(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】CO2の吸着及び捕捉のためのV型吸着剤及びガス濃縮の使用
(51)【国際特許分類】
B01D 53/04 20060101AFI20240604BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20240604BHJP
B01D 53/82 20060101ALI20240604BHJP
B01D 53/83 20060101ALI20240604BHJP
B01J 20/22 20060101ALI20240604BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20240604BHJP
【FI】
B01D53/04 220
B01D53/62 ZAB
B01D53/82
B01D53/83
B01J20/22 A
C01B32/50
(21)【出願番号】P 2020502255
(86)(22)【出願日】2018-05-11
(86)【国際出願番号】 US2018032268
(87)【国際公開番号】W WO2019018047
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-04-16
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-27
(32)【優先日】2017-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】523025539
【氏名又は名称】エクソンモービル テクノロジー アンド エンジニアリング カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ExxonMobil Technology and Engineering Company
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【氏名又は名称】福政 充睦
(72)【発明者】
【氏名】サイモン・シー・ウエストン
【合議体】
【審判長】原 賢一
【審判官】増山 淳子
【審判官】松井 裕典
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0087506(US,A1)
【文献】特開平7-47252(JP,A)
【文献】特開平6-99035(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2210656(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D53/02-53/12
B01D53/34-53/85
B01D53/92,53/96
B01J20/00-20/28
B01J20/30-20/34
C01B32/00-32/991
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CO
2
の吸着のための方法であって、
第1の温度で供給流を提供することであり、前記供給流が1~10体積%である第1の濃度の
CO
2
を含むことと;
前記供給流を20~70℃を含む第2の温度まで冷却することであり、前記第2の温度が前記第1の温度よりも低いことと;
前記供給流を、膜、金属有機構造体、又はそれらの組合せを含む濃縮器に曝露することであり、それによって10~25体積%である第2の濃度の前記
CO
2
を有する濃縮された供給流を形成することであって、
前記
CO
2
の前記第2の濃度が、前記
CO
2
の前記第1の濃度よりも高いことと;
前記濃縮された供給流を吸着剤粒子に曝露することであり、前記供給流よりも低い濃度の前記
CO
2
を有する吸着流出物を形成することであって、前記吸着剤粒子がV型吸着剤
であることと;
前記第2の温度よりも高い100~200℃である脱着温度において、少なくとも一部の前記
CO
2
を前記吸着剤粒子から脱着させることと
を含む、方法。
【請求項2】
前記
CO
2
の第2の濃度が、前記V型吸着剤の下位捕捉限界に基づいて選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記供給流が燃焼煙道ガスである、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記供給流が天然ガスの燃焼煙道ガスである、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記供給流が天然ガスである、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記脱着後の前記吸着剤粒子中の吸着された
CO
2
の充填量が、前記曝露終了時の前記吸着剤粒子中の前記
CO
2
の充填量の50%未満である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記脱着温度が前記第2の温度よりも少なくとも20℃高い、請求項1~
6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記供給流を冷却することが、前記濃縮器の上流の供給流を冷却することを含む、請求項1~
7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記供給流を冷却することが、前記濃縮された供給流を前記吸着剤粒子に曝露することと同時に、前記供給流を冷却することを含む、請求項1~
8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記冷却することが、細流床接触器、中空繊維接触器、交互の気体及び液体のチャネルを有するパラレルチャネルモノリス、シェル/チューブ熱交換器、又はそれらの組合せによって実現される、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記供給流が燃焼後供給流であり、前記供給流を濃縮器に曝露することが、
予燃焼供給流のO
2を増加させることと、
前記予燃焼供給流を燃焼させて、CO
2に富む前記燃焼後供給流を生成することと
を含む、請求項1~
10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
流入流体を前記吸着剤粒子に曝露することが、スラリー接触器、流動床接触器、細流床接触器、中空繊維接触器、交互の気体及び液体のチャネルを有するパラレルチャネルモノリス、シェル/チューブ熱交換器、又はそれらの組合せの中の前記吸着剤粒子に前記流入流体を曝露することを含む、請求項1~
11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記吸着剤粒子が、アミンを付加した金属有機構造体を含む、請求項1~
12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記アミンを付加した金属有機構造体がmmen-Mg
2(dobpdc)及びdmpn-Mg
2(dobpdc)の1つを含む、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
ガス流からCO
2を分離するシステムであって:
吸着剤粒子の床を含む接触器であって、前記吸着剤粒子がV型吸着剤
であり、前記吸着剤粒子が、吸着剤1キログラム当たり少なくとも1.0モルのCO
2の吸着剤充填量を有する接触器と;
CO
2を含む流入流体を受け取るための、前記接触器の上流に配置される、又は前記接触器と合体する冷却要素と;
前記接触器の上流に配置され、前記接触器及び前記冷却要素に流体接続される、膜、金属有機構造体、又はそれらの組合せを含むCO
2濃縮器と
を含む、システムであり、
前記CO
2を含む流入流体は、第1の温度で、1~10体積%である第1の濃度のCO
2を含み、前記CO
2を含む流入流体は前記冷却要素で20~70℃を含む第2の温度まで冷却され、前記第2の温度が前記第1の温度よりも低いこと、
前記第2の温度まで冷却された流入流体は、前記濃縮器にて10~25体積%である第2の濃度のCO
2を含む濃縮された流入流体を形成し、
前記CO
2の前記第2の濃度が、前記CO
2の前記第1の濃度よりも高いこと、
前記濃縮された流入流体を前記接触器にて前記吸着剤粒子に暴露すること
前記第2の温度よりも高い100~200℃である脱着温度において、少なくとも一部の前記CO
2を前記吸着剤粒子から脱着させること
を含む、システム。
【請求項16】
前記V型吸着剤が、アミンを付加した金属有機構造体を含む、請求項
15に記載のシステム。
【請求項17】
前記アミンを付加した金属有機構造体がmmen-Mg
2(dobpdc)及びdmpn-Mg
2(dobpdc)の1つを含む、請求項
16に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(分野)
最適ガス吸着条件を微調整するためにV型吸着剤及びガス濃縮を使用することによってスイング吸着プロセス中の吸着剤のワーキングキャパシティを改善するためのシステム及び方法が提供される。
【背景技術】
【0002】
(背景)
ガス分離は、多くの産業において重要であり、典型的には、混合物のあまり容易に吸着されない成分に対して、より容易に吸着される成分を優先的に吸着する吸着剤上にガスの混合物を流すことによって行うことができる。より重要な種類のガス分離技術の1つは、圧力スイング吸着(PSA)などのスイング吸着である。PSAプロセスは、圧力下でガスが、微孔質吸着材料の細孔構造中、又はポリマー材料の自由体積中に吸着される傾向にあることに依拠している。圧力が高いほど、標的ガス成分の吸着する量が増加する。圧力が低下すると、吸着した標的成分の放出、すなわち脱着が起こる。異なるガスは吸着剤のマイクロポア又は自由体積を異なる程度で満たす傾向にあるので、ガス混合物のガスを分離するためにPSAプロセスを使用することができる。
【0003】
別の重要なガス分離技術の1つは温度スイング吸着(TSA)である。TSAプロセスも、ガスが、微孔質吸着材料の細孔構造中、又はポリマー材料の自由体積中に吸着される傾向にあることに依拠している。吸着剤の温度が上昇すると、吸着したガスの放出、すなわち脱着が起こる。ガス混合物中の1種類以上の成分に対して選択的である吸着剤とともに使用される場合に、吸着床の温度を周期的にスイングさせることによって、TSAプロセスを使用して混合物中のガスを分離することができる。
【0004】
従来の温度スイング吸着(TSA)プロセスでは、より低い温度で所望のガス成分が選択的に吸着し、続いてより高い温度でその成分が脱着する固体吸着剤が使用される。従来の固体吸着剤は、モノリス型構造、又は固体吸着剤粒子の床に対応しうる。
【0005】
金属有機構造体(MOF)、特にV型等温プロファイルを示すMOF、たとえばジアミンを付加したMOF、たとえばMg2(dobpdc)(dobpdc=4,4’-ジオキシド-3,3’-ビフェニルジカルボキシレート)に付加した2,2-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン(dmpn)、及びMg2(dobpdc)に付加したN,N’-ジメチルエチレンジアミン(mmen)は、従来技術で周知の吸着剤よりもガス吸着において大きく改善されたワーキングキャパシティ及びエネルギー効率(すなわち低温の吸着/脱着)を示している。低い分圧の収着質ガス、たとえばCO2濃度が約3~5%である天然ガス煙道ガスでは、上記の改善された能力を利用することができない。これは言い換えると、捕捉回復性能が低いことになる。V型吸着剤などの非常にエネルギー効率の高い吸着剤における吸着剤の最適な捕捉特性に厳密に適合させるために収着質の濃度を変化させると有利となる。
【0006】
すべての燃焼後(「PC」)のCO2捕捉技術は、煙道ガス中のCO2は低圧(わずか約1気圧)及び低濃度(3~15%)で存在するという欠点が問題となる。CO2を分離するために多量のエネルギーが必要となる。1気圧の煙道ガス中の10%のCO2を90%回収するためには、CO2を0.1気圧から1気圧して、次に150気圧の出口圧力までさらに圧縮する必要がある。NETLで行われた分析では、従来の吸収方法を用いるCO2の捕捉及び圧縮によって、新しく建設された超臨界PC発電所で得られる電気のコストが、64セント/kWhから118.8セント/kWhまで86%増加していることが示されている(非特許文献1、PCの場合4~48LCOEを示す)。水性アミンが、PC発電所のCO2を捕捉するための最先端技術と考えられているが、除去される1トンのCO2当たり68ドルのコストがかかる)(非特許文献2)。煙道ガスからのCO2の除去が経済的となる場合、エネルギー量及び他のコストが最小限となる方法の開発が必要となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Julianne M.Klara,DOE/NETL-2007/1281,Revision 1, August 2007
【文献】Klara 2007,DOE/NETL-2007/1282
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ガスストリームからCO2を除去する方法としては、溶媒を用いた収着、収着剤を用いた吸着、膜分離、及び極低温分別、並びにそれらの組合せが挙げられる。CO2を捕捉するための収着/脱着プロセスでは、収着剤又は溶媒を再生するために必要なエネルギーが大きなコストの要素となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(要旨)
気体成分を吸着するためのシステム及び方法が本明細書において提供され、上記システム及び方法は、本出願全体にわたって同義(又は交換可能)で議論することができる。一態様では、この方法は、以下のこと(又は工程又はステップ)を含む:
第1の温度で供給流を提供すること(又は工程又はステップ)であり、供給流が第1の濃度の気体成分を含むこと(又は工程又はステップ)と;
供給流を第2の温度まで冷却すること(又は工程又はステップ)であり、第2の温度が第1の温度よりも低いこと(又は工程又はステップ)と;
供給流を濃縮器に曝露し、それによって第2の濃度の気体成分を有する濃縮(又はエンリッチ)された供給流を形成すること(又は工程又はステップ)であり、気体成分の第2の濃度が気体成分の第1の濃度よりも高いこと(又は工程又はステップ)と;
濃縮された供給流を吸着剤粒子に曝露して、供給流よりも低い濃度の気体成分を有する吸着流出物(又は吸着剤流出物)を形成すること(又は工程又はステップ)であって、吸着剤粒子がV型吸着剤を含むこと(又は工程又はステップ)と;
第2の温度よりも高い脱着温度において少なくとも一部の気体成分を吸着剤粒子から脱着させること(又は工程又はステップ)。
幾つかの場合では、濃縮器は、膜、金属有機構造体、又はそれらの組合せを含む。別の場合では、濃縮された供給流は、O2レベルが増加した供給流の予燃焼供給流を燃焼させることによって形成され、それによってCO2に富む燃焼後供給流が形成される。
【0010】
吸着剤粒子の上流、濃縮の上流、供給流と吸着剤粒子との接触と同時、及び/又は、それらの組合せで、供給流の冷却を行うことができる。供給流と吸着剤粒子との接触と同時に供給流が冷却される場合、冷却は、細流床接触器、中空繊維接触器、交互の気体及び液体のチャネルを有するパラレル(並列)チャネルモノリス、シェル/チューブ(型)熱交換器、又はそれらの組合せによって実現(又は達成)することができる。
【0011】
ある態様では、気体成分の第1の濃度は1~10体積%である。別の態様では、気体成分の第2の濃度は約10~25体積%である。ある態様では、気体成分の第2の濃度は、V型吸着剤の下位捕捉限界(lower level capture limit)(後述のように定義される)に基づいて選択される。標的気体成分はCO2であってよい。供給流自体は、燃焼煙道ガス、天然ガス、及び/又は天然ガス燃焼煙道ガスなどの気体成分(又はガス成分又はガス状成分(gaseous component))を含む任意の数のストリームであってよい。脱着温度は、吸着温度よりも少なくとも20℃高温、たとえば20~40℃、20~70℃、又は20~100℃高温であってよい。
【0012】
別の態様では、脱着後の吸着剤粒子中の吸着された気体成分の充填量は、曝露終了時の吸着剤粒子中の気体成分の充填量の50%未満となる。さらに別の一態様では、流入流体を吸着剤粒子に曝露すること(又は工程又はステップ)は、スラリー接触器、流動床接触器、細流床接触器、中空繊維接触器、交互の気体及び液体のチャネルを有するパラレル(並列)チャネルモノリス、シェル/チューブ(型)熱交換器、又はそれらの組合せの中の吸着剤粒子に流入流体を曝露すること(又は工程又はステップ)を含む。吸着剤粒子は、アミンを付加した金属有機構造体、たとえばmmen-Mg2(dobpdc)及び/又はdmpn-Mg2(dobpdc)を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、I型~V型吸着剤によるガスの吸着等温線の例を概略的に示している。
【
図2】
図2は、I型吸着剤によるCO
2の吸着の場合の吸着等温線及びありうるワーキングキャパシティの例を概略的に示している。
【
図3】
図3は、V型吸着剤によるCO
2の吸着の場合の吸着等温線及びありうるワーキングキャパシティの例を概略的に示している。
【
図4】
図4A、
図4Bは、それぞれ不十分なCO
2濃度及び好ましいCO
2濃度におけるV型吸着剤によるCO
2の吸着の場合の吸着等温線及びありうるワーキングキャパシティの例を概略的に示している。
【
図5】
図5は、本明細書に記載のスイング吸着方法の実施に適切なシステムの例を概略的に示している。
【
図6】
図6A、
図6Bは、10%のCO
2供給濃度、並びにそれぞれ40℃及び75℃の吸着温度におけるV型吸着剤によるCO
2の破過点及びバイパスの例を概略的に示している。
【
図7】
図7A、
図7Bは、75℃において、それぞれ4%及び15%のCO
2濃度におけるCO
2の吸着の場合の吸着等温線の例を概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態の詳細な説明)
定義
本明細書において使用される場合、「破過点」という用語は、吸着床への曝露後に流出収着質濃度が流入収着質濃度に実質的に等しくなる点を意味し、これは吸着床が収着質で飽和することによって生じる。
【0015】
本明細書において使用される場合、「バイパス」という用語は、流入供給流中の収着質の特定の分圧において収着質の吸着に関して特定の吸着剤が不活性となる吸着等温線のために、流出収着質濃度の増加が見られる点を意味する。
【0016】
本明細書において使用される場合、「下位捕捉限界」は、それ未満では特定の吸着等温線でバイパスが起こる流入供給流中の収着質の分圧又は濃度を意味する。
【0017】
概観
スイング吸着プロセスは、供給混合物(典型的には気相)を、より容易に吸着する成分をあまり容易に吸着しない成分よりも優先的に吸着することができる吸着剤の上に流す、及び/又はその吸着剤に曝露する吸着ステップを有することができる。吸着剤の速度論的特性又は平衡特性のために、ある成分がより容易に吸着されうる。吸着剤は、典型的には、スイング吸着ユニットの一部である接触器中に収容される。この説明において、接触器は粒子状吸着床を含むことができるし、或いは粒子状吸着剤を伝熱流体中に懸濁させてスラリーを形成することもできる。スイング吸着ユニット中の別の構成要素は、バルブ、配管、タンク、及びその他の接触器であってよい。一部の態様では、複数の接触器を、スイング吸着システムの一部として使用することができる。これによって、吸着及び脱着を連続プロセスとして行うことができ、1つ以上の接触器が吸着のために使用されながら、1つ以上の追加の接触器が脱着のために使用される。接触器が吸着中に最大充填量に到達するとき、及び/又は脱着条件下で完全な脱着に到達するときには、接触器への流れを吸着と脱着との間で切り換えることができる。脱着ステップ後、吸着剤が実質的な充填量のガス成分を保持しうることに留意されたい。種々の態様では、脱着ステップ終了時の吸着剤の吸着ガス成分の充填量は、少なくとも約0.001モル/kg、又は少なくとも約0.01モル/kg、又は少なくとも約0.1モル/kg、又は少なくとも約0.2モル/kg、又は少なくとも約0.5モル/kg、又は少なくとも約1.0モル/kg、及び/又は約3.0モル/kg以下、又は約2.5モル/kg以下、又は約2.0モル/kg以下、又は約1.5モル/kg以下、又は約1.0モル/kg以下、又は約0.1モル/kg以下となりうる。これに加えて、又はこれとは別に、脱着ステップの終了時の充填量は、前の吸着ステップの終了時の充填量を基準として特徴付けることができる。脱着ステップ終了時の吸着剤の吸着ガス成分の充填量は、前の吸着ステップの終了時の吸着剤充填量の少なくとも約0.01%、又は少なくとも約0.1%、又は少なくとも約1%、又は少なくとも約5%、又は少なくとも約10%、又は少なくとも約20%、又は少なくとも約30%、又は少なくとも約50%、及び/又は約90%以下、又は約70%以下、又は約50%以下、又は約40%以下、又は約30%以下、又は約20%以下、又は約10%以下、又は約5%以下、又は約1%以下、又は約0.1%以下であってよい。
【0018】
吸着剤の再生方法によって、スイング吸着プロセスの種類が指定される。圧力スイング吸着(PSA)プロセスは、圧力下のガスが微孔質吸着材料の細孔構造中に吸着されやすいことに依拠している。圧力が高いほど、吸着される標的ガス成分の量が多くなる。圧力が低下すると、吸着した標的成分は放出され、すなわち脱着する。吸着剤の平衡特性又は速度論的特性のいずれかのために、異なるガスは、吸着剤マイクロポア又は自由体積を異なる程度で満たす傾向にあるので、ガス混合物のガスを分離するためにPSAプロセスを使用することができる。温度スイング吸着(TSA)プロセスも、ガスが微孔質吸着材料の細孔構造中に吸着されることに依拠している。吸着剤の温度が上昇すると、吸着したガスが放出され、すなわち脱着する。吸着床温度の周期的なスイングによって、ガス混合物中の1つ以上の成分に対して選択的な吸着剤とともに使用する場合に、混合物中のガスを分離するためにTSAプロセスを使用することができる。
【0019】
熱スイング吸着プロセスとも呼ばれる温度スイング吸着(TSA)プロセスは、吸着ステップと、熱支援再生ステップとの少なくとも2つのステップにより繰り返しサイクルが行われる吸着剤を使用することができる。吸着剤の再生は、吸着剤から標的成分を脱着させるために、吸着剤を有効温度まで加熱することによって行うことができる。次に、その吸着剤は、別の吸着ステップを完了できるように冷却することができる。TSAプロセスの連続する吸着ステップ間のサイクル時間は、典型的には約0.2分~約120分以上などの分のオーダーとなりうる。一部の態様では、TSAプロセスの連続する吸着ステップ間のサイクル時間は、約30分未満、又は約10分未満、又は約2分未満、又は約1分未満となりうる。サイクル時間は、細流床接触器の床の深さなどの吸着床の性質によって部分的には決定されうる。TSAプロセスは、90体積%を超え、たとえば95体積%を超え、又は場合によっては98体積%を超える非常に高い生成物回収率を得るために使用することができる。本明細書において使用される場合、「吸着」という用語は、固体支持体上への物理収着、化学収着、及び凝縮、固体に支持された液体中への吸収、固体に支持された液体中への化学収着、並びにそれらの組合せを含んでいる。
【0020】
TSAサイクルは、典型的には、吸着剤の温度を吸着ステップのための温度から脱着ステップのための温度まで変化させることも含むことができる。吸着ステップは、吸着のための成分を含有する流入ガスのためにガス流が開始する時点と、ガス流が停止する時点とに基づいて画定することができる。脱着ステップは、吸着剤から脱着するガスが収集される時点から収集が停止する時点に基づいて画定することができる。これらのステップの範囲外となるサイクル中のあらゆる時間は、吸着剤温度をさらに調節するために使用することができる。一部の態様では、床の温度を調節するために介在するステップを必ずしも必要とせずに、伝熱流体によって吸着/脱着ステップを開始することができるので、吸着ステップ及び脱着ステップのみに対応するTSAサイクルを行うことが伝熱流体によって可能となりうる。
【0021】
好都合な圧力において、又は好都合な圧力付近の小さい変動で、プロセスの実施が可能なことが、TSA分離の可能性のある利点の1つとなりうる。たとえば、TSA分離の目標の1つは、吸着し次に脱着するガス成分の実質的に純粋なストリームを形成することであってよい。この種類の態様では、脱着ステップに好都合な圧力は約1bar(100kPa)以下の温度であってよい。約100kPaを超えるストリームを脱着させようとすると、脱着のために実質的にさらなる温度上昇が必要となりうる。さらに、吸着のためのガス成分を含有する多くのストリームは、低圧となりうる「廃」ガス又は煙道ガスストリームに対応することができるので、周囲圧力は、吸着ステップでも同様に好都合な圧力となりうる。一部の態様では、吸着ステップと脱着ステップとの間の圧力差は、約1,000kPa以下、又は約200kPa以下、又は約100kPa以下、又は約50kPa以下、又は約10kPa以下となることができる。
【0022】
温度スイング吸着(TSA)を用いてガス流から成分を分離するために、さまざまな種類の固体吸着剤が利用可能である。従来のTSAプロセス中、ガス流中の少なくとも1つの成分は、固体吸着剤に優先的に吸着させることができ、吸着成分の濃度が低下したストリームを得ることができる。次に吸着成分は、固体吸着剤から脱着及び/又は置換させることができ、場合により、吸着成分の濃度が増加したストリームを形成することができる。
【0023】
本明細書の記述において、種々の位置で、ガス供給材料からのCO2の吸着、及び引き続く実質的に純粋なCO2ストリームの脱着に言及することができる。概念を説明するためにこの例が使用され、説明される一般的原理は、温度スイング吸着を行うためのガス成分と吸着剤とのあらゆる好都合な組合せに適用できることを当業者は理解されよう。この説明的な例では、精製プロセス又はガス発電所から得られる煙道ガスは、約0.1体積%~約10体積%のCO2濃度を有することができる。煙道ガスストリームからCO2を吸着し、次にCO2を脱着して、少なくとも90体積%のCO2、又は少なくとも95体積%、又は少なくとも98体積%を有するストリームなどの濃縮CO2ストリームを形成できることが望ましい。吸着/脱着サイクルの一部として吸着し次に脱着することができるCO2(又は別のガス成分)の量は、CO2/ガス成分に関する吸着剤のワーキングキャパシティと呼ばれる。
【0024】
V型等温線の吸着剤
吸着剤は、吸着剤が特定の気体成分の場合に有する吸着等温線の種類に基づいて特徴付けることができる。吸着剤は、一般に、吸着等温線の1985 IUPACの分類法に基づいて6種類に分類することができる。I型吸着剤は、気体成分の単層吸着に対応し、ラングミュア吸着等温線によって一般に表すことができる吸着等温線を有する。I型等温線の場合、単層は容易に吸着することができるが、圧力を上昇させても単層を超えるさらなる吸着はほとんど又は全くない。II型吸着剤は、多層吸着に対応する吸着等温線を有し、単層吸着に対応する中間圧力におけるプラトーを有する。III型吸着剤は、多層吸着を示すが、単層吸着に対応する中間プラトーは有さない。IV型及びV型吸着剤は、それぞれII型及びIII型吸着剤と類似しているが、毛管凝縮が可能となるマイクロポア及び/又はメソポアを有する吸着剤に対応する。このため吸着剤挙動にヒステリシスが生じうる。VI型等温線は、連続二次元相転移が生じうる段階的な吸着プロセスを表している。一部の吸着剤は、等温線の厳密な定義下での吸着の「等温線」を有さない場合があることに留意されたい。これは、たとえば、温度が変化するときに吸着剤中に生じる構造及び/又は相の変化のためである場合がある。ここでの議論では、吸着プロファイルの形状が、吸着中の吸着剤の構造変化のために真の「等温線」を示さない場合であっても、吸着剤は、対応するIUPAC分類法に基づいてI型~VI型の吸着剤として定義される。
図1は、I~V型の典型的な吸着等温線の概略図を示している。
【0025】
種々の態様では、非常にエネルギー効率的な吸着剤(V型吸着剤など)の捕捉特性を最適化するために、流入流体中の気体収着質の濃度を調節する方法が本明細書に提供される。V型等温線の段階的な性質のため、mmen-Mg2(dobpdc)及びdmpn-Mg2(dobpdc)のような吸着剤のワーキングキャパシティは、吸着条件における全容量の少なくとも約80%、又は全容量の少なくとも約90%など、全吸着容量とほぼ同じになることができる。これは、ワーキングキャパシティが約1mol/kg未満である及び/又はワーキングキャパシティが吸着条件における全吸着容量の約50%未満に相当する、I型等温線を有する多くの典型的な吸着剤のワーキングキャパシティとは対照的である。この場合も、以下の記述は、天然ガス発電所の煙道ガスからCO2を除去する代表的な場合に集中しているが、本明細書に記載の一般的な方法は、あらゆる気体収着質に適用可能であり、V型吸着剤などの高容量吸着剤上の吸着を最大化するために、その収着質の濃度を調節しながら、バイパスの回避も行うことができることを当業者は理解すべきである。
【0026】
図2は、I型吸着等温線を示すゼオライト13XのCO
2吸着等温線の例を示している。CO
2の吸着/脱着のためにゼオライト13Xを使用すると、典型的な煙道ガス中にH
2Oが存在するために、ある種の問題が発生しうることに注目される。しかし、ゼオライト13Xは、吸着/脱着サイクルの概念の説明に適している。
図2中、煙道ガス中で生じうるCO
2の代表的な希薄濃度として4体積%のCO
2濃度を選択した。
図2中、垂直の点線は、4体積%又は100体積%のいずれかの濃度に対応するCO
2の分圧(4kPa又は100kPa)を示している。
図2中に示されるように、この吸着等温線は温度とともに変化し、より低い温度は特定の温度におけるより多い量の吸着CO
2に対応している。
【0027】
ワーキングキャパシティを求める方法の1つは、ガス成分/固体吸着剤の組合せの吸着等温線に基づいている。吸着等温線を使用し、吸着及び脱着中のガス成分の予想濃度に基づくと、ワーキングキャパシティは、吸着及び脱着条件下でのガス成分の吸着量の差として計算することができる。
図2中に示される値によって、27℃の吸着温度及び140℃の脱着温度におけるゼオライト13XによるCO
2吸着のワーキングキャパシティを求めることが可能となる。
図2の値に基づくと、約100kPaの全圧において、
図2中の水平線に示されるように、吸着剤のワーキングキャパシティは、吸着剤1キログラム当たり約0.5モルのCO
2である。27℃の等温線と、4体積%のCO
2に相当する垂直の点線との交点は、100kPa及び27℃における仮想的な吸着ステップ中のガスストリームからのCO
2の吸着のための吸着剤の吸着容量を表しており、その値は約3モルCO
2/kgである。同様に、140℃の等温線と、100%のCO
2に相当する垂直の点線との交点は、140℃及び100kPaにおいて実質的に純粋なCO
2ストリームを脱着しようと試みる場合に、吸着剤によって維持されるCO
2の予想量を表しており、その値は約2.5モルCO
2/kgである。
図2中の水平線は、これらの値の差を示しており、約0.5モルCO
2/kgのワーキングキャパシティに相当する。
【0028】
27℃の等温線及び140℃の等温線に基づくワーキングキャパシティの上記計算は、ワーキングキャパシティの理想的な値を表している。残念ながら、サイクルの吸着部分の間の吸着剤の温度上昇のために、吸着剤の実際のワーキングキャパシティは、典型的には理想的な値よりも小さくなる。ガス成分が固体吸着剤に吸着される場合、吸着熱に相当するある量の熱が発生しうる。この発生した熱によって、吸着剤から熱を輸送するためのガス流の熱容量が限定されているため、典型的には吸着剤の温度上昇が起こる。1モル/キログラムにおおよそ対応する吸着量の場合、吸着剤の対応する温度上昇は、数十℃のオーダーとなりうる。
図2は、この吸着剤の温度上昇がどのようにワーキングキャパシティに影響を与えうるかの一例を示している。
図2に示される例の場合、27℃から45℃への吸着剤温度の上昇(吸着剤によるガス成分の吸着に基づいて生じうる代表的な温度上昇)によって等温線が移動しうる。45℃では、吸着剤のワーキングキャパシティは、たとえば、140℃の脱着温度を仮定すると1キログラム当たり約0モルまでさらに低下する。
【0029】
従来のI型吸着剤の場合、温度が上昇すると等温線の急勾配が徐々に減少し(
図2中に示される)、分離のための大きなワーキングキャパシティを実現するためには高い脱着温度が必要となる。対照的に、V型吸着剤の等温線では、温度が上昇すると、等温線の段の位置がより高い圧力の方に明らかに移動し、それによって、小さな温度上昇のみで大きなワーキングキャパシティを実現できる。高いCO
2回収率(すなわち煙道ガスからの大きなCO
2除去)及び生成ストリーム中の高いCO
2純度を有する効率的な炭素捕捉プロセスのために、理想的には、所望のCO
2回収率を実現するために必要な煙道ガス中のCO
2の分圧未満、すなわち吸着剤の下位捕捉限界において配置された大きな垂直の段を有するV型吸着剤が形成される。
【0030】
V型等温線の吸着剤は、高ワーキングキャパシティ吸着剤として大きな可能性があるが、低い分圧における低い捕捉率が問題となる。すなわち、付加したジアミンが揮発又は分解のために減少する温度より低い脱着温度を有しながら、吸着剤が、≦0.4%となるまでCO2を捕捉する必要があるので、4%のCO2の天然ガス発電所の煙道ガスから≧90%のCO2を捕捉するためには、V型の吸着段階を有する吸着剤は問題となる。実際、より低いCO2分圧における捕捉は高い脱着温度下で行われる。したがって、吸着中の流入収着質の分圧及びガスの温度は、プロセス設計の重要なパラメータとなる。温度を変動させることができるが、温度が室温に近づき室温よりも低温になると、コストが非常に高くなる。
【0031】
図3は、CO
2用のV型吸着剤である材料のCO
2等温線(経験的モデルを用いて計算された)の例を示している。
図3中のモデル化された材料は、mmen-Mg
2(dobpdc)である。この材料は膨張したMOF-74構造を有し、mmenは、構造中の18.4オングストロームのチャネルのジアミン官能化である。この材料に関するさらなる詳細は、たとえば、mmen-Mg
2(dobpdc)吸着剤において、Thomas M.McDonald,Woo Ram Lee,Jarad A.Mason,Brian M.Wiers,Chang Seop Hong,and Jeffrey R.Long,J.Am.Chem.Soc.2012,134,7056-7065に見ることができる。
図3は、4%のCO
2を有する供給流のCO
2吸着をモデル化しており、所望のCO
2減少は90%であり、すなわち0.4%のCO
2への減少である。図示されるように、このCO
2減少目標は50℃の吸着温度及び155℃の脱着温度において達成することができる。
【0032】
図4A及び4Bは、供給流中の種々のレベルのCO
2におけるCO
2用V型吸着剤である材料のCO
2等温線の例を示している。
図4A及び4B中の材料はdmpn-Mg
2(dobpdc)である(Milner,Phillip J.,et al.,“A Diaminopropane-Appended Metal-Organic Framework Enabling Efficient CO
2 Capture from Coal Flue Gas Via a Mixed Adsorption Mechanism”, Journal of the American Chemical Society,2017,139,13541-13553)。
図4Aは、V型吸着剤のワーキングキャパシティを効果的に利用し吸着剤を通過するCO
2のバイパスを回避するためには、供給材料中のCO
2濃度が不十分である場合を示している。等温線上の破線は、約4%(40mbar)のCO
2濃度を有する天然ガス発電所の煙道ガスの吸着を示している。CO
2濃度を90%低下させるためには、点線によって画定される約0.4%(4mbar)のCO
2濃度において、等温線が十分な吸着を示すべきである。40℃の吸着温度及び100℃の脱着温度を使用すると、
図4A中、0.4%のCO
2において、ごくわずかな吸着(約0.08mol/kg)が存在することが分かり、これは吸着剤全体で顕著な量のCO
2のバイパスが起こっていることを意味する。煙道ガスの温度を低下させると、等温線をプロット上で左に移動させることができるが、40℃未満に吸着温度を低下させると、製油所及び発電所の条件において非常に費用がかかるようになる。本明細書に開示されるより良い選択肢の1つは、供給流中のCO
2の分圧を上昇させることによって、すなわち天然ガス発電所の煙道ガスのCO
2濃度を石炭発電所の煙道ガスのCO
2濃度により近づけるために天然ガス発電所の煙道ガスのCO
2濃度を増加させることによって、操作領域を移動させることである。
【0033】
図4Bは、V型吸着等温プロファイルを効果的に利用する方法におけるCO
2濃縮器を含むことの利点を実際的に示している。4B中に示される等温線は、約15%又は約150mbarのCO
2まで濃縮された供給流に関し、40℃の吸着温度、100℃の脱着温度、及び約1.5%若しくは約15mbarまでの少なくとも90%のCO
2の減少を有する。したがって、指定の温度におけるこの減少目標を実現するために、約15mbar以下において段階的変化を示す吸着剤が望まれ、
図4Bはこれを明確に示している(段階的変化、又は下位捕捉限界が約10mbarで生じる)。1.5%のCO
2レベルにおいて、依然としてCO
2は約0.45mol/kgで吸着される。
【0034】
したがって、高容量吸着剤の吸着特性を最適化させるレベルまで収着質ガスの濃度を増加させるためのガス濃縮基が本明細書において提供される。天然ガスの煙道ガス中のCO2の燃焼後の濃縮は当技術分野において周知であり、多数の異なる方法で実現することができる。たとえば、参照により本明細書に援用されるSundaramの米国特許出願公開第2017/0087503号明細書には、最初にTSA吸着プロセスがCO2濃縮器として使用されて、CO2に富むストリームが形成され、これが第2段階の吸着プロセスでさらに分離される2段階の吸着剤及び方法が記載されている。Sundaramは、この方法に使用される平行板接触器、吸着剤モノリス、及び金属有機構造体などの多数の吸着剤接触器を記載している。参照により本明細書に援用される刊行物のMerkel,T.C.et al.,Selective Exhaust Gas Recycle with Membranes for CO2 Capture from Natural Gas Combined Cycle Power Plants,52 INDUS.& ENG’G CHEM.RES.1150-59(2013)において、著者らは、天然ガスの煙道ガスをO2及びN2よりもCO2に対して選択的の膜に接触させて、CO2に富む透過ストリームを形成する排気ガス再循環方法を記載している。
【0035】
これに加えて、又はこれとは別に、排気ストリーム中のCO2濃度は、O2に富む酸化剤を提供することによって、燃焼前に増加させることができる。たとえば、燃料がメタンであり、酸化剤が空気である場合、排気ストリームのCO2濃度は約4%である。空気の酸素を増加させ、それによって排気CO2濃度を増加させることができる。
【0036】
V型吸着剤の使用における別の必要な側面の1つは熱管理である。天然ガス発電所の煙道ガスは、典型的には吸着剤床と接触する前に冷却する必要があり、煙道ガスは典型的には約120℃で熱回収蒸気発生器を出る。
図3中に示されるように、収着質ガスの吸着剤として使用される場合、V型吸着剤は、温度上昇の影響を非常に受けやすいことがある。プロセス制御のために、煙道ガスを周囲温度よりも高い初期吸着温度まで冷却することが望ましく、それによって吸着プロセスが周囲条件とは無関係に繰り返し可能となり、より高い温度における水の共吸着が少なくなり、これによって寄生エネルギーも低くなる。
【0037】
さらに、吸着プロセス中に熱が発生する。約3mol/kgの容量の吸着剤CO2吸着中に発生する熱によって、吸着剤の温度が約50℃以上上昇することができる。従来の条件下では、これは、低い実際のワーキングキャパシティ、及び/又は予測できないワーキングキャパシティの原因となりうる。mmen-Mg2(dobpdc)などのV型吸着剤の場合、このような温度上昇によって、CO2のバイパスが生じうる。したがって、吸着剤床自体の冷却の実施が有益となる場合がある。冷却器を使用すると、CO2の吸着中の温度上昇を減少させたり最小限にしたりすることができ、それによって吸着剤の温度上昇が、下位捕捉限界より上で吸着操作を維持するために必要な量未満となるべきであり、このような温度上昇を25℃以下、20℃以下、15℃以下、10℃以下、又は5℃以下、又は2℃以下にすることができる。この種類の減少した、又は最小限の温度上昇のために、初期吸着温度は、等温線中の少なくともすべての段階的増加の吸着が可能となるように選択することができる。
【0038】
したがって、煙道ガスの温度を低下させ、及び/又は吸着サイクル中に生じる固体吸着剤の温度上昇を最小限にするための熱管理システムが提供される。このような温度上昇を最小限にすることで、吸着剤のワーキングキャパシティを高めることができ、及び/又は従来の吸着方法を使用した工業規模の吸着には実用的ではない吸着剤(V型吸着剤など)の使用が可能となる。熱管理された吸着器の例としては、参照によりその全体が援用される米国特許出願公開第2017/0087506号明細書に記載のような細流床吸着器、中空繊維接触器、交互の気体及び液体のチャネルを有する並列チャネルモノリス(場合により3D印刷される)、及び吸着剤を有するシェル/チューブ型熱交換器が挙げられる。これと、熱フロントが吸着フロントよりも速く移動するような相対液体/気体速度の使用との組合せで、熱伝達が可能となる。これによって改善された熱の回復及び/又は吸着剤の温度管理が可能となる。吸着熱によるあらゆる吸着容量の低下を軽減したり、最小限にしたりすることができ、それによって(限定するものではないが)V型吸着剤などの高容量吸着剤の使用がより現実的となりうる。細流床吸着器の場合、熱の除去が多いため、流入する天然ガスの煙道ガスを冷却する必要がない場合がある。
【0039】
接触器の構成
種々の態様では、改善されたV型吸着剤接触器のプロセス及びシステムでは、V型吸着剤の吸着効率を最大化しバイパスを最小限にするために、供給流中の収着質ガスの分圧が操作される。
図5は代表的なV型接触器システム500を示している。図示されるように、収着質ガス(たとえば天然ガス発電所からのCO
2を含む煙道ガス)を含む供給流504は、供給流の温度をV型吸着剤503中の吸着に適切な吸着温度にするために、冷却器501に送られる。適切な吸着温度は、好ましくは周囲温度より少し上であり、たとえば20~70℃、30~60℃、40~50℃である。冷却された供給流は次に濃縮器502に送られ、ここで収着質に富むストリーム及び収着質の少ないストリーム505が得られる。収着質に富むストリームは次にV型吸着剤接触器503に送られる。収着質の少ないストリームは、供給流504中に再循環させることができ、又はさらなる処理のために別の製油所又は発電所の装置に送ることができる。吸着等温線の段階的な増加が、流出ストリーム506中の収着質ガスの所望の分圧より下で起こるように、収着質に富むストリームは、十分な濃度の収着質ガスを有するべきである。流出ストリーム506は、一般に、収着質に富むストリームの分圧(又は濃度)の少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%少ない収着質ガスの分圧(又は濃度)を有する。次にV型吸着剤接触器503中の温度を、吸着したガスの脱着温度まで上昇させることができ、これによって次に脱着したストリーム507が形成され、次にこれは除去のために送出することができる。脱着温度は好ましくは200℃未満、175℃未満、150℃未満、125℃未満、又は100℃未満である。上記パラメータは範囲で表すこともでき、たとえば80~95%の減少又は100~200℃、並びに上記のあらゆる組合せが考慮されることを理解されたい。
【0040】
これは単なる代表的なシステムであり、システムの構成要素は合体させたり、異なる順序にしたりすることが可能なことに留意されたい。たとえば、細流床吸着器の場合、冷却器501はV型吸着剤503中に組み込まれる。燃焼流出物中により高濃度のCO2を生成するためのO2に富む燃焼の場合、濃縮器502は冷却器501より前に配置される。
【実施例】
【0041】
実施例:バイパスの回避
図6A及び6Bは、V型等温線吸着剤に対して吸着温度が有することができる影響(affect)を示している。
図6A中、吸着剤床は、吸着熱による温度上昇を軽減するために1gの石英チップと混合された209.6mgのmmen-Mg
2(dobpdc)吸着剤から構成される。この床は、120℃の乾燥N
2流に終夜曝露することによって活性化させた。供給流は10%のCO
2濃度と残余のN
2とから構成される。供給流は20sccm(標準立方センチメートル/分)の供給速度で床に導入される。吸着温度は40℃であり、脱着温度は120℃である。グラフには、流出ストリーム中のCO
2濃度及び温度が示されている。図示されるように約500秒までは流出ストリーム中にCO
2が存在せず、すなわちバイパスがなく、約500秒でCO
2濃度が10%まで上昇し、これは吸着床の飽和又は破過点を示している。次に温度を120℃まで上昇させると吸着したCO
2が脱着し、脱着の証拠は約1400秒で生じるCO
2濃度のスパイクである。
【0042】
図6Bには、吸着温度を75℃まで上昇させる(これは
図3中に示される吸着等温線の右への移動と同等である)ことを除けば
図6Aに関してすぐ上に記載したものとすべて同じパラメータが示されている。この場合、本発明者らは100~200秒の間で約1.2%のCO
2のバイパスを確認し始めている。これは、75℃の吸着温度において、1.2%未満のCO
2濃度ではCO
2が吸着されないことを意味する。したがって、90%の減少はCO
2は、75℃の吸着温度において12%未満のCO
2の供給流濃度では、mmen-Mg
2(dobpdc)吸着剤を用いては達成されない。
【0043】
このことは、75℃の吸着温度の場合の実験的なV型吸着等温線を示すプロット7A及び7Bによって確認される。特に、本発明者らは、等温線の段階的な増加、すなわち下位捕捉限界が正確に1.2%のCO
2濃度において生じることを確認しており、これは
図6B中でバイパスが見られる点に対応している。したがって、90%のCO
2の吸着を実現するためには、本明細書に記載の任意の数の濃縮器を使用して、供給流のCO
2濃度を増加させて、吸着剤床中のバイパスを回避することができる。
図7Bは、CO
2を15%まで濃縮することで、バイパスなしにCO
2を1.5%まで90%減少させることが可能なことを示している。
【0044】
さらなる実施形態
これに加えて、又はこれとは別に、本発明は以下の実施形態の1つ以上を含むことができる。
【0045】
実施形態1
気体成分(又はガス成分又はガス・コンポーネント(gas component))の吸着(又はアドソービング(adsorbing))のための方法であって、
第1の温度で供給流(又はフィードストリーム(feedstream))を提供すること(又は工程又はステップ)であり、供給流が第1の濃度の気体成分を含むこと(又は工程又はステップ)と;
供給流を第2の温度まで冷却すること(又は工程又はステップ)であり、第2の温度が第1の温度よりも低いこと(又は工程又はステップ)と;
供給流を濃縮器(又はコンセントレーター(concentrator))に曝露すること(又は工程又はステップ)であり、それによって第2の濃度の気体成分を有する濃縮(又はエンリッチ)された供給流を形成すること(又は工程又はステップ)であって、気体成分の第2の濃度が、気体成分の第1の濃度よりも高いこと(又は工程又はステップ)と;
濃縮された供給流を吸着剤粒子に曝露すること(又は工程又はステップ)であり、供給流よりも低い濃度の気体成分を有する吸着流出物(又は吸着剤流出物(adsorbent effluent))を形成すること(又は工程又はステップ)であって、吸着剤粒子がV型吸着剤(又はタイプVアドソーベント(Type V adsorbent))を含むこと(又は工程又はステップ)と;
第2の温度よりも高い脱着温度において、少なくとも一部の気体成分を吸着剤粒子から脱着させること(又は工程又はステップ)と
を含む方法。
【0046】
実施形態2
気体成分の第2の濃度が、V型吸着剤の下位捕捉限界に基づいて選択される、実施形態1の方法。
【0047】
実施形態3
気体成分がCO2を含む、上記実施形態のいずれかの方法。
【0048】
実施形態4
供給流が燃焼煙道ガスである、上記実施形態のいずれかの方法。
【0049】
実施形態5
供給流が天然ガスの燃焼煙道ガスである、実施形態1~3のいずれかの方法。
【0050】
実施形態6
供給流が天然ガスである、実施形態1~3のいずれかの方法。
【0051】
実施形態7
気体成分の第1の濃度が約1~10体積%である、上記実施形態のいずれかの方法。
【0052】
実施形態8
気体成分の第2の濃度が約10~25体積%である、上記実施形態のいずれかの方法。
【0053】
実施形態9
脱着後の吸着剤粒子中の吸着された気体成分の充填量(又はローディング(loading))が、曝露終了時の吸着剤粒子中の気体成分の充填量の50%未満である、上記実施形態のいずれかの方法。
【0054】
実施形態10
脱着温度が第2の温度よりも少なくとも約20℃高い、上記実施形態のいずれかの方法。
【0055】
実施形態11
供給流を冷却すること(又は工程又はステップ)が、濃縮器の上流の供給流を冷却すること(又は工程又はステップ)を含む、上記実施形態のいずれかの方法。
【0056】
実施形態12
供給流を冷却すること(又は工程又はステップ)が、濃縮された供給流を吸着剤粒子に曝露すること(又は工程又はステップ)と同時に、供給流を冷却すること(又は工程又はステップ)を含む、上記実施形態のいずれかの方法。
【0057】
実施形態13
冷却すること(又は工程又はステップ)が、細流床接触器(trickle bed contactor)、中空繊維接触器(hollow fiber contactor)、交互(alternating)の気体及び液体のチャネルを有するパラレル(並列)チャネルモノリス(parallel channel monolith)、シェル/チューブ(型)熱交換器(shell/tube heat exchanger)、又はそれらの組合せによって実現(又は達成)される、実施形態12の方法。
【0058】
実施形態14
濃縮器が、膜(又はメンブレン(membrane))、金属有機構造体(又はメタル・オーガニック・フレームワーク(metal organic framework))、又はそれらの組合せを含む、上記実施形態のいずれかの方法。
【0059】
実施形態15
供給流が燃焼後供給流(又はポスト燃焼フィードストリーム(post-combustion feedstream))であり、供給流を濃縮器に曝露すること(又は工程又はステップ)が、
予燃焼供給流(又はプリ燃焼フィードストリーム(pre-combustion feedstream))のO2を増加(又はエンリッチ)させること(又は工程又はステップ)と、
予燃焼供給流を燃焼させて、CO2に富む燃焼後供給流を生成すること(又は工程又はステップ)と
を含む、上記実施形態のいずれかの方法。
【0060】
実施形態16
流入流体(又はインプット・フルード(input fluid))を吸着剤粒子に曝露すること(又は工程又はステップ)が、スラリー接触器、流動床接触器、細流床接触器、中空繊維接触器、交互の気体及び液体のチャネルを有するパラレル(並列)チャネルモノリス、シェル/チューブ(型)熱交換器、又はそれらの組合せの中の吸着剤粒子に流入液体を曝露すること(又は工程又はステップ)を含む、上記実施形態のいずれかの方法。
【0061】
実施形態17
吸着剤粒子が、アミンを付加した金属有機構造体を含む、上記実施形態のいずれかの方法。
【0062】
実施形態18
アミンを付加した金属有機構造体がmmen-Mg2(dobpdc)及びdmpn-Mg2(dobpdc)の1つを含む、実施形態17の方法。
【0063】
実施形態19
ガス流からCO2を分離するシステムであって、
吸着剤粒子の床を含む接触器であって、吸着剤粒子がV型吸着剤を含み、吸着剤粒子が、吸着剤1キログラム当たり少なくとも約1.0モルのCO2の吸着剤充填量(又はアドソーベント・ローディング(adsorbent loading))を有する接触器と;
CO2を含む流入流体を受け取るための、接触器の上流に配置される、又は接触器と合体する冷却要素(又はクーリング・エレメント(cooling element))と;
接触器の上流に配置され、接触器及び冷却要素に流体接続されるCO2濃縮器と
を含む、システム。
【0064】
実施形態20
V型吸着剤が、アミンを付加した(amine appended)金属有機構造体を含む、実施形態19のシステム。
【0065】
実施形態21
アミンを付加した金属有機構造体がmmen-Mg2(dobpdc)及びdmpn-Mg2(dobpdc)の1つを含む、実施形態20のシステム。