(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】経皮吸収を促進するための構造体、前記構造体の製造方法、及び前記構造体を含む化粧品組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/98 20060101AFI20240604BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20240604BHJP
A61K 8/14 20060101ALI20240604BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20240604BHJP
A61K 8/22 20060101ALI20240604BHJP
A61K 31/07 20060101ALI20240604BHJP
A61K 31/23 20060101ALI20240604BHJP
A61K 31/455 20060101ALI20240604BHJP
A61K 31/706 20060101ALI20240604BHJP
A61K 31/7084 20060101ALI20240604BHJP
A61K 35/56 20150101ALI20240604BHJP
A61K 38/06 20060101ALI20240604BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20240604BHJP
A61K 47/52 20170101ALI20240604BHJP
A61K 47/69 20170101ALI20240604BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240604BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240604BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20240604BHJP
C07H 19/048 20060101ALI20240604BHJP
C07D 213/82 20060101ALN20240604BHJP
C07H 19/207 20060101ALN20240604BHJP
【FI】
A61K8/98
A61K8/02
A61K8/14
A61K8/19
A61K8/22
A61K31/07
A61K31/23
A61K31/455
A61K31/706
A61K31/7084
A61K35/56
A61K38/06
A61K38/08
A61K47/52
A61K47/69
A61P17/00
A61Q19/00
A61Q19/08
C07H19/048
C07D213/82
C07H19/207
(21)【出願番号】P 2022514983
(86)(22)【出願日】2020-04-13
(86)【国際出願番号】 KR2020004966
(87)【国際公開番号】W WO2021045343
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-04-05
(31)【優先権主張番号】10-2019-0110546
(32)【優先日】2019-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521115719
【氏名又は名称】ビーエヌカンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ポン ウ
(72)【発明者】
【氏名】シム、ホン ポ
(72)【発明者】
【氏名】キム、チェ ファン
(72)【発明者】
【氏名】リム、チ ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】リュ、チェ トゥク
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1862039(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0116620(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-1678621(KR,B1)
【文献】韓国登録特許第10-1897401(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 35/00-35/768
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61K 31/00-31/80
A61P 17/00-17/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
50%~
55%の多孔度を有する針状体、
前記針状体に結合した親水性基、及び
前記親水性基に結合した担体
を含む、経皮吸収を促進するための構造体
であって、
前記針状体は海綿動物から抽出された骨片(spicule)であり、
前記親水性基はヒドロキシ基であり、
前記担体はリポソームである、
経皮吸収を促進するための構造体。
【請求項2】
針状体を洗浄するステップ、
前記洗浄された針状体を酸性溶液と反応させて50%~
55%の多孔度を有する針状体を形成するステップ、
前記多孔度を有する針状体を塩基性化合物と反応させて親水性基を前記針状体に結合させるステップ、及び
担体を前記親水性基が結合した針状体と混合して前記担体を前記親水性基に結合させるステップ
を含む、経皮吸収を促進するための構造体の製造方法
であって、
前記針状体は海綿動物から抽出された骨片(spicule)であり、
前記親水性基はヒドロキシ基であり、
前記担体はリポソームである、
経皮吸収を促進するための構造体の製造方法。
【請求項3】
前記塩基性化合物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化リチウムからなる群から選択される1種類又は複数種類である、請求項
2に記載の経皮吸収を促進するための構造体の製造方法。
【請求項4】
前記酸性溶液が過酸化水素溶液である、請求項
2又は
3に記載の経皮吸収を促進するための構造体の製造方法。
【請求項5】
前記洗浄された針状体と前記過酸化水素溶液との反応において、10kHz~70kHzの周波数及び100w~500wの出力を有する超音波が付与される、請求項
4に記載の経皮吸収を促進するための構造体の製造方法。
【請求項6】
前記担体と前記親水性基が結合した針状体との混合において、50Mpa~300Mpaの圧力が1分間~10分間付与される、請求項
2~
5のいずれか一項に記載の経皮吸収を促進するための構造体の製造方法。
【請求項7】
請求項
1に記載の経皮吸収を促進するための構造体、及び
前記経皮吸収を促進するための構造体中に含まれる活性成分
を含み、
前記活性成分が、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、ニコチンアミドモノヌクレオチド、ニコチンアミド、ニコチンアミドリボシド、レチノール、酢酸レチニル、パルミチン酸レチニル、アセチルヘキサペプチド-3、ペンタペプチド-3、ペンタペプチド-18、パルミトイルトリペプチド-1、パルミトイルペンタペプチド-4、及びヘキサペプチド-11からなる群から選択される1種類又は複数種類である、
化粧品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性成分の経皮吸収を促進し得る、経皮吸収を促進するための構造体、前記経皮吸収を促進するための構造体の製造方法、及び前記経皮吸収を促進するための構造体を含む化粧品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、幼少期に皮膚損傷が生じた場合であっても瘢痕はほとんど残らないが、加齢に伴い皮膚損傷が生じた場合に瘢痕が残りやすくなる。これは、皮膚再生に必要とされる皮膚角化細胞の幹細胞及び一過性増殖細胞の増殖速度が、皮膚の老化により顕著に低くなるからであると予測される。すなわち、皮膚の老化が進行すると種々の細胞の増殖速度は低下し、それにより、皮膚の再生能力の低下、シワの形成、シミの形成、及び皮膚の弾力性の低下などが引き起こされる。
【0003】
したがって、皮膚の老化の防止又は皮膚状態の現在のレベルの維持若しくは改善のための種々のスキンケア方法又は化粧品組成物のための技術が提案されてきた。
【0004】
具体的には、韓国特許出願公開第2010-0104703号は、皮膚再生のための機能性化粧品組成物及びその使用方法に関し、5-アミノレブリン酸エステル又はその塩を活性成分として用いることにより、経皮吸収の促進、毒性の低下、及び皮膚再生効果を有することが可能であることを開示する。さらに、韓国特許出願公開第2011-0119062号は、ヒト脂肪組織由来幹細胞の強化培地及びその使用に関し、ヒト脂肪組織由来幹細胞の強化培地を活性成分として用いることにより、皮膚再生効果又はシワ改善効果を有することが可能であることを開示する。さらに、韓国特許出願公開第2018-0134468号は、骨片(spicule)、海洋コラーゲン、及び海洋深層水を含む化粧品組成物及びその調製方法に関し、種々のミネラルに富む海洋深層水及び海洋コラーゲンを用いることにより、シワ改善効果、色素沈着軽減効果、ニキビ改善効果、又は新規皮膚再生効果を得ることが可能であることを開示する。
【0005】
しかしながら、前記技術には、活性成分の経皮吸収率が低く、活性成分の皮膚の深部への浸透に限界があるため、皮膚の老化を防止する効果又は皮膚状態を維持若しくは改善する効果が大きくはないという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、活性成分の経皮吸収率を向上させ、活性成分を皮膚の深部へ浸透させることができる、経皮吸収を促進するための構造体を提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、経皮吸収を促進するための構造体の製造方法を提供することである。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、経皮吸収を促進するための構造体を含む化粧品組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、針状体、前記針状体に結合した親水性基、及び前記親水性基に結合した担体を含む、経皮吸収を促進するための構造体を提供する。
【0010】
さらに、本発明は、針状体を洗浄するステップ、前記洗浄された針状体を塩基性化合物と反応させて親水性基を前記針状体に結合させるステップ、及び担体を前記親水性基が結合した針状体と混合して前記担体を前記親水性基に結合させるステップを含む、経皮吸収を促進するための構造体の製造方法を提供する。
【0011】
さらに、本発明は、経皮吸収を促進するための構造体、及び前記経皮吸収を促進するための構造体中に含まれる活性成分を含み、前記活性成分が、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)、ニコチンアミド(NAM)、ニコチンアミドリボシド(NR)、レチノール、酢酸レチニル、パルミチン酸レチニル、アセチルヘキサペプチド-3(Ac-EEMQRR-NH2)、ペンタペプチド-3(GPRPA-NH2)、ペンタペプチド-18(Y(dA)GFL-NH2)、パルミトイルトリペプチド-1(pal-GHK-NH2)、パルミトイルペンタペプチド-4(pal-KTTKS-NH2)、及びヘキサペプチド-11(FVAPFP-NH2)からなる群から選択される1種類又は複数種類である、化粧品組成物を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の経皮吸収を促進するための構造体は、その表面が親水性で修飾された針状体を含むため、大量の担体が安定的に結合していてもよい。したがって、活性成分を含む担体を針状体に結合させることにより得られる本発明の経皮吸収を促進するための構造体が化粧品組成物中で用いられる場合、活性成分の経皮吸収率が向上し、活性成分が皮膚の深部に浸透し得るので、優れた機能性(例えば、老化防止効果)を有する化粧品組成物を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一例の経皮吸収を促進するための構造体を示す模式図である。
【
図2】本発明の試験例1の結果を説明するための参照図である。
【
図3】本発明の試験例2の結果を説明するための参照図である。
【
図4】本発明の試験例3の結果を説明するための参照図である。
【
図5】本発明の試験例3の結果を説明するための参照図である。
【
図6】本発明の試験例4の結果を説明するための参照図である。
【
図7】本発明の試験例5の結果を説明するための参照図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の説明及び特許請求の範囲において用いられる用語及び単語は通常の意味又は辞書的な意味に限定されるべきではなく、発明者が自身の発明を最良の方法で記載するために用語の概念を適切に定義し得るという原則に基づいて、本発明の技術的思想と一致する意味及び概念として解釈されるべきである。
【0015】
本発明は、皮膚の老化を防止する効果又は皮膚状態を維持若しくは改善する機能を果たす活性成分の皮膚に対する吸収において、活性成分の皮膚吸収を促進可能な構造体に関する。具体的には、以下に図面を参照して説明される、物理的経皮吸収を促進する機能及び製剤学的経皮吸収を促進する機能の両方を有する、経皮吸収を促進するための構造体に関する。
【0016】
図1を参照すると、本発明の一例の経皮吸収を促進するための構造体(以下、「構造体」という)は、針状体11、親水性基12、及び担体13を含む。
【0017】
本発明の一例の構造体に含まれる針状体11は、針状形状を有する部分(例えば、針形状、円錐形状、角錐形状)を少なくとも有していればよい。針状体11が皮膚中に分散されると、針状体11は皮膚に穴を形成する機能を果たすことができ、それにより活性成分の物理的経皮吸収を促進する。さらに、針状体11は、皮膚中に浸透して皮膚に蓄積された死滅した皮膚細胞を押し上げて剥離させる機能も果たし得るので、皮膚再生の過程も促進し得る。
【0018】
針状体11の材料は、人体に無害であれば特に限定されないが、海綿動物から抽出された骨片(spicule)であってもよい。針状体11の材料が骨片であると、皮膚への刺激を最小化しつつ化粧品組成物の生産性を向上させることが可能である。さらに、骨片が多孔性であると、活性成分の浸透が効率的に行われて化粧品組成物の機能性が向上され得る。
【0019】
本発明の一例の構造体中に含まれる親水性基12は、針状体11に結合しており(具体的には、針状体11の表面上で分散されて表面に結合している)、担体13の針状体11への結合を安定化する機能を果たし得る。
【0020】
親水性基12は、特に限定されないが、ヒドロキシ基(-OH)であってもよい。親水性基12がヒドロキシ基であると、担体13との結合力を向上させつつ皮膚への刺激を最小化することが可能である。
【0021】
本発明の一例の構造体中に含まれる担体13は、親水性基12に結合しており、活性成分を皮膚中に輸送及び送達する機能を果たす活性成分を含んでいてもよい。担体13は、有機材料から構成されていてもよく、無機材料から構成されていてもよい。具体的には、担体13は、高分子ヒドロゲル、高分子ミセル、ナノエマルジョン(大きさ:100nm~500nm)、リポソーム、オレオソーム、ニオソーム、及びエトソームなどの有機材料、又はタルク、ベントナイト、及びシリカなどの無機材料であってもよい。
【0022】
高分子ヒドロゲルは、ゾルからゲル又はゲルからゾルの相転移が生じる材料であってもよい。具体的には、高分子ヒドロゲルは、ガラクトマンナン、グルコマンナン、グアーガム、ローカストビーンガム、イナゴマメ(Ceratonia siliqua)ガム、プルロニック、寒天、アルギン、カラギーナン、キサンタンガム、及びジェランガムからなる群から選択される1種類又は複数種類のゲル化高分子を含む材料であってもよい。
【0023】
高分子ミセルは、ポリアルキレングリコールなどの親水性ポリマーとポリラクチド、ポリグリコリド、及びポリカプロラクトンなどの疎水性ポリマーとが結合したブロックコポリマー材料であってもよい。
【0024】
リポソームは、細胞膜又は皮膚上皮細胞層の細胞内脂質と構造的に類似した脂質二重層構造を有しており、内側が疎水性であり外側が親水性である材料であってもよい。
【0025】
より具体的には、担体13は、中が空洞であるリポソームであってもよい。リポソーム中に存在する(形成された)空洞は、皮膚中に活性成分を送達する機能を果たす活性成分を含んでいてもよい。リポソームは、活性成分を皮膚上皮細胞層に送達して、それにより活性成分の製剤学的経皮吸収を促進する機能を果たしてもよい。
【0026】
リポソームは、大豆レシチン(L-α-レシチン)、リゾレシチン、スフィンゴミエリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、ホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、及びジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)からなる群から選択される1種類又は複数種類の脂質を含んでいてもよい。
【0027】
担体13は、針状体11の親水性基12との相互連結による高い結合力で針状体11に結合していてもよい。前記相互連結は、特に限定されないが、水素結合又は共有結合であってもよい。担体13は親水性であり、したがって、活性成分の経皮吸収率が向上する。
【0028】
具体的には、針状体11が多孔性である場合、担体13は封入を介して針状体11の細孔に結合していてもよく、この場合、結合力は高くないので、化粧品組成物の製造過程又は化粧品組成物の使用過程の間に担体13は針状体11から容易に分離され得る。この時、担体13が、針状体11に結合した親水性基12同様に親水性である場合、担体13は、針状体11に結合した親水性基12と担体13との間の相互作用により、針状体11に安定的に結合していてもよく、したがって、化粧品組成物の製造過程又は化粧品組成物の使用過程の間に担体13が針状体11から容易に分離されることが防止され得る。ここで、担体13中に活性成分が含まれている場合、経皮吸収過程における担体13の喪失は針状体11と担体13との間の安定的な結合により最小化され、これにより活性成分の経皮吸収率が向上する。
【0029】
担体13の全てが針状体11の親水性基12に結合している場合に加えて、担体13の一部が針状体11の親水性基12に結合しており、残りの担体13が親水性基12が結合していない針状体11の表面に結合している場合も、本発明の範囲に含まれる。
【0030】
本発明の一例の構造体は、担体13の封入が効率的に行えるように、高い多孔度を有していてもよい。すなわち、本発明の一例の構造体は、10%~95%、具体的には20%~95%、より具体的には30%~90%、より具体的には50%~55%の多孔度を有していてもよい。多孔度が前記範囲内であると、担体13の封入率を向上させつつ構造体の物理的強度を維持することが可能である。ここで、多孔度は以下の式により計算される値であってもよい。
[式]
多孔度={(W1-W2)/W1}×100
ここで、W1は、構造体の製造過程において細孔形成過程を経なかった針状体の初期重量(例えば、細孔形成前の骨片の重量)であり、
W2は、構造体の製造過程において細孔形成過程を経た針状体の初期重量(例えば、細孔形成後の骨片の重量)である。
【0031】
本発明は、上記構造体の製造方法を提供し、その具体的説明は以下のようである。
【0032】
最初に、本発明の一例の構造体の製造方法は、針状体を洗浄するステップを含む。洗浄は針状体中に存在する不純物を除去するためのものであり、精製水及び酸性溶液を用いて行ってもよい。具体的には、針状体の洗浄は、針状体を精製水で1回又は複数回洗浄し、次に過酸化水素溶液などの酸性溶液で処理する過程を行うことであってもよい。ここで、針状体の酸性溶液での処理において、超音波が付与されてもよい。超音波が付与されると、針状体の洗浄効率が向上し得る。
【0033】
次に、本発明の一例の構造体の製造方法は、洗浄された針状体を塩基性化合物と反応させて親水性基を針状体に結合させるステップを含む。このステップは針状体の表面を修飾するステップであり、ここで、用いられる塩基性化合物は、特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化リチウムからなる群から選択される1種類又は複数種類であってもよい。塩基性化合物が前記化合物であると、親水性基の結合効率(分散効率)が向上し得る。ここで、針状体と塩基性化合物との反応は、親水性基が針状体に十分に結合されるよう、25℃~50℃で30分間~2時間行われてもよい。
【0034】
次に、本発明の一例の構造体の製造方法は、親水性基が結合した針状体と担体とを混合して、担体を親水性基に結合させるステップを含む。ここで、親水性基と担体が十分に結合されるよう針状体と担体を混合する際、50Mpa~300Mpaの圧力が1分間~10分間付与される超高圧処理が行われてもよい。
【0035】
本発明の一例の構造体の製造方法は、針状体の多孔度の向上を可能にする細孔を形成するステップをさらに含んでいてもよい。具体的には、洗浄された針状体を塩基性化合物と反応させて親水性基を針状体に結合させる前に、洗浄された針状体を酸性溶液(過酸化水素溶液)と反応させることにより、針状体に1又は複数の細孔が形成される。細孔を形成する過程が行われると、針状体の多孔度が向上し(針状体における細孔の数が増加し)、それにより担体の封入率が向上する。ここで、針状体と酸性溶液(過酸化水素溶液)との反応は、室温で6時間~20時間行われてもよい。さらに、効率的に細孔を形成するために針状体と酸性溶液(過酸化水素溶液)の反応が活性化され得るように針状体と酸性溶液(過酸化水素溶液)が反応される場合、10kHz~70kHzの周波数及び100w~500wの出力を有する超音波が付与されてもよい。
【0036】
針状体と酸性溶液(過酸化水素溶液)とを反応させて細孔を形成する過程は、1回又は複数回繰り返されてもよく、各過程に対する超音波の付与は選択的に行われてもよい。
【0037】
構造体が前述の製造方法により製造されると、本発明は針状体に大量の担体が安定的に結合した構造体を提供し得る。したがって、本発明の構造体が活性成分の経皮吸収に使用される場合、経皮吸収を促進しつつ、経皮吸収率を向上させることができるという効果を得ることが可能である。
【0038】
一方、本発明は、上記構造体及び活性成分を含む化粧品組成物を提供する。
【0039】
本発明の一例の化粧品組成物に含まれる構造体は活性成分を含み、その具体的な説明は前述の通りであるので省略される。ここで、活性成分は、構造体に含まれる針状体の表面及び/又は担体の内部に含まれていてもよく、特に、担体の内部に含まれていてもよい。
【0040】
構造体の含有率は、特に限定されないが、化粧品組成物の100重量部に対して0.1重量部~1重量部であってもよい。
【0041】
構造体に含まれる活性成分は、特に限定されないが、優れた老化防止機能を有する、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)、ニコチンアミド(NAM)、ニコチンアミドリボシド(NR)、レチノール、酢酸レチニル、パルミチン酸レチニル、アセチルヘキサペプチド-3(Ac-EEMQRR-NH2)、ペンタペプチド-3(GPRPA-NH2)、ペンタペプチド-18(Y(dA)GFL-NH2)、パルミトイルトリペプチド-1(pal-GHK-NH2)、パルミトイルペンタペプチド-4(pal-KTTKS-NH2)、及びヘキサペプチド-11(FVAPFP-NH2)からなる群から選択される1種類又は複数種類であってもよい。
【0042】
活性成分の含有量は、特に限定されないが、化粧品組成物の100重量部に対して0.05重量部~1重量部であってもよい。
【0043】
本発明の一例の化粧品組成物は、化粧品組成物の分野において通常用いられる精製水、抗酸化剤、安定化剤、色素、又は香料などをさらに含んでいてもよい。
【0044】
さらに、本発明の一例の化粧品組成物は、通常の処方に調製されてもよい。具体的には、溶液、懸濁液、エマルジョン、ペースト、ゲル、クリーム、ローション、パウダー、エマルジョンファンデーション、ワックスファンデーション、又はスプレー剤に処方されてもよい。
【実施例】
【0045】
以下に、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。しかしながら、以下の実施例は本発明の例示の目的のみであって、本発明の範疇及び趣旨の範囲内で種々の変更及び改変が加えられてもよく、本発明の範囲はこれらに限定されないことは当業者に明らかであろう。
【0046】
実施例1
1)骨片の洗浄
Spongilla lacustris L.から抽出された(得られた)骨片(J2KBIO Co.,Ltd.)を針状体として用い、以下の過程により洗浄した。すなわち、20gの骨片を200mlの精製水中に加えて塩を除去し、400メッシュのポリエチレン(PE)フィルターで濾過した後、フィルター上に残った骨片を精製水で2回洗浄した。続いて、洗浄された骨片を乾燥機(Hanbaek Co.,Ltd.)に入れ、50℃で乾燥させた。
【0047】
乾燥された骨片中に残留する不純物を除去するために、乾燥された骨片を200mlの35%過酸化水素溶液(H2O2)(Samchun Chemical Co.Ltd.)に加え、超音波洗浄機(Sungdong Ultrasonic Co.,Ltd.)を用いて、300w及び40kHzの条件下で1時間、超音波処理を行った。次に、それを400メッシュのポリエチレン(PE)フィルターで濾過した後、フィルター上に残った骨片を500mlの精製水で洗浄する過程を3回繰り返した。続いて、洗浄された骨片を乾燥機に入れて50℃で乾燥させる過程を行って、骨片の洗浄を完了した。
【0048】
2)骨片へのヒドロキシ基の結合
200mlの1NのNaOH(Sigma-Aldrich Co.Ltd.)を20gの細孔が形成された骨片に添加し、40℃で1時間反応させた。次に、それを400メッシュのポリエチレン(PE)フィルターで濾過した後、フィルター上に残った骨片を500mlの精製水で洗浄する過程を3回繰り返した。続いて、洗浄された骨片を乾燥機に入れて50℃で乾燥させる過程を行って、親水性のヒドロキシ基が結合した骨片を得た。
【0049】
3)骨片へのリポソームの結合
0.5g(5%)のヒドロキシ基が結合した骨片及び1g(10%)の担体としての蛍光タンパク質リポソームを8.5mlの精製水に添加し、骨片及び蛍光タンパク質リポソームを室温で1時間撹拌して混合し、骨片-リポソーム結合構造体を含む混合溶液を調製した。この時、1gのL-α-レシチンを6gの1,3-ブチレングリコール(Sigma Co.,Ltd.)中に分散し、6gの精製水を添加し、80℃の温水槽中で加熱して溶解させ、50℃まで冷却して得られた溶液に、Alexafluor(登録商標)488結合タンパク質(Thermo Fisher Scientific Co.Ltd.)が5g/mlの濃度で溶解された1gの精製水を少量ずつ添加することにより、これらの溶液が互いに均一に混合された混合液を調製し、次に、前記混合液に6gの精製水を再び少量ずつ添加し、室温で撹拌し、蛍光タンパク質リポソームとして使用するために4℃で冷蔵した。
【0050】
次に、調製された混合溶液を400メッシュのポリエチレン(PE)フィルターで濾過した後、フィルター上に残った骨片-リポソーム結合構造体を500mlの精製水で洗浄する過程を3回繰り返した。続いて、洗浄された骨片-リポソーム結合構造体を乾燥機に入れて50℃で乾燥させる過程を行って、蛍光タンパク質リポソームが骨片の細孔及び骨片のヒドロキシ基に結合した構造体を得た。
【0051】
実施例2
洗浄された骨片を200mlの35%過酸化水素溶液(H2O2)(Samchun Chemical Co.Ltd.)に加え、それらを16時間反応させて骨片に細孔を形成する過程をさらに行った(骨片の多孔度が向上された)以外は実施例1と同様の過程を行うことにより、構造体を得た。
【0052】
実施例3
骨片にヒドロキシ基を結合させる前に、細孔が形成された骨片を200mlの35%過酸化水素溶液(H2O2)(Samchun Chemical Co.Ltd.)に加え、超音波洗浄機を用いて、300w及び40kHzの条件下で1時間の超音波処理を行う過程をさらに行った(実施例2に対して超音波処理を1回加える)以外は実施例2と同様の過程を行うことにより、構造体を得た。
【0053】
実施例4
超音波処理過程がさらに行われた骨片を200mlの35%過酸化水素溶液(H2O2)(Samchun Chemical Co.Ltd.)に加え、超音波洗浄機を用いて、300w及び40kHzの条件下で1時間の超音波処理を行う過程を再び行った(実施例2に対して2回の超音波処理を加える)以外は実施例3と同様の過程を行うことにより、構造体を得た。
【0054】
実施例5
骨片-リポソーム結合構造を含む10gの混合溶液をプラスチックパックに入れて真空還元し、次に、高圧処理機(Ilshin Autoclave Co.,Ltd.、Suflux(登録商標))を用いて150Mpaの圧力で5分間加圧する過程をさらに行った以外は実施例2と同様の過程を行うことにより、構造体を得た。
【0055】
実施例6
骨片-リポソーム結合構造を含む10gの混合溶液をプラスチックパックに入れて真空還元し、次に、高圧処理機(Ilshin Autoclave Co.,Ltd.、Suflux(登録商標))を用いて150Mpaの圧力で5分間加圧する過程をさらに行った以外は実施例3と同様の過程を行うことにより、構造体を得た。
【0056】
実施例7
骨片-リポソーム結合構造を含む10gの混合溶液をプラスチックパックに入れて真空還元し、次に、高圧処理機(Ilshin Autoclave Co.,Ltd.、Suflux(登録商標))を用いて150Mpaの圧力で5分間加圧する過程をさらに行った以外は実施例4と同様の過程を行うことにより、構造体を得た。
【0057】
比較例1
ヒドロキシ基を結合させる過程を行わなかった以外は実施例1と同様の過程を行うことにより、構造体を得た。
【0058】
比較例2
ヒドロキシ基を結合させる過程を行わなかった以外は実施例2と同様の過程を行うことにより、構造体を得た。
【0059】
比較例3
ヒドロキシ基を結合させる過程を行わなかった以外は実施例3と同様の過程を行うことにより、構造体を得た。
【0060】
比較例4
ヒドロキシ基を結合させる過程を行わなかった以外は実施例4と同様の過程を行うことにより、構造体を得た。
【0061】
比較例5
実施例1で使用された担体である蛍光タンパク質リポソームを適用した(骨片が結合されていない蛍光タンパク質リポソームのみを適用した)。
【0062】
前記実施例及び比較例の条件を以下の表1にまとめた。
【表1】
【0063】
試験例1
骨片の洗浄が十分に行われたことを確認するため、洗浄前の骨片及び実施例1で洗浄後の骨片を光学顕微鏡(Nikon Corporation、ECLIPSE TS2)で確認し、結果を
図2に示した
【0064】
図2を参照すると、骨片の洗浄が十分に行われたことを確認することができた。
【0065】
試験例2
ヒドロキシ基が骨片に結合されるまで洗浄、細孔形成、及び/又は超音波処理が行われた実施例2~4の骨片、及び洗浄過程のみが行われた比較例1の骨片についての多孔度の評価は以下のように行われ、結果を
図3及び以下の表2に示した。
【0066】
骨片の多孔度評価
5mgの骨片を500mgの精製水に加え、これらを混合して混合溶液を調製し、次に、調製された混合溶液から10mgを取り出して血球計数器中に入れ、光学顕微鏡(Nikon Corporation、ECLIPSE TS2、40倍)で観察することにより骨片の数を測定した。
【0067】
図3を参照すると、洗浄、細孔形成、及び超音波処理が行われた実施例2~4の骨片の数は、洗浄過程のみが行われた比較例1の骨片の数より多いことを確認することができた。これは、実施例2~4の場合、骨片の多孔度が高くなると骨片の重量が減少するので、単位重量当たりで確認される骨片の数が大きくなるからである。
【表2】
【0068】
表2を参照すると、洗浄、細孔形成、及び超音波処理が行われた実施例2~4の骨片の重量は、洗浄過程のみが行われた比較例1と比較して顕著に減少したことを確認することができた。これは、本発明に記載されるように骨片に対する細孔形成及び超音波処理が行われると、骨片の多孔度が非常に高くなることを裏付ける結果として理解され得る。
【0069】
試験例3
実施例2~7及び比較例1~4で得られた構造体において蛍光タンパク質リポソームの封入が十分に行われたことを確認するために、5mgの構造体を500mgの精製水に加え、混合して混合溶液を調製し、次に、調製された混合溶液から100mgを取り出して、スライドグラス上に載せ、蛍光顕微鏡(NEXCOPE Co.,Ltd.、NIB410F)GFPフィルターで観察し、結果を
図4及び
図5に示した。
【0070】
図4及び
図5を参照すると、実施例2~7は比較例1~4と比較して蛍光タンパク質リポソームがより結合したことを確認することができた。
【0071】
処方例1~7
実施例1~7で得られた構造体のそれぞれを用いて化粧品組成物を調製した。具体的には、100重量部の化粧品組成物に対して、2.0重量部のグリセリン(保湿剤)、3.0重量部のパンテノール(保湿剤)、2.0重量部のOlivem 2020(乳化剤)、及び2.0重量部のヘキサンジオールを72.0重量部の精製水に添加し、1,000rpmで10分間撹拌して、水相溶解物を調製した。次に、油相溶解物を調製するため、6.0重量部のトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル(油)、6.0重量部のセチルエチルヘキサノエート(油)、及び1.0重量部のOlivem 1000(乳化剤)を80℃に温めながら溶解し、調製された水相溶解物をその中に加え、1,000rpmで撹拌して、油相溶解物を調製した。続いて、0.03重量部の老化防止ペプチド、0.03重量部のニコチンアミドリボシド、3.0重量部のブチレングリコール、0.5重量部の大豆レシチン、0.7重量部の(実施例1~7のそれぞれの)構造体、及び0.04重量部のアデノシンをさらにその中に加え、60℃、2,000rpmで5分間撹拌した。最後に、0.1重量部の香料、1重量部のScutellaria baicalensis Georgi抽出物、0.5重量部のPortulaca oleracea抽出物、及び0.1重量部の済州島チェリーブロッサム抽出物をその中に加え、50℃、3,000rpmで5分間撹拌して、化粧品組成物をそれぞれ調製した。
【0072】
比較処方例1
実施例7の構造体の代わりに比較例5の蛍光タンパク質リポソームを適用した以外は処方例7と同様の過程を行うことにより、化粧品組成物を調製した。
【0073】
試験例4
処方例7及び比較処方例1で得られた化粧組成物の皮膚吸収(浸透)の程度を確認するために、ブタの皮膚(Franz Cell Membrane、FCM、APURES Co.,Ltd.)に各化粧品組成物を適用する過程により得られたブタ皮膚の組織切片を室温で溶解し、次に、封入溶液(National Diagnostics Corporation)を適用し、蛍光顕微鏡(Nikon Corporation、ECLIPSE TS2-FL)で観察し、結果を
図6に示した。この時、0.25gの各化粧品組成物をブタの皮膚(2×2cm)上に10分間隔で4回繰り返し塗布し、室温で24時間静置し、2mlの3.7%ホルムアルデヒド(Sigma-Aldrich Co.Ltd.)中に入れて20分間固定し、1×PBSで3回洗浄し、OCT(optima1 cutting temperature compound、Sakura Finetek Co.,Ltd.)中に入れて-20℃で凍結し、凍結ミクロトーム(Leica Biosystems Co.,Ltd.)で15μmの厚さに薄切することにより組織切片を得た。
【0074】
図6を参照すると、比較処方例1は経皮性の/皮膚の真皮における蛍光タンパク質を示さなかったが、処方例7は経皮性の/皮膚の真皮における蛍光タンパク質を示したことを確認することができた。これは、本発明の化粧品組成物が皮膚に十分に吸収された(浸透した)ことを裏付ける結果として理解され得る。
【0075】
試験例5
処方例7及び比較処方例1で得られた化粧品組成物の皮膚吸収(浸透)の程度を確認するために、ブタの皮膚(Franz Cell Membrane、FCM、APURES Co.,Ltd.)に各化粧品組成物を適用する過程により得られたブタの皮膚試料の150μlを96穴プレートに入れ、蛍光分光光度計(SpectraMAX M2, Molecular Devices,LLC)を用いて皮膚透過率を分析し、結果を
図7に示した。この時、0.25gの各化粧品組成物過程をブタの皮膚(2×2cm)上に塗布する過程を10分間隔で4回繰り返し、次に、1.5mlのPBS中に浸漬する過程を3回繰り返し、室温で24時間静置し、皮膚に吸収された(浸透した)蛍光タンパク質をPBS中で解離させることによりブタの皮膚試料を得た。
【0076】
図7を参照すると、処方例7の皮膚透過率(15.25%)は、比較処方例1の皮膚透過率(0.21%)よりはるかに高いことを確認することができた。これは、本発明の化粧品組成物が皮膚に十分に吸収された(浸透した)ことを裏付ける結果として理解され得る。