(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20240604BHJP
【FI】
H01G4/30 201F
H01G4/30 513
(21)【出願番号】P 2020176548
(22)【出願日】2020-10-21
【審査請求日】2023-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】井口 俊宏
【審査官】多田 幸司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-191837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
素体と、
前記素体に配置されている外部電極と、を備え、
前記素体は、実装面である主面と、前記主面と隣り合う側面と、を有しており、
前記外部電極は、
前記素体上に配置されている焼結金属層と、
前記焼結金属層の一部が露出するように前記焼結金属層上に配置されており、複数の金属粒子と樹脂とを含む導電性樹脂層と、
前記焼結金属層の前記一部上に配置されている第一領域と、前記導電性樹脂層上に配置されている第二領域と、を有しているニッケルめっき層と、
前記ニッケルめっき層上に配置されているはんだめっき層と、を有しており、
前記導電性樹脂層は、前記側面上のみに位置し、
前記第二領域の厚みは、前記第一領域の厚みより小さい、電子部品。
【請求項2】
前記第一領域の厚みに対する前記第二領域の厚みの比率は、0.53以上0.84以下である、請求項
1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記焼結金属層は、銅焼結体であり、
各前記金属粒子は、銅粒子である、請求項
1又は2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記銅粒子の平均粒径は、0.1μm以上10μm以下である、請求項
3に記載の電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
素体と、素体に配置されている外部電極と、を備えている電子部品が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された電子部品では、外部電極は、素体上に配置されている焼結金属層と、焼結金属層の一部が露出するように焼結金属層上に配置されており、複数の金属粒子と樹脂とを含む導電性樹脂層と、焼結金属層の上記一部上に配置されている第一領域と、導電性樹脂層上に配置されている第二領域と、を有しているニッケルめっき層と、ニッケルめっき層上に配置されているスズめっき層と、を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一つの態様は、はんだクラックの発生を抑制しつつ、導電性樹脂層とニッケルめっき層との電気的かつ機械的接続強度の低下を抑制する電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一つの態様に係る電子部品は、素体と、素体に配置されている外部電極と、を備えている。外部電極は、素体上に配置されている焼結金属層と、焼結金属層の一部が露出するように焼結金属層上に配置されており、複数の金属粒子と樹脂とを含む導電性樹脂層と、焼結金属層の一部上に配置されている第一領域と、導電性樹脂層上に配置されている第二領域と、を有しているニッケルめっき層と、ニッケルめっき層上に配置されているはんだめっき層と、を有している。第二領域の厚みは、第一領域の厚みより小さい。
【0006】
導電性樹脂層は、外部電極に形成されるはんだフィレットに作用する応力を緩和し、はんだクラックの発生を抑制する。これに対して、ニッケルめっき層は、一般に、硬いので、導電性樹脂層がはんだクラックの発生を抑制するのを阻害するおそれがある。
第二領域の厚みが第一領域の厚みより小さい構成では、第二領域の厚みが第一領域の厚みより大きい構成に比して、ニッケルめっき層の第二領域は、導電性樹脂層がはんだクラックの発生を抑制するのを阻害しがたい。
【0007】
第一領域の厚みが第二領域の厚みより小さい構成では、第一領域の機械的強度が低下し、破れ又は剥がれがニッケルめっき層に生じるおそれがある。したがって、第一領域の機械的強度が低下する場合、導電性樹脂層とニッケルめっき層との電気的かつ機械的接続強度が低下するおそれがある。
上記一つの態様では、第一領域の厚みが第二領域の厚みより大きいので、第一領域の機械的強度の低下が抑制され、破れ又は剥がれがニッケルめっき層に生じがたい。したがって、上記一つの態様は、導電性樹脂層とニッケルめっき層との電気的かつ機械的接続強度の低下を抑制する。
【0008】
上記一つの態様は、素体は、実装面である主面と、主面と隣り合う側面と、を有していてもよい。この場合、導電性樹脂層は、側面上のみに位置していてもよい。
はんだフィレットに作用する応力は、外部電極の、側面上に位置している部分に形成されるはんだフィレットに集中する傾向がある。導電性樹脂層が側面上のみに位置している構成は、はんだクラックの発生を確実に抑制する。
【0009】
上記一つの態様では、第一領域の厚みに対する第二領域の厚みの比率は、0.53以上0.84以下であってもよい。
第一領域の厚みに対する第二領域の厚みの比率が0.53以上0.84以下である構成は、はんだクラックの発生をより一層確実に抑制しつつ、導電性樹脂層とニッケルめっき層との電気的かつ機械的接続強度の低下をより一層抑制する。
【0010】
上記一つの態様では、焼結金属層は、銅焼結体であってもよく、各金属粒子は、銅粒子であってもよい。
たとえば、金属粒子が銀粒子である構成では、銀によるマイグレーションが生じやすい。これに対して、焼結金属層が銅焼結体であり、かつ、各金属粒子が銅粒子である構成では、マイグレーションが生じがたい。したがって、電極間の短絡が生じがたい。
【0011】
上記一つの態様では、銅粒子の平均粒径は、0.1μm以上10μm以下であってもよい。
銅粒子の平均粒径が0.1μm未満である構成では、銅粒子の表面が酸化しやすい。この場合、導電性樹脂層の電気抵抗が増加するおそれがある。
銅粒子の平均粒径が10μmより大きい構成では、導電性樹脂層の機械的強度が低下するおそれがある。この場合、電子部品がはんだ実装される場合、電子部品の固着強度が低下するおそれがある。
銅粒子の平均粒径が0.1μm以上10μm以下である構成では、導電性樹脂層の電気抵抗が増加しがたく、かつ、導電性樹脂層の機械的強度が低下しがたい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一つの態様によれば、はんだクラックの発生を抑制しつつ、導電性樹脂層とニッケルめっき層との電気的かつ機械的接続強度の低下を抑制する電子部品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る積層コンデンサの斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る積層コンデンサの断面構成を示す図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る積層コンデンサの断面構成を示す図である。
【
図4】
図4は、外部電極の断面構成を示す模式図である。
【
図5】
図5は、外部電極の断面構成を示す模式図である。
【
図6】
図6は、各試料における固着強度の低下率及び等価直列抵抗(ESR)を示す図表である。
【
図7】
図7は、各試料における固着強度及びESRを示す図表である。
【
図8】
図8は、外部電極の断面構成を示す図である。
【
図9】
図9は、外部電極の断面構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0015】
図1~
図4を参照して、本実施形態に係る積層コンデンサC1の構成を説明する。
図1は、本実施形態に係る積層コンデンサの斜視図である。
図2及び
図3は、本実施形態に係る積層コンデンサの断面構成を示す図である。
図4及び
図5は、外部電極の断面構成を示す模式図である。
図4及び
図5では、断面を表すハッチングが省略されている。本実施形態では、電子部品は、たとえば、積層コンデンサC1である。
【0016】
積層コンデンサC1は、
図1に示されるように、直方体形状を呈している素体3と、複数の外部電極5と、を備えている。本実施形態では、積層コンデンサC1は、一対の外部電極5を備えている。一対の外部電極5は、素体3の外表面に配置されている。一対の外部電極5は、互いに離間している。直方体形状は、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状を含む。
【0017】
素体3は、互いに対向している一対の主面3aと、互いに対向している一対の側面3cと、互いに対向している一対の側面3eと、を有している。一対の主面3a、一対の側面3c、及一対の側面3eは、長方形状を呈している。一対の主面3aが対向している方向が、第一方向D1である。一対の側面3cが対向している方向が、第二方向D2である。一対の側面3eが対向している方向が、第三方向D3である。積層コンデンサC1は、電子機器にはんだ実装される。電子機器は、たとえば、回路基板又は電子部品を含む。積層コンデンサC1では、一方の主面3aが、電子機器と対向する。一方の主面3aは、実装面を構成するように配置される。一方の主面3aは、実装面である。
【0018】
第一方向D1は、各主面3aに直交する方向であり、第二方向D2と直交している。第三方向D3は、各主面3aと各側面3cとに平行な方向であり、第一方向D1と第二方向D2とに直交している。第二方向D2は、各側面3cに直交する方向であり、第三方向D3は、各側面3eに直交する方向である。本実施形態では、素体3の第三方向D3での長さは、素体3の第一方向D1での長さより大きく、かつ、素体3の第二方向D2での長さより大きい。第三方向D3が、素体3の長手方向である。素体3の第一方向D1での長さと素体3の第二方向D2での長さとは、互いに同等であってもよい。素体3の第一方向D1での長さと素体3の第二方向D2での長さとは、互いに異なっていてもよい。
【0019】
素体3の第一方向D1での長さは、素体3の高さである。素体3の第二方向D2での長さは、素体3の幅である。素体3の第三方向D3での長さは、素体3の長さである。本実施形態では、素体3の高さは、0.1~2.5mmであり、素体3の幅は、0.1~5.0mmであり、素体3の長さは、0.2~5.7mmである。たとえば、素体3の高さは、1.6mmであり、素体3の幅は、1.6mmであり、素体3の長さは、3.2mmである。
【0020】
一対の側面3cは、一対の主面3aを連結するように第一方向D1に延在している。一対の側面3cは、第三方向D3にも延在している。一対の側面3eは、一対の主面3aを連結するように第一方向D1に延在している。一対の側面3eは、第二方向D2にも延在している。
【0021】
素体3は、四つの稜線部3gと、四つの稜線部3iと、四つの稜線部3jと、を有している。稜線部3gは、側面3eと主面3aとの間に位置している。稜線部3iは、側面3eと側面3cとの間に位置している。稜線部3jは、主面3aと側面3cとの間に位置している。本実施形態では、各稜線部3g,3i,3jは、湾曲するように丸められている。素体3には、いわゆるR面取り加工が施されている。側面3eと主面3aとは、稜線部3gを介して、間接的に隣り合っている。側面3eと側面3cとは、稜線部3iを介して、間接的に隣り合っている。主面3aと側面3cとは、稜線部3jを介して、間接的に隣り合っている。
【0022】
素体3は、第一方向D1に複数の誘電体層が積層されて構成されている。素体3は、積層されている複数の誘電体層を有している。素体3では、複数の誘電体層の積層方向が第一方向D1と一致する。各誘電体層は、たとえば、誘電体材料を含むセラミックグリーンシートの焼結体から構成されている。誘電体材料は、たとえば、BaTiO3系、Ba(Ti,Zr)O3系、又は(Ba,Ca)TiO3系などの誘電体セラミックを含む。実際の素体3では、各誘電体層は、各誘電体層の間の境界が視認できない程度に一体化されている。素体3では、複数の誘電体層の積層方向が第二方向D2と一致していてもよい。
【0023】
積層コンデンサC1は、
図2及び
図3に示されるように、複数の内部電極7と複数の内部電極9とを備えている。各内部電極7,9は、素体3内に配置されている内部導体である。各内部電極7,9は、積層型電子部品の内部導体として通常用いられる導電性材料からなる。導電性材料は、たとえば、卑金属を含む。導電性材料は、たとえば、Ni又はCuを含む。内部電極7,9は、上記導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成されている。本実施形態では、内部電極7,9は、Niからなる。
【0024】
内部電極7と内部電極9とは、第一方向D1において異なる位置(層)に配置されている。内部電極7と内部電極9とは、素体3内において、第一方向D1に間隔を有して対向するように交互に配置されている。内部電極7と内部電極9とは、互いに極性が異なる。複数の誘電体層の積層方向が第二方向D2である場合、内部電極7と内部電極9とは、第二方向D2において異なる位置(層)に配置される。内部電極7,9の一端は、対応する側面3eに露出している。内部電極7,9は、対応する側面3eに露出している一端を有している。
【0025】
複数の内部電極7と複数の内部電極9とは、第一方向D1で交互に並んでいる。各内部電極7,9は、主面3aと略平行な面内に位置している。内部電極7と内部電極9とは、第一方向D1で互いに対向している。内部電極7と内部電極9とが対向している方向(第一方向D1)は、主面3aと平行な方向(第二方向D2及び第三方向D3)と直交している。複数の誘電体層の積層方向が第二方向D2である場合、複数の内部電極7と複数の内部電極9とは、第二方向D2で交互に並ぶ。この場合、各内部電極7,9は、主面3aと略直交している面内に位置する。内部電極7と内部電極9とは、第二方向D2で互いに対向する。
【0026】
外部電極5は、
図1に示されるように、素体3の第三方向D3での両端部にそれぞれ配置されている。各外部電極5は、素体3における、対応する側面3e側に配置されている。本実施形態では、各外部電極5は、一対の主面3a、一対の側面3c、及び一つの側面3eに配置されている。外部電極5は、
図2及び
図3に示されるように、複数の電極部5a,5c,5e,5g,5iを有している。各電極部5aは、対応する主面3a上に配置されている。各電極部5cは、対応する側面3c上に配置されている。電極部5eは、側面3e上に配置されている。各電極部5gは、対応する稜線部3g上に配置されている。各電極部5iは、対応する稜線部3i上に配置されている。外部電極5は、稜線部3j上に配置されている電極部も有している。
【0027】
外部電極5は、一対の主面3a、一つの側面3e、及び一対の側面3cの五つの面、並びに、稜線部3g,3i,3jに形成されている。互いに隣り合う電極部5a,5c,5e,5g,5iは、接続されており、電気的に接続されている。電極部5eは、対応する内部電極7,9の一端をすべて覆っている。電極部5eは、対応する内部電極7,9と直接的に接続されている。外部電極5は、対応する内部電極7,9と電気的に接続されている。外部電極5は、第一電極層E1、第二電極層E2、第三電極層E3、及び第四電極層E4を有している。第四電極層E4は、外部電極5の最外層を構成している。本実施形態では、各電極部5a,5c,5g,5iは、第一電極層E1、第三電極層E3、及び第四電極層E4を有しており、電極部5eは、第一電極層E1、第二電極層E2、第三電極層E3、及び第四電極層E4を有している。
【0028】
電極部5aの第一電極層E1は、主面3a上に配置されている。電極部5aの第一電極層E1は、主面3aの一部を覆うように形成されている。電極部5aの第一電極層E1は、主面3aの一部と接している。主面3aは、上記一部において第一電極層E1に覆われており、上記一部を除く残部において第一電極層E1から露出している。主面3aの上記一部は、主面3aにおける側面3e寄りの一部領域である。
電極部5aの第三電極層E3は、第一電極層E1上に配置されている。電極部5aでは、第三電極層E3は、第一電極層E1の全体を覆っている。電極部5aでは、第三電極層E3は、第一電極層E1の全体と接している。すなわち、電極部5aでは、第三電極層E3は、第一電極層E1と直接接している。
電極部5aの第四電極層E4は、第三電極層E3上に配置されている。電極部5aでは、第四電極層E4は、第三電極層E3の全体を覆っている。電極部5aでは、第四電極層E4は、第三電極層E3の全体と接している。すなわち、電極部5aでは、第四電極層E4は、第三電極層E3と直接接している。
電極部5aは、三層構造を有している。
【0029】
電極部5cの第一電極層E1は、側面3c上に配置されている。電極部5cの第一電極層E1は、側面3cの一部を覆うように形成されている。電極部5cの第一電極層E1は、側面3cの一部と接している。側面3cは、上記一部において第一電極層E1に覆われており、上記一部を除く残部において第一電極層E1から露出している。側面3cの上記一部は、側面3cにおける側面3e寄りの一部領域である。
電極部5cの第三電極層E3は、第一電極層E1上に配置されている。電極部5cでは、第三電極層E3は、第一電極層E1の全体を覆っている。電極部5cでは、第三電極層E3は、第一電極層E1の全体と接している。すなわち、電極部5cでは、第三電極層E3は、第一電極層E1と直接接している。
電極部5cの第四電極層E4は、第三電極層E3上に配置されている。電極部5cでは、第四電極層E4は、第三電極層E3の全体を覆っている。電極部5cでは、第四電極層E4は、第三電極層E3の全体と接している。すなわち、電極部5cでは、第四電極層E4は、第三電極層E3と直接接している。
電極部5cは、三層構造を有している。
【0030】
電極部5eの第一電極層E1は、側面3e上に配置されている。側面3eの全体が、第一電極層E1に覆われている。電極部5eの第一電極層E1は、側面3eの全体と接している。電極部5eでは、第一電極層E1は、対応する内部電極7,9の一端と接続されるように側面3eに形成されている。
電極部5eの第二電極層E2は、第一電極層E1上に配置されている。電極部5eでは、第二電極層E2は、第一電極層E1の全体と接している。電極部5eの第二電極層E2は、側面3eの全体を覆うように形成されている。電極部5eの第二電極層E2は、第一電極層E1が第二電極層E2と側面3eとの間に位置するように、側面3eの全体を間接的に覆っている。電極部5eの第二電極層E2は、第一電極層E1の全体を直接覆っている。
電極部5eの第三電極層E3は、第二電極層E2上に配置されている。電極部5eでは、第三電極層E3は、第二電極層E2の全体を覆っている。電極部5eでは、第三電極層E3は、第二電極層E2の全体と接している。すなわち、電極部5eでは、第三電極層E3は、第二電極層E2と直接接している。電極部5eでは、第三電極層E3は、第一電極層E1と直接接していない。
電極部5eの第四電極層E4は、第三電極層E3上に配置されている。電極部5eでは、第四電極層E4は、第三電極層E3の全体を覆っている。電極部5eでは、第四電極層E4は、第三電極層E3の全体と接している。すなわち、電極部5eでは、第四電極層E4は、第三電極層E3と直接接している。
電極部5eは、四層構造を有している。
【0031】
電極部5eの第二電極層E2は、側面3eの一部を覆うように形成されていてもよい。側面3eの一部は、たとえば、側面3eにおける主面3a寄りの一部領域である。この場合、電極部5eの第二電極層E2は、第一電極層E1が第二電極層E2と側面3eとの間に位置するように、側面3eの一部を間接的に覆う。電極部5eの第二電極層E2は、第一電極層E1における側面3eに形成されている部分の一部を直接覆う。すなわち、電極部5eは、第一電極層E1が第二電極層E2から露出している領域と、第一電極層E1が第二電極層E2で覆われている領域と、を有する。電極部5cの第二電極層E2が、側面3eの一部を覆うように形成されている場合、上述したように、内部電極7と内部電極9とは、第二方向D2において異なる位置(層)に配置されていてもよい。
【0032】
電極部5gの第一電極層E1は、稜線部3g上に配置されている。電極部5gの第一電極層E1は、稜線部3gの全体を覆うように形成されている。電極部5gの第一電極層E1は、稜線部3gの全体と接している。
電極部5iの第一電極層E1は、稜線部3i上に配置されている。電極部5iの第一電極層E1は、稜線部3iの全体を覆うように形成されている。電極部5iの第一電極層E1は、稜線部3iの全体と接している。
電極部5g,5iの各第三電極層E3は、第一電極層E1上に配置されている。各電極部5g,5iでは、第三電極層E3は、第一電極層E1の全体を覆っている。各電極部5g,5iでは、第三電極層E3は、第一電極層E1の全体と接している。すなわち、各電極部5g,5iでは、第三電極層E3は、第一電極層E1と直接接している。
電極部5g,5iの各第四電極層E4は、第三電極層E3上に配置されている。各電極部5g,5iでは、第四電極層E4は、第三電極層E3の全体を覆っている。各電極部5g,5iでは、第四電極層E4は、第三電極層E3の全体と接している。すなわち、各電極部5g,5iでは、第四電極層E4は、第三電極層E3と直接接している。
各電極部5g,5iは、三層構造を有している。稜線部3j上に配置されている電極部も、電極部5g,5iと同様に、三層構造を有している。各電極部5g,5iは、電極部5eと同様に、第二電極層E2を有していてもよい。この場合、各電極部5g,5iは、四層構造を有する。
【0033】
外部電極5は、上述したように、第一電極層E1、第二電極層E2、第三電極層E3、及び第四電極層E4を有している。第一電極層E1は、素体3上に配置されている。第二電極層E2は、第一電極層E1の一部が露出するように、第一電極層E1上に配置されている。本実施形態では、第二電極層E2は、側面3e上のみに位置している。第三電極層E3は、第二電極層E2と、第二電極層E2から露出している第一電極層E1の上記一部とを覆うように、第一電極層E1上及び第二電極層E2上に配置されている。したがって、第三電極層E3は、第一電極層E1の一部上に配置されている領域と、第二電極層E2上に配置されている領域と、を有している。第四電極層E4は、第三電極層E3の全体を覆うように、第三電極層E3上に配置されている。
【0034】
第一電極層E1は、素体3の表面に付与された導電性ペーストを焼き付けることにより形成されている。本実施形態では、第一電極層E1は、一対の主面3a、一対の側面3c、及び一つの側面3eを連続して覆うように形成されている。第一電極層E1は、導電性ペーストに含まれる金属成分(金属粉末)が焼結することにより形成されている。第一電極層E1は、焼結金属層である。第一電極層E1は、素体3に形成された焼結金属層である。本実施形態では、第一電極層E1は、銅からなる焼結金属層である。すなわち、第一電極層E1は、銅焼結体である。導電性ペーストは、たとえば、銅からなる粉末、ガラス成分、有機バインダ、及び有機溶剤を含んでいる。各電極部5a,5c,5e,5g,5iが有している第一電極層E1は、一体的に形成されている。第一電極層E1は、ニッケルからなる焼結金属層であってもよい。
【0035】
第二電極層E2は、第一電極層E1上に付与された導電性樹脂ペーストを硬化させることにより形成されている。第二電極層E2は、第一電極層E1上に形成されている。本実施形態では、第二電極層E2は、電極部5eが含む第一電極層E1上に形成されている。第一電極層E1は、第二電極層E2を形成するための下地金属層である。第二電極層E2は、第一電極層E1を覆う導電性樹脂層である。導電性樹脂ペーストは、たとえば、電気絶縁性を有する樹脂、導電性フィラー、及び有機溶媒を含んでいる。樹脂は、たとえば、熱硬化性樹脂である。導電性フィラーは、金属粒子である。本実施形態では、金属粉末は、銅粒子である。熱硬化性樹脂は、たとえば、フェノール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、又はポリイミド樹脂である。
【0036】
第二電極層E2は、
図4に示されるように、複数の金属粒子MPと、電気絶縁性を有する樹脂Rとを含んでいる。複数の金属粒子MPは、第二電極層E2内に、複数の導電経路を形成している。複数の金属粒子MPのうち一部の金属粒子MPは、第一電極層E1と直接接している。複数の金属粒子MPのうち別の一部の金属粒子MPは、第二電極層E2の表面に露出している。第二電極層E2の表面に露出している金属粒子MPは、第三電極層E3と直接接している。複数の金属粒子MPは、第一電極層E1と第三電極層E3とを電気的に接続している。金属粒子MPの粒子形状は、特に制限されない。金属粒子MPは、たとえば、略球状、略針状、又はフレーク状を呈している。
【0037】
複数の金属粒子MPの平均粒径は、たとえば、0.1μm以上10μm以下である。本実施形態では、複数の金属粒子MPの平均粒径は、0.8μmである。
複数の金属粒子MPの平均粒径は、たとえば、以下のようにして求めることができる。
第二電極層E2を含む位置での、外部電極5(電極部5e)の断面写真が取得される。断面写真は、電極部5eを側面3eに直交する平面で切断したときの断面を撮影した写真である。断面写真は、たとえば、互いに対向している一対の面(たとえば、一対の側面3c)に平行であり、かつ、当該一対の面から等距離に位置している平面で切断したときの電極部5eの断面を撮影した写真である。取得した断面写真をソフトウェアにより画像処理する。この画像処理により、金属粒子MPの境界が判別され、金属粒子MPの面積が算出される。算出した金属粒子MPの面積から、円相当径に換算した粒径が算出される。断面写真内に含まれる、すべての金属粒子MPの粒径が算出されてもよい。断面写真内に含まれる金属粒子MPのうち、任意の数の金属粒子MPの粒径が算出されてもよい。任意の数は、たとえば、100である。得られた金属粒子MPの粒径の平均値が、平均粒径とされる。
【0038】
複数の金属粒子MPの平均粒径は、粒度分布における積算値50%での粒子径(d50)で規定されてもよい。この場合、複数の金属粒子MPの平均粒径は、以下のようにして求められる。
円相当径に換算した粒径が算出された後、金属粒子MPの粒度分布が求められる。たとえば、任意の数の金属粒子MPの粒径が算出され、これらの金属粒子MPの粒度分布が求められる。任意の数は、たとえば、100である。求められた粒度分布における積算値50%での粒子径(d50)が、平均粒径とされる。
【0039】
第三電極層E3は、第二電極層E2上にめっき法により形成されている。本実施形態では、第三電極層E3は、第二電極層E2上にニッケルめっきにより形成されている。第三電極層E3は、ニッケルめっき層である。ニッケルめっき層は、第二電極層E2に含まれる金属よりも耐はんだ喰われ性に優れている。第三電極層E3は、第二電極層E2を覆っている。
【0040】
第四電極層E4は、第三電極層E3上にめっき法により形成されている。第四電極層E4は、はんだめっき層である。本実施形態では、第四電極層E4は、第三電極層E3上にスズめっきにより形成されている。第四電極層E4は、スズめっき層である。第四電極層E4は、Sn-Ag合金めっき層、Sn-Bi合金めっき層、又はSn-Cu合金めっき層であってもよい。第四電極層E4は、Sn、Sn-Ag合金、Sn-Bi合金、又はSn-Cu合金を含んでいる。第四電極層E4の厚みは、たとえば、0.5~3.0μmである。本実施形態では、第四電極層E4の厚みは、2.0μmである。
【0041】
次に、
図5を参照して、第三電極層E3の構成を説明する。上述したように、第三電極層E3は、第一電極層E1上に配置されている領域E3
1と、第二電極層E2上に配置されている領域E3
2と、を有している。領域E3
1は、第一電極層E1と第四電極層E4との間に位置していると共に、第一電極層E1と第四電極層E4とに直接接している。
領域E3
2は、第二電極層E2と第四電極層E4との間に位置していると共に、第二電極層E2と第四電極層E4とに直接接している。
図2及び3にも示されるように、領域E3
1は、たとえば、電極部5a,5c,5g,5iに含まれ、領域E3
2は、電極部5eに含まれる。たとえば、領域E3
1が第一領域を構成する場合、領域E3
2は第二領域を構成する。
【0042】
領域E32の厚みT2は、領域E31の厚みT1より小さい。
厚みT1は、たとえば、6.0μm以上10.0μm以下である。本実施形態では、厚みT1は、8.6μmである。厚みT2は、たとえば、4.0μm以上7.0μm以下である。本実施形態では、厚みT2は、6.8μmである。
厚みT1に対する厚みT2の比率は、たとえば、0.48以上0.84以下である。本実施形態では、厚みT1に対する厚みT2の比率(T2/T1)は、0.79である。
【0043】
たとえば、厚みT1は、領域E31の最大厚みで規定され、厚みT2は、領域E32の最大厚みで規定される。各厚みT1,T2は、たとえば、以下のようにして求めることができる。
電極部5eを含む位置での、外部電極5の断面写真が取得される。断面写真は、外部電極5を側面3eに直交する平面で切断したときの断面を撮影した写真である。断面写真は、たとえば、互いに対向している一対の面(たとえば、一対の側面3c)に平行であり、かつ、当該一対の面から等距離に位置している平面で切断したときの外部電極5の断面を撮影した写真である。取得した断面写真が、ソフトウェアにより画像処理される。この画像処理により、第三電極層E3の境界が判別され、各領域E31,E32での第三電極層E3の最大厚みが求められる。
最大厚みが求められる代わりに、各領域E31,E32での第三電極層E3の平均厚みが求められてもよい。この場合、厚みT1は、領域E31の平均厚みで規定され、厚みT2は、領域E32の平均厚みで規定される。
【0044】
ここで、厚みT1と厚みT2の関係、すなわち、厚みT1に対する厚みT2の比率(T2/T1)について詳細に説明する。
本発明者らは、比率(T2/T1)の範囲を明らかにするために、以下のような試験を行った。すなわち、本発明者らは、厚みT1と厚みT2とが異なる試料S1~S6を用意し、各試料S1~S6における、固着強度の低下率及び等価直列抵抗(ESR)を確認した。その結果を
図6に示す。
図6は、各試料における固着強度の低下率及びESRを示す図表である。
【0045】
各試料S1~S6は、複数の検体を含むロットである。各試料S1~S6の検体は、各厚みT1,T2が異なる点を除いて同じ構成を有している積層コンデンサである。試料S1~S6の各検体では、素体3の高さが1.6mmであり、素体3の幅が1.6mmであり、素体3の長さが3.2mmである。各検体の静電容量は、2.2μFである。
試料S1の各検体では、厚みT1が8.7μmであり、厚みT2が4.2μmである。比率(T2/T1)は、0.48である。
試料S2の各検体では、厚みT1が9.8μmであり、厚みT2が5.2μmである。比率(T2/T1)は、0.53である。
試料S3の各検体では、厚みT1が8.6μmであり、厚みT2が6.8μmである。比率(T2/T1)は、0.79である。
試料S4の各検体では、厚みT1が6.9μmであり、厚みT2が5.8μmである。比率(T2/T1)は、0.84である。
試料S5の各検体では、厚みT1が8.8μmであり、厚みT2が8.9μmである。比率(T2/T1)は、1.01である。
試料S6の各検体では、厚みT1が8.2μmであり、厚みT2が4.2μmである。比率(T2/T1)は、1.16である。
【0046】
固着強度の低下率は、以下のようにして求められる。
試料S1~S6ごとに、5個の検体が選ばれ、固着強度が測定される。固着強度は、JIS C 60068-2-21及びIEC 60068-2-21に記載された固着性(せん断)試験(試験Ue3)に準拠して測定される。ただし、検体が基板から外れるまで押圧され、検体が基板から外れたときの押圧力が固着強度とされる。この固着強度は、熱衝撃試験前の固着強度である。試料S1~S6ごとに、5個の検体での平均値が求められる。
試料S1~S6ごとに、5個の検体が選ばれ、熱衝撃試験後に固着強度が測定される。熱衝撃試験では、1000回の熱処理サイクルが繰り返される。一つの熱処理サイクルでは、検体は、基板にはんだ実装された状態で、-55℃の環境下で30分保持され、その後、125℃の環境下で30分保持される。固着強度は、上述したように、検体が基板から外れたときの押圧力が固着強度とされる。この固着強度は、熱衝撃試験後の固着強度である。試料S1~S6ごとに、5個の検体での平均値が求められる。
固着強度の低下率は、熱衝撃試験後の固着強度(平均値)を熱衝撃試験前の固着強度(平均値)で除し、百分率で表した値である。実際の使用を考慮すると、固着強度の低下率は70%以上である必要がある。
【0047】
ESRは、以下のようにして求められる。
試料S1~S6ごとに、5個の検体が選ばれ、熱衝撃試験後に、自己共振周波数におけるESR(mΩ)が測定される。熱衝撃試験は、固着強度の低下率が求められる際に行われる熱衝撃試験と同じである。ESRは、インピーダンスアナライザ(アジレント・テクノロジー社製4294A)によって測定される。テストフィクスチャは、アジレント・テクノロジー社製16044Aを用いる。試料S1~S6ごとに、5個の検体での平均値が求められる。実際の使用を考慮すると、ESRは10mΩ未満である必要がある。ESRは、8mΩ未満であると、より一層特性が向上する。
【0048】
上述した試験の結果、
図6に示されるように、試料S1~S4では、固着強度の低下率が70%以上であり、かつ、ESRが10mΩ未満であった。試料S2~S4では、固着強度の低下率が70%以上であり、かつ、ESRが8mΩ未満であった。
【0049】
次に、金属粒子MPの平均粒径について詳細に説明する。
本発明者らは、金属粒子MPの平均粒径の範囲を明らかにするために、以下のような試験を行った。すなわち、本発明者らは、金属粒子MPの平均粒径が異なる試料S7~S11を用意し、各試料S7~S11における、固着強度及びESRを確認した。その結果を
図7に示す。
図7は、各試料における固着強度及びESRを示す図表である。
【0050】
各試料S7~S11は、複数の検体を含むロットである。各試料S7~S11の検体は、金属粒子MPの平均粒径が異なる点を除いて同じ構成を有している積層コンデンサである。試料S7~S11の各検体では、素体3の高さが1.6mmであり、素体3の幅が1.6mmであり、素体3の長さが3.2mmである。各検体の静電容量は、2.2μFである。厚みT1は8.6μmであり、厚みT2が6.8μmである。
試料S7の各検体では、金属粒子MPの平均粒径が0.05μmである。
試料S8の各検体では、金属粒子MPの平均粒径が0.1μmである。
試料S9の各検体では、金属粒子MPの平均粒径が1μmである。
試料S10の各検体では、金属粒子MPの平均粒径が10μmである。
試料S11の各検体では、金属粒子MPの平均粒径が20μmである。
【0051】
固着強度は、以下のようにして求められる。
試料S7~S11ごとに、5個の検体が選ばれ、固着強度(N)が測定される。ここでも、固着強度は、JIS C 60068-2-21及びIEC 60068-2-21に記載された固着性(せん断)試験(試験Ue3)に準拠して測定される。ただし、検体が基板から外れるまで押圧され、検体が基板から外れたときの押圧力が固着強度とされる。試料S7~S11ごとに、5個の検体での平均値が求められる。実際の使用を考慮すると、固着強度は45N以上である必要がある。
【0052】
ESRは、以下のようにして求められる。
試料S7~S11ごとに、5個の検体が選ばれ、各検体が基板にはんだ実装された後に、自己共振周波数におけるESR(mΩ)が測定される。ここでも、ESRは、インピーダンスアナライザ(アジレント・テクノロジー社製4294A)によって測定される。テストフィクスチャは、アジレント・テクノロジー社製16044Aを用いる。試料S7~S11ごとに、5個の検体での平均値が求められる。実際の使用を考慮すると、ESRは10mΩ未満である必要がある。ESRは、8mΩ未満であると、より一層特性が向上する。
【0053】
上述した試験の結果、
図7に示されるように、試料S8~S10では、固着強度が45N以上であり、かつ、ESRが10mΩ未満であった。試料S9及びS10では、固着強度が45N以上であり、かつ、ESRが8mΩ未満であった。
【0054】
以上のように、積層コンデンサC1では、領域E32の厚みT2が領域E31の厚みT1より小さい。
第二電極層E2は、外部電極5に形成されるはんだフィレットに作用する応力を緩和し、はんだクラックの発生を抑制する。これに対して、第三電極層E3は、一般に、硬いので、第二電極層E2がはんだクラックの発生を抑制するのを阻害するおそれがある。厚みT2が厚みT1より小さい構成では、厚みT2が厚みT1より大きい構成に比して、領域E32は、第二電極層E2がはんだクラックの発生を抑制するのを阻害しがたい。
【0055】
厚みT1が厚みT2より小さい構成では、領域E31の機械的強度が低下し、破れ又は剥がれが第三電極層E3に生じるおそれがある。したがって、領域E31の機械的強度が低下する場合、第二電極層E2と第三電極層E3との電気的かつ機械的接続強度が低下するおそれがある。
積層コンデンサC1では、厚みT1が厚みT2より大きいので、領域E31の機械的強度の低下が抑制され、破れ又は剥がれが第三電極層E3に生じがたい。したがって、積層コンデンサC1は、第二電極層E2と第三電極層E3との電気的かつ機械的接続強度の低下を抑制する。
【0056】
積層コンデンサC1では、第二電極層E2は、側面3e上のみに位置している。すなわち、第二電極層E2は、第一電極層E1が側面3eと第二電極層E2との間に位置するように、側面3e上に間接的に配置されている。
はんだフィレットに作用する応力は、電極部5eに形成されるはんだフィレットに集中する傾向がある。第二電極層E2が側面3e上のみに位置している構成は、はんだクラックの発生を確実に抑制する。
【0057】
厚みT1に対する厚みT2の比率(T2/T1)が0.53以上0.84以下である構成は、はんだクラックの発生をより一層確実に抑制しつつ、第二電極層E2と第三電極層E3との電気的かつ機械的接続強度の低下をより一層抑制する。
【0058】
積層コンデンサC1では、第一電極層E1が銅焼結体であると共に、各金属粒子MPが銅粒子である。
たとえば、金属粒子MPが銀粒子である構成では、銀によるマイグレーションが生じやすい。これに対して、第一電極層E1が銅焼結体であり、かつ、各金属粒子MPが銅粒子である構成では、マイグレーションが生じがたい。したがって、外部電極5間の短絡が生じがたい。
【0059】
積層コンデンサC1では、銅粒子である金属粒子MPの平均粒径は、0.1μm以上10μm以下である。
銅粒子である金属粒子MPの平均粒径が0.1μm未満である構成では、金属粒子MPの表面が酸化しやすい。この場合、第二電極層E2の電気抵抗が増加するおそれがある。
銅粒子である金属粒子MPの平均粒径が10μmより大きい構成では、第二電極層E2の機械的強度が低下するおそれがある。この場合、積層コンデンサC1がはんだ実装される場合、積層コンデンサC1の固着強度が低下するおそれがある。
銅粒子である金属粒子MPの平均粒径が0.1μm以上10μm以下である構成では、第二電極層E2の電気抵抗が増加しがたく、かつ、第二電極層E2の機械的強度が低下しがたい。
【0060】
次に、
図8及び
図9を参照して、本実施形態の一変形例に係る積層コンデンサの構成を説明する。
図8及び
図9は、外部電極の断面構成を示す図である。本変形例に係る積層コンデンサは、概ね、上述した積層コンデンサC1と類似又は同じであるが、本変形例は、第二電極層E2の構成に関して、上述した実施形態と相違する。以下、上述した実施形態と本変形例との相違点を主として説明する。
図8及び
図9では、断面を表すハッチングが省略されている。
図8及び
図9は、一方の外部電極5の構成のみを示している。
図8及び
図9に図示されていない他方の外部電極の構成は、
図8及び
図9に図示されている一方の外部電極5の構成と同じである。
【0061】
図8及び
図9に示された変形例では、電極部5a,5cは、第一電極層E1と、第二電極層E2と、第三電極層E3と、第四電極層E4とを有している。すなわち、電極部5a,5cは、四層構造を有している。電極部5e,5g,5iは、第一電極層E1と、第三電極層E3と、第四電極層E4とを有しており、第二電極層E2を有していない。すなわち、電極部5e,5g,5iは、三層構造を有している。本変形例では、稜線部3j上に配置されている電極部は、電極部5a,5cと同様に、四層構造を有していてもよく、電極部5e,5g,5iと同様に、三層構造を有していてもよい。本変形例では、領域E3
1は、電極部5e,5g,5iに含まれると共に、領域E3
2は、電極部5a,5cに含まれる。
【0062】
電極部5aの第二電極層E2は、第一電極層E1上に配置されている。電極部5aでは、第二電極層E2は、第一電極層E1と主面3aの一部とを覆うように形成されている。電極部5aでは、第二電極層E2は、第一電極層E1と主面3aとに直接接している。電極部5aの第二電極層E2は、電極部5aの第一電極層E1の全体を覆うように形成されている。電極部5aでは、第二電極層E2は、第一電極層E1が第二電極層E2と主面3aとの間に位置するように、主面3aを間接的に覆っている。
電極部5aの第三電極層E3は、第二電極層E2上に配置されている。電極部5aでは、第三電極層E3は、第二電極層E2の全体を覆っている。電極部5aでは、第三電極層E3は、第二電極層E2の全体と接している。すなわち、電極部5aでは、第三電極層E3は、第二電極層E2と直接接している。電極部5aでは、第三電極層E3は、第一電極層E1と直接接していない。
【0063】
電極部5cの第二電極層E2は、第一電極層E1上に配置されている。電極部5cでは、第二電極層E2は、第一電極層E1と側面3cの一部とを覆うように形成されている。電極部5cでは、第二電極層E2は、第一電極層E1と側面3cとに直接接している。電極部5cの第二電極層E2は、電極部5cの第一電極層E1の全体を覆うように形成されている。電極部5cでは、第二電極層E2は、第一電極層E1が第二電極層E2と側面3cとの間に位置するように、側面3cを間接的に覆っている。
電極部5cの第三電極層E3は、第二電極層E2上に配置されている。電極部5cでは、第三電極層E3は、第二電極層E2の全体を覆っている。電極部5cでは、第三電極層E3は、第二電極層E2の全体と接している。すなわち、電極部5cでは、第三電極層E3は、第二電極層E2と直接接している。電極部5cでは、第三電極層E3は、第一電極層E1と直接接していない。
【0064】
電極部5eの第三電極層E3は、第一電極層E1上に配置されている。電極部5eでは、第三電極層E3は、第一電極層E1の全体を覆っている。電極部5eでは、第三電極層E3は、第一電極層E1の全体と接している。すなわち、電極部5eでは、第三電極層E3は、第一電極層E1と直接接している。
【0065】
次に、
図10及び
図11を参照して、本実施形態の別の変形例に係る積層コンデンサの構成を説明する。
図10及び
図11は、外部電極の断面構成を示す図である。本変形例に係る積層コンデンサは、概ね、上述した積層コンデンサC1と類似又は同じであるが、本変形例は、第二電極層E2の構成に関して、上述した実施形態及び変形例と相違する。以下、上述した実施形態及び変形例と本変形例との相違点を主として説明する。
図10及び
図11では、断面を表すハッチングが省略されている。
図10及び
図11は、一方の外部電極5の構成のみを示している。
図10及び
図11に図示されていない他方の外部電極の構成は、
図10及び
図11に図示されている一方の外部電極5の構成と同じである。
【0066】
図10及び
図11に示された変形例では、電極部5a,5c,5eは、第一電極層E1と、第二電極層E2と、第三電極層E3と、第四電極層E4とを有している。すなわち、電極部5a,5c,5eは、四層構造を有している。電極部5g,5iは、第一電極層E1と、第三電極層E3と、第四電極層E4とを有しており、第二電極層E2を有していない。すなわち、電極部5g,5iは、三層構造を有している。本変形例では、稜線部3j上に配置されている電極部は、電極部5a,5c,5eと同様に、四層構造を有していてもよく、電極部5g,5iと同様に、三層構造を有していてもよい。本変形例では、領域E3
1は、電極部5g,5iに含まれると共に、領域E3
2は、電極部5a,5c,5eに含まれる。
【0067】
次に、
図12を参照して、本実施形態の更に別の変形例に係る積層コンデンサの構成を説明する。
図12は、外部電極の断面構成を示す図である。本変形例に係る積層コンデンサは、概ね、上述した積層コンデンサC1と類似又は同じであるが、本変形例は、第二電極層E2の構成に関して、上述した実施形態及び二つの変形例と相違する。以下、上述した実施形態及び二つの変形例と本変形例との相違点を主として説明する。
図12では、断面を表すハッチングが省略されている。
図12は、一方の外部電極5の構成のみを示している。
図12に図示されていない他方の外部電極の構成は、
図12に図示されている一方の外部電極5の構成と同じである。
【0068】
図12に示された変形例では、一方の電極部5aと電極部5eは、第一電極層E1と、第二電極層E2と、第三電極層E3と、第四電極層E4とを有している。一方の電極部5aと電極部5eとの間に位置している一方の電極部5gも、第一電極層E1と、第二電極層E2と、第三電極層E3と、第四電極層E4とを有している。すなわち、一方の電極部5a、電極部5e、及び一方の電極部5gは、四層構造を有している。他方の電極部5aと他方の電極部5gとは、第一電極層E1と、第三電極層E3と、第四電極層E4とを有しており、第二電極層E2を有していない。すなわち、他方の電極部5aと他方の電極部5gとは、三層構造を有している。電極部5c,5iは、一方の電極部5a、電極部5e、及び一方の電極部5gと同様に、四層構造を有していてもよく、他方の電極部5aと他方の電極部5gと同様に、三層構造を有していてもよい。本変形例では、稜線部3j上に配置されている電極部も、四層構造を有していてもよく、三層構造を有していてもよい。本変形例では、領域E3
1は、他方の電極部5aと他方の電極部5gに含まれると共に、領域E3
2は、一方の電極部5a、電極部5e、及び一方の電極部5gに含まれる。
【0069】
一方の電極部5gの第二電極層E2は、第一電極層E1上に配置されている。一方の電極部5gでは、第二電極層E2は、第一電極層E1の全体を覆うように形成されている。一方の電極部5gでは、第二電極層E2は、第一電極層E1に直接接している。一方の電極部5gの第二電極層E2は、一方の電極部5gの第一電極層E1の全体を覆うように形成されている。一方の電極部5gでは、第二電極層E2は、第一電極層E1が第二電極層E2と一方の稜線部3gとの間に位置するように、一方の稜線部3gを間接的に覆っている。
一方の電極部5gの第三電極層E3は、第二電極層E2上に配置されている。一方の電極部5gでは、第三電極層E3は、第二電極層E2の全体を覆っている。一方の電極部5gでは、第三電極層E3は、第二電極層E2の全体と接している。すなわち、一方の電極部5gでは、第三電極層E3は、第二電極層E2と直接接している。一方の電極部5gでは、第三電極層E3は、第一電極層E1と直接接していない。
【0070】
図8~
図12に示された変形例では、積層コンデンサC1と同様に、領域E3
2の厚みT2が領域E3
1の厚みT1より小さい。したがって、各変形例は、はんだクラックの発生を抑制するのを阻害しがたく、かつ、第二電極層E2と第三電極層E3との電気的かつ機械的接続強度の低下を抑制する。
各変形例において、厚みT1に対する厚みT2の比率(T2/T1)が0.53以上0.84以下である場合、上述したように、はんだクラックの発生をより一層確実に抑制しつつ、第二電極層E2と第三電極層E3との電気的かつ機械的接続強度の低下をより一層抑制する。
各変形例において、第一電極層E1が銅焼結体であると共に、各金属粒子MPが銅粒子である場合、上述したように、外部電極5間の短絡が生じがたい。
各変形例において、銅粒子である金属粒子MPの平均粒径が、0.1μm以上10μm以下である場合、上述したように、第二電極層E2の電気抵抗が増加しがたく、かつ、第二電極層E2の機械的強度が低下しがたい。
【0071】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0072】
厚みT1に対する厚みT2の比率(T2/T1)は、0.53以上0.84以下でなくてもよい。たとえば、比率(T2/T1)は、0.48以上0.84以下であってもよい。比率(T2/T1)は、0.53以上0.84以下である場合、上述したように、はんだクラックの発生をより一層確実に抑制しつつ、第二電極層E2と第三電極層E3との電気的かつ機械的接続強度の低下をより一層抑制する。
第一電極層E1は銅焼結体でなくてもよく、また、各金属粒子MPも銅粒子でなくてもよい。第一電極層E1が銅焼結体であると共に、各金属粒子MPが銅粒子である場合、上述したように、外部電極5間の短絡が生じがたい。
銅粒子である金属粒子MPの平均粒径は、0.1μm以上10μm以下でなくてもよい。銅粒子である金属粒子MPの平均粒径が、0.1μm以上10μm以下である場合、上述したように、第二電極層E2の電気抵抗が増加しがたく、かつ、第二電極層E2の機械的強度が低下しがたい。
【0073】
本実施形態及び変形例では、電子部品として積層コンデンサを例に説明したが、適用可能な電子部品は、積層コンデンサに限られない。適用可能な電子部品は、たとえば、積層インダクタ、積層バリスタ、積層圧電アクチュエータ、積層サーミスタ、もしくは積層複合部品などの積層電子部品、又は、積層電子部品以外の電子部品である。
【符号の説明】
【0074】
3…素体、3a…主面、3c,3e…側面、5…外部電極、C1…積層コンデンサ、E1…第一電極層、E2…第二電極層、E3…第三電極層、E31,E32…第三電極層が有する領域、E4…第四電極層、MP…金属粒子、R…樹脂。