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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】管理装置、電源システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/42 20060101AFI20240604BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20240604BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240604BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
H01M10/42 P
H02J7/02 H
H02J7/00 Y
H01M10/48 P
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020042826
(22)【出願日】2020-03-12
(65)【公開番号】P2021144862
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【弁理士】
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】大塚 卓馬
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-004657(JP,A)
【文献】特開2014-011060(JP,A)
【文献】特開2017-219404(JP,A)
【文献】特開2003-129927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42 -10/48
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の蓄電モジュールを含む蓄電システムを管理する管理装置であって、
前記複数の蓄電モジュールの少なくとも一つの交換時に、作業者の端末装置から入力される、交換後の蓄電モジュールのSOH(State Of Health)の入力値を取得する取得部と、
前記交換後の蓄電モジュールに電流を流し、電流を流した状態で計測した電圧値と電流値をもとに、前記交換後の蓄電モジュールのSOHを推定する推定部と、
前記交換後の蓄電モジュールのSOHの入力値と推定値を比較し、両者の乖離が所定値以内にあるとき前記入力値を有効とし、両者の乖離が前記所定値を超えるとき前記入力値を無効とする判定部と、
を備えることを特徴とする管理装置。
【請求項2】
前記判定部は、両者の乖離が前記所定値を超えるとき、前記交換後の蓄電モジュールのSOHの更新値として前記推定値を使用することを特徴とする請求項1に記載の管理装置。
【請求項3】
複数の蓄電モジュールを含む蓄電システムを管理する管理装置であって、
前記複数の蓄電モジュールのそれぞれのSOH(State Of Health)及び内部抵抗の少なくとも一方の値を保持する保持部と、
前記複数の蓄電モジュールの少なくとも一つが交換されると、前記複数の蓄電モジュールに電流を流し、電流を流した状態で計測した電圧値と電流値をもとに、前記複数の蓄電モジュールのそれぞれのSOHまたは内部抵抗を推定する推定部と、
前記複数の蓄電モジュールごとに、前記保持部に保持されているSOHまたは内部抵抗の値と、推定されたSOHまたは内部抵抗の値を比較し、両者の乖離が所定値を超える蓄電モジュールを、交換された蓄電モジュールと判定する判定部と、
前記判定部により判定された前記交換された蓄電モジュールのSOHの入力を促すメッセージを、作業者の端末装置に通知する通知部と、
前記端末装置から入力される、交換後の蓄電モジュールのSOHの入力値を取得する取得部と、
を備えることを特徴とする管理装置。
【請求項4】
複数の蓄電モジュールを含む蓄電システムを管理する管理装置であって、
前記複数の蓄電モジュールのそれぞれのSOH(State Of Health)及び内部抵抗の少なくとも一方の値を保持する保持部と、
前記複数の蓄電モジュールの一つが交換されると、前記複数の蓄電モジュールに電流を流し、電流を流した状態で計測した電圧値と電流値をもとに、前記複数の蓄電モジュールのそれぞれのSOHまたは内部抵抗を推定する推定部と、
推定された前記複数の蓄電モジュールのSOHまたは内部抵抗の平均値と、推定された前記複数の蓄電モジュールのそれぞれのSOHまたは内部抵抗の値を比較し、前記平均値からの乖離が最も大きい蓄電モジュールを、交換された蓄電モジュールと判定する判定部と、
を備えることを特徴とする管理装置。
【請求項5】
前記判定部により判定された前記交換された蓄電モジュールのSOHの入力を促すメッセージを、作業者の端末装置に通知する通知部と、
前記端末装置から入力される、交換後の蓄電モジュールのSOHの入力値を取得する取得部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の管理装置。
【請求項6】
複数の蓄電モジュールを含む蓄電システムを管理する管理装置であって、
前記複数の蓄電モジュールのそれぞれのSOH(State Of Health)及び内部抵抗の少なくとも一方の値を保持する保持部と、
前記複数の蓄電モジュールの少なくとも一つが交換されると、前記複数の蓄電モジュールに電流を流し、電流を流した状態で計測した電圧値と電流値をもとに、前記複数の蓄電モジュールのそれぞれのSOHまたは内部抵抗を推定する推定部と、
前記保持部に保持されている前記複数の蓄電モジュールのSOHの値の合計もしくは平均が、推定された前記複数の蓄電モジュールのSOHの値の合計もしくは平均より高い場合、または前記保持部に保持されている前記複数の蓄電モジュールの内部抵抗の値の合計もしくは平均が、推定された前記複数の蓄電モジュールの内部抵抗の値の合計もしくは平均より低い場合、蓄電モジュールの不正な交換がなされたと判定する判定部と、
を備えることを特徴とする管理装置。
【請求項7】
作業者の端末装置から入力される、交換後の蓄電モジュールのSOHの入力値を取得する取得部をさらに備え、
前記判定部は、蓄電モジュールの不正な交換がなされたと判定したとき、前記入力値を無効とすることを特徴とする請求項6に記載の管理装置。
【請求項8】
複数の蓄電モジュールと、
請求項1から7のいずれか1項に記載の管理装置と、
を備えることを特徴とする電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数の蓄電モジュールを含む蓄電システムの管理装置、電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、電気自動車(EV)に搭載される電池の容量が増大してきている。これに伴い、電池システムを構成する電池モジュールの数も増加傾向にある。電池システムを構成する特定の電池モジュールに不具合が発生したり、特定の電池モジュールだけが他の電池モジュールより大きく劣化した場合、電池システム全体を交換すると不経済である。そこで電池モジュール単位で交換する仕組みが求められる。
【0003】
ここで、電池モジュールの交換には、新品の電池モジュールへの交換に加えて、電池システムを構成する電池モジュール間の配置の入れ替えも含まれる。電池システム内の環境要因(例えば、温度分布)により、電池システム内の複数の電池モジュール間に劣化のバラツキが生じることがある。その場合、電池モジュール間の配置の入れ替えにより劣化のバラツキを平準化することができる。
【0004】
電池モジュールの劣化を管理するために通常、容量維持率(SOH:State Of Health)という指標が使用される。SOHは、初期の満充電容量(FCC:Full Charge Capacity)に対する現在のFCCの比率で規定され、数値が低いほど(0%に近いほど)劣化が進行していることを示す。SOHは、複数の電池モジュールを管理するBMU(Battery Management Unit)により管理される。車載用途では、BMUは電池ECU(Electronic Control Unit)とも称される。電池モジュールを交換した際は、BMU内の、該当する電池モジュールのSOHの値を書き換える必要がある。
【0005】
書き換えられた電池モジュールのSOHの値の確からしさを確認する方法として、様々な方法が考えられる。第1の方法として、電池モジュールの交換後、車両を走行させて交換後の電池モジュールの電圧変化と電流変化を計測し、自動学習する方法が考えられる。この方法では、学習に数十トリップの走行が必要になり、BMU内に管理されるSOHの値が、実際の値に到達するまでに時間がかかる。
【0006】
第2の方法として、交換後の電池モジュールを完全充放電して交換後の電池モジュールのFCCを求め、FCCからSOHを推定する方法が考えられる。この方法では、電池モジュールを完全充放電させる作業に時間と電気代がかかる。
【0007】
第3の方法として、診断ツールを使用して、BMU内に管理されているSOHの値を直接書き換えることが考えられる。この方法では、電池モジュールの充放電は不要で、作業時間も短い。
【0008】
特許文献1には、組電池から電池モジュールが取り出されて、他の組電池に組み込まれて使用された不正使用があったか否かを判定する方法が開示されている。この方法は、電池モジュールの正規品としての信頼性を担保するためのものであり、BMU内に管理されているSOHの値の信頼性を担保するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2014/027509号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記第3の方法では、電池モジュールの交換後、作業者がSOHの値を誤って入力する可能性がある。また、複数の電池モジュールの内、交換していない電池モジュールのSOHの値を、作業者が誤って書き換えてしまう可能性がある。また、電池モジュールの交換後、作業者がSOHの値を入力し忘れてしまう可能性がある。また、不正使用するために、SOHの値が恣意的な値に書き換えられる、もしくは恣意的に放置される可能性も考えられる。
【0011】
本開示はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、管理装置内に保持される複数の蓄電モジュールのSOHの値の信頼性を担保する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の管理装置は、複数の蓄電モジュールを含む蓄電システムを管理する管理装置であって、前記複数の蓄電モジュールの少なくとも一つの交換時に、作業者の端末装置から入力される、交換後の蓄電モジュールのSOH(State Of Health)の入力値を取得する取得部と、前記交換後の蓄電モジュールに電流を流し、電流を流した状態で計測した電圧値と電流値をもとに、前記交換後の蓄電モジュールのSOHを推定する推定部と、前記交換後の蓄電モジュールのSOHの入力値と推定値を比較し、両者の乖離が所定値以内にあるとき前記入力値を有効とし、両者の乖離が前記所定値を超えるとき前記入力値を無効とする判定部と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、管理装置内に保持される複数の蓄電モジュールのSOHの値の信頼性を担保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態に係る電源システムが搭載される、電動車両の概略構成を示す図である。
図2】電池モジュールと、管理装置の計測部の構成例を示す図である。
図3】管理装置の処理部及び記憶部と、診断装置の構成例を示す図である。
図4】実施例1に係る、電池モジュール交換時の管理装置の処理の流れを示すフローチャートである。
図5】実施例1の変形例に係る、電池モジュール交換時の管理装置の処理の流れを示すフローチャートである。
図6】実施例2に係る、電池モジュール交換時の管理装置の処理の流れを示すフローチャートである。
図7】実施例3に係る、電池モジュール交換時の管理装置の処理の流れを示すフローチャートである。
図8】実施例4に係る、電池モジュール交換時の管理装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、実施の形態に係る電源システム10が搭載される、電動車両1の概略構成を示す図である。電動車両1は、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、電気自動車(EV)のいずれであってもよい。以下の説明では、内燃機関を搭載しない純粋なEVを想定する。
【0016】
電動車両1は、電源システム10、車両制御部40、インバータ50、及びモータ60を備える。電源システム10は、電池システム20と管理装置30を含む。電池システム20は、複数の電池モジュールが接続されて構成される。図1では、4個の電池モジュールが並列接続された並列モジュールが、4個直列に接続された、16個の電池モジュールM1-M16で構成される電池システム20が示されている。なお、電池システム20を構成する電池モジュールの数、及び複数の電池モジュールの接続形態は、図1に示した例に限定されるものではない。複数の電池モジュールの接続形態は、直列接続であってもよいし、並列接続であってもよいし、直並列接続であってもよい。
【0017】
管理装置30は、複数の電池モジュールM1-M16を管理するBMUである。管理装置30は、計測部31、処理部32、及び記憶部33を含む(図2図3参照)。管理装置30の詳細は後述する。
【0018】
電池システム20は、リレーRY1及びインバータ50を介してモータ60に接続される。インバータ50は力行時、電池システム20から供給される直流電力を交流電力に変換してモータ60に供給する。回生時、モータ60から供給される交流電力を直流電力に変換して電池システム20に供給する。モータ60は三相交流モータであり、力行時、インバータ50から供給される交流電力に応じて回転する。回生時、減速による回転エネルギーを交流電力に変換してインバータ50に供給する。
【0019】
車両制御部40は電動車両1全体を制御する車両ECU(Electronic Control Unit)であり、例えば、統合型のVCM(Vehicle Control Module)で構成されていてもよい。リレーRY1は、電池システム20とインバータ50を繋ぐ配線間に挿入されるコンタクタである。車両制御部40は、走行時、リレーRY1をオン状態(閉状態)に制御し、電池システム20と電動車両1の動力系を電気的に接続する。車両制御部40は非走行時、原則としてリレーRY1をオフ状態(開状態)に制御し、電池システム20と電動車両1の動力系を電気的に遮断する。なおリレーの代わりに、半導体スイッチなどの他の種類のスイッチを用いてもよい。
【0020】
診断装置2は、電動車両1の保守・整備に使用される専用のスキャンツールである。例えば、診断装置2としてダイアグテスタを使用することができる。ダイアグテスタは、電動車両1に装備されているDLC(Data link coupler)コネクタに、例えばOBC2(On Board Diagnosis second generation)ケーブルを装着することにより、電動車両1内の車両制御部40と接続される。なお、診断装置2としてダイアグテスタの代わりに、PC、タブレット、スマートフォン等の汎用の情報端末装置を使用してもよい。また、ダイアグテスタと汎用の情報端末装置を連携して一つの診断装置2を構成してもよい。
【0021】
図2は、電池モジュールM1と、管理装置30の計測部31の構成例を示す図である。電池モジュールM1は、直列接続された複数のセルE1-Enを含む。セルには、リチウムイオン電池セル、ニッケル水素電池セル、鉛電池セル等を用いることができる。以下、本明細書ではリチウムイオン電池セル(公称電圧:3.6-3.7V)を使用する例を想定する。
【0022】
複数のセルE1-Enと直列にシャント抵抗Rsが接続される。シャント抵抗Rsは電流検出素子として機能する。なおシャント抵抗Rsの代わりにホール素子を用いてもよい。また電池モジュールM1内に、複数のセルE1-Enの温度を検出するための複数の温度センサT1、T2が設置される。温度センサは電池モジュールに1つ設置されてもよいし、複数のセルごとに1つ設置されてもよい。温度センサT1、T2には例えば、サーミスタを使用することができる。
【0023】
計測部31は、電圧計測部31a、温度計測部31b、及び電流計測部31cを含む。電圧計測部31aと、直列接続された複数のセルE1-Enの各ノードとの間は複数の電圧計測線で接続される。電圧計測部31aは、隣接する2本の電圧計測線間の電圧をそれぞれ計測することにより、各セルE1-Enの電圧を計測する。電圧計測部31aは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)または汎用のアナログフロントエンドICで構成することができる。電圧計測部31aはマルチプレクサ及びA/D変換器を含む。マルチプレクサは、隣接する2本の電圧計測線間の電圧を上から順番にA/D変換器に出力する。A/D変換器は、マルチプレクサから入力されるアナログ電圧をデジタル値に変換する。
【0024】
温度計測部31bは分圧抵抗およびA/D変換器を含む。A/D変換器は、複数の温度センサT1、T2と複数の分圧抵抗によりそれぞれ分圧された複数のアナログ電圧を順次、デジタル値に変換する。
【0025】
電流計測部31cは差動アンプ及びA/D変換器を含む。差動アンプはシャント抵抗Rsの両端電圧を増幅してA/D変換器に出力する。A/D変換器は、差動アンプから入力される電圧をデジタル値に変換する。
【0026】
図2に示した計測部31が、電池モジュールM1-M16ごとに設置される。なお、一つの計測部31で複数(例えば、2個)の電池モジュールの電圧、温度、電流を計測する構成であってもよい。
【0027】
図3は、管理装置30の処理部32及び記憶部33と、診断装置2の構成例を示す図である。診断装置2は、表示部2a、処理部2b、及び操作部2cを備える。処理部2bの機能は、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働、又はハードウェア資源のみにより実現できる。表示部2aは、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等のディスプレイを備え、処理部2bにより生成された画像を表示する。操作部2cは、ボタンやタッチパネル等のユーザインタフェースであり、電源システム10の電池モジュールを交換する作業者の操作を受け付ける。
【0028】
管理装置30の処理部32は、少なくとも一つのCPUで構成される。一つの統合CPUで構成されていてもよいし、一つのメインCPUと複数のサブCPUの組み合わせで構成されていてもよい。複数の電池モジュールM1-M16が複数のグループに分けられている場合、サブCPUはグループごとに設置される。
【0029】
処理部32は、取得部32a、推定部32b、判定部32c、及び通知部32dを含む。取得部32a、推定部32b、判定部32c、及び通知部32dはそれぞれ、ハードウェア資源とソフトウェア資源(例えば、ファームウェア)の協働により実現される。
【0030】
記憶部33は、不揮発メモリ(例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、フラッシュメモリ)により構成される。記憶部33は、SOH保持部33a、SOH-IR(Internal Resistance)特性保持部33b、及びSOC(State Of Charge)-OCV(Open Circuit Voltage)特性保持部33cを含む。
【0031】
SOH保持部33aは、電池システム20を構成する各電池モジュールM1-M16のSOHの値を保持する。SOH-IR特性保持部33bは、セルのSOHと内部抵抗との相関関係を規定したSOH-IR特性をテーブル又は関数で保持する。SOH-IR特性は、温度区分ごとにマップ化されていてもよい。セルの内部抵抗は、SOHが低下するほど増加する関係にあり、温度が上がるほど低下する関係にある。SOC-OCV特性保持部33cは、セルのSOCとOCVとの関係を規定したSOC-OCV特性(SOC-OCVカーブ)をテーブル又は関数で保持する。SOC-OCV特性は、温度区分ごとにマップ化されていてもよい。SOH-IR特性およびSOC-OCV特性は電池メーカにより予め作成され、出荷時に不揮発メモリ内に登録される。
【0032】
処理部32の取得部32aは、複数の計測部31から、各電池モジュールM1-M16の複数のセルE1-Enの電圧、温度、及び電流を取得する。また取得部32aは、診断装置2から入力された値を、車両制御部40を経由して取得する。車両制御部40と管理装置30の処理部32間は、車載ネットワークにより接続される。車載ネットワークとして例えば、CAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)を使用することができる。
【0033】
推定部32bは、各電池モジュールM1-M16の複数のセルE1-Enの電圧、温度、及び電流をもとに、各セルE1-EnのSOC及びSOHを推定する。推定部32bは、OCV法又は電流積算法によりSOCを推定することができる。OCV法では推定部32bは、電圧計測部31aにより計測された各セルE1-EnのOCVと、SOC-OCV特性保持部33cに保持されるSOC-OCV特性をもとに各セルE1-EnのSOCを推定する。電流積算法では推定部32bは、各セルE1-Enの充放電開始時のOCVと、電流計測部31cにより計測される電流の積算値をもとに各セルE1-EnのSOCを推定する。
【0034】
推定部32bは、各セルE1-Enの内部抵抗を測定し、測定した内部抵抗と、SOH-IR特性保持部33bに保持されるSOC-IR特性をもとに各セルE1-EnのSOHを推定することができる。各セルE1-Enの内部抵抗は、各セルE1-Enに所定の電流を所定時間流した際に発生する電圧降下を、当該電流値で割ることにより推定することができる。推定部32bは、各セルE1-Enに所定の電流が流れる前に計測された各セルE1-Enの電圧と、当該電流が流れた状態で計測された各セルE1-Enの電圧と電流をもとに、各セルE1-Enの内部抵抗を測定することができる。
【0035】
また推定部32bは、各セルE1-EnのFCCを推定し、推定したFCCから各セルE1-EnのSOHを推定することもできる(下記(式1)参照)。各セルE1-EnのFCCは、下記(式2)により算出することができる。
SOH=現在のFCC/初期のFCC ・・・(式1)
FCC=Q/ΔSOC ・・・(式2)
【0036】
ΔSOCは、充放電開始前と充放電終了後に計測された2点のOCVにそれぞれ対応する2点のSOCの差である。2点のSOCは、2点のOCVと、SOC-OCVカーブをもとに推定することができる。Qは、2点のOCVを取得した2点の間の期間に計測された電流の積算値(=充放電容量)である。
【0037】
なお、これまで推定部32bがセル単位でSOC及びSOHを推定する例を説明した。この点、SOC-OCV特性保持部33cにモジュール単位のSOC-OCV特性を予め保持し、推定部32bがモジュール単位でSOCを推定してもよい。同様に、SOH-IR特性保持部33bにモジュール単位のSOH-IR特性を予め保持し、推定部32bがモジュール単位でSOHを推定してもよい。また推定部32bは、セル単位で推定した複数のSOCをもとにモジュール単位のSOCを推定してもよいし、セル単位で推定した複数のSOHをもとにモジュール単位のSOHを推定してもよい。
【0038】
推定部32bは、推定した各電池モジュールM1-M16のSOHの値をSOH保持部33aに書き込む。推定部32bは、定期的に全ての電池モジュールM1-M16のSOHを推定する。また推定部32bは、電池システム20を構成する少なくとも一つの電池モジュールが交換された後、交換された電池モジュールのSOH、又は全ての電池モジュールM1-M16のSOHを推定する。
【0039】
電池モジュールの交換を行う作業者は、診断装置2の操作部2cに、交換後の電池モジュールのSOHの値を入力する。入力されたSOHの値は、車両制御部40を経由して管理装置30の処理部32に送信される。
【0040】
判定部32cは、電池モジュールの交換時において、診断装置2から入力される交換後の電池モジュールのSOHの値(入力値)と、推定部32bにより推定された当該交換後の電池モジュールのSOHの値(推定値)を比較する。判定部32cは、入力値と推定値の乖離が所定値(例えば、5%)以内にあるとき、交換された電池モジュールのSOHの値の、診断装置2からの入力値への書き換えを有効とする。判定部32cは、SOH保持部33aの該当する電池モジュールのSOHの値を、診断装置2から入力されたSOHの値に書き換える。
【0041】
判定部32cは、入力値と推定値の乖離が所定値を超えるとき、交換された電池モジュールのSOHの値の、診断装置2からの入力値への書き換えを無効とする。この場合、判定部32cは、SOH保持部33aの該当する電池モジュールのSOHの値を当該入力値に書き換えない。判定部32cは、該当する電池モジュールのSOHの値を、推定部32bにより推定されたSOHの値に書き換えてもよいし、入力値と推定値の乖離が所定値以内に収まる入力値が取得されるまで書き換えを保留してもよい。
【0042】
後者の設定の場合、通知部32dは、交換された電池モジュールのSOHの入力値が誤っていることを示すメッセージと、交換された電池モジュールのSOHの値の再入力を促すメッセージを診断装置2に通知する。診断装置2の処理部2bは、管理装置30の処理部32から当該メッセージを受信すると、当該メッセージを表示部2aに表示させる。なお、診断装置2にスピーカが搭載されている場合、処理部2bは、スピーカから当該メッセージを音声出力させてもよい。
【0043】
また判定部32cは、電池モジュールの少なくとも一つが交換されると、電池システム20を構成する複数の電池モジュールM1-M16ごとに、SOH保持部33aに保持されているSOHの値(保持値)と、推定部32bにより推定されたSOHの値(推定値)をそれぞれ比較する。判定部32cは、保持値と推定値の乖離が所定値(例えば、5%)を超える電池モジュールを、交換が発生した電池モジュールと判定する。
【0044】
通知部32dは、交換が発生したと判定された電池モジュールの識別番号を含む、当該電池モジュールのSOHの値の入力を促すメッセージを診断装置2に通知する。診断装置2の処理部2bは、管理装置30の処理部32から当該メッセージを受信すると、当該メッセージを表示部2aに表示させる。
【0045】
また判定部32cは、電池モジュールの少なくとも一つが交換されると、全ての電池モジュールM1-M16のSOH保持部33aに保持されているSOHの値(保持値)の平均値と、推定部32bにより推定されたSOHの値(推定値)の平均値を比較する。判定部32cは、保持値の平均値が推定値の平均値より大きい場合、電池モジュールの不正な交換がなされたと判定する。なお、保持値と推定値の平均値同士を比較する代わりに、両者の合計値同士を比較してもよい。判定部32cは、電池モジュールの不正な交換がなされたと判定したとき、診断装置2から入力される、交換後の電池モジュールのSOHの値の入力値への書き換えを無効とする。
【0046】
また判定部32cは、電池モジュールの一つが交換されると、推定部32bにより推定された、全ての電池モジュールM1-M16のSOHの平均値と、各電池モジュールM1-M16のSOHの値をそれぞれ比較する。判定部32cは、SOHの平均値からの乖離が最も大きいSOHの値の電池モジュールを、交換された電池モジュールと判定する。
【0047】
通知部32dは、交換が発生したと判定された電池モジュールの識別番号を含む、当該電池モジュールのSOHの値の入力を促すメッセージを診断装置2に通知する。診断装置2の処理部2bは、管理装置30の処理部32から当該メッセージを受信すると、当該メッセージを表示部2aに表示させる。
【0048】
(実施例1)
図4は、実施例1に係る、電池モジュール交換時の管理装置30の処理の流れを示すフローチャートである。作業者による電池モジュールの物理的な交換作業が終了すると(S10のY)、推定部32bは、少なくとも交換された電池モジュールに電流を流して、交換後の電池モジュールの内部抵抗を測定する(S11)。電流は、交換された電池モジュールにだけ流してもよいし、全ての電池モジュールに流してもよいし、交換された電池モジュールを含む一部の電池モジュールに流してもよい。
【0049】
例えば、電動車両1が外部充電器に接続されている状態では、少なくとも交換された電池モジュールに外部充電器から充電電流を流すことができる。電動車両1が外部充電器に接続されていない状態では、交換された電池モジュールから、例えば均等化処理に使用される放電抵抗に放電電流を流すことができる。
【0050】
推定部32bは、SOH-IR特性保持部33bに保持されるSOH-IR特性を参照して、測定した交換後の電池モジュールの内部抵抗から、交換後の電池モジュールのSOHの値を推定する(S12)。取得部32aは、診断装置2から作業者により入力された、交換後の電池モジュールのSOHの値を取得する(S13)。
【0051】
判定部32cは、推定部32bにより推定されたSOHの値と、診断装置2から取得されたSOHの値との乖離が、所定値(例えば、5%)以内であるか否か判定する(S14)。所定値以内の場合(S14のY)、判定部32cは、SOH保持部33aの該当する電池モジュールのSOHの値を、診断装置2から入力された値に更新する(S15)。所定値を超える場合(S14のN)、通知部32dは、交換された電池モジュールのSOHの値の再入力を促すメッセージを診断装置2に通知する(S16)。
【0052】
例えば、推定部32bにより推定されたSOHの値が50%で、診断装置2から取得されたSOHの値が100%の場合、再入力を促すメッセージが通知される。推定部32bにより推定されたSOHの値が95~100%で、診断装置2から取得されたSOHの値が100%の場合、SOH保持部33aの該当する電池モジュールのSOHの値が100%に書き換えられる。
【0053】
(実施例1の変形例)
図5は、実施例1の変形例に係る、電池モジュール交換時の管理装置30の処理の流れを示すフローチャートである。図5に示す実施例1の変形例に係るフローチャートは、図4に示したフローチャートとステップS16の処理のみが異なる。推定部32bにより推定されたSOHの値と、診断装置2から取得されたSOHの値との乖離が、所定値を超える場合(S14のN)、判定部32cは、SOH保持部33aの交換された電池モジュールのSOHの値を、推定部32bにより内部抵抗から推定されたSOHの値に更新する(S16a)。
【0054】
例えば、推定部32bにより推定されたSOHの値が50%で、診断装置2から取得されたSOHの値が100%の場合、SOH保持部33aの該当する電池モジュールのSOHの値が50%に書き換えられる。
【0055】
(実施例2)
図6は、実施例2に係る、電池モジュール交換時の管理装置30の処理の流れを示すフローチャートである。作業者による電池モジュールの物理的な交換作業が終了すると(S20のY)、推定部32bは、全ての電池モジュールに電流を流して、各電池モジュールの内部抵抗を測定する(S21)。推定部32bは、SOH-IR特性保持部33bに保持されるSOH-IR特性を参照して、測定した各電池モジュールの内部抵抗から、各電池モジュールのSOHの値を推定する(S22)。
【0056】
判定部32cは、パラメータiに初期値として1を設定する(S23)。推定部32bは、パラメータiが、電池システム20を構成する電池モジュールの数(図1の例では16)を超えたか否か判定する(S24)。パラメータiが電池モジュールの数を超えない場合(S24のN)、判定部32cは、電池モジュールiの、SOH保持部33aに保持されているSOHの値と、推定部32bにより推定されたSOHの値との乖離が、所定値(例えば、1~5%)以上であるか否か判定する(S25)。
【0057】
電池モジュールiの上記乖離が所定値以上の場合(S25のY)、通知部32dは、電池モジュールiのSOHの値の入力を促すメッセージを診断装置2に通知する(S26)。電池モジュールiの上記乖離が所定値未満の場合(S25のN)、ステップS26の処理をスキップする。判定部32cは、パラメータiをインクリメントする。(S27)。ステップS24に遷移する。パラメータiが電池モジュールの数を超えると(S24のY)、処理を終了する。
【0058】
例えば、電池モジュールiの、SOH保持部33aに保持されているSOHの値が70%で、推定部32bにより推定されたSOHの値も70%の場合、電池モジュールiは交換されていない電池モジュールと判定される。また、電池モジュールiの、SOH保持部33aに保持されているSOHの値が70%で、推定部32bにより推定されたSOHの値が100%の場合、電池モジュールiは交換された電池モジュールと判定される。
【0059】
(実施例3)
図7は、実施例3に係る、電池モジュール交換時の管理装置30の処理の流れを示すフローチャートである。作業者による電池モジュールの物理的な交換作業が終了すると(S30のY)、推定部32bは、全ての電池モジュールに電流を流して、各電池モジュールの内部抵抗を測定する(S31)。推定部32bは、SOH-IR特性保持部33bに保持されるSOH-IR特性を参照して、測定した各電池モジュールの内部抵抗から、各電池モジュールのSOHの値を推定する(S32)。
【0060】
推定部32bは、推定した全ての電池モジュールのSOHの値の平均値を算出する(S33)。判定部32cは、SOH保持部33aに保持される全ての電池モジュールのSOHの値の平均値を算出する(S34)。
【0061】
判定部32cは、SOHの保持値の平均値と、SOHの推定値の平均値を比較する(S35)。SOHの保持値の平均値が、SOHの推定値の平均値より大きい場合(S35のY)、判定部32cは、不正な電池モジュールの交換がなされたと判定し、SOH保持部33aに保持される電池モジュールのSOHの値の診断装置2からの書き換えを禁止する(S36)。SOHの保持値の平均値が、SOHの推定値の平均値以下の場合(S35のN)、判定部32cは、正当な電池モジュールの交換がなされたと判定し、SOH保持部33aに保持される電池モジュールのSOHの値の、診断装置2からの書き換えを許可する(S37)。
【0062】
例えば、SOHの保持値の平均値が58%で、SOHの推定値の平均値が46%の場合、SOHの値の書き換えを禁止する。SOHの保持値の平均値が58%で、SOHの推定値の平均値が66%の場合、SOHの値の書き換えを許可する。
【0063】
(実施例4)
図8は、実施例4に係る、電池モジュール交換時の管理装置30の処理の流れを示すフローチャートである。実施例4では、一つの電池モジュールが交換された場合を前提とする。作業者による電池モジュールの物理的な交換作業が終了すると(S40のY)、推定部32bは、全ての電池モジュールに電流を流して、各電池モジュールの内部抵抗を測定する(S41)。推定部32bは、SOH-IR特性保持部33bに保持されるSOH-IR特性を参照して、測定した各電池モジュールの内部抵抗から、各電池モジュールのSOHの値を推定する(S42)。
【0064】
推定部32bは、推定した全ての電池モジュールのSOHの値の平均値を算出する(S43)。判定部32cは、推定部32bにより推定された、全ての電池モジュールのSOHの値の平均値と、各電池モジュールのSOHの値をそれぞれ比較し、平均値から最も乖離したSOHの値の電池モジュールを特定する(S44)。通知部32dは、特定された電池モジュールのSOHの値の入力を促すメッセージを診断装置2に通知する(S45)。
【0065】
例えば、全て(例えば3つ)の電池モジュールのSOHの値の平均値が76%で、電池モジュール(1)のSOHの値が70%、電池モジュール(2)のSOHの値が60%、電池モジュール(3)のSOHの値が100%の場合、電池モジュール(3)が、交換された電池モジュールと判定され、電池モジュール(3)のSOHの値の入力を促すメッセージが通知される。
【0066】
以上説明したように本実施の形態によれば、電池システムを構成する少なくとも一つの電池モジュールが交換された際の、管理装置30内に保持される各電池モジュールのSOHの値の信頼性を担保することができる。
【0067】
実施例1では、作業者が電池モジュールを交換後、診断装置2から誤ったSOHの値を入力した場合でも、SOH保持部33aに保持される該当する電池モジュールのSOHの値が、誤った値に書き換えられることを防止することができる。
【0068】
また実施例1では、作業者が電池モジュールを交換後、診断装置2から、誤って異なる対象の電池モジュールのSOHの値を書き換えようとした場合でも、SOH保持部33aに保持される異なる電池モジュールのSOHの値が書き換えられることを防止することができる。特に、複数の電池モジュールを新品に交換する場合や、複数の電池モジュールの配置を入れ替える場合、作業者が、誤って異なる対象の電池モジュールのSOHの値を書き換えようとしてしまうことがある。
【0069】
SOC-OCVカーブがSOHの値に応じて更新される電源システム10の場合、SOHの値が誤っていると正しいSOCが算出されなくなる。例えば、SOCが実際の値より低く算出されると、電動車両1が実際には走行可能な状態であっても、電圧不足と判断され、電動車両1が走行停止に陥る可能性がある。これに対して実施例1によれば、電池モジュールの実際のSOHの値と、SOH保持部33aに保持される電池モジュールのSOHの値が大きく乖離することを防止することができる。
【0070】
実施例2、4では、作業者が電池モジュールを交換後、診断装置2から、交換した電池モジュールのSOHの値を入力し忘れることを防止することができる。電池モジュールを新品に交換しても、SOHの値を更新していない場合、管理上、航続可能距離が交換前と変わらないことになる。管理装置30に、SOHの値を自動学習する機能が搭載されている場合でも、数十トリップの走行を経ないと、SOH保持部33aに保持されるSOHの値が、実際の値に収束しない。その間は、航続可能距離が過小評価の状態が継続する。
【0071】
実施例3では、作業者により不正に容量が少ない電池モジュールに交換された場合において、SOHの値が不正に書き換えられることを防止することができる。SOHの値が不正に書き換えられると、運転者は、インストルメントパネルに表示される電池システムの寿命から、不正に容量が少ない電池モジュールに交換されたことを認識することができない。実施例3では、不正に容量が少ない電池モジュールに交換された場合、インストルメントパネルに表示される電池システムの寿命が延びないため、運転者は、電池モジュールの交換が正常に完了していないことを認識することができる。
【0072】
以上、本開示を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0073】
図4図8に示した実施例1-4では、推定部32bが電池モジュールの内部抵抗を測定して電池モジュールのSOHを推定する例を説明した。この点、推定部32bは、電池モジュールのFCCを推定して電池モジュールのSOHを推定してもよい。その場合、電池モジュールにSOC数%分の充電を行い、その間のSOCの上昇率と充電積算量をもとにFCCを推定する。また、電池モジュールからSOC数%分の放電を行い、その間のSOCの低下率と放電積算量をもとにFCCを推定する。
【0074】
また、SOH保持部33aに、電池システム20を構成する各電池モジュールM1-M16のSOHの値に加えて、各電池モジュールM1-M16の内部抵抗の値が保持されてもよい。その場合、下記の置き換えが可能である。
【0075】
実施例2では、判定部32cは、電池モジュールiの、SOH保持部33aに保持されているSOHの値と、推定部32bにより推定されたSOHの値を比較した。この点、判定部32cは、電池モジュールiの、SOH保持部33aに保持されている内部抵抗の値と、推定部32bにより推定された内部抵抗の値を比較してもよい。実施例3では、判定部32cは、SOH保持部33aに保持される全ての電池モジュールのSOHの値の平均値と、推定部32bにより推定された全ての電池モジュールのSOHの値の平均値を比較した。この点、判定部32cは、SOH保持部33aに保持される全ての電池モジュールの内部抵抗の値の平均値と、推定部32bにより推定された全ての電池モジュールの内部抵抗の値の平均値を比較してもよい。実施例4では、判定部32cは、推定部32bにより推定された、全ての電池モジュールのSOHの値の平均値と、各電池モジュールのSOHの値をそれぞれ比較した。この点、判定部32cは、推定部32bにより推定された、全ての電池モジュールの内部抵抗の値の平均値と、各電池モジュールの内部抵抗の値をそれぞれ比較してもよい。
【0076】
また実施例4では、判定部32cは、推定部32bにより推定された、全ての電池モジュールのSOHの値の平均値と、各電池モジュールのSOHの値をそれぞれ比較し、平均値から最も乖離したSOHの値の電池モジュールを、交換された電池モジュールとして特定した。この点、判定部32cは、電圧計測部31aにより計測された、全ての電池モジュールの電圧値の平均値と、各電池モジュールの電圧値をそれぞれ比較し、平均値から最も乖離した電圧値の電池モジュールを、交換された電池モジュールとして特定してもよい。
【0077】
また、電池システム20を構成する各電池モジュールM1-M16に識別タグを貼り付けておいてもよい。識別タグとして、バーコード、QRコード(登録商標)、RFID(Radio Frequency IDentification)等を使用することができる。記憶部33には、各電池モジュールM1-M16の接続位置と、タグ情報が紐付けられたテーブルが保持される。電池モジュールの交換を行う作業者は、診断装置2と連携する専用のタグリーダ又はスマートフォンを使用して、交換前の電池モジュールの識別タグを読み取る。診断装置2は、読み取られたタグ情報を管理装置30の処理部32に通知する。処理部32は、診断装置2から受領したタグ情報をもとに上記テーブルを参照し、タグ情報に対応する電池モジュールを、交換される電池モジュールとして特定することができる。
【0078】
また、電池モジュールの交換後、全ての電池モジュールM1-M16を放電させ、所定の電圧値まで電圧が降下する時間をもとに電池モジュールの交換を検知することもできる。例えば、一つの電池モジュールが交換された場合、判定部32cは、所定の電圧値まで電圧が降下する時間が最も長くかかった電池モジュールを、交換された電池モジュールとして特定する。
【0079】
実施例2、4では、判定部32cにより交換された電池モジュールが特定された後、通知部32dが、特定された電池モジュールのSOHの値の入力を促すメッセージを診断装置2に通知した。その際、判定部32cは、特定した電池モジュールの管理情報にエラーフラグを立て、当該電池モジュールのSOHの値が書き換えられるまで、電動車両1を走行不可状態に制御してもよい。
【0080】
また、判定部32cにより交換された電池モジュールが特定された後、通知部32dは、電動車両1のテスト走行を促すメッセージを診断装置2に通知してもよい。作業者がテスト走行することにより、管理装置30が、交換された電池モジュールのSOHの値を自動学習することができる。また、判定部32cにより交換された電池モジュールが特定された後、通知部32dは、完全充放電の実施を促すメッセージを診断装置2に通知してもよい。これにより、交換後の電池モジュールのFCCの値を求めることができ、FCCからSOHの値を推定することができる。
【0081】
また、インストルメントパネルに交換検知ランプを設置し、判定部32cは、電池モジュールの交換を検知した際、当該交換検知ランプを点灯させてもよい。これにより、運転者に、電池モジュールの交換があったことを認識させることができる。
【0082】
上述の実施の形態では、診断装置2と管理装置30が車両制御部40を介して接続される例を説明した。この点、診断装置2がPC、タブレット、スマートフォン等の汎用の情報端末装置の場合、診断装置2と管理装置30が無線通信で直接接続されてもよい。無線通信としてBluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、赤外線通信などを使用することができる。
【0083】
上述の実施の形態では、リチウムイオン電池セル、ニッケル水素電池セル、鉛電池セル等を含む電池モジュールを含む電池システム20を使用する例を説明した。この点、電気二重層キャパシタセル、リチウムイオンキャパシタセル等を含むキャパシタモジュールを含むキャパシタシステムを使用してもよい。本明細書では、電池システムとキャパシタシステムを総称して蓄電システムと呼ぶ。
【0084】
なお、実施の形態は、以下の項目によって特定されてもよい。
【0085】
[項目1]
複数の蓄電モジュール(M1-M16)を含む蓄電システム(20)を管理する管理装置(30)であって、
前記複数の蓄電モジュール(M1-M16)の少なくとも一つの交換時に、作業者の端末装置(2)から入力される、交換後の蓄電モジュールのSOH(State Of Health)の入力値を取得する取得部(32a)と、
前記交換後の蓄電モジュールに電流を流し、電流を流した状態で計測した電圧値と電流値をもとに、前記交換後の蓄電モジュールのSOHを推定する推定部(32b)と、
前記交換後の蓄電モジュールのSOHの入力値と推定値を比較し、両者の乖離が所定値以内にあるとき前記入力値を有効とし、両者の乖離が前記所定値を超えるとき前記入力値を無効とする判定部(32c)と、
を備えることを特徴とする管理装置(30)。
これによれば、端末装置(2)から入力されたSOHの値の確からしさを確認することができ、誤ったSOHの値に書き換えられることを防止することができる。
[項目2]
前記判定部(32c)は、両者の乖離が前記所定値を超えるとき、前記交換後の蓄電モジュールのSOHの更新値として前記推定値を使用することを特徴とする項目1に記載の管理装置(30)。
これによれば、交換後の蓄電モジュールのSOHの値が、誤った値に書き換えられることを防止することができる。
[項目3]
複数の蓄電モジュール(M1-M16)を含む蓄電システム(20)を管理する管理装置(30)であって、
前記複数の蓄電モジュール(M1-M16)のそれぞれのSOH(State Of Health)及び内部抵抗の少なくとも一方の値を保持する保持部(33a)と、
前記複数の蓄電モジュール(M1-M16)の少なくとも一つが交換されると、前記複数の蓄電モジュール(M1-M16)に電流を流し、電流を流した状態で計測した電圧値と電流値をもとに、前記複数の蓄電モジュール(M1-M16)のそれぞれのSOHまたは内部抵抗を推定する推定部(32b)と、
前記複数の蓄電モジュール(M1-M16)ごとに、前記保持部(33a)に保持されているSOHまたは内部抵抗の値と、推定されたSOHまたは内部抵抗の値を比較し、両者の乖離が所定値を超える蓄電モジュールを、交換された蓄電モジュールと判定する判定部(32c)と、
を備えることを特徴とする管理装置(30)。
これによれば、交換された蓄電モジュールを的確に特定することができる。
[項目4]
複数の蓄電モジュール(M1-M16)を含む蓄電システム(20)を管理する管理装置(30)であって、
前記複数の蓄電モジュール(M1-M16)のそれぞれのSOH(State Of Health)及び内部抵抗の少なくとも一方の値を保持する保持部(33a)と、
前記複数の蓄電モジュール(M1-M16)の一つが交換されると、前記複数の蓄電モジュール(M1-M16)に電流を流し、電流を流した状態で計測した電圧値と電流値をもとに、前記複数の蓄電モジュール(M1-M16)のそれぞれのSOHまたは内部抵抗を推定する推定部(32b)と、
推定された前記複数の蓄電モジュール(M1-M16)のSOHまたは内部抵抗の平均値と、推定された前記複数の蓄電モジュール(M1-M16)のそれぞれのSOHまたは内部抵抗の値を比較し、前記平均値からの乖離が最も大きい蓄電モジュールを、交換された蓄電モジュールと判定する判定部(32c)と、
を備えることを特徴とする管理装置(30)。
これによれば、交換された蓄電モジュールを的確に特定することができる。
[項目5]
前記判定部(32c)により判定された前記交換された蓄電モジュールのSOHの入力を促すメッセージを、作業者の端末装置(2)に通知する通知部(32d)と、
前記端末装置(2)から入力される、交換後の蓄電モジュールのSOHの入力値を取得する取得部(32a)と、
をさらに備えることを特徴とする項目3または4に記載の管理装置(30)。
これによれば、交換された蓄電モジュールのSOHの値の入力を作業者に促すことができ、作業者の入力忘れを防止することができる。
[項目6]
複数の蓄電モジュール(M1-M16)を含む蓄電システム(20)を管理する管理装置(30)であって、
前記複数の蓄電モジュール(M1-M16)のそれぞれのSOH(State Of Health)及び内部抵抗の少なくとも一方の値を保持する保持部(33a)と、
前記複数の蓄電モジュール(M1-M16)の少なくとも一つが交換されると、前記複数の蓄電モジュール(M1-M16)に電流を流し、電流を流した状態で計測した電圧値と電流値をもとに、前記複数の蓄電モジュール(M1-M16)のそれぞれのSOHまたは内部抵抗を推定する推定部(32b)と、
前記保持部(33a)に保持されている前記複数の蓄電モジュール(M1-M16)のSOHの値の合計もしくは平均が、推定された前記複数の蓄電モジュール(M1-M16)のSOHの値の合計もしくは平均より高い場合、または前記保持部(33a)に保持されている前記複数の蓄電モジュール(M1-M16)の内部抵抗の値の合計もしくは平均が、推定された前記複数の蓄電モジュール(M1-M16)の内部抵抗の値の合計もしくは平均より低い場合、蓄電モジュールの不正な交換がなされたと判定する判定部(32c)と、
を備えることを特徴とする管理装置(30)。
これによれば、不正な蓄電モジュールの交換を検知することができる。
[項目7]
作業者の端末装置(2)から入力される、交換後の蓄電モジュールのSOHの入力値を取得する取得部(32a)をさらに備え、
前記判定部(32c)は、蓄電モジュールの不正な交換がなされたと判定したとき、前記入力値を無効とすることを特徴とする項目6に記載の管理装置(30)。
これによれば、不正に容量が少ない蓄電モジュールに交換された場合において、SOHの値が不正に書き換えられることを防止することができる。
[項目8]
複数の蓄電モジュール(M1-M16)と、
項目1から7のいずれか1項に記載の管理装置(30)と、
を備えることを特徴とする電源システム(10)。
これによれば、項目1から7のいずれか1項に記載の管理装置(30)の効果を享受することができる電源システム(10)を構築することができる。
【符号の説明】
【0086】
1 電動車両、 2 診断装置、 2a 表示部、 2b 処理部、 2c 操作部、 10 電源システム、 20 電池システム、 M1-M16 電池モジュール、 30 管理装置、 40 車両制御部、 50 インバータ、 60 モータ、 RY1 リレー、 20 電池システム、 E1-En セル、 30 管理装置、 31 計測部、 31a 電圧計測部、 31b 温度計測部、 31c 電流計測部、 32 処理部、 32a 取得部、 32b 推定部、 32c 判定部、 32d 通知部、 33 記憶部、 33a SOH保持部、 33b SOH-IR特性保持部、 33c SOC-OCV特性保持部、 T1,T2 温度センサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8