(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】オイルパーム材の維管束の抽出方法および成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B27J 7/00 20060101AFI20240604BHJP
B27N 3/04 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B27J7/00
B27N3/04 Z
(21)【出願番号】P 2020112410
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000413
【氏名又は名称】永大産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川添 正伸
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-034983(JP,A)
【文献】国際公開第2018/216682(WO,A1)
【文献】特開2013-199024(JP,A)
【文献】特開2003-039407(JP,A)
【文献】特開2007-154366(JP,A)
【文献】特開2007-136715(JP,A)
【文献】特開2014-151599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27J 7/00
B27N 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
維管束間に柔細胞が充填され、維管束同士が結合されたオイルパーム材を、回転軸同士が平行となる一対のロール間に巻き込むように圧延することにより、前記オイルパーム材をほぐす工程と、
ほぐした前記オイルパーム材同士をぶつけながら擦り合わせることにより、前記オイルパーム材の前記維管束を分離しつつ、分離した前記維管束に付着している柔細胞を、前記維管束から取り除く工程と、
を少なくとも含
み、
前記一対のロールを構成する各ロールは、円柱状の周面を有しており、
前記オイルパーム材をほぐす工程において、前記オイルパーム材の維管束の繊維方向が、前記回転軸と平行となるように、前記オイルパーム材を前記一対のロール間に通過させることを特徴とするオイルパーム材の維管束の抽出方法。
【請求項2】
前記オイルパーム材をほぐす工程において、前記オイルパーム材として、乾燥させたオイルパーム材を前記一対のロール間に通過させることを特徴とする請求項
1に記載のオイルパーム材の維管束の抽出方法。
【請求項3】
広葉樹若しくは針葉樹に由来する木質材料、樹脂材料、または無機材料から、成形体を成形する成形体の製造方法であって、
前記成形体を成形する際に、請求項1
または2に記載された抽出方法で抽出した前記オイルパーム材の維管束を、前記成形体の補強材として含有させることを特徴とする成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルパーム材の維管束の抽出方法および成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、パーム油は、植物性の食用油として幅広く利用されており、オイルパーム(アブラヤシ)の花房の果肉から採取される。1本のオイルパームから採取できるパーム油の量は、植林してから20年程度経過すると減少するため、採取量が減少したオイルパームは、伐採される。伐採されたオイルパームの幹には、柔細胞が含まれており、この柔細胞には、他の植物に比べて、より多くのデンプンおよび糖が含有されている。したがって、伐採したオイルパームの幹をそのまま放置すると、腐朽し易く、虫害を受け易いため、オイルパームの幹は焼却処分されることもある。
【0003】
このような点を鑑みて、伐採したオイルパームを、活用する技術が検討されている。たとえば、特許文献1には、ヤシ材であるオイルパーム材を、維管束と柔細胞とに分離する方法が開示されている。この方法では、以下に示す圧搾装置の一対のロールに、オイルパーム材の板材を挿入することにより、オイルパーム材を圧搾している。一対のロール材は、回転軸が平行となるように配置されており、各ロールの周面には、回転軸に沿って、凸部と凹部が交互に形成されており、各凸部および各凹部は、周方向に沿って形成されている。一対のロールは、それぞれの凸部と凹部が噛み合うように形成されている。このような一対のロール間に、オイルパーム材を巻き込むように、これを通過させることにより、オイルパーム材が破砕され、維管束と柔細胞とが分離される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示す技術では、凸部と凹部を噛み合う一対のロール間に、オイルパーム材を通過させるため、凸部と凹部が噛み合う位置では、オイルパーム材が過度に変形し、オイルパーム材から抽出した維管束に大きなダメージが与えられることが懸念される。
【0006】
これに加えて、オイルパーム材は、一対のロール間を通過することにより、瞬時に圧搾されるため、維管束と柔細胞の界面以外に、柔細胞にも亀裂が発生・伸展し破砕されるので、抽出された維管束の表面に柔細胞が付着していることが多い。柔細胞には、デンプンおよび糖が含まれ、これらは腐敗し易いため、柔細胞が付着した状態で維管束を長期間保存することは望ましいとは言い難い。
【0007】
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、オイルパームから、維管束の損傷を抑えながら維管束を抽出するとともに、維管束から柔細胞を簡単に取り除くことができるオイルパーム材の維管束の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を鑑みて、発明者が鋭意検討を重ねた結果、オイルパーム材には、維管束間に変形し易い柔細胞が充填されており、この変形し易い柔細胞を介して維管束が結合されている点に着眼した。そこで、発明者は、繰り返し実験を行った結果、オイルパーム材を圧延すると、オイルパーム材の厚さが減少し、かつ、維管束の繊維方向と直交する方向に柔細胞が変形しつつ、維管束と柔細胞の界面から亀裂が発生し易いことがわかった。このように、オイルパーム材を圧延するようにほぐせば、維管束の損傷を抑えながら、維管束同士の結合を弱めることができるため、ほぐしたオイルパーム材同士を擦り合わせれば、維管束が簡単に分離できるとともに、維管束に柔細胞が残留することを抑えることができるという、これまでに無い知見を発明者は得た。
【0009】
本発明は、このような発明者による新たな知見に基づくものであり、本発明に係るオイルパーム材の維管束の抽出方法は、維管束間に柔細胞が充填され、維管束同士が結合されたオイルパーム材を、回転軸同士が平行となる一対のロール間に巻き込むように圧延することにより、前記オイルパーム材をほぐす工程と、ほぐした前記オイルパーム材同士をぶつけながら擦り合わせることにより、前記オイルパーム材の前記維管束を分離しつつ、分離した前記維管束に付着している柔細胞を、前記維管束から取り除く工程と、を少なくとも含むことを特徴とする。
【0010】
天然のオイルパーム材の維管束は、柔細胞を介して結合されているが、本発明によれば、一対のロール間に巻き込むように、オイルパーム材を圧延することにより、オイルパーム材を一対のロールの円筒状の周面で加圧して変形させることができる。
【0011】
ここでいう「圧延」とは、オイルパーム材の形状を崩さずに、その厚さが減少するように、引き延ばすことをいう。具体的には、板状のオイルパーム材であれば、その板状の状態のまま、その厚さが減少するように一対のロールで、これを引き延ばすことをいい、チップ状のオイルパーム材であれば、そのチップ状の形状のまま、その厚さが減少するように、一対のロールで、これ引き延ばすことをいう。オイルパーム材から維管束が分離され(圧搾され)かつ維管束が破砕または損傷するような過度の加圧が、オイルパーム材および維管束に対してされることが無い。このようにして、ほぐし工程において、柔細胞を変形させることにより、維管束と柔細胞との界面に亀裂を発生させ、柔細胞を介して維管束同士の結合を弱め、オイルパーム材をほぐすことができる。
【0012】
取り除く工程では、ほぐされたオイルパーム材同士をぶつけながら擦り合わせることにより、オイルパーム材から維管束を分離しつつ、分離された維管束に付着した柔細胞は、オイルパーム材または分離した維管束に接触し、維管束から脱離する。このような一連の簡単な作業により、オイルパーム材の維管束の損傷を抑えつつ、この維管束をオイルパーム材から簡単に抽出することができる。
【0013】
ここで、オイルパーム材をほぐして、維管束を容易に抽出することができるであれば、一対のロールに対して、オイルパーム材を圧延する向きは特に限定されるものではない。しかしながら、より好ましい態様としては、前記オイルパーム材をほぐす工程において、前記オイルパーム材の維管束の繊維方向が、前記回転軸と平行となるように、前記オイルパーム材を前記一対のロール間に通過させる。なお、ここで、「維管束の繊維方向」とは、オイルパーム材の幹材が延在する方向である。
【0014】
この態様によれば、維管束は、一方向に沿って配向された繊維方向を有しており、この繊維方向が、一対のロールの回転軸と平行となるように、オイルパーム材が一対のロール間を通過するので、維管束同士の距離が拡がるようにオイルパーム材が圧下される。すなわち、この態様では、ほぐす工程後(すなわち圧延後)、オイルパーム材の厚さが減少するように、オイルパーム材の柔細胞を、繊維方向と直交する方向に大きく変形させることができ、維管束と柔細胞との界面に亀裂が発生し易い。この結果、取り除く工程において、オイルパーム材から維管束が分離し易くなるとともに、維管束に付着している柔細胞を、維管束から脱離し易くなり、オイルパーム材から維管束をより効率的に抽出することができる。
【0015】
ここで、オイルパーム材の形態としては、シート状、チップ状、板状、塊状などを挙げることができるが、オイルパーム材の切り出し易さと取扱い易さ、維管束の繊維長さの確保の観点から、前記オイルパーム材は、繊維方向に沿って延在した長尺状のチップであることが好ましい。このような形態のオイルパーム材をほぐすのに好ましい態様としては、前記一対のロールは、水平方向に並設されており、前記オイルパーム材をほぐす工程において、前記オイルパーム材を、前記一対のロールの上方から前記一対のロール間に供給する。
【0016】
この態様によれば、オイルパーム材は、繊維方向に沿って延在した長尺状のチップであるので、オイルパーム材を、一対のロールの上方から一対のロール間に供給すると、チップは、オイルパーム材がロールの表面に接触した際に倒れ込み、繊維方向が水平方向となるように配向される。これにより、オイルパーム材の維管束の繊維方向が、ロールの回転軸と平行となるように、オイルパーム材を一対のロール間に通過させ易くなる。このような結果、上述した如く、取り除く工程において、オイルパーム材から維管束が分離し易くなるとともに、維管束に付着している柔細胞を、維管束から脱離し易くなり、オイルパーム材から維管束をより効率的に抽出することができる。
【0017】
ここで、柔細胞を維管束から簡単に取り除くことができるのであれば、オイルパーム材が乾燥されていなくてもよい。しかしながら、より好ましい態様としては、前記オイルパーム材をほぐす工程において、前記オイルパーム材として、乾燥させたオイルパーム材を前記一対のロール間に通過させる。
【0018】
この態様によれば、乾燥させたオイルパーム材をほぐすことにより、ほぐされたオイルパーム材の維管束と柔細胞との界面から、柔細胞を粉末の形態で維管束から脱離し易くなり、オイルパーム材から粉末状の柔細胞をより効率的に抽出することができる。
【0019】
このように抽出された維管束は、成形体の補強材とし用いることが好ましい。具体的には、広葉樹若しくは針葉樹に由来する木質材料、樹脂材料、または無機材料から、成形体を成形する成形体の製造方法であって、前記成形体を成形する際に、上記の抽出方法で抽出した前記オイルパーム材の維管束を、前記成形体の補強材として含有させる。この態様によれば、抽出されたオイルパーム材の維管束を含有するように成形体を成形することにより、成形体の機械的強度を高めることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、オイルパームから、維管束の損傷を抑えながら維管束を抽出するとともに、維管束から柔細胞を十分に取り除くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係るオイルパーム材の維管束の抽出方法を説明するためのフロー図である。
【
図2】(a)は、
図1に示す切り出し工程を説明するための模式図である。(b)は、切り出し工程で切り出した単板の模式的斜視図である。
【
図3】(a)は、
図1に示すほぐし工程を説明するための模式的斜視図であり、(b)は、オイルパーム材をほぐす前後のオイルパーム材の拡大断面図である。
【
図4】(a)は、
図1に示すほぐし工程の変形例を説明するための模式的斜視図であり、(b)は、オイルパーム材のほぐしの前後を説明するための拡大断面図である。
【
図5】
図1に示すほぐし工程の別の変形例を説明するための模式的斜視図である。
【
図6】(a)は、
図1に示す除去工程の攪拌処理を説明するための斜視図であり、(b)は、(a)における柔細胞の除去を説明するための模式図である。
【
図7】(a)~(c)は、
図1に示す加工工程を示した図であり、成形体を製造する工程を説明するための図である。
【
図8】(a)~(c)は、それぞれ、比較例1、実施例1-2、実施例2-2に係る攪拌処理前のオイルパーム材と、攪拌処理後に得られた維管束の平面写真である。
【
図9】(a)、(b)は、実施例1-2に係る20倍および50倍に拡大した維管束の写真図である。
【
図10】実施例1-2、実施例2-2、比較例1に係る維管束の繊維長さの頻度を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、
図1~
図6を参照しながら、本発明の実施形態に係るオイルパーム材から維管束を抽出する方法を説明し、
図7を参照しながら、抽出した維管束を用いた成形体の製造方法についても説明する。
【0023】
1.維管束12の抽出方法について
本実施形態に係るオイルパーム材の維管束12の抽出方法では、
図1に示す切り出し工程S1~分離工程S4までを行う。
【0024】
1-1.切り出し工程S1について
切り出し工程S1では、
図2(a)に示すように、オイルパームを伐採し、外皮が除去された幹材1Aから、かつら剥きのようにして帯状のオイルパーム材1Bを切り出す。具体的には、オイルパームの幹材1Aを回転させながら、ロータリーレースの刃具60を幹材1Aの周方向に当接させる。これにより、幹材1Aの外周層を剥ぐようして、連続した帯状のオイルパーム材1Bが切り出される。切り出されたオイルパーム材1Bを、
図2(b)に示すように、所望のサイズの単板にカットし、板状のオイルパーム材1Cを得ることができる。
【0025】
このようにして得られたオイルパーム材1Cは、樹幹方向に沿って製材されるため、板状のオイルパーム材1Cの表面および裏面に沿って維管束が配向される。特に、幹材1Aの外周側から芯部に向かって、維管束の密度は異なるため、ロータリーレースによる帯状のオイルパーム材1Bの切り出しにより、より均質な維管束の密度を有した板状のオイルパーム材1Cを得ることができる。
【0026】
なお、本実施形態では、ロータリーレースにより単板を切り出したが、たとえば、スライサーにより板状のオイルパーム材1Cを切り出してもよく、
図5に示すチップ状のオイルパーム材(チップ)1Eを切り出してもよい。所定の長さの維管束が配向され、切り出したオイルパーム材をほぐすことができるのであれば、切り出したオイルパーム材の形状は、例えば塊状であってもよく、特に限定されるものではない。
【0027】
ここで、たとえば、切り出した板状のオイルパーム材1Cの厚さは、3~5mmであることが好ましく、オイルパーム材1Cの厚さ方向に、維管束が、2~5本の範囲で存在していることがより好ましい。これにより、後述するほぐし工程S3において、オイルパーム材1Cを、一対のロール21、21に挟み込むようにしてほぐし易くなる。
【0028】
1-2.乾燥工程S2について
乾燥工程S2では、板状のオイルパーム材1Cを乾燥室内に配置して、これを乾燥する。これにより、オイルパーム材1Cの含水率を下げることができる。板状のオイルパーム材1Cを構成する柔細胞には、糖およびデンプンが、他の木材よりも多く含まれるため、後述するほぐし工程S3を行うまでの間、板状のオイルパーム材1Cを腐敗させることなく、長期間保管することができる。なお、後述するチップ状のオイルパーム材1Eは、板状のオイルパーム材1Cに比べて、比表面積が大きいので、乾燥時間を短縮することができる。
【0029】
後述するほぐし工程S3において、乾燥させたオイルパーム材1C、1Eをほぐすことにより、ほぐされたオイルパーム材1Cの維管束12と柔細胞13との界面から、柔細胞を粉末の形態で維管束12から脱離し易くなる。この結果、オイルパーム材1Eから粉末状の柔細胞をより効率的に抽出することができる。さらに、後述する、ほぐし工程S3によりオイルパーム材1C、1Eをほぐし易くし、除去工程S4により柔細胞が粉状となって維管束から取り除かれるためにも、乾燥工程S2により、オイルパーム材1C、1Eの含水率が、0質量%~15質量%の範囲に収まるように、オイルパーム材1C、1Eを乾燥させることが好ましい。
【0030】
なお、本実施形態では、切り出し工程S1および乾燥工程S2を行ったが、これらの工程が完了したオイルパーム材1C、1E、すなわち、維管束12が配向された乾燥済みのオイルパーム材1C、1Eを準備し、以下に示すほぐし工程S3および除去工程S4を行ってもよい。また、幹材1Aがすでに乾燥している場合には、乾燥工程S2を省略してもよい。
【0031】
1-3.ほぐし工程S3について
ほぐし工程S3では、
図3~
図5に示すように、維管束12、12間に柔細胞13が充填され、維管束12、12同士が結合されたオイルパーム材1C、1Eを、回転軸CL、CL同士が平行となる一対のロール21、21間に巻き込むように圧延する。これにより、オイルパーム材1C、1Eの厚みを減少させて、オイルパーム材1C、1Eをほぐす。このほぐし工程S3では、オイルパーム材1C、1Eがほぐされていれば、ほぐし工程S3後のオイルパーム材1C、1Eの形状は、若干変形してもよく、オイルパーム材1Cをさらに小さい板状またはチップ状に切断してもよいが、維管束12が、オイルパーム材1C、1Eから脱離しないことが望ましい。
【0032】
本実施形態では、各ロール21は、鋼または鋳物などの金属製のロールであり、その表面にめっきが施されていてもよく、ゴム層または樹脂層が被覆されていてもよい。ゴムまたは樹脂層を設けることにより、これらの層がクッションとなって、ほぐし工程S3において、維管束12の損傷を抑えることができる。さらに、各ロール21は、凹凸を有しない円柱状の周面を有しており、このような周面により、オイルパーム材1C、1Eの維管束12の損傷を抑えつつ、これをほぐすことができる。
【0033】
各ロール21は、例えばモータなどの駆動装置(図示せず)により回転させても、ロール21、21を手動で回転させる機構(図示せず)により回転させてもよい。また、一対のロール21、21間のオイルパーム材1Cの通過する隙間の大きさは、一対のロール21、21によりオイルパーム材1C、1Eを挟み込むように圧延し、オイルパーム材1C、1Eをほぐすことができるのであれば、特に限定されるものではない。
【0034】
オイルパーム材1C、1Eをほぐすこと、および、オイルパーム材1C、1Eの維管束12の損傷を低減することを考慮すると、ロール21、21間の隙間の大きさ(ロール21、21の周面間の距離)は、上述した板状のオイルパーム材1Cの厚さおよび後述するチップ状のオイルパーム材1Eの厚さに対して、40~70%であることが好ましく、より好ましくは、45~65%である。このような範囲とすることにより、板状のオイルパーム材1Cであれば、その板状の状態のまま、その厚さが減少するように一対のロール21、21でこれを引き延ばすことができる。さらに、チップ状のオイルパーム材1Eであれば、そのチップ状の形状のまま、その厚さが減少するように、一対のロール21、21でこれを引き延ばすことができる。
【0035】
図3(a)では、ほぐし工程S3において、オイルパーム材1Cの維管束12の繊維方向Dが、ロール21の回転軸CLと直交するように、オイルパーム材1Cを一対のロール21、21間に通過させている。すなわち、
図3(a)では、オイルパーム材1Cの維管束12の繊維方向Dと直交する方向Gが、回転軸CLと平行となっている。なお、繊維方向Dとは、維管束12が延在する方向である。
【0036】
このように、一対のロール21、21間に巻き込むように、オイルパーム材1Cを通過させることにより、オイルパーム材1Cを一対のロール21、21で挟み込みながら、オイルパーム材1Cを、その厚さ方向Tに加圧して、オイルパーム材1Cを変形させることができる。これにより、
図3(b)に示すように、ほぐし工程S3において、柔細胞13を変形させることにより、オイルパーム材1Cの厚さを薄くするとともに、これを繊維方向Dと直交する方向Gに引き伸ばす。この結果、維管束12と柔細胞13との界面に亀裂17を発生させ、柔細胞13を介して維管束12、12同士の結合を弱め、オイルパーム材1Cをほぐすことができる。
【0037】
ここで、
図4(a)および(b)に示す変形例の如く、ほぐし工程S3で、オイルパーム材1Cをほぐすことが好ましい。具体的には、ほぐし工程S3において、板状のオイルパーム材1Cの維管束12の繊維方向Dが、一対のロール21の回転軸CLと平行となるように、オイルパーム材1Cを一対のロール21、21間に通過させる。
【0038】
オイルパーム材1Cの維管束12は、一方向に沿って配向された繊維方向Dを有しており、この繊維方向Dが、一対のロール21、21の回転軸CLと平行となるので、
図4(b)に示すように、維管束12、12同士の距離が拡がるようにオイルパーム材1Cが圧下されて圧延される。ほぐし工程S3後(すなわち圧延後)、オイルパーム材1Cの厚さが減少するように、オイルパーム材1Cの柔細胞13を大きく変形させることができ、維管束12と柔細胞13との界面に亀裂が発生し易い。
【0039】
この結果、後述する除去工程S4において、オイルパーム材1Cから維管束12が分離し易くなるとともに、維管束12に付着している柔細胞13を、維管束12から脱離し易くなり、オイルパーム材1Cから維管束12をより効率的に抽出することができる。
【0040】
別の好ましい態様として、
図5に示す変形例の如く、オイルパーム材1Eは、繊維方向Eに沿って延在した長尺状のチップである。ここで、一対のロール21、21に接触した際に、オイルパーム材1Eが、後述するように倒れ込み易くするには、以下の寸法の条件を満たすことが好ましい。具体的には、長尺状のチップであるオイルパーム材1Dは、長手方向に沿った長さLが20mm~100mmの範囲にあることが好ましく、この長手方向と直交するオイルパーム材1Eの最大厚みTは、10mm~50mmの範囲にあることが好ましい。オイルパーム材1Eの長さL/最大厚みTは、2~10の範囲にあることが好ましい。
【0041】
図5では、一対のロール21、21は、水平方向Hに並設されている。具体的には、本実施形態では、一対のロール21、21の回転軸CL、CLは、水平方向Hに延在するとともに、水平面と同一平面上に存在するように、一対のロール21、21は配置されている。この変形例では、ほぐし工程S3において、オイルパーム材1Eを、一対のロール21、21の上方から一対のロール21、21間に供給する。
【0042】
オイルパーム材1Eは、繊維方向Dに沿って延在した長尺状のチップであるので、オイルパーム材1Eを、一対のロール21、21の上方から一対のロール21、21間に供給すると、ロール21に接触したオイルパーム材1Eは、繊維方向Dが水平方向となるように倒れ込み、各オイルパーム材1Eの維管束12が水平方向Hに配向される。これにより、オイルパーム材1Eの維管束12の繊維方向Dが、回転軸CLと平行となる姿勢で、オイルパーム材1Eを一対のロール21、21間に通過させやすくなる。これにより、上述した如く、除去工程S4において、オイルパーム材1Eから維管束12が分離し易くなるとともに、維管束12に付着している柔細胞13を、維管束12から脱離し易くなる。このような結果、オイルパーム材1Eから維管束12をより効率的に抽出することができる。
【0043】
ほぐし工程S3において、オイルパーム材1C、1Eとして、乾燥させたオイルパーム材を一対のロール21、21間に通過させることが好ましい。これにより、乾燥させたオイルパーム材をほぐすことにより、ほぐされたオイルパーム材1C、1Eの維管束12と柔細胞13との界面から、柔細胞13を粉末の形態で維管束12から脱離し易くなり、オイルパーム材から粉末状の柔細胞13をより効率的に抽出することができる。
【0044】
1-4.除去工程S4について
図6(a)および(b)に示すように、除去工程S4では、ほぐしたオイルパーム材同士をぶつけながら擦り合わせることにより、オイルパーム材の維管束12を分離しつつ、分離した維管束12に付着している柔細胞13を、維管束12から取り除く。なお、
図6(a)および(b)では、ほぐし工程S3で、ほぐしたオイルパーム材1C、1Eから、除去工程S4で、維管束12が一部脱分離したオイルパーム材1Gを示している。
【0045】
本実施形態では、攪拌装置40に、
図3~
図5で示されたオイルパーム材1C、1E(1G)を投入する。攪拌装置40は、モータ(図示せず)に接続された回転シャフト41と、回転シャフト41に連結され、回転シャフト41の径方向に延在した複数の攪拌羽根42、42、…とを備えた攪拌ロータ43と、攪拌ロータ43をほぐしたオイルパーム材1Gとともに収容する攪拌室44とを備えている。攪拌室44には、オイルパーム材1Gを投入する投入口(図示せず)が設けられている。複数の攪拌羽根42は、回転シャフト41の周方向にかつ回転シャフト41の軸方向に等間隔に設けられている。各攪拌羽根42は、攪拌性を高めるため、その先端において、屈曲しており、その先端は丸みを帯びている。
【0046】
本実施形態では、攪拌装置40にほぐされたオイルパーム材1C、1E(1G)を投入し、攪拌ロータ43を回転させる。これにより、
図6(b)に示すように、オイルパーム材1G同士をぶつけながら擦り合わせることにより、オイルパーム材から維管束12を分離しつつ、分離された維管束12に付着した柔細胞13は、オイルパーム材または分離した維管束12に接触し、維管束12から脱離することができる。このようにして、維管束12に付着した柔細胞13を、別の維管束12を接触させる(擦り合わせる)ことにより、取り除くので、オイルパーム材の維管束12の損傷を抑えつつ、この維管束12をオイルパーム材から簡単に抽出することができる。
【0047】
特に、本実施形態では、上述した形状の複数の攪拌羽根42が配置された攪拌装置40を用いることで、攪拌により損傷しないように、維管束12をオイルパーム材から効率良く脱離させつつ、維管束12から柔細胞13を取り除くことができる。なお、ほぐしたオイルパーム材同士をぶつけながら擦り合わせることにより、オイルパーム材の維管束12を分離しつつ、分離した維管束12に付着している柔細胞13を、維管束12から取り除くことができる。
【0048】
本実施形態では、ほぐし工程S3および除去工程S4をドライ環境下で行うことが好ましい。これにより、除去された柔細胞13を粉末状の形態(粉末13p)で得ることができるので、柔細胞の粉末13pを、例えば集塵装置などで回収し易い。さらに、ほぐし工程S3において、柔細胞13がロール21に付着することを抑えるとともに、除去工程S4において、維管束12から取り除かれた柔細胞13が、攪拌装置40に付着することを抑えることができる。
【0049】
このようにして、オイルパーム材1C、1Eから維管束12を分離し、維管束12に付着した柔細胞13の粉末13pは、大きさが異なるので、これらを篩にかけて、簡単かつ精度良く、維管束12と柔細胞13(粉末13p)とを分別することができる。
【0050】
1-5.加工工程S5について
加工工程S5では、一連の工程により抽出したオイルパーム材の維管束12を、成形体10A~10Cの補強材として用いる。具体的には、成形体10A~10Cは、広葉樹若しくは針葉樹に由来する木質材料、樹脂材料、または無機材料から、成形された成形体であり、抽出した維管束12を成形体10A~10Cに含有させる。これらの成形体10A~10Cの成形を、
図7(a)~(c)を参照しながら、以下に説明する。なお、成形体10Aは、木質ボードであり、成形体10Bは、樹脂ボードであり、成形体10Cは、無機ボードである。
【0051】
図7(a)では、広葉樹若しくは針葉樹に由来する木質材料、樹脂材料、または無機材料に、維管束12を混練した混合物8A、8B、8Cを作製する。混合物8A、8B、8Cを、成形装置65の基台65Aと押圧部材65Bとの間に挟み込んで、混合物8A、8B、8Cを押圧し、成形体10A、10B、10Cを製造する。
【0052】
具体的には、成形体10Aを構成する材料が、木質材料16Aである場合には、たとえば、広葉樹若しくは針葉樹の木質繊維または木質チップからなる木質材料を準備し、この木質材料に、維管束12と接着剤とを混合し、混合物8Aを作製する。得られた混合物8Aを、成形装置65の基台65Aと押圧部材65Bとの間に挟み込んで、混合物8Aから成形体(木質ボード)10Aを熱圧成形する。
図7(b)および(c)に示すように、維管束12の長さは、木質繊維または木質チップよりも長いため、得られた成形体10Aは、木質材料16Aの成形体を、維管束12で補強したものとなる。このようにして、たとえば、インシュレーションボード、パーティクルボード、中密度繊維板等の木質ボードを、維管束12により補強した成形体10Aを簡単に得ることができる。
【0053】
ここで、木質繊維または木質チップとしては、たとえば、ビーチ、オーク、メイプル、ケヤキ、ウォールナット、シナ、ナラ、ヤチダモ、キリ、マホガニー、チーク、ローズウッド、トチ、クロガキ、シオジ、ニレ、カバ、クリ、レッドラワン、ブナ、ヤマザクラ、タンギール、またはコクタンなどの広葉樹、若しくは、スギ、ヒノキ、エゾマツ、ネズコ、または、カラマツなどの針葉樹などからなる繊維またはチップである。接着剤としては、フェノール樹脂接着剤、メラミン樹脂接着剤、ユリア樹脂接着剤、またはイソシアネート樹脂接着剤等を挙げることができる。
【0054】
成形体10Bを構成する材料が、樹脂材料16Bである場合には、未硬化の熱硬化性樹脂または溶融状態の熱可塑性樹脂を準備し、この樹脂材料に、維管束12を混合し、混合物8Bを作製する。樹脂材料が熱硬化性樹脂である場合には、得られた混合物8Bを、成形装置65で、熱硬化開始温度以上に加熱しながら、混合物8Bから成形体10Bを成形する。一方、樹脂材料が熱可塑性樹脂である場合には、得られた混合物8Bを、成形装置65で押圧しながら冷却し、混合物8Bから成形体(樹脂ボード)10Bを成形する。得られた成形体10Bは、樹脂材料16Bの成形体を、維管束12で補強したものとなる。
【0055】
上述した熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、ABS樹脂、または、アクリル樹脂等を挙げることができる。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、またはポリウレタン樹脂等を挙げることができ、これらに発泡剤を含有させて、加熱時に樹脂材料を発泡してもよい。
【0056】
成形体10Cを構成する材料が、無機材料16Cであり、無機材料が石膏である場合には、以下のスラリーを準備する。スラリーは、たとえば、β型半水石膏(硫酸カルシウム半水和物、含有量90%以上)を主成分とする半水石膏に対して水を適量(たとえば、標準混水量85%、石膏100重量部に対して加える水の最適量が85重量部)加え、その懸濁液をミキサーで攪拌して調整することにより得られる。これらのスラリーと維管束12とを混合した混合物8Cを作製し、得られた混合物8Cを、成形装置65で押圧しながら成形し、室温で静置して半水石膏を水和反応が完了するまで放置する。その後、たとえば、40~50℃の乾燥室内で乾燥し、混合物8Cから成形体(石膏ボード)10Cを成形する。
【0057】
無機材料16Cがセメントである場合には、このようなスラリーとして、ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメントなどセメントのスラリーを準備する。上述した方法と同様の方法で、スラリーと維管束12との混合物8Cを作製し、混合物8Cを成形装置65で押圧しながら成形する。その後、水和反応によりスラリーを硬化させ、成形装置65から成形体(セメントボード)10Cを取り出し、乾燥させる。
【0058】
この他にも、成形体10A~10Cの製造方法において、維管束12を集合させた集合体を作製し、この集合体に、上述した材料を含浸させてもよい。集合体は、維管束12がランダムに配置されたものであってもよく、一定の方向に配向された少なくとも1つの層からなってもよく、隣接する層が異なる方向に配向されるように積層したものであってもよい。また、集合体の維管束12を、接着剤を介して接合してもよい。
【実施例】
【0059】
〔実施例1-1〕
発明者は、本発明の実施例として、以下の手順で、維管束を抽出した。まず、オイルパーム材の単板として、幅(維管束の繊維方向D)297mm×長さ(繊維方向Dと直交する方向G)305mm×厚さ4.1mmの気乾状態のオイルパーム材を準備した。次に、
図3(a)に示すように、オイルパーム材の維管束の繊維方向Dが、回転軸と直交するように、オイルパーム材を、ロールプレス機の一対のロール(直径250mm)で圧延し、オイルパーム材をほぐした。なお、一対のロール間の隙間の大きさは、2.5mmである。したがって、実施例1-1では、厚さ4.1mmのオイルパーム材を、2.5mmの隙間が形成された一対のロールで圧延しながら、ほぐしたことになる。
【0060】
ほぐしたオイルパーム材を、幅(維管束の繊維方向D)10~20mm×長さ(繊維方向Dと直交する方向G)50mm×厚さ4.1mmに切断し、これを攪拌装置(攪拌機)に投入し、攪拌ロータを340rpmで、5分間回転した。これにより、オイルパーム材の維管束を分離しつつ、分離した維管束に付着している柔細胞を、維管束から取り除いた。この工程における攪拌を、以下、攪拌処理という。このようにして、オイルパーム材から維管束を抽出した。
【0061】
〔実施例1-2〕
実施例1-1と同じようにして、オイルパーム材から維管束を抽出した。実施例1-1と相違する点は、オイルパーム材をほぐす際に、一対のロール間の隙間の大きさを、2.0mmにした点である。
【0062】
〔実施例2-1〕
実施例1-1と同じようにして、オイルパーム材から維管束を抽出した。実施例1-1と相違する点は、
図4(a)に示すように、オイルパーム材の維管束の繊維方向Dが、ロールの回転軸と平行となるように、オイルパーム材を一対のロールで圧延し、オイルパーム材をほぐした点である。なお、一対のロール間の隙間の大きさは、実施例1-1と同様に2.5mmである。
【0063】
〔実施例2-2〕
実施例2-1と同じようにして、オイルパーム材から維管束を抽出した。実施例2-1と相違する点は、オイルパーム材をほぐす際に、一対のロール間の隙間の大きさを、2.0mmにした点である。
【0064】
〔比較例1〕
実施例1-1と同じようにして、オイルパーム材から維管束を抽出した。実施例1-1と相違する点は、一対のロールによりオイルパーム材をほぐしていない点である。
【0065】
実施例1-1~2-2のほぐし工程後のオイルパーム材の単板の寸法を測定した結果を表1に示す。なお、表1には、ほぐし工程前のオイルパーム材の単板の寸法も合わせて示した。さらに、実施例1-2、2-2、比較例1の攪拌処理前後のオイルパーム材と維管束の状態を観察した。この結果を、
図8(a)~(c)に示す。
図8(a)は、比較例1の写真であり、
図8(b)は、実施例1-2の写真であり、
図8(c)は、実施例2-2の写真である。さらに、実施例1-2で抽出した維管束を確認した。この結果を
図9(a)、(b)に示す。さらに、実施例1-2、2-2、比較例1で抽出した繊維長さを測定し、繊維長さの分布を確認した。この結果を、
図10に示す。
【0066】
【0067】
表1からも明らかなように、実施例1-1と実施例1-2を比較すると、実施例1-2のように、一対のロール間の隙間が狭い条件で圧延されたオイルパーム材の方が、ほぐし工程後のオイルパーム材の直交方向Gの長さが大きくなり、オイルパーム材の厚さが薄くなっている。すなわち、実施例1-1に比べて、実施例1-2の方が、オイルパーム材が良くほぐされているといえる。実施例2-1、2-2を比較しても、同様のことがいえる。
【0068】
さらに、実施例1-1~2-2の如く、オイルパーム材に対して、一対のロールで直接圧下するのではなく、一対のロールの隙間を確保しつつ、一対のロール間を固定して、この距離よりも厚いオイルパーム材を一対のロール間に通過させた方が、オイルパーム材の維管束に直接ロールからの荷重が作用しないため、維管束が損傷し難いと考えられる。
【0069】
実施例1-2と実施例2-2を比較すると、一対のロール間の隙間は同じであるが、実施例2-2の方が、ほぐし工程後のオイルパーム材の直交方向Gの長さが大きくなり、オイルパーム材の厚さが薄くなっている。実施例2-2では、繊維方向が、一対のロールの回転軸と平行となるように、オイルパーム材が一対のロール間を通過するので、維管束同士の距離が拡がるようにオイルパーム材が圧下されたからであると考えられる。
【0070】
図8(b)および(c)に示すように、実施例1-2、2-2では、比較例1(
図8(a)参照)に比べて、維管束が抽出されている割合が多く、比較例1には、単板の小片が多数残存していた(
図8(a)参照)。さらに、実施例2-2は、維管束が略抽出されていた。この結果から、実施例2-2では、上述したように攪拌前のオイルパーム材が、実施例1-2のものに比べて、十分にほぐされていたと考えられる。さらに、
図9に示すように、オイルパーム材をほぐしておけば、攪拌処理により、維管束に付着した柔細胞を効率的に除去できると考えられる。
【0071】
さらに、実施例1-2の繊維長さの平均値は、38.1mmであり、実施例2-2の繊維長さの平均値は、39.6mmであり、比較例1の繊維長さの平均値31.3mmよりも大きかった。さらに、実施例2-2では、維管束の長さ(繊維長)が、46~50mmのものが、他のものに比べて多かった。実施例1-2および実施例2-2の如く、攪拌加工前にロールプレス機で一次分離加工を行うことで、比較例1のロール加工無しの場合より長繊維が得られる。比較例1のロール加工無しの場合、攪拌加工でパーム単板小片から短い繊維が優先的に分離したと推測される。ロールプレス機と攪拌機の加工を組み合わせることで、実施例1-2、2-2に示すように、パーム単板小片と同等の長さの繊維を分離回収できるといえる。
【0072】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載された本考案の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0073】
1C、1E:オイルパーム材、12:維管束、13:柔細胞、21:ロール