(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】ヒューズユニット
(51)【国際特許分類】
H01H 85/175 20060101AFI20240604BHJP
H01H 85/20 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
H01H85/175
H01H85/20 C
(21)【出願番号】P 2020133221
(22)【出願日】2020-08-05
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩浜 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】青木 達也
(72)【発明者】
【氏名】藤坂 宗幸
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-87823(JP,A)
【文献】特開2001-297683(JP,A)
【文献】特開2010-277985(JP,A)
【文献】米国特許第7663466(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 85/175
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに組み付けられた第1ヒューズ及び第2ヒューズを備え、バッテリに取り付けられることになる、ヒューズユニットであって、
前記第1ヒューズ及び前記第2ヒューズの各々は、
入力端子部、出力端子部及び可溶部を有するバスバと、少なくとも前記可溶部を露出させた状態にて前記バスバを覆うハウジングと、を有し、
前記第1ヒューズは、
当該第1ヒューズの前記入力端子部が前記バッテリの上方に配置され、且つ、当該第1ヒューズの前記出力端子部が前記バッテリの側方に配置される、ように構成され、
前記第2ヒューズは、
当該第2ヒューズの前記入力端子部が前記バッテリの上
面に沿って配置され、且つ、前記第1ヒューズの上面に当該第2ヒューズの少なくとも一部が重なるように配置される、ように構成されるとともに、前記第1ヒューズの側面に
開口する溝状の形状を有して設けられた被係止部
の開口側から溝内に挿入されて前記被係止部に係合する
突起状の形状を有する係止部を有し、前記係止部と前記被係止部との係合によって前記第1ヒューズの前記上面から離れる向きへの変位が規制される、
ヒューズユニット。
【請求項2】
請求項
1に記載のヒューズユニットにおいて、
前記第1ヒューズは、
当該第1ヒューズの前記可溶部が前記バッテリの側面に沿って配置される、ように構成され、
前記第2ヒューズは、
当該第2ヒューズの前記可溶部が前記バッテリの
前記上面に沿って配置される、ように構成さ
れ、
前記第1ヒューズ及び前記第2ヒューズが前記バッテリに取り付けられた状態において、前記第1ヒューズの前記可溶部と前記第2ヒューズの前記可溶部とが重なり合わないように配置される、
ヒューズユニット。
【請求項3】
請求項1
又は請求項
2に記載のヒューズユニットにおいて、
前記第1ヒューズは、
前記第2ヒューズの側面に当接する当接部を有する、
ヒューズユニット。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか一項に記載のヒューズユニットにおいて、
前記係止部は、
前記第2ヒューズの下面から下方に突出する形状を有する、
ヒューズユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに組み付けられた第1ヒューズ及び第2ヒューズを備え、バッテリに取り付けられることになる、ヒューズユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車用バッテリ等に直接取り付けられるヒューズユニットが提案されている。例えば、従来のヒューズユニットの一つは、2つのヒューズが互いに組み付けられて一体化された構造を有しており、バッテリに対して一体的に取り付けられるようになっている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のヒューズユニットでは、一方のヒューズから延びる入力端子部(バスバ)と他方のヒューズの入力端子部(柱状の端子)とをボルト締結することで、双方のヒューズが互いに組み付けられるようになっている。このヒューズユニット及びバッテリが実際に車両に搭載された際、例えば、車両の走行時の振動などに起因し、一方のヒューズが他方のヒューズに対して相対的に変位する場合がある。この場合、ボルト締結されている入力端子部(バスバ)に過大な応力集中が生じる可能性や、ヒューズ同士が適正に組み付けられた状態が損なわれる可能性がある。ヒューズ同士の間での電気的接続を良好に維持する等の観点において、上述したような変位が出来る限り抑制されることが望ましい。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数のヒューズが適正に組み付けられた状態を維持可能なヒューズユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係るヒューズユニットは、下記[1]~[4]を特徴としている。
[1]
互いに組み付けられた第1ヒューズ及び第2ヒューズを備え、バッテリに取り付けられることになる、ヒューズユニットであって、
前記第1ヒューズ及び前記第2ヒューズの各々は、
入力端子部、出力端子部及び可溶部を有するバスバと、少なくとも前記可溶部を露出させた状態にて前記バスバを覆うハウジングと、を有し、
前記第1ヒューズは、
当該第1ヒューズの前記入力端子部が前記バッテリの上方に配置され、且つ、当該第1ヒューズの前記出力端子部が前記バッテリの側方に配置される、ように構成され、
前記第2ヒューズは、
当該第2ヒューズの前記入力端子部が前記バッテリの上面に沿って配置され、且つ、前記第1ヒューズの上面に当該第2ヒューズの少なくとも一部が重なるように配置される、ように構成されるとともに、前記第1ヒューズの側面に開口する溝状の形状を有して設けられた被係止部の開口側から溝内に挿入されて前記被係止部に係合する突起状の形状を有する係止部を有し、前記係止部と前記被係止部との係合によって前記第1ヒューズの前記上面から離れる向きへの変位が規制される、
ヒューズユニットであることであること。
[2]
上記[1]に記載のヒューズユニットにおいて、
前記第1ヒューズは、
当該第1ヒューズの前記可溶部が前記バッテリの側面に沿って配置される、ように構成され、
前記第2ヒューズは、
当該第2ヒューズの前記可溶部が前記バッテリの前記上面に沿って配置される、ように構成され、
前記第1ヒューズ及び前記第2ヒューズが前記バッテリに取り付けられた状態において、前記第1ヒューズの前記可溶部と前記第2ヒューズの前記可溶部とが重なり合わないように配置される、
ヒューズユニットであることであること。
[3]
上記[1]又は上記[2]に記載のヒューズユニットにおいて、
前記第1ヒューズは、
前記第2ヒューズの側面に当接する当接部を有する、
ヒューズユニットであることであること。
[4]
上記[1]~上記[3]の何れか一つに記載のヒューズユニットにおいて、
前記係止部は、
前記第2ヒューズの下面から下方に突出する形状を有する、
ヒューズユニットであることであること。
【0007】
上記[1]の構成のヒューズユニットによれば、第1ヒューズの上面に重なるように、第2ヒューズが配置される。このとき、第2ヒューズの係止部と第1ヒューズの被係止部とが、バッテリの側方で係合する。更に、第2ヒューズの入力端子部が、所定の接続対象(例えば、第1ヒューズの入力端子部や、バッテリ端子など)にバッテリの上方で接続されることになる。これにより、第2ヒューズが第1ヒューズから離れる向きに変位しようとしても、係止部と被係止部との係合箇所および入力端子部の接続箇所の複数箇所で、その変位が妨げられることになる。よって、上述した従来のヒューズユニットに比べ、一方のヒューズが他方のヒューズに対して変位することが強く抑制されることになる。したがって、本構成のヒューズユニットは、従来のヒューズユニットに比べ、複数のヒューズが適正に組み付けられた状態を維持可能である。
【0008】
他の効果として、上述した変位の抑制により、第1ヒューズと第2ヒューズとが分離および接触を繰り返すことによる異音の発生も抑制される。
【0009】
上記[2]の構成のヒューズユニットによれば、第1ヒューズの被係止部が第1ヒューズの側面に開口する溝状の形状を有し、突起状の形状を有する第2ヒューズの係止部が、その被係止部に挿入された状態で被係止部に係合する。これにより、両者の係合をシンプルな構造で実現できる。他の効果として、仮に第1ヒューズから第2ヒューズが分離された状態でヒューズユニットが用いられる場合であっても、被係止部が第1ヒューズの側面から突出しないため、ヒューズユニットの設置スペースを小さくすることが可能である。このように、本構成のヒューズユニットは、ヒューズユニットの汎用性にも優れる。
【0010】
上記[3]の構成のヒューズユニットによれば、第1ヒューズの可溶部がバッテリの側面に沿って配置され、第2ヒューズの可溶部がバッテリの上面に沿って配置されることになる。双方の可溶部が重なるように配置されないため、ヒューズユニットをバッテリに取り付けた状態で、双方の可溶部を容易に視認することができる。
【0011】
上記[4]の構成のヒューズユニットによれば、第1ヒューズの当接部が第2ヒューズの側面に当接した状態で、第1ヒューズと第2ヒューズとが組み付けられる。これにより、第1ヒューズから離れる向き(例えば、車両に搭載された状態での上下方向)に第2ヒューズが変位することだけでなく、第1ヒューズに対してスライドする向き(例えば、上下方向に直交する左右方向)に第2ヒューズが変位することが抑制される。よって、本構成のヒューズユニットは、複数のヒューズが適正に組み付けられた状態を更に強固に維持可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、本構成のヒューズユニットは、従来のヒューズユニットに比べ、複数のヒューズが適正に組み付けられた状態を維持可能である。
【0013】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、自動車用バッテリに取り付けられた状態にある本実施形態に係るヒューズユニットの斜視図である。
【
図2】
図2(a)は、
図1に示すヒューズユニット及びバッテリの側面図であり、
図2(b)は、
図2(a)のA部の拡大図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係るヒューズユニットを構成する第1ヒューズ及び第2ヒューズがバッテリから取り外されて互いに分離した状態を示す
図2(a)に対応する図である。
【
図4】
図4(a)は、第2ヒューズの平面図であり、
図4(b)は、第2ヒューズの側面図であり、
図4(c)は、第1ヒューズの平面図であり、
図4(d)は、第1ヒューズの側面図である。
【
図5】
図5は、変形例に係るヒューズユニットを示す
図1に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るヒューズユニット1について説明する。ヒューズユニット1は、例えば、
図1に示すように、車両用のバッテリ4に取り付けられて使用される。ヒューズユニット1は、バッテリ4と外部負荷(図示省略)から延びる電線(図示省略)とを電気的に接続すると共に、電線に定格電流を超える電流が流れたときにバッテリ4と電線との電気的接続を断つ機能を有する。
【0016】
以下、説明の便宜上、
図1~
図6に示すように、「前後方向」、「幅方向」、「上下方向」、「前」、「後」、「上」及び「下」を定義する。「前後方向」、「幅方向」及び「上下方向」は、互いに直交している。上下方向は、バッテリ4が搭載された車両の上下方向と一致している。
【0017】
ヒューズユニット1は、
図1に示すように、第1ヒューズ2と、第2ヒューズ3とを備える。第1ヒューズ2及び第2ヒューズ3は、互いに組み付けられてバッテリ4に取り付けられることになる。以下、ヒューズユニット1を構成する各部材について順に説明する。
【0018】
まず、第1ヒューズ2について説明する。第1ヒューズ2は、
図3及び
図4(b)に示すように、バスバ10と、ハウジング20と、カバー30と、を備える。バスバ10は、板状の金属部材である。ハウジング20は、バスバ10の大部分を覆うように樹脂材料によりバスバ10と一体的に成形されたモールド成形体である。ハウジング20は、上下方向及び幅方向に延び且つ上下方向に長い略直方体状の形状を有している。
【0019】
バスバ10のうち、入力端子部11と、一対の出力端子部12と、入力端子部11と一対の出力端子部12とをそれぞれ電気的に接続する一対の可溶部13とが、ハウジング20から露出している。入力端子部11は、バッテリ4側に接続されることになり、各出力端子部12は、外部負荷から延びる電線側に接続されることになる。
【0020】
具体的には、入力端子部11は、ハウジング20の上端部の後面から後方に突出しており、上下方向に直交する方向に延びる略矩形平板状の形状を有している。入力端子部11の中央部には、上下方向(板厚方向)に貫通するボルト挿通孔11aが形成されている。入力端子部11には、前後方向に延びる幅方向両端縁から下方に延びる一対の回転規制部11bが設けられている。一対の回転規制部11bの幅方向内側面同士の間隔は、後述する中継端子6の他端部(前端部)の幅方向両端面の間隔と略等しい。
【0021】
一対の出力端子部12は、ハウジング20の下側領域の前面(側面)にて後方に窪み且つ幅方向に並ぶように設けられた一対の凹部21の底部にて前方へ露出している。各出力端子部12は、前後方向に直交する方向に延びる平板状の形状を有している。各出力端子部12の中央部には、前後方向(板厚方向)に貫通する貫通孔12aが形成されており、貫通孔12aには、凹部21の前端開口から更に前方へ突出するスタッドボルト14が接続され固定されている。
【0022】
一対の可溶部13は、ハウジング20の一対の凹部21の上側に隣接する位置にて前後方向に貫通し且つ幅方向に並ぶように設けられた一対の窓部22の内部にて前方且つ後方へ露出している。各可溶部13には、自身の他の部分と比べて相対的に低融点の金属15が載置されている。各可溶部13は、対応する出力端子部12(即ち、対応する出力端子部12に接続される電線)に定格電流を超える電流が流れたときに、ジュール熱によって溶断されるように設計されている。各可溶部13が溶断されると、入力端子部11と、対応する出力端子部12との間(即ち、バッテリ4と、対応する出力端子部12に接続される電線との間)の電気的接続が断たれる。
【0023】
一対の可溶部13を露出させる一対の窓部22には、略U字状の樹脂製の透明のカバー30が、ハウジング20の後方(側方)から装着されている。これにより、一対の可溶部13が視認可能な状態で、一対の窓部22の前端開口及び後端開口の双方が、カバー30によって塞がれている。
【0024】
ハウジング20の上端部の前面(側面)には、後方に窪み且つ幅方向に延びる溝23が形成されている。溝23には、第2ヒューズ3の後述する一対の突起状の係止片53が係合することになる。以上、第1ヒューズ2について説明した。
【0025】
次いで、第2ヒューズ3について説明する。第2ヒューズ3は、
図3及び
図4(a)に示すように、バスバ40と、ハウジング50と、カバー60と、を備える。バスバ40は、板状の金属部材である。ハウジング50は、バスバ40の大部分を覆うように樹脂材料によりバスバ40と一体的に成形されたモールド成形体である。ハウジング50は、前後方向及び幅方向に延び且つ前後方向に長い略直方体状の形状を有している。
【0026】
バスバ40のうち、入力端子部41と、出力端子部42と、入力端子部41と出力端子部42とを電気的に接続する可溶部43とが、ハウジング50から露出している。入力端子部41は、バッテリ4側に接続されることになり、出力端子部42は、外部負荷から延びる電線側に接続されることになる。
【0027】
具体的には、入力端子部41は、ハウジング50の後面(側面)から下方に延びる垂下部と、当該垂下部の下端部から後方へ延びる延出部と、を備える。以下、説明の便宜上、入力端子部41の延出部を、単に「入力端子部41」と呼ぶ。入力端子部41は、上下方向に直交する方向に延びる略矩形平板状の形状を有している。入力端子部41の中央部には、上下方向(板厚方向)に貫通するボルト挿通孔41aが形成されている。入力端子部41には、前後方向に延びる幅方向両端縁から下方に延びる一対の回転規制部41bが設けられている。一対の回転規制部41bの幅方向内側面同士の間隔は、第1ヒューズ2の一対の回転規制部11bの幅方向外側面同士の間隔と略等しい。
【0028】
出力端子部42は、ハウジング50の前側領域の上面にて下方に窪んだ凹部51の底部にて上方へ露出している。出力端子部12は、上下方向に直交する方向に延びる平板状の形状を有している。出力端子部12の中央部には、上下方向(板厚方向)に貫通する貫通孔42aが形成されており、貫通孔42aには、凹部51の上端開口から更に上方へ突出するスタッドボルト44が接続され固定されている。
【0029】
可溶部43は、ハウジング20の後側領域にて上下方向に貫通するように設けられた窓部52の内部にて上方且つ下方へ露出している。可溶部43には、自身の他の部分と比べて相対的に低融点の金属45が載置されている。可溶部43は、出力端子部42(即ち、対応する出力端子部42に接続される電線)に定格電流を超える電流が流れたときに、ジュール熱によって溶断されるように設計されている。可溶部43が溶断されると、入力端子部41と出力端子部42との間(即ち、バッテリ4と、出力端子部42に接続される電線との間)の電気的接続が断たれる。
【0030】
可溶部43を露出させる窓部52には、平板状の樹脂製の透明のカバー60が、ハウジング50の上方及び下方からそれぞれ装着されている。これにより、可溶部43が視認可能な状態で、窓部52の上端開口及び下端開口の双方が、カバー60によって塞がれている。
【0031】
ハウジング50の前後方向中央部の下端面には、第1ヒューズ2の溝23に対応して、下方に突出し且つ幅方向に並ぶ一対の係止片53が形成されている。一対の係止片53は、前後方向に弾性変形可能となっている。以上、第2ヒューズ3について説明した。
【0032】
次いで、第1ヒューズ2及び第2ヒューズ3をバッテリ4へ取り付ける際の手順について説明する。第1ヒューズ2及び第2ヒューズ3をバッテリ4へ取り付けるため、本例では、バッテリ4の上面の角部に設けられたバッテリポスト5に一端部(後端部)が接続・固定された中継端子6の他端部(前端部)に設けられた、上方に突出するスタッドボルト7が使用される(
図3参照)。
【0033】
まず、第1ヒューズ2を、バッテリ4に対して仮固定する。このため、
図3に示すように、第1ヒューズ2の入力端子部11を上方からスタッドボルト7に近づけて、入力端子部11のボルト挿通孔11aをスタッドボルト7に挿通させる。次いで、入力端子部11の一対の回転規制部11bが、中継端子6の他端部の幅方向両端面を幅方向外側から覆うように、入力端子部11の下面を、中継端子6の他端部の上面に載置する(
図2(a)参照)。
【0034】
これにより、第1ヒューズ2は、入力端子部11がバッテリ4の上面側に配置され、且つ、ハウジング20(即ち、一対の出力端子部12)がバッテリ4の前面(側面)側に配置された状態で、バッテリ4に対して仮固定される。この状態において、入力端子部11の一対の回転規制部11bと、中継端子6の他端部の幅方向両端面との係合によって、第1ヒューズ2の、ボルト挿通孔11aの軸心(スタッドボルト7)を中心としたバッテリ4に対する回動が規制される。
【0035】
次いで、第2ヒューズ3を、バッテリ4に対して仮固定する。このため、
図3に示すように、第2ヒューズ3の入力端子部41を上方からスタッドボルト7に近づけて、入力端子部41のボルト挿通孔41aをスタッドボルト7に挿通させる。次いで、入力端子部41の一対の回転規制部41bが、中継端子6の他端部の幅方向両端面を既に覆っている一対の回転規制部11bの幅方向外側面を更に覆うように、入力端子部41の下面を、第1ヒューズ2の入力端子部11の上面に重ねて載置する。即ち、入力端子部11の上に入力端子部41が積層される。
【0036】
入力端子部41の下面が入力端子部11の上面に載置される(接触する)直前にて、第1ヒューズ2のハウジング20の前面(側面)からの押圧力による第2ヒューズ3の一対の係止片53の一時的な前方への弾性変形を経て、一対の係止片53が、ハウジング20の前面(側面)に設けられた溝23に係止される(
図2(b)参照)。一対の係止片53と溝23との係止により、第2ヒューズ3(ハウジング50)の第1ヒューズ2(ハウジング20)に対する上方への変位が規制される。
【0037】
これにより、第2ヒューズ3は、第1ヒューズ2のハウジング20の上面にハウジング50の下面の一部(後端部)が重なるように配置され、一対の係止片53と溝23とが係止され、第2ヒューズ3の入力端子部41がバッテリ4の上面側に配置された状態で、バッテリ4に対して仮固定される。この状態にて、入力端子部41の一対の回転規制部41bと、第1ヒューズ2の一対の回転規制部11b(即ち、中継端子6の他端部の幅方向両端面)との係合によって、第2ヒューズ3の、ボルト挿通孔41a(換言すると、スタッドボルト7)を中心としたバッテリ4に対する回動が規制される。
【0038】
次いで、第2ヒューズ3の入力端子部41のボルト挿通孔41aから上方に突出しているスタッドボルト7に、ナット8を螺号させて、ナット8を規定トルクで締め付ける。これにより、互いに積層された入力端子部11,41が、ナット8と中継端子6の他端部との間に挟まれた状態で、中継端子6(即ち、バッテリ4)に対して共締め(締結固定)される(
図1及び
図2(a)参照)。なお、一対の回転規制部11b及び一対の回転規制部41bと中継端子6の他端部との係合によって第1ヒューズ2及び第2ヒューズ3の回動が規制されていることに起因して、ナット8を締め付ける際における第1ヒューズ2及び第2ヒューズ3の供回りが抑制される。
【0039】
以上により、互いに組み付けられた第1ヒューズ2及び第2ヒューズ3(即ち、ヒューズユニット1)のバッテリ4への取り付けが完了する。この取付完了状態では、
図1及び
図2(a)に示すように、第1ヒューズ2については、入力端子部11がバッテリ4の上面側に配置され、且つ、ハウジング20(即ち、一対の出力端子部12)がバッテリ4の前面(側面)側に配置された状態で、入力端子部11がバッテリ4に対して固定されている。第2ヒューズ3については、第1ヒューズ2のハウジング20の上面にハウジング50の下面の一部(後端部)が重なるように配置され、一対の係止片53と溝23とが係止され、第2ヒューズ3の入力端子部41がバッテリ4の上面側に配置された状態で、入力端子部41がバッテリ4に対して固定されている。更に、第1ヒューズ2の一対の可溶部13は、バッテリ4の前面(側面)に沿うように配置され、第2ヒューズ3の可溶部43は、バッテリ4の上面に沿うように配置されている。
【0040】
この取付完了状態において、第1ヒューズ2の一対の出力端子部12のそれぞれに、スタッドボルト14を利用して、外部負荷から延びる電線の端末に接続された端子が締結固定され、第2ヒューズ3の出力端子部42に、スタッドボルト44を利用して、外部負荷から延びる電線の端末に接続された端子が締結固定される。これにより、第1ヒューズ2から延びる2本の電線が、第1ヒューズ2を介してそれぞれバッテリ4と電気的に接続され、第2ヒューズ3から延びる1本の電線が、第2ヒューズ3を介してバッテリ4と電気的に接続される。そして、これらの電線の何れかに定格電流を超える電流が流れたとき、その電線に対応する可溶部13又は可溶部43が溶断されて、その電線とバッテリ4との電気的接続が断たれる。
【0041】
<作用・効果>
以上、本実施形態に係るヒューズユニット1によれば、第1ヒューズ2の上面に重なるように配置された第2ヒューズ3は、第2ヒューズ3の一対の係止片53と第1ヒューズ2の溝23とがバッテリ4の前面(側面)側において係合した状態で、第2ヒューズ3の入力端子部41が、第1ヒューズ2の入力端子部11及び中継端子6に、バッテリ4の上面側において接続されることになる。これにより、第2ヒューズ3に接続される電線等から受ける外力によって、第2ヒューズ3が第1ヒューズ2から離れる向き(上向き)に変位することが、一対の係止片53と溝23との係合箇所と、入力端子部41の接続箇所と、の複数箇所で妨げられることになる。よって、上述した従来のヒューズユニットに比べ、第1ヒューズ2と第2ヒューズ3との間の位置ズレ等が強く抑制される。したがって、本実施形態に係るヒューズユニット1は、従来のヒューズユニットに比べ、複数のヒューズ2,3が適正に組み付けられた状態を維持可能である。
【0042】
他の効果として、第1ヒューズ2と第2ヒューズ3との間の位置ズレ等が抑制されることで、第1ヒューズ2と第2ヒューズ3とが分離および接触を繰り返すことによる異音の発生が、抑制される。
【0043】
更に、本実施形態に係るヒューズユニット1によれば、第1ヒューズ2の被係止部が第1ヒューズ2の側面に開口する溝23であり、突起状の形状を有する第2ヒューズ3の係止部(一対の係止片53)が、その被係止部(溝23)に挿入された状態で被係止部(溝23)に係合する。これにより、両者の係合をシンプルな構造で実現できる。更に、第1ヒューズ2から第2ヒューズ3が分離された状態でヒューズユニット1が用いられる場合、被係止部(溝23)が第1ヒューズ2の側面から突出しないため、ヒューズユニット1の設置スペースを小さくすることが可能であるし、ヒューズユニット1の汎用性にも優れる。
【0044】
更に、本実施形態に係るヒューズユニット1によれば、第1ヒューズ2の一対の可溶部13がバッテリ4の前面(側面)側に配置され、第2ヒューズ3の可溶部43がバッテリ4の上面側に配置されることになる。よって、双方の可溶部13,43が重なるように配置されないため、ヒューズユニット1をバッテリ4に取り付けた状態で、双方の可溶部13,43を容易に視認することができる。
【0045】
<他の形態>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0046】
上記実施形態では、
図3及び
図4(b)に示すように、第1ヒューズ2のハウジング20の上面には、当該上面に重なる第2ヒューズ3のハウジング50の、ハウジング20に対する幅方向への変位(スライド)を規制する機構が設けられていない。これに対し、
図5及び
図6に示すように、第1ヒューズ2のハウジング20の上面に、当該上面に重なる第2ヒューズ3のハウジング50の幅方向両側面を挟むように上方に突出する一対のリブ24を設けてもよい。
【0047】
これによれば、第1ヒューズ2の一対のリブ24が第2ヒューズ3のハウジング50の幅方向両側面に当接した状態で、第1ヒューズ2と第2ヒューズ3とが組み付けられる。よって、第2ヒューズ3に接続される電線等から受ける外力によって、第1ヒューズ2から離れる向き(上向き)に第2ヒューズ3が変位することだけでなく、第1ヒューズ2に対してスライドする向き(幅方向)に第2ヒューズ3が変位することも、抑制されることになる。したがって、複数のヒューズ2,3が適正に組み付けられた状態をより強固に維持可能である。
【0048】
ここで、上述した本発明に係るヒューズユニット1の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[4]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
互いに組み付けられた第1ヒューズ(2)及び第2ヒューズ(3)を備え、バッテリ(4)に取り付けられることになる、ヒューズユニット(1)であって、
前記第1ヒューズ(2)及び前記第2ヒューズ(3)の各々は、
入力端子部(11,41)、出力端子部(12,42)及び可溶部(13,43)を有するバスバ(10,40)と、少なくとも前記可溶部(13,43)を露出させた状態にて前記バスバ(10,40)を覆うハウジング(20,50)と、を有し、
前記第1ヒューズ(2)は、
当該第1ヒューズ(2)の前記入力端子部(11)が前記バッテリ(4)の上方に配置され、且つ、当該第1ヒューズ(2)の前記出力端子部(12)が前記バッテリ(4)の側方に配置される、ように構成され、
前記第2ヒューズ(3)は、
当該第2ヒューズ(3)の前記入力端子部(41)が前記バッテリ(4)の上方に配置され、且つ、前記第1ヒューズ(2)の上面に当該第2ヒューズ(3)の少なくとも一部が重なるように配置される、ように構成されるとともに、前記第1ヒューズ(2)の側面に設けられた被係止部(23)に係合する係止部(53)を有し、前記係止部(53)と前記被係止部(23)との係合によって前記第1ヒューズ(2)の前記上面から離れる向きへの変位が規制される、
ヒューズユニット(1)。
[2]
上記[1]に記載のヒューズユニット(1)において、
前記被係止部(23)は、
前記第1ヒューズ(2)の前記側面に開口する溝状の形状を有し、
前記係止部(53)は、
前記被係止部(23)の溝内に挿入されて前記被係止部(23)に係合する突起状の形状を有する、
ヒューズユニット(1)。
[3]
上記[1]又は上記[2]に記載のヒューズユニット(1)において、
前記第1ヒューズ(2)は、
当該第1ヒューズ(2)の前記可溶部(13)が前記バッテリ(4)の側面に沿って配置される、ように構成され、
前記第2ヒューズ(3)は、
当該第2ヒューズ(3)の前記可溶部(43)が前記バッテリ(4)の上面に沿って配置される、ように構成される、
ヒューズユニット(1)。
[4]
上記[1]~上記[3]の何れか一つに記載のヒューズユニット(1)おいて、
前記第1ヒューズ(2)は、
前記第2ヒューズ(3)の側面に当接する当接部(24)を有する、
ヒューズユニット(1)。
【符号の説明】
【0049】
1 ヒューズユニット
2 第1ヒューズ
3 第2ヒューズ
4 バッテリ
10 バスバ
11 入力端子部
12 出力端子部
13 可溶部
20 ハウジング
23 溝(被係止部)
24 リブ(当接部)
40 バスバ
41 入力端子部
42 出力端子部
43 可溶部
50 ハウジング
53 係止片(係止部)