IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社NTTドコモの特許一覧 ▶ トヨタ紡織株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-移動体システム 図1
  • 特許-移動体システム 図2
  • 特許-移動体システム 図3
  • 特許-移動体システム 図4
  • 特許-移動体システム 図5
  • 特許-移動体システム 図6
  • 特許-移動体システム 図7
  • 特許-移動体システム 図8
  • 特許-移動体システム 図9
  • 特許-移動体システム 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】移動体システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/06 20230101AFI20240604BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20240604BHJP
【FI】
G06Q30/06
G06Q50/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020209133
(22)【出願日】2020-12-17
(65)【公開番号】P2022096177
(43)【公開日】2022-06-29
【審査請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】392026693
【氏名又は名称】株式会社NTTドコモ
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川島 睦
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 知明
(72)【発明者】
【氏名】則武 雅人
(72)【発明者】
【氏名】西川 信広
(72)【発明者】
【氏名】来間 政人
(72)【発明者】
【氏名】西川 徳行
(72)【発明者】
【氏名】富田 玲子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 貴章
(72)【発明者】
【氏名】冨田 浩之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大策
【審査官】岩橋 龍太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-138853(JP,A)
【文献】特開2019-074783(JP,A)
【文献】国際公開第2018/123032(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のエリア内において、1以上の利用者で構成される利用者グループに貸与される移動体システムであって、
前記利用者の行動をサポートする第一移動体と、
前記第一移動体と連携する第二移動体と、
を備え、前記第二移動体は、前記第一移動体よりも小型、かつ、低機能であり、
前記移動体システムは、第一利用者と、第二利用者とを含む利用者グループに貸与された場合に、別行動モードで運用可能であり、
前記別行動モードにおいて、前記第一移動体は、前記第一利用者とともに移動し、前記第二移動体は、前記第二利用者とともに移動し、前記第一利用者または前記第二利用者から合流指示があった場合、前記第一利用者および第二利用者を合流させるように、前記第一移動体および前記第二移動体の少なくとも一方は、他方に向かって移動する、
ことを特徴とする移動体システム。
【請求項2】
請求項に記載の移動体システムであって、
前記別行動モードにおいて、前記第二移動体は、前記第一移動体までの距離が、予め規定された別行動距離を超えないように、前記第二利用者の移動範囲をガイドする、ことを特徴とする移動体システム。
【請求項3】
所定のエリア内において、1以上の利用者で構成される利用者グループに貸与される移動体システムであって、
前記利用者の行動をサポートする第一移動体と、
前記第一移動体と連携する第二移動体と、
を備え、前記第二移動体は、前記第一移動体よりも小型、かつ、低機能であり、
前記移動体システムは、代行モードで運用可能であり、
前記代行モードにおいて、前記第一移動体は、前記利用者から指定された代替処理を前記利用者に代わって実行し、前記第二移動体は、前記利用者とともに移動し、前記代替処理が規定の合流可能状態まで進捗すれば、前記利用者を前記第一移動体に合流させるように、前記第一移動体および前記第二移動体の少なくとも一方は、他方に向かって移動する、
ことを特徴とする移動体システム。
【請求項4】
請求項に記載の移動体システムであって、
前記代行モードにおいて、前記第二移動体は、前記第一移動体までの距離が、予め規定された代行距離を超えないように、前記利用者の移動範囲をガイドする、ことを特徴とする移動体システム。
【請求項5】
所定のエリア内において、1以上の利用者で構成される利用者グループに貸与される移動体システムであって、
前記利用者の行動をサポートする第一移動体と、
前記第一移動体と連携する第二移動体と、
を備え、前記第二移動体は、前記第一移動体よりも小型、かつ、低機能であり、
前記利用者グループが、その構成人数が規定の下限人数未満である少数の利用者グループである場合、前記移動体システムのうち前記第二移動体のみが前記少数の利用者グループに貸与されるとともに、前記第二移動体が単身モードで運用され、
前記単身モードにおいて、前記第二移動体は、前記利用者とともに移動するとともに、前記少数の利用者グループが他の少数の利用者グループと合併することを示す合併指示を前記利用者から受けた場合に、前記他の少数の利用者グループに貸与された第二移動体と臨時チームを構築し、
前記臨時チームを構成する第二移動体の数が規定の貸与基準数以上になった場合、前記合併後の利用者グループに対して第一移動体の貸与が許可される、
ことを特徴とする移動体システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の移動体システムであって、
前記第一移動体は、前記利用者の荷物の搬送機能、前記利用者の輸送機能、料金の決済機能の少なくとも一つを有しており、
前記第二移動体は、前記利用者の荷物の搬送機能、前記利用者の輸送機能、料金の決済機能のいずれも有さない、
ことを特徴とする移動体システム。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の移動体システムであって、
前記第二移動体は、飛行可能であるとともにカメラを有した飛行体であり、前記利用者を上空から撮影可能である、ことを特徴とする移動体システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、所定のエリア内において、利用者の行動をサポートする移動体システムを開示する。
【背景技術】
【0002】
遊園地やテーマパーク等のパークは、通常、広大な敷地を有している。そのため、パークの利用者は、道に迷ったり、体力を大幅に消耗したりすることがあった。また、パークでは、その混雑状況によっては、アトラクションやレストラン、トイレを利用する際に、行列に並ばなければならず、ユーザの自由な行動が制限される場合があった。その結果、利用者がパークを十分に楽しむことができないという問題があった。
【0003】
そこで、パークのように広大な敷地を有する所定のエリアにおいて、利用者の行動をサポートするために、移動体を利用することが考えられる。こうした移動体としては、種々の形態が考えられるが、例えば、特許文献1に開示されているような移動体を利用することが考えられる。特許文献1には、ユーザの持つ発信器に追従して、荷物を保持しながら自律的に移動する荷物運搬ロボットが開示されている。かかる移動体(荷物運搬ロボット)を利用することで、ユーザが重い荷物を持つ必要がなくなるため、ユーザの負担が軽減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-123854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来、提案されている移動体は、他の移動体と連携することが想定されていなかった。そのため、異なる二ヶ所で同時にサポート動作が必要な場面や、互いに異なる位置にある2人以上の利用者それぞれに対して同時にサポート動作が必要な場合に対応できなかった。結果として、従来の技術では、所定のエリアにおいて利用者の負担を十分に軽減できなかった。
【0006】
そこで、本明細書では、所定のエリアにおいて利用者の負担をより軽減でき、利用者が所定のエリアをより楽しむことができる移動体システムを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示する移動体システムは、所定のエリア内において、1以上の利用者で構成される利用者グループに貸与される移動体システムであって、前記利用者の行動をサポートする第一移動体と、前記第一移動体と連携する第二移動体と、を備え、前記第二移動体は、前記第一移動体よりも小型、かつ、低機能である、ことを特徴とする。
【0008】
第一移動体と、第一移動体に連携する第二移動体と、を備えることで、異なる二ヶ所で同時にサポート動作を提供でき、所定のエリアの利用者の負担を軽減できる。また、第二移動体を、第一移動体に比べて、小型かつ低機能とすることで、高価な第一移動体の所定のエリア全体での必要数を低減でき、コストを低減できる。また、第二移動体を、第一移動体に比べて、小型かつ低機能にすることで、第二移動体が、第一移動体の「子供」のような印象を利用者に与えることができ、移動体に対する利用者の愛着を高めることができる。
【0009】
この場合、前記第一移動体は、前記利用者の荷物の搬送機能、前記利用者の輸送機能、料金の決済機能の少なくとも一つを有しており、前記第二移動体は、前記利用者の荷物の搬送機能、前記利用者の輸送機能、料金の決済機能のいずれも有さなくてもよい。
【0010】
第一移動体が、利用者の荷物の搬送機能、利用者の輸送機能、料金の決済機能の少なくとも一つを有することで、所定のエリアにおける利用者の負担を軽減できる。
【0011】
また、前記移動体システムは、第一利用者と、第二利用者とを含む利用者グループに貸与された場合に、別行動モードで運用可能であり、前記別行動モードにおいて、前記第一移動体は、第一利用者とともに移動し、前記第二移動体は、前記第二利用者とともに移動し、前記第一利用者または前記第二利用者から合流指示があった場合、前記第一利用者および第二利用者を合流させるように、前記第一移動体および前記第二移動体の少なくとも一方は、他方に向かって移動してもよい。
【0012】
かかる構成とすることで、離れて行動する第一、第二利用者それぞれに、第一、第二移動体が追従するため、離れて行動する第一、第二利用者それぞれをサポートできる。また、離れて行動する第一、第二移動体が、互いの位置を把握することで、第一、第二利用者が一時的に離れたとしても、必要なタイミングで、容易に合流できる。
【0013】
この場合、前記別行動モードにおいて、前記第二移動体は、前記第一移動体までの距離が、予め規定された別行動距離を超えないように、前記第二利用者の移動範囲をガイドしてもよい。
【0014】
かかる構成とすることで、第一、第二利用者が過度に離れることが防止でき、第一、第二利用者が容易に合流できる。
【0015】
また、前記移動体システムは、代行モードで運用可能であり、前記代行モードにおいて、前記第一移動体は、前記利用者から指定された代替処理を前記利用者に代わって実行し、前記第二移動体は、前記利用者とともに移動し、前記代替処理が規定の合流可能状態まで進捗すれば、前記利用者を前記第一移動体に合流させるように、前記第一移動体および前記第二移動体の少なくとも一方は、他方に向かって移動してもよい。
【0016】
高機能の第一移動体に、利用者の処理を代理で実行させることで、利用者の負担を軽減でき、利用者は、所定のエリアをより楽しむことができる。また、第二移動体が利用者とともに移動しているため、利用者は、必要に応じて、第一移動体と容易に合流できる。
【0017】
この場合、前記代行モードにおいて、前記第二移動体は、前記第一移動体までの距離が、予め規定された代行距離を超えないように、前記利用者の移動範囲をガイドしてもよい。
【0018】
かかる構成とすることで、第一移動体と利用者が過度に離れることが防止でき、第一移動体と利用者が容易に合流できる。
【0019】
また、前記第二移動体は、飛行可能であるとともにカメラを有した飛行体であり、前記利用者を上空から撮影可能であってもよい。
【0020】
第二移動体は、第一移動体に比べて、小型であるため、飛行体として構成しやすい。そして、飛行体である第二移動体を用いて、上空から利用者を撮影することで、利用者にとって、より有用な画像が得られる。
【0021】
また、前記利用者グループが、その構成人数が規定の下限人数未満である少数の利用者グループである場合、前記移動体システムのうち前記第二移動体のみが前記少数の利用者グループに貸与されるとともに、前記第二移動体が単身モードで運用され、前記単身モードにおいて、前記第二移動体は、前記利用者とともに移動するとともに、前記少数の利用者グループが他の少数の利用者グループと合併することを示す合併指示を前記利用者から受けた場合に、前記他の少数の利用者グループに貸与された第二移動体と臨時チームを構築し、前記臨時チームを構成する第二移動体の数が規定の貸与基準数以上になった場合、前記合併後の利用者グループに対して第一移動体の貸与が許可されてもよい。
【0022】
かかる構成とすることで、一人または少人数で来場した利用者に、他の単身来場者と積極的に交流しようとする動機付けが生まれる。結果として、利用者同士の交流が発生しやすく、利用者に、より印象的な体験を提供できる。
【発明の効果】
【0023】
本明細書で開示する移動体システムによれば、所定のエリアにおける利用者の負担をより軽減できるため、利用者が所定のエリアをより楽しむことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】移動体システムの利用の様子を示すイメージ図である。
図2】第一移動体の構成を示すブロック図である。
図3】第二移動体の構成を示すブロック図である。
図4】第二移動体が飛行体である様子を示すイメージ図である。
図5】標準モードにおける処理の流れを示すフローチャートである。
図6】別行動モードの様子を示すイメージ図である。
図7】別行動モードにおける処理の流れを示すフローチャートである。
図8】代行モードの様子を示すイメージ図である。
図9】代行モードにおける処理の流れを示すフローチャートである。
図10】単身モードの様子を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して移動体システムの構成について説明する。図1は、移動体システムの利用の様子を示すイメージ図である。また、図2は、第一移動体11の、図3は、第二移動体40の構成を示すブロック図である。なお、図面では、符号「100」および「66」に添え字アルファベットを付しているが、以下の説明文において、これらを区別する必要がない場合は、添え字アルファベットを省略し、「100」および「66」と表記する。
【0026】
移動体システムは、所定のエリアであるパーク(例えば遊園地やテーマパーク等)において、利用者100の行動をサポートするためのシステムであり、第一移動体11と、1以上の第二移動体40と、を有している。
【0027】
移動体11,40は、利用者グループ110に貸与される。利用者グループ110は、ともに行動する利用者100の集合体であり、1以上の利用者100で構成される。したがって、家族や友人同士で来場した場合には、この家族または友人の集まりが、一つの利用者グループ110を構成する。また、一人でパークに来場した場合、この一人の利用者100が一つの利用者グループ110を構成する。
【0028】
移動体11,40は、各利用者グループ110に貸与される。ただし、貸与される移動体11,40の構成は、利用者グループ110を構成する利用者100の人数によって異なる。利用者グループ110の構成数が、規定の下限人数Ng以上の場合、その利用者グループ110には、第一移動体11と、当該第一移動体11と連携する1以上の第二移動体40と、で構成される移動体グループ10が貸与される。一方、利用者グループ110の構成人数が、下限人数Ng未満の場合、その利用者グループ110には、第一移動体11は、貸与されず、単一の第二移動体40のみが貸与される。なお、下限人数Ngは、Ng≧2であれば、特に限定されない。以下では、Ng=2として説明する。しがって、利用者グループ110の構成人数が一人の場合には、第二移動体40が単身で貸与され、それ以外の利用者グループ110には、移動体グループ10が貸与される。以下では、構成数が下限人数Ng未満の利用者グループ110を「少数の利用者グループ110」と呼ぶ。また、移動体グループ10として貸与される状態を「グループ貸与状態」、単一の第二移動体40のみが貸与される状態を「単身貸与状態」と呼ぶ。
【0029】
グループ貸与状態において、移動体11,40は、後述する、標準モード、別行動モード、および、代行モードでの運用が可能となる。単身貸与状態において、第二移動体40は、後述する単身モードでの運用が可能となる。また、単身貸与状態の第二移動体40は、他の単身貸与状態の第二移動体40と、臨時チームを構成することができる。そして、この臨時チームを構成する第二移動体40の数が、規定の貸与基準数Nl以上になれば、第一移動体11が追加で貸与され、グループ貸与状態に遷移できるが、これについては、後述する。
【0030】
次に、第一移動体11および第二移動体40それぞれの構成について説明する。第一移動体11は、利用者100の指示に応じて、自律的に移動可能な移動体である。第一移動体11は、後述する第二移動体40に比べて、比較的、大型かつ高機能となっている。この第一移動体11は、利用者100の行動をサポートするために種々の処理を実行できる。特に、第一移動体11は、第二移動体40と異なり、利用者100の行動をサポートするために、荷物の搬送、利用者の輸送、料金の決済処理の少なくとも一つを実行できる。図1の例では、第一移動体11は、その内部に、利用者100の荷物102を収容できるようになっており、荷物102を搬送できる。第一移動体11の表面には、開閉可能な蓋部68が設けられており、この蓋部68を開けることで、荷物102を出し入れできる。
【0031】
また、第一移動体11は、荷物102の搬送の他にも、利用者100から指定された処理(例えば買い物等)を利用者100に代わって行ったり、第二移動体40の行動を管理したりするが、これらについては、後述する。第一移動体11のサイズ、意匠は、特に限定されない。図示例では、第一移動体11は、ドーム状の頭部の下に、円柱状の胴部を有しており、頭部には、「目」を連想させる意匠が施されている。こうした「目」の意匠を設けることで、第一移動体11が意思を有した生物のような印象を利用者100に与えることができ、利用者100が、第一移動体11に対して愛着を抱きやすくなる。
【0032】
第二移動体40は、第一移動体11と連携して、自律的に移動可能な移動体である。ここで、「連携」とは、連携相手と通信して情報または指示を取得し、取得した情報または指示に応じて自身の行動の少なくとも一部を決定することを意味する。第二移動体40は、第一移動体11に比べて小型であり、また、機能も限定されている。したがって、第二移動体40は、荷物の搬送、利用者の輸送、決済処理のいずれも実行できない。
【0033】
第二移動体40は、第一移動体11よりも小型であれば、そのサイズおよび意匠は特に限定されない。ただし、第二移動体40は、第一移動体11との関連性をイメージしやすくするために、第一移動体11の意匠的特徴と類似した意匠的特徴を有してもよい。図示例では、第二移動体40は、第一移動体11を類似したドーム状の頭部と、第一移動体11の胴部よりも短い円柱状の胴部と、を有している。また、第二移動体40の頭部には、第一移動体11の「目」と類似した意匠の「目」が設けられている。このように、第二移動体40を、第一移動体11よりも小型にするとともに、第一移動体11と類似した意匠的特徴を持たせることで、第二移動体40が第一移動体11の「子供」であるかのような印象を利用者100に与えることができる。そして、「子供」のような印象を与えることで、第一移動体11および第二移動体40が、生物のような印象をより強く与えることができ、第一移動体11および第二移動体40に対する利用者100の愛着を高めることができる。また、人間は、仔犬、仔猫、ひよこ等のような生物の幼齢個体に対して愛着を持ちやすい。そのため、第二移動体40が第一移動体11の「子供」であり、幼齢個体であるような印象を与えることで、第二移動体40に対する利用者100の愛着をより高めることができる。
【0034】
次に、第一移動体11および第二移動体40の具体的な構成について、図2図3を参照して説明する。第一移動体11は、自律的に移動可能であり、駆動ユニット18、環境センサ20およびバッテリ22を有している。駆動ユニット18は、第一移動体11を移動させるためのユニットで、例えば、車輪や無限軌道等の走行体と、当該走行体に動力を付与するモータと、を有している。環境センサ20は、第一移動体11の周囲の状態を検知するためのセンサであり、例えば、位置を検知するセンサ(例えばGPSセンサ等)、周囲の物体を検知するセンサ(例えばLidar、ミリ波レーダ、ソナー、磁気センサ等)、周囲の様子を撮像するカメラ等を含む。後述するコントローラ12は、これらの環境センサ20で検知された情報に基づいて駆動ユニット18の駆動を制御する。
【0035】
バッテリ22は、第一移動体11に設けられた電気部品、例えば、モータやコントローラ12等に供給する電力を蓄積している。このバッテリ22は、充放電可能な二次電池、例えば、リチウムイオン電池である。バッテリ22は、第一移動体11に分離不能に取り付けられていてもよいし、必要に応じて、第一移動体11から取り外しできてもよい。
【0036】
入力装置26は、利用者100からの指示の入力を受け付けるもので、スイッチ、キーボード、タッチパネル、マイクの少なくとも一つを含む。また、出力装置28は、利用者100に情報を提示するもので、例えば、ランプ、表示装置、スピーカの少なくとも一つを含む。なお、ここでは、入力装置26および出力装置28を、第一移動体11に設けているが、これらは、第一移動体11の外部に設けられてもよい。例えば、利用者100が持つ情報端末(例えばスマートフォン)を、第一移動体11の入力装置26および出力装置28として利用してもよい。すなわち、利用者100に移動体システムを貸与する際、利用者100の持つ情報端末を第一移動体11に登録しておき、ブルートゥース(登録商標)等の無線通信規格を用いて、第一移動体11と情報端末との間でデータを授受可能にしてもよい。そして、第一移動体11への指示を、この情報端末で入力するとともに、第一移動体11から出力される情報を情報端末に表示するようにしてもよい。いずれにしても、第一移動体11は、利用者100からの指示の受け付け、および、利用者100への情報提供が可能となっている。
【0037】
通信I/F30は、第一移動体11の外部の情報機器と無線通信するためのものである。特に、本例では、通信I/F30は、管理センタ120および第二移動体40と通信可能となっている。管理センタ120は、複数の移動体システムを管理するもので、移動体システムの貸与状況を管理したり、第一移動体11から送られる決済情報を処理したりする。通信I/F30は、こうした管理センタ120および第二移動体40との通信を可能にするために、複数種類の通信規格に対応していてもよい。例えば、通信I/F30は、Wi-Fi(登録商標)またはモバイルデータ通信を利用してインターネット通信ができるものでもよい。また、通信I/F30は、ブルートゥース(登録商標)等の近距離無線通信規格に対応していてもよい。
【0038】
受信機24は、利用者100が持つ発信機66の信号を受信するものである。発信機66は、移動体システムとともに利用者100に貸与されるもので、移動体システムの利用時、利用者100は、発信機66を身に着ける。発信機66は、利用者追跡のための電波信号または超音波信号を定期的に出力するもので、例えば、ブルートゥースを利用したビーコン発信機である。受信機24は、この発信機66からの信号を受信する。コントローラ12は、受信機24で受信された信号に基づいて利用者の位置を特定する。そして、第一移動体11は、必要に応じて、利用者100とともに移動する。
【0039】
ここで、こうした発信機66は、一つの利用者グループ110に複数、貸与されてもよい。例えば、一つの利用者グループ110に貸与される発信機66の個数は、貸与された移動体グループ10を構成する移動体11,40の個数と同じでもよい。例えば、図1の左側の例では、移動体グループ10は、二つの移動体11,40を有しているため、一つの利用者グループ110に、二つの発信機66が貸与されてもよい。かかる構成とすることで、複数の移動体11,40が互いに異なる発信機66を追跡できる。
【0040】
コントローラ12は、第一移動体11を構成する各部の駆動を制御する。このコントローラ12は、プロセッサ14とメモリ16とを有したコンピュータである。この「コンピュータ」には、コンピュータシステムを一つの集積回路に組み込んだマイクロコントローラも含まれる。また、プロセッサ14とは、広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit、等)や、専用のプロセッサ(例えばGPU:Graphics Processing Unit、ASIC:Application Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス、等)を含むものである。また、以下に述べるプロセッサ14の動作は、1つのプロセッサによって成すのみでなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して成すものであってもよい。同様に、メモリ16も、物理的に一つの要素である必要はなく、物理的に離れた位置に存在する複数のメモリで構成されてもよい。また、メモリ16は、半導体メモリ(例えばRAM、ROM、ソリッドステートドライブ等)および磁気ディスク(例えば、ハードディスクドライブ等)の少なくとも一つを含んでもよい。
【0041】
第二移動体40は、第一移動体11と類似した構成を有する。すなわち、第二移動体40は、図3に示すように、コントローラ42と、駆動ユニット48と、環境センサ50と、バッテリ52と、受信機54と、入力装置56と、出力装置58と、通信I/F60と、を有する。ただし、全体的に、第二移動体40は、第一移動体11に比べて低機能でもよい。したがって、例えば、第二移動体40のコントローラ42は、第一移動体11のコントローラ12に比べて、その処理能力が低くてもよい。また、第二移動体40の駆動ユニット48は、第一移動体11の駆動ユニット18に比べて、走行能力が乏しくてもよい。したがって、例えば、第二移動体40の最高速度や最大トルクは、第一移動体11のそれよりも小さくてもよい。また、第二移動体40の通信I/F60は、第一移動体11および他の第二移動体40と通信できればよく、管理センタ120と通信できなくてもよい。したがって、第二移動体40の通信I/F60は、Wi-Fiやモバイルデータ通信を利用した公衆通信網に対応していてもよいし、特定の移動体との通信のみが可能な専用通信網に対応していてもよい。いずれにしても、第二移動体40は、第一移動体11と定期的に無線通信し、第一移動体11から指示を受けることで、第一移動体11と連携して行動できる。また、第二移動体40は、全体として、小型かつ低機能であることから、第二移動体40に搭載されるバッテリ52は、第一移動体11に搭載されるバッテリ22に比べて、小型かつ低容量でもよい。
【0042】
次に、こうした移動体システムの運用モードについて説明する。本例の移動体システムは、幾つかの運用モードを有しており、利用者100または管理センタ120が、希望の運用モードを選択できるようになっている。具体的には、一つの利用者グループ110に、移動体グループ10が貸与されたグループ貸与状態の場合、標準モード、代行モード、別行動モードが採用可能である。一方、一つの利用者グループ110に、第一移動体11が貸与されず、第二移動体40のみが貸与された単身貸与状態の場合、単身モードのみが採用可能である。
【0043】
標準モードは、最も標準的な運用形態であり、第一移動体11および第二移動体40が、いずれも、利用者100とともに移動する。標準モードで運用している期間中、利用者100は、適宜、第一移動体11に設けられている入力装置26を操作して、第一移動体11に、各種処理の実行を指示できる。ここで、第一移動体11が実行できる処理としては、上述した利用者100の荷物の搬送の他、料金の決済処理や、目的地へのルート案内、情報提供等がある。
【0044】
標準モードにおいて、第一移動体11は、利用者100、より正確には、利用者100の一人が持つ第一発信機66aとともに移動する。すなわち、標準モードにおいて、第一移動体11は、受信機24で受信された信号に基づいて第一発信機66aの位置を特定する。そして、第一移動体11は、この第一発信機66aとの距離が、常に、予め規定された同行距離以内になるように、その移動方向および速度を制御する。同行距離は、利用者100とともに移動する際に許容される距離であり、例えば、数メートルである。この同行距離は、予め規定された固定値でもよいし、適宜、変更可能な可変値でもよい。また、同行距離の値は、利用者100が自由に設定可能でもよいし、移動体11,40が実行する処理内容に応じて自動的に変更されてもよい。ルート案内の実行時、第一移動体11は、この同行距離を保ちつつ、利用者100により入力された目的地に向かって移動する。
【0045】
また、第一移動体11は、必要に応じて、決済処理も実行できる。決済手段は、特に限定されず、現金決済でもよいし、磁気式またはRFID式のプリペイドカードによる決済やクレジットカード決済、バーコード決済でもよい。これらの決済に対応するために、第一移動体11は、投入された現金の金額を計数して必要に応じて釣銭を出す金銭装置や、カードリーダ、RFIDリーダ、バーコードリーダ等が搭載されてもよい。利用者100は、この決済機能を利用して、各種物品(例えば土産や食事等)が購入できるほか、パーク内のアトラクションのチケットも購入できる。第一移動体11を介して購入されるチケットは、第一移動体11によって管理記憶される電子チケットでもよい。この場合、アトラクションの入場ゲートでは、利用者100とともに移動する第一移動体11と通信することでチケットの購入の有無を自動的に判別するようにしてもよい。かかる構成とすることで、利用者100は、購入したチケットを紛失する心配がなく、また、入場ゲートでチケットを取り出す手間がないため、チケットの取り扱いが容易になる。
【0046】
また、第一移動体11は、適宜、利用者100に情報を提供してもよい。提供される情報は、利用者100の要求に応じて提供する情報でもよい。例えば、利用者100は、第一移動体11の入力装置26を操作して、パーク内のアトラクションやレストラン、天気の情報を要求し、第一移動体11は、この要求に応じて、必要な情報を出力装置28を介して利用者100に提供するようにしてもよい。また、別の形態として、第一移動体11は、利用者100の要求とは無関係に、所定の情報を提供するようにしてもよい。例えば、第一移動体11は、パーク内でのキャンペーンやイベント情報を、利用者100の要求とは無関係に、利用者100に提供してもよい。
【0047】
標準モードにおいて、第二移動体40は、第一移動体11とともに移動し、必要に応じて、第一移動体11のサポートを行う。すなわち、第二移動体40は、第一移動体11との通信により、第一移動体11の位置を特定し、第一移動体11との距離が規定の追従距離以内になるように、その移動方向および速度を調整する。追従距離は、標準モードにおいて許容される、第一移動体11から第二移動体40までの距離であり、例えば、数メートルである。
【0048】
また、第二移動体40は、第一移動体11の指示に応じて、当該第一移動体11のサポートを行ってもよい。例えば、第二移動体40は、第一移動体11からの指示に応じて、一部の利用者100c(例えば「子供」の利用者)に追従し、当該利用者100cが、他の利用者100a(例えば「親」の利用者)から離れた場合にアラームを出力してもよい。すなわち、図1の左側に示すように、利用者グループ110が、親100aと、その子供100cと、を有する場合、予め、親100aに第一発信機66aを、子供100cに第二発信機66bを持たせておく。そして、第一移動体11は第一発信機66aとともに移動し、第二移動体40は、第二発信機66bとともに移動する。そして、第二移動体40が第二発信機66bに追従した結果、第一移動体11と第二移動体40との距離が追従距離を超えた場合、第二移動体40は、アラームを出力し、子供100cが親100aから離れていることを警告する。かかる構成とすることで、一部の利用者100が迷子になることを効果的に防止できる。
【0049】
また、第二移動体40は、第一移動体11に比べて小型で軽量である。第二移動体40は、この特徴を生かして、第一移動体11にできない処理を実行してもよい。例えば、狭い空間に入り込むことは、第一移動体11には、できない。そこで、第二移動体40は、第一移動体11の指示に応じて、狭い空間に入り込む処理を実行してもよい。また、図4に示すように、第二移動体40にプロペラ70等の飛行機構を搭載し、第二移動体40を飛行可能な飛行体としてもよい。この場合、第二移動体40には、さらに、カメラ72を設け、第一移動体11からの指示に応じて、上空から利用者100を撮影できるようにしてもよい。いずれにしても、標準モードにおいて、第二移動体40が、第一移動体11とともに移動するとともに、必要に応じて第一移動体11をサポートとすることで、利用者100の行動をより好適にサポートできる。
【0050】
図5は、標準モードにおける処理の流れを示すフローチャートである。利用者100または管理センタ120により標準モードでの運用が指示された場合、第一移動体11は、第一発信機66aとの距離が、同行距離以下になるように、第一発信機66aとともに移動する(S10)。また、第一移動体11は、標準モードが選択されたことを、通信により、第二移動体40に通知する(S12)。この通知を受けて、第二移動体40は、第一移動体11との距離が規定の追従距離以下になるように、第一移動体11とともに移動する(S14)。以降、標準モードが継続される限り、同様の処理が繰り返される。なお、図5の処理と並行して、第一移動体11は、利用者100からの指示に応じて、他の処理、例えば、ルート案内処理や決済処理、情報提供処理も実行する。また、第二移動体40は、図5の処理と並行して、第一移動体11からの指示に応じて、第一移動体11をサポートする処理を実行する。
【0051】
次に、別行動モードについて説明する。図6は、別行動モードの様子を示すイメージ図である。別行動モードでは、第一移動体11は、第一利用者100aとともに移動し、第二移動体40は、第一利用者100aと離れて行動する第二利用者100bとともに移動する。具体的には、別行動モードにおいて、第一移動体11は、第一利用者100aが所持する第一発信機66aの信号を追跡し、移動する。また、第二移動体40は、第二利用者100bが所持する第二発信機66bの信号を追跡し、移動する。
【0052】
別行動モードにおいて、第一移動体11は、標準モードと同様に、各種処理、例えば、決済処理や、ルート案内処理、情報提供処理等を実行する。また、別行動モードにおいて、第一移動体11は、第二移動体40との距離を定期的に確認し、第二移動体40との距離が、規定の別行動距離を超えた場合には、第二移動体40にアラームを出力させる。別行動距離は、別行動モードにおいて許容される離間距離である。この別行動距離は、上述した同行距離や追従距離よりも十分に大きく、例えば、数十メートルから数キロメートルである。この別行動距離の値は、利用者100が自由に設定できてもよいし、予め規定された固定値でもよい。
【0053】
また、第一移動体11は、第一利用者100aから合流の指示があった場合、第二移動体40に対して合流を指示する。第二移動体40は、この合流指示を受ければ、その旨を示す情報を第二利用者100bに提示したうえで、第一移動体11の位置へ移動し、第二利用者100bを、第一移動体11のもとへガイドする。
【0054】
図7は、別行動モードにおける処理の流れを示すフローチャートである。利用者100により別行動モードでの運用が指示された場合、第一移動体11は、第一発信機66aとの距離が、同行距離以下になるように、第一発信機66aとともに移動する(S20)。また、第一移動体11は、別行動モードが選択されたことを、通信により、第二移動体40に通知する(S22)。この通知を受けて、第二移動体40は、第二発信機66bとの距離が同行距離以下になるように、第二発信機66bとともに移動する(S24)。
【0055】
続いて、第一移動体11は、無線通信により、第二移動体40に対して、第二移動体40の位置(以下「第二位置」と呼ぶ)の送信を要求する(S26)。この要求を受ければ、第二移動体40は、GPS等で取得した自身の位置情報を、無線通信により第一移動体11に送信する(S28)。第一移動体11は、この第二位置と自身の位置とを比較し、第二移動体40が規定の別行動距離内に位置しているか否かを確認する(S30)。確認の結果、第二移動体40が、別行動距離を超えて離れている場合(S30でNoの場合)、第一移動体11は、第二移動体40に対してアラームの出力を指示する(S32)。第二移動体40は、この指示に応じて、第二利用者100bに対してアラームを出力し、第一移動体11に近づくように促す(S34)。すなわち、第二移動体40は、第一移動体11までの距離が、別行動距離を超えないように、第二利用者100bの移動範囲をガイドする。
【0056】
一方、第一移動体11と第二移動体40との距離が、別行動距離以内の場合(S30でYesの場合)、第一移動体11は、合流指示の有無を確認する(S36)。確認の結果、第一利用者100aから合流指示が入力されていない場合(S36でNo)、ステップS20~S34の処理を繰り返す。一方、第一利用者100aから合流指示が入力された場合(S36でYesの場合)、第一移動体11は、第二移動体40に対して合流を指示する(S38)。この指示を受ければ、第一移動体11は、合流指示があったことを第二利用者100bに提示したうえで、第一移動体11の方向へ移動し、第二利用者100bを第一利用者100aのもとへガイドする(S40)。
【0057】
このように、離れて行動する2以上の利用者100それぞれに、移動体11,40を追従させることで、離れて行動する2以上の利用者100それぞれをサポートできる。また、離れて行動する2以上の移動体11,40が、互いの位置を把握することで、2以上の利用者100が一時的に離れたとしても、必要なタイミングで、容易に合流できる。なお、上記の説明では、利用者100による合流の指示入力を、第一移動体11のみで受け付けているが、こうした合流の指示入力は、第二移動体40で受け付けてもよい。また、上記の説明では、合流指示があった場合に、第二移動体40が第一移動体11に向かって移動しているが、逆に第一移動体11が第二移動体40に向かって移動してもよい。
【0058】
次に、代行モードについて説明する。図8は、代行モードの様子を示すイメージ図である。代行モードでは、第一移動体11は、利用者100から指定された処理(以下「代替処理」という)を、利用者100に代わって実行する。一方、第二移動体40は、第一移動体11と離れて行動する利用者100とともに移動する。
【0059】
ここで、第一移動体11が利用者100に代わって実行する代替処理としては、例えば、利用者100に代わって行列に並ぶ順番待ち処理がある。すなわち、パークでは、アトラクションやレストラン、トイレ等を利用する際には、行列に並んで、順番が来るのを待たなければならない場合がある。かかる場合に、第一移動体11が、利用者100に代わって行列に並んでもよい。また、別の形態として、第一移動体11が、利用者100に代わって、遠方に位置するショップで買い物をしてもよい。
【0060】
第一移動体11が、利用者100に代わって行列に並ぶ場合、第一移動体11は、行列内において、自身の一つ前に位置する他の人または移動体を特定し、この他の人または移動体に追従して移動する。また、第一移動体11が利用者100に代わって、買い物を行う場合、第一移動体11は、利用者100が指定したショップで購入可能な商品一覧を利用者100に提示する。利用者100は、提示された商品一覧の中から購入したい物品を選択する。そして、利用者100によりショップおよび商品が選択されれば、第一移動体11は、当該ショップに移動し、選択された商品を購入する。
【0061】
代替処理が規定の合流可能状態まで進捗すれば、利用者100が第一移動体11と合流できるように、第一移動体11および第二移動体40の一方が他方に向かって移動する。ここで、合流可能状態とは、第一移動体11と利用者100との合流が必要となる状態である。例えば、利用者100に代わって行列に並ぶ処理の場合、第一移動体11が行列の先頭に到達するまでの所要時間が、所定の許容時間以下になれば、合流可能状態と判断できる。また、利用者100に代わって物品を購入する処理の場合、物品の購入が完了すれば、合流可能状態と判断できる。
【0062】
合流可能状態になれば、第一移動体11および第二移動体40の一方が他方に向かって移動する。第一移動体11および第二移動体40のいずれを移動させるかは、代行した代替処理の内容によって異なる。例えば、行列に並ぶ処理の場合、第一移動体11は、行列から離れることができないため、合流可能状態になれば、第二移動体40および第二移動体40とともに移動する利用者100が、第一移動体11に向かって移動する。一方、物品の代替購入処理の場合、第一移動体11が、第二移動体40および利用者100に向かって移動する。
【0063】
合流可能状態になるまでは、利用者100は、第二移動体40とともに自由に移動してもよい。ただし、第二移動体40は、利用者100が第一移動体11から過度に離れないように、利用者100の行動範囲を制限してもよい。具体的には、第一移動体11は、定期的に、第二移動体40の位置を確認し、第一移動体11と第二移動体40との距離が、規定の代行距離以内か否かを確認する。代行距離は、代行モードにおいて許容される離間距離である。この代行動距離は、同行距離や追従距離よりも十分に大きく、例えば、数十メートルから数キロメートルである。この代行距離の値は、固定値でもよいし、適宜、変化する可変値でもよい。例えば、代行距離は、第一移動体11が代替処理を完了するまでの所要時間に応じて変化してもよい。いずれにしても、第一移動体11と第二移動体40との距離が、代行距離を超えた場合、第二移動体40は、その旨を通知するアラームを出力し、利用者100が第一移動体11から過度に離れることを防止する。
【0064】
図9は、代行モードにおける処理の流れを示すフローチャートである。利用者100により代行モードでの運用が指示された場合、第一移動体11は、利用者100により指定された代替処理を代理で実行する(S50)。また、第一移動体11は、代行モードが指示されたことを第二移動体40に通知する(S52)。この通知を受けると、第二移動体40は、第一利用者100aが所持する第一発信機66aとの距離が、規定の同行距離以下となるように、第一発信機66aとともに移動する(S54)。
【0065】
また、第一移動体11は、第二移動体40に対して、当該第二移動体40の位置である第二位置の送信を要求する(S56)。この要求を受けると、第二移動体40は、自身のGPSで取得した位置情報を、第二位置として、第一移動体11に送信する(S58)。
【0066】
第一移動体11は、第二移動体40の位置(第二位置)と自身の位置とを比較し、第二移動体40が所定の代行距離以内に位置する否かを判断する(S60)。判断の結果、第二移動体40が代行距離を超えて離れている場合(S60でNoの場合)、第一移動体11は、第二移動体40に対してアラームの出力を指示する(S62)。この指示を受け取ると、第二移動体40は、第一移動体11から離れすぎていることを示すアラームを出力し、利用者100が第一移動体11に近づくように誘導する(S64)。すなわち、第二移動体40は、第一移動体11までの距離が、代行距離を超えないように、利用者100の移動範囲をガイドする。
【0067】
また、第一移動体11は、第二移動体40との合流の要否を確認する(S66)。例えば、代替処理として、利用者100に代わって行列に並んでいる場合、第一移動体11は、行列先頭に到達するまでの残り時間が規定値以下になれば、合流が必要と判断する。また、代替処理として、利用者100に代わって買い物をする場会、第一移動体11は、指定の物品の購入を完了すれば、合流が必要と判断する。
【0068】
確認の結果、合流が不要と判断すれば(S66でNo)、ステップS50に戻り、ステップS50~ステップS64の処理を繰り返す。一方、合流が必要な場合(S66でYesの場合)、第一移動体11および第二移動体40は、合流を実行する(S68)。すなわち、第一移動体11および第二移動体40のいずれか一方が、他方に向かって移動する。そして、利用者100とともに移動する第二移動体40が、第一移動体11と合流すれば、代行モードは、完了となる。
【0069】
このように、高機能の第一移動体11に、利用者100の処理を代理で実行させることで、利用者100の負担を軽減でき、利用者100は、パークをより楽しむことができる。また、第二移動体40が利用者100とともに移動しているため、第一移動体11と利用者100が過度に離れることが防止でき、利用者100は、必要に応じて、第一移動体11と容易に合流できる。
【0070】
次に、単身モードについて説明する。図10は、単身モードの様子を示すイメージ図である。単身モードは、単身貸与状態で採用される運転モードである。すなわち、既述した通り、本例では、構成人数が下限人数Ng(図示例ではNg=2)未満の少数の利用者グループ110に対しては、第一移動体11は貸与されず、単一の第二移動体40のみが貸与される。この場合、第二移動体40は、単身モードで運用される。
【0071】
単身モードにおいて、第二移動体40は、第一移動体11との連携が解除されており、第二移動体40は、利用者100とともに移動する。すなわち、第二移動体40は、利用者100が所持する発信機66の信号に基づいて、利用者100の位置を特定し、利用者100との距離が同行距離以下になるように、移動する。
【0072】
この単身モードにおいて、利用者100には、第一移動体11は貸与されないため、利用者100は、第二移動体40によるサポートのみを受ける。ただし、上述した通り、第二移動体40は、第一移動体11に比べて低機能であるため、第二移動体40によるサポートは、道案内等のような簡単なものに限られる。
【0073】
単身モードにおいて、利用者100から合併指示があった場合、第二移動体40は、他の単身貸与状態の第二移動体40と臨時チーム41を構成することができる。すなわち、一人で来場した利用者100dであっても、パーク内におけるイベント等を通じて、一人で来場した他の利用者100eと知り合い、行動をともにする場合がある。別の言い方をすれば、少数の利用者グループ110dが、他の利用者グループ110eと合併して、新たな利用者グループ110fを構成する場合がある。このように、少数の利用者グループ110が他の少数の利用者グループ110と合併することを示す合併指示を利用者100から受けた場合、それぞれに貸与された第二移動体40が一つの臨時チーム41を構築する。
【0074】
この臨時チーム41の構築方法としては、種々考えられるが、例えば、親しくなった複数の利用者100が、それぞれ、自身に貸与された第二移動体40に対して合併指示を入力する。この合併指示を受けた第二移動体40は、無線通信により、互いの識別情報を交換し合う。そして、各第二移動体40は、この通信で得られた識別情報を、自身と同じ臨時チーム41に属する第二移動体40の識別情報として、メモリ46に記憶する。
【0075】
臨時チーム41が構成された場合、第二移動体40は、同じ臨時チーム41に属する他の第二移動体40と連携して行動する。例えば、第二移動体40は、同じ臨時チーム41に属する他の第二移動体40との離間を防止するように行動してもよい。すなわち、第二移動体40は、同じ臨時チーム41に属する他の第二移動体40の位置を定期的に確認し、他の第二移動体40が所定の同行距離を超えて離れている場合、利用者100に対して、その旨を知らせるアラームを出力してもよい。
【0076】
また、利用者100同士を出会いやすく、ひいては、臨時チーム41を構築しやすくするために、臨時チーム41構築前の第二移動体40が、利用者100をガイドしてもよい。例えば、異なる利用者グループ110に属する利用者100が協力して一つのミッションをクリアするようなイベントが開催される場合、第二移動体40は、利用者100に当該イベントを告知し、誘導するようにしてもよい。また、別の形態として、パーク内に、臨時チームの構築を希望する利用者100が集まる集合場所を設け、第二移動体40が、利用者100に当該集合場所を告知し、誘導するようにしてもよい。
【0077】
複数の利用者100同士で新たな利用者グループ110を構成し、臨時チーム41を構築した結果、当該臨時チーム41を構成する第二移動体40の数が、規定の貸与基準数Nl以上となる場合がある。貸与基準数Nlは、Nl≧2であれば特に限定されない。図10では、Nl=2の場合を示している。臨時チーム41の構成数が貸与基準数Nl以上となれば、新たな利用者グループ110に、第一移動体11の貸与が許可される。すなわち、第二移動体40は、自身で管理する臨時チーム41の構成数が貸与基準数Nl以上になれば、利用者100に対して、第一移動体11の貸与が可能になったことを通知する。この通知を受けて、利用者グループ110が、パーク内にある移動体貸与場所に移動し、申請することで、当該利用者グループ110に第一移動体11が貸与される。貸与された第一移動体11は、臨時チーム41を構成する第二移動体40と連携する。そして、以降、移動体11,40は、上述の標準モード、別行動モード、および、代行モードでの運用が可能となる。
【0078】
以上の説明から明らかなとおり、臨時チーム41が構築された場合に、第一移動体11を貸与することで、一人、または、少人数で来場した利用者100であっても、第一移動体11による高度なサポートを受けることができ、パークをより楽しむことができる。また、臨時チーム41を構築した場合に第一移動体11が貸与される構成とすることで、一人または少人数で来場した利用者100に、他の利用者100と積極的に交流しようとする動機付けが生まれる。結果として、利用者100同士の交流が発生しやすく、利用者100に、より印象的な体験を提供できる。
【0079】
ところで、これまでの説明で明らかなとおり、本例の移動体システムは、高機能かつ大型な第一移動体11と、低機能かつ小型な第二移動体40と、で構成される。かかる構成とすることで、上述した通り、第一移動体11と第二移動体40とが「親子」であり、これらが意思を持った生き物のような印象を利用者100に与えることができる。そして、これにより、利用者100の移動体11,40に対する愛着を高めることができる。また、利用者100に貸与される移動体全てを高機能にするのではなく、一部を低機能にすることで、高機能な移動体の必要数を低減でき、パーク全体で移動体にかかるコストを低減できる。
【0080】
なお、これまで説明した構成は、一例であり、利用者100の行動をサポートする第一移動体11と、第一移動体11と連携する第二移動体40と、を備え、第二移動体40が、第一移動体11よりも小型、かつ、低機能であるのであれば、その他の構成は、適宜、変更されてもよい。例えば、移動体11,40の形状やサイズは、適宜、変更されてもよい。したがって、例えば、第一移動体11は、利用者100を乗せたまま移動可能な形態、例えば、電動カートや電動キックスケート等のような形態でもよい。かかる構成とすれば、第一移動体11は、利用者100を輸送することができる。また、上述の説明では、移動体11,40は、利用者100が保持する発信機66の信号を追跡しているが、発信機66の信号に変えて、利用者100が所持する情報端末(例えばスマートフォン等)と無線通信し、利用者100の位置を特定するようにしてもよい。また、別の形態として、移動体11,40は、カメラで撮像して得られた画像を解析することで、利用者100の位置を特定してもよい。
【符号の説明】
【0081】
10 移動体グループ、11 第一移動体、12,42 コントローラ、14,44 プロセッサ、16,46 メモリ、18,48 駆動ユニット、20,50 環境センサ、22,52 バッテリ、24,54 受信機、26,56 入力装置、28,58 出力装置、30,60 通信I/F、40 第二移動体、41 臨時チーム、66 発信機、68 蓋部、70 プロペラ、72 カメラ、100 利用者、102 荷物、110 利用者グループ、120 管理センタ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10