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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】電子部品製造用の凹版治具
(51)【国際特許分類】
   H01G 13/00 20130101AFI20240604BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
H01G13/00 351A
H01G13/00 391B
H01G4/30 311E
H01G4/30 517
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023514567
(86)(22)【出願日】2022-03-28
(86)【国際出願番号】 JP2022015062
(87)【国際公開番号】W WO2022220087
(87)【国際公開日】2022-10-20
【審査請求日】2023-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2021069593
(32)【優先日】2021-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】318004501
【氏名又は名称】株式会社クリエイティブコーティングス
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英児
(72)【発明者】
【氏名】坂本 仁志
【審査官】石坂 博明
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-151367(JP,A)
【文献】特開平09-162084(JP,A)
【文献】特開2000-340451(JP,A)
【文献】特開2002-367852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 13/00
H01G 4/30
H01F 41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直交三軸をXYZ軸としたとき、XY面と平行な2つの主面と、XZ面と平行な2つの側面と、YZ面と平行な2つの端面とそれぞれ有する複数の電子部品本体に導体ペーストを塗布して、前記2つの側面の一方の面上にて前記Z軸の方向に亘る第1領域と、前記第1領域の両端部が前記2つの主面の各面上まで延長される2つの第2領域とに、所定の電極幅の外部電極を前記複数の電子部品本体に形成して複数の電子部品を製造する凹版治具において、
弾性体と、
前記弾性体に形成され、前記導体ペーストが収容される凹部と、
を有し、
前記凹部は、
前記複数の電子部品本体の各々の前記X軸方向の長さよりも小さい開口幅であって、前記外部電極の前記電極幅に適合する前記開口幅と、前記複数の電子部品本体の前記Z軸方向の合計長さよりも長い開口長さと、を有し、収容される前記導体ペーストが供給される開口と、
前記開口から所定深さの閉鎖された底面と、
前記底面から局所的に突出する突出高さが前記所定深さよりも低い少なくとも一つの突出部と、
を有し、
前記開口は、前記開口幅が前記開口長さよりも短い、平面視で矩形であり、
前記凹部は、前記開口幅の方向で対向する両側面を含み、
前記少なくとも一つの突出部は、前記両側面の少なくとも一方に設けられた少なくとも一つの段部が前記凹部の長手方向に亘って連続して形成される、凹版治具。
【請求項2】
請求項1において、
前記少なくとも一つの段部は、前記両側面に設けられた2つの段部を含む、凹版治具。
【請求項3】
請求項2において、
前記2つの段部は、前記開口幅を二等分する中心線に対して線対称に配置される、凹版治具。
【請求項4】
直交三軸をXYZ軸としたとき、XY面と平行な2つの主面と、XZ面と平行な2つの側面と、YZ面と平行な2つの端面とを有する電子部品本体に導体ペーストを塗布して、前記2つの側面の一方の面上にて前記Z軸の方向に亘る第1領域と、前記第1領域の両端部が前記2つの主面の各面上まで延長される2つの第2領域とに、所定の電極幅の外部電極を前記電子部品本体に形成して電子部品を製造する凹版治具において、
弾性体と、
前記弾性体に形成され、前記導体ペーストが収容される凹部と、
を有し、
前記凹部は、
前記電子部品本体の前記X軸方向の長さよりも小さい開口幅であって、前記外部電極の前記電極幅に適合する前記開口幅を有し、収容される前記導体ペーストが供給される開口と、
前記開口から所定深さの閉鎖された底面と、
前記底面から局所的に突出する突出高さが前記所定深さよりも低い少なくとも一つの突出部と、
を有し、
平面視で前記底面の面内に格子状の溝を含み、
前記少なくとも一つの突出部は、前記格子状の溝に囲まれた位置に配置される、凹版治具。
【請求項5】
請求項4において、
前記格子状の溝及び前記少なくとも一つの突出部は、前記開口幅を二等分する中心線に対して線対称に配置される、凹版治具。
【請求項6】
直交三軸をXYZ軸としたとき、XY面と平行な2つの主面と、XZ面と平行な2つの側面と、YZ面と平行な2つの端面とを有する電子部品本体に導体ペーストを塗布して、前記2つの側面の一方の面上にて前記Z軸の方向に亘る第1領域と、前記第1領域の両端部が前記2つの主面の各面上まで延長される2つの第2領域とに、所定の電極幅の外部電極を前記電子部品本体に形成して電子部品を製造する方法において、
弾性体と、前記弾性体に形成される凹部と、を有する凹版治具を用意する工程と、
前記凹版治具の前記凹部に導体ペーストを収容する工程と、
前記弾性体に押圧される前記電子部品本体により前記弾性体を弾性変形させて、前記凹部内の前記導体ペーストを前記電子部品本体に転写する工程と、
を有し、
前記凹部は、
前記電子部品本体の前記X軸方向の長さよりも小さい開口幅であって、前記外部電極の前記電極幅に適合する前記開口幅を有する開口と、
前記開口から所定深さの閉鎖された底面と、
前記底面から局所的に突出する突出高さが前記所定深さよりも低い少なくとも一つの突出部と、
を有し、
前記開口は、前記開口幅が開口長さよりも短い、平面視で矩形であり、
前記凹部は、前記開口幅の方向で対向する両側面を含み、
前記少なくとも一つの突出部は、前記両側面の少なくとも一方に設けられた少なくとも一つの段部であり、
前記収容工程は、前記凹部の前記開口より前記導体ペーストを前記凹部に収容し、
前記転写工程は、前記凹部内に収容された前記導体ペーストを、前記少なくとも一つの突出部の表面積により増大した摩擦力によって流動性を阻害して、前記電子部品本体に転写する方法。
【請求項7】
直交三軸をXYZ軸としたとき、XY面と平行な2つの主面と、XZ面と平行な2つの側面と、YZ面と平行な2つの端面とを有する電子部品本体に導体ペーストを塗布して、前記2つの側面の一方の面上にて前記Z軸の方向に亘る第1領域と、前記第1領域の両端部が前記2つの主面の各面上まで延長される2つの第2領域とに、所定の電極幅の外部電極を前記電子部品本体に形成して電子部品を製造する方法において、
弾性体と、前記弾性体に形成される凹部と、を有する凹版治具を用意する工程と、
前記凹版治具の前記凹部に導体ペーストを収容する工程と、
前記弾性体に押圧される前記電子部品本体により前記弾性体を弾性変形させて、前記凹部内の前記導体ペーストを前記電子部品本体に転写する工程と、
を有し、
前記凹部は、
前記電子部品本体の前記X軸方向の長さよりも小さい開口幅であって、前記外部電極の前記電極幅に適合する前記開口幅を有する開口と、
前記開口から所定深さの閉鎖された底面と、
前記底面から局所的に突出する突出高さが前記所定深さよりも低い少なくとも一つの突出部と、
を有し、
平面視で前記底面の面内に格子状の溝を含み、
前記少なくとも一つの突出部は、前記格子状の溝に囲まれた位置に配置され、
前記収容工程は、前記凹部の前記開口より前記導体ペーストを前記凹部に収容し、
前記転写工程は、前記凹部内に収容された前記導体ペーストを、前記少なくとも一つの突出部の表面積により増大した摩擦力によって流動性を阻害して、前記電子部品本体に転写する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば多端子積層コンデンサー等の電子部品製造用の凹版治具等に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば多端子積層コンデンサーに外部電極を形成する方法には、特許文献1によれば、公知の乾式メッキ法、例えばスパッタ法、蒸着法またはCVD法に加えて、公知の焼き付け法が使用できる。焼き付け法とは、導体ペーストを、ローラー塗布や印刷等によって塗布し、その後焼き付ける方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020―150099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スパッタ法、蒸着法およびCVD法は、真空設備が必要であり、製造装置が高価格となることに加え、電子部品の製造コストも増大する。その点、焼き付け法、特に凹版印刷法は製造装置の費用も電子部品の製造費用も低コストにできる。
【0005】
しかし、凹版印刷法は、スパッタ法、蒸着法、およびCVD法と比較して外部電極の寸法精度を高く確保することが困難である。特に、多端子積層コンデンサー等の電子部品は小型化が進むほど外部電極の寸法精度も高く求められる。
【0006】
本発明は、製造装置コストも電子部品製造費用も低減しながら、外部電極の寸法精度を高めることができる電子部品製造用の凹版治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一態様は、
電子部品本体に導体ペーストを塗布して、外部電極を有する電子部品を製造する凹版治具において、
弾性体と、
前記弾性体に形成され、前記導体ペーストが収容される凹部と、
を有し、
前記凹部は、
前記外部電極の幅に適合する開口幅を有する開口と、
前記開口から所定深さの底面と、
前記底面から局所的に突出する突出高さが前記所定深さよりも低い少なくとも一つの突出部と、
を有する、凹版治具に関する。
【0008】
本発明の一態様(1)によれば、凹部に導体ペーストが収容された弾性体に電子部品本体を押し当てると、弾性体が弾性変形して、凹部内の導体ペーストが電子部品本体に塗布される。電子部品本体に塗布された導体ペーストを焼き付けることで、外部電極を有する電子部品が製造される。ここで、凹部の底面より突出する少なくとも一つの突出部を設けると、その突出部の体積分だけ導体ペーストの収容量が減り、突出部の位置とも関係して、電子部品本体側に転写される導体ペースト量も減少させることができる。それにより、塗布される導体ペースト量が適量となり、外部電極の寸法精度を高めることができる。また、少なくとも一つの突出部を設けることで、凹部を規定する面の総面積が増大すると、導体ペーストが凹部からはみ出る時に受ける摩擦力が増大する。それにより、凹部内での導体ペーストの流動性が阻害され、電子部品本体側に転写される導体ペースト量が減るとも考えられる。
【0009】
(2)本発明の一態様(1)において、前記開口は、開口幅が開口長さよりも短い、平面視で矩形であり、前記凹部は、前記開口幅の方向で対向する両側面を含み、前記少なくとも一つの突出部は、前記両側面の少なくとも一方に設けられた少なくとも一つの段部とすることができる。こうすると、少なくとも一つの段部の体積分だけ、凹部の両側面の少なくとも一方付近に収容される導体ペースト量が減少する。それにより、凹部の開口幅の少なくとも一端を超えて凹部より外側に滲み出る導体ペースト量が減少するので、外部電極(導体ペースト)の幅の寸法精度を高めることができる。
【0010】
(3)本発明の一態様(2)において、前記少なくとも一つの段部は、前記両側面に設けられた2つの段部を含むことができる。こうすると、2つの段部の体積分だけ、凹部の両側面付近に収容される導体ペースト量が減少する。それにより、凹部の開口幅の両端を超えて凹部よりそれぞれ外側に滲み出る導体ペースト量が減少するので、外部電極(導体ペースト)の幅の寸法精度をより高めることができる。
【0011】
(4)本発明の一態様(3)において、前記2つの段部は、前記開口幅を二等分する中心線に対して線対称に配置されることが好ましい。こうすると、2つの段部の体積分だけ、凹部の両側面付近に収容される導体ペースト量が均等に減少する。それにより、凹部の開口幅の両端を超えて凹部よりそれぞれ外側に滲み出る導体ペースト量が均等に減少するので、外部電極(導体ペースト)の幅の寸法精度をさらに高めることができる。
【0012】
(5)本発明の一態様(1)において、平面視で前記底面の面内に少なくとも2本の溝を含むことができ、前記少なくとも一つの突出部は、前記少なくとも2本の溝の間に配置されても良い。少なくとも2本の溝の間に形成される少なくとも一つの突出部の体積分だけ導体ペーストの収容量が減るので、電子部品本体側に転写される導体ペースト量も減少させることができる。加えて、少なくとも2本の溝に収容される導体ペーストは、溝を規定する面から受ける摩擦によって、溝からはみ出し難くなる。それにより、凹部内での導体ペーストの流動性が阻害される。凹部内での導体ペーストの体積の減少及び流動性の阻害の双方の作用によって、電子部品本体に塗布される導体ペースト量が適量となり、外部電極の寸法精度を高めることができる。
【0013】
(6)本発明の一態様(5)において、前記少なくとも2本の溝は、平面視で前記底面の面内に格子状の溝を含むことができ、前記少なくとも一つの突出部は、前記格子状の溝に囲まれた位置に配置されてもよい。こうして、溝の本数と突出部の数を増やすことで、電子部品本体に塗布される導体ペースト量が適量となり、より外部電極の寸法精度を高めることができる。
【0014】
(7)本発明の一態様(6)において、前記格子状の溝及び前記少なくとも一つの突出部は、前記開口幅を二等分する中心線に対して線対称に配置されることが好ましい。こうすると、中心線の両側で電子部品本体に塗布される導体ペースト量が適量かつ均等となり、外部電極の寸法精度をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】電子部品の一例である多端子積層コンデンサーの概略斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態である凹版治具の平面図である。
図3図2のA-A断面図である。
図4図3に示す凹部に導体ペーストを充填した状態を示す断面図である。
図5図3に示す凹部を有する凹版治具に電子部品本体を押圧した塗布動作(導体ペーストは省略)を示す断面図である。
図6図5に示す塗布動作によって電子部品本体に塗布される導体ペーストの形状を示す模式図である。
図7図2のA-A断面の比較例を示す断面図である。
図8図7に示す比較例の凹部に導体ペーストを充填した状態を示す断面図である。
図9図7に示す比較例の凹部を有する凹版治具に電子部品本体を押圧した塗布動作(導体ペーストは省略)を示す断面図である。
図10図9に示す比較例の塗布動作によって電子部品本体に塗布される導体ペーストの形状を示す模式図である。
図11】電子部品の他の例である多端子積層コンデンサーの概略斜視図である。
図12】本発明の第2実施形態である凹版治具の平面図である。
図13図12に示す凹部の部分平面図である。
図14図12に示す凹部の断面図である。
図15】第2実施形態に係る凹版治具によって電子部品本体に塗布される導体ペーストの形状を示す模式図である。
図16】比較例の凹版治具によって電子部品本体に塗布される導体ペーストの形状を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の開示において、提示された主題の異なる特徴を実施するための異なる実施形態や実施例を提供する。もちろんこれらは単なる例であり、限定的であることを意図するものではない。さらに、本開示では、様々な例において参照番号および/または文字を反復している場合がある。このように反復するのは、簡潔明瞭にするためであり、それ自体が様々な実施形態および/または説明されている構成との間に関係があることを必要とするものではない。さらに、第1の要素が第2の要素に「接続されている」または「連結されている」と記述するとき、そのような記述は、第1の要素と第2の要素とが互いに直接的に接続または連結されている実施形態を含むとともに、第1の要素と第2の要素とが、その間に介在する1以上の他の要素を有して互いに間接的に接続または連結されている実施形態も含む。また、第1の要素が第2の要素に対して「移動する」と記述するとき、そのような記述は、第1の要素及び第2の要素の少なくとも一方が他方に対して移動する相対的な移動の実施形態を含む。
【0017】
1.第1実施形態
1.1.電子部品
図1に、電子部品の一例である多端子積層コンデンサーを示す。多端子積層コンデンサー10は、コンデンサー本体(電子部品本体)20と、外部電極30例えば8つの外部電極31~38と、を有する。コンデンサー本体20は、相対向する2つの主面21、22と、主面21、22を連結する2つの側面23、24と、主面21、22を連結する2つの端面25、26を有する。
【0018】
外部電極31~34は、一方の側面23にてX方向で間隔をあけて形成される。外部電極35~38は、他方の側面24にてX方向で間隔をあけて形成される。外部電極31~38の各々は、図1に示すX方向で幅W1を有する。幅W1は、例えば0.1~1.0mmである。また、外部電極31~38の各々は、図1に示すZ方向で側面23、24の高さと同じ長さを有すると共に、その長さ方向の両端は2つの主面21、22上まで延びている。
【0019】
1.2.電子部品製造用の凹版治具
図2は、コンデンサー本体20に外部電極30の材料である導体ペーストを塗布する凹版治具100を示す。凹版治具100は、弾性体例えばゴム板110と、ゴム板110に形成される少なくとも一つ例えば4つの凹部120と、を有する。凹版治具100に複数のコンデンサー本体20が押し当てられて、各々のコンデンサー本体20の4つの外部電極31~34(35~38)が形成される位置に導体ペーストが同時に塗布される。4つの凹部120及びそれらの開口121の各々は平面視で例えば矩形であり、その開口幅W2は開口長さよりも短い。
【0020】
図2に示す凹部120の詳細を、図2のA-A断面である図3を参照して説明する。凹部120は、開口121と、底面122と、開口幅W2の幅方向で対面する両側面123、124と、少なくとも一つの突出部130(131、132)と、を有する。なお、図2では少なくとも一つの突出部130(131、132)は省略されている。開口121は、図2に示すように平面視で矩形であり、外部電極30の幅W1に適合する開口幅W2(W2≧W1)を有する。本実施形態では、開口幅W2は外部電極30の幅W1よりもわずかに広い(W2≫W1)。底面122は、開口121から所定深さDを有する。両側面123、124は、底面122より開口121まで立ち上がる面である。少なくとも一つの突出部130(131、132)は、底面122から局所的に突出する突出高さH1が、底面の深さDよりも低い。
【0021】
少なくとも一つの突出部130は、深さDの底面122の幅W3を開口幅W2より狭くする、両側面123、124の少なくとも一方に設けられた少なくとも一つの段部131または132とすることができる。本実施形態では、少なくとも一つの突出部130は、両側面123、124に設けられた2つの段部131及び132としている。そして、2つの段部131及び132は、開口幅W2を二等分する中心線Lに対して線対称に配置されている。2つの段部131及び132は、図2に示す凹部120の長手方向に亘って連続して形成される。ただし、2つの段部131及び132は、図2に示す凹部120の長手方向で不連続に形成しても良い。
【0022】
図4図6は、図2及び図3に示す凹版治具100の動作を示す図である。凹版治具100の動作を、比較例を示す図7図10を参照して説明する。図7に示す比較例の凹部40は、開口幅W2及び深さDの点で本実施形態と共通するが、図3に示す突出部又は段部130(131、132)を有しない点で本実施形態と異なる。
【0023】
図4は、図3に示す凹部120に導体ペーストPを充填した状態を示す。導体ペーストPは図1に示すゴム板110上に均一厚さで塗布された後に、スキージによって掻き取られる。それにより、導体ペーストPは、ゴム板110の表面とほぼ面一となるように凹部120に充填される。比較例である図8と比較すると、図4に示す凹部120に充填される導体ペーストPの量は、図8に示す凹部40に充填される導体ペーストPの量よりも少ない。図4では、2つの段部131、132の体積分だけ凹部120の容積が減り、それにより凹部120に収容される導体ペーストPの量も減少するからである。
【0024】
図5は、図3に示す凹部120を有する凹版治具100に、コンデンサー本体20の一方の側面23を押圧した塗布動作を示している。ただし、図5では凹部に120に収容されている導体ペーストPは省略されている。図5に示すように、コンデンサー本体20により押圧されるゴム板110は寸法δだけ弾性変形(圧縮)する。それにより、コンデンサー本体20は寸法δだけ凹部120内に入り込んで、凹部120内の導体ペーストPがコンデンサー本体20に転写される。この塗布動作は、比較例である図9においても同様である。
【0025】
図6は、図5に示す塗布動作によって塗布された導体ペーストP1の形状を模式的に示す。同様に、図10は、図9に示す塗布動作によって塗布された導体ペーストP2の形状を模式的に示す。図5に示す塗布導体ペーストP1は、設計値の幅W1と等しい幅となり、かつ、その幅に亘ってほぼ均一の厚さとなる。一方、比較例である図10に示す塗布導体ペーストP2は、設計値の幅W1よりも広い幅W4(W4>W1)に形成される。
【0026】
図6に示す塗布導体ペーストP1が設計値の幅W1に亘ってほぼ均一厚となる理由の一つとして、図4に示すように凹部120に充填される導体ペーストPの総量が図8と比較して減少していることが挙げられる。特に、両側面123、124に設けた2つの段部131、132の存在によって、開口121より開口幅W2の両端を超えて凹部120より外側に滲み出る導体ペーストPの量が減少する。また、凹部120の開口幅W2の両端を超えて凹部120より外側に滲み出る導体ペーストPの量が均等に減少する。そのため、塗布導体ペーストP1の幅W1は、凹部120の開口幅W2よりわずかに広い設計値通りとなり、厚さも均一になる。
【0027】
一方、比較例である図10の塗布導体ペーストP2は、図9の凹部40の開口幅W2の両端を超えて凹部40より外側に滲み出る導体ペーストPの量が多くなる。よって、図10の塗布導体ペーストP2の幅W4は、設計寸法の幅W1よりも広くなる。
【0028】
なお、凹版治具100の凹部120は、図3に示すものに限らず、底面122から局所的に突出する突出高さが凹部120の深さDよりも低い少なくとも一つの突出部130を有すればよい。よって、突出部130の位置や数について種々変形実施が可能である。
【0029】
2.第2実施形態
2.1.電子部品
電子部品は、凹版治具100を用いて少なくとも一つの外部電極のための導体ペーストを塗布形成できるものであればよく、電子部品の種類や外部電極の形状や数は問わない。図11は、電子部品の他の例である多端子積層コンデンサーを示す。図11に示す多端子積層コンデンサー200は、コンデンサー本体210に形成される外部電極220~250を有する。外部電極220、230は、コンデンサー本体210の長手方向の両端部に設けられた二端子の貫通電極である。外部電極240、250は、コンデンサー本体210の短手方向の両端部に設けられた2つのグランド電極である。貫通電極220、230は、定盤上の導体ペーストに浸漬させることで塗布形成されるが、2つのグランド電極240、250は図12に示す凹版治具300を用いて形成することができる。ここで、図11に示す外部電極240、250の幅W5は、図1に示す外部電極31~38の各幅W1よりも広いことが好ましい。幅W5は、例えば1.0~3.0mmである。
【0030】
2.2.電子部品製造用の凹版治具
図12図14は、第2実施形態の凹版治具を示している。図12は、コンデンサー本体210に外部電極240、250の材料である導体ペーストを塗布する凹版治具300を示す。凹版治具300は、弾性体例えばゴム板310と、ゴム板310に形成される少なくとも一つの凹部320と、を有する。凹版治具300に複数のコンデンサー本体210が押し当てられて、各々のコンデンサー本体210の外部電極240(250)が形成される位置に導体ペーストが同時に塗布される。凹部320及びその開口321は平面視で例えば矩形であり、その開口幅W6は開口長さよりも短い。
【0031】
図12に示す凹部320の詳細を、拡大平面図である図13と、図12の横断面である図14を参照して説明する。図13及び図14において、凹部320は、開口321と、底面322と、開口幅W6の幅方向で対面する両側面323、324と、少なくとも一つ例えば複数の突出部330と、を有する。なお、図12では複数の突出部330は省略されている。開口321は、図12に示すように平面視で矩形であり、外部電極240(250)の幅W5に適合する開口幅W6(W6≧W5)有する。本実施形態では、開口幅W6は外部電極240(250)の幅W5よりもわずかに広い(W6≫W5)。底面322は、開口321から所定深さDを有する。両側面323、324は、底面322より開口321まで立ち上がる面である。複数の突出部330は、底面322から局所的に突出する突出高さH2が、底面の深さDよりも低い。
【0032】
図13に示すように、凹版治具300を上から見た平面視で、凹部320は、底面322の面内に少なくとも2本の溝340を含むことができる。こうすると、底面322からの高さH2(H2<D)で突出する少なくとも一つ例えば複数の突出部330は、少なくとも2本の溝340、340の間に配置される。図13では、格子状の溝340とされ、多数の突出部330が、格子状の溝340に囲まれた位置に配置されている。格子状の溝340は、図12に示す凹部320の長手方向に亘って連続して形成される。ただし、格子状の溝340は、図12に示す凹部320の長手方向で不連続に形成しても良い。
【0033】
図15は、図12図14に示す凹版治具300によってコンデンサー本体210に塗布された導体ペーストP3の形状を模式的に示す。同様に、図16は、溝340及び突出部330の無い比較例の凹版治具によってコンデンサー本体210に塗布された導体ペーストP4の形状を模式的に示す。図15に示す塗布導体ペーストP3は、設計値の幅W5に亘ってほぼ均一の厚さとなる。一方、比較例である図16に示す塗布導体ペーストP4は、設計値の幅W5よりも広い幅W7に亘って形成され、しかも幅方向の中心で厚く両端で薄い不均一な膜厚となる。
【0034】
第2実施形態では、少なくとも2本の溝140の間に形成される少なくとも一つの突出部330の体積分だけ、凹部320内の導体ペーストPの収容量が減るので、コンデンサー本体210に転写される導体ペースト量を減少させることができる。加えて、図14に示す溝340に収容される導体ペーストPは溝340を形成する面から受ける摩擦によって、溝340からはみ出し難くなる。それにより、凹部320内での導体ペーストPの流動性が阻害される。凹部320内での導体ペーストPの収容量の減少及び流動性の阻害の双方の作用によって、コンデンサー本体210に塗布される導体ペースト量が適量となり、外部電極240(250)の寸法精度を高めることができる。
【0035】
図13に示す格子状の溝340として、溝340の本数と突出部330の数を増やすことで、コンデンサー本体210に塗布される導体ペースト量が適量となり、外部電極240(250)の寸法精度をさらに高めることができる。また、格子状の溝340及び少なくとも一つの突出部330は、図14に示すように、開口幅W6を二等分する中心線Lに対して線対称に配置されることが好ましい。こうすると、中心線Lの両側でコンデンサー本体210に塗布される導体ペーストPの量が適量かつ均等となり、外部電極240(250)の寸法精度をより高めることができる。
【0036】
図16に示す比較例においては、凹部の開口幅W6よりも外側に滲み出る導体ペーストPの量は、図15に示す第2実施形態よりも多くなるので、図16に示す塗布導体ペーストP4の幅W7は、設計値の幅W5よりも広くなる。しかも、凹部の開口幅W6よりも外側に滲み出てコンデンサー本体210に塗布される導体ペーストP4の両端部は、凹部と対向する領域でコンデンサー本体210に転写される導体ペーストP4の中央部よりも膜厚が薄くなる。このため、比較例である図16に示す塗布導体ペーストP4は、幅方向の中心で厚く両端で薄い、不均一厚となると考えられる。
【符号の説明】
【0037】
10、200…電子部品(多端子積層コンデンサー)、20、210…電子部品本体(コンデンサー本体)、21、22…主面、23、24…側面、25、26…端面、30~38、240、250…外部電極、40…比較例の凹部、100、300…凹版治具、110、310…弾性体、120、320…凹部、121、321…開口、122、322…底面、123、124、323、324…両側面、130、330…突出部、131、132…段部、340…溝(格子状の溝)、D…深さ、H1、H2…突出高さ、L…中心線、P…導体ペースト、P1~P4…塗布導体ペースト、W1、W5…外部電極(塗布導体ペースト)の幅、W2、W6…凹部の開口幅、W3…凹部の底面の幅、W4、W7…比較例の塗布導体ペーストの幅、δ…弾性変形量(圧縮量)
図1
図2
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図16