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特許7497942多波長活性化のために神経プローブに組み込まれる多光源
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】多波長活性化のために神経プローブに組み込まれる多光源
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/06 20060101AFI20240604BHJP
   H01L 33/30 20100101ALI20240604BHJP
   H01L 33/00 20100101ALI20240604BHJP
【FI】
A61N5/06 Z
H01L33/30
H01L33/00 L
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022200760
(22)【出願日】2022-12-16
(62)【分割の表示】P 2020536738の分割
【原出願日】2019-01-15
(65)【公開番号】P2023036739
(43)【公開日】2023-03-14
【審査請求日】2022-12-16
(31)【優先権主張番号】15/881,211
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【弁理士】
【氏名又は名称】太佐 種一
(74)【代理人】
【識別番号】100120710
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】デリギアーニ、ハリクリア
(72)【発明者】
【氏名】リー、コ-タオ
(72)【発明者】
【氏名】リー、ニン
(72)【発明者】
【氏名】サダナ、デヴェンドラ
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1564710(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第2010-0107287(KR,A)
【文献】米国特許第09653642(US,B1)
【文献】国際公開第2017/109103(WO,A1)
【文献】特表2017-531327(JP,A)
【文献】特開2017-041634(JP,A)
【文献】特開2005-235802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/06
H01L 33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブであって、
生体組織に貫入するように構成されたプローブ本体と、
前記プローブ本体内に配置された複数の発光ダイオード(LED)と
を含み、各LEDが隣接組織において光感受性反応を引き起こすのに十分な強度の光出力を有し、複数のLEDの複合熱出力が前記隣接組織において破壊的温度上昇を生じさせないように十分に低いパワー出力を有し、
少なくとも1つのLEDが電磁スペクトルの赤色または赤外部分内の光を出力し、少なくとも1つのLEDが電磁スペクトルの青色、黄色または緑色部分の光を出力し、
電磁スペクトルの赤色または赤外部分内の光を出力する前記少なくとも1つのLEDは、
ゲルマニウム基板と、
In0.49Ga0.51Pの第1のn型ドープ層と、
前記第1のn型ドープ層よりもドーパント濃度が低いIn0.49Ga0.51Pの第2のn型ドープ層と、
少なくとも1つのIn0.49Ga0.51Pの真性層と、
xが約0.50と約0.60の間の値であるInGa(1-x)Pの井戸層と、
少なくとも1つのIn0.49Ga0.51Pのp型ドープ層と
を含む、プローブ。
【請求項2】
プローブであって、
生体組織に貫入するように構成されたプローブ本体と、
前記プローブ本体内に配置された複数の発光ダイオード(LED)と
を含み、各LEDが隣接組織において光感受性反応を引き起こすのに十分な強度の光出力を有し、複数のLEDの複合熱出力が前記隣接組織において破壊的温度上昇を生じさせないように十分に低いパワー出力を有し、
少なくとも1つのLEDが電磁スペクトルの赤色または赤外部分内の光を出力し、少なくとも1つのLEDが電磁スペクトルの青色、黄色または緑色部分の光を出力し、
電磁スペクトルの赤色または赤外部分内の光を出力する前記少なくとも1つのLEDは、
基板と、
インジウム・ガリウム・リンの第1のn型ドープ層と、
前記第1のn型ドープ層よりもドーパント濃度が低いインジウム・ガリウム・リンの第2のn型ドープ層と、
少なくとも1つのインジウム・ガリウム・リンの真性層と、
インジウム・ガリウム・リンの井戸層と、
少なくとも1つのインジウム・ガリウム・リンのp型ドープ層と
を含む、プローブ。
【請求項3】
前記基板は、ゲルマニウム基板であり、前記第1のn型ドープ層、前記第2のn型ドープ層、前記真性層および前記p型ドープ層は、それぞれ、In 0.49 Ga 0.51 Pの層であり、前記井戸層は、xが約0.50と約0.60の間の値であるIn Ga (1-x) Pの層である、請求項2に記載のプローブ。
【請求項4】
電磁スペクトルの青色、黄色、または緑色部分内の光を出力する前記少なくとも1つのLEDは、
窒化ガリウムとサファイアとからなるグループから選択された材料からなる基板と、
少なくとも1つの窒化ガリウムのn型ドープ層と、
少なくとも1つの窒化ガリウムの真性層と、
xが約0.10と約0.50の間の値であるIn Ga (1-x) Nの井戸層と、
少なくとも1つの窒化ガリウムのp型ドープ層と
を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のプローブ。
【請求項5】
各LEDが約1μAと約1mAの間の電流範囲において約0.9と1の間の外部量子効率を有することで前記隣接組織において前記破壊的温度上昇を生じさせないようにされている、請求項1~4のいずれか1項に記載のプローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にはオプトジェネティクスに関し、より詳細には、局部組織を過熱させることなく神経細胞を活性化させるための複数の効率的光源を有する神経プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
オプトジェネティクスの分野は、光感受性を呈するように生体を遺伝子的に改変し、生体における神経細胞の選択的な制御を可能にすることを含む。オプトジェネティクスは、これによって、生体内の特定の生物学的プロセスを直接引き起こし、観察することができるようにする。
【0003】
神経細胞のこの光トリガを実現するために、例えば発光ダイオードを含む神経プローブが使用される。発光ダイオードは、近傍の神経細胞に光を照射して、それらの神経細胞を活性化させる。しかし、この技術は、発光ダイオード内の発熱によって制約される。具体的には、わずか2℃の温度上昇が神経組織の挙動を損なうことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、当技術分野では上記の問題に対処する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の観点から見ると、本発明は、生体組織に貫入するように構成されたプローブ本体と、上記プローブ本体内に配置された複数の高効率光源とを含み、各高効率光源が隣接組織において光感受性反応を引き起こすのに十分な強度の光出力を有し、複数の光源の複合熱出力が上記隣接組織において破壊的温度上昇を生じさせないように十分に低いパワー出力を有するプローブを提供する。
【0006】
他の観点から見ると、本発明は、生体組織に貫入するように構成されたプローブ本体と、上記プローブ本体内に配置された複数の高効率発光ダイオード(LED)とを含むプローブであって、少なくとも1つのLEDが電磁スペクトルの赤色または赤外部分内の光を出力し、少なくとも1つのLEDが電磁スペクトルの青色、黄色または緑色部分内の光を出力し、各高効率LEDが、隣接組織において光感受性反応を引き起こすのに十分な強度の光出力を有し、各LEDが、複数のLEDの複合熱出力が上記隣接組織において破壊的温度上昇を生じさせないように十分に低いパワー出力を有する、プローブを提供する。
【0007】
別の観点から見ると、本発明は、生体組織に貫入するように構成されたプローブ本体と、上記プローブ本体内に配置された複数の高効率光源とを含むプローブであって、各高効率光源が少なくとも10mW/mmの光出力を有し、上記複数の高効率光源のそれぞれが、隣接組織において活性時に約0.022℃と約0.041℃の間の温度上昇を生じさせるように、各高効率光源が十分に低いパワー出力を有するプローブを提供する。
【0008】
プローブが、生体組織に貫入するように構成されたプローブ本体を含む。高効率光源がプローブ本体内に配置される。各高効率光源は、隣接組織において光感受性反応を引き起こすのに十分な強度の光出力を有し、複数の光源の複合熱出力が隣接組織において破壊的温度上昇を生じさせないように十分に低いパワー出力を有する。
【0009】
プローブが、生体組織に貫入するように構成されたプローブ本体を含む。高効率発光ダイオード(LED)がプローブ本体内に配置される。少なくとも1つのLEDが電磁スペクトルの赤色または赤外部分内の光を出力し、少なくとも1つのLEDが電磁スペクトルの青色、黄色、または緑色部分内の光を出力する。各高効率LEDは、隣接組織において光感受性反応を引き起こすのに十分な強度の光出力を有し、各LEDは複数のLEDの複合熱出力が隣接組織内で破壊的温度上昇を生じさせないように十分に低いパワー出力を有する。
【0010】
プローブが、生体組織に貫入するように構成されたプローブ本体を含む。高効率光源がプローブ本体内に配置される。各高効率光源は、少なくとも10mW/mmの光出力を有し、高効率光源のそれぞれが、隣接組織において活性時に約0.022℃と約0.041℃の間の温度上昇を生じさせるように十分に低いパワー出力を有する。
【0011】
上記およびその他の特徴および利点は、添付図面とともに以下の例示の実施形態の詳細な説明を読めばわかるであろう。
【0012】
以下の説明では、以下の図面を参照しながら好ましい実施形態の詳細を示す。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態による、複数の高効率光源を有する神経プローブを示す図である。
図2】本発明の一実施形態による高効率光源を示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態による高効率光源を示す断面図である。
図4】本発明の一実施形態によるプローブ制御システムを示すブロック図である。
図5】本発明の一実施形態による処理システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態は、高効率光源を備えた神経プローブを提供する。これらの高効率光源は、従来の発光ダイオードよりも発熱が少なく、それによって、各光源が異なる波長を発する複数のそのような光源を単一のプローブに含めることを可能にする。その結果、一度に複数の異なる波長感受性を使用することができ、それによって、組織温度の破壊的上昇を生じさせずに、単一のプローブで神経細胞の異なる組を選択的に活性化することができるようにする。
【0015】
次に、図面を参照すると、同様の数字が同じかまたは類似した要素を示しており、まず図1を参照すると、神経プローブ100が示されている。プローブ100は、複数の高効率光源104を備えたプローブ本体102を含む。なお、光源104は、任意の適切な種類のものであってよく、プローブ本体102の長さに沿った任意の適切な場所にあってよいが、光源104は、プローブ先端106付近に高効率発光ダイオード(LED)として形成することができることが特に企図されていることを理解されたい。制御/電力線108も図示されており、光源104に給電する電流を供給するとともに、任意により光源104に制御信号も供給する。
【0016】
プローブ本体102は、例えば、ガラス、サファイア、またはチタンを含む、任意の適切な生体適合性物質で形成することができ、生体組織に貫入するように構成された形状および大きさであることを理解されたい。光源104と制御/電力線108とは、任意の適切な生体適合性機構(例えば接着剤または接合剤)によってプローブ100に取り付けることができ、実施形態によっては、プローブ100上の所定位置に作り込むこともできる。別の実施形態では、プローブ本体102は、プリント回路基板上に形成することができ、次にプリント回路基板は、光源104からの光が周囲の組織に達することができるように透明な生体適合性物質に入れられる。プローブ100は、生体組織、具体的には神経組織に貫入するように設計されることが特に企図される。したがって、プローブ100の直径は、ごく小さい必要があり、プローブ・ポイント106は先鋭である必要がある。また、プローブ本体102は、貫入の過程で損傷しないようにそのような組織に貫入するのに十分な耐久性を備えて形成される必要がある。
【0017】
異なる神経組織が、異なる波長および異なる光強度で活性化されるように操作される。光源104の例示の波長は、約1850nmから約2120nmの範囲であるが、この範囲より上または下の波長も使用可能であることを理解されたい。刺激閾値が、神経細胞を活性化するのに必要なエネルギー密度を表し、神経細胞の種類に応じて約1.6mJ/cmと約16904mJ/cmの間とすることができる。光を使用して、興奮または抑制膜電流を介して細胞内の膜電位を変化させる変化をタンパク質内で引き起こすことができる。細胞を調整するこの機能は、臨床前研究で有用性が実証されており、とりわけパーキンソン病、てんかん、慢性疼痛、依存症およびうつ病などの病気の治療に大きな可能性を有する。なお、本プローブ100は、人間にも他の動物にも使用可能であることを理解されたい。
【0018】
次に図2を参照すると、光源104の例示の構造が示されている。この実施形態では、光源104は、低出力LEDとして実装される。光源104の各層は、例えば、化学蒸着(CVD)、物理蒸着(PVD)、原子層堆積(ALD)、またはガス・クラスタ・イオン・ビーム(GCIB)付着を含む、任意の適切な付着プロセスによって順次に付着させることができる。
【0019】
CVDは、室温より高い温度(例えば約25℃から約900℃)での気体反応物質間の化学反応の結果として付着種が形成される付着プロセスである。反応の固体生成物を、固体生成物の膜、コーティング、または層を形成させる表面上に付着させる。CVDプロセスの種類には、大気圧CVD(APCVD)、低圧CVD(LPCVD)、プラズマCVD(PECVD)、および有機金属CVD(MOCVD)が含まれるが、これらには限定されず、これらの組み合わせも採用可能である。PVDを使用する別の実施形態では、スパッタリング装置が直流ダイオード・システム、高周波スパッタリング、マグネトロン・スパッタリング、またはイオン化金属プラズマ・スパッタリングを含み得る。ALDを使用する別の実施形態では、化学前駆体が一度に1つずつ材料の表面と反応して表面上に薄膜を付着させる。GCIB付着を使用する別の実施形態では、真空中で高圧ガスを膨張させ、その後、クラスタに凝縮させる。クラスタは、イオン化させて表面に照射することができ、それによって高異方性の付着物を形成することができる。
【0020】
適切な半導体材料から半導体基板202が形成される。本実施形態では、半導体基板202は、III-V族化合物半導体材料から形成することができることが特に企図されているが、代わりにIV族半導体材料を使用することもできることを理解されたい。「III-V族化合物半導体」という用語は、元素周期表のIII族(すなわち、国際純正・応用化学連合(IUPAC)の13族)の少なくとも1つの元素と、元素周期表のV族(すなわち、IUPACの15族)の少なくとも1つの元素とを含む半導体材料を指す。これは、例えばシリコン、ゲルマニウム、およびこれらの化合物など、元素周期表のIV族(すなわちIUPACの14族)の単一元素からなるIV族半導体とは対照をなす。典型的には、III-V族化合物半導体は、III/V族元素を含む二元、三元、または四元合金である。本発明で使用可能なIII-V族化合物半導体の例には、ガリウム・ヒ素、アルミニウム・ヒ素、インジウム・ガリウム・ヒ素、インジウム・アルミニウム・ヒ素、インジウム・アルミニウム・ヒ素アンチモン、インジウム・アルミニウム・ヒ素リン、インジウム・ガリウム・ヒ素リン、テルル化カドミウム、セレン化亜鉛の合金、およびこれらの組み合わせが含まれるが、これらには限定されない。本発明で使用可能なIV族半導体の例には、シリコン、ゲルマニウム、シリコン・ゲルマニウム、シリコン・ゲルマニウム・カーバイド、シリコン・カーバイド、ポリシリコン、エピタキシャル・シリコン、アモルファス・シリコン、およびこれらの多層を含むが、これらには限定されない。
【0021】
次に、半導体基板202上に半導体層の積層が形成される。積層は、p型ドープ、真性、またはn型ドープの3種類の導電型のうちの1つに従ってドープされる。個々の層は、例えばイオン注入によってドープされてもよく、または付着中にその場でドープされてもよい。真性半導体材料は、ドーパントをまったく使用しない材料である。本明細書で使用する「p型」とは、価電子の欠乏を生じさせる、真性半導体への不純物の添加を指す。シリコン含有基板では、p型ドーパント、すなわち不純物の例には、ボロン、アルミニウム、ガリウムおよびインジウムが含まれるが、これらには限定されない。本明細書使用する「n型」とは、真性半導体に自由電子を供給する不純物の添加を指す。シリコン含有基板では、n型ドーパント、すなわち不純物の例には、アンチモン、ヒ素、およびリンが含まれるが、これらには限定されない。III-V族化合物半導体材料を使用する場合、II族からの原子が、III族原子の場所を占有する際にアクセプタ、すなわちp型として機能し、一方、VI族の原子が、V族の原子を置換する際にドナー、すなわちn型として機能する。シリコンなどのIV族のドーパント原子は、それぞれIII族原子とV族原子のいずれの原子の場所を占有するかに応じて、アクセプタまたはドナーとして機能することができる特性を有する。
【0022】
基板202上に高濃度ドープn型半導体層204が形成される。高濃度ドープn型半導体層204は、例えばガリウム・ヒ素で形成することができ、約5×1018cm-3のドーパント濃度を有し得ることが特に企図される。高濃度ドープn型半導体層204の上に低ドーパント濃度のn型半導体層206が形成され、約1×1018cm-3のドーパント濃度のリン化インジウム・ガリウムからなる。低濃度n型層206は、約200nmの例示の厚さを有する。
【0023】
次に、n型層204および206の上に1組の真性層が形成される。第1の真性層208は、非ドープのリン化インジウム・ガリウムからなり、約50nmの厚さを有する。第2の真性層210は、非ドープのインジウム・ガリウム・ヒ素からなる。第3の真性層212は、非ドープのリン化インジウム・ガリウムからなり、約50nmの厚さを有する。
【0024】
次に、真性層208、210および212の上に1組のp型層が形成される。第3の真性層212の上に第1のp型層214が形成され、約1×1018cm-3のドーパント濃度でp型ドープされたリン化インジウム・ガリウムからなる。第1のp型層は、約200nmの厚さを有する。第1のp型層214の上に第2の高濃度ドープp型層216が形成され、約5×1018cm-3のドーパント濃度のp型ドープ・ガリウムヒ素からなる。第2のp型層216は、約30nmの厚さを有し、LED104の上部電気接点として機能する。
【0025】
このLED構造は、特に低出力、高効率の光源を提供する。具体的には、このLEDは、約1μAと約1mAの間の範囲の最大効率をもたらすことが測定されている。具体的には、図の光源104は、この電流範囲で約0.9と1の間の外部量子効率を示す。外部量子効率は、デバイスを通過する電子の数に対するLEDから放出される光子の数の比を表し、デバイスが入来電荷をどれだけ効率的に放出光子に変換するかを実質的に表し、値1が完璧な効率を示す。この優れた効率の結果、本実施形態の光源104が生じさせる周囲組織の温度変化は、従来のプローブが生じさせる温度変化の約100分の1である。
【0026】
次に図3を参照すると、光源104の構造の別の実施形態が示されている。この構造は、低注入電流を取り込み、青色、黄色または緑色波長(すなわち、電磁スペクトルの青色、黄色または緑色部分)を出力する、生体適合性の高効率LEDのために特に企図されている。上記のように、例えばCVD、PVD、ALD、またはGCIB付着を含む、任意の適切な付着プロセスによって光源104の層を順次に付着させることができる。図3に従って形成された光源104は、図2に示す光源によって得られる量子効率とほぼ同等の高い量子効率を有する。
【0027】
基板302が、例えば窒化ガリウムまたはサファイア(例えば酸化アルミニウム)材料で形成される。基板302上に高濃度n型ドープ緩衝層304が形成され、例えば約20nmと約1,000nmの間の厚さの窒化ガリウムを含み得る。高濃度n型ドープ緩衝層304は、デバイスの下部電気接点として機能することができる。次に、緩衝層304上に、高濃度ドープ緩衝層304で使用されているよりも低濃度のドーパント濃度を有し、約100nmと約1,000nmの間の厚さを有するn型半導体層306が形成される。なお、窒化ガリウムなどのIII-V族半導体材料は、約1・1018cm-3から約1・1020cm-3のオーダーのドーパント濃度でシリコンをドーパントとして使用することができることを理解されたい。「高濃度ドープ」層は、より多数の自由電荷担体を有するため、より高い導電率を有する。シリコンの代わりに任意の他の適切な従来のドーパント材料を使用してもよい。
【0028】
次に、n型層上に1組の真性層が形成される。約20nmと約100nmの間の厚さの真性窒化ガリウムで障壁層308が形成されてもよい。次に、障壁層308の上に窒化インジウム・ガリウム(InGa(1-x)N、ただしx=0.10~0.50)で厚さ約2nmから約10nmの井戸層310が形成される。井戸層310上に、真性窒化ガリウムで約20nmから約100nmの厚さの第2の障壁層312が形成される。次に、障壁層312上に、約100nmと約1,000nmの間の厚さのp型層314が、例えば窒化ガリウムで形成される。上部p型層314は、デバイスの上部電気接点の役割を果たすことができる。p型ドープ層を形成するために任意の適切な従来のドーパント材料を使用してもよい。
【0029】
別の実施形態では、赤色または赤外波長(すなわち、電磁スペクトルの赤色または赤外部分)を出力する低出力LEDを作製するために異なる材料を使用した図3の構造を使用することができる。このような実施形態では、基板302がゲルマニウムで形成されてもよい。緩衝層304は、高濃度ドープn型インジウム・ガリウム・リン(In0.49Ga0.51P)で形成されてよく、より低いドーパント濃度を有する低濃度ドープn型半導体層306がIn0.49Ga0.51Pで形成されてもよい。第1の真性障壁層308と第2の真性障壁層312とを同様にIn0.49Ga0.51Pで形成することができ、一方、わずかに異なる組成を有するインジウム・ガリウム・リン(例えば、InGa(1-x)P、ただしx=0.50~0.60)で井戸層310が形成されてもよい。次に、In0.49Ga0.51Pで高濃度ドープp型半導体層314を形成してもよい。
【0030】
光源104のこの実施形態は、生体適合性物質(例えば、窒化ガリウムまたはインジウム・ガリウム・リン)を使用し、生体有害物質(例えばヒ素)を避ける。100μmの神経細胞を活性化するのに必要な出力パワーは、約10mW/mmである。このパワー・レベルでは、図3の構造によって実現される光源104は従来のLEDの約10倍から約100倍、効率が高く、それによって近傍組織の加熱を大幅に低減する。具体的には、従来のLEDによって生じる温度上昇は約2.2℃から約4.1℃であるのに対し、本実施形態によって生じる温度上昇は100分の1(例えば約0.022℃から約0.041℃)である。
【0031】
本発明の態様についてある例示のアーキテクチャを用いて説明するが、本発明の態様の範囲内で他のアーキテクチャ、構造、基板材料およびプロセス特徴、および工程に異ならせ得ることを理解されたい。
【0032】
また、層、領域、または基板などの要素が別の要素「上」または「の上」にあるという場合、その要素はその別の要素の直接上にあるかまたは介在要素も存在し得ることはわかるであろう。それに対して、ある要素が別の要素の「直接上」または「の直接上」にあるという場合、介在要素は存在しない。また、ある要素が別の要素に「接続される」または「結合される」という場合、その要素はその別の要素に直接接続または結合されているか、または介在要素が存在し得ることはわかるであろう。それに対して、ある要素が別の要素に「直接接続される」または「直接結合される」という場合、介在要素は存在しない。
【0033】
本実施形態は、グラフィカル・コンピュータ・プログラミング言語で作成可能であって(ディスク、テープ、物理ハード・ドライブ、またはストレージ・アクセス・ネットワークにおけるものなどの仮想ハード・ドライブなどの)コンピュータ記憶媒体に記憶可能な、集積回路チップの設計を含み得る。設計者がチップ、またはチップを製作するために使用されるフォトリソグラフィ・マスクを製作しない場合、設計者は結果の設計を物理的手段によって(例えば設計を記憶した記憶媒体の複製を提供することによって)または電子的に(例えばインターネットを介して)、直接または間接的にそのような実体に送ることができる。記憶された設計は次に、典型的には、ウエハ上に形成される対象チップ設計の複数の複製を含む、フォトリソグラフィ・マスクの製作のために適切な形式(例えばGDSII)に変換される。フォトリソグラフィ・マスクは、エッチングまたはその他の方法で加工されるウエハ(またはその上の層あるいはその両方)の領域を画定するために使用される。
【0034】
本明細書に記載の方法は、集積回路チップの製作で使用することができる。結果の集積回路チップは、製作者によってロー・ウエハの形態で(すなわち、複数のパッケージ化されていないチップを有する単一ウエハとして)、ベア・ダイとして、またはパッケージ化された形態で、配布することができる。後者の場合、チップは単一チップ・パッケージ(マザーボードまたはその他のより上位のキャリアに取り付けられたリード線を備えたプラスチック・キャリアなど)に、またはマルチチップ・パッケージ(表面相互接続配線または埋め込み相互接続配線のいずれかまたは両方を有するセラミック・キャリアなど)に実装される。いずれの場合も、チップは次に、(a)マザーボードなどの中間製品、または(b)最終製品のいずれかの一部として、他のチップ、個別回路素子、またはその他の信号処理デバイスあるいはこれらの組み合わせとともに集積される。最終製品は、玩具およびその他のローエンド用途から、ディスプレイ、キーボードまたはその他の入力デバイスおよび中央処理装置を有する高性能コンピュータ製品までにわたる、集積回路チップを含む任意の製品とすることができる。
【0035】
材料化合物については、元素の列挙、例えばSiGeを用いて記載することも理解されたい。これらの化合物は、化合物中に異なる割合の元素を含み、例えばSiGeはSiGe1-xを含み、ここでxは1以下などである。また、その化合物に他の元素が含まれてもよく、その場合でも提示の原理に従って機能することができる。追加の元素を含む化合物を本明細書では合金と呼ぶ。
【0036】
本明細書で「一実施形態」または「ある実施形態」およびこれらのその他の変形に言及する場合、その実施形態に関連して記載されている特定の特徴、構造、特性などが少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な箇所で記載されている「一実施形態では」または「ある実施形態では」という語句およびこれらの変形の記載は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指しているとは限らない。
【0037】
例えば、「A/B」、「AまたはBあるいはその両方」および「AとBのうちの少なくとも1つ」という場合における「/」、「または~あるいはその両方」、および「~のうちの少なくとも1つの」のうちのいずれかの使用は、最初に記載されている選択肢(A)のみの選択、または2番目に記載されている選択肢(B)のみの選択、または両方の選択肢(AとB)の選択を包含することが意図されていることを理解されたい。別の例として、「A、BまたはCあるいはこれらの組み合わせ」および「AとBとCとのうちの少なくとも1つ」という場合、そのような表現は、最初に記載されている選択肢(A)のみの選択、または2番目に記載されている選択肢(B)のみの選択、または3番目に記載されている選択肢(C)のみの選択、または最初と2番目に記載されている選択肢(AとB)のみの選択、または最初と3番目に記載されている選択肢(AとC)のみの選択、または2番目と3番目に記載されている選択肢(BとC)のみの選択、または3つの選択肢すべて(AとBとC)の選択を包含することが意図されている。これは、当業者および関連業者には容易にわかるように、記載されている項目の数だけ拡大適用することができる。
【0038】
本明細書で使用されている用語は特定の実施形態について説明することを目的としているに過ぎず、例示の実施形態を限定することを意図していない。本明細書で使用する単数形の「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに他の解釈を示していない限り複数形も含むことが意図されている。また、用語「備える(comprises)」、「備えている(comprising)」、「含む(includes)」、または「含んでいる(including)」あるいはこれらの組み合わせが本明細書で使用されている場合、記載されている特徴、整数、工程、操作、要素、または構成要素あるいはこれらの組み合わせの存在を規定するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、工程、操作、要素、または構成要素あるいはこれらのグループの存在または追加を排除しないことはわかるであろう。
【0039】
「下」、「下方」、「下部」、「上」、「上部」などの空間的に相対的な用語は、本明細書では、図に示されているような1つの要素または特徴の別の要素または特徴に対する関係を説明するための説明を簡単にするために使用されていることがある。これらの空間的に相対的な用語は、図に図示されている向きに加えて、使用中または動作中のデバイスの異なる向きも包含することが意図されていることはわかるであろう。例えば、図中のデバイスがひっくり返された場合、他の要素または特徴の「下」または「下方」にあるとして記載されている要素は、その他の要素または特徴の「上」の向きとなる。したがって、「下」という用語は、上と下の向きの両方を包含し得る。デバイスは、他の向き(90℃回転またはその他の向き)とすることも可能であり、本明細書で使用されている空間的に相対的な記述語はそれに応じて解釈することができる。さらに、ある層が2つの層の「間」にあるという場合、その層はその2つの層の間にある唯一の層であってよく、または1つまたは複数の介在層も存在し得ることもわかるであろう。
【0040】
本明細書では、様々な要素について説明するために第1、第2などの用語を使用することがあるが、これらの要素はこれらの用語によって限定されるべきではないことはわかるであろう。これらの用語は、1つの要素を別の要素から区別するためにのみ使用されているに過ぎない。したがって、提示の概念の範囲から逸脱することなく、以下で説明されている第1の要素を第2の要素と称することも可能である。
【0041】
次に図4を参照すると、プローブ制御システム400が示されている。プローブ制御システム400は、ハードウェア・プロセッサとメモリ404とを含む。プローブ・インターフェース406が、プローブ制御システム400とプローブ100との間の物理通信インターフェースを提供する。電源408が、プローブ・インターフェース406を介してプローブ100に電力を供給し、バッテリまたはその他のDC電源の形態をとることができ、あるいは、AC電力をプローブ100に適した形態に変換するための適合する回路を含んでもよい。プローブ・インターフェース406は、電力と制御信号とを供給する、プローブ100への有線接続を有することができることが特に企図されるが、プローブ100がローカル電源を有する実施形態では無線インターフェースを使用することができることも企図される。他の実施形態では、プローブ制御システム400は、プローブ100の本体に直接組み込まれていてもよい。
【0042】
プローブ制御モジュール410が、ある実施形態では、メモリ404に記憶され、プロセッサ402によって実行される、ソフトウェアの形態で実装される。他の実施形態では、プローブ制御モジュール410は、例えば特定用途向け集積チップまたはフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイの形態の、1つまたは複数の個別ハードウェア構成要素として実装されてもよい。プローブ制御モジュール410は、プローブ・インターフェース406を介してプローブ100にコマンド信号を送信し、特定の光源104を起動および作動停止するためと、その光出力を制御するためとに使用することができる。プローブ制御モジュール410は、これらのコマンドを人間の操作者の指示で出すことができ、あるいはそのようなコマンドを自動的に出すこともできることを理解されたい。
【0043】
次に図5を参照すると、送信側デバイス100または受信側デバイス120を表し得る例示の処理システム500が示されている。処理システム500は、システム・バス502を介して他の構成要素に動作可能に結合された少なくとも1つのプロセッサ(CPU)504を含む。キャッシュ506と、読み取り専用メモリ(ROM)508と、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)510と、入力/出力(I/O)アダプタ520と、音声アダプタ530と、ネットワーク・アダプタ540と、ユーザ・インターフェース・アダプタ550と、ディスプレイ・アダプタ560とが、システム・バス502に動作可能に結合されている。
【0044】
第1のストレージ・デバイス522と第2のストレージ・デバイス524が、I/Oアダプタ520を介してシステム・バス502に動作可能に結合されている。ストレージ・デバイス522および524は、ディスク・ストレージ・デバイス(例えば磁気または光ディスク・ストレージ・デバイス)、ソリッド・ステート磁気デバイスなどのいずれであってもよい。ストレージ・デバイス522と524は、同じ種類のストレージ・デバイスであっても異なる種類のストレージ・デバイスであってもよい。
【0045】
スピーカ532が、音声アダプタ530によってシステム・バス502に動作可能に結合されている。送受信機542が、ネットワーク・アダプタ540によってシステム・バス502に動作可能に接続されている。ディスプレイ・デバイス562が、ディスプレイ・アダプタ560によってシステム・バス502に動作可能に結合されている。
【0046】
第1のユーザ・入力デバイス552と、第2のユーザ入力デバイス554と、第3のユーザ入力デバイス556とが、ユーザ・インターフェース・アダプタ550によってシステム・バス502に動作可能に結合されている。ユーザ入力デバイス552、554、および556は、キーボード、マウス、キーパッド、撮像装置、動作検知装置、マイクロフォン、これらのデバイスのうちの少なくとも2つの機能を組み込んだデバイスなどのうちのいずれかとすることができる。当然ながら、提示の原理の範囲を維持しながら他の種類の入力デバイスも使用可能である。ユーザ入力デバイス552、554および556は、同じ種類のユーザ入力デバイスまたは異なる種類のユーザ入力デバイスとすることができる。ユーザ入力デバイス552、554および556は、システム500との間で情報を入出力するために使用される。
【0047】
当然ながら、当業者には容易に企図されるように、処理システム500は、他の要素(図示せず)も含むことができ、また、特定の要素を省くこともできる。例えば、当業者には容易にわかるように、処理システム500の特定の実施態様に応じて、様々な他の入力デバイスまたは出力デバイスあるいはその両方を処理システム500に含めることができる。例えば、様々な種類の無線または有線あるいはその両方の、入力デバイスまたは出力デバイスあるいはその両方を使用することができる。また、当業者には容易にわかるように、追加のプロセッサ、コントローラ、メモリなども、様々な構成で使用することができる。本明細書で示されている提示の原理の教示があれば、処理システム500の上記およびその他の様々な変形が当業者によって容易に企図可能である。
【0048】
以上、多波長活性化のために神経プローブに組み込まれる多光源の好ましい実施形態(例示であることを意図しており、限定的であることを意図していない)について説明したが、上記の教示に照らして当業者は変更および変形を加えることができることに留意されたい。したがって、開示した特定の実施形態には、添付の特許請求の範囲に概要を示す本発明の範囲内の変更を加えることができることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5