(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】センサが使用可能な創傷監視および治療装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20240604BHJP
A61M 27/00 20060101ALI20240604BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
A61B5/00 102A
A61B5/00 M
A61M27/00
G01N33/50 Q
(21)【出願番号】P 2018556978
(86)(22)【出願日】2017-05-12
(86)【国際出願番号】 IB2017000693
(87)【国際公開番号】W WO2017195038
(87)【国際公開日】2017-11-16
【審査請求日】2020-05-01
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-18
(32)【優先日】2016-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391018787
【氏名又は名称】スミス アンド ネフュー ピーエルシー
【氏名又は名称原語表記】SMITH & NEPHEW PUBLIC LIMITED COMPANY
【住所又は居所原語表記】Building 5,Croxley Park,Hatters Lane,Watford,Hertfordshire WD18 8YE,United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルニ・ラチンドラ・ブラウンヒル
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス・ジョン・コーリアー
(72)【発明者】
【氏名】ジェームス・クリストファー・フレイク
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクトリア・ハモンド
(72)【発明者】
【氏名】エドワード・ヤーベリー・ハートウェル
(72)【発明者】
【氏名】アラン・ケネス・フレイザー・グルージョン・ハント
(72)【発明者】
【氏名】ゴードン・ジョン・レザー
(72)【発明者】
【氏名】サイモン・マーク・ノーマン
(72)【発明者】
【氏名】シャーロット・アーウィン
【合議体】
【審判長】加々美 一恵
【審判官】渡▲辺▼ 純也
【審判官】石井 哲
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-527112(JP,A)
【文献】特表2011-528958(JP,A)
【文献】米国特許第5904659(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0276454(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0027509(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0140703(US,A1)
【文献】特表2009-539536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00 - 5/01
A61F 2/82
G01N33/48 -33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷監視装置であって、
創傷または前記創傷を囲む皮膚のうちの一つ以上と接触して位置するように構成される、創傷被覆材を備え、前記創傷被覆材は、複数のセンサを支持する、少なくとも一つの実質的に可撓性のある基材を備え、前記少なくとも一つの実質的に可撓性のある基材は、実質的に可撓性のあるプリント回路、または実質的に可撓性のある非導電メッシュのうちの少なくとも一つを備え、前記複数のセンサのうちの第1センサは、前記基材上に位置し、前記創傷を囲む前記皮膚の測定を得るように構成され、前記複数のセンサのうちの第2センサは、前記基材上に位置し、前記創傷の測定を得るように構成され
、
前記装置が、前記創傷被覆材とは別に、前記創傷の上に位置するように構成される、創傷パッキング層およびドレープをさらに備える、装置。
【請求項2】
前記基材は、前記創傷の面積
の少なくとも一部
を超えて延在する
面積を有しており、前記創傷を囲む皮膚の上に少なくとも一部位置するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記創傷被覆材は、創傷接触層を備える、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記実質的に可撓性のあるプリント回路は、可撓性ポリマーを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記複数のセンサのうちの少なくとも一部は、互いに電気的に接続され、前記複数のセンサは、コントローラおよび電源と電気的に接続されるように構成される、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記コントローラは、前記複数のセンサからデータを受信し、前記創傷と関連する一つ以上の状態を判定するために、前記受信したデータを処理するように構成されるコンピュータデバイスに、前記受信したデータを伝達するように構成される、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記コントローラまたは前記コンピュータデバイスのうちの前記少なくとも一つは、前記創傷と関連する前記一つ以上の状態に基づき、前記創傷が治癒しつつあると示すように構成される、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記複数のセンサは、一つ以上の温度センサ、伝導度センサ、マルチスペクトル光学測定センサ、pHセンサ、圧力センサ、比色センサ、光学センサ、紫外線(UV)センサまたは赤外線(IR)センサを備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記複数のセンサは、前記創傷を囲む前記皮膚の領域の超音波スイープを実施するように構成される、皮膚弾力性センサを備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記創傷被覆材は、創傷接触層を備え、前記基材は、前記創傷接触層上または
前記創傷接触層の内部に位置する、請求項1~9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記創傷接触層の上に位置する吸収層と、前記創傷接触層の上に位置する裏当て層とをさらに備え、前記創傷接触層は、前記裏当て層に封止される、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記裏当て層上にポートをさらに備え、前記ポートは、前記創傷被覆材を陰圧の源に接続するように構成される、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記創傷被覆材は、陰圧を使用することなく、前記創傷を治療するように構成される、多層創傷被覆材の中に含まれる、請求項1~12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記創傷被覆材と流体連通するように構成され、さらに陰圧を前記創傷に印加するように構成される、陰圧源をさらに備える、請求項1~1
2のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記第1センサおよび前記第2センサはアレイ状に配列された複数のセンサの一部として構成されている、請求項1~
14のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載する実施形態は、例えば、陰圧創傷療法と組み合わせて被覆材を使用する、創傷の監視または治療のための装置、システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
大きすぎて自然には閉じられない、もしくはそうでなければ、創傷の部位への陰圧の印加では治癒しない、開放創または慢性創傷の治療は、当該技術分野ではよく知られている。現在当該技術分野で知られている陰圧創傷療法(NPWT)システムは、創傷の上に流体に対して不透過性または半透過性のカバーを設置することと、創傷を囲む患者の組織に対してカバーを封止する、様々な手段を使用することと、陰圧をカバーの真下に作り出し維持するような手法で、陰圧の源(真空ポンプなど)をカバーに接続することとを伴う。そのような陰圧は、有害なサイトカインまたは細菌を包含する場合がある、過度の流体を除去しながら同時に、創傷部位で肉芽組織の形成を容易にし、平常の体内炎症プロセスを支援することによって、創傷の治癒を促進すると考えられる。しかしながら、治療の便益を完全に実現するには、NPWTのさらなる改良が必要とされる。
【0003】
NPWTシステムに役立つ、多くの異なるタイプの創傷被覆材が知られている。これら異なるタイプの創傷被覆材は、例えば、ガーゼ、パッド、発泡パッドまたは多層創傷被覆材といった、多くの異なるタイプの材料および層を含む。多層創傷被覆材の一例は、NPWTで創傷を治療する、キャニスタなしのシステムを提供するように、裏当て層の下方に創傷接触層および超吸収層を含む、Smith&Nephewから市販されているPICO被覆材である。創傷被覆材は、被覆材から流体を汲み上げるか、またはポンプから創傷被覆材へ陰圧を伝達するように使用されてもよい、長いチューブへの接続を提供する、吸引ポートに封止されてもよい。加えて、Smith&Nephewから市販されているRENASYS-F、RENASYS-G、RENASYS-ABおよびRENASYS-F/ABも、NPWT創傷被覆材およびシステムのさらなる例である。多層創傷被覆材の別の例は、陰圧を使用せずに創傷を治療するのに使用される、湿潤創傷環境被覆材を含む、Smith&Nephewから市販されているALLEVYN Life被覆材である。
【0004】
しかしながら、陰圧創傷療法または他の創傷療法において使用する、従来技術の被覆材によって、被覆材の下方にある創傷部位はほとんど可視化されず、またはその状態に関する情報はほとんど提供されない。このため、臨床医が創傷の治癒および状態を視診することを可能にするために、創傷が所望するレベルまで治癒する前に、または吸収性被覆材の場合は、被覆材の全吸収容量に達する前に、時期を早めて被覆材を交換する必要があり得る。現行の被覆材には、創傷の状態に関する情報を提供する方法または特徴が、限定されているまたは十分でないものがある。
【発明の概要】
【0005】
一部の実施形態では、創傷監視装置は、創傷と接触して位置するように構成され、一つ以上のセンサを支持する、少なくとも一つの実質的に可撓性のある基材を含む、創傷被覆材を含む。
【0006】
前段落の装置は、次の特徴のうちの一つ以上を含み得る。少なくとも一つの実質的に可撓性のある基材は、可撓性ポリマーを含んでもよい、実質的に可撓性のあるプリント回路を含み得る。少なくとも一つの実質的に可撓性のある基材は、実質的に可撓性のある非導電メッシュを含み得る。一つ以上のセンサは、互いに電気的に接続される、複数のセンサを含み得る。複数のセンサは、コントローラおよび電源と電気的に接続され得る。一つ以上のセンサは、一つ以上の温度センサ、伝導度センサ、マルチスペクトル光学測定センサ、pHセンサ、圧力センサ、比色センサ、光学センサ、紫外線(UV)センサまたは赤外線(IR)センサを含み得る。
【0007】
前段落のいずれかの装置は、次の特徴のうちの一つ以上を含み得る。装置は、一つ以上のセンサと電気的に連通するコントローラを含み、コントロールユニットは、一つ以上のセンサからデータを受信し、創傷と関連する一つ以上の状態を判定するよう、一つ以上のセンサにより収集されるデータを処理するために、ホストソフトウェアを使用するように構成される処理デバイスへ、データを伝えるように構成され得る。コントローラまたは処理デバイスのうちの少なくとも一つは、創傷と関連する一つ以上の状態に基づき、創傷が治癒しつつあると示すように構成され得る。コントローラは、一つ以上のセンサまたは処理デバイスのうちの少なくとも一つと無線通信するように構成され得る。コントローラは、一つ以上のセンサまたは処理デバイスのうちの少なくとも一つと、電気配線によって電気的に連通するように構成され得る。処理デバイスは、パーソナルコンピュータ(PC)、タブレット形式のコンピュータデバイス、スマートフォンまたはカスタムコンピュータデバイスを含み得る。一つ以上のセンサにより収集されるデータは、クラウドへ伝えられるように構成され得る。
【0008】
前段落のいずれかの装置は、次の特徴のうちの一つ以上を含み得る。創傷被覆材は創傷接触層を含むことができ、基材は創傷接触層上または中に位置し得る。創傷接触層は、第1創傷接触層および第2創傷接触層を含むことができ、基材は、第1および第2創傷接触層の間に挟まれる。一つ以上のセンサのうちの少なくとも一つは、創傷と直接接触するように構成することができ、一つ以上のセンサのうちの少なくとも一つは、第1創傷接触層と第2創傷接触層との間で被包され得る。一つ以上のセンサは、創傷と直接接触するように構成される、少なくとも一つの第1センサと、創傷に接触しないように構成される、少なくとも一つの第2センサとを含み得る。装置は、創傷接触層の上に位置する吸収層と、創傷接触層の上に位置する裏当て層とを含むことができ、創傷接触層は裏当て層に封止される。装置は裏当て層上にポートを含むことができ、ポートは、創傷被覆材を陰圧の源に接続するように構成される。
【0009】
前段落のいずれかの装置は、次の特徴のうちの一つ以上を含み得る。創傷被覆材は、陰圧を使用せずに創傷を治療するように構成される、多層創傷被覆材の中に含まれ得る。装置は、創傷被覆材とは別に、創傷の上に位置するように構成される、創傷パッキング層およびドレープを含み得る。装置は、創傷被覆材と流体連通するように構成され、さらに陰圧を創傷に印加するように構成される、陰圧源を含み得る。
【0010】
一部の実施形態では、創傷監視装置は、創傷または創傷を囲む皮膚のうちの一つ以上と接触して位置するように構成される、創傷被覆材を含み、創傷被覆材は、複数のセンサを支持する、少なくとも一つの実質的に可撓性のある基材を含む。複数のセンサのうちの第1センサは、基材上に位置し、創傷を囲む皮膚の測定を得るように構成され得る。
【0011】
前段落のいずれかの装置は、次の特徴のうちの一つ以上を含み得る。複数のセンサのうちの第2センサは、基材上に位置し、創傷の測定を得るように構成され得る。基材は、創傷の面積を少なくとも一部超えて延在するサイズであり、創傷を囲む皮膚の上に少なくとも一部位置するように構成され得る。創傷被覆材は、創傷接触層を含み得る。少なくとも一つの実質的に可撓性のある基材は、実質的に可撓性のあるプリント回路、または実質的に可撓性のある非導電メッシュのうちの少なくとも一つを含み得る。実質的に可撓性のあるプリント回路は、可撓性ポリマーを含み得る。複数のセンサのうちの少なくとも一部は、互いに電気的に接続され得る。
【0012】
前段落のいずれかの装置は、次の特徴のうちの一つ以上を含み得る。複数のセンサは、コントローラおよび電源と電気的に接続され得る。コントローラは、複数のセンサからデータを受信し、創傷と関連する一つ以上の状態を判定するために、受信したデータを処理するように構成されるコンピュータデバイスに、受信したデータを伝えるように構成され得る。コントローラまたは処理デバイスのうちの少なくとも一つは、創傷と関連する一つ以上の状態に基づき、創傷が治癒しつつあると示すように構成され得る。複数のセンサは、一つ以上の温度センサ、伝導度センサ、マルチスペクトル光学測定センサ、pHセンサ、圧力センサ、比色センサ、光学センサ、紫外線(UV)センサまたは赤外線(IR)センサを含み得る。複数のセンサは、創傷を囲む皮膚の領域の超音波スイープを実施するように構成される、皮膚弾力性センサを含み得る。
【0013】
一部の実装では、前段落のいずれかの装置を操作または使用する方法を提供する。
【0014】
一部の実施形態では、創傷監視装置を操作する方法は、創傷と接触して位置するように構成される創傷被覆材で、創傷または創傷を囲む皮膚のうちの少なくとも一つを監視することを含む。創傷被覆材は、一つ以上のセンサを支持する、少なくとも一つの実質的に可撓性のある基材を含み得る。
【0015】
前段落の方法は、次の特徴のうちの一つ以上を含み得る。方法は、基材上に位置する第1センサで、創傷を囲む皮膚を監視することと、基材上に位置する第2センサで、創傷を監視することとを含み得る。一つ以上のセンサは、一つ以上の温度センサ、伝導度センサ、マルチスペクトル光学測定センサ、pHセンサ、圧力センサ、比色センサ、光学センサ、紫外線(UV)センサまたは赤外線(IR)センサを含み得る。基材は、創傷の面積を少なくとも一部超えて延在するサイズであり、創傷を囲む皮膚の上に少なくとも一部位置するように構成され得る。少なくとも一つの実質的に可撓性のある基材は、実質的に可撓性のあるプリント回路、または実質的に可撓性のある非導電メッシュのうちの少なくとも一つを含み得る。実質的に可撓性のあるプリント回路は、可撓性ポリマーを含み得る。一つ以上のセンサのうちの少なくとも一部は、互いに電気的に接続され得る。
【0016】
前段落の方法は、次の特徴のうちの一つ以上を含み得る。一つ以上のセンサは、コントローラおよび電源と電気的に接続され得る。方法は、コントローラによって、一つ以上のセンサからデータを受信することと、創傷と関連する一つ以上の状態を判定するために、受信したデータを処理するように構成されるコンピュータデバイスに、受信したデータを伝達することとを含み得る。方法は、創傷と関連する一つ以上の状態に基づき、創傷が治癒しつつあると示すことを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本開示の実施形態について、添付の図面を参照して、例としてのみ以下に記載する。
【0018】
【
図1A】
図1Aは、一部の実施形態に従い、創傷滲出液を吸収し貯蔵できる、可撓性流体コネクタおよび創傷被覆材を用いる、陰圧創傷治療システムを示す。
【
図1B】
図1Bは、一部の実施形態に従い、創傷滲出液を吸収し貯蔵できる、可撓性流体コネクタおよび創傷被覆材を用いる、陰圧創傷治療システムを示す。
【
図2A】
図2Aは、一部の実施形態に従い、創傷滲出液を吸収し貯蔵できる、可撓性流体コネクタおよび創傷被覆材を用いる、陰圧創傷治療システムを示す。
【
図2B】
図2Bは、一部の実施形態に従い、創傷被覆材に接続される、流体コネクタの断面を示す。
【
図2C】
図2Cは、一部の実施形態に従う、陰圧創傷療法システムを示す。
【
図2D】
図2Dは、一部の実施形態に従い、陰圧なしで使用される、創傷滲出液を吸収し貯蔵できる創傷被覆材を用いる、創傷治療システムを示す。
【
図3A】
図3Aは、一部の実施形態に従い、創傷被覆材構成要素に組み込まれるセンサの設置を示す、センサアレイを示す。
【
図3B】
図3Bは、一部の実施形態に従い、センサアレイ部分、尾部分およびコネクタパッド端部分を含む、可撓性センサアレイを示す。
【
図3C】
図3Cは、4個の異なるセンサアレイ形状を伴う、可撓性プリント回路の実施形態を示す。
【
図3D】
図3Dは、4個の異なるセンサアレイ形状を伴う、可撓性プリント回路の実施形態を示す。
【
図3E】
図3Eは、4個の異なるセンサアレイ形状を伴う、可撓性プリント回路の実施形態を示す。
【
図3F】
図3Fは、4個の異なるセンサアレイ形状を伴う、可撓性プリント回路の実施形態を示す。
【
図3G】
図3Gは、
図3Dに示すセンサアレイ設計のセンサアレイ部分301の実施形態を、より詳細に示す。
【
図3H】
図3Hは、一部の実施形態に従い、穿孔創傷接触層に組み込まれる可撓性センサアレイを示す。
【
図3I】
図3Iは、一部の実施形態に従う、コントロールモジュールを示す。
【
図3J】
図3Jは、一部の実施形態に従い、組織上で使用される光学センサの結果、ならびに組織中への光の散乱および減弱を示す。
図3Jは、組織中への光の強度損失を示す。
【
図3K】3Kは、一部の実施形態に従い、組織上で使用される光学センサの結果、ならびに組織中への光の散乱および減弱を示す。
図3Kは、光検出器の応答を示す。
【
図3L】
図3Lは、一部の実施形態に従い、未加工形式の、SpO2センサを使用して行われた測定を示す。
【
図3M】
図3Mは、一部の実施形態に従い、未加工形式の、SpO2センサを使用して行われた測定を示す。
【
図3N】
図3Nは、一部の実施形態に従い、孔と、中心孔から放射状に延在する曲線スリットとを含む、創傷接触層を示す。
【
図3O】
図3Oは、一部の実施形態に従い、孔と、創傷接触層の円周から中心へ延在するスリットで部分円を形成する曲線スリットとを含む創傷接触層を示す。
【
図3P】
図3Pは、一部の実施形態に従い、孔と、中心孔から放射状に延在するスリットとを含む、創傷接触層を示す。
【
図3Q】
図3Qは、一部の実施形態に従う、光検出器のスペクトル応答を示す。
【
図4A】
図4Aは、一部の実施形態に従う、患者への創傷治療システムの使用および適用を示す。
【
図4B】
図4Bは、一部の実施形態に従う、患者への創傷治療システムの使用および適用を示す。
【
図4C】
図4Cは、一部の実施形態に従う、患者への創傷治療システムの使用および適用を示す。
【
図4D】
図4Dは、一部の実施形態に従う、患者への創傷治療システムの使用および適用を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書に開示する実施形態は、例えば、陰圧の源、ならびに創傷被覆材構成要素および装置を含む、減圧して、もしくは減圧せずに創傷を監視または治療する装置および方法に関する。創傷オーバーレイおよびパッキング材料、または、存在する場合には内層を備える、装置および構成要素は、時に総称して被覆材と呼ばれる。一部の実施形態では、創傷被覆材は、減圧せずに利用されるように提供され得る。
【0020】
本明細書に開示する一部の実施形態は、人または動物の体に対する創傷療法に関する。そのため、本明細書における創傷へのいかなる言及も、人または動物の体上の創傷を指すことができ、本明細書における体へのいかなる言及も、人または動物の体を指し得る。本明細書で使用される用語「創傷」は、幅広い通常の意味を有するのに加えて、陰圧を使用して治療されてもよい、患者のいかなる体の一部を含む。創傷という用語は、幅広く解釈されるべきであり、皮膚が破れたり、切られたり、もしくは刺されたりするか、もしくは外傷により、患者の皮膚上に挫傷、もしくはいかなる他の表層状態もしくは他の状態、もしくは欠陥をもたらすか、またはそうでなければ、減圧治療から恩恵を受ける場合がある、開放および閉鎖創を網羅することは、理解されるべきである。それゆえ、創傷は、組織のいかなる損傷領域として広く定義され、流体は生み出されてもよく、または生み出されなくてもよい。そのような創傷の例は、手術、外傷、胸骨切開、筋膜切開もしくは他の状態のいずれかの結果である、腹部創、もしくは他の大きな創傷もしくは切開創傷、裂開創傷、急性創傷、慢性創傷、亜急性および裂開創傷、外傷性創傷、皮弁および皮膚移植、裂傷、擦過傷、挫傷、熱傷、糖尿病性潰瘍、褥瘡、ストーマ、手術創、外傷、動脈性および静脈性潰瘍、または同種のものを含むが、それらに限定されない。
【0021】
そのような創傷の治療は、陰圧創傷療法を使用して実施することができ、減圧または陰圧が、創傷の治癒を容易にして促進するように、創傷に印加され得る。本明細書に開示する通りの創傷被覆材および方法は、体の他の一部に適用されてもよく、創傷の監視、防止および治療に必ずしも限定されないことも、理解されるであろう。
【0022】
本開示の実施形態は、概して、局所陰圧(「TNP(topical negative pressure)」)療法システムで使用するように適用可能であることは理解されるであろう。手短に言えば、陰圧創傷療法は、組織の浮腫を減少させ、血流および顆粒組織形成を促し、過度の滲出液を除去することによって、「治癒が困難な」創傷の多くの形態を閉鎖および治癒するのを支援し、細菌負荷(および、それゆえ感染リスク)を低減してもよい。加えて、療法によって、創傷の不安を減らすことが可能になり、より早期の治癒に導く。TNP療法システムはまた、流体を除去し、閉鎖の並列された位置で組織を安定化するのに役立つことで、外科的に閉じられた創傷の治癒を支援してもよい。さらなるTNP療法の有益な使用は、過度の流体を除去することが重要で、組織の生存を保証するために、移植片が組織に近接近していることが必要な、移植片および皮弁に見られ得る。
【0023】
本明細書に使用する通り、-XmmHgなど、減圧または陰圧レベルは、760mmHg(または1atm、29.93inHg、101.325kPa、14.696psiなど)に相当し得る、平常の周囲気圧に対する圧力レベルを表す。一部の実施形態では、局所的な周囲気圧は基準点として使用され、そのような局所的な気圧は、必ずしも、例えば、760mmHgでなくてもよい。したがって、陰圧値-XmmHgは、例えば、760mmHgをXmmHg下回る、すなわち言い換えると、圧力(760-X)mmHgという絶対圧力を反映する。加えて、XmmHgよりも「低い」または「小さい」陰圧は、気圧により近い圧力に相当する(例えば、-40mmHgは-60mmHgよりも低い)。-XmmHgよりも「高い」または「大きい」陰圧は、気圧からより離れた圧力に相当する(例えば、-80mmHgは-60mmHgよりも高い)。
【0024】
本開示の一部実施形態に対する陰圧範囲は、およそ-80mmHg、または約-20mmHgと-200mmHg以上との間であり得る。これらの圧力は、760mmHgであり得る、平常の周囲気圧に対して相対的であることには留意されたい。それゆえ、-200mmHgは、実質的には約560mmHgであろう。一部の実施形態では、圧力範囲は、約-40mmHgと-150mmHgとの間であり得る。代替として、最高-75mmHg、最高-80mmHgまたは-80mmHgを超える圧力範囲が使用され得る。また、他の実施形態では、-75mmHgを下回る圧力範囲が使用され得る。代替として、およそ-100mmHgまたはさらに-150mmHgより上の圧力範囲が、陰圧装置により供給され得る。
【0025】
本明細書に記載する創傷閉鎖デバイスの一部実施形態では、創傷収縮の増加が、囲んでいる創傷組織における組織拡張の増加につながり得る。この影響は、場合により、創傷閉鎖デバイスの実施形態によって創傷に印加される引張力の増加と連動して、組織に印加される力を変化させること、例えば、時間と共に創傷に印加される陰圧を変化させることによって増大する場合がある。一部の実施形態では、例えば、正弦波、方形波を使用して、または一つ以上の患者の生理学的指標(心拍など)と同期して、時間と共に陰圧を変化させてもよい。前述に関するさらなる開示を見つけることができる、そのような適用の例には、2012年8月7日に発行された名称「Wound treatment apparatus and method」の米国特許第8,235,955号、および2010年7月13日に発行された名称「Wound cleansing apparatus with stress」の米国特許第7,753,894号を含む。これら両特許の開示は、参照することによりその全体が本明細書に援用される。
【0026】
本明細書に記載する創傷被覆材、創傷被覆材構成要素、創傷治療装置および方法の実施形態はまた、2013年5月22日に国際出願番号第PCT/IB2013/001469号で出願され、2013年11月28日に国際公開第2013/175306号2として公開された、名称「APPARATUSES AND METHODS FOR NEGATIVE PRESSURE WOUND THERAPY」、2015年1月30日に米国特許出願第14/418,908号で出願され、2015年7月9日に米国特許出願公開第2015/0190286号として公開された、名称「WOUND DRESSING AND METHOD OF TREATMENT」に記載されるものと組み合わせて、またはそれらに加えて使用されてもよく、それらの開示は、参照することによりその全体が本明細書に援用される。本明細書に記載する創傷被覆材、創傷被覆材構成要素、創傷治療装置および方法の実施形態はまた、2011年4月21日に米国特許出願第13/092,042号で出願され、米国特許第2011/0282309号として公開された、名称「WOUND DRESSING AND METHOD OF USE」、および2015年5月18日に米国特許出願第14/715,527号で出願され、2016年11月24日に米国特許出願公開第2016/0339158号として公開された、名称「FLUIDIC CONNECTOR FOR NEGATIVE PRESSURE WOUND THERAPY」に記載されるものと組み合わせて、またはそれらに加えて使用されてもよく、それらの各開示は、創傷被覆材の実施形態、創傷被覆材の構成要素および原理、ならびに創傷被覆材に使用される材料に関するさらなる詳細を含め、参照することによりその全体が本明細書に援用される。
【0027】
加えて、本明細書に記載するポンプまたは関連電子機器と組み合わせて、創傷被覆材を含むTNP創傷治療に関係する一部の実施形態はまた、2016年4月26日に国際出願第PCT/EP2016/059329号で出願され、2016年11月3日に国際公開第2016/174048号として公開された、名称「REDUCED PRESSURE APPARATUS AND METHODS」に記載されるものと組み合わせて、またはそれらに加えて使用されてもよい。
【0028】
NPWTシステムの概要
図1A~Bは、流体コネクタ110と連動して創傷被覆材100を用いる、陰圧創傷治療システム10の実施形態を示す。図中、流体コネクタ110は、近位端130および遠位端140を有するブリッジ120などの細長い導管と、ブリッジ120の遠位端140にアプリケータ180とを備えてもよい。任意の連結器160は、ブリッジ120の近位端130に配置され得る。キャップ170が、システムに提供されてもよい(一部の場合、図示する通り、連結器160に取り付けられ得る)。キャップ170は、近位端130から流体が漏出するのを妨げるときに有用であり得る。システム10は、ポンプまたは陰圧を供給できる陰圧ユニット150など、陰圧の源を含んでもよい。ポンプは、創傷滲出液、および創傷から除去されてもよい他の流体を貯蔵する、キャニスタまたは他の容器を備えてもよい。キャニスタまたは容器はまた、ポンプとは別に提供されてもよい。一部の実施形態では、
図1A~1Bに示すように、ポンプ150は、Smith&Nephewより販売される、PICO(商標)ポンプなど、キャニスタなしのポンプであり得る。ポンプ150は、管190を介して連結器160に接続してもよく、またはポンプ150は、連結器160に直接、もしくはブリッジ120に直接接続してもよい。使用中、被覆材100は、一部の場合、発泡体またはガーゼなどの創傷パッキング材料で埋められてもよい、好適に準備された創傷の上に設置される。流体コネクタ110のアプリケータ180は、被覆材100の隙間の上に設置され、被覆材100の最上表面に封止される、密封表面を有する。流体コネクタ110の被覆材100への接続の前、間、または後のいずれかに、ポンプ150は、管190を介して連結器160へ接続されるか、または連結器160もしくはブリッジ120へ直接接続される。その後ポンプが起動され、それによって陰圧を創傷に供給する。陰圧の印加は、所望するレベルの創傷治癒を達成するまで行われてもよい。
【0029】
創傷被覆材の概要
図2Aに示す通り、一部の実施形態では、流体コネクタ110は、以下にさらに詳細に記載するであろう通り、被覆材100と流体連通する拡大遠位端または頭部140を備え得る。一実施形態では、拡大遠位端は丸い形または円形を有する。頭部140は、図中、被覆材100の縁近くに位置するように示しているが、被覆材上のいずれの場所に位置してもよい。例えば、一部の実施形態は、被覆材100の縁または角上または近くではない、中心または中心から外れた場所に提供されてもよい。一部の実施形態では、被覆材10は、二つ以上の流体コネクタ110を備えてもよく、各々、それと流体連通する一つ以上の頭部140を備える。一部の実施形態では、頭部140は、最も幅の広い縁に沿って30mmあってもよい。頭部140は、上に記載した、創傷被覆材の最上表面に対して封止されるように構成される、アプリケータ180を少なくとも一部形成する。
【0030】
図2Bは、流体コネクタ110と共に
図1Bに示される、創傷被覆材10に類似する創傷被覆材100の断面を示し、それは国際特許出願公開第2013/175306号2に記載され、参照することによってその全体が援用される。代替として、本明細書に開示するいずれの創傷被覆材の実施形態、または本明細書に開示する創傷被覆材の実施形態のいずれの数の特徴部のいかなる組み合わせでもあり得る、創傷被覆材100は、治療される創傷部位の上に置かれ得る。被覆材100は、創傷部位の上に密封された空洞を形成するために設置されてもよい。一部の実施形態では、被覆材100は、最上層もしくはカバー層、または任意の創傷接触層222に取り付けられる裏当て層220を備え、それらの両方について以下により詳細に記載する。これら二つの層220、222は、内部空間またはチャンバを画定するために、共に接合または封止され得る。この内部空間またはチャンバは、陰圧を分配または伝達し、創傷滲出液および創傷から除去された他の流体を貯蔵するように適応してもよい追加構造と、以下により詳細に説明するであろう他の機能とを備えてもよい。以下に記載するそのような構造の例は、透過層226および吸収層221を含む。
【0031】
本明細書で使用される通り、上部層、最上層または上方の層は、被覆材が使用中で、創傷の上に位置する間、皮膚または創傷の表面から最も遠い層を指す。したがって、下表面、下部層、最下層または下方の層は、被覆材が使用中で、創傷の上に位置する間、皮膚または創傷の表面に最も近い層を指す。
【0032】
図2Bに示す通り、一部の実施形態では、創傷接触層222は、ポリウレタン層もしくはポリエチレン層、または、例えば、ホットピンプロセス、レーザアブレーションプロセス、超音波プロセスもしくは何らかの他の手段によって穿孔された、もしくはそうでなければ液体および気体に対して透過性を持たせる、他の可撓性層もしくは実質的に可撓性のある層であり得る。創傷接触層222は、下表面224(例えば、創傷と向かい合う)および上表面223(例えば、創傷から見て外を向く)を有する。穿孔225は、創傷接触層222の中に貫通孔を備えることができ、流体が層222を通って流れることが可能になる。創傷接触層222は、創傷被覆材の他の材料中への組織内殖を妨げるのに役立つ。一部の実施形態では、穿孔は、流体が穿孔を通って流れることを依然として可能にしながら、この要件を満たすほど充分に小さい。例えば、0.025mmから1.4mmに及ぶサイズを有する、スリットまたは孔として形成される穿孔は、創傷滲出液が被覆材中へと流れるのを可能にしながら、創傷被覆材中への組織内殖を妨げるのに役立つほど充分に小さいとみなされる。一部の構成では、創傷接触層222は、陰圧を創傷に維持するために、吸収性パッドの周りに気密状態をも作り出しながら、被覆材100全体の完全性を維持するのに役立つ場合がある。
【0033】
創傷接触層222の一部実施形態はまた、任意の上部および下部接着層(図示せず)用の担体として働いてもよい。例えば、下部感圧接着剤が、創傷被覆材100の下表面224上に提供されてもよい一方、上部感圧接着層は、創傷接触層の上表面223上に提供されてもよい。シリコーン、ホットメルト、親水コロイドもしくはアクリルをベースとする接着剤、または他のそのような接着剤であってもよい感圧接着剤は、創傷接触層の両側面上、もしくは任意で選択された片側面上に形成されてもよく、または創傷接触層のどちらの側面上に形成されなくてもよい。下部感圧接着層を利用することが、創傷被覆材100を創傷部位の周りの皮膚に接着させる助けになってもよい。一部の実施形態では、創傷接触層は穿孔ポリウレタンフィルムを備えてもよい。フィルムの下表面はシリコーン感圧接着剤を提供されてもよく、上表面はアクリル感圧接着剤を提供されてもよく、それによって被覆材がその完全性を維持するの助けてもよい。一部の実施形態では、ポリウレタンフィルム層に上表面および下表面両方上に接着層を提供してもよく、全三層は共に穿孔されていてもよい。
【0034】
多孔質材料の層226は、創傷接触層222の上方に置かれ得る。この多孔質層または透過層226により、液体および気体を含む流体が、創傷部位から離れて創傷被覆材の上部層中へと透過することが可能になる。特に、透過層226によって、吸収層がかなりの量の滲出液を吸収したときでさえ、外気チャネルが、創傷面積全体に陰圧を伝えるように維持され得ることを保証できる。一部の実施形態では、層226は、全創傷部位に均等化された陰圧がかかるように、上に記載した通り、陰圧創傷療法中に印加されるであろう通常の圧力下において、開放したままであるべきである。層226は、三次元構造を有する材料から形成されてもよい。例えば、編みもしくは織りスペーサ布(例えば、Baltex 7970の横編ポリエステル)、または不織布が使用され得る。
【0035】
一部の実施形態では、透過層226は、84/144で織られたポリエステルである最上層(すなわち、使用中、創傷床から遠位の層)と、10デニールの平坦なポリエステルである最下層(すなわち、使用中、創傷床に近接して置かれる層)と、編まれたポリエステルビスコース、セルロースまたは類似のモノフィラメント繊維により画定される領域である、これら二つの層の間に挟まれて形成される第3層とを含む、3Dポリエステルのスペーサ布層を備える。他の材料、および他の線質量密度の繊維ももちろん使用され得る。
【0036】
本開示を通して、モノフィラメント繊維への言及がなされるものの、もちろん多糸の代替物が利用され得ることは理解されるであろう。それゆえ、最上部スペーサ布は、それを形成するのに使用される1本の糸において、最下部スペーサ布層を形成するのに使用される糸を構成するフィラメントの数よりも多くのフィラメントを有する。
【0037】
間隙を介する層間におけるこのフィラメント数の差異が、透過層を横断する水分流動を制御するのに役立つ。具体的には、最上層のフィラメント数をより多くすることによって、すなわち、最上層が、最下層に使用される糸よりも多くのフィラメントを有する糸から作られることによって、液体は、最下層よりも最上層に沿ってより多く吸われる傾向がある。使用中、この差異によって、液体が創傷床から引き離され、被覆材の中心領域中に引き寄せられるようになり、中心領域では、吸収層221が液体を閉じ込めるのに役立つか、または液体を放出させ得るカバー層に向かって、それ自体で液体を前方へ吸い上げる。
【0038】
一部の実施形態では、透過層226を横切る(すなわち、最上部および最下部スペーサ層の間に形成されるチャネル領域と垂直に)液体の流れを改善するために、3D織物は、ドライクリーニング剤(限定するものではないが、パークロロエチレンなど)で処理されて、透過層の親水能力を邪魔する可能性がある、前に使用された鉱油、油脂またはワックスなどの、いかなる工業製品をも除去するのに役立ってもよい。一部の実施形態では、続いて、3Dスペーサ布が親水性剤(限定するものではないが、Rudolph Groupから市販されている30g/lのFeran Iceなど)で洗われる、追加の製造ステップに進んでもよい。この工程ステップは、水などの液体が3D編物に接触するとすぐに織物に進入し得るほど、材料の表面張力が低くなることを保証するのに役立つ。またこのステップは、いかなる滲出液の液状侵襲成分(liquid insult component)の流れを制御するのにも役立つ。
【0039】
吸収性材料の層221は、透過層226の上方に提供される。発泡体もしくは不織の自然または合成材料を含み、任意で超吸収性材料を含んでもよい吸収性材料は、流体、具体的には、創傷部位から除去される液体用の貯留部を形成する。一部の実施形態では、層10もまた、流体を裏当て層220の方へ引き寄せるのに役立ってもよい。
【0040】
吸収層221の材料はまた、創傷被覆材100に収集された液体が、被覆材内を自由に流れるのを妨げてもよく、被覆材内に収集されるいかなる液体をも包含するように働き得る。吸収層221はまた、流体を創傷部位から引き寄せ、吸収層中に渡って貯蔵するように、吸い上げ作用によって層全体に流体を分配するのを助ける。これによって、吸収層のエリアにおける凝集を妨げるのを助ける。吸収性材料の容量は、陰圧を印加するとき、創傷の滲出液が流れる速度を管理するのに充分でなくてはならない。使用中、吸収層は陰圧を経験するため、吸収層の材料は、そのような状況下で液体を吸収するように選ばれる。例えば、超吸収体材料といった、陰圧下にあるとき液体を吸収できる、いくつかの材料が存在する。吸収層221は通常、ALLEVYN(商標)発泡体のFreudenberg114-224-4またはChem-Posite(商標)11C-450より製造されてもよい。一部の実施形態では、吸収層221は、超吸収性粉末、セルロースなどの繊維材料、および結合繊維を含む複合材を含んでもよい。一部の実施形態では、複合材はエアレイドの熱的に結合された複合材である。
【0041】
一部の実施形態では、吸収層221は、層中に渡って分散する乾燥粒子の形態である超吸収性材料を有する、不織セルロース繊維の層である。セルロース繊維の使用によって、被覆材により吸収される液体を素早くかつ均等に分配するのに役立つ、高速吸い上げ要素が導入される。多数の撚糸様繊維を並列させることが、液体を分配するのに役立つ繊維パッドの、強い毛細管作用につながる。このように、超吸収性材料に液体を効率的に供給する。また、吸い上げ作用によって、被覆材の蒸散率を増加させるのに役立つように、液体を上部カバー層と接触させるように支援する。
【0042】
一部の実施形態では、陰圧を被覆材100に印加することが可能になるように、隙間、孔またはオリフィス227が裏当て層220に提供される。ある実装では、流体コネクタ110は、被覆材100の中に作られるオリフィス227の上で、裏当て層220の最上部に取り付けられるか、または封止され、オリフィス227を通って陰圧を伝える。長いチューブが、被覆材から流体を汲み上げることが可能になるように、第1端部で流体コネクタ110に、第2端部でポンプユニット(図示せず)に連結されてもよい。流体コネクタが創傷被覆材の最上層に接着する場合、長いチューブは、チューブまたは導管が、流体コネクタから離れて平行に、または実質的に被覆材の最上表面へ延在するような、流体コネクタの第1端部で連結されてもよい。流体コネクタ110は、アクリル、シアノアクリレート、エポキシ、UV硬化性またはホットメルト接着剤などの接着剤を使用して、裏当て層220に接着および封止してもよい。流体コネクタ110は、ショアAスケールで30から90の硬度を有する、例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、シリコーンまたはポリウレタンといった柔らかいポリマーから形成されてもよい。一部の実施形態では、流体コネクタ110は、柔らかい材料または適合する材料から作られてもよい。
【0043】
一部の実施形態では、吸収層221は、流体コネクタ110の基礎を成すために置かれる、少なくとも一つの貫通孔228を含む。貫通孔228は、一部の実施形態では、裏当て層の開口部227と同じサイズであってもよく、またはより大きいもしくは小さくてもよい。
図2Bに示す通り、単一の貫通孔は、流体コネクタ110の基礎を成す開口部を生み出すように使用され得る。複数の開口部が、代替として利用され得ることは理解されるであろう。加えて、二つ以上のポートが、本開示のある実施形態に従って利用されるべき場合、一つまたは複数の開口部が、各流体コネクタと位置を合わせて、吸収層および不明瞭化層に作られてもよい。本開示のある実施形態には必須ではないものの、超吸収層に貫通孔を使用することで、吸収層が飽和に近いとき特に、遮断されないままの流体流路を提供してもよい。
【0044】
隙間または貫通孔228は、
図2Bに示す通り、オリフィスが透過層226に直接接続するように、オリフィス227の下方の吸収層221に提供され得る。これによって、流体コネクタ110に印加される陰圧を、吸収層221を通過することなく、透過層226へ伝えることが可能になる。これで、吸収層が創傷滲出液を吸収しても、創傷部位に印加される陰圧が、吸収層によって阻害されないことが保証される。他の実施形態では、隙間は吸収層221に提供されなくてもよく、または、代替として、オリフィス227の基礎を成す複数の隙間が提供されてもよい。さらなる代替の実施形態では、別の透過層などの追加層、または参照することによりその全体が援用される、国際特許出願公開第2014/020440号に記載されるような不明瞭化層が、吸収層221の上および裏当て層220の下方に提供されてもよい。
【0045】
一部の実施形態では、裏当て層220は気体不透過性であるが透湿性があり、創傷被覆材100の幅に渡って延在し得る。例えば、片方の側面に感圧接着剤を有するポリウレタンフィルム(例えば、Elastollan SP9109)であってもよい、裏当て層220は、気体に対して不浸透性であり、それゆえ、この層は創傷を被覆し、上に創傷被覆材が設置される創傷空洞を封止するように動作する。このように、効果的なチャンバが、陰圧が確立され得る、裏当て層220と創傷部位との間に作られる。裏当て層220は、被覆材の外周の周りの境界領域で、創傷接触層222に封止することができ、例えば、接着技術または溶接技術によって、空気が境界エリアを通って引き込まれることを保証する。裏当て層220によって、創傷が外部の細菌汚染から保護され(細菌バリア)、層を通って創傷滲出物からの液体を移動させ、フィルム外表面から蒸発させることが可能になる。裏当て層220は、ポリウレタンフィルムと、フィルム上に広がる接着パターンとの二つの層を備え得る。ポリウレタンフィルムは透湿性を持つことができ、濡れたときに水透過速度が高まる材料から製造されてもよい。一部の実施形態では、裏当て層が濡れると、裏当て層の透湿性が増加する。濡れた裏当て層の透湿性は、乾いた裏当て層の透湿性の最大約10倍であってもよい。
【0046】
吸収層221は、透過層226の縁と重複するように、透過層226よりも大きい面積から成ってもよく、それによって、透過層が裏当て層220に接触しないことを保証する。これにより、創傷接触層222と直接接触する、吸収層221の外側チャネルが提供され、滲出液の吸収層へのより急速な吸収に役立つ。さらに、この外側チャネルによって、液体が創傷空洞の外周に貯留できないことが保証され、そうでない場合には、被覆材の周囲の密封部から染み出して、漏出の形成につながる場合がある。
図2A~2Bに示す通り、吸収層221によって、境界線または境界領域が、吸収層221の縁と裏当て層220の縁との間に画定されるような、裏当て層220の周囲よりも小さい周囲を画定してもよい。
【0047】
図2Bに示す通り、創傷被覆材100の一実施形態は、流体コネクタ110の下方に置かれる吸収層221に、隙間228を備える。使用中、例えば、陰圧が被覆材100に印加されるとき、流体コネクタの創傷に向かい合う部分は、透過層226と接触してもよく、それゆえ、吸収層221が創傷流体で埋められているときでさえ、創傷部位に陰圧を伝達するのに役立ち得る。一部の実施形態によって、裏当て層220を透過層226に少なくとも一部接着させてもよい。一部の実施形態では、隙間228は、流体コネクタ11の創傷に向き合う部分またはオリフィス227の直径よりも、少なくとも1~2mm大きい。
【0048】
例えば、単一流体コネクタ110および貫通孔を伴う実施形態では、
図2Aに示す通り、流体コネクタ110および貫通孔が、中心から外れた位置に置かれるのが好ましい場合がある。そのような場所では、流体コネクタ110が被覆材100の残余部と比較して持ち上げられるように、被覆材100を患者の上に位置させることが可能になってもよい。そのように位置すると、流体コネクタ110およびフィルタ214は、創傷部位への陰圧の伝達を減じるために、時期を早めてフィルタ214を閉塞させ得る創傷流体と、接触する可能性が低くなる場合がある。
【0049】
ここで流体コネクタ110に目を転じると、一部の実施形態は、密封表面216と、近位端130および遠位端140を伴うブリッジ211(
図1A~1Bのブリッジ120に相当)と、フィルタ214とを備える。密封表面216は、創傷被覆材の最上表面に封止される、前に記載したアプリケータを形成し得る。一部の実施形態では、流体コネクタ110の最下層は、密封表面216を備えてもよい。流体コネクタ110はさらに、一部の実施形態では、流体コネクタの別個の上部層により画定される、密封表面216から垂直に間隔を空ける上表面を備えてもよい。他の実施形態では、上表面および下表面は、材料の同じ一片から形成されてもよい。一部の実施形態では、密封表面216は、創傷被覆材と連通するように、その中に少なくとも一つの隙間229を備えてもよい。一部の実施形態では、フィルタ214は、密封表面の開口部229に渡って位置してもよく、開口部229全体に架かってもよい。密封表面216は、創傷被覆材のカバー層に流体コネクタを封止するように構成されてもよく、接着剤または溶接部を備えてもよい。一部の実施形態では、密封表面216は、カバー層のオリフィスの上に設置されてもよい。他の実施形態では、密封表面216は、カバー層のオリフィスおよび吸収層220の隙間の上に位置してもよく、流体コネクタ110によって透過層226を通る気流を提供することが可能になる。一部の実施形態では、ブリッジ211は、陰圧の源と連通する第1流体通路212を備えてもよく、第1流体通路212は、3D編み材料など、前に記載した多孔質層226と同じでもよく、または異なってもよい、多孔質材料を備える。ブリッジ211は、近位端および遠位端を有し、第1流体通路212を囲むように構成される、少なくとも一つの可撓性フィルム層208、210によって被包することができ、可撓性フィルムの遠位端は、密封表面216に接続する。フィルタ214は、創傷滲出液がブリッジに進入するのを実質的に妨げるように構成される。
【0050】
一部の実施形態はさらに、第1流体通路212の上方に位置する、任意の第2流体通路を備えてもよい。例えば、一部の実施形態によって、第1流体通路212および被覆材100中への空気経路を提供するように構成され、最上層の近位端に配置される可能性がある、空気漏れ部を提供してもよく、これは、参照することによって全体が援用される、米国特許第8,801,685号に記載する吸引アダプタに類似する。
【0051】
一部の実施形態では、流体通路212は、スペーサがねじれるかまたは折り重なる場合でも、流体が通過することを可能にする、可撓性のある、規格に準拠した材料から構築される。流体通路212の好適な材料には、ポリエチレンまたはポリウレタン発泡体など、連続気泡発泡体を含む発泡体、メッシュ、3D編物、不織材料および流体チャネルを含むがこれらに限定されない。一部の実施形態では、流体通路212は、透過層226に関して上に記載したものと、類似の材料から構築されてもよい。有利なことに、流体通路212に使用されるそのような材料によって、患者の快適性をより増すことが可能になるだけでなく、ねじれるか、または曲がっている間でも、依然として流体通路212が流体を創傷から陰圧の源の方へと移動できるような、より大きなねじれ抵抗を提供してもよい。
【0052】
一部の実施形態では、流体通路212は、例えば、編みもしくは織りスペーサ布(ポリエステルで編まれた3D織物Baltex 7970(登録商標)またはGehring 879(登録商標))といったウィッキング生地、または不織布から成ってもよい。選択されたこれらの材料は、創傷滲出液を創傷から離すように導き、陰圧または吐出された空気を創傷部位へ伝達するために置くことができ、また、ある程度のねじれ抵抗または閉塞抵抗を、流体通路212に与えてもよい。一部の実施形態では、ウィッキング生地は、一部の場合、流体の吸い上げまたは陰圧の伝達に役立つ場合がある、三次元構造を有してもよい。ウィッキング生地を含むある実施形態では、これらの材料は、開放されたままで、例えば、40から150mmHgの間の陰圧療法で使用される通常圧力下において、変わらず陰圧を創傷エリアに伝えることができる。一部の実施形態では、ウィッキング生地は、互いの上に積み重なった、または積層された材料のいくつかの層を備えてもよく、一部の場合には、陰圧印加状況下において、流体通路212が崩れるのを妨げるのに有用であってもよい。他の実施形態では、流体通路212に使用されるウィッキング生地は、1.5mmと6mmとの間であってもよく、例えば、ウィッキング生地は、3mmと6mmとの間の厚さであってもよく、一つまたはいくつかの個々のウィッキング生地層のどちらかから成ってもよい。他の実施形態では、流体通路212は、1.5mmよりも厚いなど、1.2~3mmの間の厚さであってもよい。一部の実施形態、例えば、創傷滲出液などの液体を保持する被覆材と共に使用される吸引アダプタは、流体通路212に疎水層を用いてもよく、気体のみが流体通路212を通って動いてもよい。加えて、前に記載した通り、システムに使用される材料は、適合する柔らかいものであることができ、患者の皮膚に対して圧力を加える創傷治療システムに起因する場合がある、褥瘡および他の合併症を回避するのに役立つ場合がある。
【0053】
一部の実施形態では、フィルタ要素214は、液体に対して不透過性であるが、気体に対しては透過性があり、液体バリアとして働き、液体が創傷被覆材100から漏れ出ることができないことを保証するように提供される。フィルタ要素214はまた、細菌バリアとして機能してもよい。通常、管孔サイズは0.2μmである。フィルタ要素214のフィルタ材料に好適な材料には、MMT範囲からの0.2ミクロンのGore(商標)拡張PTFE、PALL Versapore(商標)200RおよびDonaldson(商標)TX6628を含む。より大きな管孔サイズも使用され得るが、これらは、2次フィルタ層が、完全な生物汚染の封じ込めを保証することを必要とする場合がある。創傷流体は脂質を含有するため、必須ではないものの、例えば、0.2ミクロンのMMT-323の前に1.0ミクロンのMMT-332といった、撥油性フィルタ膜を使用することが好ましい。これにより、脂質が疎水フィルタを遮断するのを防げる。フィルタ要素は、オリフィスの上のポートもしくはカバーフィルムに取り付けられ得るか、または封止され得る。例えば、フィルタ要素214は、流体コネクタ110に成型されてもよく、または限定するものではないが、UV硬化接着剤などの接着剤を使用して、カバー層の最上部および吸引アダプタ110の最下部の一方または両方に接着してもよい。
【0054】
他のタイプの材料がフィルタ要素214に使用され得ることは、理解されるであろう。より広くは、薄く平坦な1枚のポリマー材料である、微多孔膜を使用することができ、これは数十億もの微細な管孔を包含する。選んだ膜に応じて、これらの管孔は、0.01マイクロメートルから10マイクロメートルより大きいサイズに及び得る。微多孔膜は、親水性(水のフィルタリング)および疎水性(撥水)形態の両方で利用可能である。一部の実施形態では、フィルタ要素214は、支持層と、支持層上に形成されるアクリルコポリマー膜とを備える。一部の実施形態では、創傷被覆材100は、疎水性微多孔膜(MHM:microporous hydrophobic membrane)を使用する。多数のポリマーを用いて、MHMを形成してもよい。例えば、MHMは、PTFE、ポリプロピレン、PVDFおよびアクリルコポリマーのうちの一つ以上から形成されてもよい。これら任意のポリマーのすべてが、疎水性および撥油性の両方であり得る、特定の表面特性を得るために処理され得る。これらによって、マルチビタミン注入物、脂質、界面活性剤、油および有機溶媒など、表面張力の低い液体を追い払うであろう。
【0055】
MHMは、空気が膜を通って流れることを可能にしながら、液体を遮断する。MHMはまた、潜在的感染エアロゾルおよび粒子を排除する、非常に効率的なエアフィルタである。MHMの単一片は、機械弁またはベントを交換する選択肢として、よく知られる。それゆえ、MHMの組込みによって製品組立費を削減し、利益、および患者に対する費用/利得の割合を改善し得る。
【0056】
フィルタ要素214はまた、例えば、活性炭、炭素繊維布もしくはVitec Carbotec-RT Q2003073発泡体、または類似のものといった臭気吸収材を含んでもよい。例えば、臭気吸収材は、フィルタ要素214の層を形成してもよく、またはフィルタ要素内の疎水性微多孔膜間に挟まれてもよい。それゆえ、フィルタ要素214によって、オリフィスを通して気体を排出することが可能になる。しかしながら、液体、微粒子および病原体は被覆材に包含される。
【0057】
上に記載した創傷被覆材の実施形態に類似して、一部の創傷被覆材は、皮膚接触面上にシリコーン接着剤、および裏面上にアクリル接着剤を伴う穿孔創傷接触層を備える。この縁取られた層の上方には、透過層または3Dスペーサ布パッドが存在する。透過層の上方には吸収層が存在する。吸収層は超吸収不織(NW:non-woven)パッドを含み得る。吸収層は、周囲をおよそ5mm越えて透過層に接し得る。吸収層は、一つの端部の方に向かう隙間または貫通孔を有し得る。隙間は直径約10mmであり得る。透過層および吸収層の上に、裏当て層がある。裏当て層は、アクリル接着剤でコーティングされた模様である、高水蒸気透過率(MVTR)フィルムであり得る。高MVTRフィルムおよび創傷接触層は、透過層および吸収層を被包して、およそ20mmの周囲境界を作り出す。裏当て層は、吸収層の隙間の上に重なる、10mmの隙間を有し得る。孔の上方には、前述した隙間の上に重なる、液体不透過性、気体透過性の半透過性膜(SPM:semi-permeable membrane)またはフィルタを備える、流体コネクタを結合し得る。
【0058】
図2Cに目を転じると、一部の実施形態において、より大きな腹部創など、ある実施形態で陰圧を用いる他の創傷タイプの治療では、図に概略的に示する通り、陰圧治療システム101を使用する。一部の実施形態では、腹部創部位として図に示す創傷部位106は、陰圧による治療から恩恵を受けることができる。そのような腹部創部位は、例えば、事故または外科的介入による結果である場合がある。一部の場合、腹部コンパートメント症候群、腹部高血圧、敗血症または水腫などの病状は、腹膜腔を曝露するように、腹壁を通る外科的切開による腹部の除圧を必要とする場合があり、その後、開口部は状態が回復するまで、開放してアクセス可能な状態の維持が必要とされることがある。他の状態もまた、具体的には、腹部の空洞などの開口部は、例えば、複数の外科的手技が必要とされる(場合により外傷に付随して起こる)場合、または腹膜炎または壊死性筋膜炎など、病態のエビデンスがある場合、開いたままにしておくことを必要とする場合がある。
【0059】
具体的には腹部などに創傷がある場合、創傷が開いたままであるべきであってもなくとも、または創傷が閉じられるであろう場合には、器官および腹膜腔の曝露に関係する、可能性のある合併症を管理することが望ましい。陰圧の印加を使用するような療法は、組織生存を促進し、創傷部位から有害な物質を除去しながら、感染のリスクを最小化することを目的とし得る。創傷部位への減圧または陰圧の印加は、とりわけ、概してより早い治癒、血流の増大、細菌負荷の減少、肉芽組織形成の速度増大の促進、線維芽細胞増殖への刺激、内皮細胞増殖への刺激、慢性開放創の閉鎖、熱傷の浸透(burn penetration)の阻害、または皮弁および移植片の付着強化をもたらすことがわかている。陰圧の印加による治療への好反応を呈していた創傷には、感染開放創、褥瘡性潰瘍、裂開切開、中間層熱傷および皮弁または移植片を取り付けられた様々な病変を含むことも、報告されている。その結果として、創傷部位106への陰圧の印加は、患者にとって有益であり得る。
【0060】
したがって、ある実施形態では、創傷部位106の上に設置するように、創傷接触層105が提供される。創傷接触層はまた、器官保護層または組織保護層と称され得る。一部の実施形態では、創傷接触層105は、薄い可撓性材料であることができ、創傷部位または曝露された内臓にそれほど接近して接着しないであろう。例えば、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレンまたはそれらのブレンドなどのポリマーが、使用されてもよい。一実施形態では、創傷接触層は透過性がある。例えば、創傷接触層105は、創傷部位106からの流体の除去、または創傷部位106への陰圧の伝達を可能にするように、孔、スリットまたはチャネルなどの開口部を提供され得る。創傷接触層105の追加の実施形態について、以下にさらに詳細に記載する。
【0061】
陰圧治療システム101のある実施形態はまた、創傷接触層105の上に配置され得る、多孔質創傷充填材103を使用してもよい。このパッド103は、柔らかく弾性的可撓性があり、概して創傷部位106に適合する、例えば、発泡体といった多孔質材料から構築され得る。そのような発泡体には、例えば、ポリマーから作られる連続気泡型の網状発泡体を含み得る。好適な発泡体には、例えば、ポリウレタン、シリコーンおよびポリビニルアルコールから成る発泡体を含む。一部の実施形態では、このパッド103は、陰圧が創傷に印加されるとき、パッドを通って創傷滲出液および他の流体を導き得る。一部のパッド103は、そのような目的で事前に形成されるチャネルまたは開口部を含んでもよい。ある実施形態では、パッド103は、約1インチと約2インチとの間の厚さを有してもよい。パッドはまた、約16インチと17インチとの間の長さ、および約11インチと12インチとの間の幅を有してもよい。他の実施形態では、厚さ、幅または長さは、他の好適な値を有し得る。パッド103の代わりに、またはそれに加えて使用されてもよい、創傷充填材の他の実施形態について、以下にさらに詳細に議論する。
【0062】
ある実装では、ドレープ107は創傷部位106を密封するように使用される。ドレープ107は、少なくとも一部の陰圧を創傷部位に維持してもよいように、少なくとも一部液体不透過性であり得る。ドレープ107に好適な材料は、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリウレタン、ポリシロキサン、ポリアミド、ポリエステル、および他のコポリマー、ならびにそれらの混合物を含む、それほど液体を吸収しない合成ポリマー材料を含むがこれらに限定されない。ドレープに使用される材料は、疎水性または親水性であってもよい。好適な材料の例には、DeRoyalから市販されているTranseal(登録商標)、およびSmith&Nephewから市販されているOpSite(登録商標)を含む。患者の快適性に役立ち、皮膚の浸軟を回避するために、ある実施形態におけるドレープは、水蒸気が被覆材下に閉じ込められたままにならず通過できるように、少なくとも一部に通気性がある。ある実施形態では、代わりに別個の接着剤または接着ストリップを使用してもよいものの、接着層には少なくとも一部分上に、ドレープを患者の皮膚に固定するように、ドレープ107の底面を提供してもよい。任意で、放出層は、使用前、接着層を保護し、かつドレープ107の取り扱いを容易にするように、接着層の上に配置されてもよく、一部の実施形態では、放出層は複数セクションから成ってもよい。
【0063】
陰圧システム101は、陰圧の源、例えば、ポンプ114に接続し得る。好適なポンプの一例は、Smith&Nephewから市販されているRenasys EZポンプである。ドレープ107は、導管112を介して陰圧の源114に接続してもよい。導管112は、ドレープ107の隙間109の上に置かれるポート113に接続してもよく、あるいは、導管112は、ポートを使用せずに隙間109を通って直接接続してもよい。さらなる代替物において、導管はドレープの下方を通り、ドレープの側面から延在してもよい。米国特許第7,524,315号は、陰圧システムの他の類似する態様について開示し、参照することによって本明細書によりその全体が援用され、本明細書の一部とみなされるべきである。
【0064】
多くの適用では、容器または他の貯蔵ユニット115は、創傷滲出液、および創傷部位から除去された他の流体を、陰圧の源に進入させることなく貯蔵することが可能になるために、陰圧の源114と導管112とに間置されてもよい。また、例えば、蠕動ポンプといった、あるタイプの陰圧源によっても、容器115をポンプ114の後に設置することが可能になってもよい。一部の実施形態はまた、流体、エアロゾルおよび他の微生物混入物が、容器115を離れ、および/または陰圧の源114に進入するのを妨げるように、フィルタを使用してもよい。さらなる実施形態はまた、オーバーフローを妨げるように、容器に遮断弁、または閉塞疎水性もしくは撥油性フィルタを含んでもよく、他の実施形態は、容器の中の流体のレベルが容量に近づく場合、容量センサなどの感知手段、または陰圧の源を停止もしくは遮断するように働く、他の流体レベル検出器を含んでもよい。一部の実施形態では、ポンプ排出部に、活性炭キャニスタなどの臭気フィルタを提供する。
【0065】
図2Dは、陰圧なしで創傷を治癒するために使用され得る、創傷被覆材の様々な実施形態を示す。
図2Dの被覆材に示す通り、創傷被覆材は、
図1A~1Bを参照して記載した被覆材に類似する、複数の層を有することができ、
図2Dの被覆材以外の
図2A~2Bは、ポートも流体コネクタも含まない。
図2Dの創傷被覆材は、本明細書に記載する通り、カバー層および創傷接触層を含み得る。創傷被覆材は、創傷接触層とカバー層との間に位置する様々な層を含み得る。例えば、被覆材は、
図1A~1Bおよび2A~2Bを参照して本明細書に記載する通り、一つ以上の吸収層または一つ以上の透過層を含み得る。加えて、本明細書に記載する創傷被覆材を備える、創傷治療に関係する一部の実施形態はまた、2014年5月21日に米国特許出願第2014/0249495号で出願された、名称「WOUND DRESSING AND METHOD OF TREATMENT」と組み合わせて、または該米国特許出願に追加して使用されてもよく、該米国特許出願の開示は、創傷被覆材の実施形態、創傷被覆材の構成要素および原理、ならびに創傷被覆材に使用される材料に関係する、さらなる詳細を含め、参照することによって本明細書によりその全体が援用される。
【0066】
センサを使用可能な被覆材
いくつかのセンサを組み込む創傷被覆材、または創傷被覆材から切り離されたセンサは、治癒するとき創傷の特性を監視するために、または一つ以上の危険因子もしくは創傷を引き起こす場合がある状態を特定するために、利用され得る。うまく治癒する創傷とそうでない創傷とからデータを収集することによって、創傷が治癒軌道上にあるか、被覆材を調整する必要があるか、療法パラメータを調整する必要があるか、または類似のことを含む、一つ以上の状態を示す、測定値または測定量を特定するのに有用な洞察を提供し得る。これによって、一つ以上の調整を行うことが可能になり得る。例えば、陰圧創傷療法デバイスの動作パラメータ(例えば、圧力レベル、治療強度、治療期間など)は調整し得る。一つ以上のセンサが、本明細書に記載する通りの、様々な生理学的パラメータを測定するように使用され得る。
【0067】
いくつかのセンサ技術が、創傷被覆材、または創傷被覆材装置全体の一部を形成する一つ以上の構成要素で使用され得る。例えば、
図3Aおよび3Hに示す通り、一部の実施形態では、センサのサブセットが、
図3Hに示す通りの穿孔創傷接触層であってもよい、創傷接触層上へまたは創傷接触層中へ組み込まれ得る。
図3Aおよび3Hの創傷接触層は、四角形を有するように示されるが、創傷接触層が、例えば、長方形、円形、楕円形などの他の形を有してもよいことは理解されるであろう。一部の実施形態では、センサ統合型創傷接触層は、創傷面積の上に設置される個々の材料層として提供され、その後、創傷被覆材装置、または
図2Cを参照して記載する構成要素(例えば、ガーゼ、発泡体または他の創傷パッキング材料、超吸収層、ドレープ、PicoまたはAllevyn Life被覆材のような完全統合型被覆材など)に類似する、創傷被覆材装置の構成要素によって被覆され得る。他の実施形態では、センサ統合型創傷接触層は、
図1A~2Bおよび2Dに記載するような、単一ユニット被覆材の一部であってもよい。
【0068】
センサ統合型創傷接触層は、創傷と接触して設置でき、流体が創傷の中の組織への損傷を全くまたはほとんど起こさずに、接触層を通過することが可能になるであろう。センサ統合型創傷接触層は、シリコーンなどの可撓性材料から作ることができ、抗菌剤、または当該技術分野で知られる他の治療薬を組み込み得る。一部の実施形態では、センサ統合型創傷接触層は、湿組織または乾燥組織に接着する接着剤を組み込み得る。一部の実施形態では、一つ以上のセンサ、センサパッケージまたはセンサアレイは、上に記載した吸収層またはスペーサ層など、創傷被覆材の他の構成要素内に取り込まれ得るか、または被包され得る。
【0069】
図3Aおよび3Hに示す通り、温度(例えば、25個のサーミスタセンサ、配列5x5、ピッチ~20mm)、パルスオキシメトリまたはSpO2(例えば、4個または5個のSpO2センサ、創傷接触層の中心から縁まで単一直線、ピッチ10mm)、組織、滲出液または異物の光学的性質(例えば、10個の光学センサ、配列2x5、ピッチ~20mm;配列の各列5個のセンサすべてが整列する必要はない)、pH(例えば、pH感受性パッドの色を測定することによって、組織の色用と同じ光学センサを任意で使用)、および伝導度(例えば、9個の伝導性接触部、配列3x3、ピッチ~40mm)用センサを含む、5個のセンサのサブセットが使用され得る。一部の実施形態では、SpO2は動脈血酸素飽和度の推定値である。
図3Aに示す通り、一部の実施形態では、SpO2センサは、創傷接触層の中心からまたは中心付近から、創傷接触層の縁への単一直線状に配設され得る。SpO2センサの直線によって、センサが、様々な領域間の変化を測定するように、創傷の真ん中で、縁もしくは創傷で、または無傷の皮膚上で測定値を得ることが可能になり得る。一部の実施形態では、創傷接触層またはセンサアレイは、創傷の全体表面エリアだけでなく周囲の無傷の皮膚も被覆するように、創傷のサイズよりも大きくなり得る。より大きなサイズの創傷接触層またはセンサアレイ、および複数のセンサによって、センサが創傷の中心にのみ設置されていた場合、または一度にエリア一箇所ずつの場合よりも、創傷エリアについてより多くの情報を提供し得る。加えてまたは代替として、生体化合物もしくは化学化合物(例えば、色素コーティングされた比色センサ)、または類似のものを測定するように構成される、圧力、流量、ひずみ、比色センサなどの他のセンサが使用され得る。比色センサは、臭気、毒性などを測定するために使用され得る。本明細書に記載する、いかなる一つ以上のセンサも、創傷または皮膚のいかなる場所の測定値をも得るように、設置または位置され得る。
【0070】
センサは、様々なフルオロポリマー(FEP)およびコポリマー、またはいかなる他の好適な材料をに加えて、ポリアミド、ポリイミド(PI)、ポリエステル、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリウレタン、熱可塑性ポリウレタン(TPU)を含む可撓性ポリマーから形成され得る、可撓性のあるもしくは実質的に可撓性のあるプリント回路(FPC)のうちの一つ以上など、可撓性のあるもしくは実質的に可撓性のある基材によって支持され得るか、または可撓性のあるもしくは実質的に可撓性のある基材上に組み込まれ得る。記載は、回路基板を含んでもよい、一つ以上の実質的に可撓性のあるまたは可撓性のあるプリント回路を指し得るものの、代替としてまたは加えて、一つ以上の非導電性材料もしくはメッシュ、または織布の導電性繊維など、他のタイプの可撓性のあるまたは実質的に可撓性のある基材が使用され得る。例えば、創傷接触層などの創傷被覆材構成要素のうちの一つ以上は、導電性または非導電性材料を含み得る。実質的に可撓性のあるまたは可撓性のある基材は、片面、両面または多層回路を含み得る。一部の実装では、センサアレイは2層の可撓性回路の中に組み込まれ得る。一部の実施形態では、FPCは多層の可撓性プリント回路であり得る。一部の実施形態では、これらの可撓性プリント回路は、創傷被覆材のいかなる層の中にも組み込まれ得る。一部の実施形態では、可撓性回路は、創傷接触層の中に組み込まれ得る(例えば、創傷接触層上または中に位置し得る)。例えば、可撓性回路は、
図2Bおよび2Cを参照して記載した創傷接触層に類似する、創傷接触層の中に組み込まれ得る。創傷接触層は、創傷接触層の下表面から突出し、創傷エリアに直接接触する、一つ以上のセンサを可能にする、切り取り部またはスリットを有し得る。
【0071】
一部の実施形態では、センサ統合型創傷接触層は、創傷接触層材料の2層の間に挟まれるFPCを伴う、第1および第2創傷接触層を含み得る。第1創傷接触層は、創傷と接触するように意図する下表面と、FPCと接触するように意図する上表面とを有する。第2創傷接触層は、FPCと接触するように意図する下表面と、創傷被覆材、または創傷被覆材装置全体の一部を形成する、一つ以上の構成要素と接触するように意図する上表面とを有する。第1創傷接触層の上表面および第2創傷接触層の下表面は、2層の間に挟まれるFPCと共に接着され得る。
【0072】
一部の実施形態では、FPCの一つ以上のセンサは、創傷の中の水分または流体との接触を妨げるように、創傷接触層によって完全に被包または被覆され得る。一部の実施形態では、第1創傷接触層は、下表面から突出し、創傷エリアに直接接触する、一つ以上のセンサを可能にする、切り取り部またはスリットを有し得る。例えば、
図3Hに示す通りの一つ以上のSpO2センサは、創傷接触層の最下表面から突出して示されている。一部の実施形態では、SpO2センサまたは他のセンサは、創傷と直接接触するために、第1創傷接触層の下表面上に直接載置され得る。センサと電気もしくは電子構成要素との一部またはすべては、創傷と直接接触しないように埋められてもよく、またはポリマー、および例えば、シリコンまたはエポキシベースのポリマーなどの好適な材料で、被包されてもよい(例えば、実質的に防水または防液、および生体適合する状態にする)。ポリマーで被包することで、流体進入、および構成要素からの化学物質浸出を妨ぎ得る。一部の実施形態では、創傷接触層材料は、水が進入したり化学物質が浸出したりしないように、構成要素を密閉し得る。一つ以上のセンサおよび電気または電子構成要素は、完全に埋めるか、または埋め込まれ、液体との接触を妨げるよう無線通信するように構成され得る。
【0073】
一部の実装では、一つ以上のセンサは、次の代替もしくは追加手段で配設または展開され得る。センサはストリップまたは紐として配設され得る。センサは、電磁誘導で電力を供給してもよい、足場の中へまたは中で広がり得る。足場はまた、本明細書に記載する通り、コントロールモジュールまたは別の処理デバイスと通信してもよい。センサは、創傷被覆材の発泡体、もしくは創傷を埋めるように構成される別のマトリックスの中へ位置し得るか、またはその中へ入れられ得る。センサは、創傷に収まる、発泡体(または他のマトリックス)の突起または突出部上に載置され得る。例えば、センサは、超吸収発泡体または別の超吸収性材料の突出部上に載置することができ、創傷滲出液に曝露すると創傷の中へ延在してもよい。センサは、創傷被覆材とは別個の展開材料またはシステムの中に組み込まれ得る。センサは、DurafiberまたはduraTouchから作られ得る、創傷パッキング材料もしくは下層の中に被包され得るか、または載置され得る。例えば、センサは、ガーゼまたはSmith&Nephewによって作られるDurafiber被覆材の中に縫い合わせ得る。カスタマイズされた三次元の型は、正しくセンサを位置付けるために、ある特定の創傷の自律性もしくは形状向けに切り出し得るか、または構築され得る。センサアレイ、配設またはパッケージは、回転のずれによる影響を受けにくいように、回転対称または実質的な回転対称であり得る。センサは、センサ上でコーティングまたは沈着し、測定値に悪影響を与える滲出液を妨げるように、疎水性または親水性物質でコーティングされ得る。例えば、光学センサは、測定を実施するために液体を追い払うように、疎水性物質でコーティングされ得る。別の例として、pHセンサは、測定を実施するために滲出液を吸収するように、親水性物質でコーティングされ得る。センサは、センサを流すように、一つ以上の洗浄チャネルまたは流路を含み得る。例えばこれは、測定精度を改善するために、一つ以上の関心領域から滲出液または材料を除去するように使用され得る。加えてまたは代替として、一つ以上の流路は、測定精度を改善するために、特定の場所(センサまたはセンサの一群など)へ滲出液を導くように使用され得る。これにより、例えば、より大きな信号対雑音比を生成することができ、または創傷の脆弱なエリアから、ある特定のセンサまたはセンサの一群を分離し得る)。
【0074】
ある実施形態では、センサアレイ、配設またはパッケージは、正しい設置を保証するように、一つ以上のマーク、縁、ステッカーもしくは解剖学的特徴部と整列もしくは共記載し得る、一つ以上の位置合わせマーク、縁または特徴部を含み得る。例えば、創傷、または創傷を囲む皮膚もしくは組織とのセンサの位置合わせを改善し得る。一部の場合、センサアレイ、配設またはパッケージは、創傷上または創傷近くに設置される電磁タグで登録することができ、それにより、タグおよび創傷に対して正しくセンサを位置付け回転させるのを支援し得る。センサの配向を解析するために、設置後のセンサアレイ、配設またはパッケージの画像が撮られ得る。この情報は、センサが交換されるとき(例えば、被覆材が破棄されるとき)、センサの位置決めを評価するか、または適切な位置決めを容易にするかに使用され得る。一つ以上の紐またはストリップセンサは、配向誤差を制限するように使用され得る。位置合わせリングは、創傷被覆材が交換されるとき、正確な位置決めを可能にするように、取り外し可能なようにまたは半永久的に、創傷の周りに取り付けられ得るか、または印刷され得る。センサアレイ、配設またはパッケージが変形可能または実質的に変形可能である場合、個々のセンサは、位置決めまたは位置合わせを解析するために、他のセンサに対するセンサの位置を登録するように構成され得る。
【0075】
一つ以上の圧力モニタ(一つ以上のひずみゲージなど)が、創傷被覆材がきつすぎないか、または緩すぎないかを監視するように含まれ得る。一つ以上の圧力モニタからのフィードバックは、被覆材を締めるまたは緩める必要があるかを示すように使用され得る。これは、圧迫包帯法で有利に利用され得る。
【0076】
一部の実施形態では、創傷に関係する情報を集めて処理する際に、センサアレイ、コントロールモジュールおよび処理ソフトウェアを含む、三つの構成要素を利用し得る。三つの構成要素について、本明細書により詳細に記載する。
【0077】
上に記載した通り、
図3Aのセンサアレイは、温度センサ、伝導度センサ、光学センサおよびSpO2センサを含み得る。可撓性センサアレイのプリント回路300は、
図3Bに示す通り、センサアレイ部分301、尾部分302およびコネクタパッド端部分303を含む。センサアレイ部分301は、センサおよび関連回路を含み得る。センサアレイのプリント回路300は、センサアレイ部分301から延在する、長い尾部分302を含み得る。コネクタパッド端部分303は、センサアレイ回路からデータを受信するように、コントロールモジュールもしくは他の処理ユニットに電気的または電子的に接続することが可能になり得る。長い尾部分302によって、コントロールモジュールを、創傷から遠く離れた、より都合の良い場所に設置することが可能になり得る。センサアレイのプリント回路300のうちの一つの全体図を、
図3Bに示す。
【0078】
ある実装では、コントローラ(マイクロプロセッサなど)は、被覆材上に載置され、センサに接続され得る。そのように載置されたコントローラは、外部構成要素への接続に関連する負荷を軽減するように、3本または4本の有線接続(またはより少ないもしくは多い本数)など単純な接続によって、コントロールモジュールと通信し得る。例えば、長い尾部分302は3本または4本の有線接続を含み得る。一部の実装では、載置されたコントローラは無線通信し得る。
【0079】
図3C~3Fは、4個の異なるセンサアレイ形状を伴う、FPCの実施形態を示す。示す4個の異なるセンサアレイ形状は、可撓性回路に実装される。
図3C~3Fが、4個の異なるセンサアレイ形式および構成を示す一方、
図3Dに示す通りの設計もまた、コネクタパッド端部分303を示す。しかしながら、
図3C、3Eおよび3Fの設計もまた、これらのFPCが、コントロールモジュールまたは他の処理ユニットと通信することが可能になるように、コネクタパッド端部分303を伴って作り出され得る。
図3C~3Fは、センサアレイ部分301の4個の異なるセンサアレイ形状を示す。
【0080】
図3Gは、一部の実施形態に従い、
図3Dに示すセンサアレイ設計のセンサアレイ部分301を、より詳細に示す。
図3A~3Gの実施形態では、センサアレイ部分301が、創傷接触層などの創傷被覆材構成要素の周囲近辺、または創傷被覆材構成要素の外縁から内向きのいずれかに延在する複数の部分を含むことは、理解されるであろう。例えば、図示する実施形態は、創傷被覆材構成要素の縁に平行で、一部の実施形態では、創傷被覆材構成要素の全体周囲を辿ってもよい、複数の直線延在部分を含む。一部の実施形態では、センサアレイ部分は、第2の複数の平行な直線延在部分と垂直である、第1の複数の平行な直線延在部分を備え得る。これらの直線延在部分はまた、異なる長さを有してもよく、創傷被覆材構成要素の内部の中で、内向きに異なる場所へ延在してもよい。一部の実施形態では、センサアレイ部分は、創傷被覆材構成要素全体を被覆せず、そのため、センサアレイの複数部分間に割れ目が形成される。
図3Aに示す通り、これにより、一部、および場合により大多数の創傷被覆材構成要素のカバーを、センサアレイによって取ることが可能になる。例えば、
図3Aおよび3Hに示す通りの穿孔創傷接触層に対して、センサアレイ部分301は、創傷接触層の大多数の穿孔を遮断しなくてもよい。一部の実施形態では、センサアレイはまた、流体の流れへの穿孔の遮断を最小化するために、創傷接触層の穿孔に合致するように穿孔されてもよく、または形作られてもよい。
【0081】
センサアレイの電気または電子接続性は、利用される様々なセンサおよびセンサアレイ設計によって変化し得る。一部の実施形態では、
図3C~3Fに示す通り、総計79個の接続部を使用して、センサアレイの構成要素を接続し得る。例えば、センサアレイ内のセンサのサブセットまたは全体は、互いに接続し得る。センサアレイは、40本、ピッチ0.5mmの平行フラットフレキシブルケーブル(FFC)の二つの接触表面で終端することができ、最上表面上に端子を伴い、Molex 54104-4031などのFFCコネクタに接続するように設計される。
【0082】
一部の実施形態では、温度センサ、伝導度センサ、SpO2センサ、または光学、紫外線(UV)、赤外線(IR)もしくは他のタイプの可視もしくは不可視の光センサは、創傷の状態に関係する情報を提供するように、センサアレイ上で使用され得る。光学、紫外線(UV)、赤外線(IR)もしくは他のタイプの可視もしくは不可視の光センサ、または他の電磁スペクトルセンサによって、創傷のスペクトル測定値を提供し得る。センサアレイおよび個々のセンサは、創傷の治癒を監視する際に、臨床医を支援し得る。一つ以上のセンサは、創傷および創傷治癒特性に関係するデータを提供するように、個々にまたは互いと連携して動作し得る。
【0083】
温度センサまたは温度計は、温度を測定するために、熱電対またはサーミスタを使用し得る。温度センサは、基礎を成す創傷の温度、もしくは創傷被覆材内の熱環境を測定または追跡するように使用され得る。温度センサは較正することができ、センサから得られるデータは、創傷環境についての情報を提供するように処理され得る。一部の実施形態では、関心領域とは異なる別の領域の温度を測定する第2温度センサ、または外気温を測定する周囲センサはまた、例えば、関心領域から離れる熱流束の変化を補うために、または周囲温度の変化に関連する生理作用を補うために、環境温度シフトと関連する問題を排除するのを支援するように使用され得る。
【0084】
光学センサは、統合型または別個の照明源を伴う光センサ(例えば、光学、紫外線(UV)、赤外線(IR)または他のタイプの可視もしくは不可視の光センサ)を使用して、創傷組織、滲出液、創傷部位、または創傷を囲む皮膚のうちの一つ以上の様子など、創傷または皮膚パラメータを測定するように使用され得る。一部の実施形態では、センサ(使用する場合、別個の照明源と共に)は、皮膚に押し付けることができ、光が組織中に透過し、組織自体のスペクトル特性を呈するであろう。一部の実装では、センサ(使用する場合、別個の照明源と共に)は、撮像領域から遠隔にまたは遠く離れて位置し得る。シリコーンなどの光ガイドまたは光ファイバは、撮像領域上へ光を伝達するように使用され得る。光学センサは、表面より下方の様々な深度で、表面または構成要素(例えば、組織、血管など)のうちの一つ以上を測定し得る。一つ以上の波長による光の拡散は、様々な深度で測定を得る(例えば、深度の精度または選択性を獲得する)ように使用され得る。様々な深度での測定は、光源と検出器との間の間隔を変更または変化させることによって実施され得る。光コヒーレンストモグラフィは、深度情報を得るように使用され得る。共焦点技術が深度の精度または選択性を獲得するように使用され得る。光学センサは、滲出液レベル、バイオフィルムの有無などを測定するように使用され得る、創傷の光沢または偏光を測定するように使用され得る。導波管、レンズまたは偏光特徴部などの一つ以上の光学特徴部が、測定(深度測定など)を支援するように、創傷被覆材中に、または創傷被覆材の真下に組み込まれ得る。例えば、一つ以上の偏光特徴部は、深度測定、または血液灌流もしくは酸素飽和測定に使用されてもよい、偏光測定を可能にするかまたは強化するように、生体適合被覆材層中に、または生体適合被覆材層の真下に組み込まれ得る。
【0085】
一部の実施形態では、一つ以上の光学指紋センサを利用し得る。そのようなセンサは、分光デバイスとして働くことができ、あるスペクトル応答の有無を測定するように構成され得る。応答は、線形または非線形(蛍光)であり得る。例えば、全盛期測定は、滲出液測定、組織蛍光(接触測定によってなど)または細菌蛍光を含み得る。揮発性有機化合物(VOC)など、一つ以上の化合物の有無がスペクトル応答から特定され得る。化合物の存在は、例えば、感染または平常の治癒過程と関連付けられてもよい、代謝、生物または化学的活性を示し得る。特定の分子の有無が、スペクトル応答から特定され得る。例えば、オゾン(創傷治癒に有益であり得る)の存在は、約220nmから約330nmのスペクトル領域で特定され得る。赤外線スペクトル測定は、タンパク質と関連付けられ得る、カルボン酸(酪酸など)の存在を特定するように使用され得る。ある実装では、一つ以上のバイオマーカまたは色素は、一つ以上の関心のある構成要素のスペクトル視感度および応答を強化するように使用され得る。
【0086】
一部の実装では、一つ以上の光源または検出器は、創傷の外側に位置し得る。創傷は点灯することができ、または光は組織を通って検出され得る。透過照明が、異常の有無を特定するように使用され得る。
【0087】
ある場合には、一つ以上の電子鼻(またはe-nose)センサが、一つ以上のVOCの存在を検出するように使用され得る。
【0088】
組織の中の光伝播は、二つの主要な現象である、散乱および減弱によって支配され得る。減弱に対して、光が組織を通過するとき、組織の様々な構成要素による吸収のために、光の強度が損なわれる場合がある。青色光は、大きく減衰する傾向がある一方、スペクトルの赤末端の光は、最も減衰が少ない傾向がある。
【0089】
散乱過程はより複雑である場合があり、考慮しなくてはならない様々な「レジーム」を有し得る。散乱の第1態様は、入射光の波長と比較した、散乱中心のサイズに基づく。散乱中心が光の波長よりもかなり小さい場合、レイリー散乱が想定され得る。散乱中心が光の波長ほどである場合、より詳細なミー散乱の定式化を考慮しなくてはならない。散乱光に関与する別の要素は、散乱媒質の投入と排出との間の距離である。光の平均自由行程(散乱事象間の距離)が、動く距離よりもかなり長い場合、弾道的光子輸送が想定される。組織の場合、スキャット事象はおよそ100ミクロン離れているため、1mmの行程距離により、光子の方向を効果的にランダム化し、システムは拡散性レジームに入るであろう。
【0090】
図3Jは、一部の実施形態に従い、光強度が1/e倍(元の光強度のおおよそ37%)で減衰する前に、光がどこまで皮膚を通過し得るかを示す。強度損失は、以下の式によって与えられる指数関数(ランベルト‐ベールの法則)である。
【0091】
【0092】
式中、は侵入深さの値である。この強度の指数関数的下降が、点灯されたとき組織が赤に見える理由であり、組織の中へおよび組織から伝播するほぼすべての光が、スペクトルの赤末端の中であろう。これは、距離によって振る舞い方が変化するフィルタと考えることができ、すなわち、光の源がさらに遠くへ離れて移動すると、それにしたがって、検出器に到達するスペクトルが変化するであろう。
図3Jおよび3Kのグラフは、組織の中へ向かう光の散乱および減弱という要素の組み合わせである。
図3Jは、組織の中へ向かう光の強度損失を示す。
図3Kは、一部の実施形態に従う、光検出器の応答を示す。
【0093】
超高輝度の発光ダイオード(LED)などの好適な光源、光検出器またはポリエステル光学フィルタは、組織、滲出液または異物(例えば、組織の色分け用)の光学的性質を通して測定する、光学センサの構成要素として使用され得る。例えば、表面の色は反射光から測定し得るため、色は、所与の形状に対して最初に組織を通過した光から測定され得る。これは、拡散した散光、すなわち、創傷または皮膚と接触する光源(例えば、白、RGB、IR LEDまたは類似のもの)からの色の感知を含み得る。一部の実施形態では、光源は、組織を通って拡散した光を検出するように、すぐ近くの光検出器と共に使用され得る。光学センサは、拡散した内部の光または表面反射光で撮像し得る。フォトダイオードなどの好適な光検出器が使用され得る。例えば、光検出器は、
図3Qに示す通り、赤、緑、青、透明(RGBC)のスペクトル応答(またはチャネル上の鋭敏比)を有し得る。一部の場合、Rhom BH1745NUC色センサが使用され得る。
【0094】
加えて、光学センサが、自己蛍光を測定するように使用され得る。組織は一つの波長で光を吸収し、別の波長で放出しているため、自己蛍光が使用される。加えて、死んだ組織は自己蛍光を発することができないため、これは、組織が健康か否かに関する非常にはっきりとした指標となり得る。そのような浅い侵入深さを有する青色光(または、さらにUV光)によって、例えば、非常に特有の波長で自己蛍光を発するであろう健康な組織に対して、バイナリテストとして働くように、すぐ近くの赤に敏感なフォトダイオード(または、一部の他の波長をシフトする周波数帯)によるUV光を有することは、非常に有用である場合がある。
【0095】
伝導度またはインピーダンスセンサは、生きている組織と死んだ組織との間の差を判定するか、または病的組織の中で開いている創傷による、インピーダンスの変化を示すかに使用され得る。伝導度センサは、Ag/AgCl電極およびインピーダンス分析器を含み得る。伝導度センサは、周囲の組織/エリアのインピーダンスを測定することによって、創傷が大きくなった領域のインピーダンスの変化を測定するように使用され得る。一部の実施形態では、センサアレイは、創傷サイズまたは創傷の形の変化による、周囲の電極上の伝導度の変化を測定するように、伝導度センサを利用し得る。例えば、断層撮影の再構築または断層撮影法は、異なる間隔の伝導度センサまたは電極を使用することによって、創傷サイズを推測するように使用され得る。電圧または電流プローブは、患者の神経応答を判定もしくは試験するために、または創傷治癒を促進するために、電圧または電流の刺激を印加するように使用され得る。一部の実施形態では、伝導度センサは、創傷床の中でまたは創傷の周囲で使用され得る。伝導度測定値は、被覆材の接着不具合を検出するように使用され得る。伝導度は、生体適合層(例えば、創傷被覆材の)を通る、または創傷に接触する、生体適合性ゲル層(例えば、導電性ゲル層)もしくは食塩水を通る導電経路で測定され得る。測定は、約2.5kHzから約60kHzの周波数域で行われ得る。これは、大きなパッチクランプ測定の使用と類似し得る。代替としてまたは加えて、伝導度は、組織との直接接触を形成することなく(例えば、非接触電極を使用して)、静電容量または静電結合方法を使用して測定され得る。例えば、約30kHzから約70kHzの周波数域における伝送が使用され得る。伝導度は、3点プローブ測定または4点プローブ測定を使用して測定され得る。創傷組織または滲出液の一つ以上の伝導度を測定することができ、細胞または組織の健康を推測するように使用され得る。創傷周辺の領域(創傷を囲む皮膚または組織など)の伝導度を測定し得る。伝導度センサは、必要な場合には出入りするように、伸縮自在であり得る。伝導度センサは、創傷および絶縁軸の中へ延在する導電性のある先端を伴う、微細またはマイクロプローブ針を含み得る。伝導度センサは、創傷と接触する創傷接触層の真下にある、懸垂プローブであり得る。伝導度センサは、乾いた接触電極を含み得る。伝導度センサは、金、銀、白金または炭素電極など、生体適合性を保証または推進するように構成される電極を含み得る。
【0096】
一部の実施形態では、pHが変化するパッドがpHセンサとして使用され得る。分光計、および広帯域の白色光源またはRGB LEDは、pH色素のスペクトル応答を測定するように使用され得る。照明および撮像は、創傷と接触している創傷被覆材の表面上と、流体塗布と同じ側面にある最下表面上とに提供され得る。代替として、一部の実施形態では、照明および撮像源は、最下表面に対向し、流体塗布から離れた創傷被覆材の表面、または被覆材もしくは創傷接触層の最上表面上に提供され得る。一部の実装では、pHセンサは、比色物質に反射するときにスペクトル測定される光の、二つまたは三つ(またはそれより少ないもしくは多い)の波長を含む、光学測定デバイスである。pHが変化する発泡体が、創傷被覆材に含まれ得るか、または統合され得る。発泡体は、環境によって(例えば、創傷滲出液の内容物または組成によって)、光のスペクトル吸収を変更し得る。代替としてまたは加えて、環境におけるpH変化によって、色を変更するパッドまたは特徴部が利用され得る。そのようなパッドを光学的に測定および評価して、pHレベルを判定し得る。ある場合には、pHセンサは、検出精度を改善し得る、センサのpH感受性領域に渡って流れる滲出液を可能にする、滲出液を導くシステム(流路など)を含み得る。一部の場合、全体のまたは実質的に全体の被覆材に、pH感受性を持たせ得る。
【0097】
一部の実施形態では、SpO2センサなど、一つ以上のパルスオキシメトリセンサが使用され得る。そのようなセンサによって、例えば、血液を酸素化する方法および拍動血流のうちの一つ以上を測定するように使用され得る、マルチスペクトル光学測定を得ることができる。マルチスペクトル光学測定センサは、時間分解光学測定を判定し得る。一部の場合、パルスオキシメトリ測定は、二つの異なる光波長で、光吸収/透過の時間分解測定を行うことによって機能する。ヘモグロビンが酸素化されるとき、その吸収スペクトルが非酸素化血液に関して変化する。二つの異なる波長で測定を行うことによって、一方で、血液を酸素化する方法の比率を用いた測定尺度を得る。例えば、SpO2センサは、およそ500Hzのサンプルレートで動作し、デュアルバンドの赤色(R)および赤外線(IR)測定を得ることができる。一部の実施形態に従い、未加工の形式でSpO2センサを使用して行われた測定を、
図3Lおよび
図3Mに示す。
図3Mは、一部の実施形態に従う、
図3Lのグラフの拡大図を示す。
【0098】
図3Mの拡大グラフから、拍動血流の波形がはっきりと観察され得る。SpO2を抽出するために、データから抽出した値は、各波長に対する、所与のパルスピークの高さと谷との間の比率である。その後、別の比率がこれら二つの値の間から取られる。ピークおよび谷は、ピーク検出アルゴリズムを使用して、正確に置かれ得る。データのいくつかの点が、各状況に対して取られ平均値を求め得る。
【0099】
【0100】
この比率は計算されると、ハードウェア上に保管され得る「参照テーブル」を使用して、SpO2レベルに経験的に適合される。この値は、基本的に各波長でヒト組織の吸収および散乱に依存するが、システムをモデル化する複雑さは、経験的モデルの使用によって回避される。
【0101】
センサアレイの中の構成要素は、複数の接続によって接続され得る。一部の実施形態では、温度センサ(サーミスタなど)は、5個一組で配設され得る。一部の実施形態では、複数のサーミスタは、各サーミスタを名目上10kΩにして使用することができ、5個の各組は共通の接地を有する。5組のサーミスタがあり、全部で30個の接続部を供給する。一部の実施形態では、9個の伝導性端子が存在し得る。各伝導性端子は一つの接続部を必要とし、全部で9個の接続部を供給する。ある実装では、最大で8個の接続部が使用される。例えば、4個の接続部はセンサアレイの中心(一片3cmの四角形など)近くに作ることができ、4個の接続部はセンサアレイの周縁部(一片9cmの四角形など)に作られ得る。ある実装では、追加の導電層が、組織から見て外を向く伝導度パッドの側面(接続部が形成される)上に組み込まれ得る。追加の導電層は、非導電層によって伝導度パッドから分離され得る。これは、電磁伝播を配向するのに役立ち得る。
【0102】
一部の実施形態では、5個のSpO2センサが存在し得る。一部の実施形態では、aach(アンモニウムアルミニウムカーボネートヒドロキシド:ammonium aluminium carbonate hydroxide)SpO2センサは、電力および接地(これらは別途被覆される)に加え三つの接続部を必要とし、全部で15個の接続部を供給する。一部の実施形態では、光学、UV、IRまたは他のタイプの可視もしくは不可視の光センサ10個が存在し得る。そのような各センサは、RGB LEDまたはRGBフォトダイオードなどの光源を備え得る。そのような各センサは6個の接続部を必要としてもよいが、しかしながら、これらのうちの5個は全センサに共通し、全部で15個の接続部を供給する。電力および設置は別途考慮される。一部の実施形態では、5個のpHセンサが存在し得る。pHセンサは色が変化するディスクであることができ、上に記載した光学、UV、IRまたは他のタイプの可視もしくは不可視の光センサを使用して感知され得る。そのため、pHセンサは追加の接続部を必要としない。三つの電源レールおよび7個の接地リターン信号があり、全部で10個の共通接続部を供給し得る。一部の実施形態では、センサアレイは、25個の温度センサ(サーミスタMurata NCP15WB473E03RCなど)、9個の伝導性端子、5個のSpO2センサ(例えば、ADPD144RI)、10個の光源(例えば、KPTF-1616RGBC-13などのRGB LED)、10個の光学、UV、IRまたは他のタイプの可視もしくは不可視の光センサ、10個のFET、一つのプリント回路基板(PCB)および一つの組立部を含み得る。
【0103】
図3Hは、一部の実施形態に従い、穿孔創傷接触層に組み込まれる可撓性センサアレイを示す。
図3Hに示す通り、PCBセンサアレイは、二つのフィルムまたは創傷接触層の間に挟まれ得る。創傷接触層は、創傷滲出液が被覆材の中へ流れるのが可能になる一方で、創傷被覆材の中への組織内殖を妨げるのに役立つほど充分小さい、上に記載した通りのスリットまたは孔として形成される穿孔を有し得る。一部の実施形態では、創傷接触層は、統合型センサアレイを伴う創傷接触層の可撓性を増大させる、一つ以上のスリットを有し得る。一部の実施形態では、創傷接触層のうちの一つは、センサが皮膚に直接接触し得るように、センサを収容する余分な切り取り部を有し得る。
【0104】
一部の実施形態では、回路は基材の一側面上に設置または印刷することができ、センサなどの電子構成要素もまた、その側面上に設置される。その後、構成要素およびトラックは、基材の片面または両面上で、一つ以上の絶縁または被包材の層で被覆され得る。
【0105】
図3N~3Pは、可撓性を増大させ、センサが創傷に直接アクセスするのが可能になり、創傷接触層を通って流体を輸送するのを支援するように、様々な配設でスリットおよび孔を備える創傷接触層を示す。一部の実施形態では、孔およびスリットの配設により、センサが創傷の中心、創傷の縁または無傷の皮膚へアクセスするのが可能になり得る。
図3N~3Pは、様々なスリットの配設および構成を伴う、創傷接触層の実施形態を示す。
図3Nは、孔と、大きな中心孔から放射状に延在する曲線スリットとを含む、創傷接触層の実施形態を示す。
【0106】
図3Oは、一部の実施形態に従い、孔と、部分円、および創傷接触層の円周から中心へ延在するスリットを形成する曲線スリットとを含む、創傷接触層を示す。
【0107】
図3Pは、一部の実施形態に従い、孔と、大きな中心孔から創傷接触層の外周囲の方へ、放射状に延在するスリットとを含む、創傷接触層を示す。
【0108】
コントローラまたはコントロールモジュールは、センサアレイと連動するように使用され得る。一部の実施形態では、コントロールモジュールは、センサを駆動するように、バッテリなどの電源および電子機器を包含し得る。またコントロールモジュールにより、適切な間隔でデータのログを取り、パーソナルコンピュータ(PC)などの外部コンピュータデバイスへの、データ転送が可能となり得る。コントロールモジュールは、センサアレイで使用されるセンサと、センサにより収集されるデータとによって、様々な特徴部を有するようにカスタマイズされ得る。一部の実施形態では、コントロールモジュールは、数週間継続して身に着けられるほど、充分快適で小型であり得る。一部の実施形態では、コントロールモジュールは、創傷被覆材近くまたは創傷被覆材上に位置し得る。一部の実施形態では、コントロールモジュールは、創傷被覆材および付随のセンサアレイから遠隔の場所に位置し得る。コントロールモジュールは、被覆材上、被覆材近くまたは創傷被覆材から遠隔に位置していても、電線を介してまたは無線通信によって、センサアレイおよび創傷被覆材と通信し得る。無線通信は、125kHzから134kHz、13.56MHz、784MHz、856MHzから960MHz、868Mhz、915Mhz、2400MHzから2483.5Mhz、3.6GHz、4.9GHz、5GHzまたは5.9GHzのうちの一つ以上の周波数帯域を使用して実施され得る。一部の実施形態では、コントロールモジュールは、異なるセンサアレイと共に利用されるように適応することができ、センサアレイの容易な交換が可能となり得る。
【0109】
一部の実装では、センサアレイを接続する、コントロールモジュールまたは電子機器は、追加のセンサを含み得る。別の例として、一つ以上の追加センサは、血糖もしくはグルコースレベル、水和作用または他の生理学的パラメータ(例えば、患者の併存疾患、栄養状態、治療、時間尺度、全身状態)を検出し得る。一つ以上の水和作用センサは、二つのパッドに渡る交流(AC)による誘導測定、および他の二つのパッドに渡る電圧測定を実施し得る。加えてまたは代替として、皮膚弾力は、栄養状態または水和作用と相関し得る。皮膚弾力は、浅い貫通部で超音波スイープを実施することによって判定し得る。エラストマー電気活性ポリマーまたは別の圧電トランスデューサが、超音波スイープを実施する、トランスデューサまたは受信機として使用され得る。
【0110】
一つ以上の追加センサにより収集されるデータは、精度を試験または改善するために、センサアレイから受信されるデータを相関させるように使用され得る。一部の実施形態では、拍動血流の範囲(約0.3Hzから約4Hzなど)に合致する、センサアレイの中の一つ以上のセンサの出力の変動が判定され、一つ以上の追加センサにより収集されるデータと相関し得る。これは、センサアレイの精度を試験または改善するのに使用され得る。
【0111】
一部の実施形態では、コントロールモジュールは、以下の表1に列挙する特徴を含むが限定はされない、様々な要件および特徴の組み合わせを含み得る。
【0112】
【0113】
図3Iは、一部の実施形態に従う、コントロールモジュールのブロック図を示す。コントロールモジュールのブロック図は、伝導度ドライバの特徴を表示する、伝導度ドライバボックス391を含む。ボックス392は、温度センサ(例えば、サーミスタ)インターフェースの特徴を示し、ボックス393は光インターフェースの特徴を示す。コントロールモジュールは、ボックス394に示されるものと類似の特徴を伴う、コントローラまたはマイクロプロセッサを含み得る。リアルタイムクロック(RTC)、状態LED、USBコネクタ、シリアルフラッシュおよびデバッグコネクタは、
図3Iに示す通り、コントロールモジュールの特徴部として含まれ得る。
【0114】
一部の実施形態では、マイクロプロセッサは、次の特徴のうちの一つ以上を有し得る。2.4GHz、もしくは本明細書に開示する別の周波数帯、またはいかなる他の好適な周波数無線(統合型または外付けのいずれか);供給するBluetooth(登録商標)ソフトウェアスタック;SPIインターフェース;USB(または外付けUSBドライバ用UART);I2C;3チャネルPWM;32GPIO;または6チャネルADC。一部の実施形態では、デバイスは、盛り上がりを作る制限から、少なくとも48個のI/Oピン、または場合によりそれ以上を含み得る。Bluetooth(登録商標)スタックは通常、20kB未満の搭載フラッシュを必要とするため、最低32kBが必要とされ得る。一部の実施形態では、複雑なデータ処理を考慮する場合には、64kBが必要とされ得る。プロセッサコアは、ARM Cortex M4または類似のプロセッサコアであり得る。一部の実施形態では、部品は、外部無線機、もしくは統合無線機を含むNXPのKinetis KWクラスを必要とし得る、STのSTM32L433LCまたはSTM32F302R8マイクロプロセッサを含み得る。
【0115】
一部の実施形態では、コントロールモジュールは、メモリ構成要素を含むことができ、ローカルストレージの量は、センサのサンプル速度および解像度による。例えば、推定されるデータ要件である256Mb(32MB)は、いくつかの製造業者(Micron、Spansion)のシリアルフラッシュデバイスを使用することによって満たされ得る。
【0116】
コントロールモジュールは、一つ以上のアナログスイッチを利用し得る。一部の実施形態では、優れたオン抵抗および合理的な帯域幅を伴うアナログスイッチが使用され得る。例えば、Analog DevicesのADG72またはNXPのNX3L4051HRが使用され得る。一部の場合、これらのスイッチのうちの8個が必要とされてもよい。
【0117】
コントロールモジュールは、バッテリなどの電源を組み込み得る。例えば、300mWh/日のバッテリが使用され得る。7日間で2100mWhである。これは、10日間分の非充電式ER14250(直径14.5mmx25mm)LiSOCl2セル、または7日間分の充電式Li 14500(直径14.5mmx500mm)Li-Ionにより提供され得る。一部の実施形態では、コントロールモジュールとは別個の電源が使用され得る。
【0118】
コントロールモジュールは、リアルタイムクロック(RTC)を組み込み得る。RTCは、結晶を伴ういずれのRTCデバイスより選ばれ得る。コントロールモジュールはまた、種々の抵抗器、コンデンサ、コネクタ、充電コントローラおよび他の電力供給部も含み得る。
【0119】
コントロールモジュールのPCBは、およそ50mmx20mmまたは25mmx40mmの4層基板であり得る。使用されるPCBのタイプは、センサアレイへの接続要件によって大部分駆動され得る。
【0120】
コントロールモジュールの筺体は、センサアレイまたはバッテリを充電するために、容易にアクセスが可能になるクリップ特徴部を伴う、二つの部分から成る成形品であり得る。
【0121】
センサアレイを通して収集されるデータは、コントロールモジュールを通過し、ホストソフトウェアにより処理され得る。ソフトウェアは、処理デバイス上で実行されてもよい。処理デバイスは、PC、タブレット形式のコンピュータデバイスもしくはタブレット、スマートフォンまたはホストソフトウェアを動かすことができる他のコンピュータ(例えば、特注のコンピュータデバイス)であり得る。ソフトウェアを実行する処理デバイスは、電線を通してまたは無線通信によって、コントロールモジュールと通信し得る。一部の実施形態では、ソフトウェアは、センサから受信するデータに関するビッグデータ解析(またはエッジコンピューティング)を実施するのではなく、コントロールモジュール上に保管するデータへのアクセスを提供するように構成されてもよい。ホストソフトウェアは、Bluetooth(登録商標)またはUSBを介した、コントロールモジュールに対するインターフェースを含み得る。一部の実施形態では、ホストソフトウェアは、コントロールモジュールの状態読み取り、コントロールモジュールからのログデータのダウンロード、コントロールモジュールへのサンプル速度制御のアップロード、コントロールモジュールデータのビッグデータ解析エンジンによる処理に好適な形式への変換、または解析エンジンによる処理用クラウドへのデータのアップロードを行い得る。
【0122】
ソフトウェアは、PC(Windows/Linux(登録商標))、タブレットもしくはスマートフォン(Android/iOS)、または複数のプラットフォーム向けに開発されてもよい。一部の実施形態では、センサアレイによって収集されるデータは、処理用の遠隔コンピュータデバイスへ伝えることができる。例えば、データは、インターネットへアップロード、またはクラウドによって処理され得る。一部の実装では、センサアレイとコントロールモジュールとの間の接続が有線のとき、コントロールモジュールは、クラウドなど、遠隔コンピュータデバイスと通信し得る。ある実装では、センサアレイとコントロールモジュールとの間の接続が無線のとき、センサアレイは、クラウドなど、遠隔コンピュータデバイスと直接通信するか、または遠隔コンピュータデバイスと通信するように、コントロールモジュールを使用し得る。
【0123】
一部の実施形態では、センサまたはコントロールモジュールのうちの一つ以上を含む電子機器は、X線、MRIまたは他のタイプの走査に対して、互換性があるかまたは安全であるように構築され得る。電子機器は、体外または植込み型除細動器と適合し、またはそれらと使用しても安全であるように構築され得る。電子機器は、無線周波干渉(RFI)または電磁干渉(EMI)に対する保護を含み得る。例えば、フェライト、銅または別の材料から作られ得る、一つ以上のEMIシールドが使用され得る。ファラデー箱または類似のもの。
【0124】
ある実装では、セキュリティ対策は、測定値および他のデータに、権限のない人員がアクセスするのを防ぐように実装され得る。例えば、ある通信またはコマンドは、無線ではなく、有線インターフェースによる伝送を必要としてもよい。加えてまたは代替として、データの暗号化または変調が使用され得る。ある実装では、デバイスID、時刻(リアルタイムクロックと相関しなくてもよい)または未加工データのみが、セキュリティ対策が施されていないインターフェースを通して提供または識別される。そのようなデータは匿名であり、安全なインターフェースを通してのみ提供することができる、基準患者識別情報またはリアルタイムクロック情報なしでは意味がない。
【0125】
一部の実施形態では、陰圧の源(ポンプなど)、ならびに電源、センサ、コネクタ、ユーザインターフェース構成要素(例えば、ボタン、スイッチ、スピーカ、画面など)および同類のものなど、局所陰圧システムの他の構成要素の一部またはすべては、創傷被覆材と一体化し得る。一部の実施形態では、構成要素は、裏当て層の最上部下方、最上部内、最上部上、または裏当て層に隣接して統合され得る。一部の実施形態では、創傷被覆材は、創傷被覆材の層、および統合された構成要素のいずれの上に、位置決め用第2カバー層または第2フィルタ層を含み得る。第2カバー層は、被覆材の一番上の層であることができ、または局所陰圧システムの統合された構成要素を取り囲んでいた、別個の外皮であり得る。
【0126】
本明細書で使用される通り、上部層、最上層または上方の層は、被覆材が使用中で、創傷の上に位置する間、皮膚または創傷の表面から最も遠い層を指す。したがって、下表面、下部層、最下層または下方の層は、被覆材が使用中で、創傷の上に位置する間、皮膚または創傷の表面に最も近い層を指す。
【0127】
NPWTシステムの使用
図4A~Dは、一部の実施形態に従い、患者の創傷部位を治療するように使用される、陰圧療法創傷治療システムの使用を示す。
図4Aは、治療のために清潔にされ準備されている、創傷部位400を示す。図中、創傷部位400を囲む健康な皮膚は清潔にされ、過度の毛は除去または剪毛され得る。創傷部位400はまた、必要な場合、無菌食塩水で洗浄されてもよい。任意で、皮膚保護剤が創傷部位400を囲む皮膚に塗布されてもよい。必要な場合、発泡体またはガーゼなどの創傷パッキング材料が、創傷部位400の中に設置されてもよい。これは、創傷部位400がより深い創傷の場合に好ましい場合がある。
【0128】
ここで
図4Bを参照すると、創傷部位400を囲む皮膚が乾いた後、創傷被覆材100は、創傷部位400の上に位置し設置されてもよい。一部の実施形態では、創傷被覆材100は、創傷部位400の上にまたはそこに接触して、創傷接触層と共に設置される。一部の実施形態では、接着層は、創傷接触層の下表面上に提供され、一部の場合、創傷部位400の上に創傷被覆材100を設置する前に除去されるように、任意の放出層によって保護されてもよい。被覆材100は、流体がポートの周りに貯留するのを回避するために、流体コネクタ110が、被覆材10の残余部に対して持ち上げられた位置にあるように位置し得る。一部の実施形態では、被覆材100は、流体コネクタ110が創傷の上に直接重ならないように位置し、創傷と同じ高さまたは創傷よりも高い地点にある。TNPに対する適正な密封を保証するのに役立つように、被覆材100の縁は、縦溝または襞を回避するように滑らかであり得る。
【0129】
ここで
図4Cを参照すると、被覆材10はポンプ150に接続している。ポンプ150は、被覆材100を介して、通常、導管によって創傷部位へ陰圧を印加するように構成される。一部の実施形態では、本明細書に記載する通り、流体コネクタ110は、導管190をポンプから被覆材100に接合するように使用されてもよい。流体コネクタが創傷被覆材の最上層に接着する場合、長いチューブは、チューブ、すなわち導管が、流体コネクタから離れて被覆材の最上層と平行に延在するように、流体コネクタの第1端部で連結されてもよい。一部の実施形態では、導管は流体コネクタを備えてもよい。導管は柔らかいブリッジ、硬質管、または流体を輸送する働きをしてもよい、いかなる他の装置であってもよいと明確に考えられる。ポンプ150による陰圧の印加の際、一部の実施形態では、被覆材100は、被覆材100下方の空気の一部またはすべてが取り除かれた結果として、一部崩れ、皺の寄った様子を提示してもよい。一部の実施形態では、ポンプ150は、いずれかの漏出が、被覆材100と創傷部位400を囲む皮膚との間の界面など、被覆材100の中に存在するかを検出するように構成されてもよい。漏出が見つかった場合、そのような漏出は、治療を継続する前に是正され得る。
【0130】
図4Dに目を転じると、追加の固定ストリップ410がまた、被覆材100の縁の周りに取り付けられてもよい。そのような固定ストリップ410は、創傷部位400を囲む患者の皮膚に対して、追加の密封を提供するために、一部の状況では好都合であってもよい。例えば、固定ストリップ410は、患者がより動けるときに、追加の密封を提供してもよい。一部の場合、固定ストリップ410は、具体的には被覆材100が、到達するのが困難なまたは起伏のあるエリアの上に設置される場合に、ポンプ150の起動前に使用されてもよい。
【0131】
創傷部位400の治療は、創傷が所望の治癒レベルに到達するまで続けられ得る。一部の実施形態では、ある一定期間が経過した後、または被覆材が創傷流体で一杯の場合に、被覆材100を交換するのが望ましい場合がある。そのような交替中、ポンプ150は維持され、被覆材100のみが替えられてもよい。陰圧なしに使用される創傷被覆材適用の間、
図4A~4Dを参照して記載した通りの類似の手順が続き得る。しかしながら、創傷被覆材はポートまたは流体コネクタを備えず、被覆材は、
図4Cに記載した通り、陰圧源に接続しないであろう。
【0132】
他の変形例
本明細書に提供する閾値、制限、期間などのいかなる値も、絶対的であることを意図せず、したがって近似であり得る。加えて、本明細書に提供するいかなる閾値、制限、期間なども、自動的にまたはユーザによってのいずれかで、固定または変化し得る。さらに、本明細書に使用する通り、参照値に関する、例えば、超える、より大きい、より少ないなどの相対的用語は、参照値と等しいことを網羅することもまた意図している。例えば、正の値である参照値を超えることは、参照値と等しいか、または参照値より大きいことを網羅し得る。加えて、本明細書に使用する通り、参照値に関する、例えば、超える、より大きい、より少ないなどの相対的用語はまた、参照値に関する、下回る、より少ない、より大きいなどの開示する関係の逆を網羅することもまた意図している。さらに、様々な過程のブロックについて、値がある特定の閾値を満たすか否かを判定する点に関して記載してもよいものの、ブロックは、例えば、(i)閾値を下回るまたは上回る値、または(ii)閾値を満足するもしくは満足しない値に関して同様に理解され得る。
【0133】
ある特定の態様、実施形態もしくは例と連動して記載する特徴、材料、特性またはグループは、互換性がない場合を除き、本明細書に記載するいかなる他の態様、実施形態または例に適用可能であると理解されるべきである。本明細書(添付の特許請求の範囲、要約書および図面のいずれをも含む)に開示する特徴のすべて、または同様に開示するいずれの方法もしくは過程のステップのすべては、そのような特徴またはステップの少なくとも一部が、互いに排他的である組み合わせを除き、いかなる組み合わせで組み合わせられてもよい。保護対象は、いかなる前述の実施形態の詳細にも限定されない。保護は、本明細書(添付の特許請求の範囲、要約書および図面のいずれをも含む)に開示する特徴のいずれか新規のもの、もしくはいずれか新規の組み合わせ、または同様に開示するいずれの方法もしくは過程のステップのいずれか新規のもの、もしくはいずれか新規の組み合わせに及ぶ。
【0134】
ある実施形態について記載してきたが、これらの実施形態は、例としてのみ提示しており、保護の範囲を限定することを意図していない。実際、本明細書に記載する新規の方法およびシステムは、様々な他の形態で具体化されてもよい。さらに、本明細書に記載する方法およびシステムの形態において、様々な省略、置換および変更がなされてもよい。一部の実施形態では、図示または開示する過程で取られる実際のステップが、図面に示すものと異なってもよいことを、当業者は理解するであろう。実施形態によって、上に記載したステップのいくつかが除去されていてもよく、別のステップが加えられてもよい。例えば、開示する過程で取られる実際のステップまたはステップの順序が、図面に示すものと異なってもよい。実施形態によって、上に記載したステップのいくつかが除去されていてもよく、別のステップが加えられてもよい。例えば、図面に示す様々な構成要素は、プロセッサ、コントローラ、ASIC、FPGAもしくは専用ハードウェア上のソフトウェアまたはファームウェアとして実装されてもよい。コントローラ、プロセッサ、ASIC、FPGAおよび類似ものなど、ハードウェア構成要素は論理回路を含み得る。さらに、上に開示した特定の実施形態の特徴および属性は、追加の実施形態を形成するように、異なる手段で組み合わせられてもよく、それらのすべては本開示の範囲内に入る。
【0135】
「できる」、「し得る」、「可能性がある」または「してもよい」など、条件の言葉は、具体的に別段の定めがある場合を除き、または使用される文脈内と理解される場合を除き、ある実施形態はある特徴、要素またはステップを含み、他の実施形態は含まないことを伝えることを、概して意図している。それゆえ、そのような条件の言葉は、特徴、要素もしくはステップが、何らかの形で一つ以上の実施形態で必要とされること、または一つ以上の実施形態が、ユーザの入力もしくは促しの有無に関わらず、これらの特徴、要素もしくはステップが含まれるか、もしくはいずれのある特定の実施形態で実施されるべきであるかを決定するための論理を必ず含むことを暗示することを、概して意図していない。用語「備える」、「含む」、「有する」および同類のものは、制約のない様式において同義であり包括的に使用され、追加の要素、特徴、行為、操作などを除外しない。また、用語「または」および「もしくは」は、例えば、要素の一覧を接続するように使用するとき、用語「または」および「もしくは」は、一覧の中の要素のうちの一つ、一部またはすべてを意味するように、包括的な意味(排他的な意味ではなく)で使用される。さらに、本明細書に使用する、用語「各」は、平素の意味を有することに加えて、用語「各」が適用される一組の要素のいかなるサブセットをも意味し得る。
【0136】
語句「X、YおよびZのうちの少なくとも一つ」などの接続の言葉は、具体的に別段の定めがある場合を除き、品目、用語などがX、YまたはZのいずれかであってもよいことを伝えるように概して使用される文脈で、違ったように理解される。それゆえ、そのような接続の言葉は、ある実施形態が、Xのうちの少なくとも一つ、Yのうちの少なくとも一つおよびのZのうちの少なくとも一つの存在を必要とすることを暗示することを、概して意図していない。
【0137】
本明細書で使用する通り、用語「およそ」、「約」、「概して」および「実質的に」など、本明細書で使用する程度に関する言葉は、所望の機能を依然として実施するか、もしくは所望の結果を達成する、言及する値、量または特性に近い値、量または特性を表す。例えば、用語「およそ」、「約」、「概して」および「実質的に」は、言及する量の10%未満内、5%未満内、1%未満内、0.1%未満内および0.01%未満内の量を指してもよい。別の例として、ある実施形態では、用語「概して平行」および「実質的に平行」は、完全に平行な状態から15度、10度、5度、3度、1度または0.1度以下だけ逸脱している値、量または特性を指す。
【0138】
本明細書(添付の別紙、特許請求の範囲、要約書および図面のいずれをも含む)に開示する特徴のすべて、または同様に開示するいずれの方法もしくは過程のステップのずべては、そのような特徴またはステップの少なくとも一部が、互いに排他的である組み合わせを除き、いかなる組み合わせで組み合わせられてもよい。開示対象は、いかなる前述の実施形態の詳細にも制限されない。開示は、本明細書(添付の特許請求の範囲、要約書および図面のいずれをも含む)に開示する特徴のいずれか新規のもの、もしくはいずれか新規の組み合わせ、または同様に開示するいずれの方法もしくは過程のステップのいずれか新規のもの、もしくはいずれか新規の組み合わせに及ぶ。
【0139】
本開示に記載する実装に対する様々な変形は、当業者には容易に明らかとなってもよく、本明細書に定義する全体的な原理は、本開示の精神または範囲を逸脱することなく、他の実装に適用されてもよい。それゆえ、開示は、本明細書に示す実装に限定することは意図していないが、本明細書に記載する原理および特徴と一致する、最も広い範囲が与えられるべきである。開示のある実施形態は、以下に列挙する、または後に提示する請求項の組に網羅される。特許請求の範囲の言葉は、特許請求の範囲に用いる言葉に基づき、広く解釈されるべきであり、本明細書に、または本明細書の審査中に記載する例に限定されるべきではなく、例は非排他的と解釈されるべきである。本開示の範囲は、本明細書の好ましい実施形態の特定の開示により限定されることを意図しておらず、本明細書に提示する、または後に提示する特許請求の範囲によって定義することができる。