(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】編成樹脂網状構造体からなる敷き寝具
(51)【国際特許分類】
A47C 27/12 20060101AFI20240604BHJP
D04H 3/14 20120101ALI20240604BHJP
【FI】
A47C27/12 B
D04H3/14
(21)【出願番号】P 2020112448
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2023-06-19
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.令和1年7月18日,出荷 2.令和1年11月22日,Instagram(インスタグラム) 3.令和1年12月5日,ウェブサイト 4.令和1年12月5日,内覧会 5.令和2年1月20日,ウェブサイト 6.令和2年6月8日,Instagram(インスタグラム) 7.令和2年6月19日,ウェブサイト 8.令和2年6月23日,ウェブサイト
(73)【特許権者】
【識別番号】511192768
【氏名又は名称】株式会社エコ・ワールド
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】小島 教治
(72)【発明者】
【氏名】岩本 拓真
【審査官】大橋 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-130283(JP,A)
【文献】実開昭61-45858(JP,U)
【文献】米国特許第9021639(US,B1)
【文献】特開2017-176539(JP,A)
【文献】特開2013-42844(JP,A)
【文献】実開昭63-1452(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/12
D04H 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の嵩密度を有する矩形の第一領域と、
前記第一領域よりも嵩密度が所定以上大きい矩形の第二領域と、
前記第一領域よりも嵩密度が所定以上小さい矩形の第三領域とを有し、
前記第一領域と前記第二領域が交互に配置されてなる第一の行及び第一の列と、前記第一領域と前記第三領域が交互に配置されてなる第二の行及び第二の列とを備え、
前記第一の行と前記第二の行が交互に配置され、前記第一の列と前記第二の列が交互に配置され、隣接する行及び列において前記第一領域同士は対角線上に配置されていることを特徴とする編成樹脂網状構造体からなる敷き寝具。
【請求項2】
前記第一領域、前記第二領域、及び前記第三領域の大きさが略同一であることを特徴とする請求項1に記載の編成樹脂網状構造体からなる敷き寝具。
【請求項3】
前記第一領域、前記第二領域、及び前記第三領域は上面視で略正方形であり、前記略正方形の大きさが3cm角以上20cm角以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の編成樹脂網状構造体からなる敷き寝具。
【請求項4】
前記第二領域の嵩密度は前記第一領域の嵩密度の1.2倍以上であり、前記第三領域の嵩密度は前記第一領域の嵩密度の0.8倍以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の編成樹脂網状構造体からなる敷き寝具。
【請求項5】
前記第一領域は、隣接する行列の前記第一領域とは嵩密度が異なり、先隣りの行列の前記第一領域とは嵩密度が略同一であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の編成樹脂網状構造体からなる敷き寝具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、編成樹脂網状構造体からなるマットレス等の敷き寝具に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の樹脂が無秩序に絡まり合い部分的に熱溶着した網状の三次元構造を有する編成樹脂網状構造体が知られている。
例えば特許文献1には、溶融した熱可塑性樹脂を複数のノズルより下方へ押出し、一部水没した1対のベルトコンベアーの間に自然降下させ、降下速度より遅く引き取ることにより立体網状構造体を製造する際に、押出された溶融樹脂の束の巾より1対のベルトコンベアーの間隔が狭く、かつベルトコンベアーが水没する前に溶融樹脂の束の両面あるいは片面がベルトコンベアーに接触するようにして製造した立体網状構造体が開示されている。
また特許文献2には、腰臀部位と背部位と脚部位とで嵩密度を異ならせた2層構造の編成樹脂網状構造体からなる敷き寝具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-241264号公報
【文献】特開2017-086321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の立体網状構造体は、表面部の空隙率を中央部の空隙率よりも低くするものではあるが、就寝者の身体部位に対応させ場所によって硬さを異ならせたものではない。
特許文献2の編成樹脂網状構造体からなる敷き寝具は、就寝者の身体部位に対応させ場所によって硬さを異ならせたものではあるが、背部、腰臀部、及び脚部という比較的大きい身体部位を対象としているため、嵩密度が異なる各領域の大きさが編成樹脂網状構造体の約1/3というように比較的大きなものである。
そこで本発明は、就寝者の例えば踵や肘など、比較的小さい身体部位のみを沈み込ませることを可能として就寝時の快適性を高めた編成樹脂網状構造体からなる敷き寝具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の本発明の編成樹脂網状構造体1からなる敷き寝具は、所定の嵩密度を有する矩形の第一領域10と、第一領域10よりも嵩密度が所定以上大きい矩形の第二領域20と、第一領域10よりも嵩密度が所定以上小さい矩形の第三領域30とを有し、第一領域10と第二領域20が交互に配置されてなる第一の行A及び第一の列Cと、第一領域10と第三領域30が交互に配置されてなる第二の行B及び第二の列Dとを備え、第一の行Aと第二の行Bが交互に配置され、第一の列Cと第二の列Dが交互に配置され、隣接する行及び列において第一領域10同士は対角線上に配置されていることを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の編成樹脂網状構造体1からなる敷き寝具において、第一領域10、第二領域20、及び第三領域30の大きさが略同一であることを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の本発明は、請求項1又は請求項2に記載の編成樹脂網状構造体1からなる敷き寝具において、第一領域10、第二領域20、及び第三領域30は上面視で略正方形であり、略正方形の大きさが3cm角以上20cm角以下であることを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の本発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の編成樹脂網状構造体1からなる敷き寝具において、第二領域20の嵩密度は第一領域10の嵩密度の1.2倍以上であり、第三領域30の嵩密度は第一領域10の嵩密度の0.8倍以下であることを特徴とする。
【0009】
請求項5記載の本発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の編成樹脂網状構造体1からなる敷き寝具において、第一領域10は、隣接する行列の第一領域10とは嵩密度が異なり、先隣りの行列の第一領域10とは嵩密度が略同一であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、就寝者の例えば踵や肘など、比較的小さい身体部位のみを沈み込ませることを可能として就寝時の快適性を高めた編成樹脂網状構造体からなる敷き寝具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施例による編成樹脂網状構造体からなる敷き寝具の上面図
【
図2】同編成樹脂網状構造体からなる敷き寝具の一部の外観写真
【
図3】同編成樹脂網状構造体からなる敷き寝具の製造装置を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第1の実施の形態による編成樹脂網状構造体からなる敷き寝具は、所定の嵩密度を有する矩形の第一領域と、第一領域よりも嵩密度が所定以上大きい矩形の第二領域と、第一領域よりも嵩密度が所定以上小さい矩形の第三領域とを有し、第一領域と第二領域が交互に配置されてなる第一の行及び第一の列と、第一領域と第三領域が交互に配置されてなる第二の行及び第二の列とを備え、第一の行と第二の行が交互に配置され、第一の列と第二の列が交互に配置され、隣接する行及び列において第一領域同士は対角線上に配置されているものである。
本実施の形態によれば、第三領域は第一領域及び第二領域よりも嵩密度が小さいため、編成樹脂網状構造体に仰臥した就寝者の踵や肘等が第三領域に位置して沈み込みやすくなる。また、第三領域の周囲には比較的嵩密度が大きい第一領域及び第二領域が配置されており背中や腰等は沈み込みにくくなっているため寝返りを打ちやすい。これにより、就寝時の快適性を向上させることができる。
【0013】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による編成樹脂網状構造体からなる敷き寝具において、第一領域、第二領域、及び第三領域の大きさが略同一であるものである。
本実施の形態によれば、就寝者の踵や肘等が第三領域に位置しやすくなると共に就寝者が寝返りを打ちやすくなる。
【0014】
本発明の第3の実施の形態は、第1又は第2の実施の形態による編成樹脂網状構造体からなる敷き寝具において、第一領域、第二領域、及び第三領域は上面視で略正方形であり、略正方形の大きさが3cm角以上20cm角以下であるものである。
本実施の形態によれば、就寝者の踵や肘等が第三領域に位置して沈み込みやすくなると共に、背中や臀部等は第三領域に位置しても沈み込みにくくなる。
【0015】
本発明の第4の実施の形態は、第1から第3のいずれか一つの実施の形態による編成樹脂網状構造体からなる敷き寝具において、第二領域の嵩密度は第一領域の嵩密度の1.2倍以上であり、第三領域の嵩密度は第一領域の嵩密度の0.8倍以下であるものである。
本実施の形態によれば、より一層就寝者の踵や肘等が第三領域に位置しやすくなると共に、寝返りを打ちやすくなる。
【0016】
本発明の第5の実施の形態は、第1から第4のいずれか一つの実施の形態による長編成樹脂網状構造体からなる敷き寝具において、第一領域は、隣接する行列の第一領域とは嵩密度が異なり、先隣りの行列の第一領域とは嵩密度が略同一であるものである。
本実施の形態によれば、就寝者の好みに合わせて硬さをより細かく調整することが可能となる。
【実施例】
【0017】
以下、本発明の一実施例による編成樹脂網状構造体からなる敷き寝具について説明する。
図1は本実施例による編成樹脂網状構造体からなる敷き寝具の上面図、
図2は編成樹脂網状構造体からなる敷き寝具の一部の外観写真である。
編成樹脂網状構造体1は、複数の糸状溶融樹脂が絡み合うとともに部分的に熱溶着されてなる。編成樹脂網状構造体1は、熱可塑性樹脂を所定温度で溶融混練して得られる溶融樹脂を糸状に流れ落として冷却することで形成される。編成樹脂の線径は、0.2mm~3mm程度の範囲で任意に設定可能である。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂などを、単独又は複数混合して用いられる。これらの熱可塑性樹脂を原料として製造された編成樹脂網状構造体1は、使用後にリサイクルして再び編成樹脂網状構造体1の原料等として利用することができる。また、編成樹脂網状構造体1は、水等でも洗浄可能であるため清潔に保ちやすい。
編成樹脂網状構造体1からなる敷き寝具は、マットレスや敷布団等として用いることができる。例えばシングルサイズのマットレスとして提供する場合は、マットレスの一般的な縦横寸法に基づき、縦(長さ)1950mm×横(幅)1000mmとなるように成形する。また、編成樹脂網状構造体1の厚みは1cm~20cmの範囲で設定することが好ましい。本実施例では編成樹脂網状構造体1の厚みを2.5cmとしている。編成樹脂網状構造体1は、厚みを小さくすると軽量性及び柔軟性が高まり、厚みを大きくすると軽量性及び柔軟性はやや低くなるもののしっかりとした感触となる。このため、厚みを変えることで、使用者の好みに応じた敷き寝具を提供することができる。
【0018】
編成樹脂網状構造体1は、所定の嵩密度を有する矩形の第一領域10と、第一領域10よりも嵩密度が所定以上大きい矩形の第二領域20と、第一領域10よりも嵩密度が所定以上小さい矩形の第三領域30をそれぞれ複数備え、第一領域10と第二領域20が交互に配置されてなる行列と、第一領域10と第三領域30が交互に配置されてなる行列によって、格子状に構成される。
図1では、第一領域10を斜線マス、第二領域20を黒マス、第三領域30を白マスで示している。
図1において、行は第一領域10及び第二領域20からなる第一の行Aと第一領域10及び第三領域30からなる第二の行Bが交互に配置され、列は第一領域10及び第二領域20からなる第一の列Cと第一領域10及び第三領域30からなる第二の列Dが交互に配置され、隣り合う行又は列において第一領域10同士は対角線上に位置している。なお、
図1では編成樹脂網状構造体1の短手方向(幅方向)を行、長手方向(長さ方向)を列としているが、行と列は逆であってもよい。
【0019】
格子状に構成された編成樹脂網状構造体1において、各々の第三領域30は、隣接する四つの第一領域10と四つの第二領域20によって囲まれている。上面視で第一領域10は第三領域30の上下左右に位置し、第二領域20は第三領域30の斜め上下左右に位置する。
第三領域30は第一領域10及び第二領域20よりも嵩密度が小さい(柔らかい)ため、第三領域30を第一領域10及び第二領域20で囲うことにより編成樹脂網状構造体1に仰臥した就寝者の踵や肘等が第三領域30に位置して沈み込みやすくなる。また、第三領域30の周囲に比較的嵩密度が大きい第一領域10及び第二領域20が配置されていることにより背中や腰等は沈み込みにくくなって寝返りを打ちやすくなる。これにより、就寝時の快適性を向上させることができる。
なお、
図1に示すように、第一の行A及び第一の列Cが編成樹脂網状構造体1の端部に位置することが好ましい。第一の行A及び第一の列Cには嵩密度が小さい第三領域30が含まれないため、第一の行A及び第一の列Cが端部に配置されていることにより、編成樹脂網状構造体1に人が端座したときの沈み込みや、経年劣化によるヘタリを防止することができる。
【0020】
編成樹脂網状構造体1において、第一領域10、第二領域20、及び第三領域30の大きさは、略同一としている。これにより、より一層就寝者の踵や肘等が第三領域30に位置しやすくなると共に寝返りを打ちやすくなる。
また、第一領域10、第二領域20、及び第三領域30は上面視で略正方形としている。略正方形の大きさは、3cm角以上20cm角以下であることが好ましく、3cm角以上10cm角以下であることがより好ましい。本実施例では当該略正方形の一辺の長さを5cmとしている。これにより、就寝者の踵や肘等が第三領域30に位置して沈み込みやすくなると共に、背中や臀部等は第三領域30に位置しても沈み込みにくくなる。
【0021】
ひとつあたりの第二領域20の嵩密度は第一領域10の嵩密度の1.2倍以上2倍以下であり、ひとつあたりの第三領域30の嵩密度は第一領域10の嵩密度の0.8倍以下0.3倍以上であることが好ましい。本実施例では、第一領域10ひとつあたりの嵩密度を約0.07g/cm
3、第二領域20ひとつあたりの嵩密度を約0.11g/cm
3、第三領域30ひとつあたりの嵩密度を約0.05g/cm
3としている。これにより、より一層就寝者の踵や肘等が第三領域30に位置しやすくなると共に、寝返りを打ちやすくなる。
下表1は、
図1に円で囲ったように隣接する四つの領域について領域ごとに所定サイズ(縦×横×厚み=3cm×3×2.5cm)に切断したものを各20個ずつサンプルIとサンプルIIの2セット準備し、領域ごとの重量を計測した結果を示している。「ア」は第二領域20、「イ」は第一の行Aと第二の列Dが重なった第一領域10、「ウ」は第二の行Bと第一の列Cが重なった第一領域10、「エ」は第三領域30である。
【表1】
【0022】
図3は本実施例による編成樹脂網状構造体からなる敷き寝具の製造装置を示す図、
図4は樹脂プールの底面の一部を示す図である。
本実施例による製造装置は、熱可塑性樹脂を所定温度で溶融混練して溶融樹脂とし、所定の押し出し速度で溶融樹脂を押し出す押出機110と、押出機110から押し出された溶融樹脂を受けて底面131の多数の孔(ノズル)132から溶融樹脂を糸状に流れ落とす樹脂プール130と、冷却水を貯留する冷却水槽140と、樹脂プール130から流れ落ちる糸状溶融樹脂120が冷却水で冷却されてなる編成樹脂121を下方に引き取る引取機150とを備えている。引取機150は、複数の引取ローラ151を対向して備え、冷却水槽140内に配置されている。また、樹脂プール130と引取機150との間には、ガイダー170が設けられている。
糸状溶融樹脂120は、樹脂プール130の底面131の孔132から流れ落ちるときに形成される。糸状溶融樹脂120が冷却水で冷却されてなる編成樹脂121は、引取機150で冷却水槽140の底板側に引き取られ、引取機150を通過した後、冷却水槽140内に配置された引上部材である複数の搬送ローラ160によって、冷却水中で冷却されながら斜め上方へ引き上げられて冷却水槽140外へと搬送される。その後、冷却を経て所定の寸法に裁断することにより、敷き布団としての編成樹脂網状構造体1が形成される。なお、本実施例では、押出方向と直交する方向が敷き寝具の側面(長手方向)となる。
【0023】
編成脂網状構造体における第一領域10、第二領域20、及び第三領域30は、押出方向に平行な方向と直交する方向のそれぞれに粗密を設けることで形成される。
押出方向に平行な方向の粗密は、例えば、引取機150の引き取り速度を所定時間ごとに変えることにより設ける。引き取り速度によって粗密を設ける場合は、引取機150が編成樹脂121を引き取る速度として、第一の速度と、第一の速度よりも遅い第二の速度を設定する。編成樹脂121のうち引取機150に第二の速度で引き取られた部分は第一の速度で引き取られた部分よりも嵩密度が増すため、第一の速度で引き取られた部分は嵩密度が小さい疎の部分となり、第二の速度で引き取られた部分は嵩密度が大きい密の部分となる。よって、所定時間ごとに第一の速度と第二の速度を交互に切り替えることで、押出方向に平行な方向において、嵩密度が大きい列(第一の列C)と小さい列(第二の列D)が交互に形成される。ここで、第一領域10と第二領域20と第三領域30の大きさを略同一とする場合は、第一の速度で引き取る時間の長さと、第二の速度で引き取る時間の長さを等しくすることで、第一の列Cの幅と第二の列Dの幅を均等にする。
また、押出方向に直交する方向の粗密は、例えば、樹脂プール130の底面131に設ける孔132の単位面積当たりの数を所定範囲ごとに変えることにより設ける。樹脂プール130の孔132の単位面積当たりの数によって粗密を設ける場合は、
図4に示すように、所定範囲内に所定数の孔132を有する第一の孔群132Aと、所定範囲内に第一の孔群132Aよりも少ない数の孔132を有する第二の孔群132Bを、樹脂プール130の底面131に交互に形成する。編成樹脂121のうち第一の孔群132Aに対応する部分は、第二の孔群132Bに対応する部分よりも嵩密度が増すため、第一の孔群132Aから流れ落ちた部分は嵩密度が大きい密の部分となり、第二の孔群132Bから流れ落ちた部分は嵩密度が小さい疎の部分となる。これにより、押出方向に直交する方向において、嵩密度が大きい行(第一の行A)と小さい行(第二の行B)が交互に形成される。ここで、第一領域10と第二領域20と第三領域30の大きさを略同一とする場合は、第一の孔群132Aの範囲の大きさと第二の孔群132Bの範囲の大きさを等しくすることで、第一の行Aの幅と第二の行Bの幅を均等にする。
また、押出方向に平行な方向における粗の部分の嵩密度と密の部分の嵩密度が、押出方向に直交する方向における粗の部分の嵩密度と密の部分の嵩密度にそれぞれ等しくなるように引取速度や単位面積当たりの孔132の数を調整する。
このように押出方向に平行な方向と直交する方向の双方にそれぞれ粗密を設けることで、行と列との粗密の重なりに応じて第一領域10、第二領域20、又は第三領域30のいずれかが形成される。嵩密度が大きい行(第一の行A)又は列(第一の列C)のうち嵩密度が大きい列(第一の列C)又は行(第一の行A)と重ならない領域は第一領域10となり、嵩密度が大きい行又は列のうち嵩密度が大きい列又は行と重なる領域は最も嵩密度が大きい第二領域20となり、それ以外の領域(嵩密度が小さい行(第二の行B)又は列(第二の列D)のうち嵩密度が大きい列又は行と重ならない領域)は最も嵩密度が小さい第三領域30となる。
【0024】
なお、第一領域10は、隣接する行列の第一領域10とは嵩密度が異なり、先隣りの行列の第一領域10とは嵩密度が略同一とすることもできる。すなわちこの場合は、第一の行Aと第二の列Dが重なった第一領域10(
図1のイ)の嵩密度と、第二の行Bと第一の列Cが重なった第一領域10(
図1のウ)の嵩密度が異なる。これにより、就寝者の好みに合わせて硬さをより細かく調整することが可能となる。
このように第一領域10同士で嵩密度の差を設ける場合は、編成樹脂網状構造体1を製造する際、押出方向に平行な方向における粗の部分の嵩密度と密の部分の嵩密度が、押出方向に直交する方向における粗の部分の嵩密度と密の部分の嵩密度とそれぞれ異なるように、引取機150の引取速度や、樹脂プール130の底面131の単位面積当たりの孔132の数を調整する。なお、嵩密度が大きいほうの第一領域10の嵩密度は第二領域20の嵩密度よりは小さく、嵩密度の小さいほうの第一領域10は第三領域30の嵩密度よりは大きくなるようにする。また、第二領域20は二種類の第一領域10の平均嵩密度よりも所定以上大きいものとし、第三領域30は二種類の第一領域10の平均嵩密度よりも所定以上小さいものとする。
【符号の説明】
【0025】
1 編成樹脂網状構造体
10 第一領域
20 第二領域
30 第三領域
A 第一の行
B 第二の行
C 第一の列
D 第二の列