IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ミツビシ ケミカル アドバンスド マテリアルズ ナームローゼ フェンノートシャップの特許一覧

特許7498183圧縮強度が改善されたシート状複合材部品の製造方法
<>
  • 特許-圧縮強度が改善されたシート状複合材部品の製造方法 図1
  • 特許-圧縮強度が改善されたシート状複合材部品の製造方法 図2
  • 特許-圧縮強度が改善されたシート状複合材部品の製造方法 図3
  • 特許-圧縮強度が改善されたシート状複合材部品の製造方法 図4
  • 特許-圧縮強度が改善されたシート状複合材部品の製造方法 図5
  • 特許-圧縮強度が改善されたシート状複合材部品の製造方法 図6
  • 特許-圧縮強度が改善されたシート状複合材部品の製造方法 図7
  • 特許-圧縮強度が改善されたシート状複合材部品の製造方法 図8
  • 特許-圧縮強度が改善されたシート状複合材部品の製造方法 図9
  • 特許-圧縮強度が改善されたシート状複合材部品の製造方法 図10
  • 特許-圧縮強度が改善されたシート状複合材部品の製造方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】圧縮強度が改善されたシート状複合材部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/08 20060101AFI20240604BHJP
   B32B 37/14 20060101ALI20240604BHJP
   B32B 38/18 20060101ALI20240604BHJP
   B29C 70/10 20060101ALI20240604BHJP
   B29C 70/30 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B32B5/08
B32B37/14 Z
B32B38/18 B
B29C70/10
B29C70/30
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021545316
(86)(22)【出願日】2019-10-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 EP2019077546
(87)【国際公開番号】W WO2020074677
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-10-11
(31)【優先権主張番号】18199755.2
(32)【優先日】2018-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521151739
【氏名又は名称】ミツビシ ケミカル アドバンスド マテリアルズ ナームローゼ フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI CHEMICAL ADVANCED MATERIALS NV
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】バセル、ブラク
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-029742(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2010/0064491(US,A1)
【文献】特開平09-267009(JP,A)
【文献】特表2022-508723(JP,A)
【文献】特開2014-000710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
B29C 70/00 - 70/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のプロセスステップを含むシート状複合材部品を製造する方法において、前記方法は:
a)一対のスキン層(A,A’)の間に挟まれたコア層(B)を含む実質的に平面的な配置(A,B,A’)を提供することであって、前記コア層の第1の面は、前記スキン層の第1の層(A)に隣接し、かつ前記第1の層(A)と実質的に平行であり、前記コア層の第2の面は、前記スキン層の他方の層(A’)に隣接し、かつ前記他方の層(A’)と実質的に平行であり、前記スキン層(A,A’)はそれぞれ、スキン熱可塑性プラスチックおよび任意選択的に強化繊維を含み、前記コア層(B)は、フリース熱可塑性プラスチック繊維および強化繊維からなるフリース材料を含む、提供することと、
b)サンドイッチ配置(A,B,A’)を加熱および加圧した後に、冷却して複合材部品を得ることと、
を含み、
前記コア層(B)は、前記第1の面および前記第2の面に垂直な配向方向(Z)に優先的に配向される強化繊維を有するZ配向コア層であることを特徴とし、
前記Z配向コア層(B)は、前記フリース材料のシートを多重に折り畳んで連続的に折り畳まれた配置とすることによって提供され、前記連続的に折り畳まれた配置は、同連続的に折り畳まれた配置の第1の面または第2の面に沿ってそれぞれ配置された第1の折り畳みエッジまたは第2の折り畳みエッジによって対をなして連結された互いに平行かつ隣接するシート部からなり、それにより、後続のプロセスステップb)のために、表面層(A)および(A’)に適用して前記サンドイッチ配置(A,B,A’)を形成するための、露出した第1および第2の面を有する前記Z配向コア層を生成し、
前記多重の折り畳みは、前記フリース材料のシートが処理方向(X)に沿って第1の速度(v1)で供給され、その後、前記第1の速度(v1)よりも遅い第2の速度(v2)に減速されることにより、前記多重の折り畳みを引き起こす連続プロセスとして実施される、方法。
【請求項2】
前記コア層()は、積み重ねられた複数個の、前記フリース材料の連続的に折り畳まれた配置を含む、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記コア層()が、前記フリース材料の少なくとも1つの折り畳まれていない層をさらに含む、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記強化繊維が、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、玄武岩繊維、天然繊維、および熱プレスステップの処理温度で溶融しない熱可塑性プラスチック繊維から選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記フリース熱可塑性プラスチックおよび前記スキン熱可塑性プラスチックが、PP、PEI、PES、PSU、PPSU、PPA、PPO、PEEK、PPS、PA、PEAK、PEKKおよびPCから独立して選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つのスキン層(A,A’)は、織布、非圧着布、または一方向繊維配置からなる補強シートを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
処理ステップb)の前に提供される前記コア層(B)は、50~10000g/mの面積重量を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮強度が改善されたシート状複合材部品を製造する新規な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化熱可塑性プラスチックから形成された複合材部品は多くの技術分野で広く使用されている。
例えば、特許文献1には、第1および第2のスキン層を有する発泡体コアを含む複合材部品が開示されており、第1および第2のスキン層はそれぞれ、発泡体コアの第1の面および第2の面上で同発泡体コアに結合されている。同様に、特許文献2には、ガラス含有量が20~60重量%で空隙含有量が5体積%未満のガラス繊維強化ポリプロピレン製の厚さ0.5~5mmの1つまたは2つのスキン層と、ガラス含有量が35~80重量%で空隙含有量が20~80体積%のガラス繊維強化ポリプロピレン製の厚さ2~40mmのコア層とを含む、曲げ剛性の複合材シートが開示されている。このような多孔性コアシートは、特許文献3に詳細に記載されているように、ポリプロピレン繊維およびガラス繊維の乾式混合、混合された不織布のニードリング、および熱プレスによって形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2015/117799A1号
【文献】国際公開第2006/133586号
【文献】国際公開第2006/105682A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
永久的な課題は、重量を可能な限り小さく保ちながら機械的特性を最適化することである。多くの場合、比較的厚いコア層を有する製造プロセスを実施することが望ましいであろう。コア層の厚さの単純なスケールアップは、スキン層が熱プレス工程にて適用されている瞬間に十分な圧縮強度を提供しない最初は柔らかなコア層であるといった欠点をもたらす。従って、改善された圧縮強度を有するコア層を含む改良された製造プロセスを提供することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、以下のプロセスステップを含むシート状複合材部品(composite part)の製造方法が提供される:
a)一対のスキン層(A,A’)の間に挟まれたコア層(B)を含む実質的に平面的な配置(A,B,A’)を提供することであって、前記コア層の第1の面は、前記スキン層の第1の層(A)に隣接し、かつ同第1の層(A)と実質的に平行であり、前記コア層の第2の面は、前記スキン層の他方の層(A’)に隣接し、かつ同他方の層(A’)と実質的に平行であり、前記スキン層(A,A’)はそれぞれ、スキン熱可塑性プラスチックおよび任意選択的に強化繊維を含み、前記コア層(B)は、フリース熱可塑性プラスチック繊維および強化繊維からなるフリース材料を含む、提供すること、
および
b)サンドイッチ配置(A,B,A’)を加熱および加圧した後に、冷却して複合材部品を得ること。
【0006】
「スキン層(skin layer)」という用語は、最も広い用語では、内部構造またはコア構造に取り付けられた表面層を指すものと理解されるものとする。上側スキン層および下側スキン層は、厚さが同じであっても、同じでなくてもよい。スキン層の各々は、分かりやすくするために、本明細書においては「スキン熱可塑性プラスチック(skin thermoplastic)」と称される熱可塑性プラスチック材料を含む。さらに、各スキン層は、任意に強化繊維を含む。
【0007】
コア層は、熱可塑性プラスチック繊維(thermoplastic fibers)および強化繊維からなるフリース材料から形成される。わかりやすくするために、本明細書においては熱可塑性プラスチック繊維を構成する材料を「フリース熱可塑性プラスチック(fleece thermoplastic)」と称することにする。
【0008】
コア層を構成するものとしての繊維強化熱可塑性プラスチックフリース材料は、多くの技術分野において、特に有利な構造特性を有する軽量発泡体部品を製造するために広く使用されている。それらは通常、十分に確立されたカーディング(carding)技術またはエアレイイング(air-laying)技術を用いて製造され、基本的にシートとして形成される。製造プロセスの結果として、このようなフリース材料の繊維は、主にシート面内、すなわち「X-Y平面」として定義され得る面内に配向される。フリース材料をシート面に垂直な方向にニードリングすること(needling)は、Z方向に配向される強化繊維の量をわずかに増加させることが知られているが、再配向の効果は比較的小さく、したがって、X-Y配向が支配的なままである。
【0009】
しかしながら、本発明に従って、コア層Bは、第1の面および第2の面に垂直な配向方向Zに優先的に配向した強化繊維を有するZ配向コア層である。このようにして、実質的に改善された圧縮強度が達成される。
【0010】
上述の特徴「優勢なZ配向(predominant Z-orientation)」、すなわち前記第1の面および第2の面によって定義されるX-Y基準平面に垂直な優勢なZ配向は、優先的な配向の第2の方向、すなわちYなどの1つの特定の面内方向(in-plane direction)を排除するものではないことが強調されるべきである。しかしながら、確かに、等方性の状況と比較してZ方向が優勢であることを意味する。
【0011】
有利な実施形態(請求項2)に従って、前記Z配向コア層(B)は、フリース材料のシートを多重に折り畳んで連続的に折り畳まれた配置とすることによって提供され、連続的に折り畳まれた配置は、同連続的に折り畳まれた配置の第1の面または第2の面に沿ってそれぞれ配置された第1の折り畳みエッジまたは第2の折り畳みエッジによって対をなして連結された互いに平行かつ隣接するシート部(sheet portions)からなり、それにより、後続のプロセスステップb)のために、スキン層(A)および(A’)に適用して前記サンドイッチ配置(A,B,A’)を形成するための、露出した第1および第2の面を有する前記Z配向コア層を得ることができる。
【0012】
一実施形態によれば、前記多重の折り畳み(multiply folding)は、例えば、グリッパ、ホルダ、停止面などとして構成された適切な機械式折り畳み装置を用いて行われる。
【0013】
別の実施形態(請求項3)によれば、前記多重の折り畳みは、前記フリース材料のシートが処理方向(X)に沿って第1の速度(v1)で供給され、その後、前記第1の速度(v1)よりも遅い第2の速度(v2)に減速されることにより、前記多重の折り畳みを引き起こす連続プロセスとして実施される。
【0014】
特定の実施形態において、コア層は、単一の連続的に折り畳まれた配置を提供することによって構成される。他の実施形態(請求項4)において、コア層(B)は、前記フリース材料からなる積み重ねられた複数個の連続的に折り畳まれた配置を含む。例えば、コア層は、互いに積み重ねられた、2つ以上の同一の連続的に折り畳まれた配置を含むことができ、すなわち、二重または複数の層を形成し得る。これは、2つの積み重ねられた連続的に折り畳まれた配置が実質的に「同相(in phase)」である、すなわち、各連続的に折り畳まれた配置の折り畳みエッジが同一の長手方向位置にある配置を含む。あるいは、2つの積み重ねられた連続的に折り畳まれた配置は、「位相がずれて(out of phase)」いてもよく、それにより、シフトし、したがって、折り畳みエッジの突出の影響を最小限に抑える。少なくとも1つの連続的に折り畳まれた配置に加えて、フリース材料の少なくとも1つの折りたたまれていない層を配置することも可能である(請求項5)。これにより、圧縮ステップで形成された溶接線を閉じるなど、複合材部品の表面品質を向上させることができる。
【0015】
別の実施形態(請求項6)によれば、前記Z配向コア層(B)は、フリース材料を、固定された上部壁、下部壁、横壁および末端壁を有する圧縮ユニットに充填し、末端壁間の距離の低減により長手方向の機械的圧縮ステップを付与し、続いて上部壁および下部壁を除去することによって、提供され、それにより、後続のプロセスステップb)のために、スキン層(A)および(A’)に適用して前記サンドイッチ配置(A,B,A’)を形成するための、露出した第1および第2の面を有する前記Z配向コア層を形成する横方向に閉じ込められ(confined)かつ長手方向に圧縮されたフリース材料を得る。
【0016】
さらに別の実施形態(請求項7)によれば、Z配向コア層(B)は、処理方向(X)に沿って順次、圧縮ステーション、膨張(expansion)ステーション、およびニードリングステーションを含む処理ユニットに前記フリース材料を通過させることによって連続的に提供され、前記圧縮ステーションは、第1の距離(d1)だけ離間し、第1の速度(v1)で動作する第1のローラ対を含み、前記膨張ステーションは、第2の距離(d2)だけ離間し、第2の速度(v2)で動作する第2のローラ対を備え、d2>d1およびv2<v1であり、ニードリングステーションは、処理方向(X)に対して垂直に往復運動する複数の針要素を備え、それにより、後続のプロセスステップb)のために、スキン層(A)および(A’)に適用して前記サンドイッチ配置(A,B,A’)を形成するための、露出した第1および第2の面を有する前記Z配向コア層の連続シートを得る。第2の距離d2は、第1の距離d1よりも実質的に大きく、典型的には少なくとも5倍、好ましくは少なくとも10倍である。第2の速度v2は、第1の速度v1よりも実質的に小さく、典型的には、前述の距離の倍数に相当する倍数である。
【0017】
繊維強化熱可塑性プラスチックの分野で知られているように(請求項8)、強化繊維は、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、玄武岩繊維および天然繊維を含むがこれらに限定されない多種多様なものから選択することができる。あるいは、強化繊維は、高融点熱可塑性プラスチック、すなわち、熱プレスステップの処理温度で溶融しない材料から作製され得る。有利な実施形態によれば、強化繊維はガラス繊維である。
【0018】
フリース熱可塑性プラスチックおよびスキン熱可塑性プラスチックは、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルホン(PPSU)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリフェニレンエーテル(PPO)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアミド(PA)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)およびポリカーボネート(PC)などの種々の公知のポリマーから独立して選択することができる(請求項9)。有利には、フリース熱可塑性プラスチックおよびスキン熱可塑性プラスチックは、同一または相互に互換性のある熱可塑性ポリマーである。
【0019】
多くの有利な実施形態において、強化繊維は炭素繊維であり、フリース熱可塑性プラスチックおよびスキン熱可塑性プラスチックはPP、好ましくはメルトフローインデックスMFI(230℃、2.16kg)が5~500g/10分、好ましくは10~200g/10分のポリプロピレンである。
【0020】
特定の実施形態(請求項10)において、少なくとも1つのスキン層(A,A’)は、織布、非圧着布、または一方向繊維配置からなる補強シートを含む。
用途に応じて、プロセスステップb)の前に提供されるコア層(B)は、50~10000g/mの面積重量を有する(請求項11)。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】従来技術に従って処理される配置を斜視図として示す。
図2図1の配置のコア層を同じく斜視図として示す。
図3】折り畳みを伴う第1の実施形態に従って処理された配置を、シート面に垂直な垂直断面図として示す。
図4】折り畳みを伴う第2の実施形態に従って処理された配置を、シート面に垂直な垂直断面図として示す。
図5】折り畳みを伴う第3の実施形態に従って処理された配置を、シート面に垂直な垂直断面図として示す。
図6】折り畳みを伴う第4の実施形態に従って処理された配置を、シート面に垂直な垂直断面図として示す。
図7】長手方向圧縮を伴う第5の実施形態による様々な処理ステップを、シート面に垂直な垂直断面図として示す。
図8】長手方向圧縮を伴う第5の実施形態による様々な処理ステップを、シート面に垂直な垂直断面図として示す。
図9】長手方向圧縮を伴う第5の実施形態による様々な処理ステップを、シート面に垂直な垂直断面図として示す。
図10】長手方向圧縮を伴う第5の実施形態による様々な処理ステップを、シート面に垂直な垂直断面図として示す。
図11】ニードリングを用いる第6の実施形態に従って処理された配置を、シート面に垂直な垂直断面図として示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の上記および他の特徴および目的、ならびにそれらを達成する方法は、より明らかになり、本発明自体は、添付の図面に関連した本発明の様々な実施形態の以下の説明を参照することによってよりよく理解されるであろう。
【0023】
図は必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではないことが理解されよう。場合によっては、視覚化を容易にするために相対寸法が実質的に歪むことがある。様々な図面における同一または対応する特徴は、一般に、同じ参照番号で示される。
【0024】
従来技術に従うシート状複合材部品の製造方法を図1~3に示す。図1に一般的に示されるように、この方法は、一対のスキン層、すなわち上部スキン層Aと下部スキン層A’との間に挟まれたコア層Bを含む実質的に平面の配置(A,B,A’)を提供することから始まる。図示されている例において、コア層Bは、互いに積み重ねられた2つの別個の層B1およびB2で構成されている。
【0025】
コア層Bの第1の面は、上部スキン層Aに隣接しかつ実質的に平行であるのに対し、コア層の第2の面は、下部スキン層A’に隣接し、かつ実質的に平行である。
2つのスキン層AおよびA’はそれぞれ、スキン熱可塑性プラスチックおよび任意の強化繊維を含む。コア層B、すなわち別個の層B1およびB2のそれぞれは、フリース熱可塑性プラスチック繊維からかるフリース材料Fを含み、さらに強化繊維R1、R2などを含む。
【0026】
図2に示すように、各コア層における強化繊維R1、R2などの配向は、主に層平面、すなわち方向ベクトルXおよびYがまたがる平面にある。より正確には、強化繊維は、それらの長手方向の繊維方向が面外方向Zに実質的な成分を有することのないように配向される。このことは、湾曲した繊維にも適用されることに留意されたい。この場合、繊維に沿った任意の点において局所的な繊維方向を考慮しなければならない。
【0027】
本発明の基本概念を図3に示す。図1および2に示した状況とは対照的で、コア層の面に垂直な方向成分、すなわち面外方向Zに沿った方向成分を有する実質的な量の強化繊維R1、R2などが存在する。
【0028】
図3に示す例において、これは、フリース材料のシート2を、多重に折り畳んで連続的に折り畳まれた配置とすることによって構成されたコア層(B)を有することによって達成され、連続的に折り畳まれた配置は、同連続的に折り畳まれた配置の第1の面8または第2の面10に沿ってそれぞれ配置された第1の折り畳みエッジ4または第2の折り畳みエッジ6によって対になって連結された(pairwise connected)相互に平行かつ隣接するシート部分2a、2b、2cなどからなる。より具体的には、図3の例において、シート部分2aおよび2bは、第1の折り畳みエッジ4によって連結され、一方、シート部分2bおよび2cは、第2の折り畳みエッジ6によって連結されている。これにより、第1の面および第2の面8、10が露出したZ配向コア層が得られ、その上にスキン層AおよびA’が適用されてサンドイッチ配置A、B、A’が形成される。
【0029】
このようにして得られたサンドイッチ配置A、B、A’は、次に、加熱および加圧ステップに付され、続いて冷却され、それにより、優れた圧縮強度特性を有するシート状の複合材部品が得られる。
【0030】
折り畳まれたフリースシート材料を使用する同じ原理に基づくさらなる実施形態が、図4~6に示されている。
図4の例において、コア層Bは、1つの連続的に折り畳まれた配置12aと、同じフリース材料の1対の折り畳まれていない層12bおよび12cとを含む。この特定の例では、折り畳まれた層12aは、折り畳まれていない層12bと12cとの間に配置されている。
【0031】
図5の例において、コア層Bは、互いの上に積み重ねられ、上部スキン層Aと下部スキン層A’との間に位置する二重層を形成する2つの連続的に折り畳まれた配置12dおよび12eを含む。ここに示される配置では、2つの積み重ねられた連続的に折り畳まれた層12dおよび12eは実質的に「位相がずれて」おり、それによりシフトし、したがって折り畳みエッジの突出効果を最小限に抑える。
【0032】
図6の例において、コア層Bは、2つの連続的に折り畳まれた配置12dおよび12eと、それらの間に配置された折り畳まれていない層12fとを含むトリプルスタック(triple stack)を含む。
【0033】
特定の実施形態において、多重折り畳み層は、前記フリース材料のシートが処理方向(X)に沿って第1の速度(v1)で供給され、続いて第1の速度(v1)よりも遅い第2の速度(v2)に減速され、それにより、多重折り畳みを引き起こす連続プロセスとして実施される。
【0034】
Z配向コア層を提供するための異なるアプローチが、図7~10に示される第5の実施形態にて使用されている。ここで、必要とされるZ配向コア層Bは、フリース熱可塑性プラスチック繊維および強化繊維を含むフリース材料102を、固定された上部壁106、下部壁108、側壁(図示せず)、および末端壁(terminal walls)110および112を備えた圧縮ユニット104に充填することによって形成される。最初に、図7に示す状況において、強化繊維の配向は実質的に等方性である。この場合、末端壁間の距離を減少させることによって達成される長手方向の機械的圧縮ステップを適用することにより、図8に示すように、横方向に閉じ込められ、かつ長手方向に圧縮されたフリース材料102aが得られる。この状況において、強化繊維は圧縮の方向Xに対して垂直に優先的に配向される。上部壁および下部壁を除去すると、第1(上部)の面114および第2(下部)の面116が露出したZ配向コア層が提供される。これに続いて、その上に上面層Aおよび下面A’を適用して、図9に示すように、サンドイッチ配置A、B、A’を形成する。最後に、図10に示すように、サンドイッチ配置A、B、A’を適切な工具118で加熱および加圧するステップを行い、続いて冷却することにより、優れた圧縮強度特性を有するシート状の複合材部品が得られる。
【0035】
Z配向コア層を提供するためのさらなるアプローチが、図11に示される第6の実施形態で使用される。この場合、必要とされるZ配向コア層Bは、フリース熱可塑性プラスチック繊維および強化繊維Rを含むフリース材料202を処理ユニット204に通すことによって連続的に生成される。処理ユニット204は、処理方向Xに沿って順次、圧縮ステーション206、膨張ステーション208、およびニードリングステーション210を含む。より具体的には、圧縮ステーション206は、第1の距離d1だけ離れて配置され、第1の速度v1で動作する第1のローラ対212を備える。続く膨張ステーション208は、第1の距離1よりも実質的に大きい第2の距離d2だけ離れて配置された第2のローラ対214を備える。第2のローラ対は、第1の速度v1よりも実質的に小さい第2の速度v2で動作する。図11に示されるように、フリース材料は、処理ユニットの広がっている(diverging)断面プロファイルに従い、効果的に膨張をもたらす。膨張の現象は、フリース材料に含まれる強化繊維Rが処理方向Xに垂直に優先的に配向するように再配向することにつながる。得られたZ配向を維持するために、材料は、処理方向Xに垂直に往復運動する複数の針要素216を含むニードリングステーション210を通過する。このようにして得られたZ配向コア層は、露出した第1(上部)の面218および第2(下部)の面220を有する。
【0036】
コア層は実質的に無端状の材料として製造されるので、サンドイッチ配置A、B、A’を形成するための上面層Aおよび下面A’の適用は、その後の加熱および加圧とそれに続く冷却について、連続的なプロセスで行うことができる。あるいは、Z配向コア材料をセクションに切断し、表面層の材料の対応するセクションを適用することによって処理することもできる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11