(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】エリア評価プログラム及びエリア評価装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/26 20240101AFI20240604BHJP
【FI】
G06Q50/26
(21)【出願番号】P 2024010443
(22)【出願日】2024-01-26
【審査請求日】2024-03-04
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1) 令和5年6月29日に「エリア評価プログラム及びエリア評価装置」についてウェブサイトにて公開 (2) 令和5年7月17日から7月21日に開催された学会において、7月20日に「エリア評価プログラム及びエリア評価装置」について発表
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人情報通信研究機構「革新的情報通信技術研究開発委託研究/行動変容と交通インフラの動的制御によるスマートな都市交通基盤技術の研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518388498
【氏名又は名称】株式会社MaaS Tech Japan
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【氏名又は名称】小林 功
(72)【発明者】
【氏名】荒居 孝紀
(72)【発明者】
【氏名】高谷 和弘
(72)【発明者】
【氏名】古川 泰地
(72)【発明者】
【氏名】大▲崎▼ 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 徹志
【審査官】宮地 匡人
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-2236869(KR,B1)
【文献】中国特許出願公開第111581315(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第116823039(CN,A)
【文献】「アクセシビリティ指標活用の手引き」(案),[online],初版,国土技術政策総合研究所 都市研究部,2014年06月24日,pp.1-27,https://www.mlit.go.jp/common/001044608.pdf,[検索日 2024.03.08]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを、
公共交通機関が有る又は前記公共交通機関を設定可能なエリアに関する情報を取得する取得部、
前記エリアを複数の区画に分割し、それぞれの前記区画に対して第一基準点
を設定する第一設定部、
前記エリアにおいて前記公共交通機関の乗降位置により第二基準点を複数設定
し、各前記第二基準点に対して前記区画を対応付ける第二設定部、
前記第一基準点の間のそれぞれに対して、徒歩による時間距離を第一時間距離として算出する第一算出部、
前記公共交通機関の前記乗降位置を繋ぐ経路に沿った前記第二基準点の間のそれぞれに対して、前記公共交通機関による時間距離を第二時間距離として算出する第二算出部、
前記エリアにおける施設を、前記施設が位置する前記区画の前記第一基準点に位置しているとし、前記第二基準点を、前記第二基準点に対応する前記区画の前記第一基準点に位置しているとし、前記第一時間距離及び前記第二時間距離を用いて、
前記施設に対するアクセシビリティに関する評価を行う評価部、
として機能させるエリア評価プログラム。
【請求項2】
前記第二算出部は、前記第二基準点の間における前記公共交通機関の経路の距離と、前記第二基準点の間における前記公共交通機関の速度とに基づいて前記第二時間距離を算出する、
請求項
1に記載のエリア評価プログラム。
【請求項3】
前記第二算出部は、路線の種類に応じた前記速度を用いて前記第二時間距離を算出する、
請求項
2に記載のエリア評価プログラム。
【請求項4】
前記評価部は、前記施設を基準として、前記施設に対する時間距離が長くなるほど低い評価値となるように、前記アクセシビリティに関する評価を行う、
請求項
1に記載のエリア評価プログラム。
【請求項5】
前記評価部は、時間距離を変数とするガウス関数を用いて前記評価値を設定する、
請求項
4に記載のエリア評価プログラム。
【請求項6】
前記エリアには複数の前記施設が含まれ、
前記評価部は、前記施設のそれぞれに対する前記アクセシビリティに関する評価を合成して、前記エリアにおける合成評価結果を算出する、
請求項
1に記載のエリア評価プログラム。
【請求項7】
前記コンピュータを、
前記エリアに対して前記評価部による評価結果を表示したマップを生成する生成部、
として更に機能させる請求項
1に記載のエリア評価プログラム。
【請求項8】
公共交通機関が有る又は前記公共交通機関を設定可能なエリアに関する情報を取得する取得部と、
前記エリアを複数の区画に分割し、それぞれの前記区画に対して第一基準点
を設定する第一設定部と、
前記エリアにおいて前記公共交通機関の乗降位置により第二基準点を複数設定
し、各前記第二基準点に対して前記区画を対応付ける第二設定部と、
前記第一基準点の間のそれぞれに対して、徒歩による時間距離を第一時間距離として算出する第一算出部と、
前記公共交通機関の前記乗降位置を繋ぐ経路に沿った前記第二基準点の間のそれぞれに対して、前記公共交通機関による時間距離を第二時間距離として算出する第二算出部と、
前記エリアにおける施設を、前記施設が位置する前記区画の前記第一基準点に位置しているとし、前記第二基準点を、前記第二基準点に対応する前記区画の前記第一基準点に位置しているとし、前記第一時間距離及び前記第二時間距離を用いて、
前記施設に対するアクセシビリティに関する評価を行う評価部と、
を備えるエリア評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エリア評価プログラム及びエリア評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な方法により都市計画等が行われている(例えば特許文献1)。例えば都市計画等において評価指標としてウォーカビリティ指標が用いられる。例えば、ポートランドプラン(Portland Plan)やメルボルンプラン(Melbourne Plan)では、ウォーカビリティ指標を用いて都市計画を評価している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ウォーカビリティ指標は、徒歩によるアクセスの良さを示しており、移動手段が徒歩に限定されている。このため、人々が日々利用する公共交通機関を考慮して評価することができなかった。
【0005】
上記課題に鑑み、本開示は、徒歩及び公共交通機関を考慮して評価を行うことができるエリア評価プログラム及びエリア評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の第一態様に係るプログラムは、コンピュータを、公共交通機関が有る又は前記公共交通機関を設定可能なエリアに関する情報を取得する取得部、前記エリアに対して第一基準点を複数設定する第一設定部、前記エリアにおいて前記公共交通機関の乗降位置により第二基準点を複数設定する第二設定部、前記第一基準点の間のそれぞれに対して、徒歩による時間距離を第一時間距離として算出する第一算出部、前記公共交通機関の前記乗降位置を繋ぐ経路に沿った前記第二基準点の間のそれぞれに対して、前記公共交通機関による時間距離を第二時間距離として算出する第二算出部、前記第一時間距離及び前記第二時間距離を用いて、前記エリアに含まれる施設に対するアクセシビリティに関する評価を行う評価部、として機能させる。
【0007】
また、本開示の第二態様では、前記第一設定部は、前記エリアを複数の区画に分割し、それぞれの前記区画に前記第一基準点を設定し、前記評価部は、前記区画ごとに前記施設に対する評価を行う。
【0008】
また、本開示の第三態様では、前記第二算出部は、前記第二基準点の間における前記公共交通機関の経路の距離と、前記第二基準点の間における前記公共交通機関の速度とに基づいて前記第二時間距離を算出する。
【0009】
また、本開示の第四態様では、前記第二算出部は、路線の種類に応じた前記速度を用いて前記第二時間距離を算出する。
【0010】
また、本開示の第五態様では、前記評価部は、前記施設を基準として、前記施設に対する時間距離が長くなるほど低い評価値となるように、前記アクセシビリティに関する評価を行う。
【0011】
また、本開示の第六態様では、前記評価部は、時間距離を変数とするガウス関数を用いて前記評価値を設定する。
【0012】
また、本開示の第七態様では、前記エリアには複数の前記施設が含まれ、前記評価部は、前記施設のそれぞれに対する前記アクセシビリティに関する評価を合成して、前記エリアにおける合成評価結果を算出する。
【0013】
また、本開示の第八態様では、前記コンピュータを、前記エリアに対して前記評価部による評価結果を表示したマップを生成する生成部、として更に機能させる。
【0014】
また、本開示の第九態様に係るエリア評価装置は、公共交通機関が有る又は前記公共交通機関を設定可能なエリアに関する情報を取得する取得部と、前記エリアに対して第一基準点を複数設定する第一設定部と、前記エリアにおいて前記公共交通機関の乗降位置により第二基準点を複数設定する第二設定部と、前記第一基準点の間のそれぞれに対して、徒歩による時間距離を第一時間距離として算出する第一算出部と、前記公共交通機関の前記乗降位置を繋ぐ経路に沿った前記第二基準点の間のそれぞれに対して、前記公共交通機関による時間距離を第二時間距離として算出する第二算出部と、前記第一時間距離及び前記第二時間距離を用いて、前記エリアに含まれる施設に対するアクセシビリティに関する評価を行う評価部と、を備える。
【発明の効果】
【0015】
本開示に係るエリア評価プログラム及びエリア評価装置によれば、徒歩及び公共交通機関を考慮して評価を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示の実施形態に係るエリア評価システムの全体構成の一例を示す概略図である。
【
図2】
図1のサーバ装置のハードウェア構成の一例を概略的に示す図である。
【
図3】
図1のサーバ装置2における各種機能の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図3の第一設定部におけるグリッド化の一例を示す図である。
【
図5】
図3の第二設定部における第二基準点の設定例を示す図である。
【
図6】
図4の徒歩ネットワークと
図5の電車ネットワークを重ね合わせた図である。
【
図7】
図3の第二算出部における路線と対応する速度とを対応付けたデータの一例を示す図である。
【
図8】
図3の評価部において、徒歩ネットワークに対して個別評価を行う場合の一例を示す図である。
【
図9】
図3の評価部において、徒歩ネットワーク及び電車ネットワークに対して個別評価を行う場合の一例を示す図である。
【
図10】
図3の生成部が生成したマップの一例を示す図である。
【
図11】
図3の生成部が生成したマップの一例を示す図である。
【
図12】
図1のサーバ装置の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら本開示の実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素及びステップに対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0018】
<全体構成>
図1は、本開示の一実施形態におけるエリア評価システム1の全体構成図である。エリア評価システム1は、指定されたエリア(地域)に対して評価を行う装置である。具体的には、エリア評価システム1は、エリアに対してアクセシビリティに関する評価を行う。アクセシビリティに関する評価とは、アクセシビリティ指標であり、あるエリアにおける徒歩や公共交通機関(公共交通手段)を利用した生活の利便性を計量した評価指標である。すなわち、アクセシビリティに関する評価は、施設に対するアクセスのし易さを指標化した評価である。換言すると、アクセシビリティに関する評価は、ある地点から徒歩等で移動できる範囲にどれだけ施設が集積しているかを示す指標とも言える。本実施形態では、公共交通機関が電車である場合を一例として説明する。
【0019】
エリア評価システム1は、サーバ装置2と、ユーザ端末3と、を含んで構成される。サーバ装置2と、ユーザ端末3は、ネットワークNTを介して通信可能となっている。
【0020】
サーバ装置2は、エリア評価装置であり、ユーザが指定したエリアに対して評価を行う情報処理装置(コンピュータ)である。
【0021】
ユーザ端末3は、端末装置であり、ユーザが使用する情報処理装置(コンピュータ)である。ユーザ端末3は、例えば、パーソナルコンピュータや、スマートフォン、タブレット等である。本実施形態では、ユーザ端末3はパーソナルコンピュータである場合を例とする。
【0022】
<ハードウェア構成>
図2は、サーバ装置2のハードウェア構成の一例を概略的に示す図である。
【0023】
図2に示すように、サーバ装置2は、制御装置10と、通信装置11と、記憶装置12と、を備える。制御装置10は、CPU(Central Processing Unit)15及びメモリ16を主に備えて構成される。
【0024】
制御装置10では、CPU15がメモリ16或いは記憶装置12等に格納された所定のプログラム(エリア評価プログラム)を実行することにより、後述の各種の機能的構成として機能する。メモリ16は、コンピュータ可読記憶媒体であり、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read only memory)、EPROM(Erasable Program ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Program ROM)などの少なくとも1つによって構成されてもよい。メモリ16は、各種データを格納でき、例えばサーバ装置2における処理の実行に必要なプログラム等を格納する。
【0025】
通信装置11は、外部の装置と通信するための通信インターフェース等で構成される。通信装置11は、例えば、ユーザ端末3との間で各種の情報を送受信する。
【0026】
記憶装置12は、コンピュータ可読命令記録媒体であり、例えば、ハードディスクやソリッドステートドライブ等で構成される。記憶装置12は、制御装置10における処理の実行に必要な各種プログラムや各種の情報、及び処理結果の情報を記憶する。
【0027】
なお、サーバ装置2は、専用又は汎用のコンピュータなどの情報処理装置を用いて実現することが可能である。また、サーバ装置2は、単一の情報処理装置より構成されるものであっても、複数の情報処理装置より構成されるものであってもよい。また、
図2は、サーバ装置2が有する主要なハードウェア構成の一部を示しているに過ぎず、サーバ装置2は、例えば操作装置や表示装置といった他の構成を備えることができる。なお、ユーザ端末3のハードウェア構成も、サーバ装置2と同様の構成を備えることができる。例えば、ユーザ端末3は、制御装置(CPU及びメモリ)や、通信装置、記憶装置、操作装置、表示装置を備える。
<機能的構成>
図3は、サーバ装置2における各種機能の一例を示すブロック図である。各ブロックにおける機能により各種処理が実行される。
【0028】
図3に示すように、サーバ装置2は、機能的構成として、取得部21と、第一設定部22と、第二設定部23と、第一算出部24と、第二算出部25と、評価部26と、生成部27とを主な構成要素として備えている。
【0029】
取得部21は、エリアに関する情報を取得する。エリアは、公共交通機関が有る又は公共交通機関を設定可能な地域である。本実施形態では、電車が既に通る(駅がある)エリアが指定される場合を説明する。具体的には、取得部21は、エリアの指定情報を取得する。ユーザがユーザ端末3を用いてエリアを指定することによって、取得部21は当該指定されたエリアを指定情報として取得する。エリアとは、県や市町村といった予め区切られた範囲としてもよいし、ユーザによって任意に領域が選択された範囲としてもよい。例えばエリアは、「長野県松本市」のように指定される。なお、本実施形態では、長野県の「松本市」とその周囲の地区(「塩尻市」、「安曇野市」、「山形村」、「朝日村」)が指定された場合を一例とする。なお、長野県の「松本市」とその周囲の地区をまとめた地区を「松本市等エリア」と記載する。取得部21により取得されたエリアは、後述する評価の対象エリアとなる。
【0030】
また、取得部21は、対象エリアの地図情報を取得する。例えば、サーバ装置2において地図情報を記憶しておき、取得部21が対象エリアの地図情報を取得することとしてもよいし、他の装置に記憶された地図情報から対象エリアの地図情報を取得することとしてもよい。なお、取得部21は最新の地図情報を取得することが好ましい。
【0031】
地図情報は、地図に関する情報と、対象エリアにおける公共交通機関に関する情報と、対象エリアにおける施設に関する情報とが含まれる。地図に関する情報とは、対象エリアの地域を示す平面図(マップ)情報である。公共交通機関に関する情報とは、対象エリアにおける公共交通機関の情報であり、例えば公共交通機関が電車である場合には、路線図の情報や駅の情報、路線の種類の情報等の情報である。施設に関する情報とは、対象エリアにおける施設の位置や種類、名称等の施設情報である。施設(アメニティ)とは、生活において人々が利用する施設であり、例えば、スーパー、コンビニエンスストア、ドラッグストア、病院(医療施設)、レストラン、カフェ、大型商業施設、娯楽施設、公共施設、書店、ホテル、公園、学校、銀行、郵便局等の様々な施設を含む。施設については、例えば予め種類が設定される。
【0032】
第一設定部22は、対象エリア(所定のエリア)に対して第一基準点Tを複数設定する。すなわち、第一設定部22は、取得部21で取得した対象エリアの地図上に第一基準点Tを複数設定する。
【0033】
具体的には、第一設定部22は、対象エリアを複数の区画Gに分割する。すなわち、第一設定部22は、対象エリアをグリッド化する。
図4は、グリッド化の一例を示す図である。
図4は対象エリアをグリッド化した場合の一部分を例示した図である。第一設定部22は、
図4に示すように、対象エリアを格子状に正方形の区画Gに分割する。1つの区画Gの一辺の距離は予め設定され、例えば125m程度である。第一設定部22は、対象エリアの全体をグリッド化する。そして、第一設定部22は、それぞれの区画Gの中心に第一基準点Tを設定する。このようにして、対象エリアにおいて複数の第一基準点Tが設定される。なお、
図4の例では、区画Gの一辺の距離と等しい間隔で第一基準点Tが設定される。なお、
図4は、グリッド化の一部を示し、区画Gを16個、第一基準点Tを16個示している。
【0034】
また、第一設定部22は、隣接する第一基準点Tをそれぞれ結ぶ。
図4は、結びつきを点線矢印で示す。具体的には、ある区画Gの第一基準点Tと、当該区画Gと辺又は角が接する周囲の8つの区画Gのそれぞれの第一基準点Tとを結ぶ。これによって、各第一基準点Tが結ばれ、ネットワーク化される。隣接する第一基準点Tが結ばれたネットワークを「徒歩ネットワークNW1」とする。
【0035】
図3に戻って、第二設定部23は、対象エリアにおいて公共交通機関の乗降位置により第二基準点Bを複数設定する。本実施形態では、公共交通機関を電車とするため、乗降位置とは駅となる。なお、電車以外の公共交通機関を適用することも可能である。例えば、公共交通機関をバスとする場合には、乗降位置とはバス停の位置となる。
【0036】
第二設定部23は、対象エリアの地図上において、電車の駅の位置を特定する。そして、第二設定部23は、電車の駅の位置を第二基準点Bとして設定する。対象エリアにおいて複数の駅が含まれる場合、それぞれの駅に対応して第二基準点Bが設定される。
【0037】
図5は、第二基準点Bの設定例を示す図である。第二設定部23は、
図5に示すように、電車の駅の位置に対して第二基準点Bを設定する。
図5の例では、7つの駅のそれぞれに対して第二基準点Bが設定された場合の例を一例として示している。
【0038】
また、第二設定部23は、電車の経路(線路)に沿って第二基準点Bをそれぞれ結ぶ。すなわち、公共交通機関(電車等)の乗降位置(駅)を繋ぐ経路に沿って、第二基準点Bがそれぞれ結ばれる。
図5は、結びつきを実線矢印で示す。これによって、各第二基準点Bが結ばれ、ネットワーク化される。路線に沿って隣接する第二基準点Bが結ばれたネットワークを「電車ネットワークNW2」とする。なお、電車ネットワークNW2は、公共交通機関ネットワークとしてもよい。
【0039】
図6は、
図4の徒歩ネットワークNW1と、
図5の電車ネットワークNW2とを地図上において重ね合わせた場合の一例を示す図である。徒歩ネットワークNW1と電車ネットワークNW2とは同じ対象エリアに対して設定されるため重ね合わせが可能である。このため、
図6に示すように、第二基準点Bのそれぞれは、中心が何れか1つの区画Gに範囲内に位置することとなる。このため、第二基準点Bは、当該第二基準点Bが位置する区画Gと対応付けられる。
【0040】
このようにして、対象エリアがグリッド化され、徒歩ネットワークNW1と、電車ネットワークNW2とが設定される。対象エリアとしての「松本市等エリア」の地図に対して、グリッド化がされ、徒歩ネットワークNW1と、電車ネットワークNW2とが設定される。徒歩ネットワークNW1と、電車ネットワークNW2とを合成したネットワークは、「合成ネットワークNW3」となる。
【0041】
図3に戻って、第一算出部24は、徒歩ネットワークNW1における各第一基準点Tの間の時間距離を算出する。時間距離とは、所定の移動手段で区間を移動した場合に要する時間である。すなわち、時間距離では、時間の次元により距離が示される。具体的には、第一算出部24は、第一基準点Tの間のそれぞれに対して、徒歩による時間距離を算出する。徒歩による時間距離は「第一時間距離」と記載する。
【0042】
具体的には、第一算出部24は、第一設定部22において結んだ隣接する第一基準点Tの間に対して、それぞれ第一時間距離を算出する。第一算出部24は、第一基準点Tの間の距離を第一基準点Tの間を移動する速度で割ることにより、第一時間距離を算出する。第一基準点Tの間を移動する速度は、徒歩の速度であり、例えば徒歩による平均速度として予め設定される。例えば、第一基準点Tの間の距離をd1、第一基準点Tの間を移動する徒歩の速度をv1、第一時間距離をw1とすると、第一時間距離は、w1=d1/v1として算出される。なお、徒歩の速度は例えば80m/minである。第一算出部24は、隣接する第一基準点Tの間のそれぞれに対して上記式を適用し、それぞれに対応した第一時間距離を算出する。
【0043】
第一算出部24は、上記のようにして、隣接する第一基準点Tの間のそれぞれに対して第一時間距離を設定する。これによって、徒歩ネットワークNW1対して第一時間距離が設定される。具体的には、徒歩ネットワークNW1を構成する各第一基準点Tの間において第一時間距離が設定される。
【0044】
第二算出部25は、電車ネットワークNW2における各第二基準点Bの間の時間距離を算出する。具体的には、第二算出部25は、公共交通機関の経路に沿った第二基準点Bの間のそれぞれに対して、公共交通機関による時間距離を算出する。公共交通機関による時間距離は、「第二時間距離」と記載する。なお、本実施形態において、第二算出部25は、第二時間距離として、電車による時間距離を算出する。
【0045】
具体的には、第二算出部25は、第二設定部23において結んだ第二基準点Bの間(すなわち経路に沿った第二基準点Bの間)に対して、それぞれ第二時間距離を算出する。第二算出部25は、第二基準点Bの間の距離を第二基準点Bの間を移動する速度で割ることにより、第二時間距離を算出する。第二基準点Bの間を移動する速度は、電車の速度である。電車の速度は、例えば第二基準点Bの間における電車による平均速度として予め設定される。例えば、第二基準点Bの間の距離をd2、第二基準点Bの間を移動する速度をv2、第二時間距離をw2とすると、第二時間距離は、w2=d2/v2として算出される。
【0046】
具体的には、第二基準点Bの間の距離は、隣接する第二基準点Bの間における公共交通機関(電車)の経路の距離である。すなわち、第二基準点Bの間の距離は、一方の第二基準点Bに対応する駅の位置から他方の第二基準点Bに対応する駅の位置までの線路に沿った距離となる。第二算出部25は、算出対象の第二基準点Bの間に対応する路線に沿った距離を用いて、第二時間距離を算出する。
【0047】
また、第二基準点Bの間を移動する速度は、路線の種類に応じた速度となる。
図7は、路線と対応する速度とを示すデータの一例である。
図7は、路線の種類の一例として中央本線、篠ノ井線、大糸線、上高地線の4種類を示している。そして、
図7は、それぞれの路線に対応して速度の情報を示している。
図7のようなテーブルデータは予め設定される。第二算出部25は、算出対象の第二基準点Bの間に対応する路線の速度を用いて、第二時間距離を算出する。なお、速度は、第二基準点Bの間である区間ごとに実際の電車の速度に合わせて設定されることとしてもよい。また、速度は、各駅停車や急行、特急等の列車種別(種別)により設定されることとしてもよい。また、上記の速度(路線の種類に応じた速度等)は、電車を一例として説明したが、鉄度(電車等)、バス、航空機、船舶等の公共交通機関に適用することも可能である。
【0048】
図3に戻って、第二算出部25は、隣接する第二基準点Bの間のそれぞれに対して上記式を適用し、それぞれに対応した第二時間距離を算出する。これによって、電車ネットワークNW2対して第二時間距離が設定される。具体的には、電車ネットワークNW2を構成する各第二基準点Bの間において第二時間距離が設定される。
【0049】
評価部26は、第一時間距離が設定された徒歩ネットワークNW1と、第二時間距離が設定された電車ネットワークNW2とに基づいて、アクセシビリティに関する評価を行う。すなわち、評価部26は、合成ネットワークNW3に基づいてアクセシビリティに関する評価を行う。具体的には、評価部26は、対象エリアに含まれる施設に対するアクセシビリティに関する評価を行う。なお、施設のそれぞれに対する評価は「個別評価」と記載し、後述する個別評価を合成した評価は「合成評価」と記載する。
【0050】
評価部26は、取得部21において取得した施設に関する情報に基づいて、対象エリアにおける施設の位置を特定する。そして、施設を基準として、施設に対する時間距離が長くなるほど低い評価となるように、個別評価を行う。具体的には、評価部26は、時間距離を変数とするガウス関数を用いて個別評価を行う。使用するガウス関数は、例えば以下の式(1)である。
【0051】
【0052】
式(1)において、R(t)は個別評価の値(評価値)である。個別評価は、式(1)によることで数値(スコア)として算出される。Aは施設に対応する定数である。施設に対応する定数とは、施設に対して予め設定された重み付けである。施設に対して個別に定数が設定されていてもよいし、施設の種類に応じて定数が設定されてもよい。例えば、定数は、人々が頻繁に使用する施設(重要度が高い施設)ほど高い値に設定される。tは時間距離であり、式(1)の変数となる。μはガウス関数における平均値であり、本実施形態では0に設定される。σはガウス関数における標準偏差である。σは予め設定される。例えば3σ=15とすると、時間距離が15分の位置まで評価を行うことができ、3σ=30とすると、時間距離が30分の位置まで評価を行うことができる。
【0053】
評価部26は、施設を基準として式(1)を適用し、施設に対する時間距離を用いて個別評価を行う。具体的には、評価部26は、区画Gごとに施設に対する個別評価を行う。
図8は、徒歩ネットワークNW1を用いて個別評価を行う場合の一例を示す図である。例えば、施設F1が区画Gとしての区画G1の範囲内に位置している場合、施設F1の位置を区画G1の第一基準点Tである第一基準点T1に位置しているものと見做して、式(1)を適用する。なお、施設F1に対応する定数(重み)はA1であることとする。式(1)を適用すると、第一基準点T1の位置を中心とするガウス分布が形成される。ガウス分布は、縦軸が評価値となり、横軸が時間距離となる。ガウス分布は、施設F1に対する時間距離が長くなるほど低い評価値となる。評価部26は、このような施設F1に対するガウス分布により、区画毎に評価値を対応付ける。具体的には、評価部26は、各区画Gの第一基準点Tの位置に対応して評価値を設定する。例えば、評価部26は、
図8の例の場合、施設F1がある区画G1に対して、第一基準点T1の位置におけるガウス分布が示す評価値を設定する。すなわち、評価部26は区画G1に対して評価値をA1とする。そして、評価部26は、施設F1がある区画G1に隣接する区画Gとしての区画G2に対して、第一基準点T2の位置におけるガウス分布が示す評価値を設定する。すなわち、評価部26は区画G2に対して評価値をA2とする。このようにして、評価部26は、施設F1に対応して区画G1及び区画G1の周囲の区画G2等の区画Gに対して評価値を設定する。
【0054】
また、
図9は、徒歩ネットワークNW1及び電車ネットワークNW2を用いて個別評価を行う場合の一例を示す図である。例えば、施設F2が区画Gとしての区画G3の範囲内に位置している場合、施設F2の位置を区画G3の第一基準点Tである第一基準点T3に位置しているものと見做して、式(1)を適用する。なお、施設F2に対応する定数(重み)はA3であることとする。式(1)を適用すると、第一基準点T3の位置を中心とするガウス分布が形成される。評価部26は、
図9の例の場合、施設F2がある区画G3に対して、第一基準点T3の位置におけるガウス分布が示す評価値を設定する。すなわち、評価部26は区画G3に対して評価値をA3とする。そして、評価部26は、施設F2がある区画G3と時間距離の近い区画Gとしての区画G4に対して、第一基準点T4の位置におけるガウス分布が示す評価値を設定する。すなわち、評価部26は区画G4に対して評価値をA4とする。このようにして、評価部26は、施設F2に対応して区画G3及び区画G3の周囲の区画G4等の区画Gに対して評価値を設定する。
【0055】
図9の例では、施設F2がある区画G3に、第二基準点Bとしての第二基準点B1が位置しているものとする。この場合、評価部26は、第二基準点B1を区画G3の第一基準点T3に位置しているものと見做す。また、評価部26は、第二基準点Bとしての第二基準点B2等の他の第二基準点Bについてもそれぞれが位置する区画Gの第一基準点Tに位置しているものと見做す。なお、第二基準点Bのそれぞれについて、位置を第一基準点Tの位置に見做したとしても、第二基準点Bの間の時間距離は、第二算出部25で算出した第二時間距離とする。このように見做し処理を行った場合、
図9に示すように、評価部26は、第二基準点B1と線路(電車ネットワークNW2)に沿って隣接する第二基準点B2がある区画Gとしての区画G5に対して評価値を設定する。具体的には、評価部26は、区画G5の第二基準点B2の位置(区画G5の第一基準点Tである第一基準点T5の位置)におけるガウス分布が示す評価値を設定する。すなわち、評価部26は区画G5に対して評価値をA5とする。このように、電車ネットワークNW2を用いることで、線路に沿って隣接する第二基準点Bに対応して評価を行うことが可能となる。なお、例えば、区画G3(第一基準点T3)と、区画G5(第一基準点T5)とは徒歩ネットワークNW1においては時間距離が離れているが、電車ネットワークNW2においては時間距離が短いため、区画G5に対して施設F2に対する評価を行うことができる。
【0056】
なお、例えば
図9において、第二基準点B1と第二基準点B2とが線路に沿って隣接するため、区画G3と区画G5のそれぞれに評価値が設定される場合を例示した。しかし、地図上では、区画G3と区画G5とは直接的に隣接せず、例えば他の区画G等が間に位置する場合がある。しかし、電車においては当該他の区画Gの位置に駅がないため、当該他の区画Gに対して評価値は設定されない。このように、電車ネットワークNW2を用いた時間距離に対する評価値の設定においては、駅がある(第二基準点Bが設定された)区画Gのみが評価対象となる。なお、
図9の例において、区画G5の周囲の区画Gについて徒歩による時間距離が短い範囲ついては評価が行われる。すなわち、徒歩による移動と電車による移動との組み合わせについても、時間距離に対して評価が行われる。ある施設に対して、徒歩及び電車の両方の移動手段による移動が時間距離を用いて評価される。
【0057】
このようにして、評価部26は、施設を基準として、時間距離を用いて各区画Gに対して個別評価を行う。
【0058】
対象エリアには、複数施設が含まれる。このため、評価部26は、それぞれの施設に応じた個別評価を合成し、対象エリアにおける合成評価を行う。具体的には、評価部26は、区画G毎に、個別評価において設定された評価値を加算する。すなわち、ある区画Gにおいて、当該区画Gに対して個別評価がされた複数の評価値を加算して、当該区画Gの合計評価値とする。対象エリアにおける区画Gのそれぞれに対して合計評価値が算出される。このように各区画Gの個別評価が合成評価される。評価部26は、合成評価した結果を合成評価結果とする。
【0059】
図3に戻って、生成部27は、対象エリアに対応したマップを生成する。具体的には、生成部27は、評価部26による合成評価結果を表示した対象エリアのマップを生成する。
図10は、合成ネットワークNW3(徒歩ネットワークNW1及び電車ネットワークNW2)を用いて生成部27が生成したマップM1の一例を示す図である。生成部27は、各区画Gに対して評価が高いほど色を濃くして表示する。すなわち、評価が高い区画Gは色の濃淡が濃く、評価が低い区画Gは色の濃淡が薄い。例えば、
図10において、地域Y1は評価が低い傾向にあり、地域Y2は評価が高い傾向にあることがわかる。なお、評価結果をマップに示す方法は、色分け等の他の方法を使用してもよい。生成部27が評価結果をマップ化することによって、対象エリアに対応して評価結果が確認し易くなる。なお、生成部27は、評価部26における個別評価を表示した対象エリアのマップを生成することとしてもよい。
【0060】
なお、
図11は、徒歩ネットワークNW1のみを用いて生成部27が生成したマップM2の一例を示す図である。すなわち、マップM1は合成ネットワークNW3(徒歩ネットワークNW1及び電車ネットワークNW2)を用いて生成され、マップM2は徒歩ネットワークNW1のみ(電車ネットワークNW2を用いない)を用いて生成されている。マップM2において、地域Y3では評価値は低い状態となっている。一方で、マップM1では、同じ地域Y3は評価が高い位置がある。マップM1の地域Y3において評価が高い位置は駅がある位置に対応する。すなわち、徒歩ネットワークNW1のみでは徒歩移動のみが考慮されるが、電車ネットワークNW2を用いると電車移動を考慮して評価を伝搬させることができる。
【0061】
<処理の流れ>
図12は、本実施形態に係るサーバ装置2の処理の流れの一例を示すフローチャートである。以下のステップの各処理は、例えばユーザが評価の対象とする地域を選択すると開始される。なお、以下の各ステップの順番及び内容は適宜変更することが可能である。
【0062】
(ステップSP10)
取得部21は、エリアの指定情報を取得する。例えば、ユーザは、評価対象のエリアとして「松本市等エリア」を選択すると、取得部21は、「松本市等エリア」に係る情報をエリアの指定情報として取得する。すなわち、対象エリアは「松本市等エリア」となる。そして、処理はステップSP11へ移行する。
【0063】
(ステップSP11)
取得部21は、対象エリアの地図情報を取得する。例えば、取得部21は、「松本市等エリア」の地図情報を取得する。すなわち、取得部21は、「松本市等エリア」における地図に関する情報や、公共交通機関に関する情報、施設に関する情報を取得する。そして、処理はステップSP12へ移行する。
【0064】
(ステップSP12)
第一設定部22は、対象エリアを複数の区画Gに分割する。すなわち、第一設定部22は、対象エリアをグリッド化する。例えば、「松本市等エリア」が地図上においてグリッド化される。そして、処理はステップSP13へ移行する。
【0065】
(ステップSP13)
第一設定部22は、それぞれの区画Gの中心に第一基準点Tを設定する。そして、処理はステップSP14へ移行する。
【0066】
(ステップSP14)
第一設定部22は、隣接する第一基準点Tをそれぞれ結ぶ。これによって、「松本市等エリア」に対応した徒歩ネットワークNW1が形成される。そして、処理はステップSP15へ移行する。
【0067】
(ステップSP15)
第二設定部23は、対象エリアにおいて、電車の駅の位置に対して第二基準点Bを設定する。例えば「松本市等エリア」内の駅の位置に第二基準点Bが設定される。そして、処理はステップSP16へ移行する。
【0068】
(ステップSP16)
第二設定部23は、電車の線路に沿って第二基準点Bをそれぞれ結ぶ。これによって、「松本市等エリア」に対応した電車ネットワークNW2が形成される。そして、徒歩ネットワークNW1と電車ネットワークNW2を合成することで、「松本市等エリア」に対応した合成ネットワークNW3が形成される。そして、処理はステップSP17へ移行する。
【0069】
(ステップSP17)
第一算出部24は、徒歩ネットワークNW1において、隣接する第一基準点Tの間のそれぞれの時間距離(第一時間距離)を算出する。例えば、ある第一基準点Tから隣の第一基準点Tまで歩いた場合の時間距離が算出される。そして、処理はステップSP18へ移行する。
【0070】
(ステップSP18)
第二算出部25は、電車ネットワークNW2において、線路に沿って結ばれた第二基準点Bの間のそれぞれの時間距離(第二時間距離)を算出する。例えば、線路に沿ってある第二基準点Bから隣の第二基準点Bまで電車で移動した場合の時間距離が算出される。そして、処理はステップSP19へ移行する。
【0071】
(ステップSP19)
評価部26は、対象エリアに含まれるそれぞれの施設に対応して、個別評価を行う。なお、個別評価は、徒歩ネットワークNW1及び電車ネットワークNW2を用いて時間距離により評価される。そして、処理はステップSP20へ移行する。
【0072】
(ステップSP20)
評価部26は、それぞれの施設に対する個別評価を合成し、対象エリアにおける合成評価を行う。これにより、対象エリアに対する総合的なアクセシビリティに関する評価が行われる。そして、処理はステップSP21へ移行する。
【0073】
(ステップSP21)
生成部27は、評価結果を表示した対象エリアのマップを生成する。例えば、アクセシビリティに関する評価が表示された「松本市等エリア」のマップを生成する。そして、処理はステップSP22へ移行する。
【0074】
(ステップSP22)
生成部27は、生成したマップをユーザ端末3へ出力する。
【0075】
このようにして、ユーザが指定したエリアに対してアクセシビリティに関する評価が行われ、評価結果がユーザへ提供される。例えばユーザはマップを確認することによって、対象エリアにおける生活の利便性が高い地域と低い地域を確認することができる。
【0076】
<作用効果>
以上、本実施形態に係るエリア評価プログラムは、コンピュータを、公共交通機関が有る又は公共交通機関を設定可能なエリアに関する情報を取得する取得部21、エリアに対して第一基準点Tを複数設定する第一設定部22、エリアにおいて公共交通機関の乗降位置により第二基準点Bを複数設定する第二設定部23、第一基準点Tの間のそれぞれに対して、徒歩による時間距離を第一時間距離として算出する第一算出部24、公共交通機関の乗降位置を繋ぐ経路に沿った第二基準点Bの間のそれぞれに対して、公共交通機関による時間距離を第二時間距離として算出する第二算出部25、第一時間距離及び第二時間距離を用いて、エリアに含まれる施設に対するアクセシビリティに関する評価を行う評価部26、として機能させる。
【0077】
この構成によれば、徒歩だけでなく、公共交通機関による移動の時間距離も考慮して、アクセシビリティに関する評価を行うことが可能となる。例えば、物理的な距離は離れているものの公共交通機関を使用すれば時間距離が短いような場合を考慮して、評価を行うことが可能となる。
【0078】
また、エリア評価プログラムにおいて、第一設定部22は、エリアを複数の区画Gに分割し、それぞれの区画Gに第一基準点Tを設定し、評価部26は、区画Gごとに施設に対する評価を行う。
【0079】
この構成によれば、エリアが複数の区画Gに分割されることで、エリアを区画Gごとに評価することが可能となる。区画Gのサイズを大きく設定することで、評価に係る処理負担を軽減することも可能となる。
【0080】
また、エリア評価プログラムにおいて、第二算出部25は、第二基準点Bの間における公共交通機関の経路の距離と、第二基準点Bの間における公共交通機関の速度とに基づいて第二時間距離を算出する。
【0081】
この構成によれば、第二時間距離が、公共交通機関の経路の距離と速度により算出されることで、第二基準点Bの間の時間距離の算出精度を向上させることができる。
【0082】
また、エリア評価プログラムにおいて、第二算出部25は、路線の種類に応じた速度を用いて第二時間距離を算出する。
【0083】
この構成によれば、第二時間距離が線路の種類に応じた速度により算出されることによって、第二基準点Bの間の時間距離の算出精度を向上させることができる。
【0084】
また、エリア評価プログラムにおいて、評価部26は、施設を基準として、施設に対する時間距離が長くなるほど低い評価値となるように、アクセシビリティに関する評価を行う。
【0085】
この構成によれば、時間距離に基づいて、施設に対するアクセスのし易さを評価することが可能となる。
【0086】
また、エリア評価プログラムにおいて、評価部26は、時間距離を変数とするガウス関数を用いて評価値を設定する。
【0087】
この構成によれば、時間距離に基づいて、施設に対するアクセスのし易さを評価することが可能となる。また、ガウス関数の標準偏差の値を設定することによって、施設に対して評価される時間距離の幅を調整することが可能となる。
【0088】
また、エリア評価プログラムにおいて、エリアには複数の施設が含まれ、評価部26は、施設のそれぞれに対するアクセシビリティに関する評価を合成して、エリアにおける合成評価結果を算出する。
【0089】
この構成によれば、施設のそれぞれに対応して個別評価をし、それぞれの個別評価を合成することによって、エリア全体についてアクセシビリティ指標を評価することが可能となる。
【0090】
また、エリア評価プログラムにおいて、コンピュータを、エリアに対して評価部26による評価結果を表示したマップを生成する生成部27、として更に機能させる。
【0091】
この構成によれば、評価結果をマップ化することによって、評価結果を可視化し、エリアの評価状態を容易に確認することが可能となる。
【0092】
<変形例>
なお、本開示は上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、上記実施形態に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。また、上記実施形態及び後述する変形例が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本開示の特徴を含む限り本開示の範囲に包含される。
【0093】
例えば、上記実施形態では、各機能はサーバ装置2が有する場合を一例としたが、各機能はユーザ端末3に設けられることとしてもよい。また、各機能がサーバ装置2とユーザ端末3とで分散されることとしてもよい。
【0094】
また、上記実施形態では、電車等の公共交通機関が既にあるエリアが指定される場合を一例として説明したが、電車等の公共交通機関がないエリア(公共交通機関を設定可能なエリア)が指定されることとしてもよい。すなわち、実際にはない公共交通機関を仮想的に設定して、評価が行われることとしてもよい。すなわち、実際にある公共交通機関を使用して評価が行われることとしてもよいし、実際にない公共交通機関を仮想的に設定して評価が行われることとしてもよい。なお、既に公共交通機関が有るエリアに対して、仮想的に別の公共交通機関を設定して評価が行われることとしてもよい。
【0095】
また、サーバ装置2は、提案機能を有することとしてもよい。この場合、サーバ装置2は提案部を更に備える。そして、提案部は、評価部26における評価結果に基づいて、ユーザに対して提案を行う。具体的には、提案部は、電車の運行計画を提案する。例えば、評価部26における評価結果が反映された
図10において、地域Y1は評価が低い傾向にある。このため、地域Y1では人の移動が少ないと想定して、地域Y1における電車の運行頻度が低くなるように運行計画の提案情報を生成する。例えば評価が低いほど電車の運行頻度が低くなるように運行計画の提案情報が生成される。一方で、地域Y2は評価が高い傾向にある。このため、地域Y2では人の移動が多いと想定して、地域Y2における電車の運行頻度が高くなるように運行計画の提案情報を生成する。例えば評価が高いほど電車の運行頻度が高くなるように運行計画の提案情報が生成される。
【0096】
なお、提案情報は、運行計画に限定されない。例えば、提案部は、地域Y1において、レストラン等の施設の営業時間を短縮するように提案情報を生成することとしてもよい。また、提案部は、地域Y2において、レストラン等の施設の営業時間を延長するように提案情報を生成することとしてもよいし、施設の新設を提案する提案情報を生成することとしてもよい。また、提案部は、地域Y1において、公共交通機関の乗降所を減少させるように(又は増加させるように)提案情報を生成することとしてもよい。また、提案部は、地域Y2において、公共交通機関の乗降所を増加させるように(又は減少させるように)提案情報を生成することとしてもよい。
【0097】
また、上記実施形態では、評価部26は既設の施設を使用して評価を行う場合を一例としたが、この場合に限定されない。例えば、新設予定等の施設の情報をユーザが設定し、当該施を含んで既設の施設と共に評価を行うこととしてもよい。新設予定の施設の情報は、例えば施設の位置や種類、名称等である。このようにすることで、まだ設けられていない施設の影響を評価に反映することができる。例えば郊外にショッピングモールを建設する予定がある場合、建設予定地を設定して評価を実行することで、ショッピングモールを建設した場合の評価結果を確認することができる。
【0098】
また、上記実施形態では、対象エリア内の複数の施設のそれぞれに対応した個別評価を合成して合成評価を行う場合を例示したが、例えばユーザにより1つ又は複数の施設が選択され、選択された施設のみによる評価を実行することとしてもよい。
【符号の説明】
【0099】
2 :サーバ装置(コンピュータ)
21 :取得部
22 :第一設定部
23 :第二設定部
24 :第一算出部
25 :第二算出部
26 :評価部
B、B1~B2:第二基準点
F1、F2:施設
T、T1~T5:第一基準点
【要約】
【課題】徒歩及び公共交通機関を考慮して評価を行う。
【解決手段】エリア評価プログラムは、コンピュータを、エリアに関する情報を取得する取得部、エリアに対して第一基準点Tを複数設定する第一設定部、エリアにおいて公共交通機関の乗降位置により第二基準点Bを複数設定する第二設定部、第一基準点Tの間のそれぞれに対して、徒歩による時間距離を第一時間距離として算出する第一算出部、公共交通機関の乗降位置を繋ぐ経路に沿った第二基準点Bの間のそれぞれに対して、公共交通機関による時間距離を第二時間距離として算出する第二算出部、第一時間距離及び第二時間距離を用いて、エリアに含まれる施設に対するアクセシビリティに関する評価を行う評価部、として機能させる。
【選択図】
図6