(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】乗物のブレーキシステムを制御する方法とそのシステム
(51)【国際特許分類】
B60T 8/00 20060101AFI20240604BHJP
B60T 13/74 20060101ALI20240604BHJP
B60T 17/22 20060101ALI20240604BHJP
B60T 8/88 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B60T8/00 Z
B60T13/74 G
B60T17/22 A
B60T8/88
(21)【出願番号】P 2021518105
(86)(22)【出願日】2019-09-30
(86)【国際出願番号】 IB2019058279
(87)【国際公開番号】W WO2020070613
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-09-12
(31)【優先権主張番号】102018000009105
(32)【優先日】2018-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】521259127
【氏名又は名称】ブレンボ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】BREMBO S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】ファブリツィオ・フォルニ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレリオ・ガリッツィ
(72)【発明者】
【氏名】マッシモ・ディ・ステファノ
(72)【発明者】
【氏名】アレッサンドロ・ロッシ
(72)【発明者】
【氏名】ルカ・ウゴリーニ
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-161154(JP,A)
【文献】特開2014-177205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 8/00
B60T 13/74
B60T 17/22
B60T 8/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物のブレーキシステムを制御する方法であって、
乗物制御モジュール(101)によって、ブレーキ要求(RF)を受けるステップ(501)と、
前記乗物制御モジュール(101)によって、前記乗物を代表する第1の入力情報(I1)を受けるステップ(502)と、
前記乗物制御モジュール(101)によって、前記第1の入力情報(I1)に基づいて、第1の中間情報(I1’)を求めるステップ(503)と、
前記乗物制御モジュール(101)によって、前記第1の入力情報(I1)
と前記ブレーキ要求(RF)に基づいて、基準力値(FS)を求めるステップ(504)と、
乗物角部に関連付けられた第1の複数の検出装置によって、前記乗物角部における前記ブレーキシステムを代表する第2の入力
情報(I2)を検出するステップ(505)と、
力推定及び有効化モジュール(102)によって、前記第1の中間情報(I1’)
と前記第2の入力情報(I2)に基づいて、推定された力値(
ST)を求めるステップ(506)と、
前記力推定及び有効化モジュール(102)によって、制御量(GC)を求めるステップ(507)と、
ブレーキ制御モジュール(103)によって、前記制御量(GC)
と前記基準力値(FS)に基づいて、前記ブレーキシステムのブレーキキャリパの電気機械式アクチュエータ(AE)の制御信号(SC)を求めるステップ(508)と、
前記ブレーキ制御モジュール(103)によって、前記制御信号(SC)を前記電気機械式アクチュエータ(AE)に提供するステップ(509)を有する方法。
【請求項2】
前記力推定及び有効化モジュール(102)は第1の力推定サブモジュール(104)を有し、
前記力推定及び有効化モジュール(102)によって前記制御量(GC)を求めるステップ(507)は、
前記第1の力推定サブモジュール(104)によって、前記第1の中間情報(I1’)
と前記第1の入力情報(I1)に基づいて、推定された力値(ST)を求めるステップ(600)と、
前記第1の力推定サブモジュール(104)によって、前記推定された力値(ST)に基づいて、前記制御量(GC)を求めるステップ(601)を有する、請求項1の方法。
【請求項3】
前記力推定及び有効化モジュール(102)は、第1の力推定サブモジュール(104)と第2の力有効化サブモジュール(105)を有し、
前記
第1の力推定モジュール(104)によって前記制御量(GC)を求めるステップは、
前記第1の力推定サブモジュール(104)により、前記第1の中間情報(I1’)
と前記第2の入力情報(I2)に基づいて、推定された力値(ST)を求めるステップ(700)と、
前記ブレーキシステムの前記ブレーキキャリパに前記電気機械式アクチュエータ(AE)によって与えられた力値(FM)を、前記第2の力有効化サブモジュール(105)に動作上関連付けられた少なくとも一つの力センサ(SF)によって検出するステップ(701)と、
前記推定された力値(ST)
と前記電気機械式アクチュエータ(AE)によって前記ブレーキシステムの前記ブレーキキャリパに与えられた前記検出された力値(FM)に基づいて、前記制御量(GC)を求めるステップ(702)を備えた請求項1の方法。
【請求項4】
前記第1の入力情報(I1)と前記ブレーキ要求(RF)に基づいて、前記乗物制御モジュール(101)によって、前記基準力値(FS)を前記ブレーキ制御モジュール(103)に直接提供するステップ(602)と、
前記制御量(GC)
と前記基準力値(FS)に基づいて、前記ブレーキシステムの前記ブレーキキャリパの前記電気機械式アクチュエータ(AE)の前記制御信号(SC)を求めるステップ(603)を有し、
前記制御量(GC)は前記推定された力値(
ST)である、請求項2の方法。
【請求項5】
前記第1の入力情報(I1)
と前記ブレーキ要求(RF)に基づいて、前記基準力値(FS)を前記ブレーキ制御モジュール(103)に直接提供するステップ(703)と、
前記制御量(GC)
と前記基準力値(FS)に基づいて、前記ブレーキ制御モジュール(103)によって、前記ブレーキシステムの前記ブレーキキャリパの前記電気機械式アクチュエータ(AE)の前記制御信号(SC)を求めるステップ(704)を有し、
前記制御量(GC)が有効化された力値(VD)である、請求項3の方法。
【請求項6】
前記第1の入力情報(I1)
と前記ブレーキ要求(RF)に基づいて、前記乗物制御モジュール(101)によって、前記基準力値(FS)を前記第1の力推定サブモジュール(104)に提供するステップ(800)と、
前記推定された力値(ST)
と前記基準力値(FS)に基づいて、前記第1の力推定サブモジュール(104)によって、前記制御量(GC)を求めるステップ(801)と、
前記制御量(GC)に基づいて、前記ブレーキ制御モジュール(103)により、前記ブレーキシステムの前記ブレーキキャリパの前記電気機械式アクチュエータ(AE)の前記制御信号(SC)を求めるステップ(802)を有し、
前記有効化された力値(VD)は前記推定された力値(ST)であり、
前記制御量(GC)は、前記基準力値(FS)に対応する、前記ブレーキシステムの前記ブレーキキャリパの前記電気機械式アクチュエータ(AE)の位置値である請求項2の方法。
【請求項7】
前記力推定及び有効化モジュール(102)は、第1の力推定サブモジュール(104)と第2の力推定サブモジュール(105)とを有し、
前記第1の入力情報(I1)
と前記ブレーキ要求(RF)に基づいて、前記乗物制御モジュール(101)によって、前記基準力値(FS)を前記第1の力推定サブモジュール(104)に直接提供するステップ(900)と、
前記推定された力値(ST)
と前記基準力値に基づいて、前記第1の力推定サブモジュール(104)により、前記制御量(GC)を求めるステップ(901)と、
前記第2の力有効化サブモジュール(105)に動作上関連付けられた少なくとも一つの力センサ(SF)によって、前記電気機械式アクチュエータ(AE)によって前記ブレーキシステムの前記ブレーキキャリパに与えられる力値(FM)を検出するステップ(902)と、
前記推定された力値(ST)
と前記電気機械式アクチュエータ(AE)によって前記ブレーキシステムの前記ブレーキキャリパに与えられた前記検出された力値(FM)に基づいて、前記第2の力
有効化サブモジュールによって、前記有効化された力値(VD)を求めるステップ(903)を有し、
前記制御量(GC)は、前記基準力値(FS)に対応する、前記ブレーキシステムの前記ブレーキキャリパの前記電気機械式アクチュエータ(AE)の位置値である、請求項
1の方法。
【請求項8】
前記第1の力推定サブモジュール(104)によって、前記推定された力値(ST)を、前記乗物に装備された乗物安全診断モジュール(DS)に提供するステップ(604)を有する、請求項4又は6の方法。
【請求項9】
前記第2の力有効化サブモジュール(105)によって、前記乗物に装備された乗物安全及び診断モジュール(DS)に前記有効化された力値(VD)を提供するステップ(705,904)を有する、請求項5又は7の方法。
【請求項10】
乗物制御モジュール(101)と、
乗物の角部に動作上関連付けられた第1の複数の検出装置と、
力推定及び有効化モジュール(102)と、
ブレーキ制御モジュールを有し、
請求項1から7のいずれかの制御方法の各ステップを実行するように構成されている、乗物のブレーキシステムを制御するシステム(100)。
【請求項11】
乗物安全及び診断モジュール(DS)を有し、
請求項8又は9の方法のステップを実行するように構成された、請求項10のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物のブレーキシステムに関する。本発明は特に、乗物のブレーキシステムを制御する方法とそのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
最近の乗物、例えば乗用車は、その多くにブレーキ・バイ・ワイヤ(BBW)技術を用いた電子ブレーキシステムが設けられるようになっている。
【0003】
BBWブレーキシステムでは、典型的には、それぞれのブレーキディスクの一対のブレーキパッドに加えられる力を検出する力センサが設けられている。
【0004】
確かに、ブレーキの際中、その力を知ることが重要である。その力は、力センサによって検出された力(ドライバ又は電子ドライバアシスタントシステムによって加えられた力)の値をブレーキングに必要な基準力値と比較することにより、典型的な閉ループ制御を備えたBBW電子ブレーキシステムによって変調されて、ブレーキ力が必要な基準力値に達することが補償される。
【0005】
その比較は、ブレーキ要求の典型的な場面だけでなく、BBW電子ブレーキシステムが、乗物に備え付けられているその他の電子システム[例えば、アンチロック・ブレーキング・システム(ABS)又は電子安定制御システム(ECS)]からの要求に応答しなければならない特定の場面や、乗物自体の低グリップ状態に応答しなければならない場面でも行われる。
【0006】
BBW電子ブレーキシステムが、要求される厳しい機能安全の要求に応答することで上述の制御を確保するためには、この種のシステムで使用される力センサは、極めて高度な性能と信頼レベルに達することを補償する特定の開発プロセスによらなければならない。
【0007】
このような理由から、そのような力センサは極めて高価で、ブレーキシステム及び乗物の全体コストに明らかに影響を与える。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、従来技術に関して説明した欠点を少なくとも部分的に解消し、出来るだけ低コストで極めて高度な性能と信頼性を補償する、乗物用ブレーキシステムを制御する方法を考案し提供することである。
【0009】
この目的は、請求項1に係る方法によって達成される。
【0010】
本発明はまた、乗物のブレーキシステムを制御する電子システムに関する。
【0011】
好適な実施形態は従属請求項の主題である。
【0012】
本発明に係る方法とシステムの特徴と利点は、非限定的な実施例である以下の好適な実施形態の説明から、添付図面を参照することにより、明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、ブロック図によって、本発明の実施形態に係る乗物用ブレーキシステムを制御する電子システムを示す。
【
図2】
図2は、ブロック図によって、本発明の別の実施形態に係る乗物用ブレーキシステムを制御する電子システムを示す。
【
図3】
図3は、ブロック図によって、本発明の別の実施形態に係る乗物用ブレーキシステムを制御する電子システムを示す。
【
図4】
図4は、ブロック図によって、本発明の別の実施形態に係る乗物用ブレーキシステムを制御する電子システムを示す。
【
図5】
図5は、ブロック図によって、本発明の別の実施形態に係る乗物用ブレーキシステムを制御する電子システムを示す。
【
図6】
図6は、ブロック図によって、本発明の別の実施形態に係る乗物用ブレーキシステムを制御する電子システムを示す。
【
図7】
図7は、ブロック図によって、本発明の別の実施形態に係る乗物用ブレーキシステムを制御する電子システムを示す。
【
図8】
図8は、ブロック図によって、本発明の別の実施形態に係る乗物用ブレーキシステムを制御する電子システムを示す。
【発明の詳細な説明】
【0014】
図1~4を参照すると、符号100は、本発明に係る乗物のブレーキシステム(以下、「電子システム」又は単に「システム」という。)を制御する電子システムの全体を示す。
【0015】
図面中の同一又は類似の要素は、同じ番号又はアルファベットの符号によって示す。
【0016】
本説明上、「乗物」は、2輪、3輪、4輪又はそれ以上の車輪を有する商用のあらゆる乗物又はモータサイクルを意味する。
【0017】
また、ブレーキシステムは、図面上示していないが、乗物の常用ブレーキング又は乗物のパーキングブレーキングを生み出すために寄与するすべての部品(機械的、電気的、電子的部品、及びブレーキ流体)の全体を意味する。
【0018】
図1~4を参照すると、システム100は乗物制御モジュール101を有する。
【0019】
乗物制御モジュール101(例えば、ハードウェアモジュール又は主ハードフェアモジュールのソフトウェアロジック)は、目的とする処理の一つとして、ブレーキ要求RF(減速要求)を受けるように構成されている。
【0020】
このようなブレーキ要求RFは、乗物のドライバによって作動されるブレーキペダル(図示せず)から送られ、乗物制御モジュール101によって実行されるEBD(電子ブレーキ力分配)型のロジックによって処理される。または、ブレーキ要求RFは、乗物の自動ドライバ支援ロジック、例えば、AEB(自立型緊急ブレーキ)型(図示せず)のロジックから得られる。
【0021】
乗物制御モジュール101はまた、乗物を代表する第1の入力情報11を受信するように構成されている。
【0022】
本説明上、「乗物を代表する第1の入力情報I1」は、乗物(すなわち、乗物の前部角部又は後部角部)に搭載された検出装置(実際のセンサ又は仮想のセンサ)からの検出された又は推定された情報を意味する。検出装置は、必ずしも乗物のブレーキシステムに関連している必要はない。
【0023】
乗物を代表する第1の入力情報I1の例は、
ブレーキ要求(ブレーキペダルの位置及び/又は圧力を意味する)、
乗物の角部で測定及び/又は推定された圧力/力、
乗物の動的変数(長軸方向の加速Ax、横方向の加速Ay、ヨーレート)、
車輪速度、
スリップを計算するために適したその他の推定値(例えば、ブレーキの状態、タイヤの状態、乗物の状態等)、である。
【0024】
乗物制御モジュール101は、第1の入力情報I1に基づいて第1の中間情報L1’を決定するように構成されている。
【0025】
第1の中間情報I1’は、第1の入力情報I1を数学的に処理した情報(例えば、派生物、フィルタリング[例えば、平均値、中央値、FIRフィルタ、IIRフィルタ等)]である。
【0026】
さらに詳細に説明すると、第1中間情報I1’は、
フィルタリングされた及び/又は誘導された及び/又は処理された情報I1;
ブレーキング要求(ブレーキペダルの位置及び/又は圧力)に基づいて、乗物制御モジュール101(例えば、EBDを具備するモジュール)から得られる減速要求;
スリップ角度又は単にスリップ;
車輪の減速;
乗物の前車軸平均スリップ角と乗物の後車軸平均スリップ角との間の差;
乗物の前車軸スリップ角と同じ車軸の車輪の乗物の後車軸スリップ角;
乗物の状態推定値[質量、分配(すなわち、乗物の個々の車輪に作用するブレーキトルクのそれぞれの分散)、アクティブコントロール(例えば、EBD又はESP(電子安定プログラム)]である。
【0027】
さらに、乗物制御モジュール101は、第1入力情報I1とブレーキ要求RFに基づいて、基準力値FSを決定するように構成されている。
【0028】
基準力値FSの計算例が、
図6を参照して以下に示される。
【0029】
図1~4に戻ると、システム100はさらに、乗物の角部に動作上関連付けられた第1の複数の検出装置P1を有する。
【0030】
前記第1の複数の検出装置P1は、乗物の角部におけるブレーキシステムを代表する第2の入力情報I2を検出するように構成されている。
【0031】
本説明の目的上、「乗物の角部におけるブレーキ装置を代表する第2の入力情報I2」は、乗物の角部における情報を意味する。
【0032】
さらに詳細に説明すると、実施形態において、第1の複数の検出装置P1は、物理的な第1の複数のセンサ又はスイッチP1’(例えば、位置センサ、電気的な電圧センサ、電気的な電流センサ、温度センサなど)である。
【0033】
この場合、ブレーキシステムを代表する第2の入力情報I2は、例えば、
ブレーキキャリパの電気機械式アクチュエータの位置、
ブレーキキャリパの電気機械式アクチュエータの位置から算出される量(例えば、速度、加速度、又は加速度の派生値(加加速度))、
電気機械式アクチュエータを移動するためのモータの電圧/PWM(パルス幅変調)及びその派生値(例えば、電圧ピーク、フィルタリングされた中位値、電流から導かれる電力等)、
電気モータによって誘導される電流及びその他の派生値(例えば、電流ピーク値、フィルタリングされた平均値、電圧から導かれる電力、消費推定値、及び誘導電力等)、及び
電気機械式アクチュエータ及び/又は電気モータの外部温度、である。
【0034】
また、図示する別の実施形態において、第1の複数の検出装置は、第1の複数の物理センサP1’に加えて、複数の第2の力センサP1”又はスイッチを有し、これは例えばハードウェアで作られるか、又はソフトウェアロジックを実施することにより得られる。
【0035】
そのような力センサ又はスイッチの例は、荷重スイッチ、電気機械式アクチュエータピストンのストロークの第1部分における限られた範囲を有する力センサ、電気機械式アクチュエータピストンによるギャップゾーン(無荷重位置)から荷重ゾーンまでのソフトウェアの推定器である。
【0036】
その場合、ブレーキシステムを示す第2の入力情報I2は、例えば、電気機械式アクチュエータからの押圧ステップの開始を示す情報(すなわち、荷重ステップの開始を示す情報(例えばフラグ)を有する。この場合、電気機械式アクチュエータピストンは、力を加え始め、無荷重位置からブレーキキャリパに荷重を加え始める位置まで移動する。
【0037】
論理構造又はソフトウェア構造において、電気機械式アクチュエータによる力ステップの開始を示す情報は、複数の量、例えば速度、加速度、勾配、電流、位置、印可時間又はそれらの派生値をそれぞれの基準閾値と比較することによって、力センサ又はスイッチP1”によって求められる。
【0038】
再び
図1~4を参照すると、システム100はさらに、力推定及び有効化モジュール102を有する。
【0039】
力推定及び有効化モジュール102(例えば、ハードウェアモジュールのハードウェア又はソフトウェア)は、上述の第1の中間情報I1’と上述の第2の入力情報I2に基づいて、推定された力STの値を求めるように構成されている。
【0040】
推定力値STの計算例が、以下の本発明に係る方法の説明中に、提供される。
【0041】
力推定及び有効化モジュール102はさらに、制御量GCを求めるように構成されている。
【0042】
有効力値VDと制御量GCの決定は、
図1~4に示された複数の実施形態を参照して以下に説明する。
【0043】
図1~4を参照すると、システム100はさらに、ブレーキ制御モジュール103を有する。
【0044】
ブレーキ制御モジュール103(例えば、メインハードウェアモジュールのハードウェアモジュールとソフトウェアロジック)は、制御量GCと基準力値FSに基づいて、システム100の外側に符号AEで示されているブレーキシステムのブレーキキャリパの電気機械的アクチュエータの制御信号SCを求めるように構成されている。
【0045】
制御信号SCは、例えば、ブレーキキャリパの電気機械式アクチュエータAEに供給される電流又は電圧(PWM)の基準値(設定ポイント)である。
【0046】
図7を参照して、制御信号SCの計算例を以下に説明する。
【0047】
図1~4を再び参照すると、ブレーキ制御モジュール103は、そのような制御信号SCを電気機械式アクチュエータAEに提供するように構成される。
【0048】
さらに詳細に説明すると、
図1~4に示されているように、システム100はさらに、電気機械式アクチュエータのための電子ドライブモジュールDRを有する。
【0049】
ブレーキ制御モジュール103は、電子ドライブモジュールDRによって、電気機械式アクチュエータAEに制御信号SCを提供するように構成されている。
【0050】
ドライブモジュールDRは、制御信号SC、そしてブレーキング要求レベル(PWM/パーセンテージ)を受けるように構成されており、これにより、電気機械式アクチュエータAEに提供されるドライブ信号SC’(例えば、電気機械式アクチュエータAEを動かすために電気モータに提供される電流ドライブ)を生成する。
【0051】
図1を参照すると、実施形態において、力推定及び有効化モジュール102は、第1の力推定サブモジュール104を有する。
【0052】
第1の力推定サブモジュール104は、例えばメインハードウェアモジュール内のハードウェアモジュール又はソフトウェアロジックで、上述の第1の中間情報I1’と上述の入力情報I2に基づいて、推定力STの値を求めるように構成されている。
【0053】
上述のように、推定力値の計算例は、本発明に係る方法の説明の中で以下に説明する。
【0054】
図1の実施形態によれば、第1の力推定モジュール104は、推定された力値STに基づいて制御量GCを求めるように構成されている。
【0055】
第1の実施形態によれば、
図1及び先の実施形態と組み合わせて示されるように、乗物制御モジュール101は、第1の入力情報I1
とブレーキ要求RFに基づいて、求めた基準力値FSを
ブレーキ制御モジュール103に直接提供するように構成されている。
【0056】
この実施形態において、ブレーキ制御モジュール103は、制御量GCと基準力値FSに基づいて、ブレーキシステムのブレーキキャリパの電気機械式アクチュエータAEの制御信号SCを求めるように構成されている。
【0057】
本実施形態において、有効化された力値を示す制御量は、電気機械式アクチュエータAEを制御するための十分にロバストな力レベルを確保するために、第1の力推定モジュールによって有効化された推定力値である。そのような推定力値STは、別のセンサ及び/又は動的な乗物の応答から得られるフィードバックによって有効化される。
【0058】
実施形態によれば、
図1に示すように、また先の実施形態と組み合わせて示されるように、第1の力推定サブモジュール104は、乗物に設けられた乗物故障診断及び安全モジュールに推定力値
STを提供するように構成されている。
【0059】
乗物故障診断及び安全モジュールDS(例えば、メインハードウェアモジュール内のハードウェアモジュール又はソフトウェアロジックモジュール)は、
図1におけるシステム100の外側に図示されている。
【0060】
別の実施形態によれば、
図2に示すように、また
図1を参照して説明した先の実施形態の代替案として、力推定及び有効化モジュール102は、第1の力推定サブモジュール104と第2の力有効化サブモジュール105を有する。
【0061】
第1の力推定サブモジュール104は、上述の第1の中間情報I1’と上述の第2の入力情報I2に基づいて、推定力値STを求めるように構成されている。
【0062】
本実施形態において、システム100はさらに、第2の力有効化サブモジュール105に動作上接続された少なくとも一つの力センサSFを有する。
【0063】
上述の少なくとも一つの力センサSFは、低ASIL(自動車安全完全性レベル)を有し、そのために低コストである。
【0064】
上述の少なくとも一つの力センサSFの例は、ひずみゲージ、ピエゾ、磁気弾性のように、QM(品質管理)又はA~CのASIL(自動車安全完全性レベル)の可変ロバスト性を有する力センサである。
【0065】
上述の少なくとも一つの力センサSFは、電気機械式アクチュエータAEによってブレーキシステムのブレーキキャリパに加えられる力値FMを検出するように構成されている。
【0066】
第2の力有効化サブモジュール105(例えば、メインハードウェアモジュールのハードウェアモジュール又はソフトウェアロジック)は、推定力値STと電気機械式アクチュエータAEによってブレーキシステムのブレーキキャリパに加えられる検出力値FMに基づいて、制御量GCを求めるように構成されている。
【0067】
第1の力推定モジュール104は、上述の少なくとも一つの力センサSFによって提供される情報を用いることなく(すなわち、検出された力値FMを用いることなく)、推定力値STを求めるように構成されている。
【0068】
代わりに、推定力値STが、少なくとも一つの力センサSFからの検出力値FMを有効化するために、第2の力有効化モジュール105によって使用される。
【0069】
このように、
図2の実施形態に係る巣ステムによれば、冗長的な力情報を有することにより、上述のように、低ASIL型安全レベル及び低コストの少なくとも一つの力センサSFの安全レベル要求を下げることができる。
【0070】
実施形態に係る第2の力有効化サブモジュール105は、推定された力値STと少なくとも一つの力センサSFで検出された力値FMとを比較し、また、承諾閾値に基づいて行われた比較の結果から、少なくとも一つの力センサSFによって検出された力値FMが推定力値STに関してどれだけ正確であるかを求め、また、その結果、二つの値の数学的処理(例えば、単なる平均、加重平均、又はその他のフィルタリング)を実行するように、構成されている。
【0071】
図2の実施形態のシステムによれば、少なくとも一つの力センサ
SFが故障又は誤作動を生じた場合にもまた、有効力値VDを求めることが可能であることが好ましい。
【0072】
図2に示すように、また、
図2を参照した上述の実施形態と組み合わせて、乗物制御モジュール101はさらに、第1の入力情報I1
とブレーキ要求RFに基づいて、基準力値FSを
ブレーキ制御モジュール103に直接提供するように構成される。
【0073】
また、本実施形態において、ブレーキ制御モジュール103は、制御量GCと求めた基準力値FSに基づいて、ブレーキシステムのブレーキキャリパの電気機械式アクチュエータAEの制御信号SCを求めるように構成される。
【0074】
本実施形態において、制御量GCは、有効力値VDである。
【0075】
実施形態によれば、
図2に示すように、また
図2を参照して説明した実施形態と組み合わせて、第2の力有効化サブモジュール105は、乗物に装備された乗物故障診断及び安全モジュールDSに有効力値VDを提供するように構成される。
【0076】
乗物故障診断及び安全モジュールDS(例えば、メインハードウェアモジュールにおけるハードウェアモジュール又はソフトウェア論理モジュール)は、
図2におけるシステム100の外側に図示される。
【0077】
実施形態によれば、
図3に示すように、また力推定及び有効化モジュール102が第1の力推定サブモジュール104を有する上述の実施形態と組み合わせて、乗物制御モジュール101は、第1の入力情報I1
とブレーキ要求RFに基づいて求められた基準力値FSを、第1の力推定サブモジュール104に直接提供するように構成される。
【0078】
この実施形態において、第1の力推定サブモジュール104は、求めた基準力値FSに基づいて、制御量GCを求めるように構成される。
【0079】
本実施形態において、有効力値VDは、推定力値STである。
【0080】
さらに、本実施形態ではまた、制御量GCは、基準力値に対応する、ブレーキシステムのブレーキキャリパの電気機械式アクチュエータAEの位置値である。
【0081】
本実施形態において、制御ブレーキ用制御モジュール103は、制御量GCに基づいて、ブレーキシステムのブレーキキャリパの電気機械式アクチュエータAEの制御信号SCを求めるように構成される。
【0082】
実施形態によれば、
図3に示すように、又、
図3を参照して上述した実施形態と組み合わせて、第1の力推定サブモジュール104は、乗物に装備された乗物故障診断及び安全モジュールDSに対して、推定力値STを提供するように構成される。
【0083】
乗物故障診断及び安全モジュールDS(例えば、メインハードウェアモジュールにおけるハードウェアモジュール又はソフトウェア論理モジュール)は、
図3においてシステム100の外側に図示されている。
【0084】
更なる実施形態によれば、
図4に示すように、また、力推定及び有効化モジュール102が第1の力推定サブモジュール104と第2の力有効化サブモジュール105を備えた上述の実施形態を組み合わせて、乗物制御モジュール101は、第1の入力情報I1
とブレーキ要求RFに基づいて求められた基準力値FSを、第1の力推定サブモジュール104に対して直接提供するように構成される。
【0085】
本実施形態において、第1の力推定サブモジュール104は、推定された力値STと求められた基準力値FSに基づいて、制御量GCを求めるように構成されている。
【0086】
本実施形態において、制御量GCは、求めた基準力値FSに対するブレーキシステムのブレーキキャリパの電気機械式アクチュエータAEの位置値である。
【0087】
本実施形態において、システム100はさらに、第2の力有効化サブモジュール105に動作上接続された少なくとも一つの力センサSFを有する。
【0088】
少なくとも一つの力センサSFは、低ASIL(自動車安全完全性レベル)を有し、したがって低コストである。
【0089】
上述の少なくとも一つの力センサSFの例は、ひずみゲージ、ピエゾ、磁気弾性のように、QM(品質管理)又はA~CのASIL(自動車安全完全性レベル)の可変ロバスト性を有する力センサである。
【0090】
上述の少なくとも一つの力センサSFは、電気機械式アクチュエータAEによって、ブレーキシステムのブレーキキャリパに加えられる力値FMを検出するように構成されている。
【0091】
本実施形態において、第2の力有効化サブモジュール105は、電気機械式アクチュエータAEによってブレーキシステムのブレーキキャリパに加えられる検出力値FMと推定力値STに基づいて、有効化された力値VDを求めるように構成されている。
【0092】
この構造の利点は、
図3の実施形態を参照して上述した実施形態に完全に類似している。
【0093】
実施形態によれば、
図4に示すように、また、
図4を参照して説明した実施形態との組み合わせにおいて、第2の力推定サブモジュール105は、乗物が装備されている乗物故障診断及び安全モジュールDSに、有効力値VDを提供するように構成されている。
【0094】
乗物故障診断及び安全モジュールDS(例えば、メインハードウェアモジュールにおけるハードウェアモジュール又はソフトウェア論理モジュールは、
図4においてシステム100の外側に図示されている。
【0095】
上述のように、上述の各モジュールは、例えば、メインハードウェアモジュールにおけるハードウェアモジュール又はソフトウェア論理モジュールであってもよいし、異なるハードウェア及び/又は論理アーキテクチャに従って構成してもよい。
【0096】
図2を参照して説明した実施形態の場合、第1の実施例のアーキテクチャは、乗物の後部車軸のマスタユニットとして構成される第1の電子制御ユニットECU1と、該第1の電子制御ユニット
ECU1に動作上接続され、乗物の前部車軸のスレーブユニットとして構成される第2の電子制御ユニット
ECU2を有する。
【0097】
この第1の実施例のアーキテクチャによれば、第1の電子制御ユニットECU1は、
乗物制御モジュールと、
故障診断及び安全モジュールと、
後部右角部に設けられた第1の複数の検出装置(物理センサ又は
スイッチと、力センサ又はスイッチ)、力推定モジュール、ブレーキ制御モジュール、及びブレーキキャリパの電気機械式アクチュエータのためのドライブモジュールと、
後部左角部に設けられた第1の複数の検出装置(物理センサ又は
スイッチと、力センサ又はスイッチ)、力推定モジュール、ブレーキ制御モジュール、及びブレーキキャリパの電気機械式アクチュエータのためのドライブモジュールを備える。
【0098】
再び、第1の複数のアーキテクチャによれば、第2の電子制御ユニットECU2は、
前部右角部に設けられた第1の複数の検出装置(物理センサ又は
スイッチと、力センサ又はスイッチ)、力推定モジュール、ブレーキ制御モジュール、及びブレーキキャリパの電気機械式アクチュエータのためのドライブモジュールと、
前部左角部に設けられた第1の複数の検出装置(物理センサ又は
スイッチと、力センサ又はスイッチ)、力推定モジュール、ブレーキ制御モジュール、及びブレーキキャリパの電気機械式アクチュエータのためのドライブモジュールを備える。
【0099】
再び、
図2を参照して説明した実施形態の場合、第2の実施例のアーキテクチャは、
マスタユニットして構成された第1の電子制御ユニットECU1と、
前記第1の電子制御ユニットECU1に動作上接続され、乗物の前部左角部のスレーブユニットとして構成された第2の電子制御ユニットECU2と、
前記第1の電子制御ユニットECU1に動作上接続され、乗物の前部右角部のスレーブユニットとして構成された第3の電子制御ユニットECU3と、
前記第1の電子制御ユニットECU1に動作上接続され、乗物の後部左角部のスレーブユニットとして構成された第4の電子制御ユニットECU4と、
前記第1の電子制御ユニットECU1に動作上接続され、乗物の後部左角部のスレーブユニットとして構成された第5の電子制御ユニットECU5を備えている。
【0100】
第2の実施例のアーキテクチャによれば、第1の電子制御ユニットECU1は、乗物制御モジュールと、故障診断及び安全モジュールを有する。
【0101】
再び、第2の実施例のアーキテクチャによれば、
第2の電子制御ユニットECU2は、
前部左角部に設けられた第1の複数の検出装置(物理センサ又は
スイッチと、力センサ又はスイッチ)、力推定モジュール、ブレーキ制御モジュール、及びブレーキキャリパの電気機械式アクチュエータのためのドライブモジュールを有し、
第3の電子制御ユニットECU3は、
前部右角部に設けられた第1の複数の検出装置(物理センサ又は
スイッチと、力センサ又はスイッチ)、力推定モジュール、ブレーキ制御モジュール、及びブレーキキャリパの電気機械式アクチュエータのためのドライブモジュールを有し、
第4の電子制御ユニットECU4は、
後部左角部に設けられた第1の複数の検出装置(物理センサ又は
スイッチと、力センサ又はスイッチ)、力推定モジュール、ブレーキ制御モジュール、及びブレーキキャリパの電気機械式アクチュエータのためのドライブモジュールを有し、
第5の電子制御ユニットECU5は、
後部右角部に設けられた第1の複数の検出装置(物理センサ又は
スイッチと、力センサ又はスイッチ)、力推定モジュール、ブレーキ制御モジュール、及びブレーキキャリパの電気機械式アクチュエータのためのドライブモジュールを有する。
【0102】
本発明に係る乗物のブレーキシステムを制御する方法500を、上述の図面と
図5のブロック図を参照して説明する。
【0103】
方法500は、開始STRのシンボルステップを有する。
【0104】
方法500は、乗物制御モジュール101によって、ブレーキ要求RFを受けるステップ501を有する。
【0105】
制御モジュール101とブレーキ要求RFは、上述の通りである。
【0106】
方法500はさらに、乗物制御モジュール101によって、乗物を示す第1の入力情報I1を受けるステップ502を有する。
【0107】
乗物を示す第1の入力情報I1は、上述のとおりである。
【0108】
方法500はさらに、乗物制御モジュール101によって、第1の入力情報I1に基づいて第1の中間情報I1’を求めるステップ503を有する。
【0109】
第1の中間情報I1’は、上述の通りである。
【0110】
方法500は、乗物制御モジュール101によって、第1の入力情報I1とブレーキ要求RFに基づいて、基準力値FSを求めるステップ504を有する。
【0111】
【0112】
特に、乗物制御モジュール101は、それぞれ処理ブロック101’によって、乗物の動的挙動を示す以下の情報の関数として、基準値FSを求める。
乗物の車輪の速度を示す情報WS、
乗物の車輪の加速度を示す情報WA、
車輪のスリップ値WLを基準スリップ値WP及びその他の車輪OLのスリップ値と比較することによって求められる乗物の車輪のスリップを示す情報WL’、
乗物の減速状態を示す情報と車輪の加速を示す情報WA(乗物の減速は、例えば、ブレーキ要求EF(減速要求)を慣性信号と比較することによって求められる慣性信号IM’(IMU測定ユニット)によって求められる)、
乗物の質量MS、
例えば、乗物の前部車軸と後部車軸との間、又は側部車軸の間の乗物の分配RPである。
【0113】
図5に戻ると、方法500はさらに、動作上乗物の角部に関連付けられた第1の複数の検出装置によって、乗物の角部におけるブレーキシステムを示す第2の入力情報I2を検出するステップ505を有する。
【0114】
第1の複数の検出装置P1と第2の入力情報I2は上述のとおりである。
【0115】
方法500はさらに、力推定及び有効化モジュール102により、上述の第1の中間情報I1’と上述の第2の情報I2に基づいて、推定された力値STを求めるステップ506を有する。
【0116】
推定及び有効化モジュール102は上述の通りである。
【0117】
方法500はさらに、力推定及び有効化モジュール102によって、制御量GCを求めるステップ507を有する。
【0118】
複数の実施形態によれば、制御量は、上述の通りで、方法500の別の実施形態を参照して以下に説明する。
【0119】
図5の方法500はまた、ブレーキ制御モジュール103によって、制御量GC
と基準力値FSに基づいて、ブレーキシステムのブレーキキャリパの電気機械式アクチュエータAEの制御信号SCを求めるステップ
508を有する。
【0120】
ブレーキ制御モジュール103,ブレーキシステムのブレーキキャリパの電気機械式アクチュエータAEの制御信号SC、及び電気機械式アクチュエータAEは、上述のとおりである。
【0121】
制御信号SCの計算例を、
図7を参照して以下に説明する。
【0122】
ブレーキ制御モジュール103は、基準力値FSを推定力値STと比較し、その第1の比較結果C1を入力として第1の処理ブロック103’(例えば、力コントローラ)に送り、第1の処理ブロック103’が第1の比較C1の関数として基準速度値SPを生成する。
【0123】
ブレーキ制御モジュール103は、基準速度値SPを推定速度値SEと比較し、その第2の比較結果C2を入力として第2の処理ブロック103”(例えば、速度コントローラ)に送り、第2の処理ブロック103”が第2の比較結果C2の関数として電子機械式アクチュエータAEに送られる制御信号SCを生成する。
【0124】
推定速度値SEは、第1の複数の検出装置P1によって提供される第2の入力情報I2に基づいて、第1の力推定サブモジュール104によって求められる。
【0125】
図5に戻り、方法500はさらに、
ブレーキ制御
モジュール103によって、制御信号SCを電気機械式アクチュエータAEに提供するステップ509を有する。
【0126】
方法500または、終了EDのシンボルステップで終了する。
【0127】
実施形態によれば、
図5の点線で示すように、力推定及び有効化モジュール102は、第1の力推定サブモジュール104(既述)を有する。
【0128】
この実施形態では、力推定及び有効化モジュール102によって制御量GCを求めるステップ507は、
第1の中間情報I1’と第1の入力情報I1に基づいて、第1の力推定サブモジュール104によって、推定力値STを求めるステップ600と、
推定力FSの値に基づいて、制御量GCを、第1の力推定モジュール104によって求めるステップ601を有する。
【0129】
実施形態によれば、上述の実施形態と組み合わせて、
図5の点線で示すように、方法はさらに、
第1の入力情報I1
とブレーキ要求RFに基づいて、求めた基準力値FSを、乗物制御モジュール101によって、ブレーキ制御モジュール103に提供するステップ602と、
推定力値FSである制御量GC
と基準力値FSに基づいて、ブレーキシステムのブレーキキャリパの電気機械式アクチュエータAEの制御信号
SCを、ブレーキ制御モジュール103によって求めるステップ603を有する。
制御量GCは有効力値VDである。
【0130】
実施形態によれば、上述の実施形態と組み合わせて
図5に点線で示すように、方法500はさらに、第1の力推定サブモジュール104によって、推定された力値STを、乗物に装備された乗物故障診断及び安全モジュールDSに提供するステップ604を有する。
【0131】
さらなる実施形態によれば、先の実施形態に代えて、力推定及び有効化モジュール102は、上述の第1の推定サブモジュール104と第2の力有効化サブモジュール105を有する。
【0132】
この実施形態によれば、力推定サブモジュール104によって、制御量GCを求めるステップ507は、
第1の力推定サブモジュール104によって、第1の中間情報I1’と第2の入力情報I2に基づいて、推定力値STを求めるステップ700と、
第2の力有効化サブモジュール105と動作上関連付けられた少なくとも力センサSFによって、電気機械式アクチュエータAEによってブレーキシステムのブレーキキャリパに与えられる力値FMを検出するステップ701と、
第2の力有効化サブモジュール105によって、推定力値STと電気機械式アクチュエータAEによってブレーキシステムのブレーキキャリパに与えられる検出力値FMに基づいて、制御量GCを求めるステップ702を有する。
【0133】
少なくとも一つの力センサSFは上述した。
【0134】
実施形態によれば、先の実施形態と組み合わせて
図5の点線によって示されるように、方法500は、
乗物制御モジュール101によって、第1の入力情報I1
とブレーキ要求RFに基づいて求めた基準力値FSをブレーキ制御モジュール103に直接提供するステップ703と、
ブレーキ制御モジュール103によって、有効化された力値VDである制御量GC
と求めた基準力値FSに基づいて、ブレーキシステムのブレーキキャリパの電気機械式アクチュエータAEの制御信号SCを求めるステップ704を有する。
【0135】
実施形態によれば、先の実施形態と組み合わせて、
図5の点線で示されるように、方法500は、第2の力有効化サブモジュール105によって、
有効化された力値VDを、乗物に装備された乗物故障診断及び安全モジュールDS(既述)に提供するステップ705を有する。
【0136】
さらなる実施形態によれば、上述の実施形態に代えて、
図5に点線で示すように、力推定及び有効化モジュール102が第1の力推定サブモジュール104を有する場合、方法500は、
乗物制御モジュール101によって、第1の入力情報I1
とブレーキ要求RFに基づいて、求めた基準力値FSを、第1の力推定モジュール104に直接提供するステップ800と、
第1の力推定サブモジュール104によって、推定された力STの値
と求めた基準力値FSに基づいて、制御量GCを求めるステップ801を有する。
【0137】
この実施形態において、有効化された力値VDは、推定された力値STである。
【0138】
この実施形態において、制御量GCは、求めた基準値FSに対応する、ブレーキシステムのブレーキキャリパの電気機械式アクチュエータAEの位置値である。
【0139】
この実施形態において、方法500はさらに、ブレーキ制御モジュール103によって、制御量GCに基づいて、ブレーキシステムのブレーキキャリパの電気機械式アクチュエータAEの制御信号SCを求めるステップ802を有する。
【0140】
実施形態によれば、先の実施形態と組み合わせて、方法500は、第1の力推定サブモジュール104によって、乗物に装備された乗物故障診断及び安全モジュールDSに、推定された力値STを提供するステップ604を有する。
【0141】
別の実施形態によれば、上述の実施形態に代えて、
図5に点線で示すように、力推定及び有効化モジュール102が第1の力推定サブモジュール104と第2の力有効化サブモジュール
105を有する場合、方法500は、
乗物制御モジュール101によって、第1の入力情報I1
とブレーキ要求RFに基づいて、求めた基準力値FSを第1の力推定モジュール104に直接提供するステップ900と、
第1の力推定サブモジュール104によって、推定された力STの値
と求めた基準力値FSに基づいて、制御量GCを求めるステップ901を有する。
【0142】
この実施形態では、制御量GCは、求めた基準力値FSに対応する、ブレーキシステムのブレーキキャリパの電気機械式アクチュエータAEの位置値である。
【0143】
この実施形態において、方法500はさらに、
動作上第2の力有効化サブモジュール105に関連付けられた少なくとも力センサSFによって、電気機械式アクチュエータAEによって、ブレーキシステムのブレーキキャリパに与えられる力値FMを決定するステップ902と、
第2の力有効化サブモジュール105によって、推定された力値ST又電気機械式アクチュエータAEによってブレーキシステムのブレーキキャリパに加えられる検出された力値FMに基づいて、有効化された力値VDを求めるステップ903を有する。
【0144】
実施形態によれば、先の実施形態とともに、
図5に点線で示されるように、方法500は、第2の力有効化サブモジュール105によって、乗物故障診断及び安全モジュールDSに、有効化された力値VDを提供するステップ904を有する。
【0145】
推定及び有効化モジュール102または第1の力推定サブモジュール104で実行される、推定された力値STを求める例を説明する。
【0146】
第1の例は、理論剛性曲線Fx、すなわち、電気機械式アクチュエータAEによって加えられる力と電気機械式アクチュエータAEのピストンの位置Pとの関係に基づく論理/モデルを使用するものである。
【0147】
【0148】
第2の例は、電気機械式アクチュエータAEの機械式(動的モデル)に基づく論理/モデルを使用するものである。
【0149】
機械式によれば、推定された力値STは、以下の量の関数である。
・電気機械式アクチュエータAEの位置。
・電気機械式アクチュエータAEを制御する電気モータの供給電圧。
・電気機械式アクチュエータAEを制御する電気モータによって誘導される電流。
・電気機械式アクチュエータAEを制御する電気モータの温度。
・センサまたは力スイッチによって検出される情報。
【0150】
【0151】
第3の例は、パラメータ推定を備えたモデルに基づく論理/モデルの使用に関する。
【0152】
このモデルの例は以下の通りである。
ここで、
A
3, A
2, A, B :パラメータベクトル
φ :入力ベクトル(電気機械式アクチュエータの位置、モータ供給電圧、モータによる誘導電流、モータの温度)
【0153】
最後の例は、上述の実施例に係る推定技術のパラメータの実時間変化に対する機械学習技術による、適合モデルに基づく論理/モデルの使用に関する。
【0154】
本発明の目的は完全に達成される。
【0155】
確かに、上述のように、推定された力値STは、以下の2つの異なる方法に使用できる。
【0156】
推定された力値STの限定的使用。推定された力値は、例えば機能安全に関する電流センサによって要求される要件と同じ要件を満足しなければならない。
【0157】
すべての事例において、推定の存在により、機能安全に関するより緩やかな要求を有する、力と連携する推定アルゴリズムの部分的使用。
【0158】
本発明の目的である方法とシステムによれば、伝統的に採用されているセンサ(一般的に信頼性はあるが極めて高価である)を使用せずに力を推定し、乗物に搭載されているその他のセンサの測定値を利用するハードウェア/ソフトウェアモデルを活用して、BBW型電子ブレーキシステムを有するブレーキシステムを制御できる。
【0159】
本発明に係る方法とシステムの利点は、ブレーキキャリパに従来使用されているセンサの一部を置換するかそれらのセンサを除いて、代わりに、低品質であるが信頼性のあるセンサを用いることができる。そのため、低価格で、同等の安全性を確保し、システムのコストを下げることができる。
【0160】
したがって、本発明に係る方法とシステムは、適用される力センサの要求を下げるか、力センサそのものをなくすことができることを考慮すると、使用される電気機械式アクチュエータの重量と大きさ及びコストを大幅に減少できる。
【0161】
上述の説明は、BBW型システムの電気機械式アクチュエータに適用される力の推定と力の閉ループ制御に関する。
【0162】
しかし、本発明の教示は、その方法とシステムを油圧システムにおける圧力の推定や、BBW型システムにおける電気油圧式アクチュエータに適用される圧力の閉ループ制御に、利用してもよい。
【0163】
当業者は上述の方法とシステムを変更し改変可能である。また、当業者は、特許請求の範囲の保護範囲から逸脱することなく、その他の要求を満足するために、発明要素を機能上同等な要素に置換することができる。一つの実施例に属するとして説明されたすべての特徴は、他の実施例から独立して実施することができる。