(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】デジタルツインによるプロセス制御
(51)【国際特許分類】
G06F 9/455 20180101AFI20240604BHJP
G06F 9/50 20060101ALI20240604BHJP
G06F 9/54 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
G06F9/455 150
G06F9/50 150B
G06F9/54 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020074242
(22)【出願日】2020-04-17
【審査請求日】2023-02-08
(32)【優先日】2019-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520138438
【氏名又は名称】アスコン・システムズ・ホールディング・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】キリアン・グレフェン
【審査官】三坂 敏夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-247128(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0039249(US,A1)
【文献】譚 奕飛,IoT時代におけるモノづくりの課題とシミュレーションの利活用について,日本情報経営学会誌,日本情報経営学会,2018年06月20日,第38巻 第2号,第95頁-第101頁
【文献】塚本 達也 他,エレベーター制御のコントローラプログラミングのためのシステムモデルからSequential Function Chartへの自動変換ツール,電子情報通信学会技術研究報告,一般社団法人電子情報通信学会,2014年11月13日,第114巻 第312号,第23頁-第28頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 9/455ー9/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散型事象離散システムをリアルタイムで制御するための仮想ツインエンジンを実行する方法であって、前記仮想ツインエンジンは、
メタモデルから、分散型事象離散システムの少なくとも1つのサブシステムをモデリングするための少なくとも1つの状態モデル(Σi●i∈{1,…,s}
(●はメタオブジェクトタイプのプレースホルダーである))を参照するメタオブジェクトタイプ(MO●)を選択することによって、前記分散型事象離散システムの前記少なくとも1つのサブシステムのメタモデル表現を生成し、前記選択された少なくとも1つの状態モデル(Σi●i∈{1,…,s})における少なくとも1つの状態(zi●k)は、メタ記述ドメインにおける状態を特徴付けるメタ特徴のセット、検討される状態のターゲットを特徴付ける値の離散的または連続的な範囲を有するターゲット特徴のセット、および検討される状態の実際のコンステレーションを特徴付ける値の離散的または連続的な範囲を有する実際の特徴のセットに従って、異なるレベルのデータ抽象化を使用する部分状態のセット(zi●k,p)であるメタモデルで記述され、
前記分散型事象離散システムを、各々が同じメタモデル表現を有する前記分散型事象離散システムの少なくとも1つのサブシステムを含む少なくとも2つのサブシステムクラスタに分割し、
サブシステムクラスタ間でストリーミングメッセージを交換するためにルーティングトポロジを定義し、
前記分散型事象離散システムのサブシステムクラスタに割り当てられた少なくとも1つのサブシステムについて、少なくとも1つのサブシステム使用クラスタをモデリングし、
ソフトウェアライブラリから利用可能な実行可能ソフトウェアのパラメータ化を介して、前記サブシステムクラスタのすべてのサブシステム使用に関して、前記ルーティングトポロジおよび少なくとも1つのサブシステム使用モデルを実行するように
、少なくとも1つの実行可能なモデリングソフトウェアカーネルを構成する
ことによって準備される
前記少なくとも1つの実行可能なモデリングソフトウェアカーネルをインストールしており、
前記仮想ツインエンジンを実行する前記方法は、
前記少なくとも1つのサブシステム使用モデルをモデリングする関連するモデリングソフトウェアカーネルの実行を介して前記サブシステムクラスタに関して少なくとも1つのサブシステム使用モデルをリアルタイムで実行するステップと、
前記少なくとも1つのサブシステム使用モデルに関して少なくとも1つのデジタルツインを、前記分散型事象離散システムにおいて操作され、前記サブシステム使用モデルに一致する機能を有する関連プロセスオブジェクトに対する仮想対応物として動作させるステップとを含み、
前記少なくとも1つのデジタルツインを動作させる前記ステップは、前記少なくとも1つのデジタルツインの前記サブシステム使用モデルをモデリングする前記モデリングソフトウェアカーネルへのリアルタイムアクセスを介して受動的に実行される、
方法。
【請求項2】
少なくとも1つの要素を
前記仮想
ツインエンジンに注入するステップを含み、前記要素は、
少なくとも1つのメタオブジェクトタイプ(MO●)を前記仮想ツインエンジンに反映するモデリング情報と、
前記仮想ツインエンジンへの前記メタオブジェクトタイプ(MO●)による少なくとも1つの状態モデル参照を含む状態モデルのセット(Σij)と、
前記仮想ツインエンジンに前記注入された少なくとも1つの状態モデルにおけるビューを表す少なくとも1つのパースペクティブと、
前記仮想ツインエンジンへの各状態モデルのメタデータ、ターゲットデータ、および実際のデータならびに関連する状態変数による異なるレベルのデータ抽象化と、
前記仮想ツイン
エンジンへの外部および/または内部状態遷移を実装するソフトウェアコードと、
所定のメタモデルタイプを有する少なくとも1つのサブシステム使用クラスタと
を含むグループから選択される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
サブシステム使用クラスタに関して少なくとも1つのデジタルツインを初期化するステップであって、前記少なくとも1つのデジタルツインは、対応する実世界のプロセスオブジェクトに対するデジタル対応物として機能する、ステップを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つのデジタルツインを初期化する前記ステップは、前記分散型事象離散システムのリアルタイムのプロセス制御のために、前記仮想ツインエンジンの開始前、または前記仮想ツインエンジンの動作中に実行される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
異なるレベルの抽象化に従って通信データを少なくとも制御データフローおよび/または使用データフローに分類することによって、前記
仮想ツインエンジンとの間のデータ交換を制御するステップを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
デジタルツインの少なくとも1つの状態遷移について少なくとも1つのトリガ事象を表す少なくとも1つの状態ベクトルの評価によって、前記制御データフローを制御するステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
関連する制御データを異なるサブシステムクラスタ間で交換するためのデジタルツインの状態遷移に関して少なくとも1つのメタストリームメッセージを生成することによって、前記制御データフローを制御するステップを含む、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
関連する遷移条件の評価のための前記少なくとも1つのデジタルツイン
の少なくとも1つの状態遷移に関連して、少なくとも実際の値および/または少なくとも1つの目標値を含む少なくとも1つの条件ベクトルを評価することによって、前記使用データフローを制御するステップを含む、請求項5から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
状態遷移前の初期状態を表すデータに少なくとも1つの変換関数を適用して、前記状態遷移後のターゲット状態を表すデータを生成するステップと、
前記状態遷移に関する少なくとも1つのコンテキスト情報を更新するステップと、
前記状態遷移を実行する前記デジタルツインの前記サブシステム使用クラスタの外部のサブシステム使用クラスタにおける少なくとも1つの状態モデルを更新するために少なくとも1つのメタストリームメッセージを生成するために状態遷移結果を処理するステップと
を含むグループから選択された少なくとも1つのステップを実行することによって、前記使用データフローを制御するステップを含む、請求項5から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
分散型事象離散システムをリアルタイムで制御するための仮想ツインエンジンであって、
メタモデルから、分散型事象離散システムの少なくとも1つのサブシステムをモデリングするための少なくとも1つの状態モデル(Σi●i∈{1,…,s})を参照するメタオブジェクトタイプ(MO●)を選択することによって、前記分散型事象離散システムの前記少なくとも1つのサブシステムのメタモデル表現を生成し、前記選択された少なくとも1つの状態モデル(Σi●i∈{1,…,s})における少なくとも1つの状態(zi●k)は、メタ記述ドメインにおける状態を特徴付けるメタ特徴のセット、検討される状態のターゲットを特徴付ける値の離散的または連続的な範囲を有するターゲット特徴のセット、および検討される状態の実際のコンステレーションを特徴付ける値の離散的または連続的な範囲を有する実際の特徴のセットに従って、異なるレベルのデータ抽象化を使用する部分状態のセット(zi●k,p)であるメタモデルで記述され、
前記分散型事象離散システムを、各々が同じメタモデル表現を有する前記分散型事象離散システムの少なくとも1つのサブシステムを含む少なくとも2つのサブシステムクラスタに分割し、
サブシステムクラスタ間でストリーミングメッセージを交換するためにルーティングトポロジを定義し、
前記分散型事象離散システムのサブシステムクラスタに割り当てられた少なくとも1つのサブシステムについて、少なくとも1つのサブシステム使用クラスタをモデリングし、
ソフトウェアライブラリから利用可能な実行可能ソフトウェアのパラメータ化を介して、前記サブシステムクラスタのすべてのサブシステム使用に関して、前記ルーティングトポロジおよび少なくとも1つのサブシステム使用モデルを実行するように
、少なくとも1つの実行可能なモデリングソフトウェアカーネルを構成する
ことによって準備される
前記少なくとも1つの実行可能なモデリングソフトウェアカーネルをインストールしており、
前記仮想ツインエンジンは、
前記少なくとも1つのサブシステム使用モデルをモデリングする関連するモデリングソフトウェアカーネルの実行を介して前記サブシステムクラスタに関して少なくとも1つのサブシステム使用モデルをリアルタイムで実行するように適合されたモデル処理モジュールを含み、
前記モデル処理モジュールは、前記少なくとも1つのサブシステム使用モデルに関して少なくとも1つのデジタルツインを、前記分散型事象離散システムにおいて操作され、前記サブシステム使用モデルに一致する機能を有する関連プロセスオブジェクトに対する仮想対応物として動作させるように適合され、
前記モデル処理モジュールは、前記少なくとも1つのデジタルツインの前記サブシステム使用モデルをモデリングする前記モデリングソフトウェアカーネルへのリアルタイムアクセスを介して前記少なくとも1つのデジタルツインを受動的に動作させるように適合される、
仮想ツインエンジン。
【請求項11】
少なくとも1つの要素を
前記仮想
ツインエンジンに注入するように適合されたモデリングエンジンインターフェースを含み、前記要素は、
少なくとも1つのメタオブジェクトタイプ(MO●)を前記仮想ツインエンジンに反映するモデリング情報と、
前記仮想ツインエンジンへの前記メタオブジェクトタイプ(MO●)による少なくとも1つの状態モデル参照を含む状態モデルのセット(Σij)と、
前記仮想ツインエンジンに前記注入された少なくとも1つの状態モデルにおけるビューを表す少なくとも1つのパースペクティブと、
前記仮想ツインエンジンへの各状態モデルのメタデータ、ターゲットデータ、および実際のデータならびに関連する状態変数による異なるレベルのデータ抽象化と、
前記仮想ツイン
エンジンへの外部および/または内部状態遷移を実装するソフトウェアコードと、
所定のメタモデルタイプを有する少なくとも1つのサブシステム使用クラスタと
を含むグループから選択される、
請求項10に記載の仮想ツインエンジン。
【請求項12】
サブシステム使用クラスタに関して少なくとも1つのデジタルツインを注入するように適合されたモデリング制御モジュールを含み、前記少なくとも1つのデジタルツインは、対応する実世界のプロセスオブジェクトに対するデジタル対応物として機能する、請求項10または11に記載の仮想ツインエンジン。
【請求項13】
モデリング制御モジュールは、前記
仮想ツインエンジンの開始前、または前記仮想ツインエンジンの動作中にリアルタイムで、前記少なくとも1つのデジタルツインを初期化するように適合される、請求項12に記載の仮想ツインエンジン。
【請求項14】
前記仮想ツインエンジンに外部および/または内部状態遷移を実装するソフトウェアコードを注入するように適合されたサービスエンジンインターフェースを含む、請求項10から13のいずれか一項に記載の仮想ツインエンジン。
【請求項15】
異なるレベルの抽象化に従って通信データを少なくとも制御データフローおよび/または使用データフローに分類することによって、前記
仮想ツインエンジンとの間のデータ交換を制御するように適合されるデータフロー制御モジュールを含む、請求項10から14のいずれか一項に記載の仮想ツインエンジン。
【請求項16】
前記データフロー制御モジュールは、デジタルツインの少なくとも1つの状態遷移の少なくとも1つのトリガ事象を表す少なくとも1つの状態ベクトルを評価するように、前記制御データフロー上で動作する状態ベクトル評価モジュールを制御するように適合される、請求項15に記載の仮想ツインエンジン。
【請求項17】
前記データフロー制御モジュールは、関連する制御データを異なるサブシステムクラスタ間で交換するためのデジタルツインの状態遷移に関して、少なくとも1つのメタストリームメッセージを生成するように、前記制御データフロー上で動作する状態ベクトル評価モジュールを制御するように適合される、請求項15または16に記載の仮想ツインエンジン。
【請求項18】
前記データフロー制御モジュールは、関連する遷移条件の評価のための前記少なくとも1つのデジタルツイン
の少なくとも1つの状態遷移に関連して、少なくとも実際の値および/または少なくとも1つの目標値を含む少なくとも1つの条件ベクトルを評価するように、前記使用データフロー上で動作する条件ベクトル評価モジュールを制御するように適合される、請求項15から17のいずれか一項に記載の仮想ツインエンジン。
【請求項19】
前記データフロー制御モジュールは、状態遷移前の初期状態を表すデータに少なくとも1つの変換関数を適用して、前記状態遷移後のターゲット状態を表すデータを生成するように、前記使用データフロー上で動作する変換モジュールを制御するように適合される、請求項15から18のいずれか一項に記載の仮想ツインエンジン。
【請求項20】
前記データフロー制御モジュールは
、状態遷移に関する少なくとも1つのコンテキスト情報を更新するように、前記使用データフロー上で動作する更新モジュールを制御するように適合される、請求項15から19のいずれか一項に記載の仮想ツインエンジン。
【請求項21】
前記データフロー制御モジュールは
、状態遷移を実行する前記デジタルツインの前記サブシステム使用クラスタの外部のサブシステム使用クラスタにおける少なくとも1つの状態モデルを更新するために少なくとも1つのメタストリームメッセージを生成するように、前記制御データフロー上で動作するメッセージ生成モジュールを制御するように適合される、請求項15から20のいずれか一項に記載の仮想ツインエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルツインを使用したリアルタイムのプロセス制御の分野に関する。より詳細には、本発明は、分散型事象離散システムのリアルタイム制御のために、モデルを後で使用するために、デジタルツインを使用して分散型事象離散システムをモデリングする分野に関する。
【背景技術】
【0002】
製造におけるリアルタイムのプロセス制御は、進行中の問題であり、継続的な開発の対象になる。
図1は、リアルタイムのプロセス制御の対象となる製造環境の典型的な一例を示す。
【0003】
図1に示されるように、検討される製造環境は、たとえば、第1のライン1を含み得る。第1のライン1は、3つのコンベヤ、すなわち、各々がセンサー11、12、および13をそれぞれ備えたコンベヤ11、コンベヤ12、およびコンベヤ13からセットアップされてもよい。
【0004】
図1に示されるように、検討される製造環境は、たとえば、第2のライン2も含み得る。第2のライン2は、3つのコンベヤ、すなわち、各々がセンサー21、22、および23をそれぞれ備えたコンベヤ21、コンベヤ22、およびコンベヤ23からセットアップされてもよい。
【0005】
図1に示されるように、ライン1のコンベヤ11は、ボックスを搬送し、プロセス制御の全体的な目的は、ライン1に沿ったボックスの安全な移動とすることができる。
【0006】
図2は、
図1に示される製造環境のプロセス制御に使用される典型的なモデルである階層ツリーモデルを示す。
【0007】
図2に示されるように、階層ツリーモデルでは、プロセス環境の異なるサブシステムがノードとして表される。典型的には、階層ツリーモデルは、プロセス制御の開始前に準備される。階層ツリーモデルにおける階層レベルへのサブシステムの割当ては、アプリケーション固有であってもよく、階層ツリーモデルにおける異なる層は、通常、独立した方法で操作される。
【0008】
さらに、製造環境のサブシステムは、柔軟性なしに階層ツリーモデルにハードコード化されているので、プロセス制御が開始すると、生成された階層ツリーモデルを変更するオプションはない。たとえば、製造環境に新しいラインがセットアップされた場合、またはそのアプリケーションが変更された場合、プロセス制御の基礎となる階層ツリーモデルの完全な再コード化が必要となる。また、異なるサブシステムの機能の変更によって、階層ツリーモデルのリモデリングプロセスが必要となる。
【0009】
しかしながら、プロセス環境の複雑さが増すことを考慮すると、プロセス制御に対する既存の手法は、もはや将来のアプリケーションシナリオの要件を満たさない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記に鑑みて、本発明の目的は、その後の効率的なリアルタイムのプロセス制御のために、分散型事象離散システムのモデリングにおける柔軟性を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様によれば、この目的は、分散型事象離散システムをリアルタイムで制御するための仮想ツインエンジンを実行する方法によって達成され、仮想ツインエンジンは、少なくとも1つの実行可能なモデリングソフトウェアカーネルをインストールしている。
【0012】
本発明の第1の態様によれば、少なくとも1つの実行可能なモデリングソフトウェアカーネルは、メタモデルから、分散型事象離散システムの少なくとも1つのサブシステムをモデリングするための少なくとも1つの状態モデルを参照するメタオブジェクトタイプを選択することによって、分散型事象離散システムの少なくとも1つのサブシステムのメタモデル表現を生成することによって準備され、選択された少なくとも1つの状態モデルにおける少なくとも1つの状態は、メタ記述ドメインにおける状態を特徴付けるメタ特徴のセット、検討される状態のターゲットを特徴付ける値の離散的または連続的な範囲を有するターゲット特徴のセット、および検討される状態の実際のコンステレーションを特徴付ける値の離散的または連続的な範囲を有する実際の特徴のセットに従って、異なるレベルのデータ抽象化を使用する部分状態のセットであるメタモデルで記述される。
【0013】
さらに、本発明の第1の態様によれば、少なくとも1つの実行可能なモデリングソフトウェアカーネルは、分散型事象離散システムを、各々が同じメタモデル表現を有する分散型事象離散システムの少なくとも1つのサブシステムを含む少なくとも2つのサブシステムクラスタに分割し、サブシステムクラスタ間でストリーミングメッセージを交換するためのルーティングトポロジを定義することによって準備される。
【0014】
さらに、本発明の第1の態様によれば、少なくとも1つの実行可能なモデリングソフトウェアカーネルは、分散型事象離散システムのサブシステムクラスタに割り当てられた少なくとも1つのサブシステムの少なくとも1つのサブシステム使用クラスタをモデリングし、ソフトウェアライブラリから利用可能な実行可能ソフトウェアのパラメータ化を介して、サブシステムクラスタのすべてのサブシステム使用に関して、ルーティングトポロジおよび少なくとも1つのサブシステム使用モデルを実行するように、少なくとも1つの実行可能なモデリングソフトウェアカーネルを構成することによって準備される。
【0015】
さらに、本発明の第1の態様によれば、仮想ツインエンジンを実行する方法は、少なくとも1つのサブシステム使用モデルをモデリングする関連するモデリングソフトウェアカーネルの実行を介してサブシステムクラスタに関して少なくとも1つのサブシステム使用モデルをリアルタイムで実行するステップと、少なくとも1つのサブシステム使用モデルに関して少なくとも1つのデジタルツインを、分散型事象離散システムにおいて操作され、サブシステム使用モデルに一致する機能を有する関連プロセスオブジェクトに対する仮想対応物として動作させるステップとを含む。
【0016】
さらに、本発明の第1の態様によれば、少なくとも1つのデジタルツインを動作させるステップは、少なくとも1つのデジタルツインのサブシステム使用モデルをモデリングするモデリングソフトウェアカーネルへのリアルタイムアクセスを介して受動的に実行される。
【0017】
本発明の第2の態様によれば、上記で概説した目的は、分散型事象離散システムをリアルタイムで制御するための仮想ツインエンジンによって達成され、仮想ツインエンジンは、少なくとも1つの実行可能なモデリングソフトウェアカーネルをインストールしている。
【0018】
本発明の第2の態様によれば、少なくとも1つの実行可能なモデリングソフトウェアカーネルは、本発明の第1の態様と同様に準備される。
【0019】
本発明の第2の態様によれば、仮想ツインエンジンは、少なくとも1つのサブシステム使用モデルをモデリングする関連するモデリングソフトウェアカーネルの実行を介してサブシステムクラスタに関して少なくとも1つのサブシステム使用モデルをリアルタイムで実行するように適合されたモデル処理モジュールを含む。
【0020】
本発明の第2の態様によれば、モデル処理モジュールは、少なくとも1つのサブシステム使用モデルに関して少なくとも1つのデジタルツインを、分散型事象離散システムにおいて操作され、サブシステム使用モデルに一致する機能を有する関連プロセスオブジェクトに対する仮想対応物として動作させるように適合される。
【0021】
本発明の第2の態様によれば、モデル処理モジュールは、少なくとも1つのデジタルツインのサブシステム使用モデルをモデリングするモデリングソフトウェアカーネルへのリアルタイムアクセスを介して少なくとも1つのデジタルツインを受動的に動作させるように適合される。
【0022】
以下では、本発明および関連する例が、図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】リアルタイムのプロセス制御の対象となる製造環境の典型的な一例を示す図である。
【
図2】
図1に示される製造環境のプロセス制御の基礎となる典型的なモデルの概要を示す図である。
【
図3】サブシステムのメタモデルのタイプとしてメタオブジェクトを使用するメタモデル層でのモデリングの例を示す図である。
【
図4】サブシステムのメタモデルのクラスタを定義するための使用モデル層、すなわちテンプレート層でのモデリングの例を示す図である。
【
図5】サブシステムのメタモデルのクラスタのインスタンスとしてサブシステムを説明するためのツイン層でのモデリングの例を示す図である。
【
図6】
図3に示されるメタレベルでのモデリングと、
図4に示される使用レベルでのモデリングとの組合せ、および
図5に示されるツイン層でのモデリングとの組合せの結果を示す図である。
【
図7】分散型事象離散システムのモデリングのために本発明に従って使用される状態空間モデルの一般的な概要を示す図である。
【
図8】
図7に示される状態空間モデルのさらに詳細な表現を示す図である。
【
図9】
図7に示される状態空間モデルのさらに詳細な表現を示す図である。
【
図10】本発明による、分散型事象離散システムをモデリングし、分散型事象離散システムのリアルタイムのプロセス制御を実行するように適合されたシステムの概要を示す図である。
【
図11】本発明による、分散型事象離散システムをモデリングし、分散型事象離散システムのリアルタイムのプロセス制御を実行するように適合されたシステムの動作の基本的なフローチャートである。
【
図12】
図10に示されるモデリングエンジンによって使用される、本発明によるコンピュータ実装メタモデルの概略図である。
【
図13】
図10に示される本発明によるモデリングエンジンの動作のフローチャートである。
【
図14】特定のサブシステムクラスタに割り当てられたすべてのサブシステムが同じメタオブジェクトタイプでモデリングされるように、分割がサブシステムクラスタのセットとして定義される、本発明による分散型事象離散システムの分割を示す図である。
【
図15】サービスエンジンが、少なくとも1つのサブシステムをモデリングするために使用されるメタオブジェクトタイプに沿って、分散型事象離散システムの少なくとも1つのサブシステムの使用モデルを生成する、本発明によるサービスエンジンの概略図である。
【
図16】
図14および
図15にそれぞれ示される本発明による使用レベルモデリングの動作のフローチャートである。
【
図17】仮想ツインエンジンが、
図15に示されるサービスエンジンによって準備された少なくとも1つの実行可能なモデリングソフトウェアカーネルをプレインストールしている、本発明による仮想ツインエンジンの概略図である。
【
図18】
図17に示される本発明による仮想ツインエンジンの動作のフローチャートである。
【
図19】仮想ツインエンジンで動作するモジュール処理モジュールの動作のさらなる詳細を示す図である。
【
図20】本発明による仮想ツインエンジンの動作を示すさらなる概略図である。
【
図21】それぞれ
図17および
図20に示されるデータフロー処理モジュールの動作のさらなる詳細のフローチャートである。
【
図22】
図17に示される本発明によるデータフロー処理モジュールにおける状態ベクトルおよび条件ベクトルの評価のシードボックス手法の一例を示す図である。
【
図23】
図17に示される本発明によるデータフロー処理モジュールにおける状態ベクトルおよび条件ベクトルの評価のシードボックス手法のさらなる一例を示す図である。
【
図24】ツインオブジェクトに関して状態遷移を実行した後、
図22および
図23に示されるようにシードボックスを更新する一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明を詳細に説明する。ここで、そのような説明は本発明の例にのみ関連し、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲に拘束されないことを理解されたい。
【0025】
特定の手続き型または構造構成要素について言及している限り、これは、同じ機能が実現される限り、手続き型または構造構成要素が明確に交換可能である場合、基礎をなす機能の例と見なされるものとする。したがって、本発明は、保護の範囲の制限を回避するために一般的な用語を使用して説明される。
【0026】
さらに、本発明によるデジタルツインを使用したプロセス制御の機能は多様である。分散型事象離散システムの柔軟なモデリングだけでなく、分散型事象離散システムのリアルタイムのプロセス制御もサポートする。
【0027】
一般に、本発明の全体的なフレームワーク内で検討される分散型事象離散システムは、各単一サブシステムが自律的に動作する複数のサブシステムに分割され、分散型事象離散システムにおける全体的な動作状態について常に完全な図を有しているとは限らない。
【0028】
さらに、分散型事象離散システムは、たとえば、連続システム、離散システム決定論的システム(discrete system deterministic system)、確率システム、動的システム、実数値システム、因果システム、線形システム、非線形システム、時間不変システム、時変システム、安定システム、BIBO安定システム、損失のないシステムなど、またはそれらの任意の適切な組合せに分類し得る。
【0029】
さらに、分散型事象離散システムのサブシステムにおけるプロセスという用語は、相互に固定された因果的時間関係を持つ一連の事象を表す。これは、分散型事象離散システムのサブシステム内の事象の因果的識別可能性を意味し、サブシステム内の2つの異なるローカル事象が同時に発生することはないものとする。
【0030】
上記に鑑みて、事象は、3つのクラスに分類される。
【0031】
第1のクラスは、メッセージを外部に送信することなく、分散型事象離散システムのサブシステム内で発生する内部事象に関連する。
【0032】
第2のクラスは、サブシステムから分散型事象離散システムの異なるサブシステムへのメッセージの送信をトリガするサブシステム内で発生する事象の送信に関連する。グローバルな観点から、メッセージがアドレス指定される異なるサブシステムにおける対応する受信事象に先行する。
【0033】
第3のクラスは、分散型事象離散システムの異なるサブシステムからメッセージを受信すると、サブシステム内で発生する事象を受信することに関連する。グローバルな観点から、メッセージがそこから送信される異なるサブシステムにおける対応する送信事象に続く。
【0034】
一般に、分散型事象離散システムのモデリングは、所定のタスクの処理および関連する取り組みとモデル全体の暗黙の複雑さとの間のトレードオフに基づく。特に、モデルおよび関連する接続の特定の部分システムのセットアップ方法は、モデルの複雑さに貢献する。
【0035】
ここで、最先端の技術では、典型的な手法は、特定のモデリングタスクの階層的な構造化および分解である。一般に、最先端の技術では、サブシステムは、構成的な方法で、すなわち、any-to-anyの手法でモデリングされる。モデルの構成的構造化は、新しいモデリング目標に従ってモデルの適応性を高めるが、特に、サブシステム間のシグナリング接続の数が多いため、モデルの複雑さが増す。
【0036】
従来技術とは対照的に、本発明によるモデリング手法は、リアルタイムでの全体的なシステムモデルの動的修正のために調整された分散型事象離散システムのモデリングおよびプロセス制御をサポートする。
【0037】
以下に示されるように、これまで、本発明は、分散型事象離散システムの異なるレベルの抽象化およびモデリング、すなわち、メタレベル、使用レベル、およびツインレベルを使用して、分散型事象離散システム全体を、次いで仮想階層または仕様に従ってトップダウンでさらに指定される部分システムに分割することができる。
【0038】
図3は、サブシステムのメタモデルのタイプとしてメタオブジェクトを使用するメタモデル層でのモデリングの例を示す。
【0039】
図3に示されるように、メタモデルは、変換関数、すなわち言語範囲、メタ状態を記述するセマンティクス、および論理的な挙動を記述する状態空間モデルを使用する。
【0040】
一般に、メタモデルは、実際のモデルのプロパティを強調表示する。したがって、メタモデリングは、あるアプリケーションドメイン内の概念の構造である。メタモデリングは、典型的に、入力と出力の関係の調査、および所与の挙動を表すためのメタモデルのフィッティングを伴う。
【0041】
さらに、デジタルツインレベルとメタルモデルレベルとの関係は、instance-of-relationタイプのものである。また、使用レベルとメタモデルとの関係も、instance-of-relationタイプのものである。
【0042】
図3に示されるように、メタモデリングは、メタオブジェクトに基づく特定の実世界のインスタンス化から離れた抽象化を意味する。
図3に示される特定の例では、メタオブジェクトは、メタオブジェクトコンベヤおよびメタオブジェクトセンサーである。次いで、メタオブジェクトコンベヤの場合、関連する機能は、たとえば、コンベヤモータのON/OFF状態を表す状態図を使用して記述されてもよい。
【0043】
図3に示されるように、センサーも、実世界から離れて抽象化され、この場合も、それぞれ、センサーの典型的な状態、すなわち、測定が完了した状態、および信号が分析された状態を一般的に特徴付ける関連する状態図、ならびに信号をデュオ測定に分析するための関連する状態遷移を介して記述され得る。
【0044】
図3に示されるように、本発明のまた別の重要な態様は、異なるレベルの抽象化での状態のメタ表現である。
図3に示されるように、メタオブジェクトコンベヤのそのような抽象化された状態表現は、たとえば、分析されたメタ状態信号、ターゲット速度へのターゲット特徴の仕様、および実行時のコンベヤの実際の速度を示す実際の特徴の特定の表現である。
【0045】
同様に、
図3に示されるように、メタオブジェクトセンサーのメタ状態表現は、この場合も、信号分析される分類する特徴、検出結果状態が与えられることを指定するターゲット特徴、および実際の特徴として、ID3456に等しいオブジェクトIDとなるオブジェクトIDであり得る。
【0046】
図4は、サブシステムのメタモデルのクラスタを定義するための使用モデル層、すなわちテンプレート層でのモデリングの例を示す。
【0047】
ここで、目的は、クラスタ内のすべてのデジタルツインオブジェクトが記述的特徴の共通セット、グローバルに有効な事象の共通サブセット、状態の共通セット、および状態モデルの共通セットを共有するように、デジタルツインオブジェクトのクラスタとして使用オブジェクトを定義することである。
【0048】
ここで、サブシステムのメタモデルのクラスタは、サブシステムのメタモデルの共通言語範囲、セマンティクス、および挙動、ならびにメタデータ、特徴、およびプロパティの共通セットを使用する。
【0049】
図4に示されるように、使用レベルモデリングは、メタレベルにおいて抽象的な事項に記述されているコンベヤおよびセンサーの実際の使用についてより具体的であるという点で、メタレベルモデリングとは異なる。
【0050】
したがって、
図4に示されるように、コンベヤラインの使用モデルは、コンベヤの異なる使用、すなわち、第1から第3までの使用を説明する。同様に、センサーの4つの使用が説明されている。さらに、使用層では、システム全体におけるある状態を示したときの動作を意味する、いわゆる外部状態ベクトルも導入されており、たとえば、センサー使用のものの状態が、信号が分析されることを示すとき、コンベヤ使用のものは、オンに切り替えられたものとして機能する。
【0051】
図4に示されるように、以下でより詳細に説明される本発明による使用レベルモデリングのさらに別の態様は、クラスタのセットアップである。ここで、コンベヤおよびセンサーなどの異なるシステム構成要素の識別された使用は、いわゆる使用クラスタにまとめられ、したがって、異なるメタオブジェクトタイプがそれぞれ関連クラスタに割り当てられる。次いで、使用クラスタ間の情報の交換は、いわゆるメタストリームにおいて行われる。
【0052】
図4に示されるように、各使用クラスタは、外部信号をメタストリームとして送信し、すなわち、使用クラスタコンベヤは、ストリームコンベヤ上で外部信号を送信し、使用クラスタセンサーは、ストリームセンサー上で外部信号を設定する。さらに、各使用クラスタは、それ自体の送信メタストリームとは異なる少なくとも1つのメタストリームからの外部信号をリッスンし、たとえば、使用クラスタコンベヤは、ストリームセンサー上の使用クラスタセンサーの外部信号をリッスンする。場合によっては、使用クラスタ内で、内部信号が交換されることもある。
【0053】
本発明による使用レベルモデリングおよび使用クラスタとそれらの間の関連メタストリームのセットアップは、分散型事象離散システム全体のリアルタイムのプロセス制御中の複雑さを低減するために非常に重要である。これは、any-to-anyルーティングトポロジとは異なり、アドレス指定されるべき構成要素の数は、システムの実際の構成要素の数ではなく、クラスタの数によって与えられるためである。
【0054】
図5は、サブシステムのメタモデルのクラスタのインスタンスとしてサブシステムを説明するためのツイン層でのモデリングの例を示す。
【0055】
ここで、各インスタンスがサブシステムの論理的な挙動をマッピングする。以下で、デジタルツインレベルのインスタンスは、同等にデジタルツインと呼ばれる。
【0056】
したがって、本発明による分散型事象離散システムのモデリングにおける第3のレベルの抽象化は、デジタルツインレベルと呼ばれる抽象化レベルである。ここで、目的は、実世界のデバイス、データ、メッセージ、タスク仕様などをモデリングする実世界のプロセスオブジェクトのデジタルツインオブジェクトを定義することである。
【0057】
ツイン層モデリングの結果は、
図5に例として示されている。ここで、2つのコンベヤラインがセットアップされていると仮定する。
【0058】
図5に示されるように、コンベヤには、3つの使用シナリオがあるが、コンベヤのツイン1からツイン3がコンベヤライン1をセットアップし、コンベヤのツイン4からツイン6がコンベヤライン2をセットアップするように、6つのツインのインスタンス化がある。
【0059】
さらに、センサー使用では、コンベヤライン1および2に対してそれぞれ4つの使用が指定されている。次いで、センサーの使用ごとに、2つのツインt1、t4、さらにt2、t5、さらにツイン3、ツイン7、および最後にツイン4、ツイン8がある。
【0060】
図5からわかるように、ツイン層におけるモデリングの決定時にのみ、分散型事象離散システムの完全なモデルが生成される。
【0061】
図6は、
図3に示されるメタレベルでのモデリングと、
図4に示される使用レベルでのモデリングとの組合せ、および
図5に示されるツイン層でのモデリングとの組合せの結果を示す。
【0062】
図6に示されるように、
図5に示される完全なシステムは、抽象化の3つの層、すなわち、クラスタコンベヤおよびクラスタセンサーなどクラスタのセットアップに使用されるメタモデルオブジェクト表現、次いで、メタモデリングのタイプに従ってメタレベルにおいて特徴付けられるシステム構成要素の使用を分類するための使用レベルモデリング、次いで、その後、ツインレベルの各クラスタの異なる使用シナリオのインスタンス化にわたってモデリングされる。
【0063】
図6に示されるように、以下でより詳細に説明するように、分散型事象離散システム全体のリアルタイムのプロセス制御中に情報を交換するための全体的な負荷を大幅に低減するために、異なるシステムクラスタ間の相互運用が、次いで、異なるクラスタに関連するメタストリームに基づいて実現される。
【0064】
図7は、分散型事象離散システムのモデリングのために本発明に従って使用される状態空間モデルの一般的な概要を示す。
【0065】
一般に、状態モデルによれば、システムは、入力ベクトルx=(x1,…,xk)T∈X、出力ベクトルy=(y1,…,yn)T∈Y、およびy=S(x)に従って、入力ベクトルxから出力ベクトルyにマッピングするシステムオペレータSによって記述される。
【0066】
より具体的には、数学的モデルは、状態変数を使用して、システム状態をモデリングし、これは、状態変数ベクトルz=(z1,…,zm)T∈Zに要約される。
【0067】
入力ベクトルx、状態変数ベクトルz、および出力ベクトルyの構成は、以下の少なくとも2つの関数を使用して表され得る。
【0068】
第1の関数は、状態遷移関数Φ:Z×X→Zであり、システムの動的挙動を説明するために、システム事象の発生時に、初期状態z∈Zおよび入力ベクトルx∈Xの関数として、ターゲット状態z'∈Zへの遷移を決定する。
【0069】
第2の関数は、出力関数Ω:Z×X→Yであり、状態変数ベクトルz∈Zおよび入力ベクトルx∈Xの関数として、出力ベクトルy∈Yを決定する。
【0070】
随意に、いくつかのタイプの事象離散システムでは、状態変数ベクトルz∈Zに関する保持時間を定義する保持時間関数τ:Z→R+である第3の関数が定義されてもよい。
【0071】
さらに、入力ベクトルxの存在およびタイプに関して、空の入力ベクトルxは、自律システム、すなわちデータ生成器に対応することに留意されたい。また、空の入力ベクトルxと空の出力ベクトルyとの組合せは、マルコフ連鎖モデルによって記述され得るシステムに関連する。
【0072】
図7に示されるように、本発明による特徴は、状態モデルにおける状態の表現のタイプである。本発明によれば、
図3で上に例示されたように、メタレベル、ターゲットレベル、および実際のレベルに従って、状態表現のための異なるタイプの抽象化を有することが提案される。
【0073】
本発明による状態表現のためのこれらの異なるタイプの抽象化は、分散型事象離散システムのプロセス制御の処理における複雑さの大幅な削減を可能にする。この理由は、たとえば、制御挙動を指定するために使用されるサブシステムのターゲットは、リアルタイムドメインにある可能性があり、したがって、値の数が無限である可能性があるからである。それにもかかわらず、そのような実際の範囲の方法の、たとえば、低速、中速、高速のメタレベルタイプへの抽象化では、次いで、上記のように、たとえば、コンベヤラインの処理の複雑さの軽減につながる。
【0074】
図8は、
図7に示される状態空間モデルのさらに詳細な表現を示す。
【0075】
図8に示されるように、状態遷移関数Φは、それぞれシステム外部事象による状態遷移を記述するために、少なくとも外部状態遷移Φexに分解され得る。
【0076】
より具体的には、
図8に示されるように、本発明によれば、第1のサブシステムにおける状態遷移が、第1のサブシステムと同一でないさらなるサブシステムの状態によって影響を受ける状態が考慮される。
【0077】
図8に示されるように、特定のサブシステムの状態モデル、ならびに、たとえばSS 1、st 1,…,SS n、st nなどに外部サブシステムおよび関連する状態の識別を要約する、外部状態ベクトルによってトリガされる関連遷移ΦEXが考慮される場合がある。これらのサブシステムの各々が指定された状態にあると仮定すると、本発明によれば、外部状態ベクトルと一致するサブシステム内の外部状態遷移が考慮される。
【0078】
外部状態ベクトルの概念は、特定のサブシステム内の状態遷移のトリガを意味し、分散型事象離散システムのサブシステム間の相互作用に関するシステムモデリングのプロセスにおいて並列化をサポートする。外部状態ベクトルは、特定のサブシステムでの状態遷移を保証する条件のレベルで粒度を増減するように柔軟にセットアップされ得る。
【0079】
図9は、
図7に示される状態空間モデルのさらに詳細な表現を示す。
【0080】
図9に示されるように、状態遷移関数Φは、さらに、システム内部事象による状態遷移を記述するために、少なくとも内部状態遷移Φinに分解され得る。
【0081】
図9に示されるように、内部状態遷移も、システム内の少なくとも1つの状態の状態表現を考慮することによってトリガされる。状態遷移をトリガする状態表現が主流であると仮定すると、サブシステムの状態空間モデル表現全体が更新され得る。特定のサブシステム内の内部状態の変化は、リモートサブシステムへの外部事象を構成し、
図4に関して上記で説明したようにリモートサブシステムにおける状態遷移をトリガする場合があることに留意されたい。
【0082】
上記に鑑みて、以下では、本発明の基礎となる原理を理解するための基礎として、一般に分散型事象離散システムのモデリングについて説明する。
【0083】
より具体的には、分散型事象離散システムの状態モデルは、7タプルΣ=<X,Z,Y,Φin,Φex,Ω,τによって定義され、式中、
Xは、入力ベクトルx∈Xの有限集合、
Zは、状態変数ベクトルz∈Zの有限集合、
Yは、出力ベクトルy∈Yの有限集合、
Φin:Z→Zは、内部事象の状態遷移関数、
Φex:Z×X→Zは、外部事象の状態遷移関数、
Ω:Z×X→Yは、出力関数、
τ:Z→R+は、保持時間関数である。
【0084】
本発明によれば、分散型事象離散システムへの入力ベクトルx∈Xは、外部事象と呼ばれる。外部事象が発生すると、システム状態z∈Zは、
Z'(t)=Φex(x(t),z0(t))
に従って、z'∈Zに変化する場合がある。
【0085】
ここで、z0(t)∈Zは、分散型事象離散システムの初期状態、または略して初期状態であり、z'(t)は、分散型事象離散システムのターゲット状態、または略してターゲット状態である。
【0086】
さらに、
図9に関して上記で概説したように、時間の経過とともに発生する可能性のある内部事象により、入力のない状態遷移が生成される。分散型事象離散システムは、保持時間τ(z)にわたって状態zのままである。保持時間τ(z)が満了すると、
Z'(t+τ(z))=Φin(z(t))
に従って内部状態遷移関数によって決定される新しい状態が生成される。
【0087】
さらに、状態遷移が発生すると、以下に従って出力ベクトルも更新される。
y(t)=Ω(z(t),x(t))
式中、z(t)は、この場合も初期状態である。入力がない、すなわち主流である外部事象がないとき、x(t)は、ゼロベクトルであり得ることに留意されたい。
【0088】
上述のように、保持時間関数τは、すべての部分状態zi∈z=(z1,…,zm)Tの持続時間を決定する。部分状態の任意の変化は、状態変数ベクトルz∈Zの変化を意味する。
【0089】
tiが部分状態ziの開始時間であり、τ1,…,τmが開始時間tiで決定された部分状態z1,…,zmの保持時間であると仮定すると、時間tiにおける部分状態ziの保持時間関数は、
τ(zi)=min{τ1,…,τm}
に従って決定され得る。
【0090】
一般に、本発明によれば、状態遷移が確率的状態モデルを使用して計算され得るように、分散型事象離散システムの事象はランダムな時点で発生すると仮定される。次いで、分散型事象離散システムの特殊な場合は、サンプル時間tAを有する決定論的な時間離散状態モデルである可能性があり、ここで、i∈(1,…,m)の場合τ(zi)=tA、およびすべてのi,j∈(1,…,m)に対して、i≠jの場合、ti=tjである。
【0091】
上記の説明に基づいて、以下では、本発明による分散型事象離散システムのメタモデルを導出する原理について説明する。
【0092】
図3に関して上記で例示したように、メタモデリングレベルでは、分散型事象離散システムの特定のタイプのサブシステムをモデリングするよう働く以下でメタオブジェクトタイプと呼ばれる特定のタイプのメタモデルがある。
【0093】
より具体的には、本発明によれば、メタオブジェクトタイプは、状態表現および関連するセマンティクスのメタモデルを指定する。メタオブジェクトタイプは、変換関数、すなわち言語範囲、および少なくとも1つの対応する状態空間モデルを参照してモデリングされるサブシステムの論理挙動も指定する。
【0094】
以下では、一般化を失うことなく、特定の、しかしまだ修正されていないメタオブジェクトタイプ●を有するメタオブジェクトMOを持つサブシステムSSをモデリングすると仮定される。
【0095】
したがって、●は、メタオブジェクトタイプのプレースホルダーとして、すなわちメタモデルタイプテンプレートの特性として理解される。
【0096】
汎用メタオブジェクトタイプのその具体的な使用へのインスタンス化は、次いで、プレースホルダー●のパラメータ化を介して達成され、異なる使用シナリオが複数のパラメータ化によって処理される。
【0097】
本発明によれば、メタオブジェクトタイプMO●のメタモデルの第1の要素は、メタオブジェクトタイプMO●の記述的特徴のセットD●={d1●,…,do●}を表す表現オブジェクトMO●Rである。
【0098】
さらに、本発明によれば、メタモデルでは、少なくとも1つのメタオブジェクトタイプMO●は、メタオブジェクトタイプMO●におけるパースペクティブのセットP●={p1●,…,pv●}として記述されるメタオブジェクトタイプMO●における異なる透視図下で知覚され得る。
【0099】
本発明によれば、第2の要素は、分散型事象離散システムのサブシステムをモデリングするための少なくとも1つのメタオブジェクトタイプMO●であり、少なくとも1つのメタオブジェクトタイプMO●は、サブシステムに関連して少なくとも1つの状態モデルΣi● i=1,…,sを参照する。
【0100】
より具体的には、本発明によれば、各メタオブジェクトタイプMO●について、メタモデルは、メタモデルタイプMO●の状態モデル全体がΣ●=UiΣi●であるように、Σi●=<Xi●,Zi●,Yi●,Φini●,Φexi●,Ωi●,τi●>による事象離散システムを表す少なくとも1つの状態モデルΣi● i=1,…,sを指定する。
【0101】
メタオブジェクトタイプMO●による複数の状態モデルΣi●の参照の理由は、1つの同じメタオブジェクトタイプMO●が、各々がメタオブジェクトタイプMO●およびモデリングされるべき基礎となるサブシステムにおいて透視図を形成する異なる基準下で知覚され得ることである。このことから、メタオブジェクトタイプMO●によって使用される透視図ごとに1つの状態モデルΣi●を有することは意味がある。以下では、メタオブジェクトタイプMO●におけるパースペクティブのセットは、P●={p1●,…,pv●}として記述される。
【0102】
さらに、各態モデルΣi●ごとに、状態変数ベクトルzi●=(zi●1,…,zi●z)T∈Zi●が存在する。本発明によれば、zi●内の各第kの状態、すなわち、各状態モデルΣi●内の状態zi●kは、メタデータ、ターゲット値の離散値または連続値、および実際の値の離散または連続値のような、異なるレベルのデータ抽象化を使用して記述され得る。
【0103】
したがって、本発明によれば、各状態zi●kは、以下に従って記述される部分状態のセットzi●k,pであるメタモデルを有する。
少なくとも1つの状態モデルΣi● i=1,…,s内の少なくとも1つの状態zi●kは、
メタ記述ドメインにおける状態を特徴付けるメタ特徴のセットMFi●k,1={fc1,…,fcc}i●k,1、
検討される状態のターゲットを特徴付ける値の離散的または連続的な範囲を有するターゲット特徴のセットTFi●k,2={ft1,…,ftt}i●k,2、および
検討される状態の実際のコンステレーションを表す値の離散的または連続的な範囲を有する実際の特徴のセットAFi●k,3={fa1,…,faa}i●k,3
に従って、異なるレベルのデータ抽象化を使用する部分状態のセットzi●k,pであるメタモデルを有する。
【0104】
本発明によるメタ記述ドメインにおける状態を特徴付ける使用メタ特徴は、従来の状態空間表現と比較して抽象化を達成することに留意されたい。本発明による抽象化は、メタ状態空間表現を可能にする。ここで、各メタ状態空間表現は、無限数の状態空間表現を単一のメタ状態空間表現に要約し、したがって、モデリングの複雑さを大幅に減らすことができる。
【0105】
さらに、メタモデルでは、メタオブジェクトタイプMO●の第iの状態モデルΣi●における、第1の状態zi●aから第2の状態zi●tへの状態遷移は、機能モデルΦi●at:Zi●×Xi●→Zi●によって記述されるプロセスを介して実現される。したがって、任意の状態遷移は、1つの状態モデルΣi●に正確に割り当てられ、zi●aからzi●tへのまさしく1つの状態遷移がある。
【0106】
ここで、本発明によれば、機能モデルは、メタ特徴、ターゲット特徴、および/または実際の特徴に従ってデータフローモデルを表す。データフローモデルは、メタデータ上で動作する制御フロー、ならびにターゲット特徴および/または実際の特徴を反映するデータ上で動作するデータフローを記述する。
【0107】
機能モデルΦi●atは一般に、それぞれΦex,i●atおよびΦin,i●atに従って特定のメタオブジェクトタイプMO●に関連する外部事象および/または内部事象による状態遷移に適用されることに留意されたい。
【0108】
ここで、機能モデルΦex,i●atは、特定のメタオブジェクトタイプMO●に関連する少なくとも1つの外部事象によってトリガされる状態遷移のメタモデルを表す。さらに、異なるレベルのデータ抽象化に従って、すなわち、メタ特徴、ターゲット特徴、および/または実際の特徴に関して、データフローモデルを記述する。
【0109】
本発明によれば、最も一般的な意味で、データフローモデルは、メタデータ上で動作する制御フロー、およびターゲットまたは実際の特徴を反映するデータ上で動作するデータフローを記述する。データフローをデータフローモデルに組み込むことによって、状態遷移の条件を指定することができる。
【0110】
さらに、本発明によれば、機能モデルΦex,i●atへの第1の入力は、外部状態の少なくとも1つのベクトル、すなわち、外部状態ベクトルΘex,i●at,l=((MOj,j≠●,zj),…,(MOk,k≠●,zk))lTであり、式中、lは、第lの外部状態ベクトルのインデックスであり、各外部状態ベクトルは、それぞれ、メタオブジェクトタイプMO●および外部サブシステムが主流であることを示した対応する状態を使用してモデリングされるサブシステムの外部のサブシステムのタプルを要約する。
【0111】
したがって、メタモデルタイプMO●を使用してモデリングされ、検討中のサブシステムタイプの外部にあるサブシステムのあるセットがそれぞれ特定の状態にあるとき、これは、検討中のサブシステムのモデリングに使用されるメタオブジェクトタイプMO●の状態モデルΣi●の1つにおいてzi●aからzi●tへの状態遷移をトリガし得る。関連する状態モデルΣi●および状態遷移のタイプの識別について、以下で詳しく説明する。
【0112】
さらに、複数の外部状態ベクトルΘex,i●at,l,l>1を検討する理由は、異なるサブシステムがそれぞれ異なる状態で主流である場合でも、これは、検討中のメタオブジェクトタイプMO●のサブシステム状態モデルΣi●においてzi●aからzi●tに同じ状態遷移をトリガする可能性がある。
【0113】
さらに、Πex,i●a=Ul Θex,i●at,lを、メタオブジェクトタイプMO●の状態モデルΣi●における初期状態zi●aに関する状態遷移をトリガする可能性があるすべての外部状態ベクトルのセットとする。
【0114】
さらに、本発明によれば、機能モデルへの第2の入力は、外部事象によるメタオブジェクトタイプMO●の状態モデルΣi●における初期状態zi●aに関して状態遷移をトリガする前に満たされなければならない条件のセットを要約するベクトルΔex,i●aとして表される。通常、そのような条件は、ターゲット特徴および実際の特徴を反映する基礎データに対して指定される。
【0115】
さらに、本発明によるメタオブジェクトタイプMO●のメタモデリングで結論付けるために、コンテキストのセットC={con_ID1,…,con_IDk}が導入される。
【0116】
ここで、すべてのコンテキストは、メタオブジェクトタイプMO●のデジタルインスタンス化を表す2つのツインオブジェクト間の潜在的な関係、または言い換えると、以下でより詳細に説明するように、ツインレベルでの分散型事象離散システムの構成要素のインスタンス間の潜在的な関係をモデリングする。
【0117】
一般に、コンテキストは、機能モデルに関連して定義され、機能モデルを参照するすべてのメタオブジェクトタイプMO●に有効である。また、コンテキストは、明確にパースペクティブに割り当てられる。
【0118】
上記に鑑みて、本発明によれば、機能モデルΦex,i●atは、
Φex,i●at:zi●a∈Zi●x
Πex,i●a×Δex,i●a×con_IDa x
MFi●a,1×TFi●a,2×AFi●a,3→
zi●t∈Zi●×con_IDt x
MFi●t,1×TFi●t,2×AFi●t,3
に従ってメタモデルデータフローとしてモデリングされ得る。
【0119】
さらに、本発明によれば、類似の機能モデルΦin,i●atは、
Φin,i●at:zi●a∈Zi●x
Πin,i●a×Δin,i●a×con_IDa x
MFi●a,1×TFi●a,2×AFi●a,3→
zi●t∈Zi●×con_IDt x
MFi●t,1×TFi●t,2×AFi●t,3
に従って、メタオブジェクトタイプMO●およびその状態モデルΣi●における内部状態遷移に関するメタモデルデータフローとしてモデリングされ得る。
【0120】
上記の機能モデルでは、表現要素は、次のように識別され得る。
zi●a∈Zi●は、メタオブジェクトタイプMO●の少なくとも1つの状態モデルΣi●i=1,…,s)のすべての状態のセットZi●から選択されたソース状態であり、
zi●t∈Zi●は、メタオブジェクトタイプMO●の少なくとも1つの状態モデルΣi●i=1,…,sのすべての状態のセットZi●から選択されたターゲット状態であり、
Πex,ini●aは、ソース状態zi●aからターゲット状態zi●tへの状態遷移をトリガする外部または内部状態ベクトルのセットであり、
Δex,ini●aは、ソース状態zi●aからターゲット状態zi●tへの状態遷移をトリガする条件のベクトルであり、
con_IDaは、ソース状態zi●aからターゲット状態zi●tへの状態遷移の前に、メタオブジェクトタイプMO●によってモデリングされるサブシステムについて主流であるコンテキストのコンテキスト識別であり、
con_IDtは、ソース状態zi●aからターゲット状態zi●tへの状態遷移の後に、メタオブジェクトタイプMO●によってモデリングされるサブシステムについて主流であるコンテキストのコンテキスト識別であり、
MFi●a,1×TFi●a,2×AFi●a,3は、ターゲット状態zi●tへの状態遷移前のソース状態zi●aでのメタ特徴、ターゲット特徴、および実際の特徴の値の表現であり、
MFi●t,1×TFi●t,2×AFi●t,3は、ターゲット状態zi●tへの状態遷移後のターゲット状態zi●tでのメタ特徴、ターゲット特徴、および実際の特徴の値の表現である。
【0121】
結論として、本発明によれば、特定の変換がどのように実現されるかに関係なく、2つのレベルの抽象化上、すなわち、メタデータ上で動作する制御フロー、メタデータレベル、ターゲット条件、および、たとえば、センサーによってキャプチャされる、実際の条件の間のリンクを実現するデータフロー上で動作する。したがって、メタデータ上で動作する制御フローを導入すると、非常に効率的な計算方法で無限の数の状態を処理することができる。
【0122】
さらに、状態遷移は、少なくとも1つの外部事象と少なくとも1つの内部事象の組合せによってもトリガされ得ることに留意されたい。
【0123】
以下では、分散型事象離散システムのコンピュータ実装メタモデリングの異なる態様、および分散型事象離散システムのリアルタイムのプロセス制御のためのコンピュータ実装メタモデルの関連する使用について説明する。
【0124】
図10は、本発明による、分散型事象離散システムをモデリングし、分散型事象離散システムのリアルタイムのプロセス制御を実行するように適合されたシステムの概要を示す。
【0125】
図10に示されるように、本発明によるシステム10は、モデリングエンジン12、サービスエンジン14、および仮想ツインエンジン16を含む。仮想ツインエンジン16は、実世界のプロセスオブジェクトに対する仮想対応物を形成する。
【0126】
ここで、プロセスオブジェクトは、たとえば、分散型事象離散システムの動作中に制御されるべきフィールドデバイスである。それにもかかわらず、本発明によれば、分散型事象離散システム内で達成されるタスクにも関連し、たとえば、異なるタイプの情報などをモデリングし得るプロセスオブジェクトのタイプへのいかなる制限も課されない。
【0127】
動作上、モデリングエンジン12は、上記で概説したように、分散型事象離散システムのメタレベルモデルを駆動する。分散型事象離散システムのそのようなメタレベルモデルが利用可能になると、モデリングエンジン12は、サービスエンジン14にサービス要求を発行する。
【0128】
さらに動作上、サービス14は、上記で概説したように使用レベルでの分散型事象離散システムのモデリングを達成し、分散型事象離散システムの使用レベルモデリングの結果を反映する実行可能なソフトウェアスケルトンをさらに修復する。
【0129】
図10にも示されるように、モデリングエンジン12およびサービスエンジン14は、仮想ツインエンジン16へのインターフェースを有する。
【0130】
動作上、サービスエンジン14は、上記で説明したように、異なるタイプの構成要素クラスタに関連して実行可能なソフトウェアスケルトンを仮想ツインエンジン16に転送して、そこにプレインストールする。また、サービスエンジン14は、分散型事象離散システムの使用レベルモデリング中に導出されたルーティングトポロジを仮想ツインエンジン16に転送して、上述のように仮想ツインエンジン16内で関連する通信プロセスを確立する。
【0131】
図10に示されるように、動作上、モデリングエンジン12は、モデリングの構成要素を仮想ツインエンジン16にリアルタイムかつ動的に注入してもよい。これは、以下でより詳細に説明されるように、モデリングおよびプロセス制御方法の柔軟性を高めるために、分散型事象離散システムの全体的なモデルをリアルタイムで変更するのに役立つ。
【0132】
図11は、本発明による、分散型事象離散システムをモデリングし、分散型事象離散システムのリアルタイムのプロセス制御を実行するように適合されたシステムの動作の基本的なフローチャートを示す。
【0133】
図11に示されるように、最初に、モデリングエンジン12によって実行されるステップS10において、
図12に関して以下で説明される事前構成された静的データモデルに沿って少なくとも1つのメタオブジェクトタイプが生成される。
【0134】
次いで、サービスエンジン14によって実行されるステップS12において、分散型事象離散システムのサブシステムが、メタオブジェクトタイプに従ってクラスタ化される。また、サービスエンジン14は、クラスタオブジェクトごとにステップS16を実行して、メタオブジェクトタイプの使用に関連してサブクラスタを生成する。また、サービスエンジン14は、異なるクラスタ間のルーティングトポロジの仕様を達成する。
【0135】
図11に示されるように、次いで、仮想ツインエンジンによって実行されるステップS16に続いて、生成されたモデルをリアルタイムで実行する。ここで、仮想ツインエンジン16は、メタオブジェクトタイプ使用ごとに少なくとも1つのツインオブジェクトを割り振り、また、以下でより詳細に説明するように、データ表現に関して異なるレベルの抽象化を使用する。
【0136】
図12は、
図10に示される本発明によるモデリングエンジンによって使用されるコンピュータ実装メタモデルの概略図を示す。
【0137】
図12に示されるように、本発明によるコンピュータ実装メタモデルは、静的メタモデルと動的メタモデルに分割する。ここで、静的メタモデルは、それぞれ分散型事象離散システムのリアルタイム対応モデルを構築するためのリポジトリである複数のエンティティを含む。
【0138】
一方、コンピュータ実装メタモデルの動的メタモデル部分は、異なるエンティティによって提供されたモデリングオプションを分散型事象離散システムのサブシステムの実際のメタモデルに転送するために、静的メタモデルのエンティティを少なくとも部分的に参照する。
【0139】
図12に示されるように、分散型事象離散システムの少なくとも1つのサブシステムをモデリングするためのコンピュータ実装メタモデル18の静的メタモデルは、分散型事象離散システムのサブシステムのモデリングに使用されるメタオブジェクトタイプMO●を記述する少なくとも1つのメタオブジェクトエンティティ20を含む。
【0140】
図12に示されるように、少なくとも1つのメタオブジェクトエンティティ20は、サブシステムに関して、i≧1である場合、少なくとも1つの状態モデルΣi●を指定する状態空間モデルエンティティ22を参照する。状態空間モデルエンティティ22では、少なくとも1つの状態モデルΣi●における少なくとも1つの状態zi●kは、
メタ記述ドメインにおける状態を特徴付けるメタ特徴のセットMFi●k,1={fc1,…,fcc}i●k,1、
検討される状態のターゲットを特徴付ける値の離散的または連続的な範囲を有するターゲット特徴のセットTFi●k,2={ft1,…,ftt}i●k,2、および
検討される状態の実際のコンステレーションを表す値の離散的または連続的な範囲を有する実際の特徴のセットAFi●k,3={fa1,…,faa}i●k,3
に従って、異なるレベルのデータ抽象化を使用する部分状態のセットzi●k,pであるメタモデルによって表される。
【0141】
さらに、少なくとも1つのメタオブジェクトエンティティ20は、メタオブジェクトタイプ(MO●)の記述的特徴のセットD●={d1●,…,do●}を表す少なくとも1つの表現オブジェクトMO●Rを指定する表現エンティティを参照する。
【0142】
さらに、少なくとも1つのメタオブジェクトタイプMO●は、少なくとも1つのメタオブジェクトタイプ(MO●)におけるパースペクティブのセットP●={p1●,…,pv●}として記述されるメタオブジェクトタイプMO●における異なる透視図下で知覚され得る。
【0143】
図12に示されるように、コンピュータ実装メタモデルの静的メタモデルは、メタ特徴、ターゲット特徴、および/または実際の特徴に従ってデータフローモデルを表す機能モデルΦi●at:Zi●×Xi●→Zi●による少なくとも1つの状態モデルΣi●におけるソース状態zi●aからターゲット状態zi●tへの状態遷移を表す機能エンティティ24を含む。
【0144】
本発明によれば、機能エンティティ24は、データフローモデルを、メタデータ上で動作する制御フロー、およびターゲット特徴および/または実際の特徴を反映するデータ上で動作するデータフローとして表す。好ましくは、機能エンティティ24は、上で説明したように、機能モデルをメタデータフローΦex,i●atまたはΦin,i●atとして表し、以下で両方がΦ(ex,in),i●atに要約される。
【0145】
図12に示されるように、コンピュータ実装メタモデルの静的メタモデルは、機能モデルΦ(ex,in)i●atへの第1の入力を、サブシステムの識別および識別されたサブシステムが主流である状態の少なくとも1つのタプルを要約する少なくとも1つの状態ベクトルΘ(ex,in),i●at,lとして表す入力ベクトルエンティティ26を含む。
【0146】
さらに、入力ベクトルエンティティ26は、機能モデルΦ(ex,in),i●atへの第2の入力を、ソース状態zi●aからターゲット状態zi●tへの状態遷移の前に満たす必要がある少なくとも1つの条件Δ(ex,in),i●atを要約するベクトルとして表す。
【0147】
さらに、入力ベクトルエンティティ26は、少なくとも1つの条件を、少なくとも1つのターゲット特徴および/または少なくとも1つの実際の特徴を反映するデータとして表す。
【0148】
図12に示されるように、コンピュータ実装メタモデルの静的メタモデルは、上記に概説した意味で、メタオブジェクトタイプMO●のデジタルインスタンス化をコンテキストのセットC={con_ID1,…,con_IDk}として表す2つのツインオブジェクト間の少なくとも1つの潜在的な関係を表すコンテキストエンティティ28を含む。
【0149】
上記に加えて、本発明によるコンピュータ実装メタモデル18は、静的メタモデルのそばに、静的メタモデルのエンティティから利用可能なモデリングオプションを使用して分散型事象離散システムのサブシステムの特定のメタモデルを見つけ出す動的メタモデル部分を含む。
【0150】
図12に示されるように、分散型事象離散システムの少なくとも1つのサブシステムをモデリングするためのコンピュータ実装メタモデル18の動的メタモデルは、分散型事象離散システムの少なくとも1つのサブシステムのモデリングのためのメタオブジェクトタイプMO●を選択するように適合されたメタオブジェクトタイプ使用モジュール30を含む。上記で概説したように、メタオブジェクトタイプMO●は、分散型事象離散システムの少なくとも1つのサブシステムのモデリングのために、少なくとも1つの状態モデルΣi●i∈{1,…,s}を参照する。
【0151】
図12に示されるように、コンピュータ実装メタモデル18の動的メタモデルは、選択されたメタオブジェクトタイプMO●によって参照される少なくとも1つの状態モデルΣi●i∈{1,…,s}をモデリングするように適合された状態空間モデル使用モジュール32を含む。
【0152】
図12に示されるように、少なくとも1つの状態モデルΣi●i∈{1,…,s}のモデリングは、一般に状態空間モデルエンティティ22が提供するモデリングオプションを参照することによって実現され、これは次いで、状態空間モデル使用モジュール32によってメタレベルにおけるモデル使用に転送される。
【0153】
また、状態空間モデル使用モジュール32は、選択された少なくとも1つの状態モデルΣi●i=1,…,sにおける少なくとも1つの状態を、上記で概説したように、異なるレベルのデータ抽象化を使用する部分状態のセットzi●k,pであるメタモデルで記述するように適合される。上記で概説したように、異なる状態モデルは、異なる関連するパースペクティブを有し得る。
【0154】
図12に示されるように、コンピュータ実装メタモデル18の動的メタモデルは、モデリングされた少なくとも1つのサブシステムの記述的特徴のセットD●={d1●,…,do●}を表す表現オブジェクトMO●Rをモデリングするように適合された表現使用モジュールを含む。ここでも、表現使用モデルは、静的メタモデルの表現エンティティを参照して、特定のモデリングタスクに関して表現エンティティで一般的に記述されている記述的特徴の少なくとも1つをインスタンス化する。
【0155】
図12に示されるように、コンピュータ実装メタモデル18の動的メタモデルは、上記のように、メタ特徴、ターゲット特徴、および/または実際の特徴に従ってデータフローモデルを表す機能モデルによって、ソース状態zi●aからターゲット状態zi●tへの少なくとも1つの状態モデルΣi●における状態遷移をモデリングするように適合された機能使用モジュール34を含む。
【0156】
図12に示されるように、機能モデルのモデリングは、機能をモデリングするための一般的なオプションを提供する静的メタモデルの機能エンティティ24を参照することによって達成される。次いで、一般的なオプションは、上記で説明したように、機能モデルΦex,i●atおよび/または機能モデルΦin,i●atを実現するために、適用可能な関数変換の指示および適用可能な引数の指示を介して、より具体的な機能モデルに転送される。
【0157】
また、メタオブジェクトタイプのデジタルインスタンス化を表す少なくとも2つのツインオブジェクト間の少なくとも潜在的な関係は、上記で説明したように、少なくとも1つのコンテキストによってモデリングされ得る。
【0158】
図12に示されるように、コンピュータ実装メタモデル18の動的メタモデルは、上記で概説したように、機能モデルへの第1の入力を、外部状態ベクトルまたは内部状態ベクトルとしてモデリングするように適合された入力ベクトル使用モジュール36を含む。これまで、入力ベクトルテンプレートおよび関連パラメータを提供するコンピュータ実装メタモデルの静的データモデルの入力ベクトルエンティティ26への参照が行われる。同様の手法は、少なくとも1つの状態遷移の条件を指定する第2のベクトルのモデリングに適用される。
【0159】
図12に示されるように、本発明によるコンピュータ実装メタモデル18の動的メタモデル部分は、ツイン/ツイン使用モジュール38も含む。
【0160】
そのようなツイン使用モジュール38の提供は、それ自体が分散型事象離散システムの一部であることが知られている分散型事象離散システムの構成要素のモデリングをすでに準備しておくのに役立つ。
【0161】
したがって、関連するツインオブジェクトは、以下で説明する分散型事象離散システムのツインレベルモデリング中にリアルタイムで割り振られるデジタルツインオブジェクトとは異なり、事前に知られているものとして、または静的として分類され得る。
【0162】
図13は、
図10に示される本発明によるモデリングエンジンの動作のフローチャートを示す。
【0163】
一般に、本発明によるモデリングエンジン12は、
図12に関して上記で説明したコンピュータ実装メタモデルを実行する。
【0164】
図13に示されるように、モデリングエンジン12は、分散型事象離散システムのモデリングのためのメタオブジェクトタイプMO●を選択するために、メタオブジェクトタイプ使用モジュール30を実行することによって、ステップS18を実行する。メタオブジェクトタイプMO●は、分散型事象離散システムの少なくとも1つのサブシステムのモデリングのために、少なくとも1つの状態モデルΣi●i∈{1,…,s}を参照する。
【0165】
図13に示されるように、モデリングエンジン12は、少なくとも1つのサブシステムのモデリング中に実際に使用するために、メタオブジェクトタイプMO●によって参照される少なくとも1つの状態モデルΣi●i∈{1,…,s}を選択するために、状態空間モデル使用モジュール32を実行することによって、ステップS20を実行する。ステップS20において、選択された少なくとも1つの状態モデルΣi●i∈{1,…,s}における少なくとも1つの状態zi●kは、上記で概説されたように、メタモデルで記述される。
【0166】
図13に示されるように、モデリングエンジン12は、表現オブジェクトMO●Rをモデリングし、少なくとも1つの透視図を選択するために、関連する使用モジュールを実行することによって、ステップS22を実行し、ステップS22はオプションである。
【0167】
図13に示されるように、モデリングエンジン12は、上記で説明したようにメタ特徴、ターゲット特徴、および/または実際の特徴に従ってデータフローモデルを表す機能モデルによって、ソース状態zi●aからターゲット状態zi●tへの少なくとも1つの状態モデルΣi●における状態遷移をモデリングするために、機能使用モジュール32を実行することによって、ステップS24を実行する。ここで、データフローモデルは、メタデータ上で動作する制御フロー、およびターゲットまたは実際の特徴を反映するデータ上で動作するデータフローを記述する。
【0168】
図13に示されるように、モデリングエンジン12は、上記で概説したように外部状態ベクトルおよび/または内部状態ベクトルを表す機能モデルへの入力ベクトルをモデリングするために、入力ベクトル使用モジュール36を実行することによって、ステップS26を実行する。
【0169】
図13に示されるように、モデリングエンジン12は、状態遷移の条件をモデリングするために、入力ベクトル使用モジュール36を実行することによって、ステップS28を実行し、ステップS28はオプションである。
【0170】
図14は、特定のサブシステムクラスタに割り当てられたすべてのサブシステムが同じメタオブジェクトタイプでモデリングされるように、分割がサブシステムクラスタのセットとして定義される、本発明による分散型事象離散システムの分割を示す。
【0171】
上記で概説したように、本発明によれば、分散型事象離散システムのモデリングにおける異なるレベルの抽象化、すなわち、メタレベル、使用レベル、およびツインレベルは、分散型事象離散システムをデジタルツインで構成されるサブシステム自体に分割することを意味する。
【0172】
分散型事象離散システム、関連サブシステム、およびサブシステム間のストリームの概念を仮定すると、分散型事象離散システムのモデリングで解決すべきトピックは、分散型事象離散システムの構造全体を、次いで、上述したように関連メタオブジェクトタイプMO●を使用してモデリングされ得る少なくとも1つのサブシステムにどのように分割するかである。
【0173】
これまで、最初に、使用可能なメタオブジェクトタイプMO●のどれが、分散型事象離散システムの特定のケースの分割に実際に関連しているかを判定する必要がある。
【0174】
図14に示されるように、本発明によれば、メタオブジェクトタイプMO●によるメタオブジェクトタイプベースの分割は、各サブシステムクラスタMOi∈MOCが、同じメタモデルタイプMO●でモデリングされる少なくとも1つのサブシステムを含むようなサブシステムクラスタMOC={MO1,…,MOp}の定義を意味する。
【0175】
より具体的には、MOT={type1,…,typet}を分散型事象離散システムのモデリングに使用できるすべてのメタオブジェクトタイプMO●のセットとし、マッピングMOT(MOi):MOi→MOi∈MOTのタイプは、サブシステム識別MOiをその関連するメタモデルタイプMO●にマッピングする関数とする。
【0176】
次いで、分散型事象離散システムのメタオブジェクトタイプベースの分割P(x)=G[SS,STR](x)は、サブシステムクラスタの異なるサブシステムが同じメタモデルタイプMO●、すなわち、すべてのMOi, MOj∈MOCkに対して、i≠jの場合、MOT(MOi)=MOT(MOj)=MO●であることを意味する。
【0177】
さらに、分散型事象離散システムP(x)の分割は、P(x)=G[SS,STR](x)に従って有向グラフとして表され得る。より具体的には、SS={SS1,…,SSp}は、メタオブジェクトタイプ{MO1,…,MOp}によるサブシステムクラスタのセットであり、STR={STR1,…,STRq}は、分散型事象離散システムのサブシステム間のストリームのセットである。ここで、サブシステムクラスタは、サブシステムメタモデルの共通言語範囲、セマンティクス、および挙動、ならびにメタデータ、機能、および特性の共通セットを有する。
【0178】
さらに、本発明によれば、あるメタオブジェクトタイプMO●を反映する各サブシステムクラスタ内に、メタオブジェクトタイプMO●によってモデリングされるサブシステムの異なる使用によるサブシステムのサブクラスタが導入される。
【0179】
さらに、メタモデルタイプiを有する各サブシステムクラスタに関して、使用シナリオがサブシステム使用クラスタMOUCi={MOUC1,…,MOUCu}iとしてモデリングされる、基礎となるメタモデルタイプiの異なる使用シナリオについて説明される。
【0180】
メタオブジェクトタイプベースの分割およびクラスタ化の結果として、分散型事象離散システムのサブシステムは、関連するメタオブジェクトタイプMO●に従ってクラスタ化される。
【0181】
各サブシステムクラスタ内には、随意に、同じメタオブジェクトタイプMO●を有するが、メタモデルタイプMO●の異なる使用を有する異なるサブシステム使用クラスタが記述されている。
【0182】
分散型事象離散システムの分割が利用可能になると、使用レベルのモデリングのレベルで解決すべきさらなるポイントは、サブシステムクラスタMOCi∈MOC間でストリーミングメッセージを交換するためのルーティングトポロジのセットアップである。
【0183】
図14に示されるように、ルーティングトポロジは、すべてのサブシステムクラスタMOCi∈MOCに対して定義される。より具体的には、サブシステムクラスタMOCiごとに、サブシステムクラスタMOCiがストリーミングメッセージをそこから受信する、少なくとも1つのサブシステムクラスタのセットMOC_rec_iが定義される。また、サブシステムクラスタMOCiごとに、サブシステムクラスタMOCiがストリーミングメッセージをそこに送信する少なくとも1つのサブシステムクラスタのセットMOC_send_iが定義される。
【0184】
次いで、分散型事象離散システムのサブシステムクラスタ間のルーティングトポロジのセットアップに従って、メタレベルモデリングから使用レベルモデリングへの遷移を進める。
【0185】
さらに、使用レベルモデリングプロセスの最終ステップは、使用レベルモデリングの結果を実行可能なソフトウェアスケルトンに転送することに関連する。実行可能なソフトウェアスケルトンは、分散型事象離散システムをリアルタイムで制御するためのデジタルツインエンジンを実行するのに役立つ。
【0186】
結論として、メタオブジェクトタイプベースの分割によって、モデリング手法と比較して、異なるサブシステムクラスタ間でストリーミングされるデータの量が大幅に減少し、構成表現は、メタドメインおよび使用レベルドメインへのモデリングの抽象化なしに、デジタルツインオブジェクトのレベルで達成される。
【0187】
この理由は、異なるサブシステムクラスタ間のストリーミングにおいてメタストリーミングとして実現されるためである。ここで、サブシステムクラスタごとに、関連するデジタルツインオブジェクト、すなわち、メタモデルタイプの使用によるサブクラスタ化は、特定のメタオブジェクトタイプMO●でモデリングされたサブシステムクラスタに割り当てられた共通ストリーミングチャネル上のサブシステムクラスタの内部事象に関連してデータをブロードキャストする。
【0188】
場合によっては、他の各サブシステムクラスタは、他のメタモデルタイプに割り当てられたメタストリーミングチャネルにおけるあるメタオブジェクトタイプMO●のサブシステムクラスタの外部事象に関するデータを受信する。
【0189】
全体的に、ストリーミングチャネルの数は、サブシステムクラスタおよび関連するメタオブジェクトタイプMO●の数にのみ依存し、実際のサブシステムおよび関連するツインオブジェクトの数には依存しない。分散型事象離散システム内の完全な通信プロセスの通信チャネルの数は、メタオブジェクトタイプMO●の数とともに直線的に増加し、実際のサブシステムの数とともに指数関数的に増加しないので、これは、サブシステムクラスタ間のルーティングトポロジの複雑さに大きな影響を与える。
【0190】
さらに、サブシステム自体が関連するさらなるサブシステムに分解されてもよく、これによって、全体的なモデリングプロセスに階層が導入されることに留意されたい。
【0191】
図15は、サービスエンジン14が、少なくとも1つのサブシステムをモデリングするために使用されるメタオブジェクトタイプに沿って、分散型事象離散システムの少なくとも1つのサブシステムの使用モデルを生成する、
図10に示される本発明によるサービスエンジン14の概略図を示す。
【0192】
図15に示されるように、サービスエンジンは、
図14に関して説明したように、分散型事象離散システムの少なくとも1つのサブシステムを各々含む少なくとも2つのサブシステムクラスタに分散型事象離散システムを分割するように適合された分割モジュール40を含む。ここで、特定のサブシステムクラスタMOCi∈MOCに割り当てられたすべてのサブシステムは、同じメタオブジェクトタイプMO●でモデリングされる。
【0193】
図15に示されるように、サービスエンジンは、サブシステムクラスタMOCi∈MOC間でストリーミングメッセージを交換するためにルーティングトポロジを定義するように適合されたルーティングモジュール42を含む。
【0194】
図15に示されるように、サービスエンジンは、分散型事象離散システムのサブシステムクラスタに割り当てられたすべてのサブシステムについて、異なるサブシステム使用クラスタMOUCi={MOUC1,…,MOUCu}iをモデリングするように適合された使用クラスタモジュール44を含む。
【0195】
好ましくは、ルーティングトポロジは、サブシステムクラスタMOCiごとに、ストリーミングメッセージからの少なくとも1つの外部サブシステムクラスタが受信され、ストリーミングメッセージへの少なくとも1つの外部サブシステムクラスタが送信されることを定義する。
【0196】
図15に示されるように、サービスエンジンは、分散型事象離散システムの少なくとも1つのサブシステムの使用モデルを、分散型事象離散システムのリアルタイム制御のためにデジタルツインエンジンにおいて実行できる少なくとも1つの実行可能なモデリングソフトウェアカーネルに変換するように適合されたソフトウェア構成モジュール46を含む。
【0197】
好ましくは、ソフトウェア構成モジュール46は、
ソフトウェアライブラリから利用可能な実行可能ソフトウェアのパラメータ化を介して、システムクラスタMOCiごとに少なくとも1つの実行可能なモデリングソフトウェアカーネルを構成する
ように適合され、
少なくとも1つの実行可能なモデリングソフトウェアカーネルは、サブシステムクラスタMOCiのすべてのサブシステムの使用に関して少なくとも1つのサブシステム使用モデルを実行するように構成され、
少なくとも1つの実行可能なモデリングソフトウェアカーネルは、メタレベルのメッセージフォーマットを有するメッセージストリームを少なくとも1つの実行可能なモデリングソフトウェアカーネルとの間で交換するための入力インターフェースおよび出力インターフェースを実行するように構成される。
【0198】
さらに、本発明によれば、ソフトウェア構成モジュール46は、少なくとも1つのメタストリーム通信チャネルを介して関連する入力インターフェースおよび出力インターフェースを接続することによって、少なくとも2つの実行可能なモデリングソフトウェアカーネル間のルーティングトポロジを構成するように適合される。
【0199】
さらに、本発明によれば、ソフトウェア構成モジュール46は、少なくとも1つの実行可能なモデリングソフトウェアカーネルを、分散型事象離散システムをリアルタイムで制御するためのデジタルツインエンジンにロードするように適合されている。
【0200】
図16は、
図14および
図15にそれぞれ示されるような本発明による使用レベルモデリングの動作のフローチャートを示す。
【0201】
図16に示されるように、本発明による使用レベルモデリングを達成するために、分散型事象離散システムを、分散型事象離散システムの少なくとも1つのサブシステムを各々含む少なくとも2つのサブシステムクラスタに分割するために、
図15に示される分割モジュール40を実行することによって、ステップS30が実行され、特定のサブシステムクラスタMOCi∈MOCに割り当てられたすべてのサブシステムは、同じメタオブジェクトタイプMO●でモデリングされる。
【0202】
図16に示されるように、ステップS30に続いて、サブシステムクラスタMOCi∈MOC間でストリーミングメッセージを交換するためにルーティングトポロジを定義するために、
図15に示されるルーティングモジュール42を実行することによって、ステップS32が実行される。
【0203】
好ましくは、ステップ32は、サブシステムクラスタMOCiごとに、ストリーミングメッセージからの少なくとも1つの外部サブシステムクラスタが受信され、ストリーミングメッセージへの少なくとも1つの外部サブシステムクラスタが送信されることを定義することによって、ルーティングトポロジを定義する。
【0204】
図16に示されるように、ステップS32に続いて、分散型事象離散システムのサブシステムクラスタに割り当てられたすべてのサブシステムについて、異なるサブシステム使用クラスタMOUCi={MOUC1,…,MOUCu}i)を定義するために、
図15に示される使用クラスタモジュール44を実行することによって、ステップS34が実行される。
【0205】
図16に示されるように、ステップS34に続いて、分散型事象離散システムの少なくとも1つのサブシステムの使用モデルを、分散型事象離散システムのリアルタイム制御のためのデジタルツインエンジンにおいて実行できる少なくとも1つの実行可能なモデリングソフトウェアカーネルに変換するようにソフトウェアを構成するために、
図15に示されるソフトウェア構成モジュール46を実行することによって、ステップS36が実行される。
【0206】
ステップS36によるソフトウェア構成の詳細は、
図15に関して上記で概説されているので、ここでは繰り返さない。
【0207】
最後に、ステップS36の実行中、少なくとも1つの実行可能なモデリングソフトウェアカーネルは、分散型事象離散システムをリアルタイムで制御するための仮想ツインエンジン16にロードされる。
【0208】
上記で分散型事象離散システムのモデリングに関連する本発明の異なる態様について説明したが、以下で、分散型事象離散システムのリアルタイムのプロセス制御のために生成されたモデルについて説明する。
【0209】
図17は、本発明による仮想ツインエンジン16の概略図を示す。
【0210】
以下では、仮想ツインエンジン16は、
図15に示されるように、サービスエンジン15によって準備された少なくとも1つの実行可能なモデリングソフトウェアカーネルをプレインストールしていると仮定される。
【0211】
上記で概説したように、これは、分散型事象離散システムのシステムクラスタごとに少なくとも1つのモデリングソフトウェアカーネル、およびシステムクラスタのメタレベルモデリングに使用される関連メタオブジェクトタイプMO●のプレインストールを意味する。
【0212】
図17に示されるように、本発明による仮想ツインエンジン16は、少なくとも1つのサブシステム使用モデルをモデリングする関連するモデリングソフトウェアカーネルの実行を介してサブシステムクラスタに関して少なくとも1つのサブシステム使用モデルをリアルタイムで実行するように適合されたモデル処理モジュール48を含む。
【0213】
本発明によれば、モデル処理モジュール48は、少なくとも1つのサブシステム使用モデルに関して少なくとも1つのデジタルツインを、分散型事象離散システムにおいて操作され、サブシステム使用モデルに一致する機能を有する関連プロセスオブジェクトに対する仮想対応物として動作させるように適合される。
【0214】
さらに、本発明によれば、モデル処理モジュール48は、少なくとも1つのデジタルツインのサブシステム使用モデルをモデリングするモデリングソフトウェアカーネルへのリアルタイムアクセスを介して少なくとも1つのデジタルツインを受動的に動作させるように適合される。
【0215】
図17に示されるように、本発明による仮想ツインエンジン16は、デジタルツインエンジンに対してモデリングエンジンによってサポートされた利用可能なすべてのメタオブジェクトタイプMO●から少なくとも1つのメタオブジェクトタイプMO●をアクティブ化することによって、モデリング情報をモジュール処理モジュール48に注入するように適合されたモデリングエンジンインターフェース50を含む。
【0216】
好ましくは、モデリングエンジンインターフェース50は、状態モデルΣijのセットを注入するように適合され、ここで、iは状態モデルへのインデックスであり、jは関連する使用へのインデックスであり、モジュール処理モジュール48へのメタオブジェクトタイプMO●を表す少なくとも状態モデルを含むことを表す。
【0217】
さらに好ましくは、モデリングエンジンインターフェース50は、注入された少なくとも1つの状態モデルに関する少なくとも1つのパースペクティブPjをモジュール処理モジュール48に注入するように適合されている。
【0218】
さらに好ましくは、モデリングエンジンインターフェース50は、各状態モデルおよび関連する状態変数のメタデータ、ターゲットデータ、および実際のデータに従って、異なるレベルのデータ抽象化をモジュール処理モジュール48に注入するように適合されている。
【0219】
さらに好ましくは、モデリングエンジンインターフェース50は、所定のメタモデルタイプおよび少なくとも1つの関連するデジタルツインを備えた少なくとも1つのサブシステム使用クラスタを注入するように適合されている。ここで、少なくとも1つのデジタルツインは、対応する実世界のプロセスオブジェクトに対するデジタル対応物として機能する。
【0220】
図17に示されるように、本発明による仮想ツインエンジン16は、モジュール処理モジュール48に外部および/または内部状態遷移を実装するソフトウェアコードを注入するように適合されたサービスエンジンインターフェース52を含む。
【0221】
図17に示されるように、本発明による仮想ツインエンジン16は、少なくとも1つのサブシステム使用クラスタに関して少なくとも1つの関連するデジタルツインを初期化するように適合されたモデリング制御モジュール54を含む。好ましくは、モデリング制御モジュール54は、デジタルツインエンジンの開始前、またはデジタルツインエンジンの動作中にリアルタイムで、少なくとも1つのデジタルツインを初期化するように適合されている。
【0222】
図17に示されるように、本発明による仮想ツインエンジン16は、仮想ツインエンジンへの/からのデータ交換を処理するように適合されたデータフロー処理モジュール56を含む。
【0223】
図17に示されるように、本発明による仮想ツインエンジン16は、以下でより詳細に説明されるように、異なるレベルの抽象化に従って、通信データを少なくとも制御データフローおよび/または使用データフローに分類することによって、仮想ツインエンジンへの/からのデータ交換を制御するように適合されたデータフロー制御モジュール58を含む。
【0224】
図17に示されるように、本発明による仮想ツインエンジン16は、仮想ツインエンジン16との間でメタストリームメッセージを交換するためのメタストリーム入出力モジュール60を含む。
【0225】
図18は、
図17に示される本発明による仮想ツインエンジン16の動作のフローチャートを示す。
【0226】
図18に示されるように、モデル分散型事象離散システムのリアルタイムのプロセス制御を達成するために、少なくとも1つのサブシステム使用モデルをモデリングする関連するモデリングソフトウェアカーネルの実行を介して、サブシステムクラスタに関して少なくとも1つのサブシステム使用モデルをリアルタイムで実行するために、モデル処理使用モジュール48を実行することによって、ステップS38が実行される。
【0227】
図18に示されるように、モデル分散型事象離散システムのリアルタイムのプロセス制御を達成するために、少なくとも1つのサブシステム使用モデルに関して少なくとも1つのデジタルツインを、分散型事象離散システムにおいて操作され、サブシステム使用モデルに一致する機能を有する関連プロセスオブジェクトに対する仮想対応物として動作させるために、モデル処理使用モジュール48を実行することによって、ステップS40が実行される。
【0228】
本発明によれば、少なくとも1つのデジタルツインを動作させるステップS40は、少なくとも1つのデジタルツインのサブシステム使用モデルをモデリングするモデリングソフトウェアカーネルへのリアルタイムアクセスを介して受動的に実行される。
【0229】
図18に示されるように、モデル分散型事象離散システムのリアルタイムのプロセス制御を達成するために、モデリング構成要素および/またはデジタルツインの挿入/削除を介して、分散型事象離散システムのモデルをリアルタイムで修正するために、モデル処理使用モジュール48を実行することによって、ステップS42が実行される。
【0230】
好ましくは、モデリングエンジン12によってサポートされるすべての利用可能なメタオブジェクトタイプMO●から少なくとも1つのメタオブジェクトタイプMO●をアクティブ化することによって、仮想ツインエンジン16のモジュール処理モジュール48にモデリング情報を注入するために、ステップS42が実行される。
【0231】
好ましくは、ステップS42は、メタオブジェクトタイプMO●を表す少なくとも状態モデルを含む少なくとも状態モデルΣijを仮想ツインエンジン16のモジュール処理モジュール48に注入するために実行される。
【0232】
好ましくは、ステップS42は、注入された少なくとも1つの状態モデルにおける少なくとも1つのパースペクティブPjを仮想ツインエンジン16のモジュール処理モジュール48に注入するために実行される。
【0233】
好ましくは、ステップS42は、各状態モデルのメタデータ、ターゲットデータ、および実際のデータならびに関連する状態変数に従って異なるレベルのデータ抽象化をツインエンジン16のデータフロー処理モジュール56に注入するために実行される。
【0234】
好ましくは、ステップS42は、仮想ツインマシン16のモジュール処理モジュール48に外部および/または内部状態遷移を実装するソフトウェアコードを注入するために実行される。
【0235】
好ましくは、ステップS42は、所定のメタオブジェクトタイプを有する少なくとも1つのサブシステム使用クラスタを仮想ツインマシン16のモジュール処理モジュール48に注入するために実行される。
【0236】
図18に示されるように、サブシステム使用クラスタに関して少なくとも1つのデジタルツインを初期化するために、ステップS42も実行され、少なくとも1つのデジタルツインは、対応する実世界のプロセスオブジェクトに対するデジタル対応物として機能する。好ましくは、少なくとも1つのデジタルツインは、分散型事象離散システムのリアルタイムのプロセス制御のために、仮想ツインエンジンの開始前または仮想ツインエンジンの動作中に初期化される。
【0237】
図18に示されるように、モデル分散型事象離散システムのリアルタイムのプロセス制御を達成するために、異なるレベルの抽象化に従って通信データを少なくとも制御データフローおよび/または使用データフローに分類することによって、デジタルツインエンジンとの間のデータ交換を制御するために、データフロー制御モジュール88を実行することによって、ステップS44が実行される。
【0238】
好ましくは、ステップS44では、デジタルツインの少なくとも1つの状態遷移について少なくとも1つのトリガ事象を表す少なくとも1つの状態ベクトルが評価される。
【0239】
さらに好ましくは、ステップS44において、制御データフローは、異なるサブシステムクラスタ間で関連する制御データを交換するためのデジタルツインの状態遷移に関して少なくとも1つのメタストリームメッセージを生成することによって制御される。
【0240】
図19は、仮想ツインエンジン16で動作するモジュール処理モジュール48の動作のさらなる詳細を示す。
【0241】
図19に示されるように、モジュール処理ユニット48では、特定のメタモデルタイプおよびその関連する使用モデルを実装する注入された機能的ソフトウェアコードが実行される。
【0242】
次いで、すべてのサブシステムクラスタ内のすべてのサブシステム使用クラスタについて、プロセスドメイン内の実世界のプロセスオブジェクトのデジタルドメイン内のデジタル対応として、少なくとも1つのデジタルツインが導入される。言い換えると、各デジタルツインは、モデリングされるドメイン内のプロセスオブジェクトの論理的な挙動を反映する。
【0243】
より具体的には、メタモデルタイプiを有するサブシステムクラスタのすべてのサブシステム使用クラスタMOUCk∈{MOUC1,…,MOUCu}について、実世界のプロセスオブジェクトに対するデジタル対応物を実現する少なくとも1つのデジタルツインオブジェクトのセットTOk,i={to1,…,tol}k,iがインスタンス化される。
【0244】
デジタルツインの導入は、デジタルツインエンジンの開始前、または分散型事象離散システムのリアルタイムのプロセス制御中に実行され得ることに留意されたい。デジタルツインエンジンのこのリアルタイム構成機能は、ハードワイヤードプロセス制御システムと比較して、はるかに高い柔軟性および構成可能性を達成するので、これは非常に重要である。
【0245】
さらに、初期構成中は、ターゲット値はまだ使用できないので、データのタイプに従って宣言され、関連するメモリが割り振られる。同様に、データタイプの宣言およびメモリ割振りを介して実際の値も考慮される。
【0246】
初期構成の結果は、サブシステム使用クラスタに関する実行可能なソフトウェアカーネルのセットである。
【0247】
その後の仮想ツインエンジンの実行は、サブシステムの使用をモデリングするモデリングソフトウェアカーネルの実行を介して、サブシステムクラスタのサブシステムの使用に関してサブシステム使用モデルをリアルタイムで実行することを意味する。
【0248】
さらに、少なくとも1つのデジタルツインは、すべてのサブシステム使用モデルに関して、デジタル対応物として、および分散型事象離散システムにおいて操作され、デジタルツインによってモデリングされた機能を有する少なくとも1つのプロセスオブジェクトとの1対1の関係で操作される。
【0249】
特に、少なくとも1つのデジタルツインは、リアルタイムで実行される関連するモデリングソフトウェアカーネルへのリアルタイムアクセスを介して操作される。したがって、ツインオブジェクトの挙動は、明示的にモデリングされるのではなく、使用レベルのモデリング段階から継承される。
【0250】
また、本発明によれば、サブシステム使用クラスタのサイズとツインの数とをトレードオフすることが可能である。最初のケースでは、各使用クラスタのサイズは1であり、サブシステム使用クラスタはまさしく1つのツインオブジェクトをカバーする。これは、明示的モデリングと呼ばれる。代替的に、サブシステム使用クラスタは、1:Nの関係に従って複数のツインオブジェクトをカバーし得る。これは、暗黙的モデリングと呼ばれる。
【0251】
図20は、
図17に示される本発明による仮想ツインエンジン16の動作を示すさらに詳細な概略図を示す。
【0252】
図20に示されるように、本発明による仮想ツインエンジン16を実行する別の態様は、仮想ツインエンジン16との間のデータの交換に関するデータフロー制御に関する。
【0253】
図20に示されるように、本発明によれば、データフローの制御は、たとえば、制御データフロー、メタモデルタイプのリアルタイムの実行に関する使用レベルのデータフロー、使用モデルタイプ、および関連するツインオブジェクトなど、データを異なるクラスに分割することに依存する。データのさらなるカテゴリーは、プロセスデータ、たとえば、デジタルツインエンジンに供給され、および/またはそれによって出力されるセンサー/アクチュエータデータに関連し得る。
【0254】
本発明によれば、使用レベルのデータフローを使用して、制御データフローに影響を与えることができることに留意されたい。また、使用レベルのデータフローは、モデリングの使用レベルにおいて指定され得、ツインレベルのモデリングにおいて評価され得る。最後に、状態遷移に関連する動作条件は、使用レベル条件またはメタレベル条件として指定可能である。
【0255】
上記に鑑みて、本発明による制御データとモデル関連データとの間の分離は、上記で概説したコンピュータ実装メタモデルと一致し、システム全体の動作中に大幅な効率向上を達成することを可能にする。
【0256】
図20に示されるように、制御データ関連のデータフロー制御の第1の要素は、デジタルツインの動作をモデリングする使用モデルでの状態遷移のトリガ事象を表す外部および/または内部状態ベクトルの評価に関する。
【0257】
図20に示されるように、制御データ関連のデータフロー制御の第2の要素は、検討中の状態遷移が発生するサブシステムクラスタと同一ではないサブシステムクラスタと交換するためのメタストリームメッセージの生成に関する。
【0258】
図20に示されるように、モデル関連のデータフロー制御の第1の要素は、デジタルツインの動作をモデリングする使用モデルでの状態遷移の条件を表す条件ベクトルの評価に関する。より具体的には、そのような条件は、実際の値または目標値を表すデータを考慮し、デジタルツインに関して操作される使用レベルの状態モデルの異なる状態に関連して評価される。
【0259】
図20に示されるように、特定の状態遷移の条件が満たされていると仮定すると、モデル関連のデータフロー制御の第2の要素は、初期状態からターゲット状態への実際の遷移の達成に関する。これは、ターゲット状態を表すデータを生成するために、関連する変換関数を初期状態を表すデータに適用することを意味する。また、初期状態からターゲット状態への遷移は、状態遷移が処理されるツインオブジェクトに対応するコンテキスト情報の少なくとも1つの更新を必要とする。
【0260】
図20に示されるように、モデル関連のデータフロー制御の第3の要素は、状態遷移結果の処理に関する。ここで、ターゲット状態に関連する情報は、すなわち、メタストリームメッセージの生成である、制御データフロー制御の第2の要素にサブミットされる。
【0261】
状態遷移が終了すると、異なるメタモデルタイプを有する他のサブシステムクラスタに状態遷移について通知するために、関連するメタストリームメッセージが生成される。
【0262】
さらに、状態遷移が終了すると、関連する状態空間モデルが実行される、サブシステムクラスタ内の関連する状態空間モデル表現を更新する必要もある。
【0263】
上記のように、データのさらなるカテゴリーは、プロセスデータ、たとえば、デジタルツインエンジンに供給され、および/またはそれによって出力されるセンサー/アクチュエータデータに関連し得る。ここで、関係するデータは、ツインオブジェクト表現とデジタルツインエンジンのセンサー/アクチュエータインターフェースとの間でリアルタイムで交換される。
【0264】
図21は、それぞれ
図17および
図20に示されるデータフロー処理モジュールの動作のさらなる詳細のフローチャートを示す。
【0265】
図21に示されるように、本発明によれば、データフロー制御モジュール52は、デジタルツインの少なくとも1つの状態遷移の少なくとも1つのトリガ事象を表す少なくとも1つの状態ベクトルを評価するように、制御データフロー上で動作する状態ベクトル評価モジュール62を制御するように適合される。
【0266】
図21に示されるように、データフロー制御モジュール58は、異なるサブシステムクラスタ間で関連する制御データを交換するためのデジタルツインの状態遷移に関して、少なくとも1つのメタストリームメッセージを生成するように、制御データフロー上で動作するメッセージ生成モジュール64を制御するように適合される。
【0267】
図21に示されるように、データフロー制御モジュール58は、関連する遷移条件の評価のための少なくとも1つのデジタルツインの少なくとも1つの状態遷移に関連して、少なくとも実際の値および/または少なくとも1つの目標値を含む少なくとも1つの条件ベクトルを評価するように、使用データフロー上で動作する条件ベクトル評価モジュール66を制御するように適合される。
【0268】
図21に示されるように、データフロー制御モジュール58は、仮想ツインエンジン16での動作のエラーに対する少なくとも1つの条件指示を評価するように、使用データフロー上で動作するエラー評価モジュール68を制御するように適合される。エラーが発生した場合、エラー処理モジュール70は、動作が再開されるように、問題を修正する、または仮想ツインエンジン16の全体的な動作を終了する。
【0269】
図21に示されるように、データフロー制御モジュール58は、状態遷移前の初期状態を表すデータに少なくとも1つの変換関数を適用して、状態遷移後のターゲット状態を表すデータを生成するように、使用データフロー上で動作する変換モジュール72を制御する。
【0270】
図21に示されるように、データフロー制御モジュール58は、状態遷移に関する状態表現関連情報、および随意にコンテキスト情報を更新するように、使用データフロー上で動作する更新モジュール74を制御するように適合される。
【0271】
結論として、本発明によれば、データフローを制御データフローおよび使用データフローに分割することが提案される。これによって、通信の複雑さが軽減され、たとえば、制御データフローおよび使用データフロー上の動作を並列化できるので、リアルタイム機能が向上する。また、使用データが制御フローに影響を与える可能性があるので、柔軟性を高めることができる。
【0272】
図22は、
図17に示される本発明によるデータフロー処理モジュールにおける状態ベクトルおよび条件ベクトルの評価のために使用されるシードボックス手法の一例を示す。
【0273】
上記で概説したように、本発明によれば、状態モデルが使用される、サブシステムクラスタの外部にある事象の発生時に、状態空間モデルでの状態遷移をトリガする外部状態ベクトルが考慮される。
【0274】
上記で概説したように、第lの外部状態ベクトルΘex,i●at,l=((MOj,j≠●,zj),…,(MOk,k≠●,zk))Tlはそれぞれ、メタオブジェクトタイプMO●および外部サブシステムが主流であることを示す対応する状態を使用してモデリングされるサブシステムの外部にあるサブシステムのタプルを要約する。また、異なる状態遷移について、複数の外部状態ベクトルが存在する可能性があることも上記で説明した。
【0275】
本発明によれば、一般性を失うことなく、状態遷移ごとに異なる外部状態ベクトルが異なるコンテキストに関して確立されると仮定し得る。
【0276】
また、本発明によれば、メタモデルは、使用レベルモデルのセットアップの基礎として準備される。次いで、特定のメタモデルの専用の使用ごとに、実世界におけるプロセスオブジェクトのデジタル対応物として少なくとも1つのデジタルツインがインスタンス化される。
【0277】
上記から、メタレベルにおいて指定された外部状態ベクトルが、関連するデジタルツインの数、およびデジタルツインの状態遷移に伴う関連する異なるコンテキストに従って複製されることは明らかである。
【0278】
また、仮想ツインエンジンで操作されている使用モデルごとに、少なくとも1つの関連する状態空間モデルが操作される。使用モデルごとに、少なくとも1つのデジタルツインがインスタンス化されていると仮定すると、関連する状態空間モデルにおけるすべての状態について、ツインあたりの状態、すなわちデジタルツインあたりの状態使用の少なくとも1つの使用が考慮される。
【0279】
言い換えると、特定の使用モデルについて、複数のツインがインスタンス化されていると仮定すると、抽象化の使用レベルでの関連する状態空間モデルの状態ごとに、ツインレベルの抽象化において対応する複数の状態使用が考慮される。
【0280】
以上のことから、
図22に示されるように、結論は、サブシステムタイプごとの外部状態ベクトルのすべてのセットについて、関連するサブシステムタイプの使用は、行がサブシステム使用モデルのデジタルツインに関する状態使用に対応し、列がモデル抽象化のツインレベルにおいて検討される状態遷移の異なるコンテキストを表す行列形式に編成され得るということである。
【0281】
図23は、
図17に示される本発明によるデータフロー処理モジュールにおける状態ベクトルおよび条件ベクトルの評価のためのシードボックス手法のさらなる一例を示す。
【0282】
図23に示されるように、本発明によれば、シードボックスは、分散型事象離散システムの使用レベルモデルのサブシステムクラスタごとに準備される。
【0283】
本発明によれば、シードボックスの準備は、モデリングの使用レベルの抽象化に関するルーティングトポロジに従う。
【0284】
より具体的には、
図23に示されるように、すべてのサブシステムクラスタについて、検討されるサブシステムクラスタがリッスンする他のすべてのサブシステムクラスタに関してシードボックスが準備される。さらに、検討されるサブシステムクラスタがリッスンする他のサブシステムクラスタに適用可能な各メタオブジェクトタイプに関してシードボックスが準備される。最後に、サブシステムクラスタ内で内部的に操作される状態空間モデルの内部状態遷移を処理するためにシードボックスも準備される。
【0285】
図24は、ツインオブジェクトに関して状態遷移を実行した後、
図22および
図23に示されるようにシードボックスを更新する一例を示す。
【0286】
図24に示されるように、
図22に示される状態使用対コンテキストの行列を疎に表現する効率的な方法は、すべての状態使用に関して、ツイン/コンテキストの対のリンクリストを使用することである。次いで、ツインが状態遷移を実行すると、これは、状態遷移のソース状態に関する第1のリストから関連するツイン/コンテキスト対のキャンセル、および状態遷移のターゲット状態に関する更新されたツイン/コンテキストの対の第2のリストへの追加を意味する。
【0287】
上記において、本発明は、本発明の好ましい実施形態の図面および図を参照して説明されてきたが、明らかに、本発明は、本発明の範囲および意図から逸脱することなく、当業者によって、明白であり、容易に行われ得るその変形および修正を使用して実施することもできることに留意されたい。たとえば、上記の機能は、ソフトウェア、ハードウェア、またはそれらの組合せで実現されてもよい。
【0288】
したがって、本明細書に添付された請求項の範囲は、本明細書に記載された説明に限定されるのでなく、特許請求の範囲は、本発明が関係する当業者によって、それらの同等物として扱われるすべての特徴を含む、本発明において統括する提示可能な新規性のすべての特徴を包含するように解釈されるものとする。
【0289】
用語集:
ベクトルおよびセット:
x=(x1,…,xk)T 入力ベクトル
X 入力ベクトルのセット
y=(y1,…,yn)T 出力ベクトル
Y 出力ベクトルのセット
z=(z1,…,zm)T 状態変数ベクトル
Z 状態変数ベクトルのセット
SS={SS1,…,SSp} 分散型事象離散システムの相互に分離したサブシステムのセット
STR={STR1,…,STRq} 分散型事象離散システムのサブシステム間のストリームのセット
MOC={MOC1,…,MOCp} 分散型事象離散システムの分割を記述するサブシステムクラスタのセット
MOC_rec_i サブシステムクラスタMOCiがそこからストリーミングメッセージを受信する、少なくとも1つのサブシステムクラスタのセット
MOC_send_i サブシステムクラスタMOCiがそこにストリーミングメッセージを送信する、少なくとも1つのサブシステムクラスタのセット
MOT={MOT1,…,MOTp} 分散型事象離散システムのモデリングに使用できるメタオブジェクトタイプのセット
MOUCi={MOUC1,…,MOUCu}i 特定のメタオブジェクトタイプtypeiでモデリングされるサブシステム内のサブシステムのサブシステム使用クラスタ
MO●R メタオブジェクトタイプMO●の表現オブジェクト
D●={d1,…,do} メタオブジェクトタイプMO●の記述的特徴のセット
メタオブジェクトタイプMO●の外部状態ベクトル:Θex,i●at,l=((SSTj,j≠●,zj),…,(SSTk,k≠●,zk))lT
Πex,i●at=Ul Θex,i●at,l メタオブジェクトタイプMOT●に関連する外部事象による状態遷移をトリガするすべての外部状態ベクトルのセット
Δex,i●a メタオブジェクトタイプMOT●に関連する外部事象による状態遷移をトリガする前に満たされる必要がある条件のセット
Πin,i●at メタオブジェクトタイプMOT●に関連する内部事象による状態遷移をトリガする内部状態ベクトルのセット
Δin,i●a メタオブジェクトタイプMOT●に関連する内部事象による状態遷移をトリガする前に満たされる必要がある条件のセット
C=(con_ID1,…,con_IDn) コンテキストのセット
関数:
Φ 状態遷移関数
Φin 内部事象による状態遷移
Φex 外部事象による状態遷移
Ω 出力関数
τ 保持時間関数
オペレータおよびモデル:
S システムオペレータ
Σ=<X,Z,Y,Φin,Φex,Ω,τ> 分散型事象離散システムの状態モデル
P(x)=G[SS,STR](x) 分散型事象離散システムの構成分割の有向グラフ表現
Σi● 部分サブシステムTS●の静的データモデルで使用される第iの状態モデル
● 任意だが固定の要素のプレースホルダー
【符号の説明】
【0290】
1 第1のライン
2 第2のライン
10 システム
11 センサー
11 コンベヤ
12 センサー
12 コンベヤ
12 モデリングエンジン
13 センサー
13 コンベヤ
14 サービスエンジン
16 仮想ツインエンジン
18 コンピュータ実装メタモデル
20 メタオブジェクトエンティティ
21 センサー
21 コンベヤ
22 センサー
22 コンベヤ
22 状態空間モデルエンティティ
23 センサー
23 コンベヤ
24 機能エンティティ
26 入力ベクトルエンティティ
28 コンテキストエンティティ
30 メタオブジェクトタイプ使用モジュール
32 状態空間モデル使用モジュール
34 機能使用モジュール
36 入力ベクトル使用モジュール
38 ツイン/ツイン使用モジュール
40 分割モジュール
42 ルーティングモジュール
44 使用クラスタモジュール
46 ソフトウェア構成モジュール
48 モジュール処理モジュール
50 モデリングエンジンインターフェース
52 サービスエンジンインターフェース
54 モデリング制御モジュール
56 データフロー処理モジュール
58 データフロー制御モジュール
60 メタストリーム入出力モジュール
62 状態ベクトル評価モジュール
64 メッセージ生成モジュール
66 条件ベクトル評価モジュール
68 エラー評価モジュール
70 エラー処理モジュール
72 変換モジュール
74 更新モジュール