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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】医療技術機器及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/10 20160101AFI20240604BHJP
   A61B 34/20 20160101ALI20240604BHJP
   A61B 17/56 20060101ALI20240604BHJP
   A61F 2/34 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
A61B34/10
A61B34/20
A61B17/56
A61F2/34
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021500274
(86)(22)【出願日】2019-07-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-13
(86)【国際出願番号】 EP2019068198
(87)【国際公開番号】W WO2020011688
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-05-06
(31)【優先権主張番号】102018116558.7
(32)【優先日】2018-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502154016
【氏名又は名称】アエスキュラップ アーゲー
【住所又は居所原語表記】Am Aesculap-Platz, 78532 Tuttlingen Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゲオルク ヘティヒ
(72)【発明者】
【氏名】ローニャ シーアヨット
(72)【発明者】
【氏名】アラン マース
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ シリング
【審査官】和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/200016(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0116728(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/00 - 34/20
A61B 90/10
A61B 17/56
A61F 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのデータ処理装置(24、48)を含む医療技術機器であって、前記データ処理装置が、
欠損していると目される患者(16)の骨(18)のアクチュアルステートデータセット(52)を検査データに基づき作成し、
前記アクチュアルステートデータセット(52)を基に、前記骨(18)のヘルシーステートデータセット(56)をコンピュータで作成し、
前記ヘルシーステートデータセット(56)と、臨床上関連性のある区域に細分化された各区域の骨欠損と、前記機器(10;100)の入力装置(66)により提供可能である、前記骨の治療に関する外科医(12)の命令とを基に、前記骨(18)のプランニングデータセット(64)を作成し、
前記プランニングデータセット(64)を、前記機器(10;100)のディスプレイ装置(42、68)上に表示するように
構成及びプログラムされ、
前記機器(10;100)が、医療技術ナビゲーションシステム(20)と、参照を規定するための標示装置(26)とを含み、該標示装置(26)が、前記ナビゲーションシステム(20)により検出可能であると共に、前記骨(18)に固定され又は固定可能であって、かつ、前記標示装置(26)の場所データ及び/又は位置データが、前記ナビゲーションシステム(20)により提供可能であり、
前記プランニングデータセット(64)が、少なくとも1つのデータ処理装置(24、48)により、前記ディスプレイ装置(42、68)上で、前記骨(18)との空間的関係において表示可能であり、前記骨(18)の特徴的標認点が、前記プランニングデータセット(64)内の対応する特徴的標認点に関連付けられる、
機器。
【請求項2】
請求項1に記載の機器であって、前記プランニングデータセット(64)の画像コンテンツが、前記ディスプレイ装置(42、68)上にリアルタイムで表示可能であること、を特徴とする機器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の機器であって、前記ナビゲーションシステム(20)が、前記骨(18)を検出するための少なくとも1つのカメラ(78、102)を含み、前記骨(18)に対応する画像が、前記ディスプレイ装置(42、68)上で前記プランニングデータセット(64)の表示と組み合わせて表示可能であること、を特徴とする機器。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の機器であって、前記アクチュアルステートデータセット(52)が前記骨(18)の三次元表現を含むこと、を特徴とする機器。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の機器であって、
少なくとも1つの撮像装置(25)を備え、該撮像装置(25)を使用して
‐前記アクチュアルステートデータセット(52)、
‐前記データ処理装置(24、48)による前記特徴的標認点の関連付けに用いられる補助データセット
のうちの少なくとも1つが作成可能であり、
前記標示装置(26)が、前記データ処理装置(24、48)により、前記アクチュアルステートデータセット(52)及び/又は前記プランニングデータセット(64)に記録されること、
を特徴とする機器。
【請求項6】
請求項5に記載の機器であって、前記少なくとも1つの撮像装置(25)が、X線装置又はCT装置である、或いは、X線装置又はCT装置を含むこと、を特徴とする機器。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の機器であって、
前記補助データセットが、前記骨(18)及び前記標示装置(26)のX線画像である又は該X線画像を含むこと、及び
前記データ処理装置(24、48)が、前記X線画像を、前記アクチュアルステートデータセット(52)及び/又は前記プランニングデータセット(64)の上に重ね合わせること、
を特徴とする機器。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の機器であって、
前記標示装置(26)が、前記骨(18)に直接又は間接的に固定される又は固定可能であること、及び/又は
前記標示装置(26)が、前記骨(18)に非侵襲的な又は侵襲的なやり方で固定される又は固定可能であること、
を特徴とする機器。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の機器であって、前記ナビゲーションシステム(20)が、頭部装着型ディスプレイ又は一対のデータグラス(32)を含み、該ディスプレイ又はデータグラスが前記ディスプレイ装置(68)を含むこと、を特徴とする機器。
【請求項10】
請求項9に記載の機器であって、前記ナビゲーションシステム(20)により検出可能である標示装置(50)が、前記ディスプレイ又はデータグラス(32)上に配置され、前記標示装置(50)の空間内での移動が追跡され、前記プランニングデータセット(64)の表示が、前記ディスプレイ又はデータグラス(32)の場所及び/又は配向に応じて行われること、を特徴とする機器。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の機器であって、前記ディスプレイ又はデータグラス(32)が、前記標示装置(26)を前記骨(18)上で検出するための前記ナビゲーションシステム(20)を形成すること、を特徴とする機器。
【請求項12】
請求項9~11のいずれか1項に記載の機器であって、前記機器が、手持ち可能な一体型ナビゲーションシステムを含み、該ナビゲーションシステムが、少なくとも1つのデータ処理装置及び前記ディスプレイ装置を含むこと、を特徴とする機器。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の機器であって、骨盤骨(18)の治療において、前記プランニングデータセット(64)が、患者(16)の立位時及び/又は横臥時の骨盤傾斜についての情報を含むこと、を特徴とする機器。
【請求項14】
請求項13に記載の機器であって、前記プランニングデータセット(64)が、インプラント(73)用の埋込情報を含み、該情報が、治療中の患者(16)の配向に適合されて外科医(12)に提供可能であること、を特徴とする機器。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の機器であって、前記プランニングデータセット(64)が、前記骨(18)の手術に関連する少なくとも1つのパラメータを含むこと、を特徴とする機器。
【請求項16】
請求項15に記載の機器であって、前記パラメータが、前記ディスプレイ装置(42、68)上に拡張現実により表示可能であり、外科医(12)により目視される前記骨(18)の上に視覚的に重ね合わされるか、或いは、前記ディスプレイ装置(42、68)上に画像により表示されること、を特徴とする機器。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載の機器であって、前記データ処理装置(24、48)が、前記プランニングデータセット(64)に基づき手術結果をシミュレーションし、該手術結果に対応する情報を外科医(12)に提供するように構成及びプログラムされること、を特徴とする機器。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか1項に記載の機器であって、
前記機器(10)が、過去の治療に関する情報が記憶される記憶ユニット(71)を含むこと、及び
前記データ処理装置(24、48)が、前記情報及び前記プランニングデータセット(64)に基づき治療達成度を評価し、該治療達成度に対応する情報を外科医(12)に提供するように構成及びプログラムされること、
を特徴とする機器。
【請求項19】
請求項18に記載の機器であって、前記治療達成度に関する情報が、後の治療で考慮に入れられるよう、入力インタフェースにより前記記憶ユニット(71)に供給されて記憶可能であること、を特徴とする機器。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか1項に記載の機器であって、前記機器(10;100)が、前記特徴的標認点を検出するために、
‐前記ナビゲーションシステム(20)により検出可能である標示装置(28)が固定される超音波プローブ(30)、
‐前記ナビゲーションシステム(20)により検出可能である標示装置(28)が固定される触診ツール
のうちの少なくとも1つを含むこと、を特徴とする機器。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか1項に記載の機器であって、前記ナビゲーションシステム(20)が、少なくとも1つのデータ処理装置(24、48)を含む又は形成すること、或いはその逆であること、を特徴とする機器。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか1項に記載の機器であって、同じデータ処理装置(24、48)又は異なるデータ処理装置(24、48)により、
‐前記アクチュアルステートデータセット(5)の作成、
‐前記ヘルシーステートデータセット(56)の作成、
‐前記プランニングデータセット(64)の作成、
‐前記プランニングデータセット(64)の前記ディスプレイ装置(42、68)上への表示
のうちの少なくとも2つが遂行可能であること、を特徴とする機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨、特に人間の骨盤骨の治療において外科医を支援するための医療技術機器、及び医療技術方法に関する。
【0002】
本発明は、特に、高度の欠損を有する骨の治療、例えば股関節内補綴物の修正処置において使用するための機器及び方法に関する。本発明の適用の例として、これらの機器及び方法は以下において使用される。ただし、本発明はこの適用例に限定されるものではなく、特に、骨の存在及び/又は骨質又は硬度に関して最初から不十分な前提条件の存在する、修正処置以外での使用にも適している。
【背景技術】
【0003】
従来の事例において、より高度の骨欠損が存在する場合の股関節インプラントの修正、特に人工寛骨臼の置換は、外科医にとって依然として大きな難題である。例えば、寛骨臼の領域内に骨質が不足している場合、外科医は修正インプラントを位置決めするための配向補助を有さない。修正処置では、例えばX線画像における、骨盤骨の、異常のある側と骨盤骨の健全な側との比較の助けを借りて、外科医を支援することができる。修正処置における外科医の幅広い経験は有益であり有利である。しかし実際には、骨盤骨上に解剖学的標認点が不足していることに起因して、経験豊富な外科医であっても必要な配向が不足しており、従って埋込みの結果に悪影響を及ぼすということが生じる。例えば、従来の「スルーフ法」を適用すると、しばしば、修正インプラントの側方位置が過度に遠くなる。
【0004】
人工寛骨臼を挿入する際、その整列は普通、参照面に関して、特に患者の前骨盤面に関して、行われる。例えば、配向の尺度として、寛骨臼の傾き角及び前傾角が使用される。ただし、寛骨臼を骨盤に対して整列させる際、前骨盤面は、前頭面に対して‐患者が立位している時は垂直面に対して、患者が横臥している時は水平面に対して、傾くことがあることに留意されるべきである。この傾きは骨盤傾斜と称される。しかし、耐荷重性状況に起因して、立位している患者の骨盤傾斜と横臥している患者の骨盤傾斜は互いに相違する。骨盤‐大腿系が切り離して考慮されるべきではなく、むしろ、特に、筋肉及び腱が筋骨格系に影響を及ぼす。横臥している患者に寛骨臼が埋込まれる際、骨盤傾斜が考慮に入れられず、患者が立位している時と患者が横臥している時との骨盤傾斜の差が考慮に入れられなければ、インプラントの不適当な荷重、弛緩、及び/又は可動性の制限が生じ得る。
【0005】
DE 10 2013 111 808 A1に、股関節内補綴物でのシミュレーションの目的のための機器及び方法が記載される。この機器及び方法を用いて骨盤傾斜の影響をシミュレーションすることができる。DE 10 2014 107 832 A1には、骨盤傾斜を測定するための機器が記載される。
【0006】
DE 10 2013 219 470 A1は、外科的処置を術前にプランニングするための方法及び演算システムを記載する。この事例では、複数のセグメントにばらした骨を用いて骨片の物理的なレプリカが生成され、このレプリカが、解剖学的に正しい骨モデルに再度位置決めされる。骨片の相対的な線形ずれ及び回転が確定される。この線形ずれ及び回転に依存して、骨片を再度位置決めするために相対的なずれ及び回転が事前に確定されるところの手術プランが作成される。
【0007】
US 2018/0185100 A1は、外科用ナビゲーションシステムの実施形態を記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】DE 10 2013 111 808 A1
【文献】DE 10 2014 107 832 A1
【文献】DE 10 2013 219 470 A1
【文献】US 2018/0185100 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、前記骨の治療、特に股関節内補綴物の修正手術において、より良好な結果を意図して外科医を支援する機器、及び外科医を支援するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、少なくとも1つのデータ処理装置を含む医療技術機器であって、前記データ処理装置が、欠損していると目される患者の骨、特に人間の骨盤骨のアクチュアルステートデータセットを検査データに基づき作成し、
前記アクチュアルステートデータセットを基に、前記骨のヘルシーステートデータセットをコンピュータで作成し、
前記ヘルシーステートデータセットと、解剖学的特徴(特に立位時の骨盤傾斜)と、前記機器の入力装置により提供可能である、前記骨の治療に関する外科医の命令とを基に、特に前記骨の特徴的な解剖学的特性についての情報を含む、前記骨のプランニングデータセットを作成し、
前記プランニングデータセットを、前記機器のディスプレイ装置上に表示するように
構成及びプログラムされ、
前記機器が、医療技術ナビゲーションシステムと、参照を規定するための標示装置とを含み、該標示装置が、前記ナビゲーションシステムにより検出可能であると共に、前記骨に固定され又は固定可能であって、かつ、前記標示装置の場所データ及び/又は位置データが、前記ナビゲーションシステムにより提供可能であり、
前記プランニングデータセットが、少なくとも1つのデータ処理装置により、前記ディスプレイ装置上で、前記骨との空間的関係において表示可能であり、前記骨の特徴的標認点が、前記プランニングデータセット内の対応する特徴的標認点に関連付けられる、
機器により達成される。
【0011】
本発明による前記機器では、外科医にとっての利点として特に、従来の想定とは異なり、術前のプランニングと術中の適用との連携が行われ、これによって、例えばソフトウェア側で履行されるワークフローにより処置のプランニングの中に入れられた情報を使用して、術中に外科医を補助できるということがある。術中の処置の分野では、特に、処置の向上を目的に処置のプランニングをチェックし、必要であれば適合させることができるという利点がある。
【0012】
前記機器は少なくとも1つのデータ処理装置を含むが、複数のデータ処理装置を設けてもよく、これらのデータ処理装置を異なるプランニングステップにおいて使用することができる。データ処理装置は、例えばX線画像及び/又はCT画像に基づきした、治療されるべき前記骨の検査データを使用するように構成及びプログラムされる。「病んだ」骨のアクチュアルステートデータセットが作成され、データセットは本事例では、好ましくは前記骨の三次元表現を含む。前記データ処理ユニットは、前記骨のヘルシーステートデータセットをコンピュータで作成することができる。ここでは、例えば統計的形状モデルを使用することができる。前記骨についての一般的な標準データセットを使用するのでなく、前記アクチュアルステートデータセットを患者に対して個々に作成することが有利である。続いて、外科医のプランニング命令を考慮に入れてプランニングデータセットを作成することができる。特に、前記プランニングデータセットは、臨床上関連性のある情報を、例えば股関節内補綴物の場合は寛骨臼の平面の場所、回転中心、及び/又は寛骨臼の軸を含むことができる。別法として又は追加として、前記プランニングデータセットは、有利なことに、処置のための、外科医への提案及び/又は指示を有することができる。この提案及び/又は指示を、以下に記載することにする。術中に前記標示装置によって前記骨上に参照を作成することができ、標示装置は前記ナビゲーションシステムにより、それ自体知られているやり方で検出可能である。前記骨の特徴的標認点を前記プランニングデータセットの特徴的標認点に関連付けることができる。このことにより、前記プランニングデータセットの視覚情報を、前記骨に対する規定の空間的関係において前記機器の前記ディスプレイ装置上に表示することが可能になる。従って、外科医は、拡張現実(AR)の意味で視覚的補助を獲得する。これによって、例えば、前記プランニングデータセット内の、演算済みの前記骨の表現を、前記ディスプレイ装置上で前記実際の骨の図の上に光学的に重ね合わせることが可能である。前記ナビゲーションシステムによって前記標示装置を追跡することにより、前記外科用システム内での前記骨の場所の変化を測定することができる。前記標示装置の前記参照システム内では前記骨が場所及び幾何学形状に関して既知であるため、前記骨が移動する際、プランニングデータをコンピュータで前記骨に「ピン留め」したままにすることができるのであり、好ましくは、対応する視覚情報を外科医に対して前記ディスプレイ装置上で永続的に利用可能にすることができる。
【0013】
有利なことに、前記アクチュアルステートデータセットは前記骨の三次元表現を含む。
【0014】
好適な実施形態において、前記機器は少なくとも1つの撮像装置を含むことができる。例えば、前記アクチュアルステートデータセットは、前記少なくとも1つの装置を使用して作成可能とすることができる。別法として又は追加として、前記データ処理装置により前記特徴的標認点の関連付けに用いることのできる補助データセットを、前記少なくとも1つの装置によって作成可能とすることができる。これによって、有利なことに、前記データ処理装置が前記標示装置を、前記アクチュアルステートデータセット及び/又は前記プランニングデータセットに記録することも可能となる。
【0015】
前記少なくとも1つの撮像装置は、例えばX線装置又はCT装置である、或いは、X線装置又はCT装置を含む。
【0016】
前記補助データセットが、前記骨の及び前記標示装置のX線画像であり又はX線画像を含み、前記データ処理装置が、前記X線画像を前記アクチュアルステートデータセット及び/又は前記プランニングデータセットの上に重ね合わせることを実現することができる。理想的には、このことから生じる前記的標認点の関連付けが、前記データ処理装置によって術中に自動的に行われる。
【0017】
前記プランニングデータセットの、患者の骨との関連付けは、例えば、X線画像が術中に作成されることにより行うことができる。この目的で、例えば、二次元のX線画像の作成に用いられるC形円弧のX線装置が使用される。前記X線画像は、前記骨を、特に骨盤骨を、及び前記標示装置を描く。前記データ処理装置は、前記X線画像を前記アクチュアルステートデータセットの上に重ね合わせることができる。前記プランニングデータセットはアクチュアルステートデータセットに基づくため、有利なことに、前記X線画像と前記プランニングデータセットとを重ね合わせることも遂行される。重ね合わせた後、前記データ処理装置により最適化アルゴリズムを使用することができる。最適化アルゴリズムは、例えば、前記X線画像の輝度値と前記骨の三次元モデルの輝度値とを重ね合わせる。
【0018】
更なるステップにおいて、前記標示装置の、前記骨のモデルに対する配向を測定することができる。前記X線画像を基に、前記骨の三次元アナトミーの予見を考慮に入れて、前記標示装置と前記骨との間の三次元参照システムを作成することができる。前記標示装置の、前記骨のモデルに対するこの参照系の帰結として、前記ナビゲーションシステムは、前記標示装置により参照された位置に基づき、前記骨の場所及び/又は配向を測定することができる。前記参照系が、前記骨に対して固定される前記標示装置に関係するため、処置中に患者が移動すると、前記プランニングデータセットの画像情報は骨と共に移動させることができる。前記プランニングデータセットは前記骨に、いわば「ピン留め」される。
【0019】
前記標示装置が前記骨に直接又は間接的に固定される又は固定可能であることを実現することができる。前記標示装置の前記骨への固定は、非侵襲的又は侵襲的とすることができる。
【0020】
処置において外科医を支援するために、前記プランニングデータセットの画像コンテンツの前記ディスプレイ装置上での描写は、好ましくは、患者に対してリアルタイムで行われる。
【0021】
前記ナビゲーションシステムが、前記骨を検出するための少なくとも1つのカメラを含み、骨に対応する画像が前記ディスプレイ装置上で前記プランニングデータセットの表示と組み合わせて表示可能であると好ましい。このようにして、前記プランニングデータセットの前記画像コンテンツは、前記骨の画像と光学的に関連付けることができ、例えばこの画像上に被せることができる又はこの画像内に一体化することができる。外科医は特にプランニング情報に基づき前記骨のヘルシーステートと、例えば前記骨の不健康なアクチュアルステートに関する臨床上関連性のあるパラメータとを比較することができ、このようにして、プランニング情報は外科医により特に直観的に知覚することがにできる。
【0022】
前記ナビゲーションシステムは、例えば頭部装着型ディスプレイであり又は頭部装着型ディスプレイを含み、この頭部装着型ディスプレイは前記ディスプレイ装置を含む。このことは、前記プランニングデータセットの画像コンテンツが外科医の視野内に表示され、外科医が、空間的に遠いところに位置決めされたディスプレイ装置へ術野から目を離す必要がないという利点を与える。前記画像コンテンツは、例えば、対応する特徴的標認点を関連付けながら、視覚的に前記骨の上方に置かれるように表示させることができる。この事例では、例えば、上述のカメラは無しで済ますことができる。
【0023】
好適な実施形態において、前記ナビゲーションシステムが一対のデータグラスであり又はデータグラスを含み、このデータグラスが前記ディスプレイ装置を含むことにより、前記同じ利点を達成することができる。
【0024】
標示装置が前記ディスプレイ又はデータグラス上に配置され、標示装置が前記ナビゲーションシステムにより検出可能であり、前記標示装置の空間内での移動が追跡され、前記プランニングデータセットが、前記ディスプレイ又はデータグラスの場所及び/又は配向に依存して表示されると好ましい。このようにして、外科医が前記ディスプレイ又は前記グラスと共に移動する際には、前記プランニングデータセットの画像コンテンツの、前記骨との関連付けを行うことができる。前記移動は前記ナビゲーションシステムにより追跡することができる。移動に対応する情報は、前記データ処理装置に送信することができる。外科医の目視方向に依存して、前記画像コンテンツを、特に外科医が視認する実際の骨の画像コンテンツと対応するような仕方で適合させることができる(例えば、前記骨や前記骨の部分等への目視方向)。
【0025】
前記ディスプレイ又はデータグラスが、前記標示装置を前記骨上で検出するための前記ナビゲーションシステムを形成すると有利である。このようにして、別個の医療技術ナビゲーションシステムを無しで済ますことができる。前記標示装置の場所データ及び/又は位置データを生成するための、前記ナビゲーションシステムの計測システムを、前記ディスプレイ又はデータグラスに物理的に一体化することができる。別法として又は追加として、少なくとも1つのデータ処理装置が、好ましくは、前記ディスプレイ又はデータグラスに一体化される。
【0026】
前記機器の好適な実施形態において、前記機器が、手持ち可能な一体型ナビゲーションシステムを含み、この一体型ナビゲーションシステムが、少なくとも1つのデータ処理装置と、例えばスマートフォン又はタブレットコンピュータの形態のディスプレイ装置とを含むことを実現することができる。「一体型」とは、前記データ処理装置と前記ディスプレイ装置とが共通のハウジング内に配置されることを意味すると理解することができる。前記機器は、好ましくは、前記標示装置及び前記骨を検出するためのカメラを更に有する。対応する画像を前記ディスプレイ装置上で表示させ、前記プランニングデータセットの前記画像コンテンツによりこれらの画像を充実させることができる。前記標示装置の場所データ及び/又は位置データを測定するための計測システムも、好ましくは、前記手持ち可能なナビゲーションシステムに一体化される。
【0027】
前記データ処理装置が、前記アクチュアルステートデータセットと前記ヘルシーステートデータセットとの間の偏位を求めるように構成及びプログラムされると有利である。
【0028】
これによって、特に、前記データ処理装置が、
‐再建される健全な骨と比較した、欠損している骨の骨量減少、
‐再建される健全な骨と比較した、欠損している骨の骨成長、
‐欠損している骨上の、骨と異なる材料、例えば骨置換材料又は骨セメント、
‐偏位の量又は程度、例えば少なくとも1つの空間方向における骨欠損の寸法又はその範囲、
‐前記骨上の偏位の場所、例えば骨欠損の位置
のうちの少なくとも1つに関して偏位を分類するように構成及びプログラムされると有利である。
【0029】
前記データ処理装置は、有利なことに、前記骨をセグメントに分けて分類を遂行するように構成及びプログラムされる。分類とはこの場合、特に、前記骨がコンピュータで、例えば臨床上関連性のある区域へと区分け可能であることと理解することができる。臨床的関連性は、遂行されるべき処置に依存することがあり、処置が異なれば、前記区域が有する関連性は高く又は低くなり得る。前記分類の区分けは、例えば、プランニングの細部に迷うことなく、構造化された体系的なやり方において進行するという利点を外科医に与える。
【0030】
好適な実施形態において、前記データ処理装置は、前記分類に依存して、指示を特に前記ディスプレイ装置上で提供するように、及び/又は、処置を遂行するために前記プランニングデータセットに指示を付加するように構成及びプログラムされる。このことは、前記手術のプランニング及び/又は遂行において外科医を支援する。
【0031】
指示は、埋込方法、例えば埋込みの種類、骨構造への提案(例えば、多孔性金属泡の使用、骨置換材料、骨セメントの使用、或いは、別の場所の骨を除去し、治療されるべき前記骨にその骨を導入すること)に関係することができる。
【0032】
別法として又は追加として、前記指示は例えば、インプラント選択、例えばインプラントの種類及び/又は前記インプラントの寸法に関係することができる。
【0033】
冒頭で言及したように、前記骨は特に骨盤骨とすることができる。前骨盤面が前頭面に対して傾いている骨盤傾斜を患者が有する可能性も既に考察した。
【0034】
骨盤骨の治療における前記プランニングデータセットが、患者の立位時及び/又は横臥時の骨盤傾斜についての情報を含むと好ましい。この追加情報によって、埋込結果の向上を意図して外科医に命令することができる。特に、前記プランニングデータセットにおいて、立位している患者と横臥している患者との間の骨盤骨の異なる配向が考慮に入れられると有利なことがある。
【0035】
例えば患者の立位時の骨盤傾斜は、特に術前に、例えば撮像装置によって測定することができる。例えば、X線画像をCT画像と組み合わせることができる。例えば超音波による骨盤の更なる検査は不要である。
【0036】
前記プランニングデータセットが、インプラント用の、特に人工寛骨臼用の埋込情報を含み、前記埋込情報が、治療中の患者の配向に適合されて外科医に提供可能であると有利である。最良可能な埋込みを確実にするために、前記プランニングデータセットでは、患者が横臥している時に埋込まれる前記インプラントの配向を、特に患者の立位時の骨盤傾斜に対応させて適合させることができる。
【0037】
前記プランニングデータは、好適には、前記骨の手術に関連性のある少なくとも1つのパラメータ、例えば前記プランニングデータセット内の前記骨に関する特徴的な平面、特徴的な軸、及び/又は特徴的な点の場所を含む。
【0038】
特に臨床上関連性があると見なすことのできる前記パラメータは、処置の遂行中に、外科医により視認される実際の骨の上に視覚的に重ね合わせることができ、或いは、前記ディスプレイ装置上で画像によって、例えば拡張現実により描くことができる。股関節手術では、関連性のあるパラメータとして、例えば寛骨臼の平面、寛骨臼の軸又は回転中心を前記プランニングデータセットに付加することができる。
【0039】
前記データ処理装置は、好ましくは、前記プランニングデータに基づき手術結果をシミュレーションして、この手術結果に対応する情報を外科医に提供するように構成及びプログラムされる。例えば、前記シミュレーションの一部として、埋込みの場合の前記骨の機械的安定性を評価することができる。この目的で、前記データ処理装置は、例えば、前記プランニングデータに基づき有限要素法計算を遂行することができる。
【0040】
好適な実施形態において、前記機器は、過去の治療に関する情報が記憶される記憶ユニットを含むことができ、前記データ処理装置は、有利なことに、前記情報及び前記プランニングデータに基づき治療達成度を評価して、この治療達成度に対応する情報を外科医に提供するように構成及びプログラムされる。前記記憶ユニット内には、特に長期間にわたる過去の治療の手術結果についての情報を記憶することができる。前記データ処理装置は、関連付けられたデータ(例えば、手術パラメータ及び前記骨の欠損の分類)を包含するこの情報を使用することができる。骨欠損の評価は定量的測定法に基づく。前記骨の治療及びその達成度は、個々に検出し記憶することができる。有利なことに、ラージベースのデータを使用することができ、このデータを、例えば骨欠損に応じて分類することができる。例えば機械学習及びニューラルネットワークのような最新の方法により、例えば、未知の骨欠損又は初めて生じる骨欠損の場合に、治療が達成できるのかどうかに関する、確率に応じた評価が可能になる。対応する指示を外科医に提供し、治療戦略を作成することができる。例えば、前記データは、或るインプラントが或る欠損寸法を超えると不十分な帰結となり、代わりに異なる治療戦略を選ぶべきであることを示すことがある。
【0041】
有利なことに、治療の達成度に関する情報は、記憶のために入力インタフェースにより前記記憶ユニットに供給可能であり、後の治療において考慮に入れられる。このようにして、後の治療及び外科医への対応する指示のためにデータベースを向上させることができる。
【0042】
前記骨の前記特徴的標認点を術中に検出するために、例えば、前記ナビゲーションシステムにより検出可能な標示装置が固定される超音波プローブを設けることができる。
【0043】
別法として又は追加として、同じ目的で、前記ナビゲーションシステムにより検出可能な標示装置が固定される触診ツールを設けることができる。
【0044】
前記ナビゲーションシステムが少なくとも1つのデータ処理装置を含み又は形成し、或いはその逆であることを実現することができる。
【0045】
前記アクチュアルステートデータセット、前記ヘルシーステートデータセット、及び前記プランニングデータセットの作成は、例えば、前記プランニングデータセットを術中に使用するために使用されるものと同じデータ処理装置により遂行することができる。別法として、前記プランニングデータが、術中の使用のために異なるデータ処理装置に送信されることを実現することができる。
【0046】
同じデータ処理装置によって又は異なるデータ処理装置によって、
‐前記アクチュアルステートデータセットの作成、
‐前記ヘルシーステートデータセットの作成、
‐前記プランニングデータセットの作成、
‐前記プランニングデータセットを前記ディスプレイ装置上に表示すること
のうちの少なくとも2つのタスクが遂行可能である。
【0047】
冒頭で言及したように、本発明は方法にも関する。
【0048】
冒頭で述べた目的は、本発明による医療技術方法であって、
欠損していると目される患者の骨、特に人間の骨盤骨のアクチュアルステートデータセットが検査データに基づき作成され、
前記アクチュアルステートデータセットを基に、前記骨のヘルシーステートデータセットがコンピュータで作成され、
前記ヘルシーステートデータセットと、前記機器の入力装置により提供可能である、前記骨の治療に関する外科医の命令とを基に、前記骨のプランニングデータセットが作成され、
前記プランニングデータセットが、特に前記骨の特徴的な解剖学的特性についての情報を含み、
前記プランニングデータセットがディスプレイ装置上で表示可能であり、
前記骨に固定された参照を規定するための標示装置が医療技術ナビゲーションシステムにより検出され、前記標示装置の場所データ及び/又は位置データが前記ナビゲーションシステムにより提供され、
前記プランニングデータセットが、前記ディスプレイ装置上で前記骨との空間的関係において表示され、前記骨の特徴的標認点が、前記プランニングデータセット内の対応する特徴的標認点と関連付けられる、
方法により達成される。
【0049】
前記方法を遂行する際には、本発明による前記機器の説明と合わせて既に考察してきた利点も達成することができる。この点について、先の記載を参照することができる。
【0050】
本発明による前記機器の有利な実施形態から、前記方法の有利な実施形態が生じる。この点について、先の所見を参照することができる。
【0051】
本発明を更に説明するため、本発明の好適な実施形態を図と合わせて続いて記載する。上記機器により、本発明による前記方法の有利な実施形態の遂行が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】ここでは骨盤骨である、治療されるべき骨を備えた患者に対して外科医により使用中の、本発明による機器の略斜視図。
図2】骨盤骨のアクチュアルステートデータセットの画像コンテンツの、側方から見た図表示。
図3】骨盤骨のヘルシーステートデータセットの画像コンテンツの、側方から見た図表示。
図4】骨盤骨のプランニングデータセットの画像コンテンツの、側方から見た図表示。
図5】プランニングデータセットの画像コンテンツの表示されるディスプレイ装置を有する、外科医用の一対のデータグラスの略部分図。
図6】プランニングデータセットの画像コンテンツの図が異なる、図5に対応する図。
図7】本発明による機器の更なる好適な実施形態での、図1に対応する図。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1は、参照符号10に起因する、本発明による機器の有利な実施形態を略図において示す。更に、患者支持体14上に横臥している患者16を治療する外科医12を描く。患者16は、外科的処置、特に骨18の修正手術を受ける。骨18はこの場合、骨盤骨である。
【0054】
それ故に、この図面は、股関節内補綴物の修正処置における本発明の適用を示す。例えば、図面には描かない患者16の人工寛骨臼が、これも図示しない新規の寛骨臼に置換される。骨18は全体として、外科医12にとって処置をより困難なものにする骨欠損を有する。より良好な手術結果を意図して、外科医12にとって処置をより容易なものにするために、外科医12は本発明を使用することができる。
【0055】
機器10は、本実施形態では光学計測システム22を有する医療技術ナビゲーションシステム20を含む。計測システム22は、ナビゲーションシステム20のデータ処理装置24と動作接続している。
【0056】
計測システム22によって医療技術標示装置26を、知られているやり方で検出することができる。データ処理装置24は、対応する場所データ及び/又は位置データをデータ処理装置24に送信することができる。特に、標示装置26を空間内で追跡することが可能である。
【0057】
本事例では、参照を規定するために、標示装置26は骨18に、例えば螺合又は接着により固定される。別法として、医療技術標示装置を骨18に、非侵襲的に取付けることが考えられる。
【0058】
機器10は、更なる標示装置28をも含む。標示装置26と標示装置28とは、ナビゲーションシステム20により区別することができる。標示装置28はこの場合、超音波プローブ30上で保持される。超音波プローブ30によって、骨18の特徴的標認点を非侵襲的なやり方で検出することができ、これによって、標認点は標示装置26の参照システム内で場所を特定することができる。
【0059】
例えば、参照システム内で前骨盤面を規定するために、骨18の特徴的標認点として上後腸骨棘及び恥骨を測定することができる。当然ながら、骨18の、空間内の場所及び配向に関する情報をもたらす他の又は更なる特徴的標認点を使用することも考えられる。
【0060】
特徴的標認点を触診するには、ナビゲートされる超音波プローブ30の代わりに、例えば、プローブ先端の上に標示装置の保持される図示しない触診ツールを使用することができる。
【0061】
標示装置26、28は、受動的なものとすることができ、特に、計測システム22から放出された放射線を逆反射することができる。能動的な標示装置の使用も考えられる。
【0062】
機器10は更に、外科医12により着用することのできる一対のデータグラス32を含む。別法として又は追加として、外科医12の頭部に着用可能な、例えばVRグラスの形態の頭部装着型ディスプレイを設けることができる。
【0063】
データグラス32はこの場合、外科医12の耳に設置するためのイヤーピース34と鼻に設置するためのブリッジ36とを備えた従来のグラスフレームを有する。データグラス32が光学レンズを含むことを実現することができる。ただし、このことは本発明にとって必須のものではない。
【0064】
外科医12はデータグラス32を通してシーンを観察することができる。図1で破線38により標示する領域は、外科医12の視野40を表す。視野40はこの場合、骨18へと向けられる。
【0065】
データグラス32はこの場合、ディスプレイ装置42を有する。ディスプレイ装置42は、シーンを自然に目視すればディスプレイ装置42上の画像コンテンツが外科医12により知覚できるような仕方で、データグラス32上に配置される。従って、画像コンテンツは視野40内に置かれるような仕方で示される。このことにより、ディスプレイ装置42上で外科医12に対して情報を表示させることが可能になる。この情報は、拡張現実(AR)の意味で、外科医12により目視されるシーンの上に重ね合わせることができる。
【0066】
例えば、データ処理装置24は、画像コンテンツをディスプレイ装置42上に提供するために設けられる。データ処理装置24により、例えば、画像コンテンツに関する情報が、好ましくは無線で、対応する通信部材44、46を介してデータグラス32に送信される。
【0067】
好ましくは、データグラス32が、独立したデータ処理装置48を有し、このデータ処理装置48がデータ処理装置24と通信接続しており、データ処理装置48によりディスプレイ装置42を制御できることが考えられる。
【0068】
データグラス32はこの場合、計測システム22により検出可能な標示装置50を有する。このことは、データグラス32の場所及び配向をナビゲーションシステム22によって測定する可能性を与える。このことにより、特に、どの方向に外科医12の視野40が向けられるかを判定することが可能になる。その帰結として、視野40を、標示装置26により規定される参照システムに関係させることができる。
【0069】
例えば、外科医が骨18を目視している場合、前記骨18は視野40内に置かれる。骨18に関する拡張現実情報をディスプレイ装置42上で、以下で記載するような仕方で、あたかも拡張現実情報それ自体が骨18上に又は骨18の代わりにあるかのように表示させることができる。別法として又は追加として、外科医12が拡張現実情報を骨18と共に、例えば骨18の隣で側方に、骨の上方に又は下方に等、知覚及び「検討」できるような仕方で、拡張現実情報をディスプレイ装置42上に表示することが可能である。
【0070】
図7は、参照符号100で表す、本発明による機器の有利な実施形態を示す。そこでは、ナビゲーションシステム20はデータグラス32により形成されるが、機器10と異なり、空間的に別個のナビゲーションシステム20は存在していない。機器100をやはり以下で記載することにする。
【0071】
本発明による機器10のデータ処理装置24又は更なるデータ処理装置を用いて、処置のプランニングを術前に遂行することができる。この目的で、まず、検査データに基づき、特に骨18のアクチュアルステートデータセットを作成することができる。アクチュアルステートデータセットは、有利なことに、骨18の三次元図を含む。
【0072】
検査データは、例えばX線画像又はCT画像に基づく。この目的で、機器10は、図1に概略的に描く少なくとも1つの撮像装置25を有することができる。複数の撮像装置25が存在していてもよい。
【0073】
撮像装置25は、例えば、術前に及び/又は術中に使用するためのX線装置又はCT装置とすることができる。
【0074】
X線画像とCT画像との組み合わせから患者16の骨盤傾斜を測定できると有利なことがある。立位時の患者及び横臥時の患者の骨盤傾斜が測定可能であることが考えられる。
【0075】
図2は、ここでは参照符号18’で表す骨のアクチュアルステートデータセット52の画像コンテンツを、側方からの図において示す。アクチュアルステートデータセットは、好ましくは、上で考察した更なるデータセットのように、骨の3D表現を有する。
【0076】
アクチュアルステートデータセットにおいて、外科医12はまず、骨18の硬度を視覚的に判定し、特に骨欠損が存在している範囲を評価することができる。
【0077】
図2は、骨18の、点によって強調したエリア54内に骨欠損のある区画を明らかにする。アクチュアルステートデータセット52上には、骨欠損のある更なるエリア54が存在しており、例えばアクチュアルステートデータセット52が三次元において検討される際にこのエリアを表示できるであろうということが理解される。
【0078】
データ処理装置24は、コンピュータで骨18のヘルシーステートデータセットをアクチュアルステートデータセットに基づき作成するように構成及びプログラムされる。ここでは統計的モデルが使用される。特に、患者14の性別、年齢、体重、身長、病歴、及び/又は社会文化的背景をも考慮に入れることができる。
【0079】
図3は、ここでは参照符号18”で表す骨のヘルシーステートデータセット56の二次元図を、側方からの図において示す。
【0080】
ヘルシーステートデータセット56が患者に対して個々に計算され、一般的なデータセットを使用しなくてよいことが有利である。
【0081】
データ処理装置24は、アクチュアルステートデータセット52とヘルシーステートデータセット56との間の偏位をコンピュータで確定できるように構成及びプログラムされる。これによって、特に、例えば骨量減少、骨成長、骨置換材料又は骨セメント等の、骨とは異なる材料、偏位の量又は程度、ならびに偏位の場所に関して偏位の分類を遂行することができる。
【0082】
データ処理装置24により、骨18を例えばセグメントに分けて、偏位の分類を遂行することができる。例えば、骨18はコンピュータで、臨床上関連性のある区域に細分化される。図4はこのことを、区域58、60及び62の例を用いて概略的に描く。この図的表現では、これらの区域を各々、別様に強調する。
【0083】
図4は、手術のプランニングにおいて、この場合は参照符号18’’’で表す骨への側方からの目視方向で作成されたプランニングデータセット64を描く。例えば、プランニングデータセット64を作成するために、分類に基づき確定された区域58、60、62の骨欠損が考慮に入れられる。特に、外科医が機器10の入力装置66を使用してプランニングを実行することが可能である。これによって、外科医12は、最適の埋込結果を意図して、プランニングデータセット64を使用し、適合させ、査定することができる。
【0084】
データ処理装置24は外科医12に、例えば埋込方法及び/又はインプラント選択に関する指示を、骨欠損の分類に依存して提示することができる。指示は、プランニングデータセット64に付加することができ、及び/又は、例として示すディスプレイ装置68上に表示することができる。
【0085】
特に処置にとって重要な、関連性のあるパラメータがプランニングデータセット64に付加されることも考えられる。関連性のあるパラメータというのは、例えば、寛骨臼70の平面の場所、寛骨臼70の軸の場所、及び/又は回転中心の場所のことである。例えばプランニングデータセット64内の前記関連性のあるパラメータを確認するために、外科医12は術前に、本発明による機器に触れておくことができ、或いは、データ処理装置64が、適切な提案を行うことができる。
【0086】
機器は記憶ユニット71を含むことができ、この記憶ユニットはこの場合、データ処理装置24に一体化される。記憶ユニット71は、データ処理装置24から空間的に分離させて配置し、このデータ処理装置に連結することもできる。
【0087】
有利なことに、記憶ユニット71内には、予ての同様の治療に関する情報が記憶されるのであり、この情報をデータ処理装置24により考慮に入れて、プランニングデータセット64に基づき治療達成度を評価することができる。対応する情報を、例えばディスプレイ装置68により外科医12に提供することができる。
【0088】
治療の達成度に関する情報を供給するために、記憶ユニット71は、例えば入力装置66を経由した入力インタフェースを含むことができる。後の治療では、その種類の情報を考慮に入れてプランニングデータセットを作成することができる。
【0089】
プランニングデータセット64が、インプラント73の、本事例では人工寛骨臼の埋込情報を含むと有利なことがある。これによって、以前に測定された患者16の骨盤傾斜についての情報がプランニングデータセット内に存在していると好ましい。例えば、プランニングデータセットは、外科的状況に適合された、骨盤傾斜に関する情報を考慮に入れる。これによって、例えば、手術中に患者16が横臥していることを考慮に入れることができる。インプラント73を整列させるための埋込情報を、患者の、横臥している状態に適合させることができるのであり、この適合によって、及び患者が立位しており骨盤が負荷を担持している際の骨盤傾斜を考慮に入れることによって、安定性及び運動幅を意図した最良可能な埋込みが存在することが考慮に入れられる。
【0090】
術中の使用のために、プランニングデータセット64は、必要であれば、手術室内のデータ処理装置に送信することができる。そうでない場合、データ処理装置24上で作成されたプランニングデータセット64を使用することができる。
【0091】
記載したように、外科医12は、標示装置26の参照システム内でその場所を測定できるところの特徴的標認点を骨18上で見つけ出すことができる。外科医12の視線は、例えばナビゲーションシステム20により検出可能な骨18に向けられる。処置中に外科医12を支援するために、外科医12により観察される実際のシーン内に、プランニングデータセット64の画像コンテンツを表示させることができる。このことを図5及び図6に概略的に描く。
【0092】
実際の骨18の特徴的標認点と、プランニングデータセット64内の骨18’’’の対応する特徴的標認点との関連付けを、コンピュータでデータ処理装置24により行うことができる。これによって、プランニングデータセット64内に含有される空間情報が、骨18の実際の幾何学形状と整合され、この幾何学形状との規定の空間的関係において設定される。
【0093】
骨18の特徴的標認点と、アクチュアルステートデータセット52及び/又はプランニングデータセット64との関連付けは、例えば術中に撮像装置25を使用して行うことができる。例えば、装置25として、C形円弧のX線装置が使用される。X線装置は、標示装置28と共に骨18のX線画像を生成する。冒頭で既に説明したように、2DのX線画像を3Dモデルの上に重ね合わせることができる。物理的な骨18の、3Dモデルに対する参照系を、標示装置28により作成することができる。
【0094】
更に、プランニングデータセット64内の更なる情報をディスプレイ装置42上に表示することができる。図5は、区域58、60及び62内の異なる骨欠損についてのこの情報を例示的に描く。図6は、寛骨臼70の平面72及びその軸74の場所の例を概略的に示す。図5及び図6は、参照符号76で表す、プランニングデータセット64の、処置中に外科医に命令するための命令76として構成される更なるコンテンツを表す。
【0095】
外科医12は、拡張現実内の追加情報を使用し、処置中の実際の状況を、最適の外科的結果を意図して前もってなされたプランニングと比較することができる。
【0096】
好ましくは、外科医12及び/又は患者14が移動すると、ディスプレイ装置42の画像コンテンツを常に正しい位置において表示できるように、ディスプレイ装置42がリアルタイムでアップデートされる。
【0097】
図5及び図6の図は単に概略的なものであることが理解される。外科医12はディスプレイ装置42を通して見ているだけであるが、プランニングデータセット64及び命令76の表示は、描かれる画像コンテンツがあたかも外科医の視野40内で正しい正常位置に置かれるかのように、外科医12により知覚される。
【0098】
図7の機器100の、前述した有利な実施形態は、外部ナビゲーションシステム20を有しない。特に、ナビゲーションシステム20は、データグラス32に一体化される又はデータグラスによって形成される。従って、標示装置50の設けられたデータグラス32をナビゲーションシステムによって追跡することは不要である。
【0099】
標示装置26、28を検出するために、機器100内のデータグラス32は、特にカメラ102を備えた一体型計測システムを有する。このカメラは、計測システム22のナビゲーションカメラ78の代わりに使用される。
【0100】
他の全ての点において、機器10によって成就可能な利点は機器100を用いても成就することができるのであり、これに関しては上で述べたことの参照を行うことができる。
【0101】
更なる好適な実施形態において、例えばスマートフォン又はタブレットコンピュータの形態の、一体型の手持ち可能なナビゲーションシステムを提供することができる。このナビゲーションシステムは、シーンを検出するためのカメラを含むことができ、シーンの画像をディスプレイ装置上に表示することができる。プランニングデータセット64の情報は画像の画像コンテンツを補うことができ、この情報を、機器10、100に対応するやり方で使用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7