(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】自走式歯科診療椅子
(51)【国際特許分類】
A61G 5/04 20130101AFI20240604BHJP
A61G 15/00 20060101ALI20240604BHJP
A61G 13/00 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
A61G5/04 707
A61G15/00 P
A61G5/04
A61G13/00 B
(21)【出願番号】P 2020070448
(22)【出願日】2020-04-09
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】502080704
【氏名又は名称】長田電機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 清
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-221560(JP,A)
【文献】特開2019-172100(JP,A)
【文献】実開平06-000428(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0319416(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0265497(US,A1)
【文献】実公昭58-028579(JP,Y2)
【文献】特開2004-267225(JP,A)
【文献】実開平05-049559(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2011/0195374(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 1/00 - A61G 7/16
A61G 13/00 - A61G 15/12
A61C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の下半身を支承するコンターシートと、該コンターシートに対して起倒自在に設けて患者の上半身を支承するバックレストと、前記コンターシートの下方位置に設けたベースフレームと、該ベースフレームの下方位置に設けて歯科医院内の床面を走行する走行車輪と、前記ベースフレームに設けて前記走行車輪を駆動する駆動装置とを備えた自走式歯科診療椅子であって、
前記バックレストを起立させた着座姿勢状態で前記駆動装置を駆動制御する制御装置と前記バックレストの背面に設けられて前記制御装置に制御信号を送信する操縦装置とを備え、
前記操縦装置が、前記コンターシートを上昇又は下降させる昇降操作部を有し、
前記ベースフレームが、基台部と該基台部の上方位置に設けた昇降部と、前記走行車輪を停止させて前記昇降操作部を操作した際に前記昇降部を昇降させる昇降機構と、スピットンと通電自在なスピットン接続部分とを備え、
前記バックレストが、前記スピットンと前記スピットン接続部分とを通電させた際に前記コンターシートを上昇又は下降させる補助操作部を有していることを特徴とする自走式歯科診療椅子。
【請求項2】
前記操縦装置が、前記走行車輪の前進又は後退を操作する進退操作部を有していることを特徴とする請求項1に記載の自走式歯科診療椅子。
【請求項3】
前記走行車輪が、左右に操舵自在な少なくとも1つの操舵輪から構成され、
前記駆動装置が、前記操縦装置の左右回動に基いて前記操舵輪の走行方向を左右に転換させる方向転換部を備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自走式歯科診療椅子。
【請求項4】
前記バックレストが、前記操縦装置の取付位置を上下に調整する取付位置調整機構を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の自走式歯科診療椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自走可能な自走式歯科診療椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の高齢化社会の進展により、歯科医院に来院する高齢の患者や歩行障害のある患者が車椅子を使用する割合が増えている。
このような車椅子を使用する患者が車椅子に乗って歯科医院に来院した場合、歯科医師又は歯科医院スタッフが車椅子を後押し走行させることにより歯科医院内の歯科診療台の近くまで歯科医院内を移動させ、場合によっては車椅子から歯科診療台に移乗させる必要がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されているような車椅子は、各種の診療設備が多く配置された歯科医院内の狭い通路を移動させるに足りる各種の駆動機能を装備しておらず、単に、歯科医師又は歯科医院スタッフ用の持ち手が設けられているのみであって、非力な歯科医師又は歯科医院スタッフの場合には走行移動時に一人で患者と車椅子の合計重量を担う必要があるため、歯科医院内を移動する際にスロープを登ったり段差を超えたりすることが難しいという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、歯科医院に自動車等で来院した患者の車椅子を用いることなく歯科医院内で歯科医師又は歯科医院スタッフが患者を容易に移乗させて歯科診療室内まで移動させたまま歯科診療が可能な自走式歯科診療椅子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、患者の下半身を支承するコンターシートと、該コンターシートに対して起倒自在に設けて患者の上半身を支承するバックレストと、前記コンターシートの下方位置に設けたベースフレームと、該ベースフレームの下方位置に設けて歯科医院内の床面を走行する走行車輪と、前記ベースフレームに設けて前記走行車輪を駆動する駆動装置とを備えた自走式歯科診療椅子であって、前記バックレストを起立させた着座姿勢状態で前記駆動装置を駆動制御する制御装置と前記バックレストの背面に設けられて前記制御装置に制御信号を送信する操縦装置とを備え、前記操縦装置が、前記コンターシートを上昇又は下降させる昇降操作部を有し、前記ベースフレームが、基台部と該基台部の上方位置に設けた昇降部と、前記走行車輪を停止させて前記昇降操作部を操作した際に前記昇降部を昇降させる昇降機構と、スピットンと通電自在なスピットン接続部分とを備え、前記バックレストが、前記スピットンと前記スピットン接続部分とを通電させた際に前記コンターシートを上昇又は下降させる補助操作部を有していることにより、前述した課題を解決するものである。
【0007】
請求項2に係る自走式歯科診療椅子は、請求項1に係る自走式歯科診療椅子の構成に加えて、前記操縦装置が、前記走行車輪の前進又は後退を操作する進退操作部を有していることにより、前述した課題を解決するものである。
【0008】
請求項3に係る自走式歯科診療椅子は、請求項1又は請求項2に係る自走式歯科診療椅子の構成に加えて、前記走行車輪が、左右に操舵自在な少なくとも1つの操舵輪から構成され、前記駆動装置が、前記操縦装置の左右回動に基いて前記操舵輪の走行方向を左右に転換させる方向転換部を備えていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0009】
請求項4に係る自走式歯科診療椅子は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に係る自走式歯科診療椅子の構成に加えて、前記バックレストが、前記操縦装置の取付位置を上下に調整する取付位置調整機構を備えていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の自走式歯科診療椅子によれば、患者の下半身を支承するコンターシートと、このコンターシートに対して起倒自在に設けて患者の上半身を支承するバックレストと、コンターシートの下方に設けたベースフレームと、このベースフレームの下方に設けて歯科医院内の床面を走行する走行車輪と、ベースフレームに設けて前記走行車輪を駆動する駆動装置とを備えていることにより、患者を乗せて自走できるばかりでなく、以下の本願発明に特有の構成により、本願発明に特有の効果を奏する。
【0011】
請求項1に係る発明の自走式歯科診療椅子によれば、制御装置に制御信号を送信する操縦装置が、バックレストの背面に設けられていることにより、歯科医師又は歯科医院スタッフがバックレストの背面側から自走式歯科診療椅子を操縦可能となるため、患者が自ら操縦することができない場合にも自走式歯科診療椅子を歯科医院内で移動させることができる、所謂、患者に対するおもてなし機能を発揮することができる。
【0012】
また、バックレストを起立させた着座姿勢状態で駆動装置を駆動制御する制御装置が設けられていることにより、バックレストが傾倒した診療状態で操縦装置を誤操作しても駆動装置が駆動しないため、診療中に自走式歯科診療椅子が移動することで生じがちな診療部位のズレなどの不測の事故を防止することができる。
【0013】
さらに、操縦装置が、コンターシートを上昇又は下降させる昇降操作部を有し、ベースフレームが、基台部とこの基台部の上方位置に設けた昇降部と、走行車輪を停止させて昇降操作部を操作した際に昇降部を昇降させる昇降機構とを備えていることにより、昇降機構がベースフレームに対してシート部を昇降させるため、診療後、帰宅のために自動車に乗り込む際等に患者の体を適切な高さに持ち上げることができる。
【0014】
さらに具体的には、制御装置が、走行車輪が停止している場合にのみ昇降制御を実行することにより、自走式歯科診療椅子の移動中にはコンターシートが昇降しないため、歯科医院内で自走式歯科診療椅子を移動している際に昇降操作部を誤操作して、コンターシートが昇降することで発生する不測の事故を防止することができる。
【0015】
さらにまた、制御装置が、昇降操作部が所定位置から第1の方向に回転しているときに昇降機構に昇降部を上昇させ、昇降操作部が所定位置から第2の方向に回転しているときに昇降機構に昇降部を下降させる昇降制御を行うことにより、昇降操作部を操作するだけで昇降機構を制御するため、診療後、帰宅のために自動車に乗り込む際等に昇降操作部を操作するだけで患者の体を適切な高さに持ち上げることができる。
【0016】
加えて、ベースフレームが、スピットンと通電自在なスピットン接続部分を備えていることにより、スピットンと電気的な接続をするため、スピットンからの給電により昇降機構を作動させるとともに電源バッテリーを充電することができる。
【0017】
さらに加えて、バックレストが、スピットンとスピットン接続部分とを通電させた際にコンターシートを上昇又は下降させる補助操作部を有していることにより、操縦装置の起倒に関わらず補助操作部が歯科医師又は歯科医院スタッフに対して常に露出しているため、診療時に操縦装置をハンドル収容凹部に収容してバックレストを倒していても、補助操作部を操作してシート部を昇降させることができる。
【0018】
さらに具体的には、制御装置が、スピットン接続部分がスピットンに対して電気的に接続されているときにのみ補助操作部への指示操作に従って昇降機構を昇降制御することにより、スピットン接続部分がスピットンに接続していないときには、補助操作部を操作してもコンターシートが昇降しないため、診療後に患者を自走式歯科診療椅子から自動車に移乗させている際等に補助操作部を誤操作して、コンターシートが昇降することで発生する不測の事故を防止することができる。
【0019】
請求項2に係る発明の自走式歯科診療椅子によれば、請求項1に係る発明が奏する効果に加えて、操縦装置が、走行車輪の前進又は後退を操作する進退操作部を有していることにより、歯科医師又は歯科医院スタッフが操縦装置の進退操作部に対して前進又は後退の指示を操作するのみで自走式歯科診療椅子が前進又は後退するため、歯科医院内で容易に自走式歯科診療椅子を移動させることができる。
【0020】
さらに具体的には、制御装置が、進退操作部が所定位置から第1の方向に回転しているときに駆動装置に走行車輪を前進回転させ、進退操作部が所定位置から第2の方向に回転しているときに駆動装置に走行車輪を後退回転させる駆動制御を行うことにより、歯科医師又は歯科医院スタッフが進退操作部を片手で回転操作するだけで停止、前進又は後退の操作が可能となるため、歯科医師又は歯科医院スタッフが他方の手で患者のケアをしたり荷物を持ったりしながら、歯科医院内で容易に自走式歯科診療椅子を移動させることができる。
【0021】
請求項3に係る発明の自走式歯科診療椅子によれば、請求項1又は請求項2に係る発明が奏する効果に加えて、走行車輪が、左右に操舵自在な少なくとも1つの操舵輪から構成され、駆動装置が、操縦装置の左右回動に基いて操舵輪の走行方向を左右に転換させる方向転換部を備えていることにより、操舵輪が回動した方向に自走式歯科診療椅子を進行させるため、歯科医院内で容易に自走式歯科診療椅子の方向転換をすることができる。
【0022】
さらに具体的には、制御装置が、操縦装置が所定位置から右に回動したときに方向転換部に操舵輪を右回動させ、操縦装置が所定位置から左に回動したときに方向転換部に操舵輪を左回動させる方向制御を行うことにより、歯科医師又は歯科医院スタッフが回動操作部を片手で操作するのみで自走式歯科診療椅子の進行方向を指示するため、歯科医師又は歯科医院スタッフが他方の手で患者のケアをしたり荷物を持ったりしながら、歯科医院内で容易に自走式歯科診療椅子の方向転換をすることができる。
【0023】
請求項4に係る発明の自走式歯科診療椅子によれば、請求項1乃至請求項3に係る発明が奏する効果に加えて、バックレストが、操縦装置の取付位置を上下に調整する取付位置調整機構を備えていることにより、操縦装置がバックレストに対して上下方向に移動自在となるため、歯科医師又は歯科医院スタッフの身長に応じて操縦装置を操縦しやすい高さに設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の自走式歯科診療椅子がスピットンに近接配置された状態を椅子正面側から観た斜視図。
【
図2】本発明の自走式歯科診療椅子がスピットンに近接配置された状態を椅子背面側から観た斜視図。
【
図3】
図2の自走式歯科診療椅子におけるバックレストの背面側の構成を示す模式図。
【
図4】本発明に用いた操作ハンドルの操作を説明するための
図3のA-A断面図。
【
図5】本発明に用いた操作ハンドルの起倒動作及び取付位置調整動作を説明するための
図3のB-B断面図。
【
図6】本発明の自走式歯科診療椅子におけるバックレストの起倒動作及びコンターシートの昇降動作を説明するための模式図。
【
図7】本発明で用いた昇降機構の機能・作用を示すためのブロック図。
【
図9A】本発明の自走式歯科診療椅子の昇降動作を示す説明図。
【
図9B】本発明の自走式歯科診療椅子の昇降動作を示す説明図。
【
図10】本発明の自走式歯科診療椅子における制御関係を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の自走式歯科診療椅子は、患者の下半身を支承するコンターシートと、このコンターシートに対して起倒自在に設けて患者の上半身を支承するバックレストと、コンターシートの下方位置に設けたベースフレームと、このベースフレームの下方位置に設けて歯科医院内の床面を走行する走行車輪と、ベースフレームに設けて前記走行車輪を駆動する駆動装置と、バックレストを起立させた着座姿勢状態で駆動装置を駆動制御する制御装置と、バックレストの背面に設けられて制御装置に制御信号を送信する操縦装置とを備え、歯科医院に来院した患者の車椅子を用いることなく歯科医院内で歯科医師又は歯科医院スタッフが患者を容易に移乗させて歯科診療室内まで移動させたまま歯科診療が可能なものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても構わない。
【0026】
例えば、本発明の自走式歯科診療椅子に用いる制御装置の具体的な設置位置については、コンターシート、バックレスト、駆動装置のいずれかに内蔵されていれば良い。
【0027】
また、コンターシートに対して起立した着座姿勢状態と傾倒した診療姿勢状態との間で起倒自在に回動するバックレストの起倒操作は、手動によるものとしてもよい。
【実施例】
【0028】
以下、本実施例の自走式歯科診療椅子100について、
図1乃至
図10を用いて説明する。
ここで、
図1は、本発明の自走式歯科診療椅子がスピットンに近接配置された状態を椅子正面側から観た斜視図であり、
図2は、本発明の自走式歯科診療椅子がスピットンに近接配置された状態を椅子背面側から観た斜視図であり、
図3は、
図2の自走式歯科診療椅子におけるバックレストの背面側の構成を示す模式図であり、
図4は、本発明に用いた操作ハンドルの操作を説明するための
図3のA-A断面図であり、
図5は、本発明に用いた操作ハンドルの起倒動作及び取付位置調整動作を説明するための
図3のB-B断面図であり、
図6は、本発明の自走式歯科診療椅子におけるバックレストの起倒動作及びコンターシートの昇降動作を説明するための模式図であり、
図7は、本発明で用いた昇降機構の機能・作用を示すためのブロック図であり、
図8は、
図1に示す自走式歯科診療椅子の底面図であり、
図9Aは、本発明の自走式歯科診療椅子の昇降動作を示す説明図であり、
図9Bは、本発明の自走式歯科診療椅子の昇降動作を示す説明図であり、
図10は、本発明の自走式歯科診療椅子における制御関係を示すブロック図である。
【0029】
自走式歯科診療椅子100は、
図1、
図2及び
図6に示すように、床面Fに対向するベースフレーム130と、ベースフレーム130の下方に取り付けられて床面F上を走行する走行車輪140と、ベースフレーム130の上に配置されているコンターシート120と、コンターシート120に対して起倒自在に配置されているバックレスト110と、バックレスト110の背面側に設けられて各種操作支持を受ける操作ハンドル150と、操作ハンドル150を収容するハンドル収容凹部160と、コンターシート120又は自走式歯科診療椅子100全体を昇降させる昇降機構180と、自走式歯科診療椅子100の各種動作を制御する制御装置190とを備えている。
【0030】
<コンターシート>
コンターシート120は、床面Fに対してほぼ水平に配されて患者の臀部を支承するシート部121と、シート部121の前方に設けられて患者の脚を支承するレッグレスト部122と、レッグレスト部122の下方に設けられて患者の足を支承するフットレスト部123とを有しており、これらが患者の下半身を支承するコンターシート120を構成している。
【0031】
コンターシート120を構成しているシート部121の後方には、患者の背中を支承するバックレスト110がコンターシート120のシート部121に対して起倒自在に設置されている。
【0032】
<バックレスト>
バックレスト110は、患者の背中を支承する背凭れ部111と、患者の頭部を支承するヘッドレスト部112と、患者の腕を支承するアームレスト部113と、コンターシート120の昇降とバックレスト110の起倒を指示制御するための補助操作部114と、背凭れ部111の逆側にある背面部115とバックレスト起倒センサ部116とを備えている。
【0033】
補助操作部114は、バックレストの側面に設けられており、シート上昇指示ボタン114aと、シート下降指示ボタン114bと、バックレスト起立指示ボタン114cと、バックレスト傾倒指示ボタン114dとを備えている。
【0034】
シート上昇指示ボタン114aを押すと、補助操作部114は、後述のベースフレーム130を構成している昇降部131を介してコンターシート120を上昇させる上昇信号を制御装置190に送信する。
シート下降指示ボタン114bを押すと、補助操作部114は、後述のベースフレーム130を構成している昇降部131を介してコンターシート120を下降させる下降信号を制御装置190に送信する。
【0035】
バックレスト起立指示ボタン114cを押すと、補助操作部114は、バックレスト起立信号を制御装置190に送信する。バックレスト傾倒指示ボタン114dを押すと、補助操作部114は、バックレスト傾倒信号を制御装置190に送信する。
【0036】
バックレスト110は、コンターシート120に対して起立した着座姿勢と傾倒した診療姿勢との間で、不図示の起倒手段により起倒自在に回動する構成となっている。
【0037】
バックレスト110がコンターシート120に対して傾倒した診療姿勢をとっている場合には、バックレスト起倒センサ部116は着座姿勢信号を制御装置190に送信しない。
バックレスト110がコンターシート120に対して起立した着座姿勢をとっている場合には、バックレスト起倒センサ部116は着座姿勢信号を制御装置190に送信する。
【0038】
ヘッドレスト部112は、バックレスト110の上端を下方に凹ませた領域に収められており、ヘッドレスト部112は、バックレスト110に対して手動で昇降自在となっている。
【0039】
レッグレスト部122は、床面Fから離間している。
フットレスト部123も、レッグレスト部122と同様に床面Fから離間しており、着座姿勢では、床面Fに対してほぼ水平となっている。
【0040】
図2乃至
図5に示すように、バックレスト110の背面部115に設けられている後述のハンドル収容凹部160内には、自走式歯科診療椅子100を操縦するための操縦装置として操作ハンドル150が起倒自在に設けられている。
【0041】
<操作ハンドル>
操作ハンドル150は、ハンドル本体部151と、ハンドル本体部151の先端に配置されている把持部153と、把持部153の両側に設けられて自走式歯科診療椅子100の前進及び後退を指示する進退操作部としての進退スロットル部152R及び昇降部131の昇降動作を指示する昇降操作部としての昇降スロットル部152Lと、操作ハンドル150の起倒操作時に回動中心となるハンドル起倒軸部155と、ハンドル起倒軸部155を操舵自在に支承するブッシュ部154と、操作ハンドル150の左右回動操作時に回動中心となる方向転換シャフト部156と、方向転換シャフト部に連結して操作ハンドル150の左右回動を検知する方向転換センサ部157と、飛出防止機構としてのつるまきばね158と、操作ハンドル150が収容位置にあるか操縦位置にあるかを検知するハンドル起倒センサ部159を備えている。
【0042】
操作ハンドル150は、ブッシュ部154に水平に支承されているハンドル起倒軸部155を回転軸として起倒自在に回動するように構成されている。
【0043】
操作ハンドル150は、バックレスト110がシート部121に対して起立した着座姿勢において、
図3乃至
図5に示すようにバックレスト110のハンドル収容凹部160内に収容された収容位置と、水平に近い角度まで後方に倒れるように回動して突出した操縦位置との間で起倒自在の構成となっている。
【0044】
操作ハンドル150は、さらに飛出防止機構としてつるまきばね158を備えて収容位置に戻る向きにバネ付勢されており、バックレスト110が後方に倒れている姿勢において、操作ハンドル150が自重で不用意に操縦位置に飛び出さないように構成されている。
【0045】
ハンドル本体部151内に配置されたハンドル起倒センサ部159は、操作ハンドル150がハンドル収容凹部160内に収容されて収容位置にあるか、後方に飛び出して操縦位置にあるかを検知する。
ハンドル起倒センサ部159は、操作ハンドル150が操縦位置にあるときに、ハンドル起倒センサ部159は操縦可能信号を制御装置190に送信する。
【0046】
進退操作部としての進退スロットル部152Rは、ハンドル本体部151の先端に配置された把持部153の右側側面から突出して前後方向に回転自在となっており、前進又は後退の指示操作を受ける。
【0047】
進退スロットル部152Rを前後方向に回転させると、操作ハンドル150は、進退制御信号を制御装置190に送信する。
【0048】
より具体的には、進退スロットル部152Rを前方に回転させると、操作ハンドル150は、自走式歯科診療椅子100を前進させるための前進信号を制御装置190に送信する。
【0049】
また、進退スロットル部152Rを後方に回転させると、操作ハンドル150は、自走式歯科診療椅子100を後退させるための後退信号を制御装置190に送信する。
【0050】
昇降操作部としての昇降スロットル部152Lは、ハンドル本体部151の先端に配置された把持部153の左側側面から突出して前後方向に回転自在となっており、昇降の指示操作を受ける。
【0051】
昇降スロットル部152Lを前後方向に回転させると、操作ハンドル150は、昇降制御信号を制御装置190に送信する。
【0052】
より具体的には、昇降スロットル部152Lを前方に回転させると、操作ハンドル150は、昇降部131を介してシート部121を上昇させる上昇信号を制御装置190に送信する。
【0053】
また、昇降スロットル部152Lを後方に回転させると、操作ハンドル150は、昇降部131を介してコンターシート120を下降させる下降信号を制御装置190に送信する。
【0054】
ブッシュ部154は、ハンドル収容凹部160を構成しているハンドル取付板部163に左右操舵自在に嵌装されており、操作ハンドル150が後ろ向きに突出して操縦位置にある場合に操作ハンドル150が左右に回動されると、操作ハンドル150に連動して左右に回動する。
【0055】
操作ハンドル150が左右に回動されると、操作ハンドル150に連動して方向転換シャフト部156が回動する。
操作ハンドル150の回動操作は、方向転換シャフト部156を介して方向転換センサ部157により検知される。
【0056】
操作ハンドル150の回動を方向転換センサ部157が検知したときには、方向転換センサ部157が、方向制御信号を制御装置190に送信する。
【0057】
より具体的には、操作ハンドル150を初期位置から右に回動させると、方向転換センサ部157が、右回動信号を制御装置190に送信する。
【0058】
操作ハンドル150を左に回動させると、方向転換センサ部157がこれを検知して左回動信号を制御装置190に送信する。
【0059】
<ハンドル収容凹部>
ハンドル収容凹部160は、操作ハンドル150を収容するためにバックレスト110の背面部115に設けられおり、ハンドル収容凹部160の縁に沿って深さ方向に延在するハンドル収容凹部側壁部161と、取付位置調整機構としての上下調整用レール部162及びハンドル取付板部163と、衝撃吸収機構としてのダンパー部164を備えている。
【0060】
ハンドル収容凹部側壁部161には、左右一対の上下調整用レール部162が設けられており、ハンドル取付板部163が左右一対の上下調整用レール部162に上下移動自在に係合して取付位置調整機構を構成している。
【0061】
ハンドル取付板部163は、操作ハンドル150が後ろ向きに突出している操作可能状態において、上下調整用レール部162に沿って上下に位置を調整可能である。
【0062】
衝撃吸収機構としてのダンパー部164は、操作ハンドル150を収容位置に戻した際に把持部153に当接する位置に設けられており、つるまきばね158によって付勢されている操作ハンドル150がハンドル収容凹部160にぶつかる際の衝撃を吸収する。
【0063】
ハンドル収容凹部160の形状は、操作ハンドル150の形状に応じて設定されている。
【0064】
具体的には、ハンドル収容凹部160は、操作ハンドル150を収容した状態において、操作ハンドル150の左右に設けられた進退スロットル部152R及び昇降スロットル部152Lが、ハンドル収容凹部側壁部161との間にスロットル部用隙間寸法CO1を有し、かつ、把持部153が、ハンドル収容凹部側壁部161との間に把持部用隙間寸法CO2を有する形状となっている。
【0065】
<ベースフレーム>
ベースフレーム130は、基台部132とその上に昇降自在に配置されている昇降部131を有している。
【0066】
基台部132は、さらに、前端に設けられて後述のスピットンSに対して通電自在に接続する電極ソケット部分132bを備えるスピットン接続部分132aを備えている。
【0067】
電極ソケット部分132bは、上向きに開口して設けられ、スピットンSの接続アーム部分S10aから下向きに形成された電極プラグ部分S10bと電気的に接続可能になっている。
【0068】
<走行車輪>
走行車輪140は、
図1、
図2、
図6及び
図8に示すように、基台部132の下面側の前方両隅に配置されている駆動輪141と、後方中央に配置されている操舵輪142と、前方2つの駆動輪141のそれぞれを連結する駆動シャフト141aからなる。
【0069】
<駆動装置>
駆動装置170は、駆動輪141を回転させるための走行駆動用モーター172と、この走行駆動用モーター172の回転を前方側の駆動シャフト141aに伝達する伝達ベルト部173と走行駆動用モーター172に電力を供給する電源バッテリー171を備えている。
【0070】
このように、自走式歯科診療椅子100は、走行車輪140及び駆動装置170を備えていることにより、床面上を電動走行自在となっている。
【0071】
<昇降機構>
昇降機構180は、昇降用モーター部181、ポンプ部182、タンク部183、電磁弁部184、ジャッキ部185から構成されている。
【0072】
タンク部183は、ラム部分183a、ポンプケース部分183b及び収容領域部分183cを備えており、電磁弁部184は、第1電磁弁部分184a、第2電磁弁部分184b、第3電磁弁部分184c及び第4電磁弁部分184dから構成されている。
【0073】
ジャッキ部185は、
図8に示すように、基台部132の底面側に合計4個配置されており、走行車輪140と代替して着地する。
【0074】
ジャッキ部185は、
図9A及び
図9Bに示すように、基台部132の底板部分132cに形成された開口に挿入される中空のガイドブッシュ部185aと、このガイドブッシュ部185aに載置される油圧シリンダー185bと、油圧シリンダー185bの先端に接続されて床面Fと対向する接触パッド185cとを有している。
【0075】
昇降部131は、基台部132に対して上下方向に昇降自在であり、基台部132に設けられた昇降用モーター部181と、基台部132の底面視中央部分に設けられてオイルが貯蓄されたタンク部183と、このタンク部183の収容領域部分183c上に固定されたポンプケース部分と、このポンプケース部分183bの中央部分に設けられたラム部分183aとを有している。
【0076】
タンク部183は、平面視で略円形状のタンク基部の中央部分に平面視矩形状のタンク部室が固定され、タンク室内には、自走式歯科診療椅子100の昇降用に使用されるオイルが貯えられている。
【0077】
ポンプケース部分183bは、底板部分132cの前後方向に延びた脚部の中央部分に、平面視で円形状のオイル導入室が固定されている。
【0078】
タンク部183とポンプケース部分183bとは、オイル流路で接続されており、ラム部分183aの上方に、コンターシート120のシート部121が固定されている。
【0079】
<制御装置>
制御装置190は、
図10に示すように、各種の入力信号に応じて自走式歯科診療椅子100の各種動作を制御する。
【0080】
<スピットン>
自走式歯科診療椅子100を構成するものではないが、歯科診療において用いられ、自走式歯科診療椅子100と電気的に接続するスピットンSについて説明する。
【0081】
スピットンSは、スピットンSに供給された商用電源からの電力で駆動し、電源や給水源等を内蔵するスピットン本体部S10と、スピットン本体部S10の上部に設けられた給水部S12と、患者がうがいした水を受けるボウル部S11とを有している。
【0082】
スピットン本体部S10は、直方体状であり、その底部には、スピットンSの側方(自走式歯科診療椅子100側)に向けて延出する接続アーム部分S10aが形成されている。
【0083】
接続アーム部分S10aの下面には、電極プラグ部分S10b(
図9A参照)が設けられる。
【0084】
<システム構成>
次に、このように構成された自走式歯科診療椅子100のシステム構成について、
図10に基づいて説明する。
【0085】
制御装置190は、進退操作部としての進退スロットル部152R、昇降操作部としての昇降スロットル部152L、ハンドル起倒センサ部159、方向転換センサ部157、バックレスト起倒センサ部116、補助操作部114、走行駆動用モーター172、方向転換用モーター部174、昇降用モーター部181、基台部132内に設けられた電磁弁部184と電気的に接続されている。
【0086】
この構成により、制御装置190には、方向転換センサ部157から方向転換量信号が、ハンドル起倒センサ部159からハンドル起倒信号が、操作ハンドル150から進退制御信号としての前進信号及び後退信号、並びに、昇降信号としての上昇信号及び下降信号が、補助操作部から昇降信号として上昇信号及び下降信号、並びに、バックレスト傾倒信号としてバックレスト起立信号及びバックレスト傾倒信号が、それぞれ送信され、制御装置190に入力される。
【0087】
また、制御装置190は、受信した各種信号に応じて、走行駆動用モーター172と方向転換用モーター部174と昇降用モーター部181と電磁弁部184とをそれぞれ制御する。
【0088】
まず、操作ハンドル150を用いた自走式歯科診療椅子100の電動走行について説明する。以下、患者が自走式歯科診療椅子100上に座っており、歯科医師又は歯科医院スタッフが、自走式歯科診療椅子100に対して指示操作する場合について説明する。
【0089】
<進退制御>
操作ハンドル150の進退スロットル部152Rが初期位置にある場合、操作ハンドル150から制御装置190に駆動信号が送信されないため、駆動装置170は走行駆動用モーター172を駆動せず、あるいは、駆動を止めることにより駆動輪141が回転せず、自走式歯科診療椅子100は静止する。
【0090】
進退スロットル部152Rを初期位置から前方又は後方に回転させると、操作ハンドル150から制御装置190に進退制御信号が送信される。
【0091】
進退制御信号に対する制御装置190の制御内容は、上述のバックレスト起倒センサ部116から制御装置190に送信される着座姿勢信号の入力の有無によって変化する。
【0092】
バックレスト起倒センサ部116は、バックレスト110がコンターシート120に対して起立した着座姿勢をとっている場合には着座姿勢信号を制御装置190に送信するが、バックレスト110がコンターシート120に対して傾倒した診療姿勢をとっている場合には、着座姿勢信号を送信しない。
【0093】
制御装置190は、バックレスト起倒センサ部116から着座姿勢信号が送信されていないとき、つまり、バックレスト110がコンターシート120に対して傾倒した診療姿勢にある場合には、前進信号又は後退信号が入力されても、これを無視して進退制御を実行しない。
【0094】
すなわち、制御装置190は、バックレスト110がコンターシート120に対して起立した着座姿勢にある場合にのみ走行駆動用モーター172を駆動して自走式歯科診療椅子100を前進又は後退させるよう制御する。
【0095】
これは、バックレスト110が診療姿勢になっている診療中に、誤操作等により自走式歯科診療椅子100が不用意に移動することによる、事故の発生を防止するためである。
【0096】
操作ハンドル150の進退スロットル部152Rを初期位置から前方に回転させると、操作ハンドル150から制御装置190に前進信号が送信される。
【0097】
前進信号を受信した制御装置190は、バックレスト起倒センサ部116から着座姿勢信号が入力されている場合にのみ、走行駆動用モーター172を駆動制御して駆動輪141を回転させ、自走式歯科診療椅子100が前進するように回転させる。
【0098】
操作ハンドル150の進退スロットル部152Rを初期位置から後方に回転させると、操作ハンドル150から制御装置190に後退信号が送信される。
【0099】
後退信号を受信した制御装置190は、バックレスト起倒センサ部116から着座姿勢信号が入力されている場合にのみ、走行駆動用モーター172を駆動制御して駆動輪141を回転させ、自走式歯科診療椅子100が後退するように回転させる。
【0100】
<方向転換制御>
操作ハンドル150が後ろ向きに倒して突出させ、操縦可能状態のうちの初期位置にある場合、操作ハンドル150から制御装置190に方向制御信号が送信されないため、駆動装置170は方向転換用モーター部174を駆動せず、あるいは、操舵輪142を初期の向きに戻して、自走式歯科診療椅子100は直進する。
【0101】
操作ハンドル150を初期位置から右に回動させると、方向転換センサ部157がこれを検知して方向制御信号としての右回動信号を制御装置190に送信する。右回動信号を受信した制御装置190は、方向転換部としての方向転換用モーター部174を駆動させて、操舵輪142を初期位置から右向きに回動させる。
【0102】
操作ハンドル150を左に回動させると、方向転換センサ部157がこれを検知して方向制御信号としての左回動信号を制御装置190に送信する。
右回動信号を受信した制御装置190は、方向転換部としての方向転換用モーター部174を駆動させて、操舵輪142を左向きに回動させる。
【0103】
したがって、操作ハンドル150を操作することにより、移動中の自走式歯科診療椅子100を左右いずれの方向にも方向転換することができる。
【0104】
<操作ハンドルによる昇降動作>
次に、
図7を参照して、自走式歯科診療椅子100の昇降部131の昇降(すなわち、コンターシート120の昇降)について説明する。
【0105】
操作ハンドル150の昇降スロットル部152Lを初期位置から前方に回転させると、上昇信号が操作ハンドル150から制御装置190に送信され、他方、操作ハンドル150の昇降スロットル部152Lを初期位置から後方に回転させると、下降信号が操作ハンドル150から制御装置190に送信される。
【0106】
操作ハンドル150から送信された上昇信号及び下降信号に対する制御装置190の制御内容は、制御装置190に入力される進退制御信号の有無によって変化する。
【0107】
制御装置190は、操作ハンドル150から進退制御信号を受信している間は、入力された上昇信号及び下降信号を無視して、昇降部131を介してコンターシート120を上昇又は下降させる昇降制御を実行しない。
【0108】
これは、自走式歯科診療椅子100が前進又は後退の移動中に、不用意にコンターシート120が上昇又は下降することによる事故の発生を防止するためである。
【0109】
また、制御装置190は、操作ハンドル150から進退制御信号を受信していないときには、補助操作部114から送信された上昇信号又は下降信号の入力に対して、操作ハンドル150から送信された場合と同様に昇降部131を介してコンターシート120を上昇又は下降させる制御を行う。
【0110】
したがって、制御装置190は、進退制御信号を受信していないとき、すなわち、自走式歯科診療椅子100が停止しているときにのみ、昇降機構180を昇降制御する。
【0111】
昇降部131を上昇させるために操作ハンドル150の昇降スロットル部152Lを初期位置から前方に回転させると、操作ハンドル150から制御装置190に上昇信号が送信される。
【0112】
上昇信号を受信した制御装置190は、進退制御信号を受信していないときにのみ、電磁弁部184の第1電磁弁部分184aを開き、昇降用モーター部181を駆動させてポンプ部182を駆動させる。
【0113】
これにより、タンク部183内のオイルが所定の圧力でポンプケース部分183b内に送られてラム部分183aに加わり、昇降部131を介してコンターシート120が上昇する。
【0114】
昇降部131を下降させるために操作ハンドル150の昇降スロットル部152Lを初期位置から後方に回転させると、操作ハンドル150から制御装置190に下降信号が送信される。
【0115】
下降信号を受信した制御装置190は、進退制御信号を受信していないときにのみ、電磁弁部184の第2電磁弁部分184bを開き、昇降用モーター部181を駆動させる。
【0116】
これにより、ポンプケース部分183b内のオイルが昇降部131及びコンターシート120等の重さで下方に押され、ポンプケース部分183bから出たオイルが第2電磁弁部分184bを通ってタンク部183に戻り、昇降部131を介してコンターシート120が下降する。
【0117】
<補助操作部による昇降動作>
バックレスト110に設けられた補助操作部114は、シート上昇指示ボタン114aを押すと、上昇信号を制御装置190に送信し、シート下降指示ボタン114bを押すと、下降信号を制御装置に送信する。
【0118】
さらに、補助操作部114から送信された上昇信号及び下降信号に対する制御装置190の制御内容は、後述のスピットンSと自走式歯科診療椅子100とが電気的に接続されているか否かによって変化する。
【0119】
スピットンSと自走式歯科診療椅子100とが電気的に接続されていないときには、制御装置190は、上昇信号及び下降信号を無視して、昇降部131を上昇又は下降させる昇降制御を実行しない。
【0120】
これは、自走式歯科診療椅子100がスピットンSと電気的に接続して治療ができるようになる前に、不用意にコンターシート120が上昇又は下降することによる事故の発生を防止するためである。
【0121】
また、スピットンSと自走式歯科診療椅子100とが電気的に接続されている時には、制御装置190は、補助操作部114から送信された上昇信号又は下降信号の入力に対して、操作ハンドル150から送信された場合と同様に昇降部131を介してコンターシート120を上昇又は下降させる制御を行う。
【0122】
すなわち、制御装置190は、スピットンSと電気的に接続されているときにのみ昇降機構を昇降制御する。
【0123】
<昇降機構>
次に、このように構成された自走式歯科診療椅子100の昇降機構(基台部132に対する昇降部131の昇降、及び、床面Fに対する自走式歯科診療椅子100の昇降)について、
図6ないし
図10に基づいて説明する。
【0124】
まず、基台部132に対する昇降部131の昇降について説明する。
【0125】
昇降部131は、
図7に示すように、昇降用モーター部181により駆動するポンプ部182と、このポンプ部182の下流側に接続されてラム部分183aへの流路を開閉する第1電磁弁部分184aと、ラム部分183aの下流側に接続されてタンク部183への流路を開閉する第2電磁弁部分184bとをさらに有している。
【0126】
コンターシート120を上昇させる場合、第1電磁弁部分184aを開き昇降用モーター部181でポンプ部182を駆動する。
これにより、タンク部183内のオイルが所定の圧力でポンプケース部分183b内に送られてラム部分183aに加わり、昇降部131とともにコンターシート120が上昇する。
【0127】
コンターシート120を下降させる場合、ポンプ部182の駆動を止めて第1電磁弁部分184aを閉じた状態で第2電磁弁部分184bを開く。
【0128】
これにより、ポンプケース部分183b内のオイルがコンターシート120及び昇降部131の重さで下方に押され、ポンプケース部分183bから出たオイルが第2電磁弁部分184bを通ってタンク部183に戻り、昇降部131とともにコンターシート120が下降する。
【0129】
<自走式歯科診療椅子全体の昇降>
次に、床面Fに対する自走式歯科診療椅子100全体の昇降について、
図7ないし
図9Bに基づいて説明する。
【0130】
昇降部131は、
図7に示すように、ポンプ部182の上流側に接続されてジャッキ部185への流路を開閉する電磁弁部184の第3電磁弁部分184cと、ジャッキ部185の下流側に接続されてタンク部183への流路を開閉する電磁弁部184の第4電磁弁部分184dとをさらに有している。
【0131】
自走式歯科診療椅子100の駆動輪141及び操舵輪142が着地している
図9Aの状態から自走式歯科診療椅子100自体を上昇させて駆動輪141及び操舵輪142を床面Fから離間させて
図9Bの状態にする場合、第3電磁弁部分194cを開き昇降用モーター部181でポンプ部82を駆動する。
【0132】
これにより、タンク部183内のオイルが所定の圧力でジャッキ部185の油圧シリンダー185bに送られて接触パッド185cが床面Fに着地した後、さらにオイルが送り込まれることにより、
図9Bに示すように駆動輪141及び操舵輪142が床面Fから離間する、すなわち、自走式歯科診療椅子100全体が上昇する。
【0133】
自走式歯科診療椅子100のジャッキ部185の接触パッド185cが着地している
図9Bの状態から自走式歯科診療椅子100全体を下降させて走行車輪140を床面Fに着地させる場合、ポンプ部182の駆動を止めて第3電磁弁部分184cを閉じた状態で第4電磁弁部分184dを開く。
【0134】
これにより、接触パッド185cを除く自走式歯科診療椅子100全体の重さで油圧シリンダー185bが下方に押され、ジャッキ部185から出たオイルが第4電磁弁部分184dを通ってタンク部183に戻り、自走式歯科診療椅子100全体が下降して、
図9Aに示すように駆動輪141及び操舵輪142が、床面Fに着地する。
【0135】
<起倒操作>
制御装置190は、補助操作部114のバックレスト起立指示ボタン114cの操作により送信されるバックレスト起立信号、又は、バックレスト傾倒指示ボタン114dの操作により送信されるバックレスト傾倒信号の入力に応じて、不図示の起倒手段を制御してバックレスト110を起倒させる。
【0136】
<自走式歯科診療椅子とスピットンとの電気的接続>
自走式歯科診療椅子100のスピットン接続部分132aの上面に設けられた電極ソケット部分132bが、スピットンSの接続アーム部分S10aの下面に設けられた電極プラグ部分S10bの真下になるように位置決めし、前述のようにジャッキ部185を駆動させれば、自走式歯科診療椅子100全体が上昇して電極プラグ部分S10bと電極ソケット部分132bとが係合する。
【0137】
スピットンSの電極プラグ部分S10bと自走式歯科診療椅子100の電極ソケット部分132bが接続されると、スピットンSに供給されている商用電源からの電力が、自走式歯科診療椅子100にも供給可能となるため、スピットンSに供給されている商用電源の電力が、自走式歯科診療椅子100に供給されて各種装置の駆動源となるとともに、電源バッテリー171を充電することができる。
【符号の説明】
【0138】
100・・・自走式歯科診療椅子
110・・・バックレスト
111・・・背凭れ部
112・・・ヘッドレスト部
113・・・アームレスト部
114・・・補助操作部
114a・・シート上昇指示ボタン
114b・・シート下降指示ボタン
114c・・バックレスト起立指示ボタン
114d・・バックレスト傾倒指示ボタン
115・・・背面部
116・・・バックレスト起倒センサ部
120・・・コンターシート
121・・・シート部
122・・・レッグレスト部
123・・・フットレスト部
130・・・ベースフレーム
131・・・昇降部
132・・・基台部
132a・・スピットン接続部分
132b・・電極ソケット部分
132c・・底板部分
140・・・走行車輪
141・・・駆動輪
141a・・駆動シャフト
142・・・操舵輪
150・・・操作ハンドル(操縦装置)
151・・・ハンドル本体部
152R・・進退スロットル部(進退操作部)
152L・・昇降スロットル部(昇降操作部)
153・・・把持部
154・・・ブッシュ部
155・・・ハンドル起倒軸部
156・・・方向転換シャフト部
157・・・方向転換センサ部
158・・・つるまきばね(飛出防止機構)
159・・・ハンドル起倒センサ部
160・・・ハンドル収容凹部
161・・・ハンドル収容凹部側壁部
162・・・上下調整用レール部(取付位置調整機構)
163・・・ハンドル取付板部(取付位置調整機構)
164・・・ダンパー部(衝撃吸収機構)
170・・・駆動装置
171・・・電源バッテリー
172・・・走行駆動用モーター
173・・・伝達ベルト部
174・・・方向転換用モーター部(方向転換部)
180・・・昇降機構
181・・・昇降用モーター部
182・・・ポンプ部
183・・・タンク部
183a・・ラム部分
183b・・ポンプケース部分
183c・・収容領域部分
184・・・電磁弁部
184a・・第1電磁弁部分
184b・・第2電磁弁部分
184c・・第3電磁弁部分
184d・・第4電磁弁部分
185・・・ジャッキ部
190・・・制御装置
S・・・・・スピットン
S10・・・スピットン本体部
S10a・・接続アーム部分
S10b・・電極プラグ部分
S11・・・ボウル部
S12・・・給水部
F・・・・・床面
CO1・・・スロットル部用隙間寸法
CO2・・・把持部用隙間寸法