(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B60H 1/32 20060101AFI20240604BHJP
B60H 1/22 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B60H1/32 613N
B60H1/22 611A
(21)【出願番号】P 2021065452
(22)【出願日】2021-04-07
【審査請求日】2023-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】宮原 貴文
【審査官】町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-034792(JP,A)
【文献】特開2014-046883(JP,A)
【文献】特開2015-016703(JP,A)
【文献】特開2014-205372(JP,A)
【文献】特開2007-127376(JP,A)
【文献】特開2014-208515(JP,A)
【文献】特開平08-197934(JP,A)
【文献】特開2010-089630(JP,A)
【文献】国際公開第2018/116659(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0194199(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/32
B60H 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両であって、
ステアリングコラムと、
前記ステアリングコラムに配置されており、前記ステアリングコラムの下方に向けて輻射熱を放射する輻射ヒータと、
前記ステアリングコラムが通過する開口部の一部を画定するとともに、前記車両の左右方向に延在するインストルメントパネルと、
前記インストルメントパネルの前記開口部に隣接して配置されているとともに、前記車両の室内温度を検出する内気センサと、
前記ステアリングコラムの下方に配置されており、前記インストルメントパネルとともに前記開口部を画定するロアカバーと、
を備え、
前記ロアカバ
ーには、前記輻射ヒータと前記内気センサとの間に位置する遮蔽壁が設けられて
おり、
前記遮蔽壁は、前記インストルメントパネルによって覆われているとともに、前記ロアカバーから前記インストルメントパネルに向けて、前記車両の前後方向に延在しており、
前記遮蔽壁の前記インストルメントパネルの裏面に対向する端部は、前記インストルメントパネルの前記裏面に沿って延在している、
車両。
【請求項2】
前記遮蔽壁は、前記ロアカバーへ一体に設けられている、請求項
1に記載の車両。
【請求項3】
前記遮蔽壁の前記端部と、前記インストルメントパネルの前記裏面との間には、隙間が設けられている、請求項
1又は請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記遮蔽壁の前記端部は、前記隙間が一定となるように、前記インストルメントパネルの前記裏面に沿って延在している、請求項
3に記載の車両。
【請求項5】
前記ロアカバーは、前記ステアリングコラムの下方に配置されている本体部分と、前記本体部分から前記インストルメントパネルに向けて延びており、前記インストルメントパネルに固定されている固定部とを有し、
前記遮蔽壁は、前記固定部へ一体に形成されている、請求項
1から請求項
4のいずれか一項に記載の車両。
【請求項6】
前記遮蔽壁は、前記インストルメントパネルの前記開口部において前記ステアリングコラムの周囲に形成される隙間から視認可能であるとともに、当該視認可能な視線の方向において前記内気センサは前記遮蔽壁の背後に位置する、請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載の車両。
【請求項7】
前記ロアカバーの内側に配置されたエアバッグをさらに備え、
前記ロアカバーは、前記エアバッグが展開したときに、前記エアバッグによって破断されるように構成されている、請求項1から請求項
6のいずれか一項に記載の車両。
【請求項8】
車両であって、
ステアリングコラムと、
前記ステアリングコラムに配置されており、前記ステアリングコラムの下方に向けて輻射熱を放射する輻射ヒータと、
前記ステアリングコラムが通過する開口部の一部を画定するとともに、前記車両の左右方向に延在するインストルメントパネルと、
前記インストルメントパネルの前記開口部に隣接して配置されているとともに、前記車両の室内温度を検出する内気センサと、
前記ステアリングコラムの下方に配置されており、前記インストルメントパネルとともに前記開口部を画定するロアカバーと、
を備え、
前記ロアカバーには、前記輻射ヒータと前記内気センサとの間に位置する遮蔽壁が設けられており、
前記ロアカバーは、前記ステアリングコラムの下方に配置されている本体部分と、前記本体部分から前記インストルメントパネルに向けて延びており、前記インストルメントパネルに固定されている固定部とを有し、
前記遮蔽壁は、前記ロアカバーの前記固定部へ一体に形成されている、
車両。
【請求項9】
車両であって、
ステアリングコラムと、
前記ステアリングコラムに配置されており、前記ステアリングコラムの下方に向けて輻射熱を放射する輻射ヒータと、
前記ステアリングコラムが通過する開口部の一部を画定するとともに、前記車両の左右方向に延在するインストルメントパネルと、
前記インストルメントパネルの前記開口部に隣接して配置されているとともに、前記車両の室内温度を検出する内気センサと、
前記ステアリングコラムの下方に配置されており、前記インストルメントパネルとともに前記開口部を画定するロアカバーと、
を備え、
前記インストルメントパネルと前記ロアカバーとのいずれか一方には、前記輻射ヒータと前記内気センサとの間に位置する遮蔽壁が設けられており、
前記遮蔽壁は、前記インストルメントパネルの前記開口部において前記ステアリングコラムの周囲に形成される隙間から視認可能であるとともに、当該視認可能な視線の方向において前記内気センサは前記遮蔽壁の背後に位置する、
車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、車両が記載されている。この車両では、ステアリングコラムに、輻射ヒータが配置されている。この輻射ヒータは、ステアリングコラムの下方に向けて、即ち、運転席に座るユーザの膝付近に対して、輻射熱を放射する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両は、車室内を冷暖房する空調ユニットを備えることが多い。この種の空調ユニットは、車室内の温度を内気センサにより検出することで、車室内の温度をユーザが所望する温度に調整する。このような車両において、上記した輻射ヒータがさらに設けられていると、輻射ヒータからの輻射熱が、内気センサの検出温度に影響を与えるおそれがある。これを避けるためには、輻射ヒータと内気センサとの間に、十分な距離を設けることが考えられる。しかしながら、車両を運転するユーザの要望に合わせて、車室内の温度を正しく調整するためには、内気センサを当該ユーザの近くに配置することが好ましい。そのことから、輻射ヒータと内気センサとの間に、十分な距離を設けることが難しいという実情がある。
【0005】
上記の実情を鑑み、本明細書は、内気センサとヒータとが比較的に近く配置される場合でも、輻射ヒータが内気センサに与える影響を低減するための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する技術は、車両に具現化される。この車両は、ステアリングコラムと、前記ステアリングコラムに配置されており、前記ステアリングコラムの下方に向けて輻射熱を放射する輻射ヒータと、前記ステアリングコラムが通過する開口部の一部を画定するとともに、前記車両の左右方向に延在するインストルメントパネルと、前記インストルメントパネルの前記開口部に隣接して配置されているとともに、前記車両の室内温度を検出する内気センサと、前記ステアリングコラムの下方に配置されており、前記インストルメントパネルとともに前記開口部を画定するロアカバーと、を備える。前記インストルメントパネルと前記ロアカバーとのいずれか一方には、前記輻射ヒータと前記内気センサとの間に位置する遮蔽壁が設けられている。
【0007】
上記した車両では、インストルメントパネルの開口部に隣接して、車両の室内温度を検出する内気センサが設けられている。このような構成によると、車両を運転するユーザの近傍に内気センサを配置して、ユーザが実際に感じている温度を正しく検出することができる。内気センサには、ステアリングコラムに配置された輻射ヒータが隣接するが、内気センサとステアリングコラムとの間には、遮蔽壁が設けられている。これにより、輻射ヒータから放射された輻射熱や、その輻射熱によって加熱された空気などが、内気センサに達することを抑制することができる。輻射ヒータが内気センサに与える影響が低減されるので、内気センサは車室内の実際の温度を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】インパネ24の正面図を示す。なお、主にインパネ24の運転席周辺のみが示され、助手席周辺の部分が省略されている。
図2中のハッチングは、輻射ヒータ40を示す。
【
図3】車両10の後方から見た場合における、遮蔽壁52と、輻射ヒータ40と、内気センサ44との位置関係を説明する図。なお、センターパネル24bは、省略されている。
【
図4】車両10の前方から見た場合における、遮蔽壁52と、輻射ヒータ40と、内気センサ44との位置関係を説明する図。なお、ホース48は、破線で示されている。
【
図5】遮蔽壁52による効果を確認した実験結果を説明する図。
【
図6】遮蔽壁52と、センターパネル24bの裏面25との間に形成される隙間Cを説明する図。
【
図7】ステアリングコラム34の周囲に形成される隙間から視認可能な視線の方向Sと、内気センサ44と、遮蔽壁52との位置関係を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本技術の一実施形態において、遮蔽壁は、ロアカバーに設けられていてもよい。この場合、遮蔽壁は、ロアカバーへ一体に設けられていてもよい。このような構成によると、車両の走行に伴って振動が発生した場合に、遮蔽壁とロアカバーとの間から異音が発生することを回避できる。加えて、遮蔽壁をロアカバーへ取り付ける作業が不要となることから、作業性が向上される。なお、遮蔽壁は、必ずしもロアカバーへ一体に設けられている必要はなく、ロアカバーとは別個の部品として設けられてもよい。
【0010】
上記した実施形態において、遮蔽壁は、インストルメントパネルによって覆われていてもよい。言い換えると、車室内から見たときに、遮蔽壁は、インストルメントパネルの奥側に存在していてもよい。このような構成によると、遮蔽壁が車室内に露出することを避けることができる。これにより、車室内の意匠性が向上される。
【0011】
上記した実施形態において、遮蔽壁は、ロアカバーからインストルメントパネルに向けて、車両の前後方向に延在していてもよい。この場合、遮蔽壁のインストルメントパネルの裏面に対向する端部は、インストルメントパネルの裏面に沿って延在していてもよい。このような構成によると、輻射ヒータから放射された輻射熱や、その輻射熱によって加熱された空気などが、内気センサに達することを効果的に抑制又は回避することができる。
【0012】
上記した実施形態において、遮蔽壁の端部と、インストルメントパネルの裏面との間には、隙間が設けられていてもよい。このような構成によると、車両の走行に伴って振動が発生した場合に、遮蔽壁とインストルメントパネルとが意図せず接触することを避けることができる。これにより、異音の発生を抑制又は回避することができる。
【0013】
上記した実施形態において、遮蔽壁の端部とインストルメントパネルの裏面との間の隙間が一定となるように、遮蔽壁の端部は、インストルメントパネルの裏面に沿って延在していてもよい。このような構成によると、輻射ヒータが内気センサに与える影響を効果的に低減できるとともに、異音の発生を効果的に抑制又は回避することができる。なお、遮蔽壁の端部とインストルメントパネルの裏面との間の隙間は、必ずしも一定である必要はない。例えば、インストルメントパネルの構成部品や、その構成部品の形状等に応じて、当該隙間の間隔が変化してもよい。
【0014】
本技術の一実施形態において、ロアカバーは、ステアリングコラムの下方に配置されている本体部分と、本体部分からインストルメントパネルに向けて延びており、インストルメントパネルに固定されている固定部とを有してもよい。この場合、遮蔽壁は、固定部へ一体に形成されていてもよい。このような構成によると、車両の走行に伴って振動が発生した場合、固定部へ一体化された遮蔽壁は、その固定部が固定されているインストルメントパネルによって支持される。これにより、遮蔽壁が、インストルメントパネルを含む他の部品と意図せず接触して異音が発生することを抑制又は回避することができる。
【0015】
本技術の一実施形態において、遮蔽壁は、インストルメントパネルの開口部においてステアリングコラムの周囲に形成される隙間から視認可能であるとともに、当該視認可能な視線の方向において内気センサは遮蔽壁の背後に位置してもよい。このような構成によると、ユーザが当該隙間から不意にインストルメントパネルの裏側を見た場合に、ユーザによって内気センサ(又は、内気センサと空調ユニットとを接続するホース)が視認されることを、遮蔽壁によって回避又は抑制することができる。従って、車室内の意匠性が向上される。
【0016】
本技術の一実施形態において、ロアカバーの内側に配置されたエアバッグをさらに備えてもよい。この場合、ロアカバーは、エアバッグが展開したときに、エアバッグによって破断されるように構成されていてもよい。なお、エアバッグの具体的な種類及び構成は、特に限定されない。
【実施例】
【0017】
図面を参照して、本実施例の車両10について説明する。車両10は、いわゆる自動車であって、路面を走行する車両である。ここで、図面における方向FRは、車両10の前後方向における前方を示し、方向RRは車両10の前後方向における後方を示す。また、方向LHは車両10の左右方向における左方を示し、方向RHは車両10の左右方向における右方を示す。また、方向UPは車両10の上下方向における上方を示し、方向DWは車両10の上下方向における下方を示す。なお、本明細書では、車両10の前後方向、車両10の左右方向、車両10の上下方向を、それぞれ単に前後方向、左右方向、上下方向と称することがある。
【0018】
図1に示すように、車両10は、ボディ12と、複数の車輪14f、14rとを備える。ボディ12は、乗員を乗せる空間である車室12cを有する。複数の車輪14f、14rは、ボディ12に対して回転可能に取り付けられている。複数の車輪14f、14rには、ボディ12の前部に位置する一対の前輪14fと、ボディ12の後部に位置する一対の後輪14rとが含まれる。一対の前輪14fは互いに同軸に配置されており、一対の後輪14rも互いに同軸に配置されている。なお、車輪14f、14rの数は、四つに限定されない。また、ボディ12は、特に限定されないが、スチール材又はアルミニウム合金といった金属で構成されている。
【0019】
図1に示すように、車両10は、モータ16と、バッテリユニット18と、電力制御ユニット20(以下、PCU20と称する)と、電子制御ユニット22(以下、ECU22と称する)とをさらに備える。一例ではあるが、モータ16は、ドライブシャフト(不図示)を介して、一対の後輪14rに接続されている。そのため、モータ16は、一対の後輪14rを駆動することができる。バッテリユニット18は、複数の二次電池セルを内蔵しており、外部の電力によって繰り返し充電可能に構成されている。バッテリユニット18は、PCU20を介してモータ16に接続されており、モータ16へ電力を供給する。PCU20は、DC-DCコンバータ及び/又はインバータを内蔵しており、バッテリユニット18とモータ16との間で伝達される電力を制御する。ECU22は、プロセッサを有しており、例えばユーザの操作に応じてPCU20へ制御指令を与える。
【0020】
なお、モータ16は、一対の後輪14rに限られず、複数の車輪14f、14rの少なくとも一つを駆動するように構成されていればよい。車両10は、モータ16に代えて、又は加えて、エンジンといった他の原動機をさらに備えてもよい。また、車両10は、バッテリユニット18に加えて、又は代えて、燃料電池ユニットや太陽電池パネルといった他の電源を備えてもよい。このように、車両10は、バッテリ式の電動車両に限られず、エンジン車両であってもよく、ハイブリッド車両、燃料電池車両、ソーラーカー等といった、他の類型の電動車両であってもよい。
【0021】
図2に示すように、車両10は、インストルメントパネル24(以下、インパネ24と称する)と、インパネリインフォースメント26(以下、インパネR/F26と称する)をさらに備える。インパネ24は、車両10における車室12c内の意匠性を向上する部材である。インパネR/F26は、車両10の車体を構成する部材である。インパネR/F26は、車両10の左右方向に延在しており、車体の右側と左側とを連結している。インパネ24は、車両10の左右方向に延在するとともに、インパネR/F26に対して、車両10の後方から取り付けられている。なお、インパネ24は、主に樹脂で構成されており、インパネR/F26は、金属で構成されている。
【0022】
図2-4に示すように、インパネ24は、基材パネル24aと、センターパネル24bを備える。基材パネル24aは、インパネ24の骨格を含む主要部分を構成する部材である。センターパネル24bは、いわゆる内装部材であって、車室12c内に露出される部材である。基材パネル24aは、複数の取付孔を備える。その複数の取付孔を介して、センターパネル24bやロアカバー38といった内装部材が、基材パネル24aの後方(即ち、車室12c側)へ、着脱可能に取り付けられる。センターパネル24bは、運転席と助手席との間に配置される。なお、特に限定されないが、インパネ24の少なくとも一部は、発泡体で構成されてもよい。
【0023】
図2に示すように、車両10は、ステアリング装置28をさらに備える。ステアリング装置28は、ステアリングホイール30と、ステアリングシャフト32と、ステアリングコラム34とを備える。ステアリングコラム34は、インパネ24に設けられた開口部36に配置されている。ステアリングホイール30は、運転席の前方に配置され、ユーザの手によって操作される。ステアリングシャフト32の後方における端部は、ステアリングホイール30と接続されており、ステアリングホイール30に回転不能に固定されている。ステアリングコラム34には、ステアリングシャフト32が通過するための貫通孔が設けられており、ステアリングシャフト32を回転可能に支持するように構成されている。これにより、ステアリングホイール30は、ステアリングシャフト32とともに、ステアリングコラム34に対して回転可能に支持されている。ステアリングシャフト32の回転角は、センサ(不図示)によって検出され、当該センサによる検出値に応じて、前輪14fの操舵角が調節される。これにより、ユーザは、ステアリングホイール30を操作して、例えば、前輪14fの角度を変更することができる。なお、特に限定されないが、ステアリングシャフト32は、ブラケット(不図示)等を介して、インパネR/F26によって支持されてもよい。ここで、ステアリング装置28は、例えばユーザの運転姿勢に応じて、ステアリングホイール30の位置を調整可能に構成されてもよい。
【0024】
図2に示すように、インパネ24は、開口部36の一部を画定する。インパネ24は、主に開口部36の上側部分を画定している。即ち、インパネ24では、開口部36の下側が開放されており、インパネ24によって略半円弧状の空所が画定されている。開口部36は、運転席の前方に配置されている。上述したステアリングシャフト32及びステアリングコラム34は、開口部36を通過するように配置されている。なお、開口部36の一部を画定するインパネ24は、基材パネル24a及びセンターパネル24bである必要はない。インパネ24を構成する任意の部品が、開口部36の一部を画定していればよい。
【0025】
図2-4に示すように、車両10は、ロアカバー38をさらに備える。ロアカバー38は、ステアリングコラム34の下方に配置されている。詳しくは、ロアカバー38は、開口部36の下側部分を画定するように配置されている。即ち、ロアカバー38は、インパネ24とともに、開口部36を画定する。但し、ロアカバー38は、開口部36の下側部分の少なくとも一部を画定していればよい。
【0026】
図2に示すように、車両10は、エアバッグ60をさらに備える。エアバッグ60は、車両10に衝突が発生した場合に、展開することで、乗員がステアリングホイール30やインパネ24等と強く接触することを抑制又は回避する。エアバッグ60は、ロアカバー38の前方に配置されている。一例ではあるが、ロアカバー38には、壁面の厚さが局所的に薄い部分(いわゆる、肉薄部)を設けられている。これにより、展開したエアバッグ60からの負荷により、ロアカバー38は、当該肉薄部を起点として破断される。なお、エアバッグ60の具体的な種類及び構成は、特に限定されない。
【0027】
図2-4に示すように、車両10は、輻射ヒータ40をさらに備える。輻射ヒータ40は、通電により、輻射熱を放射することができる。輻射ヒータ40は、ステアリングコラム34に配置されている。一例ではあるが、輻射ヒータ40は、ステアリングコラム34に設けられたコラムカバー42に配置されている。コラムカバー42は、インパネ24とステアリングホイール30との間において、ステアリングコラム34を覆う部材である。特に限定されないが、輻射ヒータ40は、コラムカバー42の下面に沿って配置されている。これにより、輻射ヒータ40は、ステアリングコラム34の下方に向けて輻射熱を放射する。従って、輻射ヒータ40は、運転席に座るユーザの膝付近を温めることができる。なお、輻射ヒータ40の具体的な構成及び形状等は、特に限定されない。
【0028】
図2-4に示すように、車両10は、内気センサ44と、空調ユニット46とをさらに備える。内気センサ44は、例えばサーミスタを内蔵しており、車両10の室内温度を検出することができる。
図3に示すように、内気センサ44は、インパネ24の基材パネル24aに配置されている。一例ではあるが、内気センサ44は、吸気口44aを有する。吸気口44aの後方(即ち、車室12c側)には、センターパネル24bに設けられた通気口50が配置されている。吸気口44aは、ホース48を介して、空調ユニット46に接続されている。これにより、吸気口44aから取り込んだ車室12c内の空気は、空調ユニット46へ送られる。この空調ユニット46へ送られる空気の温度を、内気センサ44が検出する。内気センサ44が検出した温度に基づいて、空調ユニット46から、ダクト(不図示)を介して車室12c内へ送られる空調風が制御される。
【0029】
図2-4に示すように、内気センサ44は、インパネ24とロアカバー38とによって画定される開口部36に、隣接して配置されている。これに対して、上述したように、輻射ヒータ40は、開口部36を通過するステアリングコラム34に配置されている。このことから、内気センサ44には、輻射ヒータ40が隣接することになる。なお、ここでいう、「隣接する」とは、「輻射ヒータ40から放射された輻射熱が到達し得る範囲内という、比較的に近い距離に存在すること」を意味する。但し、輻射ヒータ40から放射された輻射熱が到達し得る範囲は、輻射ヒータ40の性能や他の構成部品の配置等に応じて、適宜変化し得る。一例ではあるが、本実施例の車両10では、輻射ヒータ40が設けられたステアリングコラム34と、車室12c内の温度を検出する内気センサ44との両者が、車室12c内で左右方向の同じ側に配置されている。このような配置であると、輻射ヒータ40から放射された輻射熱が内気センサ44に到達し得るほど、輻射ヒータ40と内気センサ44とが互いに隣接することが多い。
【0030】
図2-4に示すように、ロアカバー38には、遮蔽壁52が設けられている。遮蔽壁52は、輻射ヒータ40と内気センサ44との間に位置する。即ち、遮蔽壁52は、輻射ヒータ40と内気センサ44とを結ぶ直線上に配置されている。一例ではあるが、遮蔽壁52は、ロアカバー38へ一体に設けられている。なお、遮蔽壁52は、必ずしもロアカバー38へ一体に設けられている必要はなく、ロアカバー38とは別個の部品として設けられてもよい。
【0031】
上記した車両10では、インパネ24の開口部36に隣接して、車両10の室内温度を検出する内気センサ44が設けられている。このような構成によると、車両10を運転するユーザの近傍に内気センサ44を配置して、ユーザが実際に感じている温度を正しく検出することができる。内気センサ44には、ステアリングコラム34に配置された輻射ヒータ40が隣接するが、内気センサ44とステアリングコラム34との間には、遮蔽壁52が設けられている。これにより、輻射ヒータ40から放射された輻射熱や、その輻射熱によって加熱された空気などが、内気センサ44に達することを抑制することができる。輻射ヒータ40が内気センサ44に与える影響が低減されるので、内気センサ44は車室内の実際の温度を正確に検出することができる。
【0032】
上記の点に関して、
図5を参照しながら、遮蔽壁52による効果を確認した実験結果を説明する。
図5において、グラフ(a)は輻射ヒータ40の温度を表し、グラフ(b)は内気センサ44の検出温度を表す。グラフ(c)は、比較例として、遮蔽壁52が存在しない従来の構成について、内気センサ44の検出温度を表す。ここで、横軸は、輻射ヒータ40を作動させたときからの経過時間を表す。左側の縦軸は、内気センサ44が検出した温度を表す。右側の縦軸は、輻射ヒータ40の温度を表す。なお、右側の縦軸が表す温度範囲と、左側の縦軸が表す温度範囲とは、互いに異なる。また、車室12c内の温度は、ほぼ一定に維持されている。
【0033】
グラフ(a)に示されるように、輻射ヒータ40の温度は、輻射ヒータ40を作動させてから短時間(例えば、1分程度)で、その設定温度まで急速に上昇して、その後はほぼ一定に維持される。これに対して、グラフ(b)に示されるように、内気センサ44の検出温度は、輻射ヒータ40の温度が大きく上昇した後でも、その温度上昇幅dT1が比較的に小さな値に抑制されている。一方、グラフ(c)に示されるように、遮蔽壁52が存在しない従来の構成では、輻射ヒータ40の温度上昇に伴って、内気センサ44の検出温度に、比較的に大きな温度上昇幅dT2が見受けられた。このように、内気センサ44とステアリングコラム34との間に設けられた遮蔽壁52が、輻射ヒータ40が内気センサ44に与える影響を低減し得ることが確認された。
【0034】
一例ではあるが、
図3、4に示すように、ロアカバー38は、クリップによって、インパネ24の基材パネル24aに取り付けられている。前述したように、基材パネル24aの後方(即ち、車室12c側)には、センターパネル24bが取り付けられている。そのため、ロアカバー38に設けられた遮蔽壁52は、インパネ24のセンターパネル24bに覆われている。このような構成によると、遮蔽壁52は、車室12c内に露出することを避けることができ、これにより、車室内の意匠性が向上される。但し、遮蔽壁52は、必ずしもインパネ24で覆われている必要はなく、例えば、インパネ24の形状等に応じて、車室12c内に露出していてもよい。
【0035】
一例ではあるが、
図6に示すように、遮蔽壁52は、ロアカバー38からインパネ24のセンターパネル24bに向けて、車両10の前後方向に延在している。この場合、遮蔽壁52側のセンターパネル24bの裏面25に対向する端部52aは、センターパネル24bの裏面25に沿って延在している。このような構成によると、輻射ヒータ40から放射された輻射熱や、その輻射熱によって加熱された空気などが、内気センサ44に達することを効果的に抑制又は回避することができる。なお、ロアカバー38に設けられた遮蔽壁52は、センターパネル24bに代えて、又は加えて、インパネ24の他の構成部品に向けて、車両10の前後方向に延在していてもよい。
【0036】
一例ではあるが、上記に加えて、
図6では、遮蔽壁52の端部52aと、センターパネル24bの裏面25との間には、隙間Cが設けられている。この場合、特に限定されないが、遮蔽壁52の端部52aは、隙間Cが一定となるように、センターパネル24bの裏面25に沿って延在している。このような構成によると、輻射ヒータ40が内気センサ44に与える影響を効果的に低減できるとともに、異音の発生を効果的に抑制又は回避することができる。なお、遮蔽壁52の端部52aとセンターパネル24bの裏面25との間に、必ずしも隙間Cが設けられる必要はない。また、遮蔽壁52の端部52aとセンターパネル24bの裏面25との間の隙間Cは、必ずしも一定である必要はない。例えば、インパネ24の構成部品や、その構成部品の形状等に応じて、当該隙間Cの間隔が変化してもよい。
【0037】
一例ではあるが、
図3、4に示すように、ロアカバー38は、本体部分56と、固定部58とを有する。本体部分56は、ロアカバー38の意匠面を構成する部分であり、固定部58は、ロアカバー38を隣接する部品等に固定するための部分である。本体部分56は、ステアリングコラム34の下方に配置されている。固定部58は、本体部分56からインパネ24の基材パネル24aに向けて延びており、基材パネル24aに固定されている。特に限定されないが、本実施例では、遮蔽壁52が固定部58へ一体に形成されており、遮蔽壁52が安定して支持される構造が採用されている。このような構成によると、遮蔽壁52が、インパネ24を含む他の部品と意図せず接触して異音が発生することを抑制又は回避することができる。なお、他の実施形態において、固定部58は、インパネ24を構成する他の部材に固定されていてもよい。加えて、ロアカバー38は、必ずしも、本体部分56と、固定部58とを有する必要はない。例えば、本体部分56に設けられた取付孔に、他の構成部品側のクリップが嵌合することで、ロアカバー38が支持されてもよい。
【0038】
一例ではあるが、
図7に示すように、遮蔽壁52は、インパネ24の開口部36においてステアリングコラム34の周囲に形成される隙間から視認可能であるとともに、当該視認可能な視線の方向Sにおいて内気センサ44は遮蔽壁52の背後に位置している。このような構成によると、ユーザが当該隙間から不意にセンターパネル24bの裏面25を見た場合に、ユーザによって内気センサ44又は、内気センサ44と空調ユニット46とを接続するホース48が視認されることを、遮蔽壁52によって回避又は抑制することができる。従って、車室12c内の意匠性が向上される。
【0039】
一例ではあるが、上記した例に代えて、遮蔽壁52は、基材パネル24aやセンターパネル24bといったインパネ24に設けられていてもよい。この場合、遮蔽壁52は、インパネ24と一体として設けられていてもよいし、インパネ24とは別個の部品として設けられていてもよい。
【0040】
以上、いくつかの具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書又は図面に説明した技術要素は、単独であるいは組み合わせによって技術的有用性を発揮するものである。
【符号の説明】
【0041】
10 :車両
12 :ボディ
12c :車室
14f、14r :車輪
16 :モータ
18 :バッテリユニット
20 :電力制御ユニット
22 :電子制御ユニット
24 :インストルメントパネル
24a :基材パネル
24b :センターパネル
25 :裏面
26 :インパネリインフォースメント
28 :ステアリング装置
30 :ステアリングホイール
32 :ステアリングシャフト
34 :ステアリングコラム
36 :開口部
38 :ロアカバー
40 :輻射ヒータ
42 :コラムカバー
44 :内気センサ
44a :吸気口
46 :空調ユニット
48 :ホース
50 :通気口
52 :遮蔽壁
52a :端部
56 :本体部分
58 :固定部
60 :エアバッグ
C :隙間