(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】配線器具設置部材
(51)【国際特許分類】
H02G 3/12 20060101AFI20240604BHJP
H02G 3/02 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
H02G3/12 060
H02G3/02
(21)【出願番号】P 2021049450
(22)【出願日】2021-03-24
【審査請求日】2023-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121429
【氏名又は名称】宇野 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【氏名又は名称】小島 清路
(72)【発明者】
【氏名】池場 賢次
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】実開平7-3231(JP,U)
【文献】特開2009-085366(JP,A)
【文献】実開昭55-134719(JP,U)
【文献】特開平8-275336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/12
H02G 3/02
H02G 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線器具が取り付けられる取付部を有する本体部と、当該本体部を構造物に固定する固定具が挿通される挿通部を有する固定部と、を備えた配線器具設置部材であって、
前記固定部は、前記本体部における前記構造物に沿わされる第1沿い部の沿い方向に平行して前記本体部から延出した第1位置と、前記本体部における前記沿い方向と直交して当該本体部から延出した第2位置との、少なくとも一方の位置から他方の位置へと変位可能であり、
前記本体部と前記挿通部との間に、前記固定部の前記変位を可能とすべく、塑性変形させて折り曲げるための脆弱部が形成されていることを特徴とする配線器具設置部材。
【請求項2】
前記本体部における第1沿い部を前記構造物に沿わせた状態で、前記第1位置に位置する前記固定部で当該構造物に固定した際に、前記第1沿い部が前記構造物に当接するよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載の配線器具設置部材。
【請求項3】
前記本体部における第1沿い部の沿い方向と直交する第2沿い部を前記構造物に沿わせた状態で、前記第2位置に位置する前記固定部で当該構造物に固定した際に、前記第2沿い部が前記構造物に当接するよう構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の配線器具設置部材。
【請求項4】
前記固定部は、前記本体部の第1沿い部を挟むようにして、前記本体部から互いに離れる方向に延出する2つを有し、前記第1沿い部を前記構造物に沿わせた状態で、当該2つで固定されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の配線器具設置部材。
【請求項5】
前記脆弱部は、前記固定部の前記本体部からの延出方向と直交する方向に延びる長孔状の溝により形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の配線器具設置部材。
【請求項6】
前記本体部は、表側に前記配線器具が取り付けられる板状部と、当該板状部から前記表側と直交するように裏側に向けて延びる固定基部と、を備え、前記第1沿い部は前記固定基部の外面により形成され、
前記固定部は、前記固定基部から延出していることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の配線器具設置部材。
【請求項7】
表側に配線器具が取り付けられる取付部を有する四角形の板状部と、当該板状部の1の辺にて裏側に向けて折り曲げられた固定基部と、を備えた本体部を有し、
前記固定基部から、構造物に固定する固定具が挿通される挿通部を有する固定部が延出形成されており、
前記固定部は、塑性変形させて前記固定基部との連結箇所を折り曲げることで、前記本体部の1の辺の延びる方向と平行する平行位置と、前記本体部の1の辺と直交して隣接する辺に沿う方向に延びる直交位置との、少なくとも一方の位置から他方の位置へと変位可能であり、
前記固定部と前記固定基部との前記連結箇所は、前記隣接する辺の仮想延長先に設けられていることを特徴とする配線器具設置部材。
【請求項8】
前記本体部は、前記板状部の裏側に、有底箱状の配線ボックスを取着可能なボックス取着部を有することを特徴とする請求項6または請求項7に記載の配線器具設置部材。
【請求項9】
前記本体部は、前記取付部を開口側に有し、前記開口と対向する底壁と、当該底壁から立設し先端側に前記開口を形成する周壁と、を備えた有底箱状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の配線器具設置部材。
【請求項10】
前記固定部は、前記本体部における前記配線器具が取り付けられる表側面と平行する方向に延設された第1位置と、前記本体部の表側面と直交する方向に延設された第2位置と、に変位可能であり、かつ、前記第2位置で前記構造物に固定した際に、前記本体部における前記第1位置の延設方向と交差する方向に延びる端縁が前記構造物に当接するよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載の配線器具設置部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の壁材や住設機器、家具等の壁面にスイッチ、コンセント等の配線器具を設置するための配線器具設置部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物の間仕切壁や鏡台、洗面化粧台、OAデスク等の壁面には照明器具のスイッチ、電気製品のプラグが差し込まれるコンセント等の配線器具が設置されている。配線器具の設置には、特許文献1、2等に記載の配線器具設置部材が用いられている。配線器具を間仕切壁等に設置するときは、柱や胴縁に配線ボックス等の配線器具設置部材を取り付け、その内部にケーブルを引き込んでおき、柱や胴縁の室内側の面に壁材を立設する。その後、壁材において配線ボックス等の開口と対応する位置に透孔を形成し、透孔からケーブルを壁表側に引き出し、配線器具取付枠に保持されている配線器具と接続して、ケーブルを壁裏側に押し戻し配線器具を壁材に取り付けている
【0003】
ここで、特許文献1の配線器具設置部材である配線ボックスは、矩形箱状をなし、同じく矩形箱状のボックスカバーの内部に収容されており、また、ボックスカバーの上辺及び下辺からは上方及び下方に向けて突出する固定部が設けられていて、この上下の固定部にビスを取り付けて配線ボックスの側方に位置する柱に固定される。同様に、特許文献2の配線器具設置部材であるスイッチベースは、矩形板状のベース板の上端及び下端に取付孔が設けられていて、これにビスを挿通して同じく側方に位置する柱に固定される。なお、特許文献1、2の配線器具設置部材は、いずれも縦長向きに設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-034376号公報
【文献】実開平07-011821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1、2の配線器具設置部材のいずれも、柱等の構造物に設置するための固定部は配線器具設置部材の上辺及び下辺に設けられていて縦長向きに設置されるよう構成されており、したがって、同じ縦長向きの状態では、配線器具設置部材の上方あるいは下方に横長に設けられている胴縁には固定することはできず、同一の縦長向きで胴縁に固定するには別途に固定部材を用意するなどの必要があった。
【0006】
そこで、本発明は、別途に固定部材を用いたりすることなく、一定の向きにおいて、柱、胴縁等の異なる方向に設置されているいずれの構造物にも固定できる配線器具設置部材の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の配線器具設置部材は、配線器具が取り付けられる取付部を有する本体部と、当該本体部を構造物に固定する固定具が挿通される挿通部を有する固定部と、を備えたものであって、
前記固定部は、前記本体部における前記構造物に沿わされる第1沿い部の沿い方向に平行して前記本体部から延出した第1位置と、前記本体部における前記沿い方向と直交して当該本体部から延出した第2位置との、少なくとも一方の位置から他方の位置へと変位可能であり、
前記本体部と前記挿通部との間に、前記固定部の前記変位を可能とすべく、塑性変形させて折り曲げるための脆弱部が形成されている。
【0008】
請求項2の配線器具設置部材は、本体部における第1沿い部を前記構造物に沿わせた状態で、前記第1位置に位置する前記固定部で当該構造物に固定した際に、前記第1沿い部が前記構造物に当接するよう構成されている。
請求項3の配線器具設置部材は、本体部における第1沿い部の沿い方向と直交する第2沿い部を前記構造物に沿わせた状態で、前記第2位置に位置する前記固定部で当該構造物に固定した際に、前記第2沿い部が前記構造物に当接するよう構成されている。
【0009】
請求項4の配線器具設置部材は、固定部が、本体部の第1沿い部を挟むようにして、前記本体部から互いに離れる方向に延出する2つを有し、前記第1沿い部を前記構造物に沿わせた状態で、当該2つで固定される。
請求項5の配線器具設置部材は、脆弱部が、固定部の前記本体部からの延出方向と直交する方向に延びる長孔状の溝により形成されている。
【0010】
請求項6の配線器具設置部材は、本体部が、表側に前記配線器具が取り付けられる板状部と、当該板状部から前記表側と直交するように裏側に向けて延びる固定基部と、を備え、前記第1沿い部は前記固定基部の外面により形成され、固定部は、前記固定基部から延出している。
【0011】
請求項7の配線器具設置部材は、表側に配線器具が取り付けられる取付部を有する四角形の板状部と、当該板状部の1の辺にて裏側に折り曲げられた固定基部と、を備えた本体部を有し、
前記固定基部から、構造物に固定する固定具が挿通される挿通部を有する固定部が延出形成されており、
前記固定部は、塑性変形させて前記固定基部との連結箇所を折り曲げることで、前記本体部の1の辺の延びる方向と平行する平行位置と、前記本体部の1の辺と直交して隣接する辺に沿う方向に延びる直交位置との、少なくとも一方の位置から他方の位置へと変位可能であり、
前記固定部と前記固定基部との前記連結箇所は、前記隣接する辺の仮想延長先に設けられている。
【0012】
請求項8の配線器具設置部材は、本体部が、板状部の裏側に、有底箱状の配線ボックスを取着可能なボックス取着部を有する。
請求項9の配線器具設置部材は、本体部が、取付部を開口側に有し、前記開口と対向する底壁と、当該底壁から立設し先端側に前記開口を形成する周壁と、を備えた有底箱状に形成されている。
【0013】
請求項10の配線器具設置部材は、固定部が、本体部における前記配線器具が取り付けられる表側面と平行する方向に延設された第1位置と、前記本体部の表側面と直交する方向に延設された第2位置と、に変位可能であり、かつ、前記第2位置で前記構造物に固定した際に、前記本体部における前記第1位置の延設方向と交差する方向に延びる端縁が前記構造物に当接するよう構成されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、固定部が、本体部における構造物に沿わされる第1沿い部の沿い方向に平行する第1位置と、前記沿い方向と直交する第2位置とに、脆弱部を介して変位可能となっているから、別途に固定部材を用意したりすることなく、配線器具設置部材を一定の向きで、異なる方向に設置されている柱、胴縁等の構造物のいずれにも固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態の配線器具設置部材を固定部が第1位置にある状態について示し、(a)は斜め正面側から見た斜視図、(b)は斜め裏面側から見た斜視図である。
【
図2】
図1の配線器具設置部材を固定部が第2位置にある状態について示し、(a)は斜め正面側から見た斜視図、(b)は斜め裏面側から見た斜視図である。
【
図3】(a)は
図1に示す状態での配線器具設置部材の正面図、(b)は
図2に示す状態での配線器具設置部材の正面図である。
【
図4】
図1に記載した配線器具設置部材を胴縁に固定した状態を示し、(a)は斜め正面側から見た斜視図、(b)は斜め裏面側から見た斜視図である。
【
図5】
図2に記載した配線器具設置部材を柱に固定した状態を示す斜視図である。
【
図6】
図5における反対側の固定部を折り曲げた配線器具設置部材を柱に固定した状態を示す斜視図である。
【
図7】
図1の板状部にボックスが取着された配線器具設置部材を示し、(a)は斜め正面側から見た斜視図、(b)は斜め裏面側から見た斜視図である。
【
図8】本発明の実施形態の配線器具設置部材を用いて配線器具を壁材に設置した状態を示す平面図である。
【
図9】
図1の配線器具設置部材に取り付けられるケーブル保持体を示し、(a)は正面側から見た斜視図、(b)は裏面側から見た斜視図、(c)、(d)は配線器具設置部材に取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図10】本発明の実施形態の配線器具設置部材を縦長向きで構造物に取り付けた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態の配線器具設置部材を図に基づいて説明する。
配線器具設置部材は、スイッチ、コンセント等の配線器具を壁材等に設置するためのものである。本実施形態では、配線器具設置部材は、建物の柱及び水平方向に設置された胴縁に固定されるものを例示する。
【0017】
図1乃至
図3において、配線器具設置部材1は、配線器具が取り付けられる本体部10と、本体部10を構造物である建物の柱及び胴縁に固定する固定部30と、を備えている。
固定部30は、後述のように、第1位置P1と、これと直交する第2位置P2と、に変位可能となっている。なお、
図1及び
図3(a)は固定部30が第1位置P1に位置し、
図2及び
図3(b)は一方の固定部30が第2位置P2に位置するものを示す。
【0018】
本体部10は、略L字板状に形成された金属製であり、表側において配線器具50が取り付けられる取付部15を有する四角形の板状部11と、板状部11の1の辺である上辺11aにて表側面と直交するように折り曲げられ裏側に向けて延びる板状の固定基部12と、を備えている。板状部11は、高さ方向中間部に配線器具50が取り付けられる細長矩形状の取付開口13が形成され、取付開口13の長さ方向両端部には開口内に突出する突起片14が形成され、突起片14に取付部15が設けられている。各取付部15は、配線器具50を保持する配線器具取付枠51を取り付けるための取付ボルトが取着される螺着部で形成されている。取付開口13は、配線器具50を保持する
図8に示した配線器具取付枠51が取り付けられることにより複数の配線器具50が横並びに設置されるようになっている。なお、取付開口13は、1個の配線器具50のみが取り付けられるものであってもよい。
【0019】
図3において、板状部11の1の辺である上辺11aと直交して隣接する辺すなわち左右の側辺11b,11bの仮想延長先Yには、固定部30と固定基部12との連結箇所16が存在する。固定基部12は、左右一対の連結箇所16,16の間において平面で形成されている。平面からなる固定基部12の外面は、構造物に沿わせることができる第1沿い部17を形成している。
【0020】
板状部11の左右両側辺11b,11bのうちの一方である、固定部30が折り曲げられている側の側辺11bは、構造物に沿わせることが可能な端縁18に形成されている。この端縁18は、第2沿い部19aを構成している。板状部11の他方の側辺11bには、リング板状のフランジ20が形成されており、このフランジ20も構造物に沿わせることが可能となっている。このフランジ20は、第2沿い部19bを構成している。
【0021】
板状部11は、更に、後述する配線ボックス23を取着できるようになっており、各種配線ボックス23に対応して取着するために、一対のだるま孔、一対の長孔、一対の丸孔からなる複数組のボックス取着部21が形成され、それぞれボックス取着部21a、ボックス取着部21b、ボックス取着部21cとなっている。
【0022】
次に、固定部30は、本体部10の固定基部12の第1沿い部17を挟むようにして計2つ設けられており、本体部10から互いに離れる方向に延出している。固定部30は、本体部10を構造物に固定するための固定具であるビス33が挿通される長孔からなる挿通部31が形成されている。固定部30は、第1沿い部17を挟んで2箇所に設けられていることにより、第1沿い部17を構造物に沿わせて固定したとき、配線器具設置部材1は構造物に安定して保持される。
【0023】
固定部30は、
図1及び
図3(a)に示すように、本体部10における第1沿い部17の沿い方向Hに平行して本体部10から延出した第1位置P1と、
図2及び
図3(b)における右側の固定部30で示すように、本体部10における第1沿い部17の沿い方向Hと直交する方向Vに本体部10から延出した第2位置P2と、に変位可能となっている。なお、第1位置P1は、板状部11の1の辺である上辺11aの延びる方向と平行する平行位置でもあり、第2位置P2は、板状部11の1の辺と直交して隣接する辺である側辺11bに沿う方向に延びる直交位置でもある。
【0024】
本体部10の固定基部12と固定部30の挿通部31との間にある、固定基部12と固定部30との連結箇所16には、塑性変形させて折り曲げるための脆弱部32が形成されている。脆弱部32は、固定部30の本体部10からの延出方向と直交する方向に延びる長孔状の溝により形成されている。固定部30は、脆弱部32で折り曲げることにより、第1位置P1と第2位置P2とに変位させることができる。
【0025】
配線器具設置部材1は、
図4に示すように、本体部10の第1沿い部17を構造物である胴縁60に沿わせた状態で、第1位置P1に位置する2つの固定部30で固定した際には、第1沿い部17が胴縁60の下面60aに当接する。
【0026】
また、配線器具設置部材1は、
図5及び
図6に示すように、第1沿い部17の沿い方向Hと直交する第2沿い部19を構造物である柱61に沿わせた状態で、第2位置P2に位置する固定部30で構造物に固定した際に、第2沿い部19が柱61に当接する。ここで、
図5に示す場合は、一方の固定部30について第2位置P2で柱61に固定した際に、配線器具設置部材1は、第2沿い部19aである、本体部10における第1位置P1の延設方向と交差する方向に延びる端縁18が柱61に当接する。また、
図6に示す場合は、他方の固定部30について第2位置P2で柱61に固定した際に、配線器具設置部材1は、第2沿い部19bである、リング板状のフランジ20が柱61に当接する。
【0027】
このように構成された配線器具設置部材1は、本体部10が一定の横長の向きで、胴縁60と柱61とに取り付けることができる。すなわち、固定部30を第1位置P1に位置させることにより、
図4に示すように、配線器具設置部材1を胴縁60に取り付けることができ、このとき、板状部11は、取付開口13が横長の向きにあり、複数、
図3では2つの配線器具50は横並びに取り付けられる。また、固定部30を第2位置P2に位置させることにより、
図5及び
図6に示すように、配線器具設置部材1を柱61に取り付けることができ、このときも、板状部11は、取付開口13が横長の向きにあり、2つの配線器具50は横並びに取り付けられる。
【0028】
なお、固定基部12の中間位置には、固定部30と同様の挿通部22が設けられている。したがって、配線器具設置部材1は、固定部30が第1位置P1に位置するとき、胴縁60にはこれら3つの挿通部にビス33が挿通されて3点で固定することもでき、この場合はより安定して固定できる。なお、配線器具設置部材1は、中央の挿通部22のみの1点にビス33を螺着し固定することも可能である。また、配線器具設置部材1は、中央の挿通部22にビスを螺着して固定することによりセンターの位置合わせを行なうこともできる。
【0029】
ところで、上記実施形態の本体部10は、板状部11と固定基部12とで形成され、間仕切壁内のケーブル53が引き込まれる板状部11の裏側は空間になっているが、板状部11の裏側に覆い部を設けることにより、取付開口13に取付けられた配線器具50の背面側を覆うこともできる。
【0030】
図7は、板状部11の裏側に配線ボックス23が取着され、取付開口13に取付けられた配線器具50の背面側が覆われるものを示す。配線ボックス23は、開口と、開口と対向する底壁23aと、底壁23aから立設し先端側に開口を形成する周壁23bと、を備えた四角形の有底箱状に形成され、本体部10は、配線器具50の取付部15を開口側に有する有底箱状に形成されている。配線ボックス23は、種類に応じて、板状部11の複数組のボックス取着部21から選択して取付ねじを使用して板状部11に取着される。なお、配線ボックス23を取着したときに、
図7に示すように、本体部10の第2沿い部19bのリング板状のフランジ20のケーブル挿通孔20aと配線ボックス23の周壁23bに設けられたケーブル挿通孔23cとの孔位置が一致せず、ケーブル53の挿通に支障をきたすときは、第2沿い部19bは根元に形成されている脆弱部で表側に折り曲げて板状部11と同一平面状態に変更し、ケーブル挿通孔23cとの干渉を避けることができる。
【0031】
このように、配線器具設置部材1の本体部10は、配線器具50の設置状態に応じて、選択により、平板状の板状部11のみで形成したり、箱状に形成して配線器具50の背面側を覆うことができる。
【0032】
本実施形態の配線器具設置部材1を使用して間仕切壁に配線器具50を設置するには、配線器具設置部材1を胴縁60に取り付ける場合は、固定部30を第1位置P1に位置させ、柱61に取り付ける場合は、固定部30を第2位置P2に位置させた状態で、固定部30の挿通部31にビス33を挿通し、配線器具設置部材1を構造物に固定する。このとき、胴縁60に取り付けた場合は、
図3(a)または
図4に示すように、配線器具設置部材1の第1沿い部17が胴縁60の下面60aに当接する。また、柱61に取り付けた場合は、
図3(b)、
図5あるいは
図6に示すように、配線器具設置部材1の第2沿い部19が柱61に当接する。この状態において、配線器具設置部材1は、本体部10の板状部11が胴縁60の側面60bあるいは柱61の隣接する面61aと同一平面となるように固定する。
【0033】
次に、ケーブル53を配線器具設置部材1内に引き込む。その後、構造物の表側面及び本体部10の板状部11の表側面と当接するように間仕切壁である壁材62を立設する。壁材62を立設したら、壁材62に透孔63を形成し、本体部10の取付開口13の一対の取付部15,15を壁表に臨ませる。次いで、ケーブル53を壁表に引き出し、配線器具取付枠51に保持させた配線器具50に接続する。その後、ケーブル53を壁裏側に押し戻しつつ、
図8に示すように、本体部10の取付部15に取付ボルト52を螺着して配線器具取付枠51を取り付ける。これにより配線器具50は配線器具設置部材1に取り付けられる。本実施形態では、取付後、2つの配線器具50が横並びの状態に設置される。
【0034】
次に、本実施形態の配線器具設置部材1の作用を説明する。
配線器具設置部材1は、脆弱部32を折り曲げることにより、固定部30が、本体部10の第1沿い部17の沿い方向Hに平行する第1位置P1と、第1沿い部17の沿い方向Hと直交する第2位置P2とに、変位させることができるから、配線器具設置部材1を一定の横長の向きで、異なる方向に設置されている胴縁60及び柱61のいずれにも固定することができる。したがって、配線器具設置部材1を一定の向きで固定するときに、構造物の種類に応じて別途に固定部材を用意したりする必要はない。これにより、部品コストを低減できる。
【0035】
そして、
図3(a)及び
図4に示すように、固定部30の第1位置P1における延出方向は、一対の取付部15,15の対向方向Xと平行し、配線器具50を操作する際に負荷が加わる取付部15の並び方向に沿っており、構造物には2つの固定部30と本体部10の第1沿い部17との複数箇所で沿うため、配線器具設置部材1は、安定して固定することができる。また、
図3(b)及び
図5、
図6に示すように、固定部30は、片方のみが柱61と当接し固定されるが、本体部10の第2沿い部19aあるいは第2沿い部19bも柱61と当接するので、配線器具設置部材1は柱61に安定して固定し保持させることができる。
【0036】
ところで、壁材62に配線器具50を設置するときは、予め配線器具設置部材1内にケーブル53を配線しておく先行配線が行なわれ、壁材62を立設した後透孔63を形成して配線器具設置部材1の内部を壁表に臨ませている。しかし、透孔63から先行配線されているケーブル53を壁表に引き出すとき、ケーブル53の先端部は奥の壁裏側にあるので、透孔63から壁裏に手を差し入れて掴みにくく、本実施形態のように透孔63が小さければ更に掴みにくい。
【0037】
そこで、本実施形態では、
図9に示すケーブル保持体40を用いることもできる。
図9(a)、(b)において、ケーブル保持体40は、平行して対向する基板41aと挟持板41bとからなる連結部41と、基板41aの反対側面に垂直に立設する3枚の弾性片42aからなる保持部42と、で形成されている。基板41aと挟持板41bとは配線器具設置部材1の板状部11の板厚より僅かに小さい間隔に形成され、弾性的に基板41aと保持板41bとの間に配線器具設置部材1の板状部11の取付開口13の周縁を挿入してこれを挟持できるようになっている。挟持板41bは、基板41aより面積を小さくし、基板41aとの隙間内に板状部11の取付開口13の周縁を嵌め易くしている。
【0038】
保持部42は、所定間隔をおいて同一線上に2つの弾性片42aが並設され、これら2つの弾性片42aと所定間隔をおいて1つの弾性片42aが対向して設けられている。同一線上の2つの弾性片42aと対向する1つの弾性片42aとの間隔は、ケーブル53より僅かに小さい。ケーブル保持体40は、全体が、壁材62に形成された透孔63より小さく形成され、透孔63を通過させることができるようになっている。
【0039】
ケーブル保持体40を使用して壁裏に先行配線されているケーブル53を透孔63から壁表に引き出すときは、配線器具設置部材1を胴縁60または柱61に固定する。同時に、ケーブル53をケーブル保持体40の保持部42の弾性片42a間に嵌め込んで保持させる。次に、ケーブル53を保持させたケーブル保持体40を、
図9(c)、(d)に示すように、一対の取付部15,15の間から少なくとも一部が壁表に臨むようにして配線器具設置部材1に連結する。または、配線器具設置部材1を胴縁60または柱61に固定した後、ケーブル保持体50を、少なくとも一部が一対の取付部15,15の間から壁表に臨むようにして配線器具設置部材1に連結する。そして、ケーブル53をケーブル保持体40の保持部42の弾性片42a間に嵌め込んで保持させる。
【0040】
その後、壁材62を立設し、透孔63を形成する。次に、壁表から壁材62の透孔63に手を差し入れ、透孔63から臨むケーブル保持体40を把持し、配線器具設置部材1から分離して透孔63から引き出し、ケーブル保持体40とともにケーブル53を壁表に引き出す。このようにケーブル保持体40を用いることにより、壁裏のケーブル53の壁表への引き出しが容易となる。
【0041】
図9に示された配線器具設置部材1とケーブル保持体40とからは、次の配線器具設置装置の概念を把握することができる。
壁表側に設置される配線器具50が取り付けられる対向した一対の取付部15,15を少なくとも一組有し、壁裏に設置されて、壁材62に形成された透孔63により前記一組の取付部15,15の間を壁表に臨ませられる配線器具設置部材1と、
前記配線器具設置部材1と分離可能に連結する連結部41及び前記配線器具50に接続されるケーブル53を保持する保持部42を備え、前記連結部41で前記配線器具設置部材1に連結された状態で、前記透孔63を通過させて壁表側に取り出し可能な大きさに形成されたケーブル保持体40と、からなる配線器具設置装置。
【0042】
なお、ケーブル保持体40は、これを配線器具設置部材1に連結することにより、配線器具設置部材1から分離して透孔63から引き出すことなく、保持するケーブル53の先端部等を、一対の取付部15,15の間であって壁材62寄りに位置させることで、ケーブル53の取り出し易さを向上させることもできる。
【0043】
ところで、上記実施形態の配線器具設置部材1は、本体部10が横長の向きで構造物に固定され、2個の配線器具50は横並びに設置されているが、固定部30が第1位置P1、第2位置P2のいずれの場合も、本体部10が一般的な縦長向きで構造物に固定され、複数の配線器具50が縦並びに設置されるものとすることもできる。
【0044】
また、上記実施形態の配線器具設置部材1は、本体部10の固定基部12が板状部11から表側と直交するように裏側に向けて延びているが、固定基部12が板状部11と直交することなく同一平面で延びているものとしてもよい。
【0045】
このようなことから、配線器具設置部材1は、
図10(a)に示すように、固定基部12が板状部11と同一平面に延びており、かつ、2つの固定部30が第1位置P1にあって第1沿い部17が柱61に沿って当接し、板状部11が縦長向きで固定されたものとすることもできる。また、
図10(b)に示すように、固定基部12が板状部11と同一平面に延びており、かつ、1つの固定部30が第2位置P2にあって第2沿い部19が胴縁60に沿って当接し、板状部11が縦長向きで固定されたものとすることもできる。
【0046】
加えて、
図7に示す本体部10は、配線器具50の背面側を覆うべく、板状部11のボックス取着部21に取付ねじを使用して別体である配線ボックス23を取着し有底箱状に形成されているが、これに限られず、板状部11と配線ボックス23とが一体構造になっているものとしてもよい。また、配線ボックス23は、周壁23bが形成する四面のうち一面または二面が欠落していてもよく、更には、配線器具50の背面側を覆うものは、配線ボックス23等による有底箱状のものに限られない。
【0047】
更に、上記各実施形態の2つの固定部30側には、脆弱部32が設けられているが、いずれかの固定部30側にのみ脆弱部32を設け、片側の固定部30のみ折り曲げできるものとしてもよい。
【0048】
加えて、固定部30は、第1位置P1から第2位置P2、逆の、第2位置P2から第1位置P1への双方に変位可能なものであってもよいし、それらのいずれかのみに変位可能なものとしてもよい。
【0049】
そして、固定部30を第1位置P1と第2位置P2とに変位可能とすべく塑性変形させて折り曲げるための脆弱部32は、本体部10からの延出方向と直交する方向に延びる長孔状の溝により形成されているが、この形態に限られるものではなく、断面三角形状の凹溝などにより形成してもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、取付部15は、左右一対一組で形成されているが、一対複数組としてもよい。更には、一対の取付部15,15は上下方向に対向して設けてもよい。
【0051】
加えて、第2沿い部19は、板状部11の一方の側辺11bに端縁18からなる第2沿い部19aを形成し、他方の側辺11bにリング板状のフランジ20からなる第2沿い部19bを形成しているが、両側の側辺11bともに第2沿い部19aで形成してもよいし、いずれも第2沿い部19bで形成してもよい。また、第2沿い部19は、これらの端縁18及びフランジ20以外のもので形成してもよい。
【0052】
なお、上記実施形態の固定部30は、本体部10の第1沿い部17を挟むようにして、本体部10から互いに離れる方向に延出して一体に設けられているが、別体として本体部10に取り付けたものとすることもできる。別体の場合は、固定部30は金属製とし、本体部10は非金属製とすることもできる。
【0053】
本実施形態の構造物は、建物の間仕切壁の柱61及び胴縁60を例示しているが、本発明の構造物は、他に、洗面化粧台、収納ユニット等の住設機器の壁裏の柱、胴縁や、鏡台、タンス、ベッド、OAデスク、OA作業台等の家具の壁裏の柱、胴縁などを挙げることもできる。
【符号の説明】
【0054】
1 配線器具設置部材 23b 周壁
10 本体部 30 固定部
11 板状部 31 挿通部
11a 上辺(1の辺) 32 脆弱部
11b 側辺(隣接する辺) 33 ビス(固定具)
12 固定基部 50 配線器具
15 取付部 60 胴縁
16 連結箇所 61 柱
17 第1沿い部 H 第1沿い部の沿い方向
18 端縁(第2沿い部) V 第1沿い部と直交する方向
19、19a、19b 第2沿い部 P1 第1位置
20 フランジ(第2沿い部) P2 第2位置
23 配線ボックス Y 仮想延長先
23a 底壁