(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】追跡範囲内における目の動きの追跡
(51)【国際特許分類】
A61B 3/113 20060101AFI20240604BHJP
A61F 9/008 20060101ALI20240604BHJP
G06T 7/20 20170101ALI20240604BHJP
G06T 7/246 20170101ALN20240604BHJP
【FI】
A61B3/113
A61F9/008 140
G06T7/20 300B
G06T7/246
(21)【出願番号】P 2020518762
(86)(22)【出願日】2018-09-24
(86)【国際出願番号】 IB2018057356
(87)【国際公開番号】W WO2019069171
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-08-27
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-13
(32)【優先日】2017-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(72)【発明者】
【氏名】ジェシカ ユーリヒ
(72)【発明者】
【氏名】ホリア グレク
(72)【発明者】
【氏名】マルティン グリュンディヒ
(72)【発明者】
【氏名】トビアス ユーラ ラポポルト
【合議体】
【審判長】加々美 一恵
【審判官】渡▲辺▼ 純也
【審判官】渡戸 正義
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-506139(JP,A)
【文献】特開2013-39148(JP,A)
【文献】特開2003-79657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B3/00 - 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目の動きを追跡するためのシステムであって、
前記目の複数の画像を生成するように構成されたカメラシステムと、
コンピュータシステムであって、
複数の
デジタル画像を格納し、且つ前記
デジタル画像の少なくとも1つを基準画像として格納するように構成されたメモリと、
1つ又は複数のプロセッサであって、
前記基準画像において、前記目の基準中心点及び1つ又は複数の基準となる目の特徴を特定することと、
前記複数の画像のうちの現在の画像において、前記目の現在の中心点及び1つ又は複数の現在の目の特徴を特定することと、
前記目の前記基準中心点と前記目の現在の前記中心点とを追跡し、1つ又は複数の前記基準となる目の特徴と1つ又は複数の前記現在の目の特徴とを比較し、かつ、前記現在の画像
の1つ又は複数の前記現在の目の特徴と前記基準画像の
1つ又は複数の前記基準となる目の特徴との比較から前記目の回転の動きを判定することにより、追跡範囲内の前記目の回転の動きを追跡することであって、前記追跡範囲は、1つ又は複数の警告点を有する、追跡することと、
前記追跡範囲の少なくとも1つの警告点に対する前記目の回転の方位を判定することと
を行うように構成された1つ又は複数のプロセッサと
を含むコンピュータシステムと、
前記追跡範囲の前記少なくとも1つの警告点に対する前記目の前記回転の方位を示す範囲インジケータを出力するように構成された出力装置と
を含むシステム。
【請求項2】
前記出力装置は、グラフィカル要素として前記範囲インジケータを示すディスプレイを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記グラフィカル要素は、
前記追跡範囲を表す線形要素であって、前記追跡範囲の前記少なくとも1つの警告点を表す少なくとも1つの警告点要素を有する線形要素と、
前記目に対応するスライダ要素であって、前記警告点要素に対する前記スライダ要素の位置は、前記追跡範囲の前記少なくとも1つの警告点に対する前記目の前記回転の方位を表す、スライダ要素と
を含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記グラフィカル要素は、
前記追跡範囲を表す線形要素であって、前記追跡範囲の前記少なくとも1つの警告点を表す少なくとも1つの警告点要素を有する線形要素と、
前記目に対応する矢印要素であって、前記警告点要素に対して前記矢印要素が指し示す位置は、前記追跡範囲の前記少なくとも1つの警告点に対する前記目の前記回転の方位を表す、矢印要素と
を含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記グラフィカル要素は、前記追跡範囲の前記少なくとも1つの警告点に対する前記目の前記回転の方位における変化を示すために第1の色から第2の色に連続的に変化する、請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
前記グラフィカル要素は、前記追跡範囲の前記少なくとも1つの警告点に対する前記目の前記回転の方位における変化を示すために第1の形状から第2の形状に連続的に変化する、請求項2に記載のシステム。
【請求項7】
前記グラフィカル要素は、前記追跡範囲の前記少なくとも1つの警告点に対する前記目の前記回転の方位における変化を示すために第1のサイズから第2のサイズに連続的に変化する、請求項2に記載のシステム。
【請求項8】
前記グラフィカル要素は、前記追跡範囲の前記少なくとも1つの警告点に対する前記目の前記回転の方位における変化を示すために第2の数に連続的に変化する第1の数を示す、請求項2に記載のシステム。
【請求項9】
前記グラフィカル要素は、前記追跡範囲の前記少なくとも1つの警告点に対する前記目の前記回転の方位における変化を示すために第2の単語に変化する第1の単語を示す、請求項2に記載のシステム。
【請求項10】
前記出力装置は、前記範囲インジケータを音声として発するスピーカを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記スピーカは、前記追跡範囲の前記少なくとも1つの警告点に対する前記目の前記回転の方位における変化を示すために周波数において連続的に変化する音声を発する、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記スピーカは、前記追跡範囲の前記少なくとも1つの警告点に対する前記目の前記回転の方位における変化を示すためにボリュームにおいて連続的に変化する音声を発する、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記スピーカは、前記追跡範囲の前記少なくとも1つの警告点に対する前記目の前記回転の方位における変化を示すために単語を発する、請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
画像処理システムは、ユーザ入力から前記1つ又は複数の警告点のうちの警告点の選択を受信する、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記目の前記回転の動きの通知を受信することと、
前記通知に応じてレーザビームの位置を変更することと
を行うように構成されたレーザシステムを更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
目の動きを追跡するための方法であって、
前記目の複数の画像を生成することと、
複数の
デジタル画像と、基準画像としての前記
デジタル画像の少なくとも1つとを格納することと、
前記基準画像において、前記目の基準中心点及び1つ又は複数の基準となる目の特徴を特定することと、
前記複数の画像のうちの現在の画像において、前記目の現在の中心点及び1つ又は複数の現在の目の特徴を特定することと、
前記目の前記基準中心点と前記目の現在の前記中心点とを追跡し、1つ又は複数の前記基準となる目の特徴と1つ又は複数の前記現在の目の特徴とを比較し、かつ、前記現在の画像
の1つ又は複数の前記現在の目の特徴と前記基準画像の
1つ又は複数の前記基準となる目の特徴との比較から前記目の回転の動きを判定することにより、追跡範囲内の前記目の回転の動きを追跡することであって、前記追跡範囲は、1つ又は複数の警告点を有する、追跡することと、
前記追跡範囲の少なくとも1つの警告点に対する前記目の回転の方位を判定することと、
前記追跡範囲の前記少なくとも1つの警告点に対する前記目の前記回転の方位を示す範囲インジケータを出力することと
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、アイトラッキングに関し、より具体的には、追跡範囲内における目の動きの追跡に関する。
【背景技術】
【0002】
画像誘導システムは、白内障屈折矯正装置及びLASIK手術装置などの眼科手術装置と共に使用するために開発された。システムは、目の特徴、例えば強膜血管、角膜縁及び虹彩の特徴を捕捉する、患者の目のデジタル画像を作成する。この画像は、例えば、切開及びレンズ整列の位置をリアルタイムに定めるために用いられる。システムは、目の並進及び回転の動きを検出するアイトラッキング能力を有し得る。幾つかのシステムにおいて、アイトラッキングは、手術中にレーザビームをターゲット上に保つことを促進する。研究は、アイトラッキングがより良好な結果をもたらし、且つ複雑さを低減させることを示した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
ある実施形態において、目の動きを追跡するためのシステムは、カメラシステム、コンピュータシステム及び出力装置を含む。カメラシステムは、目の画像を生成する。コンピュータシステムは、メモリ及び1つ又は複数のプロセッサを含む。メモリは、画像と、基準画像としての画像の少なくとも1つとを格納する。プロセッサは、複数の画像の現在の画像を基準画像と比較することにより、且つ現在の画像及び基準画像の比較から目の動きを判定することにより、追跡範囲内の目の動きを追跡する。追跡範囲は、1つ又は複数の警告点を有する。プロセッサは、追跡範囲の少なくとも1つの警告点に対する目の方位も判定する。出力装置は、追跡範囲の少なくとも1つの警告点に対する目の方位を示す範囲インジケータを出力する。
【0004】
ある実施形態において、目の動きを追跡するための方法は、目の画像を生成することを含む。画像は、格納され、及び画像の少なくとも1つは、基準画像として格納される。目の動きは、複数の画像の現在の画像を基準画像と比較することにより、且つ現在の画像及び基準画像の比較から目の動きを判定することにより、追跡範囲内で追跡される。追跡範囲は、1つ又は複数の警告点を有する。目の方位は、追跡範囲の少なくとも1つの警告点に対して判定される。追跡範囲の少なくとも1つの警告点に対する目の方位を示す範囲インジケータが出力される。
【0005】
本開示の実施形態は、添付の図に関連してより詳細に例として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】レーザ治療手術中に目の動きを追跡するためのシステムの一実施形態を示す。
【
図2A-2B】異なる追跡セッション中の範囲インジケータの例を示す。
【
図3A-3B】スライダ要素を備えたグラフィカル要素の例を示す。
【
図4A-4B】矢印要素を備えたグラフィカル要素の例を示す。
【
図5A-5D】色を変えるグラフィカル要素の例を示す。
【
図6A-6D】形状を変えるグラフィカル要素の例を示す。
【
図7A-7B】サイズを変えるグラフィカル要素の例を示す。
【
図8A-8D】数を表示するグラフィカル要素の例を示す。
【
図9A-9D】単語を表示するグラフィカル要素の例を示す。
【
図10A-10B】周波数において変化する音声の例を示す。
【
図11A-11B】ボリュームにおいて変化する音声の例を示す。
【
図12】
図1のシステムによって実行され得る、目の動きを追跡するための方法の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
ここで、説明及び図面を参照すると、開示される機器、システム及び方法の例示的な実施形態が詳細に示されている。この分野の当業者に明白であるように、開示される実施形態は、例示的なものであり、全ての可能な実施形態を網羅したものではない。
【0008】
図1は、例えば、手術又は診断処置中に目12の動きを追跡するためのシステム10の一実施形態を示す。システム10は、目の追跡範囲の警告点に対する目12の方位を示す範囲インジケータを提供し、その結果、ユーザは、目12が追跡範囲外に動きそうであることを、目12が実際にそうする前に判定することができる。これは、追跡範囲外に動くことの幾つかの望ましくない影響を回避するために用いることができる。例えば、幾つかのシステムにおいて、追跡範囲が超えられた場合、システムは、追跡を中止し、それは、手術時間を引き延ばす。別の例として、システムは、追跡範囲が超えられた場合、誤検出追跡を報告し得る。
【0009】
図示の実施形態において、システム10は、コンピュータシステム20、カメラシステム22、レーザシステム24及び出力装置26を含む。コンピュータシステム20は、1つ又は複数のメモリ30及び1つ又は複数のプロセッサ32を含む。ある実施形態において、カメラシステム22は、目12の画像34を生成する。コンピュータシステム20は、目の追跡及びレーザ制御を管理する。メモリ30は、画像34を格納し、少なくとも1つの画像34が基準画像34aとして格納される。プロセッサ32は、現在の画像34を基準画像34aと比較することと、現在の画像34及び基準画像34aの比較から目12の動き(例えば、位置及び/又は角度方向における変化)を判定することとにより、追跡範囲内で目12を追跡する。追跡範囲は、システム10の追跡範囲の端部の近くに又は端部に1つ又は複数の警告点を有する。プロセッサ32は、警告点に対する目12の方位を判定する。出力装置26は、追跡範囲の警告点に対する目12の方位を示す範囲インジケータを出力する。
【0010】
カメラシステム22は、目12から反射された光を検出し、且つ目12の画像34を作成するために使用できる信号を生成できる検出器を備えた任意の適切なシステムであり得る。カメラシステム22の例は、CCDカメラである。目12の画像34のシーケンス(i1、...、ik、...、in)は、目12の動きを示すことができる。画像34は、動きを検出するために、カメラ22からの現在の画像と比較するための基準画像として用いられる。基準画像は、現在の画像ikの前の任意の適切な画像ik-q(q≧1)、例えば現在の画像ikの直前の画像ik-1であり得る。
【0011】
目12は、位置及び方位(又は角度方向又は角度位置)を有し、それらは、目12の配置として説明され得る。ある実施形態において、目12の位置は、眼科手術において用いられる座標系である(x、y、z)座標を用いて表現され得、ここで、虹彩などの目の特徴は、xy平面を画定し、z軸は、目12の中心点を通過する平面に垂直なラインである。例えば、時間tにおけるxy平面上の目12の位置は、目12の中心点(例えば、実質的にほぼ瞳孔中心又は先端)の(x(t)、y(t))座標によって与えられ得る。目12の方位又は角度位置は、目12の点を中心とする回転として表現され得、目12の点は、目12の中心点であり得る。例えば、時間tにおける目12の方位は、時間tにおけるゼロ位置から離れた量a(t)度の回転として与えられ得る。度数の量は、1つ、2つ又は3つの軸、例えば軸A1を中心とする数a1(t)度の回転、軸A1を中心とする数a1(t)度の回転及び軸A2を中心とする数a2(t)度の回転又は軸A1を中心とする数a1(t)度の回転、軸A2を中心とする数a2(t)度の回転及び軸A3を中心とする数a3(t)度の回転に関して表現され得る。ゼロ位置は、追跡が追跡セッションの初めに開始する場合の目12の角度位置などの初期角度位置であり得る。追跡セッションは、追跡の初期化のとき又は例えば目12が追跡範囲外に動いた後の追跡の再開時に開始し得る。
【0012】
コンピュータシステム20は、目12の並進及び/又は角度(若しくは回転)運動など、目12の配置における変化を判定することにより、目12の動きを追跡する。並進運動は、ほぼ同じ方向におけるほぼ同じ量だけの目12の全ての点の動きである。角度運動は、目12の中心点を中心とした目12における点の動きである。ある実施形態において、システム20は、中心点を用いて並進運動を判定し、且つ次に画像34を並進的に整列させるために、基準及び現在の画像34において目12の中心点、例えば瞳孔の位置を突き止めるように画像処理を用い得る。システム20は、角度運動を判定し、且つその後、中心点を中心として画像34を回転的に整列させるために、目12の特徴(例えば、血管、虹彩特徴又は任意の他の適切な特徴)の位置を突き止めるように画像処理を用い得る。
【0013】
図2Aは、目12の方位(又は角度位置)を示す例を示す。1つ又は複数のライン36は、目12の位置を示し得る。図示の例において、ライン36a-bは、軸として機能する。ライン36a-bは、目12の瞳孔の中心点37をほぼ通過し、且つ互いにほぼ垂直である。
【0014】
再び
図1を参照すると、幾つかの実施形態において、システム10は、カメラシステム22によって生成された目12の画像34の上に目12のオーバーレイ画像を整列させることができるように目12の動きを追跡する。オーバーレイ画像の例は、目12の診断画像、治療計画の画像、赤外線画像又は他の画像を含む。オーバーレイ画像は、カメラシステム22によって生成された画像34の上に置かれるか、又は画像34と混合され得る。目12が画像34において動いた場合、システム10は、動きを補償するためにオーバーレイ画像を調整する。
【0015】
コンピュータシステム20は、追跡を適切に実行できる、例えば適切な精度及び/又は正確さで実行できるある追跡範囲内で目12の動きを追跡することができる。範囲外では、システム10システムは、追跡を中止し得るか、又は誤検出追跡を報告し得る。追跡範囲は、P+/-Qとして表現され得、ここで、Pは、追跡が開始する場合のゼロ位置を表し、Qは、追跡境界を表し、追跡境界は、追跡が適切に実行され得る、ゼロ位置Pから離れる最大距離である。追跡範囲は、1つ又は複数の警告点を有し得る。警告点Sは、目12が追跡境界の近くか又は追跡境界にあるという通知をシステム20が提供する点であり、従ってS≦Qである。
【0016】
角度運動を追跡するために、追跡範囲は、P+/-Q°として表現され得、ここで、Pは、追跡が開始する場合のゼロ回転を表し、Qは、追跡境界を表す。追跡境界Qは、追跡が適切に実行され得る、ゼロ回転Pから離れる最大量の度数である。Qは、任意の適切な値を有し得る。現在のシステムについて、Qは、15度など、10~15度の範囲である。システムが改善するにつれて、Qは、15~20、20~25、25~30又は30度を超える範囲であり得る。警告点Sは、任意の適切な値を有し得、且つQに基づいて選択され得る。例えば、S=Q又はS=Q-Tであり、ここで、Tは、S=Q-T=15-5度など、1~5、5~10、10~15、15~20又は20度を超える範囲である。警告点Sは、システム10によって設定され得るか、又はユーザ入力を介してユーザによって設定され得る。
【0017】
コンピュータシステム20が目12の動きを追跡するとき、システム20は、警告点に対する目12の配置も判定する。例えば、システム20は、警告点Sに対する目12の方位a(t)を判定する。関係は、目12の方位と警告点との間の差、例えばa(t)-Sとして表現され得る。目12が警告点Sのより近くに動くと共に、差は、ゼロに近づく。
【0018】
出力装置26は、追跡範囲の警告点Sに対する目12の配置(例えば、方位及び/又は位置)を示す範囲インジケータを出力する。出力装置26は、ユーザ又は別のコンピュータ、例えばディスプレイ、モニター、プロジェクタ、スピーカ、ヘッドホン若しくはプリンタにコンピュータ出力を供給する任意の適切な装置であり得る。ある実施形態において、出力装置26は、グラフィカル要素として範囲インジケータを示すディスプレイである。グラフィカル要素は、典型的には、情報を伝達する任意の適切なサイズ、形状又は色の視覚的なマークである。グラフィカル要素の範囲インジケータの例が
図2A~9Bに関連して説明される。ある実施形態において、出力装置26は、音声として範囲インジケータを発するスピーカである。可聴範囲インジケータの例が
図10A~11Bに関連して説明される。
【0019】
図2A及び2Bを参照すると、範囲インジケータ39は、異なる追跡セッション中の目12の方位を示す。
図2Aにおいて、追跡セッションのゼロ点は、P
1であり、その結果、セッションの追跡範囲は、P
1+/-Qである。
図2Bにおいて、追跡セッションのゼロ点は、P
2であり、その結果、セッションの追跡範囲は、P
2+/-Qである。
図2Aにおいて、範囲インジケータ39は、目12の方位が追跡範囲内であることを示す。
図2Bにおいて、範囲インジケータ39は、目12の方位が追跡範囲の外側であることを示す。
図2Aの目12がたとえ追跡範囲内にあり、且つ
図2Bの目12が追跡範囲内になくても、目12の方位は、
図2A及び2Bの両方において同じであるように見えることに留意されたい。これは、
図2A及び2Bが異なる追跡セッションを表示するからであり、目12が追跡範囲P+/-Q内にあるかどうかの判定は、追跡セッションのゼロ点Pに依存する。
【0020】
再び
図1を参照すると、レーザシステム24は、目12の動きの通知を受信し、且つ通知に応じてレーザビームの位置を変更する。レーザシステム24は、目12を治療するためにレーザビームを供給する任意の適切なレーザ手術装置であり得、且つコンピュータ、レーザ源及び走査装置を含み得る。ある実施形態において、走査装置は、目12の動きの通知を受信し、且つ動きを処理するか又は補償するためにレーザビームの焦点を修正する。このように、目の動きは、位置合わせ又は追跡目的のいずれかのために考慮することができる。
【0021】
図3A及び3Bは、スライダ要素42を備えたグラフィカル要素38の例を示す。例において、グラフィカル要素38は、線形要素40及びスライダ要素42を含む。線形要素40は、直線又は曲線であり得る長く狭いマークである。例において、線形要素40は、追跡範囲を表し、且つ追跡範囲の警告点を表す少なくとも1つの警告点要素41を有する。スライダ要素42は、線形要素40に沿ったマークである。例において、スライダ要素42は、目12の回転を表す。点41に対するスライダ要素42の位置は、追跡範囲の警告点に対する目12の回転を表す。
図3Aは、警告点を超えない、即ち許容範囲内にある目12の回転を示す。
図3Bは、警告点を超える、即ち許容範囲の外側にある回転する目12を示す。
【0022】
図4A及び4Bは、矢印要素46を備えたグラフィカル要素38の例を示す。例において、グラフィカル要素38は、線形要素44及び矢印要素46を含む。線形要素44は、線形要素40に類似している。例において、線形要素44は、追跡範囲を表し、且つ追跡範囲の警告点を表す少なくとも1つの警告点要素41を有する。矢印要素46は、線形要素44に沿った位置を示すマークである。幾つかの場合、矢印要素46は、図示のように見え得るか又は磁針のように見え得る。例において、矢印要素46は、目12の回転を表す線形要素44の点を指し示す。矢印の要素46が点41に対して指し示す位置は、追跡範囲の警告点に対する目12の回転を表す。
図4Aは、警告点を超えない、即ち許容範囲内にある目12の回転を示す。
図4Bは、警告点を超える、即ち許容範囲の外側にある回転する目12を示す。
【0023】
図5A~5Dは、色を変えるグラフィカル要素38の例を示す。ある実施形態において、グラフィカル要素38は、追跡範囲の警告点に対する目の方位における変化を示すために第1の色から第2の色に連続的に変化する。連続的な色変化は、第1の色から第2の色への陰影における変化であり得る。図示の例において、
図5Aは、目12の回転が警告点に近づいていない、即ち許容範囲内にあることを示す緑のグラフィカル要素38を示す。
図5Bは、目12の回転が警告点に近づいていることを示す赤みがかった緑のグラフィカル要素38を示す。
図5Cは、目12の回転が警告点に更に近づいていることを示す緑がかった赤のグラフィカル要素38を示す。
図5Dは、目12の回転が警告点を超えた、即ち許容範囲の外側にあることを示す赤のグラフィカル要素38を示す。
【0024】
図6A~6Dは、形状を変えるグラフィカル要素38の例を示す。ある実施形態において、グラフィカル要素38は、追跡範囲の警告点に対する目の方位における変化を示すために第1の形状から第2の形状に連続的に変化する。形状における連続的変化は、第1の形状から第2の形状まで漸進的な変化であり得る。図示の例において、
図6Aは、目12の回転が警告点に近づいていない、即ち許容範囲内にあることを示す円としてグラフィカル要素38を示す。
図6Bは、目12の回転が警告点に近づいていることを示す丸い角を備えた正方形としてグラフィカル要素38を示す。
図6Cは、目12の回転が警告点に更に近づいていることを示す丸い角を備えたXとしてグラフィカル要素38を示す。
図6Dは、目12の回転が警告点を超えた、即ち許容範囲の外側にあることを示す鋭い角を備えたXとしてグラフィカル要素38を示す。
【0025】
図7A及び7Bは、サイズを変えるグラフィカル要素38の例を示す。ある実施形態において、グラフィカル要素38は、追跡範囲の警告点に対する目の方位における変化を示すために第1のサイズから第2のサイズに連続的に変化する。警告点マーク47は、警告点を表す。図示の例において、
図7Aは、目12の回転が警告点を超えていない、即ち許容範囲内にあることを示す、マーク47を横断しないバーとしてグラフィカル要素38を示す。
図7Bは、目12の回転が警告点を超える、即ち許容範囲の外側にあることを示す、マーク47を横断するバーとしてグラフィカル要素38を示す。
【0026】
図8A~8Dは、数を表示するグラフィカル要素38の例を示す。ある実施形態において、グラフィカル要素38は、追跡範囲の警告点に対する目の方位における変化を示すために次の数50に連続的に変化する第1の数50を表示する。図示の例において、
図8Aは、目12の回転が警告点に近づいていない、即ち許容範囲内にあることを示す「3」を表示するグラフィカル要素38を示す。
図8Bは、目12の回転が警告点に近づいていることを示す「2」を表示するグラフィカル要素38を示す。
図8Cは、目12の回転が警告点に更に近づいていることを示す「1」を表示するグラフィカル要素38を示す。
図8Dは、目12の回転が警告点を超えた、即ち許容範囲の外側にあることを示す「0」を表示するグラフィカル要素38を示す。
【0027】
図9A~9Dは、単語を表示するグラフィカル要素38の例を示す。ある実施形態において、グラフィカル要素38は、追跡範囲の警告点に対する目の方位における変化を示すために次の単語52に連続的に変化する第1の単語52を表示する。図示の例において、
図9Aは、目12の回転が警告点に近づいていない、即ち許容範囲内にあることを示す「OK」を表示するグラフィカル要素38を示す。
図9Bは、目12の回転が警告点に近づいていることを示す「近い」を表示するグラフィカル要素38を示す。
図9Cは、目12の回転が警告点に更に近づいていることを示す「近すぎる」を表示するグラフィカル要素38を示す。
図9Dは、目12の回転が警告点を超えた、即ち許容範囲の外側にあることを示す「NO」を表示するグラフィカル要素38を示す。
【0028】
図10A及び10Bは、周波数において変化する音声の例を示す。ある実施形態において、スピーカ56は、追跡範囲の警告点に対する目の方位における変化を示すために周波数58において連続的に変化する音声を発する。例において、
図10Aは、目12の回転が警告点に近づいていない、即ち許容範囲内にあることを示すxHzの周波数58aを備えた音声を示す。
図10Bは、目12の回転が警告点を超える、即ち許容範囲の外側にあることを示すyHzの周波数58bを備えた音声を示す。周波数yは、周波数xと同じではなく、周波数xより大きいか又は小さくすることができる。
【0029】
図11A及び11Bは、ボリューム60において変化する音声の例を示す。ある実施形態において、スピーカ56は、追跡範囲の警告点に対する目の方位における変化を示すためにボリューム60において連続的に変化する音声を発する。例において、
図11Aは、目12の回転が警告点に近づいていない、即ち許容範囲内にあることを示すxdBのボリューム60aを備えた音声を示す。
図11Bは、目12の回転が警告点を超える、即ち許容範囲の外側にあることを示すydBのボリューム60bを備えた音声を示す。ボリュームyは、ボリュームxと同じではなく、ボリュームxより大きいか又は小さくすることができる。
【0030】
ある場合、スピーカ56は、追跡範囲の警告点に対する目の方位における変化を示すために単語を発する。任意の適切な単語、例えば
図9A及び9Bに関連して説明された単語が用いられ得る。単語の他の例は、追跡範囲を超えるのを回避するために追跡が右回りに回転されるべき場合の「右に回転せよ」、又は追跡範囲を超えるのを回避するために追跡が左回りに回転されるべき場合の「左に回転せよ」を含む。
【0031】
図12は、
図1のシステム10によって実行され得る、目の動きを追跡するための方法の例を示す。例において、方法は、ステップ110で開始し、ステップ110で目の画像が生成される。ステップ112において、画像は、格納され、少なくとも1つの画像が基準画像として格納される。ステップ114及び116は、1つ又は複数の警告点を備えた追跡範囲内における目12の追跡を説明する。目12は、複数の画像の現在の画像を基準画像と比較することにより、ステップ114で追跡される。目12の動きは、ステップ116において現在の画像及び基準画像の比較から判定される。目の方位は、ステップ118において、追跡範囲の警告点に対して判定される。追跡範囲の警告点に対する目の方位を示す範囲インジケータがステップ120において出力される。
【0032】
本明細書で開示されるシステム及び機器のコンポーネント(例えば、コンピュータ)は、インターフェース、論理及び/又はメモリを含み得、それらのいずれもハードウェア及び/又はソフトウェアを含み得る。インターフェースは、コンポーネントへの入力を受信し、コンポーネントから出力を供給し、且つ/又は入力及び/若しくは出力を処理することができる。論理は、コンポーネントのオペレーションを実行することができ、例えば入力から出力を生成するために命令を実行することができる。論理は、1つ若しくは複数のコンピュータ又は1つ若しくは複数のマイクロプロセッサなどのプロセッサであり得る。論理は、コンピュータプログラム又はソフトウェアなど、コンピュータによって実行できる、メモリにおける符号化されたコンピュータ実行可能命令であり得る。メモリは、情報を格納することができ、且つ1つ又は複数の実体的で非一時的なコンピュータ可読のコンピュータ実行可能記憶媒体を含み得る。メモリの例は、コンピュータメモリ(例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)又は読み出し専用メモリ(ROM))、大容量記憶媒体(例えば、ハードディスク)、取り外し可能記憶媒体(例えば、コンパクトディスク(CD)又はデジタルビデオディスク(DVD))及びネットワーク記憶装置(例えば、サーバ又はデータベース)を含む。
【0033】
本開示は、ある実施形態の観点から説明されたが、実施形態の修正形態(代用形態、追加形態、変更形態又は省略形態など)が当業者に明らかになるであろう。従って、本発明の範囲から逸脱せずに実施形態に対する修正形態がなされ得る。例えば、本明細書で開示されるシステム及び機器に対する修正形態がなされ得る。システム及び機器のコンポーネントは、統合されるか又は分離され得、システム及び機器の動作は、より多くの、より少数の又は他のコンポーネントによって実行され得る。別の例として、本明細書で開示される方法に対する修正形態がなされ得る。方法は、より多くの、より少数の又は他のステップを含み得、ステップは、任意の適切な順序で実行され得る。