(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】シート状マスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20240604BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
A41D13/11 D
A41D13/11 Z
A62B18/02 C
(21)【出願番号】P 2020126506
(22)【出願日】2020-07-27
【審査請求日】2023-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 龍之介
(72)【発明者】
【氏名】大塚 和俊
【審査官】原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-204146(JP,A)
【文献】特開2007-177384(JP,A)
【文献】特開2012-254272(JP,A)
【文献】特開2019-189989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/11
A62B 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つ折りされたマスク本体の内面側に一対の耳掛け部材が配置されたシート状マスクの製造方法であって、
前記耳掛け部材を形成するための帯状シートに
おける幅方向の中央部および両端部を除く部分に、前記帯状シートの搬送方向に平行な方向に対して伸縮加工を施す伸縮加工工程と、
伸縮加工が施された前記帯状シートを切断して前記耳掛け部材を形成する耳掛け部材形成工程と、
前記マスク本体の連続体を形成するための帯状のマスク本体連続体の一方の面に、前記耳掛け部材を接合する耳掛け部材接合工程と、
前記耳掛け部材が接合された前記マスク本体連続体を幅方向の中心部において、二つ折りして二つ折りマスク連続体を形成する二つ折りマスク連続体形成工程と、
を含むシート状マスクの製造方法。
【請求項2】
前記伸縮加工工程において、第1ギアロールと前記第1ギアロールに対向配置された第2ギアロールとの間に前記帯状シートを搬送して前記伸縮加工を施す請求項1に記載のシート状マスクの製造方法。
【請求項3】
前記伸縮加工工程において、
前記第1ギアロールおよび前記第2ギアロールの上流側に配置された第1ニップロールにより、前記帯状シートをニップし、
前記第1ニップロールの回転速度と、前記第1ギアロールおよび前記第2ギアロールの回転速度とは、異なる回転速度である請求項2に記載のシート状マスクの製造方法。
【請求項4】
前記伸縮加工工程において、
前記第1ギアロールおよび前記第2ギアロールの下流側に配置された第2ニップロールにより、前記帯状シートをニップし、
前記第2ニップロールの回転速度と、前記第1ギアロールおよび前記第2ギアロールの回転速度とは、異なる回転速度である請求項2または3に記載のシート状マスクの製造方法。
【請求項5】
前記伸縮加工工程において、
前記第1ギアロールおよび前記第2ギアロールの上流側に配置された第1ニップロールにより、前記帯状シートをニップし、
前記第1ギアロールおよび前記第2ギアロールの下流側に配置された第2ニップロールにより、前記帯状シートをニップし、
前記第1ニップロールの回転速度と、前記第2ニップロールの回転速度とは、異なる回転速度である請求項2に記載のシート状マスクの製造方法。
【請求項6】
前記伸縮加工工程において、
前記第1ギアロールおよび前記第2ギアロールと前記第1ニップロールとの間、並びに前記第1ギアロールおよび前記第2ギアロールと前記第2ニップロールとの間の少なくとも一方にガイドロールを設け、第1ギアロールまたは第2ギアロールのどちらか一方が、帯状シートに対して抱き角を持たせるようにしながら前記伸縮加工を施す請求項3~5のいずれか1項に記載のシート状マスクの製造方法。
【請求項7】
前記伸縮加工は、前記帯状シートの幅方向の少なくとも一部に施される請求項1~6のいずれか1項に記載のシート状マスクの製造方法。
【請求項8】
前記マスク本体連続体の内部に揮発性の機能材を配置する機能材配置工程をさらに含む請求項1~7のいずれか1項に記載のシート状マスクの製造方法。
【請求項9】
前記マスク本体連続体をカットしてシート状マスクを形成するマスク形成工程と、
形成された前記シート状マスクをピローに封入する封入工程と、
をさらに含む請求項1~8のいずれか1項に記載のシート状マスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二つ折りされたマスク本体を備えるシート状マスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野において、特許文献1には、マスク本体部を形成するシートと、マスク本体部を形成するシートよりも伸縮性が高い耳掛け部を形成するシートとを接合し、その後、耳掛け部部分にロールギアを用いて伸縮加工を施し、最後に、マスクの形状に切断する製造方法が開示されている。また、特許文献2には、マスク本体と耳掛け部とを有するシート状マスクの製造方法であって、マスク本体に別工程で形成された耳掛け部を接合してシート状マスクを製造する製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-236798号公報
【文献】特開2018-204146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、着用者がリラックス効果を得ることを目的として、温熱蒸気等を発生させる機能材を有するシート状マスクが製造されている。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、耳掛け部材用の帯状シートに伸縮加工を施そうとすると、マスク本体の内側へ耳掛け部材を配置できなかった。また、特許文献2に記載の技術では、耳掛け部材に伸縮性を付与する工程がないので、耳掛け部材に伸縮性を付与することができなかった。
したがって本発明は、マスク本体部を打ち抜いた後でも、耳掛け部が内側に配置されているため搬送が安定するシート状マスクの製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、二つ折りされたマスク本体の内面側に一対の耳掛け部材が配置されたシート状マスクの製造方法に関する。
本発明の製造方法は、前記耳掛け部材を形成するための帯状シートに伸縮加工を施す伸縮加工工程を有することが好ましい。
本発明の製造方法は、伸縮加工が施された前記帯状シートを切断して前記耳掛け部材を形成する耳掛け部材形成工程を有することが好ましい。
本発明の製造方法は、前記マスク本体の連続体を形成するための帯状のマスク本体連続体の一方の面に、前記耳掛け部材形成工程において形成された前記耳掛け部材を接合する耳掛け部材接合工程を有することが好ましい。
本発明の製造方法は、前記耳掛け部材が接合された前記マスク本体連続体を幅方向の中心部において、二つ折りして二つ折りマスク連続体を形成する二つ折りマスク連続体形成工程を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明のシート状マスクの製造方法によれば、マスク本体部を打ち抜いた後でも、耳掛け部が内側に配置されているため搬送が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の好ましい一実施形態のシート状マスクの着用状態を示す斜視図である。
【
図2】本発明の好ましい一実施形態のシート状マスクの着用前の状態を示す平面図である。
【
図3】本発明の好ましい一実施形態のシート状マスクが有する発熱体の断面図である。
【
図4】本発明の好ましい一実施形態のシート状マスクの製造方法に用いられる製造装置による全工程を示す模式図である。
【
図5】本発明の好ましい一実施形態のシート状マスクの製造方法に用いられる製造装置の耳掛け部材形成部および耳掛け部材接合部の側面模式図である。
【
図6】本発明の好ましい一実施形態のシート状マスクの製造方法に用いられる製造装置の伸縮加工部の全体構成を説明するための側面模式図である。
【
図7】本発明の好ましい一実施形態のシート状マスクの製造方法に用いられる製造装置のギアロールの歯溝の構成を説明するための図である。
【
図8】本発明の好ましい一実施形態のシート状マスクの製造方法に用いられる製造装置により伸縮加工が施される基材シートの場所を説明するための図である。
【
図9】本発明の好ましい一実施形態のシート状マスクの製造方法に用いられる製造装置の折り接合形成部および切断分割部の側面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のシート状マスクの製造方法について、
図1~
図9を参照して説明する。本実施形態のシート状マスクの製造方法は、二つ折りされたマスク本体2の内面側に一対の耳掛け部材3,3が配されたマスクの製造方法である。まず、
図1および
図2を参照して、本実施形態のシート状マスクの製造方法により製造されるシート状マスク1について説明する。
【0010】
シート状マスク1は、二つ折りしたマスク本体2の内面側に一対の耳掛け部材3,3が配されたシート状のマスクである。
二つ折りしたマスク本体2の内部には、任意に発熱体4が配される。
二つ折りしたマスク本体2の内部には、発熱体4と共に又は別に、任意に揮発性の機能材が配される。
シート状マスク1は、マスク本体2が二つ折りされ、一対の耳掛け部材3,3がその内面側に配された状態で製造される。
そして、使用時には、二つ折り状態のマスク本体2を開いて内面側に配された一対の耳掛け部材3,3を外方に折り返し、折り返した一対の耳掛け部材3,3を着用者の耳に掛けて使用するようになっている。このようなシート状マスク1は、使用状態において、マスク本体2が立体形状を有するようになっており、着用時にマスク本体2と着用者の口元との間に空間を形成し、使用感が向上する。
【0011】
シート状マスク1が発熱体4を有している場合、使用状態において、一対の発熱体4,4は、マスク本体2の幅方向(左右方向)Yの中心で上下方向Xに伸びる折り線25aを中心として左右対称に配されることが好ましい。
図1に示す実施形態においては、各発熱体4は、枚葉の矩形状に形成されている。各発熱体4は、使用状態のマスク本体2における折り線25aに対称に幅方向Yに隣り合う右側領域と左側領域とに配されている。各発熱体4は、使用状態におけるマスク本体2の右側領域および左側領域のそれぞれに配されており、着用者の鼻を中心線として対称に幅方向Yに隣り合う位置に配置されるようになる。
【0012】
シート状マスク1において、二つ折りされたマスク本体2は、二つ折りされる折り側25と、折り側25の幅方向Yにおける反対側の開口側26と、折り側25と開口側26とを繋ぐ上縁側27および下縁側28とを有していることが好ましい。
マスク本体2は、
図2に示すように、二つ折り状態における折り側25が、幅方向Yの外方に湾曲した形状を有していることが好ましい。
折り側25の湾曲した上部および下部は、二つ折り状態を維持する折り側接合部24を含んでおり、折り側接合部24は、二つ折りすることで重なり合ったマスク本体2同士を接合して形成されていることが好ましい。
折り側接合部24は、上下方向Xの上部に配される鼻側折り接合部24aと、上下方向Xの下部に配される顎側折り接合部24bとを有していることが好ましい。
【0013】
鼻側折り接合部24aは、シート状マスク1を着用した際の着用者の鼻先に向かう鼻筋のラインに沿う形状となるように形成されていることが好ましい。
顎側折り接合部24bは、シート状マスク1を着用した際の着用者の鼻先から顎の先端に向かうラインを外方に隆起させた形状となるように形成されていることが好ましい。
【0014】
シート状マスク1のマスク本体2において、開口側26は、上下方向Xの長さが折り側25の上下方向Xの長さよりも短くなっていることが好ましい。
図1に示す実施形態においては、上縁側27は、シート状マスク1の装着時に着用者の頬骨等の形状に沿う形状に形成されており、頬骨に密着するようになっている。また、下縁側28は、シート状マスク1の着用時に着用者の顎全体を覆う形状になっている。このような形状を有するマスク本体2は、使用状態において、着用者の鼻から口元を覆う立体形状となる。
【0015】
図2に示す実施形態において、各耳掛け部材3は、幅方向Yに長い略矩形形状に形成されている。
各耳掛け部材3は、マスク本体2を二つ折りした状態においてマスク本体2の内面側に配されている。
そして、各耳掛け部材3は、幅方向Yの外方部分3sが二つ折りされたマスク本体2の開口側26と耳掛け接合部23にて接合されていることが好ましい。
耳掛け接合部23は、上下方向Xに沿ってマスク本体2の開口側26の全域にわたって配されていることが好ましい。
【0016】
シート状マスク1において、一対の耳掛け部材3,3は、マスク本体2が二つ折りされた状態で、マスク本体2の表面シート20tの内面に接触した状態で、マスク本体2内に収納されていることが好ましい。
一対の耳掛け部材3,3は、
図1に示すように、使用時には二つ折りされたマスク本体2を表面シート20tが露出するように開くことで使用可能になる。各耳掛け部材3は、耳掛け接合部23の内方側の接合境界線23aを軸に外方に折り返して使用するようになっている。
また、各耳掛け部材3には、幅方向Yに伸びる横切れ線31aおよび横切れ線31aに連結し且つ上下方向Xに延びる縦切れ線31bが形成されており、シート状マスク1の着用時には、横切れ線31aおよび縦切れ線31bを開いて着用者の耳を入れるようになっていることが好ましい。
【0017】
次に、任意にシート状マスク1に内包される各発熱体4について説明する。シート状マスク1において、各発熱体4は、非肌対向面側に配される非通気性シート40bの一面に発熱組成物41を塗布または散布し、塗布または散布された発熱組成物41の層を肌対向面側に配される通気性シート40tで被覆して形成されていることが好ましい。
発熱組成物41は、不揮発性の機能材である被酸化性金属粉末及び電解質並びに揮発性の機能材である水を含有していることが好ましい。空気との接触による被酸化磁性粉末の酸化反応を利用して熱を生じさせるものである。そして典型的にはその熱により揮発性の機能材を揮発させる。
シート状マスク1は、発熱体4と共に又は別に揮発性の機能材として香料を含有していることも好ましい。
【0018】
シート状マスク1の使用状態においては、マスク本体2は、着用者の肌対向面側に配される通気性の表面シート20tと、着用者の非肌対向面側に配される通気性の裏面シート20bとを備えていることが好ましい。表面シート20tおよび裏面シート20bは、
図1に示したように、典型的には使用状態のマスク本体2の輪郭と一致する輪郭を有している。
図3に示す実施形態のマスク本体2は、表面シート20tと裏面シート20bとの間に一対の発熱体4,4が配されている。一対の発熱体4,4は、使用状態の表面シート20tおよび裏面シート20bに全体が覆われる大きさに形成されている。一対の発熱体4,4は、通気性シート40tが、表面シート20t側に配され、非通気性シート40bが裏面シート20b側に配されている。そして、揮発した揮発性機能材は、通気性シート40tの通気孔を上向き矢印の方向へ通過する。
【0019】
次に、本実施形態のシート状マスク1の製造方法について、
図4~
図9を参照して説明する。シート状マスク1は、
図4に示した製造装置100を用いて製造される。
図4には、製造装置100の全体構成が示されている。また、
図5には、
図4に示す製造装置100の耳掛け部材形成部110が示されている。なお、以下の説明では、シート状マスク1を搬送する搬送方向(シート状マスク1(マスク本体2)の上下方向に対応する方向)をMD(Machine Direction)方向、MD方向と直交する幅方向(シート状マスク1(マスク本体2)の軸方向に対応する方向)をCD(Cross Direction)方向として説明する。
【0020】
シート状マスク1の製造方法は、耳掛け部材形成工程と、シート状マスク形成工程と、を含むことが好ましい。耳掛け部材形成工程においては、耳掛け部材3を形成し、シート状マスク形成工程においては、形成された耳掛け部材を用いてシート状マスク1を形成する。
シート状マスク1は、耳掛け部材形成部110および耳掛け部材接合部130を備える製造装置100によって製造されることが好ましい。
製造装置100は、伸縮加工部200をさらに備えることが好ましい。
【0021】
伸縮加工部200は、耳掛け部材形成部110の最も上流側に位置していることが好ましい。すなわち、耳掛け部材の形成は、伸縮加工部200により伸縮加工が施された基材シート30に対して、耳掛け部材の形成加工を施すことにより行われることが好ましい。
伸縮加工は、帯状シートである基材シート30の幅方向に直角な方向、つまり、基材シート30の搬送方向に平行な方向に対して施されることが好ましい。伸縮加工が施された基材シート30は、波打った形状(襞が形成された形状)となり、幅方向に伸縮性を発現するようになる。
基材シート30は、弾性樹脂を含み、必要に応じて非弾性樹脂を更に含む不織布を用いることができる。
不織布としては例えば、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布等を用いることができる。
不織布を構成する弾性樹脂は、例えば熱可塑性エラストマーやゴムなどが挙げられる。
熱可塑性エラストマーとしては、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体等のスチレン系エラストマー、プロピレン-αオレフィン共重合体等のポリプロピレン系エラストマー、エチレン-プロピレン共重合体やエチレン-αオレフィン共重合体等のオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマーから選ばれる1又は複数を用いることができる。
一方、不織布を構成する非弾性樹脂は、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等が挙げられる。
PEとしては高圧法低密度ポリエチレン、C4(ブテン-1)、C6(ヘキセン-1)若しくはC8(オクテン-1)をコモノマーとしてチーグラーナッタ触媒やメタロセン触媒で重合された直鎖状短鎖分岐ポリエチレン、又は、中低圧法高密度ポリエチレンがあげられる。
PPとしてはホモPP、エチレンコポリマーによるランダムPPやブロックPP、また、立体規則性の異なるアイソタクチック、シンジオタクチック、アタクチックなどこれらの組み合わせからなる低結晶性PPがあげられる。
ポリエステルとしてはポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートから選ばれる1又は複数を用いることができる。
複数の樹脂を用いる場合、一本の繊維に複数の樹脂が含まれていてもよく、あるいは単一の樹脂からなる繊維が複数種類含まれていてもよい。
一対の耳掛け部材3,3は、上述した形成材料の他に、マスク本体2の表面シート20tに融着させる観点から、熱融着性繊維を含んで構成されていることが好ましい。熱融着性繊維としては、マスク本体2の表面シート20tおよび裏面シート20bに用いるものと同種のものを用いることができる。
【0022】
伸縮加工部200は、ギアロール201と、ギアロール201に対向配置されたギアロール202とを有することが好ましい。帯状の基材シート30は、ギアロール201とギアロール202との間に搬送され、上下からギアロール201,202に挟まれ、延伸されることにより、伸縮加工が施される。典型的な実施形態は
図5に示される。ギアロール201,202のギア歯は、ギアロール201,202の回転方向に沿って配列されている。そして、ギアロール201,202は、互いに噛み合うように配置されており、基材シート30は、ギアロール201,202の間を通過する。
伸縮加工は、基材シート30の幅方向に伸縮するように施されることがマスク着用時を想定した仕様上好ましい。
【0023】
伸縮加工部200は、一対のニップロール203を有する。一対のニップロール203は、ギアロール201,202の上流側に配置されていることが好ましい。
これに加えて、又は、これに代えて、伸縮加工部200は、一対のニップロール204を有し、一対のニップロール204は、ギアロール201,202の下流側に配置されていることが好ましい。
伸縮加工時の基材シート30のテンション制御の観点から、伸縮加工部200は、一対のニップロール203と一対のニップロール204の両者を備えることが好ましい。両者を備える典型的な実施形態は
図6に示される。
そして、一対のニップロール203及び/又は204の回転速度と、ギアロール201,202の回転速度とは、基材シート30のたるみ防止の観点から異なることが好ましい。
詳細には、一対のニップロール203の回転速度と、ギアロール201,202の回転速度とは、基材シート30のたるみ防止の観点から、ギアロール201,202の回転速度が速いことが好ましい。
一対のニップロール204の回転速度と、ギアロール201,202の回転速度とは、基材シート30のたるみ防止の観点から、一対のニップロール204の回転速度が速いことが好ましい。
また、ニップロール203の回転速度とニップロール204の回転速度とは、異なる回転速度であることが好ましい。
詳細には、一対のニップロール203の回転速度と、一対のニップロール204の回転速度とは、基材シート30のたるみ防止の観点から、一対のニップロール204の回転速度が速いことが好ましい。
基材シート30にたるみを生じさせることなく搬送する観点から、一対のニップロール204の回転速度を、一対のニップロール203の回転速度に対して、100%以上とすることが好ましい。
一方、基材シート30のネックイン抑制の観点から、105%以下とすることが好ましい。
なお本明細書において「回転速度」とはロールの周速のことである。
ニップロールは典型的には表面が平滑なロールであり、熱制御は行われない。つまりニップロールに対して意図的な加熱は行われない。
【0024】
また、伸縮加工部200は、ギアロール201もしくはギアロール202のどちらか一方が、基材シート30に対して抱き角を持たせるガイドロールを有することが好ましい。該ガイドロールは、ギアロール201又はギアロール202の周面に隣接するように、これらのギアロール201,202の上流側及び下流側の一方又は両方に設けられる。
基材シート30のよれ抑制の観点から、ガイドロールは上流側205及び下流側206の双方に設けられることが好ましい。この典型的な実施形態は
図6に示される。
このように、抱き角を持たせるガイドロール205,206を設けることにより、ギアロール201,202の前後において、基材シート30が抱き角を持たせるガイドロール205,206に抱かれるので、基材シート30の搬送方向に対して、ギアロール201,202の歯が基材シート30をしっかりと噛むことになる。
また、ギアロール201,202の抱き角(α)は、基材シート30のよれ抑制の観点から、10°以上が好ましい。
ギアロール201,202の抱き角(α)は、基材シート30のネックイン抑制の観点から、300°以下が好ましい。
【0025】
さらに、ギアロール201,202の半径が同じであれば、どちら側に基材シート30を抱かせてもよいが、半径が異なる場合は、半径が大きい方のギアロールに基材シート30を抱かせる方が有利である。さらにまた、ギアロール201,202の曲率が大きい方が延伸には有利であり、半径が大きい方が伸縮加工に効果がある。
【0026】
ギアロール201に設けられた歯溝部211およびギアロール202に設けられた歯溝部221は、典型的には
図7に示したような形状となっている。そして、基材シート30には、
図7に示した形状と同様の溝が形成される。歯溝部211,221は、ギアロール201,202の周方向に所定間隔(所定ピッチ)で設けられている。
ここで、Pは、ピッチを表し、2mm以上であることが好ましく、2.5mm以上であることがより好ましい。
また、Pは10mm以下であることが好ましく、3mm以下であることがより好ましい。
Dは、押し込み量を表し、1mm以上であることが好ましく、3mm以上であることが好ましい。
また、Dは20mm以下であることが好ましく、4mm以下であることがより好ましい。
また、歯溝部211の先端の曲率半径は、歯溝部211の根元の曲率半径よりも小さい値であることが好ましい。
具体的には、歯溝部211の先端の曲率半径は0.05以上0.2以下が好ましい。
歯溝部211の根元の曲率半径は0.4以上0.6以下が好ましい。
なお、典型的には歯溝部221も歯溝部211と同様の形状をしている。
【0027】
ここで、P、Dの値を変えることで、基材シート30の延伸倍率を変えることができる。基材シート30の延伸倍率を大きくしたい場合には、Pを狭くし、Dを大きくし、歯溝の先端幅を小さくするとよい。延伸倍率と、PおよびDとの関係は、以下の式のようになる。
【0028】
延伸倍率(%)={[(P2+4D2)1/2/P]-1}×100
基材シート30の延伸倍率は、マスク着用時を想定した仕様上150%以上が好ましく、180%以上がより好ましい。
また、マスク着用時を想定した仕様上基材シート30の延伸倍率は250%以下が好ましく、200%以下がより好ましい。
【0029】
伸縮加工部200によって伸縮加工が施される基材シート30の部位は、基材シート30の全体でなくてもよく、基材シート30の幅方向(CD方向)の少なくとも一部に伸縮加工が施されていることが好ましい。これにより、基材シート30は、伸縮加工が施されていない場所でホールドされ、MD方向へ搬送されることが可能となり、基材シート30のグリップ性が向上する。この典型例は
図8に示されている。なお、基材シート30は、紙面右から左へ搬送される。
【0030】
耳掛け部材形成部110は、裁断部111とリピッチ部112とを有することが好ましい。裁断部111は、典型的には、周面に複数のカッター刃(不図示)を有するカッターロール111aと、カッターロール111aの周面に対向配置されたカッター用アンビルロール111bとを有する。これらを備えた実施形態は
図5に示されている。
カッターロール111aは、幅方向Yに並置された一対の耳掛け部材3,3を形成するパターン(
図4参照)のカッター刃を周方向に複数有していることが好ましい。
カッターロール111aおよびカッター用アンビルロール111bは、
図5に示した矢印方向に回転する。
カッター用アンビルロール111bは、基材シート30を吸引しながら回転することが好ましい。
【0031】
リピッチ部112は、典型的には、カッターロール111aとカッター用アンビルロール111bとのニップ部よりも下流側に配置されており、カッター用アンビルロール111bと対向配置されるトランスファーロール112aを有する。
トランスファーロール112aは、カッター用アンビルロール111bよりも回転速度が速いことが好ましい。
また、トランスファーロール112aは、カッターロール111aでカットされた一対の耳掛け部材3,3を吸引して吸着可能となっていることが好ましい。
トランスファーロール112aは、
図5に示した矢印方向に回転する。
【0032】
裁断部111において、最初に、カッター用アンビルロール111bにより、帯状の基材シート30を吸引しながらカッターロール111aとカッター用アンビルロール111bとのニップ部に搬送することが好ましい。
ニップ部において、カッターロール111aのカッター刃をカッター用アンビルロール111bの周面に押し当てて、基材シート30をカットし、幅方向Yに並置された一対の耳掛け部材3,3を形成することが好ましい。
なお、耳掛け部材形成部110においては、予め、着用時に耳を掛けるのに使用する横切れ線31aおよび縦切れ線31bが形成された基材シート30が用いられることが好ましい。
【0033】
耳掛け部材形成部110においては、カットにより生じた一対の耳掛け部材3,3を搬送方向Xに間隔を空けて、後述する、耳掛け部材接合部130に導入することが好ましい。そのため、リピッチ部112において、カッター用アンビルロール111bにより一対の耳掛け部材3,3を吸引しながら搬送することが好ましい。次いで、一対の耳掛け部材3,3を、カッター用アンビルロール111bとトランスファーロール112aとのニップ部において、トランスファーロール112aに受け渡すことが好ましい。そして、トランスファーロール112aとカッター用アンビルロール111bとの回転速度差により、一対の耳掛け部材3a,3aと、該一対の耳掛け部材3a,3aとMD方向に隣り合う別の一対の耳掛け部材3b,3bのみをトランスファーロール112aに受け渡すことが好ましい。裁断部111において、基材シート30をカットすることで形成されるトリム(不図示)は、リピッチ部112において、トランスファーロール112aに受け渡されることなく排出されることが好ましい。
【0034】
以上のように、耳掛け部材形成部110において、一対の耳掛け部材3a,3aが形成されると、所定間隔を空けて、次の一対の耳掛け部材3b,3bが形成され、形成された一対の耳掛け部材3,3は、順次、シート状マスク1の形成工程に導入される。
【0035】
形成された一対の耳掛け部材3,3は、マスク本体2を構成する帯状のシート部材に接合される。ここで、帯状のシート部材は、一枚の本体シート、あるいは、本体シートが積層された積層体を含む部材である。
図4に示す実施形態においては、シート部材として、表面シート20tの本体シートと裏面シート20bの本体シートとの間に発熱体4を配することによって、2枚の本体シートの間に発熱体4が挟まれた構成のマスク本体連続体20を用いている。
【0036】
耳掛け部材形成部110は、耳掛け部材接合部130を有することが好ましい。
耳掛け部材接合部130は、接合用アンビルロール132と、超音波シール133とを有していることが好ましい。この典型例は
図5に示される。超音波シール133および接合用アンビルロール132により、シート部材であるマスク本体連続体20に、耳掛け部材3が熱融着により固定される。
【0037】
接合用アンビルロール132は、典型的には、金属製のロールであり、
図5に示したように、トランスファーロール112aとカッター用アンビルロール111bとのニップ部よりも下流側に配置されている。接合用アンビルロール132は、トランスファーロール112aの周面に対向配置されている。超音波シール133は、一対の耳掛け部材3,3およびマスク本体連続体20を介して接合用アンビルロール132と対向配置されている。
【0038】
接合用アンビルロール132の周面には、一対の耳掛け部材3,3の接合パターン(不図示)が形成されていることが好ましい。
接合用アンビルロール132は、接合用アンビルロール132とトランスファーロール112aとのニップ部において、一対の耳掛け部材3,3を吸着することが好ましい。
接合用アンビルロール132は、
図5に示した矢印方向に回転する。超音波シール133は、公知の超音波発振装置であってもよい。
【0039】
耳掛け部材接合部130においては、マスク本体連続体20を搬送しながら、耳掛け部材3の外方部分3sが、搬送されているマスク本体連続体20の搬送方向Xに沿う両側部20s,20s上に位置するように搬送することが好ましい。
また、接合用アンビルロール132を用いて一対の耳掛け部材3,3を吸引しながら搬送し、一対の耳掛け部材3,3をマスク本体連続体20上に重なる位置にまで搬送することが好ましい。
ここで、一対の耳掛け部材3,3が、マスク本体連続体20上に重なる位置にまで搬送されると、超音波シール133と接合用アンビルロール132との間でマスク本体連続体20の各側部20sおよび各耳掛け部材3の外方部分3sを接合して耳掛け接合部23を形成することが好ましい。
なお、マスク本体連続体20上に一対の耳掛け部材3,3を間欠的に配置する工程および耳掛け接合部23を形成する工程は、同時に行っても、異なるタイミングで行ってもよい。
【0040】
次に、耳掛け部材3が接合されたマスク本体連続体20を二つ折りして、二つ折りマスク連続体22が形成されることが好ましい。マスク本体連続体20の二つ折りは、二つ折り部140において行われる。
【0041】
二つ折り部140においては、典型的には、マスク本体連続体20の幅方向Y中央に配された二つ折りガイド(不図示)によって、耳掛け部材3が、接合されたマスク本体連続体20を、幅方向Yの中心部において折り線25aを形成しながら折り線25aに対称に二つ折りして二つ折りマスク連続体22を形成する。
【0042】
次に、折り側接合部形成部170において、二つ折りマスク連続体22を折り線25aに近い折り部位において融着し、二つ折り状態を維持する折り側接合部24が形成されることが好ましい。この例は
図9に示される。
【0043】
その後、切断分割部180において、シート状マスク1の前駆体を、カッターロール181とアンビルロール182とのニップ部に搬送することが好ましい。
次いで、二つ折りマスク連続体22に形成された折り側接合部24の一部を含む位置にてカットして、鼻側折り接合部24aおよび顎側折り接合部24bが形成された二つ折りされたシート状マスク1を、間欠的に形成することが好ましい。
同時に、目的とするシート状マスク1以外の廃棄部位10を形成することが好ましい。形成された廃棄部位10には、折り側接合部24から幅方向Yに間隔を空けた位置に形成された連続接合部24Lが配されていることが好ましい。
【0044】
シート状マスク1が形成されたら、形成されたシート状マスク1を非通気性のピロー形態の包装体内に封入する工程を有していてもよい。
この工程は、シート状マスク1が水や香料などの揮発性の機能材を有している場合に、これらの揮発を防止する観点から、設けられることが好ましい。これにより、シート状マスク1の使用時に加湿機能や芳香機能といった所望の性能が発揮できる。
シート状マスク1が機能材として鉄粉等の被酸化性金属粉末を有している場合には、ピロー形態の包装体に封入することにより、該被酸化性金属粉末が酸素と反応して、該被酸化性金属粉末の表面の酸化反応が進行することを防止できるため好ましい。また、揮発性機能材を発熱させないために、シート状マスク1の使用直前まで酸素との接触を遮断できる。
ピロー形態の包装体という狭い空間にシート状マスク1を封入する際、該マスク1の内側に耳掛け部が配置されているため搬送が安定し、該マスク1を該包装体内に容易に封入できる。
【0045】
次に、シート状マスク1に用いられる部材の形成材料について説明する。シート状マスク1のマスク本体2の表面シート20tおよび裏面シート20bとしては、シート同士を融着させる観点から、熱融着繊維を含んで形成されていることが好ましい。熱融着性繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリビニルアルコール等のポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維、ポリエチレン―ポリプロピレン複合繊維、ポリエチレン―ポリエステル複合繊維、低融点ポリエステルーポリエステル複合繊維、繊維表面が親水性であるポリビニルアルコール―ポリプロピレン複合繊維、並びに、ポリビニルアルコール―ポリエステル複合繊維等が挙げられる。複合繊維を用いる場合には、芯鞘型複合繊維およびサイド・バイ・サイド型複合繊維のいずれをも用いることができる。これらの熱融着性繊維は、各々単独で用いることもでき、また、2種以上を混合して用いることもできる。
【0046】
発熱体4の通気性シート40tは、熱融着繊維を含んで形成されていることが好ましい。熱融着性繊維としては、マスク本体2の表面シート20tおよび裏面シート20bに用いるものと同種のものを用いることができる。
【0047】
発熱組成物41を構成する被酸化性金属の粒子としては、酸化反応熱を生ずる金属が用いられ、例えば、鉄、アルミニウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム、およびカルシウムから選ばれる1種または2種以上の粉末や繊維が挙げられる。中でも、取り扱い性、安全性、製造コスト、保存性および安定性の点から鉄が好ましく、特に鉄粉が好ましい。鉄粉としては、例えば、還元鉄粉、およびアトマイズ鉄粉などが挙げられる。そして、揮発性機能材は、被酸化性金属の酸化反応により、温熱蒸気を発生する。
【0048】
発熱体4の発熱組成物41を構成する被酸化性金属の粒子の粒径は、例えば、0.1~300μm程度とすることができる。発熱組成物41を構成する炭素成分は、保水能、酸素供給能、および触媒能の少なくとも1つの機能を有するものであり、この3つを兼ね備えているものが好ましい。炭素成分として、例えば、活性炭、アセチレンブラック、および黒鉛から選ばれる1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも、湿潤時に酸素を吸着しやすいことや、発熱体4中の水分を一定に保てる観点から、活性炭が好ましく用いられる。より好ましくは、椰子殻炭、木粉炭およびピート炭から選ばれる1種または2種以上の微細な粉末状物または小粒状物が用いられる。中でも、発熱体4の水分量を所望の範囲に保ちやすいことから、木粉炭が好ましい。
【0049】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は、上述した製造装置100を用いる実施形態に限定されない。
また、上述した実施形態のシート状マスク1の製造方法では、マスク本体2の裏面シート20bに非通気性シート40bを用いたが、裏面シート20bは通気性のシートであってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 シート状マスク
2 マスク本体
20 マスク本体連続体(シート部材)
20s マスク本体連続体の側部
22 二つ折りマスク連続体
23 耳掛け接合部
24 折り側接合部
24a 鼻側折り接合部
24b 顎側折り接合部
25a 折り線
3 耳掛け部材
4 発熱体
100 製造装置
170 折り側接合部形成部
171 超音波シール(シール部)
172 アンビルロール
180 切断分割部
200 伸縮加工部
201 ギアロール
202 ギアロール
203 ニップロール
204 ニップロール
205 ガイドロール
206 ガイドロール
211 歯溝部
221 歯溝部