(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】車両走行制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 10/00 20060101AFI20240604BHJP
B60W 10/04 20060101ALI20240604BHJP
B60W 10/184 20120101ALI20240604BHJP
B60W 10/20 20060101ALI20240604BHJP
B60W 40/076 20120101ALI20240604BHJP
B62D 7/15 20060101ALI20240604BHJP
B62D 6/00 20060101ALI20240604BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B60W10/00 148
B60W10/04
B60W10/184
B60W10/20
B60W40/076
B62D7/15 A
B62D6/00
B62D5/04
(21)【出願番号】P 2020200246
(22)【出願日】2020-12-02
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】立入 泉樹
(72)【発明者】
【氏名】竹▲崎▼ 朗
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄大
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/203574(WO,A1)
【文献】特開2016-2991(JP,A)
【文献】特開平4-103467(JP,A)
【文献】特開2016-107778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
B62D 7/00- 7/22
B62D 5/00- 5/32
B62D 6/00- 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三輪以上のタイヤ(91-94)が独立して転舵可能な独立転舵車両(100)において車両の走行を制御する車両走行制御装置であって、
車両の重心を計測する重心計測装置(30)を備えた車両に搭載され、
車両を前後左右に自由に並行移動させる進行方向制御部(15)と、
前記進行方向制御部からの指示に応じて、各タイヤを個別に転舵させる転舵角制御部(17)と、
前記進行方向制御部からの指示に応じて、各タイヤを個別に移動方向に制駆動する制駆動力制御部(18)と、を備え、
前記進行方向制御部は、車両の進行方向、及び、車両特性記憶装置(20)から取得した車両特性
及び前記重心計測装置から取得した車両の重心に基づいて、各タイヤを、車両の進行方向前方に位置する疑似前輪部と、車両の進行方向後方に位置する疑似後輪部とに分類し、
加速時、前記疑似前輪部と判断されたタイヤに与える駆動力を前記疑似後輪部と判断されたタイヤに与える駆動力よりも大きく設定し、
制動時、前記疑似後輪部と判断されたタイヤに与える制動力を前記疑似前輪部と判断されたタイヤに与える制動力よりも大きく設定する車両走行制御装置。
【請求項2】
三輪以上のタイヤ(91-94)が独立して転舵可能な独立転舵車両(100)において車両の走行を制御する車両走行制御装置であって、
車両の進行方向の加速度を計測する一つ以上の加速度計測装置(40)を備えた車両に搭載され、
車両を前後左右に自由に並行移動させる進行方向制御部(15)と、
前記進行方向制御部からの指示に応じて、各タイヤを個別に転舵させる転舵角制御部(17)と、
前記進行方向制御部からの指示に応じて、各タイヤを個別に移動方向に制駆動する制駆動力制御部(18)と、を備え、
前記進行方向制御部は、車両の進行方向、及び、車両特性記憶装置(20)から取得した車両特性に基づいて、各タイヤを、車両の進行方向前方に位置する疑似前輪部と、車両の進行方向後方に位置する疑似後輪部とに分類し、
加速時、前記疑似前輪部と判断されたタイヤに与える駆動力を前記疑似後輪部と判断されたタイヤに与える駆動力よりも大きく設定し、
制動時、前記疑似後輪部と判断されたタイヤに与える制動力を前記疑似前輪部と判断されたタイヤに与える制動力よりも大きく設定
し、
車両の進行方向、及び、前記加速度計測装置から取得した加速度に応じて、前記疑似前輪部及び前記疑似後輪部と判断された各タイヤに与える駆動力及び制動力を調整する車両走行制御装置。
【請求項3】
三輪以上のタイヤ(91-94)が独立して転舵可能な独立転舵車両(100)において車両の走行を制御する車両走行制御装置であって、
車両中心線に対する進行方向の車体角度、又は、車両のロールもしくはピッチ角度を計測する一つ以上の車体角度計測装置(50)を備えた車両に搭載され、
車両を前後左右に自由に並行移動させる進行方向制御部(15)と、
前記進行方向制御部からの指示に応じて、各タイヤを個別に転舵させる転舵角制御部(17)と、
前記進行方向制御部からの指示に応じて、各タイヤを個別に移動方向に制駆動する制駆動力制御部(18)と、を備え、
前記進行方向制御部は、車両の進行方向、及び、車両特性記憶装置(20)から取得した車両特性に基づいて、各タイヤを、車両の進行方向前方に位置する疑似前輪部と、車両の進行方向後方に位置する疑似後輪部とに分類し、
加速時、前記疑似前輪部と判断されたタイヤに与える駆動力を前記疑似後輪部と判断されたタイヤに与える駆動力よりも大きく設定し、
制動時、前記疑似後輪部と判断されたタイヤに与える制動力を前記疑似前輪部と判断されたタイヤに与える制動力よりも大きく設定し、
車両の進行方向、及び、前記車体角度計測装置から取得した車体角度、又は、ロールもしくはピッチ角度に応じて、前記疑似前輪部及び前記疑似後輪部と判断された各タイヤに与える駆動力及び制動力を調整する車両走行制御装置。
【請求項4】
三輪以上のタイヤ(91-94)が独立して転舵可能な独立転舵車両(100)において車両の走行を制御する車両走行制御装置であって、
道路勾配を計測する道路勾配計測装置(60)を備えた車両に搭載され、
車両を前後左右に自由に並行移動させる進行方向制御部(15)と、
前記進行方向制御部からの指示に応じて、各タイヤを個別に転舵させる転舵角制御部(17)と、
前記進行方向制御部からの指示に応じて、各タイヤを個別に移動方向に制駆動する制駆動力制御部(18)と、を備え、
前記進行方向制御部は、車両の進行方向、及び、車両特性記憶装置(20)から取得した車両特性に基づいて、各タイヤを、車両の進行方向前方に位置する疑似前輪部と、車両の進行方向後方に位置する疑似後輪部とに分類し、
加速時、前記疑似前輪部と判断されたタイヤに与える駆動力を前記疑似後輪部と判断されたタイヤに与える駆動力よりも大きく設定し、
制動時、前記疑似後輪部と判断されたタイヤに与える制動力を前記疑似前輪部と判断されたタイヤに与える制動力よりも大きく設定し、
前記道路勾配計測装置から取得した道路勾配に応じて、前記疑似前輪部及び前記疑似後輪部と判断された各タイヤに与える駆動力及び制動力を調整する車両走行制御装置。
【請求項5】
前記進行方向制御部は、
加速時、前記疑似前輪部と判断されたタイヤに与える駆動力に、進行方向に応じた0より大きく1より小さい駆動力調整係数を乗じた駆動力を、前記疑似後輪部と判断されたタイヤに与え、
制動時、前記疑似後輪部と判断されたタイヤに与える制動力に、進行方向に応じた0より大きく1より小さい制動力調整係数を乗じた制動力を、前記疑似前輪部と判断されたタイヤに与える請求項1
~4のいずれか一項に記載の車両走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各車輪が独立して転舵可能な独立転舵車両において、各タイヤを90°又はそれ以外の角度で転舵させて、横移動や斜め移動を可能にした独立転舵車両が知られている。通常の車両では不可能な横移動や斜め移動が可能となることで、縦列駐車を容易に行うことができたり、狭路での駐車や移動ができるようになったりする。
【0003】
例えば特許文献1には、横移動や斜め移動が可能な独立転舵車両について、転舵装置の転舵の状況に応じて出力の制御を行う制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的な車両ではホイールベースに対しトレッド幅が短い。そのため横移動時には、進行方向における車輪の前後間隔であるトレッド幅が左右間隔であるホイールベースよりも短くなる。そこで、横移動時に直進時と同じように制駆動を行うと、リフトアップする、すなわち車体が浮き上がる可能性が高まる。また走行路に勾配がある場合、その影響は大きくなる。発明者らは、これらの問題を四輪車両の走行挙動シミュレーションから見出した。しかし特許文献1には、横移動時のリフトアップに関して何ら言及されていない。
【0006】
本発明は上述の点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、独立転舵車両の進行方向に応じて加速時及び制動時のリフトアップを適切に防ぐ車両走行制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による車両走行制御装置は、三輪以上のタイヤ(91-94)が独立して転舵可能な独立転舵車両(100)において車両の走行を制御する。第1の態様の車両走行制御装置は、車両の重心を計測する重心計測装置(30)を備えた車両に搭載される。第2の態様の車両走行制御装置は、車両の進行方向の加速度を計測する一つ以上の加速度計測装置(40)を備えた車両に搭載される。第3の態様の車両走行制御装置は、車両中心線に対する進行方向の車体角度、又は、車両のロールもしくはピッチ角度を計測する一つ以上の車体角度計測装置(50)を備えた車両に搭載される。第4の態様の車両走行制御装置は、道路勾配を計測する道路勾配計測装置(60)を備えた車両に搭載される。各態様の車両走行制御装置は、進行方向制御部(15)と、転舵角制御部(17)と、制駆動力制御部(18)と、を備える。
【0008】
進行方向制御部は、車両を前後左右に自由に並行移動させる。転舵角制御部は、進行方向制御部からの指示に応じて、各タイヤを個別に転舵させる。制駆動力制御部は、進行方向制御部からの指示に応じて、各タイヤを個別に移動方向に制駆動する。
【0009】
進行方向制御部は、車両の進行方向、及び、車両特性記憶装置(20)から取得した車両特性に基づいて、各タイヤを、車両の進行方向前方に位置する疑似前輪部と、車両の進行方向後方に位置する疑似後輪部とに分類する。第1の態様では、進行方向制御部は、さらに重心計測装置から取得した車両の重心に基づいて、各タイヤを疑似前輪部と疑似後輪部とに分類する。
【0010】
進行方向制御部は、加速時、疑似前輪部と判断されたタイヤに与える駆動力を疑似後輪部と判断されたタイヤに与える駆動力よりも大きく設定する。また、制動時、疑似後輪部と判断されたタイヤに与える制動力を疑似前輪部と判断されたタイヤに与える制動力よりも大きく設定する。第2、第3、第4の態様では、それぞれ進行方向制御部は、加速度計測装置、車体角度計測装置、道路勾配計測装置から取得した情報に応じて、疑似前輪部及び疑似後輪部と判断された各タイヤに与える駆動力及び制動力を調整する。
【0011】
加速時、疑似後輪部の駆動トルクは疑似前輪部のリフトアップの要因となるが、疑似前輪部の駆動トルクはリフトアップに直接影響しないため、疑似前輪部の駆動力を疑似後輪部の駆動力よりも大きく設定することで、リフトアップを防ぐことができる。また、制動時、疑似前輪部の制動トルクは疑似後輪部のリフトアップの要因となるが、疑似後輪部の制動トルクはリフトアップに直接影響しないため、疑似後輪部の制動力を疑似前輪部の制動力よりも大きく設定することで、リフトアップを防ぐことができる。よって、本発明の車両走行制御装置は、独立転舵車両の進行方向に応じて加速時及び制動時のリフトアップを適切に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態による車両走行制御装置のブロック図。
【
図2】(a)ホイールベース及びトレッド幅を示す図、(b)横移動中の制駆動力によるリフトアップを説明する図。
【
図3】加速時の荷重移動とリフトアップ条件を説明する図。
【
図4】制動時の荷重移動とリフトアップ条件を説明する図。
【
図5】斜め移動時の疑似前輪部と疑似後輪部との分類を説明する図。
【
図7】加速時における疑似前輪部及び疑似後輪部の駆動力の関係を示す図。
【
図8】制動時における疑似前輪部及び疑似後輪部の制動力の関係を示す図。
【
図10】車両のロール又はピッチ角度を説明する図。
【
図11】道路勾配がある場合における加速時の荷重移動とリフトアップ条件を説明する図。
【
図12】本実施形態による制駆動力制御のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態による車両走行制御装置を図面に基づいて説明する。本実施形態の車両走行制御装置は、各タイヤが独立して転舵可能な独立転舵車両において車両の走行を制御する。
【0014】
従来、一般的な車両は左右対のタイヤがリンクを介して機械的に結合されており、ステアリングの操舵によってタイヤが転舵する。今後、ステアリングと左右対タイヤのリンクとが機械的に分離したステアバイワイヤや、各タイヤが独立して転舵可能な独立転舵車両に発展していくと考えられる。ステアバイワイヤでは、左右対のタイヤが連動して同相にしか動かないのに対し、独立転舵車両では各タイヤが自由に転舵可能である。
【0015】
例えば四輪の独立転舵車両では、四輪を全て90°転舵させることで横移動が可能になる。また、四輪を全て90°以外の角度(例えば45°)転舵させることで斜め移動が可能になる。これにより、狭い駐車スペースでも縦列駐車等を容易に行うことができる。
【0016】
(一実施形態)
図1を参照し、一実施形態による車両走行制御装置10の構成を説明する。
図1に示す四輪の独立転舵車両100は、四つのタイヤ91-94が全て独立に転舵可能である。各タイヤ91-94は、制駆動力を発生させるインホイールモータ(図中「IWM」)と、ブレーキ機能とが備わっている。前列左タイヤ91には「FL」、前列右タイヤ92には「FR」、後列左タイヤ93には「RL」、後列右タイヤ94には「RR」と記す。
【0017】
車両走行制御装置10は、進行方向制御部15、転舵角制御部17及び制駆動力制御部18を備える。進行方向制御部15は、車両100を前後左右に自由に並行移動させる。転舵角制御部17は、進行方向制御部15からの指示に応じて、各タイヤ91-94を個別に転舵させる。制駆動力制御部18は、進行方向制御部15からの指示に応じて、各タイヤ91-94を個別に移動方向に制駆動する。
【0018】
例えば横移動時には進行方向制御部15より、必要な転舵角及び制駆動力がそれぞれ転舵角制御部17及び制駆動力制御部18に指示される。転舵角制御部17は、指示された転舵角に従って、各タイヤ91-94に適切な転舵角を与える。制駆動力制御部18は、指示された制駆動力に従って、各タイヤ91-94に適切な制駆動力を与える。
【0019】
進行方向制御部15は、車両100が備える各種装置から車両走行制御に必要な情報を取得する。車両特性記憶装置20は、ホイールベース及びトレッド幅等の車両特性を記憶している。重心計測装置30は、車両の重心を計測する。進行方向制御部15は、車両の進行方向、重心、ホイールベース及びトレッド幅の車両特性に基づいて、各タイヤ91-94を、後述の「疑似前輪部」と「疑似後輪部」とに分類する。
【0020】
加速度計測装置40は、車両の進行方向の加速度を計測する。車体角度計測装置50は、車両中心線に対する進行方向の車体角度、又は、車両のロールもしくはピッチ角度を計測する。道路勾配計測装置60は、道路勾配を計測する。進行方向制御部15は、各装置から取得した加速度、車体角度、道路勾配等に応じて、疑似前輪部及び疑似後輪部と判断された各タイヤに与える駆動力及び制動力を調整する。その詳細については後述する。
【0021】
次に
図2を参照し、車両100の横移動時における課題について説明する。転舵角は、反時計回りを正として表す。横移動するとき、進行方向制御部15は、前後列の左タイヤ91、93を90°転舵させ、前後列の右タイヤ92、94を-90°転舵させる。このように各タイヤは±90°の範囲で転舵可能である。
【0022】
ここで、斜め移動の場合も含め、転舵角の表示について注記する。進行方向指示値に対し±90°の範囲で表される転舵角は単にタイヤの向きを表し、転舵方向を規定するものではない。例えば0°から反時計回りに45°に至る場合と、時計回りに-90°を超えて-135°に至る場合とでは転舵過程は異なるが、転舵後のタイヤの向きとしては同じになるため、転舵角は同じ45°として表示される。
【0023】
図2(a)に示すように、一般的な車両ではホイールベースに対しトレッド幅が短い。そのため、
図2(b)に示すように、横移動時に駆動力によって加速、又は、制動力によって減速したとき、リフトアップする、すなわち車体が浮き上がる可能性が高まる。以下、停車状態からの発進時、及び走行中の車速上昇時を含み、「加速時」と記す。また、走行中の車速低下時、及び、停車する時を含み「制動時」と記す。
【0024】
本明細書では、車両の進行方向前方に位置するタイヤを「疑似前輪部」と定義し、車両の進行方向後方に位置するタイヤを「疑似後輪部」と定義する。
図2(b)に示すように車両正面から視て左方向に横移動する場合、FRタイヤ92及びRRタイヤ94が疑似前輪部となり、FLタイヤ91及びRLタイヤ93が疑似後輪部となる。逆に車両正面から視て右方向に横移動する場合、FLタイヤ91及びRLタイヤ93が疑似前輪部となり、FRタイヤ92及びRRタイヤ94が疑似後輪部となる。
【0025】
横移動中に加速すると、疑似前輪部をリフトアップさせるようにモーメントが加わる。また、横移動時に制動すると、疑似後輪部をリフトアップさせるようにモーメントが加わる。これについて、
図3、
図4を参照して説明する。
図3、
図4に共通に、Lは疑似前輪部と疑似後輪部との距離、hは重心高さ、mは車両重量、αは加速度、mα(=m×α)は慣性力、rはタイヤ半径を表す。加速度αは加速度計測装置40から取得される。
【0026】
図3に、横移動中の加速時に作用する力を示す。Ftは疑似後輪部の駆動力、Wfは疑似前輪部の重量を表す。このとき[1]加速時慣性による荷重移動ΔWa、及び、[2]疑似後輪部の駆動反力による荷重移動ΔWt、の二種類の荷重移動が発生する。加速時慣性による荷重移動ΔWaは、重心に働く慣性力のモーメントより式(1)で表される。
ΔWa×L=mαh
ΔWa=mαh/L ・・・(1)
【0027】
疑似後輪部の駆動反力による荷重移動ΔWtは、疑似後輪部から出力される駆動トルクτt(=Ft×r)により式(2)で表される。
ΔWt×L=Ft×r
ΔWt=Ft×r/L=τt/L ・・・(2)
【0028】
「ΔWa+ΔWt>Wf」のとき、疑似前輪部がリフトアップする。ここで、疑似前輪部の駆動トルクは、式(2)と同じ理屈で疑似後輪部を浮き上がらせる働きをするが、リフトアップには直接影響しない。
【0029】
図4に、横移動中の制動時に作用する力を示す。Fcは疑似前輪部の制動力、Wrは疑似後輪部の重量を表す。このとき[1]制動時慣性による荷重移動ΔWc、及び、[2]疑似前輪部の制動反力による荷重移動ΔWb、の二種類の荷重移動が発生する。制動時慣性による荷重移動ΔWcは、重心に働く慣性力のモーメントより式(3)で表される。
ΔWc×L=mαh
ΔWc=mαh/L ・・・(3)
【0030】
疑似前輪部の制動反力による荷重移動ΔWbは、疑似前輪部から出力される制動トルクτc(=Fc×r)により式(4)で表される。
ΔWb×L=Fc×r
ΔWb=Fc×r/L=τc/L ・・・(4)
【0031】
「ΔWc+ΔWb>Wr」のとき、疑似後輪部がリフトアップする。ここで、疑似後輪部の制動トルクは疑似前輪部を浮き上がらせる働きをするが、リフトアップには直接影響しない。
【0032】
以上より、横移動中の加速時及び制動時にタイヤがリフトアップする条件が示される。したがって、加速時には疑似後輪部の駆動を控え、主に疑似前輪部を駆動することでリフトアップを防ぐことができる。また、制動時には疑似前輪部の制動を控え、主に疑似後輪部を制動することでリフトアップを防ぐことができる。
【0033】
つまり、進行方向制御部15は、加速時、疑似前輪部と判断されたタイヤに与える駆動力を疑似後輪部と判断されたタイヤに与える駆動力よりも大きく設定する。また、制動時、疑似後輪部と判断されたタイヤに与える制動力を疑似前輪部と判断されたタイヤに与える制動力よりも大きく設定する。このとき進行方向制御部15は、疑似前輪部の二つのタイヤ、又は、疑似後輪部の二つのタイヤに、それぞれ異なる制駆動力を与えてもよい。
【0034】
次に
図5、
図6を参照し、斜め移動の場合の疑似前輪部と疑似後輪部との分類について説明する。各タイヤが90°転舵される横移動の場合には疑似前輪部と疑似後輪部とが単純に分類されるのに対し、90°以外の角度で転舵される斜め移動の場合には分類の基準を決める必要がある。
図5~
図9の説明では、各タイヤについて「91-94」の符号を用いず、「FL、FR、RL、RR」の記号のみで表す。また、図中の下付文字を明細書中では通常文字で記載する。
【0035】
図5に示すように、進行方向に対する車両の重心と各タイヤの中心との位置関係に注目する。重心を通り進行方向と直交する法線を引き、この進行方向法線より前方に位置するタイヤを疑似前輪部とし、進行方向法線より後方に位置するタイヤを疑似後輪部とする。進行方向制御部15は、車両の進行方向、重心計測装置30から取得した重心、並びに、車両特性記憶装置20から取得したホイールベース及びトレッド幅の車両特性に基づいて、各タイヤを疑似前輪部と疑似後輪部とに分類する。
【0036】
また、重心を通り進行方向に引いた線と車両中心線とのなす角度を車体角度θとする。車体角度θは、例えば車両中心線から反時計回りに正、時計回りに負の値で定義される。進行方向制御部15は、車体角度計測装置50が計測した車体角度θを取得し、車体角度の絶対値|θ|を閾値θthと比較する。車体角度の絶対値|θ|が閾値θth以下の場合、直進時と同様の制御でもよい。一方、車体角度の絶対値|θ|が閾値θthより大きい場合、進行方向制御部15は、横移動時と同様に、加速時には主に疑似前輪部を駆動し、制動時には主に疑似後輪部を制動することで、リフトアップを防ぐことができる。
【0037】
重心計測装置30は、予め車両特性から水平面方向の重心位置を導出してもよい。或いは
図6に示すように、重心計測装置30は、各タイヤの輪荷重WFR、WFL、WRR、WRLに基づき、前後方向の重心位置Lf、Lr、及び、車幅方向の重心位置Tl、Trを算出して重心を推定してもよい。各タイヤの輪荷重はセンサで検出されてもよく、サスペンションのストロークセンサとばね定数から算出されてもよい。
【0038】
輪荷重WFR、WFL、WRR、WRLと重心位置Lf、Lr、Tl、Trとの関係は、式(5)~(8)で表される。
(WFR+WFL)Lf=(WRR+WRL)Lr ・・・(5)
Lf+Lr=L ・・・(6)
(WFR+WRR)Tr=(WFL+WRL)Tl ・・・(7)
Tr+Tl=T ・・・(8)
【0039】
次に
図7、
図8を参照し、横移動又は斜め移動中の加速時及び制動時における疑似前輪部及び疑似後輪部の制駆動力の関係について説明する。駆動力の記号FtXX、制動力の記号FcXX、駆動力調整係数の記号GtXX、及び、制動力調整係数の記号GcXXにおける「XX」は、FL、FR、RL、RRのいずれかを示す。駆動力調整係数GtXX及び制動力調整係数GcXXは、進行方向に応じて0より大きく1より小さい値に設定されている。「XX」の部分を図中では下付文字で記載し、明細書中では通常文字で記載する。
【0040】
図7に示す加速時において、二つの疑似後輪部の駆動力FtFR、FtRRは等しく設定される。疑似後輪部の駆動力FtFR、FtRRは、疑似前輪部の駆動力FtFL、FtRLにそれぞれ駆動力調整係数GtFL、GtRLを乗じた値に設定される。リフトアップの防止を優先するとき、駆動力調整係数GtFL、GtRLは0に近い値に設定される。加速性能を向上させたいとき、駆動力調整係数GtFL、GtRLを大きくする程、疑似後輪部が出力する駆動トルクは大きくなる。
【0041】
図8に示す制動時において、二つの疑似前輪部の制動力FcFL、FcRLは等しく設定される。疑似前輪部の制動力FcFL、FcRLは、疑似後輪部の制動力FcFR、FcRRにそれぞれ制動力調整係数GcFR、GcRRを乗じた値に設定される。リフトアップの防止を優先するとき、制動力調整係数GcFR、GcRRは0に近い値に設定される。制動性能を向上させたいとき、制動力調整係数GcFR、GcRRを大きくする程、疑似前輪部が出力する制動トルクは大きくなる。
【0042】
次に
図9を参照し、加速度計測装置40が計測した加速度に基づく制駆動力の調整について説明する。加速度計測装置40は、加速度センサにより加速度を検出してもよいし、各タイヤの出力トルクや制駆動力から加速度を算出してもよい。進行方向制御部15は、例えば車両中心線方向の加速度αx、及び、車両中心線直交方向の加速度αyを取得し、車体角度θに基づき、式(9)を用いて進行方向の加速度αθを算出する。
αθ=αxcosθ+αysinθ ・・・(9)
【0043】
進行方向制御部15は、加速時に正の加速度αθが閾値αthより大きいとき、又は、制動時に負の加速度の絶対値|αθ|が閾値αthを超えたとき、疑似前輪部及び疑似後輪部の制駆動力を調整してリフトアップを防ぐ制御を行うようにしてもよい。一方、加速度の絶対値|αθ|が閾値αth以下のときは、リフトアップする可能性が無いとみなし、直進時と同様の制駆動力を設定してもよい。
【0044】
また、
図10に示すように、車体角度計測装置50は、車両のロールもしくはピッチ角度δを計測する角度センサを含んでもよい。そして進行方向制御部15は、ロールもしくはピッチ角度の絶対値|δ|(或いは角速度の絶対値)が閾値を超えたとき、疑似前輪部及び疑似後輪部の制駆動力を調整してリフトアップを防ぐ制御を行うようにしてもよい。ロールもしくはピッチ角度δは、ジャイロセンサの角速度を積分して推定されてもよい。或いは、疑似前輪部及び疑似後輪部のサスペンションストロークSF、SRに基づき、式(10)を用いて算出されてもよい。
δ=tan
-1((SF+SR)/L) ・・・(10)
【0045】
次に
図11を参照し、道路勾配計測装置60が計測した道路勾配ψsに基づく制駆動力の調整について説明する。なお、ψsの添え字「s」は「スロープ」に由来する。道路勾配計測装置60は、停車時の各タイヤのストロークをセンサにより検出して道路勾配ψsを算出してもよいし、地図データから推定してもよい。
図11には、道路勾配ψs>0の場合の横移動中の加速時に作用する力を、
図3に対応する方式で示す。ここで、道路勾配ψsが0の状態を基準状態という。
【0046】
図3と共通する記号については説明を省略する。ただし、L、hは、基準状態での仮想路面xy_0における疑似前輪部と疑似後輪部との距離、及び、重心高さを表す。
図3の記号の他に、Lf、Lrは、基準状態で仮想路面xy_0に投影された重心位置から疑似前輪部及び疑似後輪部までの距離を表す。b0は、基準状態での疑似後輪部の接地点Prから重心までの距離を表す。ψgは、基準状態での疑似後輪部の接地点Prから重心までの仰角を表す。h1は、道路勾配ψsの路面上に位置する車両の重心の仮想路面xy_0からの高さを表す。
【0047】
横移動中の加速時、[1]加速時慣性による荷重移動ΔWa、及び、[2]疑似後輪部の駆動反力による荷重移動ΔWt、の二種類の荷重移動が
図3と同様に発生する。加速時慣性による荷重移動ΔWaは、式(11)で表される。
ΔWa×L=mαh1cosψs
h1=b0sin(ψs+ψg)
b0=h/sinψg
ΔWa=(mαh/L)×{sin(ψs+ψg)cosψs/sinψg}
・・・(11)
【0048】
疑似後輪部の駆動反力による荷重移動ΔWtは、
図3と同様に式(2)で表される。
ΔWt×L=Ft×r
ΔWt=Ft×r/L=τ/L ・・・(2)
【0049】
「ΔWa+ΔWt>Wfcosψs」のとき、疑似前輪部がリフトアップする。このように道路勾配ψs>0の場合、リフトアップ条件は、道路勾配ψs、及び、疑似後輪部の接地点Prからの重心仰角ψgによって変化する。したがって、進行方向制御部15は、道路勾配ψs及び車両特性に応じて、駆動力及び制動力の調整係数GtXX、GcXXを切り替えたり、加速度の閾値αthや車両角度の閾値θthを変化させたりしてもよい。
【0050】
図12のフローチャートに、本実施形態による制駆動力制御のルーチンを示す。フローチャートの説明で記号「S」はステップを意味する。S01で進行方向制御部15は、進行方向を決定する。S02で転舵角制御部17は、進行方向に応じて各タイヤ91-94を転舵させる。S03では重心計測装置30が車両の重心を計測する。S04で進行方向制御部15は、進行方向、重心、ホイールベース及びトレッド幅の車両特性に基づいて、各タイヤ91-94を疑似前輪部と疑似後輪部とに分類する。
【0051】
S11~S17は、加速時の駆動力制御に関する処理である。S11で進行方向制御部15は、疑似前輪部と判断されたタイヤに駆動力を出力する。S12で進行方向制御部15は、疑似後輪部と判断されたタイヤに、進行方向に応じた駆動力調整係数を乗じて駆動力を出力する。
【0052】
S13では、加速度計測装置40が進行方向の加速度αθを計測し、車体角度計測装置50が車両中心線に対する進行方向の車体角度θを計測し、道路勾配計測装置60が道路勾配ψsを計測する。S14では、正の加速度αθが閾値αthより大きいか、又は、車体角度の絶対値|θ|が閾値θthより大きいか判断される。S14でYESの場合、S15で進行方向制御部15は、出力した駆動力を調整する。S14でNOの場合、S15がスキップされる。S16で進行方向制御部15は、さらに道路勾配ψsに応じて駆動力を調整する。
【0053】
S17では、車速、アクセル信号、ブレーキ信号等に基づき、今後、車両が減速又は停車しようとしているか判断される。S17でNOの場合、S11の前に戻り、駆動力制御が継続される。S17でYESの場合、S21に移行する。
【0054】
S21~S27は、制動時の制動力制御に関する処理である。S21で進行方向制御部15は、疑似後輪部と判断されたタイヤに制動力を出力する。S22で進行方向制御部15は、疑似前輪部と判断されたタイヤに、進行方向に応じた制動力調整係数を乗じて制動力を出力する。
【0055】
S23では、加速度計測装置40が進行方向の加速度αθを計測し、車体角度計測装置50が車両中心線に対する進行方向の車体角度θを計測し、道路勾配計測装置60が道路勾配ψsを計測する。S24では、負の加速度の絶対値|αθ|が閾値αthより大きいか、又は、車体角度の絶対値|θ|が閾値θthより大きいか判断される。S24でYESの場合、S25で進行方向制御部15は、出力した制動力を調整する。S24でNOの場合、S25がスキップされる。S26で進行方向制御部15は、さらに道路勾配ψsに応じて駆動力を調整する。
【0056】
S27では車両が停車したか判断され、YESの場合、処理を終了する。S26でNOの場合、S17の判断が再度行われる。なお、S13、S23でロールもしくはピッチ角度δがさらに計測され、S14、S24で閾値と比較されてもよい。
【0057】
(本実施形態の効果)
(1)車両走行制御装置10の進行方向制御部15は、車両の進行方向及び車両特性に基づいて、各タイヤを疑似前輪部と疑似後輪部とに分類する。そして進行方向制御部15は、加速時、疑似前輪部と判断されたタイヤに与える駆動力を疑似後輪部と判断されたタイヤに与える駆動力よりも大きく設定する。また進行方向制御部15は、制動時、疑似後輪部と判断されたタイヤに与える制動力を疑似前輪部と判断されたタイヤに与える制動力よりも大きく設定する。
【0058】
加速時、疑似後輪部の駆動トルクは疑似前輪部のリフトアップの要因となるが、疑似前輪部の駆動トルクはリフトアップに直接影響しないため、疑似前輪部の駆動力を疑似後輪部の駆動力よりも大きく設定することで、リフトアップを防ぐことができる。また、制動時、疑似前輪部の制動トルクは疑似後輪部のリフトアップの要因となるが、疑似後輪部の制動トルクはリフトアップに直接影響しないため、疑似後輪部の制動力を疑似前輪部の制動力よりも大きく設定することで、リフトアップを防ぐことができる。よって、車両走行制御装置10は、独立転舵車両100の進行方向に応じて加速時及び制動時のリフトアップを適切に防ぐことができる。
【0059】
なお、特許第6730890号公報には、自動二輪車の加速時のウィリーを抑制するため、ウィリー開始を判定したとき駆動源の出力を制限する技術が記載されている。この技術では出力制限により加速度が低下するという問題がある。それに対し本実施形態では、車両の進行方向に応じて分類された疑似前輪部及び疑似前輪部について、加速時の駆動力、及び、制動時の制動力を制御することで、リフトアップを抑制することができる。
【0060】
(2)進行方向制御部15は、重心計測装置30から取得した車両の重心に基づき、各タイヤを疑似前輪部と疑似後輪部とに分類する。特に斜め移動の場合、進行方向制御部15が正しい重心位置を把握することで、疑似前輪部と疑似後輪部とを正しく分類することができる。
【0061】
(3)進行方向制御部15は、加速時、疑似前輪部と判断されたタイヤに与える駆動力に、進行方向に応じた0より大きく1より小さい駆動力調整係数を乗じた駆動力を、疑似後輪部と判断されたタイヤに与える。これにより、発進や加速のための駆動力の確保と、リフトアップの防止とを適切に両立することができる。
【0062】
また、進行方向制御部15は、制動時、疑似後輪部と判断されたタイヤに与える制動力に、進行方向に応じた0より大きく1より小さい制動力調整係数を乗じた制動力を、疑似前輪部と判断されたタイヤに与える。これにより、停止や減速のための制動力の確保と、リフトアップの防止とを適切に両立することができる。
【0063】
(4)進行方向制御部15は、車両の進行方向、及び、加速度計測装置40から取得した加速度αに応じて、疑似前輪部及び疑似後輪部と判断された各タイヤに与える駆動力及び制動力を調整する。進行方向制御部15は、加速度αに基づき慣性力mαを正しく把握することができる。また、慣性力mαによる影響を考慮し、加速度の絶対値|α|が閾値αthを超えた場合に疑似前輪部及び疑似後輪部の制駆動力を制御することで、より適切にリフトアップを防ぐことができる。
【0064】
(5)進行方向制御部15は、車両の進行方向、及び、車体角度計測装置50から取得した車体角度θ、又は、ロールもしくはピッチ角度δに応じて、疑似前輪部及び疑似後輪部と判断された各タイヤに与える駆動力及び制動力を調整する。進行方向制御部15は、車体角度の絶対値|θ|、又は、ロールもしくはピッチ角度の絶対値|δ|がそれぞれの閾値を超えた場合に疑似前輪部及び疑似後輪部の制駆動力を制御することで、より適切にリフトアップを防ぐことができる。
【0065】
(6)進行方向制御部15は、道路勾配計測装置60から取得した道路勾配ψsに応じて、疑似前輪部及び疑似後輪部と判断された各タイヤに与える駆動力及び制動力を調整する。道路勾配ψsによって、駆動力又は制動力が同じでもリフトアップのしやすさが変わる。道路勾配ψsを予め考慮して駆動力及び制動力を変化させることで、より適切にリフトアップを防ぐことができる。
【0066】
(その他の実施形態)
(a)本発明の車両走行制御装置10により制御される独立転舵車両は、四輪車両に限らず、三輪以上のタイヤが独立して転舵可能な車両であればよい。例えば三輪の独立転舵車両の場合、各タイヤは、一つの疑似前輪部と二つの疑似後輪部、又は、二つの疑似前輪部と一つの疑似後輪部に分類される。
【0067】
(b)例えば加速度計測装置40は、車両に一つに限らず複数設けられてもよい。その場合、進行方向制御部15は、複数のうち選択された一つの計測装置から加速度を取得してもよく、複数の計測装置から取得した複数の加速度データから平均値等を演算してもよい。車体角度計測装置50等についても同様である。
【0068】
(c)車両走行制御装置10が搭載される車両は、
図1に示す車両特性記憶装置20、重心計測装置30、加速度計測装置40、車体角度計測装置50、道路勾配計測装置60のうち一部を備えていてもよい。車両走行制御装置10は、車両が備える装置から取得可能な情報の範囲で、上記実施形態に準じて疑似前輪部及び疑似後輪部の制駆動力を制御すればよい。
【0069】
以上、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0070】
10・・・車両走行制御装置、
15・・・進行方向制御部、
17・・・転舵角制御部、
18・・・制駆動力制御部、
20・・・車両特性記憶装置、
91-94・・・タイヤ、
100・・・独立転舵車両。