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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】ゲルガスケット
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/10 20060101AFI20240604BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20240604BHJP
   C08K 3/32 20060101ALI20240604BHJP
   F16J 15/3284 20160101ALI20240604BHJP
【FI】
C09K3/10 G
C08L71/02
C08K3/32
F16J15/3284
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020559547
(86)(22)【出願日】2019-04-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 US2019029379
(87)【国際公開番号】W WO2019210191
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】62/662,948
(32)【優先日】2018-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517201057
【氏名又は名称】ニットウ,インク.
【氏名又は名称原語表記】NITTO, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100154449
【弁理士】
【氏名又は名称】谷 征史
(72)【発明者】
【氏名】北山 和寛
【審査官】河村 明希乃
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-153706(JP,A)
【文献】特開2014-126206(JP,A)
【文献】特開2014-125636(JP,A)
【文献】国際公開第2017/099154(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/094271(WO,A1)
【文献】特開2013-010957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/10
C08L 1/00-101/16
C08K 3/32
F16J 15/00-15/56
C09J 171/00-171/14,201/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃化剤、粘着付与剤、及び安定剤を含む少なくとも1つの感圧接着剤を有するゲルガスケットであって、
前記少なくとも1つの感圧接着剤はモノマー又はポリマーと架橋剤とを反応させて得られたポリマーを含み、前記架橋剤は少なくとも1個のシロキサン結合及び少なくとも1個の反応性官能基を有し;
前記架橋剤の量は、前記感圧接着剤のための前記モノマー又はポリマー100重量部当たり10重量部未満の範囲であり;
前記難燃化剤は、リン系難燃化剤であり;
前記粘着付与剤は、50mgKOH/g未満の酸価を有し;
前記安定剤は、ブレンステッド塩基である、ゲルガスケット。
【請求項2】
前記少なくとも1つの感圧接着剤は、裏打ち材上に配置された第1の感圧接着剤を含み、
前記裏打ち材が、ポリエステル、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリイミド、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、アイオノマー、ポリオレフィン、フッ素樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂、テトラフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレンコポリマー、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー、又は金属箔からなる群から選択される、請求項1に記載のガスケット。
【請求項3】
さらにコアフィルムを含む、請求項2に記載のガスケット。
【請求項4】
前記少なくとも1つの感圧接着剤が、前記コアフィルム上に配置された第2の感圧接着剤を含む、請求項3に記載のガスケット。
【請求項5】
前記コアフィルムは、前記第1の感圧接着剤と前記第2の感圧接着剤との間にはさまれている、請求項4に記載のガスケット。
【請求項6】
前記第1の感圧接着剤が、ポリオキシアルキレン系接着剤である、請求項2~5のいずれか一項に記載のガスケット。
【請求項7】
少なくとも2週間66℃/80%RHで貯蔵後の貯蔵弾性率が1,000~25,000Paの範囲である、請求項1~6のいずれか一項に記載のガスケット。
【請求項8】
前記架橋剤の前記少なくとも1個の反応性官能基が、ヒドロシリル基である、請求項1~7のいずれか一項に記載のガスケット。
【請求項9】
前記架橋剤の量が、前記少なくとも1つの感圧接着剤のための前記モノマー又はポリマー100重量部当たり2.0~7.0重量部の範囲である、請求項1~8のいずれか一項に記載のガスケット。
【請求項10】
前記リン系難燃化剤が、リン酸エステル又はその誘導体である、請求項1~9のいずれか一項に記載のガスケット。
【請求項11】
前記粘着付与剤の前記酸価が、40mgKOH/g未満である、請求項1~10のいずれか一項に記載のガスケット。
【請求項12】
前記安定剤が、高い塩基度を有するアミンであり、前記高い塩基度を有するアミンは、pH値7.5以上の塩基度を有する第二級又は第三級アミンである、請求項1~11のいずれか一項に記載のガスケット。
【請求項13】
前記高い塩基度を有するアミンが、ヒンダード光アミン安定剤である、請求項12に記載のガスケット。
【請求項14】
前記難燃化剤が、リン酸トリクレシルである、請求項1~13のいずれか一項に記載のガスケット。
【請求項15】
第1の感圧接着剤;
第2の感圧接着剤;及び
前記第1の感圧接着剤と前記第2の感圧接着剤との間にはさまれているコアフィルム;
を含むゲルガスケットであって、
前記第1の感圧接着剤は、モノマー又はポリマーと架橋剤とを反応させて得られたポリマーを含み、前記架橋剤は少なくとも1個のシロキサン結合及び少なくとも1個の反応性官能基を有し、
前記架橋剤の量は、前記感圧接着剤のための前記モノマー又はポリマー100重量部当たり10重量部未満の範囲であり、
前記第1の感圧接着剤は、難燃化剤、粘着付与剤、及び安定剤をさらに含み、
前記難燃化剤は、リン系難燃化剤であり、
前記粘着付与剤は、50mgKOH/g未満の酸価を有し、
前記安定剤は、ブレンステッド塩基であり、
前記第1の感圧接着剤は、最初の貯蔵弾性率が1,000~25,000Paの範囲であり、前記貯蔵弾性率は、少なくとも2週間66℃/80%RHで貯蔵後も維持される、ゲルガスケット。
【請求項16】
前記第1の感圧接着剤の厚さ及び前記第2の感圧接着剤の厚さが100μm超である、請求項15に記載のガスケット。
【請求項17】
前記コアフィルムが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルムを含む、請求項15または16に記載のガスケット。
【請求項18】
前記コアフィルムが、5μm~125μmの厚さを有する、請求項15~17のいずれか一項に記載のガスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、2018年4月26日に出願された米国特許出願第62/662,948号に基づく優先権を主張し、上記出願の全内容は参照により本明細書中に完全に組み込まれている。
【0002】
本発明の実施形態の分野は、構造物の腐食を防止又は制限するために使用される、難燃性シーリングゲルガスケットに関する。特に、接触面上への糊残り(adhesive residue)及び接触面の腐食を防止することを目指す、特定の貯蔵弾性率を有するゲルガスケットに関する。
【背景技術】
【0003】
従来、様々な機械、装置その他の構造において、対向する2つの面の間の液体又は気体の漏出を防止するために、前記対向する2つの面の間にガスケットが配置されている。
【0004】
航空宇宙産業において、航空機の構成部品は主に金属を含み、空中を高度10,000メートルで飛行する。しかし、結露や酸素からの電解質による水分の存在は、金属の錆や腐食の原因となり得、航空機の保守においてより多くの時間及びコストをもたらす。これを防止するために、一般に金属表面に腐食防止処理がなされるが、このような部品(member)を輸送する間に上記金属表面に意図しないスクラッチが発生し得る。そのため、このような金属部材の表面をカバーして腐食から保護するためにガスケットが使いられる。さらに、航空機の保守作業が行われる際には、作業性の観点から、金属部材上の残留物の量を減少させ、且つ数年間の使用後にも部材を容易に分離できることが望ましい。
【0005】
例えば、航空機と遠隔地との間の情報交換を助けるアンテナは、航空機の機体の外表面上に配置される。このようなアンテナの多くは、その1つの表面から電気コネクタが突出したプレート状の固定板を有する。上記固定板の表面は、外板の外面上に重ねられて突出する電気コネクタを有する。上記コネクタは、航空機の外板に形成された孔から該航空機の内側へと挿入され、上記航空機内の適切な電気回路に接続される。この場合、上記アンテナの固定板は一般に航空機の外板上に着脱可能に取り付けられ、ここで上記アンテナ固定板をシールするために上記外板の外面と上記アンテナ固定板の内面との間にガスケットが配置される。
【0006】
加えて、航空機において使用される任意のガスケットには難燃性であることが求められる。さらに、ガスケットに密着させる構成部品の多くは金属板であるため、ガスケットには、変色したり金属板を腐食させたりしない特性を有し、それによって部品からの腐食を防止することが求められる。
【0007】
様々なシーリング装置が当技術分野において公知である。従来の例は、米国特許出願公開第2004/0070156号明細書において見出すことができ、そこには、ポリウレタンゲルの接着剤層を有するガスケットが、柔軟性(flexibility)、弾性、圧縮性、柔軟性などに優れ、航空機の外側及びアンテナ固定板の構成材料(特に、アルミニウム)並びに水(ブラインを含めた)と非反応性であることが記載されている。しかし、この従来のゲルガスケットは、パネルと冷気流にはさまれており、これは糊残り及び腐食をもたらす。他の従来のシーリング装置において、それらの構造及び手段は、本開示と実質的に異なる。これらの他の発明によっては、本開示により教示される問題の全てを解決することはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、柔軟であり、接着している金属表面から剥離する際における該金属表面上への糊残りがほとんど又は全くなく、且つ分解(望ましくない腐食をもたらし得る。)しない組成の感圧接着剤を含む、ゲルガスケットを創出することが望ましい。
【0009】
本発明のゲルガスケットは、それが配置される部材の表面との適合性を達成するのに十分に柔軟であり、かつ良好な剥離性を有する感圧接着剤を用いて作製されるので、該ゲルガスケットが航空機の保守過程で除去されるとき、金属構造物上への糊残りがほとんど又は全くない。ゲルガスケットの柔軟性は、その貯蔵弾性率と逆相関する。より低い貯蔵弾性率は一般により高い柔軟性を示し、より高い貯蔵弾性率はより低い柔軟性を示す。したがって、下記でさらに議論するように、ゲルガスケットは最適な柔軟性を有することが望ましい。
【0010】
また、ゲルガスケットがその構造的一体性(structural integrity)を維持し、且つ分解(該ゲルガスケットがカバーする金属の望ましくない腐食をもたらし得る。)しないことが重要である。ゲルガスケットは、金属部品の表面を保護する。もしゲルガスケットが分解すると、ゲルガスケットと金属表面との間のエリアに水分がしみ込み、金属表面の腐食をもたらし得る。金属表面は、さらに保護コーティングを有し得る。このコーティングは、しばしば、引っ掻かれるか、又は損傷され得る。本発明のゲルガスケットは、金属表面及び非金属表面(例えば、保護コーティング)のいずれに対しても、引っ掻かれたり、損傷されたりすることから保護する役割を果たすことができる。
【0011】
本明細書により開示されるガスケットは、特定の柔軟性を有し、所望の腐食防止性を達成し、且つ良好な剥離性を有する。「良好な剥離性」又は「容易に剥離可能」は、本明細書において使用される場合、剥離強度が低いことにより、接着性残留物を残すことなく、且つコアフィルムに破損又は同様の損傷をもたらすことなく、手で取り除くことができるガスケット又はテープを記述する。さらに、このガスケットは、高い腐食防止性を有するだけでなく、何年にも亘る使用の後においてもほとんど糊残りを生じない。酸性化は接着剤の質を低下させるため、容易に酸性化されない接着剤樹脂を選択し、かつ酸を捕捉する添加物を含有させることにより、上記ガスケットのさらなる長寿命がもたらされた。
【0012】
本発明の少なくとも1つの実施形態を、下記の図面において提示し、本明細書においてより詳細に説明する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一般に、本発明及びその実施形態は、十分に難燃性であり、接着される金属部材の腐食や変色を引き起こさず、且つ金属表面から除去されるときにほとんど又は全く糊残りを生じないゲルガスケットに関する。本発明は、少なくとも1つの感圧接着剤と、難燃化剤と、粘着付与剤と、安定剤とを有し、ここで、上記少なくとも1つの感圧接着剤はモノマー又はポリマーと架橋剤とを反応させて得られたポリマーを含み、上記架橋剤は少なくとも1個のシロキサン結合及び少なくとも1個の反応性官能基を有する。ここで、上記難燃化剤はリン難燃化剤であり、上記粘着付与剤は50mgKOH/g未満の酸価を有し、上記安定剤はブレンステッド塩基である。
【0014】
例えば、糊残り及び腐食により生じる問題はプロトンによって引き起こされることが多く、プロトンはリン系難燃化剤に由来するリン酸から生成し得る。本発明によると、上記プロトンの生成を抑制し、該プロトンを捕捉することによって、上記の問題を解決することができる。本発明の一実施形態では、ポリテトラフルオロエチレン裏打ち材上に配置された感圧接着剤を有するゲルガスケットが存在する。
【0015】
本発明の一実施形態では、上記ゲルガスケットはコアフィルムを有する。
【0016】
本発明の一実施形態では、上記ゲルガスケットは、上記コアフィルム上に配置された第2の感圧接着剤を有する。
【0017】
本発明の一実施形態では、上記ゲルガスケットは、酸度の低い粘着付与剤を有する。
【0018】
本発明の一実施形態では、上記酸度の低い粘着付与剤は、50mgKOH/g未満の酸価を有する。
【0019】
本発明の一実施形態では、最初の貯蔵弾性率と、少なくとも2週間66℃/80%RHで貯蔵後の貯蔵弾性率とが、1,000~25,000Paの範囲である。
【0020】
本発明の一実施形態では、上記感圧接着剤は、ポリオキシアルキレン系接着剤である。
【0021】
本発明の一実施形態では、上記コアフィルムは、上記感圧接着剤と上記第2の感圧接着剤との間にはさまれている。
【0022】
本発明の一実施形態では、上記ゲルガスケットは、難燃化剤を有する。
【0023】
本発明の一実施形態では、上記ゲルガスケットは、架橋剤を有する。
【0024】
本発明の一実施形態では、上記ゲルガスケットは、安定剤を有する。
【0025】
本発明の一実施形態では、上記安定剤は、ヒンダード光アミン安定剤である。
【0026】
本発明の一実施形態では、上記難燃化剤は、リン酸トリクレシルである。
【0027】
本発明の別の実施形態では、第1の感圧接着剤;第2の感圧接着剤;及び、第1の感圧接着剤と第2の感圧接着剤との間にはさまれているコアフィルム;を有し、少なくとも2週間66℃/80%RHで貯蔵後の貯蔵弾性率が1,000~25,000Paの範囲であるゲルガスケットが存在する。
【0028】
本発明の一実施形態では、上記第1の感圧接着剤の厚さ及び上記2の感圧接着剤の厚さは約15ミル(381μm)である。
【0029】
本発明の一実施形態では、上記コアフィルムは、ポリプロピレンを含む。
【0030】
本発明の一実施形態では、上記コアフィルムは、約2ミル(50μm)の厚さを有する。
【0031】
本発明のまた別の実施形態では、ポリオキシアルキレン系接着剤;及び50mgKOH/g未満の酸価を有する粘着付与剤;を有し、少なくとも2週間66℃/80%RHで貯蔵後の貯蔵弾性率が1,000~25,000Paの範囲であるゲルガスケットが存在する。さらなる実施形態では、上記少なくとも2週間66℃/80%RHで貯蔵後の貯蔵弾性率は、好ましくは1,000~16,000Paであり、より好ましくは1,500~15,000Paであり、さらに好ましくは2,000~14,000Paである。
【0032】
本発明のまた別の実施形態では、金属の腐食を防止する方法が存在する。この方法は、ポリオキシアルキレン系接着剤を提供するステップであって、該ポリオキシアルキレン系接着剤は酸化50mgKOH/g未満の粘着付与剤を有するステップと;上記ポリオキシアルキレン系接着剤を上記金属の表面に塗布するステップと;を含む。
【0033】
一般に、本発明により、下記の、及び言及のない他の利点及び目的が達成される。
【0034】
本発明の1つの目的は、難燃性のゲルガスケットを提供することである。
【0035】
本発明の1つの目的は、航空産業における使用に適したゲルガスケットを提供することである。
【0036】
本発明の1つの目的は、ゲルガスケットが適用される金属表面の腐食を防止又は制限するゲルガスケットを提供することである。
【0037】
本発明の1つの目的は、金属表面から除去される際にほとんど又は全く糊残りを生じないゲルガスケットを提供することである。
【0038】
本発明の1つの目的は、接着剤の劣化耐性のあるゲルガスケットを提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の第1の実施形態に係るガスケット構造の側面図である。
図2】本発明の第2の実施形態に係るガスケット構造の側面図である。
図3a】ASTM D610に基づいて試料アルミニウムパネルを塩噴霧試験に250時間曝露した後に、腐食したエリアを視覚的に決定する方法を示す。
図3b】ASTM D610に基づいて試料アルミニウムパネルを塩噴霧試験に250時間曝露した後に、腐食したエリアを視覚的に決定する方法を示す。
図4a】塩噴霧試験に供される前のアルミニウムパネルを示す。
図4b】ASTM D610に基づいて試料アルミニウムパネルを塩噴霧試験に250時間曝露した後の、許容される量の糊残りの一例を示す。
図4c】ASTM D610に基づいて試料アルミニウムパネルを塩噴霧試験へと250時間曝露させた後の、許容されない量の糊残りの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照しながら説明する。様々な図における同一の要素は、同じ参照符号で特定される。
【0041】
以下、本発明の各実施形態に詳細に言及する。このような実施形態は、本発明を説明するために提供され、本発明をこれらの実施形態に限定する意図ではなない、実際、当業者は、本明細書を読み、本図面を見ることによって、様々な改変及び変形をこれに行うことができることを認識し得る。
【0042】
図1及び2には、第1の感圧接着剤10、第2の感圧接着剤20、裏打ちフィルム30、及びコアフィルム40からなるゲルガスケット1の断面図が示されている。
【0043】
ゲルガスケット1は、いくつかの形状ファクター(form factor)をとることができ、シート形状やテープ形状であり得る。ゲルガスケット1は、いずれかの形状ファクター、又は本明細書に明示されていない他のものにより、特定のサイズのエリアをカバーするように切断又は他の方法で変更することができる。いくつかの実施形態では、図2に示されているように、コアフィルム40は除かれ得る。除かれると、第1の感圧接着剤10及び第2の感圧接着剤20は、単一の層を形成し得る。
【0044】
ゲルガスケット1は、任意のタイプの表面上に使用されて、あるエリアをシールするか、又は材料の汚れを防止し得る。好ましくは、ゲルガスケット1を、アルミニウムなどの金属表面に適用する。とはいえ、ゲルガスケット1は、例えば(これらに限定されないが)、鉄、銅、鉛、ニッケル、銀、スズ、チタン、亜鉛、及びこれらの様々な合金などの様々の金属に適用され得る。ゲルガスケット1は、航空宇宙産業において主に使用される一方、他の輸送装置、例えば、自動車、ボート、列車などにおける実装をさらに利用し得る。ゲルガスケット1の主な使用目的は、2つの表面の間をシーリング(密封)するためであってもよく、表面を腐食から保護するためであってもよく、これらの組合せであってもよい。
【0045】
感圧接着剤
本発明のパラメーターが得られる限り、任意のタイプの感圧接着剤を使用することができる。感圧接着剤は、好ましくは、アクリル系接着剤、ゴム系接着剤、シリコーン系接着剤、及びポリオキシアルキレン系接着剤の少なくとも1つを含む。
【0046】
感圧接着剤は、より好ましくは、各分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するポリオキシアルキレンポリマー(「構成成分A」)、各分子中に平均して2個若しくはそれより多いヒドロシリル基を含有する化合物(「構成成分B」)、及びヒドロシリル化触媒(「構成成分C」)を含むポリオキシアルキレン系接着剤である。好ましい一実施形態では、ポリオキシアルキレン系接着剤は、日本の株式会社カネカによって生産されたACX022などのようなものである。感圧接着剤の厚さは、100μm超であってよく、より好ましくは300μm超である。コアフィルムをはさむ2つの接着剤層が存在する一実施形態において、総厚さは、好ましくは3000μm未満であり、より好ましくは1500μm未満、最も好ましくは1200μm未満である。少なくとも1つの接着剤層が存在し、コアフィルムを有しない一実施形態では、総厚さは、好ましくは100μm~3000μmであり、より好ましくは300μm~1500μmであり、最も好ましくは500μm~1200μmである。
【0047】
本発明の感圧接着剤は、一実施形態において示すように、下記の構成成分:各分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するポリオキシアルキレンポリマー(構成成分A);各分子中に平均して2個若しくはそれより多いヒドロシリル基を含有する化合物(構成成分B);及びヒドロシリル化触媒(構成成分C);を含有する組成物の硬化物であることによって主に特徴づけられる。
【0048】
上記感圧接着剤は、化合物Cの存在下での化合物Aと化合物Bとのヒドロシリル化反応によって合成される。本明細書により開示されるゲルガスケットは、化合物A、化合物B、化合物C(すなわち、触媒)、リン酸エステルをベースとする難燃剤、及びカルボン酸部分を有する粘着付与剤を含む。ゲルガスケットが高温高湿条件下において老化する場合、難燃剤中のリン酸エステルが粘着付与剤のカルボン酸により触媒されて加水分解を起こし、リン酸を生じさせると考えられる。リン酸の相対的に高い酸性度によって化合物Bのシロキサン結合が加水分解を起こし、これによりゲルガスケットの架橋ネットワークが切断され、最終的にゲルガスケットの劣化が生じる。
【0049】
本明細書により開示されるゲルガスケットの劣化を軽減又は防止するために、いくつかの実施形態では、劣化軽減のために50mgKOH/g若しくはそれ未満の酸価を有する低酸価の粘着付与剤を使用することが好ましい。いくつかの実施形態では、任意の酸、例えば、カルボン酸及びリン酸を捕捉することができる安定剤を、ゲルガスケットに添加することが好ましい。いくつかの実施形態では、上記安定剤は、ブレンステッド塩基、例えば第二級又は第三級アミン化合物を含むことが好ましい。いくつかの実施形態では、上記安定剤は、窒素と化合物C(触媒)の白金原子との間の相互作用を低減させるために、立体障害があることが好ましい。これは、さもないと、アミンは白金に対して触媒毒として作用するため、硬化が阻害されるからである。いくつかの実施形態では、高い塩基度を有するアミンである安定剤、例えば、ピペリジル基を含むアミン安定剤を使用することが好ましい。安定剤の具体例には、BASF Corporationの、Tinuvin765、Tinuvin770、Tinuvin144、Tinuvin292などが含まれる。
【0050】
ポリオキシアルキレンポリマー
本明細書において使用する場合、用語「各分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するポリオキシアルキレンポリマー」(構成成分A)は特に限定されず、様々なポリマーを使用することができるが、ポリマーの主鎖が下記の式によって表される繰り返し単位を有するものが好ましい。
-R-O-
(上記式中、Rはアルキレン基である)
【0051】
は、好ましくは1~14個、より好ましくは2~4個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状アルキレン基である。
【0052】
ポリオキシアルキレンポリマーの主鎖骨格は、1種類のみの繰り返し単位からなってもよく、2種類若しくはそれよりも多い繰り返し単位からなってもよい。特に、利用可能性及び作業性の観点から、主要な繰り返し単位として-CHCH(CH)O-を有するポリマーが好ましい。ポリマーの主鎖は、オキシアルキレン基以外の繰り返し単位を含んでいてもよい。この場合、ポリマー中のオキシアルキレン単位の総量は、好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。
【0053】
ポリマーは、直鎖状ポリマー若しくは分岐ポリマー、又はこれらの混合物であり得るが、好ましくは50重量%以上の割合で直鎖状ポリマーを含有し、これにより接着剤層は様々な材料の表面に対して良好な接着性を示す。
【0054】
ポリマーの分子量は、数平均分子量として、好ましくは500~50,000、より好ましくは5,000~30,000である。数平均分子量が500未満であると、得られた硬化物は脆すぎる傾向があり、数平均分子量が50,000を超えると、粘度が好ましくなく高くなりすぎて作業性を著しく低下させる。ここで数平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により得られる値を意味する。
【0055】
ポリマーは、好ましくは狭い分子量分布を有し、ここで重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)は1.6以下である。Mw/Mnが1.6以下であるポリマーは、組成物の粘度を低下させ、作業性を改善し得る。したがって、Mw/Mnは、より好ましくは1.5以下であり、さらに好ましくは、1.4以下である。本明細書において記述するように、Mw/Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によって得られる値を指す。
【0056】
ここで、分子量(ポリスチレン換算)は、東ソー株式会社製のGPC装置(HLC-8120GPC)を用いるGPC法により、下記の条件で測定される。
試料濃度:0.2重量%(THF溶液)
試料注入量:10μl
溶離液:THF
流量:0.6ml/分
測定温度:40℃
カラム:試料カラムTSKgel GMH-H(S)
検出器:示差屈折計
【0057】
構成成分Aのポリマー(各分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するポリオキシアルキレンポリマー)に関し、アルケニル基は特に限定されないが、下記式(2)によって表されるアルケニル基が適切である。
C=C(R)-
(上記式中、R2は、水素又はメチル基である)
【0058】
ポリオキシアルキレンポリマーへのアルケニル基の結合のモードは限定されない。例えば、アルケニル基の直接結合、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、尿素結合などが含まれ得る。
【0059】
構成成分Aのポリマーの具体例として、一般式(3):
{HC=C(R3a)-R4a-O}a5a
(上記式中、R3aは、水素又はメチル基である。R4aは、1個若しくは複数のエーテル基を有していてもよい、炭素原子数1~20の二価の炭化水素基である。R5aは、ポリオキシアルキレンポリマー残基である。aは、正の整数である。)によって表されるポリマーが挙げられる。式中のR4aは、具体的には、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、-CHCH(CH)CH-、-CHCHCHCH-、-CHCHOCHCH-、又は-CHCHOCHCHCH-などを含み得る。合成の容易さにおいては-CH-が好ましい。
【0060】
また、式(4):
{HC=C(R3b)-R4b-OCO}a5b
(上記式中、R3b、R4b、R5b及びaの定義は、それぞれ、R3a、R4a、R5a、及びaの定義と同じである。)により表される、エステル結合を有するポリマーを含んでいてもよい。
【0061】
また、式(5):
{HC=C(R3c)}a5c
(上記式中、R3c、R5c及びaの定義は、それぞれ、R3a、R5a、及びaの定義と同じである。)により表されるポリマーを含んでいてもよい。
【0062】
さらに、式(6):
{HC=C(R3d)-R4d-O(CO)O}a5d
(上記式中、R3d、R4d、R5d及びaの定義は、それぞれ、R31、R4a、R5a及びaの定義と同じである。)により表される、カーボネート結合を有するポリマーを含んでいてもよい。
【0063】
ポリマーの各分子中には、少なくとも1個、好ましくは1~5個、より好ましくは1.5~3個のアルケニル基が存在することが好ましい。ポリマーの各分子中に含まれるアルケニル基の数が1未満である場合、硬化が不十分となる。上記数が5を超える場合、メッシュ構造は密となり、ポリマーが良好な接着を示すことができないことがある。上記ポリマーは、特開2003-292926号公報に記載されている方法によって合成することができ、任意の市販の製品を使用することができる。
【0064】
架橋剤
上記のポリマーは、各分子中に(平均して)2個若しくはそれより多いヒドロシリル基を含有する化合物(架橋剤「構成成分B」)と組み合わせることができ、該化合物は、ヒドロシリル基(Si-H結合を有する基)を有する限り特に限定されないが、原料の入手容易性及び構成成分Aとの相溶性の観点から、有機成分で修飾されたオルガノハイドロジェンポリシロキサンが特に好ましい。上記有機成分で修飾されたポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、より好ましくは、各分子中に平均2~8個のヒドロシリル基を有する。具体的なポリオルガノハイドロジェンシロキサンの構造の例には、直鎖状又は環状の、例えば下記式で表されるようなもの:
【0065】
【化1】
【0066】
(上記式中、2≦m+n≦50、2≦m、及び0≦nである。R6aは、その主鎖中に2~20個の炭素原子を有し、1又はそれ以上のフェニル基を有していてもよい炭化水素基である。)、
【0067】
【化2】
【0068】
(上記式中、0≦m+n≦50、0≦m、及び0≦nである。R6bは、その主鎖中に2~20個の炭素原子を有し、1又はそれ以上のフェニル基を有していてもよい炭化水素基である。)、或いは
【0069】
【化3】
【0070】
(上記式中、3≦m+n≦20、2≦m≦l9、及び0≦n<l8である。R6cは、その主鎖中に2~20個の炭素原子を有し、1又はそれ以上のフェニル基を有していてもよい炭化水素基である。)、並びに、これらの単位の2つ若しくはそれより多いものを有する、例えば下記式により表されるようなもの:
【0071】
【化4】
【0072】
(上記式中、1≦m+n≦50、l≦m、及び0≦nである。R6dは、その主鎖中に2~20個の炭素原子を有し、1又はそれ以上のフェニル基を有していてもよい炭化水素基である。2≦bであり、R8aは、二価~四価の有機基である。R7aは、二価の有機基であり、ただしR8aの構造に応じてR7aは非存在であり得る。)、
【0073】
【化5】
【0074】
(上記式中、0≦m+n≦50、0≦m、及び0≦nである。R6eは、その主鎖中に2~20個の炭素原子を有し、1又はそれ以上のフェニル基を有していてもよい炭化水素基である。2≦bであり、R8bは、二価~四価の有機基である。R7bは、二価の有機基であり、ただしR8bの構造に応じてR7bは非存在であり得る。)、或いは
【0075】
【化6】
【0076】
(上記式中、3≦m+n≦50、l≦m、及び0≦nである。R6fは、その主鎖中に2~20個の炭素原子を有し、1又は以上のフェニル基を有していてもよい炭化水素基である。2≦bであり、R8cは、二価~四価の有機基である。R7cは、二価の有機基であり、ただしR8cの構造に応じてR7cは非存在であり得る。)、
などが含まれる。
【0077】
「各分子中に平均して2個若しくはそれより多いヒドロシリル基を含有する化合物」(構成成分B)は、好ましくはポリオキシアルキレンポリマー(構成成分A)及びヒドロシリル化触媒(構成成分C)との相溶性が良好であり、又は系内において良好な分散安定性を示す。特に、系全体の粘度が低い場合、上記の成分のいずれかとの相溶性が低い成分の使用は、相分離や硬化不良をもたらすことがある。
【0078】
構成成分A及び構成成分Cとの相溶性が比較的良好であるか、又は比較的良好な分散安定性を示す構成成分Bの具体例には、以下のものが含まれる。
【0079】
【化7】
【0080】
(上記式中、nは、4以上かつ10以下の整数である。)
【0081】
【化8】
【0082】
(上記式中、2≦m≦l0及び0≦n≦5である。R6gは、8個若しくはそれよりも多い炭素原子を有する炭化水素基である。)
【0083】
構成成分Bの特定の好ましい具体例には、ポリメチルハイドロジェンシロキサンが含まれ得る。構成成分Aとの相溶性を保証し、SiH含量を調節するために、α-オレフィン、スチレン、α-メチルスチレン、アリルアルキルエーテル、アリルアルキルエステル、アリルフェニルエーテル、アリルフェニルエステルなどで修飾された化合物を含むことができる。一例として、下記の構造を含むことができる。
【0084】
【化9】
【0085】
(上記式中、2≦m≦20及び1≦n≦20である。)
【0086】
構成成分Bは、一般に公知の方法によって合成することができ、また任意の市販の製品を使用することができる。
【0087】
架橋剤の使用量は、感圧接着剤のためのモノマー又はポリマーに対して、10重量部未満、好ましくは9重量部以下、より好ましくは8重量部以下である。架橋剤の比が10重量部を超えることは、架橋が進行し過ぎて接着性を減少させ得るため好ましくない。少なくとも1つの実施形態では、架橋剤の量は、感圧接着剤のためのモノマー又はポリマー100重量部当たり、好ましくは2.0~7.0重量部、より好ましくは2.0~6.0重量部、さらに好ましくは2.0~5.0重量部、最も好ましくは2.0~4.0重量部の範囲である。
【0088】
<ヒドロシリル化触媒>
本発明において、「ヒドロシリル化触媒」(構成成分C)は限定されず、任意に選択したものを使用することができる。具体的な例には、クロロ白金酸;白金;担体(例えばアルミナ、シリカ又はカーボンブラックなど)に担持された固体白金;白金-ビニルシロキサン錯体;白金-ホスフィン錯体;白金-亜リン酸塩錯体;Pt(アセチルアセトネート acac)などが含まれ得る。
【0089】
白金化合物以外の触媒の例には、RhCl(PPh、RhCl、Rh/Al、RuCl、IrCl、FeCl、AlCl、PdCl、2HO、NiCl、TiClなどが含まれ得る。
【0090】
これらの触媒は、単独で使用してもよく、2種類若しくはそれよりも多くを組み合わせて使用してもよい。触媒活性に関しては、クロロ白金酸、白金-ホスフィン錯体、白金-ビニルシロキサン錯体などが好ましい。
【0091】
構成成分Cの配合量は限定されないが、組成物のポットライフ及び硬化物(接着剤層)の透明性を保証する観点から、上記量は、構成成分A中のアルケニル基1モルに対して、一般に1×10-1モル以下、好ましくは5.3×10-2モル以下である。特に、硬化物(接着剤層)の透明性の観点から、上記量は、より好ましくは3.5×10-2モル以下、特に好ましくは1.4×10-3モル以下である。上記量が、構成成分A中のアルケニル基1モルに対して1×10-1モルを超えると、最終的に得られる硬化物(接着剤層)は黄変しやすく、硬化物(接着剤層)の透明性が損なわれる傾向がある。構成成分Cの配合量が少なすぎると、組成物の硬化スピードが遅く、硬化品質が不安定になる傾向がある。したがって、上記量は、好ましくは8.9×10-5モル以上、より好ましくは1.8×10-4モル以上である。
【0092】
ポリマー/架橋剤/触媒の比
上述した構成成分A~Cを含む組成物は、加熱により硬化する。すなわち、構成成分A(各分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するポリオキシアルキレンポリマー)のアルケニル基は、ヒドロシリル化触媒(構成成分C)の存在下で構成成分B(各分子中に平均して2個若しくはそれより多いヒドロシリル基を含有する化合物)のヒドロシリル基(Si-H結合を有する基)によってヒドロシリル化されることで架橋の進行が可能となり、それにより硬化が完了する。硬化物(硬化生成物)は低活性であり、様々な物質、例えば、水、金属、プラスチック材料などと接触しても反応しない。
【0093】
構成成分A~Cを含む組成物において、構成成分B(化合物B)のヒドロシリル基は、構成成分A(化合物A)のアルケニル基に対する官能基比が、0.3~10の範囲、より好ましくは0.4~8の範囲、特に好ましくは0.5~6の範囲となるように、含有(配合)されることが好ましい。上記官能基比が10を超えるようにヒドロシリル基が含有されると、架橋密度が増加し、接着性を得られなくなることがある。上記官能基比が0.3未満であると、硬化物における架橋が弱すぎて、高温での特性維持が困難となり得る。
【0094】
難燃剤
本発明において、難燃剤は、リン系難燃剤である。リン系難燃剤は、難燃性を付与することができ、燃焼中におけるドリップの抑制、環境規制への適合性などが良好であるので好ましい。
【0095】
リン系難燃剤の例には、リン酸エステル、芳香族縮合リン酸エステル、ポリリン酸アンモニウムなどが含まれる。リン酸エステルの具体例には、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレシル(TCP)、クレシルジフェニルホスフェート(CDP)、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート、リン酸トリエチル(TEP)、トリ-n-ブチルホスフェート、リン酸トリキシレニル、キシレニルジフェニルホスフェート(XDP)などが含まれる。芳香族縮合リン酸エステルの具体例には、レゾルシノールビスジフェニルホスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールビスジキシレニルホスフェートなどが含まれる。ポリリン酸アンモニウムの具体例には、ポリリン酸アンモニウム(APP)、メラミン修飾ポリリン酸アンモニウム及びコーティングされたポリリン酸アンモニウムが含まれる。ここで、上記コーティングされたポリリン酸アンモニウムは、ポリリン酸アンモニウムを樹脂でコーティング又はマイクロカプセル化し、耐水性を向上させることにより得られる。リン酸エステル、芳香族縮合リン酸エステル及びポリリン酸アンモニウムは、併用することができる。リン酸エステル及びポリリン酸アンモニウムの組合せ使用が好ましい。これにより、リン酸エステルにより形成されるチャー層の難燃効果及びポリリン酸アンモニウムから生成する不燃性ガスの難燃性効果の組合せによって、固相及び気相の両方における難燃性を実現することができる。
【0096】
難燃化剤は、リン系難燃剤であり、より好ましくはリン酸エステル又はその誘導体であり、さらに好ましくはリン酸エステルであり、最も好ましくはリン酸トリクレシルである。
【0097】
難燃剤は、1つ若しくは複数の種類を混合物中で使用することができる。難燃剤の使用量は、該難燃剤の種類によって異なるが、難燃化やチャー層の形成によるドリップ抑制などの効果を効率的に達成するため、一般に、接着剤に対して、好ましくは10重量部以上、より好ましくは20重量部以上、特に好ましくは30重量部以上である。より良好な接着特性や保存性などを得るため、上記量は、好ましくは350重量部以下、より好ましくは250重量部以下、特に好ましくは150重量部以下である。
【0098】
粘着付与剤
難燃剤を含有する感圧接着剤層は、シールされる物体への接着性及び難燃性を改善させるため、粘着付与樹脂を含有することができる。粘着付与樹脂の例は、テルペン系粘着付与樹脂、フェノール系粘着付与樹脂、ロジン系粘着付与樹脂、石油系粘着付与樹脂などを含む。粘着付与樹脂は、1つ若しくは複数の種類を使用することができる。
【0099】
テルペン系粘着付与樹脂の例には、例えばα-ピネンポリマー、β-ピネンポリマー、ジペンテンポリマーなどのテルペン樹脂、及び、これらのテルペン樹脂を変性(フェノール変性、芳香族変性、水素添加変性、炭化水素変性など)して得られる変性テルペン樹脂(例えば、テルペンフェノール樹脂、スチレン変性テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂など)などが含まれる。
【0100】
フェノール系粘着付与樹脂の例には、様々なフェノール(例えば、フェノール、m-クレゾール、3,5-キシレノール、p-アルキルフェノール、レゾルシンなど)とホルムアルデヒドとの縮合物(例えば、アルキルフェノール樹脂、キシレンホルムアルデヒド樹脂など)、アルカリ触媒を用いてホルムアルデヒドと上記フェノールとを付加反応させることで得られるレゾール、酸触媒を用いてホルムアルデヒドと上記フェノールとを縮合反応させることで得られるノボラック、などが含まれる。
【0101】
ロジン系粘着付与樹脂の例には、例えばガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどの未変性ロジン(天然ロジン)、上記未変性ロジンを水素化、不均化、重合などにより変性した変性ロジン(水素添加ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、及び他の化学的に修飾されたロジンなど)、様々なロジン誘導体などが含まれる。上記ロジン誘導体の例には、ロジンエステル、例えば変性ロジン(未変性ロジンをアルコールでエステル化して得られるロジンエステル化合物、水素添加ロジン、不均化ロジン、重合ロジンなど)をアルコールなどでエステル化して得られる変性ロジンエステル化合物;未変性ロジン又は変性ロジン(水素添加ロジン、不均化ロジン、重合ロジンなど)を不飽和脂肪酸で変性して得られる不飽和脂肪酸変性ロジン;ロジンエステルを不飽和脂肪酸で変性して得られる不飽和脂肪酸変性ロジンエステル;未変性ロジン、変性ロジン(水素添加ロジン、不均化ロジン、重合ロジンなど)、不飽和脂肪酸変性ロジン又は不飽和脂肪酸変性ロジンエステルのカルボキシル基を還元処理して得られるロジンアルコール;ロジン(特に、ロジンエステル)、例えば未変性ロジン、変性ロジン、様々なロジン誘導体などの金属塩、などが含まれる。また、ロジン誘導体としては、フェノールをロジン(未変性ロジン、変性ロジン、様々なロジン誘導体など)に酸触媒と共に加え、これを熱重合させて得られるロジンフェノール樹脂なども使用することができる。
【0102】
上記ロジンエステルを得るために使用するアルコールの例には、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの二価アルコール、例えばグリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの三価アルコール、例えばペンタエリスリトール、ジグリセロールなどの四価アルコール、例えばジペンタエリトリトールなどの6個の水酸基を有するアルコール、などが含まれる。これらは、単独で又は2つ若しくはそれより多い種類を組み合わせて使用される。
【0103】
石油系粘着付与樹脂の例には、例えば芳香族石油樹脂、脂肪族石油樹脂、脂環式石油樹脂(脂肪族環を有する石油樹脂)、脂肪族芳香族石油樹脂、脂肪族脂環式石油樹脂、水素添加石油樹脂、クマロン樹脂、クマロンインデン樹脂などの、公知の石油樹脂が含まれる。芳香族石油樹脂の具体例には、炭素原子数8~10のビニル基含有芳香族炭化水素(スチレン、o-ビニルトルエン、m-ビニルトルエン、p-ビニルトルエン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、インデン、メチルインデンなど)の1つ若しくは複数の種類を使用したポリマーなどが含まれる。上記芳香族石油樹脂としては、例えばビニルトルエン、インデンなどの留分(すなわち、「C9石油留分」)から得られる芳香族石油樹脂(すなわち、「C9系石油樹脂」)を好ましくは使用することができる。上記脂肪族石油樹脂の例には、例えば炭素原子数4~5のオレフィン(例えば、ブテン-1、イソブチレン、ペンテン-1など)やブタジエン、ピペリレン、1,3-ペンタジエン、イソプレンなどのジエンから選択される1つ若しくは複数の種類を用いて得られるポリマーが含まれる。また、上記脂肪族石油樹脂として、例えばブタジエン、ピペリレン、イソプレンなどの留分(すなわち、「C4石油留分」、「C5石油留分」など)から得られる脂肪族石油樹脂(すなわち、「C4系石油樹脂」、「C5系石油樹脂」など)を好ましく使用することができる。上記脂環式石油樹脂の例には、上記脂肪族石油樹脂(すなわち、「C4系石油樹脂」、「C5系石油樹脂」など)の環化や二量体化に続く重合によって得られる脂環式炭化水素樹脂、環状ジエン化合物(シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルナン、ジペンテン、エチリデンビシクロヘプテン、ビニルシクロヘプテン、テトラヒドロインデン、ビニルシクロヘキセン、リモネンなど)のポリマー又はその水素添加樹脂、上記の芳香族炭化水素樹脂や下記の脂肪族芳香族石油樹脂の芳香族環を水素化して得られる脂環式炭化水素樹脂、などが含まれる。上記脂肪族芳香族石油樹脂の例には、スチレン-オレフィンコポリマーなどが含まれる。また、上記脂肪族芳香族石油樹脂としては、いわゆる「C5/C9共重合石油樹脂」などを使用することができる。
【0104】
粘着付与樹脂は、裏打ち材の難燃性の観点から、好ましくはテルペン系粘着付与樹脂及び/又はロジン系粘着付与樹脂であり、特に好ましくはロジン系粘着付与樹脂である。テルペン粘着付与樹脂及びロジン系粘着付与樹脂は、難燃助剤としての効果を容易に実現する。これにより、シール対象への裏打ち材の接着及び裏打ち材の難燃性を、よりよく改善することができる。テルペン系粘着付与樹脂は、特に好ましくはテルペンフェノール樹脂であり、ロジン系粘着付与樹脂は、特に好ましくはロジンエステル(すなわち、未変性ロジン、水素添加ロジン、不均化ロジン又は重合ロジンのエステル化化合物)であり、上記ロジンエステルは、好ましくは三価又はそれ以上の多価アルコールのエステル、特に好ましくは4~6個の水酸基を持つ多価アルコールのエステルである。
【0105】
粘着付与樹脂は、1つ若しくは複数の種類を組み合わせて使用することができ、その使用量は特に限定されない。とはいえ、上記量は、接着剤の重量に対して、好ましくは 重量部以上、より好ましくは5重量部以上、特に好ましくは10重量部以上である。接着特性、保存性、取扱い性、分散性などの維持性の態様から、上記量は、好ましくは100重量部以下、より好ましくは60重量部以下、特に好ましくは40重量部以下である。粘着付与剤の酸価は、50mgKOH/g未満であることが望ましく、より好ましくは40mgKOH/gまたはこれ未満、特に好ましくは20mgKOH/g以下である。いずれにしても、粘着付与剤の酸価は1mgKOH/g超であることが好ましい。しかし、50mgKOH/g超の酸価を有する粘着付与剤は、接着剤の劣化を引き起こして糊残りを増加させ得るので、避けるべきである。
【0106】
コアフィルム
コアフィルムの材料は、特に限定されない。その例には、ポリエステル(例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)など);ナイロン;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリイミド(PI);ポリアミド;ポリフェニレンスルフィド(PPS);ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);アイオノマー;ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、リアクターTPO、エチレン-酢酸ビニルコポリマーなど);フッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ポリビニル(PVF)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレンコポリマー(FEP)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー(ECTFE)など)などから選択される1つ若しくは複数の種類から作製される単層又は積層プラスチックフィルム、金属箔、などが含まれる。また、コアフィルムは、プラスチックフィルムと金属箔とを積層して得られたフィルムであり得る。コアフィルムは、好ましくは非多孔質フィルムである。「非多孔質フィルム」は、固体膜を意味し、メッシュクロス、織物、不織布、メッシュフィルム(シート)、穴あきフィルム(シート)などは除かれる。コアフィルムは、ゲルガスケットの引張強度を高くする。このことは、通常のメンテナンスの際にガスケットを容易に除去し得るので好ましい。
【0107】
いくつかの実施形態では、コアフィルムは、約5μm~約125μmの厚さを有してもよく、より好ましくは約10μm~60μmである。コアフィルムの厚さが5μm未満であると、保守点検においてゲルガスケットを剥離する際の作業性が低下する。
【0108】
このガスケット材料は、通常ロール形状で貯蔵され、コーティングの後に巻き取られる。しかし、例えば厚さ125μm超などの厚すぎるコアフィルムが用いられる、接着剤層とコアフィルム層とが部分的に剥離するか、又はコアフィルムが巻取り時にしわとなる。これにより外観が悪化し、接着剤表面が粗くなり、悪い腐食効果がもたらされる。
【0109】
コアフィルムの表面は、例えばコロナ処理、クロム酸処理、オゾン処理、火炎処理、プラズマ処理、ナトリウムエッチング、及びプライマーコーティングにより、処理することができる。
【0110】
架橋剤
感圧接着剤は、ベースポリマーに加えて架橋剤を含有することができる。架橋剤により、シール対象への接着性及び耐久性を改善することができ、高温での信頼性および接着剤自体の形状維持性を付与することができる。架橋剤としては、例えばイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、過酸化物系架橋剤、金属キレート系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤などの、公知の架橋剤を適切に使用することができる。これらの架橋剤は、1つ若しくは複数の種類を組み合わせて使用することができる。
【0111】
安定剤
感圧接着剤は、1種若しくは複数の加えられた安定剤を有し得る。ポリマーの安定剤は、直接又は組合せて使用され、様々な効果、例えば酸化、鎖切断及び制御されない再結合、及びポリマーの光酸化により引き起こされる架橋反応を防止する。少なくとも1つの実施形態では、安定剤の役割は、ゲルガスケットの分解によって生じるプロトンを効果的に「捕捉」するか、又はこれらと反応することである。
【0112】
ポリマーは、熱及び紫外光の直接的又は間接的影響によって風化する(weathered)と考えられる。風化に対する安定剤の有効性は、溶解性、異なるポリマーマトリックス中での安定化能力、マトリックスにおける分布、加工及び使用の間の蒸発損失に依存する。粘度への影響もまた、加工のために重要な考慮事項である。本出願において使用される安定剤は、好ましくはブレンステッド塩基であり、より好ましくは「高い塩基度を有するアミン」であり、さらに好ましくは「ヒンダード光アミン安定剤」である。アミンは、好ましくは第二級又は第三級アミンである。ブレンステッド塩基(例えば「高い塩基性度を有するアミン」又は「ヒンダードアミン光安定剤(HALS)」)のpH値は、好ましくは7.5若しくはそれより高く、より好ましくは7.5若しくはそれより高く、さらに好ましくは8.0若しくはそれよりも高い。しかし、ブレンステッド塩基(例えば「高い塩基性度を有するアミン」又は「ヒンダードアミン光安定剤(HALS)」)のpH値の上限は、好ましくは12若しくはそれ未満、より好ましくは10若しくはそれ未満に制限される。ヒンダードアミン光安定剤(HALS)としては、BASF CorporationのTinuvin765、Tinuvin770、Tinuvin144、又はTinuvin292を含む様々なものを使用し得るが、これらに限定されない。安定剤の例示には、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、メチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート又はこれらの組合せが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0113】
安定剤の使用量は、ポリマーに対して、5重量部以下、好ましくは2重量部以下、より好ましくは1重量部以下である。安定剤の比が10重量部を超えることは好ましくない。
【0114】
裏打ちフィルム
裏打ちフィルムの材料は、特に限定されない。その例には、ポリエステル(例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)など);ナイロン;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリイミド(PI);ポリアミド;ポリフェニレンスルフィド(PPS);ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);アイオノマー;ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、リアクターTPO、エチレン-酢酸ビニルコポリマーなど);フッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ポリビニル(PVF)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレンコポリマー(FEP)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー(ECTFE)など)などから選択される1つ若しくは複数の種類から作製される単層又は積層プラスチックフィルム、金属箔、などが含まれる。また、裏打ちフィルムは、プラスチックフィルムと金属箔とを積層して得られたフィルムであり得る。裏打ちフィルムは、好ましくは非多孔質フィルムである。ここで「非多孔質フィルム」とは、固体膜を意味し、メッシュクロス、織物、不織布、メッシュフィルム(シート)、穴あきフィルム(シート)などは除かれる。
【0115】
フッ素樹脂シートが特に好ましく、なかでもポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートが好ましい。
【0116】
裏打ちフィルムの表面は、例えばコロナ処理、クロム酸処理、オゾン処理、火炎処理、プラズマ処理、ナトリウムエッチング、及びプライマーコーティングにより、処理することができる。
【0117】
塩噴霧試験
本発明の一実施形態に係る3インチ×3インチのテストサンプルを、4インチ×4インチのジュラルミンパネル(7075T76)上に配置した。上記テストサンプルを、下記の条件で塩水噴霧試験に供した。
方法:ASTM D610
試料角度:30°
試験時間:250時間
温度:35℃(+1.1~1.7℃)
塩溶液:5%NaCl(重量%/重量%)
【0118】
試験後、ジュラルミンパネルからテストサンプルを剥がし、ジュラルミンパネルの全面積に対する腐食した面積の比を目視により特定した。図3a,3bに示すように、上記パネルを5×5の正方形のグリッドに分割し、各正方形について腐食した面積の分量を目視で特定し(正方形内が完全に腐食していることを「1」の値で示した。)、それらを足し合わせて合計値(最大で「25」)を得、この合計値に基づいて腐食したエリアの百分率を計算した(合計値「25」は100%の腐食を示す。)。腐食した面積はジュラルミンパネルの概ね16.0%と特定された。
【0119】
また、上記パネルを糊残りの存在について目視観察した。図4は、許容されない量の糊残りの一例を示す。ある例における糊残りが、許容可能な(ほとんど全くない)量であるか、許容されない量であるかは、表1~3に示されている。
【0120】
基本的製造方法
ポリオキシアルキレンポリマー、架橋剤、難燃剤、粘着付与剤、安定剤及び阻害剤を、ポリオキシアルキレン系接着剤の均一な混合物になるまでブレードミキサーで混合する。いくつかの実施形態では、固体状の粘着付与剤は、他の材料を加える前に、ポリオキシアルキレンポリマーに溶解させ、加熱することができる。或いは、固体状の粘着付与剤は、他の材料を加える前に、液状のリン酸エステル難燃剤(例えば、リン酸トリクレシル)に溶解させ、加熱することができる。
【0121】
ポリオキシアルキレン系接着剤の硬化反応は、ヒドロシリル化触媒の存在下においてポリオキシアルキレンポリマーのアルケニル基をヒドロシリル基によりヒドロシリル化して架橋を進行させることによって行われる。
【0122】
上述した構成成分を含む組成物は、加熱により硬化する。すなわち、アルケニル基(各分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するポリオキシアルキレンポリマー)が、ヒドロシリル化触媒の存在下で、各分子中に平均して2個若しくはそれより多いヒドロシリル基を含有する化合物のヒドロシリル基(Si-H結合を有する基)によってヒドロシリル化されることで架橋が進行し、それにより硬化が完了する。この硬化物は、粘着付与樹脂を添加しなくても、又は少量の粘着付与樹脂の添加により、タック性(他の物体に接着する機能)を示すことによって特徴づけられる。これは低活性であり、様々な物質、例えば、水、金属、プラスチック材料などと接触しても反応しない。この場合の熱処理条件に関しては、上記組成物を50~200℃(好ましくは100~160℃)で約0.01~24時間(好ましくは0.05~4時間)加熱することが好ましい。
【0123】
次いで、上記混合物は、例えば、一般に公知のコーティング装置(例えば、グラビアコーター、キスコーターやコンマコーターなどのロールコーター、スロットコーターやファウンテンコーターなどのダイコーター、スクイズコーター、カーテンコーターなど)に適用することができる。
【0124】
一実施形態では、上記混合物は裏打ちフィルムに塗布され、次いで硬化される。他の実施形態では、混合物のいくつかの層を裏打ちフィルム上に付加してもよく、ここで各層は同一の又は異なる混合物を含み得る。
【0125】
コアフィルムの組込み
上記の基本的製造方法により混合物を調製し、裏打ちフィルムに塗布し、次いで硬化させる。次いで、裏打ちフィルムに接していない側の混合物上にコアフィルムを積層して、複合層Aを形成する。
【0126】
別のステップにおいて、上記の基本的製造方法により混合物を調製し、工程ライナーフィルム11に塗布し、次いで硬化させて複合層Bを形成する。複合層Bに用いられる混合物は、複合層Aに用いられるものと同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0127】
層Bを層A上に積層する。工程ライナーフィルム11は、任意に、剥離により除去され襟る。こうして最終ガスケット1が得られ、これは所望によりバンドルロールに巻き上げることができる。
【実施例
【0128】
例1
構成成分Aとしてのポリオキシアルキレンポリマーと、構成成分Bとしてのヒドロシリル化合物(ヒドロシリル基の量と構成成分Aとしてのポリオキシアルキレンポリマー中のアルケニル基の量との官能基比が1:2となる量)と、構成成分Cとしてのヒドロシリル化触媒(構成成分A中のアルケニル基1モル当たり0.04モルに相当する量)と、構成成分Dとしてのリン酸トリクレシル(TCP)(構成成分A100重量部当たり30重量部)と、ロジンペンタエリスリトール(構成成分A100重量部当たり20重量部)と、ポリリン酸アンモニウム(APP)(構成成分Aの総量100重量部当たり50重量部)とを含有する組成物を、PTFEフィルムのナトリウムエッチング面に、接着剤厚さが450μmとなるように塗布し、130℃で10分間熱処理した。その上に、両面NaエッチングPTFEフィルム(50μm)を配置した。同じ混合物を、PETフィルム剥離シートの剥離処理面に塗布し、130℃で10分間熱処理し、次いでこれをNaエッチングPTFEフィルム表面に積層した。
【0129】
【表1】
【0130】
【表2】
【0131】
【表3】
【0132】
表1~3における各構成成分の量は、phr単位で計量した。
接着性残留物:〇は、糊残りがほとんど又は全くないことを示し、×は、許容できない量の糊残りを示す。
【0133】
表1~3
例1~17を、表1~3のように調製した。リストされた各カテゴリー(ポリマー、難燃剤、粘着付与剤、架橋剤、安定剤、阻害剤、及び触媒)における各タイプの材料(ポリオキシレン系接着剤、ポリリン酸アンモニウム、リン酸エステル、重合ロジン、テルペンフェノール、フェノール樹脂、安定化ロジンエステル、ヒドロシラン、HALS、トリアジン紫外線吸収剤、フェノール系酸化防止剤、アルキレンアルコール、及びカールシュテット触媒)の量を、phr単位で計量し、各試料を上記基本的製造方法により製造し、130℃で10分間硬化させた。粘着付与剤の酸価(TF特性)は、mgKOH/gで測定した。接着剤の弾性率は、Rheometrics Co.,Ltd.製の動的粘弾性測定装置「ARES」により、厚さ約1.5mmの試料および直径7.9mのパラレルプレートジグを用いて、40℃にて周波数1Hz、0.01%ひずみの剪断モードで測定することにより、剪断貯蔵弾性率G’の値を得た。各例について、最初の弾性率を測定し、少なくとも2週間66℃/80%RHで貯蔵後の弾性率を測定した。腐食試験は、各例につき5%NaCl(重量%/重量%)の塩溶液を使用して温度35℃で250時間行い、次いで試料を目視観察して腐食された面積の百分率を特定した。最後に、次いで試料を剥離し、糊残りを検査した。
【0134】
表1~3に示されるように、本発明の実施形態(例1~9)は金属表面への適用において腐食耐性を示す。
【0135】
本発明の実施形態をある程度特定して記載してきたが、本開示は例示としてのみ行われ、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、パーツの構成や配置の詳細において種々の変更を行い得ることを理解すべきである。さらに、ある特徴は単にいくつかの実施態様の1つとして開示され得る一方、このような特徴は、任意の所定又は特定の用途に望ましく且つ有利であり得るように、他の実施態様における1つ若しくは複数の他の特徴と組み合わせ得る。このように、本開示により提供される主題の幅及び範囲は、上記で明示的に記載された実施形態のいずれによっても限定されるべきではない。むしろ、上記範囲は、下記のクレーム及びそれらの同等物によって定義されるべきである。
【0136】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定を意図するものではない。本明細書で使用される単数形「a」、「an」及び「the」は、そうでないことが文脈により明らかに示されていない限り、複数形も含むことを意図している。
【0137】
また、用語「含んでいる(including)」、「含む(includes)」、「有している(having)」、「有する(has)」、「伴う(with)」又はこれらの変形は、詳細な説明及び/又は特許請求の範囲において使用される限り、このような用語は用語「含む(comprising)」と同様に包括的であることを意図する。
【0138】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含めて)は、本発明の実施形態が属する技術分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。さらに、一般的な辞書で定義されているような用語は、関連する技術における意味と同じ意味を有すると解釈すべきであり、本明細書において明示的にそのように定義しない限り、理想化又は過度に形式化された意味に解釈されないことが理解される。
【0139】
特に示さない限り、本明細書及び特許請求の範囲において、材料の量、分子量などの特性、反応条件などを表すために用いられる全ての数は、全ての場合、用語「約」によって修飾されているものと理解される。したがって、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載された数値パラメーターは、これに反する指示のない限り、得ようとする所望の特性に応じて変わり得る近似値である。数値の範囲及びパラメーターは近似値であるが、にもかかわらず、具体例において記載される数値はできるだけ正確に報告する。とはいえ、いかなる数値も、それらの試験測定において見出される標準偏差から必然的にもたらされる特定の誤差を本質的に含有する。さらに、本明細書において開示する全ての範囲は、その中に含有されるありとあらゆる部分的範囲を包含するものと理解される。最低限でも、均等論の適用を特許請求の範囲に限定しようとしてではなく、各数値パラメーターは、少なくとも、報告された有効桁数に照らして、通常の丸め手法を適用して解釈すべきである。
【0140】
本明細書に記載されている全ての方法は、本明細書中に別段の指示のない限り、又は他に文脈から明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で行うことができる。本明細書により提供されるありとあらゆる例、又は例示的な文言(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をよりよく説明することを意図し、いずれのクレームに限定を課すものでもない。本明細書中のいかなる文言も、クレームされていない何れかの要素が本発明の実施に不可欠であることを示すものとして解釈されるべきではない。
【0141】
ここに開示された実施形態の完全な理解を提供するために、数々の特定の詳細、関係、及び方法が記載されていることを理解されたい。とはいえ、ここに開示される主題は、1つ若しくは複数の具体的な詳細なしで、又は他の方法により実行できることを、当業者は容易に認識するであろう。別の例では、周知ではない構造又は操作を不明瞭にすることを避けるために、周知の構造又は操作の詳細は示されていない。本明細書の開示においてグループ化された代替の要素又は実施形態は、限定として解釈されるべきではない。各グループメンバーは、個別に、又は該グループの他のメンバー若しくは本明細書に見出される他の要素と任意に組み合わせて、参照及びクレームされ得る。さらに、本明細書に開示された方法を実行するにあたり、例示された全ての行為又は事象が必要とされるわけではない。グループの1つ若しくは複数のメンバーは、利便性及び/又は特許性の理由で、あるグループに包含され得るか又は削除され得ることが予測される。任意のこのような包含又は除去がなされるとき、本明細書にはこのように改変されたグループが包含されるとみなされ、したがって添付の特許請求の範囲において使用される全てのマーカッシュグループの書面による説明を満たす。
【0142】
本明細書に記載された特定の実施形態には、本発明を実施するために本発明者らが知る最良の態様が含まれている。もちろん、これらの記載された実施形態の変形は、上述の説明を読めば当業者には明らかとなる。本発明者は、当業者がこのような変形を適切なものとして採用することを予想し、本明細書に特に記載されている以外の方法で本発明を実施することを意図する。
【0143】
したがって、特許請求の範囲には、準拠法により許容されるように、特許請求の範囲に記載された主題の全ての改変物及び均等物が含まれる。さらに、本明細書において別段の指示のない限り、又は文脈から明らかに矛盾しない限り、上述した要素の全ての可能な変形における任意の組合せが意図される。
【0144】
最後に、本明細書に開示された実施形態は、特許請求の範囲の思想の例示であることを理解されたい。採用され得る他の改変は、特許請求の範囲内である。このように、限定ではなく例として、本明細書による教示に従って代替の実施形態を利用し得る。したがって、特許請求の範囲は、精密に示され、記載されたような実施形態に限定されない。

図1
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図4c