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特許7497902フルベストラント医薬組成物、その調製方法及び応用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】フルベストラント医薬組成物、その調製方法及び応用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/565 20060101AFI20240604BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20240604BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240604BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240604BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240604BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20240604BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240604BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
A61K31/565
A61K9/20
A61K9/16
A61K9/48
A61K9/107
A61K9/08
A61K9/19
A61K47/44
A61K47/14
A61K47/34
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/10
A61K47/02
A61K47/26
A61K47/24
A61K47/42
A61K47/22
A61K47/18
A61P35/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022534277
(86)(22)【出願日】2020-12-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-07
(86)【国際出願番号】 CN2020135311
(87)【国際公開番号】W WO2021115389
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-06-06
(31)【優先権主張番号】201911262544.4
(32)【優先日】2019-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010590154.6
(32)【優先日】2020-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521504049
【氏名又は名称】上海雲晟研新生物科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】応述歓
(72)【発明者】
【氏名】李洪
(72)【発明者】
【氏名】陳志祥
(72)【発明者】
【氏名】王▲ティン▼▲ティン▼
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-516789(JP,A)
【文献】国際公開第2019/094650(WO,A1)
【文献】特表2004-534093(JP,A)
【文献】特表2015-521207(JP,A)
【文献】特表2013-537219(JP,A)
【文献】特開2004-107353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルベストラント固体粒子、懸濁化剤、湿潤剤、浸透圧調整剤、緩衝剤、及びpH調整剤を含み、前記フルベストラント固体粒子の粒径は、Dv(10)が0.600ミクロン~2.000ミクロンから選ばれ、Dv(25)が1.000ミクロン~3.000ミクロンから選ばれ、Dv(50)が0.800ミクロン~4.000ミクロンから選ばれ、Dv(75)が1.000ミクロン~4.000ミクロンから選ばれ、且つDv(90)が1.000ミクロン~6.000ミクロンから選ばれ、但し、Dv(90)が1.000ミクロン
ではなく、
フルベストラント固体粒子の重量分率は10.00%~40.00%であり、
前記懸濁化剤の重量分率は0.20%~3.00%であり、前記懸濁化剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレングリコール及びポビドンから選ばれる1つ又は複数であり、
前記湿潤剤の重量分率は1.00%~3.00%であり、前記湿潤剤は、ポロキサマー及びトゥイーン<登録商標>から選ばれる1つ又は複数であり、
前記浸透圧調整剤の重量分率は1.00%~3.00%であり、前記浸透圧調整剤は、塩化ナトリウム、マンニトール及びスクロースから選ばれる1つ又は複数である、
ことを特徴とするフルベストラント医薬組成物。
【請求項2】
前記フルベストラント固体粒子の粒径は、
Dv(10)が0.900ミクロン~1.800ミクロンから選ばれ、
Dv(25)が1.000ミクロン~3.000ミクロンから選ばれ、
Dv(50)が1.000ミクロン~3.000ミクロンから選ばれ、
Dv(75)が1.000ミクロン~4.000ミクロンから選ばれ、
Dv(90)が1.500ミクロン~4.500ミクロンから選ばれ、
前記懸濁化剤の重量分率は0.20%~1.00%であり、前記懸濁化剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレングリコール及びポビドンから選ばれる1つ又は複数であり、
前記湿潤剤の重量分率は1.67%~1.74%であり、前記湿潤剤は、ポロキサマー及びトゥイーン<登録商標>から選ばれる1つ又は複数であり、
前記浸透圧調整剤の重量分率は2.29%~3.00%であり、前記浸透圧調整剤は、塩化ナトリウム、マンニトール及びスクロースから選ばれる1つ又は複数である、
ことを特徴とする請求項1に記載のフルベストラント医薬組成物。
【請求項3】
担体を更に含み、
前記担体は、油性担体及び/又は非油性担体であり、
前記油性担体は、ヒマシ油、トリグリセリド、綿実油及び胡麻油から選ばれる1つ又は複数であり、及び
前記非油性担体は水から選ばれる、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のフルベストラント医薬組成物。
【請求項4】
溶媒、安定剤、界面活性剤、ポリマー、電解質、非電解質及び共溶媒から選ばれる1つ又は複数を更に含み、
前記ポリマーは、架橋ポリマー及び/又は非架橋ポリマーであり、
前記溶媒は、注射用水及び注射用油から選ばれる1つ又は複数であり、
前記安定剤は、酸化防止剤、金属イオンキレート剤、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリソルベート、ポリエトキシル化植物油、ポリエトキシル化ヒマシ油、ソルビタンパルミテート、レシチン、ポリビニルアルコール、ヒト血清アルブミン、ポリビニルピロリドン、塩化カルシウム、デキストロース、グリセロール、マンニトール及び架橋ポリマーから選ばれる1つ又は複数であり、
前記緩衝剤は、リン酸、リン酸塩、枸櫞酸、枸櫞酸ナトリウム、塩酸、水酸化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、又はこれらの混合物から選ばれる1つ又は複数であり、
前記pH調整剤は、リン酸、リン酸塩、枸櫞酸、枸櫞酸ナトリウム、塩酸及び水酸化ナトリウムから選ばれる1つ又は複数であり、
前記共溶媒は、エタノール及びプロピレングリコールから選ばれる1つ又は複数である、
ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のフルベストラント医薬組成物。
【請求項5】
前記酸化防止剤は、枸櫞酸、ビタミンC及びビタミンEから選ばれる1つ又は複数であり、
前記金属イオンキレート剤はエチレンジアミン四酢酸であり、
前記ポロキサマーは、ポロキサマー188、ポロキサマー124及びポロキサマー407から選ばれる1つ又は複数であり、
前記ポリソルベートは、ポリソルベート80及びポリソルベート20から選ばれる1つ又は複数であり、
前記ポビドンは、ポビドンK12、ポビドンK17、PLASDONE<登録商標>C-12ポビドン、PLASDONE<登録商標>C-17ポビドン及びPLASDONE<登録商標>C-30ポビドンから選ばれる1つ又は複数であり、
前記ポリエチレングリコールはポリエチレングリコール3350から選ばれ、
前記架橋ポリマーはカルボキシメチルセルロースナトリウムから選ばれ、
前記リン酸塩は、リン酸二水素ナトリウム一水和物、リン酸二水素ナトリウム二水和物、無水リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム一水和物、リン酸水素二ナトリウム二水和物、無水リン酸水素二ナトリウムから選ばれる1つ又は複数であり、
ことを特徴とする請求項4に記載のフルベストラント医薬組成物。
【請求項6】
以下の何れか1つの配合法から選ばれる:
配合法3:24.56%のフルベストラント固体粒子、1.62%の湿潤剤、1.00%の懸濁化剤、2.82%の浸透圧調整剤、0.42%の緩衝塩及び0~1%のpH調整剤である;
配合法4:25.00%のフルベストラント固体粒子、1.62%の湿潤剤、1.00%の懸濁化剤、2.89%の浸透圧調整剤、0.43%の緩衝塩及び0~1%のpH調整剤である;及び
配合法5:25.00%のフルベストラント固体粒子、1.62%の湿潤剤、0.20%の懸濁化剤、2.29%の浸透圧調整剤、0.51%の緩衝塩及び70.38%の水である、
ことを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載のフルベストラント医薬組成物。
【請求項7】
以下の何れか1つの配合法から選ばれる:
配合法C:24.66%のフルベストラント固体粒子、1.62%のトゥイーン<登録商標>20、1.00%のカルボキシメチルセルロースナトリウム、2.82%のマンニトール、0.42%の無水リン酸二水素ナトリウム、水酸化ナトリウム及び滅菌注射用水である;
配合法D:25.00%のフルベストラント固体粒子、1.62%のトゥイーン<登録商標>20、1.00%のカルボキシメチルセルロースナトリウム、2.89%のマンニトール、0.43%の無水リン酸二水素ナトリウム、水酸化ナトリウム及び滅菌注射用水であり、前記フルベストラント医薬組成物のpHは7.4である;及び
配合法E:25.00%のフルベストラント固体粒子、1.62%のトゥイーン<登録商標>20、0.20%のカルボキシメチルセルロースナトリウム、2.29%のマンニトール、0.09%の無水リン酸二水素ナトリウム、0.42%の無水リン酸水素二ナトリウム及び70.38%の滅菌注射用水である、
ことを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載のフルベストラント医薬組成物。
【請求項8】
フルベストラント医薬製剤の調製における、請求項1~7の何れか1項に記載のフルベストラント医薬組成物の使用であって、
前記フルベストラント医薬製剤は、注射剤であり、
前記注射剤は、液体注射剤、注射用粉剤又は注射用錠剤から選ばれ、
前記液体注射剤は、水懸濁剤及び油懸濁剤から選ばれる、
前記注射用粉剤は凍結乾燥粉末である、
使用。
【請求項9】
前記注射剤は長時間作用型注射剤であり、前記長時間作用型注射剤は、水懸濁剤、油懸濁剤又は懸濁用粉末である、
ことを特徴とする請求項8に記載の使用。
【請求項10】
請求項1~7の何れか1項に記載のフルベストラント医薬組成物を含む、
ことを特徴とするフルベストラント医薬製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬分野に属し、具体的に、フルベストラント医薬組成物、その調製方法及び応用に関する。
【背景技術】
【0002】
フルベストラントは、抗エストロゲン療法後に疾患が進行した閉経後の女性のホルモン受容体陽性転移性乳癌を治療するための選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)である。2002年にアメリカFDAにより承認されたフルベストラントは、ホルモン受容体陽性転移性乳癌の治療に用いることができる。
【0003】
フルベストラントの化学名は、7-(9-(4,4,5,5,5-ペンタフルオロペンチルスルフィニル)ノニル)エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17-ジオールであり、その構造は式Iに示される通りである:
【0004】
【化1】
【0005】
フルベストラントは、水溶性が非常に低い親油性分子である。フルベストラントは溶解性が悪く、経口バイオアベイラビリティが低いため、現在、オイルベースのフルベストラント製剤の筋肉内注射により投与することが一般的である。現在、フルベストラントの市販製剤であるFASLODEXTMは500 mgで投与される上に、50 mg/mLのフルベストラント製剤の5 mLの注射液を2回筋肉内投与する必要がある。それぞれの5 mLの注射液は、共溶媒として10 w/v%のエタノール、10 w/v%のベンジルアルコール及び15 w/v%の安息香酸ベンジルを含み、且つ別の共溶媒及び放出速度調整剤としてヒマシ油を100 w/v%に補充する。粘性のあるオイルベースの担体でフルベストラントを溶解するので、この製剤の投与は遅くて(注射するたびに1~2分間もかかる)、且つ痛みも伴っている。FASLODEXTMラベルには、注射痛、坐骨神経痛、神経障害性疼痛及び末梢神経障害についての警告が追加されている。
【0006】
従って、持続的な徐放性を有して投与されやすく、痛みが少ないフルベストラント剤形を見つけることは、現在緊急に解決すべき技術問題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする技術問題は、従来技術におけるフルベストラント製剤の徐放効果が好ましくなく、投与され難く、注射の痛みが強いといった欠陥を解決ために、フルベストラント医薬組成物、その調製方法及び応用を提供することである。本発明のフルベストラント医薬組成物は、持続的な徐放性を持ち、バイオアベイラビリティが高く、投与されやすく、投与体積が小さく、注射の痛みが大幅に軽減されたため、市場の見通しが良い。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、フルベストラント固体粒子を含み、そのうち、前記フルベストラント固体粒子の粒径は、Dv(10)が0.400ミクロン~6.000ミクロンから選ばれ、Dv(50)が0.700ミクロン~6.000ミクロンから選ばれ、且つDv(90)が1.000ミクロン~6.000ミクロンから選ばれ、但し、Dv(10)が0.400ミクロンではなく、Dv(50)が0.700ミクロンではなく、且つDv(90)が1.000ミクロンではないフルベストラント医薬組成物を提供する。
【0009】
本発明の実施形態によれば、前記フルベストラント固体粒子の粒径は、Dv(10)が0.500ミクロン~6.000ミクロンであってもよく、好ましくは0.600ミクロン~2.000ミクロンであり、更に好ましくは0.900ミクロン~1.800ミクロンであり、例えば、1.856ミクロン、1.794ミクロン、1.500ミクロン、1.373ミクロン、1.300ミクロン、1.100ミクロン、1.058ミクロン、1.010ミクロン、1.000ミクロン、0.920ミクロン、0.910ミクロン、0.903ミクロン又は0.806ミクロンである。
【0010】
本発明の実施形態によれば、前記フルベストラント固体粒子の粒径は、Dv(50)が0.800ミクロン~6.000ミクロンであってもよく、好ましくは0.900ミクロン~4.000ミクロンであり、更に好ましくは1.000ミクロン~3.000ミクロンであり、例えば、Dv(50)が4.215ミクロン、2.939ミクロン、2.610ミクロン、2.500ミクロン、1.983ミクロン、1.887ミクロン、1.500ミクロン、1.493ミクロン、1.241ミクロン、1.202ミクロン又は1.127ミクロンである。
【0011】
本発明の実施形態によれば、前記フルベストラント固体粒子の粒径は、Dv(90)が1.000ミクロン~5.000ミクロンであってもよく、好ましくは1.500ミクロン~4.500ミクロンであり、例えば、4.279ミクロン、4.000ミクロン、3.644ミクロン、3.500ミクロン、3.027ミクロン、2.500ミクロン、2.058ミクロン、2.000ミクロン、1.955ミクロン、1.644ミクロン又は1.587ミクロンである。
【0012】
本発明の実施形態によれば、前記フルベストラント固体粒子の粒径は、Dv(25)が1.000ミクロン~3.000ミクロンであってもよく、例えば、2.284ミクロン、1.840ミクロン、1.376ミクロン、1.270ミクロン、1.235ミクロン、1.056ミクロン、1.075ミクロン又は0.922ミクロンである。
【0013】
本発明の実施形態によれば、前記フルベストラント固体粒子の粒径は、Dv(75)が1.000ミクロン~4.000ミクロンであってもよく、例えば、3.781ミクロン、3.680ミクロン、2.823ミクロン、2.463ミクロン、1.795ミクロン、1.469ミクロン、1.459ミクロン又は1.397ミクロンである。
【0014】
本発明の実施形態によれば、前記フルベストラント医薬組成物は、担体を更に含んでもよい。前記担体は、油性担体及び/又は非油性担体であってもよい。前記油性担体は、ヒマシ油、トリグリセリド、綿実油及び胡麻油などのうちの1つ又は複数を含むが、これらに限定されない。
【0015】
前記非油性担体は水を含むが、これに限定されない。前記水は、通常市販の注射用水であってもよいが、滅菌注射用水が好ましい。
【0016】
本発明の実施形態によれば、前記フルベストラント医薬組成物は、懸濁化剤、湿潤剤、浸透圧調整剤、溶媒、安定剤、緩衝剤、pH調整剤、界面活性剤、ポリマー、電解質、非電解質及び共溶媒から選ばれる1つ又は複数を更に含んでもよい。そのうち、前記ポリマーは、架橋ポリマー及び/又は非架橋ポリマーであってもよい。
【0017】
本発明の実施形態によれば、前記懸濁化剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレングリコール及びポビドンのうちの1つ又は複数を含むが、これらに限定されない。
【0018】
本発明の実施形態によれば、前記湿潤剤は、ポロキサマー及びトゥイーン(Tween)のうちの1つ又は複数を含むが、これらに限定されない。前記トゥイーンは、トゥイーン20及び/又はトゥイーン80など、通常市販のトゥイーン試薬であってもよい。
【0019】
本発明の実施形態によれば、前記浸透圧調整剤は、塩化ナトリウム、マンニトール及びスクロースのうちの1つ又は複数を含むが、これらに限定されない。
【0020】
本発明の実施形態によれば、前記溶媒は、注射用水及び注射用油のうちの1つ又は複数を含むが、これらに限定されない。例えば、前記注射用油は、中鎖トリグリセリド(MCT)を含むが、これに限定されない。例えば、前記注射用水は、通常市販の注射用水であってもよいが、滅菌注射用水が好ましい。
【0021】
本発明の実施形態によれば、前記安定剤は、酸化防止剤、金属イオンキレート剤、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリソルベート、ポロキサマー、ポリエトキシル化植物油、ポリエトキシル化ヒマシ油、ソルビタンパルミテート、レシチン、ポリビニルアルコール、ヒト血清アルブミン、ポリビニルピロリドン、ポビドン、ポリエチレングリコール、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、デキストロース、グリセロール、マンニトール及び架橋ポリマーのうちの1つ又は複数を含むが、これらに限定されない。例えば、前記酸化防止剤は、枸櫞酸、ビタミンC及びビタミンEのうちの1つ又は複数を含むが、これらに限定されない。例えば、前記金属イオンキレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含むが、これに限定されない。例えば、前記ポロキサマーは、ポロキサマー188、ポロキサマー124及びポロキサマー407のうちの1つ又は複数を含むが、これらに限定されない。例えば、前記ポリソルベートは、ポリソルベート80及びポリソルベート20のうちの1つ又は複数を含むが、これらに限定されない。例えば、前記ポビドンは、ポビドンK12、ポビドンK17、PLASDONETM C-12ポビドン、PLASDONETM C-17ポビドン及びPLASDONETM C-30ポビドンのうちの1つ又は複数を含むが、これらに限定されない。例えば、前記ポリエチレングリコールは、ポリエチレングリコール3350を含むが、これに限定されない。
【0022】
本発明の実施形態によれば、前記架橋ポリマーはカルボキシメチルセルロースナトリウムを含むが、これに限定されない。
【0023】
本発明の実施形態によれば、前記緩衝剤は、リン酸、リン酸塩、枸櫞酸、枸櫞酸ナトリウム、塩酸、水酸化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)のうちの1つ又は2つ以上の混合物を含むが、これらに限定されない。
【0024】
本発明の実施形態によれば、前記pH調整剤は、リン酸、リン酸塩、枸櫞酸、枸櫞酸ナトリウム、塩酸及び水酸化ナトリウムのうちの1つ又は複数を含むが、これらに限定されない。
【0025】
本発明の実施形態によれば、前記リン酸塩は、リン酸水素二ナトリウム一水和物(Na2HPO4・H2O)、リン酸水素二ナトリウム二水和物(Na2HPO4・2H2O)、無水リン酸水素二ナトリウム(無水Na2HPO4)、リン酸二水素ナトリウム一水和物(NaH2PO4・H2O)、リン酸二水素ナトリウム二水和物(NaH2PO4・2H2O)及び無水リン酸二水素ナトリウム(無水NaH2PO4)のうちの1つ又は複数を含むが、これらに限定されない。
【0026】
本発明の実施形態によれば、前記共溶媒は、エタノール及びプロピレングリコールのうちの1つ又は複数を含むが、これらに限定されない。
【0027】
本発明の実施形態によれば、前記フルベストラント医薬組成物において、フルベストラント固体粒子の重量分率は1.00%~50.00%であり、好ましくは10.00%~40.00%であり、例えば18.09%、19.59%、24.66%又は25.00%であり、前記重量分率は、フルベストラント医薬組成物の総重量に占めるフルベストラント固体粒子の重量の百分率である。
【0028】
本発明の実施形態によれば、前記フルベストラント医薬組成物において、前記湿潤剤の重量分率は0~5.00%であり、好ましくは1.00%~3.00%であり、例えば1.67%、1.62%又は1.74%であり、前記重量分率は、フルベストラント医薬組成物の総重量に占める湿潤剤の重量の百分率である。
【0029】
本発明の実施形態によれば、前記フルベストラント医薬組成物において、前記懸濁化剤の重量分率は0~5.00%であり、好ましくは1.00%~3.00%であり、例えば0.20%又は1.00%であり、前記重量分率は、フルベストラント医薬組成物の総重量に占める懸濁化剤の重量の百分率である。
【0030】
本発明の実施形態によれば、前記フルベストラント医薬組成物において、前記浸透圧調整剤の重量分率は0~5.00%であり、好ましくは1.00%~3.00%であり、例えば2.29%、2.82%又は2.89%であり、前記重量分率は、フルベストラント医薬組成物の総重量に占める浸透圧調整剤の重量の百分率である。
【0031】
本発明の実施形態によれば、前記フルベストラント医薬組成物において、前記緩衝剤の重量分率は0~1.00%であり、好ましくは0.20%~0.80%であり、例えば0.42%、0.43%又は0.51%であり、前記重量分率は、フルベストラント医薬組成物の総重量に占める緩衝剤の重量の百分率である。
【0032】
本発明の実施形態によれば、前記フルベストラント医薬組成物において、前記pH調整剤の使用量は、組成物溶液のpHを6.5~8.0、例えば7.4に調整することが好ましい。
【0033】
本発明の実施形態によれば、前記フルベストラント医薬組成物は、1.00~50.00%のフルベストラント固体粒子、0~5.00%の湿潤剤、0~5.00%の懸濁化剤、0~5.00%の浸透圧調整剤、0~1.00%の緩衝塩及び溶媒を含むことが好ましい。
【0034】
本発明の実施形態によれば、前記フルベストラント医薬組成物は、以下の何れか1つの配合法から選ばれてよい:
配合法1:18.09%のフルベストラント固体粒子、1.67%の湿潤剤及び80.24%の水である;
配合法2:19.59%のフルベストラント固体粒子、1.74%の湿潤剤及び78.67%の水である;
配合法3:24.66%のフルベストラント固体粒子、1.62%の湿潤剤、1.00%の懸濁化剤、2.82%の浸透圧調整剤、0.42%の緩衝塩及び0~1%のpH調整剤であり、好ましくは、残部は水である;
配合法4:25.00%のフルベストラント固体粒子、1.62%の湿潤剤、1.00%の懸濁化剤、2.89%の浸透圧調整剤、0.43%の緩衝塩及び0~1%のpH調整剤であり、好ましくは、残部は水である;
配合法5:25.00%のフルベストラント固体粒子、1.62%の湿潤剤、0.20%の懸濁化剤、2.29%の浸透圧調整剤、0.51%の緩衝塩及び70.38%の水である。
【0035】
本発明の実施形態によれば、前記フルベストラント医薬組成物は、以下の何れか1つの配合法から選ばれてもよい:
配合法A:18.09%のフルベストラント固体粒子、1.67%のトゥイーン80及び80.24%の滅菌注射用水である;
配合法B:19.59%のフルベストラント固体粒子、1.74%のトゥイーン80及び78.67%の滅菌注射用水である;
配合法C:24.66%のフルベストラント固体粒子、1.62%のトゥイーン20、1.00%のカルボキシメチルセルロースナトリウム、2.82%のマンニトール、0.42%の無水リン酸二水素ナトリウム、水酸化ナトリウム及び滅菌注射用水であり、好ましくは、前記フルベストラント医薬組成物のpHは7.4である;
配合法D:25.00%のフルベストラント固体粒子、1.62%のトゥイーン20、1.00%のカルボキシメチルセルロースナトリウム、2.89%のマンニトール、0.43%の無水リン酸二水素ナトリウム、水酸化ナトリウム及び滅菌注射用水であり、好ましくは、前記フルベストラント医薬組成物のpHは7.4である;
配合法E:25.00%のフルベストラント固体粒子、1.62%のトゥイーン20、0.20%のカルボキシメチルセルロースナトリウム、2.29%のマンニトール、0.09%の無水リン酸二水素ナトリウム、0.42%の無水リン酸水素二ナトリウム及び70.38%の滅菌注射用水である。
【0036】
本発明は、以下のステップを含む前記フルベストラント医薬組成物の調製方法を更に提供する:
ステップ1:フルベストラント固体粒子を配合法における他の成分と混合して、予混合物を得る;
ステップ2:ステップ1で得られた予混合物をジルコニウムビーズと共に研磨し、又は気流で粉砕して、前記フルベストラント医薬組成物を得る。
【0037】
本発明の実施形態によれば、ステップ1において、前記混合は、撹拌混合が好ましい。
【0038】
本発明の実施形態によれば、ステップ2において、前記ジルコニウムビーズの粒径は0.01 mm~2 mmであってもよく、例えば0.3 mm、0.6 mm又は1 mmである。
【0039】
本発明の実施形態によれば、ステップ2において、前記ジルコニウムビーズと前記予混合物との体積比は1~5であり、例えば1、1.5、2又は3である。
【0040】
本発明の実施形態によれば、ステップ2において、前記研磨の時間は1分間~10時間であってもよいし、5分間~8時間であってもよく、例えば、7分間、4時間、7時間又は8時間である。
【0041】
本発明の実施形態によれば、前記ジルコニウムビーズは、通常市販のジルコニアビーズである。
【0042】
本発明は、フルベストラント医薬製剤の調製における、前記フルベストラント医薬組成物の応用を更に提供する。
【0043】
本発明の実施形態によれば、前記フルベストラント医薬製剤は、錠剤、顆粒剤、カプセル、マイクロペレット、経口液及び注射剤などのうちの1つ又は複数を含むが、これらに限定されない。好ましくは、前記錠剤は、徐放錠、浸透圧ポンプ錠及び口腔内崩壊錠のうちの1つ又は複数を含むが、これらに限定されない。好ましくは、前記注射剤は、液体注射剤、注射用粉剤又は注射用錠剤であってもよく、例えば、前記液体注射剤は、水懸濁剤又は油懸濁剤などの懸濁剤であってもよく、例えば、前記注射用粉剤は凍結乾燥粉末である。
【0044】
本発明の実施形態によれば、前記注射剤は長時間作用型注射剤であってもよく、前記長時間作用型注射剤は水懸濁剤、油懸濁剤であってもよく、懸濁用粉末であってもよく、使用直前に、特定の希釈剤で懸濁剤になるように分散させる。
【0045】
本発明の実施形態によれば、長時間作用型注射剤における前記フルベストラントの濃度は50 mg/mL以上であり、例えば100 mg/mL以上であり、好ましくは120 mg/mL~400 mg/mLであり、例示的には、200 mg/mL、250 mg/mL、263.8 mg/mL、270.1 mg/mL、300 mg/mL、341.9 mg/mLである。
【0046】
本発明は、前記フルベストラント医薬組成物を含むフルベストラント医薬製剤を更に提供する。
【0047】
本発明の実施形態によれば、前記フルベストラント医薬製剤は、上記のような剤形選択及び/又はフルベストラント濃度を有する。
【0048】
本発明は、ホルモン受容体陽性転移性乳癌の予防及び/又は治療における、前記フルベストラント医薬組成物及び/又はフルベストラント医薬製剤の応用を更に提供する。
【0049】
本発明は、前記フルベストラント医薬組成物及び/又はフルベストラント医薬製剤を必要な患者、例えば、ヒトに投与することを含む、ホルモン受容体陽性転移性乳癌を予防及び/又は治療する方法を更に提供する。
【0050】
本発明において、前記「Dv(10)」、「Dv(25)」、「Dv(50)」、「Dv(75)」及び「Dv(90)」とは、体積加重の粒子径であり、そのうち、測定時にそれ以下の直径を有する粒子がそれぞれ累積で10 v/v%、25 v/v%、50 v/v%、75 v/v%又は90 v/v%ある。例えば、粒子群のDv(50)が約25ミクロンである場合、50%体積の粒子は約25ミクロン以下の直径を有することを示している。前記「Dn(10)」、「Dn(25)」、「Dn(50)」、「Dn(75)」及び「Dn(90)」とは、数量加重の粒子径であり、そのうち、測定時にそれ以下の直径を有する粒子がそれぞれ累積で10%、25%、50%、75%又は90%ある。例えば、粒子群のDv(50)が約25ミクロンである場合、50%数量の粒子は約25ミクロン以下の直径を有することを示している。
【0051】
この分野の常識から逸脱することなく、上記好ましい条件のそれぞれは、任意に組み合わせれば、本発明のそれぞれの好ましい例を得ることができる。
【0052】
本発明に用いる試薬及び原料は、何れも市販されている。
【0053】
本発明の実施形態によれば、室温とは、10℃~35℃の環境温度である。
【発明の効果】
【0054】
本発明の有益な効果として、本発明のフルベストラント医薬組成物は、持続的な徐放性を持ち、バイオアベイラビリティが高いという特徴を有し、投与されやすく、投与体積が小さく、注射の痛みが大幅に軽減されたため、市場の見通しが良い。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】実施例1における研磨前のフルベストラント固体粒子の粒径形態図であり、スケールは100ミクロンである。
図2】実施例1における5分間研磨後のフルベストラント固体粒子の粒径形態図であり、スケールは10ミクロンである。
図3】実施例1における7分間研磨後のフルベストラント固体粒子の粒径形態図であり、スケールは10ミクロンである。
図4】実施例2における研磨前のフルベストラント固体粒子の粒径形態図であり、スケールは100ミクロンである。
図5】実施例2における30分間研磨後のフルベストラント固体粒子の粒径形態図であり、スケールは10ミクロンである。
図6】実施例2における1時間研磨後のフルベストラント固体粒子の粒径形態図であり、スケールは10ミクロンである。
図7】実施例2における2時間研磨後のフルベストラント固体粒子の粒径形態図であり、スケールは10ミクロンである。
図8】実施例2における4時間研磨後のフルベストラント固体粒子の粒径形態図であり、スケールは10ミクロンである。
図9】実施例3における研磨前のフルベストラント固体粒子のXRPDスペクトルであり、機器型番:Bruker D8 Advance X線回折計、テスト条件:Target:Cu 40 kv 40 mAである。
図10】実施例3における研磨後の懸濁液を、60℃で20日間、40℃で20日間、40℃で30日間、25℃で30日間、4℃で30日間及び-20℃で30日間放置したフルベストラント固体粒子のXRPDスペクトルである。そのうち、1は、実施例3における研磨後の懸濁液を60℃で20日間放置したフルベストラント固体粒子のXRPDスペクトルを示す。2は、実施例3における研磨後の懸濁液を40℃で30日間放置したフルベストラント固体粒子のXRPDスペクトルを示す。3は、実施例3における研磨後の懸濁液を40℃で20日間放置したフルベストラント固体粒子のXRPDスペクトルを示す。4は、実施例3における研磨後の懸濁液を25℃で30日間放置したフルベストラント固体粒子のXRPDスペクトルを示す。5は、実施例3における研磨後の懸濁液を4℃で30日間放置したフルベストラント固体粒子のXRPDスペクトルを示す。6は、実施例3における研磨後の懸濁液を-20℃で30日間放置したフルベストラント固体粒子のXRPDスペクトルを示す。
図11】実施例3における研磨後の懸濁液を60℃で20日間放置したフルベストラント固体粒子の偏光顕微鏡観察図であり、スケールは10ミクロンである。
図12】実施例3における研磨後の懸濁液を40℃で20日間放置したフルベストラント固体粒子の偏光顕微鏡観察図であり、スケールは10ミクロンである。
図13】実施例3における研磨後の懸濁液を40℃で30日間放置したフルベストラント固体粒子の偏光顕微鏡観察図であり、スケールは10ミクロンである。
図14】実施例3における研磨後の懸濁液を25℃で30日間放置したフルベストラント固体粒子の偏光顕微鏡観察図であり、スケールは10ミクロンである。
図15】実施例3における研磨後の懸濁液を4℃で30日間放置したフルベストラント固体粒子の偏光顕微鏡観察図であり、スケールは10ミクロンである。
図16】実施例4における研磨後の懸濁液中のフルベストラント固体粒子の偏光顕微鏡観察図であり、スケールは10ミクロンである。
図17】実施例5における研磨後の懸濁液中のフルベストラント固体粒子の偏光顕微鏡観察図であり、スケールは10ミクロンである。
図18】実施例6における研磨後の懸濁液中のフルベストラント固体粒子の偏光顕微鏡観察図であり、スケールは10ミクロンである。
図19】実施例7における研磨後の懸濁液中のフルベストラント固体粒子の粒径分布図である。
図20】実施例7における研磨後の懸濁液中のフルベストラント固体粒子の粒径形態図であり、スケールは10ミクロンである。
図21】実施例8における研磨後の懸濁液中のフルベストラント固体粒子の粒径分布図である。
図22】実施例8における研磨後の懸濁液中のフルベストラント固体粒子の粒径形態図であり、スケールは10ミクロンである。
図23】実施例9における研磨後の懸濁液中のフルベストラント固体粒子の粒径分布図である。
図24】実施例9における研磨後の懸濁液中のフルベストラント固体粒子の粒径形態図であり、スケールは10ミクロンである。
図25】実施例11の処方No.1(即ち、市販の対照フルベストラント製剤)のフルベストラントの薬物動態グラフである。
【0056】
【数1】

図26】実施例11の処方No.2の製剤のフルベストラントの薬物動態グラフである。
【0057】
【数2】

図27】実施例11の処方No.3の製剤のフルベストラントの薬物動態グラフである。
【0058】
【数3】

図28】実施例11の処方No.4のフルベストラント製剤の薬物動態グラフである。
【0059】
【数4】

図29】処方No.1の製剤(即ち、市販の対照フルベストラント製剤)及び処方No.2、3、4の製剤のフルベストラントの平均薬物動態グラフである。
【0060】
【数5】
【発明を実施するための形態】
【0061】
本願は、2019年12月11日に中国国家知識産権局に提出された特許出願番号が201911262544.4、発明名称が「フルベストラント医薬組成物、調製方法及び応用」である先行出願、及び、2020年6月24日に中国国家知識産権局に提出された特許出願番号が202010590154.6、発明名称が「フルベストラント医薬組成物、調製方法及び応用」である先行出願の優先権を主張する。前記先行出願の全体は、引用により本願に組み込まれている。
【0062】
以下、具体的な実施例に合わせて、本発明の技術案を更に詳しく説明する。下記の実施例は、単に本発明を例示的に説明し解釈するものであり、本発明の請求範囲を限定するものではないと理解すべきである。本発明の上記内容に基づいて実現される技術は、全て本発明の請求範囲内に含まれる。
【0063】
特に記載のない限り、以下の実施例に使用される原材料及び試薬は、いずれも市販品であり、又は既知の方法によって製造することができる。
【0064】
下記実施例中の粒径は、特に記載のない限り、いずれも体積加重の粒子径Dvである。
【実施例1】
【0065】
【表1】
【0066】
表1に示される処方のように、0.18 gのトゥイーン80を秤量し、1.94 gのフルベストラント固体粒子を加えた後、滅菌注射用水8.60 gを注入し、均一に撹拌して混合し、予混合溶液を得た。
【0067】
予混合溶液サンプルと118.5 gの1 mmのジルコニウムビーズを研磨缶に置いて(予混合溶液サンプルとジルコニウムビーズとの体積比は1:3)研磨を行い、組成物を研磨し、フルベストラント懸濁注射液を得た。研磨は、ボールミルにより行われ、遊星型ボールミルのパラメータ設定は、固定パラメータとして、公転ディスクの直径が約191 mm、自転カップの直径が約71 mm、自転カップの高さが約70 mm、自転カップの容量が100 mL、公転ディスクの回転速度が10 r/min、自転速度が720 r/minであった。
【0068】
レーザー粒度分析器により測定し(レーザー粒度分析器のパラメータ設定は、分散媒体:水、分散媒体の屈折率:1.333、サンプル材料の吸収率:0.01、サンプル材料の屈折率:1.521である)、懸濁液中のフルベストラント固体粒子の粒径分布は表2に示される通りである。懸濁液中の研磨前のフルベストラント固体粒子の粒径形態は図1に示される通りであり、5分間研磨後のフルベストラント固体粒子の粒径形態は図2に示される通りであり、7分間研磨後のフルベストラント固体粒子の粒径形態は図3に示される通りである。
【0069】
【表2】
【実施例2】
【0070】
【表3】
【0071】
表3に示される処方のように、0.09 gのトゥイーン80を秤量し、0.98 gのフルベストラント固体粒子を加えた後、滅菌注射用水3.94 gを注入し、均一に撹拌して混合し、予混合溶液を得た。
【0072】
予混合溶液サンプルと60.00 gの1 mmのジルコニウムビーズを研磨缶に置いて(予混合溶液サンプルとジルコニウムビーズとの体積比は1:3)研磨を行い、7時間研磨し、懸濁注射液であるフルベストラント医薬組成物を得た。研磨は、ボールミルにより行われ、遊星型ボールミルのパラメータ設定は、固定パラメータとして、公転ディスクの直径が約191 mm、自転カップの直径が約71 mm、自転カップの高さが約70 mm、自転カップの容量が100 mL、公転ディスクの回転速度が10 r/min、自転速度が720 r/minであった。
【0073】
レーザー粒度分析器により測定し(レーザー粒度分析器のパラメータ設定は、分散媒体:水、分散媒体の屈折率:1.333、サンプル材料の吸収率:0.01、サンプル材料の屈折率:1.521である)、研磨時間が異なる懸濁液中のフルベストラント固体粒子の粒径分布は表4に示される通りである。懸濁液中の研磨前のフルベストラント固体粒子の粒径形態は図4に示される通りであり、30分間研磨後のフルベストラント固体粒子の粒径形態は図5に示される通りであり、1時間研磨後のフルベストラント固体粒子の粒径形態は図6に示される通りであり、2時間研磨後のフルベストラント固体粒子の粒径形態は図7に示される通りであり、4時間研磨後のフルベストラント固体粒子の粒径形態は図8に示される通りである。
【0074】
【表4】
【実施例3】
【0075】
【表5】
【0076】
表5に示される処方のように、0.492 gのトゥイーン20を秤量し、7.51 gのフルベストラント固体粒子を加えた後、30 gに定量するように4%のマンニトール-pH7.4の無水リン酸二水素ナトリウム溶液を加え(ここでの百分率とは、マンニトール-pH7.4の無水リン酸二水素ナトリウム溶液の総体積に占めるマンニトールの質量の百分率である)、均一に撹拌して混合し、予混合溶液を得た。
【0077】
予混合溶液と97.6 gの0.3 mmのジルコニウムビーズを研磨缶に置いて(予混合溶液サンプルとジルコニウムビーズとの体積比は1:1)研磨を行い、3時間研磨し、懸濁注射液であるフルベストラント医薬組成物を得た。研磨は、ボールミルにより行われ、遊星型ボールミルのパラメータ設定は、固定パラメータとして、公転ディスクの直径が約191 mm、自転カップの直径が約71 mm、自転カップの高さが約70 mm、自転カップの容量が100 mL、公転ディスクの回転速度が10 r/min、自転速度が720 r/minであった。
【0078】
レーザー粒度分析器により測定し(レーザー粒度分析器のパラメータ設定は、分散媒体:水、分散媒体の屈折率:1.333、サンプル材料の吸収率:0.01、サンプル材料の屈折率:1.521である)、研磨時間が異なる懸濁液中のフルベストラント固体粒子の粒径分布は表6に示される通りである。研磨完了後、0.30 gのCMC-Na(カルボキシメチルセルロースナトリウム)を加え、十分且つ均一に撹拌した。サンプルを取り出してろ過し、研磨ビーズを除去した。ペニシリンボトルに分注して蓋をして、アルミホイルで包み、4℃で遮光して保存した。
【0079】
【表6】
【0080】
実施例1~3で得られたフルベストラント懸濁液の安定性テスト
実施例1と2で得られたフルベストラント懸濁液を、冷蔵庫において4℃で14日間又は10日間冷蔵して類縁物質を測定し、結果は表7に示されている。
【0081】
実施例3で得られたフルベストラント懸濁液を、零下20℃、4℃、25℃、40℃又は60℃の条件で置いて、類縁物質、フルベストラント固体粒子の形態と粒径分布、結晶形の変化状況をテストし、結果は表8と表9に示されている。XPRDテストスペクトルは、図9図10に示されている。フルベストラント固体粒径の形態図は、図11~15に示されている。そのうち、類縁物質のテストは、EP10.0の方法に従って測定した。
【0082】
【表7】
【0083】
【表8】
【0084】
類縁物質の検出結果により、研磨後、懸濁液中の類縁物質はわずかに増加したが、異なる条件で置かれた後、懸濁液中の類縁物質は有意に増加しなかったことが示されている。すべての条件下で、単一不純物の最大含有量は0.07%、全不純物の最大含有量は0.36%であり、品質は標準に達している。
【0085】
【表9】
【0086】
図11~15の粒径形態図(PLM)を見ると、各条件下でサンプル中のフルベストラント固体粒子の形態は変化しておらず、一部のサンプルに少量の粒子凝集が認められた以外、粒径の有意な増加が認められなかったことが分かった。レーザー粒度分析により、各条件下で懸濁液中のフルベストラント固体粒子の粒径がいずれも5 μmを超えず、25℃と40℃で粒径がやや増加したことが示されているのは、サンプルの粒子凝集に相関している可能性があるが、単一の粒子は変化しておらず、60℃では、粒径がやや低減された。
【0087】
図9図10のXRPD結果により、異なる条件下での懸濁液中のフルベストラント固体粒子の結晶形が最初のフルベストラント固体粒子に一致しており、フルベストラント固体粒子の結晶形が変化しなかったことが示されている。
【実施例4】
【0088】
【表10】
【0089】
表10に示される処方のように、0.333 gのトゥイーン20を秤量し、5.00 gのフルベストラント固体粒子を加えた後、19.80 gに定量するように4%のマンニトール-pH7.4の無水リン酸二水素ナトリウム溶液を加え(ここでの百分率とは、マンニトール-pH7.4の無水リン酸二水素ナトリウム溶液の総体積に占めるマンニトールの質量の百分率である)、均一に撹拌して混合し、予混合溶液を得た。
【0090】
予混合溶液と97.5 gの0.3 mmのジルコニウムビーズを研磨缶に置いて(予混合溶液サンプルとジルコニウムビーズとの体積比は2:3)研磨を行い、27時間研磨し、懸濁注射液であるフルベストラント医薬組成物を得た。研磨は、ボールミルにより行われ、遊星型ボールミルのパラメータ設定は、固定パラメータとして、公転ディスクの直径が約191 mm、自転カップの直径が約71 mm、自転カップの高さが約70 mm、自転カップの容量が100 mL、公転ディスクの回転速度が10 r/min、自転速度が720 r/minであった。
【0091】
レーザー粒度分析器により測定し(レーザー粒度分析器のパラメータ設定は、分散媒体:水、分散媒体の屈折率:1.333、サンプル材料の吸収率:0.01、サンプル材料の屈折率:1.521である)、研磨時間が異なる懸濁液中のフルベストラント固体粒子の粒径分布は表11に示される通りである。研磨後の懸濁液中のフルベストラント固体粒子の粒径形態は、図16に示されている。
【0092】
【表11】
【実施例5】
【0093】
【表12】
【0094】
表12に示される処方のように、0.324 gのトゥイーン20を秤量し、5.00 gのフルベストラント固体粒子を加えた後、19.80 gに定量するように4%のマンニトール-pH7.4の無水リン酸二水素ナトリウム溶液を加え(ここでの百分率とは、マンニトール-pH7.4の無水リン酸二水素ナトリウム溶液の総体積に占めるマンニトールの質量の百分率である)、均一に撹拌して混合し、予混合溶液を得た。
【0095】
予混合溶液と111.6 gの0.6 mmのジルコニウムビーズを研磨缶に置いて(予混合溶液サンプルとジルコニウムビーズとの体積比は2:3)研磨を行い、27時間研磨し、懸濁注射液であるフルベストラント医薬組成物を得た。研磨は、ボールミルにより行われ、遊星型ボールミルのパラメータ設定は、固定パラメータとして、公転ディスクの直径が約191 mm、自転カップの直径が約71 mm、自転カップの高さが約70 mm、自転カップの容量が100 mL、公転ディスクの回転速度が10 r/min、自転速度が720 r/minであった。
【0096】
レーザー粒度分析器により測定し(レーザー粒度分析器のパラメータ設定は、分散媒体:水、分散媒体の屈折率:1.333、サンプル材料の吸収率:0.01、サンプル材料の屈折率:1.521である)、研磨時間が異なる懸濁液中のフルベストラント固体粒子の粒径分布は表13に示される通りである。研磨後の懸濁液中のフルベストラント固体粒子の粒径形態は、図17に示されている。
【0097】
【表13】
【実施例6】
【0098】
【表14】
【0099】
表14に示される処方のように、0.328 gのトゥイーン20を秤量し、5.0 gのフルベストラント固体粒子を加えた後、19.80 gに定量するように4%のマンニトール-pH7.4の無水リン酸二水素ナトリウム溶液を加え(ここでの百分率とは、マンニトール-pH7.4の無水リン酸二水素ナトリウム溶液の総体積に占めるマンニトールの質量の百分率である)、均一に撹拌して混合し、予混合溶液を得た。
【0100】
予混合溶液と112.0 gの1.0 mmのジルコニウムビーズを研磨缶に置いて(予混合溶液サンプルとジルコニウムビーズとの体積比は2:3)研磨を行い、27時間研磨し、懸濁注射液であるフルベストラント医薬組成物を得た。研磨は、ボールミルにより行われ、遊星型ボールミルのパラメータ設定は、固定パラメータとして、公転ディスクの直径が約191 mm、自転カップの直径が約71 mm、自転カップの高さが約70 mm、自転カップの容量が100 mL、公転ディスクの回転速度が10 r/min、自転速度が720 r/minであった。
【0101】
レーザー粒度分析器により測定した(レーザー粒度分析器のパラメータ設定は、分散媒体:水、分散媒体の屈折率:1.333、サンプル材料の吸収率:0.01、サンプル材料の屈折率:1.521である)。適量の懸濁液を精密に秤量し、EP10.0の方法に従ってフルベストラントの含有量及び類縁物質を検出した。研磨時間が異なる懸濁液中のフルベストラント固体粒子の粒径分布は、表15に示される通りである。研磨後の懸濁液中のフルベストラント固体粒子の粒径形態は、図18に示されている。
【0102】
【表15】
【実施例7】
【0103】
【表16】
【0104】
表16の処方における使用量に従って原材料と補助材料を秤量し、均一に混合した後、1.5倍の体積の0.6 mmのジルコニウムビーズを研磨缶に置いて研磨を行い、3時間研磨し、フルベストラント医薬組成物をバッチ1として得た。研磨は、ボールミルにより行われ、遊星型ボールミルのパラメータ設定は、固定パラメータとして、公転ディスクの直径が約191 mm、自転カップの直径が約71 mm、自転カップの高さが約70 mm、自転カップの容量が100 mL、公転ディスクの回転速度が10 r/min、自転速度が720 r/minであった。
【0105】
レーザー粒度分析器により測定した(レーザー粒度分析器のパラメータ設定は、分散媒体:水、分散媒体の屈折率:1.333、サンプル材料の吸収率:0.01、サンプル材料の屈折率:1.521である)。適量の懸濁液を精密に秤量し、EP10.0の方法に従ってフルベストラントの含有量及び類縁物質を検出した。研磨後の懸濁液中のフルベストラント固体粒子の含有量及び粒径分布のデータは、表17に示される通りである。研磨後の懸濁液中のフルベストラント固体粒子の粒径分布図は図19に示されており、研磨後の懸濁液中のフルベストラント固体粒子の形態は図20に示されている。類縁物質の結果は表19に示されている。
【実施例8】
【0106】
【表17】
【0107】
表18の処方の使用量に従って原材料と補助材料を秤量し、均一に混合した後、3倍の体積の1 mmのジルコニウムビーズを研磨缶に置いて研磨を行い、5分間研磨し、フルベストラント医薬組成物をバッチ2として得た。研磨は、ボールミルにより行われ、遊星型ボールミルのパラメータ設定は、固定パラメータとして、公転ディスクの直径が約191 mm、自転カップの直径が約71 mm、自転カップの高さが約70 mm、自転カップの容量が100 mL、公転ディスクの回転速度が10 r/min、自転速度が720 r/minであった。
【0108】
レーザー粒度分析器により測定した(レーザー粒度分析器のパラメータ設定は、分散媒体:水、分散媒体の屈折率:1.333、サンプル材料の吸収率:0.01、サンプル材料の屈折率:1.521である)。適量の懸濁液を精密に秤量し、EP10.0の方法に従ってフルベストラントの含有量及び類縁物質を検出した。研磨後の懸濁液中のフルベストラント固体粒子の含有量及び粒径分布のデータは、表17に示される通りである。研磨後の懸濁液中のフルベストラント固体粒子の粒径分布図は図21に示されており、研磨後の懸濁液中のフルベストラント固体粒子の形態は図22に示されている。類縁物質の結果は表19に示されている。
【実施例9】
【0109】
【表18】
【0110】
表20の処方の使用量に従って原材料と補助材料を秤量し、均一に混合した後、フルベストラント薬物懸濁液をバッチ3として得た。そのうち、原薬は気流で粉砕することで得られた。
【0111】
レーザー粒度分析器により測定した(レーザー粒度分析器のパラメータ設定は、分散媒体:水、分散媒体の屈折率:1.333、サンプル材料の吸収率:0.01、サンプル材料の屈折率:1.521である)。適量の懸濁液を精密に秤量し、EP10.0の方法に従ってフルベストラントの含有量及び類縁物質を検出した。懸濁液中のフルベストラント固体粒子の含有量及び粒径分布のデータは、表17に示されてる通りである。研磨後の懸濁液中のフルベストラント固体粒子の粒径分布は図23に示されており、研磨後の懸濁液中のフルベストラント固体粒子の形態は図24に示されている。類縁物質の結果は表19に示されている。
表17 実施例7~9のフルベストラント懸濁液中のAPI濃度及び粒径と粒径分布の結果
【0112】
【表19】
【実施例10】
【0113】
実施例7、実施例8、実施例9で得られた製剤(それぞれ、処方No.2、3、4と記す)及び市販の対照製剤フルベストラント注射剤FASLODEX(5 mL:250 mg、ドイツVETTER Pharma-fertigung GmbH & Co KG、ロット番号:RD693、有効期間2023年8月、処方No.1と記す)。処方No.2、3及びNo.1は、表21のように長期間条件(25℃±2℃、60%RH±5%RH)と加速条件(40℃±2℃、75%RH±5%RH)で安定性静置を行い、EP10.0の方法に従ってフルベストラント類縁物質を検出し、結果は表19に示されており、その同時に、製剤処方No.2とNo.3の粒径と粒径分布を測定し、結果は表22と23に示されている。
【0114】
安定性の結果により、同じ条件下で自製フルベストラント懸濁液中の分解不純物である6-Keto fulvestrant(6-ケトフルベストラント)及びFulvestrant Sulphone(フルベストラントスルホン)、未知の単一不純物、全不純物レベルを比較すると、いずれも対照製剤フルベストラント注射剤FASLODEXよりも低いことが示され、自製フルベストラント懸濁液の安定性が市販の対照製剤よりも優れていることが明らかになる。
表21 処方No.2とNo.3の製剤及び対照製剤の安定性静置
【0115】
【表20】
【0116】
【表21】
【0117】
【表22】
【0118】
【表23】
【実施例11】
【0119】
実施例7、実施例8、実施例9で得られた製剤(処方No.2、3、4の製剤)を希釈剤で50 mg/mLに希釈した。希釈剤の組成は、1.62%のトゥイーン20、0.2%のカルボキシメチルセルロースナトリウム、2.29%のマンニトール、0.09%の無水リン酸二水素ナトリウム、0.42%の無水リン酸水素二ナトリウムである。希釈後のフルベストラント懸濁液及び市販の対照製剤フルベストラント注射剤FASLODEX(即ち、処方No.1の製剤、50 mg/mL、ドイツVETTER Pharma-fertigung GmbH & Co KG、ロット番号:RD693、有効期間2023年8月)をフルベストラント15 mg/kg(0.3 mL/kg)でSPFグレードの動物で217~235 g、6~9週齢であり、1群あたり6匹とする雄Wistarラット(浙江維通利華実験動物技術有限公司、品質証明書番号110011200105465684、ライセンス番号SYXK(蘇)2018-0034))へ大腿外側筋肉内注射で投与した。投与後に臨床観察を行い、投与初日(D1)に2回観察し(投与前と投与後の当日午後)、その後、1日1回、合計45日間観察した。臨床観察は、皮膚、被毛、目、耳、鼻、口、胸部、腹部、泌尿生殖器、四肢などの部位、及び呼吸、運動、泌尿、排便と行動の変化、及び投与部位での筋肉刺激反応などを含む。投与前(0 h、D-1)、D1投与の1、3、7、24 h後、D4(72 h)、D7(144 h)、D11(240 h)、D15(336 h)、D20(456 h)、D25(576 h)、D30(696 h)、D35(816 h)、D40(936 h)及びD45(1056 h)に血液サンプルを採取し、生物学的分析を行い、WinNonlinバージョン8.1の非コンパートメントモデルにより各群の薬物動態パラメータTmax、Cmax、AUC(0-t)、AUC(0-∞)、T1/2、MRT、CL、Vzなどを算出した。投与のD45に動物を解剖し、且つ投与部位の組織病理学的検査を行い、炎症反応と薬物残留物を観察した。
【0120】
各用量群の全ての試験動物の臨床観察、体重、投与部位での刺激観察、投与部位での肉眼解剖は、何れも異常が認められず、投与部位に炎症及び薬物残留物が認められず、組織病理学的検査では、試験品の投与に関連する異常が認められなかった。
【0121】
Wistarラットに筋肉内注射で15 mg/kgのフルベストラントフルベストラント製剤の処方No.1、2、3及びNo.4(処方No.1は市販の対照フルベストラント製剤を示し、処方No.2は実施例7で得られたフルベストラント製剤を示し、処方No.3は実施例8で得られたフルベストラント製剤を示し、処方No.4は実施例9で得られたフルベストラント製剤を示す)を1回投与した薬物動態パラメータは、表24に示されている。Wistarラットに筋肉内注射で15 mg/kgのフルベストラント製剤の処方No.1、2、3、4を1回投与した薬物動態グラフは、それぞれ図25図26図27及び図28に示されており、処方No.1、2、3、4の平均薬物動態グラフは図29に示されている。
【0122】
Wistarラットに筋肉内注射で15 mg/kgの処方No.1(市販の対照フルベストラント製剤)を1回投与したところ、血漿中のフルベストラントのCmaxは13.5±4.32 ng/mLであり、薬物濃度-時間曲線下面積AUCINF_obsは6350±949 h*ng/mL、AUClastは5000±932 h*ng/mL、薬物終末消失半減期T1/2_Zは413±88.0 h、クリアランスCl_obsは2410±433 mL/h/kg、平均滞留時間MRTINF_obsは641±136 h、分布容積Vz_obsは1450000±421000 mL/kgである。
【0123】
Wistarラットに筋肉内注射で15 mg/kgの処方No.2(実施例7で得られたフルベストラント製剤)を1回投与したところ、血漿中のフルベストラントのCmaxは10.0±3.16 ng/mL、薬物濃度-時間曲線下面積AUCINF_obsは6990±2010 h*ng/mL、AUClastは3490±745 h*ng/mL、薬物終末消失半減期T1/2_Zは776±300 h、クリアランスCl_obsは2340±814 mL/h/kg、平均滞留時間MRTINF_obsは1310±443 h、分布容積Vz_obsは2470000±881000 mL/kgである。
【0124】
Wistarラットに筋肉内注射で15 mg/kgの処方No.3(実施例8で得られたフルベストラント製剤)を1回投与したところ、血漿中のフルベストラントのCmaxは8.10±2.89 ng/mL、薬物濃度-時間曲線下面積AUCINF_obsは71800±125000 h*ng/mL、AUClastは3970±701 h*ng/mL、薬物終末消失半減期T1/2_Zは12300±23900 h、クリアランスCl_obsは655±398 mL/h/kg、平均滞留時間MRTINF_obsは18000±34500 h、分布容積Vz_obsは2950000±721000 mL/kgである。
【0125】
Wistarラットに筋肉内注射で15 mg/kgの処方No.4(実施例9で得られたフルベストラント製剤)を1回投与したところ、血漿中のフルベストラントのCmaxは9.23±2.78 ng/mL、薬物濃度-時間曲線下面積AUCINF_obsは35000±61100 h*ng/mL、AUClastは3280±518 h*ng/mL、薬物終末消失半減期T1/2_Zは5300±9230 h、クリアランスCl_obsは1550±1150 mL/h/kg、平均滞留時間MRTINF_obsは7820±13300 h、分布容積Vz_obsは3170000±571000 mL/kgである。
【0126】
結果から明らかなように、Wistarラットに筋肉内注射で15 mg/kgの製剤を1回投与したところ、Cmaxは大きい順に、処方No.1>処方No.2>処方No.4>処方No.3であり、AUClastは大きい順に、処方No.1>処方No.3>処方No.2>処方No.4であり、平均滞留時間MRTINF_obsは大きい順に、処方No.3>処方No.4>処方No.2>処方No.1であり、分布容積Vz_obsは大きい順に、処方No.4>処方No.3>処方No.2>処方No.1である。上記のパラメータを比較すると、処方No.2、3、4は、体内でのMRTが処方No.1よりも長く、分布容積がより大きいことが見られ、実施例7~9の製剤の体内での徐放作用が明らかであることを示している。
【0127】
【表24】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29