(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】車両用シート、及び乗員拘束装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/207 20060101AFI20240604BHJP
B60R 21/26 20110101ALI20240604BHJP
B60N 2/42 20060101ALI20240604BHJP
B60N 2/22 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B60R21/207
B60R21/26
B60N2/42
B60N2/22
(21)【出願番号】P 2020120890
(22)【出願日】2020-07-14
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 征幸
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-012475(JP,A)
【文献】特開2004-017686(JP,A)
【文献】特開2004-067025(JP,A)
【文献】特開2008-037280(JP,A)
【文献】特開2008-201298(JP,A)
【文献】特開2009-126392(JP,A)
【文献】米国特許第05503428(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16-21/33
B60N 2/00-2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗員が着座する車両用シートであって、
前記乗員の臀部を支持するシート座面と前記乗員の背部を支持するシートバックとを含むシート本体と、
前記シート本体に設けられた第1ガス発生器と、
前記シートバックの内部に配置され、前記第1ガス発生器の作動時に前記第1ガス発生器から供給されるガスによって、前記シート本体の幅方向両側端のうちの一方である第1側端から突出して展開する第1エアバッグと、
前記第1ガス発生器から前記第1エアバッグへガスを導く第1導管と、を備え、
前記第1導管は、前記シート座面と前記シートバックの少なくとも一方における内部において前記第1側端に沿うように配置された可撓性を有する第1可撓管部を含み、
前記第1可撓管部は、前記第1ガス発生器から前記第1エアバッグに供給されるガスの通過時に膨張することによって前記シート本体を変形させる、
車両用シート。
【請求項2】
前記第1可撓管部は、前記シート座面における前記第1側端に沿って配置される第1座面側可撓管部と、前記シートバックにおける前記第1側端に沿って配置される第1バック側可撓管部と、を含む、
請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記シートバックは、前記シート座面に対して傾倒可能となるように前記シート座面に接続され、
前記第1可撓管部は、前記シート座面と前記シートバックとの接続部分を跨ぐように配置される第1接続可撓管部を更に含む、
請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記第1可撓管部において、前記第1座面側可撓管部、前記第1接続可撓管部、及び前記第1バック側可撓管部は、単一部材によって一体に成形されている、
請求項3に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記シートバックの内部に配置され、前記第1ガス発生器からのガスの供給により前記
シート本体の幅方向両側端のうちの他方である第2側端から突出して展開する第2エアバッグと、
前記第1導管を流れるガスが前記第1エアバッグに遅れて前記第2エアバッグに供給されるように前記第1導管と前記第2エアバッグとを接続する接続管と、を更に備える、
請求項1から4の何れか一項に記載の車両用シート。
【請求項6】
前記シートバックの内部に配置され、前記第1ガス発生器からのガスの供給により前記シート本体の上端部から突出して展開する第3エアバッグと、
前記接続管の中途から分岐して前記第3エアバッグへ前記ガスを導く分岐管と、を更に備える、
請求項5に記載の車両用シート。
【請求項7】
前記シート本体に設けられた第2ガス発生器と、
前記シートバックの内部に配置され、前記第2ガス発生器の作動時に前記第2ガス発生器から供給されるガスによって、前記シート本体の幅方向両側端のうちの他方である第2側端から突出して展開する第2エアバッグと、
前記第2ガス発生器から前記第2エアバッグへガスを導く第2導管と、を更に備え、
前記第2導管は、前記シート座面と前記シートバックの少なくとも一方における内部において前記第2側端に沿うように配置された可撓性を有する第2可撓管部を含み、
前記第2可撓管部は、前記第2ガス発生器から前記第2エアバッグに供給されるガスの通過時に膨張することによって前記シート本体を変形させる、
請求項1から4の何れか一項に記載の車両用シート。
【請求項8】
前記シートバックの内部に配置され、前記第1ガス発生器の作動時に前記第1ガス発生器から供給されるガスによって、前記シート本体の幅方向両側端のうちの他方である第2側端から突出して展開する第2エアバッグと、
前記第1ガス発生器から前記第2エアバッグへガスを導く第2導管と、を更に備え、
前記第1ガス発生器は、前記第1導管が接続される第1ガス排出口と、前記第2導管が接続されると共に前記第1ガス排出口とは独立した第2ガス排出口と、を有し、
前記第2導管は、前記シート座面と前記シートバックの少なくとも一方における内部において前記第2側端に沿うように配置された可撓性を有する第2可撓管部を含み、
前記第2可撓管部は、前記第1ガス発生器から前記第2エアバッグに供給されるガスの通過時に膨張することによって前記シート本体を変形させる、
請求項1から4の何れか一項に記載の車両用シート。
【請求項9】
前記第1側端は、前記シート本体の幅方向両側端のうち、前記車両用シートが前記車両に設置された場合に前記車両の側面構造体に対向する方の側端である、
請求項1から8の何れか一項に記載の車両用シート。
【請求項10】
車両の乗員の臀部を支持するシート座面と前記乗員の背部を支持するシートバックとを含むシート本体を備え
る車両用シートに設けられる乗員拘束装置であって、
前記シート本体に設けられる第1ガス発生器と、
前記シートバックの内部に配置され、前記第1ガス発生器の作動時に前記第1ガス発生器から供給されるガスによって、前記シート本体の幅方向両側端のうちの一方である第1側端から突出して展開する第1エアバッグと、
前記第1ガス発生器から前記第1エアバッグへガスを導く第1導管と、を備え、
前記第1導管は、少なくとも前記シート座面と前記シートバックの少なくとも一方における内部において前記第1側端に沿うように配置される可撓性を有する第1可撓管部を含み、
前記第1可撓管部は、前記第1ガス発生器から前記第1エアバッグに供給されるガスの
通過時に膨張することによって前記シート本体を変形させる、
乗員拘束装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シート、及び車両用シートに設けられる乗員拘束装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の乗員が着座する車両用シートとして、側面衝突時に乗員を拘束して保護する側突保護用のエアバッグ(サイドエアバッグ)を備えたものが知られている。このような車両用シートは、側突が検知された時にインフレータ(ガス発生器)からエアバッグにガスを供給して乗員と車両の側面構造体(例えば車両ドア)との間にエアバッグを展開することで、乗員を衝撃から保護するように構成されている。
【0003】
これに関連して、特許文献1には、乗員のドア側腕部を持ち上げつつ乗員の上半身を回転させるように乗員の腋下とドアとの間にエアバッグを展開することで、側突時に乗員とドアの間に隙間を形成し、より確実に乗員を保護する乗員保護装置が開示されている。また、特許文献2には、シートの内部でエアバッグを膨張させることで、車両の挙動に応じて乗員の姿勢を変更させるようにシートの形状を変化させる乗員姿勢制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-135095号公報
【文献】特開2019-99133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、車両用シートに備えられたエアバッグは、乗員の身体の特定部位(例えば、肩部や胸部)に対応するように配置されるが、これは乗員が適切な姿勢で着座している場合を前提としたものである。しかしながら、エアバッグ展開時に乗員が適切な姿勢で着座していない場合、例えば、着座の左右位置が正規位置からずれていたり乗員の上半身が左右の何れかに傾いていたりする場合には、展開したエアバッグが意図された身体部位を適切に保護できずに、サイドエアバッグ装置の効果が期待通りに得られない可能性がある。これに対して、シートの内部でエアバッグを膨張させることで乗員の姿勢を矯正することも考えられる。しかしながら、その場合には、シートの外部に展開して乗員を保護するためのエアバッグとシート内部で膨張して乗員の姿勢を矯正するためのエアバッグとを収容するためのスペースがシート内に必要となり、シートの大型化を招く要因となる。
【0006】
本開示の技術は、上記した実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、エアバッグを備えた車両用シートにおいて、シートの薄型化を実現可能としつつも乗員をより確実に保護できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の技術は以下の構成を採用した。すなわち、本開示の技術は、車両の乗員が着座する車両用シートであって、前記乗員の臀部を支持するシート座面と前記乗員の背部を支持するシートバックとを含むシート本体と、前記シート本体に設けられた第1ガス発生器と、前記シートバックの内部に配置され、前記第1ガス発生器の作動時に前記第1ガス発生器から供給されるガスによって、前記シート本体の幅方向両側端のうちの一方である第1側端から突出して展開する第1エアバッグと、前記第1ガス発生器から前記第1エアバッグへガスを導く第1導管と、を備え、前記第1導管は、前
記シート座面と前記シートバックの少なくとも一方における内部において前記第1側端に沿うように配置された可撓性を有する第1可撓管部を含み、前記第1可撓管部は、前記第1ガス発生器から前記第1エアバッグに供給されるガスの通過時に膨張することによって前記シート本体を変形させる、車両用シートである。
【0008】
本開示の車両用シートでは、シートバックに配置された第1エアバッグが第1側端から展開することにより、乗員の上半身が第1側端の側から保持される。これにより、第1側端の側からの衝撃に対して乗員が保護される。更に、本開示の車両用シートでは、第1可撓管部がシート本体の内部で第1側端に沿うように配置されているため、第1可撓管部が膨張してシート本体が変形することにより、正規姿勢よりも第1側端寄りの着座姿勢を正規の姿勢に矯正することができる。つまり、本開示の車両用シートは、シート本体の第1側端から展開することで衝撃から乗員を保護する第1エアバッグと、シート本体の内部で膨張することで乗員の着座姿勢を矯正する第1可撓管部と、を備えるものである。そして、本開示の車両用シートでは、第1ガス発生器から第1エアバッグへとガスを導く第1導管の少なくとも一部によって可撓性を有する第1可撓管部が形成されている。そのため、第1ガス発生器から第1エアバッグへ供給されるガスが第1導管を通過する過程で、第1可撓管部が膨張してシート本体が変形することとなる。つまり、第1エアバッグが展開する前に第1可撓管部が膨張してシート本体が変形し、乗員の着座姿勢が矯正される。これにより、乗員の着座姿勢が矯正された状態で第1エアバッグが展開することとなる。第1エアバッグが展開する前に乗員の姿勢が矯正されるため、第1エアバッグは、予め意図された身体部位に対応するように展開することができる。その結果、本開示の車両用シートによれば、乗員を確実に保護することができる。更に、乗員の着座姿勢を矯正するための部材として第1導管を利用することで、別途エアバッグを配置する場合と比較して、シート本体の内部における設置スペースを低減することができる。その結果、本開示の技術によれば、車両用シートの薄型化や軽量化にも資することができる。
【0009】
更に、本開示の車両用シートにおいて、前記第1可撓管部は、前記シート座面における前記第1側端に沿って配置される第1座面側可撓管部と、前記シートバックにおける前記第1側端に沿って配置される第1バック側可撓管部と、を含んでもよい。
【0010】
これによると、第1座面側可撓管部が膨張することでシート座面が変形して乗員の下半身の姿勢が矯正され、第1バック側可撓管部が膨張することでシートバックが変形して乗員の上半身の姿勢が矯正される。つまり、本開示の車両用シートによると、第1エアバッグが展開する前に乗員の下半身と上半身の両方の姿勢を矯正することができる。その結果、乗員の着座姿勢がより適切に矯正された状態で第1エアバッグを展開させることができ、乗員を一層確実に保護することができる。
【0011】
更に、本開示の車両用シートにおいて、前記シートバックは、前記シート座面に対して傾倒可能となるように前記シート座面に接続され、前記第1可撓管部は、前記シート座面と前記シートバックとの接続部分を跨ぐように配置される第1接続可撓管部を更に含んでもよい。
【0012】
シートバックがシート座面に対して傾倒(リクライニング)可能な車両用シートにおいて、シート座面に第1座面側可撓管部を配置し、シートバックに第1バック側可撓管部を配置した場合では、第1導管がシートバックの傾倒に対応する必要がある。このような場合において、本開示の車両用シートでは、可撓性を有する第1接続可撓管部がシート座面とシートバックとの接続部分を跨ぐように配置されることで、第1接続可撓管部がシートバックの傾倒に応じて変形する。これにより、シートバックの傾倒に伴う第1導管の疲労破壊を抑制できる。つまり、第1導管の耐久性を高めることができる。
【0013】
更に、上記の車両用シートの前記第1可撓管部において、前記第1座面側可撓管部、前記第1接続可撓管部、及び前記第1バック側可撓管部は、単一部材によって一体に成形されていてもよい。
【0014】
また、本開示の車両用シートは、前記シートバックの内部に配置され、前記第1ガス発生器からのガスの供給により前記シート本体の幅方向両側端のうちの他方である第2側端から突出して展開する第2エアバッグと、前記第1導管を流れるガスが前記第1エアバッグに遅れて前記第2エアバッグに供給されるように前記第1導管と前記第2エアバッグとを接続する接続管と、を更に備えてもよい。
【0015】
本開示の車両用シートでは、第2エアバッグがシート本体の第2側端から展開することにより、乗員の上半身が第2側端の側から保持される。ここで、第1エアバッグの展開により乗員が第1側端の側からの衝撃に対して保護されるとき、その衝撃の反動により乗員が第2側端の側へ傾く場合がある。これに対して、本開示の車両用シートでは、接続管によって第1エアバッグに遅れて第2エアバッグへガスを供給することで第1エアバッグが展開した後に第2エアバッグを展開することができる。これにより、まず、第1可撓管部が膨張することで乗員の姿勢が矯正され、次に、第1エアバッグが展開することで乗員が第1側端の側からの衝撃に対して保護され、次に、第2エアバッグが展開することで乗員が保持され、乗員の姿勢が第2側端の側へ大きく傾くことが抑制される。つまり、本開示の車両用シートは、衝撃の反動により乗員の姿勢が傾こうとするタイミングで第2エアバッグを展開することができ、乗員をより確実に保護することができる。また、本開示の車両用シートは、第1エアバッグの展開のタイミングと第2エアバッグの展開のタイミングとを異ならせているため、本開示の車両用シートが左右に並んで車内に配置された場合、隣り合うシート同士の第1エアバッグと第2エアバッグとが同時に展開することによるエアバッグの干渉を防止できる。
【0016】
更に、本開示の車両用シートは、前記シートバックの内部に配置され、前記第1ガス発生器からのガスの供給により前記シート本体の上端部から突出して展開する第3エアバッグと、前記接続管の中途から分岐して前記第3エアバッグへ前記ガスを導く分岐管と、を更に備えてもよい。
【0017】
第3エアバッグは、シート本体の上端部から展開することにより、乗員の頭部を保護する。側突の衝撃により乗員の頭部が揺さぶられた状態で第1エアバッグ及び第2エアバッグにより乗員の上半身を保持すると、乗員の頸部に負荷が加わる場合がある。これに対して、本開示の車両用シートは、第1エアバッグ及び第2エアバッグによる乗員の上半身の保持に加え、第3エアバッグによって乗員の頭部を保持することで、乗員の頸部への負荷を低減することができる。その結果、より確実に乗員を保護することができる。
【0018】
また、本開示の車両用シートは、前記シート本体に設けられた第2ガス発生器と、前記シートバックの内部に配置され、前記第2ガス発生器の作動時に前記第2ガス発生器から供給されるガスによって、前記シート本体の幅方向両側端のうちの他方である第2側端から突出して展開する第2エアバッグと、前記第2ガス発生器から前記第2エアバッグへガスを導く第2導管と、を更に備え、前記第2導管は、前記シート座面と前記シートバックの少なくとも一方における内部において前記第2側端に沿うように配置された可撓性を有する第2可撓管部を含み、前記第2可撓管部は、前記第2ガス発生器から前記第2エアバッグに供給されるガスの通過時に膨張することによって前記シート本体を変形させてもよい。
【0019】
また、本開示の車両用シートは、前記シートバックの内部に配置され、前記第1ガス発生器の作動時に前記第1ガス発生器から供給されるガスによって、前記シート本体の幅方
向両側端のうちの他方である第2側端から突出して展開する第2エアバッグと、前記第1ガス発生器から前記第2エアバッグへガスを導く第2導管と、を更に備え、前記第1ガス発生器は、前記第1導管が接続される第1ガス排出口と、前記第2導管が接続されると共に前記第1ガス排出口とは独立した第2ガス排出口と、を有し、前記第2導管は、前記シート座面と前記シートバックの少なくとも一方における内部において前記第2側端に沿うように配置された可撓性を有する第2可撓管部を含み、前記第2可撓管部は、前記第1ガス発生器から前記第2エアバッグに供給されるガスの通過時に膨張することによって前記シート本体を変形させてもよい。
【0020】
つまり、本開示の車両用シートは、第2エアバッグを第1エアバッグとは独立して展開するように構成されていてもよい。これにより、第1エアバッグにガスを供給しなくとも第2エアバッグを展開させ、第2側端の側からの衝撃に対して乗員を保護することができる。更に、本開示の車両用シートでは、第2可撓管部がシート本体の内部で第2側端に沿うように配置されているため、第2可撓管部が膨張してシート本体が変形することにより、正規姿勢よりも第2側端寄りの着座姿勢を正規の姿勢に矯正することができる。そして、本開示の車両用シートでは、第2エアバッグへとガスを導く第2導管の少なくとも一部によって可撓性を有する第2可撓管部を形成することで、第2エアバッグが展開する前に第2可撓管部が膨張してシート本体が変形し、乗員の着座姿勢が矯正される。これにより、乗員の着座姿勢が矯正された状態で第2エアバッグが展開することとなる。その結果、本開示の車両用シートによれば、乗員をより確実に保護することができる。
【0021】
また、本開示の車両用シートにおいて、前記第1側端は、前記シート本体の幅方向両側端のうち、前記車両用シートが前記車両に設置された場合に前記車両の側面構造体に対向する方の側端であってもよい。
【0022】
本開示において、車両の側面構造体とは、車体の側面を構成する構造体(例えば、車両のドアやリヤフェンダー)のことをいう。つまり、側面構造体は、車両が側面衝突するときに衝突の対象となる部位である。そのため、車両用シートが左右に並んで車内に配置されている場合、側面構造体の側(所謂ニアサイド)からの衝撃に対する乗員の保護の方が、隣接するシート側(所謂ファーサイド)からの衝撃に対する保護よりも優先度が高い。本開示の車両用シートでは、第1エアバッグが展開し第1可撓管部F1が膨張する第1側端を側面構造体に対向する側とすることで、側面構造体の側からの衝撃に対して好適に乗員を保護することができる。
【0023】
また、本開示の技術は、車両用シートに設けられる乗員拘束装置としても特定することができる。即ち、本開示の技術は、車両の乗員の臀部を支持するシート座面と前記乗員の背部を支持するシートバックとを含むシート本体を備える前記車両用シートに設けられる乗員拘束装置であって、前記シート本体に設けられる第1ガス発生器と、前記シートバックの内部に配置され、前記第1ガス発生器の作動時に前記第1ガス発生器から供給されるガスによって、前記シート本体の幅方向両側端のうちの一方である第1側端から突出して展開する第1エアバッグと、前記第1ガス発生器から前記第1エアバッグへガスを導く第1導管と、を備え、前記第1導管は、前記シート座面と前記シートバックの少なくとも一方における内部において前記第1側端に沿うように配置される可撓性を有する第1可撓管部を含み、前記第1可撓管部は、前記第1ガス発生器から前記第1エアバッグに供給されるガスの通過時に膨張することによって前記シート本体を変形させる、乗員拘束装置であってもよい。
【発明の効果】
【0024】
本開示に係る技術によれば、エアバッグを備えた車両用シートにおいて、シートの薄型化を実現可能としつつも乗員をより確実に保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る車両用シートのエアバッグ装置が作動する前の状態を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る車両用シートのエアバッグ装置が作動した状態を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態1においてエアバッグ装置が作動する前の車両用シートを示す模式図である。
【
図4】
図4は、実施形態1においてエアバッグ装置が作動したときの車両用シートを示す模式図である。
【
図5】
図5は、ガスが通過する前の第1座面側可撓管部の状態を示す図である。
【
図6】
図6は、ガスが通過している第1座面側可撓管部の状態を示す図である。
【
図7】
図7は、ガスが通過する前の第1バック側可撓管部の状態を示す図である。
【
図8】
図8は、ガスが通過している第1バック側可撓管部の状態を示す図である。
【
図9】
図9は、実施形態1の変形例1においてエアバッグ装置が作動する前の車両用シートを示す模式図である。
【
図10】
図10は、実施形態1の変形例1においてエアバッグ装置が作動したときの車両用シートを示す模式図である。
【
図11】
図11は、実施形態1の変形例2においてエアバッグ装置が作動する前の車両用シートを示す模式図である。
【
図12】
図12は、実施形態1の変形例2においてエアバッグ装置が作動したときの車両用シートを示す模式図である。
【
図13】
図13は、実施形態1の変形例3においてエアバッグ装置が作動する前の車両用シートを示す模式図である。
【
図14】
図14は、実施形態1の変形例3においてエアバッグ装置が作動したときの車両用シートを示す模式図である。
【
図15】
図15は、実施形態2においてエアバッグ装置が作動する前の車両用シートを示す模式図である。
【
図16】
図16は、実施形態2においてエアバッグ装置が作動したときの車両用シートを示す模式図である。
【
図17】
図17は、実施形態3においてエアバッグ装置が作動する前の車両用シートを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本発明は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0027】
<実施形態1>
図1及び
図2は、実施形態1に係る車両用シートの斜視図である。
図1では、車両用シートが備えるエアバッグ装置(乗員拘束装置)が作動する前の状態が示されており、
図2では、エアバッグ装置が作動した状態が示されている。車両用シート100は、車両の乗員が着座するものである。本実施形態に係る車両用シート100は、運転席用として車内に配置されている。なお、本明細書において、車両用シート100の前後方向(奥行方向)、左右方向(幅方向)、上下方向(高さ方向)の各方向は、車両用シート100に着座した乗員(着座者)から見た、前後、左右、上下の各方向を基準として説明する。
【0028】
[全体構成]
図1及び
図2に示すように、車両用シート100は、乗員の身体を支持するシート本体
S10と、シート本体S10の内部に配置されるエアバッグ装置10と、を備える。シート本体S10は、着座する乗員の体の各部に対応して、乗員の臀部を支持するシート座面(シートクッション部)S1と、乗員の背部を支持するシートバック(背もたれ部)S2と、乗員の頭部を支持するヘッドレストS3と、を備える。シートバックS2は、シート座面S1の後端部に接続されており、シート座面S1に対して傾倒可能に設けられている。車両用シート100は、乗員の操作に応じて回動軸A1周りにシートバックS2を回動させることで、シートバックS2を
図1に示す起立した姿勢から傾倒した姿勢へ変化させることができる。ヘッドレストS3は、シートバックS2の上端部に接続されており、シートバックS2に対して上下動可能に設けられている。
【0029】
図1及び
図2の符号X1は、車両の側面構造体を示す。側面構造体X1は、車体の側面を構成する構造体である。つまり、側面構造体X1は、車両が側面衝突するときに衝突の対象となる部位である。側面構造体X1は、例えば、車両のドアやリヤフェンダーである。ここで、本実施形態では、シート本体S10の幅方向両側端のうち、側面構造体X1に対向する側(所謂ニアサイド)の側端(右側端)を第1側端SE1とし、その反対側(所謂ファーサイド)の側端(左側端)を第2側端SE2とする。
【0030】
[エアバッグ装置]
図2に示すように、エアバッグ装置10は、車両の衝突時にエアバッグを展開することで乗員を保持・拘束し、側突の衝撃から乗員を保護するように構成されている。
図3は、エアバッグ装置10が作動する前の車両用シート100を示す模式図である。
図3に示すように、エアバッグ装置10は、シート本体S10に設けられた第1ガス発生器11と、シートバックS2の内部に配置された第1エアバッグ21と、第1ガス発生器11と第1エアバッグ21とを接続する第1導管31と、を備える。以下、エアバッグ装置10の各構成について説明する。
【0031】
[第1ガス発生器]
第1ガス発生器11は、シート本体S10のうちシート座面S1の内部に配置され、第1エアバッグ21へガスを供給する。第1ガス発生器11は、両端が閉塞した円筒状(シリンダー状)に形成されており、車両に搭載されたエアバッグECUの制御により作動することで、その内部からガスを排出する。なお、本開示のガス発生器がガスを発生させる方式は、特に限定されない。ガス発生器の方式は、固形ガス発生剤を燃焼させることでガスを発生させるパイロ方式、加圧ガスを使用するストアードガス方式、パイロ方式とストアードガス方式とを組み合わせたハイブリッド方式等が挙げられる。
【0032】
本実施形態では、シートバックS2にガス発生器を配置せずに、シート座面S1に配置された第1ガス発生器11によって第1エアバッグ21へガスを供給する構造が採用されている。これにより、シートバックにガス発生器を配置する構造と比較して、シートバックの薄型化が実現されている。但し、本開示はガス発生器の配置場所をシート座面に限定しない。第1ガス発生器は、シートバックの内部に配置されてもよい。
【0033】
[第1エアバッグ]
第1エアバッグ21は、第1側端SE1側の肩部用または胸部用のエアバッグ、即ちニアサイド用のエアバッグであり、乗員の肩部または胸部に対応するようにシートバックS2の内部に配置(格納)されている。第1エアバッグ21は、第1ガス発生器11から供給されるガスにより膨張することで、シート本体S10(シートバックS2)の第1側端SE1から突出して展開する(
図2参照)。第1エアバッグ21が第1側端SE1からシートバックS2の外部に展開し、乗員の肩部または胸部が第1側端SE1側から保持されることにより、第1側端SE1側(ニアサイド)からの衝撃に対して乗員が保護される。
【0034】
[第1導管]
第1導管31は、ガスが流通可能な流管であり、第1ガス発生器11から第1エアバッグ21へガスを導くように構成されている。
図3に示すように、第1導管31の一端は第1ガス発生器11に接続され、他端は第1エアバッグ21に接続されている。これにより、第1導管31の内部空間は、ガスが第1ガス発生器11から第1エアバッグ21へ流れるための流路を形成している。
【0035】
ここで、第1導管31の一部は、可撓性を有する第1可撓管部として形成されている。
図3に、第1可撓管部を符号F1で示す。第1可撓管部F1は、シート本体S10の内部において第1側端SE1に沿うように配置されている。より詳細には、第1可撓管部F1は、乗員が車両用シート100に着座したときに乗員と第1側端SE1との間に位置するように、配置されている。本実施形態に係る第1可撓管部F1は、布(織物)により形成されることで可撓性を有している。第1可撓管部F1の表面には、ガスの通過時に織目からガスが漏れないようにコーティングが施されている。第1可撓管部F1のコーティングとしては、シリコンを主成分とするコーティング剤が挙げられる。第1可撓管部F1は、ガスが通過していないときには萎んだ状態または折り畳まれた状態となっており、ガスが通過するときにはガスの圧力により膨張することで流路断面積を増大させる。
【0036】
図3に示すように、第1可撓管部F1は、第1座面側可撓管部F11と第1バック側可撓管部F12と第1接続可撓管部F13とを含む。第1座面側可撓管部F11は、シート座面S1における第1側端SE1に沿って配置されている。第1バック側可撓管部F12は、シートバックS2における第1側端SE1に沿って配置されている。第1接続可撓管部F13は、シート座面S1とシートバックS2との接続部分S4を跨ぐように配置されている。第1可撓管部F1において、第1座面側可撓管部F11、第1接続可撓管部F13、及び第1バック側可撓管部F12は、単一部材によって一体に成形されている。第1ガス発生器11から第1エアバッグ21へガスが流れる流路において、第1バック側可撓管部F12は第1座面側可撓管部F11よりも下流側に位置しており、第1接続可撓管部F13によって第1座面側可撓管部F11の下流側の端部と第1バック側可撓管部F12の上流側の端部とが接続されている。
【0037】
[エアバッグの展開動作]
次に、本実施形態に係る車両用シート100においてエアバッグ装置10が作動して第1エアバッグ21が展開する動作について説明する。
図4は、エアバッグ装置10が作動したときの車両用シート100を示す模式図である。本例では、車両が側面構造体X1において側面衝突することで第1側端SE1側(ニアサイド)から衝撃が加えられた場合について説明する。図示しない衝突センサからの信号に基づいてエアバッグECUが車両の側突を検出すると、第1ガス発生器11に作動電流(着火電流)が供給される。これにより、第1ガス発生器11が作動し、第1ガス発生器11からガスが排出される。第1ガス発生器11から排出されたガスは、第1導管31を流れて第1エアバッグ21に流入する。以上のようにして、第1ガス発生器11から排出されたガスが第1導管31に導かれて第1エアバッグ21に供給され、第1エアバッグ21が膨張する。これにより、
図4に示すように、第1エアバッグ21は、第1側端SE1からシートバックS2の外部へ突出して展開する。
【0038】
[第1可撓管部の膨張動作]
ここで、車両用シート100に備えられた第1エアバッグ21は、乗員の肩部または胸部に対応するように配置されたものであるが、これは乗員が適切な姿勢で着座している場合を前提としている。以下、エアバッグが効果的に乗員を保護するために求められる乗員の適切な着座姿勢のことを、正規姿勢と称し、正規姿勢における乗員又は乗員の身体各部の位置を正規位置と称する。より具体的には、正規姿勢とは、乗員の正面が車両用シート
の前方に向いており、乗員の身体がシート座面S1およびシートバックS2のほぼ左右中央に位置したうえで、乗員の足がシート座面S1の前方へ伸びている状態を指す。しかしながら、乗員は常に正規姿勢で着座しているとは限らず、着座の左右位置が正規位置からずれていたり乗員の上半身が左右の何れかに傾いていたりする場合がある。例えば、乗員が側面構造体X1にもたれ掛かる等した場合、乗員の姿勢は正規姿勢よりも第1側端SE1寄り(ニアサイド寄り)の姿勢となる。仮に、第1エアバッグ21の展開時においても乗員の姿勢が第1側端SE1寄りの姿勢となっていた場合、側面構造体X1と乗員の身体との間に第1エアバッグ21が展開するためのスペースが十分に確保されなかったり、第1エアバッグ21の展開位置に乗員の肩部や胸部が位置しなかったりするといった事態が生じる可能性がある。その結果、展開した第1エアバッグ21が乗員を適切に保護できずに、第1エアバッグ21の効果が期待通りに得られない可能性がある。
【0039】
これに対して、本実施形態に係る車両用シート100は、側突時に第1エアバッグ21が展開する前に第1可撓管部F1によって乗員の姿勢を矯正することで、第1エアバッグ21の効果を十分に発揮させることができる。以下、詳細に説明する。
【0040】
上述のように、第1可撓管部F1は、その内部をガスが通過するときにガスの圧力により膨張するように、可撓性を有して形成されている。そのため、
図4に示すように、ガスが第1導管31を流れて第1ガス発生器11から第1エアバッグ21に供給される過程において、第1可撓管部F1を通過するガスによって第1可撓管部F1が膨張する。第1可撓管部F1が膨張することで、
図2に示すようにシート本体S10が変形する。具体的には、第1座面側可撓管部F11が膨張することでシート座面S1が変形し、第1バック側可撓管部F12が膨張することでシートバックS2が変形する。ガスの流路において第1バック側可撓管部F12は第1座面側可撓管部F11よりも下流側に位置しているため、第1バック側可撓管部F12は第1座面側可撓管部F11の後に膨張する。
【0041】
図5は、ガスが通過する前の第1座面側可撓管部F11の状態を示す図である。
図6は、ガスが通過している第1座面側可撓管部F11の状態を示す図である。
図5及び
図6は、シート座面S1の前後方向に直交する断面を示している。
図5及び
図6の符号M1は、乗員の下半身を示している。また、符号S11は、シート座面において乗員の臀部を支持する支持面(即ち、座面)を示す。
図7は、ガスが通過する前の第1バック側可撓管部F12の状態を示す図である。
図8は、ガスが通過している第1バック側可撓管部F12の状態を示す図である。
図7及び
図8は、シートバックS2の上下方向に直交する断面を示している。
図7及び
図8の符号M2は、乗員の上半身を示している。また、符号S21は、シートバックにおいて乗員の背部を支持する支持面(即ち、シートバックの前面)を示す。以下、
図5及び
図7に示すように、エアバッグ装置10の作動前の状態において乗員の下半身M1及び上半身M2が正規位置よりも第1側端SE1寄り(ニアサイド寄り)に位置している場合を例に、第1可撓管部F1の作用について説明する。
【0042】
第1ガス発生器11が作動して第1導管31にガスが流れる前では、
図5及び
図7に示すように、第1座面側可撓管部F11及び第1バック側可撓管部F12は平たく萎んだ状態または折り畳まれた状態となっている。第1ガス発生器11が作動し、第1導管31にガスが流れると、まず、第1バック側可撓管部F12よりも上流に位置する第1座面側可撓管部F11をガスが通過する。このとき、
図6に示すように、第1座面側可撓管部F11を通過するガスによって断面が円形となるように第1座面側可撓管部F11がシート座面S1の内部で膨張することで、第1側端SE1寄りの支持面S11が隆起するようにシート座面S1が変形する。ここで、第1座面側可撓管部F11がシート座面S1の内部において第1側端SE1に沿って配置されているため、シート座面S1の第1側端SE1に沿うように隆起U1が形成される。隆起U1は、乗員と車両用シート100の第1側端SE1の間に位置するように形成される。このシート座面S1の変形により乗員の下半身M
1が押されて動き、第1側端SE1寄りに位置していた乗員の下半身M1が
図6に示すように正規位置に移動する。第1座面側可撓管部F11を通過したガスは、次に、第1接続可撓管部F13を通過し、その後、第1バック側可撓管部F12を通過する。このとき、
図8に示すように、第1バック側可撓管部F12を通過するガスによって断面が円形となるように第1バック側可撓管部F12がシートバックS2の内部で膨張することで、第1側端SE1寄りの支持面S21が隆起するようにシートバックS2が変形する。ここで、第1バック側可撓管部F12がシートバックS2の内部において第1側端SE1に沿って配置されているため、シートバックS2の第1側端SE1に沿うように隆起U2が形成される。このシートバックS2の変形により乗員の上半身M2が押されて動き、第1側端SE1寄りに位置していた乗員の上半身M2が
図8に示すように正規位置に移動する。このように、ガスが第1導管31を流れて第1ガス発生器11から第1エアバッグ21に至る過程で、まず第1座面側可撓管部F11の膨張によって乗員の下半身M1の位置が正規位置に移動し、次いで第1バック側可撓管部F12の膨張によって乗員の上半身M2の位置が正規位置に移動することで、第1エアバッグ21が展開する前に乗員の姿勢が正規姿勢に矯正される。これにより、第1エアバッグ21は、乗員が正規姿勢にある状態で展開することとなる。その結果、第1エアバッグ21が、乗員の肩部または胸部を第1側端の側から保持することができ、第1側端SE1側(ニアサイド)からの衝撃に対して乗員が適切に保護される。
【0043】
[作用・効果]
以上のように、本実施形態に係る車両用シート100では、第1ガス発生器11から第1エアバッグ21へガスを導く第1導管31が、シート本体S10の内部において第1側端SE1に沿うように配置された可撓性を有する第1可撓管部F1を含んでいる。そして、第1可撓管部F1は、第1ガス発生器11から第1エアバッグ21に供給されるガスの通過時に膨張することによってシート本体S10を変形させるように構成されている。このとき、第1可撓管部F1がシート本体S10の内部で第1側端SE1に沿うように配置されているため、第1可撓管部F1が膨張してシート本体S10が変形することにより、正規姿勢よりも第1側端SE1寄り(ニアサイド寄り)の着座姿勢を正規姿勢に矯正することができる。そして、本実施形態に係る車両用シート100では、第1ガス発生器11から第1エアバッグ21へとガスを導く第1導管31の少なくとも一部によって可撓性を有する第1可撓管部F1が形成されている。そのため、第1ガス発生器11から第1エアバッグ21へ供給されるガスが第1導管31を通過する過程で、第1可撓管部F1が膨張してシート本体S10が変形することとなる。つまり、第1エアバッグ21が展開する前に第1可撓管部F1が膨張してシート本体S10が変形し、乗員の着座姿勢が矯正される。これにより、乗員の着座姿勢が矯正された状態で第1エアバッグ21が展開することとなる。第1エアバッグ21が展開する前に乗員の姿勢が矯正されるため、第1エアバッグ21は、予め意図された身体部位である乗員の第1側端SE1側(ニアサイド)の肩部または胸部に対応するように展開することができる。その結果、車両用シート100によれば、第1エアバッグ21の効果を十分に発揮させ、乗員を確実に保護することができる。なお、乗員が正規姿勢で着座している場合であっても、第1可撓管部F1の膨張によるシート本体S10の変形により乗員の正規姿勢が保持されるため、同様の効果が得られる。
【0044】
ここで、乗員の着座姿勢を矯正するための手段として、乗員の姿勢を矯正するためのエアバッグと当該エアバッグにガスを導くための導管とを第1エアバッグ21及び第1導管31とは別にシート本体S10に配置し、当該エアバッグをシート本体の内部で膨張させることで乗員の姿勢を矯正するといった手段も考えらえる。しかしながら、このような手段を採用した場合、シート本体S10の内部に大きな設置スペースが必要となり、車両用シートの大型化や重量化が懸念される。これに対して、本実施形態に係る車両用シート100は、乗員の着座姿勢を矯正する部材として、第1ガス発生器11から第1エアバッグ21へガスを導くための第1導管31を利用している。そのため、乗員の姿勢を矯正する
ためのエアバッグや当該エアバッグに必要な導管等を別途配置する場合と比較して、シート本体の内部における設置スペースを低減することができる。その結果、車両用シート100を薄型化できる。
【0045】
なお、本開示の第1導管は、その少なくとも一部が第1可撓管部として形成されていればよい。例えば、第1導管31の全体が可撓性を有する第1可撓管部F1として形成されてもよい。
【0046】
更に、本実施形態に係る第1可撓管部F1は、シート座面S1における第1側端SE1に沿って配置される第1座面側可撓管部F11と、シートバックS2における第1側端SE1に沿って配置される第1バック側可撓管部F12と、を含んでいる。これにより、第1座面側可撓管部F11が膨張することでシート座面S1が変形して乗員の下半身M1の姿勢が矯正され、第1バック側可撓管部F12が膨張することでシートバックS2が変形して乗員の上半身M2の姿勢が矯正される。つまり、第1エアバッグ21が展開する前に乗員の下半身M1と上半身M2の両方の姿勢を矯正することができる。その結果、乗員の着座姿勢がより適切に矯正された状態で第1エアバッグ21を展開させることができ、乗員を一層確実に保護することができる。
【0047】
ここで、乗員は臀部を支点として着座しているため、下半身M1の姿勢変化に伴って上半身M2の姿勢も変化する。そして、乗員の身体の振れ幅は臀部から頭部に向かうほど大きくなるため、下半身M1の姿勢変化が小さいものであっても、それに起因する上半身M2の姿勢変化は大きなものとなる。つまり、乗員の下半身M1の姿勢が矯正されることで、同時に上半身M2の姿勢もある程度は矯正されることとなる。本実施形態に係る車両用シート100では、第1ガス発生器11から第1エアバッグ21へガスが流れる流路において第1バック側可撓管部F12が第1座面側可撓管部F11よりも下流側に配置されているため、第1バック側可撓管部F12が第1座面側可撓管部F11の後に膨張する。そのため、第1座面側可撓管部F11の膨張によるシート座面S1の変形により乗員の下半身M1の姿勢が矯正された後に第1バック側可撓管部F12の膨張によるシートバックS2の変形により乗員の上半身M2の姿勢が矯正される。これにより、第1座面側可撓管部F11による乗員の下半身M1の姿勢の矯正によって上半身M2の姿勢がある程度矯正された状態で、第1バック側可撓管部F12による上半身M2の姿勢の矯正が開始される。その結果、第1バック側可撓管部F12によって上半身M2の姿勢を矯正するために必要な姿勢の変化量を減らすことができ、効率的に乗員の姿勢を矯正できる。また、その効果を助長するため、第1バック側可撓管部F12の膨張したときの流路断面積を第1座面側可撓管部F11の膨張したときの流路断面積よりも大きく設定してもよい。
【0048】
なお、本開示の第1可撓管部は、シート座面とシートバックの少なくとも一方における内部において第1側端に沿うように配置されていればよい。例えば、第1可撓管部F1は、シート座面S1においてのみ第1側端SE1に沿うように配置されてもよいし、シートバックS2においてのみ第1側端SE1に沿うように配置されてもよい。つまり、本開示の第1可撓管部は、第1座面側可撓管部と第1バック側可撓管部とのうち少なくとも一方を含んで構成されていればよい。
【0049】
更に、本実施形態に係る車両用シート100では、シートバックS2がシート座面S1に対して傾倒可能となるようにシート座面S1に接続されており、第1可撓管部F1は、シート座面S1とシートバックS2との接続部分S4を跨ぐように配置される第1接続可撓管部F13を更に含んでいる。これによると、可撓性を有する第1接続可撓管部F13がシート座面S1とシートバックS2との接続部分を跨ぐように配置されることで、第1可撓管部F1が第1接続可撓管部F13においてシートバックS2の傾倒に応じて変形することができる。これにより、シートバックS2の傾倒に伴う第1導管31の疲労破壊を
抑制できる。つまり、第1導管31の耐久性を高めることができる。
【0050】
また、本実施形態に係る車両用シート100では、シート本体S10の幅方向両側端のうち、車両の側面構造体X1に対向する側(ニアサイド)の側端を第1側端SE1とし、第1エアバッグ21、第1導管31を配置している。上述のように、側面構造体X1は、車両が側面衝突するときに衝突の対象となる部位である。そのため、車両用シート100が左右に並んで車内に配置されている場合における側面構造体X1側に配置されたシートでは、側面構造体X1側(ニアサイド)からの衝撃に対する乗員の保護の方が、隣接するシート側(ファーサイド)からの衝撃に対する保護よりも優先度が高い。車両用シート100では、第1エアバッグ21が展開し第1可撓管部F1が膨張する第1側端SE1を側面構造体X1に対向する側とすることで、側面構造体の側からの衝撃に対して好適に乗員を保護することができる。但し、本開示はこれに限定されず、シート本体の幅方向両側端のうち、車両の側面構造体とは反対側(ファーサイド)の側端を第1側端とし、第1エアバッグ、第1導管を配置してもよい。
【0051】
なお、本実施形態では、第1可撓管部F1を布(織物)で形成したが、本開示の第1可撓管部の材料は、布に限定されず、可撓性を有する種々の材料を選択できる。例えば、第1可撓管部をゴムにより形成してもよい。但し、経年劣化し難いという観点において、布を第1可撓管部の材料として用いることが好ましい。また、本実施形態では、第1可撓管部F1が単一部材によって形成されていたが、本開示の第1可撓管部は複数の部材により形成されてもよい。例えば、第1座面側可撓管部、第1接続可撓管部、及び第1バック側可撓管部が、別部材によって形成されてもよい。
【0052】
[変形例]
以下、実施形態1の変形例に係る車両用シートについて説明する。変形例の説明では、
図1~
図8で説明した車両用シート100との相違点を中心に説明し、車両用シート100と同様の点については詳細な説明は割愛する。
【0053】
[変形例1]
図9は、実施形態1の変形例1においてエアバッグ装置が作動する前の車両用シートを示す模式図である。
図10は、変形例1においてエアバッグ装置が作動したときの車両用シートを示す模式図である。変形例1に係る車両用シート100Aのエアバッグ装置10Aでは、弾性を有するゴムによって第1可撓管部F1Aが形成されている。これにより、第1可撓管部F1Aは、ガスが通過していないときには萎んだ状態となっており、ガスが通過するときにはガスの圧力により膨張することで流路断面積を増大させる。更に、エアバッグ装置10Aは、
図9及び
図10に示すように、所定の大きさにまで膨張した第1可撓管部F1Aがこれ以上膨張しないように規制する規制部材R1を備える。ここで、所定の大きさとは、第1可撓管部F1Aがシート本体S10を変形させて乗員の姿勢を矯正するために求められる大きさのことを指す。規制部材R1は、第1可撓管部F1Aを取り囲むように配置されており、
図9に示すように、エアバッグ装置10が作動する前には折り畳まれている。エアバッグ装置10が作動して第1可撓管部F1Aをガスが通過するときには、
図10に示すように第1可撓管部F1Aの膨張に伴って規制部材R1が展開し、第1可撓管部F1Aが所定以上の大きさに膨張することを規制する。これにより、ゴムで形成された第1可撓管部F1Aがガスの圧力により必要以上に膨張して破裂することを防止できる。
【0054】
[変形例2]
図11は、実施形態1の変形例2においてエアバッグ装置が作動する前の車両用シートを示す模式図である。
図12は、変形例2においてエアバッグ装置が作動したときの車両用シートを示す模式図である。
図11及び
図12に示すように、変形例2に係る車両用シ
ート100Bのエアバッグ装置10Bは、上述した車両用シート100のエアバッグ装置10の構成に加え、第2エアバッグ22と接続管4とを備えている。
【0055】
第2エアバッグ22は、第2側端SE2側の肩部用または胸部用のエアバッグ、即ちファーサイド用のエアバッグであり、乗員の肩部または胸部に対応するようにシートバックS2の内部に配置(格納)されている。
図12に示すように、第2エアバッグ22は、第1ガス発生器11から供給されるガスにより膨張することで、シート本体S10(シートバックS2)の第2側端SE2から突出して展開する。第2エアバッグ22が第2側端SE2からシートバックS2の外部に展開し、乗員の肩部または胸部が第2側端SE2側から保持される。
【0056】
接続管4は、ガスが流通可能な流管であり、第1導管31を流れるガスが第1エアバッグ21に遅れて第2エアバッグ22に供給されるように、第1導管31と第2エアバッグ22とを接続している。
図11及び
図12の符号C1は、第1導管31と接続管4との連結部を示す。第1導管31を流れるガスの一部は連結部C1から接続管4に流れて第2エアバッグ22に供給され、残部が第1エアバッグ21に供給される。車両用シート100Bでは、ガスが連結部C1から第1エアバッグ21に至るまでの流路よりも連結部C1から第2エアバッグ22に至るまでの流路の方が長くなるように、接続管4の長さや第1導管31と接続管4との連結位置が設定されている。これにより、連結部C1から接続管4に流れるガスは、第1エアバッグ21へのガスの供給に遅れて第2エアバッグ22に供給される。そのため、車両用シート100Bでは、第1可撓管部、第1エアバッグ21、第2エアバッグ22の順にガスが供給される。
【0057】
ここで、第1エアバッグ21の展開により乗員が第1側端SE1側(ニアサイド)からの衝撃に対して保護されるとき、その衝撃の反動で乗員が第2側端SE2側(ファーサイド)に傾く場合がある。これに対して、車両用シート100Bでは、接続管4によって第1エアバッグ21に遅れて第2エアバッグ22へガスを供給することで、第1エアバッグ21が展開した後に第2エアバッグ22を展開することができる。これにより、まず、第1可撓管部F1が膨張することで、乗員の姿勢が矯正され、次に、第1エアバッグ21が展開することで、乗員がニアサイドからの衝撃に対して保護され、次に、第2エアバッグ22が展開することで、ニアサイドからの衝撃の反動によりファーサイドに傾いた乗員が保持される。つまり、乗員が第2側端SE2へ傾こうとするタイミングで第2エアバッグ22が展開するため、乗員をより確実に保護することができる。また、車両用シート100Bは、第1エアバッグ21の展開のタイミングと第2エアバッグ22の展開のタイミングとを異ならせているため、車両用シート100Bが左右に並んで車内に配置された場合、隣り合うシート同士の第1エアバッグ21と第2エアバッグ22とが同時に展開することによるエアバッグの干渉を防止できる。
【0058】
[変形例3]
図13は、実施形態1の変形例3においてエアバッグ装置が作動する前の車両用シートを示す模式図である。
図14は、変形例3においてエアバッグ装置が作動したときの車両用シートを示す模式図である。
図13及び
図14に示すように、変形例3に係る車両用シート100Cのエアバッグ装置10Cは、上述した車両用シート100Bのエアバッグ装置10Bの構成に加え、第3エアバッグ23と分岐管5とを備えている。
【0059】
第3エアバッグ23は、乗員の頭部用のエアバッグであり、乗員の頭部に対応するようにシートバックS2の内部に配置(格納)されている。
図14に示すように、第3エアバッグ23は、第1ガス発生器11から供給されるガスにより膨張することで、シート本体S10(シートバックS2)の上端部から突出してヘッドレストS3の幅方向両側において展開する。第3エアバッグ23は、シートバックS2の上端部から外部に展開し、乗員
の頭部を左右両側から保護する。
【0060】
分岐管5は、ガスが流通可能な流管であり、接続管4の中途から分岐して第3エアバッグ23に接続されている。これにより、接続管4を流れるガスの一部が分岐管5を流れて第3エアバッグ23に供給され、残部が第2エアバッグ22に供給される。車両用シート100Cでは、ガスが連結部C1から第1エアバッグ21に至るまでの流路よりも連結部C1から第3エアバッグ23に至るまでの流路の方が長くなるように、接続管4や分岐管5の長さ、及び第1導管31、接続管4、分岐管5の連結位置が設定されている。これにより、分岐管5により第3エアバッグ23へ導かれるガスは、第1エアバッグ21へのガスの供給に遅れて第3エアバッグ23に供給される。そのため、車両用シート100Cでは、第1エアバッグ21が展開した後に第2エアバッグ22及び第3エアバッグ23が展開する。
【0061】
ここで、側突の衝撃により乗員の頭部が揺さぶられた状態で第1エアバッグ21及び第2エアバッグ22により乗員の上半身を保持すると、乗員の頸部に負荷が加わる場合がある。これに対して、車両用シート100Cは、第1エアバッグ21及び第2エアバッグ22による乗員の上半身M2の保持に加え、第3エアバッグ23によって乗員の頭部を保持することで、乗員の頸部への負荷を低減することができる。その結果、より確実に乗員を保護することができる。
【0062】
<実施形態2>
以下、実施形態2に係る車両用シートについて説明する。実施形態2の説明では、
図1~
図8で説明した車両用シート100との相違点を中心に説明し、車両用シート100と同様の点については詳細な説明は割愛する。
図15は、実施形態2においてエアバッグ装置が作動する前の車両用シートを示す模式図である。
図16は、実施形態2においてエアバッグ装置が作動したときの車両用シートを示す模式図である。
図15及び
図16に示すように、実施形態2に係る車両用シート200のエアバッグ装置10Dは、上述した車両用シート100のエアバッグ装置10の構成に加え、第2ガス発生器12、第2エアバッグ22、第2導管32、第3エアバッグ231,232、及び接続管61,62を備えている。
【0063】
第2ガス発生器12は、シート本体S10のうちシート座面S1の内部に配置され、第2エアバッグ22へガスを供給する。第2ガス発生器12は、第1ガス発生器11と同様の構成を有しているが、エアバッグECUの制御により第1ガス発生器11とは独立して作動する。
【0064】
実施形態2に係る第2エアバッグ22は、第2ガス発生器12から供給されるガスにより膨張することで、シート本体S10(シートバックS2)の第2側端SE2から突出して展開する。これにより、乗員の肩部または胸部が第2側端SE2側から保持される。
【0065】
第2導管32は、ガスが流通可能な流管であり、第2ガス発生器12から第2エアバッグ22へガスを導くように構成されている。
図15及び
図16に示すように、第2導管32の一端は第2ガス発生器12に接続され、他端は第2エアバッグ22に接続されている。また、第2導管32の一部は、可撓性を有する第2可撓管部F2として形成されており、シート本体S10の内部において第2側端SE2に沿うように配置されている。より詳細には、第2可撓管部F2は、乗員が車両用シート200に着座したときに乗員と第2側端SE2との間に位置するように、配置されている。第2可撓管部F2は、第1可撓管部F1と同様に構成されており、ガスが通過していないときには萎んだ状態または折り畳まれた状態となっており、ガスが通過するときにはガスの圧力により膨張することで流路断面積を増大させる。また、第2可撓管部F2は、第2座面側可撓管部F21と第2バック
側可撓管部F22と第2接続可撓管部F23とを含んでいる。第2座面側可撓管部F21は、シート座面S1における第2側端SE2に沿って配置されている。第2バック側可撓管部F22は、シートバックS2における第2側端SE2に沿って配置されている。第2接続可撓管部F23は、シート座面S1とシートバックS2との接続部分S4を跨ぐように配置されている。第2可撓管部F2において、第2座面側可撓管部F21、第2接続可撓管部F23、及び第2バック側可撓管部F22は、単一部材によって一体に成形されている。第2ガス発生器12から第2エアバッグ22へガスが流れる流路において、第2バック側可撓管部F22は第2座面側可撓管部F21よりも下流側に位置しており、第2接続可撓管部F23によって第2座面側可撓管部F21の下流側の端部と第2バック側可撓管部F22の上流側の端部とが接続されている。
【0066】
第2可撓管部F2は、ガスの通過時に膨張することによってシート本体S10を変形させるように構成されている。このとき、第2可撓管部F2がシート本体S10の内部で第2側端SE2に沿うように配置されているため、第2可撓管部F2が膨張してシート本体S10が変形することにより、正規姿勢よりも第2側端SE2寄り(ファーサイド寄り)の着座姿勢を正規姿勢に矯正することができる。また、第2可撓管部F2が、シート座面S1における第2側端SE2に沿って配置される第2座面側可撓管部F21と、シートバックS2における第2側端SE2に沿って配置される第2バック側可撓管部F22と、を含んでいるため、乗員の下半身M1と上半身M2の両方の姿勢を矯正することができる。そして、第2ガス発生器12から第2エアバッグ22へとガスを導く第2導管32の少なくとも一部によって第2可撓管部F2が形成されているため、第2エアバッグ22が展開する前に第2可撓管部F2の膨張によって乗員の姿勢を矯正することができる。これにより、第2エアバッグ22は、予め意図された身体部位である乗員の第2側端SE2側の肩部や胸部に対応するように展開することができる。その結果、車両用シート200によれば、第2エアバッグ22の効果を十分に発揮させ、乗員を確実に保護することができる。
【0067】
第3エアバッグ231,232は、乗員の頭部用のエアバッグであり、乗員の頭部に対応するようにシートバックS2の内部に配置(格納)されている。第3エアバッグ231は、第1エアバッグ21の展開に連動して展開するエアバッグであり、
図16に示すように、第1ガス発生器11から供給されるガスにより膨張することで、シート本体S10(シートバックS2)の上端部から突出してヘッドレストS3の第1側端SE1側において展開する。第3エアバッグ232は、第2エアバッグ22の展開に連動して展開するエアバッグであり、
図16に示すように、第2ガス発生器12から供給されるガスにより膨張することで、シート本体S10(シートバックS2)の上端部から突出してヘッドレストS3の第2側端SE2側において展開する。第3エアバッグ231,232がシートバックS2の上端部から外部に展開して乗員の頭部を保持することで、乗員の頭部が保護される。
【0068】
接続管61,62は、ガスが流通可能な流管である。接続管61は、第1導管31を流れるガスが第1エアバッグ21に遅れて第3エアバッグ231に供給されるように、第1導管31と第3エアバッグ231とを接続している。接続管62は、第2導管32を流れるガスが第2エアバッグ22に遅れて第3エアバッグ232に供給されるように、第2導管32と第3エアバッグ232とを接続している。
図15及び
図16の符号C11は、第1導管31と接続管61との連結部を示し、符号C12は、第2導管32と接続管62との連結部を示す。車両用シート200では、ガスが連結部C11から第1エアバッグ21に至るまでの流路よりも連結部C11から第3エアバッグ231に至るまでの流路の方が長くなるように設定されており、また、ガスが連結部C12から第2エアバッグ22に至るまでの流路よりも連結部C12から第3エアバッグ232に至るまでの流路の方が長くなるように設定されている。これにより、第1エアバッグ21へのガスの供給に遅れて第3エアバッグ231にガスが供給され、第2エアバッグ22へのガスの供給に遅れて第3
エアバッグ232にガスが供給される。これにより、車両用シート200では、第1エアバッグ21が展開した後に第3エアバッグ231が展開し、第2エアバッグ22が展開した後に第3エアバッグ232が展開する。
【0069】
実施形態2に係る車両用シート200は、第1エアバッグ21にガスを供給するための第1ガス発生器11とは別の第2ガス発生器12によって第2エアバッグ22へのガスの供給を行うことで、第2エアバッグ22を第1エアバッグ21とは独立して展開することができる。つまり、第1エアバッグ21にガスを供給しなくとも第2エアバッグ22を展開し、第2側端SE2側(ファーサイド)からの衝撃に対して乗員を保護することができる。例えば、第1側端SE1側と第2側端SE2側の何れの方向から衝撃を受けたのかをセンサにより検知し、第1ガス発生器11と第2ガス発生器12のうち、衝撃を受けた方向に対応するエアバッグを展開させる方のガス発生器を作動させてもよい。また、衝撃を受けた方向に対応するエアバッグを先に展開し、その後、衝撃の反動によって反対側に傾いた乗員を保護するために反対側のエアバッグを展開してもよい。例えば、車両が側面構造体X1において側面衝突し、第1側端SE1側(ニアサイド)から衝撃を受けたことをセンサが検知すると、まず、第1ガス発生器11を作動させて第1エアバッグ21及び第3エアバッグ231を展開することで、第1側端SE1側からの衝撃に対して乗員を保護し、次に、第2ガス発生器12を作動させて第2エアバッグ22及び第3エアバッグ232を展開することで、第2側端SE2側に傾いた乗員を保護してもよい。このとき、第1可撓管部F1及び第2可撓管部F2によって乗員の着座姿勢が矯正されるため、エアバッグの効果を十分に発揮させ、乗員を確実に保護することができる。
【0070】
<実施形態3>
以下、実施形態3に係る車両用シートについて説明する。実施形態3の説明では、
図15及び
図16で説明した実施形態2に係る車両用シート200との相違点を中心に説明し、車両用シート200と同様の点については詳細な説明は割愛する。
図17は、実施形態3においてエアバッグ装置が作動する前の車両用シートを示す模式図である。
図17に示すように、実施形態3に係る車両用シート300のエアバッグ装置10Eは、第1ガス発生器11及び第2ガス発生器12に代えて、第1ガス発生器11Eを備える点で、上述した車両用シート200のエアバッグ装置10Dと異なる。
【0071】
図17に示すように、第1ガス発生器11Eは、第1導管31が接続される第1ガス排出口111と、第2導管32が接続されると共に第1ガス排出口111とは独立した第2ガス排出口112と、を有している。第1ガス排出口111と第2ガス排出口112は、それぞれに起動装置が取り付けられることにより独立して制御され、作動することによって開口してガスを排出する。
【0072】
実施形態3に係る車両用シート300は、第1エアバッグ21にガスを供給するための第1ガス排出口111とは別の第2ガス排出口112によって第2エアバッグ22へのガスの供給を行うことで、第2エアバッグ22を第1エアバッグ21とは独立して展開することができる。これにより、実施形態2に係る車両用シート200と同様の効果を得ることができる。例えば、第1側端SE1側(ニアサイド)と第2側端SE2側(ファーサイド)の何れの方向から衝撃を受けたのかをセンサにより検知し、第1ガス排出口111と第2ガス排出口112のうち、衝撃を受けた方向に対応するエアバッグを展開させる方のガス排出口を先に開口させてもよい。それに加え、実施形態3に係る車両用シート300は、第1エアバッグ21へのガスの供給と第2エアバッグ22へのガスの供給を一の第1ガス発生器11Eにより行うため、システムを簡素化することができる。
【0073】
<その他>
以上、本開示の好適な実施形態について説明したが、本明細書に開示された各々の態様
は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0074】
S10・・・・シート本体
S1・・・・・シート座面
S2・・・・・シートバック
11・・・・・第1ガス発生器
111・・・・第1ガス排出口
112・・・・第1ガス排出口
12・・・・・第2ガス発生器
21・・・・・第1エアバッグ
22・・・・・第2エアバッグ
23・・・・・第3エアバッグ
31・・・・・第1導管
32・・・・・第2導管
4・・・・・・接続管
5・・・・・・分岐管
F1・・・・・第1可撓管部
F11・・・・第1座面側可撓管部
F12・・・・第1バック側可撓管部
F13・・・・第1接続可撓管部
F2・・・・・第1可撓管部
10・・・・・エアバッグ装置(乗員拘束装置)
100・・・・車両用シート