IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三洋電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両用電源システム 図1
  • 特許-車両用電源システム 図2
  • 特許-車両用電源システム 図3
  • 特許-車両用電源システム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】車両用電源システム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/52 20200101AFI20240604BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20240604BHJP
【FI】
G01R31/52 ZHV
B60L3/00 S
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021501594
(86)(22)【出願日】2019-12-09
(86)【国際出願番号】 JP2019048019
(87)【国際公開番号】W WO2020170557
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2022-10-07
(31)【優先権主張番号】P 2019027442
(32)【優先日】2019-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【弁理士】
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】中山 正人
(72)【発明者】
【氏名】國光 智徳
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-109278(JP,A)
【文献】特開2015-226343(JP,A)
【文献】特開2018-072169(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0131340(US,A1)
【文献】特開2017-016959(JP,A)
【文献】特開2011-080676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/50-31/74
B60L 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のシャーシアースと絶縁された状態で搭載され、前記車両内の負荷に電力を供給する蓄電部と、
1つ又は直列接続された複数のセルを含み、前記シャーシアースと絶縁された状態の前記蓄電部の電流経路上の第1接続点に、第1端子が接続される第1カップリングコンデンサと、
前記蓄電部の電流経路上の、前記第1接続点より電位が低い第2接続点に第2端子が接続され、第1端子が前記第1カップリングコンデンサの第2端子に接続される第2カップリングコンデンサと、
前記蓄電部の正極と前記負荷の一端が接続されるプラス配線において、前記第1接続点より前記負荷側に挿入される第1スイッチと、
前記蓄電部の負極と前記負荷の他端が接続されるマイナス配線において、前記第2接続点より前記負荷側に挿入される第2スイッチと、
前記第1カップリングコンデンサの第2端子と前記第2カップリングコンデンサの第1端子との間の第3接続点に、インピーダンス素子を介して所定の交流電圧を印加する交流出力部と、
前記第3接続点の電圧を測定する電圧測定部と、
前記電圧測定部により測定された電圧をもとに漏電の有無を判定する判定部と、
を備えることを特徴とする車両用電源システム。
【請求項2】
前記第1カップリングコンデンサ及び前記第2カップリングコンデンサは、アルミ電解コンデンサであり、
前記第1カップリングコンデンサ及び前記第2カップリングコンデンサのそれぞれの第1端子は正極端子であり、
前記第1カップリングコンデンサ及び前記第2カップリングコンデンサのそれぞれの第2端子は負極端子である、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用電源システム。
【請求項3】
前記第1接続点は、前記蓄電部の正極であり、
前記第2接続点は、前記蓄電部の負極である、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アースから絶縁された負荷の漏電を検出する車両用電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、電気自動車(EV)が普及してきている。これらの電動車両には、補機電池(一般的に12V出力の鉛電池)と別に高電圧の駆動用電池(トラクションバッテリ)が搭載される。感電を防止するために、高電圧の駆動用電池、インバータ、走行用モータを含む強電回路と、車両のボディ(シャーシアース)間は絶縁される。
【0003】
強電回路の車両側のプラス配線とシャーシアース間、及び強電回路の車両側のマイナス配線とシャーシアース間には、それぞれYコンデンサが挿入され、高電圧の駆動用電池から車両側の負荷に供給される電源が安定化されている。強電回路とシャーシアース間の絶縁抵抗を監視して漏電を検出する漏電検出装置が搭載される。
【0004】
AC方式の漏電検出装置では、駆動用電池の正極端子または負極端子に、抵抗とカップリングコンデンサを介してパルス電圧を印加し、当該抵抗と当該カップリングコンデンサとの接続点の電圧を測定し、漏電の有無を検出する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2010/143534号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
カップリングコンデンサを大容量化する必要がある場合、カップリングコンデンサにアルミ電解コンデンサが使用されることが多い。アルミ電解コンデンサは、フィルムコンデンサやセラミックコンデンサ等の他の種類のコンデンサと比較して、安価に大容量化することができる。
【0007】
アルミ電解コンデンサは無負荷状態が長期間継続すると、絶縁が低下して漏れ電流が増加する性質がある。駆動用電池と車両負荷との間のコンタクタがオープンの状態では基本的に、カップリングコンデンサとして使用されるアルミ電解コンデンサは無負荷状態となる。
【0008】
本発明はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、漏電検出装置において、カップリングコンデンサで発生することがある漏れ電流の増加を抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の漏電検出装置は、1つ又は直列接続された複数のセルを含み、アースと絶縁された状態の蓄電部の電流経路上の第1接続点に、第1端子が接続される第1カップリングコンデンサと、前記蓄電部の電流経路上の、前記第1接続点より電位が低い第2接続点に第2端子が接続され、第1端子が前記第1カップリングコンデンサの第2端子に接続される第2カップリングコンデンサと、前記第1カップリングコンデンサの第2端子と前記第2カップリングコンデンサの第1端子との間の第3接続点に、インピーダンス素子を介して所定の交流電圧を印加する交流出力部と、前記第3接続点の電圧を測定する電圧測定部と、前記電圧測定部により測定された電圧をもとに漏電の有無を判定する判定部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、漏電検出装置において、カップリングコンデンサで発生することがある漏れ電流の増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】比較例1に係る漏電検出装置を備える電源システムの構成を説明するための図である。
図2図2(a)、(b)は、交流出力部から測定点Aに印加される矩形波パルス波形、及び電圧測定部により測定される測定点Aの電圧波形の一例を示す図である。
図3】比較例2に係る漏電検出装置を備える電源システムの構成を説明するための図である。
図4】本発明の実施の形態に係る漏電検出装置を備える電源システムの構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、比較例1に係る漏電検出装置10を備える電源システム5の構成を説明するための図である。電源システム5は電動車両に搭載される。電源システム5は電動車両内において、補機電池(通常、12V出力の鉛電池が使用される)と別に設けられる。電源システム5は、高電圧の蓄電部20、及び漏電検出装置10を含む。蓄電部20は、直列接続された複数のセルE1-Enを含む。セルには、リチウムイオン電池セル、ニッケル水素電池セル、鉛電池セル、電気二重層キャパシタセル、リチウムイオンキャパシタセル等を用いることができる。以下、本明細書ではリチウムイオン電池セル(公称電圧:3.6-3.7V)を使用する例を想定する。
【0013】
電動車両は高電圧の負荷として、インバータ2及びモータ3を備える。蓄電部20の正極とインバータ2の一端がプラス配線Lpで接続され、蓄電部20の負極とインバータ2の他端がマイナス配線Lmで接続される。プラス配線Lpに正側メインリレーMRpが挿入され、マイナス配線Lmに負側メインリレーMRmが挿入される。正側メインリレーMRpと負側メインリレーMRmは、蓄電部20と電動車両内の高電圧の負荷との間の導通/遮断を制御するコンタクタとして機能する。なおリレーの代わりに、高耐圧・高絶縁の半導体スイッチを使用することも可能である。
【0014】
インバータ2は、蓄電部20とモータ3の間に接続される双方向インバータである。インバータ2は力行時、蓄電部20から供給される直流電力を交流電力に変換してモータ3に供給する。回生時、モータ3から供給される交流電力を直流電力に変換して蓄電部20に供給する。モータ3には例えば、三相交流モータが使用される。モータ3は力行時、インバータ2から供給される交流電力に応じて回転する。回生時、減速による回転エネルギーを交流電力に変換してインバータ2に供給する。
【0015】
蓄電部20は、電動車両のシャーシアースと絶縁された状態で電動車両に搭載される。補機電池は、負極がシャーシアースと導通した状態で電動車両に搭載される。なお、正側メインリレーMRpよりインバータ2側のプラス配線Lpとシャーシアース間が正側YコンデンサCpを介して接続される。また、負側メインリレーMRmよりインバータ2側のマイナス配線Lmとシャーシアース間が負側YコンデンサCmを介して接続される。正側YコンデンサCp及び負側YコンデンサCmは、プラス配線Lpとシャーシアース間、及びマイナス配線Lmとシャーシアース間をそれぞれ直流的に絶縁するとともに、プラス配線Lp及びマイナス配線Lmの電圧を安定化させる作用を有する。
【0016】
蓄電部20がシャーシアースから理想的に絶縁されている場合、蓄電部20の中間電圧がシャーシアースの電圧近辺に維持される。例えば、蓄電部20の両端電圧が400Vの場合、蓄電部20の正極電位が+200V近辺、負極電位が-200V近辺に維持される。高電圧の蓄電部20とシャーシアース間が導通した状態で、人間が電動車両の露出した導電部に触れると感電する危険がある。そこで高電圧の蓄電部20を搭載した電動車両では、漏電検出装置10を搭載して、インバータ2を含む高電圧の車両負荷とシャーシアース間の絶縁状態を監視する必要がある。図1では、プラス配線Lpとシャーシアース間の絶縁状態を正側漏電抵抗Rlp、マイナス配線Lmとシャーシアース間の絶縁状態を負側漏電抵抗Rlmと表している。
【0017】
漏電検出装置10は主な構成として、カップリングコンデンサCc、抵抗Ra及び制御部13を含む。制御部13は、交流出力部13a、電圧測定部13b及び漏電判定部13cを含む。制御部13は例えば、マイクロコンピュータ及び不揮発メモリ(例えば、EEPROM、フラッシュメモリ)により構成することができる。
【0018】
カップリングコンデンサCcは、蓄電部20の電流経路に一端が接続される。図1に示す例では蓄電部20の負極にカップリングコンデンサCcの一端が接続されている。なお、カップリングコンデンサCcの一端は、蓄電部20の正極に接続されてもよいし、蓄電部20内の複数のセルE1-Enのいずれかのノードに接続されてもよい。カップリングコンデンサCcの他端は、抵抗Raを介して制御部13の交流出力端子に接続される。なお、抵抗Raの代わりに他のインピーダンス素子を使用してもよい。カップリングコンデンサCcと抵抗Raとの間の接続点(測定点A)は、抵抗Rbを介して制御部13の測定電圧入力端子に接続される。
【0019】
抵抗Raと制御部13の交流出力端子との間の接続点と、シャーシアース間に第1ツェナーダイオードZD1が接続される。抵抗Rbと制御部13の測定電圧入力端子との間の接続点と、シャーシアース間に第2ツェナーダイオードZD2が接続される。第1ツェナーダイオードZD1及び第2ツェナーダイオードZD2は、メインリレーMRp、MRmの開閉や電源システム5の負荷変動に起因して、制御部13に過電圧が印加されることを防止する。また、サージ電流や静電気から制御部13を保護する。
【0020】
図1ではカップリングコンデンサCcに、比較的安価に大容量化することができるアルミ電解コンデンサが使用されている。アルミ電解コンデンサは極性を有しており、図1ではアルミ電解コンデンサの正極が測定点Aに接続され、アルミ電解コンデンサの負極が蓄電部20の負極に接続される。カップリングコンデンサCcは、アルミ電解コンデンサが直列に接続されて構成されていてもよい。この場合、1つのコンデンサがショート故障しても、残りのコンデンサにより絶縁を維持することができる。
【0021】
交流出力部13aは、抵抗Raを介してカップリングコンデンサCcの他端に所定の交流電圧を印加する。交流出力部13aは局部発振器を含み、局部発振器により生成される矩形波パルスを、予め設定された周波数およびデューティ比の矩形波パルス信号に整形して出力する。電圧測定部13bは測定点Aの電圧を測定する。なお制御部13内にA/Dコンバータが内蔵されていない場合、測定点Aと電圧測定部13bの間にA/Dコンバータ(不図示)が設けられ、当該A/Dコンバータは測定点Aのアナログ電圧をデジタル値に変換して電圧測定部13bに出力する。
【0022】
漏電判定部13cは、電圧測定部13bにより測定された測定点Aの電圧と設定値を比較して漏電の有無を判定する。漏電判定部13cは、印加された矩形波パルス信号の鈍りの程度をもとに漏電の有無を判定する。
【0023】
図2(a)、(b)は、交流出力部13aから測定点Aに印加される矩形波パルス波形、及び電圧測定部13bにより測定される測定点Aの電圧波形の一例を示す図である。漏電判定部13cは、印加された矩形波パルス波形の立ち上がりエッジの直前のタイミングでサンプリングした測定点Aの電圧と、印加された矩形波パルス波形の立ち下がりエッジの直前のタイミングでサンプリングした測定点Aの電圧との差分電圧Vp-pを算出する。漏電判定部13cは、算出した差分電圧Vp-pが設定値より低い場合、漏電が発生していると判定する。漏電が発生している場合、印加された矩形波パルス波形の鈍りが大きくなる。算出した差分電圧Vp-pが低くなることは、矩形波パルス波形の鈍りが大きくなることを意味する。上記設定値は、設計者による実験やシミュレーションにより予め導出された漏電発生時の矩形波パルス波形の鈍りをもとに決定される。
【0024】
上述したように比較例1では、カップリングコンデンサCcにアルミ電解コンデンサを使用している。アルミ電解コンデンサは無負荷状態で長時間放置されると、漏れ電流の増加などの特性劣化が発生しやすくなる。漏れ電流の増加は、誘電体皮膜と電解液が化学反応して耐圧が低下することで発生する。また漏れ電流の増加は、酸化皮膜の欠陥部を保護していた酸素が電解液中に拡散して欠陥部に電解液が流入することでも発生する。アルミ電解コンデンサの電解液は、電圧が印加されていない状態では正常な状態を保てなくなり、上記化学反応を起こしやすくなる。なお、電圧が印加されると正常な状態に戻るが、正常な状態に戻るまで時間がかかる。
【0025】
正側メインリレーMRp及び負側メインリレーMRmがオフ(オープン)の状態で、インバータ2を含む高電圧の車両負荷とシャーシアース間に漏電が発生していない場合、カップリングコンデンサCcに電圧が印加されず、無負荷状態となる。この状態ではカップリングコンデンサCcの漏れ電流が増加しやすくなる。カップリングコンデンサCcに大きな漏れ電流が流れている状態で、正側メインリレーMRp及び負側メインリレーMRmをオン(クローズ)して車両負荷とシャーシアース間の漏電抵抗を測定しようとしても、カップリングコンデンサCcに流れる漏れ電流の影響により、正確な測定が困難になる。
【0026】
そこで、正側メインリレーMRp及び負側メインリレーMRmがオフの状態でもカップリングコンデンサCcに電圧を印加する仕組みを設けることが考えられる。
【0027】
図3は、比較例2に係る漏電検出装置10を備える電源システム5の構成を説明するための図である。以下、図1に示した比較例1に係る電源システム5の構成との相違点を説明する。比較例2では、蓄電部20の正極と測定点Aとの間にスイッチSW1が接続されている。正側メインリレーMRp及び負側メインリレーMRmがオフの状態において、定期的にスイッチSW1をオンすることで、カップリングコンデンサCcに電圧を印加する。これにより、カップリングコンデンサCcに使用されるアルミ電解コンデンサにおける、漏れ電流の増加などの特性劣化を防止することができる。
【0028】
スイッチSW1がオンしている状態では、蓄電部20を含む高電圧側の回路と、漏電検出装置10を含む低電圧側の回路が絶縁されていない状態になる。従って比較例2では、漏電検出装置10の安全性が比較例1より低下する。また、スイッチSW1には絶縁性能の高いスイッチ(例えば、フォトMOSリレー)を使用する必要となる。絶縁性能の高いスイッチは高価であり、比較例2に係る漏電検出装置10のコストを上昇させる要因となる。
【0029】
図4は、本発明の実施の形態に係る漏電検出装置10を備える電源システム5の構成を説明するための図である。以下、図1に示した比較例1に係る電源システム5の構成との相違点を説明する。実施の形態では、比較例1に係るカップリングコンデンサCcが、第1カップリングコンデンサCc1と第2カップリングコンデンサCc2の2つに分割される。第1カップリングコンデンサCc1及び第2カップリングコンデンサCc2にはそれぞれアルミ電解コンデンサが使用される。以下、第1カップリングコンデンサCc1及び第2カップリングコンデンサCc2に同じアルミ電解コンデンサが使用されることを想定する。なお、第1カップリングコンデンサCc1の容量と第2カップリングコンデンサCc2の容量に偏りがあってもよい。
【0030】
第1カップリングコンデンサCc1の正極は蓄電部20の正極に接続され、第2カップリングコンデンサCc2の負極は蓄電部20の負極に接続され、第1カップリングコンデンサCc1の負極と第2カップリングコンデンサCc2の正極が接続される。第1カップリングコンデンサCc1の負極と第2カップリングコンデンサCc2の正極との接続点が上記測定点Aとなる。この構成では、正側メインリレーMRp及び負側メインリレーMRmのオン/オフ状態に関わらず、直列接続された第1カップリングコンデンサCc1と第2カップリングコンデンサCc2の両端に電圧が印加され続けることになる。
【0031】
なお、電圧測定部13bにより測定される測定点Aの交流電圧波形は、比較例1において測定される測定点Aの交流電圧波形と同じものになる。比較例1及び本実施の形態のいずれにおいても、直流成分はカップリングコンデンサCc、又は第1カップリングコンデンサCc1と第2カップリングコンデンサCc2に吸収されるため、交流波形としては同じになる。
【0032】
以上説明したように本実施の形態によれば、カップリングコンデンサCcを2つに分割し、第1カップリングコンデンサCc1を蓄電部20の正極と測定点Aの間に接続し、第2カップリングコンデンサCc2を蓄電部20の負極と測定点Aの間に接続する。これにより、第1カップリングコンデンサCc1及び第2カップリングコンデンサCc2に常時、電圧が印加される状態になる。従って、第1カップリングコンデンサCc1及び第2カップリングコンデンサCc2にアルミ電解コンデンサを使用しても、漏れ電流の増加を抑えることができる。
【0033】
カップリングコンデンサにアルミ電解コンデンサを使用すれば、大容量のカップリングコンデンサを安価に実現することができる。また比較例2のように、高価な絶縁性能の高いスイッチSW1を使用する必要がないため、スイッチSW1を追加することによるコストの上昇を抑えることができる。
【0034】
また本実施の形態によれば、蓄電部20を含む高電圧側の回路と、漏電検出装置10を含む低電圧側の回路が第1カップリングコンデンサCc1及び第2カップリングコンデンサCc2により絶縁されているため、比較例2に示した構成と比較して安全性が高い。
【0035】
また本実施の形態によれば、第1カップリングコンデンサCc1及び第2カップリングコンデンサCc2を使用するため、片方のカップリングコンデンサがオープン故障しても、もう片方のカップリングコンデンサで一定の漏電検出機能を維持することができる。
【0036】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0037】
上述の実施の形態では、第1カップリングコンデンサCc1の正極を蓄電部20の正極に接続し、第2カップリングコンデンサCc2の負極を蓄電部20の負極に接続する例を説明した。この点、蓄電部20内の直列接続された複数のセルE1-Enの電流経路上の2つの接続点に、第1カップリングコンデンサCc1の正極と第2カップリングコンデンサCc2の負極をそれぞれ接続してもよい。その際、2つの接続点の内、高電位の接続点に第1カップリングコンデンサCc1の正極を接続し、低電位の接続点に第2カップリングコンデンサCc2の負極を接続する。このような接続形態であっても、電圧測定部13bにより測定される測定点Aの交流電圧波形は、上述の実施の形態において測定される測定点Aの交流電圧波形と同じものになる。
【0038】
上述の実施の形態では、交流出力部13aから抵抗Raを介して第1カップリングコンデンサCc1と第2カップリングコンデンサCc2に矩形波パルス信号を印加する例を説明した。この点、正弦波信号を第1カップリングコンデンサCc1と第2カップリングコンデンサCc2に印加してもよい。漏電判定部13cは、測定点Aにおいて測定される、印加された正弦波信号の鈍りの程度をもとに漏電の有無を判定する。
【0039】
上述の実施の形態では、漏電検出装置10を電動車両に搭載して使用する例を説明した。この点、実施の形態に係る漏電検出装置10は車載用途以外の用途にも適用できる。蓄電部20、及び蓄電部20から電力供給を受ける負荷がアースから絶縁されており、蓄電部20と負荷間がスイッチで導通/遮断される構成であれば、負荷はどのような負荷であってもよい。例えば、鉄道車両内で使用される負荷であってもよい。
【0040】
上述の実施の形態では、カップリングコンデンサCcにアルミ電解コンデンサを使用する例を説明した。この点、カップリングコンデンサCcに、無負荷状態においてアルミ電解コンデンサと同様の特性劣化を示すコンデンサを使用する場合にも、上述の実施の形態に係る構成を適用可能である。
【0041】
なお、実施の形態は、以下の項目によって特定されてもよい。
【0042】
[項目1]
1つ又は直列接続された複数のセル(E1-En)を含み、アースと絶縁された状態の蓄電部(20)の電流経路上の第1接続点に、第1端子が接続される第1カップリングコンデンサ(Cc1)と、
前記蓄電部(20)の電流経路上の、前記第1接続点より電位が低い第2接続点に第2端子が接続され、第1端子が前記第1カップリングコンデンサ(Cc1)の第2端子に接続される第2カップリングコンデンサ(Cc2)と、
前記第1カップリングコンデンサ(Cc1)の第2端子と前記第2カップリングコンデンサ(Cc2)の第1端子との間の第3接続点(A)に、インピーダンス素子(Ra)を介して所定の交流電圧を印加する交流出力部(13a)と、
前記第3接続点(A)の電圧を測定する電圧測定部(13b)と、
前記電圧測定部(13b)により測定された電圧をもとに漏電の有無を判定する判定部
(13c)と、
を備えることを特徴とする漏電検出装置(10)。
これによれば、カップリングコンデンサで発生することがある漏れ電流の増加を抑制することができる。
[項目2]
前記第1カップリングコンデンサ(Cc1)及び前記第2カップリングコンデンサ(Cc2)は、アルミ電解コンデンサであり、
前記第1カップリングコンデンサ(Cc1)及び前記第2カップリングコンデンサ(Cc2)のそれぞれの第1端子は正極端子であり、
前記第1カップリングコンデンサ(Cc1)及び前記第2カップリングコンデンサ(Cc2)のそれぞれの第2端子は負極端子である、
ことを特徴とする項目1に記載の漏電検出装置(10)。
これによれば、無負荷状態のアルミ電解コンデンサで発生する漏れ電流の増加を抑制することができる。
[項目3]
前記第1接続点は、前記蓄電部(20)の正極であり、
前記第2接続点は、前記蓄電部(20)の負極である、
ことを特徴とする項目1または2に記載の漏電検出装置(10)。
これによれば、蓄電部(20)の外に、カップリングコンデンサとの接続点を設けることができ、カップリングコンデンサの接続が容易である。
[項目4]
車両のシャーシアースと絶縁された状態で搭載され、前記車両内の負荷(2)に電力を供給する蓄電部(20)と、
前記蓄電部(20)の正極と前記負荷(2)の一端が接続されるプラス配線(Lp)に挿入される第1スイッチ(MRp)と、
前記蓄電部(20)の負極と前記負荷(2)の他端が接続されるマイナス配線(Lm)に挿入される第2スイッチ(MRm)と、
項目1または2に記載の漏電検出装置(10)と、
を備えることを特徴とする車両用電源システム(5)。
これによれば、カップリングコンデンサで発生することがある漏れ電流の増加が抑制された漏電検出装置(10)を備える車両用電源システム(5)を実現することができる。
【符号の説明】
【0043】
2 インバータ、 3 モータ、 5 電源システム、 10 漏電検出装置、 13 制御部、 13a 交流出力部、 13b 電圧測定部、 13c 漏電判定部、 20 蓄電部、 E1-En セル、 Cc カップリングコンデンサ、 Cc1 第1カップリングコンデンサ、 Cc2 第2カップリングコンデンサ、 Ra,Rb 抵抗、 SW1 スイッチ、 ZD1 第1ツェナーダイオード、 ZD2 第2ツェナーダイオード、 MRp 正側メインリレー、 MRm 負側メインリレー、 Lp プラス配線、 Lm マイナス配線、 Cp 正側Yコンデンサ、 Cm 負側Yコンデンサ、 Rlp 正側漏電抵抗、 Rlm 負側漏電抵抗。
図1
図2
図3
図4