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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】車載バッテリー保護機構
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20240604BHJP
   B60L 3/04 20060101ALI20240604BHJP
   B60L 50/64 20190101ALI20240604BHJP
   B60L 58/18 20190101ALI20240604BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20240604BHJP
   H01M 50/244 20210101ALI20240604BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20240604BHJP
   H01M 50/505 20210101ALI20240604BHJP
   H01M 50/579 20210101ALI20240604BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B60L3/04 D
B60L50/64
B60L58/18
H01M10/44 102Z
H01M50/244 Z
H01M50/249
H01M50/505
H01M50/579
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020160387
(22)【出願日】2020-09-25
(65)【公開番号】P2022053642
(43)【公開日】2022-04-06
【審査請求日】2023-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 圭一
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 慧
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-008097(JP,A)
【文献】特開2012-079442(JP,A)
【文献】特開2015-088315(JP,A)
【文献】特開2013-112055(JP,A)
【文献】特開2018-176964(JP,A)
【文献】特開平08-192639(JP,A)
【文献】特開2020-015332(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0319248(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102956861(CN,A)
【文献】独国特許発明第4234551(DE,C1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04
B60L 3/04
B60L 50/64
B60L 58/18
H01M 10/44
H01M 50/244
H01M 50/249
H01M 50/505
H01M 50/579
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が受けた衝撃時に発生する進行方向に沿った衝撃力を、前記進行方向と交差する側方向に向かう力に変換し、前記側方向に向かう力によって前記車両に搭載されたバッテリーモジュールに流れる電流を遮断する衝撃力変換手段であって、前記バッテリーモジュールの回路における少なくとも一部を前記側方向に向かう力によって破断する衝撃力変換手段を具備し、
前記衝撃力変換手段は、
前記車両の前部に配置されて前記衝撃力を受ける前受け部材と、
前記前受け部材に一端が接続されて前記車両の後部へ延在する中継部材と、
前記進行方向から前記側方向へと湾曲した曲部を備え、前記中継部材の他端と接続されて、前記衝撃力で押し出された前記中継部材を介して少なくとも一部が前記側方向へ向けて旋回する側方旋回部材と、を含み、
前記回路における少なくとも一部が、前記中継部材又は前記側方旋回部材と連結されてなる、車載バッテリー保護機構。
【請求項2】
前記バッテリーモジュールの回路における少なくとも一部は、前記バッテリーモジュールを電気的に接続するバスバーである、請求項に記載の車載バッテリー保護機構。
【請求項3】
前記バッテリーモジュールを保持するバッテリー保持手段をさらに具備し、
前記側方旋回部材は、前記バッテリーモジュール及び前記バッテリー保持手段の少なくとも一方と連結されてなり、
前記衝撃力変換手段は、前記側方向に向かう力によって前記バッテリーモジュールを構成する複数のバッテリー同士を互いに離間させる、請求項に記載の車載バッテリー保護機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池モジュールを備えたバッテリーパックを搭載する車両に関し、より具体的には当該車両に搭載されるバッテリーパックの保護機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車などの車両では、ハイブリット化または電動化の進展が著しい。このような電動の車両においては、モータを駆動するため複数の電池セルで構成された電池モジュールが搭載される。
【0003】
昨今においては、航続距離の長距離化に対する要望もあり、単位ユニットとしての電池セルの高容量化はもとより上記した電池モジュールを多数備えたバッテリーパックとして車両に搭載することが行われている。したがって、更なる安全性向上などを目的として、車両が非常状態の時には上記バッテリーパックの2次災害を未然に防止するバッテリー回路遮断装置も提案されている(特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-7919号公報
【文献】特開2007-259653号公報
【文献】特表2012-506105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した各特許文献に限らず現在の技術では市場のニーズを適切に満たしているとは言えず以下に述べる課題が存在する。
すなわち上記した特許文献1~特許文献3を含む従来技術では、たしかに緊急時においてバッテリーからの出力を緊急遮断し得るものの、その遮断に用いる動力についてはいまだ工夫の余地がある。
【0006】
本発明は、上記した課題を一例に鑑みて為されたものであり、衝突時においてバッテリーからの出力を効率的に遮断可能な車載バッテリー保護機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一実施形態における車両の車載バッテリー保護機構は、(1)車両が受けた衝撃時に発生する進行方向に沿った衝撃力を、前記進行方向と交差する側方向に向かう力に変換し、前記側方向に向かう力によって前記車両に搭載されたバッテリーモジュールに流れる電流を遮断する衝撃力変換手段であって、前記バッテリーモジュールの回路における少なくとも一部を前記側方向に向かう力によって破断する衝撃力変換手段を具備し、前記衝撃力変換手段は、前記車両の前部に配置されて前記衝撃力を受ける前受け部材と、前記前受け部材に一端が接続されて前記車両の後部へ延在する中継部材と、前記進行方向から前記側方向へと湾曲した曲部を備え、前記中継部材の他端と接続されて、前記衝撃力で押し出された前記中継部材を介して少なくとも一部が前記側方向へ向けて旋回する側方旋回部材と、を含み、前記回路における少なくとも一部が、前記中継部材又は前記側方旋回部材と連結されてなる、ことを特徴とする。
【0009】
また、上記した(1)に記載の車載バッテリー保護機構においては、(2)前記バッテリーモジュールの回路における少なくとも一部は、前記バッテリーモジュールを電気的に接続するバスバーであることが好ましい。
【0011】
また、上記した(1)に記載の車載バッテリー保護機構においては、(3)前記バッテリーモジュールを保持するバッテリー保持手段をさらに具備し、前記側方旋回部材は、前記バッテリーモジュール及び前記バッテリー保持手段の少なくとも一方と連結されてなり、前記衝撃力変換手段は、前記側方向に向かう力によって前記バッテリーモジュールを構成する複数のバッテリー同士を互いに離間させることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、衝突時においてバッテリーからの出力を効率的に遮断できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態のバッテリー保護機構を備えた車両を側面から見た模式図である。
図2】実施形態のバッテリー保護機構を備えた車両を前方から見た模式図である。
図3】実施形態のバッテリー保護機構を備えた車両を上方から見た模式図である。
図4】バッテリー保護機構を側面から見た模式図である。
図5】前方衝突時におけるバッテリーパック内の電池モジュールの配置制御を説明する状態遷移図(その1)である。
図6】前方衝突時におけるバッテリーパック内の電池モジュールの配置制御を説明する状態遷移図(その2)である。
図7】変形例1のバッテリー保護機構を備えた車両を上方から見た模式図である。
図8】変形例1におけるバスバーの構造を示した模式図である。
図9】変形例2のバッテリー保護機構を備えた車両を上方から見た模式図である。
図10】変形例2におけるサービスディスコネクト(安全切断装置)の構造を示した図である。
図11】変形例3のバッテリー保護機構を備えた車両を上方から見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に本発明を実施するための好適な実施形態について説明する。以下の説明では、それぞれ便宜的に車両の車高方向をZ方向、車長方向をX方向、これらZ方向及びX方向と直交する車幅方向をY方向として定義して説明する。しかしながら本発明は上述した方向の規定に左右されるものではなく、特許請求の範囲を不当に減縮するものでないことは言うまでもない。また、以下で詳述する以外の構成については、上記した特許文献を含む公知の車両に関する要素技術やバッテリーパックの構造あるいは回路構成を適宜補完してもよい。
【0015】
[車載バッテリー保護機構100]
まず実施形態の車両に搭載される車載バッテリー保護機構100の構成について、図1図4を参照しながら説明する。なお、本実施形態に好適な車両としては、例えばリチウムイオン電池や燃料電池などの二次電池を搭載する公知の種々の電動車が挙げられる。
【0016】
図示されるとおり、本実施形態の車載バッテリー保護機構100は、車両の車体1に搭載されて、衝撃力変換手段10を含んで構成されている。この衝撃力変換手段10は、例えば前方の障害物に衝突するなどして車両が受けた衝撃時に発生する進行方向(X方向)に沿った衝撃力を、この進行方向と交差する側方向(本実施形態ではY方向)に向かう力に変換する機能を有している。また、衝撃力変換手段10は、後述するとおり、この側方向に向かう力によって車両に搭載されたバッテリーモジュールに流れる電流を遮断する機能を有している。なお衝撃力変換手段10は、この側方向に向かう力によって車両に搭載されたバッテリーパック内における少なくとも一部の電池モジュールを分離させる機能をさらに有していてもよい。
【0017】
より具体的に、本実施形態の衝撃力変換手段10は、前受け部材11、中継部材12、側方旋回部材13、基端支持部14などを含んで構成されている。
前受け部材11は、例えば公知の金属材料や樹脂材料で構成されて、車両の前部に配置されて上記した衝撃力を受ける機能を有している。なお、「車両の前部」としては、例えば上記した衝突時に発生する車両後方へ向けた衝撃力を受けることが可能な位置であれば特に制限はない。本実施形態では、車両の前部の一例として、車体1のうちバルクヘッド2よりも前方に前受け部材11を配置した。
【0018】
より具体的に、図1~4に示すとおり、前受け部材11は、上記した衝撃力を受ける面を備えた第一前受け部材11aと、この第一前受け部材11aを車体1に接続して固定する第二前受け部材11bと、を含んでいる。
【0019】
また、図2および図3から明らかなとおり、本実施形態の前受け部材11は、車幅方向に関して車両のほぼ中央に配置されている。これにより、上記した衝撃力を効率的に受けることができることに加え、後述する中継部材12などをシート4(本例では運転席と助手席)の間に設置することができスペース効率を向上させることが可能となっている。
【0020】
中継部材12は、例えば高強度の鋼材など公知の金属材料で構成されており、上記した前受け部材11で受けた衝撃力を後述する側方旋回部材13に伝達する機能を有している。本実施形態の中継部材12は、図3及び図4に示すとおり、前受け部材11に一端(車両の前方側)が接続されて車両の後部へと延在するように配置されている。また、中継部材12の他端(車両の後方側)は、上記側方旋回部材13の先端と接続されている。
【0021】
図3に示すとおり、本実施形態の中継部材12は、一対の金属製棒材で構成されて、それぞれが第一前受け部材11aと接続される第一中継部材12aと第二中継部材12bとを有している。なお同図に示すとおり、本実施形態では後述する側方旋回部材13を有しているため第一中継部材12aと第二中継部材12bとはほぼ平行に並置されている。しかしながらこれら中継部材が側方へ向けて効率的に離間するため、これら第一中継部材12aと第二中継部材12bは、車両の前方側から後方側に向かうにつれて若干間隔が広がるように、車長方向へ向けて互いに非平行となるように配置されることが好ましい。また、図2に示すとおり、中継部材12は、シート4としての運転席と助手席の間に配置されることから、センターコンソールボックス3の下方に位置していることが好ましい。
【0022】
また、第一前受け部材11aと一対の中継部材12との接続形態については、特に制限はなく、公知の接続構造を適用できる。より好ましくは、例えば上記した中継部材12の一端が支点となって他端が側方向へ移動(回旋)可能なように、中継部材12の一端が前受け部材11に軸支持されることが好ましい。
【0023】
側方旋回部材13は、前記した車両の進行方向(X)から側方向(Y方向)へと湾曲した曲部を備え、例えば上記前方衝突の際に発生する衝撃力で車両の後方へと押し出された中継部材12を介して少なくとも一部が側方向へ向けて旋回する機能を有している。
【0024】
より具体的に図3などに示すように、本実施形態の側方旋回部材13は、先端(車両の前方側)が中継部材12の他端と接続されるとともに、後端(車両の後方側)が基端支持部14に接続されている。さらに、この側方旋回部材13は、先端の方が後端よりも側方(車幅の方向)に位置するように、先端と後端の途中で折れ曲がる曲部が形成されている。なお、本実施形態における曲部の形成方法としては、特に制限はなく公知の成形方法が適用でき、例えば緩やかなラウンド状としてもよいし、曲率が90°近くなって角が形成される程度のものであってもよい。
【0025】
また、図3に示すように、本実施形態の側方旋回部材13は、例えば一対の金属製棒材で構成されて、それぞれが中継部材12と接続される一対の第一側方旋回部材13aと第二側方旋回部材13bとを有している。これら第一側方旋回部材13aと第二側方旋回部材13bは、側方(Y方向)へ向けてそれぞれの先端が互いに離間するように配置されていることが好ましい。
【0026】
また、同図に示すとおり、本実施形態では、中継部材12と側方旋回部材13とは、互いの接続点を支点として側方向(Y方向)へ移動可能なようにベアリング15を介して接続されていることが望ましい。これにより、このベアリング15を基点に中継部材12と側方旋回部材13とが側方向へ移動でき、上記した衝撃力を受領した際に意図しない箇所での変形などを抑制することが可能となっている。より具体的に本実施形態では、第一中継部材12aと第一側方旋回部材13aとが第一ベアリング15aを介して接続されるとともに、第二中継部材12bと第二側方旋回部材13bとが第二ベアリング15bを介して接続されている。
【0027】
一方で、側方旋回部材13の後端は、上記したとおり基端支持部14に固定されていることから、上記した衝撃力を受領した際に意図せず側方向(Y方向)へ移動してしまうことが抑制されている。換言すれば、この基端支持部14によって、上記した衝撃力を受領した際に、側方旋回部材13の後端が支点となって先端が側方向へ移動することが可能となっている。
【0028】
また、図3などから明らかなとおり、本実施形態の基端支持部14は、バッテリーパックを保持するバッテリー保持手段30内に配置されていてもよい。より具体的には、本実施形態では、基端支持部14は、バッテリー保持手段30のうち車両の後方側に設置されていてもよい。これにより、同図などに示すとおり、バッテリーパックの内部に前記した側方旋回部材13の少なくとも一部が配設されることになる。
【0029】
なお、図4などに示すとおり、本実施形態における車載バッテリー保護機構100では、少なくとも中継部材12を支持する支持部材16をさらに含んでいてもよい。支持部材16は、車体1に接続されて当該車体1を基端として立設されて中継部材12を支持する機能を有している。図示では、複数の支持部材16が中継部材12を支持しているが、少なくとも1つ有していてもよいし、少なくとも一部の支持部材16が側方旋回部材13をさらに支持していてもよい。
【0030】
バッテリー保持手段30は、本実施形態のバッテリーパックを収容する容器である。かようなバッテリー保持手段30の具体例としては、例えば特開2019-175569号などに例示される収納ケースのように、放熱性も考慮された金属製あるいは樹脂製の公知の収容容器が例示できる。かようなバッテリー保持手段30に保持される公知のバッテリーパックは、複数の電池モジュール21を含んで構成されている。この電池モジュール21は、それぞれ正極版と負極板がセパレータを介して交互に組み合わされた電池セルを電気的につなげて構成されている。
なお本実施形態では、バッテリーパックとしてリチウムイオン二次電池が好適であるが、例えば燃料電池や鉛蓄電池など公知の種々の電池モジュールを適用してもよい。
【0031】
<バッテリーパック内の電流遮断態様>
次に図5及び図6も参照しつつ、衝突時におけるバッテリーパック内の電池モジュール21を流れる電流回路の遮断態様について説明する。
上述したとおり、本実施形態における車両は、様々な不回避的な要因などで前方の障害物と衝突(前方衝突とも称する)する可能性がある。かような衝突時などの緊急時には、バッテリーパックからの出力が一早く遮断されたほうがよい場合もある。
【0032】
このような背景の下で、前方衝突時に車両の前部で衝突による衝撃力を受けた際に、本実施形態では上記衝撃力の一部を利用してバッテリーパック内の電池モジュール21に流れる電流を遮断する構成とした。
【0033】
すなわち図5に示すとおり、車両の前部で上記衝撃力が生じた際は、車体1(本例ではバルクヘッド2)と連結された車載バッテリー保護機構100の一部(前受け部材11)に衝撃力IFが伝わることになる。次いで同図に示すとおり、この前受け部材11に伝わった衝撃力IFは、中継部材12でそれぞれ第1衝撃力IFaと第2衝撃力IFbに分離されて伝達される。
【0034】
このとき、本実施形態の車載バッテリー保護機構100は上記した側方旋回部材13を具備しているため、進行方向に沿った衝撃力IF(第1衝撃力IFaと第2衝撃力IFb)はそれぞれ側方向に向かう力(第一側方力SFaと第二側方力SFb)に変換されることになる。
【0035】
そして図5及び6に示すとおり、バッテリーパックの内部に側方旋回部材13の少なくとも一部が配設されていることから、この側方旋回部材13の移動(旋回)によって、側方向の一側へ少なくとも一部の電池モジュール21からなる第1電池群C1が移動されるとともに側方向の一側とは反対側へ残部の電池モジュール21からなる第2電池群C2が移動される。
【0036】
このとき、側方旋回部材13を挟む電池モジュール21同士は互いにバスバー(不図示)で接続されていることから、上記した第1電池群C1と第2電池群C2の離間動作によって上記バスバー又はその根元が破断されることになる。なお、このような側方旋回部材13をまたぐバスバーの少なくとも一部には、予め強度を落とした部位を形成しておくことが好ましい。これにより上記離間動作の際に当該部位を基点にバスバーを破断して電流遮断を実行することができる。
【0037】
なお、図6からも理解されるとおり、本実施形態では、上記した第1電池群C1と第2電池群C2は、互いに同数の電池モジュール21で構成されていることが好ましい。また、車載バッテリー保護機構100を構成する側方旋回部材13は、車幅方向(Y方向)に関してバッテリーパックの中央に配置されて、バッテリーパック内を二分するように複数の電池モジュール21を分離させることが好ましい。
【0038】
これにより、もともと発生した衝撃力IFを効率良く複数の側方力SFに分離してそれぞれ電池群を側方へ移動させることが可能となっている。なお本実施形態では、それぞれ4つの電池モジュール21から成る電池群を構成したが、4つ以外の電池モジュール21で電池群を構成してもよいことは言うまでもない。
【0039】
以上説明した本実施形態における車載バッテリー保護機構によれば、前方衝突時などの非常時に、この衝突で発生した衝撃力を利用してバッテリーパック内の電池モジュールの一部を互いに離間させることが可能となっている。そしてこの電池モジュール同士の離間動作(側方向へ向かう力)によって、当該電池モジュールを電気的に接続する回路の一部(本例ではバスバー)を破断させている。
このように非常時において衝突時に発生した衝撃力を利用してバッテリーパック内の少なくとも一部の電池モジュールを移動させて電流遮断を行うことで、車両の安全性をより向上することが可能となっている。
なお本実施形態では、側方旋回部材13が電池モジュール21を側方へ移動させていたが、中継部材12が電池モジュール21を側方へ移動させるように構成されていてもよい。
【0040】
<変形例1>
次に図7及び図8を参照して、本発明の変形例1における車載バッテリー保護機構100について説明する。上記した実施形態では、側方旋回部材13の旋回によってバッテリーパック内の電池モジュール21を移動させていた(図5、6参照)。
【0041】
これに対して本変形例1では、側方旋回部材13は公知の絶縁手段を介してバスバーに直接固定されている点に主とした特徴がある。よって、以下では実施形態と異なる構成をメインにして説明し、実施形態と実質的に同じ構成については同じ参照番号を付してその説明は適宜省略する。
【0042】
すなわち図7から明らかなとおり、本変形例1では側方旋回部材13を境に2つの電池群(第1電池群C1と第2電池群C2)が配置されている。そして、これら電池群は連結用バスバーBkで電気的に接続され、さらにこの連結用バスバーBkと側方旋回部材13とが絶縁手段(ゴムなど公知の絶縁体)を介して固定されている。
【0043】
したがって、例えば上記した前方衝突の際に発生した衝撃力IFが側方力SFに変換されると側方旋回部材13が側方へ移動し、これにより側方旋回部材13と接続された連結用バスバーBkに所定の負荷がかかり当該連結用バスバーBkを流れる電流が遮断される構成となっている。
【0044】
図8に、上記した連結用バスバーBkにおいて電流を遮断させる一例を示す。すなわち本変形例1では、上記した側方旋回部材13の移動によって上記した電気的な電流遮断が発生する限りにおいて種々の遮断形態を適用できる。
【0045】
かような遮断形態を実現する具体的な構造として、例えば図8(a)に示すように、連結用バスバーBkを第1バスバーB1と第2バスバーB2とで構成し、これら第1バスバーB1と第2バスバーB2とを固定部FPで嵌合させていてもよい。これにより、平時はこの固定部FPを介して通電が可能となるとともに、上記した非常時には側方旋回部材13を介して第1バスバーB1と第2バスバーB2とを分離させることができる。
【0046】
また、上記した遮断形態を実現する他の具体的構造として、例えば図8(b)に示すように、少なくとも一部に強度の低下した弱化部WPを有するバスバーB3を連結用バスバーBkとして設けることが考えられる。かような弱化部WPを設けることで、平時は通電が可能となるとともに、上記した非常時には側方旋回部材13を介して弱化部WPが破断することでバスバーB3を分離させて電流を遮断することが可能となる。
【0047】
このように変形例1では、側方旋回部材13の側方への移動に応じて電池モジュール21は移動させずにバスバーのみを分離してバッテリーモジュールに流れる電流を遮断させることができる。したがって、本発明においては、バッテリーモジュールに流れる電流を遮断させる際に、必ずしも電池モジュール21まで移動することは要しないと言える。
【0048】
なお本変形例1では側方旋回部材13が連結用バスバーBkと接続されていたが、中継部材12が上記絶縁手段を介して連結用バスバーBkと接続される形態であってもよい。換言すれば、バッテリーパック内の電池モジュール21を流れる電流の回路における少なくとも一部が、前記した中継部材12又は側方旋回部材13と連結されていればよい。
【0049】
<変形例2>
次に図9及び図10を参照して、本発明の変形例2における車載バッテリー保護機構100について説明する。上記した変形例1では、側方旋回部材13(又は中継部材12)の旋回によってバッテリーパック内のバスバーを分離させて電流遮断を実行していた(図7、8参照)。
【0050】
これに対して本変形例2では、バッテリーパックの保守・メンテナンス時に利用されるサービスディスコネクトSD(安全切断装置)を利用して、非常時には側方旋回部材13(又は中継部材12)の旋回移動を介してサービスディスコネクトSDを切断することに主とした特徴がある。換言すれば、バッテリーモジュールの回路において非常時に破断される少なくとも一部は、当該バッテリーモジュールの整備時に用いられる安全切断装置(サービスディスコネクトSD)であってもよい。
【0051】
すなわち、図8及び図9をあわせて参照すれば理解できるように、本変形例2では側方旋回部材13を境に2つの電池群(第1電池群C1と第2電池群C2)が配置されている。そして、これら電池群を跨ぐように公知のサービスディスコネクトSDが設置されている。なお、本変形例2に適用可能なサービスディスコネクトSDの具体的な構成については、例えば特開2017-069114号公報や特開2019-83166号公報などに例示されるごとき公知のサービスディスコネクトが適用できる。
【0052】
したがって図8及び図9に示すように、例えば上記した前方衝突の際に発生した衝撃力IFが側方力SFに変換されると側方旋回部材13が側方へ移動し、これにより側方旋回部材13と接続されたサービスディスコネクトSDの上部部材40が本体41から分離されてバッテリーパック内の電流遮断がなされる構成となっている。
【0053】
<変形例3>
次に図11を参照して、本発明の変形例3における車載バッテリー保護機構100について説明する。上記した実施形態や変形例では、複数の中継部材12及び複数の側方旋回部材13とで第1電池群C1と第2電池群C2とを側方へ互いに離間させたり、電流回路の一部を遮断したりしていた(図5~10参照)。
【0054】
これに対して本変形例3では、複数でなくそれぞれ単一の中継部材12と側方旋回部材13とで、第1電池群C1と第2電池群C2の一方を他方から離間させる構成となっている。すなわち、本発明では、第1電池群C1と第2電池群C2が共に側方へ移動する形態だけでなく、少なくとも第1電池群C1と第2電池群C2の一方が他方に対して相対的に移動して離間する形態も含んでいてもよい。
【0055】
このとき、図11に示すとおり、変形例3における車載バッテリー保護機構100は、前受け部材11と基端支持部14との間に配置されるガイド部材17をさらに含んでいることが好ましい。すなわち、このガイド部材17は、本変形例3においては、中継部材12cと側方旋回部材13cとの接続点であるベアリング15cに近接して配置されている。
【0056】
したがって、このガイド部材17が配置されていることで、上記した衝撃力IFが側方力SFへ変換される際に、中継部材12cの他端と側方旋回部材13cの先端が意図しない方向(図11では+Y方向)に移動することを抑制できる。
なお、本変形例3では、第1電池群C1と第2電池群C2の一方が他方に対して相対的に移動している例を説明したが、変形例1や変形例2のように電池群が移動せずに単一の中継部材12と側方旋回部材13とで連結用バスバーBkを分離したりサービスディスコネクトSDを切断したりしてもよい。
【0057】
以上説明した変形例1~変形例3によっても、上記した実施形態と同様の効果を奏することが可能となっている。なお上記した変形例1~3は、例えば弱化部31とガイド部材17を共に実施形態へ応用するなど、これらを適宜組み合わせて実施形態へ適宜適用してもよい。
【0058】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態および変形例について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、これら実施形態や変形例に対して更なる修正を試みることは明らかであり、これらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0059】
10 衝撃力変換手段
20 バッテリーパック
30 バッテリー保持手段
100 車載バッテリー保護機構
V 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11