(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】ロボットシステムおよびロボット制御装置
(51)【国際特許分類】
B25J 9/10 20060101AFI20240604BHJP
B25J 13/02 20060101ALI20240604BHJP
G05B 19/409 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B25J9/10 Z
B25J13/02
G05B19/409 B
(21)【出願番号】P 2019169252
(22)【出願日】2019-09-18
【審査請求日】2022-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 俊一
【審査官】稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-184265(JP,A)
【文献】国際公開第2017/195362(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
G05B 19/18 - 19/416
G05B 19/42 - 19/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者の操作量に応じたパルス数のパルスを発生する手動パルス発生部と、
入力される所定時間間隔当たりのパルス数に基づいてロボットへの動作指令信号を算出する指令信号算出部と、
前記手動パルス発生部により発生した前記所定時間間隔当たりのパルス数が所定の閾値より大きい場合に、前記指令信号算出部に入力する前記所定時間間隔当たりのパルス数を前記閾値に制限するパルス数制限部とを備えるロボットシステム。
【請求項2】
前記閾値は、前記手動パルス発生部の操作時における前記ロボットの最大動作速度に対応する前記動作指令信号を算出するための前記所定時間間隔当たりのパルス数に等しい請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項3】
前記手動パルス発生部は、第1の方向および前記第1の方向と逆方向の第2の方向に移動可能なダイヤルを有し、
前記指令信号算出部は、
前記パルス数および前記ダイヤルの移動方向に基づいて前記動作指令信号を算出し、
前記ダイヤルの移動方向が前記第1の方向から前記第2の方向に
逆転した際に、連続して発生した前記パルスに対して
前記ロボットを逆方向に移動させる前記動作指令信号を生成する、請求項1または請求項2に記載のロボットシステム。
【請求項4】
前記閾値は、前記ロボットの軸毎に設定され、
前記手動パルス発生部は、前記軸毎に前記パルスを発生可能であり、
前記指令信号算出部は、前記軸毎に対応する前記パルスを取得する、請求項1から請求項3のいずれかに記載のロボットシステム。
【請求項5】
第1の方向および前記第1の方向と逆方向の第2の方向に移動可能なダイヤルを有し、前記ダイヤルの移動量に応じたパルス数のパルスを発生する手動パルス発生部と、
入力される前記パルス数
および前記ダイヤルの移動方向に基づいてロボットへの動作指令信号を算出する指令信号算出部と、
前記手動パルス発生部により発生したパルス数が所定の閾値より大きい場合に、前記パルス数を前記閾値に制限するパルス数制限部と、を備え、
前記指令信号算出部は、
前記ダイヤルの移動方向が前記第1の方向から前記第2の方向に
逆転した際に、連続して発生した前記パルスに対して
前記ロボットを逆方向に移動させる前記動作指令信号を生成する、ロボットシステム。
【請求項6】
少なくとも1つのメモリと、
少なくとも1つのプロセッサと、を備え、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
ロボットを動作させるためのパルスを取得し、
前記パルスに基づいて、所定時間間隔当たりのパルス数を算出し、
前記所定時間間隔当たりのパルス数が所定の閾値より大きい場合に、前記所定時間間隔当たりのパルス数を前記閾値に制限し、
前記所定時間間隔当たりのパルス数に基づいて、前記ロボットを動作させるための動作指令信号を生成する、ロボット制御装置。
【請求項7】
前記閾値は、前記ロボットの最大動作速度に対応する前記動作指令信号を算出するための前記所定時間間隔当たりのパルス数に等しい、請求項6に記載のロボット制御装置。
【請求項8】
前記パルスは、手動パルス発生部に設けられた第1の方向および前記第1の方向と逆方向の第2の方向に移動可能なダイヤルの操作により発生し、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記パルス数および前記ダイヤルの移動方向に基づいて前記動作指令信号を算出し、
前記ダイヤルの移動方向が前記第1の方向から前記第2の方向に
逆転した際に、連続して発生した前記パルスに対して
前記ロボットを逆方向に移動させる前記動作指令信号を生成する、請求項6または請求項7に記載のロボット制御装置。
【請求項9】
前記閾値は、前記ロボットの軸毎に設定され、
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記軸毎に対応する前記パルスを取得する、請求項6から請求項8のいずれかに記載のロボット制御装置。
【請求項10】
第1の方向および前記第1の方向と逆方向の第2の方向に移動可能なダイヤルを有する手動パルス発生部が発生するパルスに基づいて、ロボットを動作させるロボット制御装置であって、
少なくとも1つのメモリと、
少なくとも1つのプロセッサと、を備え、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
ロボットを動作させるためのパルスを取得し、
前記パルスのパルス数および前記ダイヤルの移動方向に基づいて前記ロボットへの動作指令信号を算出し、
前記パルスのパルス数が所定の閾値より大きい場合に、前記パルス数を前記閾値に制限し、
前記ダイヤルの移動方向が前記第1の方向から前記第2の方向に
逆転した際に、連続して発生した前記パルスに対して
前記ロボット
を逆方向に移動させる前記動作指令信号を生成する、ロボット制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロボット制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
手動パルス発生装置を作業者が手動操作してロボットを動作させるロボットの制御方法および制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
この制御方法によれば、手動パルス発生装置の操作速度が大幅に変動してもロボットをスムーズに加減速させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
手動パルス発生装置は、作業者の手動操作によりパルスの発生数および発生間隔を自在に変更できるものである。このため、作業者が手動パルス発生装置を高速に操作して短時間に多量のパルスを発生させると、ロボットが追従できない場合がある。この場合には、例えば、作業者が手動パルス発生装置の操作を停止しても、ロボットが動作し続けることになる。
【0005】
一方、ロボットを追従させるためにロボットの速度および加速度を増大させると、ロボットの動作が振動的となってしまう。
したがって、ロボットを振動させずに、手動パルス発生装置の操作とロボットの動作とが大きく乖離することを防止することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、操作者の操作量に応じたパルス数のパルスを発生する手動パルス発生部と、入力される所定時間間隔当たりのパルス数に基づいてロボットへの動作指令信号を算出する指令信号算出部と、前記手動パルス発生部により発生した前記所定時間間隔当たりのパルス数が所定の閾値より大きい場合に、前記指令信号算出部に入力する前記所定時間間隔当たりのパルス数を前記閾値に制限するパルス数制限部とを備えるロボットシステムである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の一実施形態に係るロボット制御装置を備えるシステムを示す全体構成図である。
【
図2】
図1のロボット制御装置を示すブロック図である。
【
図3】
図2のロボット制御装置のパルス数制限部を説明する入力パルス数と出力パルス数との関係を示す図である。
【
図4】
図2のロボット制御装置の変形例を示すブロック図である。
【
図5】
図2のロボット制御装置の他の変形例を示すブロック図である。
【
図6】
図1のシステムの変形例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の一実施形態に係るロボット制御装置1について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係るロボット制御装置1は、
図1に示されるように、ロボット100に接続され、予め教示されている動作プログラムに基づいてロボット100を制御する制御装置本体2と、制御装置本体2に接続された手動パルス発生装置3とを備えている。ロボット100としては、任意の構成のロボットを採用してもよいが、ここでは、6軸多関節型ロボットを例示して説明する。
【0009】
手動パルス発生装置3は、
図2に示されるように、操作者の操作により両方向に回転可能なダイヤル(手動パルス発生部)4と、ダイヤル4に接続され、ダイヤル4の回転角度に応じた数のパルスを発生するパルス発生部(手動パルス発生部)5とを備えている。
また、手動パルス発生装置3は、パルス倍率を選択する倍率設定SW(手動パルス発生部)6と、軸の動作方法を選択する軸動作設定SW7と、手動パルス発生装置3の操作を有効または無効に切り替えるイネーブルSW8とを備えている。さらに、手動パルス発生装置3は、デッドマンSW9および非常停止SW10を備えている。
【0010】
倍率設定SW6は、例えば、1倍、10倍、100倍の3つのパルス倍率を選択するために切替可能である。
ロボット100が6軸多関節型ロボットである場合、軸動作設定SW7は、動作させる軸を選択する6箇所の切替位置および複数の軸を連動させてツール先端点を直線動作させる切替位置のいずれかに設定可能である。
【0011】
制御装置本体2は、プロセッサおよびメモリにより構成され、パルス数算出部(手動パルス算出部)11と、パルス数制限部12と、目標位置算出部(指令信号算出部)13と、制御部(指令信号算出部)14とを備えている。
パルス数算出部11は、手動パルス発生装置3のパルス発生部5および倍率設定SW6に接続されている。パルス数算出部11は、所定時間間隔Δt毎に、ダイヤル4の操作に応じてパルス発生部5が発生したパルス数をサンプリングするとともに、サンプリングされたパルス数に倍率設定SW6により選択されたパルス倍率を乗算してパルス数を算出する。
【0012】
パルス数制限部12は、パルス数算出部11および手動パルス発生装置3の軸動作設定SW7に接続され、パルス数算出部11において算出されたパルス数が、所定の閾値THよりも大きいか否かを判定する。閾値THは、イネーブルSW8により手動パルス発生装置3が有効とされている場合におけるロボット100の各軸の最大動作速度に対応する動作指令信号を制御部14が出力するためのパルス数に等しい値に設定され、軸毎に記憶されている。
【0013】
その結果、
図3に示されるように、パルス数算出部11から入力されるパルス数が閾値TH以下である場合には、パルス数制限部12は入力されたパルス数をそのまま出力する。一方、パルス数算出部11から入力されるパルス数が閾値THよりも大きい場合には、パルス数制限部12は閾値THをパルス数として出力する。
【0014】
目標位置算出部13は、パルス数制限部12および手動パルス発生装置3の軸動作設定SW7に接続されている。目標位置算出部13は、パルス数制限部12から出力されるパルス数に基づいて、軸動作設定SW7により選択されている動作方法によって規定される方向にツール先端点を移動させるための目標位置を算出する。
【0015】
制御部14は、目標位置算出部13、手動パルス発生装置3の軸動作設定SW7、デッドマンSW9および非常停止SW10に接続されている。
制御部14は、目標位置算出部13により算出された新たな目標位置に、軸動作設定SW7によって選択されている動作方法でロボット100を動作させるための各軸の動作指令信号を算出し、ロボット100に出力する。
【0016】
このように構成された本実施形態に係るロボット制御装置1により、操作者が手動パルス発生装置3を用いてロボット100を動作させる場合について以下に説明する。
本実施形態においては、操作者は、手動パルス発生装置3を把持して、デッドマンSW9を握り、非常停止SW10を解除し、かつ、イネーブルSW8を有効に切り替える。
【0017】
この状態で、倍率設定SW6によりパルス倍率を選択し、軸動作設定SW7により動作方法を選択する。選択されたパルス倍率および動作方法は制御装置本体2に送られる。
そして、ダイヤル4を一方向あるいは他方向に回転させる。これにより、ダイヤル4の回転角度に応じたパルス数のパルスがパルス発生部5において発生し、制御装置本体2に送られる。
【0018】
制御装置本体2においては、まず、パルス数算出部11において、所定時間間隔Δt毎に、ダイヤル4の操作に応じてパルス発生部5が発生したパルス数がサンプリングされ、倍率設定SW6により選択されたパルス倍率が乗算されることによりパルス数が算出される。
【0019】
次いで、パルス数制限部12において、パルス数算出部11により算出されたパルス数が、閾値THよりも大きいか否かが判定される。パルス数制限部12においては、パルス数が閾値TH以下である場合には、そのパルス数がそのまま出力され、パルス数が閾値THよりも大きい場合には、閾値THがパルス数として出力される。
【0020】
そして、パルス数制限部12から出力されたパルス数および軸動作設定SW7により選択された動作方法に基づいて、目標位置算出部13において、ツール先端点を移動させるための目標位置が算出される。制御部14は、目標位置算出部13により算出された新たな目標位置に、軸動作設定SW7によって選択されている動作方法でロボット100を動作させるための各軸の動作指令信号を算出し、ロボット100に出力する。これにより、ロボット100が動作指令信号に応じて動作させられる。
【0021】
この場合において、操作者が、倍率設定SW6により選択するパルス倍率を高くするほど、また、操作者がダイヤル4を高速に回転させるほど、所定の時間間隔Δt毎にパルス数算出部11において算出されるパルス数が大きくなる。目標位置算出部13に入力されるパルス数が大きいと、現在位置から算出される目標位置までの距離が大きくなる。
【0022】
本実施形態に係るロボット制御装置1によれば、パルス数算出部11において算出されたパルス数が所定の閾値TH以下であれば、算出されたパルス数がそのまま目標位置算出部13に入力される。これにより、目標位置算出部13においては、ダイヤル4の回転角度に比例する大きさの距離を有する目標位置が算出される。そして、制御部14においては、算出された目標位置までの距離を時間間隔Δtで除算した速度でロボット100を動作させる動作指令信号が算出される。
【0023】
一方、パルス数算出部11において算出されたパルス数が閾値THよりも大きい場合には、その閾値THがパルス数として目標位置算出部13に入力される。これにより、目標位置算出部13においては、ダイヤル4の回転角度に関わらず、閾値THを用いて目標位置が算出される。そして、制御部14においては、算出された目標位置までの距離を時間間隔Δtで除算した速度でロボット100を動作させる動作指令信号が算出される。この場合の速度は、手動パルス発生装置3を操作している場合のロボット100の最大動作速度に一致している。
【0024】
すなわち、操作者がダイヤル4をどれだけ高速に回転させても、算出される動作指令信号が、最大動作速度を超える動作速度でロボット100を動作させる値とはならない。これにより、作業者がダイヤル4の操作を停止すれば、ロボット100を迅速に停止させることができ、ダイヤル4を逆転させれば、ロボット100を迅速に逆方向に移動させることができる。
【0025】
このように、本実施形態に係るロボット制御装置1によれば、高速に回転させていたダイヤル4を急に停止させたり、逆転させたりする手動パルス発生装置3の操作に、ロボット100をより迅速に追従させることができるという利点がある。また、手動パルス発生装置3を操作する際の最大動作速度は十分に低く抑えられるので、ロボット100の動作が振動的となることや危険な速度となることを防止することができる。
また、ダイヤル4を低速で回転させる場合には、ダイヤル4の回転角度とロボット100の移動量とがリニアに対応するので、操作性は良好である。すなわち、ダイヤル4をたくさん回転させなくても高速に動作できる。
【0026】
ここで、ダイヤル4を高速に回転させる場合には、ダイヤル4の回転角度に関わらず、ロボット100の動作速度が一定に制限されるので、その意味においては、ダイヤル4の操作にロボット100の動作が追従しているとは言えない。しかしながら、操作者は、ダイヤル4を高速に回転させればさせるほど、ダイヤル4の回転角度とロボット100の移動量とがリニアに対応していないことを気づきにくくなるので、操作性が低下することはない。
【0027】
なお、本実施形態においては、以下の変形または変更を行うことができる。
第1に、パルス数制限部12において使用する閾値THとして、制御部14において算出される動作指令信号が、手動パルス発生部4,5,6の操作時におけるロボット100の最大動作速度に対応することとなるパルス数に等しい値を採用したが、これに限定されるものではない。
【0028】
例えば、最大動作速度の動作速度に対応することとなるパルス数に近似する値であれば、そのパルス数よりも小さいあるいは大きい値を採用してもよい。
また、本実施形態においては、パルス数算出部11およびパルス数制限部12を制御装置本体2内に配置した。これに代えて、
図4に示されるように、パルス数算出部11を手動パルス発生装置3内に配置してもよいし、
図5に示されるように、パルス数算出部
11およびパルス数制限部12を手動パルス発生装置3内に配置してもよい。
【0029】
また、ロボット制御装置1としてロボット100のみを制御する制御装置本体2に手動パルス発生装置3を接続した場合を例示したが、
図6に示されるように、工作機械200および制御装置本体2に接続されたNC制御装置300に手動パルス発生装置3を接続してもよい。
【0030】
また、手動パルス発生装置3が、ダイヤル4の回転角度に応じたパルス数のパルスを発生する場合を例示したが、これに代えて、スライダのスライド量に応じたパルス数のパルスを発生することにしてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 ロボット制御装置
4 ダイヤル(手動パルス発生部)
5 パルス発生部(手動パルス発生部)
6 倍率設定SW(手動パルス発生部)
11 パルス数算出部(手動パルス算出部)
12 パルス数制限部
13 目標位置算出部(指令信号算出部)
14 制御部(指令信号算出部)
TH 閾値