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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】自走式の橋形クレーン
(51)【国際特許分類】
   B66C 19/00 20060101AFI20240604BHJP
【FI】
B66C19/00 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021080059
(22)【出願日】2021-05-10
(65)【公開番号】P2022019551
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2022-12-09
(31)【優先権主張番号】63/051,926
(32)【優先日】2020-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000231198
【氏名又は名称】日本国土開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】関口 政一
(72)【発明者】
【氏名】小幡 博志
(72)【発明者】
【氏名】森本 秀敏
(72)【発明者】
【氏名】馬場 司
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-130868(JP,A)
【文献】特開2003-063780(JP,A)
【文献】特開2002-187690(JP,A)
【文献】実開平03-061487(JP,U)
【文献】特開2000-289980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 19/00-23/94
B65G 1/00
B66C 13/00-15/06
B66D 1/40
B66F 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降可能な第1吊り部と、
昇降可能であり、前記第1吊り部とは定格荷重が異なる第2吊り部と、
前記第1吊り部および前記第2吊り部を所定方向にガイドするガーダと、
前記ガーダを昇降させる昇降部と、
前記第2吊り部にかかる荷重を検出する荷重センサと、
前記昇降部により走行時には前記ガーダを下降させ、対象物の起立時には前記ガーダを上昇させ、前記起立時において、前記第1吊り部と前記第2吊り部により前記対象物を吊り上げ前記荷重センサにより前記第2吊り部に前記対象物の荷重がかかっていないことを検出した際に前記第2吊り部による前記対象物の支持を解除し、前記第1吊り部により前記対象物を鉛直方向に沿って支持させる制御装置と、を備えた自走式の橋形クレーン。
【請求項2】
基台に設けられた前輪と、
前記基台に設けられた後輪と、を備え、
前記第1吊り部の定格荷重は、前記第2吊り部の定格荷重よりも大きく、
前記前輪の大きさは、前記後輪の大きさよりも大きい請求項1記載の自走式の橋形クレーン。
【請求項3】
前記第1吊り部は前記前輪側に設けられ、
前記第2吊り部は前記後輪側に設けられている請求項2記載の自走式の橋形クレーン。
【請求項4】
走行時に前記対象物は、前記第1吊り部と前記第2吊り部とに懸架されており、
前記第1吊り部と前記第2吊り部とをガイドする部材に設けられたレベルセンサと、
前記レベルセンサの検出結果に基づいて、前記対象物の姿勢を調節する調節部と、を備えた請求項1から3のいずれか一項に記載の自走式の橋形クレーン。
【請求項5】
昇降可能であり、対象物を第1ワイヤにより吊り上げ可能な第1吊り部と、
昇降可能であり、前記対象物を第2ワイヤにより吊り上げ可能な第2吊り部と、
前記第2吊り部にかかる荷重を検出する荷重センサと、
前記対象物を支持する運搬架台と、
前記第1吊り部および前記第2吊り部を所定方向にガイドするガーダと、
前記ガーダを昇降させる昇降部と
走行時に、前記昇降部により前記ガーダを下降させ、前記第1吊り部により前記第1ワイヤを繰り出して前記対象物を前記運搬架台に保持させて、走行時には前記対象物に前記第1ワイヤのテンションを与えないで、前記対象物の起立時に、前記昇降部により前記ガーダを上昇させ、前記第1吊り部と前記第2吊り部とにより前記対象物を吊り上げ、前記荷重センサにより前記第2吊り部に前記対象物の荷重がかかっていないことを検出した際に前記第2吊り部による前記対象物の支持を解除し、前記第1吊り部により前記対象物を鉛直方向に沿って支持させる制御装置と、を備えた自走式の橋形クレーン。
【請求項6】
前記第2吊り部は、前記第2ワイヤを繰り出して前記対象物を前記運搬架台に保持させて、走行時には前記対象物に前記第2ワイヤのテンションを与えない請求項5記載の自走式の橋形クレーン。
【請求項7】
前記第1吊り部の定格荷重は、前記第2吊り部の定格荷重よりも大きい請求項6記載の自走式の橋形クレーン。
【請求項8】
前記運搬架台が前記対象物を支持していない際に、前記運搬架台を移動する移動部を備えている請求項5から7のいずれか一項に記載の自走式の橋形クレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自走式の橋形クレーンに関する。
本願は、2020年7月15日に米国に出願された米国特許仮出願第63051926号に基づいて優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
ストラドルキャリア(Straddle carrier)は、橋形(門形)構造であり、橋形構造の内側の支持アームにより対象物を懸架して、橋形構造の下部に備えたゴムタイヤにより自走して移動できるようになっている。
また、シリンダ(例えば空気圧シリンダ)により、ストラドルキャリアの高さ方向および幅方向の寸法を調節することが特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-169062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ストラドルキャリアは、港湾においてコンテナを移動させる用途に用いられており、高さ、幅、長さがそれぞれ10mを超える大型の装置であった。このため、ストラドルキャリアは、港湾以外の用途の提案が少なく、また、小型化(汎用化)のストラドルキャリアの提案もほとんどなかった。また、ストラドルキャリアは、不整地や傾斜路を走行することを想定されていなかった。
【0005】
そこで、本第1発明では、使い勝手のよい自走式の橋形クレーンを実現することを目的とする。
本第2発明では、安全性の高い自走式の橋形クレーンを実現することを目的とする。
本第3発明では、汎用化された自走式の橋形クレーンを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本第1発明に係る自走式の橋形クレーンは、昇降可能な第1吊り部と、昇降可能であり、前記第1吊り部とは定格荷重が異なる第2吊り部と、前記第1吊り部および前記第2吊り部を所定方向にガイドするガーダと、前記ガーダを昇降させる昇降部と、前記第2吊り部にかかる荷重を検出する荷重センサと、前記昇降部により走行時には前記ガーダを下降させ、対象物の起立時には前記ガーダを上昇させ、前記起立時において、前記第1吊り部と前記第2吊り部とにより前記対象物を吊り上げ前記荷重センサにより前記第2吊り部に前記対象物の荷重がかかっていないことを検出した際に前記第2吊り部による前記対象物の支持を解除し、前記第1吊り部により前記対象物を鉛直方向に沿って支持させる制御装置と、を備えている。
本第2発明に係る自走式の橋形クレーンは、昇降可能であり、対象物を第1ワイヤにより吊り上げ可能な第1吊り部と、昇降可能であり、前記対象物を第2ワイヤにより吊り上げ可能な第2吊り部と、前記第2吊り部にかかる荷重を検出する荷重センサと、前記対象物を支持する運搬架台と、前記第1吊り部および前記第2吊り部を所定方向にガイドするガーダと、前記ガーダを昇降させる昇降部と、走行時に、前記昇降部により前記ガーダを下降させ、前記第1吊り部により前記第1ワイヤを繰り出して前記対象物を前記運搬架台に保持させて、走行時には前記対象物に前記第1ワイヤのテンションを与えないで、前記対象物の起立時に、前記昇降部により前記ガーダを上昇させ、前記第1吊り部と前記第2吊り部とにより前記対象物を吊り上げ、前記第1吊り部は、前記対象物を鉛直方向に沿って支持させる制御装置と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本第1発明によれば、荷重センサにより第2吊り部に対象物の荷重がかかっていないことを検出した際に第2吊り部による対象物の支持を解除し、前記第1吊り部により前記対象物を鉛直方向に沿って支持させているので、使い勝手のよい自走式の橋形クレーンを実現することができる。
本第2発明によれば、荷重センサにより第2吊り部に対象物の荷重がかかっていないことを検出した際に第2吊り部による対象物の支持を解除し、前記第1吊り部により前記対象物を鉛直方向に沿って支持させているので、安全性の高い自走式の橋形クレーンを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本第1実施形態の自走式の橋形クレーンの概要図を示すものであり、図1(a)は自走式の橋形クレーンの上面図、図1(b)は自走式の橋形クレーン1の側面図、図1(c)は自走式の橋形クレーンの正面図である。
図2】本第1実施形態の主要部のブロック図である。
図3】一対の運搬架台が退避位置に位置するときを示す図である。
図4】本第1実施形態の建設現場を上から見た図である。
図5】本第1実施形態の建設現場を側面から見た断面図である。
図6】本第1実施形態の制御装置により実行される搬送に関するフローチャートを示す図である。
図7】本第1実施形態の制御装置により実行されるプレキャストコンクリートの起立に関するフローチャートを示す図である。
図8】本第1実施形態の自走式の橋形クレーンの動作の様子を示す概要図である。
図9】本第2実施形態の自走式の橋形クレーンの概要図を示すものであり、図9(a)は自走式の橋形クレーンの側面図、図9(b)は自走式の橋形クレーンの正面図である。
図10】変形例を示す自走式の橋形クレーン1の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の第1の実施形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施形態により、本発明が限定されるものではない。なお、説明の便宜上、鉛直方向をZ方向、水平面内において直交する二軸方向をX方向及びY方向とする。なお、本明細書ではストラドルキャリアを含む概念として自走式の橋形クレーンとして説明を行う。
【0010】
(第1実施形態)
自走式の橋形クレーン1は、本実施形態において、建設現場(例えば、物流倉庫)のプレキャストコンクリート60を搬送するものであり、不整地や、ランプウエイなどの傾斜地を走行するものである。
【0011】
図1は、本第1実施形態の自走式の橋形クレーン1の概要図を示すものであり、図1(a)は自走式の橋形クレーン1の上面図、図1(b)は自走式の橋形クレーン1の側面図、図1(c)は自走式の橋形クレーン1の正面図である。
【0012】
自走式の橋形クレーン1は、一対の走行レール2と、この一対の走行レール2の間に掛け渡されたガーダ3と、第1吊り部4と、第2吊り部5と、一対の走行レール2上をY方向に沿って移動する一対のサドル6と、ストッパ7と、を有している。
【0013】
また、自走式の橋形クレーン1は、一対の走行レール2を保持する上部側基部8と、昇降部9と、一対の下部側基部10と、一対の運搬架台11と、発電機12と、前輪13と、後輪14と、サスペンション15と、を有している。また、自走式の橋形クレーン1は、レベルセンサ16や、第1吊り部4にかかる荷重を検出する第1荷重センサ17や、第2吊り部5にかかる荷重を検出する第2荷重センサ18などの各種センサを有している。
【0014】
一対の走行レール2は、X方向に離間するとともに、Y方向に沿って設けられている。
ガーダ3は、一対のサドル6を介して一対の走行レール2に支持されており、この一対の走行レール2に沿ってY方向に移動可能である、また、ガーダ3は、第1吊り部4と第2吊り部5とのX方向の移動をガイドしている。
【0015】
第1吊り部4は、第2吊り部5と協働してプレキャストコンクリート60を懸架するものである。なお、吊り部の数は、第2吊り部5を省略して1つとしてもよく、3つ以上でもよい。
【0016】
第1吊り部4は、本実施形態において、モータや電磁ブレーキやワイヤなどを備えた電動ホイストであり、フック41と吊り具42とを有しており、定格荷重が20トンとしている。なお、本実施形態において、吊り具42は玉外し機能付きの吊り具を用いている。第1吊り部4は、電動ホイストによりガーダ3上をX方向に移動することができる。また、第1吊り部4は、Z方向にワイヤを繰り出すことができる。なお、第1吊り部4は、本実施形態において、前輪13側である前輪13の上方に設けられている。
【0017】
第2吊り部5は、本実施形態において、モータや電磁ブレーキやワイヤなどを備えた電動ホイストであり、フック51と吊り具52とを有しており、定格荷重が15トンとしている。なお、本実施形態において、吊り具52は玉外し機能付きの吊り具を用いている。本実施形態において、第1吊り部4の定格荷重は、第2吊り部5の定格荷重よりも大きいものとしている。詳細は後述するものの、これは、第1吊り部4単体にてプレキャストコンクリート60を吊れるようにするためである。なお、第2吊り部5は、電動ホイストによりガーダ3上をX方向に移動することができる。また、第2吊り部5は、Z方向にワイヤを繰り出すことができる。なお、第2吊り部5は、本実施形態において、後輪14側である後輪14の上方に設けられている。
【0018】
一対のサドル6は、X方向に離間して設けられており、ガーダ3を支持して不図示のモータにより一対の走行レール2上をY方向に移動するものである。
ストッパ7は、一対の走行レール2のそれぞれのY方向の端部側に設けられており、一対のサドル6のY方向の移動を機械的に規制するものである。
【0019】
上部側基部8は、中空の矩形状をしており、一対の走行レール2およびストッパ7を保持するものである。
昇降部9は、一端側が一対の下部側基部10に支持され、他端側に油圧ユニット19(図2参照)からの油圧によりZ方向に昇降する昇降機構を有している。昇降部9は、この昇降機構が上部側基部8に接続されている。本実施形態においては、昇降部9が6つ設けられているが、昇降部9は4つでもよい。昇降部9を上昇させるとともに、第1吊り部4と第2吊り部5とを駆動することにより、プレキャストコンクリート60を起立させることができる(詳細は後述)。このため、昇降部9のストロークは、図1(b)に示されているプレキャストコンクリート60のX方向の長さ分は少なくとも必要となる。なお、図1(a)の前輪13付近の2つの昇降部9は、図1(b)においてほぼ重なって見えるため、1つの昇降部9の図示を省略している。
【0020】
一対の下部側基部10は、Y方向に離間して設けられており、それぞれが矩形状の部材であり、X方向に沿って設けられている。一対の下部側基部10は、昇降部9や、一対の運搬架台11や、発電機12や、前輪13や、後輪14や、サスペンション15などを保持している。
【0021】
一対の運搬架台11は、プレキャストコンクリート60を支持するための架台である。一対の運搬架台11は、プレキャストコンクリート60を支持する際は、X方向に離間し、Y方向に延びた矩形状の部材である。第1吊り部4と第2吊り部5とが、玉掛けされたプレキャストコンクリート60を吊り上げる際には、一対の運搬架台11とプレキャストコンクリート60とが干渉してしまう。
【0022】
そこで、本実施形態では、玉掛けされたプレキャストコンクリート60を吊り上げる際に、一対の運搬架台11は不図示のモータにより、プレキャストコンクリート60と干渉しない退避位置へ退避している。図3は、一対の運搬架台11が退避位置に位置するときを示す図であり、一対の運搬架台11を点線で示している。なお、一対の運搬架台11は、プレキャストコンクリート60を所定位置に設置する場合にも退避位置へと退避する。
また、プレキャストコンクリート60に衝撃が加わらないように、一対の運搬架台11のプレキャストコンクリート60と接触する部分を木材や樹脂などの緩衝材料とすることが好ましい。
なお、自走式の橋形クレーン1は、第1吊り部4と第2吊り部5とが吊り上げたプレキャストコンクリート60が一対の運搬架台11に支持された状態で、自走する。自走式の橋形クレーン1が第1のランプウエィ56や第2のランプウエィ57の傾斜路を走行する場合は、第1吊り部4と第2吊り部5とのそれぞれのワイヤを下方に繰り出して、それぞれのワイヤのテンションがプレキャストコンクリート60に作用しないようにすることが安全上好ましい。
【0023】
発電機12は、自走式の橋形クレーン1や、第1吊り部4や、第2吊り部5や、一対のサドル6や、一対の運搬架台11を駆動させたりするための発電機(駆動部)である。本実施形態において、発電機12は、2つ設けてあり、それぞれの出力が37kVA~100kVA、好ましくは、75kVA~90kVAとしている。なお、発電機12を1つとして、その出力を75kVA~200kVA、好ましくは、150kVA~180kVAとしてもよい。
【0024】
前輪13は、取付け部材を介して一対の下部側基部10に取り付けられている。本実施形態において、前輪13の数は2つであり、前輪13の直径は1.3m~1.7mであるがこれに限定されるものではない。それぞれの前輪13には、車輪用シリンダ20(図2参照)が接続されており、X―Y平面の向きが調整されるようになっている。
【0025】
後輪14は、サスペンション15を介して一対の下部側基部10に取り付けられている。本実施形態において、後輪14の数は2つであり、後輪14の直径は0.8m~1.2mであるがこれに限定されるものではない。本実施形態では、自走式の橋形クレーン1が不整地や、ランプウエイなどの傾斜地を自走するため、前輪13の大きさが後輪の大きさよりも大きくなっている。しかしながら、前輪13の大きさと、後輪の大きさとを同じにしてもよく、前輪13の大きさよりも後輪14の大きさを大きくしてもよい。なお、それぞれの後輪14には、車輪用シリンダ20(図2参照)が接続されており、X―Y平面の向きが調整されるようになっている。本実施形態において、前輪13と後輪14とのそれぞれにはブレーキ21(図2参照)が設けられている。
【0026】
サスペンション15は、ばねとダンパとを備えており、路面の凹凸を緩衝している。サスペンション15による緩衝や、一対の運搬架台11のプレキャストコンクリート60と接触する部分を緩衝材料とすることなどによりプレキャストコンクリート60に衝撃が加わるのを防止している。なお、サスペンション15は、前輪13にも設けることが好ましい。
【0027】
レベルセンサ16は、ガーダ3に設けられ、ガーダ3のX―Y平面の水平度ひいては第1吊り部4および第2吊り部5のX―Y平面の水平度を検出するものである(詳細後述)。なお、レベルセンサ16は、一対のサドル6に設けるようにしてもよい。また、レベルセンサ16は省略することも可能である。
【0028】
第1荷重センサ17は、第1吊り部4にかかる荷重を検出するものであり、本実施形態においてロードセルを用いているがこれに限定されるものではない。
第2荷重センサ18は、第2吊り部5にかかる荷重を検出するものであり、本実施形態においてロードセルを用いているがこれに限定されるものではない。
なお、本実施形態において、第1荷重センサ17は、第1吊り部4にプレキャストコンクリート60の荷重がかかっていないことを検出するためにも用いられる。同様に、第2荷重センサ18は、第2吊り部5にプレキャストコンクリート60の荷重がかかっていないことを検出するためにも用いられる。
【0029】
図2は本第1実施形態の主要部のブロック図であり、以下図2を用いて自走式の橋形クレーン1の構成の説明を続ける。
油圧ユニット19は、昇降部9と、車輪用シリンダ20と、ブレーキ21とに油圧を供給し、昇降部9と、車輪用シリンダ20と、ブレーキ21とを駆動させる。
【0030】
ブレーキ21は、前輪13と後輪14とのそれぞれに設けられ、自走式の橋形クレーン1を制動するものである。本実施形態において、自走式の橋形クレーン1は、物流倉庫のランプウエイなどの傾斜地を自走するため、ブレーキ21が前輪13と後輪14とのそれぞれに設けられているが、前輪13もしくは後輪14のいずれか一方にブレーキ21を設けるようにしてもよい。
【0031】
ロータリーエンコーダ22は、第1吊り部4のワイヤの繰り出し量と、第2吊り部5のワイヤの繰り出し量とを検出するものであり、後述の制御装置25に検出結果を出力する。
【0032】
人感センサ23は、自走式の橋形クレーン1の近傍に人がいるかどうかを検出するセンサであり、本実施形態では赤外線センサを採用している。
メモリ24は、不揮発性のメモリ(例えばフラッシュメモリ)であり、自走式の橋形クレーン1を制御する各種プログラムや各種データが記憶されている。
【0033】
制御装置25は、CPUを備え、自走式の橋形クレーン1を制御しているものであり、本実施形態において、第1吊り部4と第2吊り部5とによるプレキャストコンクリート60の吊り上げ・吊り下げ動作や、第1吊り部4によるプレキャストコンクリート60の鉛直方向に沿った吊り上げ・吊り下げ動作などの制御を行う。なお、少なくとも、第1吊り部4と、上部側基部8と、昇降部9と、一対の下部側基部10と、前輪13と、後輪14とを含めて本体部を形成している。なお、この本体部に上述で説明した各構成要素を加えてもいい。
【0034】
(建設現場の説明)
ここで、本実施形態の建設現場50について、図4及び図5を用いて説明する。なお、本実施形態の建設現場50は物流倉庫の建設現場とするが、これに限定されるものではない。
図4は本第1実施形態の建設現場50を上から見た図であり、図5は本第1実施形態の建設現場を側面から見た断面図である。なお、図面が煩雑になるのを避けるためプレキャストコンクリート60は全部に符号を付さず、代表的なプレキャストコンクリート60に符号を付している。また、プレキャストコンクリート60の数も一例に過ぎない。
【0035】
建設現場50は、制作サイト54と、ストックヤード55と、第1のランプウエィ56と、第2のランプウエィ57と、1階フロア58と、2階フロア59と、を備えている。
【0036】
制作サイト54はプレキャストコンクリート60を制作する現場であり、本実施形態では、第1のランプウエィ56と第2のランプウエィ57と間の付近に設けられている。
ストックヤード55は、制作サイト54で制作されたプレキャストコンクリート60の一部を保管するヤードであり、本実施形態では2つのストックヤード55を設けておるが、ストックヤード55の数は任意に設定することができる。なお、ストックヤード55へのプレキャストコンクリート60の搬送は、自走式の橋形クレーン1により行われている。また、ストックヤード55から1階フロア58や2階フロア59へのプレキャストコンクリート60の搬送も自走式の橋形クレーン1により行われている。
【0037】
第1のランプウエィ56は、物流倉庫が完成後はトラックなどが走行する上り用の傾斜路である。本実施形態において、第1のランプウエィ56は、上階の建設に応じて建設されており、図4は2階フロア59までが建設されているため、2階フロアへと続く走行路が建設されておる。なお、本実施形態において、物流倉庫は建設中であるので、自走式の橋形クレーン1は、第1のランプウエィ56を上りと下りとの両方で利用している。
【0038】
第2のランプウエィ57は、物流倉庫が完成後はトラックなどが走行する下り用の傾斜路である。本実施形態において、第1のランプウエィ56は、上階の建設に応じて建設されており、図4は2階フロア59までが建設されているため、2階フロアへと続く走行路が建設されている。なお、本実施形態において、物流倉庫は建設中であるので、自走式の橋形クレーン1は、第2のランプウエィ57を上りと下りとの両方で利用している。
【0039】
1階フロア58および2階フロア59には、複数のプレキャストコンクリート60が立設されている。本実施形態において、プレキャストコンクリート60はX方向とY方向とにそれぞれ10m間隔で立設されているものとする。なお、実際に1階フロア58および2階フロア59に立設されるプレキャストコンクリート60の数は、その面積にもよるが一例を挙げると80~120本である。
【0040】
(自走式の橋形クレーンの寸法)
ここで、自走式の橋形クレーン1の寸法について説明を行う。プレキャストコンクリート60は、物流倉庫などの建設現場においては、図1に示すaの寸法(便宜上、長さともいう)が1m、bの寸法(便宜上、幅ともいう)が1m、aとbとに直交する部分の寸法(以下、直交寸法といい、便宜上、高さともいう)が5m~5.5mのものが多く使用されており、その重量は15トン前後である。なお、プレキャストコンクリート60には鉄筋が含まれている場合もある。
【0041】
aの寸法が1m、bの寸法が1m、直交寸法が5m~6mのプレキャストコンクリート60を搬送する場合、自走式の橋形クレーン1のX方向の寸法は、4m~10m、好ましくは6m~8mmとなる。これは、X方向の寸法が4m未満だとプレキャストコンクリート60が自走式の橋形クレーン1からはみ出す部分が多くなるからである。一方、X方向の寸法が10mを超えると自走式の橋形クレーン1が大型化し、その重量が重くなるからである。
【0042】
aの寸法が1m、bの寸法が1m、直交寸法が5m~6mのプレキャストコンクリート60を搬送する場合、自走式の橋形クレーン1のY方向の寸法は2m~5m、好ましくは、2.5m~3.5mとなる。これは、Y方向の寸法が2.5m未満だと、昇降部9と干渉する虞があったり、昇降部9の寸法を十分に取れなかったりするからである。一方、第1のランプウエィ56や第2のランプウエィ57の道幅が10mを少し超える程度なので、Y方向の寸法が5mを超えると2台の自走式の橋形クレーン1がすれ違うことができないからである。
【0043】
aの寸法が1m、bの寸法が1m、直交寸法が5m~6mのプレキャストコンクリート60を搬送する場合、自走式の橋形クレーン1のZ方向の寸法(昇降部9が降下状態のとき)は4.5m~6m、好ましくは、4.5m~5.5mとなる。前輪13の直径が1.3m~1.7mであり、aの寸法が1mであり、第1吊り部4と、第2吊り部5と、一対のサドル6と、上部側基部8と、昇降部9と、などを配置するとZ方向の寸法が4.5m未満だと、成り立たないからである。一方、第1のランプウエィ56や第2のランプウエィ57の天井までの高さが6mを少し超える程度なので、Z方向の寸法(昇降部9が降下状態のとき)が6mを超えるとランプウエィ57の天井と干渉してしまうからである。
【0044】
なお、15トン前後のプレキャストコンクリート60を時速3~5km/hで移動するためには、それぞれの発電機12の出力は、75kVA~90kVAあればよい。
【0045】
なお、プレキャストコンクリート60には、aの寸法と、bの寸法とは同じものの直交寸法が6.5mと長めのものもあり、鉄筋が含まれている場合にはその重量は20トンとなる。この場合、自走式の橋形クレーン1のY方向とZ方向との寸法は前述の寸法となるものの、X方向の寸法が5mから12m、好ましくは6m~8mmとなる。これは、X方向の寸法が5m未満だとプレキャストコンクリート60が自走式の橋形クレーン1からはみ出す部分が多くなるからである。一方、X方向の寸法が12mを超えると自走式の橋形クレーン1が大型化し、その重量が重くなるからである。また、トラック(30トン)のX方向の寸法が12mであり、第1のランプウエィ56や第2のランプウエィ57の曲率を考えると、X方向の寸法が12mを超えないことが安全走行上好ましい。
【0046】
なお、自走式の橋形クレーン1が20トンのプレキャストコンクリート60を3~5km/hで移動するためには、それぞれの発電機12の出力は、90kVA~100kVAあればよい。自走式の橋形クレーン1の速度が3~5km/hであれば、80~120本のプレキャストコンクリート60を数日で搬送することができる。
【0047】
以上のことから、自走式の橋形クレーン1のX方向の寸法を4mから6m、Y方向の寸法を2m~5m、好ましくは2.5m~3.5m、Z方向の寸法を4.5m~6m、好ましくは4.5m~5.5mとすることにより、建設現場において汎用性の高い自走式の橋形クレーン1を実現することができる。
【0048】
なお、プレキャストコンクリート60には、aの寸法と、bの寸法とは同じものの直交寸法が1.5mと短めのものもあり、鉄筋が含まれている場合にはその重量は4トン前後となる。この場合、プレキャストコンクリート60を制作サイト54や、ストックヤード55において起立した状態で自走式の橋形クレーン1に取り付けてもよい。この場合、第1吊り部4と第2吊り部5との一方を省略することができるので、自走式の橋形クレーン1のX方向の寸法を2m~9m、好ましくは3m~5mと小さくすることができる。
【0049】
なお、この場合でも自走式の橋形クレーン1のY方向の寸法は2mから5m、好ましくは、2.5m~3.5mとなり、Z方向の寸法は4.5m~6m、好ましくは、4.5m~5.5mとなる。
この場合でも、前述した汎用性の高い寸法を適用することも可能である。
なお、4トン程度のプレキャストコンクリート60を時速3~5km/hで移動するためには、それぞれの発電機12の出力は、37kVA~75kVAあればよい。
【0050】
(搬送に関するフローチャートの説明)
図6は、本第1実施形態の制御装置25により実行される自走式の橋形クレーン1の搬送に関するフローチャートを示す。
以下、図6を用いて制御装置25により実行されるフローチャートの説明を行う。なお、本実施形態において、本フローチャートは、制作サイト54にてプレキャストコンクリート60が第1吊り部4と第2吊り部5とに玉掛けされた際に実行される。なお、このとき、一対の運搬架台11は退避位置にある。
【0051】
制御装置25は、第1吊り部4と第2吊り部5とのそれぞれのワイヤによりプレキャストコンクリート60を吊り上げる(ステップS1)。制御装置25は、プレキャストコンクリート60が一対の運搬架台11のZ方向の位置より高くなるまでプレキャストコンクリート60を吊り上げる。
【0052】
制御装置25は、一対の運搬架台11を図3の点線で示す退避位置から図1に示す設置位置への移動する(ステップS2)。
次いで、制御装置25は、第1吊り部4と第2吊り部5とのそれぞれのワイヤによりプレキャストコンクリート60を吊り下げて、プレキャストコンクリート60を一対の運搬架台11に設置する(ステップS3)。なお、制御装置25は、ロータリーエンコーダ22の検出結果に基づき、1吊り部4と第2吊り部5とのそれぞれのワイヤのテンションがプレキャストコンクリート60に作用しないようにする。
【0053】
制御装置25は、自走式の橋形クレーン1の移動先を認識する(ステップS4)。ここでは、自走式の橋形クレーン1の移動先は、2階フロア59の第1のランプウエィ56側とする。制御装置25は、GNSSによる誘導や、電磁誘導などの公知の手法により自走式の橋形クレーン1を移動先まで移動させる。
【0054】
制御装置25は、人感センサ23が人を検出しているかどうか判断する(ステップS5)。制御装置25は、人感センサ23が人を検出していなければ移動先へ向け移動を開始する(ステップS6)。一方、制御装置25は、人感センサ23が人を検出していれば、人感センサ23が人を検出しなくなるまでステップS5を繰り返す。
【0055】
制御装置25は、所定のタイミング毎に移動先に到着したかどうかを判断する(ステップS7)。制御装置25は、移動先に到着してしれば本フローチャートを終了する。一方、制御装置25は、移動先に到着していなければ、移動先に到着するまでステップS5からステップS7を繰り返す。
【0056】
(プレキャストコンクリートの起立に関するフローチャートの説明)
図7は、本第1実施形態の制御装置25により実行されるプレキャストコンクリートの起立に関するフローチャートを示す図である。図8は、本第1実施形態の自走式の橋形クレーンの動作の様子を示す概要図である。以下、図7および図8を用いて説明を続ける。なお、図8では図面を見やすくするため、主要部の符号のみを図示している。
【0057】
本実施形態において、本フローチャートは、自走式の橋形クレーン1が2階フロア59の所定の位置に到着した際に実行される。プレキャストコンクリート60は、2階フロア59の所定の位置に到着した際には、図8(a)に示すように、一対の運搬架台11に設置されており、第1吊り部4と第2吊り部5とによるテンションがかかっていない状態である。
【0058】
制御装置25は、第1吊り部4と第2吊り部5とによりプレキャストコンクリート60を吊り上げるとともに、昇降部9を上方(+Z方向)に向けて駆動する(ステップS11)。第1吊り部4と第2吊り部5とは、図8(b)に示すようにプレキャストコンクリート60が一対の運搬架台11から離れるように吊り上げを開始する。制御装置25は、プレキャストコンクリート60の吊り上げが終了するタイミングで昇降部9を上方(+Z方向)に向けて駆動し、図8(c)に示すようにプレキャストコンクリート60が起立可能となる高さまで昇降部9の駆動を続ける。
【0059】
制御装置25は、不図示のモータにより一対の運搬架台11を退避位置へと移動させる(ステップS12)。これは、プレキャストコンクリート60を起立させる際に、プレキャストコンクリート60と一対の運搬架台11とを干渉させないためである。なお、一対の運搬架台11の退避は、図8(b)に示すようにプレキャストコンクリート60が一対の運搬架台11から離れたタイミングで行うことにより、ステップS1の吊り上げ作業が終了してから一対の運搬架台11を退避するのに比べて一連の作業時間を短縮することができる。
【0060】
制御装置25は、第2吊り部5を制御してプレキャストコンクリート60を起立させる(ステップS13)。制御装置25は、図8(d)に示すように第2吊り部5のワイヤを下方に繰り出す。次いで、第2吊り部5を図8(e)に示すように第1吊り部4側に向けて移動させる。制御装置25は、第2荷重センサ18の検出結果が所定値以下となり、第2吊り部5にプレキャストコンクリート60の荷重がかかっていないことを検出すると、図8(f)に示すように吊り具52は玉外し機能により玉外しされる。
【0061】
図8(f)に示す状態では、第1吊り部4がプレキャストコンクリート60の全荷重を受けるため、第1吊り部4の定格荷重が第2吊り部5の定格荷重よりも大きくなっている。
【0062】
制御装置25は、第1吊り部4をX方向(第2吊り部5から遠ざかる方向)に駆動するとともに、図8(g)に示すように第2吊り部5のワイヤを下方に繰り出す。そして、制御装置25は、第1荷重センサ17の検出結果が所定値以下となり、第1吊り部4にプレキャストコンクリート60の荷重がかかっていないことを検出すると、吊り具42は玉外し機能により玉外しされる。
【0063】
制御装置25は、人感センサ23が人を検出しているかどうか判断する(ステップS14)。制御装置25は、人感センサ23が人を検出していなければ制作サイト54へ向け移動を開始する(ステップS15)。一方、制御装置25は、人感センサ23が人を検出していれば、人感センサ23が人を検出しなくなるまでステップS14を繰り返す。
【0064】
制御装置25は、所定のタイミング毎に制作サイト54に到着したかどうかを判断する(ステップS16)。制御装置25は、制作サイト54に到着してしれば本フローチャートを終了する。一方、制御装置25は、制作サイト54に到着していなければ、制作サイト54に到着するまでステップS14からステップS16を繰り返す。
本実施形態によれば、不整地や傾斜路を安全に走行することができる自走式の橋形クレーン1を実現することができる。また、本実施形態によれば、タワークレーンのような大型重機を用いることなく、プレキャストコンクリート60を搬送することができるので、敷地面積が限られた建設現場にも対応することができる。また、本実施形態によれば、自走式の橋形クレーン1の走行中は、一対の運搬架台11が、プレキャストコンクリート60を支持しているので安全な走行を実現することができる。
【0065】
(第2実施形態)
以下、図9を用いて第2実施形態につき説明するが、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付し、その説明を割愛もしくは簡略化する。
図9は、本第2実施形態の自走式の橋形クレーン1の概要図を示すものであり、図9(a)は自走式の橋形クレーン1の側面図、図9(b)は自走式の橋形クレーン1の正面図である。
【0066】
本実施形態では、第1実施形態では図2のブロック図にのみ示した人感センサ23を図示している。人感センサ23は、接触防止部26を介して、前輪13と後輪14とのそれぞれの近傍に配置されている。人感センサ23は、図9にて扇形状に示すように赤外線を照射して、人が自走式の橋形クレーン1の近傍にいるかどうかを検出している。
【0067】
接触防止部26は、人の接触を防止する部材であり、人が前輪13および後輪14に巻き込まれないように、前輪13および後輪14の一部を囲うように設けられている。
【0068】
前照灯・指示器27は、前方を照明する前照灯と、左折や右折を示す指示器と、をユニット化したものである。前照灯・指示器27は、一対の下部側基部10のそれぞれの前輪13側に設けられている。
【0069】
制動灯・指示器28は、後方に対してブレーキ21を操作したことを示す制動灯と、左折や右折を示す指示器と、をユニット化したものである。制動灯・指示器28は、一対の下部側基部10のそれぞれの後輪14側に設けられている。
【0070】
屋根29は、プレキャストコンクリート60が雨や雪により濡れるのを避けるものであり、上部側基部8に立設された支持部により支持されている。本実施形態では、屋根29を三角形状としているが、矩形状でもよく、円筒状でもよい。
本実施形態によれば、接触事故等を防止できる自走式の橋形クレーン1を実現することができる。
【0071】
(変形例)
図10は自走式の橋形クレーン1の変形例を示す側面図であり、以下、図10を用いて変形例につき説明を行う。なお、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付し、その説明を割愛もしくは簡略化する。
【0072】
第1吊り部4と第2吊り部5とは、前述したようにガーダ3上をX方向に移動し、電磁ブレーキによりその移動を制限している。しかしながら、自走式の橋形クレーン1が急な傾斜路を走行する場合には、ガーダ3も傾斜してしまい、電磁ブレーキをかけたとしても第1吊り部4と第2吊り部5とがガーダ3上を滑ってしまう虞がある。
【0073】
そこで、本変形例では、図10に示してあるように、ガーダ3の水平状態を保つようにしている。具体的には、制御装置25が、レベルセンサ16の検出結果に基づき3つの昇降部9を調節してガーダ3を水平状態にしている。これにより、自走式の橋形クレーン1が急な傾斜路を走行する場合でも、第1吊り部4と第2吊り部5とがガーダ3上を滑ることを防止することができる。
【0074】
なお、一対の運搬架台11を省略した場合には、自走式の橋形クレーン1の走行中に第1吊り部4と第2吊り部5とがプレキャストコンクリート60を懸架することになる。自走式の橋形クレーン1が、第1のランプウエィ56などの傾斜路などを走行する際に、プレキャストコンクリート60を水平状態で走行することが望ましい。
【0075】
そこで、本変形例では、自走式の橋形クレーン1が傾斜路ではない場所(例えば、制作サイト54)にいる際に、制御装置25が、レベルセンサ16の検出結果に基づき3つの昇降部9を調節してガーダ3を水平状態にする。第1のランプウエィ56や第2のランプウエィ57の傾斜角度は設計値や実測により知ることができる。そして、自走式の橋形クレーン1が、例えば第1のランプウエィ56に到達した際に、制御装置25は、第1のランプウエィ56の傾斜角度(例えば4度)に基づいて、第1吊り部4のワイヤおよび第2吊り部5のワイヤとの少なくとも一方のワイヤの繰り出し量を調節することによりプレキャストコンクリート60を水平状態としている。
本変形例によれば、プレキャストコンクリート60を安全に搬送する自走式の橋形クレーン1を実現することができる。
【0076】
以上で説明した実施形態は、本発明を説明するための例示に過ぎず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加えることは可能である。例えば、第1実施形態と、第2実施形態と、変形例とを適宜組み合わせてもよい。また、一対の運搬架台11のそれぞれを1つの柱部材ではなく、2つの柱部材から構成してもよい。この場合、一方の柱部材に凹部を設け、他方の柱部材に凸部材を設けて凹部と凸部とが係合するようにすればよい。更に一対の運搬架台11を一対ではなく単一の部材から構成してもよい。また、自走式の橋形クレーン1は、プレキャストコンクリート60以外の対象物を搬送してもよい。
【0077】
人感センサ23として用いた赤外線センサは、人以外の岩なども障害物も検出することができる。このため、制御装置25は、赤外線センサにより障害物の有無を検出して、障害物がある場合は障害物を避けるようにして自走式の橋形クレーン1を走行させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 自走式の橋形クレーン 2 一対の走行レール 3 ガーダ
4 第1吊り部 5 第2吊り部 9 昇降部
11 一対の運搬架台 12 発電機 16 レベルセンサ
17 第1荷重センサ 18 第2荷重センサ 23 人感センサ
25 制御装置 60 プレキャストコンクリート
図1
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図10