と3,4-ジアミノフェノール245質量部を添加し、混合粉砕を行った。
その後、前記混合物をガラス容器に移し、イナートオーブンにより、窒素雰囲気下で300℃、2時間のイミド化反応を行い、イミド基含有硬化剤を作製した。
【0301】
合成例L-2~L-3
モノヒドロキシジアミン組成を変更する以外は、合成例L-1と同様の操作をおこなって、イミド基含有硬化剤を得た。
【0302】
[ジイミドジカルボキシジヒドロキシ系化合物の製造]
合成例M-1
前記した「イミド基含有硬化剤の作製方法」に基づいてジイミドジカルボキシジヒドロキシ系化合物を作製した。詳しくは、以下の通りである。
粉砕槽に、粒状の無水トリメリット酸780質量部と4,6-ジアミノレゾルシン220質量部を添加し、混合粉砕を行った。
その後、前記混合物をガラス容器に移し、イナートオーブンにより、窒素雰囲気下で300℃、2時間のイミド化反応を行い、イミド基含有硬化剤を作製した。
【0303】
合成例M-2~M-3
ジヒドロキシジアミン組成を変更する以外は、合成例M-1と同様の操作をおこなって、イミド基含有硬化剤を得た。
【0304】
[トリイミドトリカルボキシモノヒドロキシ系化合物]
合成例N-1
前記した「イミド基含有硬化剤の作製方法」に基づいてトリイミドトリカルボキシモノヒドロキシ系化合物を作製した。詳しくは、以下の通りである。)
粉砕槽に、粒状の無水トリメリット酸806質量部と2,4,6-トリアミノフェノール194質量部を添加し、混合粉砕を行った。
その後、前記混合物をガラス容器に移し、イナートオーブンにより、窒素雰囲気下で300℃、2時間のイミド化反応を行い、イミド基含有硬化剤を作製した。
【0305】
(2)エポキシ樹脂
・jER828:三菱化学社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量184~194g/eq
・EOCN-1020-55:日本化薬社製、o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量195g/eq
【0306】
(3)イミド系硬化剤以外の硬化剤
・PHENOLITE TD-2131:DIC社製、ノボラック型フェノール樹脂、イミド基を含まない硬化剤;当該硬化剤は以下の構造式を有する。
【化5】
【0307】
・HN-2000:日立化成社製、脂環式酸無水物、イミド基を含まない硬化剤;当該硬化剤は以下の構造式を有する。
【化6】
【0308】
・HN-5500:日立化成社製、脂環式酸無水物、イミド基を含まない硬化剤;当該硬化剤は以下の構造式を有する。
【化7】
【0309】
・EH-3636AS:ADEKA製、ジシアンジアミド、イミド基を含まない硬化剤;当該硬化剤は以下の構造式を有する。
【化8】
【0310】
実施例A-1
合成例A-1で得られたイミド基含有硬化剤とエポキシ樹脂(jER828)を1.0/1.1(当量比)の割合で混合した試料60質量部に対して、硬化促進剤(2-エチル-4メチルイミダゾール、東京化成工業社製)0.2質量部と、ジメチルホルムアミド(DMF)39.8質量部とを混合し、150℃で0.5時間の還流加熱を行い、エポキシ樹脂溶液を得た)。
本実施例で得られたエポキシ樹脂溶液は50Pa・sの粘度を有しており、十分に良好な作業性を有していた。
【0311】
得られたエポキシ樹脂溶液をアルミ基材に300μmの厚みで塗工し、作製した塗膜をイナートオーブンにて、窒素雰囲気下、180℃で2時間、続いて200℃で2時間乾燥して、脱溶媒および硬化反応を行った。得られたアルミ基材付き試料からアルミ基材を除去し、エポキシ樹脂硬化物を得た。
【0312】
実施例A-2~N-1および比較例1~4(実施例B-1~N-1:参考例)
表に記載の組成に変更する以外は実施例A-1と同様の操作を行って、エポキシ樹脂溶液およびエポキシ樹脂硬化物を作製した。なお、各実施例において使用されるイミド基含有硬化剤は、当該実施例番号と同じ番号の合成例で得られたものである。

【0313】
実施例A-2~N-1で得られたエポキシ樹脂溶液に含まれるエポキシ樹脂におけるグリシジル基の反応率はいずれも10%以下であった。
実施例A-2~N-1で得られたエポキシ樹脂溶液の粘度はいずれも30~70Pa・sであり、十分に良好な作業性を有していた。
【0314】
各実施例または比較例における硬化剤の特性値ならびに得られたエポキシ樹脂溶液およびエポキシ樹脂硬化物の特性値を表1~表15に示す。
【0315】
【表1】
【0316】
【表2】
【0317】
【表3】
【0318】
【表4】
【0319】
【表5】
【0320】
【表6】
【0321】
【表7】
【0322】
【表8】
【0323】
【表9】
【0324】
【表10】
【0325】
【表11】
【0326】
【表12】
【0327】
【表13】
【0328】
【表14】
【0329】
【表15】
【0330】
実施例A-1~N-1の樹脂溶液は、本発明の要件を満たしていたため、ガラス転移温度、誘電率および誘電正接の全ての物性に十分に優れていた。
【0331】
これらの実施例の中でも、特に、無水トリカルボン酸成分として芳香族無水トリカルボン酸成分(特に芳香族無水トリカルボン酸成分のみ)を含み、かつジアミン成分として芳香族ジアミン成分(特に芳香族ジアミン成分のみ)を含むジイミドジカルボン酸系化合物に関する全ての実施例、およびテトラカルボン酸二無水物成分として芳香族テトラカルボン酸二無水物成分(特に芳香族テトラカルボン酸二無水物成分のみ)を含み、かつモノアミノモノカルボン酸成分として芳香族モノアミノモノカルボン酸成分(特に芳香族モノアミノモノカルボン酸成分のみ)を含むジイミドジカルボン酸系化合物に関する全ての実施例において、Tgおよび誘電特性の全ての評価結果は◎を達成している。
【0332】
比較例1~4の樹脂溶液は、イミド基を含有しない硬化剤を用いたため、ガラス転移温度、誘電率および誘電正接のうちの少なくとも1つの物性に劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0333】
本発明のエポキシ樹脂溶液により、より十分に優れた耐熱性および誘電特性を有する硬化物を、より十分に優れた作業性で得ることができる。このため、本発明のエポキシ樹脂溶液は、プリント配線板(特にプリント配線板用絶縁材料)、半導体封止材、ビルドアップ積層板等の電気・電子部品、炭素繊維強化プラスチック、ガラス繊維強化プラスチックなどの軽量高強度材料の分野で有用である。