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特許7498111光変調マイクロナノ構造、マイクロ統合分光計及びスペクトル変調方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】光変調マイクロナノ構造、マイクロ統合分光計及びスペクトル変調方法
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/02 20060101AFI20240604BHJP
   G01J 1/02 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
G01J3/02 S ZNM
G01J1/02 R
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020528410
(86)(22)【出願日】2019-08-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-12
(86)【国際出願番号】 CN2019101766
(87)【国際公開番号】W WO2021017050
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2020-05-11
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】201910699962.3
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】502192546
【氏名又は名称】清華大学
【氏名又は名称原語表記】Tsinghua University
【住所又は居所原語表記】Tsinghua University,Haidian District,Beijing 100084,P.R.China
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】崔 ▲開▼宇
(72)【発明者】
【氏名】蔡 旭升
(72)【発明者】
【氏名】朱 ▲鴻▼博
(72)【発明者】
【氏名】黄 翊▲東▼
(72)【発明者】
【氏名】リウ ファン
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 巍
(72)【発明者】
【氏名】フェン ズー
【合議体】
【審判長】石井 哲
【審判官】樋口 宗彦
【審判官】▲高▼見 重雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-9025(JP,A)
【文献】特開2012-59865(JP,A)
【文献】特開2010-286706(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106847849(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109642989(CN,A)
【文献】国際公開第00/62344(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105628199(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107894625(CN,A)
【文献】国際公開第2015/190291(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/015117(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J3/00-G01J3/52
G02B5/20
G01N21/00-G01N21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電検出層の上に位置する光変調層を含み、前記光変調層は、底板、及び少なくとも1つの変調ユニットを含み、前記底板は前記光電検出層に設けられ、各前記変調ユニットは前記底板に位置し、各前記変調ユニット内には、いくつかの前記底板内に穿設されたいくつかの変調孔が設けられ、同一の前記変調ユニット内における各前記変調孔は、特定の配列規則を有する2次元パターン構造に配列され、各前記変調孔は、特定の断面形状をそれぞれ有し、前記光変調層は、シリコンベースの材料からなり、前記変調ユニットは、異なる波長の光に対する変調作用を実現して、対応する、光電検出器からなる前記光電検出層と組み合わせて、広帯域のスペクトルを検出し、前記光電検出器は、シリコン検出器、III-V族半導体検出器、アンチモン化物検出器、及びHgCdTe検出器から選択された1つであり、前記シリコン検出器の検出範囲は780nm~1100nm、前記III-V族半導体検出器の検出範囲は1000nm~2600nm、前記アンチモン化物検出器の検出範囲は1μm~6.5μmであり、前記HgCdTe検出器の検出範囲は0.7~25μmであることを特徴とする光変調マイクロナノ構造。
【請求項2】
前記2次元パターン構造の特定の配列規則は、
同一の前記2次元パターン構造内のすべての前記変調孔は、同じ特定の断面形状を同時に有し、各前記変調孔は構造パラメーターの大きさの漸次変化順序に従ってアレイ状に配列されること、及び/又は、
同一の前記2次元パターン構造内の各前記変調孔は、特定の断面形状をそれぞれ有し、各前記変調孔は、特定の断面形状に従って組み合わせて配列されることを含むことを特徴とする請求項1に記載の光変調マイクロナノ構造。
【請求項3】
前記変調孔の構造パラメーターは、内径、長軸の長さ、短軸の長さ、回転角度、辺の長さ又は角の数を含み、前記変調孔の特定の断面形状は、円形、楕円形、十字形、正多角形、星形又は矩形を含むことを特徴とする請求項2に記載の光変調マイクロナノ構造。
【請求項4】
各前記変調孔は、特定の断面形状に従って組み合わせて配列される場合、前記配列の順序は、予定の周期順序で行ごと又は列ごとに配列されることを特徴とする請求項2に記載の光変調マイクロナノ構造。
【請求項5】
前記変調孔の底部は前記底板を貫通し、又は前記底板を貫通していないことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の光変調マイクロナノ構造。
【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載の光変調マイクロナノ構造の製造方法であって、
前記光変調層は、前記光電検出層上に直接生成され、前記光変調層の生成方式は、堆積、又は前記光電検出層上に位置する基板に対するエッチングに基づくこと、又は製造された前記光変調層が前記光電検出層上に転移されることを含むことを特徴とする光変調マイクロナノ構造の製造方法。
【請求項7】
変調後のスペクトルを得るように、入射光を光変調するための、請求項1~5のいずれかに記載の光変調マイクロナノ構造と、
前記光変調マイクロナノ構造の下に位置し、前記変調後のスペクトルを受信して、前記変調後のスペクトルに差分応答を提供するための光電検出層と、
前記光電検出層の下に位置し、元のスペクトルを得るように、前記差分応答を再構築するための信号処理回路層とを含むことを特徴とするマイクロ統合分光計。
【請求項8】
前記光変調マイクロナノ構造と光電検出層との間に位置する光透過媒体層を更に含むことを特徴とする請求項7に記載のマイクロ統合分光計。
【請求項9】
前記光電検出層は、少なくとも1つの検出ユニットを含み、前記光変調マイクロナノ構造の各微光変調ユニットは、それぞれ対応して、少なくとも1つの前記検出ユニットの上に設けられ、すべての前記検出ユニット同士は、前記信号処理回路層を介して電気的に接続されることを特徴とする請求項7に記載のマイクロ統合分光計。
【請求項10】
変調後のスペクトルを得るように、請求項1~5のいずれかに記載の光変調マイクロナノ構造によって入射光を光変調すること、
光電検出層によって前記変調後のスペクトルを受信し、前記変調後のスペクトルに差分応答を提供すること、
元のスペクトルを得るように、信号処理回路層によって前記差分応答を再構築することを含むことを特徴とするスペクトル変調方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2019年7月31日に提出された、出願番号が201910699962.3、発明の名称が「光変調マイクロナノ構造、マイクロ統合分光計及びスペクトル変調方法」である中国特許出願の優先権を主張し、その全体が参照により本願に組み込まれる。
【0002】
本公開は、スペクトル機器技術の分野に関し、特に、光変調マイクロナノ構造、マイクロ統合分光計、及びスペクトル変調方法に関する。
【背景技術】
【0003】
分光計はスペクトル情報を取得するための機器である。スペクトルは、物質の識別、検出、分析に使用できるさまざまな情報が含まれており、農業、生物学、化学、天文学、医療、環境検知、半導体産業などの分野で広く使用されている。
【0004】
作動原理によれば、既存の市販の分光計は、モノクロメーターベースとフーリエ変換ベースの2つのタイプに分類することができる。 具体的には、モノクロメーターベースの原理は、異なる波長の光が格子によって空間で分離され、更に、異なる波長の光がスリットによってフィルタリングされ、感光性エレメントによって検出されることである。フーリエ変換ベースの原理は、光が2つのビームに分割され、異なる光路を通った後に干渉し、干渉スペクトルに対してフーリエ変換が実行されて元のスペクトルが取得されることである。
【0005】
上記の既存の2種類の分光計には、次の問題がある。第1の側面では、2種類の分光計は、いずれも例えば格子、プリズム、スリット、又はミラーなどの精密移動可能な分光部品を必要とし、これらの精密な光学部品が必要であることで、分光計はかさばり、重く、高価になる。第2の側面では、製品の使用品質を確保するために、分光計の各光学部品を極めてきれいに保ち、完璧に位置合わせする必要があり、これにより分光計の製造が高価になり、且つ機器が非常に精密になり、光学部品がずれると、修理が非常に複雑になり、メンテナンスコストが高くなってしまう。第3の側面では、これら2種類の分光計の精度が高いほど、必要な光が通る距離が長くなり、必要な内部スペースが大きくなり、消費者グレードの携帯機器への適用が困難になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本公開の実施例は、光変調マイクロナノ構造、マイクロ統合分光計、及びスペクトル変調方法を提供し、光変調マイクロナノ構造を使用して入射光を変調することにより、既存の分光計が精密光学部品に依存しすぎて分光器がかさばり、重く、高価になる欠陥を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記技術課題を解決するために、本公開は、光電検出層の上に位置する光変調層を含み、前記光変調層は、底板、及び少なくとも1つの変調ユニットを含み、前記底板は前記光電検出層に設けられ、各前記変調ユニットは前記底板に位置し、各前記変調ユニット内には、前記底板内に穿設されたいくつかの変調孔が設けられ、同一の前記変調ユニット内における各前記変調孔は、特定の配列規則を有する2次元パターン構造に配列される光変調マイクロナノ構造を提供する。
【0008】
一部の実施例において、前記2次元パターン構造の特定の配列規則は、
同一の前記2次元パターン構造内のすべての前記変調孔は、同じ特定の断面形状を同時に有し、各前記変調孔は構造パラメーターの大きさの漸次変化順序に従ってアレイ状に配列されること、及び/又は、
同一の前記2次元パターン構造内の各前記変調孔は、特定の断面形状をそれぞれ有し、各前記変調孔は、特定の断面形状に従って組み合わせて配列されることを含む。
【0009】
一部の実施例において、前記変調孔の構造パラメーターは、内径、長軸の長さ、短軸の長さ、回転角度、辺の長さ又は角の数を含み、前記変調孔の特定の断面形状は、円形、楕円形、十字形、正多角形、星形又は矩形を含む。
【0010】
一部の実施例において、各前記変調孔は、特定の断面形状に従って組み合わせて配列される場合、前記配列の順序は、予定の周期順序で行ごと又は列ごとに配列される。
【0011】
一部の実施例において、前記変調孔の底部は前記底板を貫通し、又は前記底板を貫通していない。
【0012】
一部の実施例において、前記光変調層は、前記光電検出層上に直接生成され、前記光変調層の生成方式は、堆積、又は前記光電検出層上に位置する基板に対するエッチングに基づくこと、又は製造された前記光変調層が前記光電検出層上に転移されることを含む。
【0013】
本公開は、マイクロ統合分光計を更に提供し、当該マイクロ統合分光計は、
変調後のスペクトルを得るように、入射光を光変調するための上記の光変調マイクロナノ構造と、
前記光変調マイクロナノ構造の下に位置し、前記変調後のスペクトルを受信して、前記変調後のスペクトルに差分応答を提供するための光電検出層と、
前記光電検出層の下に位置し、元のスペクトルを得るように、前記差分応答を再構築するための信号処理回路層とを含む。
【0014】
一部の実施例において、当該マイクロ統合分光計は、
前記光変調マイクロナノ構造と光電検出層との間に位置する光透過媒体層を更に含む。
【0015】
一部の実施例において、前記光電検出層は、少なくとも1つの検出ユニットを含み、前記光変調マイクロナノ構造の各微光変調ユニットは、それぞれ対応して、少なくとも1つの前記検出ユニットの上に設けられ、すべての前記検出ユニット同士は、前記信号処理回路層を介して電気的に接続される。
【0016】
本公開は、スペクトル変調方法を更に提供し、当該スペクトル変調方法は、
変調後のスペクトルを得るように、光変調マイクロナノ構造によって入射光を光変調すること、
光電検出層によって前記変調後のスペクトルを受信し、前記変調後のスペクトルに差分応答を提供すること、
元のスペクトルを得るように、信号処理回路層によって前記差分応答を再構築することを含む。
【発明の効果】
【0017】
本公開の上記技術方案は以下の有益効果を有する。
【0018】
1、本公開に係る光変調マイクロナノ構造は、光電検出層の上に位置する光変調層を含み、光変調層は、入射光を変調することができるため、光電検出層に差分応答を形成し、元のスペクトルを再構築して得ることができ、当該光変調マイクロナノ構造を利用すると、既存の分光計における様々な精密光学部品に取って代わることができるため、マイクロナノ構造の分野への分光計の応用性が実現され、マイクロ統合分光計は、格子、プリズム、ミラー、又は他の類似する空間分光素子を必要とせずに作動することができ、既存の分光計が精密光学部品に過度に依存することで分光器がかさばり、重く、高価になる欠陥を解決する。
【0019】
2、当該光変調層は、底板、及び少なくとも1つの変調ユニットを含み、底板は光電検出層に設けられ、各変調ユニットは底板に位置し、各変調ユニット内には底板内に穿設されたいくつかの変調孔が設けられ、同一の変調ユニット内における各変調孔は、特定の配列規則を有する2次元パターン構造に配列され、異なる2次元パターン構造により、異なる波長の光に対する変調作用を実現し、当該変調作用は、光の散乱、吸収、投射、反射、干渉、表面プラズモン、及び共鳴などの作用を含むが、これらに限定されない。2次元パターン構造の区別により、異なる領域間のスペクトル応答の相違性をも向上させ、それにより分光計の分析精度を向上させることができる。
【0020】
3、当該光変調層内の各変調ユニットは、精密な位置合わせなどの問題を考慮する必要がなく、かつ光変調マイクロナノ構造に基づいて製造された分光計は、高精度を確保できるだけでなく、光路を長くする必要もないため、分光計の内部構造は、大きすぎる必要がなく、当該マイクロ統合分光計を更に使用しやすくなり、かつ分光計の測定精度に悪影響を及ぼさない。分光計のサイズをチップレベルまで縮小でき、安定した性能とコスト削減を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明の実施例又は従来技術における技術案をより明確に説明するために、以下、実施例又は従来技術の説明に必要な図面を簡単に説明する。勿論、以下に説明する図面は、本発明のいくつかの実施例であり、当業者にとって、創造的な労働を要しない前提で、更にこれら図面に基づいてその他の図面を得ることができる。
【0022】
図1】本公開の実施例1に係る光変調マイクロナノ構造の構造模式図である。
図2】本公開の実施例1に係る光変調マイクロナノ構造の断面図である。
図3】本公開の実施例1に係る光変調層の構造模式図である。
図4】本公開の実施例1に係る光電検出層の構造模式図である。
図5】本公開の実施例1に係るスペクトル検出の効果図である。
図6】本公開の実施例2に係る光変調層の構造模式図である。
図7】本公開の実施例3に係る光変調マイクロナノ構造の構造模式図である。
図8】本公開の実施例3に係る光変調マイクロナノ構造の断面図である。
図9】本公開の実施例3に係る光変調マイクロナノ構造の構造模式図である。
図10】本公開の実施例3に係るスペクトル検出の波長強度関係の模式図である。
図11】本公開の実施例3に係るスペクトル検出の効果図である。
図12】本公開の実施例4に係る光変調マイクロナノ構造の断面図である。
図13】本公開の実施例6に係る光変調マイクロナノ構造の断面図である。
図14】本公開の実施例7に係る光変調マイクロナノ構造の断面図である。
図15】本公開の実施例7に係る光変調層の構造模式図である。
図16
図17】それぞれ、本公開の実施例8に係る光変調マイクロナノ構造の製造方法プロセスの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面及び実施例を参照しながら、本公開の具体的な実施形態を詳細に説明する。以下の実施例は、本公開を説明するためのものに過ぎず、本公開の範囲を制限するためのものではない。特に明記しない限り、本公開に言及されたマイクロナノ構造はいずれも光変調マイクロナノ構造の略語である。
【0024】
本公開の各実施例は、光変調マイクロナノ構造を提供し、当該マイクロナノ構造は、分光計における精密な光学部品に取って代わり、入射光に対する精密な変調を実現することができ、そして、当該光変調マイクロナノ構造によれば、異なる波長の光に対する変調作用を柔軟に実現することができる。当該変調作用は、光の散乱、吸収、投影、反射、干渉、表面プラズモン、及び共鳴などの作用を含むが、これらに限定されない。異なる領域間のスペクトル応答の相違性を向上させ、それにより分析精度を向上させる。
【0025】
本実施例に係る光変調マイクロナノ構造は、光電検出層2の上に位置する光変調層1を含み、光変調層1は入射光に対して上記の変調作用を実行することができる。当該光変調層1において、同一の変調ユニット5内における各変調孔6は、特定の配列規則を有する2次元パターン構造に配列され、異なる2次元パターン構造により、異なる波長の光に対する変調作用を実現し、2次元パターン構造の区別により、異なる領域間のスペクトル応答の相違性をも向上させ、それにより分光計の分析精度を向上させることができる。
【0026】
当該マイクロナノ構造に基づいて、本公開の各実施例はマイクロ統合分光計を更に提供する。当該分光計は、光変調マイクロナノ構造、光電検出層2、及び信号処理回路層3を含む。当該分光計は、光変調マイクロナノ構造の光変調層1を利用して入射光を変調することができるため、光電検出層2に差分応答を形成して、元のスペクトルを再構築して得ることができる。当該光変調マイクロナノ構造を利用すると、既存の分光計における様々な精密な光学部品に取って代わることができるため、マイクロナノ構造分野内での分光計の応用性が実現され、マイクロ統合分光計は、格子、プリズム、ミラー、又は他の類似する空間分光素子を必要とせずに作動することができ、既存の分光計が精密光学部品に過度に依存することで分光器がかさばり、重く、高価になる欠陥を解決する。
【実施例
【0027】
以下、いくつかの実施例により、本公開のマイクロナノ構造及びマイクロ統合分光計を詳細に説明する。
【0028】
実施例1
図1に示すように、本実施例1に係るマイクロ統合分光計では、光変調マイクロナノ構造における光変調層1は1つの変調ユニット5を含む。当該変調ユニット5内におけるすべての変調孔6はいずれも底板を貫通している。当該変調ユニット5内におけるすべての変調孔6はいずれも同じ特定の断面形状を有し、本実施例1は図1に示す楕円形を例とする。すべての変調孔6は、構造パラメーターの大きさの漸次変化順序に従って、2次元パターン構造を形成するようにアレイ状に配列される。当該2次元パターン構造では、すべての変調孔6はアレイ状に配列され、かつすべての変調孔6は、長軸の長さ、短軸の長さ、及び回転角度の小さい順に昇順に行ごと、列ごとに配列されているため、すべての変調孔6は、光変調層1の底板に全体として1つの変調ユニット5を形成する。
【0029】
理解できるように、図3に示すように、本実施例のすべての変調孔6は、いずれも同じ配列規則に従って配列されており、即ち、長軸の長さ、短軸の長さ、及び回転角度の構造パラメーターの小さい順に昇順に、行ごと、列ごとに漸次変化して配列されているため、当該光変調層1におけるすべての変調孔6は、全体として変調ユニット5とみなされてもよく、任意にいくつかの変調ユニット5に分割されてもよい。任意に分割された変調ユニット5は、スペクトルに対して、いずれも異なる変調作用を持っており、理論的には、無数組の変調後のスペクトルサンプルを取得でき、これにより、元のスペクトルを再構築するためのデータの量が大幅に増加して、広帯域スペクトルのスペクトルパターンの復元に役立つ。そうすると、各変調ユニット5内における変調孔6の構造パラメータ特性に従って、異なる波長の光に対する当該変調ユニット5の変調作用の効果を決定すればよい。
【0030】
理解できるように、上記の変調孔6の特定の断面形状は、円形、楕円形、十字形、正多角形、星形、又は矩形等を含み、上記各形状の任意の組み合わせであってもよい。それに応じて、上記の変調孔6の構造パラメーターは、内径、長軸の長さ、短軸の長さ、回転角度、角の数、又は辺の長さ等を含む。
【0031】
本実施例1に係る光変調層1の底板の厚さは60nm~1200nmであり、光変調層1と光電検出層2は、直接接続され、又は光透過媒体層4を介して接続される。光電検出層2と信号処理回路層3は電気的に接続される。そのうち、図3に示すように、光検出層におけるすべての変調孔6はいずれも楕円形であり、すべての楕円形変調孔6の長軸の長さ及び短軸の長さはそれぞれ行ごと、列ごとに増大し、かつ図3における水平方向を横軸とし、垂直方向を縦軸とすると、すべての楕円形変調孔6は、行ごと、列ごとに縦軸から横軸へ回転し、その回転角度が徐々に増大する。すべての変調孔6は全体としての2次元パターン構造を構成し、当該2次元パターン構造は全体としてマトリックス構造であり、当該マトリックス構造の面積範囲は5μm~4cmである。
【0032】
本実施例に係る光変調マイクロナノ構造を製造する際には、製造プロセスの加工上で優れた適合性が得られるように、シリコンベースの材料を同時に光変調層1及び光電検出層2の材料に採用する。光変調層1を製造する際には、光検出層2上に光変調層1を直接生成してもよいし、製造された光変調層1を光検出層2に転移してもよい。
【0033】
具体的には、光変調層1の直接生成方法は、具体的に、光検出層2上に、図3に示すような構造に従って配列された光変調層1を直接堆積生成すること、或いは、まず光電検出層2上にシリコンベースの材料で製造された基板を装着し、次に基板に、図3に示すような構造に従ってマイクロナノ加工して開孔して、光変調層1を得ることを含む。
【0034】
上記の直接堆積生成の過程は、以下の通りである。第1のステップでは、スパッタリング、化学気相堆積等の方法によって厚さ100nm~400nmのシリコン平板を光電検出層2に堆積する。第2のステップでは、フォトリソグラフィ、電子ビーム露光等のパターン転写方法によってその上に必要な2次元パターン構造を作成する。構造は図3に示される。当該2次元パターン構造は、具体的に、楕円形の変調孔6の短軸及び回転角度のみを漸次変化調整し、楕円の長軸は200nm~1000nmにおける固定値、例えば500nmを取り、短軸の長さは、120nm~500nmの範囲内に変化し、楕円の回転角度は0°~90°の範囲内に変化し、楕円の配列周期は、200nm~1000nmにおける固定値、例えば500nmである。当該2次元パターン構造のパターン全体の範囲は、長さが約115μm、幅が約110μmの矩形アレイ構造である。第3ステップでは、反応性イオンエッチング、誘導結合プラズマエッチング、及びイオンビームエッチング等の方法によりシリコン平板をエッチングして、所望の光変調層1を取得できる。最後に、光変調層1及び光検出層2を、全体として信号処理回路層3に電気的に接続すればよい。
【0035】
さらに、本実施例は、他の光変調マイクロナノ構造の製造過程を提供した。具体的には、光電検出層2内には、III-V族検出器、具体的にGaAs/InGaAsの量子井戸検出器が取り付けられる。図16に示すように、検出器が逆さまにしてCMOS回路に結合され、検出器は、GaAs基板1’、及びInGaAs量子井戸光電検出層2を含む。図17に示すように、直接、基板1’を薄くした後、さらに基板1’にマイクロナノ加工を行い、2次元パターン構造を持たせるように光変調層1を形成すればよい。当該製造過程と上記のマイクロナノ加工開孔との区別は、検出器からなる光電検出層2の上表面を直接マイクロナノ加工の基板1’とすることのみであり、これにより、加工製造された光変調層1と光電検出層2との間の緊密な接続が保証され、ギャップが形成されて光の変調作用の効果に影響を与えることを回避する。
【0036】
上記の光変調層1の転移製造方式は、具体的には、まず、製造された光変調層1を得るために、図3に示される構造に従ってマイクロナノ加工によって基板に開孔し、次に、当該製造された光変調層1を光電検出層2上に転移することである。具体的には、光変調層1の転移方法の過程は、まず、上記のパラメータに従ってシリコンシート又はSOI(シリコン-絶縁体-シリコンシートの構造)上に光変調層1を製造して取得し、次に、転移の方法によって光電検出層2上に転移し、最後に、光変調層1及び光検出層2を、全体として信号処理回路層3に電気的に接続すればよい。
【0037】
理解できるように、本実施例に係る、光に対する変調を実現可能な光変調マイクロナノ構造は、1次元、2次元フォトニック結晶、表面プラズモン、メタマテリアル及びメタサーフェスを含むが、これらに限定されない。具体的な材料は、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム材料、シリコンの化合物、ゲルマニウムの化合物、金属、及びIII-V族材料等を含んでもよい。そのうち、シリコンの化合物は、窒化ケイ素、シリカ、及び炭化ケイ素等を含むが、これらに限定さない。光透過層の材料は、シリカ及び高分子ポリマー等の低屈折率の材料を含んでもよい。光電検出器は、シリコン検出器(検出範囲は780nm~1100nm)、III-V族半導体(例えばInGaAs/InAlAs、GaAs/AlGaAs)検出器(検出範囲は1000nm~2600nm)、アンチモン化物(例えばInSb)検出器(検出範囲は1μm~6.5μm)、及びHgCdTe検出器(検出範囲は0.7~25μm)等を選択してもよい。
【0038】
本実施例1はマイクロ統合分光計を更に提供する。図1に示すように、当該マイクロ統合分光計は、上記の光変調マイクロナノ構造、光電検出層2、及び信号処理回路を含む。光変調マイクロナノ構造、光電検出層2、及び信号処理回路は、上から下へ垂直に接続され、かつ互いに平行である。そのうち、光変調マイクロナノ構造は、変調後のスペクトルを得るように、入射光を光変調するためのものであり、光電検出層2は、変調後のスペクトルを受信し、変調後のスペクトルに差分応答を提供するためのものであり、信号処理回路層3は、元のスペクトルを再構築して得るように、アルゴリズムに基づいて差分応答を処理するためのものである。
【0039】
本実施例に係る光変調マイクロナノ構造は、前述の通りであり、ここでは説明しない。本実施例に係る光電検出層2は図2及び図4に示される。光電検出層2は、いくつかの検出ユニット7を含み、光電検出層2における各検出ユニット7にはいずれも少なくとも1つの光電検出器が取り付けられ、光電検出器の検出範囲は変調孔6の構造範囲よりわずかに大きい。いくつかの検出ユニット7からなるアレイ構造の光電検出層2は検出された信号を電気的接触を介して信号処理回路層3に送信することができる。
【0040】
本実施例では、いくつかの変調孔6は、同時に1つの検出ユニット7に対応してもよく、各変調孔6はそれぞれ1つ又は複数の検出ユニット7に対応してもよく、つまり、各変調ユニット5は1つ又は複数の検出ユニット7に垂直方向に対応すればよく、このように、同一の変調ユニット5には少なくとも1つの変調孔6が少なくとも1つの検出ユニット7に対応することを満たしていればよい。当該構造の設置により、当該変調ユニット5が少なくとも1種の波長の入射光を常に変調できることを保証し、変調された光が検出ユニット7によって受信できることを保証する。検出ユニット7が作動時に互いに干渉することを防止するために、好ましくは、隣接する2つの検出ユニット7の間に隙間8を置く。
【0041】
本実施例に係る信号処理回路層3はアルゴリズム処理システムを備え、元のスペクトルを再構築して得るように、当該アルゴリズム処理システムは、差分応答をアルゴリズムに基づいて処理することができる。
【0042】
本実施例に係るマイクロナノスペクトル構造及びマイクロ統合分光計の、スペクトルに対する検出の完全なフローは、以下の通りである。まず、スペクトルが光変調層1の上方から垂直に入射して光変調マイクロナノ構造を透過すると、光変調層1による変調を経て、異なる変調ユニット5内において異なる応答スペクトルを得る。変調された各応答スペクトルはそれぞれ光電検出層2に照射され、対応して設置された検出ユニット7が受信した応答スペクトルは互いに異なり、これにより、差分応答が得られ、当該差分応答は、各変調ユニット5により各々変調して得られた応答スペクトルの信号同士に対して差値を求めることである。最後に、信号処理回路層3は、アルゴリズム処理システムにより差分応答を処理し、それにより、再構築で元のスペクトルを得る。当該再構築過程は、データ処理モジュールによって実施され、データ処理モジュールはスペクトルデータ前処理及びデータ予測モデルを含む。そのうち、スペクトルデータ前処理は上記の求めた差分応答データに存在するノイズを前処理することであり、当該スペクトルデータ前処理に採用される処理方法は、フーリエ変換、微分、及びウェーブレット変換等を含むが、これらに限定されない。データ予測モデルには、スペクトルデータ情報から、血糖濃度等を含む関連する血糖パラメータに対する予測を得ることを含み、使用されるアルゴリズムは、最小二乗法、主成分分析、及び人工ニューラルネットワークを含むが、これらに限定されない。
【0043】
図5は、以上の実施例により実際に製造して得られた光変調マイクロナノ構造及び分光計による分光分析の場合の分光分析の効果を示す。図5から分かるように、当該マイクロナノ構造は、スペクトルの範囲が600nm~800nm、スペクトル幅が200nmのスペクトルに対する検出を実現でき、また、スペクトルに対する測定の正確率が95.1%を超える効果を達成した。
【0044】
実施例2
本実施例2に係る光変調マイクロナノ構造及びマイクロ統合分光計の構造、原理、スペクトル変調方法、及び製造方法は、いずれも実施例1と基本的に同じであり、同じ点についてここで説明しない。相違点は次の通りである。
【0045】
図6に示すように、本実施例に係るマイクロナノ構造では、光変調層1には全体としての変調ユニット5が設けられている。当該変調ユニット5に設けた2次元パターン構造における各変調孔6は、各々の特定の断面形状をそれぞれ有しており、各変調孔6は、特定の断面形状に従って自由に組み合わせて配列される。具体的には、当該2次元パターン構造内において、一部の変調孔6の特定の断面形状は同じであり、同じ特定の断面形状を有する各変調孔6は複数の変調孔6の群を構成し、各変調孔6の群の特定の断面形状は互いに異なり、且つすべての変調孔6は自由に組み合わされている。
【0046】
理解できるように、当該変調ユニット5は、全体として、1種の特定の波長のスペクトルを変調するものと見なされてもよく、複数種の異なる波長のスペクトルを変調できるように、いくつかの変調孔6の変調ユニットに自由に分割されてもよく、光変調の柔軟性と多様性を高める。
【0047】
実施例3
本実施例3に係る光変調マイクロナノ構造及びマイクロ統合分光計の構造、原理、スペクトル変調方法、及び製造方法は、いずれも実施例2と基本的に同じであり、同じ点についてここで説明しない。相違点は次の通りである。
【0048】
図7及び図8に示すように、本実施例に係る光変調マイクロナノ構造の光変調層1には、2つ又は2つ以上の変調ユニット5が配列されている。各変調ユニット5において、各変調孔6が特定の断面形状に従って組み合わせて配列される場合、その配列の順序は、予定の周期順序で行ごと又は列ごとに配列される。
【0049】
本実施例では、全ての変調孔6は、特定の断面形状に従っていくつかの変調ユニット5に分割されており、各変調ユニット5内における変調孔6の特定の断面形状は互いに異なる。同一の変調ユニット5内における変調孔6は、同じ特定の断面形状を有するが、各変調孔6の配列順序は、構造パラメータの大きさの漸次変化順序に従ってアレイ状に配列される。これにより、各変調ユニット5は、いずれも異なる変調作用を有し、異なる波長のスペクトルを変調することができる。変調の必要に応じて、変調ユニット5内における変調孔6の構造パラメーターの漸次変化順序、及び/又は変調孔6の特定の断面形状を変更すると、現在の変調ユニット5の変調作用、及び/又は変調対象を変更することができる。
【0050】
具体的には、図9に示すように、光変調層1の底板には、3つの変調ユニット5が分布し、それぞれ、第1の変調ユニット11、第2の変調ユニット12、及び第3の変調ユニット13である。そのうち、第1の変調ユニット11内における変調孔6はいずれも円形であり、かつ各変調孔6の構造パラメーターはいずれも同じであり、当該第1の変調ユニット11は入力スペクトルに対して第1種の変調方式を有し、第2の変調ユニット12内における変調孔6はいずれも楕円形であり、各変調孔6は、構造パラメーターの大きさに応じて行ごとに周期的に配列され、即ち、横置きの楕円形変調孔6と縦置きの楕円形変調孔6は行ごとに交互に配列され、当該第2の変調ユニット12は入力スペクトルに対して第2種の変調方式を有し、第3の変調ユニット13内における変調孔6はいずれもひし形であり、各変調孔6は構造パラメーターの大きさに応じて行ごと、列ごとに周期的に配列され、即ち、横置きのひし形変調孔6と縦置きのひし形変調孔6は行ごとに交互に配列されると共に、横置きのひし形変調孔6と縦置きのひし形変調孔6は列ごとに交互に配列され、当該第3の変調ユニット13は入力スペクトルに対して第3種の変調方式を有する。
【0051】
理解できるように、本実施例に記載される「異なる波長の光に対してある種類の変調方式を有する」ことは、散乱、吸収、透射、反射、干渉、表面プラズモン、共鳴等の作用を含むが、これらに限定されない。第1種、第2種、及び第3種の光変調方式は互いに異なる。変調ユニット5内における変調孔6の構造に対する設置により、異なるユニット間のスペクトル応答の相違を向上させることができ、ユニットの数を増やすことにより、異なるスペクトル間の相違に対する感度を向上させることができる。
【0052】
理解できるように、異なる入射スペクトルを測定する場合、各変調ユニット5内における変調孔6の構造パラメーターを変更することにより変調作用を変更することができ、構造パラメーターの変更は、マイクロナノ構造周期、半径、辺の長さ、デューティ比、及び厚さ等の各パラメータのうちの1種及びこれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0053】
理解できるように、本実施例に係るマイクロ統合分光計には、例えば実施例1に係る変調ユニット5、又は実施例2に係る変調ユニット5、又は実施例1及び実施例2に係る変調ユニット5の組み合わせを使用することができる。
【0054】
本実施例では、光変調層1は、厚さが200nm~500nmの窒化ケイ素平板からなるものである。光変調層1には、合計で100~200個の変調ユニット5が設けられ、各変調ユニット5は、長さが4μm~60μm、幅が4μm~60μmである。各変調ユニット5の内部では、変調孔6の特定の断面形状として、様々な幾何学的形状が採用され、各変調ユニット5内では、同一の形状で周期に配列され、そのデューティ比が10%~90%である。その他の構造は、実施例1又は実施例2と同じである。
【0055】
図10及び図11は、いずれも、以上の実施例により実際に製造して得られた光変調マイクロナノ構造、及び分光計の分光分析の場合の分光分析の効果を示す。本実施例に係るマイクロナノ変調構造は、主に単一波長スペクトルを検出し、その波長強度関係の効果は図10に示すように、測定スペクトルと実際のスペクトルの中心波長との誤差が0.4nm未満であり、その検出効果は図11に示すように、光強度の正確率は99.89%を超えている。
【0056】
実施例4
本実施例4は、上記のいずれかの実施例に係る光変調マイクロナノ構造及びマイクロ統合分光計の構造、原理、スペクトル変調方法、及び製造方法に基づいて、光変調マイクロナノ構造、マイクロ統合分光計、及びスペクトル変調方法を提供する。同じ点についてここで説明しなく、相違点は次の通りである。
【0057】
図12に示すように、本実施例4に係るマイクロ統合分光計は、光変調マイクロナノ構造と光電検出層2との間に位置する光透過媒体層4を更に含む。具体的には、当該光透過媒体層4は、厚さが50nm~1μm、材料がシリカであってもよい。
【0058】
本実施例に係るマイクロ統合分光計では、光変調層1を製造する際には直接堆積成長プロセスを採用すると、化学気相堆積、スパッタリング、及びスピンコーティング等の方式により当該光透過媒体層4をスペクトル検出層に被覆してから、光変調層1の一部をその上に堆積及びエッチングすればよい。転移プロセスの方式を採用すると、シリカを光変調層1の製造基板とし、基板の上半分に対する直接マイクロナノ開孔加工で光変調層1を製造してから、シリカ基板の下半分を直接光透過媒体層4とし、製造された光変調層1と光透過媒体層4の2つの部分を全体として光検出層上に転移すればよい。
【0059】
理解できるように、本実施例に係る光透過媒体層4は、光電検出層2の上方の光変調マイクロナノ構造を全体として、光電検出層2に対してぶら下がり状態になるように、外部の支持構造により支持するように設置されてもよく、こうすると、光変調層1と光電検出層2との間の空気部分は光透過媒体層4である。
【0060】
実施例5
本実施例5は、実施例2に基づいて、光変調マイクロナノ構造、マイクロ統合分光計、及びスペクトル変調方法を更に提供する。本実施例5の実施例2と同じ点についてここで説明しなく、相違点は次の通りである。
【0061】
本実施例5に係る光変調層1は、厚さが150~300nmの炭化ケイ素の水平底板からなる。光変調層1には、合計で150~300個のユニットを有し、各ユニットは、長さが15~20μm、幅が15~20μmである。同一の変調ユニット5における各変調孔6の特定の断面形状はいずれも円形であり、各ユニット同士の円孔周期、孔の半径、及びデューティ比等のパラメータは互いに異なる。具体的なパラメータ範囲は、周期の範囲が180nm~850nm、孔の半径の範囲が20nm~780nm、デューティ比の範囲が10%~92%である。光電検出層2において少なくもとも1つにはInGaAs検出器が取り付けられている。
【0062】
本実施例に係る光変調マイクロナノ構造の製造プロセスは、まず光変調層1を製造してから、光電検出層2上に転移する転移プロセスの方式を採用する。
【0063】
実施例6
本実施例6は、上記のいずれかの実施例に係る光変調マイクロナノ構造、及びマイクロ統合分光計の構造、原理、スペクトル変調方法及び製造方法に基づいて、光変調マイクロナノ構造、マイクロ統合分光計、及びスペクトル変調方法を提供する。同じ点についてここで説明しなく、相違点は次の通りである。
図13に示すように、本実施例7に係る光変調マイクロナノ構造では、各変調孔6はいずれも前記底板を貫通していない。理解できるように、変調孔6が底板を貫通しているかどうかにかかわらず、光変調マイクロナノ構造の変調作用に悪影響を与えない。これは、光変調層1に用いられるシリコンベース材料又は他の材料がいずれも透光材料であり、スペクトルが光変調層1に入射すると、各変調ユニット5の構造に影響されて変調作用が生じるが、変調孔6の底部がスペクトル変調に悪影響を与えないからである。
【0064】
本実施例に係る光変調マイクロナノ構造では、光変調層1の変調孔6の底部から底板の底部まで厚さは60nm~1200nm、底板全体の厚さは120nm~2000nmである。
【0065】
実施例7
本実施例7は、上記の各実施例の組み合わせに基づいて、光変調マイクロナノ構造、マイクロ統合分光計、及びスペクトル変調方法を提供する。同じ点についてここで説明しなく、相違点は次の通りである。
【0066】
図14及び図15に示すように、本実施例7に係る光変調マイクロナノ構造では、光変調層1の底板には、5つの変調ユニット5が分布し、それぞれ第1の変調ユニット11、第2の変調ユニット12、第3の変調ユニット13、第4の変調ユニット14、及び第5の変調ユニット15であり、そのうち、第5の変調ユニット15は、範囲が最も大きく、その面積が前の4つの変調ユニットの合計以上である。
【0067】
具体的には、第1の変調ユニット11、第2の変調ユニット12、第3の変調ユニット13、第4の変調ユニット14は全体としてアレイに配列され、そのうち、前の3つの変調ユニット11、12、13内における変調孔6の配列方式は実施例3に係る変調孔6の配列方式と同じ、第4の変調ユニット14は第1の変調ユニット11の変調孔6の特定の断面形状と同じ、いずれも円形であるが、第4の変調ユニット14の変調孔6の構造パラメーターは第1の変調ユニット11の変調孔6の構造パラメーターと異なり、具体的には、第4の変調ユニット14の変調孔6の内径は第1の変調ユニット11の変調孔6の内径より小さいため、第4の変調ユニット14は入力スペクトルに対して第4種の変調方式を有する。第5の変調ユニット15における各変調孔6が形成する2次元パターン構造は、実施例1に係る2次元パターン構造と同じであると、第5の変調ユニット15は入力スペクトルに対して第5種の変調方式を有する。
【0068】
これで分かるように、本実施例7に係る光変調マイクロナノ構造は、異なるユニット同士における異なる変調孔6の特定の断面形状の区別、及び同一のユニット内における特定の変調孔6の配列方式により、変調孔6の特定の断面形状、変調孔6の構造パラメーター、及び変調孔6の配列周期を変更することで異なる波長のスペクトルに対して異なる変調作用を実行することを実現する。
【0069】
理解できるように、実施例1と実施例2の漸次変化式アレイの変調ユニット5の構造に対して、その任意に分割された変調ユニット5は、スペクトルに対して、いずれも異なる変調効果を持っており、理論的には、無数組の変調後のスペクトルサンプルを取得でき、これにより、元のスペクトルを再構築するためのデータの量が大幅に増加して、広帯域スペクトルのスペクトルパターンの復元に役立つ。
【0070】
実施例3の周期式変調ユニット5の構造に対して、その周期構造は2次元周期の分散、共鳴作用を生じさせることができ、共鳴作用は、フォトニック結晶のエネルギーバンド制御、及び2次元格子の共鳴等の原理を含むが、これらに限定されない。共鳴作用により、特定の波長に対する検出の精度を高めることができる。
【0071】
上記の実施例1、実施例2、及び実施例3における変調ユニット5をチップに同時に応用する場合、上記2種の利点を組み合わせることができる。かつ、光変調層のサイズ範囲をアッパーカットする場合、上記の3つの実施例に係る光変調マイクロナノ構造は、いずれもミクロンオーダー又はそれより小さい構造に製造されることができ、これは、マイクロ統合分光計の小型化・微型化生産及び使用にとって重要な意義を有する。上記の光変調マイクロナノ構造は、異なる光電検出器からなる光電検出層と組み合わせて、原則として、全帯域のスペクトル検出を実現することができ、それにより分光計の広域スペクトルの検出性能を更に向上させる。
【0072】
以上のように、本実施例に係る光変調マイクロナノ構造は、光電検出層2の上に位置する光変調層1を含み、光変調層1は、入射光を変調することができるため、光電検出層2に差分応答を形成し、元のスペクトルを再構築して得ることができ、当該光変調マイクロナノ構造を利用すると、既存の分光計における様々な精密光学部品に取って代わることがでるため、マイクロナノ構造の分野への分光計の応用性が実現され、マイクロ統合分光計は、格子、プリズム、ミラー、又は他の類似する空間分光素子を必要とせずに作動することができ、既存の分光計が精密光学部品に過度に依存することで分光器がかさばり、重く、高価になる欠陥を解決する。
【0073】
当該光変調層1の同一の変調ユニット5内における各変調孔6は、特定の配列規則を有する2次元パターン構造に配列され、異なる2次元パターン構造により、異なる波長の光に対する変調作用を実現し、当該変調作用は、光の散乱、吸収、投射、反射、干渉、表面プラズモン、及び共鳴などの作用を含むが、これらに限定されない。2次元パターン構造の区別により、異なる領域間のスペクトル応答の相違性をも向上させ、それにより分光計の分析精度を向上させることができる。
【0074】
当該光変調層1における各変調ユニット5は、精密な位置合わせなどの問題を考慮する必要がなく、かつ光変調マイクロナノ構造に基づいて製造された分光計は、高精度を確保できるだけでなく、光路を長くする必要もないため、分光計の内部構造は、大きすぎる必要がなく、当該マイクロ統合分光計を更に使用しやすくなり、かつ分光計の測定精度に悪影響を及ぼさない。分光計のサイズをチップレベルまで縮小でき、安定した性能とコスト削減を実現し、それにより、マイクロ統合分光計は、大規模なテープアウト生産を実現することができ、既存の分光計に比べて、生産プロセスがより安定しており、生産コストと使用コストが低くなっている。
【0075】
本公開の実施例は、例示、説明するためのものであり、網羅的なものではなく、又は本公開を開示された形態に限定するものではない。多くの修正及び変更は当業者にとって明らかである。実施例は、本公開の原理及び実際の応用をよりよく説明し、当業者が本公開を理解して特定の用途に適した様々な修正を与えた様々な実施例を設計できるようにするために選択して説明された。
【0076】
本公開の説明において、特に明記しない限り、「複数」及び「いくつか」とはいずれも二つ又は二つ以上を意味し、特に明記しない限り、「ノッチ状」とは平らな断面以外の形状を意味する。「上」、「下」、「左」、「右」、「内」、「外」、「前端」、「後端」、「ヘッド」、「テール」等の用語で示す方位又は位置関係は、図示に基づく方位又は位置関係であり、本公開を便利に又は簡単に説明するためのものだけであり、示された装置又は素子が必ず特定の方位にあり、特定の方位で構造され、操作されると指示又は暗示するものではないため、本公開に対する限定と理解されるべきではない。また、「第1」、「第2」、「第3」等の用語は、説明するためのものに過ぎず、比較的な重要性を指示又は暗示すると理解されるべきではない。
本公開の説明において、明確な規定と限定がない限り、「取り付け」、「互いに接続」、「接続」等の用語の意味は広く理解されるべきであり、例えば、固定接続や、着脱可能な接続や、あるいは一体的な接続でも可能であり、機械的な接続や、電気的な接続でも可能であり、直接互いに接続することや、中間媒体を介して間接に互いに接続することも可能である。当業者にとって、具体的な状況に応じて上記用語の本公開での具体的な意味を理解することができる。
【符号の説明】
【0077】
1’ 基板、1 光変調層、2 光電検出層、3 信号処理回路層、4 光透過媒体層、5 変調ユニット、6 マイクロナノ孔、7 検出ユニット、8 隙間、11 第1の変調ユニット、12 第2の変調ユニット、13 第3の変調ユニット、14 第4の変調ユニット、15 第5の変調ユニット。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17