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特許7498130目標追跡支援を用いた、沖合での船から船への吊り上げ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】目標追跡支援を用いた、沖合での船から船への吊り上げ
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/22 20060101AFI20240604BHJP
   B63B 27/10 20060101ALI20240604BHJP
   B63B 49/00 20060101ALI20240604BHJP
   B66C 23/52 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B66C13/22 Y
B63B27/10 Z
B63B49/00 Z
B66C23/52
【請求項の数】 19
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021038025
(22)【出願日】2021-03-10
(62)【分割の表示】P 2019547416の分割
【原出願日】2018-02-28
(65)【公開番号】P2021104901
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2021-04-08
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-06
(31)【優先権主張番号】62/464,942
(32)【優先日】2017-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519311226
【氏名又は名称】ジェイ. レイ マクダーモット, エス.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ガイモン, デーヴィッド リー
(72)【発明者】
【氏名】マクリーン, マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ヒラワン, リノヴ
【合議体】
【審判長】小川 恭司
【審判官】中屋 裕一郎
【審判官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-36071(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0296519(US,A1)
【文献】特開昭59-53394(JP,A)
【文献】特開2006-201030(JP,A)
【文献】特開2015-214414(JP,A)
【文献】国際公開第2015/145725(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00 - 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンを有する第1の船舶と第2の船舶のための方法であって、
前記第1の船舶上に置かれた目標追跡デバイスを用いて前記第2の船舶上に配置された光学的目標を追跡することと、ここで、前記目標追跡デバイスは、前記クレーンのブームから距離をおいてオフセットされた第1の位置に取り付けられたベースと、前記ベースに取り付けられて前記ベースに対して回転可能な回転取付け台と、前記回転取付け台に取り付けられて前記光学的目標を認識するよう構成された光学的ビューアとを含んでいて、前記クレーンの回転運動の間、前記目標追跡デバイスの前記ベースが前記第1の船舶のデッキにつながれた前記第1の位置に固定されることにより、前記光学的ビューアの動きが前記クレーンの回転運動から独立し、前記光学的目標が、吊り上げられるまたはつり降ろされる対象物から距離をおいてオフセットされた第2の位置に取り付けられていて、
前記目標追跡デバイスを使用して、前記光学的目標の追跡に応じてデータを生成することと、
前記目標追跡デバイスを使用して生成された前記データに基づいて、前記第1の船舶と前記第2の船舶との間の相対運動を決定することと、
前記ブームを指示された位置に向けて動かす前に、前記相対運動に基づいて、前記指示された位置における、前記クレーンの吊り上げ能力または前記クレーンのフックの利用可能なフック高さのうちの1以上を決定することと、
前記対象物を前記指示された位置から吊り上げること、または前記指示された位置へつり降ろすことと、
前記目標追跡デバイスを使用して、前記クレーンの前記フックの移動経路を定義する第2の光学的目標を認識することと、
ディスプレイに前記移動経路を表示することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記目標追跡デバイスを使用して生成された前記データが、前記目標追跡デバイスと前記光学的目標との間の距離を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記目標追跡デバイスを使用して生成された前記データが、軸と前記目標追跡デバイスから前記光学的目標への視線との間の相対角度を示し、前記方法が前記第1の船舶と前記第2の船舶との間の前記相対運動を示す情報を前記ディスプレイに表示することをさらに含み、前記ディスプレイがヘッドアップディスプレイである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記指示された位置が前記第1の船舶における吊り上げられる前記対象物を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記指示された位置が前記第2の船舶における前記対象物のつり降ろし位置を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記対象物が船から船への通路の端である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ディスプレイがヘッドアップディスプレイである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記目標追跡デバイスを使用して生成されたデータに基づいて、前記クレーンのベースと前記指示された位置との間の水平距離を決定することと、
前記ブームを前記指示された位置に向けて動かす前に、前記指示された位置における、前記利用可能なフック高さまたは前記クレーンの吊り上げ能力のうちの1以上を前記ヘッドアップディスプレイに表示することと
をさらに含前記指示された位置が前記第2の船舶に位置付けられた前記光学的目標に隣接している、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記目標追跡デバイスを使用して生成された前記データに応じて、前記第1の船舶と前記第2の船舶との間の前記相対運動を補償することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
クレーンを有する第1の船舶と第2の船舶のための方法であって、
前記第1の船舶上に置かれた目標追跡デバイスを用いて前記第2の船舶上に配置された光学的目標を追跡することと、ここで、前記目標追跡デバイスは、前記クレーンのブームから距離をおいてオフセットされた第1の位置に取り付けられたベースと、前記ベースに取り付けられて前記ベースに対して回転可能な回転取付け台と、前記回転取付け台に取り付けられて前記光学的目標を認識するよう構成された光学的ビューアとを含んでいて、前記クレーンの回転運動の間、前記目標追跡デバイスの前記ベースが前記第1の船舶のデッキにつながれた前記第1の位置に固定されることにより、前記光学的ビューアの動きが前記クレーンの回転運動から独立し、前記光学的目標が、吊り上げられるまたはつり降ろされる対象物から距離をおいてオフセットされた第2の位置に取り付けられていて、
前記追跡することに応じて、前記目標追跡デバイスを使用して、
前記目標追跡デバイスと前記光学的目標との間の距離、および
軸と前記目標追跡デバイスから前記光学的目標への視線との間の相対角度
を示すデータを生成することと、
前記目標追跡デバイスを使用して生成された前記データに基づいて、前記第1の船舶と前記第2の船舶との間の相対運動を決定することと、
前記ブームを指示された位置に向けて動かす前に、前記相対運動に基づいて、前記指示された位置における、前記クレーンの吊り上げ能力または前記クレーンのフックの利用可能なフック高さのうちの1以上を決定することと、
前記対象物を前記指示された位置から吊り上げること、または前記指示された位置へつり降ろすことと、
前記目標追跡デバイスを使用して、前記クレーンの前記フックの移動経路を定義する第2の光学的目標を認識することと、
ディスプレイに前記移動経路を表示することと
を含む、方法。
【請求項11】
前記第1の船舶と前記第2の船舶との間の前記相対運動を示す情報を前記ディスプレイに表示することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ディスプレイがヘッドアップディスプレイである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ディスプレイがヘッドアップディスプレイである、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記目標追跡デバイスを使用して生成されたデータに基づいて、前記クレーンのベースと前記指示された位置との間の水平距離を決定することと、
前記ブームを前記指示された位置に向けて動かす前に、前記指示された位置における、前記利用可能なフック高さまたは前記クレーンの吊り上げ能力のうちの1以上を前記ヘッドアップディスプレイに表示することと
をさらに含前記指示された位置が前記第2の船舶に位置付けられた前記光学的目標に隣接している、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記目標追跡デバイスを使用して生成された前記データに応じて、前記第1の船舶と前記第2の船舶との間の前記相対運動を補償することと、
前記対象物の吊り上げまたはつり降ろしを実行する間に、前記補償することを実行することと
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記光学的目標が光学格子である、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
システムであって、
クレーンと、
前記クレーンに結合されたコントローラと、
第2の船舶上に配置された光学的目標と、
カメラと、
ディスプレイと
を備え、前記カメラが、前記クレーンのブームから距離をおいてオフセットされた第1の位置に取り付けられたベースと、前記ベースに取り付けられて前記ベースに対して回転可能な回転取付け台と、前記回転取付け台に取り付けられて前記光学的目標を認識するよう構成された光学的ビューアとを含んでいて、前記クレーンの回転運動の間、前記カメラの前記ベースが第1の船舶のデッキにつながれた前記第1の位置に固定されることにより、前記光学的ビューアの動きが前記クレーンの回転運動から独立し、前記光学的目標が、吊り上げられるまたはつり降ろされる対象物から距離をおいてオフセットされた第2の位置に取り付けられていて、前記カメラが前記光学的目標を追跡して前記光学的目標の追跡に応じてデータを生成するように構成されていて、前記コントローラが前記カメラから前記データを受け取って、前記データを受け取ったことに応じて、
前記カメラを使用して生成された前記データに基づいて、前記光学的目標と前記カメラとの間の相対運動を決定し、
前記ブームを指示された位置に向けて動かす前に、前記相対運動に基づいて、前記指示された位置における、前記クレーンの吊り上げ能力または前記クレーンのフックの利用可能なフック高さのうちの1以上を決定するように構成されていて、
前記カメラを使用して、前記クレーンの前記フックの移動経路を定義する第2の光学的目標の位置が前記システムに入力され、
前記ディスプレイが前記移動経路を表示する、システム。
【請求項18】
前記光学的目標は光学格子を含み、前記光学格子が前記カメラによって認識可能で識別可能な正方形状、三角形状または円形状を含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
コンピュータ可読媒体であって、実行時に、クレーンを有する第1の船舶と第2の船舶に関連して処理される、
前記第1の船舶上に置かれた目標追跡デバイスを用いて前記第2の船舶上に配置された光学的目標を追跡することと、ここで、前記目標追跡デバイスは、前記クレーンのブームから距離をおいてオフセットされた第1の位置に取り付けられたベースと、前記ベースに取り付けられて前記ベースに対して回転可能な回転取付け台と、前記回転取付け台に取り付けられて前記光学的目標を認識するよう構成された光学的ビューアとを含んでいて、前記クレーンの回転運動の間、前記目標追跡デバイスの前記ベースが前記第1の船舶のデッキにつながれた前記第1の位置に固定されることにより、前記光学的ビューアの動きが前記クレーンの回転運動から独立し、前記光学的目標が、吊り上げられるまたはつり降ろされる対象物から距離をおいてオフセットされた第2の位置に取り付けられていて、
前記目標追跡デバイスを使用して、前記光学的目標の追跡に応じてデータを生成することと、
前記目標追跡デバイスを使用して生成された前記データに基づいて、前記第1の船舶と前記第2の船舶との間の相対運動を決定することと、
前記ブームを指示された位置に向けて動かす前に、前記相対運動に基づいて、前記指示された位置における、前記クレーンの吊り上げ能力または前記クレーンのフックの利用可能なフック高さのうちの1以上を決定することと、
前記目標追跡デバイスを使用して、前記クレーンの前記フックの移動経路を定義する第2の光学的目標を認識することと、
ディスプレイに前記移動経路を表示することと
のオペレーションを引き起こす命令を含む、コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によって本明細書に組み込まれている、2017年2月28日に出願された米国特許仮出願第62/464,942号の利益を主張するものである。
【0002】
本開示の実施形態は、一般に、クレーンを使用した対象物の移動を容易にするための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
船から船への移動(STS)作業は、静止中または航行中の、互いに並んだ航洋船間の貨物の移動である。この作業は、典型的には、吊り上げデバイス、通常はクレーンを利用して実行される。この作業は、典型的には洋上で実行されるので、天候や海況によって両方の船舶に、うねり、動揺、ヒーブ、ピッチ、ヨー、およびロールが起こり得る。典型的には、両船舶は互いから分離されており、両船舶間の相対水平距離は、たとえば、特に自動位置制御、錨、またはロープを使用して維持される。そのため、各船舶の動的な動きは互いに独立している。
【0004】
大抵の動態的変動は、吊り上げられる製品のまわりに「セーフゾーン」(たとえば、偶然の衝突を回避するための適切な間隔)を設けることによって制御され得るが、上下動は依然として深刻であり、したがって、相対的な船舶運動に起因して荷物が船舶デッキに激しくぶつかるときには危険な状況につながり得る。この「荷物スラミング」は、荷物/製品および/または船舶に対する損傷という結果をもたらし得る。これに起因して、STS作業は、典型的には、リスクを低減するために好天の条件に限定される。STS作業を妨げる悪天候の条件の場合には、特定の作業のコストが、作業開始可能な条件に改善するまで両船舶が待機することに起因して上昇する。
【0005】
「荷物スラミング」リスクは、現在は、いくつかの限定された場合には、クレーンの張力一定モードを使用することによって緩和され、このモードは、ケーブルの張力の変動を検知するセンサを使用して、張力を一定値またはほぼ一定値に保つように作用するものである。しかしながら、この特徴を利用できるのはいくつかのクレーンのみであり、特定の使用事例および限られた容量に制限されている。
【0006】
荷物スラミングを管理する別の従来の方法には、ディレーティング図表を使用して、クレーン船舶と補給船舶またははしけのデッキの間の相対速度によって海洋クレーンの負荷容量を制限するものがある。相対速度は波高によって導出され、特に波高は、多くの場合オペレータによって視覚的に推定されるので、許容される負荷は典型的には控えめになり、したがって正確ではない。従来のディレーティング図表は、図7に示されるように、典型的には所与のクレーンタイプに関するディレーティングされた負荷容量を判定するために使用される。ディレーティング図表は、推定された波高および吊り上げ半径に対応する許容負荷を与えるものである。
【0007】
他の従来技術には、船舶間の相対運動に対処するためにアクティブヒーブコンペンセータ(AHC)を使用するものがある。AHCは、各船舶上に配置された運動基準ユニット(MRU)のセンサから収集された運動のリアルタイム演算によってフック高さを補償するように使用されるデバイスである。しかしながら、そのような技術では、各船舶に運動基準ユニットセンサを設置して、情報はその間を無線で伝送する必要がある。そのような無線データリンクは中断しがちであり、無線の運動基準ユニットシステムの信頼性が低下する。したがって、無線の運動基準ユニットセンサは、上記で論じた「荷物スラミング」のリスクに確実に対処することはできない。
【0008】
したがって、荷物の吊り上げ作業用クレーンのディレーティングのためのリアルタイムでの相対運動測定を含む、ただし、これに限定されない、クレーンを用いた対象物の移動を容易にするための新規の方法および装置が必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
本開示の様態は、クレーンを使用した対象物の移動を容易にするための装置および方法を含む。開示される装置は、第1の位置のクレーン上またはその近くに取り付けられた目標追跡デバイスと、対象物のつり降ろし位置の近くに配置された目標とを含む。目標追跡デバイスおよび目標により、2つの位置の間の相対運動のリアルタイム判定が容易になる。目標追跡デバイスと目標とを使用する方法も開示される。
【0010】
一態様では、クレーンを有する第1の船舶と第2の船舶との間のつり降ろし作業または吊り上げ作業を実行する方法が提供される。この方法は、第1の船舶上に配置された目標追跡デバイスを用いて第2の船舶上に置かれた目標を追跡することと、目標追跡デバイスによって生成されたデータに基づいて、第1の船舶と第2の船舶との間の相対運動を判定することと、目標追跡デバイスによって生成されたデータに応じて、第1の船舶と第2の船舶との間の相対運動を補償することとを含む。
【0011】
一態様では、クレーンを有する第1の船舶と第2の船舶との間のつり降ろし作業または吊り上げ作業を実行する方法が提供される。この方法は、第1の船舶上に配置された目標追跡デバイスを用いて第2の船舶上に置かれた目標を追跡することと、追跡することに応じて、目標追跡デバイスと目標との間の距離、および、垂直軸と、目標追跡デバイスと目標との間の視線との間の相対角度とを示すデータを生成することと、目標追跡デバイスによって生成されたデータに基づいて、第1の船舶と第2の船舶との間の相対運動を判定することと、相対運動に基づいてクレーンの吊り上げ能力を判定することとを含む。
【0012】
別の態様では、つり降ろし作業または吊り上げ作業を実行するためのシステムは、アクティブヒーブコンペンセータを結合されているクレーンと、目標追跡デバイスと、目標追跡デバイスによって追跡されるように構成された光学的目標と、目標追跡デバイスからデータを受け取り、データを受け取ることに応じて、アクティブヒーブ補償を提供するための命令をアクティブヒーブコンペンセータに送るように構成されたコントローラとを含む。
【0013】
上記で記述された本開示の特徴が詳細に理解され得るように、上記で簡単に要約された本開示のより詳細な説明が、いくつかが添付の図面に図示されている実施形態を参照することによって得られるであろう。しかしながら、本開示は、他の同様に有効な実施形態に適合し得るので、添付の図面は、本開示の例示的実施形態のみを示しており、したがって、本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A】本開示の一態様による、対象物を移動するクレーンの概略図である。
図1B図1Aの部分拡大図である。
図1C図1Aの部分拡大図である。
図2】本開示の一態様による目標追跡デバイスの概略図である。
図3図3A及び図3Bは、本開示の一態様による、ヘッドアップディスプレイ(HUD)上に示されるデータの概略図である。
図4図4A及び図4Bは、本開示の態様による表示情報を示す図である。
図5】本開示の一態様による、船から船への通路を示す図である。
図6】クレーンを有する船舶の概略平面図である。
図7】吊り上げ作業およびつり降ろし作業を容易にするために使用される従来のディレーティング図表を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
理解を容易にするように、各図に共通の同一要素を示すために、可能な場合は同一の参照符号が使用されている。1つの実施形態の要素および特徴は、さらなる記述なしで、他の実施形態に有利に組み込まれ得ることが予期される。
【0016】
本開示の態様は、クレーンを使用して対象物を移動するのを容易にするための装置および方法を含む。開示される装置は、第1の位置に取り付けられた目標追跡デバイスと、対象物を吊り上げる位置またはつり降ろす位置の近くに配置された目標とを含む。目標追跡デバイスおよび目標により、2つの位置の間の相対運動のリアルタイム判定が容易になる。目標追跡デバイスと目標とを使用する方法も開示される。
【0017】
図1Aは、本開示の一態様による、対象物103を移動するクレーン100を概略的に図示するものである。図1Bおよび図1C図1Aの部分拡大図である。図示されるように、クレーン100は、水116上にある第1の船舶102のデッキ101に置かれている。クレーン100は、第1の船舶102に隣接した第2の船舶104上に対象物103を置くか、またはそこから対象物103を取り除くように構成されている。対象物103は、あるいは本明細書では荷物と称される。クレーン100は、少なくとも運転室105、ブーム106、ジブ107、ホイストライン108、およびフック109を含む。クレーン100は、クレーン100の回動運動を容易にするため、または第1の船舶102のデッキ101との結合を容易にするために、架台上に取り付けられてよい。ホイストライン108およびそれに結合されたフック109を横方向に動かすために、任意選択のキャリッジ120が、ブーム106およびジブ107に沿って進む。
【0018】
第1の船舶102(したがってクレーン100)と第2の船舶104の間の相対運動を明らかにすることによって対象物103の移動を容易にするために、目標追跡デバイス110が利用される。目標追跡デバイス110は光学的目標111の位置を正確に測定する計器であり、対象物103などの対象物上に置かれるかまたは隣接してよい。目標追跡デバイス110は、一般にクレーン100の運転室105に取り付けられるが、デッキ上など他の取付け位置が使用されてもよい。光学的目標111は、第2の船舶104上で対象物103の近く(または対象物103が置かれることになっている位置の近く)に取り付けられる。したがって、目標追跡デバイス110が光学的目標111を追跡するので、目標追跡デバイス110(対応してクレーン100および船舶102)に対する第2の船舶104の追跡が生じる。一例では、光学的目標111は球状に取り付けられた逆反射体(SMR)であり、ボールベアリング上に鏡面を形成したものに類似している。別の実施形態では、光学的目標111は、目標追跡デバイス110によって認識可能な、正方形が互い違いになる光学格子である。光学格子用に(目標追跡デバイス110によって識別可能な)三角形または円など他の形状が利用され得ることに留意されたい。さらに、光学的目標111は、目標追跡デバイス110によって認識可能な異なるタイプのマーカでもよい。
【0019】
目標追跡デバイス110は、目標追跡デバイス110と光学的目標111の間の距離を判定するように構成されている。加えて、目標追跡デバイスは、同時に、運転室105の垂直軸または他の基準軸に対する視線(たとえば目標追跡デバイス110と光学的目標111の間の直線)の角度も判定してよい。
【0020】
一例では、目標追跡デバイス110は、内部のサーボモータによって、目標追跡デバイス110と光学的目標111の間の相対運動に応じて光学的目標111に向けて連続的に配向される。光学的目標111の上の対象物103の高さとその間の距離とを計算するために三角法の演算が実行される。第1の船舶102と第2の船舶104の間の相対運動を判定するために、目標追跡デバイス110と光学的目標111の間の距離の判定、対象物103と光学的目標111の間の距離、および光学的目標111への目標追跡デバイス110の視線の、運転室105の軸などの軸に対する角度が使用される。
【0021】
別の例では、目標追跡デバイス110は、光学的目標111として使用される光学格子の形状の間の距離を判定する。形状は目標追跡デバイス110によって識別可能なものである。形状の間の距離または形状のサイズは、目標追跡デバイス110によって、光学的目標111からの距離を判定するために使用される。たとえば形状の間の距離は既知であり得る。目標追跡デバイス110は、形状の間の距離を測定して、その間の既知の距離に関連づけ、目標追跡デバイス110からの光学的目標111の距離を判定するように構成されている。
【0022】
目標追跡デバイス110は光学的目標111の回転運動も判定し得る。一例では、目標追跡デバイス110は、光学的目標111の光学格子を形成するのに使用された対象物の間の距離および/または光学格子の既知の相対回転の画像に対する前記光学格子の画像の画像マッチングを判定することによって光学的目標111の相対回転を判定する。光学的目標111の判定された回転運動は、荷物103または船舶のデッキ上のつり降ろしエリアなどからの対象物の回転のオフセットを判定するために使用され得る。
【0023】
演算の実行を含むデータ処理は、コントローラ115または他のコンピュータデバイスによって実行される。一例では、コントローラ115は、運転室105の内部に配置されて、オペレータに対する情報をディスプレイに表示する。ディスプレイは任意選択でタッチスクリーンパネルでもよく、オペレータが、ディスプレイ、コントローラ115、および目標追跡デバイスと相互作用することを可能にする。さらに別の例では、ディスプレイはヘッドアップディスプレイ(HUD)でよい。
【0024】
目標追跡デバイス110および光学的目標111により、第1の船舶102と第2の船舶104の間の相対速度(たとえばある期間にわたって測定された位置の変動)を判定することができる。相対速度を判定すると、第1の船舶102と第2の船舶104の間の運動が、所与の荷物およびそのサイズなどが特定の吊り上げに対応して規定された運用範囲内にあるかどうかを評価することができ、それによって安全性が向上する。加えて、第1の船舶102と第2の船舶104の間の相対速度および/または相対運動は、クレーンおよびその吊り上げ能力のディレーティング係数を相対運動に基づいて判定するのに使用され得る。
【0025】
従来、ヒーブコンペンセータおよび関連システムは、ホイストライン108が通っているホイストまたはシリンダに対して作用する。図1Cを参照して、クレーン100は、代表的にブーム106に結合された例示的アクティブヒーブコンペンセータ112を含む。図示されるように、ブーム106がブーム106と一体化されたアクティブヒーブコンペンセータ112を含み得ること、またはブームがアクティブヒーブコンペンセータ112を用いて改造され得ることが予期される。アクティブヒーブコンペンセータ112は、ホイストライン108に接している限り、クレーン架台の内部または船舶102の内部など他のところに設置されてよい。アクティブヒーブコンペンセータ112は、吊り上げ作業中のアクティブヒーブ補償を容易にするために、1つまたは複数の電動機、油圧ポンプ、アキュムレータ、および/またはガスシステムを含む。アクティブヒーブコンペンセータ112はコントローラ115から信号を受け取る。コントローラ115は、吊り上げ作業中の対象物103と第2の船舶104の間の相対運動を低減するために、目標追跡デバイス110によって判定されたデータまたはコントローラ115によって受け取られたかもしくは計算されたデータに応じて、アクティブヒーブコンペンセータ112に、調整動作を実行するように命令する。アクティブヒーブコンペンセータ112の動作により、対象物103と、特に光学的目標111の位置における第2の船舶104のデッキとの間が、実質的に同期して動き、それによって荷物の衝撃が低減されるかまたは解消され、作業を実行するための有効な運用上の範囲が増加する。たとえば、従来、吊り上げる荷物サイズは、第1の船舶102と第2の船舶104の間の相対運動をもたらす水116の波高によって制限される。しかしながら、本明細書の方法および装置によって、波高が増加しても(すなわち2つの船舶の間の相対運動が増加しても)荷物を吊り上げることが可能になり、従来技術と比較して運用上の範囲が増加し得る。アクティブヒーブ補償は、クレーン100のホイストライン108に結合されたホイスト(すなわちウィンチ)が、コントローラ115から受け取った信号に応じてヒーブ補償動作をすることによって達成され得ることも予期される。
【0026】
目標追跡デバイス110は、アクティブヒーブ補償を適用しなくても、第1の船舶102と第2の船舶104の間の相対運動を判定し得ることに留意されたい。たとえば、目標追跡デバイス110は、船舶の間の相対運動を判定して、オペレータが判定された相対運動に関連してクレーン100の吊り上げ能力のディレーティング係数を判定するのを支援することができる。ディレーティング係数は、制御システムによって自動的に判定されてよく、または、オペレータによって、相対速度および/または相対運動を基にディレーティング図表を使用して判定されてもよい。加えて、クレーン100および船舶102は水上に配置されているが、クレーン100は、代替として、陸上または沖合に固定された構造に配置され得ることが予期される。そのような例では、クレーン100は、トラックまたはふ頭などのモバイルプラットフォーム上に取り付けられてよく、または所定の場所に固定されてよい。クレーン100は、ジャッキで吊り上げる起重機船、ジャッキで吊り上げる沖合のプラットホーム、または沖合の浮きプラットホームにも取り付けられ得る。
【0027】
本開示の実装形態によれば、光学的目標111以外の目標が利用され得ることも企図される。光学的目標111は、他の反射性材料を含み得、またはサイズ、量、および形状が異なり得る。
【0028】
他の態様では、2つ以上の光学的目標が利用され得ることが企図される。そのような例では、レーザまたは光学格子などの第2の光学的目標は、目標追跡デバイス110によって識別可能な波長またはグリッドパターンなどの署名を用いて、さらなるソースから出力され得る。光学的目標111が(たとえばつり降ろしまたは吊り上げ中の対象物103の直下にある)ハンギングロード下の領域など危険な環境に置かれることになっているとき、そのような構成は有効であり得る。この実施形態によれば、第2の船舶104のデッキなど作業デッキに居る人は、目標追跡デバイス110を光学的目標上へ向けるためにレーザポインタなどの光学的目標ソースを使用することができる(たとえば、オペレータは、目標追跡デバイス110によって認識される目標を「描く」ことができる)。目標追跡デバイス110が光学的目標を一旦認識すると、目標追跡デバイス110による将来の追跡のため、および運転室105のディスプレイでの観察のために、光学的目標の位置が登録される。別の実施形態では、第2の目標は、システムに入力される一連の座標点でよく、目標追跡デバイス110によって認識可能なものである。
【0029】
目標が一旦登録されると、目標はシステムの記憶装置に記憶され得、したがって、オペレータはレーザポインタを用いる照明を継続する必要はない。たとえば、目標は、コントローラによる画像マッチング用の画像として記憶されてよい。したがって、目標は、即時の吊り上げ作業またはつり降ろし作業以降のために記憶され得る。そうすることで、クレーン運転者は、(ヘッドアップディスプレイなど、クレーン運転者のディスプレイ上で見える)記憶された目標によって与えられ得る目印により、クレーンフック109またはそこからつり下げられた対象物103をナビゲートすることができる。したがって、フック109を、通常はナビゲートすることができない位置、または少なくとも周囲の物との偶然の衝突の可能性を排除できない位置へ案内することができる。フックは、所望位置へ、手動で、準手動(すなわちコンピュータ支援)で、または自律的に案内され得る。そのような機能は、沖合の作業と、クレーン100または対象物103の一方または両方が陸上またはプラットホーム上に配置されている状況での作業との、両方に有益かつ適用可能であることが予期される。したがって、本明細書では、方法および装置は沖合の作業の状況で説明されてきたが、陸の作業も予期される。
【0030】
図2は、本開示の一態様による、レーザを使用する目標追跡デバイス210の概略図である。本明細書で利用され得る例示的レーザ追跡装置は、英国ウォリックシア州のFARO Technologies UK Ltd.から入手できるVantageSおよびVantageEである。他のレーザ追跡装置が利用され得ることを理解されたい。
【0031】
目標追跡デバイス210は、ベース220、回転取付け台221、および光学ユニット222を含む。ベース220は、クレーン100の運転室105などの表面に取り付けられるように構成されている。回転取付け台221はベース220上に取り付けられており、垂直軸Zのまわりで回転する。光学ユニット222は回転取付け台221の内部に置かれており、軸Xのまわりで回転する。光学ユニット222に含まれるレーザ発生源(図示せず)が、レーザ223を光学的目標111の方へ投射する。目標追跡デバイス210は、レーザ223と光学的目標111の間の運動に応じてレーザ223を連続的に向けるように、回転取付け台221と光学ユニット222の相対位置を調節する。レーザ223は、球状に取り付けられた逆反射体(SMR)などの光学的目標111から反射され、目標追跡デバイス210と光学的目標111の間の距離の判定を容易にするために光学ユニット222によって受け取られる。光学ユニット222の中には、レーザ223と垂直軸Z(または別の軸)の間の相対角度を判定するために加速度計および/またはエンコーダなどの1つまたは複数の測定器も収容され得る。アクティブヒーブ補償または他の作業のための演算を実行するために、光学的目標111に対する相対角度および距離などの情報がコントローラ115などのコントローラに供給される。
【0032】
特定の実施形態では、目標追跡デバイス210の光学ユニット222は、光学的目標111を認識するように構成されたカメラシステムなどの光学的ビューアで置換されてよい。目標追跡デバイス210は、レーザ追跡とカメラシステムの組合せを使用してもよい。
【0033】
一例では、目標追跡デバイス210は、定義された視野を伴う光学的ビューアを有する。光学的目標111は、目標追跡デバイス210の視野に保たれる。目標追跡デバイス111の視野の範囲内の光学的目標111の相対位置と、ある期間にわたる光学的目標111の相対位置の変化とが、目標追跡デバイス210によって、第1の船舶と第2の船舶との間の相対運動および/または目標追跡デバイス210からの光学的目標111の距離を判定するために使用される。さらなる例では、光学的ビューアを伴う2つの目標追跡デバイス210が使用される。それぞれの目標追跡デバイス210が光学的目標111に向けられる。コントローラは、それぞれの目標追跡デバイス210から検知された画像を比較して、目標追跡デバイスからの光学的目標111の距離および/または光学的目標111の相対運動を判定する。
【0034】
図3Aおよび図3Bは、本開示の一態様によってヘッドアップディスプレイ(HUD)上に示されるデータの概略図である。図3Aは吊り上げ作業中のヘッドアップディスプレイ330aの図示であり、図3Bはつり降ろし作業中のヘッドアップディスプレイ330bの図示である。
【0035】
一態様では、目標追跡デバイス110によって得られたデータが編集されて、クレーン測定学からの他の情報と組み合わされる。一例では、目標追跡デバイス110によって得られたデータは、編集されて、ロープの繰り出し、ブーム角度、キャリッジの相対位置、または他のデータと組み合わされる。ヘッドアップディスプレイはまた、第2の船舶104における対象物103の吊り上げ作業またはつり降ろし作業を開始する理想時間を視覚的に図示するか、またはオペレータの制御入力を指図するか、またはアクティブヒーブコンペンセータによってもたらされた運動を図示するように構成されている。ヘッドアップディスプレイは、所与の位置における有効なフック高さも表示し得る。
【0036】
図3Aおよび図3Bを参照して、ヘッドアップディスプレイ330aおよびヘッドアップディスプレイ330bは、ライン331におけるフック停止位置(たとえばフックの最高位置)、ライン332における現行のフック位置、およびライン333における対象物103(図1Aに示される)の下接点を図示する。振動しているライン335によって図示されるように、つり降ろし面または吊り上げ面の相対位置は船舶間の相対運動によって変動する。つり降ろし面または吊り上げ面の、検知された最高の運動はライン334で示され、検知された最低の運動はライン336で示されている。所与の時間間隔にわたるライン335とライン336の間の相対距離は、システムによって、荷物とつり降ろし面または吊り上げ面の間の相対速度を判定するために使用される。一例では、ライン332~336は、ヘッドアップディスプレイ330aおよび330bにおいてリアルタイムで更新される。ヘッドアップディスプレイ330aおよび330bに与えられる情報は、オペレータがつり降ろし作業および吊り上げ作業を実行するのを支援する一方で、船舶デッキとつり降ろす/吊り上げる対象物との間の偶然の接触を緩和する。加えて、オペレータは、船舶デッキとつり降ろす/吊り上げる対象物の相対位置を、より容易に視覚化することができる。特定の実施形態では、荷物とつり降ろし面または吊り上げ面の間の相対速度または相対距離は、システムによって、被害を与える衝撃を防止するための、荷物を吊り上げる/つり降ろす最善の時間を判定するのに使用される。相対速度または相対位置は、荷物の衝撃を防止する一定の張力またはアクティブヒーブコンペンセータ112を制御するためにも使用され得る。したがって、作業が実行され得る運用上の範囲を、従来手法に対してさらに拡張することができる。
【0037】
たとえば、本明細書で説明された態様を使用すると、両船舶の相対速度が正確に導出され得、それによって、従来手法で使用される波高または相対運動の不正確な視覚評価を解消することにより、過度のディレーティングを緩和する。その上に、本明細書で説明された態様を使用すると、相対運動がリアルタイムで更新され、大気条件が変化しても運用上の範囲を超過しないことがさらに確実になる一方で、運用上の範囲の上限で作業することが依然として可能である。
【0038】
図4Aおよび図4Bは、本開示の態様による表示情報を図示するものである。図1に関して上記で説明されたように、本開示の目標追跡デバイスによって複数のナビゲーションポイントが認識され、かつ記録され得る。そのようなナビゲーションポイントは、クレーン運転者に見えるディスプレイにおいて可視であり得る。図4Aはディスプレイ440aを表現するものである。ディスプレイ440aは、クレーン100および船舶102の平面図を概略的に図示する。移動経路441は、複数のマークの位置442(5つ示されている)によって定義される。したがって、クレーン運転者は、フック109(図1Bに示されている)の所望の経路を容易に視覚化し、ディスプレイ440a上で、そのような経路441が辿られていることを確認することができる。コントローラが、オペレータに対してブームおよび旋回の制御を示唆し、経路441に沿ってフック109を導くのを支援することが予期される。経路441は対象物のまわりに適切な隙間をもたらすように選択され得、したがって、クレーン運転者は、従来技術を使用した場合よりも、フックをより近い配置へナビゲートすることが可能になる。
【0039】
図4Bはディスプレイ440bを表現するものである。ディスプレイ440bは、クレーン100および船舶102の平面図を概略的に図示する。ディスプレイ440bは、吊り上げられる対象物を示すマークの位置445を概略的に図示する。位置445は、オペレータによって、レーザを使用して、または別の適切なやり方でマークを付けられてよい。加えて、ディスプレイ440bは、クレーン100からマークの位置445への半径方向距離、その半径方向距離におけるクレーンの吊り上げ能力、クレーンフックの現行の位置におけるクレーン100の吊り上げ能力、および有効なフック高さを図示する。この情報および他の情報は、本明細書で説明された態様を使用して判定され、オペレータ向けにディスプレイ440bなどのディスプレイに表示することが予期される。したがって、オペレータは、任意の所与の位置におけるクレーンの範囲および負荷を、クレーン100のブーム/フックを移動させなくても正確に判定することができる。
【0040】
図5は、本開示の一態様による、船から船への通路550を図示するものである。通路550は、第1の船舶102と第2の船舶104の間に懸垂される。通路550の第1の端は第1の船舶102に固定される。通路550の第2の端は、クレーン100によって懸垂されて、第2の船舶104のアッパーデッキに隣接する。光学的目標111は、第2の船舶104上で通路550の第2の端に隣接しており、上記で説明されたように目標追跡デバイス110によって追跡される。第2の船舶104が第1の船舶102に対して動くとき、クレーン100は、本明細書で説明された実施形態によるアクティブヒーブ補償を利用して、通路550の第2の端と第2の船舶104の間の相対運動が最小になるように、通路550の第2の端を動かす。
【0041】
図6は、クレーン100を有する船舶102の概略平面図である。目標追跡デバイス110(図1Bに示されている)は、本明細書で説明された態様を使用して、クレーン100と船舶102のデッキ101上の1つまたは複数の示された位置660の間の距離を判定することができる。図示された位置660は単なる例であり、他の多くの位置660が、目標追跡デバイス110を使用する距離判定に適用可能であることに留意されたい。位置660はたとえば、荷物をつり降ろす位置または吊り上げる位置である。コントローラ115などのコントローラは、特定の吊り作業のための作業範囲を前もって決めるために、荷物の吊り上げ/つり降ろしに先立ってこれらの位置を認識することができる。別の用途では、コントローラは、前記荷物を船舶102のデッキに移動するのに先立って、荷物をつり降ろす位置を前もって決めてよい。コントローラは、たとえば、荷物の所与のセットのために、デッキ上の空間の利用を最適化することができる。またさらに、オペレータは、その間に荷物をつり降ろすのに先立って、位置660を示すことができる。次いで、指示された位置660は、荷物(複数可)をそこへ確保するための何らかの必要なデッキの修正を判定するために使用され得、それによって修正の時間およびコストを節約する。またさらに、指示された位置660には、荷物の吊り上げ中に人が立ち入るのを防止するための安全柵が築かれてよく、それによって安全性が大幅に向上する。
【0042】
別の実施形態では、目標追跡デバイス110はレーザ指示器に結合されている。目標追跡デバイス110は、人用のレーザ指示器を用いて、荷物のつり降ろし位置などの位置を照射して、位置660などの位置にマークを付けてよい。位置660は、上記で説明されたようにシステムによって判定されてよく、またはオペレータによって座標点がシステムに入力されてもよい。そのような位置を示すと、人が、荷物のつり降ろし位置を判定するためなど、従来の手段を使用して手動で位置を測定するのに必要な時間を短縮する。
【0043】
加えて、上記で説明されたように、クレーン100から位置660への距離を確認するとき、図4Bに示されたヘッドアップディスプレイ440bなどのディスプレイが、クレーン運転者に、位置660における最大のクレーン吊り上げ能力および最大のフック高さを提供する。位置660における最大のクレーン吊り上げ能力およびフック高さの表示を容易にするために、そのような情報を含有している記憶装置に記憶されたインデックスまたは表が参照されてよい。
【0044】
本明細書で説明された態様の利点は、クレーンが両船舶の動的上下動を補償することを可能にすることによって好天の「時間範囲」を拡大することを含む。したがって、本明細書で説明された態様を使用する船舶は、従来技術では動作不能の範囲において動作することができる。加えて、本明細書で説明された測定システムが与える相対速度は、吊り作業を実行するのに船舶間の運動が大きすぎないかということの評価ツールとして使用され得る。その上に、相対速度を判定すると、従来、オペレータが推定するとき必要とされた、ディレーティング曲線のより特殊な選択が可能になる。従来技術のオペレータの推定では、(船舶間の相対速度を過大評価することにより)クレーンの最大能力を利用できないか、または(相対速度を過小評価することにより)不安全な動作範囲に入ってしまう。
【0045】
本開示の態様は、従来手法に対するさらなる利点を提供するものである。たとえば、目標追跡デバイスを運転室に置くことにより、目標追跡デバイスは、光学的目標を追跡して、吊り上げ作業中でさえ光学的目標への視線を維持することができる。本明細書で説明された態様による目標追跡デバイスの位置は、吊り上げ作業の全体にわたって船舶間の関連する運動の継続的な監視および判定を容易にするものである。したがって、吊り上げられた対象物と、この対象物が吊り上げられた船舶とが、吊り上げ中に両者が互いに「激しくぶつかる」「荷物スラミング」が起きる状態になると、この状況に対処するために、オペレータに警報を与えることができ、または、代替として、「激しくぶつかる」状況を回避するために、目標追跡測定値に応じてAHCが採用されてもよい。
【0046】
前述のことは本開示の実施形態を対象とするものであるが、本開示の他の実施形態およびさらなる実施形態が本発明の基本的範囲から逸脱することなく考案され得、それらの範囲は以下の特許請求の範囲によって決定される。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7