(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】木構造ベースのデータ探索方法およびデータ駆動型プロトコル
(51)【国際特許分類】
A61M 60/508 20210101AFI20240604BHJP
A61M 60/165 20210101ALI20240604BHJP
A61M 60/205 20210101ALI20240604BHJP
A61M 60/403 20210101ALI20240604BHJP
A61M 60/802 20210101ALI20240604BHJP
A61M 60/855 20210101ALI20240604BHJP
A61M 60/90 20210101ALI20240604BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20240604BHJP
【FI】
A61M60/508
A61M60/165
A61M60/205
A61M60/403
A61M60/802
A61M60/855
A61M60/90
G06N20/00
(21)【出願番号】P 2021518526
(86)(22)【出願日】2019-10-04
(86)【国際出願番号】 US2019054863
(87)【国際公開番号】W WO2020072999
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-10-04
(32)【優先日】2018-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510121444
【氏名又は名称】アビオメド インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】リュウ チェン
(72)【発明者】
【氏名】カテルジ アーマッド エル
【審査官】松山 雛子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0167687(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0339451(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 60/531
A61M 60/165
A61M 60/205
A61M 60/403
A61M 60/802
A61M 60/855
A61M 60/90
G06N 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医師に対して患者の治療用の治療推奨を提供するためのシステムであって、
前記システムは1つまたは複数のプロセッサを含み、
前記1つまたは複数のプロセッサは、
前記患者に適用可能な患者データリポジトリからの選択された患者背景の組み合わせと、前記患者を治療するのに適切な複数の心室補助デバイス(VAD)の動作パラメータとに基づいて
、第1の治療推奨を決定
することであって、前記第1の治療推奨が、第1の生存率を有しかつ第1のVADの使用を含み、前記選択された患者背景は、性別、年齢、地域、サポート期間、適応症、挿入部位、または駆出率を含むことと、
前記第1のVADから
、前記患者のバイタルに関する情報を含む第1の信号を取得
することと、
前記第1の信号および前記第1の治療推奨に基づいて
、第2の治療推奨を決定
することであって、前記第2の治療推奨が、第2の生存率を有し、かつ、第2のVADに加えて前記第1の治療推奨からの前記第1のVADの使用を継続すること、第2のVADを使用すること、またはVADを使用しないことを含むことと、
前記第2の生存率が前記第1の生存率より高い場合、前記医師に前記第2の治療推奨を提供する
ことと、
を行うように構成されている、前記システム。
【請求項2】
前記1つまたは複数のプロセッサが、
前記第2の生存率が前記第1の生存率以下である場合、前記患者を治療するために前記第1のVADの使用を継続することを前記医師に通知する
ことを行うようにさらに構成されている、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
各VADが、前記第1の信号を提供するための少なくとも1つのセンサを含む、請求項1または2記載のシステム。
【請求項4】
前記第1の信号が、平均動脈圧(MAP)、左心室圧(LVP)、左心室拡張末期圧(LVEDP)、肺動脈楔入圧(PAWP)、肺毛細血管楔入圧(PCWP)、または肺動脈閉塞圧(PAOP)のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~
3のいずれか一項記載のシステム。
【請求項5】
前記1つまたは複数のプロセッサが、
前記第1のVADまたは第2のVADの動作を制御する
ことを行うようにさらに構成されている、請求項1~
4のいずれか一項記載のシステム。
【請求項6】
前記第1のVADが、Impella(登録商標)ポンプ、体外式膜型人工肺(ECMO)ポンプ、バルーンポンプ、またはスワン・ガンツカテーテルのうちの少なくとも1つを含む、請求項1~
5のいずれか一項記載のシステム。
【請求項7】
前記Impella(登録商標)ポンプが、Impella 2.5(登録商標)ポンプ、Impella 5.0(登録商標)ポンプ、Impella CP(登録商標)ポンプ、Impella RP(登録商標)ポンプ、またはImpella LD(登録商標)ポンプのうちのいずれか1つを含む、請求項
6記載のシステム。
【請求項8】
前記第2の治療推奨が、第2のVADに加えて前記第1の治療推奨からの前記第1のVAD
の使用を
継続することを含む、請求項1~
7のいずれか一項記載のシステム。
【請求項9】
前記第2の治療推奨が
、第2のVAD
を使用すること、またはVAD
を使用しないことを含む、請求項1~
7のいずれか一項記載のシステム。
【請求項10】
前記患者が心原性ショック状態にある、請求項1~
9のいずれか一項記載のシステム。
【請求項11】
前記第1の治療推奨が、予測モデルを使用して決定される、請求項1~
9のいずれか一項記載のシステム。
【請求項12】
前記予測モデルが、バギングおよびランダムフォレストアルゴリズム、ロジスティック回帰アルゴリズム、分類決定木アルゴリズム、深層学習アルゴリズム、単純ベイズアルゴリズム、またはサポート・ベクター・マシン・アルゴリズムのうちのいずれか1つを含む機械学習アルゴリズムに基づくものである、請求項
11記載のシステム。
【請求項13】
前記選択された患者背景に、性別、年齢、地域、サポート期間、適応症、および挿入部位が含まれる、請求項1~
12のいずれか一項記載のシステム。
【請求項14】
前記1つまたは複数のプロセッサが、
利用可能な各VADについての生存率を、表示するためにディスプレイに提供
することと、
最高生存率を有する前記VADを特定する
ことと、
を行うようにさらに構成されている、請求項1~
13のいずれか一項記載のシステム。
【請求項15】
前記1つまたは複数のプロセッサが、
前記生存率を決定するために使用された、前記選択された患者背景の前記組み合わせを、分岐木表現を使用して表示するためにディスプレイに提供する
ことを行うようにさらに構成されている、請求項1~
14のいずれか一項記載のシステム。
【請求項16】
各生存率が、VADで治療された場合の、前記選択された患者背景の前記組み合わせに属する患者の生存確率を含む、請求項1~
15のいずれか一項記載のシステム。
【請求項17】
前記患者データリポジトリが、急性心筋梗塞心原性ショック(AMICS)データベースまたは高リスク経皮的冠動脈インターベンション(高リスクPCI)データベースを含む、請求項1~
16のいずれか一項記載のシステム。
【請求項18】
医師に対して患者の治療用の治療推奨を提供するためのシステムであって、
前記システムは1つまたは複数のプロセッサを含み、
前記1つまたは複数のプロセッサは、
患者データリポジトリから前記患者に適用可能な選択された患者背景を取得
することであって、前記患者データリポジトリが、急性心筋梗塞心原性ショック(AMICS)データベースまたは高リスク経皮的冠動脈インターベンション(高リスクPCI)データベースを含むことと、
前記患者を治療するのに適切な少なくとも1つの心室補助デバイス(VAD)を決定
することと、
予測モデルを使用して、前記患者に適用可能な前記選択された患者背景の組み合わせに関する前記患者データリポジトリからのデータに基づいて各適切なVADについての生存率を決定
することと、
前記医師に対して、最高生存率と関連付けられた推奨される第1のVADを提供する
ことと、
を行うように構成されている、前記システム。
【請求項19】
前記1つまたは複数のプロセッサが、
前記医師に、前記患者に適用可能な前記選択された患者背景のすべての組み合わせに関する各適切なVADについての前記生存率を提供する
ことを行うようにさらに構成されている、請求項
18記載のシステム。
【請求項20】
前記1つまたは複数のプロセッサが、
前記医師に、前記患者に適用可能な前記選択された患者背景の各組み合わせに関する、VADを使用しない場合の生存率を提供する
ことを行うようにさらに構成されている、請求項
18または19記載のシステム。
【請求項21】
前記第1のVADが、Impella(登録商標)ポンプ、体外式膜型人工肺(ECMO)ポンプ、バルーンポンプ、またはスワン・ガンツカテーテルのうちの少なくとも1つを含む、請求項
18~
20のいずれか一項記載のシステム。
【請求項22】
前記Impella(登録商標)ポンプが、Impella 2.5(登録商標)ポンプ、Impella 5.0(登録商標)ポンプ、Impella CP(登録商標)ポンプ、Impella RP(登録商標)ポンプ、またはImpella LD(登録商標)ポンプのうちのいずれか1つを含む、請求項
21記載のシステム。
【請求項23】
前記患者背景が、年齢、性別、地域、移植年、サポートデバイス、サポート期間、挿入部位および駆出率、を含む、請求項
18~
22のいずれか一項記載のシステム。
【請求項24】
前記予測モデルが、機械学習アルゴリズムを使用して各生存率を決定する、請求項
18~
23のいずれか一項記載のシステム。
【請求項25】
前記機械学習アルゴリズムが、バギングおよびランダムフォレストアルゴリズム、ロジスティック回帰アルゴリズム、分類決定木アルゴリズム、深層学習アルゴリズム、単純ベイズアルゴリズム、またはサポート・ベクター・マシン・アルゴリズムのうちのいずれか1つを含む、請求項
24記載のシステム。
【請求項26】
前記選択された患者背景の前記組み合わせが、樹木モデルに従う、請求項
18~
25のいずれか一項記載のシステム。
【請求項27】
前記樹木モデルが、2、3、4、5、および6のうちのいずれか1つの次数を有する、請求項
26記載のシステム。
【請求項28】
前記1つまたは複数のプロセッサが、
前記推奨される第1のVADの動作を制御する
ことを行うようにさらに構成されている、請求項
18~
27のいずれか一項記載のシステム。
【請求項29】
前記1つまたは複数のプロセッサが、
利用可能な各VADについての前記生存率を、表示するためにディスプレイに提供する
ことを行うようにさらに構成されている、請求項
18~
28のいずれか一項記載のシステム。
【請求項30】
前記1つまたは複数のプロセッサが、
前記生存率を決定するために使用された、前記選択された患者背景の前記組み合わせを、分岐木表現を使用して表示するためにディスプレイに提供する
ことを行うようにさらに構成されている、請求項
18~
29のいずれか一項記載のシステム。
【請求項31】
各生存率が、VADで治療された場合の、前記選択された患者背景の前記組み合わせに属する患者の生存確率を含む、請求項
18~
30のいずれか一項記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その内容全体が参照により本明細書に組み入れられる、2018年10月5日に出願された、米国仮出願第62/741,985号からの米国特許法第119(e)の優先権の恩典を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
背景
急性および慢性の心血管疾患は、生活の質および寿命を低下させる。そのような疾患の心臓を治療するために、医薬品から機械的デバイスおよび移植に至るまで、様々な治療法が開発されてきた。心臓ポンプシステムやカテーテルシステムなどの心室補助デバイス(ventricular assist device(VAD))が、心臓の治療において血行動態的補助を提供し、回復を促進するためによく使用される。心臓ポンプシステムの中には、心臓に経皮的に挿入され、心拍出量を補うために自己心と並行して動作することができるものもある。そのような心臓ポンプシステムには、米国マサチューセッツ州ダンバーズのAbiomed,Inc.によるImpella(登録商標)ファミリーのデバイスが含まれる。
【0003】
現在、心血管疾患のある患者にVADを使用する治療計画の選択は、VADコントローラによって医師に提供され、同様の疾患を有する患者の治療にVADを使用した以前の成功の統計に主として基づくものである。従来のデータ分析では、VADの使用と関連付けられた生存率を単一の要素、例えば、患者の性別や年齢に基づいて分析することができる。患者がなりやすいタイプの心筋疾患が進行するにつれて、患者の疾患に影響を与える追加の要素を考慮に入れるように合理化されていない治療計画が、次善のVADを使用した患者の治療を通じて患者の状態を悪化させる可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
概要
本明細書において記載される方法およびシステムは、木構造ベースの予測モデルを使用して、患者に合わせて最適化された治療推奨を医師に提供する。方法は、プロセッサを使用して、患者に適用可能な患者データリポジトリから取得された選択された患者背景の組み合わせと、患者を治療するのに適切な複数の心室補助デバイス(VAD)の動作パラメータとに基づいて、第1の治療推奨を決定する工程であって、第1の治療推奨が、第1の生存率を有し、第1のVADの使用を含む、工程から始まる。方法は次に、VADを使用した患者の治療を通じた第1のVADからの第1の信号の取得に進む。第1の信号は、第1のVADと通信するコントローラから取得される。プロセッサは次に、第1の信号および第1の治療推奨に基づいて第2の治療推奨を決定し、第2の治療推奨は、第2の生存率を有する。プロセッサは次に、第2の生存率が第1の生存率より高いかどうかを判定し、そうである場合、医師に第2の治療推奨を提供する。
【0005】
いくつかの実施態様では、方法は、第2の生存率が第1の生存率以下である場合、患者を治療するために第1のVADの使用を継続することを医師に通知する工程をさらに含む。よって、第2の生存率が第1の生存率以下であるとプロセッサが判定した場合、第1のVADを使用した患者の治療が継続される。特定の実施態様では、各VADは、コントローラに第1の信号を提供するための少なくとも1つのセンサを含む。センサは、患者データを電気信号に変換するように構成された任意の入力トランスデューサであり得る。ある実施態様では、第1の信号は、例えば、平均動脈圧(Mean Arterial Pressure(MAP))、左心室圧(Left Ventricular Pressure(LVP))、左心室拡張末期圧(Left Ventricular End-Diastolic Pressure(LVEDP))、肺動脈楔入圧(Pulmonary Arterial Wedge Pressure(PAWP))、肺毛細血管楔入圧(Pulmonary Capillary Wedge Pressure(PCWP))、肺動脈閉塞圧(Pulmonary Artery Occlusion Pressure(PAOP))のうちの少なくとも1つなどの、患者のバイタルに関する情報を含む。
【0006】
特定の実施態様では、第2の生存率が第1の生存率より高いと判定される場合、方法は、患者を第2の治療推奨で治療する工程をさらに含む。第2の治療推奨は、患者を治療するための、第1のVAD、第2のVAD、およびVADなし、のうちの少なくとも1つの使用を含み得る。いくつかの実施態様では、第2の治療推奨は、第1のVADと併用するための追加のVADが推奨され得るという点で、第1の治療推奨に基づいて構築され得る。特定の実施態様では、VADは、Impella(登録商標)ポンプ、体外式膜型人工肺(Extracorporeal Membrane Oxygenation(ECMO))ポンプ、バルーンポンプ、およびスワン・ガンツカテーテルのうちの少なくとも1つを含む。Impella(登録商標)ポンプは、Impella 2.5(登録商標)ポンプ、Impella 5.0(登録商標)ポンプ、Impella CP(登録商標)ポンプ、Impella RP(登録商標)ポンプ、およびImpella LD(登録商標)ポンプのうちのいずれか1つを含む。前述の方法は、心原性ショック状態の患者を治療するために使用される。
【0007】
いくつかの実施態様では、第1の治療推奨は、プロセッサによって実行された予測モデルによって決定される。特定の実施態様では、予測モデルは、バギングおよびランダムフォレストアルゴリズム、ロジスティック回帰アルゴリズム、分類決定木アルゴリズム、深層学習アルゴリズム、単純ベイズアルゴリズム、ならびにサポート・ベクター・マシン・アルゴリズムのうちのいずれか1つを含む機械学習アルゴリズムに基づくものである。いくつかの実施態様では、予測モデルは、その計算において患者に適用可能な患者背景を使用する。そのような患者背景には、性別、年齢、地域、サポート期間、適応症および挿入部位が含まれる。患者固有の患者背景を使用することにより、結果として得られる、患者に提供される治療推奨が、各患者により適したものになり、よって、治療有効性が向上する。
【0008】
特定の実施態様では、プロセッサは、利用可能な各VADについての生存率を表示し、最高生存率を有するVADを特定し得る。加えて、プロセッサは、分岐木表現を使用して生存率を決定するために使用された、選択された患者背景の組み合わせを表示し得る。そのような特徴組み合わせ木は、医師に、患者を治療するための推奨されるVAD(および関連付けられた生存率)に影響を与える特徴の視覚化を提供する。本開示に関して、生存率は、VADで治療された場合の選択された患者背景の組み合わせに属する患者の生存確率を含む。
【0009】
いくつかの実施態様では、患者データリポジトリは、急性心筋梗塞心原性ショック(Acute Myocardial Infarction Cardiogenic Shock(AMICS))データベースまたは高リスク経皮的冠動脈インターベンション(High-Risk Percutaneous Coronary Intervention(高リスクPCI))データベースを含む。
【0010】
本開示の第2の態様によれば、方法およびシステムは、患者背景に従ってリポジトリにデータが格納された患者リポジトリからデータを取得する。方法は、プロセッサを使用して、患者リポジトリからデータを取得する。プロセッサは次に、患者を治療するのに適切な少なくとも1つの心室補助デバイス(VAD)を決定する。プロセッサは次に、予測モデルを使用して、患者に適用可能な選択された患者背景の組み合わせに関する患者データリポジトリからのデータに基づいて各適切なVADについての生存率を決定した。プロセッサは次に、最高生存率と関連付けられた推奨される第1のVADを、コントローラに提供する。医師は次に、推奨される第1のVADを使用して患者を治療する。
【0011】
いくつかの実施態様では、方法は、医師に、患者に適用可能な選択された患者背景のすべての組み合わせに関する各適切なVADについての生存率をさらに提供する。特定の実施態様では、プロセッサは、医師に、患者に適用可能な選択された患者背景の各組み合わせに関する、VADを使用しない場合の生存率をさらに提供する。特定の実施態様では、第1のVADは、Impella(登録商標)ポンプ、体外式膜型人工肺(ECMO)ポンプ、バルーンポンプ、およびスワン・ガンツカテーテルのうちの少なくとも1つを含み得る。Impella(登録商標)ポンプは、Impella 2.5(登録商標)ポンプ、Impella 5.0(登録商標)ポンプ、Impella CP(登録商標)ポンプ、Impella RP(登録商標)ポンプ、およびImpella LD(登録商標)ポンプのうちのいずれか1つを含み得る。患者背景は、年齢、性別、地域、移植年、サポートデバイス、サポート期間、挿入部位および駆出率、を含み得る。
【0012】
いくつかの実施態様では、予測モデルは、機械学習アルゴリズムを使用して生存率を決定する。機械学習アルゴリズムは、バギングおよびランダムフォレストアルゴリズム、ロジスティック回帰アルゴリズム、分類決定木アルゴリズム、深層学習アルゴリズム、単純ベイズアルゴリズム、ならびにサポート・ベクター・マシン・アルゴリズムのうちのいずれか1つを含み得る。特定の実施態様では、選択された患者背景の組み合わせは、樹木モデルに従う。樹木モデルは、2、3、4、5、および6のうちのいずれか1つの次数を有し得る。
【0013】
いくつかの実施態様では、方法は、利用可能な各VADについての生存率を表示する工程、および最高生存率を有するVADを特定する工程をさらに含み得る。特定の実施態様では、方法は、分岐木表現を使用して生存率を決定するために使用された、選択された患者背景の組み合わせを表示する工程をさらに含み得る。生存率は、VADで治療された場合の選択された患者背景の組み合わせに属する患者の生存確率を含み得る。いくつかの実施態様では、患者データリポジトリは、急性心筋梗塞心原性ショック(AMICS)データベースまたは高リスク経皮的冠動脈インターベンション(高リスクPCI)データベースを含み得る。
【0014】
本開示の第3の態様によれば、患者を治療するために医師に治療推奨を提供するためのシステムが提供される。システムは、センサを含む少なくとも1つの心室補助デバイス(VAD)を含む。システムは、VADと通信するプロセッサをさらに含み、プロセッサは、急性心筋梗塞心原性ショック(AMICS)リポジトリまたは高リスク経皮的冠動脈インターベンション(高リスクPCI)リポジトリと通信するように構成される。さらに、システムは、VADおよびプロセッサと通信するコントローラを含み、コントローラは、前述の態様のいずれかによる方法を行うように構成される。
【0015】
本開示の第4の態様によれば、患者を治療するために医師に治療推奨を提供するためのシステムが提供される。システムは、プロセッサと、前述の態様のいずれかによる方法を行うように構成されたコントローラとを含む。
【0016】
本開示の第5の態様によれば、プロセッサとコントローラとを含むコンピューティング装置によって実行されると、コンピューティング装置に、前述の態様のいずれかによる方法を行わせる、コンピュータ実行可能命令を含むコンピュータプログラムが提供される。
【0017】
本開示の第6の態様によれば、プロセッサとコントローラとを含むコンピューティング装置によって実行されると、コンピューティング装置に、前述の態様のいずれかによる方法を行わせる、コンピュータ可読コードが格納されている非一時的なコンピュータ可読記憶媒体が提供される。
[本発明1001]
以下の工程を含む、患者を治療するために医師に治療推奨を提供するための方法:
患者データリポジトリと通信するプロセッサから、前記患者に適用可能な前記患者データリポジトリからの選択された患者背景の組み合わせと、前記患者を治療するのに適切な複数の心室補助デバイス(VAD)の動作パラメータとに基づいて、第1の治療推奨を決定する工程であって、前記第1の治療推奨が、第1の生存率を有し、第1のVADの使用を含む、工程;
前記患者を治療するために前記第1のVADを使用する工程;
コントローラから、第1の信号を取得する工程;
前記プロセッサによって、前記第1の信号および前記第1の治療推奨に基づいて第2の治療推奨を決定する工程であって、前記第2の治療推奨が、第2の生存率を有する、工程;ならびに
前記第2の生存率が前記第1の生存率より高い場合、前記プロセッサによって、前記医師に前記第2の治療推奨を提供する工程。
[本発明1002]
前記第2の生存率が前記第1の生存率以下である場合、前記患者を治療するために前記第1のVADの使用を継続することを前記医師に通知する工程
をさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1003]
各VADが、前記コントローラに前記第1の信号を提供するための少なくとも1つのセンサを含む、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1004]
前記第1の信号が、前記患者のバイタルに関する情報を含む、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1005]
前記第1の信号が、平均動脈圧(MAP)、左心室圧(LVP)、左心室拡張末期圧(LVEDP)、肺動脈楔入圧(PAWP)、肺毛細血管楔入圧(PCWP)、肺動脈閉塞圧(PAOP)のうちの少なくとも1つを含む、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1006]
前記患者を前記第2の治療推奨で治療する工程
をさらに含む、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1007]
前記VADが、Impella(登録商標)ポンプ、体外式膜型人工肺(ECMO)ポンプ、バルーンポンプ、およびスワン・ガンツカテーテルのうちの少なくとも1つを含む、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1008]
前記Impella(登録商標)ポンプが、Impella 2.5(登録商標)ポンプ、Impella 5.0(登録商標)ポンプ、Impella CP(登録商標)ポンプ、Impella RP(登録商標)ポンプ、およびImpella LD(登録商標)ポンプのうちのいずれか1つを含む、本発明1007の方法。
[本発明1009]
前記第2の治療推奨が、第2のVADに加えて前記第1の治療推奨からの前記第1のVADの継続使用を含む、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1010]
前記第2の治療推奨が、前記患者を治療するための、前記第1のVAD、第2のVAD、およびVADなし、のうちの少なくとも1つの使用を含む、本発明1001~1008のいずれかの方法。
[本発明1011]
前記患者が心原性ショック状態にある、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1012]
前記第1の治療推奨が、前記プロセッサによって実行された予測モデルによって決定される、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1013]
前記予測モデルが、バギングおよびランダムフォレストアルゴリズム、ロジスティック回帰アルゴリズム、分類決定木アルゴリズム、深層学習アルゴリズム、単純ベイズアルゴリズム、ならびにサポート・ベクター・マシン・アルゴリズムのうちのいずれか1つを含む機械学習アルゴリズムに基づくものである、本発明1012の方法。
[本発明1014]
患者背景のタイプに、性別、年齢、地域、サポート期間、適応症および挿入部位が含まれる、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1015]
利用可能な各VADについての前記生存率を表示する工程;および
最高生存率を有する前記VADを特定する工程
をさらに含む、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1016]
分岐木表現を使用して前記生存率を決定するために使用された、前記選択された患者背景の前記組み合わせを表示する工程
をさらに含む、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1017]
前記生存率が、VADで治療された場合の、選択された患者背景の前記組み合わせに属する患者の生存確率を含む、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1018]
前記患者データリポジトリが、急性心筋梗塞心原性ショック(AMICS)データベースまたは高リスク経皮的冠動脈インターベンション(高リスクPCI)データベースを含む、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1019]
以下の工程を含む、患者を治療するために医師に治療推奨を提供するための方法:
プロセッサによって、患者データリポジトリから患者データを取得する工程であって、前記データが患者背景に従って前記リポジトリに格納されている、工程;
前記プロセッサによって、患者を治療するのに適切な少なくとも1つの心室補助デバイス(VAD)を決定する工程;
予測モデルを使用する前記プロセッサによって、前記患者に適用可能な選択された患者背景の組み合わせに関する前記患者データリポジトリからのデータに基づいて各適切なVADについての生存率を決定する工程;
コントローラに、最高生存率と関連付けられた推奨される第1のVADを提供する工程;および
前記医師によって、前記患者を治療するために前記推奨される第1のVADを使用する工程。
[本発明1020]
前記医師に、前記患者に適用可能な前記選択された患者背景のすべての組み合わせに関する各適切なVADについての前記生存率を提供する工程
をさらに含む、本発明1019の方法。
[本発明1021]
前記医師に、前記患者に適用可能な前記選択された患者背景の各組み合わせに関する、VADを使用しない場合の生存率を提供する工程
をさらに含む、本発明1019~1020のいずれかの方法。
[本発明1022]
前記第1のVADが、Impella(登録商標)ポンプ、体外式膜型人工肺(ECMO)ポンプ、バルーンポンプ、およびスワン・ガンツカテーテルのうちの少なくとも1つを含む、本発明1019~1021のいずれかの方法。
[本発明1023]
前記Impella(登録商標)ポンプが、Impella 2.5(登録商標)ポンプ、Impella 5.0(登録商標)ポンプ、Impella CP(登録商標)ポンプ、Impella RP(登録商標)ポンプ、およびImpella LD(登録商標)ポンプのうちのいずれか1つを含む、本発明1022の方法。
[本発明1024]
前記患者背景が、年齢、性別、地域、移植年、サポートデバイス、サポート期間、挿入部位および駆出率、を含む、本発明1019~1023のいずれかの方法。
[本発明1025]
前記予測モデルが、機械学習アルゴリズムを使用して前記生存率を決定する、本発明1019~1024のいずれかの方法。
[本発明1026]
前記機械学習アルゴリズムが、バギングおよびランダムフォレストアルゴリズム、ロジスティック回帰アルゴリズム、分類決定木アルゴリズム、深層学習アルゴリズム、単純ベイズアルゴリズム、ならびにサポート・ベクター・マシン・アルゴリズムのうちのいずれか1つを含む、本発明1019~1025のいずれかの方法。
[本発明1027]
前記選択された患者背景の前記組み合わせが、樹木モデルに従う、本発明1019~1026のいずれかの方法。
[本発明1028]
前記樹木モデルが、2、3、4、5、および6のうちのいずれか1つの次数を有する、本発明1027の方法。
[本発明1029]
前記第1の治療推奨を使用して前記患者を治療する工程
をさらに含む、本発明1019~1028のいずれかの方法。
[本発明1030]
利用可能な各VADについての前記生存率を表示する工程;および
最高生存率を有する前記VADを特定する工程
をさらに含む、本発明1019~1029のいずれかの方法。
[本発明1031]
分岐木表現を使用して前記生存率を決定するために使用された、前記選択された患者背景の前記組み合わせを表示する工程
をさらに含む、本発明1019~1030のいずれかの方法。
[本発明1032]
前記生存率が、VADで治療された場合の、選択された患者背景の前記組み合わせに属する患者の生存確率を含む、本発明1019~1031のいずれかの方法。
[本発明1033]
前記患者データリポジトリが、急性心筋梗塞心原性ショック(AMICS)データベースまたは高リスク経皮的冠動脈インターベンション(高リスクPCI)データベースを含む、本発明1019~1032のいずれかの方法。
[本発明1034]
センサを含む少なくとも1つの心室補助デバイス(VAD)と、
前記VADと通信するプロセッサであって、急性心筋梗塞心原性ショック(AMICS)リポジトリまたは高リスク経皮的冠動脈インターベンション(高リスクPCI)リポジトリと通信するように構成された、プロセッサと、
前記VADおよび前記プロセッサと通信するコントローラであって、本発明1001~1033のいずれかの方法を行うように構成された、コントローラと
を含む、患者を治療するために医師に治療推奨を提供するためのシステム。
[本発明1035]
プロセッサと、
本発明1001~1033のいずれかの方法を行うように構成されたコントローラと
を含む、患者を治療するために医師に治療推奨を提供するためのシステム。
[本発明1036]
プロセッサとコントローラとを含むコンピューティング装置によって実行されると、前記コンピューティング装置に、本発明1001~1033のいずれかの方法を行わせる、コンピュータ実行可能命令
を含む、コンピュータプログラム。
[本発明1037]
プロセッサとコントローラとを含むコンピューティング装置によって実行されると、前記コンピューティング装置に、本発明1001~1033のいずれかの方法を行わせる、コンピュータ可読コード
が格納されている、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【図面の簡単な説明】
【0018】
上記その他の目的および利点は、以下の詳細な説明を添付の図面と併せて考察すれば明らかになるであろう。図面において、同様の参照符号は全体を通して同様の部分を指す。
【0019】
【
図1】
図1は、本開示の一態様による例示的なシステムを示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の一態様による、患者を治療するために医師に治療推奨を提供するための方法を示す例示的なフローチャートである。
【
図3A】患者にVADを使用した場合の生存率に寄与する患者背景要素を示す例示的な樹形図である。
【
図3B】患者にVADを使用した場合の生存率に寄与する患者背景要素を示す例示的な樹形図である。
【
図3C】患者にVADを使用した場合の生存率に寄与する患者背景要素を示す例示的な樹形図である。
【
図4】
図4Aは、本開示の方法の樹形図の次数/深度に基づく予測モデルの精度を示す図である。
図4Bは、最適化された木の深さの予測モデルの出力を示す図である。
【
図5】
図5は、本開示のさらなる態様による、患者を治療するために医師に第2の治療推奨を提供するための方法を示す例示的なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
本明細書において記載される方法およびシステムの全体的な理解を提供するために、特定の例示的な態様について説明する。本明細書において記載される態様および特徴は、心室補助デバイスについての、生存率に関連した使用について特に説明されているが、以下で概説されるすべての構成要素およびその他の特徴は、任意の適切な方法で互いに組み合わされてもよくかつそれらと関連付けられた生存率を有する他のタイプの医学療法に適応および適用されてもよいことが理解されよう。
【0021】
本明細書において記載されるシステムおよび方法は、予測モデルを使用して心原性ショック状態の患者に最適な治療推奨を決定する。治療推奨は、単一の心室補助デバイス(VAD)または、互いに組み合わされた、複数のVADの使用を含み得る。予測モデルは、過去に行われたアーカイブされた心室補助手技からデータおよび統計を取り出す。そのような患者データは、例えば、急性心筋梗塞心原性ショック(AMICS)データベースや高リスク経皮的冠動脈インターベンション(高リスクPCI)データベースなどの患者データリポジトリに格納され得る。システムおよび方法は、機械学習アルゴリズムを使用して、患者をVADで治療した場合の生存率を予測する。予測モデルをさらにカスタマイズするために、患者背景およびVADの動作パラメータも、選択された木構造ベースの特徴の組み合わせを使用して予測モデルに含められる。ここで医師らは、任意の数の患者背景および/またはデバイス特徴を組み合わせて、現実的な生存率の治療推奨を取得することができる。
【0022】
加えて、患者に対するVADの使用からのリアルタイムの患者データも、治療推奨をさらに最適化するために予測モデルに供給され得る。そのようなリアルタイムの患者データは、平均動脈圧(MAP)、左心室圧(LVP)、左心室拡張末期圧(LVEDP)、肺動脈楔入圧(PAWP)、肺毛細血管楔入圧(PCWP)、肺動脈閉塞圧(PAOP)を含み得るが、これに限定されない。VADは、Impella(登録商標)ポンプ、体外式膜型人工肺(ECMO)ポンプ、バルーンポンプ、およびスワン・ガンツカテーテルを含み得るが、これに限定されない。Impella(登録商標)ポンプは、すべて米国マサチューセッツ州ダンバーズのAbiomed,Inc.によるものである、Impella 2.5(登録商標)ポンプ、Impella 5.0(登録商標)ポンプ、Impella CP(登録商標)ポンプ、およびImpella LD(登録商標)ポンプを含み得る。
【0023】
図1に、患者120を治療するために医師に第1の治療推奨110を提供するためのシステム100のブロック図を示す。第1の治療推奨110は、患者120の状態を考慮して使用するのに最も適切なVADについての医師への指示を含む。VADは、Impella(登録商標)ポンプ、体外式膜型人工肺(ECMO)ポンプ、バルーンポンプ、およびスワン・ガンツカテーテルを含み得るが、これに限定されない。すべて米国マサチューセッツ州ダンバーズのAbiomed,Inc.によるものである、Impella(登録商標)ポンプは、Impella 2.5(登録商標)ポンプ、Impella 5.0(登録商標)ポンプ、Impella CP(登録商標)ポンプ、Impella RP(登録商標)ポンプ、およびImpella LD(登録商標)ポンプを含み得る。第1の治療推奨110は、患者120に適用可能な選択された患者背景と、患者の状態に適したすべてのVADの動作パラメータとに基づく予測モデルを使用して決定される。ここで次に、すべてのVADの生存率が、患者120の選択された患者背景とVADの動作パラメータとに基づいて決定される。最高生存率と関連付けられたVADが次に、医師に推奨される。指示は、コンピューティングユニット130のディスプレイによるものであり得る。
図1に関して、第1の推奨110は、患者120を治療するために、第1の生存率(SR1)を有する第1のVADを使用するよう医師へ指示することを含む。
【0024】
システム100は、例えば、患者データリポジトリ140と通信する、ラップトップなどのコンピューティング装置130も含む。簡潔にするために、
図1にはコンピューティング装置130のプロセッサ135のみが示されている。しかしながら、コンピューティング装置130は、例えば、揮発性メモリ(ランダム・アクセス・メモリRAMなど)、不揮発性メモリ(読取り専用メモリROMなど)、ディスプレイ、および、これらの構成要素間の通信を可能にする接続バスなどの、コンピューティング装置と通常関連付けられる他の構成要素も含み、これらすべてが本開示に含まれることが理解されよう。
【0025】
コンピューティング装置130は、予測モデルを使用してデータに対して操作を行うことができるプロセッサ135を含む。コンピューティング装置130は、様々な医療機関から取得された患者データを含む患者データリポジトリ140と通信する。本開示の特定の態様によれば、患者データリポジトリ140は、Salesforce.com,Inc.などのCRMによって集計および維持される急性心筋梗塞心原性ショック(AMICS)データベースまたは高リスクPCIデータベースを含み得る。患者データリポジトリ140は、例えば、急性心筋梗塞(AMI)患者、高リスクPCI患者、および心原性ショック状態の患者の治療からのデータを格納する。患者データは、例えば、性別、年齢、および地域などの患者背景を含む。患者データは、例えば、サポート期間、適応症、挿入部位、治療デバイス、および駆出率などの前の治療からのデータも含む。例示的なAMICSデータが表1に示されている。いくつかの例では、患者データリポジトリ140は、利用可能なVADのデータベース145およびそれらと関連付けられた動作パラメータも含む。
【0026】
処理ユニット130のプロセッサ135は、患者120の治療に使用される任意のVADの動作を制御するコントローラ150とも通信する。各VADは、VADの使用中に患者からデータを収集するセンサを含み、このデータを(
図1のSIG1などの)信号としてコントローラ150に送信する。そのようなデータは、平均動脈圧(MAP)、左心室圧(LVP)、左心室拡張末期圧(LVEDP)、肺動脈楔入圧(PAWP)、肺毛細血管楔入圧(PCWP)、肺動脈閉塞圧(PAOP)を含み得るが、これに限定されない。第1の治療推奨110の第1のVADは、コントローラ150に接続され、コントローラ150に第1の信号(SIG1)を送信する。いくつかの態様では、コントローラ150は、米国マサチューセッツ州ダンバーズのAbiomed,Inc.によるAutomatic Impella(登録商標)Controller(AIC)を含む。コントローラ150は、接続されたそれぞれのVADが確実に動作状態にあるようにするための他の構成要素を含み得るサービスハブ160に収容され得る。特定の態様では、プロセッサ130、処理ユニット135、コントローラ150およびサービスハブ160は、ワークステーション170に収容され得る。ワークステーション170は、医師に治療推奨を指示するためのディスプレイ(図示されていない)をさらに含み得る。
【0027】
【0028】
本開示の特定の態様によれば、コントローラ150は、医師が第1のVADを使用して患者120を治療した後、医師に第2の治療推奨の指示をさらに提供し得る。ここで、第1のVADから送信された第1の信号SIG1は、コントローラ150によって受信される。コントローラ150は次に、SIG1、第1のVADの動作パラメータ、およびデータベース145内のすべての適切なVADの動作パラメータに基づく比較モデルを使用して、少なくとも第2のVADの使用を含む第2の治療推奨を決定する。すべての適切なVADの生存率も決定され、最高生存率を有するVADが第2のVADとして選択される。第2のVADの第2の生存率(SR2)も、AMICSデータベース140からコントローラ150によって決定される。
【0029】
コントローラ150は次に、第1の生存率SR1を第2の生存率SR2のものと比較する。第2の生存率SR2が第1の生存率SR1よりも高い、すなわち、SR2>SR1の場合、第2の推奨がワークステーション170上の表示によって医師に提供される。第2の推奨は、患者120を治療するために、第1のVADの代わりに第2のVADを使用するよう医師へ指示することを、含み得る。第2の推奨は、データベース145から選択されたVADの組み合わせを使用するよう医師へ指示することも含み得る。組み合わせて使用されるVADは、第1のVAD以外のVAD、または第1のVADに加えて少なくとも1つの第2のVADを含み得る。さらに、第2の推奨は、VADをまったく使用しないことを含む場合もあり、すなわち、第2の推奨は、VADによる患者の治療を中止するよう医師へ指示することであってもよい。第2の生存率SR2が第1の生存率SR1以下である、すなわち、SR2≦SR1の場合、コントローラ150は医師に、第1の治療推奨を変更すべきではないことを指示する。
【0030】
図2に、本開示の一態様による、心原性ショック状態の患者を治療するために医師に第1の治療推奨を提供する方法200のフローチャートを示す。方法200は、
図1に関して前述したようなシステム100の特徴に基づくものである。方法は工程210から開始し、そこでコンピューティングユニット130のプロセッサ135が患者データリポジトリ140にアクセスする。いくつかの態様では、リポジトリ140は、VADデータベース145を含むAMICSまたは高リスクPCIデータベースを含み得る。プロセッサ135は次に、工程220で、患者を治療するのに適切なVADを決定する。そのような適性は、患者の臨床的適応と、患者データリポジトリ140から取得されたVADの動作パラメータとに基づくものであり得る。プロセッサ135は、したがって、工程220で、患者を治療するための患者データリポジトリ140からの適切なVADのショートリストを決定する。
【0031】
方法の工程230で、プロセッサ135は、予測モデルを使用して、工程220からのショートリスト内の各VADについての生存率を決定する。予測モデルは機械学習アルゴリズムに基づくものであり、機械学習アルゴリズムは、バギングおよびランダムフォレストアルゴリズム、ロジスティック回帰アルゴリズム、分類決定木アルゴリズム、深層学習アルゴリズム、単純ベイズアルゴリズム、ならびにサポート・ベクター・マシン・アルゴリズムを含むが、これに限定されず、これらの詳細は簡潔にするために本開示から省く。
【0032】
例えば、ロジスティック回帰アルゴリズムは、訓練データから学習された係数を有する予測モデルを表すために使用される方程式に基づくものである。モデルの表現は、各々が特定の特徴(特定の患者背景など)の相対重要度を示す重みに対応する一連の係数としてコンピューティングユニット130のメモリに格納されていてもよく、確率を計算するために使用することができ、次にこの確率が患者の生存率と解釈される。確率は、(1+exp(-x))-1として計算されてもよく、式中、xは、任意の数の特徴(Feature_α,Feature_β,Feature_γ)および関連付けられた係数(α,β,γ)について、α*Feature_α+β*Feature_β+γ*Feature_γ+…と等しい。
【0033】
別の例では、決定木アルゴリズムは、項目に関する観察からその項目の目標値に関する結論に至る予測モデルとして決定木を使用する。木の深さは、決定木学習におけるハイパーパラメータであり得る。ハイパーパラメータは、モデルで使用されるデータから推定できない値である。ハイパーパラメータは、多くの場合、モデルパラメータの推定を支援するために使用され、所与の予測モデリング問題のために調整することができる。予測モデルの性能メトリックとして精度が使用され得る。木の深さなどのハイパーパラメータの調整を介して決定木の最大精度を決定することにより、システムは、最適化された機械学習モデルを提供することができ、したがって(生存率などの)予測をより適切に提供することができる。受信者動作特性(Receiver Operating Characteristic(ROC))および曲線下面積(Area Under Curve(AUC))も、予測アルゴリズムを比較するためのメトリックとして使用され得る。
【0034】
方法の工程240で、プロセッサ135が各VADについて取得された生存率を比較し、最高生存率を有するVADを決定する。工程250で、プロセッサ135が、最高生存率を有するVADを使用して患者を治療するために、プロセッサに接続されたディスプレイ上の指示を介して、医師に第1の治療推奨を提供する。
図2の方法200の第1の治療推奨の提供では、前述のように木構造ベースのデータ駆動型プロトコルを使用して患者の必要に合わせて第1の治療推奨をカスタマイズする。前記患者の患者背景に合わせて治療を細かくカスタマイズすることにより、最善の生存率を有する(例えば、データリポジトリ140内のデータの履歴分析に基づく)最も効果的な治療計画が患者に提供され、それによって心原性ショック状態の患者の効果的な治療が確実になる。
【0035】
図3Aに、本開示の態様による患者背景/特徴組み合わせ木を示す。木300は、最高の予測生存率を有する治療を決定するために様々なタイプの特徴と治療とをどのように組み合わせることができるかを示している。特徴は、データリポジトリ140に格納されたデータ310の属性から決定される。表1から分かるように、リポジトリ140に格納されたデータは、性別、年齢、駆出率、使用されるカテーテルのタイプ(スワン・ガンツなど)、および使用されるポンプのタイプ(ECMOなど)といった様々な属性を有し得る。前記患者の患者背景に関するデータの属性は、組み合わせ木300で、特徴322~325などのステータス層の特徴として使用される。ステータス層の特徴は、患者に関する、変更することができない特徴であり、すなわち、ステータス層の特徴には調整可能な値がない。ステータス層の特徴の例には、性別、年齢および駆出率が含まれるが、これに限定されない。リポジトリ140は、利用可能なVADのタイプに関するデータも格納する。そのようなVADの特徴は、組み合わせ木300で、特徴326~327などのプロトコル層の特徴として使用される。プロトコル層の特徴は、VADの制御された動作を容易にする医師が選択可能なVADのオプションである。プロトコル層の特徴は、医師が指定することができるVADと関連付けられた値を有する。プロトコル層の特徴の例には、ロータ速度および流量が含まれるが、これに限定されない。
【0036】
選択されたステータス層の特徴および選択されたプロトコル層の特徴によりデータリポジトリ140から患者データ310が取り出され、取り出されたデータを予測モデルにおいて使用し、選択された特徴322~327の各組み合わせそれぞれに関する予測生存率328~329を決定して医師に提供することができる。予測生存率328~329は、木300の予測層で提供される。いくつかの態様では、予測モデルは、最高の予測生存率を与える特徴322~327の組み合わせを特定し得る。最高の予測生存率に関連する特徴322~327の組み合わせが、治療推奨として医師に提供される。治療推奨はモニタ上で医師に提供され得る。治療推奨を構成する特徴の組み合わせは、
図3Aの木310などの特徴組み合わせ木において医師に提示され得る。
【0037】
心臓補助技術は時間と共に発展することが理解されよう。さらに、VADの露出および医師による使用が増加すれば、VADが患者の状態に与える影響が改善される(例えば、医師がVADの使用についてより十分に訓練されると、VADの使用が特定の疾患を有する患者に与える影響が患者データに示されることになり、例えば、特定のVADの駆出率が増加し得る)。本開示の一態様によれば、そのような要素に対応するために、予測モデルは、データリポジトリ140から患者データ310を取り出すときに日付範囲を指定し得る。そのような状況では、予測モデルは、データに効果的に重み付けし、指定された日付範囲内にあるリポジトリ140からの患者データ310のみを使用する。そのようなデータの重みは、日付範囲としてなしで済ませて例示されているが、取り出されたデータ310を重み付けするときに他の要素が考慮されてもよい。
【0038】
図3Bに、本開示の一態様による、予測モデルで使用される様々なタイプの患者背景データの例示的な特徴組み合わせ木360を示す。前述のように、患者背景データは、患者データリポジトリ140に格納され、例えば、性別、年齢および地域を含み得る。木360は、患者の性別362と年齢363、364との組み合わせを示している。これらの組み合わせは、特定のタイプのVAD(例えば、Impella(登録商標)2.5ポンプなど)の使用のためのものである。患者データリポジトリ140から抽出されたデータに基づき、特徴362は、「男性」および「女性」という値を有し、特徴363、364は、「50~59」および「60~69」という値を有する。よって、
図3Bに示される木構造ベースのデータ組み合わせに基づき、選択された患者背景データに関する患者データリポジトリ140内のデータと、(上記で詳述された)機械学習アルゴリズムとを使用すると、木360の各組み合わせについての生存率365~368は、
図3Bに示されるとおりである。
図3Bは、特定のVAD(Impella(登録商標)2.5ポンプなど)が埋め込まれている、60~69の年齢層の男性患者が、84.86%の最高生存率を有することを示している。
図3Bの生存率を決定するために使用されたデータは、特徴362~364を有する患者データリポジトリ140内の1,071+1,697+1,307+2,317=6,392レコードに基づくものである。
図3Bの例は、予測モデルによって決定される生存率に与える患者データの特徴の組み合わせの影響を示している。
【0039】
本開示の木構造ベースのデータ駆動型の方法のさらなる例が、
図3Cに示される特徴組み合わせ木370に示されている。木370は、3タイプの患者データ、性別372、駆出率374、および血行動態モニタリングの利用可能性376の組み合わせを示している。血行動態モニタリングの利用可能性は、使用されるVADのタイプに依存する。例えば、スワン・ガンツカテーテルは、そのような血行動態モニタリングを容易にする利用可能な圧力センサを有することが公知である。
図3Cの組み合わせに選択された患者背景は、男性、30%未満の駆出率、および血行動態モニタリングである。
図3Cに示される木構造ベースのデータ組み合わせに基づき、選択された患者背景データに関する患者データリポジトリ140内のデータと、(上記で詳述された)予測モデルとを使用すると、この特定の患者背景の組み合わせの生存率378~379は、
図3Cに示されるとおりである。30%未満の駆出率での男性患者に対する血行動態モニタリングが可能なVADの使用の最高生存率は58.43%である。医師への治療推奨は、したがって、30%未満の駆出率で男性患者に血行動態モニタリングが可能なVAD(スワン・ガンツカテーテルなど)を使用せよ、である。完全を期すために、木370の枝378は、30%未満の駆出率で男性患者に血行動態モニタリングができないVADを使用した場合の生存率を示している。
図3Cの生存率を決定するために使用されたデータは、特徴372、374および376を有する患者データリポジトリ140内の584+421=1,005レコードに基づくものである。特徴組み合わせ木360および370のグラフ表現も、例えば、モニタ上に、第1および/または第2の治療推奨と並べて医師に表示され得る。
【0040】
図4Aに、決定木アルゴリズムを使用した予測モデルの精度最適化のためのデータプロット400を示す。前述のように、決定木アルゴリズムは、木の深さとしてハイパーパラメータを使用し得る。木の深さなどのハイパーパラメータの調整を介して決定木アルゴリズムの最大精度を決定することにより、システムは、最適化された機械学習モデルを提供することができ、したがって(生存率などの)予測をより適切に提供することができる。
図4Aに示されるように、本発明者らがハイパーパラメータ(木の深さ)を大きな値に変更すると、決定木アルゴリズムは、訓練データのすべての雑音を取り込むことができる。これは、
図4Aの折れ線グラフ410に見られるように、高い訓練スコアをもたらす。ただし、そのように木の深さが大きいと、モデルがデータに過剰適合し、十分に一般化されない。ゆえに、
図4Aの折れ線グラフ420に見られるように、交差検証スコアが悪化する。決定木アルゴリズムでは、木が浅すぎる、例えば、木の深さが2または3の場合、予測モデルは単純すぎ、訓練スコアと交差検証スコアの両方が低い
図4Aに示されるように、正しい予測を行うことができない。よって、決定木アルゴリズムに最適な木の深さは、交差検証スコアおよび訓練スコアを最大化する木の深さである。これは、
図4Aに示されるように木の深さが6の、交差検証曲線のピーク(点430)で発生する。
【0041】
機械学習では、偽陽性は、条件または属性が存在することを誤って示す機械指示結果である。同様に、偽陰性は、条件または属性が存在しないことを誤って示す機械指示結果である。理想的には、予測モデルは、患者にVADを使用した場合の実際の生存率と一致するVADの生存率を予測すべきである。しかしながら、大部分の機械学習と同様に、現実的には完全なモデルはなく、そのため、機械学習モデルを評価する場合、偽陽性と偽陰性、またはその逆のトレードオフが行われる。木の深さが6のROC曲線が
図4Bに示されている。ROC曲線450は、偽陽性率を0から100%までスキャンし、モデルによって与えられる真の陽性率が何であるかをチェックする。折れ線グラフ460は、曲線下面積AUCが100%の理想的なものであるが、折れ線グラフ470は、AUCが50%のランダムモデルに基づくものである。任意の妥当な予測モデルは、折れ線グラフ460と折れ線グラフ470との間にあるべきである。
図4Aに関して上述した決定木アルゴリズムでは、真の陽性率は折れ線グラフ480によって示され、AUCは87.4%であり、決定木アルゴリズムを使用した場合の予測モデルの良好な予測力を示している。明確にするために、決定木アルゴリズムは、本開示による予測モデルとして使用することができる多くの機械学習アルゴリズムの1つである。
図3Bおよび
図3Cの特徴組み合わせ木は、予測モデルから分離されており、医師に、選択された特徴および/または患者背景が決定モデルにおいてどのように組み合わされるかの例示を提供する。
【0042】
図5に、本開示のさらなる態様による、心原性ショック状態の患者を治療するために医師に第2の治療推奨を提供する方法500のフローチャートを示す。方法500は、
図1に関して前述したようなシステム100の特徴に基づくものである。方法500は、
図2の方法200の工程250(医師が、第1の生存率(SR1)を有する第1のVADの使用を含む第1の治療推奨を提供される)を取り除いたものである。方法500は、第1の治療推奨がプロセッサ135によって決定される工程510から開始する。
図2に関して前述したように、プロセッサ135は、患者データリポジトリ140にアクセスし、患者を治療するのに適切なVADを決定する。そのような適性は、例えば、患者の臨床的適応と、患者データリポジトリ140から取得されたVADの動作パラメータとに基づくものであり得る。プロセッサ135は、患者を治療するために患者データリポジトリ140から適切なVADの第1のショートリストを決定し、予測モデルを使用して、第1のショートリスト内の各VADについての生存率を決定する。前述のように、予測モデルは機械学習アルゴリズムに基づくものであり、機械学習アルゴリズムは、バギングおよびランダムフォレストアルゴリズム、ロジスティック回帰アルゴリズム、分類木アルゴリズム、深層学習アルゴリズム、単純ベイズアルゴリズム、ならびにサポート・ベクター・マシン・アルゴリズムを含むが、これに限定されない。最高生存率を有するVADが、第1の生存率(SR1)を有する第1のVADと呼ばれ、第1の治療推奨に使用される。
【0043】
医師は、プロセッサ135に接続された表示ユニットを介して第1の治療推奨を通知され、第1のVADを使用して患者を治療する(工程520)。特徴組み合わせ木(木300および350など)も表示され得る。各VADは、VADの使用中に患者からデータを収集する(工程530)センサを含み、このデータを信号(SIG1)としてコントローラ150およびプロセッサ135に送信する。本開示のいくつかの態様では、患者バイタルチェックと呼ばれる、患者データまたは患者バイタルの収集が、患者が第1のVADで治療されている期間中に所定の時間間隔で行われる。前述のように、そのようなデータは、平均動脈圧(MAP)、左心室圧(LVP)、左心室拡張末期圧(LVEDP)、肺動脈楔入圧(PAWP)、肺毛細血管楔入圧(PCWP)、肺動脈閉塞圧(PAOP)を含み得るが、これに限定されない。
【0044】
工程540で、プロセッサ135が、SIG1に含まれる患者データに基づいて患者を治療するのに適する、患者データリポジトリ140からのVADの第2のショートリストを決定する。理解されるように、患者が第1のVADで治療される際に、患者のバイタルは変化する可能性があり、したがって、SIG1の患者データは、第1の治療推奨を決定する際に使用された患者の臨床的適応と異なる場合がある。よって、第2のショートリスト内のVADは第1のショートリスト内のVADと異なり得る。第1のショートリスト内のVADの場合と同様に、プロセッサ135は、予測モデルを使用して第2のショートリスト内の各VADについての生存率を決定する。予測モデルは機械学習アルゴリズムに基づくものであり、機械学習アルゴリズムは、バギングおよびランダムフォレストアルゴリズム、ロジスティック回帰アルゴリズム、分類および回帰木アルゴリズム、深層学習アルゴリズム、決定木アルゴリズム、単純ベイズアルゴリズム、サポート・ベクター・マシン・アルゴリズム、ならびにベクトル量子化アルゴリズムを含むが、これに限定されない。
【0045】
第2のVADと呼ばれる、最高生存率を有するVADが決定され(工程540)、プロセッサ135は、工程550で、その生存率(SR2)を第1のVAD(SR1)の生存率と比較する。SR2>SR1の場合、第2のVADが医師への第2の治療推奨で使用される(工程560)。医師は、プロセッサ135に接続された表示ユニットを介して第2の治療推奨を通知される。SR2≦SR1の場合、第2の治療推奨は医師に提供されず、代わりに、次の患者バイタルチェックまで、工程520すなわち、第1の治療推奨の使用を継続しかつ第1のVADでの患者の治療を継続するよう、(モニタを介して)医師に指示が出される。第2の治療推奨が医師に提供された後、方法500は、
図5に示されるように、引き続き患者バイタルチェックを行って、治療プロセスをさらに精緻化し得る。
【0046】
図5の方法500の第2の治療推奨の提供は、前述のように木構造ベースのデータ駆動型プロトコルを使用して治療を受けている患者の進行に合わせて第1の治療推奨をさらにカスタマイズする。そのようなさらなるカスタマイズにより、最高生存率を有する治療推奨が患者のさらなる治療のために医師に確実に提供されるようになる。患者の進行に合わせて治療を細かく調整することにより、心原性ショック状態の患者の治療がより効果的になる。
【0047】
特定の態様では、決定モデルを動作させているプロセッサに取り付けられたモニタに特徴組み合わせ木も表示される。これらの特徴組み合わせ木は、
図3Bおよび
図3Cに示されるものと同様である。そのような特徴組み合わせ木は、医師に、患者を治療するための推奨されるVADに影響を与える特徴の視覚化を提供する。
【0048】
特定の態様では、第2の治療推奨は、単一の第2のVADまたは、互いに組み合わされた、複数の第2のVADの使用を含み得る。例えば、第1の治療推奨はバルーンポンプの使用を含み得、第2の治療推奨はスワン・ガンツカテーテルと組み合わせたECMOポンプの使用を含み得る。さらなる例として、第1の治療推奨はImpella 2.5(登録商標)ポンプの使用を含み得、第2の治療推奨は、バルーンポンプと組み合わせたImpella 2.5(登録商標)ポンプの継続使用を含み得る。そのような状況では、第2のショートリストは、最高生存率と関連付けられた2つのVADを生成することになる。本開示の特定の態様では、プロセッサを、より高い生存率を有する上位n個のVADを確認するように構成することができ、n≧1である。これらn個のVADの生存率は次に、
図5の方法500の工程550で第1のVADの生存率と比較される。本開示のいくつかの態様によれば、第2の治療推奨は、
図3の選択肢「いいえ」391と同様に、あらゆるVADの使用を中止することである場合もあり、ここでは、第1のVADについての選択肢「VADなし」が最高生存率をもたらすことになる。
【0049】
本開示に関して、コンピュータ可読媒体とは、本明細書に記載される方法のいずれかを行うための、前述のコンピュータなどの、命令実行システム、デバイス、または装置が使用するための、またはこれらと関連した命令を含むかまたは格納することができる任意の有形のメディアまたは手段であり得るコンピュータ可読記憶媒体を含み得る。
【0050】
本開示の様々な態様によれば、コンピュータプログラムは、上記の機能または方法を実施するためにプロセッサと共に使用することができる、その中に具体化されたコンピュータプログラムコードを有する有形のコンピュータ可読媒体を含むコンピュータプログラム製品において実装され得る。
【0051】
「コンピュータ可読記憶媒体」、「コンピュータプログラム製品」、「有形に具体化されたコンピュータプログラム」など、または「プロセッサ」もしくは「処理回路」などという場合、それらは、シングル/マルチプロセッサアーキテクチャやシーケンサ/パラレルアーキテクチャなどの異なるアーキテクチャを有するコンピュータのみならず、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイFPGA、特定用途向け集積回路ASIC、信号処理デバイスおよびその他のデバイスなどの専用回路も包含するものと理解されたい。コンピュータプログラム、命令、コードなどという場合、それらは、プロセッサのための命令としてのハードウェアデバイスのプログラマブルコンテンツや、固定された機能デバイス、ゲートアレイ、プログラマブル論理デバイスなどのための構成または構成設定などの、プログラマブル・プロセッサ・ファームウェアのためのソフトウェアを表すものと理解されたい。
【0052】
例として、限定ではなく、そのような「コンピュータ可読記憶媒体」は、RAM、ROM、EEPROM、CD-ROMもしくはその他の光ディスクストレージ、磁気ディスクストレージもしくはその他の磁気記憶デバイス、フラッシュメモリ、または、所望のプログラムコードを命令もしくはデータ構造の形式で格納するために使用することができ、コンピュータによってアクセスされ得る任意の他の媒体を含み得る非一時的なコンピュータ可読記憶媒体を意味し得る。また、任意の接続も、「コンピュータ可読媒体」と適切に呼ばれる。例えば、命令が、同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア、デジタル加入者線(DSL)、または赤外線、電波、およびマイクロ波などの無線技術を使用して、ウェブサイト、サーバ、またはその他のリモートソースから送信される場合には、同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア、DSL、または赤外線、電波、およびマイクロ波などの無線技術は、媒体の定義に含まれる。ただし、「コンピュータ可読記憶媒体」およびデータ記憶媒体は、接続、搬送波、信号、またはその他の一時的な媒体を含まず、代わりに、非一時的な、有形の記憶媒体を対象とすることを理解されたい。ディスク(disk)およびディスク(disc)は、本明細書において使用される場合、コンパクトディスク(CD)、レーザーディスク、光ディスク、デジタル多用途ディスク(DVD)、フロッピーディスク、およびブルーレイディスクを含み、diskは、通常、データを磁気的に再生し、discは、データをレーザーで光学的に再生する。上記の組み合わせも、「コンピュータ可読媒体」の範囲内に含まれるべきである。
【0053】
命令は、1つまたは複数のデジタル信号プロセッサ(DSP)、汎用マイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールド・プログラマブル・ロジック・アレイ(FPGA)、またはその他の同等の集積回路もしくはディスクリート論理回路などの1つまたは複数のプロセッサによって実行され得る。したがって、「プロセッサ」という用語は、本明細書において使用される場合、前述の構造または本明細書において記載される技術の実装に適した任意の他の構造を指し得る。加えて、いくつかの局面では、本明細書において記載される機能は、専用のハードウェアおよび/またはソフトウェアモジュール内で提供され得る。また、それらの技術を完全に1つまたは複数の回路または論理素子において実装することもできる。
【0054】
必要に応じて、本明細書において記載される異なる工程が、異なる順序で、かつ/または互いに同時に行われる場合もある。さらに、必要に応じて、上記の工程のうちの1つまたは複数は、任意選択であり得るか、または組み合わされ得る。
【0055】
以上は本開示の原理の単なる例示であり、装置は、限定ではなく例示を目的として提示されている記載の実施態様以外によっても実施することができる。本明細書において開示される方法は、自動化された心室補助システムで使用するために示されているが、他の自動化された医療システムで使用されるべきシステムにも適用され得ることを理解されたい。
【0056】
本開示を検討した後、当業者には変更および修正が想起されるであろう。開示の特徴は、本明細書において記載されている1つまたは複数の他の特徴との、任意の組み合わせおよび部分的組み合わせ(複数の従属的組み合わせおよび部分的組み合わせを含む)として実装され得る。以上で説明または例示された様々な特徴は、それらの任意の構成要素を含めて、他のシステムにおいて結合または統合される場合もある。さらに、特定の特徴が省略され、または実装されない場合もある。
【0057】
変更、置換、および改変の例は、当業者であれば確かめることができ、本明細書において開示される情報の範囲から逸脱することなくなされ得る。本明細書中において引用されたすべての参考文献は、参照によりその全体が組み入れられ、本出願の一部をなす。