(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】ドアハンドル装置
(51)【国際特許分類】
E05B 79/06 20140101AFI20240604BHJP
E05B 85/16 20140101ALI20240604BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
E05B79/06 C
E05B85/16 Z
B60J5/04 H
(21)【出願番号】P 2020176657
(22)【出願日】2020-10-21
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000138462
【氏名又は名称】株式会社ユーシン
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】越智 啓太
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-35360(JP,A)
【文献】特開2017-115352(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第1099816(EP,A1)
【文献】実開平4-42563(JP,U)
【文献】特開2008-208584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 79/06
E05B 85/14-85/18
B60J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に軸受部を有し、他端側にガイド孔が設けられたベースと、
前記軸受部に取り付けられた軸着部と、ドアの内側に向けて突出して前記ガイド孔に進退可能に挿通された操作部とを有し、前記ベースに対して前記軸着部回りに回転可能に支持されたハンドルレバーと、
前記ガイド孔に突出するとともに、前記ガイド孔への突出量が少なくなるように退避可能に前記ベースに取り付けられた規制部材と
を備え、
前記操作部は、前記規制部材と係合する係合部を備え、
前記規制部材は、前記操作部の前記ガイド孔内での移動に伴い、前記ガイド孔への突出量が少なくなるように退避するとともに前記操作部に乗り上げ、前記ベースの前記他端側から前記一端側への前記ハンドルレバーの移動に伴い、前記係合部と係合し、
前記規制部材は、前記係合部と係合した状態において、前記ハンドルレバーの前記軸着部回りの回転を許容するとともに、前記ベースの前記一端側から前記他端側に向けた前記ハンドルレバーの移動を規制する、ドアハンドル装置。
【請求項2】
前記操作部と前記規制部材とのうちの少なくとも一方には、前記規制部材の前記操作部への乗り上げを案内する案内面が設けられている、請求項1に記載のドアハンドル装置。
【請求項3】
前記規制部材は、
前記操作部と係合する一端部と、
前記一端部と反対側の他端部と
を備え、
前記他端部は、前記ベースの外側から操作可能に露出している、請求項1又は2に記載のドアハンドル装置。
【請求項4】
前記規制部材を前記操作部に向けて付勢する付勢部材を備える、請求項1から3のいずれか1項に記載のドアハンドル装置。
【請求項5】
前記規制部材を移動可能に保持するブラケットを備え、
前記ブラケットは、前記規制部材が挿通される貫通孔をそれぞれ備えた一対の支持板を備え、
前記規制部材は、前記一対の支持板の間に位置するフランジ部を備え、
前記付勢部材は、前記支持板と前記フランジ部との間に配置されている、請求項4に記載のドアハンドル装置。
【請求項6】
前記ハンドルレバーは、
前記操作部と前記軸着部とを有するレバー本体と、
前記レバー本体を覆うハンドルカバーと
を備え、
前記ハンドルレバーは、車両のドアパネルに設けられ、前記レバー本体が挿通される開口部の全体を覆うように設けられている、請求項1から5のいずれか1項に記載のドアハンドル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアハンドル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ハンドルサポートと、ハンドルサポートに回動可能に支持されたハンドルレバーとを備える自動車用ドアハンドルが開示されている。この自動車用ドアハンドルでは、ハンドルレバーの一方側に設けられたヒンジ要素と、ハンドルサポートのヒンジ要素とが係合することで、ハンドルレバーがハンドルサポートに回動可能に支持されている。
【0003】
ハンドルレバーがハンドルサポートに対して一方側から他方側に移動すると、ハンドルレバーのヒンジ要素がハンドルサポートのヒンジ要素から外れ、ハンドルレバーがハンドルサポートから抜け出すことがある。特許文献1では、ハンドルレバーがハンドルサポートに対して一方側から他方側に移動することを規制するために外側部品が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の自動車用ドアハンドルでは、ハンドルレバーの一方側に設けられたヒンジ要素をハンドルサポートのヒンジ要素に係合させた後に、外側部品をハンドルサポートに組み付ける必要がある。このため、ハンドルサポートへのハンドルレバーの組み付け性に改善の余地がある。
【0006】
本発明は、ドアハンドル装置において、ハンドルレバーのベースへの組み付け性を確保しつつ、ハンドルレバーのベースからの抜け出しの規制を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、一端側に軸受部を有し、他端側にガイド孔が設けられたベースと、前記軸受部に取り付けられた軸着部と、ドアの内側に向けて突出して前記ガイド孔に進退可能に挿通された操作部とを有し、前記ベースに対して前記軸着部回りに回転可能に支持されたハンドルレバーと、前記ガイド孔に突出するとともに、前記ガイド孔への突出量が少なくなるように退避可能に前記ベースに取り付けられた規制部材とを備え、前記操作部は、前記規制部材と係合する係合部を備え、前記規制部材は、前記操作部の前記ガイド孔内での移動に伴い、前記ガイド孔への突出量が少なくなるように退避するとともに前記操作部に乗り上げ、前記ベースの前記他端側から前記一端側への前記ハンドルレバーの移動に伴い、前記係合部と係合し、前記規制部材は、前記係合部と係合した状態において、前記ハンドルレバーの前記軸着部回りの回転を許容するとともに、前記ベースの前記一端側から前記他端側に向けた前記ハンドルレバーの移動を規制する、ドアハンドル装置を提供する。
【0008】
ハンドルレバーの軸着部をベースの軸受部に取り付け、その後ハンドルレバーの操作部をベースのガイド孔に挿入することで、ハンドルレバーはベースに取り付けられる。この構成によれば、操作部のガイド孔内での移動に伴って、規制部材がガイド孔からの突出量が少なくなるように、退避する。このため、操作部のガイド孔への挿入を規制部が阻害することがない。このため、ハンドルレバーのベースへの組付けを容易にできる。
【0009】
一方で、ハンドルレバーがベースに組み付けられた状態において規制部材が操作部の係合部と係合することで、ハンドルレバーがベースの一端側から他端側へ移動することが規制される。その結果、ハンドルレバーのベースからの抜け出しが規制される。
【0010】
したがって、この構成によれば、ハンドルレバーのベースへの組み付け性を確保しつつ、ハンドルレバーのベースからの抜け出しを抑制できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ドアハンドル装置において、ハンドルレバーのベースへの組み付け性を確保しつつ、ハンドルレバーのベースからの抜け出しを規制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るドアハンドル装置の正面図。
【
図4】ベースのガイド孔及び収容部の周辺を示す斜視図。
【
図7】ベースに固定された状態の規制ユニットを車内側から見た背面図。
【
図8】基準状態のドアハンドル装置の
図1のA-A線に沿った断面図。
【
図9】基準状態でのハンドルレバーの操作部とピンとの位置関係を説明するための図。
【
図10】基準状態でのハンドルレバーの操作部とピンとの位置関係を説明するための図。
【
図11】操作状態のドアハンドル装置の
図1のA-A線に沿った断面図。
【
図12】操作状態でのハンドルレバーの操作部とピンとの位置関係を説明するための図。
【
図13】操作状態でのハンドルレバーの操作部とピンとの位置関係を説明するための図。
【
図14】ドアハンドル装置の組み立て作業の第1工程でのドアハンドル装置の
図1のA-A線に沿った断面図。
【
図15】ドアハンドル装置の組み立て作業の第1工程でのハンドルレバーの操作部とピンとの位置関係を説明するための図。
【
図16】ドアハンドル装置の組み立て作業の第1工程でのハンドルレバーの操作部とピンとの位置関係を説明するための図。
【
図17】ドアハンドル装置の組み立て作業の第2工程でのドアハンドル装置の
図1のA-A線に沿った断面図。
【
図18】ドアハンドル装置の組み立て作業の第2工程でのハンドルレバーの操作部とピンとの位置関係を説明するための図。
【
図19】ドアハンドル装置の組み立て作業の第2工程でのハンドルレバーの操作部とピンとの位置関係を説明するための図。
【
図20】ドアハンドル装置の組み立て作業の第3工程でのドアハンドル装置の
図1のA-A線に沿った断面図。
【
図21】ドアハンドル装置の組み立て作業の第3工程でのハンドルレバーの操作部とピンとの位置関係を説明するための図。
【
図22】ドアハンドル装置の組み立て作業の第3工程でのハンドルレバーの操作部とピンとの位置関係を説明するための図。
【
図23】本発明の第2実施形態に係るハンドルレバーの操作部とピンとを示す図である。
【
図24】本発明の第3実施形態に係るハンドルレバーの操作部とピンとを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0014】
[第1実施形態]
(ドアハンドル装置の構成)
図1は、本発明の実施形態に係るドアハンドル装置1の正面図である。本実施形態のドアハンドル装置1は、車両の右側のサイドドア用のドアハンドル装置である。
【0015】
図1に示すように、ドアハンドル装置1は、車両のドアパネル2に固定されて使用される。以下の説明において、ドアハンドル装置1が車両のドアパネル2に固定された状態における車両の前後方向、車両の幅方向、及び車両の上下方向をそれぞれ、単に「前後方向」、「車幅方向」、及び「上下方向」という場合がある。
【0016】
【0017】
図2を参照すると、ドアハンドル装置1は、車両のドアパネル2(
図1に示す)に固定されるベース10と、ベース10に対して回転可能に支持されるハンドルレバー20とを備える。また、ドアハンドル装置1は、ベース10に対するハンドルレバー20の前後方向の移動を規制するための規制ユニット30を備える。
【0018】
ベース10の一端側(前側)には、ハンドルレバー20の一端が挿通される取付孔11が設けられている。取付孔11は、ベース10を車幅方向に貫通するように設けられている。ベース10の他端側(後側)には、ハンドルレバー20の他端が挿通されるガイド孔12が設けられている。ガイド孔12は、ベース10を車幅方向に貫通するように設けられており、略直方体状の空間である。
【0019】
また、ベース10の車内側には、規制ユニット30を収容するための収容部13が設けられている。収容部13は、略直方体状の空間である。収容部13は、ガイド孔12の下側に隣接して設けられている。
【0020】
ガイド孔12及び収容部13の後方側には、図示しないキーシリンダが装着されるキーシリンダ装着部19が設けられている。キーシリンダ装着部19は、ベース10を車幅方向に貫通するように設けられており、略直方体状の空間である。上記キーシリンダは、ユーザが板状のキーを挿入すると回転可能になり、その回転操作により、ドアを車体に対して固定するラッチ機構(図示せず)のロック状態及びアンロック状態を切り替える。
【0021】
図3は、取付孔11の周辺を車外側から見た斜視図である。
【0022】
図3を参照すると、ベース10は、ハンドルレバー20(
図2に示す)を回転可能に支持する一対の軸支部14を備える。一対の軸支部14は、上下方向に互いに対向するように配置されている。一対の軸支部14は、取付孔11内に突出するように形成された円柱状である。一対の軸支部14は、同軸状に配置されている。本実施形態の軸支部14は、本発明に係る軸受部の一例である。
【0023】
図4は、ガイド孔12と収容部13との周辺を車内側から見た斜視図である。
【0024】
図4を参照すると、収容部13の上側は、収容部13とガイド孔12との間に配置された上壁15により画定されている。上壁15は、収容部13の上側を画定するとともに、ガイド孔12の下側を画定している。上壁15には、収容部13とガイド孔12とを連通する円形の連通穴16が設けられている。
【0025】
また、収容部13の下側は、上壁15と上下方向に間隔を開けて配置された下壁17によって画定されている。下壁17には、収容部13とベース10の外部とを上下方向に連通する長穴状のスリット18が設けられている。スリット18の車外側の端部は、下壁17内で終端しており、スリット18の車内側の端部は車内側に連通している。
【0026】
図2を再度参照すると、ハンドルレバー20は、レバー本体40と、レバー本体40の車外側表面を覆うハンドルカバー50とを備える。レバー本体40と、ハンドルカバー50とは、ネジ21により固定されている。
【0027】
図2及び
図5を参照すると、レバー本体40は、一端側(前後方向の前側)に設けられたアーム部41と、他端側(前後方向の後側)に設けられた操作部42とを備える。
【0028】
アーム部41は、レバー本体40から車内側に突出し、屈曲部を介して前側に延びている。つまり、アーム部41はL字状である。アーム部41の先端(前側の端部)には、ベース10の一対の軸支部14(
図3に示す)にそれぞれ軸着される一対の軸着部41a(
図5では、一方のみ示す)が設けられている。軸着部41aは、アーム部41の上下面にそれぞれ形成された略半長円形状に窪む凹溝からなる。軸着部41aは、その先端において前方に開口している。また、軸着部41aの内形は、ベース10の軸支部14の外形よりも僅かに大きく形成されている。
【0029】
操作部42は、直方体状である。また、操作部42は、車内側に向けて突出している。操作部42の外形は、ベース10のガイド孔12(
図2に示す)の内形よりも小さい。これにより、操作部42は、ベース10のガイド孔12に対して車幅方向に進退可能である。
【0030】
操作部42は、操作部42の下面を構成する平坦面である操作面43と、操作面43に設けられた窪んだ長穴状の係合溝44と、操作面43の車内側の端部に連なって設けられた傾斜面45とを有する。本実施形態の係合溝44は、本発明に係る係合部の一例である。
【0031】
係合溝44は、操作面43から上側に窪む凹溝である。係合溝44は、操作面43よりも後方に配置されている。係合溝44は、車幅方向に延びている。係合溝44の車外側の端部と車内側の端部とは、ともに操作部42内で終端している。係合溝44の前側は、第1係止面46により画定されている。また、係合溝44の車外側は第2係止面47により画定されている。係合溝44の車内側は第3係止面48により画定されている。第1係止面46は、ハンドルレバー20の回転中心である軸線Lを中心とする円弧形状となっている。
【0032】
傾斜面45は、操作部42の車内側の端縁に設けられ、操作面43の車内側の端部に連なって設けられている。傾斜面45は、車外側に向かって、下方に傾斜している平坦面である。言い換えれば、傾斜面45は、車内側に向かって、上方に傾斜している平坦面である。本実施形態の傾斜面45は、本発明に係る案内面の一例である。
【0033】
図6は、規制ユニット30の分解斜視図である。
図7は、ベース10に規制ユニット30を取り付けた状態の車内側から見た背面図である。
【0034】
図6を参照すると、規制ユニット30は、ピン60と、ピン60を保持するブラケット70と、スプリング80とを備える。規制ユニット30は、ピン60とスプリング80とがブラケット70に組み付けられて保持された状態で、ブラケット70がベース10に対してネジ31(
図2に示す)により固定されることで、ベース10に取り付けられる。
【0035】
図6及び
図7を参照すると、ピン60は、略円柱状のピン本体61と、ピン本体61から径方向外側に張り出したフランジ部62とを備える。本実施形態のピン60は、本発明に係る規制部材の一例である。
【0036】
ピン本体61は、一端部61aと、一端部61aと反対側の他端部61bとを備える。
図7に示すように、ピン60の一端部61aは、上壁15の連通穴16を通じてベース10のガイド孔12内に突出している。一方で、ピン60の他端部61bは、下壁17のスリット18を通じてベース10の外側から操作可能に露出している。
【0037】
ピン本体61の一端部61aには、テーパ面61cが設けられている。テーパ面61cは、一端部61aが先端に向かって先細りになるように形成されている。
【0038】
フランジ部62は、ピン本体61の径方向外側に張り出すように設けられた円環状である。フランジ部62は、ピン本体61の他端部61bよりも一端部61aに近い位置に設けられている。
【0039】
ブラケット70は、一対の支持板71A,71Bを備える。一対の支持板71A,71Bには、ピン本体61が挿通可能に構成された貫通孔72A,72Bがそれぞれ対向して設けられている。支持板71Aに設けられた貫通孔72Aは、円形に形成されている。支持板71Bに設けられた貫通孔72Bは、車幅方向に延びたスリット状である。貫通孔72Bの車内側の端部は、支持板71B内で終端している。一方で、貫通孔72Bの車外側の端部は、車外側に開口している。貫通孔72Aの内径は、フランジ部62の外径よりも小さく、ピン本体61の外径よりも僅かに大きい。貫通孔72Bの内径は、ピン本体61の外径よりも僅かに大きく、後述するスプリング80の外径よりも小さい。
【0040】
規制ユニット30が組み立てられた状態では、上側から下側に向かって、ピン本体61の一端部61a、支持板71A、フランジ部62、スプリング80の一端(上側の端部)、スプリング80の他端(下側の端部)、支持板71B、ピン本体61の他端部61bの順に並ぶ。
【0041】
スプリング80は、ピン本体61に外装され、ピン60のフランジ部62と、支持板71Bとの間に圧縮された状態で挟持される。スプリング80の付勢力によって、ピン本体61の一端部61aがベース10のガイド孔12に向けて付勢されている。本実施形態のスプリング80は、本発明の付勢部材の一例である。
【0042】
(ドアハンドル装置の動作)
ドアハンドル装置1は、ハンドルレバー20が車外側に開操作されると、ドアに設けられたラッチ機構(図示せず)を動作させ、ドアを開放させる。以下の説明において、ハンドルレバー20が開操作される前の状態を基準状態という場合があり、ハンドルレバー20が開操作された状態を操作状態という場合がある。
【0043】
(基準状態)
図8は、基準状態にあるドアハンドル装置1の
図1のA-A線に沿った断面図である。
【0044】
図8を参照すると、ドアパネル2には、第1開口部2aと、第1開口部2aから後方に間隔を開けて配置された第2開口部2bとが設けられている。第2開口部2bは、ベース10の収容部13(
図4に示す)及びキーシリンダ装着部19に対応する範囲に設けられている。ドアパネル2の第1開口部2aには、ハンドルレバー20のアーム部41が挿通されている。一方で、ドアパネル2の第2開口部2bには、ハンドルレバー20の操作部42が挿通されている。また、第2開口部2bは、キーシリンダ装着部19に装着された図示しないキーシリンダの一部を車外に露出させる。
【0045】
ベース10は、ドアパネル2の車内側に配置されている。また、ベース10は、ドアパネル2にネジ(図示せず)により固定されている。ベース10は、取付孔11がドアパネル2の第1開口部2aに連通し、ガイド孔12がドアパネル2の第2開口部2bに連通するように、配置されている。
【0046】
ハンドルレバー20は、ベース10に対して回転可能に支持されている。ハンドルレバー20のアーム部41は、ドアパネル2の第1開口部2aを介してベース10の取付孔11内に位置している。ハンドルレバー20の軸着部41aは、ベース10の軸支部14と係合している。これにより、ハンドルレバー20は、上下方向に延びる軸線L回りに回転可能にベース10に支持されている。一方で、ハンドルレバー20の操作部42は、ドアパネル2の第2開口部2bを介してベース10のガイド孔12内に位置している。
【0047】
ハンドルレバー20のハンドルカバー50は、操作部42が挿入される第2開口部2bの全体を覆うように配置されている。すなわち、ハンドルカバー50の後端部は、第2開口部2bから車外側に露出するキーシリンダを車外側から覆うように形成され、キーシリンダを車外側から視認不能とする。
【0048】
図9は、基準状態におけるハンドルレバー20の操作部42と規制ユニット30との位置関係を示す後方から見た側面図である。また、
図10は、基準状態におけるハンドルレバー20の操作部42と規制ユニット30との位置関係を示す下方から見た側面図である。
【0049】
図9及び
図10を参照すると、規制ユニット30のピン60と、操作部42の係合溝44とが係合している。基準状態では、ピン60は、係合溝44の車外側の端部に位置している。ピン60と、係合溝44の車外側を画定する第2係止面47は当接している。これにより、基準状態からハンドルレバー20が更に車内側に向けて移動しないようになっている。
【0050】
また、基準状態から操作部42が後方に移動しようとすると、ピン60と、係合溝44の前側を画定する第1係止面46とが当接する。このため、基準状態から操作部42が更に後方に向けて移動しないようになっている。すなわち、基準状態において、ピン60は、ハンドルレバー20の前側から後側への移動を規制している。
【0051】
係合溝44は、車幅方向に延びている。このため、ピン60は、係合溝44内を車幅方向に相対的に移動できる。これにより、ベース10の軸支部14回りのハンドルレバー20の回転に伴って、基準状態から、操作部42が車外側へ移動することが許容されている。
【0052】
(操作状態)
図8に示す基準状態から、ハンドルレバー20をベース10の軸支部14回りに回転させると(
図8の矢印参照)、ドアハンドル装置1は、
図11に示すような操作状態となる。ここで、
図11は、操作状態にあるドアハンドル装置1の
図1のA-A線に沿った断面図である。
【0053】
図12は、操作状態におけるハンドルレバー20の操作部42と規制ユニット30との位置関係を示す後方から見た側面図である。また、
図13は、操作状態におけるハンドルレバー20の操作部42と規制ユニット30との位置関係を示す下方から見た側面図である。
【0054】
図12及び
図13を参照すると、規制ユニット30のピン60と、操作部42の係合溝44とが係合している。また、ピン60は、係合溝44の車内側の端部に位置している。ピン60と、係合溝44の車内側を画定する第3係止面48とは当接している。これにより、操作状態からハンドルレバー20が更に車外側に向けて移動しないようになっている。
【0055】
また、操作状態から操作部42が、後方に移動しようとすると、ピン60と、係合溝44の前側を画定する第1係止面46とが当接する。このため、操作状態から操作部42が更に後方に向けて移動しないようになっている。すなわち、操作状態において、ピン60は、ハンドルレバー20の前側から後側への移動を規制している。
【0056】
係合溝44は、車幅方向に延びている。このため、ピン60は、係合溝44内を車幅方向に相対的に移動できる。これにより、ベース10の軸支部14回りのハンドルレバー20の回転に伴って、操作状態から操作部42が車内側へ移動することが許容されている。
【0057】
(ドアハンドル装置の組み立て)
以下、
図14から
図22を参照して、ドアハンドル装置1の組み立てについて説明する。
【0058】
まず、
図14に示すように、ハンドルレバー20のアーム部41を、ドアパネル2の第1開口部2aを通して、ドアパネル2に固定されたベース10の取付孔11に車外側から差し込む。その後、ハンドルレバー20の操作部42を、ドアパネル2の第2開口部2bを通して、ベース10のガイド孔12に車外側から挿入する。この状態では、
図15及び
図16に示すように、ハンドルレバー20の操作部42と、ピン60とは、係合していない。
【0059】
次に、
図14に示す状態から、
図17に示すように操作部42を車内側へ更に挿入する(
図17中の矢印参照)。操作部42のガイド孔12への挿入に伴って、ピン60は、
図18及び
図19に示すように、操作部42の操作面43に乗り上げる。このとき、ピン60は、操作部42の傾斜面45によって案内されて、スプリング80の付勢力に抗してガイド孔12(
図7に示す)への突出量が減少するように下方に移動する。
【0060】
その後、
図17に示す状態から、
図20に示すようにハンドルレバー20をベース10の他端側(後側)から一端側(前側)に移動させる(
図20中の矢印参照)。ベース10の他端側から一端側へのハンドルレバー20の移動に伴って、操作部42は、ピン60に対して相対的に前側に移動する。このとき、
図21及び
図22に示すように、ピン60は、操作面43への乗り上げが解除されて、スプリング80の付勢力によってガイド孔12内に向けて上方へ突出し、係合溝44と係合する。ピン60と係合溝44とが係合した状態では、係合溝44の前側を画定する第1係止面46によって、ベース10の一端側から他端側へのハンドルレバー20の移動が規制される。一方で、ハンドルレバー20の軸着部41回りの回転は許容されている。
【0061】
また、この状態では、ピン60は、スプリング80の付勢力によって、操作部42に向けて付勢されている。これにより、
図21及び
図22に示す状態におけるピン60のガイド孔への突出量は、
図18及び
図19に示す状態におけるピン60のガイド孔12への突出量よりも大きい。
【0062】
また、ベース10の他端側から一端側へのハンドルレバー20の移動に伴って、
図20に示すように、ハンドルレバー20の軸着部41aがベース10の軸支部14と係合する。
【0063】
ドアハンドル装置1を分解する場合には、ピン60の他端部61bをベース10の外側から操作することで、スプリング80の付勢力に抗してピン60を下側に移動させる。この操作により、ピン60のガイド孔12内への突出量が少なくなる。これにより、操作部42の係合溝44とピン60との係合が解除され、ベース10の一端側から他端側へのハンドルレバー20の移動が許容される。この状態で、ハンドルレバー20をベース10の一端側から他端側へ移動させて、その後、操作部42がガイド孔12から離脱するようにハンドルレバー20を引き抜くことで、ハンドルレバー20をベース10から取り外すことができる。
【0064】
本実施形態のドアハンドル装置1は、以下の特徴を有する。
【0065】
ハンドルレバー20の軸着部41aをベース10の軸支部14に取り付けた後、ハンドルレバー20の操作部42をベース10のガイド孔12に挿入することで、ハンドルレバー20は、ベース10に取り付けられる。本実施形態によれば、操作部42のガイド孔12への挿入に伴って、ピン60がガイド孔12からの突出量が少なくなるように下方に退避する。このため、操作部42のガイド孔12への挿入をピン60が阻害することがない。これにより、ハンドルレバーのベースへの組付けを容易にできる。
【0066】
一方で、ハンドルレバー20がベース10に組み付けられた状態においてピン60が操作部42の係合溝44と係合することで、ハンドルレバー20がベース10の一端側から他端側へ移動することが規制される。その結果、ハンドルレバー20のベース10からの抜け出しが規制される。
【0067】
したがって、本実施形態のドアハンドル装置1によれば、ハンドルレバー20のベース10への組み付け性を確保しつつ、ハンドルレバー20のベース10からの抜け出しを抑制できる。
【0068】
操作部42に傾斜面45が設けられている。このため、操作部42のガイド孔12への挿入に伴って、ピン60が傾斜面45に案内されて、操作面43に乗り上げる。つまり、操作部42をガイド孔12に挿入することで、ピン60を下方に移動するようにユーザが操作することなく、ピン60は自動的に操作面43に乗り上げる。これにより、ハンドルレバー20のベース10への組み付けをより容易にできる。
【0069】
ピン60の他端部61bは、ベース10の外部に操作可能に露出している。このため、ハンドルレバー20のベース10からの取り外しを容易にできる。
【0070】
スプリング80によって、ピン60が操作部42に向けて付勢されている。このため、ピン60と操作部42の係合溝44との係合が意図せず解除されることを抑制できる。
【0071】
ピン60とスプリング80とが保持されたブラケット70をベース10に固定することで、ピン60とスプリング80とをベース10に対して容易に固定できる。
【0072】
ハンドルレバーの後方側にハンドルレバーの移動を規制するためのエンドカバーが設けられた従来のドアハンドル装置では、ドアハンドル装置の車外側からの外観において、ハンドルレバーとエンドカバーとの継ぎ目が存在し、ドアハンドル装置のデザイン性が損なわれる。
【0073】
これに対して、本実施形態では、ドアパネル2の車内側に配置された規制ユニット30により、ハンドルレバー20の移動が規制されるので、上記従来のエンドカバーを採用する必要がない。これにより、ハンドルレバー20は、ドアパネル2の第1開口部2aと第2開口部2bとの全体を覆うように設けられている。このため、ドアハンドル装置1を車外側からみたときに継ぎ目が存在せず、ドアハンドル装置1の外観を向上できる。
【0074】
[第2実施形態]
第2実施形態のドアハンドル装置は、ハンドルレバー20の操作部142の形状を除いて、第1実施形態のドアハンドル装置1と同様の構成を有しており、
図1-4,6-8,11,14,17,20を援用する。第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成には、同一の参照符号を付して示し、その詳細な説明を省略する。
【0075】
図23は、本実施形態のハンドルレバー20の操作部142とピン60とを示す図である。
図23では、ハンドルレバー20(
図2に示す)をベース10(
図2に示す)に組み付けるときのピン60の操作部142に対する相対的な位置を二点鎖線で示す。
【0076】
図23を参照すると、本実施形態の操作部142は、直方体状である。また、操作部142は、車内側に向けて突出している。操作部142の外形は、ベース10のガイド孔12(
図2に示す)の内形よりも小さい。これにより、操作部142は、ベース10のガイド孔12に対して車幅方向に進退可能である。
【0077】
操作部142は、操作部142の下面を構成する平坦面である操作面143と、操作面143に連なって設けられ、操作部142の後端面を構成する平坦面である係合面144と、操作面143の車内側の端部に連なって設けられた傾斜面145とを有する。本実施形態の係合面144は、本発明に係る係合部の一例である。
【0078】
係合面144は、ハンドルレバー20の回転中心である軸線L(
図8に示す)を中心とする円弧形状となっている。
【0079】
傾斜面145は、操作部142の車内側の端縁に設けられ、操作面143の車内側の端部に連なって設けられている。傾斜面145は、車外側に向かって、下方に傾斜している平坦面である。言い換えれば、傾斜面145は、車内側に向かって、上方に傾斜している平坦面である。本実施形態の傾斜面145は、本発明に係る案内面の一例である。
【0080】
本実施形態では、
図23において二点鎖線で示すように、操作部142のガイド孔12(
図2に示す)への挿入に伴って、ピン60は、操作部142の操作面143に乗り上げる。このとき、ピン60は、操作部142の傾斜面145によって案内されて、スプリング80(
図6に示す)の付勢力に抗してガイド孔12(
図2に示す)への突出量が減少するように下方に移動する。
【0081】
その後、ハンドルレバー20(
図2に示す)をベース10(
図2に示す)の他端側から一端側へ移動させると、操作部142がピン60に対して相対的に前側に移動する。このとき、ピン60は、操作面143への乗り上げが解除されて、スプリング80の付勢力によってガイド孔12内に向けて上方へ突出し、操作部142の係合面144と係合する。ピン60と係合面144とが係合した状態では、係合面144によってベース10の一端側から他端側へのハンドルレバー20の移動が規制される。一方で、ハンドルレバー20の軸着部41a(
図8に示す)回りの回転は許容されている。
【0082】
本実施形態では、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0083】
[第3実施形態]
第3実施形態のドアハンドル装置は、ハンドルレバー20の操作部242の形状を除いて、第1実施形態のドアハンドル装置1と同様の構成を有しており、
図1-4,6-8,11,14,17,20を援用する。第3実施形態において、第1実施形態と同様の構成には、同一の参照符号を付して示し、その詳細な説明を省略する。
【0084】
図24は、本実施形態のハンドルレバー20の操作部242とピン60とを示す図である。
図24では、ハンドルレバー20(
図2に示す)をベース10(
図2に示す)に組み付けるときのピン60の操作部242に対する相対的な位置を二点鎖線で示す。
【0085】
図24を参照すると、本実施形態の操作部242は、直方体状である。また、操作部242は、車内側に向けて突出している。操作部242の外形は、ベース10のガイド孔12(
図2に示す)の内形よりも小さい。これにより、操作部242は、ベース10のガイド孔12に対して車幅方向に進退可能である。
【0086】
操作部242は、操作部242の下面を構成する平坦面である操作面243と、操作面243に連なって設けられ、操作部242の後端面を構成する平坦面である係合面244と、操作面243の前側の端部に連なって設けられた傾斜面245とを有する。本実施形態の係合面244は、本発明に係る係合部の一例である。
【0087】
係合面244は、ハンドルレバー20の回転中心である軸線L(
図8に示す)を中心とする円弧形状となっている。
【0088】
傾斜面245は、操作部242の前側の端縁に設けられ、操作面243の前側の端部に連なって設けられている。傾斜面245は、後側に向かって、下方に傾斜している平坦面である。言い換えれば、傾斜面245は、前側に向かって、上方に傾斜している平坦面である。本実施形態の傾斜面245は、本発明に係る案内面の一例である。
【0089】
本実施形態では、
図24において二点鎖線で示すように、操作部242がガイド孔12(
図2に示す)へ挿入された状態において、ハンドルレバー20(
図2に示す)をベース10(
図2に示す)の他端側から一端側へ移動させると、操作部242がピン60に対して相対的に前側に移動する。これにより、ピン60は、操作部242の操作面243に乗り上げる。このとき、ピン60は、操作部242の傾斜面245によって案内されて、スプリング80(
図6に示す)の付勢力に抗してガイド孔12への突出量が減少するように下方に移動する。
【0090】
その後、ハンドルレバー20(
図2に示す)をベース10(
図2に示す)の他端側から一端側へ移動させると、操作部242がピン60に対して相対的に前側に移動する。このとき、ピン60は、操作面243への乗り上げが解除されて、スプリング80の付勢力によってガイド孔12内に向けて上方へ突出し、操作部242の係合面244と係合する。ピン60と係合面244とが係合した状態では、係合面244によってベース10の一端側から他端側へのハンドルレバー20の移動が規制される。一方で、ハンドルレバー20の軸着部41a(
図8に示す)回りの回転は許容されている。
【0091】
本実施形態では、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0092】
本実施形態では、本発明の係合部の一例として操作部の後端面を構成する係合面を用いたが、これに限定されず、第1実施形態のような操作面から上側に窪む凹溝である係合溝を用いてもよい。
【0093】
以上より、本発明の具体的な実施形態について説明したが、本発明は上記第1実施形態から第3実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。
【0094】
例えば、第1実施形態では、操作部42には、ピン60の操作面43への乗り上げを案内する案内面の一例としての傾斜面45が設けられていたが、これに限定されない。つまり、ピン60の操作面43への乗り上げを案内する案内面は、ピン60に設けられてもよいし、操作部42とピン60との両方に設けられてもよい。また、例えば、案内面は、傾斜面45のような平坦面でなくてもよく、曲面であってもよい。
【符号の説明】
【0095】
1 ドアハンドル装置
2 ドアパネル
2a 第1開口部
2b 第2開口部
10 ベース
11 取付孔
12 ガイド孔
13 収容部
14 軸支部(軸受部)
15 上壁
16 連通穴
17 下壁
18 スリット
19 キーシリンダ装着部
20 ハンドルレバー
21 ネジ
30 規制ユニット
31 ネジ
40 レバー本体
41 アーム部
41a 軸着部
42 操作部
43 操作面
44 係合溝(係合部)
45 傾斜面(案内面)
46 第1係止面
47 第2係止面
48 第3係止面
50 ハンドルカバー
60 ピン
61 ピン本体
61a 一端部
61b 他端部
61c テーパ面(案内面)
62 フランジ部
70 ブラケット
71A,71B 支持板
72A,72B 貫通孔
80 スプリング(付勢部材)
142 操作部
143 操作面
144 係合面(係合部)
145 傾斜面(案内面)
242 操作部
243 操作面
244 係合面(係合部)
245 傾斜面(案内面)