(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】無線センサ装置
(51)【国際特許分類】
G08C 17/00 20060101AFI20240604BHJP
G08C 19/00 20060101ALI20240604BHJP
G01D 11/30 20060101ALI20240604BHJP
G01K 1/14 20210101ALI20240604BHJP
G01K 13/024 20210101ALI20240604BHJP
【FI】
G08C17/00 Z
G08C19/00 G
G01D11/30 L
G01K1/14 E
G01K13/024
(21)【出願番号】P 2020175926
(22)【出願日】2020-10-20
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】水高 淳
(72)【発明者】
【氏名】黒柳 篤
(72)【発明者】
【氏名】吉田 公彦
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-152048(JP,A)
【文献】国際公開第2010/055608(WO,A1)
【文献】特開平8-223666(JP,A)
【文献】実開平5-27537(JP,U)
【文献】特開平10-213341(JP,A)
【文献】特開2011-196637(JP,A)
【文献】特開2019-46157(JP,A)
【文献】特開2016-162017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08C 13/00 - 25/04
G01D 11/30
G01K 1/00 - 19/00
F24F 11/00 - 11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度センサと、
湿度センサと、
光電池と、
前記温度センサがおよび前記湿度センサが測定した測定値を無線で送信する無線送信機と、
前記光電池から出力される電力を蓄え、前記温度センサ、前記湿度センサ、および前記無線送信機に電源を供給する二次電池と、
一次電池が接続されるコネクタと、
前記二次電池による、前記温度センサ、前記湿度センサ、および前記無線送信機への電源の供給と、前記コネクタに接続される一次電池による、前記温度センサ、前記湿度センサ、および前記無線送信機への電源の供給とを切り替えるスイッチと、
前記二次電池の出力電圧値を元に、前記スイッチを切り替えるコントローラと、
前記温度センサ、前記湿度センサ、前記光電池、前記コネクタ、前記二次電池、および前記コントローラを収容し、卓上に設置可能とされた筐体と、
前記筐体に着脱可能とされ、測定対象の部屋の壁に設置するためのアタッチメントと、
前記アタッチメントに取り付けられた、一次電池を収容するソケットと
を備える無線センサ装置。
【請求項2】
請求項1記載の無線センサ装置において、
前記筐体に形成された、三脚に取り付けるためのネジ穴をさらに備えることを特徴とする無線センサ装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の無線センサ装置において、
前記コントローラは、前記二次電池の出力電圧値が規定値以下になると、前記スイッチを切り替えることを特徴とする無線センサ装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の無線センサ装置において、
前記無線送信機は、前記測定値をブロードキャストに送信することを特徴とする無線センサ装置。
【請求項5】
請求項4記載の無線センサ装置において、
前記無線送信機は、BLE(登録商標)通信で前記測定値を送信することを特徴とする無線センサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部屋内の温度および湿度を計測する無線センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
オフィスの空調は、オフィスの温度や湿度の測定結果を元に制御されている(特許文献1)。この種の空調制御のために用いられる温度、湿度を計測するセンサ装置は、一般に、オフィスの壁や天井に設置されている。この種のセンサ装置の測定結果は、一般に、有線で接続されている制御機器に送信されている。このように有線で接続されているセンサ装置は、一度設置した後で、この設置場所を変えるためには配線工事が必要となる。これに対し、無線式のセンサ装置であれば、設置場所の変更に際して、配線工事が不要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の無線式の計測器は、電源を電池に依存するために、継続して使用するためには定期的に電池を交換するか、充電することになり、煩わしいとう問題がある。電池以外の電源を用いる無線式の計測器も実用化されているが、電池以外の電源供給が不足した場合には計測が中断される。空調制御用の計測器には、継続して計測することが求められるため、計測の中断は問題となる。
【0005】
また、無線式の計測器は、設置場所を変えることが容易ではあるが、実用化されている無線式の計測器は、壁や天井に設置する形状であり、このため、オフィス内で、利用者がいる領域の温度・湿度が計測されておらず、利用者が実際に感じている空調の状態が把握できない場合がある。この課題を解消するためには、無線式の計測器を、例えば卓上型のような、利用者の付近に設置可能な形状とすることが求められる。しかしながらこの場合、壁や天井にも計測器を設置しようとする場合、別の形状の無線式の計測器が必要となり、複数の形状の計測器を用意することになる。このように、従来は、温度、湿度を計測する無線式のセンサ装置による利用者のいる付近の温度・湿度の継続した計測が、容易に実施できないという問題があった。
【0006】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、温度、湿度を計測する無線式のセンサ装置による利用者のいる付近の温度・湿度の継続した計測が、容易に実施できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る無線センサ装置は、温度センサと、湿度センサと、光電池と、温度センサがおよび湿度センサが測定した測定値を無線で送信する無線送信機と、光電池から出力される電力を蓄え、温度センサ、湿度センサ、および無線送信機に電源を供給する二次電池と、一次電池が接続されるコネクタと、二次電池による、温度センサ、湿度センサ、および無線送信機への電源の供給と、コネクタに接続される一次電池による、温度センサ、湿度センサ、および無線送信機への電源の供給とを切り替えるスイッチと、二次電池の出力電圧値を元に、スイッチを切り替えるコントローラと、温度センサ、湿度センサ、光電池、コネクタ、二次電池、およびコントローラを収容し、卓上に設置可能とされた筐体と、筐体に着脱可能とされ、測定対象の部屋の壁に設置するためのアタッチメントと、アタッチメントに取り付けられた、一次電池を収容するソケットとを備える。
【0008】
上記無線センサ装置の一構成例において、筐体に形成された、三脚に取り付けるためのネジ穴をさらに備える。
【0009】
上記無線センサ装置の一構成例において、コントローラは、二次電池の出力電圧値が規定値以下になると、スイッチを切り替える。
【0010】
上記無線センサ装置の一構成例において、無線送信機は、測定値をブロードキャストに送信する。
【0011】
上記無線センサ装置の一構成例において、無線送信機は、BLE(登録商標)通信で送信先に測定値を送信する。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、二次電池による電源の供給と一次電池による電源の供給とをスイッチで切り替え、また、卓上に設置可能とされた筐体にアタッチメントを設けたので、温度、湿度を計測する無線式のセンサ装置による利用者のいる付近の温度・湿度の継続した計測が、容易に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る無線センサ装置の構成を示す構成図である。
【
図2A】
図2Aは、本発明の実施の形態に係る無線センサ装置の外観(天面)を示す平面図である。
【
図2B】
図2Bは、本発明の実施の形態に係る無線センサ装置の外観(底面)を示す平面図である。
【
図2C】
図2Cは、本発明の実施の形態に係る無線センサ装置の外観(側面)を示す平面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態に係る無線センサ装置を三脚150に取り付けた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る無線センサ装置について
図1、
図2A、
図2B、
図2Cを参照して説明する。この無線センサ装置は、温度センサ101、湿度センサ102、光電池103、無線送信機104、二次電池105、コネクタ106、スイッチ107、コントローラ108、筐体109、アタッチメント111、およびソケット112を備える。
【0015】
無線送信機104は、温度センサ101がおよび湿度センサ102が測定した測定値を無線で送信する。無線送信機104は、例えば、BLE(Bluetooth Low Energy)通信により、ブロードキャストに測定値を送信する。
【0016】
二次電池105は、光電池103から出力される電力を蓄え(蓄電し)、温度センサ101、湿度センサ102、無線送信機104、およびコントローラ108に電源を供給する。光電池103からの電力は、充電回路110により二次電池105に充電される。
【0017】
コネクタ106は、一次電池121が接続される。スイッチ107は、二次電池105による、温度センサ101、湿度センサ102、および無線送信機104への電源の供給と、コネクタ106に接続される一次電池121による、温度センサ101、湿度センサ102、および無線送信機104への電源の供給とを切り替える。
【0018】
コントローラ108は、二次電池105の出力電圧値を元に、スイッチ107を切り替える。コントローラ108は、二次電池105の出力電圧値が規定値以下になると、スイッチ107を切り替える。コントローラ108は、CPU(Central Processing Unit;中央演算処理装置)と主記憶装置と外部記憶装置とネットワーク接続装置となどを備えたマイコンから構成することができる。主記憶装置に展開されたプログラムによりCPUが動作する(プログラムを実行する)ことで、上述した機能が実現される。上記プログラムは、上述した機能を、コントローラ108を構成するマイコンが実行するためのプログラムである。
【0019】
筐体109は、温度センサ101、湿度センサ102、光電池103、コネクタ106、二次電池、およびコントローラ108を収容し、卓上に設置可能とされた。アタッチメント111は、筐体109に着脱可能とされ、測定対象の部屋の壁に設置するための治具である。ソケット112は、アタッチメント111に取り付けられ、コネクタ106に接続される一次電池121を収容する。
【0020】
また、この無線センサ装置は、筐体109に形成された、三脚に取り付けるためのネジ穴122を備える。ここで、筐体109は、例えば、
図2A、
図2B、
図2Cに示すように、外形を直方体とすることができる。筐体109は、例えば、天面(底面)が、1辺10cm×10cmの正方形とされ、厚さ(高さ)3cmとされている。また、筐体109の天面に、平面視矩形の受光面を有する光電池103が、受光面を外側に向けて配置されている。
【0021】
また、筐体109の裏面に、コネクタ106が設けられている。また、筐体109の裏面に、ネジ穴122を備えている。また、筐体109の裏面に、アタッチメント111が固定されている。アタッチメント111を用いることで、測定環境(部屋)の壁に、筐体109を壁の壁面に設置する。また、筐体109は、通気口123を備える。筐体109に内蔵されている温度センサ101、湿度センサ102は、通気口123を介して筐体109の内部取り込まれる空気の温度、湿度を計測する。
【0022】
また、筐体109は、
図3に示すように、三脚150の雲台にネジ止めにより固定することができる。筐体109を三脚150の雲台に取り付けることで、オフィスに、書庫、デスク、椅子などが搬入される前に、デスクの高さで、無線センサ装置を用いた空調の運転調整が可能となる。
【0023】
以上に説明したように、本発明によれば、二次電池による電源の供給と一次電池による電源の供給とをスイッチで切り替え、また、卓上に設置可能とされた筐体にアタッチメントを設けたので、無線式のセンサ装置による利用者のいる付近の温度・湿度の継続した計測が、容易に実施できるようになる。
【0024】
オフィスなどの汎用的な用途の建物における空調を制御する自動制御設備においては、温度、湿度などの室内空間の環境をセンサ装置で計測し、天井内、あるいは機械室内に設置される空調機器を制御するコントローラに対して計測値を送っている。そのため、センサ装置用の電源用配線の他、計測値を伝達するための配線が必要である。従って、デスクなどの上では、配線が煩雑になってしまうなどの理由によって、センサ装置は壁や天井面、あるいは空調機器類の吸い込み口やダクト内に設置している。
【0025】
これらのセンサ装置は、概ね、制御対象の空間の平均的な温度・湿度を計測していると考えられるが、制御対象の空間内は負荷の状態、気流の状態、対象空間の外部からの影響などによって、温度・湿度が均一な空間が形成されているのではなく、場所によって温度・湿度の偏りが発生している。従って、従来のセンサ装置の設置場所による温度・湿度の制御では、センサ装置が設置されている近傍の空間の温度・湿度は制御設定値を満たしている場合でも、目的の温度・湿度から逸脱している場所が発生している場合が通常の状況であった。
【0026】
恒温恒湿室、手術室、クリーンルームなどの特殊な用途の建物、あるいは部屋、においては、負荷の変動が小さく、垂直層流などの気流の工夫をしており、また外部の影響が少ない地下や、建物の内部に設ける等の工夫によって、温度・湿度が均一となる空間を作り出しているが、汎用的な事務所ビル、商業施設などでは、特殊用途の建物のような構造、設備を導入できないために、空調エリア内での温度・湿度の偏りが発生してしまう。この偏りが発生している場所を目的の温度・湿度に制御を行うためには、その場所の温度・湿度を計測しなければならないが、これは執務者に近い場所の温度・湿度を計測することにほかならないので、従来のセンサ装置のように壁や天井に設置するセンサ装置ではなく、より執務者の近くに設置できるセンサ装置が求められているが、空調制御用のセンサ装置で執務者の近くのデスクやパーティションに設置できるセンサ装置は実用化されていなかった。
【0027】
従来のセンサ装置をオフィスのデスク上に設置できる形状にした場合、センサ装置用の電源、および計測値を伝達する配線があるために、壁や天井に設置する場合に比べて施工量が増加してしまう問題がある。そのため、電源を不要とし、計測値を無線式で伝達することが求められるが、電源を電池によって供給する場合には、電池交換が必要となる煩わしさがあった。これを解決するためには電池容量を増やせば、例えば10年間は電池交換が不要なセンサ装置を実用化できるが、電池の大型化に伴いセンサ装置が大型化するために執務者の近くのデスク上などに設置できるような空調制御用の無線式のセンサ装置は実用化されていない。
【0028】
電池が大型化してしまう問題を解決するためには、温度・湿度の計測周期を、例えば10分間に1回計測するなどのようにすることによって電池の消費を抑制する方法が考えられるが、空間を目的の温度・湿度に制御するためには30秒~60秒程度の時間で制御を実行しなければならないため、制御周期よりも短い計測時間のセンサ装置でなければ、その目的を達することはできないため、単に計測周期を長くして電池の消費量を抑える方法は空調制御用のセンサ装置では採用できなかった。
【0029】
電池を大型化する方法の代わりに、電池以外の電源を搭載する方法がある。光、振動、圧力、熱などを利用して発電する方式である。例えばソーラーセル(光電池)によって発電すれば、電池の容量を抑えることができる。しかしこの場合にも、十分な照度を得られない場合には、計測を継続できない、あるいはソーラーセルや発電した電力を蓄える二次電池が大きくなる。
【0030】
上述した課題に対し、本発明によれば、まず、二次電池による電源の供給と一次電池による電源の供給とをスイッチで切り替えるので、十分な照度が得られない場合で、光電池や二次電池を大きくすることなく、計測を継続できる。また、卓上に設置可能とされた筐体にアタッチメントを設けたので、無線式のセンサ装置による利用者のいる付近の温度・湿度が計測できるとともに、壁や天井にも設置できるようになり、様々な形態の計測が容易に実施できる。
【0031】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
【符号の説明】
【0032】
101…温度センサ、102…湿度センサ、103…光電池、104…無線送信機、105…二次電池、106…コネクタ、107…スイッチ、108…コントローラ、109…筐体、110…充電回路、111…アタッチメント、112…ソケット、121…一次電池、122…ネジ穴、123…通気口、150…三脚。