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特許7498014吸収性物品用表面シート及びこれを備える吸収性物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】吸収性物品用表面シート及びこれを備える吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/511 20060101AFI20240604BHJP
【FI】
A61F13/511 400
A61F13/511 100
A61F13/511 300
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020067407
(22)【出願日】2020-04-03
(65)【公開番号】P2021159671
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 華
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-324038(JP,A)
【文献】特開2015-110846(JP,A)
【文献】特開2017-38838(JP,A)
【文献】特開2005-145020(JP,A)
【文献】国際公開第2020/036143(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コットンと、コットン以外の第2の繊維とを含み、第1面と、第1面の反対側に位置する第2面とを有する吸収性物品用表面シートであって、
第2の繊維として熱可塑性繊維を含み、
エンボス部が形成されており、それによって該エンボス部からなる複数の凹部と、該凹部の間に形成された凸部とを有する凹凸形状が第1面側に形成されており、
前記吸収性物品用表面シートを厚み方向に仮想的に三分割したときに、
第1面側に位置する部位における全繊維の質量に対する前記コットンの質量割合が90質量%以上100質量%以下であり、且つ、第1面側に位置する部位における全繊維の質量に対する前記熱可塑性繊維の質量割合が0質量%以上10質量%以下であり、
第2面側に位置する部位における全繊維の質量に対する前記コットンの質量割合が50質量%未満であり、且つ、第2面側に位置する部位における全繊維の質量に対する前記熱可塑性繊維の質量割合が50質量%以上であり、
第1面を含み、前記コットンを含む第1繊維群と、
第2面を含み、前記熱可塑性繊維を含む第2繊維群とを有し、
前記凸部において第1繊維群と第2繊維群とが離間しており、それによって該第1繊維群の第2面側と該第2繊維群の第1面側とで画成された空間を有する中空の構造が形成されており、
第1面が着用者の肌と当接する面である肌当接面側に配されるように使用される、吸収性物品用表面シート。
【請求項2】
前記エンボス部はシート面方向に散点状に形成されている、請求項に記載の吸収性物品用表面シート。
【請求項3】
前記エンボス部が形成されていない部位において、第1繊維群を構成する繊維の存在密度が、第2繊維群を構成する繊維の存在密度よりも高い、請求項又はに記載の吸収性物品用表面シート。
【請求項4】
請求項1~のいずれか一項に記載の吸収性物品用表面シートを備え、
前記吸収性物品用表面シートは、その第1面側が着用者の身体に対向するように配されている、吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品用表面シート及びこれを備える吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキン、失禁パット、パンティライナー等の、身体から排出される液の吸収に用いられる吸収性物品は、その肌対向面を構成する表面シートとして、不織布等の液透過性のシートが一般的に用いられる。
【0003】
特許文献1には、表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在された吸収性物品が開示されている。この吸収性物品に用いられる表面シートは、コットンの柔らかい肌触り感を低下させずに、表面シートに吸収された体液が非肌側に移行できるようにすることを目的として、肌側に配設されたセルロース系繊維からなる非熱融着層と、非肌側に配設された熱融着性繊維からなる熱融着層とを含み、表面シートの非肌側に、熱融着性繊維からなるセカンドシートが配設され、セカンドシートの非肌側面に、セカンドシート及び表面シートを一体的に肌側に向けて窪ませた多数の圧搾部が形成されていることが同文献に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-162218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の吸収性物品に配される表面シートは、親水性繊維と合成繊維とを含むシートとして構成され得るところ、このようなシートは、親水性繊維に起因するシート表面での排泄液の液残りが生じたり、合成繊維に起因するシート表面での液流れが生じたりし得る可能性があった。このような点を両立して低減することに関して、改善の余地があった。
【0006】
したがって、本発明の課題は、シートの液残りの低減と、シート表面の液流れの低減とを両立した吸収性物品用表面シート及びこれを備える吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、コットンと、コットン以外の第2の繊維とを含み、第1面と、第1面の反対側に位置する第2面とを有する吸収性物品用表面シートであって、
前記表面シートを厚み方向に仮想的に三分割したときに、第2面側に位置する部位における全繊維の質量に対する前記コットンの質量割合が50質量%未満である、吸収性物品用表面シートを提供するものである。
【0008】
また本発明は、前記吸収性物品用表面シートを備え、前記表面シートは、その第1面側が着用者の身体に対向するように配されている、吸収性物品を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シートの液残りの低減と、シート表面の液流れの低減とを両立した吸収性物品用表面シート及びこれを備える吸収性物品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の吸収性物品用表面シートの一実施形態を模式的に示す断面図である。
図2図2(a)及び(b)は、本発明の吸収性物品用表面シートの別の実施形態を模式的に示す断面図である。
図3図3(a)及び(b)は、本発明の吸収性物品用表面シートのエンボス部の形成状態を模式的に示す斜視図である。
図4図4は、本発明の吸収性物品用表面シートを製造するための製造装置の一実施形態を模式的に示す側面図である。
図5図5は、本発明の吸収性物品用表面シートを製造するための製造装置の別の実施形態を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1に示す吸収性物品用表面シート1(以下、単に「表面シート1」ともいう。)は、第1面Fと、第1面Fの反対側に位置する第2面Rとを有する液透過性のシートである。
【0012】
表面シート1は、その構成繊維としてコットン1aと、コットン以外の第2の繊維2(以下、これを単に「第2の繊維2」ともいう。)を含み、各構成繊維が交絡して形成されている。典型的には、本発明の表面シート1は、スパンレース不織布である。
【0013】
図1に示す表面シート1は、1つの繊維群G1を有しており、繊維群G1における一方の面が第1面Fを形成し、繊維群G1における第1面Fの反対側に位置する面が第2面Rを形成している。同図に示す表面シート1は、繊維群G1として、第1面Fを含んで構成され、構成繊維としてコットン1aを含む第1繊維層11と、第2面Rを含んで構成され、構成繊維として第2の繊維2を含む第2繊維層12とを有する。つまり、同図に示す表面シート1は、第1繊維層11と第2繊維層12とが隣接して配されて二層構造となった繊維群G1を有するシートであり、各繊維層11,12の境界面は不明瞭である。
【0014】
なお、図1に示すコットン1aの繊維及び第2の繊維2は、その繊維径が異なるように図示されているが、繊維及びその配置に関する説明の便宜上そのように示しただけであり、両繊維の繊維径は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0015】
表面シート1は、尿や経血等の体液を吸収する吸収性物品の構成部材として好適に用いられる。表面シート1が吸収性物品に組み込まれる場合、第1面Fが着用者の肌と当接する面である肌当接面側に配され、第2面Rが肌当接面とは反対側の面である非肌当接面側に配される。典型的には、第1面Fは、表面シート1と排泄された液とが最初に接触する面である受液面として用いられ、第2面Rは、液保持性の吸収体と当接して配される。
【0016】
第2の繊維2としては、例えば、天然繊維、再生繊維及び合成繊維等が挙げられる。天然繊維としては、例えば、パルプ等のコットン繊維以外のセルロース繊維等が挙げられる。再生繊維としては、レーヨンやアセテート繊維等が挙げられる。合成繊維としては、例えば、熱可塑性樹脂を含む熱可塑性繊維が挙げられ、熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニルやポリスチレン等のビニル系樹脂、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂、ポリパーフルオロエチレン等のフッ素樹脂などが挙げられる。これらの繊維は一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。これらの繊維のうち、第2の繊維2として熱可塑性繊維を用いることが更に好ましい。
【0017】
熱可塑性繊維を用いる場合、該繊維は熱収縮性を有していてもよく、熱収縮性を有していなくてもよい。熱収縮性を有する熱可塑性繊維(以下、これを熱収縮性繊維ともいう。)の例としては、例えば潜在捲縮性繊維が挙げられる。潜在捲縮性繊維は、加熱される前においては、従来の不織布用の繊維と同様に取り扱うことができ、且つ所定温度で加熱することによって螺旋状の捲縮が発現して収縮する性質を有する繊維である。潜在捲縮性繊維は、例えば、収縮率の異なる2種類の熱可塑性樹脂を成分とする偏心芯鞘型又はサイド・バイ・サイド型の複合繊維からなる。その例としては、特開平9-296325号公報や特開平2-191720号公報に記載のものが挙げられる。
【0018】
表面シート1は、第1面Fと平行な仮想面を考えたときに、その仮想面において、コットン1aの占める質量割合が、第1面Fから厚さ方向Zに沿ってみたときに、第1面Fから第2面Rに向かって、連続的に、階段状に、又はその組み合わせで減少していることが好ましい。つまり、コットン1aが存在する領域と、第2の繊維2を含む領域との境界が明瞭となっていてもよく、不明瞭となっていてもよい。
【0019】
詳細には、表面シート1を厚み方向Zに仮想的に三分割する仮想分割面L1,L2を考え、第1面Fを含む第1部位10A、第2面Rを含む第2部位10B、及び各仮想分割面L1,L2に挟まれた領域である中央部位10Cを考える(図1参照)。このとき、第2部位10Bにおける全繊維の質量Wtbに対するコットン1aの質量Wbの割合B1が、好ましくは50質量%未満となっている。このような構成となっていることによって、コットンが有する風合いに起因するシートの肌触りや柔軟性を維持しながら、シートの液残りと、シート表面における意図しない液流れが低減される。仮想分割面L1,L2は、例えば繊維の種類によって色が変わる繊維識別用試薬(一般財団法人ボーケン品質評価機構製、BOKENSTAIN II)を用いて表面シート1を染色し、目視にて、染色された繊維の色から厚み方向Zで繊維の構成比が異なる面を判断し、規定することができる。繊維の構成比が異なる面が2か所存在すると判定された場合には、当該面をそれぞれ仮想分割面L1,L2とする。繊維の構成比が異なる面が1か所又は3か所以上存在すると判定された場合には、当該面は、シートを厚み方向に三等分した面をそれぞれ仮想分割面L1,L2とする。
【0020】
表面シート1を構成するコットン1aの質量及びその割合は、以下の方法で測定することができる。まず、測定対象の表面シート1を厚み方向に三分割して第2部位10Bに相当するサンプルを得る。このサンプルをアスコルビン酸1000ppm/リボフラビン10ppm水溶液に浸漬した後、日光に暴露し、繊維成分のみを抽出する。これらの繊維成分の質量を測定し、第2部位10Bにおける全繊維の質量Wtbとする。次いで、第2部位10Bを構成する繊維を繊維識別用試薬(一般財団法人ボーケン品質評価機構製、BOKENSTAIN II)にて染色し、灰色がかった青緑色に変色した繊維のみをそれぞれ取り出す。変色した繊維を一本ごとに分離して乾燥させて、変色した繊維の総質量を測定し、これを第2部位10Bでのコットン1aの質量Wbとする。第2部位10Bにおける全繊維の質量Wtbに対するコットン1aの質量Wbの百分率を求め、第2部位10Bにおける質量割合B1を算出する。第2部位10Bでの第2の繊維2の質量は、第2部位10Bにおける全繊維の質量Wtbからコットン1aの質量Wbを差し引くことによって求める。
【0021】
表面シート1の第2部位10Bにおける全繊維の質量に対するコットン1aの質量割合B1は、好ましくは50質量%未満、更に好ましくは30質量%以下であり、好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上である。このような質量割合となっていることによって、シートの液残りと、シート表面の意図しない液の流れとを両立して更に低減することができる。
【0022】
表面シート1の第2部位10Bにおける全繊維の質量に対する第2の繊維2の質量割合B2は、好ましくは50質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。このような質量割合となっていることによって、シートの液残りと、シート表面の意図しない液の流れとを両立して更に低減することができる。特にこの効果は、第2の繊維2として熱可塑性繊維を用いた場合に、より顕著に奏される。
【0023】
上述の構成を有する表面シート1は、コットンを含むので、コットン繊維が有する柔軟性や、着用者がコットンに対して想起する「やさしさ」や「安心感」等の良いイメージを、表面シート1を備える吸収性物品の着用者に与えやすくすることができる。これに加えて、コットン以外の第2の繊維を含むとともに、第2部位10Bに存在するコットンの質量割合が所定の値未満となるように構成されているので、シート1内の液残りが低減されるとともに、シート表面の液流れが低減されたものとなる。その結果、表面シート1を吸収性物品に組み込んだときに、その吸収性物品の肌触りや使用感が向上する。特に、第2の繊維2として熱可塑性繊維を用い、第2部位10Bに存在する熱可塑性繊維の質量割合を所定の値以上とした好適な態様によれば、シート1内の液残り及びシート表面の液流れが更に低減され、使用感が更に向上したものとなる。
【0024】
表面シート1における第1部位10Aに着目すると、第1部位10Aにおける全繊維の質量に対するコットン1aの質量割合A1は、好ましくは50質量%以上、更に好ましくは80質量%以上であり、特に好ましくは90質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。
また、第1部位10Aにおける全繊維の質量に対する第2の繊維2の質量割合A2は、好ましくは50質量%以下、更に好ましくは30質量%以下であり、特に好ましくは10質量%以下であり、好ましくは0質量%以上である。
質量割合A1及びA2が上述した質量割合となっていることによって、着用者がコットンに対して想起する「やさしさ」や「安心感」等の良いイメージを、表面シート1を備える吸収性物品の着用者により与えやすくすることができるとともに、コットン1aが有する高い吸水性を発現することができる。
【0025】
中央部位10Cにおいては、中央部位10Cにおける全繊維の質量Wtcに対するコットン1aの質量割合C1は、好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。このような質量割合となっていることによって、表面シート1における第1面Fを受液面としたときに、液を第2面R側へ素早く移行することができるため、シート内の液残り及びシート表面の液流れを更に低減することができる。
【0026】
また、中央部位10Cにおける全繊維の質量Wtcに対する第2の繊維2の質量割合C2は、好ましくは30質量%以上、更に好ましくは60質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。このような質量割合となっていることによって、シート内の液残り及びシート表面の液流れを更に低減することができる。
【0027】
表面シート1の第1部位10A及び中央部位10Cにおける各構成繊維の質量及びその割合は、上述の方法と同様にして、測定対象の表面シート1を厚み方向に三分割して第1部位10A及び中央部位10Cに相当するサンプルを得る。その後、第1部位10Aにおける全繊維の質量Wta、及び中央部位10Cにおける全繊維の質量Wtc、第1部位10Aでのコットン1aの質量Wa、第1部位10Aにおける質量割合A1、第1部位10Aにおける第2の繊維2の質量割合A2、中央部位10Cでのコットン1aの質量Wc、中央部位10Cにおけるコットン1aの質量割合C1、及び中央部位10Cにおける全繊維の質量Wtcに対する第2の繊維2の質量割合C2をそれぞれ測定及び算出する。
【0028】
シートの液残りの低減と、シート表面での液流れの低減と高いレベルで両立する観点から、表面シート1は、コットン1aを含む繊維群G1(以下、これを第1繊維群G1ともいう)と、第1繊維群G1とは別に、第2の繊維2として熱可塑性繊維を含む第2繊維群G2とを有するとともに、表面シート1にエンボス部15が形成されていることが好ましい。エンボス部15は、その構成繊維の一部又は全部が融着しているか、又は融着せずに圧密化された部位である。このようなエンボス部15が形成されていることによって、エンボス部15が吸収起点となって、表面シート1内に液を引き込みやすく、シート表面での液流れを一層低減することができる。
【0029】
図2(a)及び(b)に示す実施形態の表面シート1は、第1繊維群G1と第2繊維群G2とが隣接して配されているシートであり、第1繊維群G1の外面が第1面Fを構成し、第2繊維群G2の外面が第2面Fを構成している。つまり、第1繊維群G1が第1面Fを含んで構成され、第2繊維群G2が第2面Rを含んで構成されている。表面シート1には、複数のエンボス部15が設けられている。
エンボス部15が形成されていない領域において、第1繊維群G1と第2繊維群G2との境界面は明瞭であってもよく、不明瞭であってもよい。また、エンボス部15が形成されていない領域において、第1繊維群G1と第2繊維群G2とは、剥離不能に構成されていてもよく、剥離可能に構成されていてもよい。
【0030】
本発明の効果が奏される限りにおいて、第1繊維群G1は、単一の繊維層から形成されていてもよく、あるいは上述のように、例えば第1繊維層11と第2繊維層12とを含む多層の繊維層から形成されていてもよい。第1繊維群G1が単一の繊維層から形成されている場合、コットン1aのみから構成されていてもよく、コットン1aに加えて、コットン以外の他の繊維を含んで構成されていてもよい。第1繊維群G1が多層の繊維層から形成される場合、各繊維層の境界面はそれぞれ独立して、明瞭であってもよく、不明瞭であってもよい。また、各繊維層は、それぞれ独立して、剥離不能又は剥離可能に構成されていてもよい。
【0031】
また、本発明の効果が奏される限りにおいて、第2繊維群G2は、単一の繊維層から形成されていてもよく、あるいは多層の繊維層から形成されていてもよい。第2繊維群G2が単一の繊維層から形成されている場合、第2の繊維2としての熱可塑性繊維のみから構成されていてもよく、熱可塑性繊維に加えて、熱可塑性繊維以外の他の繊維を含んで構成されていてもよい。第2繊維群G2が多層の繊維層から形成される場合、各繊維層の境界面は明瞭であってもよく、不明瞭であってもよい。また、各繊維層は、それぞれ独立して、剥離不能又は剥離可能に構成されていてもよい。
【0032】
表面シート1にエンボス部15が形成されている場合、図2(a)及び(b)に示すように、表面シート1は、少なくとも第1面F側が凹凸形状に形成されていることが好ましい。これによって、シートの表面積を増大させることができ、これによって、シート表面での液流れをより一層低減することができる。
【0033】
表面シート1は、図2(a)及び(b)に示すように、エンボス部15が形成されている部位に凹部17が複数形成され、また凹部17どうしの間に凸部18が形成されていることが好ましい。また、凹部17及び凸部18の形成によって、第1面Fは凹凸形状となっていることも好ましい。つまり、本実施形態における凹部17はエンボス部15が形成されている部位であり、凸部18はエンボス部15が形成されていない部位であることが好ましい。凸部18における各繊維群G1,G2の境界面は、好ましくは明瞭となっている。エンボス部15は、各繊維群G1,G2の境界面が存在しないか、又は境界面が不明瞭となっている。
【0034】
同様に、第2面Rは、第1面Fにおける凹部17及び凸部18の位置と一致するように、それぞれ凹部17及び凸部18が複数形成された凹凸形状となっている。凹部17は、シート厚みが最も小さい部位となっている。これに代えて、第2面Fは平坦であってもよい。
【0035】
凸部18は、図2(a)に示すように、第1繊維群G1と第2繊維群G2とが接触するように構成された中実の構造となっていてもよく、図2(b)に示すように、第1繊維群G1と第2繊維群G2とが離間し、第1繊維群G1の下面と第2繊維群G2の上面とで画成された空間Sを有する中空の構造となっていてもよい。
【0036】
また図2に示すように、エンボス部が形成されていない部位、すなわち凸部18において、第1繊維群G1を構成する繊維の存在密度が、第2繊維群G2を構成する繊維の存在密度よりも高くなっていることが好ましい。このような構成となっていることによって、第1面Fを受液面として用いたときに、第1繊維群G1から吸収された液を、繊維の存在密度が低い第2繊維群G2側に移行させやすくして、シート面方向に液が拡散することを抑制することができ、その結果、シート内の液残りを一層低減することができる。
【0037】
エンボス部が形成されていない部位における各繊維群G1,G2の繊維の存在密度は、以下の方法で算出することができる。詳細には、まず、上述の方法と同様に繊維の染色を行った後、乾燥した表面シート1を対象として、エンボス部が形成されていない部位である凸部18の最頂部(すなわち表面シート1の厚みが最も大きい部位)を通過するように厚み方向Zに沿って表面シート1を無荷重状態で切断し、表面シート1の断面を得る。次いで、表面シート1に49Paの荷重を付与した状態で、マイクロスコープ(株式会社キーエンス製、VHX-1000)を用いて、該断面の拡大写真を得る。この拡大写真には、既知の寸法の物体を同時に写しこむ。次に、前記断面の拡大写真にスケールを合わせ、前記断面における第1繊維群G1の厚みT1及び第2繊維群G2の厚みT2をそれぞれ測定する。各繊維群G1,G2の厚みは、染色された繊維の色から厚み方向Zで繊維の構成比が異なる領域を目視にて判定して、当該領域の境目を各繊維群G1,G2の境界とし、当該境界を基準として測定する。
以上の操作を、同一シートにおける異なる3つの凸部18を対象として行い、3回の測定における第1繊維群G1の厚みの算術平均値A(mm)と、3回の測定における第2繊維群G2の厚みの算術平均値B(mm)とをそれぞれ算出する。測定環境は、温度20±2℃、相対湿度65±5%とする。
これとは別に、エンボス部が形成されていない部位である凸部18を含む領域を無荷重状態で切断し、当該領域の質量(g)と、無荷重状態における平面積(cm)とをそれぞれ測定及び算出し、坪量(g/cm)を算出する。そして、算出された坪量(g/cm)を上述の算術平均値Aで除することによって、第1繊維群G1の繊維の存在密度D1(g/cm)を算出する。同様に、算出された坪量(g/cm)を算術平均値Bで除することによって、第2繊維群G2の繊維の存在密度D2(g/cm)を算出する。
【0038】
上述の方法で測定される第1繊維群G1の厚みT1は、好ましくは0.2mm以上、更に好ましくは0.3mm以上であり、好ましくは1mm以下、更に好ましくは0.7mm以下である。
上述の方法で測定される第2繊維群G2の厚みT2は、好ましくは0.5mm以上、更に好ましくは0.7mm以上であり、好ましくは2.2mm以下、更に好ましくは2mm以下である。
【0039】
上述の方法で算出される第1繊維群G1の繊維の存在密度D1は、好ましくは0.03g/cm以上、更に好ましくは0.05g/cm以上であり、好ましくは0.5g/cm以下、更に好ましくは0.2g/cm以下である。
また同条件における第2繊維群G2の繊維の存在密度D2は、好ましくは0.01g/cm以上、更に好ましくは0.02g/cm以上であり、好ましくは0.1g/cm以下、更に好ましくは0.06g/cm以下である。
また同条件における第2繊維群G2の繊維の存在密度D2に対する第1繊維群G1の繊維の存在密度D1の比(D1/D2)は、好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.8以上であり、好ましくは50以下、更に好ましくは10以下である。
【0040】
表面シート1に形成されているエンボス部15の態様は、表面シート1を平面視したときに、例えば、図3(a)に示すように、X方向に対して互いに逆向きに傾斜した連続直線によって構成されていてもよい。
【0041】
図3(a)に示すエンボス部15の形成態様では、表面シート1を平面視したときに、連続直線で形成されている第1エンボス部線15Aと、連続直線で形成されている第2エンボス部線15Bとが、X方向に対して互いに逆向きに傾斜して形成されている。同図に示す第1エンボス部線15A及び第2エンボス部線15Bはそれぞれ、互いに平行に多数本形成されている。また、隣り合う第1エンボス部線15Aの間隔、及び隣り合う第2エンボス部線15Bの間隔はそれぞれ略同一となっている。第1エンボス部線15A及び第2エンボス部線15Bが形成されている位置は、表面シート1の断面視における凹部17の位置となる。また、2本の第1エンボス部線15Aと、2本の第2エンボス部線15Bとで画成される領域は、表面シート1の断面視における凸部18の位置となる。
【0042】
表面シート1に形成されているエンボス部15の別の態様として、例えば図3(b)に示すように、表面シート1を平面視したときに、エンボス部15は、シート面方向に散点状に形成されていてもよい。
【0043】
図3(b)に示すエンボス部15の形成態様では、表面シート1を平面視したときに、円形状のエンボス部15が所定の間隔を置いて複数形成されている。同図に示すエンボス部15は、X方向に直交する方向に延びる複数のエンボス部列15Cを構成しており、隣り合うエンボス部列15Cにおいて、ピッチが同一で、且つ位相が半ピッチずれて形成された形態となっている。これに代えて、隣り合うエンボス部列15Cにおいて、ピッチは異なっていてもよい。また、隣り合う各エンボス部列15Cの位相のずれは、周期的であってもよく、それぞれ非周期的であってもよい。
【0044】
散点状に形成されたエンボス部15の形状は、同図に示すように円形状であってもよく、矩形状、六角形状等の多角形状、X形及びY形等のアルファベット様形状、格子形状、若しくはこれらの組み合わせとなっていてもよい。エンボス部15が形成されている位置は、表面シート1の断面視における凹部17の位置となる。また、4つのエンボス部15に囲まれている領域は、表面シート1の断面視における凸部18の位置となる。上述したエンボス部15の形成態様のうち、エンボス部15は、シート面方向に散点状に形成されていることが好ましい。
【0045】
表面シート1にエンボス部15が形成されている場合、凸部18の高さH1(図2(a)及び(b)参照)は、表面シート1の49Pa荷重下において、好ましくは1mm以上、更に好ましくは1.3mm以上であり、好ましくは3mm以下、更に好ましくは2.5mm以下である。凸部18の高さH1は、凸部18の最頂部(すなわち表面シート1の厚みが最も大きい部位)を通過するように厚み方向Zに沿って表面シート1を無荷重状態で切断し、表面シート1の断面を得る。次いで、表面シート1に49Paの荷重を付与した状態で、上述したマイクロスコープを用いて、該断面の拡大写真を得る。この拡大写真には、既知の寸法の物体を同時に写しこむ。次に、前記断面の拡大写真にスケールを合わせて、シート断面の厚み方向Zに沿う最大長さを測定する。
以上の操作を、同一シートにおける異なる3つの凸部18を対象として行い、3回の測定における算術平均値を高さH1(mm)とする。測定環境は、温度20±2℃、相対湿度65±5%とする。
【0046】
繊維群G1に含まれ得る他の繊維としては、コットン1a以外のセルロース系繊維や、熱可塑性繊維が挙げられる。
コットン以外のセルロース系繊維としては、例えば、コットン以外の天然セルロース繊維、再生セルロース繊維、精製セルロース繊維及び半合成セルロース繊維が挙げられる。これらは単独で又は二種以上組み合わせて用いることができる。
天然セルロース繊維としては、例えば、麻等のじん皮繊維、マニラ麻等の葉脈繊維、やし等の果実繊維が挙げられる。
再生セルロース繊維としては、例えば、ビスコースレーヨン、ポリノジック及びモダール、セルロースの銅アンモニア塩溶液から得られる銅アンモニアレーヨン等のレーヨン繊維が挙げられる。
精製セルロース繊維としては、テンセル(商標)、ヴェオセル(商標)として市販されているリヨセルが挙げられる。
半合成セルロース繊維としては、例えば、トリアセテート及びジアセテート等のアセテート繊維が挙げられる。
熱可塑性繊維としては、例えば上述した熱可塑性樹脂を含む繊維が挙げられる。繊維群G1に第2の繊維2を含む場合、第2の繊維2とは繊維の種類が異なる熱可塑性繊維が挙げられる。「繊維の種類が異なる」とは、繊維を構成する樹脂の種類が異なる場合だけではなく、樹脂の種類は同じであるが、繊維の太さが異なる場合も包含する。
これらのうち、着用者が想起する「やさしさ」や「安心感」等の良いイメージを与えるとともに、シートの肌触りを高める観点から、他の繊維として、コットン以外の天然セルロース繊維を用いることが好ましい。
【0047】
第2繊維群G2に含まれ得る他の繊維としては、例えば上述したセルロース系繊維や、熱可塑性繊維が挙げられる。第2繊維群G2に含まれ得る他の繊維として用いられるセルロース系繊維は、天然セルロース繊維としてコットンを用いてもよい。第2繊維群G2に第2の繊維2を含む場合、第2の繊維2とは繊維の種類が異なる熱可塑性繊維が挙げられる。
【0048】
本発明の表面シート1は、吸収性物品の構成部材として好適に用いることができる。吸収性物品は、典型的には、表面シート1と、裏面シートとを備え、表面シート1と裏面シートとの間に吸収体を配した状態で用いることができる。吸収性物品としては、例えば尿漏れパッド、生理用ナプキン、使い捨ておむつ等が包含されるが、これらに限定されるものではなく、人体から排出される液の吸収に用いられる物品を広く包含する。
【0049】
表面シート1を吸収性物品の構成部材として用いる場合、表面シート1は、その第1面Fが、吸収性物品を適正な位置で着用した場合において、吸収性物品を着用する着用者の肌に対向する面(以下、これを「肌対向面」ともいう。)側を構成するように配されていることが好ましい。また、表面シート1は、第1面Fを肌対向面として、吸収性物品と着用者との肌とが直接当接する部位に配されることも好ましい。
【0050】
裏面シートは、吸収性物品を着用する着用者の肌とは反対側に向けられる面側を構成するシートである。吸収性物品として用いられる裏面シートは、吸収性物品に従来用いられているものを特に制限なく用いることができる。裏面シートとしては、表面シートと同じものを用いるか、又は、液難透過性若しくは撥水性の樹脂フィルムや、樹脂フィルムと不織布等とのラミネート等を用いることができる。
【0051】
吸収性物品に用いられる吸収体は、吸収性コアを備えている。吸収性コアは例えばパルプをはじめとするセルロース等の親水性繊維の積繊体、該親水性繊維と吸水性ポリマーとの混合積繊体、吸水性ポリマーの堆積体などから構成される。吸収性コアは、少なくともその肌対向面が液透過性のコアラップシートで覆われていてもよく、肌対向面及び非肌対向面を含む表面の全域がコアラップシートで覆われていてもよい。コアラップシートとしては、例えば親水性繊維からなる薄葉紙や、液透過性を有する不織布などを用いることができる。
【0052】
表面シート1に用いられるコットン1aの繊維の繊維径は、本技術分野に通常用いられるものであれば特に制限されず、好ましくは10μm以上、更に好ましくは20μm以上であり、好ましくは50μm以下、更に好ましくは45μm以下である。
表面シート1に用いられるコットン1aの繊維長は、繊維層における交絡度合を高めて、シート強度を十分に発現させる観点から、好ましくは10mm以上、更に好ましくは20mm以上であり、好ましくは50mm以下、更に好ましくは45mm以下である。
【0053】
また、第2の繊維2の繊維径は、本技術分野に通常用いられるものであれば特に制限されないが、繊度で表して、好ましくは0.5dtex以上であり、好ましくは5dtex以下である。
【0054】
コットン1aの繊維の繊維径は、走査型電子顕微鏡(セイコーインスツルメンツ株式会社製DSC6200)を用いて、10本の繊維を対象として、繊維長さ方向に直交して切断した繊維の断面の最大差し渡し長さを測定し、その算術平均値として算出することができる。
また、第2の繊維2の繊維径は、所定繊維長さ当たりの質量で表される繊度として算出することができる。
【0055】
表面シート1の坪量は、用いられる吸収性物品の種類や用途に応じて適宜変更可能であるが、好ましくは25g/m以上、更に好ましくは40 g/m以上であり、好ましくは100g/m以下、更に好ましくは80g/m以下である。
【0056】
以上は本発明の吸収性物品用表面シート及び該シートを備える吸収性物品に関する説明であったところ、以下に本発明の吸収性物品用表面シートの好適な製造方法を説明する。本製造方法は、例えば図4に示す製造装置10を用いることができる。製造装置10は、搬送方向MDに沿って、ウエブ形成部20と、水流交絡部30とをこの順で備えている。以下の説明では、コットン1aを主体として含むウエブと、第2の繊維2を主体として含むウエブとをそれぞれ別に形成した場合を例にとり説明する。
【0057】
ウエブ形成部20は、表面シート1を構成する繊維の集合体を形成するための繊維ウエブ21a,21bを製造するカード機21A,21Bと、繊維ウエブ21a,21bのガイドロール23とを備えている。
【0058】
水流交絡部30は、繊維ウエブ21a,21bとを水流によって交絡させ、構成繊維が一体的に交絡した交絡体5を形成するものである。水流交絡部30は、繊維ウエブ21a側に水流を吹き付ける水流ノズル35と、無端ベルトからなる支持ベルト36とを備えている。水流ノズル35は、支持ベルト36の上方に位置しており、繊維ウエブ21a,21bの幅方向(搬送方向MDと直交する方向)全域にわたって高圧水流を吹き付けることができるようになっている。支持ベルト36は、水流ノズル35と対向して配されており、吹き付けられた水を透過させるために、格子状などの各種パターンで穴が空いた構造となっている(図示せず)。
【0059】
図4に示す製造装置10を用いた表面シート1の製造方法は、例えば以下のとおりである。まず、ウエブ形成部20におけるカード機21A,21Bから繊維ウエブ21a,21bがガイドロール23,23を介してそれぞれ繰り出される。これらの繰り出しによって、各繊維ウエブ21a,21bが積層された積層体4が形成される(積層工程)。
【0060】
各繊維ウエブ21a,21bにおける繊維の構成割合は、目的とする表面シート1の組成に応じて調整すればよい。具体的には、例えば、第1繊維ウエブ21aとしてコットン1aのみの繊維ウエブ又はコットン1a及び熱可塑性繊維を含む繊維ウエブを用い、第2繊維ウエブ21bとして、第2の繊維2単独の繊維ウエブか、又はコットン1aと第2の繊維2とを所定の割合で混合した繊維ウエブを用いることができる。
【0061】
次いで、水流交絡部30において、積層体4が、支持ベルト36で搬送されながら、水流ノズル35から噴出する高圧水流によって交絡処理される(交絡工程)。交絡工程を経ることによって、積層体4を構成する繊維ウエブ21a,21bの構成繊維どうしが三次元的に交絡して、交絡体5となる。
【0062】
本工程においては、例えば水流ノズル35から吹き付ける水圧を、好ましくは2MPa以上、更に好ましくは3MPa以上とし、好ましくは10MPa以下、更に好ましくは5MPa以下とする。
また、積層体4のMD方向における搬送速度を、好ましくは3m/min以上、更に好ましくは5m/min以上とし、好ましくは180m/min以下、更に好ましくは30m/min以下とする。
【0063】
交絡工程を経た積層体4は、その構成繊維が三次元的に交絡して一体化された交絡体5となる。この交絡体5は、一方の面がコットン1aを含む第1繊維群G1から構成され、他方の面は第2の繊維2を含む第2繊維群G2から構成されたシートの連続体となっている。
【0064】
エンボス部15が形成された表面シート1を製造する場合、交絡工程を経て得られたシートの連続体に対して、一方の面からエンボス部15を形成する工程を更に行うことができる(図示せず)。エンボス部15の形成は、目的とするエンボス部15の形状に相補的な形状を有するロール等をシート連続体に対して当接させて、熱を伴うか又は伴わないエンボス加工、超音波エンボス加工等を施すことによって行うことができる。エンボス部15を形成する場合、エンボス部15の形成効率を高める観点から、第2の繊維2として熱可塑性繊維を用いることが更に好ましい。
【0065】
最後に、交絡体5を所望の寸法となるように切断等によって成形して(図示せず)、表面シート1を得る。
【0066】
上述した製造方法に代えて、第1繊維群G1及び第2繊維群G2を有する表面シート1を製造する場合、例えば図5に示す製造装置50を用いて製造してもよい。この製造装置50は、特開2007-182662号公報や特開2002-187228号公報に記載の装置の構成と同様のものである。
【0067】
詳細には、まず、コットンを主体として含む繊維ウエブ又は不織布を、例えばカード機を用いた方法で形成して、第1繊維群G1とする。これとともに、熱可塑性繊維を主体として含む繊維ウエブ又は不織布を、例えばカード機を用いた方法で形成して、第2繊維群G2とする。第1繊維群G1及び第2繊維群G2の少なくとも一方に繊維層を複数形成させる場合には、コットン1a及び第2の繊維2の少なくとも一方を含む繊維ウエブ又は不織布を、例えばカード機を用いた方法で複数種形成し、その後、得られた繊維ウエブ又は不織布を積層したものを用いればよい。
【0068】
第1繊維群G1及び第2繊維群G2のうち少なくとも一方に不織布を用いる場合、不織布としては、例えばエアスルー不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布等の各種不織布を用いることができる。
【0069】
次いで、第1繊維群G1と第2繊維群G2とを、第1繊維群G1が一方の外面を形成し、且つ第2繊維群G2が他方の外面を形成するように積層して積層体41とし、これを搬送方向MDに沿って搬送して、積層体41に対してエンボス加工を施し、エンボス部15を連続直線状又は散点状に形成する。エンボス加工は、例えば、搬送方向MDに沿って搬送された積層体41を、ヒートエンボス装置51に導入して行うことができる。ヒートエンボス装置51は、周面が平滑となっている平滑ロール52と、目的とするエンボス部15の形状に相補的な多数の凸部が周面に形成されている彫刻ロール53との間に積層体41を導入することで行われる。平滑ロール52及び彫刻ロール53はともに所定温度に加熱されており、熱及び圧力の付与によって、第1繊維群G1と第2繊維群G2とを圧着又は融着させて接合し、エンボス部15を形成する。
【0070】
このとき、エンボス部15の形成効率と表面シート1の風合いを両立する観点から、平滑ロール52及び彫刻ロール53の加熱温度は、熱可塑性繊維を構成する融点以上の温度であることが好ましい。熱可塑性繊維に二種以上の成分を含む場合、各ロールの加熱温度は、低融点成分の融点以上で且つ高融点成分の融点未満の温度であればよい。また、彫刻ロール53と、積層体における第1繊維群G1とが対向するように、積層体41が両ロール間に導入されることも好ましい。
【0071】
目的とする表面シート1に凹凸形状を形成する場合、エンボス部15が形成された第2積層体42を熱風吹き付け装置55に導入して、第2積層体42に対して熱風を吹き付けて、嵩高加工を施すことが好ましい。目的とする表面シート1に凹凸形状を効率よく且つ明瞭に形成させる観点から、熱可塑性繊維として好ましくは熱収縮性繊維、特に潜在捲縮性繊維を用いることが更に好ましい。これによって、エンボス部15に囲まれている凸部18の形成予定位置に存在する熱収縮性繊維がシート面方向に収縮するとともに、該位置に存在する第1繊維群G1が一方の面側に突出するように移動して、凸部18を形成する。
【0072】
目的とする表面シート1に凹凸形状を形成する場合において、図2(a)に示すように、中実の凸部18を形成するためには、例えば熱可塑性繊維として、芯がPETであり、鞘がPEであり、芯と鞘との質量比を1:1とし、且つ繊維長が51mm、繊度2.4dtexの同心芯鞘型の複合熱融着性繊維を用いたときに、吹き付ける熱風の温度を好ましくは125℃以上145℃以下とし、且つ熱風の吹き付け時間を好ましくは5秒以上10秒以下とすることができる。
【0073】
また、目的とする表面シート1に凹凸形状を形成する場合において、図2(b)に示すように、中空の凸部18を形成するためには、例えば熱可塑性繊維としてポリエチレン及びポリプロピレンを2成分とするサイド・バイ・サイド型の潜在捲縮性繊維とし、繊維長が51mm、ポリプロピレンの融点+10℃における熱収縮率が9.5%である繊維を用いたときに、吹き付ける熱風の温度を好ましくは100℃以上120℃以下とし、且つ熱風の吹き付け時間を好ましくは5秒以上10秒以下とすることができる。
【0074】
その後、エンボス部15及び凸部18が形成された第3積層体43を所望の寸法となるように切断等によって成形して(図示せず)、表面シート1を得る。
【0075】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば、本発明の表面シートは、第1面F及び第2面Rがともに平坦であってもよく、あるいは、エンボス部15を形成する以外の方法で凹凸賦形されていてもよい。凹凸賦形の方法としては、例えば、噛み合い状態で配置された一対の凹凸ロールの間に表面シート1を導入する方法等が挙げられる。
【0076】
また、エンボス部15として連続直線状のエンボス部線15A,15Bを形成する場合、表面シート1に形成された隣り合う第1エンボス部線15Aの間隔W1(図3(a)参照)は、好ましくは4mm以上、更に好ましくは6mmであり、好ましくは16mm以下、更に好ましくは14mm以下とすることができる。また、隣り合う第2エンボス部線15Bの間隔W2(図3(a)参照)は、上述した間隔W1と同様の範囲とすることができる。
【0077】
また、散点状のエンボス部15を形成する場合、表面シート1に形成されたエンボス部15から構成されるエンボス部列15Cの延在方向に沿うエンボス部15の間隔W5(図3(b)参照)は、好ましくは1mm以上、更に好ましくは5mmであり、好ましくは10mm以下、更に好ましくは7mm以下とすることができる。隣り合うエンボス部列15Cどうしの間隔W6(図3(b)参照)は、上述した間隔W5と同様の範囲とすることができる。
【実施例
【0078】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
【0079】
〔実施例1〕
コットン(丸三産業株式会社製、型番:UDX-MS)100質量%の第1繊維ウエブ(坪量15g/m)と、コットン25質量%と非熱収縮性である熱可塑性繊維(ダイワボウポリテック株式会社製、型番:SHW-15、原料:芯がPET、鞘がPEからなる同心タイプの芯鞘型複合熱融着性繊維、繊度:2.4dtex)75質量%とを混合した第2繊維ウエブ(坪量25g/m)とをそれぞれ形成し、各繊維ウエブを積層して、積層体とした。この積層体を水流交絡させて、坪量40g/mの表面シート1を得た。水流交絡の条件は、水圧を3MPaとし、積層体の搬送速度を5m/minとした。得られた表面シート1は繊維群G1のみで形成されており、第1面Fに第1繊維ウエブが配され、第2面R側に第2繊維ウエブが配されているものであった。本実施例の表面シート1は、エンボス部15が形成されておらず、第1面F及び第2面Rともにシート表面が平坦なものであった。第1部位10A及び第2部位10Bにおけるコットン及び熱可塑性繊維の各質量割合を、以下の表1に示す。
【0080】
〔実施例2〕
コットン100質量%の第1繊維ウエブ(坪量12.5g/m)と、コットン25質量%及び上述した熱可塑性繊維75質量%を混合した第2繊維ウエブ(坪量12.5g/m)と、熱可塑性繊維(JNC株式会社製、型番:ETC255SDLV、原料:PET/PE、繊度:2.2dtex)100質量%の第3繊維ウエブ(坪量25g/m)とを用いた。
【0081】
まず、第1繊維ウエブと第2繊維ウエブとを積層した積層体を水流交絡させて、各繊維ウエブが剥離不能になったスパンレース不織布を得た。次いで、スパンレース不織布と第3繊維ウエブとを、スパンレース不織布における第1繊維ウエブ側の面が外面となるように積層した。そして、スパンレース不織布側からエンボス加工を施し、図3(a)に示す連続直線状のエンボス部15を有する表面シート1(坪量50g/m)を得た。隣り合う第1エンボス部線15Aの間隔W1は7.6mmとし、隣り合う第2エンボス部線15Bの間隔W2は7.6mmとした。
この表面シートは、第1面F側に第1繊維群G1としてのスパンレース不織布が配され、第2面R側に第2繊維群G2としての第3繊維ウエブが配されているものであった。また表面シートは、中実の凸部18が形成された凹凸形状を有し、凸部18の高さH1は2.2μmであった。第1部位10A及び第2部位10Bにおけるコットン及び熱可塑性繊維の各質量割合を、以下の表1に示す。
【0082】
〔実施例3〕
コットン100質量%の第1繊維ウエブ(坪量11g/m)と、コットン25質量%及び非熱収縮性である熱可塑性繊維(ダイワボウポリテック株式会社製、型番:SHW-15;原料:PET/PE、繊度:2.4dtex)75質量%を混合した第2繊維ウエブ(坪量11g/m)と、サイド・バイ・サイド型の潜在捲縮性繊維(ダイワボウポリテック株式会社製、型番:LV-3、原料:PP/PE、繊度:2.3dtex)100質量%の第3繊維ウエブ(坪量17g/m)とを用いた。
【0083】
本実施例は、実施例2と同様に、第1繊維ウエブと第2繊維ウエブとを水流交絡させて、各繊維ウエブが剥離不能になったスパンレース不織布(坪量22g/m)を得た。次いで、スパンレース不織布と第3繊維ウエブとを、スパンレース不織布における第1繊維ウエブ側の面が外面となるように積層した。そして、スパンレース不織布側からエンボス加工を施し、図3(b)に示す散点状のエンボス部15を有する積層体(坪量39g/m)とした。その後、この積層体に対して、120℃の熱風を5秒以上10秒以下吹き付けて熱収縮させた結果、凹凸形状を有する表面シート1(坪量51g/m)を得た。
この表面シートは、エンボス部15が散点状に形成され、且つ中空の凸部18が形成されており、凸部18の高さH1は2μmであった。エンボス部15の配置パターンは、エンボス部列15Cの延在方向に沿うエンボス部15の間隔W5が5mmであり、隣り合うエンボス部列15Cどうしの間隔W6が5mmであった。また、隣り合うエンボス部列15Cにおいて、ピッチが同一で、位相が半ピッチずれた千鳥格子状となっていた。エンボス部15は、直径5mmの円形状であった。
第1部位10A及び第2部位10Bにおけるコットン及び熱可塑性繊維の各質量割合を、以下の表1に示す。
【0084】
〔実施例4〕
第1面F側に第1繊維群G1としてのスパンレース不織布(坪量22g/m)が配され、第2面R側に第2繊維群G2としての第3繊維ウエブとして、サイド・バイ・サイド型の潜在捲縮性繊維(ダイワボウポリテック株式会社製、型番:LV-3、PET/PE、繊度:2.3dtex)100質量%の繊維ウエブ(坪量17g/m)を用いた他は、実施例3と同様の方法で製造及び熱収縮させて、凹凸形状を有する表面シート1(坪量74g/m)を得た。
本実施例の表面シートは、エンボス部15が散点状に形成され、且つ中実の凸部18が形成されており、凸部18の高さH1は1.6mmであった。第1部位10A及び第2部位10Bにおけるコットン及び熱可塑性繊維の各質量割合を、以下の表1に示す。
【0085】
〔比較例1〕
コットンのみを用いて形成した繊維ウエブを水流交絡させて、単一の繊維群からなる坪量30g/mの表面シート1を得た。水流交絡の条件は、実施例1と同様の条件とした。
【0086】
〔比較例2〕
コットン35質量%と、実施例1で用いた熱可塑性繊維(型番:SHW-15)65質量%とを混合して形成した繊維ウエブを水流交絡させて、単一の繊維群からなる坪量30g/mの表面シート1を得た。水流交絡の条件は、実施例1と同様の条件とした。
【0087】
〔液残り量の測定〕
実施例及び比較例の表面シート1を、第1面Fが外方に位置するように配して、吸収性物品(生理用ナプキン)を製造した。表面シート1以外の吸収性物品の構成は、花王株式会社製の生理用ナプキン(ロリエ(登録商標) エフ しあわせ素肌 ふんわりタイプ 22.5cm、2018年製)と同一とした。
この生理用ナプキンを、表面シート1が上方を向くように平らな台の上に載置した。表面シート1の上に、直径が10mmで、高さが50mmである円筒が一体成形されたアクリル製注液プレートを、その注液孔が表面シートの中央に位置するように載置した。この状態下に、6gの擬似血液を円筒内に一気に注入した。注入から1分経過後、注液プレートを除去し、表面シート1を生理用ナプキンから取り外してその質量を測定した。測定された質量から、注液前に予め測定しておいた表面シートの質量を差し引いて得られた値を、液残り量(g)とし、用いた表面シートの面積(m)で除して、単位面積当たりの液残り量を算出した。液残り量が少ないほど、結果が良好なものである。結果を以下の表1に示す。
【0088】
なお、測定に用いた擬似血液は株式会社日本バイオテスト研究所製馬脱繊維血液から調製した。脱繊維馬血は、これを放置すると、粘度の高い部分(赤血球など)は沈殿し、粘度の低い部分(血漿)は、上澄みとして残る。それらの部分の混合比率を、粘度が8.0cP(25℃)になるように調整し、擬似血液とした。調整には、東機産業株式会社製のTVB10形粘度計を用いた。条件は30rpmとした。
【0089】
〔シート表面の液流れ長さの測定〕
実施例及び比較例の表面シート1を配した吸収性物品(生理用ナプキン)を、上述した〔液残り量の測定〕の方法と同様に製造した。
この生理用ナプキンを、表面シート1が上方を向くように、水平面に対して45度傾斜した面上に載置した。その後、表面シート1上に、上述した脱繊維馬血を0.1g/秒の速度で0.5g滴下させた。表面シート1における滴下点から、脱繊維馬血が流れなくなった点までの距離を測定した。この操作を3回行い、3回の算術平均値を液流れ長さ(mm)とした。液流れ長さが小さいほど、結果が良好なものである。結果を以下の表1に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
表1に示すように、各実施例の表面シート1は、比較例のものと比較して、液残り量が少なく、且つシート表面の液流れも少ないものである。特に、実施例2ないし4に示すように、コットンを主体とする第1繊維群G1と、熱可塑性繊維又は熱収縮繊維を主体とする第2繊維群G2とから構成することによって、この効果が顕著となることが判る。
【符号の説明】
【0092】
1 吸収性物品用表面シート
1a コットン
2 第2の繊維
F 第1面
R 第2面
Z 厚み方向
図1
図2
図3
図4
図5