(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】フィルタープレス型の透析装置、及びスタック
(51)【国際特許分類】
C02F 1/469 20230101AFI20240604BHJP
B01D 61/50 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
C02F1/469
B01D61/50
(21)【出願番号】P 2020055690
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2022-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】503361709
【氏名又は名称】株式会社アストム
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(72)【発明者】
【氏名】井上 浩彰
(72)【発明者】
【氏名】梅本 英治
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-209865(JP,A)
【文献】特開2016-221507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/44、46-48
B01D61/00-71/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換膜とガスケットとが交互に積層された積層物の積層方向の両側に一対の締付枠が配置されたスタックを備えた透析槽と、前記透析槽を固定プレス盤と移動プレス盤とで前記積層物の積層方向に締め付けるプレス機と、を備えたフィルタープレス型の透析装置であって、
前記スタックは、前記積層物の積層方向に直交する方向に前記イオン交換膜と前記ガスケットとがずれることを防止するずれ防止部材を備え
、
前記ずれ防止部材は、前記積層物の積層方向と直交する方向の側面又は底面の少なくともいずれかにおいて、前記積層物の積層方向にわたって当接されて、前記積層物が、前記積層物の積層方向と直交する方向にずれることを防止するか、又は前記積層物の積層方向と直交する方向の側面及び底面の少なくともいずれかにおいて、前記ずれ防止部材と前記積層物とが、微小な隙間をもって対向するように形成され、前記微小な隙間は、前記積層物を構成するイオン交換膜及びガスケットがずれても、前記イオン交換膜と前記ガスケットによって形成される処理液の流路が維持されて前記透析装置の稼働が許容される範囲に収まる寸法に設定されたものであるフィルタープレス型の透析装置。
【請求項2】
前記ずれ防止部材は、前記積層物の積層方向と直交する方向の側面に、前記積層物の積層方向にわたって当接され、前記積層物が横方向にずれることを防止する請求項1に記載のフィルタープレス型の透析装置。
【請求項3】
前記ずれ防止部材は、前記積層物の積層方向と直交する方向の底面に、前記積層物の積層方向にわたって当接され、前記積層物が縦方向にずれることを防止する請求項1に記載のフィルタープレス型の透析装置。
【請求項4】
前記ずれ防止部材は、前記積層物の積層方向と直交する方向の側面及び底面に、前記積層物の積層方向にわたって各当接され、前記積層物が横方向及び縦方向にずれることを防止する請求項1に記載のフィルタープレス型の透析装置。
【請求項5】
前記ずれ防止部材は、積層物の積層方向に伸縮自在なスライダ機構を備えてなる請求項1から4のいずれかに記載のフィルタープレス型の透析装置。
【請求項6】
前記ずれ防止部材における前記積層物の底面と対向する部位に排水構造を備える請求項3から5のいずれかに記載のフィルタープレス型の透析装置。
【請求項7】
前記ずれ防止部材は、前記一対の締付枠によって支持される請求項1から6のいずれかに記載のフィルタープレス型の透析装置。
【請求項8】
前記ずれ防止部材は、前記一対の締付枠を繋ぐボルトによって支持される請求項1から6のいずれかに記載のフィルタープレス型の透析装置。
【請求項9】
前記ずれ防止部材は、前記締付枠に形成された凹部、又は凸部によって支持される請求項1から6のいずれかに記載のフィルタープレス型の透析装置。
【請求項10】
前記凸部は、前記締付枠に導入される処理液の液管である請求項9に記載のフィルタープレス型の透析装置。
【請求項11】
前記ずれ防止部材
は、前記積層物に対して平面で対向し、積層物の積層方向に直交する方向に前記イオン交換膜と前記ガスケットとがずれようとする場合、又はずれた場合に、前記平面が、前記イオン交換膜、前記ガスケットの少なくともいずれかと当接して、前記ずれを防止する機能を発揮するものである請求項1から10のいずれかに記載のフィルタープレス型の透析装置。
【請求項12】
前記透析槽は、陽極と陰極との間に前記スタックが設けられた構造を備える電気透析槽である請求項1から11のいずれかに記載のフィルタープレス型の透析装置。
【請求項13】
固定プレス盤と移動プレス盤とで透析槽を締め付けるプレス機を備えたフィルタープレス型の透析装置に適用されるスタックであって、
前記スタックは、イオン交換膜とガスケットとが交互に積層された積層物の積層方向の両側に一対の締付枠が配置され、
前記積層物の積層方向に直交する方向に前記イオン交換膜と前記ガスケットとがずれることを防止するずれ防止部材を備え
、
前記ずれ防止部材は、前記積層物の積層方向と直交する方向の側面又は底面の少なくともいずれかにおいて、前記積層物の積層方向にわたって当接されて、前記積層物が、前記積層物の積層方向と直交する方向にずれることを防止するか、又は前記積層物の積層方向と直交する方向の側面及び底面の少なくともいずれかにおいて、前記ずれ防止部材と前記積層物とが、微小な隙間をもって対向するように形成され、前記微小な隙間は、前記積層物を構成するイオン交換膜及びガスケットがずれても、前記イオン交換膜と前記ガスケットによって形成される処理液の流路が維持されて前記透析装置の稼働が許容される範囲に収まる寸法に設定されたものであるスタック。
【請求項14】
前記ずれ防止部材は、前記積層物の積層方向と直交する方向の側面に、前記積層物の積層方向にわたって当接され、前記積層物が横方向にずれることを防止する請求項13に記載のスタック。
【請求項15】
前記ずれ防止部材は、前記積層物の積層方向と直交する方向の底面に、前記積層物の積層方向にわたって当接され、前記積層物が縦方向にずれることを防止する請求項13に記載のスタック。
【請求項16】
前記ずれ防止部材は、前記積層物の積層方向と直交する方向の側面及び底面に、前記積層物の積層方向にわたって各当接され、前記積層物が横方向及び縦方向にずれることを防止する請求項13に記載のスタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタープレス型の透析装置、及びフィルタープレス型の透析装置に適用されるスタックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、イオン交換膜とガスケットとが交互に積層された積層物の積層方向の両側に一対の締付枠が配置されたスタックを備えた透析槽と、前記透析槽を固定プレス盤と移動プレス盤とで挟み移動プレス盤側から押圧して前記積層方向に締め付ける押圧部材を有するプレス機と、を備えたフィルタープレス型の透析装置が知られている。
【0003】
フィルタープレス型の透析装置としては、例えば、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とをガスケットを間に介在させながら交互に配列して脱塩室及び濃縮室を構成したスタックを一対の電極間に配設した電気透析槽を備え、脱塩室に食塩を含む被処理液を供給して、前記一対の電極に直流電流を通すことにより、該被処理液から塩分を除去して処理液(脱塩液及び濃縮液)を生成する電気透析装置が知られている(例えば、特許文献1、2を参照。)。
【0004】
また、フィルタープレス型の透析装置の他の例としては、例えば、酸の回収を目的とするものであって、陰イオン交換膜とガスケットとを交互に配列して被処理液(酸廃液)を供給する室と水を供給する室とを構成して複数積層したスタックを有する透析槽を備え、酸廃液に含まれる有効酸を濃度差によって陰イオン交換膜を透過させて水側に拡散移動させて前記有効酸を回収する拡散透析装置が知られている(例えば、特許文献3を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-14776号公報
【文献】特開2016-209865号公報
【文献】特開2016-221507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した特許文献1~3に記載された透析装置においては、透析槽を、押圧部材を有するプレス機の固定プレス盤と移動プレス盤とで挟み、移動プレス盤側から前記押圧部材によって押圧し、イオン交換膜とガスケットとを含むスタックを積層方向に締め付けて所定の適正締付圧力として押圧部材を固定して、イオン交換膜とガスケットとを密着させている。ここで、スタックを構成するガスケットは、ゴム、又は樹脂によって構成されており、季節的な変化による設置場所の温度変化の影響、流通させる液温の熱的影響、日光による紫外線の影響、流通させる液体の薬液による影響等、様々な要因によって、その寸法が厚み方向(前記積層方向)において変化する。
【0007】
特に電気透析装置の運転中においては、被処理液の電気抵抗を下げ、イオン交換膜の発熱によって過剰に温度が上がりすぎないようにすべく、例えば、被処理液の温度が30℃程度になるように温度調整が行われており、スタック全体に膨張しようとする力が働き、イオン交換膜、及びガスケットからなる積層物の面圧が上昇する。この面圧の上昇は、透析装置の運転中に限らず、停止中であっても、例えば夏場において設置場所が高温雰囲気になった場合にも生じ得る。このような積層物を含むスタックにおける面圧の過度な上昇は、イオン交換膜とガスケットとを、両者の積層方向と直交する方向にずれを生じさせるおそれがあり、該ずれが生じた場合は、イオン交換膜とガスケットとの積層方向に形成された被処理液、又は脱塩後の処理液を流すための流路の変形を生じさせる。このようなずれが一旦発生してしまうと、被処理液、及び処理液を流す際に稼働するポンプの送液圧力の影響を受けて、そのずれがより一層拡大するという問題がある。
【0008】
さらに、透析装置を停止して、透析槽から被処理液、及び処理液を抜いた状態で、設置場所の温度が低下するような環境で放置した場合(冬季の休業期間等)は、透析装置全体が冷えてガスケットが収縮する。この結果、予めプレス機によって前記透析槽を所定の適正締付圧力で締め付けて固定していたとしても、スタックを構成するイオン交換膜、ガスケットに掛かる締付圧力が低下し、積層されているイオン交換膜やガスケットが下方に落ちたり、横方向にずれてはみ出したりする。このようにイオン交換膜やガスケットがずれてしまうと、イオン交換膜とガスケットとによって積層方向に形成された流路が変形し、被処理液、処理液が適正に流れなくなり、該流路を被処理液等が流れる流路抵抗が上昇して、ポンプ動力に負担が掛かり、最終的には、透析装置としての機能を十分に発揮できない状態となる。そして、上記したようなイオン交換膜とガスケットのずれが生じた場合は、そのまま運転を実施することができず、締付枠の分解を含む再度のイオン交換膜とガスケットの組み立てを実施する必要が生じ、透析装置の生産性を大きく低下させるという問題が発生する。
【0009】
上記したスタックを構成するイオン交換膜及びガスケットのずれは、季節的な変化による設置場所の温度変化の影響、流通させる液温の熱的影響、日光による紫外線の影響、流通させる液体の薬液による影響等の様々な要因に加え、イオン交換膜とガスケットを組み立てる際の組み立て精度の影響も受けると考えられ、このようなずれの発生の有無を予見することは容易でない。
【0010】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、スタックを構成する積層物の積層方向に直交する方向にイオン交換膜とガスケットとがずれることを防止することができるフィルタープレス型の透析装置、及び該フィルタープレス型の透析装置を構成するスタックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、イオン交換膜とガスケットとが交互に積層された積層物の積層方向の両側に一対の締付枠が配置されたスタックを備えた透析槽と、前記透析槽を固定プレス盤と移動プレス盤とで前記積層物の積層方向に締め付
けるプレス機と、を備えたフィルタープレス型の透析装置であって、前記スタックは、前記積層物の積層方向に直交する方向に前記イオン交換膜と前記ガスケットとがずれることを防止するずれ防止部材を備え、前記ずれ防止部材は、前記積層物の積層方向と直交する方向の側面又は底面の少なくともいずれかにおいて、前記積層物の積層方向にわたって当接されて、前記積層物が、前記積層物の積層方向と直交する方向にずれることを防止するか、又は前記積層物の積層方向と直交する方向の側面及び底面の少なくともいずれかにおいて、前記ずれ防止部材と前記積層物とが、微小な隙間をもって対向するように形成され、前記微小な隙間は、前記積層物を構成するイオン交換膜及びガスケットがずれても、前記イオン交換膜と前記ガスケットによって形成される処理液の流路が維持されて前記透析装置の稼働が許容される範囲に収まる寸法に設定されたものであるフィルタープレス型の透析装置が提供される。
【0012】
本発明のフィルタープレス型の透析装置においては、
前記ずれ防止部材は、前記積層物の積層方向と直交する方向の側面に、前記積層物の積層方向にわたって当接され、前記積層物が横方向にずれることを防止すること、
前記ずれ防止部材は、前記積層物の積層方向と直交する方向の底面に、前記積層物の積層方向にわたって当接され、前記積層物が縦方向にずれることを防止すること、
前記ずれ防止部材は、前記積層物の積層方向と直交する方向の側面及び底面に、前記積層物の積層方向にわたって各当接され、前記積層物が横方向及び縦方向にずれることを防止すること、
が好ましい。
【0013】
また、本発明のフィルタープレス型の透析装置においては、前記ずれ防止部材は、積層物の積層方向に伸縮自在なスライダ機構を備えていること、前記ずれ防止部材における前記積層物の底面と対向する部位に排水構造を備えること、前記ずれ防止部材は、前記一対の締付枠によって支持されること、前記ずれ防止部材は、前記一対の締付枠を繋ぐボルトによって支持されること、前記ずれ防止部材は、前記締付枠に形成された凹部、又は凸部によって支持されること、前記凸部は、前記締付枠に導入される処理液の液管であること、前記積層物に対して平面で対向し、積層物の積層方向に直交する方向に前記イオン交換膜と前記ガスケットとがずれようとする場合、又はずれた場合に、前記平面が、前記イオン交換膜、前記ガスケットの少なくともいずれかと当接して、前記ずれを防止する機能を発揮するものであること、前記透析槽は、陽極と陰極との間に前記スタックが設けられた構造を備える電気透析槽であること、が好ましい。
【0014】
さらに、本発明によれば、固定プレス盤と移動プレス盤とで透析槽を締め付けるプレス機を備えたフィルタープレス型の透析装置に適用されるスタックであって、前記スタックは、イオン交換膜とガスケットとが交互に積層された積層物の積層方向の両側に一対の締付枠が配置され、前記積層物の積層方向に直交する方向に前記イオン交換膜と前記ガスケットとがずれることを防止するずれ防止部材を備え、前記ずれ防止部材は、前記積層物の積層方向と直交する方向の側面又は底面の少なくともいずれかにおいて、前記積層物の積層方向にわたって当接されて、前記積層物が、前記積層物の積層方向と直交する方向にずれることを防止するか、又は前記積層物の積層方向と直交する方向の側面及び底面の少なくともいずれかにおいて、前記ずれ防止部材と前記積層物とが、微小な隙間をもって対向するように形成され、前記微小な隙間は、前記積層物を構成するイオン交換膜及びガスケットがずれても、前記イオン交換膜と前記ガスケットによって形成される処理液の流路が維持されて前記透析装置の稼働が許容される範囲に収まる寸法に設定されたものであるスタックが提供される。
【0015】
本発明のスタックにおいては、
前記ずれ防止部材は、前記積層物の積層方向と直交する方向の側面に、前記積層物の積層方向にわたって当接され、前記積層物が横方向にずれることを防止するものであること、
前記ずれ防止部材は、前記積層物の積層方向と直交する方向の底面に、前記積層物の積層方向にわたって当接され、前記積層物が縦方向にずれることを防止するものであること、
前記ずれ防止部材は、前記積層物の積層方向と直交する方向の側面及び底面に、前記積層物の積層方向にわたって各当接され、前記積層物が横方向及び縦方向にずれることを防止するものであること、
が好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のフィルタープレス型の透析装置は、イオン交換膜とガスケットとが交互に積層された積層物の積層方向の両側に一対の締付枠が配置されたスタックを備えた透析槽と、前記透析槽を固定プレス盤と移動プレス盤とで前記積層物の積層方向に締め付けるプレス機と、を備えたフィルタープレス型の透析装置であって、前記スタックは、前記積層物の積層方向に直交する方向に前記イオン交換膜と前記ガスケットとがずれることを防止するずれ防止部材を備えていることにより、スタックを構成する積層物の積層方向に直交する方向にイオン交換膜とガスケットとがずれることを防止することができる。
【0017】
また、本発明のスタックは、固定プレス盤と移動プレス盤とで透析槽を締め付けるプレス機を備えたフィルタープレス型の透析装置に適用されるスタックであって、前記スタックは、イオン交換膜とガスケットとを交互に積層された積層物の積層方向の両側に一対の締付枠が配置され、前記積層物の積層方向に直交する方向に前記イオン交換膜と前記ガスケットとがずれることを防止するずれ防止部材を備えていることにより、スタックを構成する積層物の積層方向に直交する方向にイオン交換膜とガスケットとがずれることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態のフィルタープレス型の透析装置の斜視図である。
【
図2】
図1に示すフィルタープレス型の透析装置のスタックの一部を分解して示す分解斜視図である。
【
図3】(a)
図1のフィルタープレス型の透析装置に採用される横ずれ防止部材の分解斜視図、(b)(a)に示す横ずれ防止部材を組み立てた状態を示す斜視図である。
【
図4】(a)
図1に示すフィルタープレス型の透析装置において、横ずれ防止部材、及び縦ずれ防止部材を装着したスタックの下部を側方から見た側面図、(b)(a)に示すスタックの一部を取り出し拡大して示す正面図である。
【
図5】(a)横ずれ防止部材、及び縦ずれ防止部材の別の実施形態を示す斜視図、(b)(a)を側方から見た側面図である。
【
図6】(a)一体型ずれ防止部材の実施形態を示す分解斜視図、(b)(a)に示す一体型ずれ防止部材を組み立てた状態を示す斜視図、(c)(b)に示す一体型ずれ防止部材を装着したスタックの一部を取り出し正面から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に基づいて構成されるフィルタープレス型の透析装置、及びフィルタープレス型の透析装置を構成するスタックに係る実施形態について、添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0020】
図1には、本発明のフィルタープレス型の透析装置の一実施形態として示されるフィルタープレス型電気透析装置1が示されている。本実施形態のフィルタープレス型電気透析装置1は、被処理液から塩分を除去して脱塩液と濃縮液とを生成する透析装置である。図に示すように、フィルタープレス型電気透析装置1は、透析槽20と、透析槽20を挟み締め付けて押圧するプレス機50と、を備えている。
【0021】
図1に示すように、透析槽20は、二つのスタック30、40を備えている。スタック30、40は、それぞれ、イオン交換膜とガスケットとを交互に積層した積層物38、48を含む。
図2に、スタック30の一部を分解して示す。スタック30は、陽イオン交換膜32、脱塩室用ガスケット33、陰イオン交換膜34、及び濃縮室用ガスケット35を積層したものを一対として、図中矢印Xで示すX軸方向において、複数(例えば110対)積層させた積層物38を含み、積層物38の積層方向の両側に一対の締付枠31、36を配置して挟んだものである。図示は省略するが、陽イオン交換膜32、脱塩室用ガスケット33、陰イオン交換膜34、及び濃縮室用ガスケット35には、それぞれがずれていない状態で相互を連通するように設定された被処理液、及び処理液を積層方向に通過させる流路が形成されている。
【0022】
締付枠31には締付用の孔311が、締付枠36には、締付用の孔361が外周に沿って複数形成されている。締付用の孔311、361は、ボルト37の径よりも大きい貫通孔であり、ボルト37を締付用の孔311、361に挿通し、適宜のナット、及びワッシャーリングを使用して、締付枠31、36を繋いで積層物38を締め付け、積層物38を一体化する。なお、ボルト37としては、例えば、スタッドボルトが採用される。締付枠31の内側面(他方の締付枠36と対向する面)の下端部には、図中Y軸方向に延びX軸方向に凸形状となる濃縮液の入口である濃縮液管31aが形成され、内側面の上方には、Y軸方向に延びる脱塩液の出口である脱塩液管31bが形成されている。また、締付枠36の内側面(一方の締付枠31と対向する面)の下方には、Y軸方向に延びX軸方向に凸形状となる脱塩液の入口である脱塩液管36aが形成され、上方の内側面には、Y軸方向に延びる濃縮液の出口である濃縮液管36bが形成されている。
【0023】
さらに、スタック30には、積層物38の積層方向に直交する方向であって、イオン交換膜(陽イオン交換膜32、陰イオン交換膜34)、及びガスケット(脱塩室用ガスケット33、濃縮室用ガスケット35)が横方向(Y軸方向)にずれることを防止するずれ防止部材として機能する横ずれ防止部材110が配設される。
【0024】
上記した横ずれ防止部材110は、積層物38の側面に、積層物38の積層方向にわたって当接されるものであり、積層物38を構成するイオン交換膜、及びガスケットが横方向にずれることを防止する。横ずれ防止部材110は、
図3(a)に分解して示すように、横方向に開口部を有する略U字形状のベースプレート111と、ベースプレート111の手前側端部に固着される第一ガイドプレート113と、第一ガイドプレート113上に配設されるサドルバンド112と、ベースプレート111の開口部に向けて矢印で示す方向にスライドして一体とすることが可能なスライドプレート114と、スライドプレート114の端部に固定される第二ガイドプレート115と、第二ガイドプレート115上に配設されるサドルバンド112と、を備えている。
図3(b)のように組み立てられた横ずれ防止部材110は、上記したようにベースプレート111に対し図中矢印D4で示す方向でスライドプレート114が進退するスライダ機構を備えており、その幅を自在に調整することが可能である。横ずれ防止部材110は、
図2に示すように、二つのサドルバンド112、112を介して、ボルト37に保持される。スタック30は、ボルト37を介して横ずれ防止部材110を保持した状態で、積層物38を一対の締付枠31、36で挟み締め付けて一体とされる。図示の実施形態では、スタック30の積層物38の側面において、締付枠31、36を締め付ける5本のボルト37のうち、上端、下端、及び中央に配設される3本のボルト37を使用して横ずれ防止部材110が保持される。なお、横ずれ防止部材110を配設する数は、これに限定されず、例えば全てのボルト37に対応して設定してもよいし、上下2個であってもよく、必要に応じて適宜選択される。
【0025】
詳細は省略するが、
図1に示すように、スタック40も、上記したスタック30と略同一の構成を備えており、シート状に成型された陽イオン交換膜42、脱塩室用ガスケット43、陰イオン交換膜44、及び濃縮室用ガスケット45を積層したものを一対として、X軸方向において、複数(例えば110対)積層させた積層物48を含み、該積層物の積層方向の両側に一対の締付枠41、46を配置して積層物48を挟んでいる。締付枠41には締付用の孔411が、締付枠46にも締付用の孔461が外周に沿って複数形成されており、各締付用の孔を利用して、一対の締付枠41、46をボルト47、及び図示を省略する適宜のナット、ワッシャーリングを使用して積層物48を締め付ける。スタック40を構成する積層物48の側面においても、締付枠41、46を締め付ける5本のボルト47のうち、上端、下端、及び中央に配設される3本のボルト47を使用して横ずれ防止部材110が保持される。なお、
図1では、スタック30、40の反対側が示されていないが、手前側と同様に、上下方向において3箇所に横ずれ防止部材110が配設される。
【0026】
スタック30の締付枠31、36の側面には、図中Y軸方向に延びる肩部312、362が、締付枠41、46の側面には、図中Y軸方向に延びる肩部412、462が形成されている。スタック30、及びスタック40に形成される締付用の孔の高さは、それぞれにおいて2段階で用意されており、隣接するスタックでは、異なる高さの締付用の孔が使用される。なお、本実施形態では、透析槽20を2つのスタック(スタック30及びスタック40)により構成しているが、本発明はこれに限定されず、スタックを1つ、又は3つ以上備えるものであってもよい。
【0027】
本実施形態の透析槽20は、前記二つのスタック30、40を隣接するように配置したものであり、スタック40の締付枠46側には陽極を保持する陽極枠22を、スタック30の締付枠31側には陰極を保持する陰極枠24を配置し、所謂電気透析槽を構成している。
【0028】
図1を参照しながら、プレス機50について説明する。プレス機50は、一対の立設部51、52と、一方(手前側)の立設部51の上部に水平に配置される油圧プレス機支持部53と、立設部51と対向する位置であって他方の立設部52によって支持される固定プレス盤54と、油圧プレス機支持部53と固定プレス盤54とをX軸方向(水平方向)で連結する一対のサイドバー55、55と、油圧プレス機支持部53に支持される油圧プレス機56と、一対のサイドバー55、55に挟まれた領域に配設された移動プレス盤57とを備えている。なお、
図1では、手前側のサイドバー55の一部を透過して示している。
【0029】
油圧プレス機56は、油圧ポンプ561と、押圧部材562とを備えている。押圧ポンプ561は、図示を省略する電動モータにより駆動され、押圧ポンプ561によって供給される油圧によって押圧部材562をX軸方向に伸長させる。移動プレス盤57は、矢印Yで示すY軸方向の側面に一対の肩部571、571を備えており、一対のサイドバー55、55に肩部571、571を介して支持される。移動プレス盤57の下端部はプレス機50の設置面には触れておらず、また、肩部571、571はサイドバー55、55には固定されていないことから、油圧プレス機56の押圧部材562によって移動プレス盤57の垂直壁572が押圧されることにより、サイドバー55、55上を肩部571、571がスライドして、移動プレス盤57を固定プレス盤54に向けて移動させることができる。
【0030】
本実施形態のフィルタープレス型電気透析装置1を運転するに際し、前記したスタック30、40を用意したならば、
図1に示すようにプレス機50の一対のサイドバー55、55、固定プレス盤54、及び移動プレス盤57に挟まれた領域にスタック30、40を搬入し、スタック30の締付枠31、36に配設された肩部312、362、及びスタック40の締付枠41、46に配設された肩部412、462を一対のサイドバー55、55に掛け渡して載置する。このとき、スタック30、40の下端部は、フィルタープレス型電気透析装置1の設置面には触れないことから、スタック30、40を、一対のサイドバー55、55に沿ってX軸方向に移動させることができる。
【0031】
上記したように、プレス機50に対して、スタック30、40を搬入したならば、油圧プレス機56の油圧ポンプ561を作動して、押圧部材562を、矢印D1で示す方向に伸長させて、移動プレス盤57の垂直壁572に当接させ、移動プレス盤57を矢印D2で示す方向に押圧する。これにより、スタック30、及びスタック40が積層方向(X軸方向)にて締め付けられて、全体として透析槽20が圧縮される。
【0032】
ところで、本実施形態のプレス機50によって透析槽20が締め付けられる際の適正締付圧力は0.6N/mm
2±0.1N/mm
2に設定されており、押圧部材562を、矢印D1で示す方向に伸長させて、移動プレス盤57を矢印D2で示す方向に押圧すると、締付圧力が高くなるに従って一対の締付枠31、36間の距離が狭められる。適正締付圧力となった際の一対の締付枠31、36間の距離は、
図4(a)に示すように、例えばW(mm)である。上記したように、横ずれ防止部材110は、ベースプレート111に対してスライドプレート114が幅方向に進退するスライダ機構を備えており、その幅を自在に調整することが可能であることから、その幅がW(mm)になるように調整される。その結果、
図4(a)に加え、
図4(b)からも理解されるように、ボルト37にゴム372を介して保持された横ずれ防止部材110は、スタック30の積層体38の側面に、積層方向の幅W(mm)の全域にわたって当接される。
【0033】
さらに、本実施形態においては、上記したように透析槽20をプレス機50によってプレスして、積層物38、48を適正締付圧力にて締め付け、押圧部材562を固定した後、スタック30、40の積層体38、48の積層方向と直交する方向の底面に対して当接する位置に、縦ずれ防止部材120を挿入して配設する。縦ずれ防止部材120は、
図1に示すように矩形の板状部材であり、例えば、PVC、PE等の熱可塑性、又は熱硬化性の樹脂により構成される。また、縦ずれ防止部材120には、排水構造として機能する厚み方向に貫通する貫通孔122が複数(本実施形態では9個)形成されている。この貫通孔122が配設されていることにより、仮にイオン交換膜とガスケットとの間から被処理液、処理液が縦ずれ防止部材120上に漏出したとしても貫通孔122を介して外部に排出されるので、縦ずれ防止部材120上に塩等の析出物の堆積ができて陽極枠22、陰極枠24が連結されてショートする等の問題が回避される。なお、縦ずれ防止部材120上に配設する排水構造の形態は、上記した貫通孔122に限定されない。例えば、縦ずれ防止部材120の表面の長手方向全域にわたって漏出した液体を排出する溝を形成したり、該貫通孔122と前記した溝とを組み合わせたり、適宜の傾斜面を形成したりするようにしてもよい。
【0034】
上記した縦ずれ防止部材120を配設するに際しては、締付枠31、36間の間隔がW(mm)であることを確認した後、幅寸法がW(mm)で形成された縦ずれ防止部材120を用意する。次いで、
図1に示すように、締付枠31の内側面の下端側に凸部を構成しY軸方向に延びる濃縮液管31a、及び締付枠36の内側面の下端部に凸部を構成しY軸方向に延びる脱塩液の入口である脱塩液管36aの上に、側方から挿入して載置する。縦ずれ防止部材120の厚みは、
図4(a)に示すように、締付枠31に形成された濃縮液管31aと、締付枠36に形成された脱塩液管36a上に縦ずれ防止部材120を挿入して載置した場合に、ちょうど、縦ずれ防止部材120の表面が積層物38の下面に当接するように設定される。なお、本実施形態では、縦ずれ防止部材120を、濃縮液管31a、及び脱塩液管36a上に載置したが、積層物38の下端と、濃縮液管31a、及び脱塩液管36aとの距離が離れている場合は、締付枠31、36の双方に、縦ずれ防止部材120を載置するための凸部を別途形成するようにしてもよい。
【0035】
なお、本発明においては、横ずれ防止部材110、又は縦ずれ防止部材120が、積層物38の積層方向と直交する方向の側面、又は底面に対して、直接的に全面が当接されることに限定されず、横ずれ防止部材110、及び縦ずれ防止部材120と、積層物38を構成するイオン交換膜、及びガスケットとの間に、微小な隙間が存在していてもよい。すなわち、本発明における横ずれ防止部材110、縦ずれ防止部材120は、積層物38を構成するイオン交換膜、ガスケットが僅かでもずれようとする際に、そのずれを防止するように機能するものであって、再度のイオン交換膜とガスケットの積層を含む組み立てを実施する必要が生じる程度にずれることを防止するように機能すればよい。より具体的には、ずれ防止部材(横ずれ防止部材110、縦ずれ防止部材120)と積層物38とによって形成される微小な隙間は、積層物38を構成するイオン交換膜及びガスケットが該微小な隙間の範囲でずれても、イオン交換膜とガスケットとによって形成される被処理液、及び処理液の流路が維持されて透析装置の稼働が許容される範囲に収まる寸法に設定される。なお、該微小な隙間は、5mm以下であることが好ましい。
【0036】
本発明の発明者らは、上記したような、横ずれ防止部材110、及び縦ずれ防止部材120を配設したフィルタープレス型電気透析装置1と、上記した横ずれ防止部材110、及び縦ずれ防止部材120を配設してない同じ型のフィルタープレス型電気透析装置を使用し、食塩を含む被処理液から濃縮液と脱塩液とを生成する運転を一定期間実施し、一週間程度の冬季休業期間に入る前に各電気透析装置から被処理液、及び処理液を抜いて、各各電気透析装置を放置し、冬季休業期間終了後、各電気透析装置のスタックを構成するイオン交換膜とガスケットとのずれ具合を検証した。
【0037】
上記した検証の結果、横ずれ防止部材110、及び縦ずれ防止部材120を配設しなかった一方のフィルタープレス型電気透析装置においては、スタック30、40を構成する積層物38、48の内、中央寄りの複数のイオン交換膜、及びガスケットが下方側に脱落し、横方向にもイオン交換膜とガスケットのずれ、はみ出しが生じていた。したがって、次の運転を再開させるためには、スタック30、40を分解して、再度スタック30、40を組み立てる必要性が生じた。これに対し、横ずれ防止部材110、及び縦ずれ防止部材120を配設したフィルタープレス型電気透析装置1においては、積層物38、48に含まれるガスケットの収縮が起きていたにも関わらず、縦方向、横方向いずれにもずれは生じておらず、スタック30、40は良好な形態を維持することができた。
【0038】
本発明は上記した実施形態に限定されず、本発明には種々の変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態では、横ずれ防止部材110にスライダ機構を形成し、プレス機50によって透析槽20を圧縮して適正締付圧力に設定する過程で、横ずれ防止部材110の幅を一対の締付枠31、36の間隔Wに合わせて調整した。また、縦ずれ防止部材120については、プレス機50によって透析槽20を圧縮して適正締付圧力に設定した後、締付枠31と締付枠36との間隔Wを計測して、その計測された間隔Wに合わせて幅Wの縦ずれ防止部材120を用意して、縦ずれ防止部材120を側方から挿入して載置した。しかし、本発明はこれに限定されない。
【0039】
例えば、透析槽20をプレス機50によって適正締付圧力で絞め付ける際の一対の締付枠の間隔が、予め略W(mm)となることが想定できる場合は、
図5に示すように、上記した横ずれ防止部材110、及び縦ずれ防止部材120に替えて、板状の横ずれ防止部材130、及び縦ずれ防止部材140を用意する。横ずれ防止部材130、縦ずれ防止部材140の幅は、上記した間隔W(mm)に加え、所定の予備幅2D(mm)を加えたW+2D(mm)とする。これに対応すべく、締付枠31、締付枠36側には、横ずれ防止部材130が挿入される縦方向に延びる凹部、より具体的には、縦方向に延びる溝316、溝366を形成すると共に、縦ずれ防止部材140が挿入される横方向に延びる溝314、溝364を形成する。各溝の深さ(奥行き)は、上記した予備幅2D(mm)に対応させて、D+α(mm)とする。上記した横ずれ防止部材130、及び縦ずれ防止部材140を用意し、上記した溝314、364、316、及び366を形成しておくことで、スタック30を形成するときに、予め横ずれ防止部材130、及び縦ずれ防止部材140を、W+2D+2αの間隔となるように形成された溝314、364間、及び溝316、366間に配設することができ、締付枠31、36間の間隔W(mm)に合わせて後から幅方向の寸法を調整することなく、横ずれ防止部材130、及び縦ずれ防止部材140を、積層物38の積層方向と直交する方向の側面、又は底面に、積層物38の積層方向の全域にわたって当接させることができる。
【0040】
さらに、上記した実施形態では、横ずれ防止部材110、及び縦ずれ防止部材120を別々に構成したが、例えば
図6に示すように、積層物38の下端側に設置する横ずれ防止部材と縦ずれ防止部材とを一体とした一体型ずれ防止部材160を構成することも可能である。一体型ずれ防止部材160は、
図6(a)にその一部を分解して示すように、横方向に開口部を有する略U字形状のベースプレート161と、ベースプレート161の手前側端部に固着される第一ガイドプレート163と、第一ガイドプレート163上に配設されるサドルバンド162と、ベースプレート161の開口部に向けて矢印で示す方向にスライドして一体とすることが可能なスライドプレート164と、スライドプレート164の端部に固定される第二ガイドプレート165と、第二ガイドプレート165上に配設されるサドルバンド162と、を備え、さらに、ベースプレート161の下端側中央から下方に延びる連結部166と、連結部166の下端から略水平方向に延びる水平プレート167と、を備え、
図6(c)から理解されるように、側方からみて、断面が略L字形状となる。
図6(b)のように組み立てられた一体型ずれ防止部材160は、
図6(c)に示すように、二つのサドルバンド162、162とゴム372を介して、下端側のスタッドボルト37によって保持される。
【0041】
水平プレート167は、上記した縦ずれ防止部材120と同様に、スタック30、40が適正締付圧力によって締め付けられた場合の間隔W(mm)に対して、所定の予備幅2Dを加えた幅寸法(W+2D(mm))で形成されている。締付枠31、36には、
図5(a)に示した水平方向に延びる溝314、溝364を形成しておき、上記水平プレート167が、溝314、364に収容される。水平プレート167の上面には、矢印D5で示す方向に下がる傾斜面167aが形成されている。上記した連結部166から上側は、上記した横ずれ防止部材と同様の機能を有し、
図6(c)から理解されるように、積層物38の積層方向に直交する横方向にイオン交換膜とガスケットとがずれることを防止する。また、連結部166から下側に形成される水平プレート167の部分、特に、連結部166と水平プレート167によって形成される角部が、上記した縦ずれ防止部材120と略同様の機能を備え、積層物38の積層方向と直交する底面、特に積層物38の角部382に水平プレート167が当接されて、積層物38が下方向にずれることを防止する。
【0042】
水平プレート167の上面には、上記したように傾斜面167aが形成されており、仮に積層物38を構成するイオン交換膜とガスケットとの間から被処理液、処理液が漏出したとしても、外部に排出する排水構造としての機能を発揮し、陽極枠22、陰極枠24間のショートが防止される
【0043】
さらに、上記した実施形態では、本発明をフィルタープレス型電気透析装置に適用した例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、陰イオン交換膜のみをガスケットを介して配列して複数積層したスタックを有する透析槽を備えた拡散透析装置にも適用することができ、イオン交換膜とガスケットとが交互に積層された積層物の積層方向の両側に一対の締付枠が配置されたスタックを備えた透析槽を有するフィルタープレス型透析装置であれば、いずれの型の透析装置にも適用される。
【符号の説明】
【0044】
1:フィルタープレス型電気透析装置
20:透析槽
22;陽極枠
24:陰極枠
30、40:スタック
31、41:締付枠
31a:濃縮液管
311、411:締付用の孔
32、42:陽イオン交換膜
33、43:脱塩室用ガスケット
34、44:陰イオン交換膜
35、45:濃縮室用ガスケット
36、46:締付枠
36a:脱塩液管
361、461:締付用の孔
37、47:ボルト
38、48:積層物
50:プレス機
51、52:立設部
53:油圧プレス機支持部
54:固定プレス盤
55:サイドバー
56:油圧プレス機
561:油圧ポンプ
562:押圧部材
57:移動プレス盤
571:肩部
572:垂直壁
110:横ずれ防止部材
111:ベースプレート
112:サドルバンド
113:第一ガイドプレート
114:スライドプレート
115:第二ガイドプレート
120:縦ずれ防止部材
122:貫通孔
130:横ずれ防止部材
140:縦ずれ防止部材
142:貫通孔
160:一体型ずれ防止部材
161:ベースプレート
166:連結部
167:水平プレート
167a:傾斜面