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特許7498141溶接システム、溶接方法、溶接ロボット及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】溶接システム、溶接方法、溶接ロボット及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/095 20060101AFI20240604BHJP
   B23K 31/00 20060101ALI20240604BHJP
   B23K 9/12 20060101ALI20240604BHJP
   B25J 13/00 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B23K9/095 510B
B23K31/00 H
B23K9/12 331F
B25J13/00 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021071100
(22)【出願日】2021-04-20
(65)【公開番号】P2022165668
(43)【公開日】2022-11-01
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】竹村 義也
(72)【発明者】
【氏名】高田 篤人
(72)【発明者】
【氏名】福永 敦史
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 康晴
【審査官】後藤 泰輔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0076128(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0001423(US,A1)
【文献】実開昭57-50041(JP,U)
【文献】特開2008-275482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/095
B23K 31/00
B23K 9/12
B25J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接トーチと一体的に可動する可動部を有する溶接ロボットと、
前記溶接ロボットの動きを制御する制御装置と、
前記可動部に取り付けられ、測定軸上に存在する被溶接物のパス間温度を非接触で測定する温度センサと
を有し、
前記溶接トーチの中心軸と前記温度センサの測定軸は空間において立体的に交差する関係にあり、当該溶接トーチの中心軸と当該温度センサの測定軸とが立体的に交差する箇所は、当該溶接トーチの中心軸上においては当該溶接トーチの先端より先であり、
前記制御装置は、事前に計算されたパス間温度の測定位置に前記温度センサの測定軸が位置するように、前記溶接トーチの動きを制御する
ことを特徴とする溶接システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記被溶接物の形状に関するデータに基づいて前記測定位置を計算する計算部を更に有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の溶接システム。
【請求項3】
溶接時は前記温度センサを覆い、パス間温度の測定時は少なくとも受光部を露出する開閉式の保護機構と、前記温度センサの受光部を清掃する空気を噴射する噴射機構との両方又は一方を更に有する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の溶接システム。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記測定位置のパス間温度の管理に用いる閾値を設定する設定部と、
前記温度センサにより測定されたパス間温度が、前記閾値を超えたか否か判定する判定部と、
を更に有し、
前記制御装置は、
測定されたパス間温度が前記閾値を超える場合、次のパスの開始の待機、前記被溶接物の冷却、及び、次のパスとは異なる作業の実行のうち少なくとも1つ以上を実行し、
その後、再び測定されたパス間温度が前記閾値以下の場合、次のパスの再開を指示する、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の溶接システム。
【請求項5】
前記判定部において、測定されたパス間温度が前記閾値以下と判定された場合、測定されたパス間温度を含む測定に関連するデータを記憶部に記録する、
ことを特徴とする請求項4に記載の溶接システム。
【請求項6】
前記制御装置は、特定のパスの直前に限り、前記測定位置のパス間温度の測定を指示する、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の溶接システム。
【請求項7】
前記制御装置は、
予め記録されている過去の前記被溶接物の形状に関連するデータ及び溶接条件データと、今回の前記被溶接物の形状に関連するデータ及び溶接条件データとを比較し、
特定のパスに関するパス間温度の測定のタイミングを判定し、パス間温度の測定を指示する、
ことを特徴とする請求項4~6のいずれか1項に記載の溶接システム。
【請求項8】
前記制御装置は、
前記判定部が、測定されたパス間温度が前記閾値を超えると判定した場合、
予め記録されている過去の前記測定に関連するデータ、前記被溶接物の形状に関連するデータ及び溶接条件データのうちの少なくとも1つ以上と、今回の測定で新たに記録された測定に関連するデータ、前記被溶接物の形状に関連するデータ及び溶接条件データのうちの少なくとも1つ以上とを比較し、
比較の結果に基づき、待機時間又は冷却時間の予測が可能な場合には、
自然冷却に必要な前記待機時間を予測して次のパスの開始の待機を指示し、若しくは、必要な前記冷却時間を予測して前記被溶接物の冷却を指示し、
又は、
予測された前記待機時間、若しくは、予測された前記冷却時間が一定時間以上の場合、次のパスとは異なる作業の実行を指示する
予測部を更に有する、
ことを特徴する請求項4~7のいずれか1項に記載の溶接システム。
【請求項9】
前記判定部が、測定されたパス間温度が前記閾値を超えると判定した場合、前記測定されたパス間温度と前記閾値の差の値を算出し、当該算出された差の値に応じて、次のパスの開始の待機、前記被溶接物の冷却、及び、次のパスとは異なる作業のいずれを実行するかを判断して指示する、
ことを特徴とする請求項4~7のいずれか1項に記載の溶接システム。
【請求項10】
前記可動部は、複数の駆動軸を有するアームの先端部に連結される、
ことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の溶接システム。
【請求項11】
溶接トーチと一体的に可動する可動部と、
前記可動部に取り付けられ、測定軸上に存在する被溶接物のパス間温度を非接触で測定する温度センサと
を有し、
前記溶接トーチの中心軸と前記温度センサの測定軸は空間において立体的に交差する関係にあり、当該溶接トーチの中心軸と当該温度センサの測定軸とが立体的に交差する箇所は、当該溶接トーチの中心軸上において当該溶接トーチの先端より先である、
ことを特徴とする溶接ロボット。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか1項に記載の溶接システムを用いて前記測定位置のパス間温度を測定する処理と、
測定されたパス間温度が閾値以下の場合、次のパスを続行する処理と、
測定されたパス間温度が前記閾値を超える場合、予め定めた時間の経過後に、前記測定位置のパス間温度を1又は複数回測定し、測定されたパス間温度が当該閾値以下になった後、次のパスの開始を指示する処理と
を有することを特徴とする溶接システムを使用した溶接方法。
【請求項13】
コンピュータに、
請求項1~9のいずれか1項に記載の溶接システムを用いて前記測定位置のパス間温度を測定する機能と、
測定されたパス間温度が閾値以下の場合、次のパスを続行する機能と、
測定されたパス間温度が前記閾値を超える場合、予め定めた時間の経過後に、前記測定位置のパス間温度を1又は複数回測定し、測定されたパス間温度が当該閾値以下になった後、次のパスの開始を指示する機能と
を実現させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接システム、溶接方法、溶接ロボット及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、多くの分野で溶接ロボットが使用され、溶接作業の自動化が進められている。開先を多層盛りで溶接する場合、パス間温度の測定が求められることがある。パス間温度とは、多層盛り溶接において次のパスを溶接する直前の溶接金属及び近接する母材(以下「ワーク」又は「被溶接物」という)の温度である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-275482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、溶接トーチと一体的に可動するトーチクランプの上面に温度センサが取り付けられている場合、パス間温度を測定する度に、温度センサと溶接金属又はそれに近接するワーク上の特定の位置(以下「測定点」という)との間に溶接トーチが位置しないように溶接トーチを移動させる必要がある。その際、溶接トーチとワークとの干渉を避けるために溶接トーチをワークから離す動作、溶接トーチを移動させて温度センサをワークに向ける動作、及び、温度センサがパス間温度を測定する位置に調整する動作が必要となり、測定の準備に要する時間が長くなる。
【0005】
本発明の目的は、パス間温度を測定するための測定位置へ温度測定装置を配置するまでに、溶接ロボットと周囲の部材とが干渉する危険性を低減しつつ、配置までの時間の短縮を実現できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的のもと、1つの発明として、溶接トーチと一体的に可動する可動部を有する溶接ロボットと、溶接ロボットの動きを制御する制御装置と、可動部に取り付けられ、測定軸上に存在する被溶接物のパス間温度を非接触で測定する温度センサとを有し、溶接トーチの中心軸と前記温度センサの測定軸は空間において立体的に交差する関係にあり、当該溶接トーチの中心軸と当該温度センサの測定軸とが立体的に交差する箇所は、溶接トーチの中心軸上においては溶接トーチの先端より先であり、制御装置は、事前に計算されたパス間温度の測定位置に温度センサの測定軸が位置するように、溶接トーチの動きを制御する溶接システムを提供する。
【0007】
ここでの制御装置は、被溶接物の形状に関するデータに基づいて測定位置を計算する計算部を更に有することが好ましい。
また、溶接システムは、溶接時は温度センサを覆い、パス間温度の測定時は少なくとも受光部を露出する開閉式の保護機構と、温度センサの受光部を清掃する空気を噴射する噴射機構との両方又は一方を更に有することが望ましい。
また、制御装置は、測定位置のパス間温度の管理に用いる閾値を設定する設定部と、温度センサにより測定されたパス間温度が閾値を超えたか否か判定する判定部とを更に有し、制御装置は、測定されたパス間温度が閾値を超える場合、次のパスの開始の待機、被溶接物の冷却、及び、次のパスとは異なる作業の実行のうち少なくとも1つ以上を実行し、その後、再び測定されたパス間温度が閾値以下の場合、次のパスの再開を指示することが望ましい。
前記判定部において、測定されたパス間温度が閾値以下と判定された場合、測定されたパス間温度を含む測定に関連するデータを記憶部に記録することが望ましい。
【0008】
また、制御装置は、特定のパスの直前に限り、測定位置のパス間温度の測定を指示することが望ましい。
また、制御装置は、予め記録されている過去の被溶接物の形状に関連するデータ及び溶接条件データと、今回の被溶接物の形状に関連するデータ及び溶接条件データとを比較し、特定のパスに関するパス間温度の測定のタイミングを判定し、パス間温度の測定を指示することが望ましい。
また、制御装置は、判定部が、測定されたパス間温度が閾値を超えると判定した場合、予め記録されている過去の測定に関連するデータ、被溶接物の形状に関連するデータ及び溶接条件データのうちの少なくとも1つ以上と、今回の測定で新たに記録された測定に関連するデータ、被溶接物の形状に関連するデータ及び溶接条件データのうちの少なくとも1つ以上とを比較し、比較の結果に基づき、待機時間又は冷却時間の予測が可能な場合には、自然冷却に必要な待機時間を予測して次のパスの開始まで待機を指示し、若しくは、必要な冷却時間を予測して被溶接物の冷却を指示し、又は、予測された待機時間、若しくは、予測された冷却時間が一定時間以上の場合、次のパスとは異なる作業の実行を指示する予測部を更に有することが望ましい。
なお、判定部が、測定されたパス間温度が閾値を超えると判定した場合、測定されたパス間温度と閾値の差の値を算出し、算出された差の値に応じて、次のパスの開始の待機、被溶接物の冷却、及び、次のパスとは異なる作業のいずれを実行するかを判断して指示することが望ましい。
可動部は、複数の駆動軸を有するアームの先端部に連結されることが望ましい。
【0009】
別の発明として、溶接トーチと一体的に可動する可動部と、可動部に取り付けられ、測定軸上に存在する被溶接物のパス間温度を非接触で測定する温度センサとを有し、溶接トーチの中心軸と前記温度センサの測定軸は空間において立体的に交差する関係にあり、当該溶接トーチの中心軸と当該温度センサの測定軸とが立体的に交差する箇所は、溶接トーチの中心軸上においては溶接トーチの先端より先である溶接ロボットを提供する。
更に別の発明として、前述の溶接システムを用いて測定位置のパス間温度を測定する処理と、測定されたパス間温度が閾値以下の場合、次のパスを続行する処理と、測定されたパス間温度が閾値を超える場合、予め定めた時間の経過後に、測定位置のパス間温度を1又は複数回測定し、測定されたパス間温度が閾値以下になった後、次のパスの開始を指示する処理とを有する溶接方法を提供する。
【0010】
さらに、別の発明として、前述の溶接システムを用いて測定位置のパス間温度を測定する機能と、測定されたパス間温度が閾値以下の場合、次のパスを続行する機能と、測定されたパス間温度が閾値を超える場合、予め定めた時間の経過後に、測定位置のパス間温度を1又は複数回測定し、測定されたパス間温度が閾値以下になった後、次のパスの開始を指示する機能とをコンピュータに実現させるプログラムを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、パス間温度を測定するための測定位置に温度測定装置を配置するまでに、溶接ロボットと周囲の部材とが干渉する危険性を低減しつつ、配置までの時間の短縮を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態の溶接システムの全体図である。
図2】基準姿勢の溶接ロボットにおけるツール部と温度測定装置の部分を拡大してY軸方向から見た図である。(A)は温度測定装置の取付面側から見た図であり、(B)は温度測定装置の取付面側をX軸に対して斜め前方から見た図である。
図3】基準姿勢の溶接ロボットにおけるツール部と温度測定装置の部分を拡大してZ軸方向から見た図である。
図4】溶接トーチの中心軸と温度センサの測定軸との位置関係を説明する他の図である。(A)は溶接ロボットにおけるツール部と温度測定装置の部分を温度測定装置の取付面側から見た図であり、(B)は溶接ロボットのうち溶接トーチの部分を正面から見た図であり、(C)は溶接ロボットのうち溶接トーチの部分を上方から見た図である。
図5】制御装置が備える機能を説明する図である。
図6】パス間温度を測定する位置を説明する図である。(A)は溶接の対象である2つのワークを上面から見た図であり、(B)は開先を側面側から見た図である。
図7】溶接システムによる溶接の開始前に実行される処理動作の一例を説明するフローチャートである。
図8】溶接システムを用いた溶接動作の実行例を説明するフローチャートである。
図9】1つのパスが終了した時点におけるワークと溶接トーチ等との位置関係を示す図である。(A)は溶接トーチ等を温度センサの取付面側から見た図であり、(B)は溶接トーチ等を上面から見た図である。
図10】パス間温度を測定する場合における溶接トーチ等の位置の調整を説明する図である。(A)は溶接トーチ等を温度センサの取付面側から見た図であり、(B)は溶接トーチ等を上面から見た図である。
図11】比較例の溶接システムにおける、1つのパスが終了した時点におけるワークと溶接トーチ等との位置関係を示す図である。(A)は溶接トーチ等を図9(A)と同じ側から見た図であり、(B)は溶接トーチ等を上面から見た図である。
図12】比較例の溶接システムでパス間温度を測定する場合における溶接トーチ等の位置の調整を説明する図である。(A)は溶接トーチ等を図10(A)と同じ側から見た図であり、(B)は溶接トーチ等を上面から見た図である。
図13】比較例の溶接システムにおいて、温度センサの測定軸を、パス間温度の測定に用いる位置に向ける動作を説明する図である。(A)は溶接トーチ等を図10(A)と同じ側から見た図であり、(B)は溶接トーチ等を上面から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る溶接システム、溶接方法、溶接ロボット及びプログラムの実施の形態の例を説明する。なお、各図は、本発明の説明のために作成されたものであり、本発明の実施の形態は、図示の内容に限らない。
【0014】
<システムの全体構成>
図1は、本実施形態の溶接システム1の全体図である。
なお、図1に示すように、本実施形態の説明において、地面に水平方向は、X軸およびY軸とする。X軸とY軸とは、直交する。また、鉛直方向は、Z軸とする。Z軸は、X軸およびY軸に対してそれぞれ直交する。
図1に示すように、溶接システム1は、溶接の対象である被溶接物の一例としてのワークW同士を溶接する溶接ロボット10と、圧縮空気を供給する供給部の一例としてのエアコンプレッサ70と、溶接ロボット10の動作を制御する制御装置80と、溶接電流を供給するための電源90とを有する。
【0015】
<溶接ロボット10>
溶接ロボット10は、用途に応じて様々な種類がある。本実施形態の説明では、鉄骨の溶接に使用される溶接ロボット10の例を用いる。また、本実施形態の溶接ロボット10は、多関節ロボットである。さらに、本実施形態の溶接ロボット10は、ワークWに対してアーク溶接を行うロボットである。
図1に示すように、溶接ロボット10は、基台部100と、可動するマニピュレータ部20と、マニピュレータ部20に装着されるツール部30と、を有する。さらに、溶接ロボット10は、制御装置80に電気信号等を中継したり、エアコンプレッサ70から圧縮空気を中継したりする中継ボックス35と、温度を測定する温度測定装置40と、を有する。
【0016】
<基台部100>
基台部100は、例えば床等の設置対象に固定される。そして、基台部100は、マニピュレータ部20を含め溶接ロボット10の各構成部を支持する。
【0017】
<マニピュレータ部20>
マニピュレータ部20は、旋回部21、下腕部22、上腕部23、手首旋回部24、手首曲げ部25および手首回転部26を有する。なお、以下の説明において、旋回部21、下腕部22、上腕部23、手首旋回部24、手首曲げ部25および手首回転部26を区別しない場合には、各々を「リンク部」と称する。
【0018】
旋回部21は、鉛直方向に沿った第1駆動軸S1を介して基台部100に接続する。そして、旋回部21は、第1駆動軸S1回りに基台部100に対して旋回可能である。
下腕部22は、水平方向に沿った第2駆動軸S2を介して旋回部21に接続する。下腕部22は、第2駆動軸S2回りに旋回部21に対して回転可能である。
上腕部23は、水平方向に沿った第3駆動軸S3を介して下腕部22に接続する。上腕部23は、第3駆動軸S3回りに下腕部22に対して回転可能である。
【0019】
手首旋回部24は、第4駆動軸S4を介して上腕部23に接続する。手首旋回部24は、第4駆動軸S4回りに上腕部23に対して回転可能である。
手首曲げ部25は、水平方向に沿った第5駆動軸S5を介して手首旋回部24に接続する。手首曲げ部25は、第5駆動軸S5回りに手首旋回部24に対して回転可能である。
手首回転部26は、第6駆動軸S6を介して手首曲げ部25に接続する。手首回転部26は、第6駆動軸S6回りに手首曲げ部25に対して回転可能である。そして、本実施形態の手首回転部26には、ツール部30が装着される。
そして、マニピュレータ部20は、第1駆動軸S1~第6駆動軸S6を回転中心として、各リンク部を動かすことで、ワークWに対して任意の位置にツール部30の後述する溶接トーチ31を移動させる。
【0020】
続いて、溶接ロボット10の基準姿勢について説明する。
本実施形態における基準姿勢とは、溶接ロボット10における第1駆動軸S1~第6駆動軸S6の回転角度が、予め定められた基準に対して成す角度が0度となる原点角度に設定された状態である。
本実施形態において、原点角度は、溶接ロボット10が以下の状態となる角度であることを例示できる。例えば、図1に示すように、原点角度は、下腕部22が鉛直方向に沿った状態にする第2駆動軸S2の角度である。さらに、原点角度は、上腕部23および手首曲げ部25がそれぞれ水平方向に沿った状態にする第3駆動軸S3および第5駆動軸S5の角度である。さらに、原点角度は、第2駆動軸S2、第3駆動軸S3および第5駆動軸S5が相互に平行となる状態にする第1駆動軸S1、第4駆動軸S4および第6駆動軸S6の角度である。
【0021】
<ツール部30>
ツール部30は、溶接する溶接トーチ31と、溶接トーチ31を支持するトーチ支持部32と、を有する。
溶接トーチ31は、溶接ワイヤを送給しつつ、電源90より供給された電流を当該溶接ワイヤに流してワークWに溶接ビードを形成する。
トーチ支持部32は、一端部にて溶接トーチ31を保持する。また、トーチ支持部32は、他端部にて手首回転部26に連結される。そして、トーチ支持部32は、手首回転部26と一体的に移動する。さらに、トーチ支持部32は、支持する溶接トーチ31を手首回転部26と一体的に移動させる。
【0022】
なお、本実施形態の溶接ロボット10は、ツール部30において、上述した溶接トーチ31とは別のツールに交換可能になっている。本実施形態の溶接ロボット10では、ツール部30として、溶接トーチ31およびトーチ支持部32に代えて、スラグチッパーを手首回転部26に装着することが可能になっている。スラグチッパーは、ワークWに形成された溶接ビードにて発生したスラグを除去するためのツールである。スラグチッパーは、例えば、振動するニードルを溶接ビードに当てることで、溶接ビードにて発生したスラグを取り除く。
【0023】
<中継ボックス35>
中継ボックス35は、エア制御部351と、温度センサアンプ352とを有している。
本実施形態では、空気の流動経路(以下「空気経路」という)によって、エアコンプレッサ70からスラグチッパーなどのツールに圧縮空気が供給される。また、空気経路によって、エアコンプレッサ70から後述するエアシリンダ部60に圧縮空気が供給される。
【0024】
そして、エア制御部351は、空気経路における圧縮空気の流れを制御する。エア制御部351は、エア流速制御弁を用いて、空気経路を流れる圧縮空気の流速を制御する。また、エア制御部351は、エア開閉制御弁を用いて、空気経路における圧縮空気の流路の開閉を行う。これによって、エア制御部351は、空気経路を流れる圧縮空気の流速や流量を制御し、例えばスラグチッパーのブレードを駆動したり、後述するエアシリンダ部60を駆動したりする。
なお、エア制御部351は、制御装置80からの制御コマンドに基づいて動作する。
【0025】
温度センサアンプ352は、温度測定装置40のセンサケーブルと電気的に接続している。温度センサアンプ352は、センサケーブルを介して後述の温度センサ50から出力された電圧を増幅する。そして、温度センサアンプ352は、増幅した電圧を制御装置80に送る。なお、本実施形態では、制御装置80が、入力された電圧値を測定温度に換算する。ただし、温度センサアンプ352は、温度測定装置40から取得した電圧値を測定温度に換算し、制御装置80に送ってもよい。
【0026】
<温度測定装置40>
図2は、基準姿勢の溶接ロボット10におけるツール部30と温度測定装置40の部分を拡大してY軸方向から見た図である。(A)は温度測定装置40の取付面側から見た図であり、(B)は温度測定装置40の取付面側をX軸に対して斜め前方から見た図である。
図3は、基準姿勢の溶接ロボット10におけるツール部30と温度測定装置40の部分を拡大してZ軸方向から見た図である。
【0027】
図2に示すように、温度測定装置40は、マニピュレータ部20や、マニピュレータ部20に接続するトーチ支持部32など、溶接ロボット10において溶接トーチ31を移動させる可動部に設けられる。そして、本実施形態の温度測定装置40は、ワークWに対する一の溶接ビードの形成後であってワークWに次の溶接パスを溶接する前の所定期間に、一の溶接ビードの温度または一の溶接ビードの近傍のワークWの温度を測定する。なお、本実施形態の温度測定装置40は、上記の所定期間に、一の溶接ビードの温度および一の溶接ビードの近傍のワークWの温度の両方を測定してもよい。
【0028】
ここで、上述した、溶接ビードの近傍とは、ワークWにおける、ワークWに形成された溶接ビードから例えば約10mm離れた位置を例示することができる。さらに、一の溶接ビードにおける温度の測定位置は、例えば、形成された溶接ビードの長手方向における中央部の一箇所を例示することができる。なお、温度測定装置40は、一の溶接パスの溶接ビードの長手方向において異なる複数箇所の温度を測定してもよい。そして、この内容は、溶接ビードの近傍のワークWの温度を測定する場合においても同様である。
【0029】
図2に示すように、本実施形態の温度測定装置40は、ツール部30のトーチ支持部32に設けられている。上述したように、トーチ支持部32は、マニピュレータ部20の手首回転部26に接続している。従って、温度測定装置40は、トーチ支持部32を介して、手首回転部26に保持される。これによって、温度測定装置40は、マニピュレータ部20の末端である手首回転部26によって、溶接トーチ31と一体的に移動する。
また、本実施形態の溶接ロボット10では、温度測定装置40を、溶接トーチ31を支持するトーチ支持部32に設けることで、温度測定装置40と溶接トーチ31との相対的な位置関係を固定している。
【0030】
ここで、溶接ロボット10は、ワークWに対して溶接トーチ31を予め定められた位置に移動させて溶接を行う。この場合に、溶接ロボット10は、ワークWに対して溶接トーチ31を移動させるトーチ支持部32などの可動部が、ワークWに干渉しないように溶接トーチ31を移動させる必要がある。すなわち、溶接ロボット10において、溶接トーチ31の移動は、トーチ支持部32などの可動部の外形による制約を受けることになる。例えば、ワークWに対する溶接トーチ31の移動の妨げにならないように、図2に示すように、ツール部30の鉛直方向における上側の領域A1および下側の領域A2には、溶接トーチ31およびトーチ支持部32以外の構造部を設けないことが好ましい。
【0031】
そこで、図3に示すように、本実施形態の溶接ロボット10では、基準姿勢の溶接ロボット10を鉛直方向であるZ軸方向の上側であって、X軸方向にマニピュレータ部20が沿う方向から見た場合に、マニピュレータ部20の左右方向における一方の側に温度測定装置40が配置される。図3に示す例では、温度測定装置40は、溶接トーチ31側から見て、トーチ支持部32における紙面向かって左側に配置される。このように、本実施形態の温度測定装置40は、基準姿勢の溶接ロボット10において、ツール部30の鉛直方向における上側や鉛直方向における下側ではなく、左右方向における側部に配置される。
【0032】
さらに、図2に示すように、温度測定装置40は、基準姿勢の溶接ロボット10を水平方向であるY軸方向から見た場合に、ツール部30の外形である輪郭Cよりも内側に設けられる。そして、温度測定装置40は、ツール部30の左右方向における一方側に配置された状態においても、領域A1や領域A2に対して突出しないようにしている。
温度測定装置40は、トーチ支持部32のうち、X軸とZ軸で規定される面(以下「XZ面」ともいう)に対して着脱可能に取り付けられている。
【0033】
温度測定装置40は、トーチ支持部32に取り付けられる台座40Aと、台座40Aに対してY方向に開閉可能なカバー40Bとで構成される。カバー40Bは、箱状の部材である。
台座40Aには、例えば温度センサ50とエアシリンダ部60が取り付けられている。カバー40Bは、エアシリンダ部60により、台座40Aに対してY軸方向に開閉駆動される。パス間温度を測定する場合、カバー40Bは、開状態に駆動制御される。一方、パス間温度を測定しない場合、カバー40Bは、閉状態に駆動制御される。
【0034】
カバー40Bが開状態に駆動制御されると、温度センサ50が外部に露出され、ワークWの温度の測定が可能になる。温度センサ50は、測定位置におけるパス間温度の情報を電圧として出力する。本実施の形態における温度センサ50は、例えば100℃~600℃の範囲でパス間温度の測定が可能である。
一方、カバー40Bが閉状態に駆動制御されると、温度センサ50は、外部から遮蔽される。カバー40Bが閉状態に制御されることで、溶接時に発生するスパッタ、ヒューム及び輻射熱から、温度センサ50が保護される。すなわち、カバー40Bは、温度センサ50を、スパッタ等から保護する保護機構として機能する。
【0035】
本実施の形態の場合、カバー40Bの内側には、エア噴射機構も備え付けられている。エア噴射機構は既知である。従って、エア噴射機構の詳細な説明は省略する。空気の吹き出し口は、温度センサ50の受光部に付着したゴミや塵等を吹き飛ばせるように、温度センサ50の受光部に向けられている。ここでのエア噴出機構にも、エアコンプレッサ70から圧縮空気が供給され、エア噴射機構は、温度センサ50の清掃手段又は噴射機構として機能する。
【0036】
図3には、溶接トーチ31の中心軸L1と温度センサ50の測定軸L2を破線により表している。
図3の例では、溶接トーチ31がX軸に対して平行に位置決めされている。このとき、溶接トーチ31の中心軸L1は、ワイヤの軸と一致する。
図3に示すように、溶接トーチ31の中心軸L1を面内に含むXZ面と、温度センサ50の測定軸L2を面内に含むXZ面とは、Y軸方向に一定距離離れ、温度センサ50は、その測定軸L2を面内に含むXZ面が溶接トーチ31の中心軸L1を面内に含むXZ面に対して平行になるようにトーチ支持部32の側面に取り付けられている。
【0037】
このように、温度センサ50をトーチ支持部32の側面に取り付けることで、温度センサ50の測定軸L2と溶接トーチ31の中心軸L1との干渉が避けられている。
温度センサ50がパス間温度を測定する範囲は点ではなく、ある程度の広がりを有している。本実施の形態では、温度センサ50がパス間温度を測定する範囲を、測定視野とも言う。測定視野は、直径7~48mmの範囲内であればよく、例えば直径26mmである。測定軸L2は、この範囲の中心を意味する。
【0038】
本実施の形態における温度センサ50は、溶接トーチ31と一体的に移動する場合に周囲の部材と干渉するリスクが少ない、トーチ支持部32の側面に取り付けられる。このため、溶接ロボット10の姿勢を制御する場合でも、温度センサ50がワークW等と干渉するおそれが少なく済む。また、溶接トーチ31を他のツールに交換する場合にも、温度センサ50が交換作業を阻害することがない。また、温度センサ50をトーチ支持部32の側面に取り付けることで、温度センサ50と開先との距離を離すことができ、その分、温度センサ50が溶接時に発生するスパッタやヒュームを被る可能性を低減することができる。
【0039】
図4は、溶接トーチ31の中心軸L1と温度センサ50の測定軸L2との位置関係を説明する他の図である。(A)は溶接ロボット10におけるツール部30と温度測定装置40の部分を温度測定装置40の取付面側から見た図であり、(B)は溶接ロボット10のうち溶接トーチ31の部分を正面から見た図であり、(C)は溶接ロボット10のうち溶接トーチ31の部分を上方から見た図である。
図4では、溶接トーチ31から突出するワイヤの先端を、ワイヤ先端位置と呼ぶ。
中心軸L1と測定軸L2は、図4(B)や図4(C)に示すように、Y軸方向にオフセットしている。換言すると、測定軸L2を通るXZ面と中心軸L1が通るXZ面とは概略平行である。
【0040】
一方で、中心軸L1の傾きと測定軸L2のXZ面内における傾きは異なっている。このため、中心軸L1と測定軸L2は、XZ面内で立体的に交差する。図4では、中心軸L1と測定軸L2とが立体的に交差する位置を「立体的に交差する箇所X」と表現している。以下では、「立体的に交差する箇所X」に対応する中心軸L1上の点をX1といい、測定軸L2上の点をX2という。なお、立体的に交差する関係には、道路や鉄道でも見られる。
【0041】
前述したように、溶接トーチ31の中心軸L1と温度センサ50の測定軸L2は、図4(B)及び図4(C)に示すように、Y軸方向にオフセットした位置関係を満たしている。従って、測定軸L2のY軸方向の位置は、ワイヤ先端位置の座標から計算が可能である。
また、溶接トーチ31の中心軸L1と温度センサ50の測定軸L2は、図4に示すようにXZ面内で立体的に交差する位置関係を満たしている。従って、ワイヤ先端位置の座標から点X1の座標がわかれば、点X1に対応する点X2を通る測定軸L2がワークWの表面と交差する座標を計算することが可能である。なお、ワイヤ先端位置と点X1の距離は事前に計算又は測定が可能である。
【0042】
もっとも、溶接トーチ31の中心軸L1を通る所定の位置を原点とし、この原点をワイヤ先端位置の代わりに活用しても、原点と点X1との距離を同様に計算することができる。例えば中心軸L1を通り、かつ、溶接トーチ31が有するコンタクトチップの先端位置を原点としても、この原点の座標を用いることにより、原点と点X1との距離を計算又は測定することができる。また、中心軸L1を通り、かつ、コンタクトチップの先端位置からワイヤ突出し長さに相当する距離を原点としても、この原点の座標を用いることにより、原点と点X1との距離を同様に計算することができる。ワイヤ突出し長さに相当する距離とは、例えば10~40mmである。
【0043】
また、点X1の位置が分かれば、Y軸方向にオフセットする点X2の位置も分かるので、点X2をワークW上のパス間温度を測定する位置に概略一致させるように溶接トーチ31を容易に移動させることができる。
更に、温度センサ50の受光部と点X2との距離、すなわち測定距離が適切な範囲になるよう点X2の位置を調整すれば、測定されるパス間温度の精度を向上させることができる。測定距離は、500~1100mmの範囲内に設定することが好ましい。
また、パス間温度の測定回毎に、点X2の位置をワークW上のパス間温度を測定する位置に概略一致させてパス間温度を測定すれば、パス間温度を測定する際の測定距離を一定に保つことができる。その結果、測定されるパス間温度に重畳する誤差のばらつきを低減することができる。
【0044】
例えば1回目のパス間温度の測定に用いる測定距離が500mm、2回目のパス間温度の測定に用いる測定距離が1100mmの場合、測定条件が変わることで、ワークW上の実際のパス間温度が同じでも、測定されるパス間温度にばらつきが出る可能性がある。
一方で、本実施の形態のように、測定距離が一定に保たれる場合には、測定されたパス間温度の精度が向上する。
なお、ワークW上の所定位置のパス間温度を測定する場合には、点X2を所定位置に概略一致させる方法に限らない。例えば温度センサ50の測定軸L2がワークWの表面と交差する点の座標を計算し、同点の座標をワークW上の所定位置に概略一致させるように溶接トーチ31を移動させてもよい。温度センサ50の測定軸L2がワークWの表面と交差する点の座標は、点X2の座標を用いることで容易に計算できる。
【0045】
本実施の形態で使用する制御装置80は、例えばコンピュータによって構成され、1台又は複数台の溶接ロボット10の動きを制御する。本実施の形態の場合、制御装置80には、専用の装置を使用する。もっとも、制御装置80は、汎用のコンピュータでもよい。
コンピュータは、制御プログラムを実行する演算部と、起動プログラム等を記憶する不揮発性の半導体メモリと、制御プログラムが実行される揮発性の半導体メモリと、溶接ロボット10や温度センサ50から収集される各種の情報を記録するハードディスク装置等で構成されている。ハードディスク装置等は記憶部の一例である。
コンピュータとしての制御装置80には、入力装置や表示装置も接続される。
【0046】
図5は、制御装置80が備える機能を説明する図である。これらの機能は、アプリケーションプログラムの実行を通じて実現される。
本実施の形態で使用する制御装置80は、測定位置算出部81と、動作プログラム作成部82と、閾値設定部83と、閾値判定部84と、タイマー設定部85と、測定タイミング判定部86と、予測判定部87とを有している。
ここでの測定位置算出部81は、溶接対象であるワークW毎に、パス間温度を測定する位置を算出する機能部である。測定位置算出部81は、ワークWの形状に関するデータに基づいて、ワークW上でパス間温度を測定する位置を算出する。ワークWの形状に関するデータには、ワークWの寸法データや開先の形状データが含まれる。測定位置算出部81は計算部の一例である。
【0047】
ワークWの寸法データは、3次元データで与えられる。寸法データは、CAD(=Computer Aided Design)データとして与えられてもよいし、手入力により与えられてもよい。本実施の形態では、作業効率の向上を図るべく、CADデータを使用する。
開先の形状データは、開先の表面をワイヤタッチセンサによるタッチセンシングで測定してもよいし、カメラで撮像した開先の画像を用いて取得してもよいし、レーザセンサにより測定してもよい。
図6は、パス間温度を測定する位置を説明する図である。(A)は溶接の対象である2つのワークW1及びW2を上面から見た図であり、(B)は開先を側面側から見た図である。
【0048】
図6に示すように、パス間温度を測定する位置は、開先の上端面側の縁から、溶接線と直交する方向かつ遠ざかる方向に、規格で定められた距離だけ離れた点として規定されている。例えばJASS6の場合、パス間温度を測定する位置は、開先の縁から10mm離れた点と規定されている。
なお、開先の垂直面を構成するワークW1からワークW2の側に設けられる開先の縁までの距離は、タッチセンシング等による開先の形状情報とワークW2の板厚等から計算が可能である。
図6(A)の場合、パス間温度を測定する位置を1つだけ示しているが、パス間温度を測定する位置は複数でもよい。なお、パス間温度を測定する位置は、場合によっては、作業者が指定するワーク上の任意の位置としてもよい。
【0049】
動作プログラム作成部82は、測定位置算出部81より算出されたパス間温度を測定する位置を算出し、算出された位置の情報と、図3及び図4に説明した関係、すなわち、溶接トーチ31の中心軸L1と温度センサ50の測定軸L2との位置関係に基づき、温度センサ50の測定軸L2がパス間温度を測定する位置と概略一致するように溶接トーチ31を移動させてパス間温度を測定する動作プログラムを作成する機能部である。
動作プログラム作成部82を用いることで、作業者によるティーチングの作業が不要となり、作業の効率化が実現される。また、作業者によるティーチングの作業が不要となると共に、パス間温度の測定の準備に要する時間も短縮される。
【0050】
閾値設定部83は、パス間温度を管理するための閾値を設定する機能部である。ここでの閾値は、次のパスが始まるまでにワークWが満たすべきパス間温度の上限値を与える。
本実施の形態の場合、閾値には、例えば200℃~350℃の範囲の中から一つの値を選んで設定する。値の選択は、作業者が行ってもよいが、ワークWの形状に関する情報等に応じて推奨されるパス間温度が閾値として自動的に設定されてもよい。
【0051】
閾値判定部84は、温度センサ50が、パス間温度が閾値を超えたか否か判定し、判定の結果に応じた動作を指示する機能部である。
判定に用いるパス間温度は、温度センサ50が瞬時に測定した値(いわゆる瞬時値)でもよいし、一定時間内に連続的に取得された値の平均値でもよい。
本実施の形態の場合、閾値判定部84は、測定されたパス間温度が閾値を超えると判定した場合、次のパスの開始を一定時間待機させる動作、ワークWを冷却する動作、及び、次のパスとは異なる作業を実行する動作のうち少なくとも1つ以上を指示する。
【0052】
因みに、次のパスの開始を一定時間待機させる動作とは、ワークWを自然冷却することを意味する。また、ワークWを冷却する動作とは、例えば空気の吹きかけによる能動的なワークWの冷却を意味する。また、次のパスとは異なる作業を実行する動作とは、スラグの除去や別の個所の溶接等を意味する。異なる作業を実行している間、ワークWは自然冷却されることになる。
前述したいずれか1つ又は複数の動作を指示した場合、閾値判定部84は、同じ位置のパス間温度を再び測定し、測定されたパス間温度が閾値以下であれば次のパスの再開を指示する。
【0053】
なお、測定されたパス間温度が閾値以下の場合、閾値判定部84は、測定に関連するデータをハードディスク装置等に記録する。ここでの測定に関連するデータには、測定されたパス間温度の他、測定の日時、外気温、次のパスを待機させた時間、ワークWを冷却した時間、次のパスとは異なる作業を実行した時間等が含まれる。
なお、前述した測定に関連するデータは、ワークWの形状に関連するデータや溶接条件データに紐づけてハードディスク装置等に記録してもよい。これらのデータには、設定値や実測値が含まれる。
なお、ワークWの形状に関連するデータや溶接条件データは、ハードディスク装置等に予め記録されている。
また、新たにパス間温度が測定されるたび、新たに取得されたパス間温度の測定に関連するデータを、ワークWの形状に関連するデータや溶接条件データに紐づけてハードディスク装置等に記録してもよい。
【0054】
タイマー設定部85は、特定のパスの直前に限り、測定位置のパス間温度の測定を指示する機能部である。
本実施の形態の場合、1つのパスを開始する直前には毎回、パス間温度の測定を実行する。ただし、パス間温度の測定をスキップしたい場合、パス間温度を測定する代わりにタイマーを設定することが可能である。この場合、タイマー設定部85は、予め定めたパスの直前に限りパス間温度を測定するよう指示し、それ以外のパスではパス間温度の測定をスキップすることができる。
必要なタイミングでのみパス間温度を測定することで、パス間温度の測定に要する作業時間を短縮することができる。なお、タイマーの設定は、例えば作業者が行う。
【0055】
測定タイミング判定部86は、まず、ハードディスク装置等に予め記録されている過去のワークWの形状に関連するデータ及び溶接条件データと、今回のワークWの形状に関連するデータ及び溶接条件データとを比較する機能と、比較結果を使用して、次回のパス間温度の測定のタイミングを判定する機能と、パス間温度の測定を指示する機能とを有する機能部である。
前述したタイマー設定部85の場合には、作業者がパス間温度を測定するタイミングを設定しているが、測定タイミング判定部86は、過去のデータと今回のデータとの比較により測定のタイミングを自動的に判定する。
【0056】
例えば過去のデータと今回のデータとの間で、ワークWの形状に関するデータと溶接条件データとが同一であること、及び、過去のデータでは2回目のパスと3回目のパスの直前に測定された各パス間温度が閾値以下であったことが確認された場合、測定タイミング判定部86は、閾値以下になることが予想されるタイミングでのパス間温度の測定を実行すると判定する。
この機能により、適切なタイミングでパス間温度の測定が実行されることになり、パス間温度の測定に要する作業時間を短縮することができる。また、必要なタイミングを自動的に判定できるので、作業者の負担が軽減される。
【0057】
予測判定部87は、閾値判定部84が、パス間温度が閾値を超えると判定した場合に、自動的に冷却に必要な時間を予測する機能部である。予測判定部87は予測部の一例である。
本実施の形態における予測判定部87は、ハードディスク装置等に予め記録されている過去のパス間温度の測定に関連するデータ、ワークWの形状に関連するデータ、及び、溶接条件データのうちの少なくとも1つ以上と、今回の測定で新たに記録されたパス間温度の測定に関連するデータ、ワークWの形状に関連するデータ、及び、溶接条件データのうちの少なくとも1つ以上とを比較する機能と、比較の結果に基づき、待機時間又は冷却時間の予測が可能な場合には、自然冷却に必要な待機時間を予測して待機を実行するか又は必要な冷却時間を予測してワークWの冷却を実行するかを指示する機能とを有する機能部である。
なお、予測した待機時間又は予測した冷却時間が予め定めた一定時間以上の場合、予測判定部87は、次のパスとは異なる作業の実行を指示する。
この機能により、パス間温度を再測定するタイミングが最適化され、パス間温度の再測定までの時間の最短化が実現される。
【0058】
なお、予測判定部87には、測定されたパス間温度が閾値を超えると判定した場合、測定されたパス間温度と閾値の差の値を算出し、算出された差の値に応じて、次のパスの開始の待機、ワークWの冷却、及び、次のパスとは異なる作業のいずれを実行するかを判断して指示する機能を設けてもよい。
例えば測定されたパス間温度と閾値の温度差が200℃の場合にはワークWの冷却を指示し、温度差が100℃の場合にはワークWの自然冷却を指示する機能を予測判定部87に設ける。
この機能により、測定されたパス間温度と閾値との温度差に応じた適切な動作の指示が可能になり、作業効率の向上が実現される。
【0059】
なお、指示する動作を決定する場合には、測定されたパス間温度と閾値との温度差だけでなく、ワークWの寸法および形状に関する情報も含めてもよい。ワークWの寸法等が異なると、当初の温度差が同じでも、冷却の進み方に差が生じる可能性があるためである。例えば寸法が大きいワークWは、寸法が小さいワークWよりも早くパス間温度が下がる可能性がある。そこで、測定されたパス間温度と閾値との温度差に加え、ワークWの寸法等に応じて、指示する動作や待機の時間等を決定すれば、ワークWにより適した動作の選択が可能になり、作業効率の更なる向上も可能になる。
【0060】
<パス間温度の測定処理>
図7は、溶接システム1による溶接の開始前に実行される処理動作の一例を説明するフローチャートである。なお、図中に示す記号のSはステップを意味する。
まず、測定位置算出部81が、ワークWの形状に関するデータからワークW上でパス間温度を測定する位置を算出する(ステップ1)。
次に、動作プログラム作成部82が、ステップ1で算出された位置の情報と、溶接トーチ31の中心軸L1と温度センサ50の測定軸L2との位置の関係に基づき、温度センサ50の測定軸L2がステップ1で算出された位置と概略一致するように溶接トーチ31を移動させてパス間温度を測定する動作プログラムを自動作成する(ステップ2)。
以上の処理が終了すると、作成された動作プログラムによるパス間温度の測定が可能になる。
【0061】
図8は、溶接システム1を用いた溶接動作の実行例を説明するフローチャートである。図中に示す記号のSはステップを意味する。
まず、溶接タスクが開始される(ステップ11)。溶接タスクが開始されると、溶接ロボット10は、制御装置80の制御に従い、溶接トーチ31を開先の所定の位置に移動させ、溶接を開始する。
1つのパスが終了すると、パス間温度の測定が実行される(ステップ12)。ステップ12では、制御装置80が、事前に作成された動作プログラムに従い、温度センサ50の測定軸L2がワークW上のパス間温度を測定する位置に移動されるように溶接トーチ31を移動させる。移動が終了すると、制御装置80は、温度センサ50で測定された電圧差からパス間温度を算出する。
【0062】
次に、制御装置80は、測定されたパス間温度が閾値以下か否かを判定する(ステップ13)。
パス間温度が閾値以下の場合、制御装置80は、ステップ13で肯定結果を得る。この場合、制御装置80は、測定されたパス間温度と測定日時等をハードディスク装置等に記録し、溶接プログラムの再生を開始する(ステップ14)。溶接プログラムの再生が終了すると(ステップ15)、制御装置80は、溶接タスクを終了し(ステップ16)、次のパスへ移行する。
一方、パス間温度が閾値を超える場合、制御装置80は、ステップ13で否定結果を得る。この場合、制御装置80は、次のパスの開始を例えばn秒待機させた後(ステップ17)、再びパス間温度を測定する(ステップ12)。
なお、ステップ17では、待機の代わりに、ワークWの冷却や別の作業の実行を選択してもよい。
ステップ12においては、前述したタイマー設定部85や測定タイミング判定部86を使用して、パスの一部でパス間温度の測定の前に、異なる作業を行ってもよい。
【0063】
図9及び図10に、実施の形態で使用する溶接システム1によるパス間温度の測定時に実行される溶接ロボット10の動作例を説明する。
図9は、1つのパスが終了した時点におけるワークWと溶接トーチ31等との位置関係を示す図である。(A)は溶接トーチ31等を温度センサ50の取付面側から見た図であり、(B)は溶接トーチ31等を上面から見た図である。
溶接トーチ31の中心軸L1は溶接線上に位置している。図9では、温度センサ50の測定軸L2も描いているが、溶接時には温度の測定は行われない。実際、溶接時のカバー40Bは閉状態である。なお、測定軸L2がワークWの表面と交差する位置は、温度の測定に用いる位置よりも手首回転部26側に近い。
【0064】
図10は、パス間温度を測定する場合における溶接トーチ31等の位置の調整を説明する図である。(A)は溶接トーチ31等を温度センサ50の取付面側から見た図であり、(B)は溶接トーチ31等を上面から見た図である。図10には、図9との対応部分に対応する符号を付して示している。
測定軸L2の位置合わせでは、図10(A)に示すように溶接トーチ31等をZ軸の方向に移動させる動作と、図10(B)に示すように溶接トーチ31等をY軸の方向に移動させる動作が実行される。
【0065】
温度センサ50と溶接トーチ31は、いずれもトーチ支持部32に固定的に取り付けられているので、トーチ支持部32が移動しても、溶接トーチ31の中心軸L1と温度センサ50の測定軸L2の位置関係は不変である。従って、空間内における溶接トーチ31のZ軸の方向への移動量だけ、温度センサ50も移動する。温度センサ50が空間内でZ軸の方向に移動すれば、測定軸L2も同様に移動する。結果的に、温度センサ50のZ軸の方向への移動に伴って、測定軸L2がワークWの表面と交差する位置は溶接線に近づく方向に移動される。測定軸L2の移動は平行移動であるので、測定軸L2がワークWの表面と交差する位置のワークW上での移動量は容易に計算できる。空間内における温度センサ50のZ軸の方向への移動は、測定軸L2がワークWの表面と交差する位置が開先の縁から10mmの地点に達するように制御される。この動きも動作プログラムで管理されている。
【0066】
同様に、溶接線が延伸する方向にも、溶接トーチ31は移動される。図10の場合、溶接線が延伸する方向はY軸の方向である。溶接トーチ31の移動は、予め定めている温度を測定する位置に測定軸L2が達するように制御される。なお、溶接トーチ31の中心軸L1と温度センサ50の測定軸L2との溶接線の延伸方向へのオフセット長はセンサユニットの設計に合わせて、ソフトウェアに組み込んでいる値である。また、ここでの移動も平行移動である。従って、測定軸L2がワークWの表面と交差する位置のワークW上での移動量も容易に計算できる。
図10に示すように、本実施の形態の場合、パス間温度の測定時に必要になる測定軸L2の位置の調整は、Z軸方向とY軸方向の2方向への移動で済む。しかも、これらの移動に要する距離は、後述する比較例に比して短く済む。換言すると、移動に要する時間が短縮され、温度の測定が開始されるまでの時間が短縮される。加えて、図10に示すように、温度センサ50は、溶接トーチ31を支持するトーチ支持部32の側面に取り付けられているので、パス間温度の測定に伴う溶接トーチ31等の移動の際に、温度センサ50がワークW等の周囲の部材と干渉するリスクが少ない。
【0067】
<比較例>
参考までに、特許文献1に記載されている溶接システムにおけるパス間温度の測定時の動作を図11図12図13を用いて説明する。
図11は、比較例の溶接システムにおける、1つのパスが終了した時点におけるワークWと溶接トーチ31等との位置関係を示す図である。(A)は溶接トーチ31等を図9と同じ側から見た図であり、(B)は溶接トーチ31等を上面から見た図である。
図11には、図9との対応部分に対応する符号を付して示している。
【0068】
図11の場合、温度センサ50は、トーチ支持部32の上面に取り付けられている。すなわち、温度センサ50は、溶接トーチ31よりも高い位置に取り付けられている。図11の例では、測定軸L2がワークWの面と平行な向きになるように温度センサ50をトーチ支持部32に取り付けている。この場合、温度センサ50の測定軸L2の真下に溶接トーチ31が位置することになる。このため、溶接トーチ31が邪魔になり、温度センサ50の位置からはパス間温度を測定することはできない。
【0069】
また、図11の場合、温度センサ50が溶接トーチ31に近く、溶接トーチ31を他のツールに交換するのが困難である。また、トーチ支持部32の上面は、溶接時のスパッタやヒュームを浴びやすい。結果的に、温度センサ50が故障し易く、汚れにより測定に誤差も現れ易い。
図12は、比較例の溶接システムでパス間温度を測定する場合における溶接トーチ31等の位置の調整を説明する図である。(A)は溶接トーチ31等を図10と同じ側から見た図であり、(B)は溶接トーチ31等を上面から見た図である。図12には、図11との対応部分に対応する符号を付して示している。
【0070】
図12(A)に示すように、溶接トーチ31等がZ軸の方向に移動される。ここでの移動は、図13(A)で説明するように溶接トーチ31等を回転させる場合に、溶接トーチ31がワークWに干渉しない高さまで行う必要がある。このため、Z軸の方向への移動の距離は、図10(A)に示した実施の形態の場合に比して大きくなる。
【0071】
図13は、比較例の溶接システムにおいて、温度センサ50の測定軸L2を、パス間温度の測定に用いる位置に向ける動作を説明する図である。(A)は溶接トーチ31等を図10と同じ側から見た図であり、(B)は溶接トーチ31等を上面から見た図である。図13には、図12との対応部分に対応する符号を付して示している。
温度センサ50の測定軸L2をパス間温度の測定点に向けるには、図13(A)に示すように、溶接トーチ31等を90度回転させる必要がある。この90度の回転移動は、実施の形態では不要な動作である。しかも、90度の回転移動を伴う場合、アーム等の動きが大きくなり、位置合わせに必要な時間が実施の形態に比して長くなる。また、温度センサ50とワークWとの距離も遠くなり易く、測定されるパス間温度の精度も実施の形態に比して低くなる。
【0072】
<他の実施の形態>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上述の実施の形態に記載の範囲に限定されない。上述の実施の形態に、種々の変更又は改良を加えたものも、本発明の技術的範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
例えば前述の実施の形態では、測定されたパス間温度が閾値を超えた場合、ワークWのパス間温度が低下するのを待つ等の処理の後に次のパスを再開しているが、溶接自体を停止してもよいし、音やランプ等を通じてアラームを出力してもよい。
【0073】
また、前述の実施の形態では、溶接トーチ31の中心軸L1と温度センサ50の測定軸L2とがなす角(図4参照)が事前に定まっている場合を想定したが、なす角を調整可能にしてもよい。この場合、角度を調整する機構を使用する。物理的に角度を調整する機構には、例えば温度センサ50の受光部の角度を調整する棒、温度センサ50の本体の角度を可変する台座その他の部材がある。また、光学的に角度を調整する機構には、温度センサ50の受光部が受光の光路上に配置するレンズ等がある。角度を調整する機構は、初期位置をセッティングする場合や使用中のずれを調整したい場合に使用される。
【0074】
また、前述の実施の形態では、温度センサ50を、トーチ支持部32の側から溶接トーチ31の先端方向に向かって観察する場合にトーチ支持部32の右側の側面に取り付けているが、左側の側面に取り付けてもよい。また、温度センサ50の取り付け位置は、図4に示す関係を満たすならば、トーチ支持部32の正面側や下面側でも構わない。ただし、溶接時の溶接トーチ31の動きやワークWとの干渉がないことが条件である。
また、前述の実施の形態の場合、温度センサ50の測定軸L2は、図3に示すように、溶接トーチ31の中心軸L1と平行であったが、厳密な意味での平行でなくても構わない。ただし、平行に取り付けられる方が、温度センサ50の測定軸L2がワークWの表面と交差する点の計算が容易になる。
【0075】
また、前述の実施の形態の場合には、図7に示す動作プログラムの作成を溶接動作が開始される前に実行しているが、パス間温度の測定の度に実行してもよい。
また、前述の実施の形態の場合には、溶接ロボット10として鉄骨の溶接に使用される鉄骨溶接ロボットを想定しているが、パス間温度の測定が求められる用途であれば、鉄骨溶接ロボットに限らない。
また、前述の実施の形態では、溶接ロボット10が多関節ロボットの例を説明したが、単関節型のロボットでも構わない。
【符号の説明】
【0076】
1…溶接システム、10…溶接ロボット、30…ツール部、31…溶接トーチ、32…トーチ支持部、40…温度測定装置、40A…台座、40B…カバー、50…温度センサ、80…制御装置、81…測定位置算出部、82…動作プログラム作成部、83…閾値設定部、84…閾値判定部、85…タイマー設定部、86…測定タイミング判定部、87…予測判定部、L1…中心軸、L2…測定軸
図1
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図13