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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】熱可塑性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/22 20060101AFI20240604BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20240604BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
C08J3/22 CFH
C08L83/04
C08L101/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020552904
(86)(22)【出願日】2019-04-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-12
(86)【国際出願番号】 EP2019058726
(87)【国際公開番号】W WO2019193192
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2022-04-01
(31)【優先権主張番号】18305401.4
(32)【優先日】2018-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516265285
【氏名又は名称】マルチベース・エスア
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ブカール、シルヴァン
(72)【発明者】
【氏名】グラデュレ、ヤン
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-526666(JP,A)
【文献】特表2017-507233(JP,A)
【文献】特表2017-533319(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102924793(CN,A)
【文献】特開2000-239398(JP,A)
【文献】国際公開第2016/079324(WO,A1)
【文献】特開2012-153741(JP,A)
【文献】特表2002-505366(JP,A)
【文献】国際公開第99/045072(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00-3/28;99/00
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性マスターバッチ組成物であって、
(B)
(B1)1種以上の熱可塑性有機材料と、
(B2)シリコーンエラストマーと;任意選択的に
(B3)線形オルガノポリシロキサンポリマーと
を含むマスターバッチを含み、
前記マスターバッチ(B)が、(B1)+(B2)+(B3)の重量に基づいて20~60重量%の成分(B2)+(B3)を含むものであり、
前記シリコーンエラストマー(B2)が、シラノール末端ジオルガノポリシロキサン(B2b1)、少なくとも2つのSi結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン(B2a2)及び縮合触媒(B2b3)の動的加硫によって調製されたものであり、
前記縮合触媒(B2b3)が、白金化合物も白金錯体も含まず、
前記ジオルガノポリシロキサン(B2b1)が、ASTM D-926-08によって測定される、少なくとも100mm/100のWilliams可塑性値を有するガムである、
熱可塑性マスターバッチ組成物。
【請求項2】
前記熱可塑性マスターバッチ組成物が熱可塑性エラストマーマスターバッチ組成物である、請求項1に記載の熱可塑性マスターバッチ組成物。
【請求項3】
未硬化のオルガノポリシロキサン(B3)が、マスターバッチ(B)の0.1~25重量%の量で存在する、請求項1に記載の熱可塑性マスターバッチ組成物。
【請求項4】
(A)1種以上の熱可塑性有機材料と、
(B)請求項1~のいずれか一項に記載のマスターバッチ(B)と
を含む熱可塑性組成物であって、熱可塑性組成物中、(A)+(B)の重量に基づいて総量0.2~25重量%の架橋されたシリコーンエラストマーが含まれる、熱可塑性組成物。
【請求項5】
スポーツ用品、履物、自動車、電化製品、電子機器、携帯用電子機器、電気、通信及び医療用途のための部品又は構成要素であって、
請求項に記載の熱可塑性組成物を含む部品又は構成要素。
【請求項6】
サングラス、老眼鏡又はウェアラブル電子機器のためのブレスレット又は支持パッドなどのウェアラブルアイテムであって、請求項に記載の熱可塑性組成物を含む、ウェアラブルアイテム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱可塑性エラストマー組成物を含む熱可塑性組成物中のマスターバッチ添加剤としての熱可塑性シリコーン加硫物に関する。マスターバッチ及び熱可塑性組成物の製造プロセスも記載される。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性材料は、特定の温度において曲げやすくなるか又は成形可能になり、且つ冷却時に固まるプラスチック材料である。再加熱されると、熱可塑性材料は、新たな形状へと再成形が可能である。対照的に、熱硬化性材料は、軟質固体又は粘性液体プレポリマー若しくは樹脂から不可逆的に硬化されるプラスチックであり、且つ一旦硬化/固められると、熱硬化性材料は再加熱時に新たな形状へと再成形されることは不可能である。
【0003】
熱可塑性エラストマー(TPE)は、プラスチック特性及びゴム特性の両方を有する熱可塑性材料である。TPEは、従来の熱硬化性ゴムとは異なりエラストマー的な機械的特性を有する一方で、これらは高温で再加工することができる。この再加工能力は、加工部品のリサイクルを可能にし、スクラップの大幅な低減をもたらすため、化学的に架橋されたゴムに対するTPEの大きな利点である。
【0004】
一般的には、2つの主な種類の熱可塑性エラストマーであるブロックコポリマーTPE及び単純ブレンドTPE(物理的ブレンド)が知られている。
【0005】
ブロックコポリマーTPEは以下のものを含む:
(i)ハード又は剛質と呼ばれる(すなわち熱可塑性挙動を有する)ブロック又はセグメント、典型的にはこれらは周囲温度より高い融点又はガラス転移温度を有する;及び
(ii)曲げやすい又はフレキシブルであるソフトと呼ばれる(すなわちエラストマー挙動を有する)ブロック又はセグメント、これらは典型的には低いガラス転移温度(Tg)又は室温よりかなり低い融点を有する。
【0006】
「低いガラス転移温度」という表現は、15℃未満、好ましくは0℃未満、有利には-15℃未満、より有利には-30℃未満、場合によっては-50℃未満のガラス転移温度Tgを意味すると理解される。
【0007】
ブロックコポリマー熱可塑性エラストマーでは、ハードセグメントが凝集して明確なミクロ相を形成し、ソフト相のための物理的架橋として機能し、それによって室温でゴム状の性質を付与する。高温では、ハードセグメントは溶融又は軟化し、コポリマーの流動及び加工を可能にする。ハードブロックは、一般的にはポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリオレフィン又はそれらの混合物を主体とする。ソフトブロックは一般的にはポリエーテル、ポリエステル、ポリオレフィン及びそれらのコポリマー又はブレンドをベースとする。
【0008】
単純ブレンド又は物理的ブレンドと呼ばれるTPEは、エラストマー成分を熱可塑性樹脂と均一に混合することによって得ることができる。
【0009】
長い間(1950年代から)、耐衝撃性などの熱可塑性材料の特性を変更するための多くの努力がなされてきた。ポリスチレンの場合、これによって高衝撃性ポリスチレン(HIPS)の開発が導かれた。アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)及びポリアミド(PA)などの他の熱可塑性ポリマーの場合、関連する熱可塑性物質中での1種以上のエラストマーの分散によって耐衝撃特性の改善が得られた。そのような改善を達成する鍵となる要因の1つが、エラストマー粒子分散体の品質及び均質性、並びに相間の接触親密性の制御であることが確認された。使用される主要なエラストマーは、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、天然ゴム(NR)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリメタクリレートブタジエンスチレン(MBS)、ポリプロピレン(PP)及び/又はポリエチレン(PE)ポリマー及びコポリマーなどのオレフィン系エラストマー、ポリオレフィンのターポリマー、エチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDM)、スチレンブロックポリマーアクリルエラストマーであった。
【0010】
しかしながら、そのようなエラストマー粒子の導入は、他の特性に悪影響を与え、例えば、表面性能特性の低下によって、より低い引っ掻き及び/又は損傷耐性がもたらされ、より高い摩擦係数(COF)も確認された。これらは、全体的なゴム様効果をもたらす表面に存在し得るエラストマー相の導入の結果としてである。現在まで、同時に耐衝撃性を改善し、エラストマー挙動をもたらし、且つ損傷及び摩耗耐性などの表面性能特性を改善することが可能であるユニークな解決策は存在しない。
【0011】
熱可塑性物質及び/又はTPE中の未硬化のオルガノポリシロキサンポリマーのマスターバッチは、熱可塑性物質及び/又はTPEの表面性能を強化するための証明された解決策である。種々の熱可塑性樹脂中に分散された高分子量シロキサンポリマーを含有するシロキサンマスターバッチは、自動車の内部及び外部構成要素並びにラップトップコンピュータ及び携帯電話の場合などの消費者向け用途、並びにチューブ及びフィルム市場で首尾よく使用されてきた。シロキサンポリマーは、溶融体相の表面に移行し、そして小分子添加剤の添加剤滲出物の悪影響が生じることなく、引っ掻き及び損傷耐性を与える。
【0012】
シロキサンマスターバッチは、(シリコーンとも呼ばれる)シロキサンを含有するマスターバッチである。マスターバッチは、典型的に、プラスチック又は他のポリマーに望ましい特性を与えるために使用されるプラスチック又は他のポリマーのための固体添加剤である。マスターバッチは、典型的に熱を伴うプロセスの間に担体樹脂中に封入される添加剤の濃縮混合物であり、それは次いで冷却され、そして粒状形に切断される。これによってポリマーに望ましい特性が与えられる。マスターバッチは、典型的に、通常ペレット化された形態で周囲温度において固体である。シロキサンマスターバッチは、典型的に、最高50%の配合量の種々の異なるプラスチック担体中でのシロキサンポリマーのペレット化された極小分散である。シロキサンマスターバッチは、使いやすさのために固体の形態で製造される。それらは、典型的に、種々の熱可塑性物質中に分散された、例えば5μmの平均粒径を有する25~50%のシロキサンポリマー(一般に粘度>100万mm・s-1(cSt)、典型的に>1500万mm・s-1(cSt))を有するガム)を含有する。シロキサンは、少なくとも1個のSi-O-Si結合を含む化合物である。ポリマーは繰り返し単位を含有する化合物である。プラスチック又は有機熱可塑性材料又は熱可塑性有機ポリマーは、C-C結合をベースとするポリマーであって、そして熱可塑性を有する。ポリシロキサン又はシリコーンとも呼ばれるシロキサンポリマーは、繰り返しSi-O-Si単位を含有するポリマーである。オルガノポリシロキサン化合物は、成分が有機部分を含有する置換基を有するポリシロキサンである。
【0013】
最も一般に使用されるシリコーンは、最も短い可能な鎖の、例えば0.65mm・s-1(cSt)の粘度を有するヘキサメチルジシロキサンから、高い重合度及び例えば10mm・s-1(cSt)以上の粘度を有し、しばしばシリコーンガムと呼ばれるポリマーまでの範囲の種々の粘度の線形PDMS(ポリジメチルシロキサン)である。PDMSガムは、通常、600,000mm・s-1(cSt)以上の粘度を有する流体である。しかしながら、ポリシロキサンの形態学は固定されないため、それらの使用に欠点があり、例えば、添加レベルは組成物中で最大約5重量%までのシリコーンに限定される。このレベル以上では、シリコーン領域の凝集が観察され、これは、最初と比較して最終ブレンドの機械的性能における進行性の、且つ連続的な損失を導く。これは有意に衝撃耐性の損失、破断時の引張歪み及び応力の減少をもたらす。高粘度ジオルガノポリシロキサンポリマーの粘度値(例えば≧1000000mm・s-1(cSt))は、New Castle,DE,USAのTA InstrumentsからのAR2000レオメーター又は測定する粘度に最も適したスピンドルを使用する適切なブルックフィールド粘度計を用いて測定することができる。しかしながら、シロキサンは、非常に高い粘度を有する高分子量のポリマーであるシリコーンガムであってもよい。ガムは典型的には25℃で少なくとも2000000mm・s-1(cSt)の粘度を有するが、通常かなり大きい粘度を有する。そのため、ガムは、粘度の測定が非常に困難になることを考慮して、ASTM D-926-08に従ったWilliams可塑性値によってしばしば特徴付けられる。
【0014】
TPEを変性するための別の方法が確認された。TPEのエラストマー成分は混合の間に架橋されてよく、これによって、熱可塑性加硫物(TPV)として当該技術分野において既知のTPEの特別な形態が生じる。この中で、架橋されたエラストマー相は高温で不溶性であり、且つ非流動性であり、TPVは一般に、単純なブレンドと比較して、改善された油及び溶媒耐性、並びに減少した圧縮歪を示した。典型的に、TPVは動的加硫として知られているプロセスによって形成される。このプロセスでは、エラストマー(例えばポリマー、架橋剤及び触媒)及び熱可塑性マトリックスを製造するために必要とされる成分が一緒に混合され、そしてエラストマーは熱可塑性マトリックス及びエラストマーの「共連続ブレンド」を生じるように同時に硬化される。
【0015】
架橋エラストマー成分が、混合プロセスの間に架橋剤及び/又は触媒の補助によって硬化されたシリコーンポリマーであることが可能であり、一方、熱可塑性成分が有機、非シリコーンポリマーである場合を含めて、多くのそのようなTPVが当該技術分野において知られており、そのようなTPVは、熱可塑性シリコーン加硫物又はTPSiVと呼ばれることがあり、それらの製造後、TPV、例えばTPSiVは、プラスチック部品を製造するための、押出成形、減圧形成、射出成形、ブロー成形、3D印刷又は圧縮成形などの従来技術によって加工されてもよい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本明細書中、
(B)
(B1)1種以上の熱可塑性有機材料と、
(B2)シリコーンエラストマーと;任意選択的に
(B3)未硬化のオルガノポリシロキサンポリマーと
を含む熱可塑性マスターバッチであって、マスターバッチ(B)中、(B1)+(B2)+(B3)の重量に基づいて20~60重量%の架橋されたシリコーンエラストマーが含まれる、熱可塑性マスターバッチ(B)が記載される。
【0017】
(A)1種以上の熱可塑性有機材料、及び
(B)
(B1)1種以上の熱可塑性有機材料と、
(B2)シリコーンエラストマーと;任意選択的に
(B3)未硬化のオルガノポリシロキサンポリマーと
を含むマスターバッチのブレンドを含む熱可塑性組成物であって、マスターバッチ(B)中、(B1)+(B2)+(B3)の重量に基づいて20~60重量%の架橋されたシリコーンエラストマーが含まれ、且つ熱可塑性組成物中、(A)+(B)の重量に基づいて総量0.2~25重量%の架橋されたシリコーンエラストマーが含まれる熱可塑性組成物も提供される。熱可塑性組成物は、熱可塑性エラストマー組成物であってもよい。
【0018】
別の実施形態において、
(i)シリコーンエラストマー(B2)を製造するために使用される成分と1種以上の熱可塑性有機材料(B1)とをブレンドすることと、
(ii)シリコーン組成物を動的加硫してシリコーンエラストマー(B2)を形成することと、
(iii)ステップ(ii)の間又はステップ(iii)の後に(B3)を導入することと
を含む、上記のマスターバッチ(B)の製造方法であって、マスターバッチ(B)中、(B1)+(B2)+(B3)の重量に基づいて総量20~60重量%の成分(B2)+(B3)が含まれる製造方法が提供される。別の実施形態において、上記のマスターバッチを製造することと、得られたマスターバッチと1種以上の熱可塑性有機材料(A)とを、熱可塑性組成物中、(A)+(B)の重量に基づいて総量0.2~25重量%の架橋されたシリコーンエラストマーが含まれるような量でブレンドすることによる熱可塑性組成物の製造方法が提供される。熱可塑性組成物は熱可塑性エラストマー組成物であってもよい。
【0019】
本明細書中、熱可塑性組成物の物理的特性を変性するための上記のマスターバッチとしての熱可塑性シリコーン加硫物の使用も提供される。熱可塑性組成物は熱可塑性エラストマー組成物であってもよい。
【0020】
シリコーン加硫相を熱可塑性物質中に導入することは、架橋されたシリコーンの可撓性及び高い弾性のため、ポリジメチルシロキサンの低いTgのため、そして表面のシリコーン領域によってもたらされた表面変性のため、利益を提供する。これらの利益は、高いSi含有量においてもなお確認され、限られた粒子中のシリコーンの架橋が、より大きい径のシリコーン領域における凝集を可能にする。
【0021】
本発明の利益としては、最終材料中に0.5~25%Si相を有するように熱可塑性物質中で分散されることが可能である、20~60(重量)%のシリコーンエラストマーを含有する濃縮物を製造する能力が挙げられる。定義された範囲でこの濃出物を添加することによって、所望の衝撃、可撓性及び表面性能への最終製品性能の調製が導かれる。熱可塑性シリコーン加硫物をマスターバッチ添加剤として使用することは、驚くことに、例えば、非変性熱可塑性組成物と比較して、衝撃耐性を増加させ、機械弾性率を減少させ、そして表面性能を増加させることが見出された。
【発明を実施するための形態】
【0022】
疑義を避けるために記載すると、シラン及びシロキサンはケイ素を含む化合物である。
・シランは、SiHから誘導される化合物である。シランは、しばしば少なくとも1つのSi-C結合を含有し、そして他に明記されない限り、1つのみのSi原子を含有する。
・ポリシロキサンは、主鎖が-(Si-O)-繰り返し単位から構成されるポリマー鎖を形成するいくつかのSi-O-Si-結合を含有する。オルガノポリシロキサンは、少なくとも1個のSi原子が少なくとも1個の有機基を有する-(Si-O)-繰り返し単位を含む。「有機」は、少なくとも1個の炭素原子を含むことを意味する。有機基は、少なくとも1個の炭素原子を含む化学基である。
【0023】
ポリシロキサンは末端基及びペンダント基を含む。末端基は、ポリマー鎖の末端にあるSi原子上に位置する化学基である。ペンダント基は、Si原子がポリマー鎖の末端にないSi原子上に位置する基である。典型的に、オルガノポリシロキサンは次の構造の混合物を含有する:
【化1】
(式中、M、D、T及びQのそれぞれは、独立して、オルガノポリシロキサンの構造基の官能基を表す。特に、Mは、単官能基RSiO1/2を表し;Dは、二官能基RSiOを表しTは三官能基RSiO3/2を表し;且つQは四官能基SiO4/2を表す。したがって、例えば、線形オルガノポリシロキサンはD単位の主鎖を有し、且つ末端基はM単位であり、且つ分岐オルガノポリシロキサンは、例えば、T及び/又はQ単位が点在するD単位の主鎖を有する。
・ポリマーは繰り返し単位を含む化合物であり、その単位は典型的には少なくとも1つのポリマー鎖を形成する。ポリマーはホモポリマー又はコポリマーであることが可能である。ホモポリマーは、1種のみのモノマーから形成されるポリマーである。コポリマーは、少なくとも2種の異なるモノマーから形成されるポリマーである。繰り返し単位が炭素原子を含む場合、ポリマーは有機ポリマーと呼ばれる。
【0024】
架橋反応は、2つ以上の分子(それらのうちの少なくとも1つはポリマーである)が一緒に結合してポリマーを固める又は硬化させる反応である。架橋剤は、ポリマーの架橋反応を生じさせることができる化合物である。
【0025】
1種以上の熱可塑性有機材料(B1)は、ポリカーボネート(PC);ポリカーボネート-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(PC/ABS)ブレンド及びポリカーボネート-ポリブチレンテレフタレート(PC/PBT)ブレンドによって例示される他のポリマーとのポリカーボネートのブレンド;ポリカプロラクタム(Nylon-6)、ポリラウリルラクタム(Nylon-12)、ポリヘキサメチレrンジパミド(Nylon-6,6)及びポリヘキサメチレンドデカンアミド(Nylon-6,12)、ポリ(ヘキサメチレンセバカミド(Nylon6,10)並びにNylonと他のポリマーとのブレンドなどのNylonによって例示されるポリアミド;ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリエチレンナフタレート(PEN)によって例示されるポリエステル;ポリフェニレンエーテル(PPE)及びポリフェニレンオキシド(PPO)、並びに耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン-(ABS)及びスチレンアクリロニトリル樹脂(SAN)などのスチレン系樹脂とのPPE又はPPOのブレンド;ポリフェニレン硫化物(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアラミド、ポリイミド、合成ロッド構を有するフェニル含有樹脂、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)、ポリスチレン(PS)及びHIPSによって例示されるスチレン系樹脂;ポリアクリレート、SAN;ポリ塩化ビニル、フッ素プラスチック及びいずれかの他のハロゲン化プラスチックによって例示されるハロゲン化プラスチック;ポリケトン、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリプロピレン(PP)、高密度ポリエチレン(HDPE)及び低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリブテン(PB)を含むポリエチレン(PE)によって例示されるポリオレフィン、並びにポリオレフィンのコポリマー及びブレンド、熱可塑性ウレタン、熱可塑性ポリオレフィン系エラストマー、熱可塑性加硫物などの熱可塑性エラストマー;並びにスチレンエチレンブチレンスチレン(SEBS)コポリマー、並びにセルロース系材料、レーヨン及びポリ乳酸などの天然製品から選択されてよい。上記の通り、1種以上の熱可塑性有機材料(B1)は上記の熱可塑性樹脂の2種以上の混合物であってもよい。
【0026】
成分(B1)は、成分Bの全重量の40~80重量%の量で存在するか;或いは、成分(B1)は、成分Bの全重量の45~70重量%の量で存在する。
【0027】
シリコーンエラストマー(B2)は、次の組成物の1つ:
(B2a1)1分子あたり平均で少なくとも2つのアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン、並びに
(i)1分子あたり少なくとも2つのSi結合水素原子、若しくは少なくとも3つのSi結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン(B2a2)及びヒドロシリル化触媒(B2a3)及び任意選択的に触媒抑制剤(B2a5);又は
(ii)ラジカル開始剤(B2a4)
を硬化することによって調製されてもよい。
【0028】
或いは、シリコーンエラストマー(B2)は、
シラノール末端ジオルガノポリシロキサン(B2b1)、
1分子あたり少なくとも2つのSi結合水素原子、若しくは少なくとも3つのSi結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン(B2a2)、及び
縮合触媒(B2b3)
を含む組成物を硬化することによって調製されてもよい。
【0029】
マスターバッチに存在するシリコーンエラストマーは、成分(B)の全量の20~60重量%の量で存在するか;或いはマスターバッチに存在するシリコーンエラストマーは、成分(B)の全量の30~55重量%の量で存在する。
【0030】
1分子あたり平均で少なくとも2つのアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン(B2a1)
ジオルガノポリシロキサンポリマー(B2a1)は、25℃において少なくとも100000mm・s-1(cSt)又は25℃において少なくとも1000000mm・s-1(cSt)の粘度を有する流体又はガムである。成分(B2a1)のケイ素結合有機基は、独立して炭化水素又はハロゲン化炭化水素基から選択される。これらは、特にメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル及びヘキシルなどの1~20個の炭素原子を有するアルキル基;シクロヘキシル及びシクロヘプチルなどのシクロアルキル基;ビニル、アリル及びヘキセニルなどの2~20個の炭素原子を有するアルケニル基;フェニル、トリル及びキシリルなどの6~12個の炭素原子を有するアリール基;ベンジル及びフェネチルなどの7~20個の炭素原子を有するアルアルキル基;及び3,3,3-トリフルオロプロピル及びクロロメチルなどの1~20個の炭素原子を有するハロゲン化アルキル基によって例示され得る。硬化時にこの成分がエラストマーを形成するように、ジオルガノポリシロキサンが室温未満であるガラス転移温度(又は融点)を有するように、これらの基が選択されることは、もちろん理解されるであろう。メチルは、好ましくは、成分(B2a1)中のケイ素結合有機基の少なくとも85、より好ましくは少なくとも90モルパーセントを構成する。
【0031】
したがって、ポリジオルガノシロキサン(B2a1)は、そのような有機基を含有するホモポリマー、コポリマー又はターポリマーであることができる。他に例としては、ジメチルシロキシ単位、ジメチルシロキシ単位及びフェニルメチルシロキシ単位;ジメチルシロキシ単位及びジフェニルシロキシ単位;並びにジメチルシロキシ単位、ジフェニルシロキシ単位及びフェニルメチルシロキシ単位を含む流体又はガムを含む。分子構造は重要ではなく、且つ直鎖及び部分的に分岐された直鎖によって例示され、ジメチルシロキシ単位の線形構造が好ましい。例として、α,ω-ビニルジメチルシロキシポリジメチルシロキサン、メチルビニルシロキサン及びジメチルシロキサン単位のα,ω-ビニルジメチルシロキシコポリマー、及び/又はメチルビニルシロキサン及びジメチルシロキサン単位のα,ω-トリメチルシロキシコポリマーが含まれ得る。
【0032】
ジオルガノポリシロキサンポリマー(B2a1)は、25℃において少なくとも1000000mm・s-1(cSt)の粘度を有し、これは、New Castle,DE,USAのTA InstrumentsからのAR2000レオメーター、又は測定する粘度に最も適したスピンドルを用いる適切なブルックフィールド粘度計を用いて測定されてよい。ジオルガノポリシロキサンポリマー(B2a1)は、必要に応じて、粘度値が非常に高くこれらを正確に決定することが非常に困難になることを考慮して、Williams平行板プラストメーターを用いてASTM D-926-08によって測定される少なくとも100mm/100のWilliams可塑性値によって特徴付けられるガムであることが可能である。ジオルガノポリシロキサンポリマー(B2a1)は、必要に応じて、トリメチルシリル末端ポリジメチルシロキサンなどの少量の非反応性シリコーンで変性することができる。1つの代替形態では、ジオルガノポリシロキサンポリマー(B2a1)はガムである。
【0033】
ジオルガノポリシロキサン(B2a1)のアルケニル基としては、ビニル、ヘキセニル、アリル、ブテニル、ペンテニル及びヘプテニル基を例示することができる。ジオルガノポリシロキサンポリマー(B2a1)中のアルケニル基以外のケイ素結合有機基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル若しくは同様のアルキル基;又はフェニル、トリル、キシリル又は同様のアリール基を例示することができる。
【0034】
1分子あたり少なくとも2つのSi結合水素原子、又は少なくとも3つのSi結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン(B2a2)
1分子あたり少なくとも2つのSi結合水素原子、若しくは少なくとも3つのSi結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン(B2a2)は、例えば、低分子量有機ケイ素樹脂、或いは線形又は環式であり得る短鎖又は長鎖オルガノシロキサンポリマーであることが可能である。成分(B2a2)のケイ素結合有機基は、それらの好ましい実施形態を含むジオルガノポリシロキサン(B2a1及びB2b1)に関連して上記された炭化水素又はハロゲン化炭化水素基のいずれかから独立して選択される。成分(B2a2)の分子構造は重要ではなく、且つ直鎖及び部分的に分岐された直鎖、分岐鎖、環式及びネットワーク構造によって例示され、線形ポリマー及びコポリマーが好ましく、且つこの成分は硬化成分(B2a1及びB2b1)の硬化において効率的であるべきである。(B2a2)は、好ましくは、1分子あたり少なくとも3つのSi結合水素原子を有し、これはジオルガノポリシロキサンポリマー(B2a1)のアルケニル又は他の脂肪族不飽和基、及び(B2b1)の-OH基と反応することができる。これについては、以下にさらに説明する。)成分(B2a2)中のケイ素結合水素の位置は重要ではなく、すなわち、Si-H基は、末端基であってもよく、又は分子鎖に沿って非末端位のペンダント基であってもよく、又は両方の位置にあってもよい。(B2a2)が2つのみのSi-H結合を有する場合に架橋を確実にするために、それぞれのポリマー(B2a1)又は(B2b1)の少なくともいくつかは、(B2a2)分子が反応することのできる少なくとも3つの基を有する必要がある。1分子あたり少なくとも2つのSi結合水素原子、若しくは少なくとも3つのSi結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン(B2a2)は、例えば、次の一般式
SiO(R SiO)(RHSiO)SiR 又は
【化2】
(式中、Rは、最大10個の炭素原子を有するアルキル又はアリール基を意味し、且つRは基R又は水素原子を意味し、pは0~20の値を有し、qは1~70の値を有し、ケイ素結合水素原子が1分子当たり少なくとも2個又は3個存在する)
を有していてもよい。R4は、例えばメチル基などの1~3個の炭素原子を有する低級アルキル基であることができる。1分子あたり少なくとも2つのSi結合水素原子、若しくは少なくとも3つのSi結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン(B2a2)は、例えば、25℃において0.5~1000mm・s-1(cSt)、又は25℃において2~100mm・s-1(cSt)若しくは5~60mm・s-1(cSt)の粘度を有することができる。(B2a2)の平均重合度は、例えば1分子当たり30~400個のシロキサン単位の範囲内であってもよい。
成分(B2a2)は、典型的に25℃において0.5~1000mm・s-1(cSt)の粘度を有する以下のシロキサン、低分子シロキサン、例えば、PhSi(OSiMeH)
トリメチルシロキシ末端停止メチルヒドリドポリシロキサン;
トリメチルシロキシ末端停止ジメチルシロキサン-メチルヒドリドシロキサンコポリマー;
ジメチルヒドリドシロキシ末端停止ジメチルポリシロキサン;
ジメチル水素シロキシ末端停止メチル水素ポリシロキサン;
ジメチルヒドリドシロキシ末端停止ジメチルシロキサン-メチルヒドリドシロキサンコポリマー;
環式メチル水素ポリシロキサン;
環式ジメチルシロキサン-メチルヒドリドシロキサンコポリマー;
テトラキス(ジメチル水素シロキシ)シラン;
(CHHSiO1/2、(CHSiO1/2及びSiO4/2単位から構成されるシリコーン樹脂;並びに
(CHHSiO1/2、(CHSiO1/2、CHSiO3/2PhSiO3/2及びSiO4/2単位から構成されるシリコーン樹脂によって例示されてよい。
(B2a2)はこれらの材料の1つより多くの混合物を含んでなってもよい。
【0035】
(B2a2)中のSi-H基とジオルガノポリシロキサンポリマー(B2a1)中の脂肪族不飽和基とのモル比は、好ましくは少なくとも1:1であり、最大8:1又は10:1であることができる。例えば、Si-H基対脂肪族不飽和基のモル比は1.5:1~5:1の範囲である。
【0036】
(B2a2)は、成分(B2b1)中のSi-OHに対する(B2a2)中のSi-H基のモル比が約0.5~10、好ましくは1~5、最も好ましくは約1.5であるようなレベルで使用される。
【0037】
これらのSi-H官能性材料は当該技術分野において周知であり、且つそれらの多くが商業的に入手可能である。
【0038】
ヒドロシリル化触媒(B2a3)
ヒドロシリル化触媒(B2a3)は、好ましくは、白金族金属(白金、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム及びパラジウム)又はそれらの化合物である。白金及び/又は白金化合物、例えば微粉末白金;塩化白金酸又は塩化白金酸のアルコール溶液;塩化白金酸のオレフィン錯体;塩化白金酸とアルケニルシロキサンとの錯体;白金-ジケトン錯体;シリカ、アルミナ、炭素、又は類似の担体上の金属白金;又は白金化合物を含む熱可塑性樹脂粉末が好ましい。他の白金族金属に基づく触媒は、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、又はパラジウム化合物によって例示することができる。例えば、これらの触媒は、以下の式で表すことができる:RhCl(PPh、RhCl(CO)(PPh、Ru(CO)12、IrCl(CO)(PPh及びPd(PPh(これらの中のPhはフェニル基を表す)。
【0039】
触媒(B2a3)は、好ましくはポリオルガノシロキサン組成物(B)を基準として0.5~100重量百万分率の白金族金属、より好ましくは1~50百万分率の量で使用される。ヒドロシリル化触媒(B2a3)は、ジオルガノポリシロキサンポリマー(B2a1)のアルケニル基と(B2a2)のSi-H基との反応を触媒する。
【0040】
抑制剤(B2a5)
任意選択的に、ジオルガノポリシロキサンポリマー(B2a1)を硬化するためにヒドロシリル化触媒が利用される場合、硬化プロセスを遅らせるために組成物中に抑制剤(B2a5)が含まれてもよい。「抑制剤」という用語は、本明細書中、混合物の全体的な硬化を妨げることなく、(B2a1)のシリコーン組成物の10重量%未満などの少量で組み込まれる場合、成分(B2a1)の硬化を遅らせる材料を意味する。
【0041】
白金族ベースの触媒(B2a5)、特に白金ベースの触媒(B2a5)の抑制剤が周知である。それらには、ヒドラジン、トリアゾール、ホスフィン、メルカプタン、有機窒素化合物、アセチレン系アルコール、シリル化アセチレン系アルコール、マレエート、フマレート、エチレン系又は芳香族不飽和アミド、エチレン系不飽和イソシアネート、オレフィン系シロキサン、不飽和炭化水素モノエステル及びジエステル、共役エン-イン(ene-ynes)、ヒドロペルオキシド、ニトリル及びジアジリジンが含まれる。
【0042】
本明細書中で使用される抑制剤(B2a5)は、存在する場合、少なくとも1つの不飽和結合を含有するアセチレン系アルコール及びそれらの誘導体からなる群から選択され得る。アセチレン系アルコール及びそれらの誘導体の例としては、1-エチニル-1-シクロヘキサノール(ETCH)、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3-ブチン-1-オール、3-ブチン-2-オール、プロパルギルアルコール、2-フェニル-2-プロピン-1-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、1-エチニルシクロペンタノール、1-フェニル-2-プロピノール、3-メチル-1-ペンテン-4-イン-3-オール及びそれらの混合物が挙げられる。
【0043】
或いは、抑制剤(B2a5)は、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3-ブチン-1-オール、3-ブチン-2-オール、プロパルギルアルコール、2-フェニル-2-プロピン-1-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、1-エチニルシクロペンタノール、1-フェニル-2-プロピノール及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0044】
抑制剤(B2a5)は、典型的に、少なくとも1つの不飽和結合(アルケニル基)が末端位置にあり、且つさらに、メチル又はフェニル基がアルファ位にあり得るアセチレン系アルコールであり得る。抑制剤は、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3-ブチン-1-オール、3-ブチン-2-オール、プロパルギルアルコール、2-フェニル-2-プロピン-1-オール、1-フェニル-2-プロピノール及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0045】
抑制剤成分(B2a5)は、成分(B)の0~10重量%の範囲、或いは成分(B2)の0.05~5重量%の範囲で添加されてよいが、一般に、定常的な実験を使用して当業者によって所与のシステムに関して最適化され得るジオルガノポリシロキサンガム(B2a1)の硬化を遅らせるために十分な量で使用される。
【0046】
ラジカル開始剤(B2a4)
ラジカル開始剤(B2a4)は、高温で分解して、ラジカル種を形成する化合物である。後者は、本方法の動的加硫ステップの間にジオルガノポリシロキサンガム(B2a1)のアルケニル基の間での架橋反応を促進する。この成分は、既知のアゾ化合物、炭素化合物及び有機ペルオキシ化合物、例えば、ヒドロペルオキシド、ジアシルペルオキシド、ケトンペルオキシド、ペルオキシエステル、ジアルキルペルオキシド、ジアリールペルオキシド、アリール-アルキルペルオキシド、ペルオキシジカルボネート、ペルオキシケタール、ペルオキシ酸、アシルアルキルスルホニルペルオキシド及びアルキルモノペルオキシジカルボネートによって例示され得る。
【0047】
本発明の目的に関して、開始剤の6分の半減期温度とプロセス温度との間の差が-60℃~20℃であるように、ラジカル開始剤(B2a4)が選択される。すなわち、次の条件が満たされる:-60℃≦{T(6)-T(O)}≦20℃。ここで、T(6)は、開始剤が6分の半減期を有する温度(℃)を表し、且つT(O)は、開始剤添加の前のプロセス温度(℃)(すなわち、成分(B1)~(B3)の混合物の実際の温度)を表す。T(6)の値は、開始剤の製造業者から入手可能であるか、又は当該技術分野において既知の方法によって決定することができる。開始剤が導入された後、意図的な冷却が適用されない限り、動的加硫が生じる場合に温度は一般にわずかに増加する。しかしながら、温度が劇的に増加しない限り(例えば、約30℃より高く)、そのような冷却は一般に必要とされない。
【0048】
適切なラジカル開始剤の特定の非限定的な例としては、2,2-’アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、ジベンゾイルペルオキシド、tert-アミルペルオキシアセテート、1,4-ジ(2-tert-ブチルペルオキシイソプロプル)ベンゼン、tert-ブチルクミルペルオキシド、2,4,4-トリメチルペンチル-2ヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンモノヒドロペルオキシド、クミルヒドロペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、tert-アミルヒドロペルオキシド、1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、tert-ブチルペルオキシイソプロプルカーボネート、tert-アミルペルオキシベンゾエート、ジクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサンビス(1-メチル-1-フェニルエチル)ペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、ジ-tert-ブチルペルオキシド、α,α-ジメチルベンジルヒドロペルオキシド及び3,4-ジメチル-3,4-ジフェニルヘキサンが含まれる。
【0049】
開始剤(B2a4)は、ジオルガノポリシロキサンゴムを硬化するために十分な量(B2a1)で使用され、そしてこの量は、定常的な実験を使用して当業者によって所与のシステムに関して最適化されることが可能である。量が少なすぎる場合、不十分な架橋が生じ、そして機械的特性は不十分となるであろう。それは、考察中のシステムに関しての少数の単純な実験によって容易に決定される。他方、過剰量の開始剤が添加される場合、それは非経済的であり、且つポリマー分解などの望ましくない副反応が生じる傾向がある。開始剤(B2a4)は、好ましくは、それぞれ100重量部のジオルガノポリシロキサン(B2a1)あたり0.05~6重量部又は0.2~3重量部のレベルで添加される。
【0050】
ジオルガノポリシロキサン(B2b1)
ジオルガノポリシロキサン(B2b1)は、25℃において少なくとも100000mm・s-1(cSt)、又は25℃において少なくとも1000000mm・s-1の粘度を有するシラノール(すなわち、-Si-OH)基を末端に有する流体又はガムである。成分(B2b1)のケイ素結合有機基は、上記で(B2a1に関して)定義される通り、独立して炭化水素又はハロゲン化炭化水素基から選択される。再び、メチルは、好ましくは、成分(B2b1)中のケイ素結合有機基の少なくとも85、より好ましくは少なくとも90モルパーセントを構成する。
【0051】
したがって、ポリジオルガノシロキサン(B2b1)は、そのような有機基を含有するホモポリマー、コポリマー又はターポリマーであることが可能である。他の例としては、ジメチルシロキシ単位、ジメチルシロキシ単位及びフェニルメチルシロキシ単位;ジメチルシロキシ単位及びジフェニルシロキシ単位;並びにジメチルシロキシ単位、ジフェニルシロキシ単位及びフェニルメチルシロキシ単位を含む流体又はガムが含まれる。分子構造は重要ではなく、且つ直鎖及び部分的に分岐された直鎖によって例示され、線形構造が好ましい。
【0052】
オルガノポリシロキサン(B2b1)の特定の例としては、ジメチルヒドロキシシロキシ末端停止ジメチルシロキサンホモポリマー;ジメチルヒドロキシシロキシ末端停止メチルフェニルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー;及びジメチルヒドロキシシロキシ末端停止メチルフェニルポリシロキサンが含まれる。低温用途に関する好ましい系は、シラノール官能性メチルフェニルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー及びジフェニルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマーが含まれ、特にジメチルシロキサン単位のモル含有量が約93%であるものが含まれる。
【0053】
成分(B2b1)は、2種以上のオルガノポリシロキサン流体又はガムの組合せからなってもよい。最も好ましくは、成分(B2b1)は、分子のそれぞれの末端でシラノール基を末端とするポリジメチルシロキサンホモポリマーである。
【0054】
好ましくは、ジオルガノポリシロキサン(B2b1)の分子量は、典型的に少なくとも100/100mmで、ASTMD-926-08によって決定される少なくとも約30のWilliams可塑性値を付与するために十分なものである。Williams可塑性値は、本明細書で使用される場合、試験片に25℃において3分間、49ニュートンの圧縮荷重を受けさせた後の体積2cm及び高さ約10mmの円筒状試験片のミリメートル×100の厚さとして定義される。成分(B2b1)の可塑性に対する絶対上限はないが、従来の混合装置中の加工性の実際的な考慮が一般にこの値を限定する。好ましくは、可塑性値は約100~200、最も好ましくは約120~185であるべきである。我々は、そのようなガムが、フィラー(B2c)を必要とせずに1種以上の熱可塑性有機材料(B1)中に容易に分散可能であることを見出した。
【0055】
しかしながら、25℃において約100000~1000000mm・s-1(cSt)の粘度を有する液体ジオルガノポリシロキサンがしばしば1種以上の熱可塑性有機材料(B1)中に容易に分散可能ではないことがわかっていた。このような状況下では、分散を促進するために、流体を、それぞれ100重量部の(B2b1)に対して最高約300重量部の(B2c)と混合しなければならない。好ましくは、流体及びフィラーは、この組合せを1種以上の熱可塑性有機材料(B1)に添加する前に混合されるが、これらを別個に添加することもできる。
【0056】
縮合触媒(B2b3)
一般に、本発明の縮合触媒(B2b3)は、ジオルガノポリシロキサン(B2b1)のSi-OH基と、1分子あたり少なくとも2つのSi結合水素原子、又は少なくとも3つのSi結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン(B2a2)との間の縮合反応を促進し、-Si-O-Si-結合の形成によって前者を硬化するであろう、いずれかの化合物である。しかしながら、上記の通り、そのような縮合触媒の使用によって得られるTPSiVの低い加工性、並びに低い物理的特性がしばしば生じるため、触媒(B2b3)が白金化合物又は錯体であることは不可能である。
【0057】
縮合触媒(B2b3)は、上記で定義されるように、ジオルガノポリシロキサン(B2b1)、及び1分子あたり少なくとも2つのSi結合水素原子、又は少なくとも3つのSi結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン(B2a2)を硬化するために十分な量で存在する。
【0058】
適切な触媒の例としては、ジブチスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、スズトリプロピルアセテート、第一スズオクトエート、第一スズオキサレート、第一スズナフタレートなどの金属カルボキシレート;トリエチルアミン、エチレントリアミンなどのアミン;並びにベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベータ-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム-2-エチルヘキソエート及びベータ-ヒドロキシエチルベンジルトリメチルジメチルアンモニウムブトキサイドなどの四級アンモニウム化合物が挙げられる(例えば、米国特許第3,024,210号明細書を参照のこと)。
【0059】
任意選択的な強化性フィラー(B2c)
任意選択的に、シリコーンエラストマーを製造するために使用される組成物は、強化性フィラー(B2c)を含有してもよい。強化フィラー(B2c)は、例えばシリカであることができる。シリカは、例えば、Cabotから商標Cab-O-Sil MS-75Dとして販売されているものなどのヒュームド(熱分解)シリカであることが可能であるか、又は沈降シリカであることが可能である。シリカの粒径は、例えば0.5μm~20μm、或いは1μm~10μmの範囲である。シリカは、例えばシリカをシラン又はポリシロキサンで処理することによって製造された処理済シリカであることが可能である。シリカを処理するために使用されるシラン又はポリシロキサンは、通常、シリカ表面に結合する親水性基、並びに脂肪族不飽和炭化水素若しくはハイドロカーボンオキシ基及び/又はSi結合水素原子を含む。
【0060】
シリカは、アルコキシシラン、例えば少なくとも1つのSi結合アルコキシ基及び少なくとも1つのSi結合アルケニル基又は少なくとも1つのSi結合水素原子を含むシランで処理することができる。アルコキシシランは、少なくとも1つの脂肪族不飽和炭化水素基を含むモノアルコキシシラン、ジアルコキシシラン又はトリアルコキシシラン(例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン又はビニルメチルジメトキシシランなどのビニルアルコキシシラン)であることができる。Si結合アルコキシ基は、シリカ表面に結合するシラノール基へ容易に加水分解することができる。
【0061】
或いは、シリカは、Si結合アルケニル基及びシラノール末端基を含むポリシロキサン、例えばオリゴマー状オルガノポリシロキサンで処理することができる。
【0062】
シリカは、例えば、シリカに対して2重量%~60重量%の、アルケニル基を含むアルコキシシラン又はアルケニル基を含むオリゴマー状オルガノポリシロキサンを用いて処理することができる。
【0063】
熱可塑性有機材料(A)
上記のように調製されたマスターバッチは、熱可塑性材料(A)に導入される。1種以上の熱可塑性有機材料(B1)と同様に、熱可塑性材料(A)は、ポリカーボネート;ポリカーボネート-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(PC/ABS)ブレンド及びポリカーボネート-ポリブチレンテレフタレート(PC/PBT)ブレンドによって例示される他のポリマーとのポリカーボネートのブレンド;ポリカプロラクタム(Nylon-6)、ポリラウリルラクタム(Nylon-12)、ポリヘキサメチレrンジパミド(Nylon-6,6)及びポリヘキサメチレンドデカンアミド(Nylon-6,12)、ポリ(ヘキサメチレンセバカミド(Nylon6,10)並びにNylonと他のポリマーとのブレンドなどのNylonによって例示されるポリアミド;ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリエチレンナフタレート(PEN)によって例示されるポリエステル;ポリフェニレンエーテル(PPE)及びポリフェニレンオキシド(PPO)、並びに耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン-(ABS)及びスチレンアクリロニトリル樹脂(SAN)などのスチレン系樹脂とのPPE又はPPOのブレンド;ポリフェニレン硫化物(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアラミド、ポリイミド、合成ロッド構造を有するフェニル含有樹脂、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)、ポリスチレン(PS)、HIPSによって例示されるスチレン系樹脂;ポリアクリレート;ポリ塩化ビニル、フッ素プラスチック及びいずれかの他のハロゲン化プラスチックによって例示されるハロゲン化プラスチック;ポリケトン、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリプロピレン(PP)、高密度ポリエチレン(HDPE)及び低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリブテン(PB)を含むポリエチレン(PE)によって例示されるポリオレフィン、並びにポリオレフィンのコポリマー及びブレンド、熱可塑性ウレタン、熱可塑性ポリオレフィン系エラストマー、熱可塑性加硫物などの熱可塑性エラストマー;並びにスチレンエチレンブチレンスチレン(SEBS)コポリマー、並びにセルロース系材料、レーヨン及びポリ乳酸などの天然製品から選択されてよい。上記の通り、1種以上の熱可塑性有機材料(B1)は上記の熱可塑性樹脂の2種以上の混合物であってもよい。成分(A)は、上記の熱可塑性材料の2種以上の混合物であってもよい。成分(A)及び成分(B1)は同一又は異なってもよい。
【0064】
線形オルガノポリシロキサン(B3)
線形オルガノポリシロキサン(B3)は任意選択的な添加剤であって、且つ動的加硫の間に存在する場合、(B2a2)とは非反応性であるか、又は動的加硫の完了後に添加される。線形オルガノポリシロキサン(B3)は、トリアルキルシリル末端、典型的にトリメチルメチルシリル末端、又はジアルキルヒドロキシシリル末端、典型的にジメチルヒドロキシシリル末端、又はジアルキルアルケニルシリル末端、典型的にジメチルビニルシリル末端を含んでよい。
【0065】
線形オルガノポリシロキサン(B3)は、25℃において少なくとも10000mm・s-1(cSt)、又は25℃において少なくとも50000mm・s-1(cSt)、又は25℃において少なくとも500000mm・s-1(cSt)又は600,000mm・s-1(cSt)若しくはそれ以上の粘度を有する流体又はガムであってよい。成分(B3)のケイ素結合有機基は、独立して炭化水素又はハロゲン化炭化水素基から選択される。これらは特にメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル及びヘキシルなどの1~20個の炭素原子を有するアルキル基;シクロヘキシル及びシクロヘプチルなどのシクロアルキル基;ビニル、アリル及びヘキセニルなどの2~20個の炭素原子を有するアルケニル基;フェニル、トリル及びキシリルなどの6~12個の炭素原子を有するアリール基;ベンジル及びフェネチルなどの7~20個の炭素原子を有するアルアルキル基;並びに3,3,3-トリフルオロプロピル及びクロロメチルなどの1~20個の炭素原子を有するハロゲン化アルキル基によって例示されてよい。硬化時にこの成分がエラストマーを形成するように、ジオルガノポリシロキサンが室温未満であるガラス転移温度(又は融点)を有するように、これらの基が選択されることは、もちろん理解されるであろう。成分(B3)中のケイ素結合有機基の少なくとも85、より好ましくは少なくとも90モルパーセントは、メチル及び/又はエチル基、或いはメチル基である。
【0066】
したがって、ポリジオルガノシロキサン(B3)は、そのような有機基を含有するホモポリマー、コポリマー又はターポリマーであることが可能である。他の例としては、ジメチルシロキシ単位及びフェニルメチルシロキシ単位;ジメチルシロキシ単位及びジフェニルシロキシ単位;並びにジメチルシロキシ単位、ジフェニルシロキシ単位及びフェニルメチルシロキシ単位を含む流体又はガムが含まれる。分子構造は重要ではなく、且つ直鎖及び部分的に分岐された直鎖によって例示され、線形構造が好ましい。
【0067】
安定剤(C)
本明細書の組成物は、安定剤(C)を含んでなってもよい。安定化剤(C)は、酸化防止剤であってもよく、例えば、商標「Irganox(登録商標)1010」としてBASFから販売されているテトラキス(メチレン(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナメート)メタンなどのヒンダードフェノール酸化防止剤であってもよい。そのような酸化防止剤は、例えば、熱可塑性組成物の0.05~0.5重量%で使用することができる。
【0068】
他の任意選択的な添加剤(成分(D))
所望の加工若しくは性能特性を得るため、及び又はシリコーン相(B)と熱可塑性マトリックス(A)との間の相容性を強化するために、他の任意選択的な添加剤(成分(D))を上記熱可塑性組成物中に添加してもよい。これらの添加剤は、組成物中に、例えば、シリコーンエラストマー中に存在する必要がある場合、シリコーン相中で添加されてもよいか、又は添加剤が熱可塑性マトリックス中にあることが意図される場合、熱可塑性マトリックスに直接添加することができる。
【0069】
そのような追加の成分としては、例えば、軟化鉱油、可塑剤、他の無機フィラー(すなわち(B2c)強化フィラーを除く)、粘度調整剤、潤滑剤、カップリング剤、熱可塑性エラストマー及び耐火添加剤;顔料及び/又は染料などの着色剤;回折顔料などのエフェクト顔料;真珠光沢剤などの干渉顔料;反射顔料及びこれらの混合物並びに上述した顔料のいずれかの混合物;UV安定化剤、流動化剤、摩耗防止剤、離型剤、安定化剤、耐衝撃改良剤、界面活性剤、光沢剤、フィラー、繊維、ワックス及びこれらの混合物、並びに/又は(C)で説明されていないポリマーの分野で周知の任意の他の添加剤が挙げられ得る。
【0070】
鉱油は、通常、C15~C40の範囲の石油留分、例えば白油、流動パラフィン又はナフテン油である。使用される場合、鉱油は、例えば熱可塑性有機ポリマー(A)と予め混合されていることが可能である。鉱油は、例えば、熱可塑性有機ポリマー(A)を基準として0.5~20重量%で存在することが可能である。
【0071】
可塑剤は鉱油と組み合わせて、又は鉱油の代わりに存在することが可能である。適切な可塑剤の例としては、イソプロピル化トリアリールホスフェート、レゾルシナルビス-(ジフェニルホスフェート)、又はGreat Lakes Chemical Corporationから商標Reofos(登録商標)RDPとして販売されているホスフェートエステルなどのホスフェートエステル可塑剤が挙げられる。そのような可塑剤は、例えば、組成物の0.5~15重量%の範囲で使用することが可能である。
【0072】
カップリング剤は、グリシジルエステル官能性ポリマー、有機官能性グラフト化ポリマー、有機官能性変性オルガノポリシロキサンポリマー組成物であって、極性及び非極性ポリマー並びにポリシロキサン及びポリマーの分岐ブロックコポリマーから選択される熱可塑性ポリマーを含む有機官能性変性オルガノポリシロキサンポリマー組成物、又はそれらの混合物から選択される。
【0073】
他の無機フィラーの例としては、タルク又は炭酸カルシウムが挙げられる。フィラーはこれらの表面を疎水性にするために処理されていてもよい。そのようなフィラーは、存在する場合、好ましくはシリカなどの強化フィラー(B2c)よりも低い量で存在する。前記フィラーは、熱可塑性有機ポリマー(A)又はシリコーンベース(B1)のいずれかと予め混合されていてもよい。
【0074】
顔料の例としては、カーボンブラック及び二酸化チタンが挙げられる。顔料は、例えば熱可塑性有機ポリマー(A)と予め混合されていることが可能である。
【0075】
潤滑剤は、例えば、成形作業における熱可塑性エラストマーの加工性を改善するための表面潤滑添加剤であることが可能である。表面潤滑添加剤の例は、商標「Crodamide-EBS」としてCRODAから販売されているエチルブチルステアラミドである。潤滑剤は、例えば熱可塑性エラストマー組成物の0.1~2重量%で使用することができる。
【0076】
本発明の組成物に難燃性を付与するための難燃性添加剤の使用も本発明の範囲内であると考えられる。本明細書では従来の難燃剤を使用することができ、これは、ポリジブロモスチレン、ジブロモスチレンのコポリマー、ポリブロモスチレン、臭素化ポリスチレン、テトラブロモフタレートエステル、テトラブロモフタレートジオール、テトラブロモフタレート無水物、テトラブロモベンゾエートエステル、ヘキサブロモシクロドデカン、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAビス(アリルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAのフェノキシ末端カーボネートオリゴマー、デカブロモジフェニルエタン、デカブロモジフェニルオキシド、ビス-(トリブロモフェノキシ)エタン、エタン-1,2-ビス(ペンタブロモフェニル)、テトラデカブロモジフェノキシベンゼン、エチレンビステトラブロモフタルイミド、臭化アンモニウム、ポリペンタブロモベンジルアクリレート、臭素化エポキシポリマー、臭素化エポキシオリゴマー、及び臭素化エポキシ類などのハロゲン化種からなる群から選択することができる。他の非ハロゲン種は、イソプロピル化トリアリールホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシリルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ブチル化トリアリールホスフェート、レゾルシノールビス-(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、メラミンホスフェート、メラミンピロホスフェート、メラミンポリフスフェート、ジメラミンホスフェート、メラミン、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、赤リン、ホウ酸亜鉛、及びスズ酸亜鉛などの材料から選択することができる。
【0077】
単一の任意選択的な添加剤、又は複数の任意選択的な添加剤(成分(D))が熱可塑性マスターバッチ組成物で使用されてよい。存在する成分(D)の1種以上の添加剤の全割合は、熱可塑性マスターバッチ組成物の全重量の30重量%を超えるべきではない。好ましくは、1種以上の成分(D)が存在する場合、前記添加剤の総累計量は、典型的には、マスターバッチ組成物(B)の総重量の0.01~20重量%、好ましくは0.01~10重量%、好ましくは0.01~5重量%を占める。
【0078】
上記マスターバッチ(B)の製造方法
上記のマスターバッチ(B)の製造方法は、
(i)シリコーンエラストマー(B2)を製造するために使用される成分と1種以上の熱可塑性有機材料(B1)とをブレンドすることと、
(ii)シリコーン組成物を動的に加硫してシリコーンエラストマー(B2)を形成することと、
(iii)ステップ(ii)の間又はステップ(iii)の後に(B3)を導入することと
を含み、マスターバッチ(B)中、(B1)+(B2)+(B3)の重量に基づいて総量20~60重量%の成分(B2)+(B3)が含まれる。成分(C)及び(D)は、プロセスの間のいずれの時点において導入されてもよい。好ましくは、得られるマスターバッチは上記プロセスの完了後にペレット形態に加工される。
【0079】
別の実施形態において、上記のマスターバッチ(B)を製造することと、得られたマスターバッチと1種以上の熱可塑性有機材料(A)とを、熱可塑性組成物中、(A)+(B)の重量に基づいて総量0.2~25重量%の架橋されたシリコーンエラストマーが含まれるような量でブレンドすることによる熱可塑性組成物の製造方法。1つの選択肢において、マスターバッチはペレット化された形態で成分(A)中に導入される。別の選択肢において、成分(A)及び成分(B)の両方ともペレット化された形態乾燥ブレンドされる。熱可塑性組成物は熱可塑性エラストマー組成物であってもよい。
【0080】
したがって、熱可塑性組成物の製造方法は、マスターバッチ(B)を製造することを含み、
上記マスターバッチ(B)の製造方法は、
(iv)シリコーンエラストマー(B2)を製造するために使用される成分と1種以上の熱可塑性有機材料(B1)とをブレンドすることと、
(v)シリコーン組成物を動的に加硫してシリコーンエラストマー(B2)を形成することと、
(vi)ステップ(ii)の間又はステップ(iii)の後に(B3)を導入することと
を含み、マスターバッチ(B)中、(B1)+(B2)+(B3)の重量に基づいて総量20~60重量%の成分(B2)+(B3)が含まれ、得られたマスターバッチと1種以上の熱可塑性有機材料(A)とを、熱可塑性組成物中、(A)+(B)の重量に基づいて総量0.2~25重量%の架橋されたシリコーンエラストマーが含まれるような量でブレンドする。熱可塑性組成物は熱可塑性エラストマー組成物であってもよい。
【0081】
上記のプロセスに関するいくつかの選択肢が使用されてもよい。例えば、マスターバッチ(B)は、次のように製造されてもよい:
(i)シリコーンエラストマー(B2)を製造するために使用される成分を混合して、シリコーン組成物を形成し、
(ii)(i)のシリコーン組成物を1種以上の熱可塑性有機材料を含む成分(B1)中にブレンドし、
(iii)シリコーン組成物を動的に加硫してシリコーンエラストマー(B2)を形成し、そして
(iv)存在する場合、ステップ(ii)の間又はステップ(iii)の後に(B3)を導入するが、
マスターバッチ(B)中、(B1)+(B2)+(B3)の重量に基づいて総量20~60重量%の架橋されたシリコーンエラストマーが含まれる。或いは、マスターバッチ(B)は、成分(B1)1種以上の熱可塑性有機材料を加熱及び押出機中に通過させ、且つシリコーンエラストマー(B2)を製造するために使用される成分を成分(B1)中に個々に、又は集合的に導入し、
(i)シリコーンエラストマー(B2)を製造するために使用される成分を混合及び動的に加硫してシリコーンエラストマー(B2)を形成し、そして
(iv)存在する場合、ステップ(i)の間又はステップ(ii)の後に(B3)を導入するが、
マスターバッチ(B)中、(B1)+(B2)+(B3)の重量に基づいて総量20~60重量%の架橋されたシリコーンエラストマーが含まれる。
【0082】
加熱時に熱可塑性樹脂(A)及び(B1)を軟化させる必要性を利用し、且つ成分を接触及び均一混合させて熱可塑性組成物を製造するための、成分B1、B2及び任意選択的なB3をブレンドするため、並びに成分(A)及び(B)をブレンドするためのプラスチック加工操作及び装置は、熱可塑性樹脂の軟化又は融解温度に従って、60℃~400℃の範囲内の温度において実行されてよい。いずれのそのようなプロセスのための従来の装置は、一軸押出成形機、二軸押出成形機、又は多軸押出成形機を利用する押出成形配合操作によって例示されてよいが、それらに限定されない。或いは、成分の均一な分配を確実にするために十分な混合時間が可能であることを条件として、例えば、Zブレード混合機又はバンブリー混合機などの密閉式混合機を使用してブレンドを実行することができる。
【0083】
以下、本明細書中で上記されたマスターバッチ及び熱可塑性エラストマー組成物を製造するために利用され得る別方法の選択肢を提供する。
【0084】
マスターバッチは次のプロセスを使用して調製され得る。このプロセスにおいて、連続挿入ステップが提供された順番であり得るが、別のステップが別の順番であってもよく、いくつかの例においては、加工装置レイアウト及び原材料組成物次第で適切である場合、いくつかのステップが組み合わせられてもよい。
1.1種以上の熱可塑性有機材料(B1)は、必要に応じて、最初に60℃~最高400℃の温度で軟化又は溶融される。
2.次いで、マスターバッチ組成物のシリコーンエラストマー部分を形成するジオルガノポリシロキサンガム(B2a1)又は(B2b1)の動的加硫に関与する(B2)の成分は、高温で1種以上の熱可塑性有機材料(B1)中に導入される。
【0085】
次いで、シリコーンエラストマー(B2)は、任意選択的に(B2c)、(B3)、(C)及び/又は(D)の1種以上を追加的に含有する次の硬化組成物の動的硬化によって調製される:
1)(B2a1)1分子あたり平均で少なくとも2つのアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン、並びに
1分子あたり少なくとも2つのSi結合水素原子、又は少なくとも3つのSi結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン(B2a2)及びヒドロシリル化触媒(B2a3)及び任意選択的に触媒抑制剤(B2a5);
2)(B2a1)1分子あたり平均で少なくとも2つのアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン及びラジカル開始剤(B2a4)、並びに任意選択的に1分子あたり少なくとも2つのSi結合水素原子、又は少なくとも3つのSi結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン(B2a2);或いは
3)シラノール末端ジオルガノポリシロキサン(B2b1)、
1分子あたり少なくとも2つのSi結合水素原子、若しくは少なくとも3つのSi結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン(B2a2)、及び
縮合触媒(B2b3)。
【0086】
ジオルガノポリシロキサンガム(B2a1)又は(B2b1)は、機械混合エネルギー下で1種以上の熱可塑性有機材料(B1)の軟化又は溶融熱可塑性マトリックス中に導入及び分配される。
【0087】
次いで、別の硬化パッケージの成分は別々に(好ましい順番はない)、又は組み合わせて導入され、混合物中に分配され、それぞれのガムの加硫を開始及び完了する。上記の通り、ヒドロシリル化(添加硬化)反応抑制剤(B2a5)は、ヒドロシリル化(添加)プロセスの場合、加硫反応の完了の前に滞留時間を増加させるために、任意選択的に混合物中に挿入されてよい。利用される場合、抑制剤(B2a5)は、触媒及び/又は架橋剤のいずれかの前に組成物中に導入される。
【0088】
任意選択的な添加剤(B2c)、(B3)、(C)及び/又は(D)は、必要に応じて、動的硬化プロセスの間又は後、同時に又は別々に導入されてよい。ジオルガノポリシロキサン(B2c)のための強化性フィラーを別々に挿入することができる。例えば、安定剤添加剤(C)及び追加成分(D)は、(B1)が高温に暴露される前に固体形態で1種以上の熱可塑性有機材料(B1)中で事前にブレンドされることが可能であるか、或いは混合操作の間、溶融状態で1種以上の熱可塑性有機材料(B1)に添加されることが可能である。
【0089】
或いは、上記のように個々にそれぞれの成分を導入するのではなく、前分散オルガノポリシロキサン組成物を高温で1種以上の熱可塑性有機材料(B1)中に導入してもよい。前分散オルガノポリシロキサン組成物は、シリコーンエラストマーを製造するために使用される全ての成分の単一混合物を含み得るか、或いは一緒に混合される時に(B2a1)又は(B2b1)を動的加硫してシリコーンエラストマーを形成するために必要とされる成分が完成する2種以上の混合物の導入を利用してもよい。前分散オルガノポリシロキサン化合物の使用は、個別の成分挿入を補完するか、又は置き換えることができる。
【0090】
前分散オルガノシロキサン組成物は、反応性基を有するジオルガノポリシロキサン、又は強化性フィラー(B2c)若しくは架橋剤、例えば(B2a2)、又は強化性フィラー(B2c)及び架橋剤(B2a2)の組合せのいずれかを含有する反応性基を有するジオルガノポリシロキサンのブレンド、すなわち(B2a1)又は(B2b1)を含んでよい。前分散オルガノシロキサン化合物組成物の成分は、1種以上の熱可塑性有機材料(B1)中に導入される前にブレンドされる。次いで、他の成分が独立して導入されてもよい。
【0091】
或いは、加熱された1種以上の熱可塑性有機材料(B1)中に一緒に混合された2つの前分散組成物(すなわち、2部組成物)があってもよい:
1.オルガノポリシロキサン(B2a1若しくはB2b1)及びヒドロシリル化触媒(B2a3)又は縮合触媒(B2b3)を含有する第1の部;
2.オルガノポリシロキサン(B2a1若しくはB2b1)、1分子あたり少なくとも2つのSi結合水素原子、又は少なくとも3つのSi結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン(B2a2)及び任意選択的に触媒抑制剤(B2a5)を含有する第2の部。
【0092】
さらなる選択肢において、シリコーンエラストマーを製造するための成分の1種以上は、事前に調製されたマスターバッチ又は液体濃縮物の形態で1種以上の熱可塑性有機材料(B1)中に導入されてもよい。例えば、適切な架橋剤は、熱可塑性材料を有するマスターバッチ、例えば、線形オルガノポリシロキサン濃縮物又はシロキサンマスターバッチと同一の材料中でのブレンドのために組成物中に導入されてもよい。
【0093】
同様に、存在する場合、シロキサン(B3)は、別個の混合操作を通して上流で調製されたマスターバッチの形態で導入されてもよい。
【0094】
さらなる選択肢において、シリコーンエラストマーを製造するために使用される組成物の成分は、硬化されたシリコーンエラストマーが1種以上の熱可塑性有機材料(B1)中にブレンドされ、それによって1種以上の熱可塑性有機材料(B1)の動的加硫の必要性が回避されるように、事前に混合及び硬化されていてもよい。
【0095】
シリコーンエラストマー濃縮物は、1種以上の熱可塑性有機材料(B1)が溶融している状態で、高温で最終組成物に挿入することができるか、或いはブレンドが加工装置に挿入され、そして高温に暴露される前に固体形態で1種以上の熱可塑性有機材料(B1)と事前にブレンドされることが可能である。
【0096】
さらなる選択肢において、(B3)(必要とされる場合)のマスターバッチ及びシリコーンエラストマー(B2)を製造するための成分のマスターバッチは全て事前に調製され、そして高温で1種以上の熱可塑性有機材料(B1)中に導入されて、そして一緒に適切に混合されてもよい。
【0097】
線形オルガノポリシロキサン濃縮物及び分散シリコーンエラストマー濃縮物中間体の両方とも、次の混合操作の間に固体形態で一緒にブレンドすることによって、又は高温混合プロセスに暴露される前に固体形態で一緒に事前にブレンドすることによって組み合わせることが可能であるか;或いは高温及び混合エネルギー曝露において両中間体を別個に添加することができる。
【0098】
熱可塑性樹脂(A)の一部は、任意選択的に、組成を均衡させ、そして所望の最終組成に適合させるために3つのステップのいずれかにおいて添加することが可能である。
【0099】
熱可塑性シリコーン加硫物マスターバッチが調製される様式とは関係なく、結果として生じるマスターバッチは、好ましくは、熱可塑性シリコーン加硫物マスターバッチを形成するための1種以上の熱可塑性有機材料(B1)の冷却時にペレット化される。
【0100】
結果として生じる混合物を、上記された最終熱可塑性組成物を製造するための温度範囲内に加熱する前に、結果として生じるペレット化されたマスターバッチを熱可塑性物質(A)と乾燥混合してもよい。
【0101】
本発明の熱可塑性組成物は、熱可塑性材料に関して典型的に使用されるプロセスのいずれか、例えば、圧縮成形、射出成形、又は押出成形、或いは3D印刷によって成形することができる。
【0102】
本発明の組成物は、その固体形態で変性及びブレンドされるコア組成物中に挿入することによって、最終プロセス操作又は成形の前に、所望の量で希釈されてもよく、或いは成形操作の前に、中間体配合ステップにおいて、コア最終組成物中で高温で均一に混合されてもよい。
【0103】
本発明の組成物は、単独で使用されるか、又はシロキサンマスターバッチとしても記載される線形オルガノシロキサン濃縮物と組み合わせて、又は本発明に開示される記載についての熱可塑性樹脂中に分配されたオルガノポリシロキサンの動的加硫の結果として生じるシリコーンエラストマー濃縮物と組み合わせて使用されるように意図される。
【0104】
本発明の新規熱可塑性エラストマーは、特に十分な感触、引っ掻き及び損傷耐性、化学耐性及び機械性能が同時に所望であり得る自動車、電子機器、電気、通信、電化製品及び医療用途のための部品若しくは構成要素の製造のために使用することができる。例えば、本発明の熱可塑性組成物は、エアバッグカバースキン、ステアリングホイールスキン、ギアノブ、グリップハンドル、アームレスト、インテリアスキン、(カップホルダー、ビン、ブローブボックスマットなどの)カーマット、スモールノブ、スイッチ、並びにグローブボックスパネル、ダッシュボード、ドアパネルなどの大型自動車部品などの自動車用途に順応され得る(大型は、20cmより大きい表面を意味する)。その本質的なエラストマー特性のため、これはミラーシール、内装及び外装のシールなどの気候の遮断のためにも使用することができる。
【0105】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、ベルト、ブレスレット、ソフトテンプルチップ、保護カバー及びウェアラブル電子機器などの電子機器及び電化製品部品;大型電子部品及びアクセサリー、ホース、ブート、ベロー、ガスケット、ソフトフィールカバー、キーボードパームレスト、ラップトップ及びタブレットコンピューターデバイスの部品及び保護カバー、保護カバー;液相線構成要素及びエアダクト;建築用シール;ボトル閉鎖;家具構成要素;シール、ボトル、カン、カップなどのパッケージ構成要素;ハンドヘルドデバイス用の抵抗及びソフトフィールグリップ;医療及び衛生デバイス;料理道具部品及びアクセサリー;ラケット、自転車部品などのスポーツ及びレジャー用品;履物ソール、玩具及び一般的なゴム部品に使用されてもよい。
【0106】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、皮膚に対する所望の柔らかい感触及び/又は快適なグリップ、及び/又は高い機械性能及び/又は良好な引っ掻き耐性及び/又は化学耐性(最も一般に使用される化学薬品に対する安定性)を有することが可能である。皮膚に対する柔らかい感触、良好な引っ掻き耐性及び化学耐性及び高い機械性能のこれらの特質は、熱可塑性エラストマーが人間の皮膚との長期間の接触などの条件で使用される場合、維持されることができる。シリコーンは、通気性材料であり、熱可塑性エラストマーが気体及び水蒸気に透過性となることを可能にするが、組成物内部の水分濃縮を制限するために十分疎水性である。シリコーン相が相の混合の間に架橋(加硫)され、そして有機マトリックス中に均一にミクロ分散されるため、熱可塑性エラストマー組成物は、実質的な化学耐性及び減少したウォーターピックアップを有し、したがって、潜在的な加水分解に対して有機マトリックスを保護し、且つ高い機械性能、引っ掻き耐性、機械摩耗耐性及び摩耗に対する耐性を有し、全体的に改善された耐久性がもたらされる。
【0107】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、ウォッチブレスレット、GPSブレスレット、テンプルチップ、並びにサングラス及び老眼鏡用のノーズパッドなどのウェアラブルアイテムを形成するために使用される場合、特に利点を有する。そのようなウェアラブルアイテムは、人間の皮膚との長期間の接触時に、それらの特質を維持する。したがって、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、皮膚に対する所望の柔らかい感触、良好な引っ掻き耐性及び化学耐性(最も一般に使用される化学薬品に対する安定性)を有することが可能である。熱可塑性組成物、例えば熱可塑性エラストマー組成物エラストマーが、押出成形、共押出成形、押出成形-ラミネート加工、カレンダー加工、押出成形カレンダー加工又はラミネート加工されて、粒子又は非粒子表面を有する熱可塑性フィルム、熱可塑性シート及び合成皮革を形成する場合、これらの特質は維持される。本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、合成皮革製品を形成するラミネートのテキスタイル作成時に適用可能である。複合積層体を形成するために、相溶性材料、熱可塑性材料、合成織布又は不織布を用いた共押出成形又は後処理を実行することができる。複合積層体を形成するために、適切なプライマー又は界面材料を使用して、非相溶性熱可塑性材料、合成又は天然の織布又は不織布を用いた共押出成形又は後処理を実行することができる。
【0108】
用途の例は、
- シート、ドアパネルカバー、ギアノブ、アームレスト、ステアリングホイール、ホイールカバーなどの自動車用途の合成皮革;
- 柔らかい感触を与える、ラップトップ又はタブレットのような電子機器などのエレクトロニクス用途の電化製品のための合成皮革;
- スポーツ用品及び履物用途のための合成皮革、
- フィットネストラッキングデバイスのためのウォッチバンド又はストラップである。
【実施例
【0109】
本発明を以下の実施例によって説明するが、この中で部及びパーセンテージは別段の記載がない限り重量基準である。市販の熱可塑性オレフィン系材料MULTIFLEX(登録商標)TPO 7003 SW BLKを参考材料として利用した。考察される種々のシロキサンマスターバッチ添加剤のそれぞれ0重量%(対照)、2重量%、5重量%、10重量%及び20重量%に到達するように、乾燥ブレンドされた所望の量のシロキサンマスターバッチ添加剤ペレットをMULTIFLEX(登録商標)TPO 7003 SW BLKペレット中に混合することによって試料を調製した。次いで、結果として生じる混合物を射出成形によって熱可塑性材料として調製した。
【0110】
本明細書中の実施例のために、いくつかのマスターバッチが調製された。
【0111】
添加剤:担体:次のマスターバッチを製造するために、100重量%のポリエチレン担体が使用された。
【0112】
マスターバッチ1:二軸スクリュー押出機を使用して調製された、50重量%の約150mm/100の可塑性を有するジメチルビニル末端ポリジメチルシロキサンガム、約150mm/100の可塑性を有するジメチルビニル末端ポリジメチルメチルビニルシロキサンガム及び疎水性処理されたシリカフィラーと、50重量%のポリエチレン担体とを含むシロキサンマスターバッチ。
【0113】
マスターバッチ2:50重量%の約150mm/100の可塑性を有するジメチルビニル末端ポリジメチルシロキサンガム、疎水性処理された沈殿シリカを含むシロキサンベースと、50重量%のポリエチレン担体及びアルコキシシリコーンポリマーとを含むシロキサンマスターバッチであって:25mm(L/D:48)COPERION-ZSK二軸スクリュー押出機を使用して調製されたもの。実施例中、0.1重量%未満のフェノール系ラジカル捕捉剤もマスターバッチ2)の組成物中で使用された。
【0114】
マスターバッチ3:6.0:1の水素シロキサン基対ビニルシロキサン基の比率に相当するように調節された量でメチル水素シロキサン架橋剤(Dp:56.6;D’:38.5)及びビニルシロキサン基濃度と比較して150ppmの濃度の2-白金IV触媒を含む硬化パッケージとの組合せで、マスターバッチ2のシロキサンベースから製造された「TPSiV」マスターバッチ。マスターバッチ2は、25mm(L/D:48)COPERION-ZSK二軸スクリュー押出機を用いて調製された。パイロット装置。
【0115】
実験結果:
初期の実験結果を表1a及び1b並びに表2に報告する。
【0116】
【表1】
【0117】
硬度は、ISO 868:2003に従って測定した。曲げ弾性率は、ISO 178:2013 方法Aを使用して決定された。ノッチドIZOD衝撃-30℃、ノッチドIZOD衝撃-35℃及びノッチドIZOD衝撃-40℃は全てISO 180/A:2013を使用して完了された。降伏応力、降伏歪み、20%における引張強度、100%における引張強度、破断時引張強度、及び破断時伸びは、全てISO 527-2/5A/500:2012(試料片5A-500mm/分)に従い;そして引裂き強度実験は、ISO 34-1:2015 方法B¥aノッチなし(500mm/分)に従った。
【0118】
【表2】
【0119】
【表3】
【0120】
示された通り、マスターバッチ3を使用した結果は、2重量%から最高20重量%までの添加レベルに応じて5%から最高40%までのより低い曲げ弾性率の範囲のマスターバッチ1及びマスターバッチ2によるものに匹敵する可撓性の改善を示すが、マスターバッチ3のみが衝撃耐性の有意な改善を示す。マスターバッチ3によってもたらされる衝撃耐性の改善は、-30℃の試験温度において、2重量%添加剤使用における1%弾力性増加から20重量%添加剤使用における最高11%弾力性増加までの範囲である。衝撃耐性の改善は、より低い-35℃又は-40℃試験温度においてより有意であり、それに関して、マスターバッチ3は、2重量%添加剤使用における16%の衝撃弾力性増加から、20重量%より高い添加剤使用に関して、参照製品よりも最高5倍優れた弾力性(+500%)を示す(表1a)。相補的にマスターバッチ3は、擦り傷傷重量損失を最高13%減少させること、標準化表面光沢を減少させること、及び一定の低い色変化によって、摩擦摩耗に対する表面耐性を改善し、全体的に改善された引っ掻き耐性が得られる-25%低光沢|Δ光沢|変化及び一定の低い色変化|ΔL*|はRenault MAR試験によるものであり、且つ一定<1光沢|Δ光沢|及び色|ΔL*|変化はAuto PV3952標準によるものである(表2)。

本出願は例えば以下の発明を提供する。
[1] 熱可塑性マスターバッチ組成物であって、
(B)
(B1)1種以上の熱可塑性有機材料と、
(B2)シリコーンエラストマーと;任意選択的に
(B3)未硬化のオルガノポリシロキサンポリマーと
を含むマスターバッチを含み、マスターバッチ(B)中、(B1)+(B2)+(B3)の重量に基づいて20~60重量%の架橋されたシリコーンエラストマーが含まれる、熱可塑性マスターバッチ組成物。
[2] 前記熱可塑性マスターバッチ組成物が熱可塑性エラストマーマスターバッチ組成物である、上記[1]に記載の熱可塑性マスターバッチ組成物。
[3] 未硬化のオルガノポリシロキサン(B3)が、マスターバッチ(B)の0.1~25重量%の量で存在する、上記[1]又は[2]に記載の熱可塑性マスターバッチ組成物。
[4] シリコーンエラストマー(B2)が、
1分子あたり平均で少なくとも2つのアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン(B2a1)、並びに
(i)1分子あたり少なくとも2つのSi結合水素原子、若しくは少なくとも3つのSi結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン(B2a2)及びヒドロシリル化触媒(B2a3)及び任意選択的に触媒抑制剤(B2a5);又は
(ii)ラジカル開始剤(B2a4);或いは
シラノール末端ジオルガノポリシロキサン(B2b1)、
1分子あたり少なくとも2つのSi結合水素原子、若しくは少なくとも3つのSi結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン(B2a2)、及び
縮合触媒(B2b3)
の動的加硫によって調製される、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の熱可塑性マスターバッチ組成物。
[5] ジオルガノポリシロキサン(B2a1)又はジオルガノポリシロキサン(B2b1)が、ASTM D-926-08によって測定される少なくとも100mm/100のWilliams可塑性値を有するガムである、上記[4]に記載の熱可塑性マスターバッチ組成物。
[6] 前記1種以上の熱可塑性有機材料(B1)が、ポリカーボネート;他のポリマーとのポリカーボネートのブレンド;ポリアミド及び他のポリマーとのポリアミドのブレンド;ポリエステル;ポリフェニレンエーテル(PPE)及びポリフェニレンオキシド(PPO)、及びスチレン系樹脂とのPPE又はPPOのブレンド;ポリフェニレン硫化物(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアラミド、ポリイミド、合成ロッド構造を有するフェニル含有樹脂、スチレン系樹脂;ポリアクリレート、SAN;例示されたハロゲン化プラスチック;ポリケトン、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリオレフィン、並びにポリオレフィンのコポリマー及びブレンド、熱可塑性ウレタン、熱可塑性ポリオレフィン系エラストマー、熱可塑性加硫物などの熱可塑性エラストマー;並びにスチレンエチレンブチレンスチレン(SEBS)コポリマー、並びにセルロース系材料、レーヨン及びポリ乳酸などの天然製品、並びにそれらの混合物から選択される、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載の熱可塑性マスターバッチ組成物。
[7] 前記1種以上の熱可塑性有機材料(B1)が、ポリカーボネート;ブレンド、ポリカーボネート-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(PC/ABS)ブレンド及びポリカーボネート-ポリブチレンテレフタレート(PC/PBT)ブレンド;ポリカプロラクタム(Nylon-6)、ポリラウリルラクタム(Nylon-12)、ポリヘキサメチレンジパミド(Nylon-6,6)、ポリヘキサメチレンドデカンアミド(Nylon-6,12)、ポリ(ヘキサメチレンセバカミド(Nylon6,10);ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリエチレンナフタレート(PEN);ポリフェニレンエーテル(PPE)及びポリフェニレンオキシド(PPO)、並びに耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン-(ABS)及びスチレンアクリロニトリル樹脂(SAN)などのスチレン系樹脂とのPPE又はPPOのブレンド;ポリフェニレン硫化物(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアラミド、ポリイミド、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)、ポリスチレン(PS)HIPS;ポリアクリレート、SAN;ポリ塩化ビニル、フッ素プラスチック及びいずれかの他のハロゲン化プラスチック;ポリケトン、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)及び低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリブテン(PB)、並びにポリオレフィンのコポリマー及びブレンド、熱可塑性ウレタン、熱可塑性ポリオレフィン系エラストマー、熱可塑性加硫物;並びにスチレンエチレンブチレンスチレン(SEBS)コポリマーから選択される、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載の熱可塑性マスターバッチ組成物。
[8] 熱可塑性エラストマー組成物であって、
(A)1種以上の熱可塑性有機材料と、
(B)上記[1]~[7]のいずれか一項に記載のマスターバッチ(B)とのブレンドを含む熱可塑性組成物であって、熱可塑性組成物中、(A)+(B)の重量に基づいて総量0.2~25重量%の架橋されたシリコーンエラストマーが含まれる、熱可塑性組成物。
[9] 前記熱可塑性組成物が熱可塑性エラストマー組成物である、上記[8]に記載の熱可塑性組成物。
[10] 前記1種以上の熱可塑性有機材料(A)が、ポリカーボネート;他のポリマーとのポリカーボネートのブレンド;ポリアミド及び他のポリマーとのポリアミドのブレンド;ポリエステル;ポリフェニレンエーテル(PPE)及びポリフェニレンオキシド(PPO)、及びスチレン系樹脂とのPPE又はPPOのブレンド;ポリフェニレン硫化物(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアラミド、ポリイミド、合成ロッド構造を有するフェニル含有樹脂、スチレン系樹脂;ポリアクリレート、SAN;例示されたハロゲン化プラスチック;ポリケトン、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリオレフィン、並びにポリオレフィンのコポリマー及びブレンド、熱可塑性ウレタン、熱可塑性ポリオレフィン系エラストマー、熱可塑性加硫物などの熱可塑性エラストマー;並びにスチレンエチレンブチレンスチレン(SEBS)コポリマー、並びにセルロース系材料、レーヨン及びポリ乳酸などの天然製品、並びにそれらの混合物から選択される、上記[8]又は[9]に記載の熱可塑性組成物。
[11] 前記1種以上の熱可塑性有機材料(A)が、ポリカーボネート;ブレンドポリカーボネート-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(PC/ABS)ブレンド及びポリカーボネート-ポリブチレンテレフタレート(PC/PBT)ブレンド;ポリカプロラクタム(Nylon-6)、ポリラウリルラクタム(Nylon-12)、ポリヘキサメチレンジパミド(Nylon-6,6)、ポリヘキサメチレンドデカンアミド(Nylon-6,12)、ポリ(ヘキサメチレンセバカミド(Nylon6,10);ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリエチレンナフタレート(PEN);ポリフェニレンエーテル(PPE)及びポリフェニレンオキシド(PPO)、並びに耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン-(ABS)及びスチレンアクリロニトリル樹脂(SAN)などのスチレン系樹脂とのPPE又はPPOのブレンド;ポリフェニレン硫化物(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアラミド、ポリイミド、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)、ポリスチレン(PS)HIPS;ポリアクリレート、SAN;ポリ塩化ビニル、フッ素プラスチック及びいずれかの他のハロゲン化プラスチック;ポリケトン、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)及び低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリブテン(PB)、並びにポリオレフィンのコポリマー及びブレンド、熱可塑性ウレタン、熱可塑性ポリオレフィン系エラストマー、熱可塑性加硫物;並びにスチレンエチレンブチレンスチレン(SEBS)コポリマーから選択される、上記[8]又は[9]に記載の熱可塑性組成物。
[12] 成分(A)及び成分(B)が同一であっても、又は異なってもよい、上記[8]~[11]のいずれか一項に記載の熱可塑性組成物。
[13] (i)シリコーンエラストマー(B2)を製造するために使用される成分と1種以上の熱可塑性有機材料(B1)とをブレンドすることと、
(ii)前記シリコーン組成物を動的加硫してシリコーンエラストマー(B2)を形成することと、
(iii)ステップ(ii)の間又はステップ(iii)の後に(B3)を導入することと
を含む、上記[1]~[7]のいずれか一項に記載のマスターバッチ(B)の製造方法であって、マスターバッチ(B)中、(B1)+(B2)+(B3)の重量に基づいて総量20~60重量%の成分(B2)+(B3)が含まれる製造方法。
[14] (i)シリコーンエラストマー(B2)を製造するために使用される成分を混合して、シリコーン組成物を形成すること、
(ii)前記(i)のシリコーン組成物を1種以上の熱可塑性有機材料を含む成分(B1)中にブレンドすること、
(iii)シリコーン組成物を動的加硫してシリコーンエラストマー(B2)を形成すること、及び
(iv)存在する場合、ステップ(ii)の間又はステップ(iii)の後に(B3)を導入すること
による、上記[1]~[7]のいずれか一項に記載のマスターバッチ(B)の製造方法であって、マスターバッチ(B)中、(B1)+(B2)+(B3)の重量に基づいて20~60重量%の架橋されたシリコーンエラストマーが含まれる製造方法。
[15] (i)1種以上の熱可塑性有機材料を含む成分(B1)を加熱及び押出機中に通過させ、そしてシリコーンエラストマー(B2)を製造するために使用される成分を成分(B1)中に個々に、又は集合的に導入すること、
(ii)シリコーンエラストマー(B2)を製造するために使用される成分を混合及び動的加硫してシリコーンエラストマー(B2)を形成すること、及び
(iii)存在する場合、ステップ(i)の間又はステップ(ii)の後に(B3)を導入すること
による、上記[1]~[7]のいずれか一項に記載のマスターバッチ(B)の製造方法であって、マスターバッチ(B)中、(B1)+(B2)+(B3)の重量に基づいて20~60重量%の架橋されたシリコーンエラストマーが含まれる製造方法。
[16] 上記[13]~[15]のいずれか一項に記載のマスターバッチを製造すること、及び前記熱可塑性組成物中、(A)+(B)の重量に基づいて総量0.2~25重量%の架橋されたシリコーンエラストマーが含まれるような量で、得られたマスターバッチと1種以上の熱可塑性有機材料(A)とをブレンドすることによる、熱可塑性組成物の製造方法。
[17] 熱可塑性エラストマー組成物の物理的特性を変性するための上記[1]~[7]のいずれか一項に記載のマスターバッチとしての熱可塑性シリコーン加硫物の使用。
[18] スポーツ用品、履物、自動車、電化製品、電子機器、携帯用電子機器、電気、通信及び医療用途のための部品又は構成要素であって、
上記[8]又は[9]に記載の熱可塑性組成物を含む部品又は構成要素。
[19] サングラス、老眼鏡又はウェアラブル電子機器のためのブレスレット又は支持パッドなどのウェアラブルアイテムであって、上記[9]に記載の熱可塑性エラストマー組成物を含む、ウェアラブルアイテム。
[20] 使用の際に着用者の皮膚と接触することが意図されたウェアラブルアイテムを形成するための、上記[8]~[9]のいずれか一項に記載の熱可塑性組成物の使用。
[21] スポーツ用品、履物、自動車、電化製品、電子機器、携帯用電子機器、電気、通信及び医療用途のための部品若しくは構成要素における、又はそれらのための、上記[8]~[9]のいずれか一項に記載の熱可塑性組成物の使用。
[22] 前記熱可塑性組成物が、形成後、熱可塑性フィルム又は熱可塑性シートを形成するために、押出成形、共押出成形、ラミネート加工、カレンダー加工、及び/又は押出成形-カレンダー加工される、上記[13]~[14]のいずれか一項に記載の方法。