(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】全固体電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/153 20210101AFI20240604BHJP
H01M 50/184 20210101ALI20240604BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20240604BHJP
H01M 50/167 20210101ALI20240604BHJP
H01M 50/133 20210101ALI20240604BHJP
【FI】
H01M50/153
H01M50/184 E
H01M10/0562
H01M50/167
H01M50/133
(21)【出願番号】P 2019211768
(22)【出願日】2019-11-22
【審査請求日】2022-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104444
【氏名又は名称】上羽 秀敏
(74)【代理人】
【識別番号】100194777
【氏名又は名称】田中 憲治
(72)【発明者】
【氏名】森下 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】藤川 和弘
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-066457(JP,A)
【文献】特開平08-195189(JP,A)
【文献】特開昭59-029354(JP,A)
【文献】特開2010-056067(JP,A)
【文献】特開平02-051849(JP,A)
【文献】特開平03-011550(JP,A)
【文献】特開2004-349017(JP,A)
【文献】特開2003-059466(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0222941(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10-198
H01M 10/05-0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部と周壁部とを有する外装缶と、
前記外装缶の開口を覆い、周端部と該周端部よりも肉厚の中央部とを有する封口板と、
前記外装缶の底部と前記封口板との間に収容され、正極材と負極材と前記正極材と前記負極材との間に配置される固体電解質とを含む発電要素と、
前記外装缶の周壁部と前記発電要素との間に配置されるガスケットとを備え、
前記外装缶の周壁部は、前記封口板の周端部の上面に向かってカシメられている先端部を有する、全固体電池。
【請求項2】
請求項1に記載の全固体電池であって、
前記封口板の中央部は、前記封口板の上面側から隆起して前記周端部よりも肉厚に形成され、
前記封口板の下面は、平面である、全固体電池。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の全固体電池であって、
前記封口板の中央部は、前記周端部の1.5~3倍の厚みを有する、全固体電池。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の全固体電池であって、
前記封口板の中央部は、平面視で、封口板の70~90%の面積を有する、全固体電池。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の全固体電池であって、
前記封口板の周端部は、該周端部の上面の端部に突部を備え、
前記ガスケットは、前記周壁部と前記突部との間に配置され、
前記周壁部の先端部は、前記突部に向かってカシメられている、全固体電池。
【請求項6】
請求項5に記載の全固体電池であって、
前記突部は、周端部の上面から0.03~0.08mmの高さを有する、全固体電池。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の全固体電池であって、
前記ガスケットは、筒状をなし、略I字状の断面を有し、
前記発電要素の周側面は、前記ガスケットの内周面に接し、
前記ガスケットの外周面は、前記外装缶の周壁部の内周面に接する、全固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全固体電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2017-162771号公報は、封口缶の側壁部に段部が設けられた電池を開示している(特許文献1)。従来の電池は、封口缶の側壁部に設けた段部の方向へ外装缶の縁端部を湾曲させることにより、外装缶と封口板とが十分にカシメられている。そのため、従来の電池は、外装缶と封口板との間に形成された内部空間を十分に密閉することができる。
【0003】
また、特開2005-005616号公報は、密閉容器が薄くなってもカシメられた部分がはがれにくい電気化学デバイスを開示している(特許文献2)。従来の電気化学デバイスは、容器部材の一方の端部と容器部材の他方の端部との間にガスケットを介在させた状態で、容器部材の一方の端部を容器部材の他方の端部にカシメている。また、一方の容器部材の端部と他方の容器部材の端部とがガスケットにより接着されている。そのため、従来の電気化学デバイスは、容器部材の端部が剥がれにくくなり、容器部材を薄くすることができる。これにより、従来の電気化学デバイスは、容器部材を薄くした分、電池容量を大きくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-162771号公報
【文献】特開2005-005616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の電池は、内部空間において、封口缶の側壁部に設けられた段部の下方に無駄なスペースが形成されている。そのため、全固体電池の内部空間を有効利用できず、内部空間の広さに対する電池容量が小さくなる。したがって、従来の電池は、電池の体積効率が低くなってしまうという問題があった。
【0006】
また、従来の電気化学デバイスは、薄くした容器部材を十分にカシメるべく、容器部材の端部が電気化学素体の側面から外側に間延びした形状となっている。そのため、従来の電気化学デバイスは、平面視で、電気化学素体の面積に対して電池全体の面積が大きくなる。したがって、従来の電気化学デバイスは、電池の面積効率が低くなってしまうという問題があった。
【0007】
そこで、本開示は、小型化しながらも内部空間を有効利用して電池容量を増大できる全固体電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示は次のように構成した。すなわち、本開示に係る全固体電池は、底部と周壁部とを有する外装缶を備えてよい。全固体電池は、外装缶の開口を覆い、周端部と周端部よりも肉厚の中央部とを有する封口板を備えてよい。全固体電池は、外装缶の底部と封口板との間に収容され、正極材と負極材と正極材と負極材との間に配置される固体電解質とを含む発電要素を備えてよい。全固体電池1は、外装缶の周壁部と発電要素との間に配置されるガスケットを備えてよい。外装缶の周壁部は、封口板の周端部の上面に向かってカシメられている先端部を有してよい。
【0009】
また、好ましくは、封口板の中央部は、封口板の上面側から隆起して周端部よりも肉厚に形成されてよい。封口板の下面は、平面であってよい。
【0010】
また、好ましくは、封口板の中央部は、周端部の1.5~3倍の厚みを有してよい。
【0011】
また、好ましくは、封口板の中央部は、平面視で、封口板の70~90%の面積を有してよい。
【0012】
また、好ましくは、封口板の周端部は、該周端部の上面の端部に突部を備えてよい。ガスケットは、周壁部と突部との間に配置されてよい。周壁部は、突部に向かってカシメられている先端部を有してよい。
【0013】
また、好ましくは、突部は、周端部の上面から0.03~0.08mmの高さを有してよい。
【0014】
さらに、好ましくは、ガスケットは、筒状をなし、略I字状の断面を有してよい。発電要素の周側面は、ガスケットの内周面に接してよい。ガスケットの外周面は、外装缶の周壁部の内周面に接してよい。
【発明の効果】
【0015】
本開示に係る全固体電池によれば、小型化しながらも内部空間を有効利用して電池容量を増大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る全固体電池の構造を示す断面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示した全固体電池に用いられる封口板の構造を示す平面図である。
【
図4】
図4は、第2実施形態に係る全固体電池の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、本開示の第1実施形態について、
図1~3を用いて具体的に説明する。まず、
図1に示すように、全固体電池1は、基本的には、外装缶2と、封口板3と、発電要素4と、ガスケット5とから構成されている。また、全固体電池1は、外装缶2と発電要素4との間に配置された黒鉛シート6と、封口板3と発電要素4との間に配置された黒鉛シート6とを備えている。なお、第1実施形態では、全固体電池1は、扁平形電池である。
【0018】
外装缶2は、円形状の底部21と、底部21の外周から連続して形成される円筒状の周壁部22とを備えている。周壁部22は、縦断面視で、底部21に対して略垂直に延びるように設けられている。外装缶2は、ステンレス、ニッケル、鉄などの金属材料によって形成されている。なお、外装缶2の形状は、円形状の底部21を備えた円筒形状に限られない。例えば、外装缶2の形状は、底部21を四角形状などの多角状に形成し、周壁部22を底部21の形状に合わせた四角筒状などの多角筒状に形成してもよく、全固体電池1のサイズや形状に応じて、種々変更することができる。そのため、周壁部22の形状は、円筒状だけでなく、四角筒状などの多角筒状も含むものである。
【0019】
封口板3は、円形の平板状に形成されている。封口板3は、周端部31と、周端部31よりも肉厚に形成された中央部32とを有している。封口板3は、外装缶2の開口と対向している。封口板3の外径は、外装缶2の周壁部22の内径よりも小さい。封口板3は、ステンレス、ニッケル、鉄などの金属材料によって形成されている。封口板3は、外装缶2の開口に応じた平面視形状に形成される。よって、封口板3の平面視形状は、円形に限られず、四角形状などの多角状に形成してもよい。
【0020】
封口板3は、周端部31の上面側から隆起した比較的肉厚の中央部32が形成されている。これにより、封口板3の上方から掛かる圧力に対して、封口板3の強度を向上させることができる。また、封口板3の下面は、平面に形成されている。これにより、封口板3の上方から掛かる圧力が発電要素4に対して均一に伝わるため、発電要素4の損傷を抑制することができる。なお、封口板3の下面は、後述する発電要素4の負極材42の上面とサイズ及び形状が同じであり、負極材42に隣接する黒鉛シート6の上面とサイズ及び形状が同じである。
【0021】
図2に示すように、中央部32の厚みt2は、周端部31の厚みt1の1.5~3倍である。厚みt2を薄くすると、全固体電池1を小型化できるが、封口板3が上方からの圧力によって変形しやすくなる。そのため、発電要素4が損傷し、電池性能が低下するおそれがある。一方で、厚みt2を厚くすると、封口板3の強度を向上できるが、全固体電池1全体の体積が増加し、全固体電池1が小型化されない。そのため、厚みt2は、厚みt1の1.5倍以上、好ましくは2倍以上とするのがよく、厚みt2の3倍以下、好ましくは2.5倍以下とするのがよい。
【0022】
図3に示すように、平面視で、中央部32は、封口板3の70~90%の面積を有している。中央部32の面積を広くすると、封口板3の強度は向上するが、周端部31が占める面積の割合は低下する。そのため、外装缶2の周壁部22の先端部をカシメる際、ガスケット5の封口板3側の先端部が中央部32に接触するなど、カシメ作業が困難になる。また、外装缶2の周壁部22の先端部が中央部32に接触すると、短絡が生じるおそれもある。一方、中央部32の面積を狭くすると、封口板3の強度が低下してしまう。したがって、封口板3の中央部32の面積は、封口板3の70%以上、好ましくは75%以上、とするのがよく、封口板3の90%以下、好ましくは85%以下とするのがよい。
【0023】
外装缶2と封口板3をカシメる際、外装缶2の周壁部22の先端部とガスケット5の先端部とは、封口板3の周端部31と中央部32との段差、すなわち、周端部31と中央部32との高低差によって形成される周端部31上方のスペースに収容される。したがって、湾曲によって封口板3の上面に位置付けられる外装缶2の周壁部22の先端部とガスケット5の先端部の径方向の長さは、周端部31の径方向の長さよりも短い。
【0024】
また、
図2に示すように、封口板3の周端部31の上面には、突部33が形成されている。突部33は、周端部31の端部に沿って、平面視リング状に形成されている。突部33は、周端部31の上面から0.03~0.08mmの高さhを有している。突部33と外装缶2の周壁部22の先端部との間には、ガスケット5が配置されている。外装缶2の周壁部22の先端部は、突部33に向かって湾曲するようにカシメられている。このように、突部33を設けたことにより、ガスケット5の封口板3側の先端部が突部33に係止されるようにして、外装缶2と封口板3とを十分にカシメることができ、全固体電池1の内部空間を密閉状態に維持することができる。突部33の高さhは、外装缶2と封口板3とを適切にカシメることを鑑みると、0.03mm以上、好ましくは0.04mm以上、とするのがよく、0.08mm以下、好ましくは0.07mm以下とするのがよい。
【0025】
発電要素4は、外装缶2と封口板3との間に収容され、正極材41と負極材42と固体電解質43とを含んでいる。固体電解質43は、正極材41と負極材42との間に配置されている。発電要素4は、外装缶2の底部21側(図示の下方)から正極材41、固体電解質43、負極材42の順で積層されている。発電要素4は、円柱形状に形成されている。発電要素4は、外装缶2の底部21の上面に黒鉛シート6を介して配置されている。よって、外装缶2は、正極缶として機能する。また、発電要素4は、封口板3の下面に黒鉛シート6を介して対向している。よって、封口板3は、負極板として機能する。なお、発電要素4は、円柱形状に限られず、直方体形状や多角柱形状等、全固体電池1のサイズや形状に応じて、種々変更することができる。また、外装缶2側に負極材42を位置付け、封口板3側に正極材41を位置付けるように発電要素4を配置してもよい。その場合、外装缶2が負極缶として機能し、封口板3が正極板として機能する。
【0026】
正極材41は、リチウムイオン二次電池に用いられる正極活物質として、平均粒径3μmのLiNi0.6Co0.2Mn0.2O2と、硫化物固体電解質(Li6PS5Cl)と、導電助剤であるカーボンナノチューブとを質量比で55:40:5の割合で含有した180mgの正極合剤を直径10mmの金型に入れて円柱形状に成形した正極ペレットである。なお、正極材41は、発電要素4の正極材として機能することができれば、特に限定されるものではなく、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、オリビン型複合酸化物等であってもよく、これらを適宜混合したものであってもよい。また、正極材41のサイズや形状は、円柱形状に限定されるものではなく、全固体電池1のサイズや形状に応じて種々変更可能である。
【0027】
負極材42は、リチウムイオン二次電池に用いられる負極活物質として、LTO(Li4Ti5O12、チタン酸リチウム)と、硫化物固体電解質(Li6PS5Cl)と、カーボンナノチューブとを重量比で50:45:5の割合で含有した300mgの負極合剤を円柱形状に成形した負極ペレットである。なお、負極材42は、発電要素4の負極材として機能することができれば、特に限定されるものではなく、例えば、金属リチウム、リチウム合金、黒鉛、低結晶カーボンなどの炭素材料や、SiO、LTO(Li4Ti5O12、チタン酸リチウム)等であってもよく、これらを適宜混合したものであってもよい。また、負極材42のサイズや形状は、円柱形状に限定されるものではなく、全固体電池1のサイズや形状に応じて種々変更可能である。
【0028】
固体電解質43は、60mgの硫化物固体電解質(Li6PS5Cl)を円柱形状に成形したものである。なお、固体電解質43は、特に限定はされないが、イオン伝導性の点から他のアルジロダイト型などの硫黄系固体電解質であってもよい。硫黄系固体電解質を用いる場合には、正極活物質との反応を防ぐために、正極活物質の表面をニオブ酸化物で被覆することが好ましい。また、固体電解質43は、水素化物系固体電解質や酸化物系固体電解質等であってもよい。また、固体電解質43のサイズや形状は、円柱形状に限定されるものではなく、全固体電池1のサイズや形状に応じて種々変更可能である。
【0029】
ガスケット5は、ポリプロピレン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、PFA樹脂などの水分低透過性樹脂によって形成されている。ガスケット5は、外装缶2の周壁部22の内周面に沿う筒状に形成され、外装缶2の周壁部22と発電要素4との間に配置されている。
図2に示すように、ガスケット5は、径方向において、0.05~0.2mmの厚みt3を有している。ガスケット5は、外装缶2の周壁部22と負極材42とを絶縁でき、且つ、外装缶2の周壁部22と封口板3とを絶縁できれば、比較的薄く形成してもよい。全固体電池1の内部空間は、ガスケット5を薄くするほど広くなる。よって、全固体電池1の電池容量を増大させることができる。ただし、ガスケット5は、薄くなりすぎると破損するおそれがある。ガスケット5が破損すると、短絡が生じるおそれがある。したがって、ガスケット5の厚みt3は、0.05mm以上、好ましくは0.07mm以上、とするのがよく、0.2mm以下、好ましくは0.15mm以下とするのがよい。
【0030】
また、ガスケット5は、
図1に示すように略I字状の断面を有している。発電要素4の周側面は、ガスケット5の内周面に接し、ガスケット5の外周面は、外装缶2の周壁部22の内周面に接している。上述の特許文献1の電池において、ガスケットは、封口缶の内壁部の先端部側で折り返された略J字状の断面を有している。そのため、ガスケットの配置が困難になる。一方で、本開示に係るガスケット5は、略I字状の断面を有しているため、発電要素4の周側面と外装缶2の周壁部22との間に容易且つシンプルに配置することができる。また、全固体電池1は、ガスケット5が略I字状の断面を有し、発電要素4の外周面がガスケット5の内周面に接し、ガスケット5の外周面が外装缶2の周壁部22の内周面に接するようにしたことにより、全固体電池1の内部空間を有効利用でき、電池容量を増大させることができる。
【0031】
このように全固体電池1は、外装缶2の開口を平板状の封口板3で覆うことによって、全固体電池1の内部空間を有効利用でき、電池容量を増大させることができる。また、外装缶2の周壁部22の先端部を封口板3の周端部31に向かってカシメることにより、小型化を図りながらも外装缶2と封口板3とを十分にカシメることができる。
【0032】
黒鉛シート6は、膨張黒鉛を圧延して形成されている。黒鉛シート6の平面視形状は、全固体電池1の内部空間の平面視形状と略相似形状に形成されている。そのため、黒鉛シート6は、平面視略円形状に形成されている。外装缶2側の黒鉛シート6の上面の面積は、発電要素4の正極材41の下面の面積と同じであってもよく、或いは、発電要素4の正極材41の下面の面積より広くてもよい。また、封口板3側の黒鉛シート6の下面の面積は、発電要素4の負極材42の上面の面積と同じであってもよく、或いは、発電要素4の負極材42の上面の面積より多少小さくなってもよい。すなわち、外装缶2側の黒鉛シート6の上面は、正極材41の下面を覆っていればよい。また、封口板3側の黒鉛シート6の下面は、カシメ時に加わる力が端部に集中するのを防ぐため、負極材42の上面の周縁からはみださないようにすることが望ましい。なお、黒鉛シート6は、平面視略円形状に限られず、楕円形状、平面視略多角形状等、全固体電池1の平面視形状に応じて種々変更することができる。
【0033】
黒鉛シート6は、より具体的には、以下のように製造される。まず、天然黒鉛に酸処理を施した酸処理黒鉛の粒子を加熱する。そうすると、酸処理黒鉛は、その層間にある酸が気化して発泡することによって膨張する。この膨張化した黒鉛(膨張黒鉛)をフェルト状に成型し、さらに、ロール圧延機を用いて圧延することによりシート体を形成する。黒鉛シート6は、この膨張黒鉛のシート体を円形状にくり抜くことにより製造される。上述の通り、膨張黒鉛は、酸が気化して酸処理黒鉛が発泡することによって形成される。そのため、黒鉛シート6は、多孔質シートに形成されている。したがって、黒鉛シート6は、黒鉛自体がもつ導電性とともに、多孔質による優れた可撓性をも有する。なお、黒鉛シート6の製造方法はこれに限られず、どのような方法で黒鉛シート6を製造してもよい。
【0034】
黒鉛シート6は、上述の通り、優れた導電性及び可撓性を有する。そのため、黒鉛シート6は、集電体として機能することができるとともに、発電要素4の充放電による膨張及び収縮、又は、外装缶2と封口板3とをカシメる際の押圧力を吸収することができる。これにより、全固体電池1は、発電要素4の損傷や隙間の形成による電池性能の低下を抑制することができる。
【0035】
なお、全固体電池1は、黒鉛シート6を設けず、外装缶2の底部21の上面に正極材41が接するように配置し、封口板3の下面に負極材42が接するように配置してもよい。また、黒鉛シート6は、正極材41側又は負極材42側のいずれか一方にのみ配置してもよい。また、全固体電池1は、黒鉛シート6に代えて、負極材42側及び正極材41側の少なくとも一方に、銅、ニッケル、ステンレス、アルミ及びチタンなどの金属製の箔、多孔質基材並びに、カーボンナノチューブなどの炭素繊維の不織布などを、集電シートとして設けてもよい。
【0036】
(製造方法)
次に、全固体電池1の製造方法について、
図1を参照しながら説明する。
【0037】
まず、上述した外装缶2と封口板3とを準備する。なお、外装缶2の周壁部22は、この状態では、未だ先端部が内側に湾曲しておらず、縦断面視で、底部21に対して略垂直に直線状に延びている。
【0038】
次に、外装缶2の周壁部22の内周面に、上述した筒状のガスケット5を配置する。なお、ガスケット5も、封口板3側の先端部が内側に湾曲しておらず、縦断面視で、先端部方向に向かって直線状に延びている。
【0039】
次に、外装缶2の内部に発電要素4と2枚の黒鉛シート6とを収容する。発電要素4と2枚の黒鉛シート6とは、外装缶2の底部21から、正極材41側の黒鉛シート6、発電要素4、負極材42側の黒鉛シート6の順で積層されている。
【0040】
次に、負極材42側の黒鉛シート6の上面に封口板3を配置する。この際、封口板3は、平面に形成された下面が負極材42側の黒鉛シート6の上面に対向している。また、外装缶2の周壁部22と封口板3の周端部31との間には、ガスケット5が位置付けられている。
【0041】
最後に、外装缶2の周壁部22の先端部をガスケット5の先端部とともに、封口板3の突部33の方向へ内側下方に湾曲させ、外装缶2と封口板3とをカシメる。これにより、全固体電池1を製造することができる。
【0042】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の全固体電池1について、
図4を用いて具体的に説明する。なお、第1実施形態の全固体電池1と同様の構成については説明を省略し、第1実施形態の全固体電池1と異なる構成についてのみ説明する。
【0043】
図4に示すように、封口板3の下面は、凹凸構造を有してもよい。凹凸構造は、所定の間隔で延びる複数の溝部34と、この複数の溝部34に直交して所定の間隔で延びる複数の溝部34とによって、平面視略格子状に形成されている。このように凹凸構造を形成したことにより、負極材42側の黒鉛シート6は、封口板3の下面との接触面積、すなわち、集電面積を増加させることができる。なお、溝部34は、平面視略格子状に限られるものではない。例えば、溝部34の平面視形状は、上下方向に平行に延びる縦縞状であってもよく、円形状やリング状等の溝部34が複数所定のバランスで配置された水玉状等であってもよい。逆に、円形状やリング状の隆起部が複数所定のバランスで配置された水玉状等であってもよい。また、凹凸構造は、封口板3の下面の一部、例えば、肉厚の中央部32の下面に溝部34を設けた構造も含む。また、凹凸構造は、外装缶2の底部21の上面にも設けてもよい。また、凹凸構造は、封口板3の下面または外装缶2の底部21の上面のいずれか一方に設けてもよい。
【0044】
以上、実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0045】
1 全固体電池
2 外装缶、21 底部、22 周壁部
3 封口板、31 周端部、32 中央部、33 突部、34 溝部
4 発電要素、41 正極材、42 負極材、43 固体電解質
5 ガスケット
6 黒鉛シート