(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】多層構造体に使用するためのポリマーブレンドおよびそれを含む多層構造体
(51)【国際特許分類】
C08L 33/02 20060101AFI20240604BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20240604BHJP
C08K 3/08 20060101ALI20240604BHJP
C08L 23/06 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
C08L33/02
B32B27/32 E
C08K3/08
C08L23/06
(21)【出願番号】P 2019524361
(86)(22)【出願日】2017-11-17
(86)【国際出願番号】 US2017062277
(87)【国際公開番号】W WO2018094197
(87)【国際公開日】2018-05-24
【審査請求日】2020-11-05
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-27
(32)【優先日】2016-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【氏名又は名称】新井 剛
(72)【発明者】
【氏名】カルメロ・ディクレット・ペレス
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・ダブリュ・ウォルサー
(72)【発明者】
【氏名】ジェームス・エル・クーパー
(72)【発明者】
【氏名】ハイレイ・エイ・ブラウン
【合議体】
【審判長】細井 龍史
【審判官】北澤 健一
【審判官】藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-200719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
C08F6/00-246/00
B32B1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーブレンドであって、
1~
10g/10分のメルトインデックス(I
2)を有する、エチレンとアクリル酸とを含むコポリマーのアイオノマーであって、前記アイオノマーの総量が、前記ブレンドの総重量に基づいて、前記ブレンドの
75~90重量%を構成する、前記アイオノマーと、
0.916~0.935g/cm
3
の密度を有し、かつ0.2~
1g/10分のメルトインデックス(I
2)を有するポリオレフィンであって、前記ブレンドの総重量に基づいて、前記ブレンドの
10~25重量%を構成する、前記ポリオレフィンと
を含み、
前記ポリマーブレンドが、以下の式を満たし、
3.9<2.76-60*I
2(PO)+308*RVR+0.023*A<4.5、
式中、I
2(PO)が前記ポリオレフィンのメルトインデックス(I
2)であり、RVRが前記ポリオレフィンの前記アイオノマーに対する相対粘度比率(I
2(PO)/I
2(アイオノマー))であり、Aが、前記ブレンドの総重量に基づく、前記ポリマーブレンド中のアイオノマーの重量%であり、
前記ポリオレフィンは、低密度ポリエチレンまたは直鎖状低密度ポリエチレンである、前記ポリマーブレンド。
【請求項2】
前記アイオノマー中の前記アクリル酸を中和するために使用される金属が、Zn
+2、Na
+、Li
+、Ca
+2、K
+、Mg
+2、Fe
+2、またはCu
+2を含む、請求項
1に記載のポリマーブレンド。
【請求項3】
各層が対向する表面を有する少なくとも2つの層を含む多層構造体であって、
A層が、請求項
1または2に記載のポリマーブレンドを含み、かつ
B層が、基材を含み、B層の最上部表面が、A層の最下部表面に接着接触している、前記多層構造体。
【請求項4】
前記基材が、金属箔、金属化フィルム、織布マット、不織布マット、スクリム、またはアイオノマーを含むフィルム層を含む、請求項
3に記載の多層構造体。
【請求項5】
C層をさらに含み、A層の最上部表面がC層の最下部表面と接着接触しており、C層がポリオレフィンを含む、請求項
3または
4に記載の多層構造体。
【請求項6】
25.4cm/分(10インチ/分)のクロスヘッド速度で、ASTM F904に基づく180度剥離試験を用いて測定したときに、A層のB層への接着力が少なくとも1.18N/cm(3N/インチ)である、請求項
3~
5のいずれか一項に記載の多層構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層構造体に使用することができるポリマーブレンド、およびそのようなポリマーブレンドから形成される1つ以上の層を含む多層構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルム層とアルミニウムのような金属基材との間に接着性を提供するために、多層構造体のタイ層にある種の樹脂が使用されている。そのようなタイ層には様々な樹脂が利用可能であるにもかかわらず、場合によっては、一般的なタイ層樹脂がタイ層の感温性に悪影響を及ぼす可能性がある。したがって、多層構造体中の箔、金属化フィルム、または同様の基材に望ましい接着力を提供しながら、従来のタイ層への手法を上回る他の改善も提供することができる、タイ層への代替的な手法に対するニーズが依然としてある。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、いくつか態様において、多層構造体中のタイ層として使用されたときに望ましい接着力をもたらすポリマーブレンドを提供する。さらに、いくつかの態様では、本発明は、ドローダウンおよびネックインなどの望ましくない現象を最小限に抑えつつ、多層構造体を形成するための押出コーティングを容易にする。例えば、本発明の実施形態は、望ましい接着力を達成するための、慎重に選択された樹脂のブレンドを含む。
【0004】
一態様では、本発明は、ポリマーブレンドであって、1~60g/10分のメルトインデックス(I2)を有する、エチレンと、アクリル酸およびメタクリル酸のうちの少なくとも一方とを含むコポリマーのアイオノマーであって、アイオノマーの総量が、上記ブレンドの総重量に基づいて、上記ブレンドの50~99重量%を構成する、アイオノマーと、0.870g/cm3以上の密度を有し、かつ20g/10分以下のメルトインデックス(I2)を有するポリオレフィンであって、上記ブレンドの総重量に基づいて、上記ブレンドの1~50重量%を構成する、ポリオレフィンと、を含む、ポリマーブレンドを提供し、ポリマーブレンドは、以下の式を満たし、
3.5<2.76-60*I2(PO)+308*RVR+0.023*A<4.5、
式中、I2(PO)はポリオレフィンのメルトインデックス(I2)であり、RVRはポリオレフィンのアイオノマーに対する相対粘度比率(I2(PO)/I2(アイオノマー))であり、Aは、ブレンドの総重量に基づく、ポリマーブレンド中のアイオノマーの重量%である。
【0005】
別の態様では、本発明は、各層が対向する表面を有する少なくとも2つの層を含む多層構造体であって、A層が本明細書に開示される本発明のポリマーブレンドのいずれかを含み、B層が基材を含み、B層の最上部表面が、A層の最下部表面に接着接触している、多層構造体を提供する。いくつかの実施形態では、基材はアルミニウム箔を含む。
【0006】
これらおよび他の実施形態は、発明を実施するための形態においてより詳細に説明される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
相反する記載がなく、文脈から暗示されておらず、または当該技術分野において慣例的でない限り、全ての部および百分率は、重量に基づくものであり、全ての温度は℃であり、全ての試験方法は、本開示の出願日の時点において最新のものである。
【0008】
本明細書で使用される場合、「組成物」という用語は、組成物を含む材料の混合物、ならびに組成物の材料から形成された反応生成物および分解生成物を指す。
【0009】
「ポリマー」は、同じ種類であるか異なる種類であるかにかかわらず、モノマーを重合することによって調製されるポリマー化合物を意味する。したがって、ポリマーという総称は、(微量の不純物がポリマー構造に組み込まれ得るという理解の下で、1種類のモノマーのみから調製されるポリマーを指すために用いられる)ホモポリマーという用語、および本明細書以下に定義されるインターポリマーという用語を包含する。微量の不純物(例えば、触媒残渣)が、ポリマー中および/またはポリマー内に組み込まれ得る。ポリマーは、単一ポリマー、ポリマーブレンド、またはポリマー混合物であり得る。
【0010】
本明細書で使用される場合、「インターポリマー」という用語は、少なくとも2つの異なる種類のモノマーの重合によって調製されるポリマーを指す。したがって、インターポリマーという総称は、(2つの異なる種類のモノマーから調製されるポリマーを指すために用いられる)コポリマー、および3つ以上の異なる種類のモノマーから調製されるポリマーを含む。
【0011】
本明細書で使用される場合、「オレフィン系ポリマー」または「ポリオレフィン」という用語は、重合形態で(ポリマーの重量に基づいて)過半量のオレフィンモノマー、例えば、エチレンまたはプロピレンを含み、かつ任意で1つ以上のコモノマーを含み得るポリマーを指す。
【0012】
「ポリプロピレン」は、プロピレンモノマーから誘導された50重量%よりも大きい単位を有するポリマーを意味する。
【0013】
本明細書で使用される場合、「エチレン/α-オレフィンインターポリマー」という用語は、重合形態で(インターポリマーの重量に基づいて)過半量のエチレンモノマー、およびα-オレフィンを含むインターポリマーを指す。
【0014】
本明細書で使用される場合、「エチレン/α-オレフィンコポリマー」という用語は、重合形態で、2種類のみのモノマーとして、(コポリマーの重量に基づいて)過半量のエチレンモノマー、およびα-オレフィンを含むコポリマーを指す。
【0015】
「接着接触」という用語および同様の用語は、1つの層の1つの前表面および別の層の1つの前表面が接触して互いに結合し、それにより、両方の層の層間表面(すなわち、接触している前表面)を損傷することなく、一方の層を他方の層から除去することができないことを意味する。
【0016】
用語「~を含む(comprising)」、「~を含む(including)」、「~を有する(having)」、およびそれらの派生語は、それらが具体的に開示されているか否かにかかわらず、任意の追加の成分、ステップ、または手順の存在を除外することを意図するものではない。いかなる疑念も避けるために、「含む(comprising)」という用語の使用を通して特許請求される全ての組成物は、別段矛盾する記述がない限り、ポリマー性かまたは別のものであるかにかかわらず、いかなる追加の添加剤、アジュバント、または化合物を含んでもよい。対照的に、「から本質的になる」という用語は、操作性に必須ではないものを除いて、あらゆる後続の引用範囲から、いかなる他の構成要素、ステップ、または手順も除外する。「からなる」という用語は、具体的に規定または列挙されていない任意の構成要素、ステップ、または手順を除外する。
【0017】
「ポリエチレン」または「エチレン系ポリマー」は、50重量%を超えるエチレンモノマーから誘導された単位を含むポリマーを意味するものとする。これは、ポリエチレンホモポリマーまたはコポリマー(2つ以上のコモノマーに由来する単位を意味する)を含む。当該技術分野において既知であるポリエチレンの一般的な形態としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、非常に低い密度のポリエチレン(VLDPE)、直鎖状および実質的に直鎖状の低密度樹脂の両方を含むシングルサイト触媒直鎖状低密度ポリエチレン(m-LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、ならびに高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられる。これらのポリエチレン材料は、当該技術分野において一般に既知であるが、以下の説明は、これらの異なるポリエチレン樹脂のうちのいくつかの差異を理解する上で役立つ可能性がある。
【0018】
「LDPE」という用語はまた、「高圧エチレンポリマー」または「高分岐ポリエチレン」とも称され、過酸化物などのフリーラジカル開始剤を使用して、14,500psi(100MPa)を超える圧力のオートクレーブ内もしくは管状反応器内で、ポリマーが部分的もしくは完全にホモ重合または共重合することを意味するように定義される(例えば、参照により本明細書に組み込まれるUS4,599,392を参照されたい)。LDPE樹脂は典型的には、0.916~0.935g/cm3の範囲内の密度を有する。
【0019】
「LLDPE」という用語は、伝統的なチーグラー・ナッタ触媒系ならびにシングルサイト触媒(ビス-メタロセン触媒(「m-LLDPE」と称されることもある)および拘束幾何触媒を含むが、これらに限定されない)を使用して作製される樹脂の両方を含み、直鎖状、実質的に直鎖状、または不均質なポリエチレンコポリマーまたはホモポリマーを含む。LLDPEは、LDPEよりも少ない長鎖分岐を含有し、米国特許第5,272,236号、同第5,278,272号、同第5,582,923号、および同第5,733,155号にさらに定義されている、実質的に直鎖状のエチレンポリマー、米国特許第3,645,992号に記載されるものなどの均質に分岐した直鎖状エチレンポリマー組成物、米国特許第4,076,698号に開示されるプロセスに従って調製されるものなどの不均一に分岐したエチレンポリマー、ならびに/またはそれらのブレンド(例えば、US3,914,342、またはUS5,854,045に開示されているもの)を含む。LLDPEは、当該技術分野において既知である任意の種類の反応器または反応器構成を使用して、気相、液相、もしくはスラリー重合、またはそれらの任意の組み合わせによって作製することができる。
【0020】
「MDPE」という用語は、0.926~0.935g/cm3の密度を有するポリエチレンを指す。「MDPE」は典型的には、クロム触媒もしくはチーグラー・ナッタ触媒を使用して、またはシングルサイト触媒(ビス-メタロセン触媒および拘束幾何触媒を含むが、これらに限定されない)を使用して作製され、典型的には、2.5を超える分子量分布(「MWD」)を有する。
【0021】
「HDPE」という用語は一般に、チーグラー・ナッタ触媒、クロム触媒、またはシングルサイト触媒(ビス-メタロセン触媒および拘束幾何触媒を含むが、これらに限定されない)を用いて調製される、約0.935g/cm3を超える密度を有するポリエチレンを指す。
【0022】
「ULDPE」という用語は一般に、チーグラー・ナッタ触媒、クロム触媒、またはシングルサイト触媒(ビス-メタロセン触媒および拘束幾何触媒を含むが、これらに限定されない)を用いて調製される、0.880~0.912g/cm3の密度を有するポリエチレンを指す。
【0023】
「多層構造」という用語は、異なる組成を有する2つ以上の層を含む任意の構造を指し、多層フィルム、多層シート、積層フィルム、多層剛性容器、多層パイプ、および多層被覆基材を含むが、これらに限定されない。
【0024】
本明細書中で別様に示されない限り、以下の分析方法が、本発明の記載態様において使用される。
【0025】
「密度」は、ASTM D792に従って決定される。
【0026】
「メルトインデックス」:メルトインデックスI2(またはI2)およびI10(またはI10)は、それぞれ、ASTM D-1238に従って190℃ならびに2.16kgおよび10kgの荷重で測定される。それらの値は、g/10分で報告する。「メルトフローレート」は、ポリプロピレン系の樹脂に関して使用され、ASTM D1238(230℃、2.16kg)に従い判定される。
【0027】
「酸含有量」:エチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーの酸含有量は、ASTM D4094に従って測定される。
【0028】
「金属基材への接着力」:10インチ/分のクロスヘッド速度(指定通り)でASTM F904に基づく180度剥離試験を用いて、金属基材への層の接着力を測定する。ポリマーブレンドから形成された層の、金属基材への接着力特性を決定するとき、実施例に記載されるようにポリマーブレンド層および金属基材を含む試料を調製し、試験を行う。
【0029】
追加の特性および試験方法は、本明細書においてさらに記載される。
【0030】
一態様では、本発明は、ポリマーブレンドであって、1~60g/10分のメルトインデックス(I2)を有する、エチレンと、アクリル酸およびメタクリル酸のうちの少なくとも一方とを含むコポリマーのアイオノマーであって、アイオノマーの総量が、上記ブレンドの総重量に基づいて、上記ブレンドの50~99重量%を構成する、アイオノマーと、0.870g/cm3以上の密度を有し、かつ20g/10分以下のメルトインデックス(I2)を有するポリオレフィンであって、上記ブレンドの総重量に基づいて、上記ブレンドの1~50重量%を構成する、ポリオレフィンと、を含む、ポリマーブレンドを提供し、ポリマーブレンドは、以下の式を満たし、
3.5<2.76-60*I2(PO)+308*RVR+0.023*A<4.5、
式中、I2(PO)はポリオレフィンのメルトインデックス(I2)であり、RVRはポリオレフィンのアイオノマーに対する相対粘度比率(I2(PO)/I2(アイオノマー))であり、Aは、ブレンドの総重量に基づく、ポリマーブレンド中のアイオノマーの重量%である。
【0031】
いくつかの実施形態では、ポリオレフィンは、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、ポリオレフィンプラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリプロピレン、エチレン/環状オレフィンコポリマー、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、ポリオレフィンは低密度ポリエチレンまたは直鎖状低密度ポリエチレンを含む。ポリオレフィンのメルトインデックス(I2)は、いくつかの実施形態では、10g/10分未満である。
【0032】
いくつかの実施形態では、アイオノマー(エチレン/アクリル酸コポリマーのアイオノマーおよびエチレン/メタクリル酸コポリマーのアイオノマーおよびエチレン/メタクリル酸/アクリル酸コポリマーのアイオノマーを含む)の総量は、ブレンドの60重量%以上を構成し、ポリオレフィンはブレンドの40重量%以下を構成する。アイオノマー(エチレン/アクリル酸コポリマーのアイオノマーおよびエチレン/メタクリル酸コポリマーのアイオノマーおよびエチレン/メタクリル酸/アクリル酸コポリマーのアイオノマーを含む)の総量は、ブレンドの75重量%以上を構成し、ポリオレフィンはブレンドの25重量%以下を構成する。
【0033】
一態様では、本発明は、ポリマーブレンドであって、1~60g/10分のメルトインデックス(I2)を有する、エチレンおよびメタクリル酸を含むコポリマーのアイオノマーであって、アイオノマーの総量が、上記ブレンドの総重量に基づいて、上記ブレンドの50~99重量%を構成する、アイオノマーと、0.870g/cm3以上の密度を有し、かつ20g/10分以下のメルトインデックス(I2)を有するポリオレフィンであって、上記ブレンドの総重量に基づいて、上記ブレンドの1~50重量%を構成する、ポリオレフィンと、を含む、ポリマーブレンドを提供する。いくつかの実施形態では、ポリオレフィンは、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、ポリオレフィンプラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリプロピレン、エチレン/環状オレフィンコポリマー、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、ポリオレフィンは低密度ポリエチレンまたは直鎖状低密度ポリエチレンを含む。ポリオレフィンのメルトインデックス(I2)は、いくつかの実施形態では、10g/10分未満である。いくつかの実施形態では、エチレン/メタクリル酸コポリマーの総量はブレンドの60重量%以上を構成し、ポリオレフィンはブレンドの40重量%以下を構成する。いくつかの実施形態では、エチレン/メタクリル酸コポリマーの総量は、ブレンドの75重量%以上を構成し、ポリオレフィンは、ブレンドの25重量%以下を構成する。
【0034】
いくつかの実施形態において、アイオノマー中のアクリル酸またはメタクリル酸を中和するために使用される金属は、Zn+2、Na+、Li+、Ca+2、K+、Mg+2、Fe+2、またはCu+2を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、ポリマーブレンドは、酸化剤、着色剤、スリップ剤、ブロッキング防止剤、加工助剤、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つをさらに含む。
【0036】
ポリマーブレンドは、本明細書に記載される2つ以上の実施形態の組み合わせを含み得る。
【0037】
本発明の実施形態はまた、本発明のポリマーブレンドから形成された層を含む多層構造体に関する。一態様では、多層構造体は少なくとも2つの層を含み、各層が対向する表面を有し、A層が本明細書に開示される実施形態のいずれかのポリマーブレンドを含み、B層が基材を含み、B層の最上部表面が、A層の最下部表面に接着接触している。いくつかの実施形態では、基材は、アルミニウム箔、金属化フィルム、またはアイオノマーを含むフィルム層を含む。いくつかの実施形態では、10インチ/分のクロスヘッド速度で、ASTM F904に基づく180度剥離試験を用いて測定したとき、A層のB層への接着力は少なくとも3N/インチである。いくつかの実施形態では、10インチ/分のクロスヘッド速度で、ASTM F904に基づく180度剥離試験を用いて測定したとき、A層のB層への接着力は少なくとも5N/インチである。いくつかの実施形態では、A層は300℃の溶解温度でB層上に押出コーティングされる。
【0038】
いくつかの実施形態では、多層構造体はC層をさらに含み、A層の最上部表面はC層の最下部表面と接着接触する。このような実施形態では、C層はポリオレフィンを含む。
【0039】
本発明の多層構造体は、本明細書に記載の2つ以上の実施形態の組み合わせを含む。
【0040】
本発明の実施形態はまた、本明細書に開示される多層構造体(例えば多層フィルム)のいずれかを含む物品に関する。
【0041】
ポリマーブレンド
本発明の実施形態によるポリマーブレンドは、本明細書に明記した特定の特徴を有し、エチレンと、アクリル酸およびメタクリル酸のうちの少なくとも一方とを含むコポリマーのアイオノマーと、本明細書に明記した特定の特徴を有するポリオレフィンと、を含む。参照を容易にするために、このようなコポリマーのいくつかはアクリル酸モノマーおよびメタクリル酸モノマーの両方を含むことができるという理解を前提として、エチレンと、アクリル酸およびメタクリル酸のうちの少なくとも一方とを含むコポリマーは、本明細書では「エチレン/(メタ)アクリル酸コポリマー」とも呼ばれる。
【0042】
アイオノマーは、通常ペンダント酸基(例えば、カルボン酸基)を含むコポリマーを、イオン化することができる金属化合物(例えば、元素の周期表のI族、II族、IV-A族およびVIIIB族の一価、二価および/または三価の金属の化合物)で中和することによって得られる、イオン結合により架橋した熱可塑性プラスチックである。
【0043】
本発明の実施形態において、アイオノマー樹脂は、エチレンとアクリル酸および/またはメタクリル酸とのコポリマーから誘導される。本発明のいくつかの実施形態で使用されるエチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーは、中和する前に、コポリマーの重量に基づき、4より大きく、かつ最大25重量%の酸含有量を有する、と特徴付けることができる。いくつかの実施形態では、エチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーは、中和する前に、コポリマーの重量に基づき、5重量%より大きく、かつ最大15重量%の酸含有量を有する。いくつかの実施形態では、エチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーは、中和する前に、コポリマーの重量に基づき、6重量%より大きく、かつ最大12重量%の酸含有量を有する。いくつかの実施形態では、エチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーは、中和する前に、コポリマーの重量に基づき、7重量%より大きく、かつ最大12重量%の酸含有量を有する。
【0044】
アイオノマーを形成するために使用されるエチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーは、ランダムコポリマーであると特徴付けることができる。このようなエチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーは、当業者に既知の技術を用いて、エチレンとアクリル酸および/またはメタクリル酸モノマーとの混合物に作用するフリーラジカル重合開始剤の作用によって、高圧で調製することができる。本発明のポリマーブレンドに使用されるエチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーは、「グラフト化」または「ブロック重合」法によって作製されたコポリマーとは対照的に、コモノマーの混合物の重合によって形成されるので、より正確にはインターポリマーと呼ばれる。
【0045】
本発明のポリマーブレンドに使用されるアイオノマーは、少なくとも一部の酸基、好ましくは存在する酸基の少なくとも約5重量%、好ましくは約20~約100重量%が中和するように、前述のコポリマーを十分な量の金属イオンと反応させることよって得られる。好適な金属イオンとしては、Zn+2、Na+、Li+、Ca+2、K+、Mg+2、Fe+2、またはCu+2が挙げられる。本明細書で使用されるコポリマーを中和するのに特に好適な金属は、アルカリ金属、特にナトリウム、リチウムおよびカリウムなどのカチオン、ならびにアルカリ土類金属、特にカルシウム、マグネシウムおよび亜鉛などのカチオンである。いくつかの実施形態では、1種以上のアイオノマーを使用することができる。
【0046】
アイオノマーは、さらに、いくつかの実施形態において、1~60g/10分のメルトインデックス(I2)を有するとして特徴付けられ得る。1~60g/10分の全ての個々の値および部分範囲が本明細書に含まれ、本明細書に開示される。例えば、アイオノマーは、1、5、10、15、または20g/10分の下限から、10、15、20、25、30、35、40、45、50、または55g/10分の上限までのメルトインデックスを有することができる。いくつかの実施形態において、アイオノマーは1~40g/10分、いくつかの実施形態においては1~30g/10分のメルトインデックス(I2)を有する。いくつかの実施形態において、アイオノマーは1~15g/10分のメルトインデックス(I2)を有する。
【0047】
ポリマーブレンドは、いくつかの実施形態において、ブレンドの重量に基づいて50~99重量%のアイオノマーを含む。いくつかの実施形態では、ポリマーブレンドは、いくつかの実施形態では、ブレンドの重量に基づいて少なくとも60重量%のアイオノマーを含む。いくつかの実施形態では、ポリマーブレンドは、ブレンドの重量に基づいて少なくとも75重量%のアイオノマーを含む。50~99重量%のすべての個々の値および部分範囲が本明細書に含まれ、開示され、例えば、ポリマーブレンド中のエチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーの量は、50、55、60、65、70、75、または80重量%の下限から、75、80、85、90、95、または99重量%の上限までであり得る。例えば、ポリマーブレンド中のエチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーの量は、50~99重量%、またはその代わりに60~95重量%、またはその代わりに70~90重量%、またはその代わりに75~90重量%であり得る。
【0048】
本発明の実施形態において使用することができる市販のエチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーのアイオノマーの例としては、以前はThe Dow Chemical Companyから市販されていた、AMPLIFY(商標)IO 3701などのエチレン/アクリル酸コポリマーのAMPLIFY(商標)IOアイオノマー類、DuPontから市販されている、エチレン/メタクリル酸コポリマーのSurlynアイオノマー類、およびSK Global Chemical Co.,LTD.から市販されているエチレン/アクリル酸のアイオノマー類が挙げられる。
【0049】
エチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーのアイオノマーに加えて、本発明のポリマーブレンドは、0.870g/cm3以上の密度と20g/10分以下のメルトインデックス(I2)を有するポリオレフィンをさらに含む。そのようなポリオレフィンは、重合形態で、(ポリマーの重量に基づいて)過半量のエチレンまたはプロピレンモノマーを含み、かつ任意で1種以上のコモノマーを含み得るポリマーを含むことができる。
【0050】
いくつかの実施形態において、ポリオレフィンは、0.870g/cm3以上の密度と20g/10分以下のメルトインデックス(I2)を有するポリエチレンを含む。0.870g/cm3以上のすべての個々の値および部分範囲が本明細書に含まれ、開示され、例えば、ポリエチレンの密度は、0.870g/cm3、またはその代わりに0.900g/cm3以上、またはその代わりに0.910g/cm3以上、またはその代わりに0.925g/cm3以上、またはその代わりに0.935g/cm3以上であり得る。特定の実施形態において、ポリエチレンは、0.970g/cm3以下の密度を有する。0.970g/cm3以下のすべての個々の値および部分範囲が本明細書に含まれ、開示される。例えば、ポリエチレンの密度は、0.970g/cm3以下、またはその代わりに0.960g/cm3以下、またはその代わりに0.955g/cm3以下、またはその代わりに0.950g/cm3以下、またはその代わりに0.940g/cm3以下であり得る。ポリオレフィンがポリプロピレンを含むとき、当業者は本明細書の教示に基づいてポリプロピレンの適切な密度を特定することができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、ポリオレフィンは、20g/10分以下のメルトインデックス(I2)を有する。20g/10分までのすべての個々の値および部分範囲が本明細書に含まれ、本明細書に開示される。例えば、ポレオレフィンは、0.2、0.25、0.5、0.75、1、2、4、5、10、または15g/10分の下限から1、2、4、5、10、または15g/10分の上限までのメルトインデックスを有し得る。いくつかの実施形態において、ポリオレフィンは、最大15g/10分のメルトインデックス(I2)を有する。いくつかの実施形態において、ポリオレフィンは、最大10g/10分のメルトインデックス(I2)を有する。いくつかの実施形態において、ポリオレフィンは、5g/10分未満のメルトインデックス(I2)を有する。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態に使用するために特に適しているポリエチレンとしては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、ポリオレフィンエラストマー、ポリオレフィンプラストマー、環状オレフィンコポリマー、オレフィンブロックコポリマー、およびこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態において、ポリオレフィンは、低密度ポリエチレン(LDPE)および/または直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を含む。
【0053】
ポリオレフィンがLDPEおよび/またはLLDPEを含む場合、LDPEまたはLLDPEの密度は典型的には0.916~0.935g/cm3の範囲である。ポリオレフィンがHDPEを含む場合、HDPEの密度は典型的には0.935g/cm3より大きく、最大0.970g/cm3の範囲であるだろう。
【0054】
本発明の実施形態において使用することができる市販のLDPEの例としては、The Dow Chemical Companyから市販されているDOW(商標)LDPE 132i、DOW(商標)LDPE 4012、AGILITY(商標)1001、およびAGILITY(商標)1021、ならびにその他の低密度ポリエチレンが挙げられる。本発明の実施形態において使用することができる市販のLLDPEの例としては、The Dow Chemical Companyから市販されている、DOWLEX(商標)2045およびDOWLEX(商標)2740Gならびにその他の、DOWLEX(商標)直鎖状低密度ポリエチレンが挙げられる。本発明の実施形態において使用することができる市販のHDPEの例としては、The Dow Chemical Companyから市販されている、DOW(商標)HDPE樹脂およびDOWLEX(商標)2050Bならびにその他の、高密度ポリエチレンが挙げられる。HDPE樹脂に加えて、ポリマーブレンドに使用されるポリオレフィンは、0.935g/cm3を超える密度を有する強化ポリエチレンも含み得る。本発明の実施形態において使用することができる、高い密度を有する市販の強化ポリエチレン樹脂の例としては、The Dow Chemical Companyから市販されている、ELITE(商標)およびその他の強化ポリエチレン樹脂が挙げられる。さらに、いくつかの実施形態では、ポリマーブレンドに使用されるポリオレフィンは、The Dow Chemical Companyから市販されている、例えばELITE(商標)強化ポリエチレンなどの、0.935g/cm3以下の密度を有する強化ポリエチレンも含み得る。本発明の実施形態において使用することができる市販のポリオレフィンプラストマーの例としては、The Dow Chemical Companyから市販されている、AFFINITY(商標)PL 1880Gおよびその他の、AFFINITY(商標)ポリオレフィンプラストマーが挙げられる。本発明の実施形態において使用することができる市販のポリオレフィンエラストマーの例としては、The Dow Chemical Companyから市販されている、ENGAGE(商標)8180およびその他の、ENGAGE(商標)ポリオレフィンエラストマーが挙げられる。本発明の実施形態において使用することができる市販のオレフィンブロックコポリマーの例としては、The Dow Chemical Companyから市販されている、INFUSE(商標)9107およびその他の、INFUSE(商標)オレフィンブロックコポリマーが挙げられる。
【0055】
当業者は、本明細書の教示に基づいてポリマーブレンドに使用するための好適な市販のポリプロピレンを選択することができる。
【0056】
ポリマーブレンドは、いくつかの実施形態において、ブレンドの重量に基づいて1~50重量%のポリオレフィンを含む。いくつかの実施形態では、ポリマーブレンドは、いくつかの実施形態では、ブレンドの重量に基づいて40重量%以下のポリオレフィンを含む。いくつかの実施形態では、ポリマーブレンドは、ブレンドの重量に基づいて25重量%以下のポリオレフィンを含む。1~50重量%のすべての個々の値および部分範囲が本明細書に含まれ、開示され、例えば、ポリマーブレンド中のポリオレフィンの量は、1、5、10、15、20、25、30、35、または40重量%の下限から、25、30、35、40、45、または50重量%の上限までであり得る。例えば、ポリマーブレンド中のポリオレフィンの量は、1~45重量%、またはその代わりに1~40重量%、またはその代わりに1~25重量%であり得る。
【0057】
アイオノマーとポリオレフィンとのメルトインデックス(I2)の関係およびアイオノマーの量は、いくつかの実施形態によるポリマーブレンドを特徴付けるために使用することができる。いくつかの実施形態では、本発明のポリマーブレンドは以下の式を満たし、
3.5<2.76-60*I2(PO)+308*RVR+0.023*A<4.5
I2(PO)はポリオレフィンのメルトインデックス(I2)である。RVRはポリオレフィンのアイオノマーに対する相対粘度比率であり、言い換えると、ポリオレフィンのメルトインデックス(I2(PO))をアイオノマーのメルトインデックス(I2(アイオノマー))で割った、(I2(PO)/I2(アイオノマー))である。Aは、百分率で表した、ブレンドの総重量に基づくポリマーブレンド中のアイオノマーの重量%である。ポリマーブレンドが50重量%のアイオノマーを含む場合、A=50である。いくつかの実施形態では、本発明のポリマーブレンドは以下の式を満たし、
3.7<2.76-60*I2(PO)+308*RVR+0.023*A<4.5
I2(PO)、RVR、およびAの値は上記のように定義される。いくつかの実施形態では、本発明のポリマーブレンドは以下の式を満たし、
3.9<2.76-60*I2(PO)+308*RVR+0.023*A<4.5
I2(PO)、RVR、およびAの値は上記のように定義される。
【0058】
特定の理論に縛られることを望まないが、上記の式によって定義されるポリマーブレンド中のアイオノマーとポリオレフィンとの関係は、ポリマーブレンドが多層構造体中のタイ層として使用されるとき、特に層のうちの1つが金属箔または金属化フィルムであるとき、望ましい接着性に寄与すると考えられる。
【0059】
いくつかの実施形態では、ポリマーブレンドは1種以上の無機充填剤をさらに含む。いくつかの実施形態に従ってポリマーブレンドに組み込むことができる無機充填剤の例には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、またはそれらの組み合わせが挙げられる。無機充填剤を、費用を削減する、シール特性を改善する、印刷物を改善する、または他の理由で、いくつかの実施形態に含めることができる。ポリマーブレンドは、いくつかの実施形態において、ブレンドの重量に基づいて最大50重量%の無機充填剤を含む。0~50重量%のすべての個々の値および部分範囲が本明細書に含まれ、開示され、例えば、ポリマーブレンド中の無機充填剤の量は、1、5、10、15、20、25、30、35、または40重量%の下限から、25、30、35、40、45、または50重量%の上限までであり得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、ポリマーブレンドは、例えば、酸化防止剤、着色剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、加工助剤、およびそれらの組み合わせを含む、当業者に知られている1つ以上の添加剤をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、ポリマーブレンドは、そのような添加剤を最大5重量%含む。0~5重量%のすべての個々の値および部分範囲が本明細書に含まれ開示され、例えば、ポリマーブレンド中の添加剤の総量は、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、または4.5重量%の下限から1、2、3、4、または5重量%の上限までであり得る。
【0061】
以下に論じるように、本発明のポリマーブレンドは、当業者に既知の技術を用いて本明細書の教示に基づき、押出コーティング(または他の装置)を介して最終加工生成物(例えば多層構造体)に組み込む/加工することができる。
【0062】
本発明のポリマーブレンドは、フィルム製造用の押出コーター(または他の装置)に供給する前に、所定量の成分を二軸スクリュー押出機で溶融ブレンドすることによって調製され得る。そのようなポリマーブレンドはまた、フィルム製造用の押出コーター(または他の装置)に供給する前に、所定量の成分をタンブルブレンドすることによっても調製され得る。いくつかの実施形態では、本発明のポリマーブレンドは、ペレットの形態であり得る。例えば、個々の成分は、本明細書の教示に基づいて、二軸スクリュー押出機または当業者に知られている他の技術を用いて、溶融ブレンドされ、次いでペレットに成形され得る。いくつかの実施形態において、ポリマーブレンドは、押出コーターに供給する前にタンブルブレンドされる、コンパウンドしたペレットと、追加のポリマーの組み合わせを含み得る。例えば、エチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーのアイオノマーとポリオレフィン(例えば、LDPE)のブレンドを含むペレットを、追加のポリオレフィン(例えば、追加のLDPE)とタンブルブレンドし、所望のアイオノマーとポリオレフィンの重量%を有するポリマーブレンドを得ることができる。
【0063】
多層構造体
いくつかの実施形態では、本発明は、少なくとも1つの層が、本明細書に開示される実施形態のいずれかによるポリマーブレンドから形成される多層構造体に関する。多層構造体は、いくつかの実施形態では、少なくとも2つの層を含み、各層が対向する表面を有する。そのような実施形態では、第1の層(A層)(例えば、本発明のポリマーブレンドを含む層)は、第2の層(B層)と接着接触し、第2の層(B層)の最上部表面が第1の層(A層)の最下部表面に接着接触している。
【0064】
第1の層(A層)が本発明のポリマーブレンドから形成される実施形態では、第2の層(B層)は基材を含むことができる。本発明の実施形態において第2の層(B層)として使用することができる基材の例としては、金属箔、織布マット(例えば、ガラス繊維織物マット)、不織布マット(例えば、ガラス繊維不織物マット)、スクリム、金属化フィルム(例えば金属化PET)、および高分子フィルム(例えば、延伸ポリプロピレン、延伸PETなど)、またはアイオノマーを含むフィルム層が挙げられる。本発明のポリマーブレンドは、金属箔または金属化フィルムへの接着に特に有用である。任意の金属箔または金属化フィルムが、ポリマーブレンド層が適用される基材を形成し得る。例示的な金属箔としては、アルミニウム箔および銅箔が挙げられる。金属箔が存在する場合、濡れ性および/または接着性を改善するために、火炎処理またはコロナ処理しても、他の処理に供してもよいが、必ずしもこれらの処理をする必要はない。例示的な金属化フィルムとしては、金属化PETフィルム、金属化延伸ポリプロピレンフィルム、金属化ポリアミドフィルム、および金属化ポリエチレンフィルムが挙げられる。いくつかの実施形態では、金属箔以外の基材も、濡れ性および/または接着性を改善するために火炎処理もしくはコロナ処理するか、または他の処理にかけることができる。いくつかのそのような実施形態において、基材は延伸ポリプロピレンフィルムまたは延伸ポリアミドフィルムを含む。当業者は、本明細書の教示に基づいてそのような基材を特定することができる。いくつかの実施形態では、基材は、アイオノマーを含むフィルム層を含むことができる。そのような実施形態において、A層はシーラント層として機能することができ、アイオノマーを含む他のフィルム層は別の構造の最上層であることができ、そして同様にシーラント層として作用することができる。
【0065】
いくつかの実施形態において、本発明の多層構造体は、本明細書に開示される実施形態のいずれかによるポリマーブレンドから形成された第1の層(A層)と、金属基材(例えば金属箔または金属化フィルム)を含み第1の層と接着接触する第2の層(B層)と、を含み、10インチ/分のクロスヘッド速度で、ASTM F904に基づく180度剥離試験を用いて測定したときに、第1の層の、金属基材(例えば金属箔など)への接着力は少なくとも3N/インチであり、いくつかの実施形態では少なくとも5N/インチであり、他の実施形態では少なくとも6N/インチである。いくつかの実施形態では、金属基材はアルミニウム箔である。
【0066】
多層構造体が金属箔層(例えば、アルミニウム箔層)を含む実施形態では、金属箔は、0.20~2.0ミル、より好ましくは0.20~0.50ミルの厚さを有する。0.20~0.50ミルのすべての個々の値および部分範囲が本明細書に含まれ開示され、例えば、金属箔層の厚さは、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、または0.45ミルの下限から、0.30、0.35、0.40、0.45、または0.50ミルの上限までの範囲であり得る。例えば、金属箔層の厚さは、0.20~0.50ミル、またはその代わりに0.20~0.60ミル、またはその代わりに0.60~1.0ミル、またはその代わりに0.25~0.50ミルの範囲であることができる。当業者にとって、金属箔層の厚さは用途に十分なものとして定義される。
【0067】
多層構造体が金属化フィルム層(例えば、金属化PETフィルム、金属化延伸ポリプロピレンフィルム、金属化ポリアミドフィルム、または金属化ポリエチレンフィルム)を含む実施形態では、フィルム上の金属化層は、性能(バリア性、不透明度など)および費用などの要因に応じて様々な厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、金属化フィルム層上の金属化層は、3~40nmの厚さを有する。3~40nmのすべての個々の値および部分範囲が本明細書に含まれ、開示され、例えば、金属化層の厚さは3、5、10、17、20、22、25、30、または35nmの下限から、10、12、15、20、23、25、32、35、37、または40nmの上限までの範囲であり得る。当業者には、金属化フィルムの金属化層の厚さは用途に十分なものとして定義される。
【0068】
ポリマーブレンドから形成された層は、押出ラミネーションおよび/または押出コーティングなどの、任意の許容できる方法によって、金属基材層(例えば、金属箔)に適用することができる。金属基材層(例えば、金属箔)上にポリマーブレンド層を押出コーティングする際、いくつかの実施形態では、ポリマーブレンドは、金属箔層への許容できる接着性を提供しつつ、許容できるレベルのネックインおよびドローダウン速度を維持することができる。本発明のポリマーブレンドは、いくつかの実施形態では、低密度ポリエチレンのみを含むポリマー層が押出コーティングされる場合に使用する温度(例えば、~320℃)より低い温度(例えば、~300℃以下)で金属基材層上に押出コーティングされ得るが、依然として金属基材への許容できる接着性を提供する。したがって、許容できる接着性を達成しつつ、比較的低い温度で押出コーティングできることは、本発明のいくつかの実施形態の1つの利点である。
【0069】
いくつかの実施形態では、本発明のポリマーブレンドから形成される層は、基材に加えて(例えば、金属箔層に加えて)別の層と接着接触することができる。例えば、いくつかの実施形態では、ポリマーブレンドから形成される層はさらに、ポリオレフィンを含む層と接着接触することができる。すなわち、そのような実施形態では、本発明のポリマーブレンドから形成された層は、ポリオレフィン層と基材(例えば、金属箔)との間にあることができ、基材の最上部表面がポリマーブレンド層の最下部表面と接着接触し、かつ、ポリマーブレンド層の最上部表面がポリオレフィン層の最下部表面と接着接触する。
【0070】
ポリオレフィン層を含む実施形態では、ポリオレフィンは、本明細書の教示に基づく多層構造体の層としての使用に好適であることが当業者に知られている、任意のポリエチレン、ポリプロピレン、およびそれらの誘導体(例えばエチレン-プロピレンコポリマー)であり得る。例えば、そのような層に使用することができるポリエチレンと、いくつかの実施形態では、多層構造体の他の層に使用することができるポリエチレンは、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、高溶融強度高密度ポリエチレン(HMS-HDPE)、超高密度ポリエチレン(UHDPE)、メタロセン触媒または拘束幾何触媒などの、シングルサイト触媒によって作製した均一に分岐したエチレン/α-オレフィンコポリマー、およびそれらの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、ポリオレフィン層に使用されるポリエチレンは気相重合によって作製することができる。いくつかの実施形態では、ポリオレフィン層に使用されるポリエチレンは、当該技術分野において既知である任意の種類の反応器または反応器構成を使用して、気相重合、液相重合、もしくはスラリー重合、またはそれらの任意の組み合わせによって作製され得る。
【0071】
多層構造体のいくつかの実施形態は、上記の実施形態以上の層を含むことができる。例えば、多層構造体はさらに用途に応じて、例えば、バリア層、シーラント層、タイ層、他のポリエチレン層、ポリプロピレン層など、多層構造体に典型的に含まれる他の層を含むことができるが、必ずしも本発明によるポリマーブレンドから形成される層と接着接触する必要はない(いくつかの実施形態では、これらの層は、このようなポリマーブレンドから形成される層と接触し得るが)。加えて、印刷層、高弾性層、高光沢層などの他の層を、本発明の多層構造体(例えば、フィルムなど)に積層してもよい。さらに、いくつかの実施形態では、多層構造体は、紙またはガラス繊維などの繊維含有基材(例えば、不織布マット、織布マット、スクリムなど)に押出コーティングすることができる。
【0072】
押出コーティングに加えて、本発明の多層構造体は、本明細書の教示に基づいて、当業者に既知の技術を使用して、インフレーションフィルムまたはキャストフィルムとして共押出しされ得る。いくつかの実施形態では、本発明の多層構造体は、積層によって、またはインフレーション/キャストフィルムとそれに続く熱積層との組み合わせによっても形成することができる。
【0073】
包装
いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書に開示されるいずれかの実施形態の多層構造体を含む包装に関する。特定の一実施形態において、包装は、レトルト包装および/または殺菌包装である。様々な実施形態において、包装は、固体、スラリー、液体、または気体を収容するために使用することができる。限定ではなく例として、包装は、酸性溶液、トウモロコシ油、アルコール、食肉、チーズ、日焼け止め、シャンプー、スパイス、醤油、クリーマー、フレーバーコーヒー、牛乳、ジュース、洗剤、無菌食品、熱間充填ジュース、高脂肪食品、赤ちゃん用おしり拭き、ヨウ素溶液、サラダドレッシング、ケチャップ、ソース、およびその他の物品を収容するために使用することができる。
【0074】
ここで、本発明のいくつかの実施形態を、以下の実施例に詳細に説明する。
【実施例】
【0075】
以下の材料が、後述される実施例において使用される。
【0076】
【0077】
DOW(商標)LDPE 132i、AGILITY(商標)1001、およびAGILITY(商標)1021はそれぞれ、The Dow Chemical Companyから市販されている低密度ポリエチレン樹脂である。ENGAGE(商標)8180は、The Dow Chemical Companyから市販されているポリオレフィンエラストマーである。AMPLIFY(商標)IO 3701は、The Dow Chemical Companyから市販されていたエチレン/アクリル酸コポリマーのアイオノマーである。SURLYN 1650、1652、および1720は、DuPontから市販されているエチレン/メタクリル酸コポリマーのアイオノマーである。
【0078】
下記の実施例は、本発明の、ポリマーブレンドのアルミニウム基材への接着性を説明するために使用される(なお、実施例4~12は参考例である。)。各実施例で用いたアルミニウム基材は以下のようにして調製した。漂白した、一連あたり30ポンドの紙を、DOW(商標)LDPE 722(The Dow Chemical Company)を使用して、0.00035インチ(0.35ミル)のグレードA湿潤性アルミニウム箔に押出ラミネートする。次に、ラミネートシートを3~4フィートの長さに切断してアルミニウム基材を得る。マスキングテープをアルミニウム基材の前縁に貼り付ける。アルミニウム基材はコロナ処理されていない。
【0079】
実施例1
表1に示すように、様々な多層構造体を調製する。
【0080】
【0081】
【0082】
以下に記載するように、A層を単層としてアルミニウム基材上に被覆する。
【0083】
本明細書中の全ての実施例は、Black Clawson押出コーターを利用して、ポリマー層(A層)をアルミニウム基材(B層)上に押出コーティングすることによって調製する。比較例AにおいてA層のために使用されるポリマーのペレットは、市販の材料の箱から直接供給される。比較例B~Hおよび本発明の実施例1~12におけるA層は、所定量の2つの成分をドライブレンドし、ドライブレンドを押出コーターに供給することによって調製される。アルミニウム基材を冷却ロール/ゴムロールニップの直前に移動する50ポンド/連のクラフト紙上に落下させ、そこでアルミニウム基材をニップの中に引き込み、アルミニウム基材の箔側にA層を適用する。ダイから得られる流速は、ダイ開口部1インチ当たり、最大でポリマー~10ポンド/時である。試料の製造には、6インチの一定のエアギャップを使用する。各試料は、アルミニウム基材上にコーティングされた、厚さ1ミルのA層の単層から構成される。試料を300℃の溶融温度および毎分440フィートのラインスピードで作製する。
【0084】
各試料について、アルミニウム基材に対するA層の接着力を10インチ/分のクロスヘッド速度で、ASTM規格F904に基づく180度剥離試験を用いて決定する。各比較例および発明実施例の、少なくとも5つの試料を測定し、平均値および標準偏差を計算する。結果を表2に示す。
【0085】
【0086】
ポリマーブレンドのブレンド配合値を、次の式を使用して計算する、
2.76-60*I2(PO)+308*RVR+0.023*A
相対粘度比(RVR)を、A層の成分のメルトインデックス(I2)から、ポリオレフィンのメルトインデックス(I2(PO))をアイオノマーのメルトインデックス(I2(アイオノマー))で割ることによって決定する。Aは、ブレンドの総重量に基づくポリマーブレンド中のアイオノマーの重量%である。本発明の実施例1~12は、アイオノマー100%から形成された層と比較して同等または改善された接着性を有利に提供する。本発明の実施例1~3および5は、表3に関連して以下に示されるように、プロセス安定性を犠牲にすることなく、そのような接着性を有利に提供した。
【0087】
エチレンとメタクリル酸のコポリマーのアイオノマーを含むポリマーブレンドのいくつかの実施形態は、広い範囲のブレンド配合値にわたって適切な接着性もたらすことにも注目すべきである。
【0088】
これらの試料ついての、ネックインおよびドローダウン速度も測定し、結果を(ブレンド配合値に加えて)表3に示す。
【0089】
【0090】
【0091】
ネックイン(インチ)は、毎分440フィートのラインスピードで測定する。ドローダウン速度(毎分フィート)は、押出コーター内のスクリューが、約250ポンド/時の流速をもたらす90rpmで運転している間に、ウェブの破断が観察されたときのラインスピードである。減速ドローダウン速度(毎分フィート)は、押出コーター内のスクリューが45rpmで運転している間に、ウェブの破断が観察されたときのラインスピードである。ドローダウン速度および減速ドローダウン速度の最大値は毎分1500フィートであり、減速ドローダウン速度は、押出機が90rpmで運転するときラインスピードが毎分1500フィートに達する場合のみ決定される。表3は、本発明の実施例1~3および5が、押出コーティング用途に許容できる性能特性を発揮することを示している。
なお、本発明には以下の態様が含まれることを付記する。
〔態様1〕
ポリマーブレンドであって、
1~60g/10分のメルトインデックス(I
2
)を有する、エチレンと、アクリル酸およびメタクリル酸のうちの少なくとも一方とを含むコポリマーのアイオノマーであって、アイオノマーの総量が、前記ブレンドの総重量に基づいて、前記ブレンドの50~99重量%を構成する、アイオノマーと、
0.870g/cm
3
以上の密度を有し、かつ20g/10分以下のメルトインデックス(I
2
)を有するポリオレフィンであって、前記ブレンドの総重量に基づいて、前記ブレンドの1~50重量%を構成する、ポリオレフィンと、を含み、
前記ポリマーブレンドが、以下の式を満たし、
3.5<2.76-60*I
2(PO)
+308*RVR+0.023*A<4.5、
式中、I
2(PO)
が前記ポリオレフィンのメルトインデックス(I
2
)であり、RVRが前記ポリオレフィンの前記アイオノマーに対する相対粘度比率(I
2(PO)
/I
2(アイオノマー)
)であり、Aが、前記ブレンドの総重量に基づく、前記ポリマーブレンド中のアイオノマーの重量%である、ポリマーブレンド。
〔態様2〕
前記ポリオレフィンが、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、またはそれらの組み合わせを含む、態様1に記載のポリマーブレンド。
〔態様3〕
前記ポリオレフィンが低密度ポリエチレンまたは直鎖状低密度ポリエチレンを含む、態様1に記載のポリマーブレンド。
〔態様4〕
アイオノマーの総量が、前記ブレンドの少なくとも75重量%を構成する、態様1~3のいずれか一項に記載のポリマーブレンド。
〔態様5〕
前記アイオノマー中の前記アクリル酸またはメタクリル酸を中和するために使用される前記金属が、Zn
+2
、Na
+
、Li
+
、Ca
+2
、K
+
、Mg
+2
、Fe
+2
、またはCu
+2
を含む、態様1~4のいずれか一項に記載のポリマーブレンド。
〔態様6〕
前記ポリオレフィンの前記メルトインデックス(I
2
)が10g/10分未満である、態様1~5のいずれか一項に記載のポリマーブレンド。
〔態様7〕
各層が対向する表面を有する少なくとも2つの層を含む多層構造体であって、
A層が、態様1~6のいずれか一項に記載のポリマーブレンドを含み、かつ
B層が、基材を含み、B層の最上部表面が、A層の最下部表面に接着接触している、多層構造体。
〔態様8〕
前記基材が、金属箔、金属化フィルム、織布マット、不織布マット、スクリム、またはアイオノマーを含むフィルム層を含む、態様7に記載の多層構造体。
〔態様9〕
C層をさらに含み、A層の最上部表面がC層の最下部表面と接着接触しており、C層がポリオレフィンを含む、態様8または態様9に記載の多層構造体。
〔態様10〕
10インチ/分のクロスヘッド速度で、ASTM F904に基づく180度剥離試験を用いて測定したときに、A層のB層への接着力が少なくとも3N/インチである、態様7~9のいずれか一項に記載の多層構造体。