(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】液体吐出装置およびインクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240604BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/01 303
B41J2/175 503
(21)【出願番号】P 2020115666
(22)【出願日】2020-07-03
【審査請求日】2023-05-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】山本 明広
(72)【発明者】
【氏名】岡本 仁成
(72)【発明者】
【氏名】良知 洋志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 広信
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-171168(JP,A)
【文献】特開2011-212916(JP,A)
【文献】特開2005-254619(JP,A)
【文献】特開2006-341417(JP,A)
【文献】特開2014-004699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するアクチュエータと、前記アクチュエータを駆動する駆動回路と、前記駆動回路が発生させる熱を放熱する複数のヒートシンクと、を備えたヘッドユニットと、
前記複数のヒートシンクを含む前記ヘッドユニットの少なくとも一部を収容する箱状のキャリッジと、
前記キャリッジの外部に向かって開口し空気を吸入する吸入口と、前記吸入口から吸入された空気を送り出す送風口と、を備えた冷却ファンと、
前記送風口に接続された接続口と、前記送風口から前記接続口に送り出された空気が流れる筒状の流路と、それぞれ前記複数のヒートシンクの各ヒートシンクに向かって開口するように前記流路に形成された複数の吹出口と、を備えたダクトと
、
それぞれ液体が収容された複数の液体容器と、
前記複数の液体容器と前記ヘッドユニットとを接続する複数の液体供給路と、
を備え、
前記複数の吹出口の各吹出口は、対応するヒートシンクよりも第1方向の一方側に配置されるとともに、前記第1方向の他方側に向かって開口しており、
前記複数の液体供給路は、それぞれ、前記複数のヒートシンクのうちの少なくとも1つのヒートシンクよりも前記第1方向の前記他方側に位置する部分を有している、
液体吐出装置。
【請求項2】
所定のスキャン方向に延びるとともに前記スキャン方向に移動可能なように前記キャリッジを支持するガイドレールと、
前記ガイドレールに沿って前記キャリッジを前記スキャン方向に移動させるキャリッジ駆動部と、
を備え、
前記複数のヒートシンクは、前記ガイドレールよりも前記スキャン方向に直交する直交方向の一方側に配置されるとともに、前記スキャン方向の位置が互いに異なっており、
前記流路は、前記直交方向に関して前記ガイドレールと前記複数のヒートシンクとの間に位置するとともに前記スキャン方向に延びる第1流路を含み、
前記複数の吹出口は、それぞれ前記直交方向の前記一方側に向かって開口し、かつ、前記スキャン方向に並ぶように前記第1流路に形成されている、
請求項1
に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記冷却ファンは、前記第1流路よりも前記直交方向の前記一方側に設けられ、
前記流路は、前記第1流路に接続されるとともに前記第1流路との接続部から前記直交方向の前記一方側に延びる第2流路を含み、
前記接続口は、前記第2流路の前記第1流路との接続部とは逆側の端部に構成されている、
請求項
2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記液体はインクであり、
請求項1~
3のいずれか一つに記載の液体吐出装置を備えた、
インクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、および、それを備えたインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクジェット方式の液体吐出装置、および、そのような液体吐出装置によってインクを吐出して記録媒体に印刷を行うインクジェットプリンタが知られている。このような液体吐出装置およびインクジェットプリンタの中には、液体吐出ヘッドを冷却する冷却ファンを備えたものが存在する。例えば特許文献1には、キャリッジと、キャリッジに収容されたインクヘッドおよび冷却ファンと、を備えたインクジェットプリンタが開示されている。特許文献1の冷却ファンはインクヘッドに向かって風を送るように構成され、インクヘッドに当たった風はその後、キャリッジのカバー体によって形成されたダクト構造によって制御基板に誘導される。特許文献1によれば、かかる構成により、1つの冷却ファンによってインクヘッドと制御基板とをともに冷却することができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたような構成によれば、冷却ファンはその送風方向正面に位置するインクヘッドを効率よく冷却できる。しかし、かかる構成では、冷却ファンに対して送風方向正面以外の方向に位置するインクヘッドは必ずしも効率的に冷却できない。そのため、かかる構成では、例えば複数のインクヘッドが並んで配置された比較的幅の広いヘッドユニット(以下、ヘッドユニットとは、1つまたは複数のインクヘッドを含むユニットを言う)などを効率的に冷却するためには、相当数の冷却ファンが必要である。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、少ない冷却ファンによってヘッドユニットを効率的に冷却することができる液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示する液体吐出装置は、ヘッドユニットと、箱状のキャリッジと、冷却ファンと、ダクトと、を備えている。前記ヘッドユニットは、液体を吐出するアクチュエータと、前記アクチュエータを駆動する駆動回路と、前記駆動回路が発生させる熱を放熱する複数のヒートシンクと、を備えている。前記キャリッジは、前記複数のヒートシンクを含む前記ヘッドユニットの少なくとも一部を収容している。前記冷却ファンは、前記キャリッジの外部に向かって開口し空気を吸入する吸入口と、前記吸入口から吸入された空気を送り出す送風口と、を備えている。前記ダクトは、前記送風口に接続された接続口と、前記送風口から前記接続口に送り出された空気が流れる筒状の流路と、それぞれ前記複数のヒートシンクの各ヒートシンクに向かって開口するように前記流路に形成された複数の吹出口と、を備えている。
【0007】
上記液体吐出装置によれば、冷却ファンにはダクトが接続されており、ダクトに設けられた複数の吹出口は、それぞれ、ヘッドユニットの1つのヒートシンクに向かって開口している。そのため、冷却ファンにより発生され、各吹出口から吹き出す風は各ヒートシンクに向けられる。それにより、複数のヒートシンクはいずれも効率的に冷却される。その結果、少ない冷却ファンによってヘッドユニットを効率的に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係るインクジェットプリンタの正面図である。
【
図3】キャリッジ内部の構成を示す一部破断平面図である。
【
図4】ヘッドユニットおよびインク供給システムの構成を模式的に示す図である。
【
図5】一変形例に係るキャリッジ内部の構成を示す一部破断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係るインクジェットプリンタについて説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。以下の説明では、インクジェットプリンタを正面から見たときに、インクジェットプリンタから遠ざかる方を前方、インクジェットプリンタに近づく方を後方とする。図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表している。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、インクジェットプリンタの設置態様等を限定するものではない。
【0010】
[プリンタの構成]
図1は、一実施形態に係る大判のインクジェットプリンタ(以下、「プリンタ」とする。)10の正面図である。本実施形態に係るプリンタ10は、ロール状の記録媒体5を順次前方に移動させるとともに、左右方向に移動するキャリッジ40に搭載されたヘッドユニット50からインクを吐出することによって、記録媒体5上に画像を印刷する。記録媒体5は、画像が印刷される対象物である。記録媒体5は特に限定されない。なお、図面中の符号Yはキャリッジ40のスキャン方向を示し、符号Xは記録媒体5のフィード方向を示している(
図2参照)。スキャン方向Yは、ここでは、プリンタ10の左右方向に一致している。フィード方向Xは、プリンタ10の前後方向に一致している。スキャン方向Yとフィード方向Xとは直交している。ただし、スキャン方向Yおよびフィード方向Xは上記した方向に限定されるわけではない。
【0011】
図1に示すように、プリンタ10は、プラテン12と、キャリッジ移動装置20と、搬送装置30と、キャリッジ40と、ヘッドユニット50と、インク供給システム60と、冷却装置70と、を備えている。
【0012】
キャリッジ移動装置20は、キャリッジ40をプラテン12の上方でスキャン方向Yに移動させる。
図1に示すように、キャリッジ移動装置20は、ガイドレール21と、ベルト22と、一対のプーリ23a、23bと、キャリッジモータ24とを備えている。ガイドレール21は、スキャン方向Yに延びている。ガイドレール21は、スキャン方向Yに移動可能なようにキャリッジ40を支持している。キャリッジ40には無端状のベルト22が固定されている。ベルト22は、一対のプーリ23aおよび23bに巻き掛けられている。一方のプーリ23aにはキャリッジモータ24が取り付けられている。キャリッジモータ24は、ガイドレール21に沿ってキャリッジ40をスキャン方向Yに移動させるキャリッジ駆動部の一例である。キャリッジモータ24が駆動するとプーリ23aが回転し、ベルト22が走行する。それにより、キャリッジ40がガイドレール21に沿ってスキャン方向Yに移動する。
【0013】
プラテン12は、記録媒体5を支持する支持台である。搬送装置30は、プラテン12上の記録媒体5をフィード方向Xに搬送する。搬送装置30は、ピンチローラ31と、グリットローラ32と、フィードモータ33とを備えている。ピンチローラ31は、プラテン12の上方に設けられ、記録媒体5を上方から押さえつける。グリットローラ32は、プラテン12に設けられている。グリットローラ32は、フィードモータ33に連結されている。ピンチローラ31とグリットローラ32との間に記録媒体5が挟まれた状態でフィードモータ33によりグリットローラ32が回転されると、記録媒体5はフィード方向Xに搬送される。
【0014】
キャリッジ40は、ヘッドユニット50と、インク供給システム60の一部と、冷却装置70とを搭載している。キャリッジ40は、ガイドレール21の前面に係合し、ガイドレール21よりも前方に位置している。
図2は、キャリッジ40の内部の構成を示す斜視図である。
図3は、キャリッジ40の内部の構成を示す一部破断平面図である。キャリッジ40には、前面および上面を覆うカバーが設けられていてもよいが、
図2および
図3では図示を省略している(その他、配線・配管等の図示も省略)。
図2に示すように、キャリッジ40は、箱状に構成され、ヘッドユニット50の一部を収容している。詳しくは、キャリッジ40には、ヘッドユニット50の上部が収容されている。図示しないノズルが形成されたヘッドユニット50の下面は、キャリッジ40の外部に露出している。キャリッジ40に収容されたヘッドユニット50の一部は、複数のヒートシンク53L、53R、57L、および57Rを含んでいる。ただし、キャリッジ40は、ヘッドユニット50の全部を収容していてもよい。
【0015】
ヘッドユニット50は、2つのインクジェットヘッド51および55を備えている。ヘッドユニットとは、ここでは、1つまたは複数のインクジェットヘッドを含むユニットのことを言う。ヘッドユニット50に含まれるインクジェットヘッドの数は1つでもよく、3つ以上でもよい。
図4は、ヘッドユニット50およびインク供給システム60の構成を模式的に示す図である。
図4に示すように、第1インクジェットヘッド51は、インクを吐出する複数のアクチュエータ51aを備えている。アクチュエータ51aは、ここでは、インクが貯留される圧力室と、圧力室の一部を仕切る振動板と、振動板を振動させる圧電素子とを備えている。圧電素子が膨張・収縮することにより振動板が振動し、それによって圧力室の体積が減少・増大する。圧力室の体積の変化により、圧力室内のインクが吐出される。第2インクジェットヘッド55も、同様のアクチュエータ55aを備えている。ただし、アクチュエータの方式は特に限定されない。例えば、インクジェットヘッドは、サーマル式のインクジェットヘッドなどであってもよい。
【0016】
図4に示すように、本実施形態では、ヘッドユニット50は、第1インクジェットヘッド51のアクチュエータ51aを駆動させる第1駆動回路52と、第2インクジェットヘッド55のアクチュエータ55aを駆動させる第2駆動回路56と、を備えている。ここでは、第1インクジェットヘッド51は、それぞれフィード方向Xに延びるとともにスキャン方向Yに並んだ4つのノズル列を有している。第1駆動回路52は、複数のアクチュエータ51aを駆動させることによって4つのノズル列の複数のノズルからインクを吐出させる。同様に、第2インクジェットヘッド55は、フィード方向Xに延びるとともにスキャン方向Yに並んだ4つのノズル列を有している。第2駆動回路56は、複数のアクチュエータ55aを駆動させることによって4つのノズル列の複数のノズルからインクを吐出させる。
【0017】
ヘッドユニット50は、第1駆動回路52および第2駆動回路56が発生させる熱を放熱する複数のヒートシンク53L、53R、57L、および57Rを備えている。詳しくは、第1左ヒートシンク53Lおよび第1右ヒートシンク53Rは、第1駆動回路52に接続され、第1駆動回路52が発生させる熱を放熱する。第2左ヒートシンク57Lおよび第2右ヒートシンク57Rは、第2駆動回路56に接続され、第2駆動回路56が発生させる熱を放熱する。複数のヒートシンク53L、53R、57L、および57Rは、キャリッジ40の内部に収容されている。複数のヒートシンク53L、53R、57L、および57Rは、ガイドレール21よりも前方に配置されている。
【0018】
図2に示すように、第1左ヒートシンク53Lおよび第1右ヒートシンク53Rは、それぞれ、フィード方向Xおよび上下方向に延びる平板状の形状を有している。第1左ヒートシンク53Lと第1右ヒートシンク53Rとは、スキャン方向Yに並んで設けられている。第1左ヒートシンク53Lおよび第1右ヒートシンク53Rは、例えばアルミニウム合金によって形成されている。第2左ヒートシンク57Lおよび第2右ヒートシンク57Rも、第1左ヒートシンク53Lおよび第1右ヒートシンク53Rと同様に構成されている。
図3に示すように、本実施形態では、複数のヒートシンク53L、53R、57L、および57Rは、スキャン方向Yの位置が互いに異なっており、フィード方向Xの位置は揃っている。複数のヒートシンク53L、53R、57L、および57Rは、ヘッドユニット50の後方側の部分に配置されている。
【0019】
複数のヒートシンク53L、53R、57L、および57Rの形状、配置、材料等は特に限定されない。例えば、複数のヒートシンク53L、53R、57L、および57Rは、平板状に構成されていなくてもよい。複数のヒートシンク53L、53R、57L、および57Rは、例えば、放熱を促進するフィンを備えていてもよい。複数のヒートシンク53L、53R、57L、および57Rは、スキャン方向Yおよび上下方向に延びていてもよく、その他の方向に延びていてもよい。また、複数のヒートシンク53L、53R、57L、および57Rの一部または全部は、スキャン方向Yの位置が揃いかつフィード方向Xの位置が異なっていてもよく、スキャン方向Yおよびフィード方向Xの位置が異なっていてもよい。例えば、第1インクジェットヘッド51のフィード方向Xの位置と第2インクジェットヘッド55のフィード方向Xの位置とがずれている、いわゆるスタガ配置の場合には、第1左ヒートシンク53Lおよび第1右ヒートシンク53Rのフィード方向Xの位置と第2左ヒートシンク57Lおよび第2右ヒートシンク57Rのフィード方向Xの位置とが異なっていてもよい。
【0020】
インク供給システム60は、ヘッドユニット50にインクを供給するシステムである。
図4に示すように、インク供給システム60は、複数のインクカートリッジ61と、複数のインク供給路62と、複数の送液ポンプ63とを備えている。複数のインクカートリッジ61には、それぞれインクが収容されている。複数のインク供給路62は、複数のインクカートリッジ61とヘッドユニット50とを接続している。ここでは、複数のインクカートリッジ61は、それぞれ1つのノズル列に対応している。複数のインク供給路62は、それぞれ1つのインクカートリッジ61と1つのノズル列とを接続している。複数の送液ポンプ63は、それぞれ1つのインク供給路62に設けられ、インクカートリッジ61の側からヘッドユニット50の側に向かってインクを送る。
【0021】
図4に示すように、複数のインク供給路62は、それぞれダンパ62aを備えている。ダンパ62aは、インクを一時的に貯留する中間容器である。ダンパ62aは、内部のインクの圧力が所定の圧力を下回ると信号を送信するように構成されている。プリンタ10の制御装置(図示せず)は、ダンパ62aのいずれかから信号を受信すると、信号を受信したダンパ62aに対応する送液ポンプ63を、信号を受信しなくなるまで駆動させる。これにより、インク供給システム60内のインク圧の変動が緩和される。
【0022】
図3に示すように、8つのダンパ62aのうちの左側の4つは、第1インクジェットヘッド51の上方に設けられている。これら4つダンパ62aはスキャン方向Yに隣接して配置されている。以下、これらの隣接した複数のダンパ62aを、第1ダンパ群D1とも呼ぶ。第1ダンパ群D1は、第1インクジェットヘッド51に接続されたダンパ62aの集合である。第1ダンパ群D1は、第1左ヒートシンク53Lおよび第1右ヒートシンク53Rよりも前方に位置している。
図3に示すように、第1ダンパ群D1は、スキャン方向Yに関して、第1左ヒートシンク53Lと第1右ヒートシンク53Rとの間に位置している。
【0023】
他の4つのダンパ62aは、第2インクジェットヘッド55の上方に設けられている。これら他の4つダンパ62aは、スキャン方向Yに隣接して配置された第2ダンパ群D2を構成している。第2ダンパ群D2は、第2インクジェットヘッド55に接続されたダンパ62aの集合である。第2ダンパ群D2は、第2左ヒートシンク57Lおよび第2右ヒートシンク57Rよりも前方に位置している。第2ダンパ群D2は、スキャン方向Yに関して、第2左ヒートシンク57Lと第2右ヒートシンク57Rとの間に位置している。
【0024】
8つのダンパ62aは、スキャン方向Yに並んで配置されており、そのフィード方向Xの位置は揃っている。複数のダンパ62aは、複数のヒートシンク53L、53R、57L、および57Rよりも前方に位置している。複数のダンパ62aと、複数のヒートシンク53L、53R、57L、57Rとは、ここでは、概ね同じ上下方向の位置に設けられている。
【0025】
なお、例えば複数のインクジェットヘッドがスタガ配置されているヘッドユニットなどの場合には、一部のヒートシンクが一部のダンパよりも前方に位置することがあってもよい。その場合、複数のダンパは、それぞれ、複数のヒートシンクのうちの少なくとも1つのヒートシンクよりも前方に位置しているだけでもよく、全てのヒートシンクよりも前方に位置していなくてもよい。上記少なくとも1つのヒートシンクとその前方に位置するダンパとは、同じインクジェットヘッドに接続されたものであってもよい。
【0026】
図2に示すように、冷却装置70は、冷却ファン80と、ダクト90とを備えている。
図3に示すように、冷却ファン80は、空気を吸入する吸入口81と、吸入口81から吸入された空気を送り出す送風口82とを備えている。吸入口81は、キャリッジ40の外部に向かって開口している。吸入口81は、ここでは、右方に向かって開口している。ただし、吸入口81が開口する方向は限定されない。冷却ファン80は、図示しないファンとファンを回転させるモータとを備え、ファンを回転させることより、吸入口81から吸入された空気を送風口82から送り出す。
【0027】
図3に示すように、ダクト90は、冷却ファン80の送風口82に接続された接続口91と、送風口82から接続口91に送り出された空気が流れる筒状の流路92と、流路92に形成された複数の吹出口93A、93B、93C、93Dと、を備えている。流路92は、接続口91から後方に延びた後、左方に向かって屈折している。以下、流路92のスキャン方向Yに延びた部分を第1流路92a、フィード方向Xに延びた部分を第2流路92bとも称する。
【0028】
第1流路92aは、フィード方向Xに関して、ガイドレール21と複数のヒートシンク53L、53R、57L、57Rとの間に位置している。言い換えると、第1流路92aは、ガイドレール21よりも前方、かつ、複数のヒートシンク53L、53R、57L、57Rよりも後方に位置している。第1流路92aは、スキャン方向Yに延びている。
図2に示すように、第1流路92aの断面は、フィード方向Xの長さよりも上下方向の長さが長い扁平な略長方形に構成されている。ただし、第1流路92aの断面形状は特に限定されない。第1流路92aの左端(第2流路92bとの接続部92cとは逆側の端部)は、閉鎖されている。
【0029】
第2流路92bは、第1流路92aに接続されるとともに、第1流路92aとの接続部92cから前方に延びている。ダクト90の接続口91は、第2流路92bの第1流路92aとの接続部92cとは逆側の端部に構成されている。接続口91に接続された冷却ファン80は、第1流路92aおよび第2流路92bよりも前方に位置している。第2流路92bの断面は、スキャン方向Yの長さよりも上下方向の長さが長い扁平な略長方形に構成されている。ただし、第2流路92bの断面形状は特に限定されない。
【0030】
複数の吹出口93A~93Dは、スキャン方向Yに並ぶように第1流路92aに形成されている。複数の吹出口93A~93Dは、それぞれ、第1流路92aの前方側の壁面に形成され、前方に向かって開口している。複数の吹出口93A~93Dは、いずれも、スキャン方向Yよりも上下方向に長い扁平な略長方形の貫通孔である。
図3に示すように、複数の吹出口93A~93Dは、それぞれ、ヒートシンク53L、53R、57L、57Rに向かって開口している。吹出口93A~93Dから吹き出す風は、それぞれ、ヒートシンク53L、53R、57L、57Rに吹き付けられる。以下、ヒートシンク53L、53R、57L、57Rは、それぞれ、吹出口93A~93Dに対応している、とも言う。各吹出口93A~93Dは、対応するヒートシンク53L、53R、57L、57Rよりも後方に配置されている。
【0031】
[冷却動作]
以下では、冷却装置70の動作と、それによって得られる有利な効果について説明する。冷却装置70を動作させるときには、冷却ファン80が駆動される。これにより、ダクト90の流路92に冷却ファン80が発生させた風が流れ、吹出口93A~93Dから前方に向かって風W1(
図3参照)が噴出する。風W1は、複数のヒートシンク53L、53R、57L、および57Rの熱を奪って前方に流れる。これにより、複数のヒートシンク53L、53R、57L、および57Rを介して、第1駆動回路52および第2駆動回路56が冷却される。
【0032】
従来のインクジェットプリンタでは、特許文献1に開示されているように、ヘッドユニットは冷却ファンの風を直接吹き付けることにより冷却されていた。そのため、冷却ファンは、ヘッドユニットのうち、冷却ファンの送風方向正面に位置する部分を効率よく冷却できるものの、それ以外の方向に位置する部分は必ずしも効率的に冷却できなかった。そのため、従来の構成では、例えば本実施形態のようなスキャン方向に長いヘッドユニットを効率的に冷却するためには、スキャン方向に並べた相当数の冷却ファンが必要であった。
【0033】
それに対して、本実施形態では、冷却ファン80にはダクト90が接続されており、ダクト90に設けられた複数の吹出口93A~93Dは、それぞれ、ヘッドユニット50の対応するヒートシンク53L、53R、57L、57Rに向かって開口している。そのため、冷却ファン80により発生され、各吹出口93A~93Dから吹き出す風は、各ヒートシンク53L、53R、57L、57Rに吹き付けられる。それにより、複数のヒートシンク53L、53R、57L、57Rは、いずれも効率的に冷却される。具体的には、かかる構成によれば、いずれのヒートシンク53L、53R、57L、57Rも確実に風を受けるため確実に冷却される。また、冷却ファン80の能力が複数のヒートシンク53L、53R、57L、57Rを冷却することに集中的に利用されるため、冷却効率が高い。その結果、1つの冷却ファン80によってヘッドユニット50を効率的に冷却することができる。なお、プリンタ10は、同様の冷却装置70を複数備えていてもよい。
【0034】
本実施形態では、風W1は、フィード方向Xに関してガイドレール21と複数のヒートシンク53L、53R、57L、57Rとの間に位置するとともにスキャン方向Yに延びる第1流路92aに形成された吹出口93A~93Dから噴出される。これにより、フィード方向Xに関するガイドレール21とヘッドユニット50との間の距離を短くすることが可能である。その理由を以下に説明する。
【0035】
例えば、特許文献1に開示されたインクジェットプリンタのように、ヘッドユニットよりも前方に冷却ファンを設け、後方(ガイドレールの方)に向かって風を送る場合、ヘッドユニットの後方の開放空間が狭いと流路抵抗により流れる風の量が少なくなる。従って、ヘッドユニットとガイドレールとの間の距離を長く確保する必要がある。
【0036】
あるいは、例えば、ヘッドユニットよりも後方に冷却ファンを設け、前方に向かって風を送る場合には、冷却ファンの吸引口付近を開放空間としておく必要がある。従って、やはり、ヘッドユニットとガイドレールとの間の距離を長く確保する必要がある。
【0037】
それに対して、本実施形態では、ヘッドユニット50とガイドレール21との間の距離は、ガイドレール21とキャリッジ40との係合部を除き、第1流路92aを配置可能な距離以上であればよい。特に本実施形態では、第1流路92aは、フィード方向Xの長さよりも上下方向の長さが長い扁平な形状に構成されている。そのため、フィード方向Xに関するガイドレール21とヘッドユニット50との間の距離が短い。ガイドレール21とヘッドユニット50との間の距離が短いと、移動によるキャリッジ40の振動が抑制され、印刷品質が向上する。
【0038】
さらに、本実施形態では、冷却ファン80は、流路92のうち吹出口93A~93Dが形成された部分である第1流路92aよりも前方に配置されている。流路92の冷却ファン80寄りの部分である第2流路92bは、冷却ファン80に接続されるように前方に向かって曲げられている。第1流路92aよりも前方にはヘッドユニット50が設けられるため、キャリッジ40は第1流路92aよりも前方まで延びている。そこで、かかる屈折したダクト90、および第1流路92aよりも前方に配置された冷却ファン80によれば、第1流路92aよりも前方のスペースを有効に利用することができる。
【0039】
図3に示すように、複数のヒートシンク53L、53R、57L、57Rを冷却した風W1は、風W2となってヒートシンク53L、53R、57L、57Rの側面に沿って前方に流れる。風W2は、
図3に示すように、複数のダンパ62aに吹き付ける。インク供給路62のうちダンパ62aは、複数のヒートシンク53L、53R、57L、57Rよりも前方に位置するため、複数の吹出口93A~93Dから吹き出されヒートシンク53L、53R、57L、57Rの側方を通過した風W2を受けることができる。風W2は、ヒートシンク53L、53R、57L、57Rの熱を奪うことにより暖められている。そのため、複数のダンパ62aは、風W2により暖められる。
【0040】
インク供給路62内のインクは、暖められることにより粘度が低下する。公知のように、インクジェットプリンタは、インクの粘度を下げるためにインクを加熱する加熱装置を備えることもあり、インクをある程度暖めることは印刷品質の向上または安定に寄与する。本実施形態によれば、冷却装置70によるヘッドユニット50の冷却を利用して、インク供給路62内のインクを暖めることができる。
【0041】
なお、ここでは、ヒートシンク53L、53R、57L、57Rを冷却することによって暖められた風W2を受けるインク供給路62の部材はダンパ62aであるが、インク供給路62の他の部材でもよい。ただし、中間容器としてのダンパ62aにはインクが貯留されているため、インクの加熱効率がよく、加熱の程度も安定しやすい。
【0042】
本実施形態では、風W1およびW2の流れを促進するため、ヒートシンク53Lおよび53Rと第1ダンパ群D1との間に、それぞれ隙間C1が設けられている。同様に、ヒートシンク57Lおよび57Rと第2ダンパ群D2との間に、それぞれ隙間C2が設けられている。これにより、ヘッドユニット50の冷却効率が向上するとともに、ダンパ62aの加熱効率が向上する。
図3に示すように、加熱された風W2は、隙間C1を通った後、第1ダンパ群D1の側面に沿って流れる。これにより、第1ダンパ群D1の加熱効率が向上する。隙間C2についても同様である。
【0043】
隙間C1の断面積は、好ましくは、吹出口93A~93Dそれぞれの断面積よりも大きいとよい。これにより、隙間C1の流路抵抗が吹出口93A~93Dそれぞれの流路抵抗よりも小さくなるため、風W1およびW2が流れやすくなる。なお、隙間C1の断面積とは、ここでは、
図3の距離L1と第1ダンパ群D1の高さとの積を意味するものとする。距離L1は、第1左ヒートシンク53Lと第1ダンパ群D1との間の平面視における最短距離、または、第1右ヒートシンク53Rと第1ダンパ群D1との間の平面視における最短距離である。隙間C2の断面積も、好ましくは、吹出口93A~93Dそれぞれの断面積よりも大きいとよい。
【0044】
[他の実施形態]
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述の実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。
【0045】
例えば、上記した実施形態では、冷却ファン80の吸入口81は右方に向かって開口していたが、他の方向でもよい。上記した実施形態では、右方は、キャリッジ40が移動されるスキャン方向Yのうちの1方向である。従って、キャリッジ40の移動方向によって冷却ファン80の送風能力が異なる可能性がある。そのため、冷却ファン80の吸入口81は、スキャン方向Y以外の方向、例えば前方や上方に向けられていてもよい。これにより、キャリッジ40の移動方向によって冷却ファン80の送風能力が異なることを抑制できる。
【0046】
または、
図5に示すように、冷却装置は、スキャン方向Yの一方側(ここでは右方)を向いて開口した吸引口81Rを有する右方冷却ファン80Rと、スキャン方向Yの他方側(ここでは左方)を向いて開口した吸引口81Lを有する左方冷却ファン80Lと、を備えていてもよい。この場合、ダクト90Aは、スキャン方向Yに延びる流路92Yの右端および左端にそれぞれフィード方向Xに延びる流路92Rおよび92Lが接続されたコの字状に構成されていてもよい。
図5に示すように、この実施形態では、右方冷却ファン80Rの送風口82Rには、流路92Rの前端が接続される。左方冷却ファン80Lの送風口82Lには、流路92Lの前端が接続される。かかる構成によっても、キャリッジ40の移動方向によって冷却装置の送風能力が異なることを抑制できる。
【0047】
ダクトの形状は特に限定されない。例えば、ダクトは屈折部を有さない直管状に構成されていてもよい。ダクトの大きさも特に限定されない。また、吹出口とヒートシンクとが並ぶ方向(言い換えると、吹出口からの風の吹き出し方向)は、フィード方向ではなく他の方向であってもよい。この方向は、吹出口とヒートシンクとのセットにより異なっていてもよい。ダクトの位置も特に限定されない。例えば、ダクトは、ガイドレールと複数のヒートシンクとの間に配置されていなくてもよい。
【0048】
また、上記した実施形態の説明では、風W2のキャリッジ40からの出口には言及されていなかったが、キャリッジ40には、風W2の出口が設けられていてもよい。風の出口は、例えば、キャリッジ40のカバーの前方側の壁面に設けられたスリットや貫通孔などであってもよい。または、出口は、例えば、キャリッジ40のカバーの天面や背面に設けられたスリットや貫通孔などであってもよい。出口には、例えば、キャリッジ40の内部から外部に空気を送る排気用のファン等が設けられていてもよい。なお、キャリッジ40は、特に風の出口を有さなくてもよい。その場合、キャリッジ40の気密性をあまり高くしないようにしてもよい。
【0049】
その他、特に言及されない限り、実施形態は本発明を限定しない。例えば、ここに開示される技術は、様々なタイプのインクジェットプリンタに適用することができる。ここに開示される技術は、上記実施形態で示したような、いわゆるロール・トゥー・ロールタイプのプリンタの他、例えばフラットベッドタイプのインクジェットプリンタにも同様に適用することができる。また、プリンタは独立したプリンタとして単独で使用されるものに限定されず、他の装置と組み合わせたものであってもよい。例えば、プリンタは、他の装置に内蔵されていてもよい。
【0050】
上記した実施形態では、液体吐出装置はインクを吐出するものであり、インクジェットプリンタに搭載されていたが、それには限定されない。ここに開示される技術は、インクジェット式の液体吐出装置を備えた、インクジェットプリンタ以外の装置にも適用できる。ここに開示される液体吐出装置は、例えば、硬化液を吐出して三次元造形物を形成する三次元造形装置などにも適用できる。
【符号の説明】
【0051】
10 プリンタ
40 キャリッジ
50 ヘッドユニット
53L、53R、57L、57R ヒートシンク
80 冷却ファン
90 ダクト
93A~93D 吹出口