(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】熱交換器および冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
F28F 9/02 20060101AFI20240604BHJP
F28D 1/053 20060101ALI20240604BHJP
F25B 39/00 20060101ALI20240604BHJP
F25B 39/02 20060101ALI20240604BHJP
B23K 1/00 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
F28F9/02 301Z
F28F9/02 301D
F28D1/053 A
F25B39/00 A
F25B39/02 A
B23K1/00 330K
(21)【出願番号】P 2021050903
(22)【出願日】2021-03-25
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】日本キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】是澤 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】畠田 崇史
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0162917(US,A1)
【文献】特開2008-224213(JP,A)
【文献】特開2004-353882(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0038068(KR,A)
【文献】特開2004-225961(JP,A)
【文献】国際公開第2020/241056(WO,A1)
【文献】特表2008-542029(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0053389(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0015871(KR,A)
【文献】特開2013-134016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/02
F28D 1/053
F25B 39/00
F25B 39/02
B23K 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に伸び、冷媒が流通する熱交換チューブと、
前記熱交換チューブの前記第1方向の端部に接続され、内部に冷媒空間流路を有するヘッダと、を有し、
前記ヘッダは、前記冷媒空間流路が形成される中間板と、前記中間板の前記第1方向の一方側に配置される第1端板と、前記中間板の前記第1方向の他方側に配置される第2端板と、前記第1端板から前記第1方向の他方側に立ち上がる係止片と、を有し、
前記係止片は、前記中間板に形成された中間板孔部および前記第2端板に形成された第2端板孔部を通り、前記第2端板の前記第1方向の他方側の表面に沿って配置されている、
熱交換器。
【請求項2】
前記第1方向に直交する第2方向において、前記係止片の前記第2方向の一方側における前記中間板孔部の内面と前記係止片との間の第1距離は、前記係止片の前記第2方向の他方側における前記中間板孔部の内面と前記係止片との間の第2距離より大きく、
前記第2端板は、前記熱交換チューブが挿入される貫通孔部を有し、
前記第1距離は、前記貫通孔部の前記第2方向の一方側における前記冷媒空間流路の内面と前記貫通孔部との間の第3距離より小さい、
請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記係止片は、相互に間隔を置いて配置される第1係止片および第2係止片を有し、
前記第1方向に直交する第2方向において、前記第1係止片の前記第2方向の一方側における前記中間板孔部の内面と前記第1係止片との間の第4距離は、前記第1係止片の前記第2方向の他方側における前記中間板孔部の内面と前記第1係止片との間の第5距離より大きく、
前記第2係止片の前記第2方向の一方側における前記中間板孔部の内面と前記第2係止片との間の第6距離は、前記第2係止片の前記第2方向の他方側における前記中間板孔部の内面と前記第2係止片との間の第7距離より小さい、
請求項1または2に記載の熱交換器。
【請求項4】
第1部材の第1面と第2部材の第2面とがロウ材により面接合されて形成される冷媒流路と、
前記第1面および前記第2面の少なくとも一方において、前記冷媒流路の周囲に形成される第1溝部と、を有する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記第1溝部から外部に伸びる第2溝部を有する、
請求項4に記載の熱交換器。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の熱交換器を有する、
冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、熱交換器および冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷媒が流通する熱交換チューブと、熱交換チューブの端部に接続されるヘッダと、を有する熱交換器が利用されている。ヘッダは、冷媒の流通を中継する。熱交換器には、部品点数を抑制することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-277187号公報
【文献】特開2002-103027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、部品点数を抑制することができる熱交換器および冷凍サイクル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の熱交換器は、熱交換チューブと、ヘッダと、を持つ。熱交換チューブは、第1方向に伸び、冷媒が流通する。ヘッダは、熱交換チューブの第1方向の端部に接続され、内部に冷媒空間流路を有する。ヘッダは、中間板と、第1端板と、第2端板と、係止片と、を有する。中間板には、冷媒空間流路が形成される。第1端板は、中間板の第1方向の一方側に配置される。第2端板は、中間板の第1方向の他方側に配置される。係止片は、第1端板から第1方向の他方側に立ち上がる。係止片は、中間板に形成された中間板孔部および第2端板に形成された第2端板孔部を通り、第2端板の第1方向の他方側の表面に沿って配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の熱交換器および冷凍サイクル装置を、図面を参照して説明する。
本願において、直交座標系のX方向、Y方向およびZ方向が、以下のように定義される。X方向(第1方向)は、熱交換チューブの中心軸方向(延在方向)である。例えば、X方向は水平方向であり、+X方向は第2ヘッダから第1ヘッダに向かう方向である。Y方向(第2方向)およびZ方向は、プレート型の第1ヘッダおよび第2ヘッダの短手方向および長手方向である。例えば、Y方向は水平方向である。例えば、Z方向は鉛直方向であり、+Z方向は上方向である。
【0008】
図1は、実施形態の冷凍サイクル装置の概略構成図である。
図1に示されるように、冷凍サイクル装置1は、圧縮機2と、四方弁3と、室外熱交換器4と、膨張装置5と、室内熱交換器6と、を有する。冷凍サイクル装置1の構成要素は、冷媒配管7によって順次接続されている。
図1では、冷房運転時の冷媒(熱媒体)の流通方向が実線矢印で示され、暖房運転時の冷媒の流通方向が破線矢印で示される。
【0009】
圧縮機2は、圧縮機本体2Aと、アキュムレータ2Bと、を有する。圧縮機本体2Aは、内部に取り込まれる低圧の気体冷媒を圧縮して高温・高圧の気体冷媒にする。アキュムレータ2Bは、気液二相冷媒を分離して、気体冷媒を圧縮機本体2Aに供給する。
【0010】
四方弁3は、冷媒の流通方向を逆転させ、冷房運転と暖房運転とを切り替える。冷房運転時に冷媒は、圧縮機2、四方弁3、室外熱交換器4、膨張装置5及び室内熱交換器6の順に流れる。このとき冷凍サイクル装置1は、室外熱交換器4を凝縮器として機能させ、室内熱交換器6を蒸発器として機能させ、室内を冷房する。暖房運転時に冷媒は、圧縮機2、四方弁3、室内熱交換器6、膨張装置5、室外熱交換器4の順に流れる。このとき冷凍サイクル装置1は、室内熱交換器6を凝縮器として機能させ、室外熱交換器4を蒸発器として機能させ、室内を暖房する。
【0011】
凝縮器は、圧縮機2から吐出される高温・高圧の気体冷媒を、外気へ放熱させて凝縮させることにより、高圧の液体冷媒にする。膨張装置5は、凝縮器から送り込まれる高圧の液体冷媒の圧力を下げ、低温・低圧の気液二相冷媒にする。蒸発器は、膨張装置5から送り込まれる低温・低圧の気液二相冷媒を、外気から吸熱させて気化させることにより、低圧の気体冷媒にする。
【0012】
このように、冷凍サイクル装置1では、作動流体である冷媒が気体冷媒と液体冷媒との間で相変化しながら循環する。冷媒は、気体冷媒から液体冷媒に相変化する過程で放熱し、液体冷媒から気体冷媒に相変化する過程で吸熱する。冷凍サイクル装置1は、冷媒の放熱または吸熱を利用して、暖房や冷房、除霜などを行う。
【0013】
図2は、実施形態の熱交換器の斜視図である。実施形態の熱交換器4Uは、冷凍サイクル装置1(
図1参照)の室外熱交換器4および室内熱交換器6の一方または両方に使用される。以下、熱交換器4Uが冷凍サイクル装置1の室外熱交換器4として使用される場合を例にして説明する。冷凍サイクル装置1の室外熱交換器4は、
図2に示される単位熱交換器(単に熱交換器と言う場合がある。)4Uの複数が、直列および並列に接続されて構成される。
図3は、熱交換器4Uの分解斜視図である。熱交換器4Uは、熱交換チューブ(伝熱管)30と、第1ヘッダ10と、第2ヘッダ20と、を有する。
【0014】
熱交換チューブ30(31-38)は、アルミニウムやアルミニウム合金等の、熱伝導率が高く比重が小さい材料で形成される。熱交換チューブ30は、X方向に延在する。熱交換チューブ30は、偏平管状に形成される。熱交換チューブ30のX方向に直交する断面(YZ断面)の形状は、Y方向を長軸方向としZ方向を短軸方向とする長円形状である。熱交換チューブ30の内部には、冷媒流路が形成される。冷媒流路は、熱交換チューブ30のX方向の全長にわたって形成される。複数の冷媒流路は、後述の
図9に示すように、熱交換チューブ30のY方向に並んで配置される。複数の熱交換チューブ30が、Y方向およびZ方向に並んで配置される。複数の熱交換チューブ30に、複数のフィン(不図示)が装着されてもよい。複数のフィンは、YZ平面と平行に形成され、第1ヘッダ10と第2ヘッダ20との間に配置される。
【0015】
第1ヘッダ10は、熱交換チューブ30のX方向の一方側である+X方向の端部に接続される。第2ヘッダ20は、熱交換チューブ30のX方向の他方側である-X方向の端部に接続される。第1ヘッダ10および第2ヘッダ20は、アルミニウムやアルミニウム合金等の、熱伝導率が高く比重が小さい材料で形成される。第1ヘッダ10および第2ヘッダ20は、YZ平面と平行な平板状に形成される。本実施形態では、X方向から見て、第1ヘッダ10および第2ヘッダ20は四角形状であるが、これに限らず、ヘッダの形状は、熱交換チューブ30の本数の増加によってZ方向に延びた長方形状となる。
【0016】
第1ヘッダ10は、内端板(第2端板)11と、中間板14と、外端板(第1端板)17と、を有する。内端板11は、中間板14のX方向の一方側である-X方向に配置される。外端板17は、中間板14のX方向の他方側である+X方向に配置される。
【0017】
内端板11は、X方向に貫通する貫通孔部12を有する。貫通孔部12は、Y方向を長軸方向としZ方向を短軸方向とする長円形状である。複数の貫通孔部12が、Y方向およびZ方向に並んで配置される。貫通孔部12には、熱交換チューブ30の+X方向の端部が挿入される。熱交換チューブ30の+X方向の端部は、中間板14の冷媒空間流路15に開口する。
【0018】
中間板14は、冷媒空間流路15(15a-15e)を有する。冷媒空間流路15は、冷媒流路の一部である。冷媒空間流路15は、中間板14をX方向に貫通する貫通孔により形成され、冷媒の流路を形成する。複数の冷媒空間流路15が、Y方向およびZ方向に並んで配置される。冷媒空間流路15のX方向の両側は、内端板11および外端板17により閉塞される。本実施形態では、冷媒空間流路15b、15c、15dは、熱交換チューブ30の+X方向の端部が2つずつ開口しており、後述する順序で一方の端部から流入する冷媒を他方の端部に流通させる。
【0019】
外端板17は、-Z方向の端部に一対の貫通孔部を有する。一対の貫通孔部は、Y方向に並んで配置される。一対の貫通孔部には、一対の冷媒出入管18A,18Bの-X方向の端部が挿入される。一対の冷媒出入管18A,18Bの-X方向の端部は、中間板14の冷媒空間流路15に開口する。
【0020】
図2に示されるように、中間板14の-X方向の表面および内端板11の+X方向の表面を接合面13として、両者がロウ材で面接合される。中間板14の+X方向の表面および外端板17の-X方向の表面を接合面16として、両者がロウ材で面接合される。これにより、冷媒空間流路15のX方向の両側が閉塞される。接合面13,16には予めロウ材層が形成されている。内端板11、中間板14および外端板17の積層体を加熱炉で加熱することにより、ロウ材が溶融して積層体がロウ付け接合される。
【0021】
図3に示されるように、第2ヘッダ20は、一対の小ヘッダ20A,20Bを有する。一対の小ヘッダ20A,20Bは、空間を挟んでY方向に並んで配置される。小ヘッダ20A,20Bは、内端板21と、中間板24と、外端板27と、を有する。内端板21は、中間板24のX方向の一方側である+X方向に配置される。外端板27は、中間板24のX方向の他方側である-X方向に配置される。
【0022】
内端板21は、X方向に貫通する貫通孔部22を有する。貫通孔部22は、Y方向を長軸方向としZ方向を短軸方向とする長円形状である。複数の貫通孔部22が、Z方向に並んで配置される。貫通孔部22には、熱交換チューブ30の-X方向の端部が挿入される。熱交換チューブ30の-X方向の端部は、中間板24の冷媒空間流路25に開口する。
【0023】
中間板24は、冷媒空間流路25(25a-25d)を有する。冷媒空間流路25は、冷媒流路の一部である。冷媒空間流路25は、中間板24をX方向に貫通する貫通孔により形成され、冷媒の流路を形成する。複数の冷媒空間流路25が、Z方向に並んで配置される。冷媒空間流路25のX方向の両側は、内端板21および外端板27により閉塞される。本実施形態では、ぞれぞれの冷媒空間流路25(25a-25d)は、熱交換チューブ30の-X方向の端部が2つずつ開口しており、後述する順序で一方の端部から流入する冷媒を他方の端部に流通させる。
【0024】
図2に示されるように、中間板24の+X方向の表面および内端板21の-X方向の表面を接合面23として、両者がロウ材で面接合される。中間板24の-X方向の表面および外端板27の+X方向の表面を接合面26として、両者がロウ材で面接合される。これにより、冷媒空間流路25のX方向の両側が閉塞される。接合面23,26には予めロウ材層が形成されている。内端板21、中間板24および外端板27の積層体を加熱炉で加熱することにより、ロウ材が溶融して積層体がロウ付け接合される。
【0025】
冷媒は、以下のように熱交換器4Uを流通する。冷媒は、
図3に示される冷媒出入管18Aを通って、第1ヘッダ10の冷媒空間流路15aに流入する。冷媒は、冷媒空間流路15aから、熱交換チューブ31、第2ヘッダ20の冷媒空間流路25aの順に、-X方向に流通する。冷媒は、冷媒空間流路25aにおいて+Z方向に移動する。冷媒は、冷媒空間流路25aから、熱交換チューブ32、冷媒空間流路15bの順に、+X方向に流通する。冷媒は、冷媒空間流路15bにおいて+Z方向に移動する。さらに冷媒は、熱交換チューブ33、冷媒空間流路25b、熱交換チューブ34、冷媒空間流路15cの順に流通する。冷媒は、冷媒空間流路15cにおいて-Y方向に移動する。さらに冷媒は、冷媒空間流路15cから、熱交換チューブ35、冷媒空間流路25c、熱交換チューブ36、冷媒空間流路15d、熱交換チューブ37、冷媒空間流路25d、熱交換チューブ38、冷媒空間流路15eの順に流通する。冷媒は、冷媒空間流路15eから冷媒出入管18Bを通って、熱交換器4Uの外部に流出する。
【0026】
熱交換器4Uが凝縮器および蒸発器の一方として機能する場合に、冷媒は上記の順序で流通する。熱交換器4Uが凝縮器および蒸発器の他方として機能する場合に、冷媒は上記とは逆の順序で流通する。冷媒は、熱交換チューブ30を流通する間に、熱交換チューブ30の周囲の空気と熱交換する。冷媒が熱交換器4Uを流通する間に、冷媒の温度が変化する。第2ヘッダ20が一対の小ヘッダ20A,20Bに分離されているので、冷媒流路における熱短絡が抑制される。
【0027】
図4は、第1ヘッダ10の分解斜視図である。外端板17は係止片50を有する。係止片50は、冷媒空間流路15の非形成領域に形成される。係止片50は、外端板17から-X方向に切り起こされて形成される。すなわち、外端板17をX方向に貫通する切り込みがU字状に形成され、U字の内側部分が-X方向に曲げ起こされて、係止片50が-X方向に立ち上がる。外端板17と係止片50との間の折り曲げ線は、Z方向と平行である。折り曲げ線から係止片50の先端までの長さは、中間板14の厚さおよび内端板11の厚さの和より大きい。外端板17から切り起こされた係止片50に代えて、外端板17に溶接等で接続された係止片50が採用されてもよい。
【0028】
図5は、
図4のV-V線における断面図である。中間板14には、X方向に貫通する中間板孔部54が形成される。内端板11には、X方向に貫通する内端板孔部(第2端板孔部)51が形成される。中間板孔部54および内端板孔部51は、冷媒空間流路15の非形成領域に形成される。中間板孔部54および内端板孔部51は、X方向から見て四角形状に形成される。係止片50は、中間板孔部54および内端板孔部51に挿入される。係止片50の先端部が、内端板11の-X方向の表面に沿って+Y方向に折り曲げられ、内端板11に係止される。
【0029】
係止片50は、胴部57と、頭部58と、を有する。
胴部57は、中間板孔部54および内端板孔部51の内側に配置される部分である。胴部57は、XZ平面と平行な平板状である。胴部57のZ方向の幅は、中間板孔部54および内端板孔部51のZ方向の幅とほぼ同等の寸法で形成される。これにより、外端板17、中間板14および内端板11のZ方向の相対位置が固定される。
【0030】
頭部58は、内端板11の-X方向の表面に沿って配置される部分である。頭部58は、YZ平面と平行な平板状である。係止片50の頭部58と外端板17との間に、中間板14および内端板11が挟み込まれる。これにより、外端板17、中間板14および内端板11のX方向の相対位置が固定される。
【0031】
胴部57の-Y方向における中間板孔部54の内面と胴部57との空間をC1とする。空間C1のY方向の距離を第1距離YC1とする。胴部57の+Y方向における中間板孔部54の内面と胴部57との空間をC2とする。空間C2のY方向の距離を第2距離YC2とする。
図5の例では、胴部57の+Y方向において中間板孔部54の内面と胴部57とが接触しているので、第2距離YC2は0である。第1距離YC1は、第2距離YC2より大きい。空間C1には、内端板11と中間板14との接合面13および中間板14と外端板17との接合面16の一部が露出する。空間C1を通して、接合面13,16のロウ付け接合の状態を目視確認することができる。
【0032】
図7は、第1ヘッダを-X方向から見た背面図である。空間C1の存在により、中間板14は、外端板17および内端板11に対して+Y方向に相対移動可能である。中間板14が+Y方向に移動すると、中間板14と熱交換チューブ30とが干渉する可能性がある。前述したように、空間C1のY方向の距離を第1距離YC1とする。内端板11は、熱交換チューブ30が挿入される貫通孔部12を有する。貫通孔部12の-Y方向における冷媒空間流路15の内面と貫通孔部12との距離を第3距離YHとする。第1距離YC1は、第3距離YHより小さい。中間板14が+Y方向に移動して中間板孔部54の内面が係止片50に当接しても、冷媒空間流路15の内面は貫通孔部12の位置まで到達しない。内端板11の貫通孔部12に熱交換チューブ30を挿入することができる。中間板14と熱交換チューブ30との干渉が抑制される。
【0033】
図4に示されるように、係止片50は、Z方向に間隔を置いて配置される第1係止片50Cおよび第2係止片50Dを有する。第1係止片50Cは+Z方向に配置され、第2係止片50Dは-Z方向に配置される。
図5に示されるように、第1係止片50Cの胴部57は、中間板孔部54の+Y方向の端部に配置される。第1係止片50Cの頭部58は、胴部57の-X方向の端部から、+Y方向に折れ曲がる。
【0034】
図6は、
図4のVI-VI線における断面図である。第2係止片50Dの胴部57は、中間板孔部54の-Y方向の端部に配置される。第2係止片50Dの頭部58は、胴部57の-X方向の端部から、-Y方向に折れ曲がる。
胴部57の-Y方向における中間板孔部54の内面と胴部57との空間をD1とする。空間D1のY方向の距離を第6距離YD1とする。
図6の例では、胴部57の-Y方向において中間板孔部54の内面と胴部57とが接触しているので、第6距離YD1は0である。胴部57の+Y方向における中間板孔部54の内面と胴部57との空間をD2とする。空間D2のY方向の距離を第7距離YD2とする。第7距離YD2は、第6距離YD1より大きい。空間D2には、内端板11と中間板14との接合面13および中間板14と外端板17との接合面16の一部が露出する。空間D2を通して、接合面13,16のロウ付け接合の状態を目視確認することができる。
【0035】
前述されたように、
図5に示される第1係止片50Cの第1距離(第4距離)YC1は、第2距離(第5距離)YC2より大きい。
図6に示される第2係止片50Dの第6距離YD1は、第7距離YD2より小さい。特に、第1係止片50Cの+Y方向の第2距離(第5距離)YC2および第2係止片50Dの-Y方向の第6距離YD1が、共に0である。これにより、外端板17、中間板14および内端板11のY方向の相対位置が固定される。
【0036】
以上に詳述されたように、実施形態の熱交換器4Uは、熱交換チューブ30と、第1ヘッダ10と、を持つ。熱交換チューブ30は、X方向に伸び、冷媒が流通する。第1ヘッダ10は、熱交換チューブ30のX方向の端部に接続され、内部に冷媒空間流路15を有する。第1ヘッダ10は、中間板14と、外端板17と、内端板11と、係止片50と、を有する。中間板14には、冷媒空間流路15が形成される。外端板17は、中間板14の+X方向に配置される。内端板11は、中間板14の-X方向に配置される。係止片50は、外端板17から-X方向に立ち上がる。係止片50は、中間板14に形成された中間板孔部54および内端板11に形成された内端板孔部51を通り、内端板11の-X方向の表面に沿って配置されている。
【0037】
係止片50により、外端板17、中間板14および内端板11のX方向の相対位置が固定される。ボルト等による固定が不要であり、部品点数が抑制される。部品点数の抑制により、製造工程の管理が簡略化される。外端板17、中間板14および内端板11のX方向の相対位置が固定されるので、ロウ付け接合等の後工程の作業が容易になる。
【0038】
Y方向において、係止片50の-Y方向における中間板孔部54の内面と係止片50との間の第1距離YC1は、係止片50の+Yにおける中間板孔部54の内面と係止片50との間の第2距離YC2より大きい。内端板11は、熱交換チューブ30が挿入される貫通孔部12を有する。第1距離YC1は、貫通孔部12の-Y方向における冷媒空間流路15の内面と貫通孔部12との間の第3距離YHより小さい。
【0039】
第1距離YC1が第2距離YC2より大きい。係止片50の-Y方向における中間板孔部54の内面と係止片50との空間C1には、内端板11と中間板14との接合面13および中間板14と外端板17との接合面16の一部が露出する。空間C1を通して、接合面13,16のロウ付け接合の状態を目視確認することができる。ロウ付け接合不良による隣り合う冷媒空間流路15の短絡が抑制される。第1距離YC1が第3距離YHより小さい。中間板14が内端板11に対して+Y方向に相対移動しても、冷媒空間流路15の内面が内端板11の貫通孔部12の位置まで到達しない。貫通孔部12に熱交換チューブ30を挿入することができる。
【0040】
係止片50は、相互に間隔を置いて配置される第1係止片50Cおよび第2係止片50Dを有する。第1係止片50Cの-Y方向における中間板孔部54の内面と第1係止片50Cとの間の第4距離YC1は、第1係止片50Cの+Y方向における中間板孔部54の内面と第1係止片50Cとの間の第5距離YC2より大きい。第2係止片50Dの-Y方向における中間板孔部54の内面と第2係止片50Dとの間の第6距離YD1は、第2係止片50Dの+Y方向における中間板孔部54の内面と第2係止片50Dとの間の第7距離YD2より小さい。
第1係止片50Cおよび第2係止片50Dにより、外端板17、中間板14および内端板11のY方向の相対位置が固定される。
【0041】
実施形態の冷凍サイクル装置1は、上述した熱交換器4Uを有する。
熱交換器4Uの部品点数が抑制されるので、冷凍サイクル装置1の部品点数が抑制される。
【0042】
実施形態の係止片50は、外端板17から-X方向に立ち上がる。係止片50は、内端板11から+X方向に立ち上がってもよい。この係止片50は、中間板14に形成された中間板孔部54および外端板17に形成された外端板孔部を通り、外端板17の+X方向の表面に沿って配置される。
【0043】
図8は、分配装置の断面図である。前述されたように、冷凍サイクル装置1の室外熱交換器4(
図1参照)は、複数の熱交換器4U(
図2参照)が、直列および並列に接続されて構成される。分配装置(ディストリビュータ)60は、複数の熱交換器4Uに接続される。分配装置60は、第1部材62と、第2部材68と、を有する。第1部材62は1本の第1配管61を有し、第2部材68は複数本の第2配管69を有する。第1配管61および第2配管69が、分配装置60の内部の冷媒空間流路63に開口して、冷媒流路64が形成される。分配装置60は、第1配管61に流入した気液二相冷媒を第2配管69から流出させて、複数の熱交換器4Uに分配する。分配装置60は、複数の熱交換器4Uから第2配管69に流入した気液二相冷媒を合流させて、第1配管61から流出させる。
【0044】
第1部材62の外周面(第1面)および第2部材68の内周面(第2面)を接合面65として、両者がロウ材で面接合されることにより、冷媒流路64が形成される。予め接合面65にロウ材が塗布されて、第1部材62および第2部材68が嵌合される。第1部材62および第2部材68の嵌合体を加熱炉で加熱することにより、ロウ材が溶融して嵌合体がロウ付け接合される。
【0045】
接合面65には、溝部(第1溝部)66が形成される。溝部66は、第2部材68の内周面および第1部材62の外周面のうち、少なくとも一方に形成される。
図8の例では、第1部材62の外周面のみに溝部66が形成される。溝部66は、冷媒流路64の周囲に形成される。溶融したロウ材は毛細管現象により溝部66を流動するので、接合面65の全体にロウ材が供給され、接合不良が抑制される。溝部66の体積V1と、予め接合面65に配置したロウ材の体積V2と、接合に必要なロウ材の体積V3との間に、V1≧V2-V3の関係が成立する。余分なロウ材が溝部66に収容されるので、余分なロウ材の冷媒流路64への流出が抑制される。ロウ材による冷媒流路64の閉塞が抑制される。
【0046】
図9は、外端板を取り除いた第2ヘッダの斜視図である。前述されたように、中間板(第1部材)24の-X方向の表面(第1面)および外端板(第2部材)27の+X方向の表面(第2面)を接合面26として、両者がロウ材で面接合されることにより、冷媒空間流路25が形成される。接合面26には予めロウ材層が形成されている。内端板21、中間板24および外端板27の積層体を加熱炉で加熱することにより、ロウ材が溶融して積層体がロウ付け接合される。
【0047】
接合面26には、第1溝部76が形成される。第1溝部76は、中間板24の-X方向の表面および外端板27の+X方向の表面のうち、少なくとも一方に形成される。
図9の例では、中間板24の-X方向の表面のみに第1溝部76が形成される。溶融したロウ材は毛細管現象により第1溝部76を流動するので、接合面26の全体にロウ材が供給され、接合不良が抑制される。隣り合う冷媒空間流路25の短絡が抑制される。余分なロウ材が第1溝部76に収容されるので、余分なロウ材の冷媒空間流路25への流出が抑制される。ロウ材による冷媒空間流路25の閉塞が抑制される。
【0048】
接合面26には、第1溝部76から第2ヘッダ20の外部に伸びる第2溝部77が形成される。ロウ付け接合時の加熱炉内での熱交換器4Uの姿勢における接合面26の最上部に向かって、第2溝部77が伸びる。加熱炉内では、第2溝部77の先端部が最上方となるように熱交換器4Uを配置して、加熱処理を行う。
図9の例では、熱交換器4Uが-Y方向を上方にして加熱炉内に配置される。加熱により溶融した余分なロウ材は、重力により、第1溝部76および第2溝部77の下方から上方に向かって充填される。加熱処理の終了後にロウ材が第2溝部77の先端部まで到達していれば、ロウ材が接合面26の全体に供給されていることになる。第2溝部77は第2ヘッダ20の外部に伸びて、その先端部が上方に配置されるので、第2溝部77の先端部の目視が可能である。これにより、接合面26のロウ付け接合の状態を目視確認することができる。
【0049】
以上には、第2ヘッダ20の中間板24と外端板27との接合面26について説明した。
図2に示される第2ヘッダ20の中間板24と内端板21との接合面23についても同様である。第1ヘッダ10の中間板14と外端板17との接合面16および中間板14と内端板11との接合面13についても同様である。
【0050】
以上に詳述されたように、冷媒空間流路25は、中間板24の-X方向の表面と外端板27の+X方向の表面とがロウ材により面接合されて形成される。第1溝部76は、中間板24の-X方向の表面および外端板27の+X方向の表面のうち少なくとも一方において、冷媒空間流路25の周囲に形成される。
余分なロウ材が第1溝部76に収容されるので、余分なロウ材の冷媒空間流路25への流出が抑制される。ロウ材による冷媒空間流路25の閉塞が抑制される。
【0051】
第2溝部77は、第1溝部76から外部に伸びる。
第2溝部77の先端部の目視により、接合面26のロウ付け接合の状態を確認することができる。
【0052】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、熱交換器4Uが係止片50を持つ。係止片50は、外端板17から立ち上がり、中間板孔部54および内端板孔部51を通り、内端板11の表面に沿って配置される。これにより、外端板17、中間板14および内端板11の積層方向の相対位置が固定されるので、熱交換器4Uの部品点数を抑制することができる。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0054】
YC1…第1距離,第4距離、YC2…第2距離,第5距離、YD1…第6距離、YD2…第7距離、YH…第3距離、1…冷凍サイクル装置、4U…熱交換器、10…第1ヘッダ(ヘッダ)、11…内端板(第2端板)、12…貫通孔部、14…中間板、15…冷媒空間流路、17…外端板(第1端板)、24…中間板(第1部材)、25…冷媒空間流路(冷媒流路)、27…外端板(第2部材)、30…熱交換チューブ、50…係止片、50C…第1係止片、50D…第2係止片、51…内端板孔部(第2端板孔部)、54…中間板孔部、62…第1部材、64…冷媒流路、66…溝部(第1溝部)、68…第2部材、76…第1溝部、77…第2溝部。