(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】二次電池用正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20240604BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240604BHJP
C01G 53/00 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
C01G53/00 A
(21)【出願番号】P 2022544179
(86)(22)【出願日】2021-01-19
(86)【国際出願番号】 KR2021000733
(87)【国際公開番号】W WO2021153936
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-07-20
(31)【優先権主張番号】10-2020-0010693
(32)【優先日】2020-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】サン・ミン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ウン・ソル・ロ
(72)【発明者】
【氏名】スン・ビン・パク
(72)【発明者】
【氏名】スル・キ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ウェン・シュウ・ワン
(72)【発明者】
【氏名】ワン・モ・ジュン
【審査官】上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-172530(JP,A)
【文献】特開2019-021627(JP,A)
【文献】特開2018-063951(JP,A)
【文献】特開2018-098173(JP,A)
【文献】特開2019-125575(JP,A)
【文献】特開2017-065975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/525
H01M 4/505
C01G 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル、コバルトおよびマンガンを含み、リチウム以外の金属のうちニッケルを60モル%以上含有するリチウム複合遷移金属酸化物であり、
平均粒径(D
50)が1~10μmである単粒子であり、
前記リチウム複合遷移金属酸化物の粒子の表面から粒子の中心方向に100nmの領域は、Fd3m空間群およびFm3m空間群の結晶構造を含み、
前記リチウム複合遷移金属酸化物の粒子に対して、TEM(透過型電子顕微鏡法)を用いて粒子表面部の断面イメージを得た時に、前記Fd3m空間群の結晶構造およびFm3m空間群の結晶構造が占める各部分の最大直線長さの比率である相の比率Fd3m/Fm3mが0.2~0.7である、二次電池用正極活物質。
【請求項2】
前記相の比率Fd3m/Fm3mが0.3~0.6である、請求項1に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項3】
平均粒径(D
50)が2~7μmである単粒子形状である、請求項1
または2に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項4】
前記リチウム複合遷移金属酸化物の構造内のリチウム層でのニッケルカチオンのカチオンミキシングの比率が1.5%以下である、請求項1
から3のいずれか一項に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項5】
前記リチウム複合遷移金属酸化物の構造内のリチウム層でのニッケルカチオンのカチオンミキシングの比率が1.0%以下である、請求項4に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項6】
前記リチウム複合遷移金属酸化物は、リチウム以外の金属(M)に対するリチウムのモル比(Li/M)が1.1~1.2である、請求項1
から5のいずれか一項に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項7】
前記リチウム複合遷移金属酸化物は、下記化学式1で表され、
[化学式1]
Li
aNi
1-b-c-dCo
bMn
cQ
dO
2+δ
前記化学式1中、Qは、Al、Mg、V、TiおよびZrからなる群から選択されるいずれか一つ以上の元素であり、1.0≦a≦1.2、0<b≦0.4、0<c≦0.3、0≦d≦0.1、0<b+c+d≦0.4、-0.1≦δ≦1.0である、請求項1
から6のいずれか一項に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の
二次電池用正極活物質を含む二次電池用正極。
【請求項9】
請求項8に記載の
二次電池用正極を含むリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年1月29日付けの韓国特許出願第10-2020-0010693号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、二次電池用正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、携帯電話、ノート型パソコン、電気自動車など、電池を使用する電子機器の急速な普及に伴い、小型軽量であるとともに相対的に高容量である二次電池の需要が急速に増加している。特に、リチウム二次電池は、軽量であり、高エネルギー密度を有しており、携帯機器の駆動電源として脚光を浴びている。これに伴い、リチウム二次電池の性能の向上のための研究開発の努力が活発になされている。
【0004】
リチウム二次電池は、リチウムイオンの挿入(intercalation)および脱離(deintercalation)が可能な活物質からなる正極と負極との間に有機電解液またはポリマー電解液を充填させた状態で、リチウムイオンが正極および負極で挿入/脱離される時の酸化と還元反応によって電気エネルギーが生成される。
【0005】
リチウム二次電池の正極活物質としては、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2)、リチウムマンガン酸化物(LiMnO2またはLiMn2O4など)、リチウムリン酸鉄化合物(LiFePO4)などが使用されていた。中でも、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)は、作動電圧が高く、容量特性に優れる利点があって広く使用されており、高電圧用正極活物質として適用されている。しかし、コバルト(Co)の値上がりおよび供給不安定のため、電気自動車などの分野の動力源として大量使用するには限界があり、これの代わりに使用可能な正極活物質の開発の必要性が高まっている。
【0006】
そのため、コバルト(Co)の一部をニッケル(Ni)とマンガン(Mn)で置換したニッケルコバルトマンガン系リチウム複合遷移金属酸化物(以下、簡単に「NCM系リチウム複合遷移金属酸化物」とする)が開発されている。最近、NCM系リチウム複合遷移金属酸化物でNiの含量を増加させて容量を増加させようとする研究がなされている。しかし、ニッケルの含量が高い高濃度ニッケル(High‐Ni)正極活物質の場合、ニッケルの含量が高くなるにつれて、熱安定性の低下と電気化学反応時に副反応の増加による抵抗の増加およびガス発生の増加が生じる欠点がある。
【0007】
これを補完するために、正極活物質を製造時に焼成温度を高めて過焼成化して二次粒子の界面を最小化することで、熱安定性の低下、副反応性および抵抗の増加の特性を改善する方法が試みられている。しかし、焼成温度を高めて行う過焼成化の制御が困難であるため、過焼成化程度を誤って調節する場合、充放電効率の低下および抵抗の増加などの性能劣化の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国公開特許第2019-0068484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、高濃度ニッケル(High‐Ni)NCM系リチウム複合遷移金属酸化物の正極活物質であって、過焼成して単粒子で形成することで、熱安定性を向上させ、副反応性および抵抗の増加を抑制し、且つ単粒子の形成時に粒子表面の特性を改善して、充放電効率、出力特性および高温寿命特性を向上させた正極活物質を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含み、リチウム以外の金属のうちニッケルを60モル%以上含有するリチウム複合遷移金属酸化物であり、平均粒径(D50)が1~10μmである単粒子であり、前記リチウム複合遷移金属酸化物の粒子の表面から粒子の中心方向に100nmの領域は、Fd3m空間群およびFm3m空間群の結晶構造を含み、前記リチウム複合遷移金属酸化物の粒子に対して、TEM(Transmission Electron Microscopy,透過型電子顕微鏡法)を用いて粒子表面部の断面イメージを得た時に、前記Fd3m空間群の結晶構造およびFm3m空間群の結晶構造が占める各部分の最大直線長さの比率である相の比率(phase ratio)Fd3m/Fm3mが0.2~0.7である二次電池用正極活物質を提供する。
【0011】
また、本発明は、前記正極活物質を含む正極およびリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、高濃度ニッケル(High‐Ni)NCM系リチウム複合遷移金属酸化物の正極活物質において、単粒子で形成することで、熱安定性を向上させ、副反応性および抵抗の増加を抑制し、且つ単粒子の形成時に粒子表面の結晶構造を制御して表面特性を改善し、充放電効率、出力特性および高温寿命特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例2で製造した正極活物質の断面TEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に関する理解を容易にするために、本発明をより詳細に説明する。この際、本明細書および請求の範囲にて使用されている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義し得るという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0015】
本明細書において、平均粒径(D50)は、粒径分布曲線で体積累積量の50%に該当する粒径として定義することができる。前記平均粒径(D50)は、例えば、レーザ回折法(laser diffraction method)を用いて測定することができる。例えば、前記正極活物質の平均粒径(D50)の測定方法は、正極活物質の粒子を分散媒の中に分散させた後、市販のレーザ回折粒度測定装置(例えば、Microtrac MT 3000)に導入し、約28kHzの超音波を出力40Wで照射した後、測定装置における体積累積量の50%に該当する平均粒径(D50)を算出することができる。
【0016】
本明細書において、「単粒子形状の正極活物質」は、従来の方法で製造された数十~数百個の一次粒子が凝集して形成される球状の二次粒子形状の正極活物質と対比する概念であり、10個以下の一次粒子からなる正極活物質を意味する。具体的には、本発明において、単粒子形状の正極活物質は、1個の一次粒子からなる単一粒子であってもよく、数個の一次粒子が凝集した二次粒子形状であってもよい。
【0017】
本明細書において、「一次粒子」は、走査電子顕微鏡を介して正極活物質を観測した時に認識される粒子の最小単位を意味し、「二次粒子」は、複数個の一次粒子が凝集して形成された二次構造体を意味する。
【0018】
本明細書において、過焼成は、正極活物質の製造時に、既存の適正な焼成温度よりも50℃~200℃程度より高い温度で焼成することを意味する。例えば、正極活物質として、Ni:Co:Mnのモル比が85:5:10であるリチウム複合遷移金属酸化物を製造する時に、従来、適正な焼成温度が690℃~790℃と知られているが、過焼成は、800℃~900℃で焼成することを意味する。
【0019】
<正極活物質>
本発明の二次電池用正極活物質は、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含み、リチウム以外の金属のうちニッケルを60モル%以上含有するリチウム複合遷移金属酸化物であり、平均粒径(D50)が1~10μmである単粒子であり、前記リチウム複合遷移金属酸化物の粒子の表面から粒子の中心方向に100nmの領域は、Fd3m空間群およびFm3m空間群の結晶構造を含み、前記リチウム複合遷移金属酸化物の粒子に対して、TEM(Transmission Electron Microscopy,透過型電子顕微鏡法)を用いて、粒子表面部の断面イメージを得た時に、前記Fd3m空間群の結晶構造およびFm3m空間群の結晶構造が占める各部分の最大直線長さの比率である相の比率(phase ratio)Fd3m/Fm3mが0.2~0.7である。
【0020】
本発明の正極活物質は、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)およびマンガン(Mn)を含むNCM系リチウム複合遷移金属酸化物である。前記リチウム複合遷移金属酸化物は、リチウム(Li)以外の金属の全含量のうちニッケル(Ni)の含量が60モル%以上である高濃度ニッケル(High‐Ni)NCM系リチウム複合遷移金属酸化物である。より好ましくは、ニッケル(Ni)の含量が70モル%以上であることができ、さらに好ましくは、80モル%以上であることができる。前記リチウム複合遷移金属酸化物のリチウム(Li)以外の金属の全含量のうちニッケル(Ni)の含量が60モル%以上を満たすことで、より高容量の確保が可能である。
【0021】
前記リチウム複合遷移金属酸化物は、下記化学式1で表されることができる。
【0022】
[化学式1]
LiaNi1-b-c-dCobMncQdO2+δ
【0023】
前記式中、Qは、Al、Mg、V、TiおよびZrからなる群から選択されるいずれか一つ以上の元素であり、1.0≦a≦1.2、0<b≦0.4、0<c≦0.3、0≦d≦0.1、0<b+c+d≦0.4、-0.1≦δ≦1.0である。
【0024】
前記化学式1のリチウム複合遷移金属酸化物において、Liは、aに該当する含量、すなわち、1.0≦a≦1.2で含まれることができる。aが1.0未満であると、容量が低下する恐れがあり、1.2を超えると、焼成工程で粒子が焼結してしまい、正極活物質の製造が困難であり得る。Li含量の制御による正極活物質の容量特性の改善効果の顕著性および活物質の製造時の焼結性のバランスを考慮すると、前記Liは、より好ましくは、1.1≦a≦1.2の含量で含まれることができる。
【0025】
前記化学式1のリチウム複合遷移金属酸化物において、Niは、1-(b+c+d)に該当する含量、例えば、0.6≦1-(b+c+d)<1で含まれることができる。前記化学式1のリチウム複合遷移金属酸化物内のNiの含量が0.6以上の組成になると、充放電に役立つのに十分なNi量が確保されて高容量化を図ることができる。より好ましくは、Niは、0.80≦1-(b+c+d)≦0.99で含まれることができる。
【0026】
前記化学式1のリチウム複合遷移金属酸化物において、Coは、bに該当する含量、すなわち、0<b≦0.4で含まれることができる。前記化学式1のリチウム複合遷移金属酸化物内のCoの含量が0.4を超える場合、費用増加の恐れがある。Coを含むことによる容量特性の改善効果の顕著性を考慮すると、前記Coは、より具体的には、0.05≦b≦0.2の含量で含まれることができる。
【0027】
前記化学式1のリチウム複合遷移金属酸化物において、Mnは、cに該当する含量、すなわち、0<c≦0.3の含量で含まれることができる。前記化学式1のリチウム複合遷移金属酸化物内のcが0.3を超えると、かえって電池の出力特性および容量特性が低下する恐れがあり、前記Mnは、より具体的には、0.05≦c≦0.2の含量で含まれることができる。
【0028】
前記化学式1のリチウム複合遷移金属酸化物において、Qはリチウム複合遷移金属酸化物の結晶構造内に含まれたドーピング元素であることができ、Qはdに該当する含量、すなわち、0≦d≦0.1で含まれることができる。
【0029】
本発明の前記リチウム複合遷移金属酸化物の正極活物質は、平均粒径(D50)が1~10μmである単粒子形状である。より好ましくは、平均粒径(D50)が2~7μmであることができ、さらに好ましくは、平均粒径(D50)が3~6μmであることができる。
【0030】
前記リチウム複合遷移金属酸化物の正極活物質が一次粒子からなる単粒子形状を満たすことで、熱安定性を向上させ、副反応性の発生を改善することができる。
【0031】
前記単粒子を形成する方法は、特に制限されないが、一般的に、焼成温度を高めて過焼成して形成することができ、過焼成に役に立つ添加剤を使用するか、開始物質を変更する方法などで製造することができる。前記のように単粒子で形成することで、熱安定性を向上させ、副反応性および抵抗の増加を抑制することができる。前記単粒子形状の正極活物質は、例えば、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含む複合遷移金属水酸化物(例えば、Ni0.85Co0.05Mn0.10(OH)2)にリチウムソース(例えば、LiOH、Li2CO3など)を添加して混合した後、800℃~900℃、酸素雰囲気下で、10時間~25時間過焼成して形成することができる。
【0032】
本発明の前記正極活物質は、前記リチウム複合遷移金属酸化物の粒子の表面から粒子の中心方向に100nmの領域が、Fd3m空間群およびFm3m空間群の結晶構造を含み、前記リチウム複合遷移金属酸化物の粒子に対して、TEM(Transmission Electron Microscopy,透過型電子顕微鏡法)を用いて、粒子表面部の断面イメージを得た時に、前記Fd3m空間群の結晶構造およびFm3m空間群の結晶構造が占める各部分の最大直線長さの比率である相の比率(phase ratio)Fd3m/Fm3mが0.2~0.7である。
【0033】
本発明において、正極活物質の表面の結晶構造および相の比率(phase ratio)は、TEM(Transmission Electron Microscopy,透過型電子顕微鏡法)を用いて、粒子表面部の断面イメージを得た後、相の分析を行い、Fd3m空間群の結晶構造およびFm3m空間群の結晶構造が占める各部分において最大直線長さの比率をFd3m/Fm3mとして計算することで得ることができる。
【0034】
本発明の前記正極活物質は、単粒子の表面から粒子の中心方向に100nmの領域でFd3m空間群およびFm3m空間群の結晶構造を混在して含み、前記相の比率(phase ratio)Fd3m/Fm3mが0.2~0.7を満たすことで、単粒子の表面特性を改善し、充放電効率、出力特性および高温寿命特性を向上させることができる。
【0035】
具体的には、前記単粒子の表面から粒子の中心方向に100nmの領域で前記相の比率(phase ratio)Fd3m/Fm3mが0.2未満である場合、レート特性および出力特性(常温および低温出力)が低下する問題があり、0.7を超える場合、表面反応性および寿命特性(容量維持率および抵抗増加率)が低下する問題がある。
【0036】
より好ましくは、前記単粒子の表面から粒子の中心方向に100nmの領域で前記相の比率(phase ratio)Fd3m/Fm3mが0.3~0.6であることができ、さらに好ましくは、0.35~0.5であることができる。
【0037】
また、より好ましくは、前記リチウム複合遷移金属酸化物の粒子の表面から粒子の中心方向に500nmの領域が、Fd3m空間群およびFm3m空間群の結晶構造を含み、前記相の比率(phase ratio)Fd3m/Fm3mが0.2~0.7であることができ、さらに好ましくは、0.35~0.5であることができる。
【0038】
本発明の一実施形態による前記正極活物質は、正極活物質とリチウム原料物質を投入し焼成する時に焼成添加剤を添加するか、焼成温度を調節するか、リチウム以外の金属(M)に対するリチウムのモル比(Li/M)を調節するか、原料物質のサイズおよび形状を調節するなどの製造工程の条件を調節して形成することができ、前記の製造工程の条件が特に制限されるものではない。
【0039】
前記リチウム複合遷移金属酸化物の正極活物質は、リチウム以外の金属(M)に対するリチウムのモル比(Li/M)が1.1~1.2であることができ、より好ましくは、1.11~1.18であることができ、さらに好ましくは、1.12~1.16であることができる。リチウム以外の金属(M)に対するリチウムのモル比(Li/M)が1.1~1.2を満たすことで、結晶性の向上に役立ち、焼成時にフラックス(flux)効果が発生することができる。
【0040】
本発明の前記リチウム複合遷移金属酸化物の正極活物質は、構造内のリチウム層でのニッケルカチオンのカチオンミキシング(cation mixing)の比率が1.5%以下であることができ、より好ましくは、1.0%以下であることができ、さらに好ましくは、0.8%以下であることができる。リチウム層でのニッケルカチオンのカチオンミキシング(cation mixing)の比率が1.5%以下を満たすことで、正極活物質バルク(bulk)部の非可逆サイトを減少させてリチウムイオンの拡散を促進し、抵抗の増加を改善し、充/放電効率の改善などの効果を奏することができる。
【0041】
<正極およびリチウム二次電池>
本発明の他の一実施形態によると、前記のように製造された正極活物質を含む二次電池用正極およびリチウム二次電池を提供する。
【0042】
具体的には、前記正極は、正極集電体と、前記正極集電体上に形成され、前記正極活物質を含む正極活物質層とを含む。
【0043】
前記正極において、正極集電体は、電池に化学的変化を引き起こさず、導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素またはアルミニウムやステンレス鋼の表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理を施したものなどが使用されることができる。また、前記正極集電体は、通常、3~500μmの厚さを有することができ、前記正極集電体の表面上に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもできる。例えば、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体など、様々な形態で使用されることができる。
【0044】
また、前記正極活物質層は、上述の正極活物質とともに、導電材およびバインダーを含むことができる。
【0045】
この際、前記導電材は、電極に導電性を与えるために使用されるものであり、構成される電池において、化学変化を引き起こさず、電子伝導性を有するものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的な例としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体などの伝導性高分子などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。前記導電材は、通常、正極活物質層の全重量に対して1~30重量%含まれることができる。
【0046】
また、前記バインダーは、正極活物質の粒子間の付着および正極活物質と正極集電体との接着力を向上させる役割をする。具体的な例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ビニリデンフルオライド‐ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF‐co‐HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン‐プロピレン‐ジエンモノマーゴム(EPDM rubber)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの様々な共重合体などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。前記バインダーは、正極活物質層の全重量に対して1~30重量%含まれることができる。
【0047】
前記正極は、前記の正極活物質を用いる以外は、通常の正極の製造方法によって製造されることができる。具体的には、前記の正極活物質、および選択的に、バインダーおよび導電材を含む正極活物質層形成用組成物を正極集全体上に塗布した後、乾燥および圧延することで製造されることができる。この際、前記正極活物質、バインダー、導電材の種類および含量は、上述のとおりである。
【0048】
前記溶媒としては、当該技術分野において一般的に使用される溶媒であることができ、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、N‐メチルピロリドン(NMP)、アセトン(acetone)または水などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。前記溶媒の使用量は、スラリーの塗布厚さ、製造収率を考慮して、前記正極活物質、導電材およびバインダーを溶解または分散させ、以降、正極の製造のための塗布時に、優れた厚さ均一度を示すことができる粘度を有するようにする程度であれば十分である。
【0049】
また、他の方法として、前記正極は、前記正極活物質層形成用組成物を別の支持体上にキャストした後、この支持体から剥離して得られたフィルムを正極集電体上にラミネートすることで製造されることもできる。
【0050】
本発明のさらに他の一実施形態によると、前記正極を含む電気化学素子が提供される。前記電気化学素子は、具体的には、電池またはキャパシタなどであることができ、より具体的には、リチウム二次電池であることができる。
【0051】
前記リチウム二次電池は、具体的には、正極と、前記正極と対向して位置する負極と、前記正極と負極との間に介在されるセパレータおよび電解質とを含み、前記正極は、上述のとおりである。また、前記リチウム二次電池は、前記正極、負極、セパレータの電極組立体を収納する電池容器、および前記電池容器を密封する密封部材を選択的にさらに含むことができる。
【0052】
前記リチウム二次電池において、前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体上に位置する負極活物質層とを含む。
【0053】
前記負極集電体は、電池に化学的変化を引き起こさず、高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレス鋼の表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理を施したもの、アルミニウム‐カドミウム合金などが使用されることができる。また、前記負極集電体は、通常、3~500μmの厚さを有することができ、正極集電体と同様、前記集電体の表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化することもできる。例えば、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体など、様々な形態で使用されることができる。
【0054】
前記負極活物質層は、負極活物質とともに選択的にバインダーおよび導電材を含む。前記負極活物質層は、一例として、負極集電体上に負極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材を含む負極形成用組成物を塗布して乾燥するか、または前記負極形成用組成物を別の支持体上にキャストした後、この支持体から剥離して得られたフィルムを負極集電体上にラミネートすることで製造されることもできる。
【0055】
前記負極活物質としては、リチウムの可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な化合物が使用されることができる。具体的な例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素などの炭素質材料;Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金またはAl合金など、リチウムと合金化が可能な金属質化合物;SiOβ(0<β<2)、SnO2、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物のようにリチウムをドープおよび脱ドープすることができる金属酸化物;またはSi‐C複合体またはSn‐C複合体のように前記金属質化合物と炭素質材料を含む複合物などが挙げられ、これらのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用されることができる。また、前記負極活物質として、金属リチウム薄膜が使用されることもできる。また、炭素材料は、低結晶性炭素および高結晶性炭素などがいずれも使用可能である。低結晶性炭素としては、軟化炭素(soft carbon)および硬化炭素(hard carbon)が代表的であり、高結晶性炭素としては、無定形、板状、鱗片状、球状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、液晶ピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、炭素微小球体(meso‐carbon microbeads)、液晶ピッチ(Mesophase pitches)および石油と石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)などの高温焼成炭素が代表的である。
【0056】
また、前記バインダーおよび導電材は、上記の正極で説明したとおりであることができる。
【0057】
一方、前記リチウム二次電池において、セパレータは、負極と正極を分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものであり、通常、リチウム二次電池においてセパレータとして使用されるものであれば、特に制限なく使用可能であり、特に、電解質のイオン移動に対して低抵抗であり、且つ電解液含湿能に優れるものが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体およびエチレン/メタクリレート共重合体などのポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムまたはこれらの2層以上の積層構造体が使用されることができる。また、通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布が使用されることもできる。また、耐熱性または機械的強度の確保のために、セラミック成分または高分子物質が含まれたコーティングされたセパレータが使用されることもでき、選択的に、単層または多層構造で使用されることができる。
【0058】
また、本発明で使用される電解質としては、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル型高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などが挙げられ、これらに限定されるものではない。
【0059】
具体的には、前記電解質は、有機溶媒およびリチウム塩を含むことができる。
【0060】
前記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関わるイオンが移動することができる媒質の役割が可能なものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的には、前記有機溶媒としては、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、γ‐ブチロラクトン(γ‐butyrolactone)、ε‐カプロラクトン(ε‐caprolactone)などのエステル系溶媒;ジブチルエーテル(dibutyl ether)またはテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)などのエーテル系溶媒;シクロヘキサノン(cyclohexanone)などのケトン系溶媒;ベンゼン(benzene)、フルオロベンゼン(fluorobenzene)などの芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(dimethylcarbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethylcarbonate、DEC)、メチルエチルカーボネート(methylethylcarbonate、MEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethylcarbonate、EMC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)などのカーボネート系溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;R‐CN(Rは、C2~C20の直鎖状、分岐状または環構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含むことができる)などのニトリル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;1,3‐ジオキソランなどのジオキソラン類;またはスルホラン(sulfolane)類などが使用されることができる。中でも、カーボネート系溶媒が好ましく、電池の充放電性能を高めることができる高いイオン伝導度および高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートなど)と、底粘度の直鎖状カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートまたはジエチルカーボネートなど)の混合物がより好ましい。この場合、環状カーボネートと直鎖状カーボネートは、約1:1~約1:9の体積比で混合して使用することが、優れた電解液の性能を示すことができる。
【0061】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池で使用されるリチウムイオンを提供することができる化合物であれば、特に制限なく使用可能である。具体的には、前記リチウム塩は、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiSbF6、LiAl04、LiAlCl4、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiN(C2F5SO3)2、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiCl、LiI、またはLiB(C2O4)2などが使用されることができる。前記リチウム塩の濃度は、0.1~2.0Mの範囲内で使用することが好ましい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれると、電解質が適切な伝導度および粘度を有することから優れた電解質の性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0062】
前記電解質には、前記電解質の構成成分の他にも、電池の寿命特性の向上、電池の容量減少の抑制、電池の放電容量の向上などを目的として、例えば、ジフルオロエチレンカーボネートなどのハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n‐グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N‐置換オキサゾリジノン、N,N‐置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2‐メトキシエタノールまたは三塩化アルミニウムなどの添加剤が1種以上さらに含まれることもできる。この際、前記添加剤は、電解質の全重量に対して0.1~5重量%含まれることができる。
【0063】
前記のように、本発明による正極活物質を含むリチウム二次電池は、優れた放電容量、出力特性および寿命特性を安定的に示すことから、携帯電話、ノート型パソコン、デジタルカメラなどのポータブル機器、およびハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)などの電気自動車分野などにおいて有用である。
【0064】
これにより、本発明の他の一具現例によると、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュールおよびこれを含む電池パックが提供される。
【0065】
前記電池モジュールまたは電池パックは、パワーツール(Power Tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車、およびプラグインハイブリッド電気自動車(Plug‐in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)を含む電気車;または電力貯蔵用システムのいずれか一つ以上の中大型デバイス電源として用いられることができる。
【0066】
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施するように本発明の実施例について詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な相違する形態に実現されることができ、ここで説明する実施例に限定されない。
【0067】
実施例1
正極活物質前駆体Ni0.85Co0.05Mn0.10(OH)2にLi/Metal(Ni、Co、Mn)モル比が1.15になるようにリチウムソースLiOHを入れて混合し、B2O3 1wt%、K2CO3 1wt%を入れて混合した。一次熱処理のために混合した粉末をアルミナるつぼに投入した。次に、850℃、酸素雰囲気下で20時間焼成してリチウム複合遷移金属酸化物を製造した。以降、粉砕および水洗、乾燥工程を経た粉末にH3BO3 0.1wt%を混合し、300℃Air雰囲気下で二次熱処理して、単粒子形状を有する正極活物質を得た。
【0068】
実施例2
Li/Metal(Ni、Co、Mn)モル比が1.11になるようにし、一次熱処理温度を830℃にした以外は、実施例1と同様に実施して正極活物質を製造した。
【0069】
実施例3
Li/Metal(Ni、Co、Mn)モル比が1.18になるようにし、一次熱処理温度を870℃にした以外は、実施例1と同様に実施して正極活物質を製造した。
【0070】
実施例4
Li/Metal(Ni、Co、Mn)モル比が1.18になるようにし、一次熱処理温度を890℃にした以外は、実施例1と同様に実施して正極活物質を製造した。
【0071】
比較例1
Li/Metal(Ni、Co、Mn)モル比が1.05になるようにし、一次熱処理温度を950℃にした以外は、実施例1と同様に実施して正極活物質を製造した。
【0072】
比較例2
Li/Metal(Ni、Co、Mn)モル比が1.02になるようにし、一次熱処理温度を780℃にした以外は、実施例1と同様に実施して正極活物質を製造した。
【0073】
比較例3
Li/Metal(Ni、Co、Mn)モル比が1.02になるようにし、一次熱処理温度を780℃にし、B2O3 1wt%、K2CO3 1wt%を混合しない以外は、実施例1と同様に実施して正極活物質を製造した。
【0074】
[実験例1:正極活物質の表面構造の確認]
実施例1~4および比較例1~3で製造された正極活物質をTEMを用いて表面の相分析を実施し、各相が占める部分の最大直線長さを測定した後、その比率を計算して、表面から粒子の中心方向にそれぞれ100nmの領域でのFd3m空間群およびFm3m空間群の相の比率(phase ratio)Fd3m/Fm3mを測定した。その結果を下記表1に示し、実施例2に対するTEM写真を
図1に示した。
【0075】
【0076】
表1を参照すると、実施例1~4は、相の比率(phase ratio)Fd3m/Fm3mが0.2~0.7を満たし、比較例1~3は、前記範囲から逸脱した。
図1を参照すると、粒子表面のFd3mおよびFm3m空間群の結晶構造を確認することができ、この各部分の最大直線長さの比率を測定した時に、相の比率(phase ratio)Fd3m/Fm3mが0.45であることを確認した。
【0077】
[実験例2:充放電効率]
前記実施例1~4、比較例1で製造されたそれぞれの正極活物質、カーボンブラック導電材およびPVDFバインダーをN‐メチルピロリドン溶媒の中で重量比96:2:2の比率で混合して正極合材(粘度:5000mPa・s)を製造し、これをアルミニウム集電体の一面に塗布してから130℃で乾燥した後、圧延して正極を製造した。
【0078】
負極は、リチウムメタルを使用した。
【0079】
前記のように製造された正極と負極との間に多孔性ポリエチレンのセパレータを介在して電極組立体を製造し、前記電極組立体をケースの内部に位置させた後、ケースの内部に電解液を注入してリチウム二次電池を製造した。この際、電解液は、エチレンカボネート/エチルメチルカボネート/ジエチルカボネート/(EC/EMC/DECの混合体積比=3/4/3)からなる有機溶媒に濃度1.0Mのリチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF6)を溶解させて製造した。
【0080】
前記のように製造された各リチウム二次電池ハーフセル(half-cell)に対して、25℃で、CCCVモードで0.2C、4.25Vになるまで充電(終止電流1/20C)し、0.2Cの定電流で3.0Vになるまで放電して充放電実験を行い、その充放電容量と効率を下記表2に示した。
【0081】
【0082】
前記表2を参照すると、実施例1~4の正極活物質を適用したリチウム二次電池の場合、比較例1の正極活物質を適用したリチウム二次電池に比べて容量および効率が増加したことを確認することができる。
【0083】
[実験例3:抵抗特性]
前記実施例1~4、比較例1~2で製造されたそれぞれの正極活物質を適用して実験例2のように製造された各リチウム二次電池ハーフセル(half‐cell)に対して、25℃、SOC10%に1.0Cの放電をさせた時の直流抵抗を測定した。抵抗の計算は、当該SOCで1.0Cで10秒間放電させた時の電圧降下と印加された電流値を基準として行った。下記表3にその結果として計算された抵抗値を示した。
【0084】
【0085】
前記表3を参照すると、実施例1~4の正極活物質を適用したリチウム二次電池の場合、比較例1~2の正極活物質を適用したリチウム二次電池に比べて抵抗特性が著しく改善したことを確認することができる。
【0086】
[実験例4:高温寿命特性]
前記実施例1~4および比較例1~3で製造されたそれぞれの正極活物質を使用して、リチウム二次電池フルセル(full cell)を製造した。実験例2でのように製造し、この際、負極は、負極活物質として黒鉛(graphite)、カーボンブラック導電材およびPVDFバインダーをN‐メチルピロリドン溶媒の中で重量比96:2:2の比率で混合して負極合材を製造し、これを銅集電体の一面に塗布してから130℃で乾燥した後、圧延して製造した。
【0087】
前記のように製造された各リチウム二次電池フルセル(full cell)に対して、45℃で0.7C/0.5C100回サイクルで評価されたセルの容量維持率および放電抵抗を計算した。抵抗の計算は、4.25V満充電セルを0.5Cで60秒間放電させた時の電圧降下と印加された電流値を基準として行った。下記表4に100サイクルでの容量維持率および抵抗増加率を示した。
【0088】
容量維持率=(100サイクルでの放電容量/1サイクルでの放電容量)×100
抵抗増加率=(100サイクルでの放電抵抗/1サイクルでの放電抵抗)×100
【0089】
【0090】
前記表4を参照すると、実施例1~4の正極活物質を使用した場合が、比較例1~3の正極活物質を使用した場合に比べて100サイクル後の容量維持率および抵抗増加率の特性がいずれも著しく改善した。
【0091】
[実験例5:連続充電特性]
前記実施例1~4および比較例1~3で製造されたそれぞれの正極活物質を使用して、実験例2のようにリチウム二次電池ハーフセル(half cell)を製造した。前記のように製造された各リチウム二次電池ハーフセル(half cell)に対して、4.7Vまで充電させた後、CVモードで120時間維持した。この時に発生した電流(current)値を積分し時間で除して平均電流値を計算し、その結果を下記表5に示した。
【0092】
【0093】
前記表5を参照すると、実施例1~4の正極活物質を使用した場合が、比較例1~3の正極活物質を使用した場合に比べて120時間発生した平均電流(current)値が著しく少ないことを確認することができる。