(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】金属加工用途の鋳造物品、そのような鋳造物品を作製する方法、およびそのような方法に使用するための微粒子耐火性組成物
(51)【国際特許分類】
B22C 1/18 20060101AFI20240604BHJP
B22C 1/02 20060101ALI20240604BHJP
B22C 9/10 20060101ALI20240604BHJP
B28B 1/24 20060101ALI20240604BHJP
C04B 35/63 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B22C1/18 B
B22C1/02 Z
B22C9/10 J
B28B1/24
C04B35/63 030
C04B35/63 160
(21)【出願番号】P 2020533668
(86)(22)【出願日】2018-12-20
(86)【国際出願番号】 EP2018086389
(87)【国際公開番号】W WO2019122237
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-12-20
(32)【優先日】2017-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】319006807
【氏名又は名称】イメルテック ソシエテ パル アクシオン サンプリフィエ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ボーンケ サンドラ
【審査官】瀧澤 佳世
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-533900(JP,A)
【文献】特表2004-512957(JP,A)
【文献】特開2001-174163(JP,A)
【文献】特許第4352423(JP,B2)
【文献】特開2016-147284(JP,A)
【文献】特表昭58-500055(JP,A)
【文献】特表2017-514695(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 1/18
B22C 1/02
B22C 9/10
B28B 1/24
C04B 35/63
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)微細粒子金属酸化物を供給するステップと、
(ii)水性アルカリ組成物を供給するステップと、
(iii)粒状耐火成形材を供給するステップと、
(iv)界面活性剤および/または金属水酸化物を供給するステップと、
(v)前記微細粒子金属酸化物、前記水性アルカリ組成物、前記粒状耐火成形材、及び前記界面活性剤および/または金属水酸化物を混合するステップと、
(vi)得られた混合物を中子シューターにおいて射出するステップと
を含む、金属加工に使用するための結合微粒子耐火材を形成する方法であって、
前記微細粒子金属酸化物と前記水性アルカリ組成物とを合わせた総水分レベルが、微細粒子金属酸化物と水性アルカリ組成物の総質量を基準にして、
22質量%以上であって30質量%未満の範囲にあり、
ステップ(iv)の終わりに得られた、前記微細粒子金属酸化物、前記水性アルカリ組成物および前記粒状耐火成形材の混合物における、前記微細粒子金属酸化物および前記水性アルカリ組成物の総含有量が、得られた混合物の総質量に対して、3.8質量%超~5.0質量%未満の範囲であり、
最初に供給された混合物の成分に含まれる水以外に、得られた混合物の総質量に対して0.25質量%以下の追加の水を前記混合物に添加することを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記射出するステップが、加圧熱気流を使用して、300℃以下の温度にて120秒以下硬化させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記射出するステップが、気流を使用せずに、300℃以下の温度にて120秒以下硬化させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(i)で供給する前記微細粒子金属酸化物、ステップ(ii)で供給する前記水性アルカリ組成物、およびステップ(iii)で供給する前記粒状耐火成形材における総含水率が、ステップ(i)、(ii)および(iii)で供給する成分の総質量に対して、0.8質量%~1.6質量%の範囲である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(i)で供給する前記微細粒子金属酸化物、ステップ(ii)で供給する前記水性アルカリ組成物、およびステップ(iii)で供給する前記粒状耐火成形材、ならびにステップ(iv)で供給する前記界面活性剤および/または前記金属水酸化物における総含水率が、ステップ(i)、(ii)、(iii)および(iv)で供給する成分の総質量に対して1.6質量%~2.5質量%の範囲である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(ii)で供給する前記水性アルカリ組成物、およびステップ(i)で供給する前記微細粒子金属酸化物の質量比が、前記水性アルカリ組成物に含まれる理論上の乾燥アルカリに基づいて、0.05~0.5の範囲である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(ii)で供給する前記水性アルカリ組成物、およびステップ(i)で供給する前記微細粒子金属酸化物の質量比が、前記水性アルカリ組成物に含まれる理論上の乾燥アルカリに基づいて、0.15~0.3の範囲である、請求項1~
6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記射出するステップが、中子シューターにおいて、気流を使用せずに、180℃以下の温度にて10秒以下硬化させるステップを含む、請求項1及び3~
7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記射出するステップが、中子シューターにおいて、加圧気流を使用して、120℃以下の温度にて20秒以下硬化させるステップを含む、請求項1、2及び4~
7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記微細粒子金属酸化物が、シリカヒューム、天然シリカ、沈降シリカ、熱分解法シリカ、シリケート、か焼または非か焼アルミノシリケート、メタカオリンまたはパーライト、微細アルミナ、微細チタニア、微細亜鉛酸化物、珪藻土、およびアルカリの存在下でメタレートを形成する他の金属酸化物、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~
9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記水性アルカリ組成物が、水性水酸化ナトリウム、水性水酸化カリウム、水性水酸化リチウム、水性水酸化カルシウム溶液および/または懸濁液、水性水酸化マグネシウム懸濁液、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~
10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記粒状耐火成形材が、鋳物砂、シリカ砂、再生砂、中間または高強度セラミック支持材、ボーキサイト、アルミナ、ムライト、橄欖石砂、クロマイト砂、ジルコン砂、シャモット砂、パーライト、フライアッシュ、バーミキュライトおよびそれらの混合物から選択される、請求項1~
11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
CO
2吹き込みまたはマイクロ波照射により硬化させるステップが必要とされない、請求項1~
12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~
13のいずれか1項に記載の方法により得られる、結合微粒子耐火材。
【請求項15】
鋳造物品、鋳物用中子、または鋳型である、請求項
14に記載の結合微粒子耐火材。
【請求項16】
方法のステップ(iv)の終わりに得られる、微細粒子金属酸化物、水性アルカリ組成物、および粒状耐火成形材を含む、請求項1~
13のいずれか1項に記載の方法に使用するための耐火性微粒子組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属加工用途のための鋳造物品、例えば鋳物用中子(foundry cores)および鋳型を生成するための改善された方法、ならびにそのような方法を使用することにより得られる鋳造物品に関する。そのような鋳物用中子を形成するための、またはそのような方法に使用するための、耐火性微粒子組成物も、本発明の一部である。
【背景技術】
【0002】
鋳造物品、例えば鋳型および中子のための結合耐火材の形成は、当業界で周知である。従来、耐火性の微粒子材料、例えばシリカ砂、石英砂またはフライアッシュは、例えば、ポリウレタン、フェノール樹脂、ノボラック樹脂をベースとする有機結合剤を使用して結合されている。
ドイツ公開特許第102004042535 A1号は、微粒子金属酸化物、例えばシリカ、チタニア、アルミナまたはジルコニアの存在下で、水ガラスをベースとする結合剤を含む耐火性成形材料について開示している。これらの無機結合剤は、無機結合剤の使用により、完成した鋳型または中子と溶融した金属との接触で、有機結合剤が分解し、有害な化合物、例えばベンゼン、キシレン、トルエン、フェノール、ホルムアルデヒドを排出させることが避けられるという独特な利点を有する。
欧州特許出願公開第1122002号は、追加の水の存在下で、金属酸化物および水性アルカリ(例えばNaOH)の組合せをベースとする結合剤を含む耐火性成形材料について開示している。得られた任意の試験片は、満足すべき結果を達成するために、マイクロ波照射を使用して、かつ/または700℃にて加熱して、中子箱の外で硬化させなければならなかった。硬化された試験片は、水と接触させると崩れることも見出された。
したがって、従来技術には問題がある。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、添付の特許請求の範囲で規定される。
詳細には、本発明は、微細粒子金属酸化物を供給するステップと、水性アルカリ組成物を供給するステップと、粒状耐火成形材を供給するステップと、任意に、界面活性剤および/または金属水酸化物を供給するステップと、次いで供給した成分を機械的に混合するステップと、続いて得られた混合物を中子シューターにおいて射出するステップとを含む、金属加工に使用する結合微粒子耐火材を形成するための方法により具体化される。本発明によれば、得られた混合物に含まれる実質的にすべての水は、アルカリ性水溶液、任意で界面活性剤に由来する。言い換えれば、得られた混合物の総質量に対して、得られた混合物に含まれる99.75質量%以上の水、99.8質量%以上の水、99.9質量%以上の水、99.95質量%以上の水、99.99質量%以上の水は、アルカリ性水溶液、任意で界面活性剤に由来する。混合物の、最初に供給した成分に含有される水以外に、追加の水は、前記混合物に添加されない、または、得られた混合物の総質量に対して、0.01質量%以下の追加の水、もしくは0.05質量%以下の追加の水、もしくは0.1質量%以下の追加の水、もしくは0.2質量%以下の追加の水、もしくは0.25質量%以下が、前記混合物に添加される。ある実施形態では、一部の水分は、粒状耐火成形材および/または金属水酸化物にも由来し得る。本発明によれば、粒状耐火成形材は、微細粒子金属酸化物および水性アルカリ組成物の組合せを使用することにより結合し、これらは、本発明の目的のための結合剤系と考えることができる。本発明による方法で、結合微粒子材料の特性の改善を達成できることが見出された。
一実施形態によれば、射出するステップは、加圧熱気流を使用して、または気流を使用せずに、300℃以下の温度にて120秒以下硬化させるステップを含む。そのような硬化条件は、満足すべき機械的特性を有する結合材料を得るのに十分なことが見出された。そのような条件下で、マイクロ波放射、CO2流を使用した硬化または高温硬化は必要とされないことをさらに見出した。
【0004】
一実施形態によれば、組み合わせた微細粒子金属酸化物および水性アルカリ組成物における総水分レベルは、微粒子金属酸化物および水性アルカリ組成物の総質量に対して、10質量%~30質量%未満の範囲、例えば22質量%~30質量%未満である。水分レベルがこの範囲である場合、結合耐火性生成物に対して特に良好な機械的特性を得ることができると見出された。
一実施形態によれば、供給する成分の相対量は、得られた、微細粒子金属酸化物、水性アルカリ組成物および粒状耐火成形材の混合物における微細粒子金属酸化物および水性アルカリ組成物の総含有量が、得られた混合物の総質量に対して、0.5質量%超~5.0質量%未満の範囲、例えば3.8質量%超~5.0質量%未満になるように選択された。これらの相対質量比内で、結合耐火性生成物に対して特に良好な機械的特性を得ることができると見出された。
【0005】
一実施形態によれば、供給する微細粒子金属酸化物、水性アルカリ組成物および粒状耐火成形材における総含水率は、成分の総質量に対して、0.8質量%~1.6質量%の範囲である。水分レベルがこの範囲である場合、結合耐火性生成物に対して特に良好な機械的特性を得ることができると見出された。
一実施形態によれば、水性アルカリ組成物に含有されているアルカリと、微細粒子金属酸化物との質量比は、前記水性アルカリ組成物に含まれる理論上の乾燥アルカリに基づいて、0.05~0.5の範囲、例えば0.15~0.3の範囲である。これらの相対質量比内で、結合耐火性生成物に対して特に良好な機械的特性を得ることができると見出された。
【0006】
一実施形態によれば、射出するステップは、中子シューターにおいて、気流を使用せずに、180℃以下の温度にて10秒以下硬化させるステップを含む。そのような加熱は、追加の硬化手段を一切伴わずに、結合耐火性生成物に対して得ることができる良好な機械的特性を得るのに十分になることが見出された。一実施形態によれば、射出するステップは、中子シューターにおいて、気流を使用して、180℃以下の温度にて10秒以下硬化させるステップを含み、この場合にも、結合耐火性生成物に対して良好な機械的特性を得ることができる。
代替実施形態によれば、射出するステップは、中子シューターにおいて、加圧気流を使用して120℃以下の温度にて20秒以下硬化させるステップを含む。気流下でのそのような加熱は、追加の硬化手段を一切伴わずに、結合耐火性生成物に対して得ることができる良好な機械的特性を得るのに十分なことが見出された。一実施形態では、加熱および硬化が実行され、結合耐火性生成物に対して良好な機械的特性を得ることができる。
【0007】
一実施形態によれば、微細粒子金属酸化物は、シリカヒューム、沈降シリカ、熱分解法シリカ、シリケート、か焼または非か焼アルミノシリケート、例えばメタカオリンまたはパーライト、微細アルミナ、微細チタニア、微細亜鉛酸化物、珪藻土、およびアルカリの存在下でメタレートを形成する他の金属酸化物、ならびにその混合物からなる群から選択される。これらの微粒子金属酸化物のいずれかを、結合剤系の一部として使用することにより、良好な機械的特性を得ることができると見出された。
一実施形態によれば、水性アルカリ組成物は、水性水酸化ナトリウム、水性水酸化カリウム、水性水酸化リチウム、水性水酸化カルシウム溶液および/または懸濁液、水性水酸化マグネシウム懸濁液、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される。結合剤系は、これらの水性アルカリ組成物のいずれかと使用できることが見出された。
一実施形態によれば、粒状耐火成形材は、鋳物砂、シリカ砂、再生砂、例えば再生鋳物砂および/または再生中子砂、中間または高強度セラミック支持材、ボーキサイト、アルミナ、ムライト、橄欖石砂、クロマイト砂、ジルコン砂、シャモット砂、パーライト、フライアッシュ、バーミキュライトおよびそれらの混合物から選択される。微粒子金属酸化物および水性アルカリ組成物からなる結合剤系は、これらの耐火成形材のいずれかに適正に適用され得ることが見出された。
一実施形態によれば、CO2吹き込みまたはマイクロ波照射により硬化させるステップは、必要とされない。
本発明の方法により得られる耐火性結合粒状材料も、本発明の一部である。これらの材料は、鋳造物品、例えば鋳物用中子、鋳型であってもよい。
【0008】
本発明による方法に使用するための微粒子混合物も、本発明の一部であり、これは、本発明による方法の混合するステップの終わりに得られる、微細粒子金属酸化物、水性アルカリ組成物、粒状耐火成形材、ならびに任意で界面活性剤および/または金属水酸化物を含む。前記混合物における微細粒子金属酸化物、水性アルカリ組成物の含有量は、混合物の総質量に対して、0.5質量%超~5.0質量%未満の範囲、例えば3.8質量%超~5.0質量%未満であってもよい。混合物は、混合物の総質量に対して、0.8質量%~1.6質量%の範囲の含水率を有し得る。混合物においても、微細粒子金属酸化物および水性アルカリ組成物からのアルカリの質量比は、前記水性アルカリ組成物に含まれる理論上の乾燥アルカリに基づいて、0.05~0.5の範囲、例えば0.15~0.3の範囲になり得る。
【0009】
本発明の一態様による微粒子混合物に使用するための、または、本発明による方法に使用するための結合剤系も、本発明の一部であり、これは、微細粒子金属酸化物および水性アルカリ組成物を含む。前記結合剤系は、結合剤系の総質量に対して、10質量%~30質量%未満の範囲、例えば22質量%~30質量%未満の総含水率を有し得る。また、水性アルカリ組成物に含有されているアルカリと、微細粒子金属酸化物との質量比は、前記水性アルカリ組成物に含まれる理論上の乾燥アルカリに基づいて、0.05~0.5の範囲、例えば0.15~0.3の範囲であってもよい。
本発明は、以下の図への言及によりさらに例証される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】微細粒子金属酸化物および水性アルカリ組成物の含有量に応じて、t=0hでの温間曲げ強度を示す二次元表現である
【
図2】微細粒子金属酸化物および水性アルカリ組成物の含有量に応じて、t=1hでの冷間曲げ強度を示す二次元表現である。
【
図3】微細粒子金属酸化物および水性アルカリ組成物の含有量に応じて、t=24hでの冷間曲げ強度を示す二次元表現である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図に対する以下の説明および言及は、本発明の模範的な実施形態に関わり、特許請求の範囲を限定しないものとすることが理解される。
本発明は、添付の特許請求の範囲に従って、鋳造に使用する結合耐火材を得るための方法を提供する。
本発明によれば、特性の改善は、耐火成形材を、微細粒子金属酸化物および水性アルカリ組成物と組み合わせて使用して、耐火性結合微粒子物品が形成された場合、その物品で達成できることが見出されたが、但し、水性アルカリ組成物が寄与する、また、任意で界面活性剤が寄与する水以外に、追加の水を混合物に添加しないことを条件とする。ある実施形態では、耐火性結合微粒子物品は、界面活性剤および/または金属水酸化物を含んでもよい。
詳細には、微細粒子金属酸化物および水性アルカリ組成物の組合せは、従来技術に従って用いられることが多い水ガラスと置き換えるために使用できる。
【0012】
理論に束縛されることを望むものではないが、本発明の機構は、水分レベルが低いこと、および混合する前にシリケートが存在しないことを伴うと考えられる。これらの要因により、アルカリと金属酸化物との間における反応が推し進められ、耐火成形材粒子近辺のきわめて限局した空間にきわめて迅速に起こり、これにより、続いて、溶液中に水ガラスが一切形成されることなく、きわめて強い結合を耐火成形材微粒子の間に生じさせることができる。
この機構を発生させるために、成分の相対的濃度を具体的に定義されている境界条件内でコントロールすることが有利と見出された。
本明細書で使用されている、「微細粒子金属酸化物」という用語は、50μm以下の平均一次粒径を有する非晶質金属酸化物粉末を指す。微細粒子金属酸化物は、あるいは、金属酸化物ダストとして公知であり、d50が50μm以下、または30μm以下、または20μm以下、または15μm以下、または10μm以下、または5μm以下になる粒径分布を有し得る。微細粒子金属酸化物は、炉、例えば、縮合金属酸化物の製造に使用される電気アーク炉の作業における副生成物として得られる炉ダストからの主な成分として得られる。
【0013】
本明細書で使用されている「シリカヒューム」(CAS番号69012-64-2)またはマイクロシリカという用語は、二酸化ケイ素(SiO2)の非晶質多形体を指し、これは、約150nm、より一般的には80nm~5μmの平均一次粒径を有する粉末である。シリカヒューム粒子は、直径50μmまでの凝集体を形成する強い傾向を有する。シリカヒュームは、15m2/g超、典型的には30m2/gまでのBET表面積を有し、例えばケイ素、フェロシリコンまたは縮合シリカの生成物から副生成物として得ることができる。
本明細書で使用されている「ヒュームドシリカ」(CAS番号112945-52-5)または熱分解法シリカという用語は、分岐鎖状粒子に縮合している、凝集する傾向を有する非晶質シリカの微小液滴を指す。一次粒径は、5~50 nmの範囲であり、BET表面積は、典型的には50~600m2/gである。ヒュームドシリカは、かなり複雑な熱分解プロセスにより生成される。
本出願を通じて、粒径分布は、Malvern Mastersizer 2000でレーザー光散乱を使用して測定した。測定の前に、試料を水に分散させ、試料を完全に解凝集(de-agglomeration)するために超音波処理を適用した。本明細書で使用されている値d10、d50、d90およびd99は、粒径分布について記載する場合、場合に応じて粒子の10%、または粒子の50%、または粒子の90%または粒子の99%が当該値より小さい粒径を定義する。
【0014】
本発明によれば、耐火性鋳造物品を形成するために耐火性結合粒状材料が形成される方法が提供される。本発明による方法は、耐火成形材、水性アルカリ組成物、微粒子金属酸化物、また、任意で界面活性剤および/または金属水酸化物の特定の組合せを特徴とする。これらの成分は、混合し、当業者に公知の中子シューターを使用して射出する。本発明によれば、得られた中子は、単に加熱することにより、圧縮空気流を使用して、もしくは気流を伴わずに加熱して、またはその両方の組合せを使用して、硬質化する。本発明による方法は、生成物を硬化させるための追加の化学的または物理的手段、例えばマイクロ波放射、CO2吹き込みまたはさらに上昇温度約300℃に依存しない。
本発明による方法は、水性アルカリ性の使用、および任意で界面活性剤の使用以外に追加の水を混合物に添加しないという特質を特徴とする。これにより、中子シューターを使用して射出される混合物を得るための試料調製がさらに容易かつ明快になる。
【0015】
射出および硬化
本発明の特定の実施形態によれば、射出するステップは、中子シューターにおいて、加圧熱気流を使用して、および/または気流を使用せずに、300℃以下の温度にて120秒以下硬化させるステップを含む。
【0016】
一実施形態によれば、前記硬化させるステップは、300℃の温度にて、または280℃の温度にて、または260℃の温度にて、または240℃の温度にて、または220℃の温度にて、または200℃の温度にて、または180℃の温度にて、または160℃の温度にて、または140℃の温度にて、または120℃の温度にて、加圧気流を使用して実行する。一実施形態によれば、加圧気流を使用した前記硬化させるステップは、上で言及されている温度のいずれかにて、120秒の持続時間にわたり、または100秒の持続時間にわたり、または90秒の持続時間にわたり、または80秒の持続時間にわたり、または70秒の持続時間にわたり、または60秒の持続時間にわたり、または50秒の持続時間にわたり、または40秒の持続時間にわたり、または30秒の持続時間にわたり、または20秒の持続時間にわたり、または10秒の持続時間にわたり、または5秒の持続時間にわたり実行する。
【0017】
一実施形態によれば、前記硬化させるステップは、300℃の温度にて、または280℃の温度にて、または260℃の温度にて、または240℃の温度にて、または220℃の温度にて、または200℃の温度にて、または180℃の温度にて、または160℃の温度にて、または140℃の温度にて、または120℃の温度にて、気流を伴わずに実行する。一実施形態によれば、前記硬化させるステップは、上で言及されている温度のいずれかにて、120秒の持続時間にわたり、または100秒の持続時間にわたり、または90秒の持続時間にわたり、または80秒の持続時間にわたり、または70秒の持続時間にわたり、または60秒の持続時間にわたり、または50秒の持続時間にわたり、または40秒の持続時間にわたり、または30秒の持続時間にわたり、または20秒の持続時間にわたり、または10秒の持続時間にわたり、または5秒の持続時間にわたり、気流を伴わずに実行する。
本発明のいくつかの実施形態によれば、射出するステップは、中子シューターにおいて、300℃以下の温度にて120秒以下硬化させるステップを含み、気流なし、および後続の加圧気流の組合せが使用される。例えば、前記硬化させるステップは、気流を伴わずに160℃にて10秒、続いて20秒にわたる120℃の加圧気流の加熱を含んでもよい。
【0018】
混合物の微粒子成分
結合剤成分における水分レベル
本発明の一実施形態によれば、組み合わせた微細粒子金属酸化物および水性アルカリ組成物における総水分レベルは、微粒子金属酸化物および水性アルカリ組成物の総質量に対して、10質量%~30質量%未満の範囲、例えば10.0質量%~30.0質量%未満の範囲であってもよい。本発明の一実施形態によれば、組み合わせた微細粒子金属酸化物および水性アルカリ組成物における総水分レベルは、微粒子金属酸化物および水性アルカリ組成物の総質量に対して、22質量%~30質量%未満の範囲、例えば22.0質量%~30.0質量%未満の範囲であってもよい。例えば、組み合わせた微細粒子金属酸化物および水性アルカリ組成物における総水分レベルは、約10質量%、または約12質量%、または約14質量%、または約16質量%、または約18質量%、または約20質量%、または約22質量%、または約22.0質量%、または約23質量%、または約24質量%、または約25質量%、または約26質量%、または約27質量%、または約28質量%、または約29質量%、または約30質量%、または約30.0質量%であってもよい。例えば、組み合わせた微細粒子金属酸化物および水性アルカリ組成物における総水分レベルは、10質量%超30質量%未満、または30.0質量%未満、または29質量%未満、または28質量%未満、または27質量%未満、または26質量%未満、または25質量%未満、または24質量%未満、または23質量%未満、または22質量%未満、または20質量%未満、または18質量%未満、または16質量%未満、または14質量%未満、または12質量%未満であってもよい。例えば、組み合わせた微細粒子金属酸化物および水性アルカリ組成物における総水分レベルは、30質量%未満10質量%超、または10.0質量%超、または12質量%超、または14質量%超、または16質量%超、または18質量%超、または20質量%超、または22質量%超、または22.0質量%超、または23質量%超、または24質量%超、または25質量%超、または26質量%超、または27質量%超、または28質量%超、または29質量%超であってもよい。
【0019】
混合物全体における結合剤レベル
本発明の一実施形態によれば、ステップ(iv)の終わりに得られた、微細粒子金属酸化物、水性アルカリ組成物および粒状耐火成形材の混合物における微細粒子金属酸化物および水性アルカリ組成物の総含有量は、得られた混合物の総質量に対して、0.5質量%超~5.0質量%未満の範囲、例えば3.8質量%超~5.0質量%未満、例えば3.80質量%超~5.00質量%未満である。例えば、ステップ(iv)の終わりに得られた、微細粒子金属酸化物、水性アルカリ組成物および粒状耐火成形材の混合物における微細粒子金属酸化物および水性アルカリ組成物の総含有量は、約0.5質量%、または約0.50質量%、または約1.0質量%、または約1.5質量%、または約2.0質量%、または約2.5質量%、または約3.0質量%、または約3.5質量%、または約3.8質量%、または約3.80質量%、または約3.9質量%、または約4質量%、または約4.0質量%、または約4.1質量%、または約4.2質量%、または約4.3質量%、または約4.4質量%、または約4.5質量%、または約4.6質量%、または約4.7質量%、または約4.8質量%、または約4.9質量%、または約5.0質量%、または約5.00質量%であってもよい。例えば、ステップ(iv)の終わりに得られた、微細粒子金属酸化物、水性アルカリ組成物および粒状耐火成形材の混合物における微細粒子金属酸化物および水性アルカリ組成物の総含有量は、0.5質量%超5.0質量%未満、または5.00質量%未満、または4.9質量%未満、または4.8質量%未満、または4.7質量%未満、または4.6質量%未満、または4.5質量%未満、または4.4質量%未満、または4.3質量%未満、または4.2質量%未満、または4.1質量%未満、または4質量%未満、または4.0質量%未満、または3.9質量%未満、または3.9質量%未満、または3.5質量%未満、または3.0質量%未満、または2.5質量%未満、または2.0質量%未満、または1.5質量%未満、または1.0質量%未満であってもよい。例えば、ステップ(iv)の終わりに得られた、微細粒子金属酸化物、水性アルカリ組成物および粒状耐火成形材の混合物における微細粒子金属酸化物および水性アルカリ組成物の総含有量は、5.0質量%未満0.5質量%超、または1.0質量%超、または1.5質量%超、または2.0質量%超、または2.5質量%超、または3.0質量%超、または3.5質量%超、または3.8質量%超、または3.9質量%超、または4質量%超、または4.0質量%超、または4.1質量%超、または4.2質量%超、または4.3質量%超、または4.4質量%超、または4.5質量%超、または4.6質量%超、または4.7質量%超、または4.8質量%超、または4.9質量%超であってもよい。
【0020】
混合物全体における水分レベル
本発明の一実施形態によれば、ステップ(i)で供給する微細粒子金属酸化物、ステップ(ii)で供給する水性アルカリ組成物およびステップ(iii)で供給する粒状耐火成形材における総含水率は、ステップ(i)、(ii)および(iii)で供給する成分の総質量に対して、0.8質量%~1.6質量%の範囲、例えば0.80質量%~1.60質量%であってもよい。例えば、ステップ(i)で供給する微細粒子金属酸化物、ステップ(ii)で供給する水性アルカリ組成物およびステップ(iii)で供給する粒状耐火成形材における総含水率は、約0.8質量%、または約0.80質量%、または約0.9質量%、または約1質量%、または約1.0質量%、または約1.1質量%、または約1.2質量%、または約1.3質量%、または約1.4質量%、または約1.5質量%、または約1.6質量%、または約1.60質量%であってもよい。例えば、ステップ(i)で供給する微細粒子金属酸化物、ステップ(ii)で供給する水性アルカリ組成物およびステップ(iii)で供給する粒状耐火成形材における総含水率は、0.8質量%超1.6質量%未満、または1.60質量%未満、または1.6質量%未満、または1.5質量%未満、または1.4質量%未満、または1.3質量%未満、または1.2質量%未満、または1.1質量%未満、または1質量%未満、または1.0質量%未満、または0.9質量%未満であってもよい。例えば、ステップ(i)で供給する微細粒子金属酸化物、ステップ(ii)で供給する水性アルカリ組成物およびステップ(iii)で供給する粒状耐火成形材における総含水率は、1.6質量%未満0.8質量%超、または0.80質量%超、または0.9質量%超、または1.0質量%超、または1.1質量%超、または1.2質量%超、または1.3質量%超、または1.4質量%超、または1.5質量%超であってもよい。典型的な一実施形態によれば、ステップ(iii)で供給する粒状耐火成形材は、0.2質量%の含水率を有し得、上記の値になる。
【0021】
一実施形態では、ステップ(i)で供給する微細粒子金属酸化物、ステップ(ii)で供給する水性アルカリ組成物、ステップ(iii)で供給する粒状耐火成形材、ならびに、任意でステップ(iv)で供給する界面活性剤および/または金属水酸化物における総含水率は、ステップ(i)、(ii)、(iii)および(iv)で供給する成分の総質量に対して、0.8質量%超1.6質量%未満、または1.60質量%未満、または1.6質量%未満、または1.5質量%未満、または1.4質量%未満、または1.3質量%未満、または1.2質量%未満、または1.1質量%未満、または1質量%未満、または1.0質量%未満、または0.9質量%未満、1.65質量%超2.5質量%未満、または2.50質量%未満、または2.5質量%未満、または2.45質量%未満、または2.3質量%未満、または2.2質量%未満、または2.1質量%未満、または2.0質量%未満、または1.9質量%未満、または1.8質量%未満、または1.7質量%未満であってもよい。典型的な一実施形態によれば、ステップ(iv)で供給する金属水酸化物は、9質量%までの含水率を有し得、上記の値になる。
【0022】
結合剤成分の比
本発明の一実施形態によれば、ステップ(ii)で供給する水性アルカリ組成物、およびステップ(i)で供給する微細粒子金属酸化物の質量比は、前記水性アルカリ組成物に含まれる理論上の乾燥アルカリに基づいて、0.05~0.5の範囲、例えば0.15~0.3の範囲、例として0.15~0.30の範囲、または0.150~0.300の範囲であってもよい。例えば、前記比は、約0.05、または約0.1、または約0.10、または約0.15、または約0.150、または約0.16、または約0.17、または約0.18、または約0.19、または約0.20、または約0.2、または約0.21、または約0.22、または約0.23、または約0.24、約0.25、または約0.26、または約0.27、または約0.28、または約0.29、または約0.3、または約0.30、または約0.300、または約0.35、または約0.40、または約0.45、または約0.5または約0.50であってもよい。例えば、前記比は、0.05超0.5未満、または0.45未満、または0.4未満、または0.40未満、または0.35未満、または0.3未満、または0.30未満、または0.300未満、または0.29未満、または0.28未満、または0.27未満、または0.26未満、または0.25未満、または0.24未満、または0.23未満、または0.22未満、または0.21未満、または0.20未満、または0.2未満、または0.19未満、または0.18未満、または0.17未満、または0.16未満、または0.15未満、または0.10未満、または0.1未満であってもよい。例えば、前記比は、0.30未満0.05超、0.1超、0.10超、0.15超、0.150超、0.16超、0.17超、0.18超、0.19超、0.20超、0.2超、0.21超、0.22超、0.23超、0.24超、0.25超、0.26超、0.27超、0.28超、0.29超であってもよい。
【0023】
微細粒子金属酸化物
上で論じたように、前記微細粒子金属酸化物は、50μm以下の平均一次粒径を有する非晶質金属酸化物粉末を指す。本発明の一実施形態によれば、微細粒子金属酸化物は、シリカヒューム、沈降シリカ、熱分解法シリカ、シリケート、か焼または非か焼アルミノシリケート、例えばメタカオリンまたはパーライト、微細アルミナ、微細チタニア、微細亜鉛酸化物、珪藻土、およびアルカリの存在下でメタレートを形成する他の金属酸化物、ならびにその混合物からなる群から選択されてもよい。特定の実施形態によれば、微細粒子金属酸化物は、シリカヒュームである。さらなる実施形態によれば、微細粒子金属酸化物は、シリカヒュームおよびヒュームドシリカの混合物である。さらなる実施形態によれば、微細粒子金属酸化物は、シリカヒュームおよび微細粒子アルミナの混合物である。さらなる実施形態によれば、微細粒子金属酸化物は、シリカおよびジルコニアの混合物を含む、または、シリカ、アルミナおよびジルコニアの混合物を含む炉ダストであってもよい。
【0024】
水性アルカリ組成物
本発明によれば、結合剤成分として使用するための水性アルカリ組成物は、特に限定されない。例えば、水性アルカリ組成物は、水性水酸化ナトリウム、水性水酸化カリウム、水性水酸化リチウム、水性水酸化カルシウム溶液および/または懸濁液、水性水酸化マグネシウム懸濁液、ならびにそれらの混合物からなる群から選択されてもよい。さらに、水性アルカリ組成物の濃度は、特に限定されない。しかし、濃度は、一実施形態によれば、結合剤成分および/または調製した最終微粒子混合物における水分量が、好ましい範囲内になるように選択されてもよい。例えば、水性アルカリ組成物は、市販の33%NaOH(aq.)溶液、または市販の25%NaOH(aq.)溶液、または市販の40%NaOH(aq.)溶液であってもよい。
【0025】
粒状耐火成形材
本発明の一態様によれば、粒状耐火成形材は、鋳物砂、シリカ砂、再生砂、中間または高強度セラミック支持材、ボーキサイト、アルミナ、ムライト、橄欖石砂、クロマイト砂、ジルコン砂、シャモット砂、パーライト、フライアッシュ、バーミキュライトおよびそれらの混合物から選択されてもよい。
界面活性剤
一実施形態によれば、界面活性剤は、結合微粒子耐火材を形成するために、混合物に存在してよい。界面活性剤は、一般的に、親水性部分および疎水性部分を含み、その特性は、水性相において界面活性剤がミセルを形成する、または例えば、界面において蓄積できるように平衡が保たれる。
【0026】
本発明による結合微粒子耐火材を形成するために、いかなる分類の界面活性剤も使用できる。例えば、界面活性剤は、アニオン性、非イオン性、カチオン性または両性界面活性剤であってもよい。一態様では、界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、例えばエトキシ化またはプロポキシル化長鎖アルコール、アミンまたは酸、例えば脂肪族アルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、脂肪族アミンエトキシレート、脂肪酸エトキシレート、脂肪酸プロポキシレート、または糖界面活性剤、例えば脂肪族アルコールベースのポリグリコシドであってもよい。一態様では、脂肪族アルコールは、好ましくは、8~20個の炭素原子を含む。一態様では、界面活性剤は、カチオン性界面活性剤、例えばアルキルアンモニウム化合物、およびイミダゾリニウム化合物であってもよい。
一態様では、アニオン性界面活性剤は、スルフェート、スルホネート、ホスフェートまたはカルボキシレート基を極性親水性基として含有し得る。スルフェート基を含有するアニオン性界面活性剤が使用される場合、硫酸モノエステルを使用することが特に好ましい。ホスフェート基が、極性アニオン性界面活性基として使用される場合、オルトリン酸のモノ-およびジエステルが特に好ましい。
一態様では、本発明による結合微粒子耐火材料を形成するために使用される界面活性剤は、例えばアルキル、アリール、および/またはアラルキル基を含み、好ましくは、6個超の炭素原子を有する、または8~20個の炭素原子を有する、非極性である疎水性部を含んでもよい。疎水性部は、直鎖状鎖および分岐構造の両方を有し得る。様々な界面活性剤の混合物も使用され得る。
【0027】
一態様では、アニオン性界面活性剤は、オレイルスルフェート、ステアリルスルフェート、パルミチルスルフェート、ミリスチルスルフェート、ラウリルスルフェート、デシルスルフェート、オクチルスルフェート、2-エチルヘキシルスルフェート、2-エチルオクチルスルフェート、2-エチルデシルスルフェート、パルミトレイルスルフェート、リノリルスルフェート、ラウリルスルホネート、2-エチルデシルスルホネート、パルミチルスルホネート、ステアリルスルホネート、2-エチルステアリルスルホネート、リノリルスルホネート、ヘキシルホスフェート、2-エチルヘキシルホスフェート、カプリルホスフェート、ラウリルホスフェート、ミリスチルホスフェート、パルミチルホスフェート、パルミトレイルホスフェート、オレイルホスフェート、ステアリルホスフェート、ポリ-(1,2-エタンジイル-)-フェノールヒドロキシホスフェート、ポリ-(1,2-エタンジイル-)-ステアリルホスフェートおよびポリ-(1,2-エタンジイル-)-オレイルホスフェートからなる群から選択されてもよい。
本発明による結合微粒子耐火材を形成するために使用される場合、界面活性剤は、得られた混合物の総質量に対して、約0.001質量%~約1.0質量%、または約0.01質量%~約0.9質量%、または約0.05質量%~約0.8質量%、または約0.07質量%~約0.7質量%、または約0.1質量%~約0.6質量%、または約0.2質量%~約0.5質量%の量で存在し得る。
【0028】
一態様によれば、界面活性剤は、粒状耐火成形材に添加される前に、結合剤、または結合剤および金属水酸化物に添加されてもよい。例えば、溶液における界面活性剤は、結合剤に添加されてもよい。あるいは、界面活性剤は、別々の成分、例えば固相成分として添加されてもよい。ある実施形態では、界面活性剤は、好ましくは、結合剤に溶解される。一態様では、界面活性剤は、水溶液として添加されてもよい。界面活性剤水溶液の濃度は、特に限定されない。しかし、濃度は、一実施形態によれば、調製した最終微粒子混合物における水分量は、好ましい範囲内になるように選択されてもよい。例えば、界面活性剤水溶液は、界面活性剤水溶液の総質量に対して、約10質量%~約80質量%の水、または約20質量%~約70質量%の水、または約30質量%~約60質量%の水、または約40質量%~約60質量%の水を含んでもよい。
【0029】
金属水酸化物成分
一態様によれば、金属水酸化物成分は、成形組成物(moulding composition)に含まれ得る。例えば、金属水酸化物成分は、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、酸化水酸化物、例えばFeOOH、ハント石またはハイドロマグネサイトからなる群から選択されてもよい。金属水酸化物成分は、必要とされる温度範囲において脱ヒドロキシルまたは脱炭素温度を有することができ、防火剤または難燃剤として使用されることが多い。ある例では、金属水酸化物成分は、約400℃未満(中子に影響を及ぼす温度によって決まる)、および約200℃超の分解/脱ヒドロキシル温度を有し、これは、一般的に、必要とされる強度を得るために使用される温度である。理論に束縛されることを望むものではないが、例えば水酸化アルミニウムを用いた、200~400℃の間の温度範囲の水を放出する機構は、2つの観点で説明され得、放出された水(34.6%と算出)が中子に移動して再水和し、結合剤の架橋を軟化する、または、体積が変化するため結合剤の架橋にひびが入る。
一実施形態では、デンプン、炭水化物、または、熱負荷中に水もしくは炭素-酸化物を主に放出し、かつベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンもしくは他の有害なガス、または揮発性物質を放出しない他の材料も、混合物に添加されてもよい。
【0030】
金属水酸化物成分は、例えば、アルミニウム鋳造で有用になり得る。アルミニウムの溶融温度は、650~750℃の範囲、例えば660℃であり、したがって、中子における温度レベルは比較的低い。中子における温度レベルは、中子の大きさおよび形状によって決まり得る。中子のいくつかの部分における温度は、脱水によるさらなる硬質化を誘導するために使用される範囲になり得る。
射出後、追加の硬質化は、鋳造中に発生させ、それにより、微粒子耐火材の結合および強度を向上できる。いくつかの例では、微粒子耐火材の強度は、湿度条件下で保存中より低下することがある。そのような場合には、脱水プロセスは、鋳造中に再度スタートし、結合をより良好にし、強度をより高くする。しかしこれは、中子または中子砂を鋳物から、とりわけ、シリンダーヘッドのウォータージャケット内におけるチャネルのようなきわめて薄い領域から取り出す場合、問題を引き起こし得る。
耐火性結合粒状材料
本発明によれば、本発明による方法から得られる耐火性結合粒状材料は、特に有利な特性を有する。耐火性結合微粒子物品、例えば鋳物用中子および鋳型を使用するための特定の一要件は、曲げ強度が十分であるべきということである。これは、射出後即座に取り扱うことを可能にするための、中子シューターで材料を形成した直後の温間曲げ強度、ならびに、冷却および保存した後における冷間曲げ強度の両方に当てはまる。
【0031】
例えば、中子の射出直後の温間曲げ強度が低すぎる場合、中子は、中子シューターから取り出した際に損傷を受ける、または崩壊する可能性がある。この場合には、追加の冷却時間は、中子が中子シューターから取り出され得る前、また、中子が保存され得る、またはさらなる使用のために取り出され得る前に必要なことがある。したがって、温間曲げ強度(例えば、中子シューターからの取り出し後30秒で測定した)は、約120N/cm2以上であることが有利である。さらに、温間曲げ強度が高過ぎる場合、これにより、新たに形成された中子は壊れやすくなる、または砕けることがあるので、その取扱いに困難が生じ得る。したがって、温間曲げ強度(例えば中子シューターからの取り出し後30秒で測定した)は、約200N/cm2以下であることが有利である。
例えば、形成後約1時間で測定した冷間曲げ強度は、鋳造用途における安全な取扱いおよび安定した使用を可能にするために十分高くすべきである。しかし、冷間曲げ強度が高過ぎる場合、中子は、壊れやすくなり、使用中に砕ける危険性がある。したがって、室温にて空気中で保存した1時間後に、250~500N/cm2の範囲内の冷間曲げ強度を有する中子を得ることが有利である。
【0032】
さらに、形成後約24時間で測定した冷間曲げ強度は、得られた中子の安定性に対する良好な指標である。無機中子は、空気中の水分と反応し、一定の保存時間後に崩壊しがちである。同様に、高い結合剤添加量によって引き起こされる、空気でのさらなる硬化の場合には、冷間曲げ強度は、高くなり過ぎ、上で論じられている問題を引き起こすことがある。理論に束縛されることを望むものではないが、射出するステップの前に、含水率の高さに由来して中子内の水の可用性が上昇すると、中子の耐久性は低下すると考えられる。したがって、本発明に従って形成された耐火性結合微粒子物品は、比較の材料より優れた耐久性を有することが示され得る。したがって、コントロールされていない雰囲気下で、室温にて24時間保存した後に測定した冷間曲げ強度では、1時間後に測定した冷間曲げ強度の80~120%以内になることが利点となる。
【0033】
本発明は、相容れない特質の組合せを除いて、本明細書で言及されている特質および/または限定のいずれかの組合せを含んでもよいことに留意すべきである。先述の説明は、本発明の詳細な実施形態を例証する目的のために、その実施形態を対象とする。しかし、本明細書に記載されている実施形態に対して、多くの変更および変形が考えられることは当業者に明らかである。そのような変更および変形のすべては、添付の特許請求の範囲で規定されるように、本発明の範囲内であることが意図されている。
【実施例】
【0034】
耐火性結合微粒子組成物を、以下のプロトコールに従って調製した。
Hobart遊星混合物で、適切な量のシリカ砂、シリカヒュームおよび水性水酸化ナトリウムを混合することにより、およそ6kgの混合物を調製した。まず、シリカ砂をシリカヒュームと約2分混合した。次に、水酸化ナトリウム水溶液を添加し、組成物をさらに約2分混合した。
【0035】
シリカ砂はH 32グレードシリカ砂(Haltern、d50=0.32mm、99.8%SiO2、0.10%Al2O3、0.03%Fe2O3、0.2%水分)であった。用いられるシリカヒュームは、>99質量%のSiO2を含み、d10 0.19μm、d50 0.69μm、d90 10.7μm、d99 18μmを有する微細マイクロシリカであった。使用されるNaOHは、Reininghaus-Chemie GmbH&Co.KG、Essen、Germanyにより供給され、濃度33%を有する、商業的に調達したNaOHであった。使用されるAl(OH)3は、DADCOにより供給される、商業的に調達したAl(OH)3であった。
【0036】
混合物は、脱水による硬質化を避けるために密閉容器で保存し、一部を中子シューターLAEMPE L1(Laempe Mossner Sinto GmbH、Barleben、Germany)の砂シリンダーに充填した。中子シューターは、180×22.36×22.36mmの寸法を有するテストバー中に、2barの射出圧力でセットし、続いて、中子箱において160℃にて10秒のベーク時間、および、120℃にて20秒の空気とのガス処理を設けた。テストバーの曲げ強度は、温間強度では中子箱からテストバーを取り出した直後(約30秒以内)(t=0h)、また、空気下で室温にて保存した後、t=1hおよびt=24hで、Zwick/Roell Z005強度テスターで、標準的な3点曲げ強度テストを使用して測定した。
微粒子組成物に対して許容できると考えられる、テストバーの必要な特性は、t=0hでの温間曲げ強度が120~200N/cm2であるべき、t=1h後の冷間曲げ強度が250~500N/cm2であるべき、t=1hとt=24hとの間における曲げ強度の変動が、20%以下であるべきである。
【0037】
テストした組成物の詳細を、表Iに示す。
【表1】
t=0h(温間曲げ)、t=1hおよびt=24h後に得られた曲げ強度の測定値を、以下の表IIに示す。
【0038】
【0039】
本発明の実施例1~6による組成物から形成されたテストバーは、t=0hで良好な温間曲げ強度特性を有し、t=1hで良好な冷間曲げ強度特性を有する一方で、同時に、t=1hとt=24hの間において曲げ強度の許容できる~良好の変動を有することが見出された。比較例5によるテストバーは、結合しておらず、中子箱から取り出した際に砕けた。比較例1~4および5~8による組成物から形成されたテストバーは、パラメーターのうち少なくとも1つで不合格であった。
【0040】
さらなる実験は、0.1質量%の界面活性剤(実施例4a)または0.5質量%の界面活性剤(実施例4b)と共に、0.5質量%のAl(OH)3を添加した実施例4の組成物に基づいて行い、界面活性剤は、47%の濃度を有する硫酸2-エチルヘキシルナトリウム塩である。t=0h(温間曲げ)、t=1hおよびt=24h後の得られた曲げ強度測定を、以下の表IIIに示す。
【0041】
【0042】
本発明の実施例4aおよび実施例4bによる組成物から形成されたテストバーも、t=0hでの良好な温間曲げ強度特性、およびt=1hでの良好な冷間曲げ強度特性を有する一方で、同時に、t=1hとt=24hの間において曲げ強度の許容できる~良好の変動を有することが見出された。