(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】超音波固定装置
(51)【国際特許分類】
B29C 65/56 20060101AFI20240604BHJP
【FI】
B29C65/56
(21)【出願番号】P 2020157631
(22)【出願日】2020-09-18
【審査請求日】2023-08-15
(73)【特許権者】
【識別番号】391008537
【氏名又は名称】ASTI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092842
【氏名又は名称】島野 美伊智
(74)【代理人】
【識別番号】100166578
【氏名又は名称】鳥居 芳光
(72)【発明者】
【氏名】鷹野 光
(72)【発明者】
【氏名】飯田 健弥
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 隆文
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-043286(JP,A)
【文献】国際公開第2010/143448(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/168190(WO,A1)
【文献】特開2012-016794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/00 - 65/82
B25C 1/00 - 13/00
B42B 2/00 - 9/06
B42C 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被固定対象物がセットされる固定装置本体と、
上記固定装置本体に昇降可能に設けられ樹脂製ピンを保持する樹脂製ピン押込部と、
上記固定装置本体であって上記被固定対象物を挟んで上記樹脂製ピン押込部の反対側に昇降可能に設けられ超音波振動子を備えた超音波振動部と、
を具備し、
上記固定装置本体に被固定対象物をセットし、上記樹脂製ピン押込部を降下させて上記樹脂製ピンを上記被固定対象物に穿刺・貫通させ、上記超音波振動部を上昇させて上記樹脂製ピンを上記樹脂製ピン押込部と挟持しながら上記穿刺・貫通された樹脂製ピンの先端部に超音波振動を付与することにより溶解させて上記被固定対象物を固定するようにし
、
上記樹脂製ピン押込部には樹脂製ピンを保持する樹脂製ピン保持部が押込方向に直交する方向にスライド可能に設けられていることを特徴とする超音波固定装置。
【請求項2】
請求項1記載の超音波固定装置において、
上記樹脂製ピン押込部には上記固定装置本体にセットされた上記被固定対象物を抑える被固定対象物抑え部が設けられていることを特徴とする超音波固定装置。
【請求項3】
被固定対象物がセットされる固定装置本体と、
上記固定装置本体に昇降可能に設けられ樹脂製ピンを保持する樹脂製ピン押込部と、
上記固定装置本体であって上記被固定対象物を挟んで上記樹脂製ピン押込部の反対側に昇降可能に設けられ超音波振動子を備えた超音波振動部と、
を具備し、
上記固定装置本体に被固定対象物をセットし、上記樹脂製ピン押込部を降下させて上記樹脂製ピンを上記被固定対象物に穿刺・貫通させ、上記超音波振動部を上昇させて上記樹脂製ピンを上記樹脂製ピン押込部と挟持しながら上記穿刺・貫通された樹脂製ピンの先端部に超音波振動を付与することにより溶解させて上記被固定対象物を固定するようにし、
上記固定装置本体には上記被固定対象物が載置されるステージが設けられていて、このステージの一部はシャッタとなっていて、このシャッタは押込方向に直交する方向にスライド可能に設けられていて、
上記シャッタをスライドさせて前進させた状態では上記シャッタによって上記超音波振動部の上昇が規制され、
上記シャッタをスライドさせて後退させた状態では上記シャッタによる上記超音波振動部の上昇の規制が解除されることを特徴とする超音波固定装置。
【請求項4】
請求項3記載の超音波固定装置において、
上記
シャッタには上記樹脂製ピンの先端部が通過する開口部が設けられていて、その径は上記樹脂製ピンの先端部の外径に対して所定量大きく設定されていることを特徴とする超音波固定装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4記載の超音波固定装置において、
上記
固定装置本体には上記超音波振動子による超音波振動を開始させるためのスイッチが設けられていて、上記シャッタの後退動作により上記スイッチを「オン」させるように構成されていることを特徴とする超音波固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波固定装置に係り、特に、樹脂製ピンを使用して紙等の非溶着性の被固定対象物を固定することができるように工夫したものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の超音波固定装置の構成を開示するものとして、例えば、特許文献1がある。
特許文献1に記載された超音波ホッチキスは概略次のような構成になっている。まず、アッパーフレームと、このアッパーフレームに相対的に回動可能に取り付けられたロアーフレームがある。上記アッパーフレームの先端部には超音波振動子が内装されていて、上記アッパーフレームの先端には上記超音波振動子によって振動されるホーンが外部に露出した状態で設置されている。上記ロアーフレームの先端側には加圧面が設けられている。
【0003】
上記加圧面に接着対象物として、例えば、複数枚のプラスチックシートを重ねて設置し、上記アッパーフレームとロアーフレームを相対的に回動させて上記ホーンの先端と上記加圧面の間に上記複数枚のプラスチックシートを挟み込む。超音波振動子により上記ホーンを振動させると、上記複数枚のプラスチックシートの上記ホーンの先端と上記加圧面に挟まれた箇所が摩擦熱により溶着し、それによって、上記複数枚のプラスチックシートが固定される。
【0004】
上記構成をなす超音波ホッチキスの場合には、対象物が超音波による摩擦により溶融するものでなければならず、例えば、紙のような非溶着性のものは対象外になってしまう。そこで、紙については超音波振動を使用しない従来通りのホッチキスを使用して束ねていた。
【0005】
そのようなホッチキスの構成を開示するものとして、例えば、特許文献2がある。特許文献2に記載されたホッチキスは概略次のような構成になっている。まず、先端側に針受板が設置された底台があり、この底台には押圧部が回動可能に設置されている。上記底台と上記押圧部の間には針レールが回動可能に設置されていて、この針レール内には下向き「コ」の字型の複数個の針が一列に充填されている。上記針レールの先端の下側には上記針を一つ排出する針出口が設けられている。上記針レール内には伸縮バネによって上記針を前方に押圧・付勢する針押出台が設置されている。上記針レールと上記押圧部の間には嵌合押圧部が回動可能に設置されている。この嵌合押圧部の先端には針押出片がある。
【0006】
上記底台の先端側と上記針レールの先端側の間に、例えば、複数枚の紙を重ねて挟み込み、上記押圧部を上記底部側に回動させると、上記押圧部により上記嵌合押圧部が回動されて上記針押出片により上記針レール内の先端の針が押出される。この押し出された針は上記複数枚の紙に貫通して刺さり、その後、上記針押出片の先端と上記底台の針受板との間に押しつぶされ、上記針によって上記複数枚の紙が束ねられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2003-11227号公報
【文献】特開2008-194780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら上記従来の構成では次のような問題があった。
まず、特許文献1に記載された超音波ホッチキスでは、超音波振動による摩擦熱で溶融される対象物でないと溶着できないという問題があり、例えば、紙のような非溶着性の対象物を束ねることはできなかった。
そのような場合には、特許文献2に記載されたホッチキスを用いることになるが、例えば、金属製等の堅い針を用いるため、取り扱いに際して針を指に刺したりする等の怪我が懸念されるとともに金属アレルギーの問題もあった。
これに対しては、例えば、紙製の針を使用することも提案されているが、十分な束ね強度を得ることができないという問題があった。
【0009】
本発明はこのような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、樹脂製ピンを使用して紙等の非溶着性の被固定対象物を固定することができる超音波固定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するべく本願発明の請求項1による超音波固定装置は、被固定対象物がセットされる固定装置本体と、上記固定装置本体に昇降可能に設けられ樹脂製ピンを保持する樹脂製ピン押込部と、上記固定装置本体であって上記被固定対象物を挟んで上記樹脂製ピン押込部の反対側に昇降可能に設けられ超音波振動子を備えた超音波振動部と、を具備し、上記固定装置本体に被固定対象物をセットし、上記樹脂製ピン押込部を降下させて上記樹脂製ピンを上記被固定対象物に穿刺・貫通させ、上記超音波振動部を上昇させて上記樹脂製ピンを上記樹脂製ピン押込部と挟持しながら上記穿刺・貫通された樹脂製ピンの先端部に超音波振動を付与することにより溶解させて上記被固定対象物を固定するようにし、上記樹脂製ピン押込部には樹脂製ピンを保持する樹脂製ピン保持部が押込方向に直交する方向にスライド可能に設けられていることを特徴とするものである。
又、請求項2による超音波固定装置は、請求項1記載の超音波固定装置において、上記樹脂製ピン押込部には上記固定装置本体にセットされた上記被固定対象物を抑える被固定対象物抑え部が設けられていることを特徴とするものである。
又、請求項3による超音波固定装置は、被固定対象物がセットされる固定装置本体と、上記固定装置本体に昇降可能に設けられ樹脂製ピンを保持する樹脂製ピン押込部と、上記固定装置本体であって上記被固定対象物を挟んで上記樹脂製ピン押込部の反対側に昇降可能に設けられ超音波振動子を備えた超音波振動部と、を具備し、上記固定装置本体に被固定対象物をセットし、上記樹脂製ピン押込部を降下させて上記樹脂製ピンを上記被固定対象物に穿刺・貫通させ、上記超音波振動部を上昇させて上記樹脂製ピンを上記樹脂製ピン押込部と挟持しながら上記穿刺・貫通された樹脂製ピンの先端部に超音波振動を付与することにより溶解させて上記被固定対象物を固定するようにし、上記固定装置本体には上記被固定対象物が載置されるステージが設けられていて、このステージの一部はシャッタとなっていて、このシャッタは押込方向に直交する方向にスライド可能に設けられていて、上記シャッタをスライドさせて前進させた状態では上記シャッタによって上記超音波振動部の上昇が規制され、上記シャッタをスライドさせて後退させた状態では上記シャッタによる上記超音波振動部の上昇の規制が解除されることを特徴とするものである。
又、請求項4による超音波固定装置は、請求項3記載の超音波固定装置において、上記シャッタには上記樹脂製ピンの先端部が通過する開口部が設けられていて、その径は上記樹脂製ピンの先端部の外径に対して所定量大きく設定されていることを特徴とするものである。
又、請求項5による超音波固定装置は、請求項3又は請求項4記載の超音波固定装置において、上記固定装置本体には上記超音波振動子による超音波振動を開始させるためのスイッチが設けられていて、上記シャッタの後退動作により上記スイッチを「オン」させるように構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
以上述べたように、本願発明の請求項1記載の超音波固定装置によると、被固定対象物がセットされる固定装置本体と、上記固定装置本体に昇降可能に設けられ樹脂製ピンを保持する樹脂製ピン押込部と、上記固定装置本体であって上記被固定対象物を挟んで上記樹脂製ピン押込部の反対側に昇降可能に設けられ超音波振動子を備えた超音波振動部と、を具備し、上記固定装置本体に被固定対象物をセットし、上記樹脂製ピン押込部を降下させて上記樹脂製ピンを上記被固定対象物に穿刺・貫通させ、上記超音波振動部を上昇させて上記樹脂製ピンを上記樹脂製ピン押込部と挟持しながら上記穿刺・貫通された樹脂製ピンの先端部に超音波振動を付与することにより溶解させて上記被固定対象物を固定するようにしたため、樹脂製ピンを使用して紙等の非溶着性の被固定対象物を固定することができる。
又、請求項2記載の超音波固定装置によると、請求項1記載の超音波固定装置において、上記樹脂製ピン押込部には上記固定装置本体にセットされた上記被固定対象物を抑える被固定対象物抑え部が設けられているため、上記被固定対象物を安定して保持し確実に上記被固定対象物を固定することができる。
又、請求項3記載の超音波固定装置によると、請求項1又は請求項2機記載の超音波固定装置において、上記樹脂製ピン押込部には樹脂製ピンを保持する樹脂製ピン保持部が押込方向に直交する方向にスライド可能に設けられているため、上記樹脂製ピンを安定して保持し確実に上記被固定対象物を固定することができる。
又、請求項4記載の超音波固定装置によると、請求項1~請求項3の何れかに記載の超音波固定装置において、上記固定装置本体には上記被固定対象物が載置されるステージが設けられていて、このステージの一部はシャッタとなっていて、このシャッタは押込方向に直交する方向にスライド可能に設けられていて、上記シャッタをスライドさせて前進させた状態では上記シャッタによって上記超音波振動部の上昇が規制され、上記シャッタをスライドさせて後退させた状態では上記シャッタによる上記超音波振動部の上昇の規制が解除されるため、上記超音波振動部の不用意な上昇を防止して確実に上記樹脂製ピンを溶解させて上記被固定対象物を固定することができる。
又、請求項5記載の超音波固定装置によると、請求項4記載の超音波固定装置において、上記シャッタには上記樹脂製ピンの先端部が通過する開口部が設けられていて、その径は上記樹脂製ピンの先端部の外径に対して所定量大きく設定されているため、上記樹脂製ピンを上記被固定対象物に確実に貫通させることができる。
又、請求項6記載の超音波固定装置によると、請求項4又は請求項5記載の超音波固定装置において、上記固定装置本体には上記超音波振動子による超音波振動を開始させるためのスイッチが設けられていて、上記シャッタの後退動作により上記スイッチを「オン」させるように構成されているため、確実に上記樹脂製ピンを溶解させて上記被固定対象物を固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施の形態を示す図で、超音波固定装置の縦断面図である。
【
図2】本発明の一実施の形態を示す図で、ステージ及びその近傍を拡大して示す一部平面図である。
【
図3】本発明の一実施の形態を示す図で、
図3(a)は樹脂製ピン押込部の正面図、
図3(b)は樹脂製ピン押込部の側面図である。
【
図4】本発明の一実施の形態を示す図で、超音波固定装置の構造を模式的に示した図である。
【
図5】本発明の一実施の形態を示す図で、超音波固定装置の構造を模式的に示した図で、被固定対象物をステージ上に載置した状態を示す図である。
【
図6】本発明の一実施の形態を示す図で、超音波固定装置の構造を模式的に示した図で、樹脂製ピンを樹脂製ピン押込部にセットした状態を示す図である。
【
図7】本発明の一実施の形態を示す図で、超音波固定装置の構造を模式的に示した図で、樹脂製ピン押込部を降下させるとともに、被固定対象物抑え部によって被固定対象物をステージ上に抑えた状態を示す図である。
【
図8】本発明の一実施の形態を示す図で、超音波固定装置の構造を模式的に示した図で、樹脂製ピン押込部を降下させて樹脂製ピンを被固定対象物に穿刺・貫通させた状態を示す図である。
【
図9】本発明の一実施の形態を示す図で、超音波固定装置の構造を模式的に示した図で、樹脂製ピン保持部を後退させて樹脂製ピンの保持を解除した状態を示す図である。
【
図10】本発明の一実施の形態を示す図で、超音波固定装置の構造を模式的に示した図で、ステージのシャッタを後退させて超音波振動部を上昇させた状態を示す図である。
【
図11】本発明の一実施の形態を示す図で、超音波固定装置の構造を模式的に示した図で、ステージのシャッタを後退させて超音波振動部を上昇させ、樹脂製ピンを溶解させる状態を示す図である。
【
図12】本発明の一実施の形態を示す図で、
図12(a)は樹脂製ピンをセットした樹脂製ピン押込部を降下させる前の状態の正面図、
図12(b)は上記樹脂製ピン押込部の樹脂製ピンを降下させる前の状態の側面図である。
【
図13】本発明の一実施の形態を示す図で、
図13(a)は樹脂製ピン押込部を降下させて被固定対象物抑え部によって被固定対象物をステージ上に抑えた状態の正面図、
図13(b)は樹脂製ピン押込部を降下させて被固定対象物抑え部によって被固定対象物をステージ上に抑えた状態の側面図である。
【
図14】本発明の一実施の形態を示す図で、
図14(a)は樹脂製ピン押込部をさらに降下させ樹脂製ピンを被固定対象物に穿刺・貫通させた状態を示す正面図、
図14(b)は樹脂製ピン押込部をさらに降下させ樹脂製ピンを被固定対象物に穿刺・貫通させた状態を示す側面図である。
【
図15】本発明の一実施の形態を示す図で、
図15(a)はピン保持部による樹脂製ピンの保持を解除した状態の正面図、
図15(b)はピン保持部による樹脂製ピンの保持を解除した状態の側面図である。
【
図16】本発明の一実施の形態を示す図で、
図16(a)は樹脂製ピン押込部をさらに降下させて樹脂ピンを溶解させる状態の正面図、
図16(b)は樹脂製ピン押込部をさらに降下させて樹脂ピンを溶解させる状態の側面図である。
【
図17】本発明の一実施の形態を示す図で、固定装置本体及び超音波振動部の縦断面図であり、超音波振動部の上昇が規制された状態の図である。
【
図18】本発明の一実施の形態を示す図で、固定装置本体及び超音波振動部の縦断面図であり、樹脂ピンが被固定対象物に穿刺・貫通された状態の図である。
【
図19】本発明の一実施の形態を示す図で、固定装置本体及び超音波振動部の縦断面図であり、シャッタを後退させて超音波振動部の上昇の規制を解除させた状態の図である。
【
図20】本発明の一実施の形態を示す図で、固定装置本体及び超音波振動部の縦断面図であり、超音波振動部を上昇させて樹脂ピンを溶解させた状態の図である。
【
図21】本発明の一実施の形態を示す図で、固定装置本体及び超音波振動部の縦断面図であり、シャッタが前進して初期位置に戻ろうとしている状態の図である。
【
図22】本発明の一実施の形態を示す図で、固定装置本体及び超音波振動部の縦断面図であり、超音波振動部を降下させることでシャッタが前進して初期位置に戻り上記超音波振動部の上昇が再び規制される状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、
図1乃至
図22を参照しながら、本発明の一実施の形態について説明する。
図1乃至
図4に示すように、本実施の形態による超音波固定装置1は、固定装置本体3と樹脂製ピン押込部5と超音波振動部7とから概略構成されている。以下、各部の構成を詳細に説明する。
【0014】
まず、上記固定装置本体3は、
図1に示すように、ベース9と上記ベース9上に設置されたメインケース11と上記メインケース11の
図1中上側に設置されたステージ支持部13とから構成されている。上記メインケース11の
図1中左右両側には操作用開口部15、15が形成されている。上記メインケース11の
図1中上側には貫通孔17が形成されていて、後述する超音波振動子の上端部がこの貫通孔17を介して上方に突出される。上記ステージ支持部13内には収容空間19が形成されていて、上記超音波振動部7はこの収容空間19内に収容されている。また、上記ステージ支持部13の
図1中右側には上記超音波振動子を起動させるスイッチ21が設置されている。
【0015】
上記ステージ支持部13の上にはステージ23が設置されている。
図4に示すように、上記ステージ23の上には、被固定対象物24Aと被固定対象物24Bが積層・載置されている。この一実施の形態において上記被固定対象物24Aと被固定対象物24Bは紙である。上記ステージ23は、
図2にも示すように、上記ステージ支持部13に固定されたステージ本体25と、上記ステージ本体25に対して
図1、
図2中左右方向にスライド可能に設置されたシャッタ27とから構成されている。上記シャッタ27の
図1中右端には操作部29が設けられている。上記シャッタ27の
図1中下側にはスイッチ作用部30が設けられている。シャッタ27を後退させることによりこのスイッチ作用部30が上記スイッチ21に作用してこれを「オン」させる。
【0016】
図2に示すように、上記ステージ本体25には収容凹部31が形成されていて、上記収容凹部31内に上記シャッタ27がスライド可能に収容されている。また、上記シャッタ27の
図2中左端にはシャッタ開口部33が形成されている。上記シャッタ開口部33は
図1中上下方向と左側に開口されている。上記シャッタ開口部33の大きさは後述する樹脂製ピンの先端部の径に対して所定量大きく設定されている。
【0017】
図1、
図3、
図4に示すように、上記ステージ本体25にはスタンド41が立設されていて、このスタンド41には昇降ガイド43が設置されている。上記樹脂製ピン押込部5はこの昇降ガイド43内に昇降可能に設置されている。上記昇降ガイド43の
図1中上側の開口部は端部材45によって閉塞されている。
【0018】
上記樹脂製ピン押込部5は、押込ケース49と押下操作部51とピン押圧部53と樹脂製ピン保持部55とから構成されている。
【0019】
上記押込ケース49は上記昇降ガイド43内に昇降可能に収容されていて、
図1中上端側は上記端部材45を貫通して
図1中上側に突出されている。上記押込ケース49は押込バネ57を介して上記スタンド41から吊り下げられている。上記押込バネ57によって上記樹脂製ピンの上記被固定対象物24Aと被固定対象物24Bに対する穿刺・貫通力が規定される。
【0020】
上記押下操作部51は軸部59と上記軸部59の
図1中上端に固着されたハンドル61とから構成されている。上記ピン押圧部53は、上記押込ケース49に昇降可能に設置されていて、
図4に示すように、ピン押込バネ62を介して、上記押込ケース49から吊り下げられている。上記ピン押圧部53の
図1中下端面は押圧面63となっている。
【0021】
上記樹脂製ピン保持部55は、
図3(b)に示すように、上記樹脂製ピン押圧部53の
図3(b)中下側に設置されたガイド64の溝66、66に沿って
図3(b)中左右方向にスライド可能に設置されている。上記樹脂製ピン保持部55の先端側(
図1中左側)には樹脂製ピン収容凹部65が形成されている。また、上記樹脂製ピン収容凹部65の
図1中下側には
図1中上下方向と
図1中左側に開口された樹脂製ピン貫通用凹部67が形成されている。上記樹脂製ピン押圧部53の押圧面63と上記樹脂製ピン保持部55の間に樹脂製ピン69が挿し込まれる。上記樹脂製ピン69の
図1中下側部分は上記樹脂製ピン貫通用凹部67を貫通して、上記樹脂製ピン保持部55の
図1中下側に突出される。
【0022】
また、上記樹脂製ピン押込部5には被固定対象物抑え部71が設けられている。被固定対象物抑え部71は、
図1に示すように、上記押込ケース49に対して昇降可能に設置されている。上記被固定対象物抑え部71と上記押込ケース49とは抑えバネ73を介して連結されている。上記抑えバネ73によって上記被固定対象物24Aと被固定対象物24Bを抑える力が規定される。
【0023】
上記超音波振動部7は、上記固定装置本体3のメインケース11内に昇降可能に設置されている。上記超音波振動部7にはハウジング81があり、このハウジング81の下端には操作部83が設けられている。上記ハウジング81の
図1中下側の面と上記メインケース11の底面との間には超音波振動子押しバネ85が介挿されている。この超音波振動子押しバネ85によって後述する超音波振動子が上記樹脂製ピン69に当接する際の力が規定される。
【0024】
上記ハウジング81には超音波振動子87が設置されている。上記超音波振動子87の
図1中下側は上記ハウジング81内に収容されていて、上記超音波振動子87の
図1中上側は上記ハウジング81の
図1中上側に突出されている。上記超音波振動子87は既に説明したスイッチ21が「オン」になると作動される。
【0025】
上記ハウジング81の
図1中上側にはストッパ89が設置されている。上記ストッパ89は、上記ステージ23のシャッタ27が前進した状態(
図1中左側にある状態)にあるときには記シャッタ27の下側に当接されている。それによって、上記超音波振動部7の上記超音波振動子押しバネ85による上昇が規制される。上記シャッタ27が後退(
図1中右側に移動される)されると、上記ストッパ89による上記超音波振動部7の上昇規制が解除され、上記超音波振動子押しバネ85によって上記超音波振動部7が上昇される。
【0026】
次に、この一実施の形態による作用について説明する。
まず、
図5乃至
図11を参照しながら、超音波固定装置1全体の作用を説明する。
【0027】
最初に、
図5に示すように、ステージ23上に被固定対象物24Aと被固定対象物24Bを積層させて載置する。
次に、
図6に示すように、上記樹脂製ピン押圧部53の押圧面63と上記樹脂製ピン保持部55の間に上記樹脂製ピン69を挿し込む。
【0028】
次に、
図7に示すように、押下操作部51を把持して樹脂製ピン押込部5を
図7中下側に降下させる。このとき、
図7に示すように、先に、被固定対象物抑え部71の下端が上記被固定対象物24Aに当接して上記被固定対象物24Aと上記被固定対象物24Bを抑えて保持する。
【0029】
次に、その状態からさらに樹脂製ピン押込部5を降下させると、
図8に示すように、上記樹脂製ピン69の先端部が上記被固定対象物24Aと上記被固定対象物24Bに穿刺されてこれらを貫通し、その先端部が上記被固定対象物24Bの下側に突出される。
【0030】
次に、
図9に示すように、上記樹脂製ピン保持部55を
図9中右側に後退させる。併せて、上記樹脂製ピン押込部5をさらに降下させる。これにより、上記樹脂製ピン69の頭部(
図9中上側部分)が上記被固定対象物24Aに当接される。
【0031】
次に、
図10に示すように、ステージ23のシャッタ27を
図10中右側に後退させる。これによって、シャッタ27とストッパ89による超音波振動部7の上昇規制が解除され、上記超音波振動部7が超音波振動子押しバネ85の弾性力によって上昇される。そして、超音波振動子87の
図10中上端が上記樹脂製ピン69の先端(
図11中下側)に当接される。
【0032】
そして、上記シャッタ27の後退によりスイッチ作用部30が上記スイッチ21に当接して上記スイッチ21が「オン」される。このスイッチ21の「オン」により上記超音波振動子87が作動される。
図11に示すように、上記超音波振動子87による超音波振動によって上記樹脂製ピン69の先端部が溶解されて、その結果、上記被固定対象物24Aと上記被固定対象物24Bは樹脂製ピン69の頭部と上記先端部の溶解部とにより挟持・固定される。
【0033】
次に、超音波振動部操作部83を把持して上記超音波振動部7を超音波振動子押しバネ85のバネ力に抗して降下させると、上記シャッタ27が図示しないバネによって前進して元の状態に戻る。このとき、上記シャッタ27のスイッチ作用部30と上記スイッチ21の当接が解除されるので、上記スイッチ21が「オフ」となり、上記超音波振動子87による超音波振動が停止される。このとき、再び、上記超音波振動部7は上記シャッタ27によって上昇が規制された状態になる。
これで一連の作業は完了する。以下、同様の作業を繰り返す。
【0034】
既に説明した全体の作用の説明と一部重複するが、次に、
図12乃至
図16を参照しながら、上記樹脂製ピン押込部5の動作のみを抽出して説明する。
まず、樹脂製ピン押込部5を降下させる前は、
図12に示すような状態となっている。
上記樹脂製ピン押込部5を降下させると、
図13に示すように、被固定対象物抑え部71の下端が最初に上記被固定対象物24Aに当接される。
上記樹脂製ピン押込部5をさらに下降させると、
図14に示すように、上記樹脂製ピン69の先端部が上記被固定対象物24Aと被固定対象物24Bに穿刺されて貫通される。
【0035】
次に、
図15に示すように、樹脂製ピン保持部55を
図15(b)中右側に後退させる。そして、
図16に示すように、上記樹脂製ピン69をさらに降下させてその頭部を上記被固定対象物24Aに当接させ、この状態で、上記樹脂製ピン69の先端部の溶解が行われる。
【0036】
なお、
図13乃至
図16に示す一連の作用において、上記被固定対象物24Aと上記被固定対象物24Bは、上記被固定対象物抑え部71を介して抑えバネ73の適切なバネ力によって保持される。
【0037】
既に説明した全体の作用の説明と一部重複するが、次に、
図17乃至
図22を参照しながら、超音波振動部7の動作のみを抽出して説明する。
まず、
図17に示すように、ステージ23のシャッタ27が前進した状態(
図17中左側)にあり、ストッパ89が上記シャッタ27の下部に当接されていて、上記超音波振動部7の超音波振動子押しバネ85による上昇が規制されている。
【0038】
次に、
図18に示すように、樹脂製ピン69の先端部が被固定対象物24Aと被固定対象物24Bを穿刺・貫通された状態では、未だ、上記超音波振動部7の超音波振動子押しバネ85による超音波振動部7の上昇は規制されている。
【0039】
次に、
図19に示すように、ステージ23のシャッタ27を
図19中右側に後退させると、上記ストッパ89と上記シャッタ27による上記超音波振動部7の上昇の規制が解除される。
【0040】
そして、
図20に示すように、上記超音波振動部7は上記超音波振動子押しバネ85の弾性力によって上昇される。上記シャッタ27をさらに
図20中右側にスライドさせると、上記シャッタ27の作用部がスイッチ21に当接し、上記スイッチ21を「オン」させる。上記スイッチ21が「オン」になると、超音波振動子87が作動して上記樹脂製ピン69が溶解される。
【0041】
図21に示すように、上記シャッタ27の操作部29の把持を解除すると、上記シャッタ27は図示しないバネによって前進する。上記シャッタ27はストッパ89に
図21中右側から当接しそれ以上の前進は規制される。このとき、上記シャッタ27と上記スイッチ21の接触は解除されるので上記スイッチ21が「オフ」になり、超音波振動子87による超音波振動の出力は停止される。
【0042】
次に、
図22に示すように、操作部83を把持して上記超音波振動部7を下降させる。上記それによって、上記シャッタ27は元の前進した初期位置に戻り、再び、上記ストッパ89による上記超音波振動部7の超音波振動子押しバネ85による上昇は規制された状態になる。
【0043】
次に、この一実施の形態による効果について説明する。
まず、樹脂製ピン69を使用して非溶着性の被固定対象物24A及び被固定対象物24Bを容易に固定することができるようになった、これは、樹脂製ピン押込部5を下降させて樹脂製ピン69を被固定対象物24A及び被固定対象物24Bに穿刺・貫通させ、超音波振動部7を上昇させて上記樹脂製ピン69を上記樹脂製ピン押込部5と挟持しながら超音波振動子87によって超音波振動を付与し、上記樹脂製ピン69の貫通した先端部を溶解させて上記被固定対象物24A及び被固定対象物24Bを固定するようにしたからである。
【0044】
また、上樹脂製ピン押込部5には上記樹脂製ピン69を抑える樹脂製ピン保持部55が押込方向に直交する方向にスライド可能に設けられているため、上記樹脂製ピン29を安定して保持し確実に上記被固定対象物24A及び被固定対象物24Bに穿刺させることができる。
【0045】
また、固定装置本体3には上記被固定対象物24A及び被固定対象物24Bが載置されるステージ23が設けられていて、上記ステージ23のシャッタ27を前進させた状態では上記超音波振動部7の上昇が規制され、上記シャッタ27を後退させた状態では上記超音波振動部7の上昇の規制が解除されるため、上記超音波振動部7の不用意な上昇を防止することができる。
【0046】
また、上記固定装置本体3には上記超音波振動子87による超音波振動を開始させるためのスイッチ21が設けられていて、上記シャッタ27の後退動作により上記スイッチ21を「オン」させるように構成されているため、適切なタイミンクで超音波振動を発生させることができる。
【0047】
また、上記ステージ23のシャッタ27には上記樹脂製ピン69が通過する開口部33が設けられていて、大きさは上記樹脂製ピン69の外径に対して所定量大きく設定されているため、樹脂製ピン69を項慧可的にガイドしてその先端部を上記被固定対象物24A及び被固定対象物24Bに確実に穿刺・貫通させることができる。
【0048】
なお、本発明は前記一実施の形態に限定されない。
まず、前記一実施の形態で示した樹脂製ピンの形状・大きさは一例であり、
様々な形状・大きさが考えられる。
また、前記一実施の形態の場合には被固定対象物として紙を例に挙げて説明したが、布、等にも適用可能である。
その他、図示した構成はあくまで一例である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、超音波固定装置に係り、特に、樹脂製ピンを使用して紙等の非溶着性の被固定対象物を固定することができるように工夫したものに関し、例えば、複数枚の紙をまとめる超音波ホッチキスに好適である。
【符号の説明】
【0050】
1 超音波固定装置
3 固定装置本体
5 樹脂製ピン押込部
7 超音波振動部
21 スイッチ
23 ステージ
27 シャッタ
24A 被固定対象物
24B 被固定対象物
33 開口部
55 樹脂製ピン保持部
69 樹脂製ピン
87 超音波振動子